説明

撮影情報出力装置及びそれを有するレンズ装置

【課題】 撮影条件設定を変更していない場合に、他の撮影条件設定が行われたとしても、撮影条件情報の変化が許容範囲であれば、撮影条件情報を変化させない撮影情報出力装置を提供する。
【解決手段】 設定された撮影条件に応じて可動光学部材が駆動され、撮影条件に影響を与える少なくとも1つの光学部材である撮影条件決定光学部材の位置が検出されるレンズ装置における該撮影条件の情報を出力する撮影情報出力装置は、撮影条件として撮影条件設定値を設定する撮影条件設定手段と、少なくとも1つの光学部材の位置に基づき撮影条件の情報を算出撮影条件として算出する撮影条件算出手段と、撮影条件設定値の変化の有無を判断する設定変化判断手段と、算出撮影条件、及び、設定変化判断手段による撮影条件設定値の変化の有無の判断に応じて、出力する撮影条件情報を決定する、出力情報決定手段と、撮影条件情報を出力する撮影条件出力手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及び撮像装置を含む撮影システム撮影情報を出力する撮影情報出力装置に関し、特にレンズ装置及び撮像装置を含む撮影システムにおいて、レンズ装置が有する撮影情報を出力する撮影情報出力装置及びそれを有するレンズ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラの撮影条件である被写体距離情報、焦点距離情報、Fナンバー、被写界深度、画角をフォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置、絞り位置から算出し、表示する撮影情報出力装置が特許文献1に開示されている。また立体撮影時に左右のレンズの光軸角度(輻輳角と記す)を変化させ、撮影する立体映像の立体感を調節する立体撮影装置が知られている。この場合、輻輳角又は撮像装置と左右のレンズの光軸の交点との距離である輻輳距離を、光軸調整用シフトレンズ位置とズームレンズ位置から算出し、記録する表示制御装置が特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献3では、撮影条件である被写体距離が一定であっても、ズームレンズ位置によりフォーカスレンズ位置が変化するバリフォーカスレンズにおいて、焦点距離変化に応じて、フォーカスレンズを駆動し、結像位置ズレを自動的に補正することが開示されている。
【0004】
特許文献4では、撮影条件である被写体距離が一定であっても、ズームレンズ位置によりフォーカスレンズ位置が変化するバリフォーカスレンズにおいて、ズームレンズ位置とフォーカスレンズ駆動域から被写体距離を算出し、被写体距離の表示を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−78464号公報
【特許文献2】特開2011−135604号公報
【特許文献3】特開昭63−182620号公報
【特許文献4】特開平7−306356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ある時点における撮影レンズの撮影条件である、被写体距離、焦点距離、Fナンバー、被写体深度、画角、輻輳距離等を、例えば、撮影オペレータに対して出力する場合等、外部に出力する必要がある場合がある。実際に撮影されている状態に関する情報を出力する必要があるので、レンズ装置自体の状態から、これら撮影条件情報を取得する場合、複数の光学部材であるフォーカスレンズ、ズームレンズ、絞り、シフトレンズの位置等にから演算して求める必要がある。更にそれらの光学部材は複数の撮影条件により変化する。従って、オペレータにより設定された撮影条件が変更されなくても、別の撮影条件の設定が変更された場合、撮影条件情報が変化してしまう不具合が発生する。これに対し、ある撮影条件が変化しても、別の撮影条件に影響を与えないように自動補正が実施されるレンズ制御装置が開示されている。しかしながら、自動補正処理の中で、複数の光学部材の同期遅れや、光学部材の駆動範囲の変化による位置検出精度誤差の変化により、撮影条件情報の算出誤差が発生し、撮影条件が一定にも関わらず撮影条件情報が変化する問題が発生する。
