説明

撮像装置

【課題】より確実に撮像素子の欠陥画素の撮像データの値を補正することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置10は、制御部11、撮像素子12、メモリ13および補正部15を備える。メモリ13は、各々一定時間である複数の期間それぞれにおいて一定の第一光量レベルの光を撮像素子12の各画素に入射させたときに撮像素子12から出力された各画素の撮像データにおいて、複数の画素のうちの或る画素の複数の期間それぞれの撮像データのばらつきが所定値以上である場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶している。補正部14は、複数の画素のうち欠陥画素に隣接する良好画素の撮像データに基づいて該欠陥画素のデータを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、2次元配列された複数の画素を有し各画素の撮像データを出力する撮像素子を備える。このような撮像装置において、撮像素子の複数の画素のうち何れかの画素が欠陥画素であると、その欠陥画素の撮像データは異常な値となる。そこで、撮像装置を工場から出荷する段階で、撮像素子を検査することで複数の画素の中から欠陥画素を見出して、その欠陥画素を特定する情報を撮像装置のメモリに記憶させておき、撮像装置を使用する段階では、メモリに記憶された欠陥画素に隣接する良好画素の撮像データを用いて欠陥画素の撮像データを補間する処理が行われる(特許文献1参照)。このような処理が行われることにより、欠陥画素に起因する画質劣化が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−124056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮像素子の欠陥画素は同一露光条件であっても撮像データの値が変動する場合があり、このような場合には欠陥画素を見逃す虞があることを、本発明者は見出した。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、より確実に撮像素子の欠陥画素の撮像データの値を補正することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、(1) 2次元配列された複数の画素を有し各画素の撮像データを出力する撮像素子と、(2) 複数の画素のうち欠陥画素を特定する情報が記憶されたメモリと、(3) 撮像素子から出力された各画素の撮像データに基づいて、メモリに記憶された欠陥画素のデータを求める補正部と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明の撮像装置では、(a) メモリが、各々一定時間である複数の期間それぞれにおいて一定の第一光量レベルの光を撮像素子の各画素に入射させたときに撮像素子から出力された各画素の撮像データにおいて、複数の画素のうちの或る画素の複数の期間それぞれの撮像データのばらつきが所定値以上である場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶し、(b) 補正部が、複数の画素のうち欠陥画素に隣接する良好画素の撮像データに基づいて該欠陥画素のデータを求めることを特徴とする。ここで、「複数の期間それぞれの撮像データのばらつき」とは「複数の期間それぞれの撮像データの最大値と最小値の差」または「複数の期間それぞれの撮像データの標準偏差」を意味する。
【0007】
本発明の撮像装置では、メモリが、複数の画素の複数の期間の撮像データの平均値に対して、複数の画素のうちの或る画素の複数の期間の撮像データの平均値が所定値以上異なっている場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶しているのが好適である。また、メモリが、各々一定時間である複数の期間それぞれにおいて第一光量レベルとは異なる一定の第二光量レベルの光を撮像素子の各画素に入射させたときに撮像素子から出力された各画素の撮像データにおいて、複数の画素の複数の期間の撮像データの平均値に対して、複数の画素のうちの或る画素の複数の期間の撮像データの平均値が所定値以上異なっている場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶しているのが好適である。
【0008】