【0007】
例えば上記問題点をバリフォーカルレンズの被写体距離を例に具体的に説明する。バリフォーカルレンズにおいては、所定の被写体距離に対するフォーカスレンズの位置は、ズームレンズの位置の関数となるので、被写体距離は、フォーカスレンズ位置とズームレンズ位置から求められる。従って被写体距離を設定する場合は、設定された被写体距離とズームレンズ位置から目標となるフォーカスレンズ位置が決定する。更に焦点距離を設定する場合にズームレンズ位置が変化する為、被写体距離を一定に保つ為には、ズームレンズ位置に応じて自動的にフォーカスレンズ位置を調整する必要がある。上記被写体距離自動調整に関しては特許文献3により開示されている。
【0008】
更にズームレンズ位置と、フォーカスレンズ位置から被写体距離を算出し表示するバリフォーカルレンズの被写体距離表示装置が特許文献4により開示されている。
以上により、焦点距離が変化したとしても、設定された被写体距離を維持し、被写体距離を表示する事が出来る。
【0009】
しかしながら、ズームレンズ位置に応じて、フォーカスレンズを駆動し、被写体距離を算出する為、ズームレンズの位置変動に対してフォーカスレンズの駆動遅れが発生する場合は、焦点距離変化に対し、目標とする被写体距離に対応するフォーカスレンズ位置にフォーカスレンズが瞬時に移動することができないため、ズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置から算出される被写体距離は追従遅れ分だけ変化することになる。更にズームレンズ位置が広角側と望遠側において、フォーカスレンズの無限遠と最至近距離に対応する駆動範囲が異なる為、フォーカスレンズの移動に対し一定の位置検出精度を有するため、フォーカスレンズの位置に対応する被写体距離の精度は焦点距離に応じて異なる。従って同じ被写体距離でも焦点距離に応じて、被写体距離の精度が異なる為、焦点距離に応じて上記した被写体距離自動調整を行ったとしても、被写体距離が変化してしまう。この被写体距離の変化により、レンズが誤動作していると、撮影者が勘違いしてしまう原因となる。同様のことは、被写体距離のみに限らず、焦点距離、Fナンバー、被写体深度、画角、輻輳距離についても同様に発生する。
【0010】
上述の特許文献に開示された従来技術では、レンズの同期ズレやレンズ位置検出精度による被写体距離の変化に対する対応についての記載はない。
そこで、本発明の目的は、撮影条件設定を変更していない場合に、他の撮影条件設定が行われたとしても、撮影条件情報の変化が許容範囲であれば、撮影条件情報を変化させないカメラの撮影情報出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の撮影情報出力装置は、設定された撮影条件に応じて可動光学部材が駆動され、該撮影条件に影響を与える少なくとも1つの光学部材である撮影条件決定光学部材の位置が検出されるレンズ装置における該撮影条件の情報を出力する撮影情報出力装置であって、撮影条件として撮影条件設定値を設定する撮影条件設定手段と、該少なくとも1つの光学部材の位置に基づき撮影条件の情報を算出撮影条件として算出する撮影条件算出手段と、該撮影条件設定値の変化の有無を判断する設定変化判断手段と、該算出撮影条件、及び、該設定変化判断手段による該撮影条件設定値の変化の有無の判断に応じて、出力する撮影条件情報を決定する、出力情報決定手段と、該撮影条件情報を出力する撮影条件出力手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮影条件設定を変化させていない場合に、他の撮影条件設定が行われたとしても、撮影条件情報を変化させないカメラの撮影情報出力装置を提供する事が出来る。これにより、撮影者にレンズが誤動作していると勘違いさせてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の構成ブロック図
【図2】被写体距離及びフォーカスレンズ位置及びズームレンズ位置の関係図
【図3】時間経過に対しての単位時間内目標被写体距離と被写体距離との関係図
【図4】単位時間内目標焦点距離及びズームレンズ目標位置の関係図
【図5】時間経過に対しての単位時間内目標被写体距離と焦点距離との関係図
【図6】被写体距離設定値(撮影条件設定値)が変化した事を検出する為のフローチャート図
【図7】出力被写体距離情報を決定する為のフローチャート図
【図8】第二実施形態の構成ブロック図
【図9】輻輳距離を説明する為の図
【図10】輻輳距離位置及びシフトレンズ位置及びズームレンズ位置の関係図
【図11】時間経過に対しての単位時間内目標輻輳距離と輻輳距離との関係図
【図12】輻輳距離設定値(撮影条件設定値)が変化した事を検出する為のフローチャート図
【図13】出力輻輳距離情報を決定する為のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、図1を用いて、本発明の第1の実施例を説明する。
図1は、実施例1の構成ブロック図である。実施例1で例示するシステムは、撮影に関する可動光学部材を制御するレンズ装置10と、レンズ装置10に接続された撮影条件設定手段である被写体距離操作部11、焦点距離操作部12及び撮像装置13と、撮像装置13に接続された外部表示装置14とで構成されている。
【0016】
被写体距離操作部11は、レンズ装置10の被写体距離を操作する操作部であり、例えばデマンド(フォーカスデマンド)やカメラで構成される。焦点距離操作部12はレンズ装置10の焦点距離を操作する操作部であり、例えばデマンド(ズームデマンド)やカメラで構成される。撮像装置13は、レンズ装置10によって形成された被写体像を撮像する撮像装置であり、例えカメラでる。外部表示装置14は、被写体距離等の撮影条件情報を表示する表示装置であり、例えばビューファインダーで構成される。
レンズ装置10は、フォーカスを調整する為のフォーカスレンズ105と、ズームを調整する為のズームレンズ115を含む。
【0017】
フォーカスレンズ105の駆動は、例えば制御演算部とモータにより構成されるフォーカスレンズ駆動制御部104によって制御され、フォーカスレンズ105の位置は、例えばホール素子により構成されるフォーカスレンズ位置検出部106によって検出される。被写体距離操作部11からの被写体距離(撮影条件)の設定指令は、被写体距離設定指令入力部101に入力される。被写体距離の設定指令値(撮影条件設定値)は、単位時間内目標被写体距離算出部102に入力され、被写体距離の制御周期毎の目標位置となる単位時間内目標被写体距離が算出される。単位時間内目標被写体距離の算出方法は後述する。単位時間内目標被写体距離と現在のズームレンズ位置に基づいて、単位時間内目標値算出手段であるフォーカスレンズ目標位置算出部103は、フォーカスレンズの単位時間内の目標位置(可動光学部材目標位置)を算出する。フォーカスレンズ目標位置の算出方法は後述する。フォーカスレンズ駆動制御部104は、フォーカスレンズ位置がフォーカスレンズ目標位置値と一致するように駆動制御を行う。
【0018】
ズームレンズ115の駆動は、例えば制御演算部とモータにより構成されるズームレンズ駆動制御部114によって制御され、ズームレンズ115の位置は、例えばホール素子により構成されるズームレンズ位置検出部116によって検出される。焦点距離操作部12からの焦点距離の設定指令は、焦点距離設定指令入力部111に入力される。焦点距離の設定指令値は、単位時間内目標焦点距離算出部112に入力され、焦点距離の制御周期毎の目標位置となる単位時間内目標焦点距離が算出される。単位時間内目標焦点距離の算出方法は後述する。前記単位時間内目標焦点距離に基づいて、ズームレンズ目標位置算出部113はズームレンズの目標位置を算出する。ズームレンズ目標位置の算出方法は後述する。ズームレンズ駆動制御部114は、ズームレンズ位置がズームレンズ目標位置と一致するように駆動制御を行う。
【0019】