本発明の撮像装置では、補正部が、複数の画素のうち欠陥画素に隣接する全ての良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとするのが好適である。補正部が、複数の画素のうち欠陥画素に隣接し欠陥画素を挟む二つの良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとするのも好適である。補正部が、複数の画素のうち欠陥画素に対し左右方向に隣接する良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとするのも好適である。また、補正部が、複数の画素のうち欠陥画素に対し上下方向に隣接する良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとするのも好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より確実に撮像素子の欠陥画素の撮像データの値を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の撮像装置10および検査装置20を備える検査システム1の構成を示す図である。
【図2】本実施形態の撮像装置10の構成を示す図である。
【図3】欠陥画素判定部21による欠陥画素の判定の方法を説明するフローチャートである。
【図4】撮像素子12の複数の画素のうち3×3個の画素を示す図である。
【図5】ラインセンサ式ハイパースペクトル撮像装置10Aの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態の撮像装置10および検査装置20を備える検査システム1の構成を示す図であって、工場出荷時に撮像装置10の撮像素子12を検査する際の構成を示す。また、図2は、本実施形態の撮像装置10の構成を示す図であって、撮像装置10を使用する際の構成を示す。撮像装置10は、制御部11、撮像素子12、メモリ13、補正部14、画像用インターフェース部15および制御信号用インターフェース部16を備える。また、検査装置20は欠陥画素判定部21を備える。
【0013】
検査段階(図1)では、撮像装置10の制御部11は、2次元配列された複数の画素を有する撮像素子12から出力された各画素の撮像データを入力して、その各画素の撮像データを画像用インターフェース部15へ出力する。画像用インターフェース部15は、制御部11から受け取った各画素の撮像データを、検査装置20の欠陥画素判定部21へ出力する。
【0014】
検査装置20の欠陥画素判定部21は、撮像装置10の画像用インターフェース部15から受け取った各画素の撮像データに基づいて、撮像装置10の撮像素子12の欠陥画素を判定し、その欠陥画素を特定する欠陥画素情報を撮像装置10の制御信号用インターフェース部16へ出力する。撮像装置10の制御信号用インターフェース部16は、検査装置20の欠陥画素判定部21から受け取った欠陥画素情報を制御部11に与える。制御部11は、その欠陥画素情報をメモリ13に記憶させる。
【0015】
使用段階(図2)では、不揮発性のメモリ13は、撮像素子12の複数の画素のうち欠陥画素を特定する情報を既に記憶している。制御部11は、外部から制御信号用インターフェース部16を経て入力される制御信号を受け取り、この制御信号に基づいて動作する。制御部11は、撮像素子12から出力された各画素の撮像データを入力して、その各画素の撮像データを補正部14へ出力する。
【0016】
補正部14は、撮像素子12から出力された各画素の撮像データを制御部11から受け取り、また、撮像素子12の欠陥画素を特定する情報をメモリ13から受け取る。そして、補正部14は、撮像素子12から出力された各画素の撮像データに基づいて欠陥画素のデータを求める。具体的には、補正部14は、複数の画素のうち欠陥画素に隣接する良好画素の撮像データに基づいて該欠陥画素のデータを求める。そして、補正部14は、その求めた欠陥画素のデータを良好画素の撮像データとともに画像用インターフェース部15から外部へ出力する。
【0017】
次に、検査装置20の欠陥画素判定部21による欠陥画素の判定の方法について説明するとともに、撮像装置10のメモリ13に記憶される欠陥画素情報について説明する。図3は、欠陥画素判定部21による欠陥画素の判定の方法を説明するフローチャートである。
【0018】
ステップS10では、撮像素子12の露光時間が所定時間(例えば1〜9ms)に設定される。ステップS11では、設定された露光時間で複数回(例えば100回)第一光量レベルの光が撮像素子12の各画素に入射され、そのときに撮像素子12から出力された各画素の撮像データが制御部11により取得され欠陥画素判定部21に与えられる。このときの第一光量レベルは完全な遮光レベルであってもよい。ステップS12では、欠陥画素判定部21により、各画素について撮像データの最大値と最小値との差が所定値(例えば200count)以上であるか否かが判断され、そのうちの或る画素(x,y)について撮像データの最大値と最小値との差が所定値以上である場合に該画素(x,y)が欠陥画素であると判定され、ステップS21において欠陥画素(x,y)が特定される。