撮影条件算出手段である被写体距離算出部121は、フォーカスレンズ位置検出部106からのフォーカスレンズ位置及びズームレンズ位置検出部116からのズームレンズ位置から、被写体距離の情報(撮影条件の情報)を算出撮影条件として算出する。被写体距離の算出方法については後述する。設定変化判断手段である被写体距離設定変化状態判断部122は、設定された被写体距離の変化の有無を判断する。設定された被写体距離の変化の有無を判断する方法については後述する。出力情報決定手段である被写体距離決定部123は外部に出力する被写体距離の情報である出力被写体距離情報を決定する。出力被写体距離情報を決定する方法については後述する。撮影条件出力部である被写体距離出力部124は、外部に出力撮影条件情報である出力被写体距離情報を出力する。本実施例においては、出力被写体距離情報は、被写体距離出力部124から撮像装置13に出力される。
【0020】
次に、フォーカスレンズ目標位置の算出方法について説明する。
フォーカスレンズ目標位置Fcは単位時間内目標被写体距離Dtc及びズームレンズ位置Zpから算出することが出来る。図2に被写体距離Dp及びフォーカスレンズ目標位置Fc及びズームレンズ位置Zpの関係を示す。ここで被写体距離Dpと単位時間内目標被写体距離Dtcは同じ単位であり、同等と考えて良い。フォーカスレンズ目標位置Fcの計算は、図2に示すような特性をテーブルデータ化しておき、被写体距離Dpとズームレンズ位置Zpをパラメータとして、フォーカスレンズ目標位置Fcを導き出す方法が一般的である。例えばズームレンズ位置ZpがZp1であり、単位時間内目標被写体距離DtcがD1の時に、フォーカスレンズ目標位置FcはF1となる。またズームレンズ位置ZpがZp1であり、単位時間内目標被写体距離DtcがD2の時に、フォーカスレンズ目標位置FcはF2となる。
【0021】
次に、単位時間内目標被写体距離の算出方法について説明する。
図3は被写体距離設定値(撮影条件設定値)DcがDc1からDc2に変化した時の時間経過に対する単位時間内目標被写体距離Dtcと被写体距離Dpとの関係を示している。T0は被写体距離設定値DcがDc1からDc2に変化した時の時間を示し、単位時間ΔTは制御周期の時間を示す。単位時間内目標被写体距離の最大変動量DtcMaxは、単位時間ΔTの時間内に被写体距離Dpが駆動出来る最大駆動量に対応する。単位時間内目標被写体距離の最大変動量DtcMaxは、フォーカスレンズの単位時間ΔTあたりの最大駆動量FcMaxと図2に示すような特性を示すテーブルデータに基づいて算出することが出来る。例えばズームレンズ位置ZpがZp1である場合において、単位時間ΔTの間にフォーカスレンズ位置FpがF1から最大駆動量FcMaxだけ移動してフォーカスレンズ位置がF2に到達した場合、フォーカスレンズ位置の移動量は|F2−F1|であり、それに対応する|D2−D1|が単位時間内目標被写体距離の最大変動量DtcMaxとなる。単位時間内目標被写体距離Dtcが被写体距離設定値Dc2になるまで、単位時間ΔT毎に単位時間内目標被写体距離の最大変動量DtcMax分だけ変化した値が算出される。このように制御することで、単位時間ごとの指示値に対して実際のフォーカスレンズの位置が追いつくことになり、目標位置と実際の位置が拡大していくことなく、安定した制御を実現することができる。
【0022】
次に、ズームレンズ目標位置の算出方法について説明する。
ズームレンズ目標位置Zcは単位時間内目標焦点距離Atcから算出することが出来る。図4は、単位時間内目標焦点距離Atcとズームレンズ目標位置Zcとの関係を示している。図4に示す通り、焦点距離とズームレンズ位置の関係は、一次関数で示される関係となる。ズームレンズ目標位置Zcの計算は、図4に示すような焦点距離とズームレンズ位置との関係を実測して、テーブルデータ化しておき、ズームレンズ目標位置Zcを導き出す方法が一般的である。例えば単位時間内目標焦点距離AtcがA1の時に、ズームレンズ目標位置ZcはZc2となる。
【0023】
次に、単位時間内目標焦点距離の算出方法について説明する。
図5は、焦点距離設定値AcがAc1からAc2に変化した時の時間経過に対する単位時間内目標焦点距離Atcと焦点距離Apとの関係を示す。T0は焦点距離設定値AcがAc1からAc2に変化した時の時間を示し、単位時間ΔTは制御周期の時間を示す。単位時間内目標焦点距離の最大変動量AtcMaxは、単位時間ΔTの時間内に焦点距離Apが駆動出来る最大駆動量を示している。単位時間内目標焦点距離の最大変動量AtcMaxは、ズームレンズの単位時間ΔT当りの最大駆動量ZcMaxと図4に示すような特性を示すテーブルデータから算出する事が出来る。図4に示すように単位時間内目標焦点距離Atcとズームレンズ目標位置Zcは比例関係となっている為、ズームレンズ目標位置Zcは以下の式(1)が示す関係となる。
Zc = (Atc×C11)+C12 …(1)
ここで、C11、C12は実測データから決定される所定の定数である。
【0024】
式(1)より単位時間ΔT当りの最大駆動量ZcMaxを算出する事が出来る。
ZcMax = (AtcMax×C1)+C2 …(2)
【0025】
単位時間内目標焦点距離Atcが焦点距離設定値Ac2になるまで、単位時間ΔT毎に単位時間内目標焦点距離の最大変動量AtcMax分変化した値が算出される。
【0026】
次に、被写体距離(撮影条件の情報)の算出方法について説明する。
被写体距離Dpはフォーカスレンズ位置Fp及びズームレンズ位置Zpから算出することが出来る。被写体距離Dpの計算は、図2に示すような特性をテーブルデータ化しておき、テーブルから被写体距離Dpを導き出す方法が一般的である。例えばズームレンズ位置ZpがZp1であり、フォーカスレンズ位置FpがF1の時に、被写体距離DpはD1となる。またズームレンズ位置ZpがZp1であり、フォーカスレンズ位置FpがF2の時に、被写体距離DpはD2となる。
【0027】
図2から分かるように、ズームレンズ位置Zpが望遠側に比べ、広角側では、被写体距離の変化に対して、フォーカスレンズ位置Fpの変動量は小さい。フォーカスレンズ位置Fpの位置検出精度は、フォーカスレンズ駆動域全域に対して同等である為、ズームレンズ位置Zpが望遠側に比べ、広角側の被写体距離Dp変化に対しての位置検出精度が低くなる。従って被写体距離設定値(撮影条件設定値)が同じだとしても、ズームレンズ位置Zpが広角側の被写体距離Dpの方が、望遠側の被写体距離Dpに比べ、位置誤差が大きくなる。そのため、被写体距離の設定値を変更していない場合であっても、広角側においてズームレンズ位置Zpに対して演算される被写体距離Dpは、異なる値となる場合が生ずる。従って、被写体距離Dpをそのまま表示することで、被写体距離設定値を変更していないにも関わらず、ズーム位置を変化させると被写体距離Dpが変化し、撮影者にレンズが誤動作していると、勘違いさせることに繋がる。
【0028】
次に、被写体距離設定値の変化を判断する方法について説明する。
図6は、被写体距離の設定が変化した事を判断する為のフローチャートである。
S101で処理を開始し、S102に進む。
S102で現在の単位時間内目標被写体距離Dtc2を算出し、S103に進む。
S103では、直前に保持していた単位時間内目標被写体距離Dtc1と現在の単位時間内目標被写体距離Dtc2との差が、0より大きい所定の閾値以上であるかを判断する。閾値以上の時はS104に進む。閾値より小さい時はS106に進む。
S104では、現在の単位時間内目標被写体距離Dtc2を次回の判断時のために直前に保存していた単位時間内目標被写体距離Dtc1として保持し、S105に進む。
S105では、被写体距離設定値に変化が有ったと判断し、S107に進む。
S106では、被写体距離設定値に変化は無いと判断し、S107に進む。
S107で処理を終了する。
以上により、被写体距離設定の変化の有無を判断する。
【0029】
ここでは、S103の処理で、単位時間内目標被写体距離Dtcを被写体距離設定値の変化の判断の対象(以後、撮影条件設定判断値とも記す)としていたが、被写体距離設定値Dcを撮影条件設定判断値としても良い。
【0030】
更にフォーカスレンズ目標位置Fc及びズームレンズ位置Zpを撮影条件設定判断値としても良い。この場合ズームレンズ位置Zpが変化していない状態でフォーカスレンズ目標位置Fcが変化している時は、焦点距離の設定によりフォーカスレンズが駆動されているのではなく、被写体距離設定値の変化でフォーカスレンズが駆動されていると判断出来る。従って、フォーカスレンズ目標位置Fcの変化量が所定の閾値以上であり、且つズームレンズ位置Zpの変化量が所定の閾値以下の時に被写体距離設定値に変化が有ると判断しても良い。