【0019】
ステップS13では、欠陥画素判定部21により、全画素の全ての撮像データの平均値が求められ、また、各画素毎の撮像データの平均値が求められる。ステップS14では、欠陥画素判定部21により、全画素の全ての平均値に対して各画素毎の平均値が所定値(例えば4σcount)以上異なっているか否かが判断され、全画素の全ての平均値に対して或る画素(x,y)の平均値が所定値以上異なっている場合に該画素(x,y)が欠陥画素であると判定され、ステップS21において欠陥画素(x,y)が特定される。
【0020】
ステップS15では、設定された露光時間で複数回(例えば100回)第二光量レベルの光が撮像素子12の各画素に入射され、そのときに撮像素子12から出力された各画素の撮像データが制御部11により取得され欠陥画素判定部21に与えられる。このときの第二光量レベルは第一光量レベルと異なる。ステップS16では、欠陥画素判定部21により、ステップS15で取得された全画素の全ての撮像データの平均値が求められ、また、各画素毎の期間の撮像データの平均値が求められる。ステップS17では、欠陥画素判定部21により、ステップS16で求められた全画素の全ての平均値に対して各画素毎の平均値が所定値(例えば4σcount)以上異なっているか否かが判断され、全画素の全ての平均値に対して或る画素(x,y)の平均値が所定値以上異なっている場合に該画素(x,y)が欠陥画素であると判定され、ステップS21において欠陥画素(x,y)が特定される。
【0021】
ステップS18では、ステップS15〜S17の処理が所定回数繰り返されたか否かが判断される。未だ所定回数に達していない場合には、光量レベルが他のレベルに設定されてステップS15〜S17の処理が行われる。所定回数に達していればステップS22に進む。ステップS22では、ステップS21で欠陥画素に特定されなかった他の画素が正常画素であると指定される。撮像装置10のメモリ13は、ステップS21で特定された欠陥画素の情報を記憶する。
【0022】
本実施形態では、このようにして欠陥画素を特定して欠陥画素情報をメモリ13により記憶しておくことで、より確実に撮像素子12の欠陥画素の撮像データの値を補正することができる。
【0023】
次に、検査装置20の補正部14による欠陥画素のデータの補正の方法について説明する。図4は、撮像素子12の複数の画素のうち3×3個の画素を示す図である。ここでは、3×3個の画素P1,1〜P3,3のうち画素P1,2,P2,2,P3,1が欠陥画素(図中で×印)であるとし、他の画素が良好画素(図中で○印)であるとして、中央に位置する欠陥画素P2,2のデータの補正の方法について説明する。また、画素Px,yのデータをDx,yと表す。
【0024】
補正部14による第一の補正方法では、欠陥画素P2,2に対して上下,左右または斜めの方向に隣接する各良好画素のデータの平均値として、欠陥画素P2,2のデータD2,2が求められる。すなわち、第一の補正方法では欠陥画素P2,2のデータD2,2は下記(1)式で求められる。
2,2=(D1,1+D1,3+D2,1+D2,3+D3,2+D3,3)/6 …(1)
【0025】
補正部14による第二の補正方法では、欠陥画素P2,2に対して上下,左右または斜めの方向に隣接し欠陥画素P2,2を挟む各良好画素のデータの平均値として、欠陥画素P2,2のデータD2,2が求められる。すなわち、第二の補正方法では欠陥画素P2,2のデータD2,2は下記(2)式で求められる。
2,2=(D1,1+D2,1+D2,3+D3,3)/4 …(2)
【0026】
補正部14による第三の補正方法では、欠陥画素P2,2に対して左右方向に隣接する各良好画素のデータの平均値として、欠陥画素P2,2のデータD2,2が求められる。すなわち、第三の補正方法では欠陥画素P2,2のデータD2,2は下記(3)式で求められる。
2,2=(D2,1+D2,3)/2 …(3)
【0027】
補正部14による第四の補正方法では、欠陥画素P2,2に対して上下方向に隣接する各良好画素のデータの平均値として、欠陥画素P2,2のデータD2,2が求められる。すなわち、第四の補正方法では欠陥画素P2,2のデータD2,2は下記(4)式で求められる。
2,2=D3,2 …(4)
【0028】
上記の第三の補正方法および第四の補正方法は、撮像装置10がラインセンサ式ハイパースペクトル撮像装置である場合に好適である。図5は、ラインセンサ式ハイパースペクトル撮像装置10Aの構成を示す図である。このラインセンサ式ハイパースペクトル撮像装置10Aは、前述した撮像装置10の構成に加えて分光器17をも備える。