【0031】
更に単位時間内目標焦点距離Atc又は焦点距離設定値Ac又はズーム目標位置Zc又はズームレンズ位置Zp又は焦点距離Apを撮影条件設定判断値としても良い。
【0032】
この場合、焦点距離の設定が行われている時は、被写体距離設定値Dcが変化しなくても、被写体距離Dpが変化してしまう。従って、焦点距離が設定されていると判断した時は、被写体距離設定値の変化が無い時の同等の処理を行う事により、被写体距離出力部124からレンズ装置10の外部の機器に出力される被写体距離情報の不要なふらつきを防止する事が出来る。
【0033】
更に本実施例では、被写体距離設定値Dcに応じて、ズームレンズ位置を駆動させていないが、被写体距離設定値Dcに応じてズームレンズ位置を駆動する場合は、フォーカスレンズ駆動目標位置Fc及びズームレンズ駆動目標位置Zcの関係から被写体距離設定値の変化を判断しても良い。この場合、フォーカスレンズ駆動目標位置Fc及びズームレンズ駆動目標位置Zcと図2の特性から導きだした被写体距離の目標位置の変化量が所定の閾値以内の時に被写体距離設定値に変化が無いと判断しても良い。
【0034】
次に、出力被写体距離情報の決定方法について説明する。図7は、出力被写体距離情報Dpoを決定する為のフローチャートである。
S201で処理を開始し、S202に進む。
S202で現在の被写体距離を最新の被写体距離Dp2として算出し、S203に進む。
S203では、被写体距離設定値に変化があるかの判断を行い、変化ありと判断した場合は、S206に進む。変化が無いと判断した場合はS204に進む。
S204では、以前の処理で被写体距離設定値に変化有りとの判断から変化無しとの判断に切換った時間を変化無し開始時間とし、変化無し開始時間からの経過時間が一定時間Tlim1(0より大きい所定の時間である第1の時間)以上か否かを判断する。該経過時間が第1の時間未満の時間を設定更新状態、それ以外の時間を設定維持状態と定義する。ここで一定時間Tlim1は、単位時間内目標被写体距離Dtcと被写体距離Dpとの制御遅れを考慮し、単位時間ΔTとする。
S204で一定時間Tlim1経過と判断した場合は、S205に進む。一定時間Tlim1経過していないと判断した場合はS206に進む。
S205では、出力被写体距離情報Dpoと最新の被写体距離Dp2との差が予め定められた、0より大きい閾値ΔDlim以上(第1の閾値以上)の時は、S206に進む。出力被写体距離情報Dpoと最新の被写体距離Dp2との差が予め定められた閾値ΔDlim未満(第1の閾値未満)の時は、S208に進む。ここで前記閾値ΔDlimは、焦点距離を広角端から望遠端に変化させた時に変化する被写体距離Dpの変化量を予め測定し、その値より大きな値が設定される。
S206では、最新の被写体距離Dp2を前の被写体距離Dp1として保持し、S207に進む。S207では、最新の被写体距離Dp2(第1の撮影条件情報)を出力被写体距離情報Dpo(出力撮影条件情報)として決定し、S209に進む。S208では、前の被写体距離Dp1(第2の撮影条件情報)を出力被写体距離情報Dpoとして決定し、S209に進む。S209で、処理を終了する。
ここで、S208の処理で前の被写体距離Dp1の代わりに被写体距離目標位置Dtcを出力被写体距離情報として決定しても良い。また、被写体距離設定値Dcと被写体距離Dpとの差から駆動時間を算出し、その時間を一定時間Tlim1として設定しても良い。更に前の被写体距離Dp1の代わりに被写体距離設定値Dcを出力被写体距離情報Dpoとして決定しても良い。
【0035】
次に実施例1の処理について説明する。
被写体距離操作部11から出力された被写体距離設定値Dcは、被写体距離設定指令入力部101で受信され、単位時間内目標被写体距離算出部102に出力される。単位時間内目標被写体距離算出部102は被写体距離設定値Dcより単位時間内目標被写体距離Dtcを算出し、フォーカスレンズ目標位置算出部103に出力する。フォーカスレンズ目標位置算出部103は単位時間内目標被写体距離Dtcとズームレンズ位置Zpからフォーカスレンズ駆動目標位置Fcを算出し、フォーカスレンズ駆動制御部104に出力する。フォーカスレンズ駆動制御部104は、フォーカスレンズ駆動目標位置Fcを元に、フォーカスレンズ105を駆動し、フォーカスレンズ駆動目標位置Fcとフォーカスレンズ位置Fpが一致するように制御する。フォーカスレンズ位置検出部106は、フォーカスレンズ位置Fpを検出し、被写体距離算出部121に出力する。
【0036】
焦点距離操作部12から出力された焦点距離設定値Acは、焦点距離設定指令入力部111で受信され、単位時間内目標焦点距離算出部112に出力される。単位時間内目標焦点距離算出部112は焦点距離設定値Acより単位時間内目標焦点距離Atcを算出し、ズームレンズ目標位置算出部113に出力する。ズームレンズ目標位置算出部113は単位時間内目標焦点距離Atcからズームレンズ駆動目標位置Zcを算出し、ズームレンズ駆動制御部114に出力する。ズームレンズ駆動制御部114は、ズームレンズ駆動目標位置Zcを元に、ズームレンズ115を駆動し、ズームレンズ駆動目標位置Zcとズームレンズ位置Zpが一致するように制御する。ズームレンズ位置検出部116は、ズームレンズ位置Zpを検出し、被写体距離算出部121に出力する。
【0037】
被写体距離算出部121は、フォーカスレンズ位置Fp及びズームレンズ位置Zpから被写体距離Dpを算出し、被写体距離Dpを被写体距離決定部123に出力する。被写体距離設定変化状態判断部は、単位時間内目標被写体距離Dtcから被写体距離設定値に変化があるか否かの判断を行い、その結果を被写体距離決定部123に出力する。被写体距離決定部123は、被写体距離Dp及び被写体距離設定値に変化があるか否かの判断結果から、出力被写体距離情報を決定し、出力被写体距離を被写体距離出力部124に出力する。被写体距離出力部124は、出力被写体距離情報を撮像装置13に出力する。撮像装置13は出力被写体距離情報を外部表示装置14に出力する。
【0038】
以上により、被写体距離設定値を変化させていないのにも関わらず、フォーカスレンズ位置及びズームレンズ位置の変化やフォーカスレンズ位置検出精度変化に起因して、出力される被写体距離情報が変化することがない撮影情報出力装置を実現することが出来る。
ここで、実施例1では、被写体距離操作部からの被写体距離設定値が、目標位置を指定する位置指令の場合について説明したが、速度指令の場合でも同等の効果が得られる。この場合、被写体距離設定指令入力部101で、基準位置と速度指令値から、被写体距離設定値Dcを算出する方法で実現出来る。例えば、速度指令値受信開始時に、被写体距離Dpを基準位置として、単位時間経過毎に速度指令値分の位置変化量を基準位置に積算する事で、被写体距離設定値Dcを算出する事が出来る。
【0039】
また実施例1では、レンズ装置20の外部に表示装置を設けている例を示したが、レンズ装置20内部に表示装置を設け、出力被写体距離情報を表示しても良い。
更に、撮影条件が被写体距離であり、可動光学部材がフォーカスレンズ、撮影条件決定光学部材がフォーカスレンズ、ズームレンズの場合について説明したが、出力する撮影条件が被写界深度、その撮影条件を決定するために影響を与える光学部材がフォーカスレンズ、ズームレンズ、絞りの場合でも同様の効果が得られる。
【0040】
被写界深度Dfの算出方法については以下に説明する。
被写体距離Dpより後方(無限遠側)でピントが合う距離である後方被写界深度Dpb、被写体距離Dpより前方(至近側)でピントが合う前方被写界深度Dpfから被写界深度Dfは式(3)から算出する事が出来る。
Df = Dpb + Dpf …(3)
【0041】
更に被写体距離Dp、焦点距離Ap、許容錯乱円σ、FナンバーFnoから後方被写界深度Dpb及び前方被写界深度Dpfは其々式(4)、式(5)から算出する事が出来る
Dpf = (σ×Fno×Dp2)÷(Ap2+(σ×Fno×Dp)) …(4)