【0029】
分光器17は、測定対象物2の表面のうち或るy方向位置においてx方向に延在するストライプ状の視野領域3から発した光を受光し、その光を分光して、その分光後の光を撮像素子12の撮像面上に入射させる。撮像素子12は、例えば、x方向に320画素を有し、y方向に237画素を有する。撮像素子12の撮像面上におけるx方向位置は、視野領域3におけるx方向位置に対応する。撮像素子12の撮像面上におけるy方向位置は波長に対応する。測定対象物2がy方向に移動することで、ラインセンサ式ハイパースペクトル撮像装置10Aは、測定対象物2の表面の各位置から発した光のスペクトルを測定することができる。
【0030】
このようなラインセンサ式ハイパースペクトル撮像装置10Aにおいて、欠陥画素に対してx方向に隣接する各良好画素のデータの平均値として該欠陥画素のデータを求める第三の補正方法を採用することにより、波長分解能の低減を抑制することができる。また、欠陥画素に対してy方向に隣接する各良好画素のデータの平均値として該欠陥画素のデータを求める第四の補正方法を採用することにより、位置分解能の低減を抑制することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…検査システム、10,10A…撮像装置、11…制御部、12…撮像素子、13…メモリ、14…補正部、15…画像用インターフェース部、16…制御信号用インターフェース部、17…分光器、20…検査装置、21…欠陥画素判定部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配列された複数の画素を有し各画素の撮像データを出力する撮像素子と、
前記複数の画素のうち欠陥画素を特定する情報が記憶されたメモリと、
前記撮像素子から出力された各画素の撮像データに基づいて、前記メモリに記憶された欠陥画素のデータを求める補正部と、
を備える撮像装置であって、
前記メモリが、各々一定時間である複数の期間それぞれにおいて一定の第一光量レベルの光を前記撮像素子の各画素に入射させたときに前記撮像素子から出力された各画素の撮像データにおいて、前記複数の画素のうちの或る画素の前記複数の期間それぞれの撮像データのばらつきが所定値以上である場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶しており、
前記補正部が、前記複数の画素のうち前記欠陥画素に隣接する良好画素の撮像データに基づいて該欠陥画素のデータを求める、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記メモリが、
前記複数の画素の前記複数の期間の撮像データの平均値に対して、前記複数の画素のうちの或る画素の前記複数の期間の撮像データの平均値が所定値以上異なっている場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶している、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記メモリが、
各々一定時間である複数の期間それぞれにおいて前記第一光量レベルとは異なる一定の第二光量レベルの光を前記撮像素子の各画素に入射させたときに前記撮像素子から出力された各画素の撮像データにおいて、
前記複数の画素の前記複数の期間の撮像データの平均値に対して、前記複数の画素のうちの或る画素の前記複数の期間の撮像データの平均値が所定値以上異なっている場合に、その画素を欠陥画素として特定する情報を記憶している、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記補正部が、前記複数の画素のうち前記欠陥画素に隣接する全ての良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記補正部が、前記複数の画素のうち前記欠陥画素に隣接し前記欠陥画素を挟む二つの良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記補正部が、前記複数の画素のうち前記欠陥画素に対し左右方向に隣接する良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記補正部が、前記複数の画素のうち前記欠陥画素に対し上下方向に隣接する良好画素の撮像データの平均値を該欠陥画素のデータとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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