Dpb = (σ×Fno×Dp2)÷(Ap2-(σ×Fno×Dp)) …(5)
以上により式(3)、式(4)、式(5)から被写界深度Dfを算出する事が出来る。
【0042】
以上の方法で被写界深度Dfを算出し、被写体距離を被写界深度に置き換える事で、被写界深度を変化させていないのにも関わらず、フォーカスレンズ位置及びズームレンズ位置の変化により、被写界深度が変化しない撮影情報出力装置を実現する事が出来る。更にフォーカスレンズ位置検出精度変化に対しても、被写界深度が変化しない撮影情報出力装置を実現する事が出来る。
【実施例2】
【0043】
次に、式(8)を用いて、本発明の第2の実施例を説明する。
式(8)は本実施例の構成ブロック図であり、図1と同様の構成のものは同符号を付す。
実施例2は立体視撮影装置における、輻輳距離の表示方法について説明する。
【0044】
レンズ装置20及びレンズ装置21は其々左目用、右目用の撮影に関する可動光学部材を制御するレンズ装置である。レンズ装置21の構成はレンズ装置20と同じである。撮影条件設定手段である輻輳距離操作部22は、レンズ装置20及びレンズ装置21の輻輳距離を操作する操作部であり、レンズ装置20及びレンズ装置21と接続されている。輻輳距離操作部22は例えばデマンドやカメラである。焦点距離操作部23はレンズ装置20及びレンズ装置21の焦点距離を操作する操作部であり、レンズ装置20及びレンズ装置21と接続されている。焦点距離操作部23は例えばデマンドやカメラである。
【0045】
本実施例のレンズ装置20は、それぞれのレンズ装置の光軸に垂直な成分を有して移動し、撮像面上に形成される被写体像を移動させ、レンズ装置の光軸方向を変化させることと同等の作用を得るためシフトレンズ205と、シフトレンズの位置を検出する、例えばホール素子からなる、シフトレンズ位置検出部206を含む。
【0046】
本実施例のレンズ装置20は、輻輳距離設定指令入力部201、単位時間内目標輻輳距離算出部202、シフトレンズ目標位置算出部203、シフトレンズ駆動制御部204、撮影条件算出手段である輻輳距離算出部221、輻輳距離設定変化状態判断部222、輻輳距離決定部223、輻輳距離出力部224を含む。
【0047】
輻輳距離設定指令入力部201は、外部からの輻輳距離設定値(撮影条件設定値)を受信し、単位時間内目標輻輳距離算出部202は、輻輳距離設定指令入力部201で受信した輻輳距離設定値に基づき輻輳距離の制御周期毎の目標位置となる単位時間内目標輻輳距離を算出する。単位時間内目標輻輳距離の算出方法は後述する。単位時間内目標値算出手段であるシフトレンズ目標位置算出部203は、単位時間内目標輻輳距離と現在のズームレンズ位置からシフトレンズの目標位置を算出する。シフトレンズ駆動目標位置の算出方法は後述する。シフトレンズ駆動制御部204は、シフトレンズ位置がシフトレンズ駆動目標位置と一致するように駆動制御を行う、例えば制御演算部とモータにより構成される。
【0048】
輻輳距離算出部221は、シフトレンズ位置及びズームレンズ位置から、輻輳距離を算出する221を含む。輻輳距離の算出方法については後述する。設定変化判断手段である輻輳距離設定変化状態判断部222は、輻輳距離設定値の変化の有無を判断する。輻輳距離設定値の変化の有無を判断する方法については後述する。出力情報決定手段である輻輳距離決定部223は外部に出力する輻輳距離情報を決定する。出力輻輳距離情報決定方法については後述する。撮影条件出力手段である輻輳距離出力部224は外部に、出力撮影条件情報である輻輳距離情報を出力する。
【0049】
次に輻輳距離について説明する。
図9は対物レンズL、対物レンズR、輻輳距離Cp、基線長a、光軸VL、光軸VR、輻輳点p、輻輳角θの関係を示した図である。ここで光軸VLはレンズ装置20の光軸であり、光軸VRはレンズ装置21の光軸である。基線長aは、撮像装置での光軸の間隔であり、具体的には対物レンズLの中心と対物レンズRの中心との距離である。輻輳点pは、光軸VL、VRが交わる点である。輻輳距離θは、輻輳点pで交わる光軸VL、VRの成す角度である。輻輳距離Cpは、左右の撮像装置の、対物レンズLと対物レンズRを結ぶ線から輻輳点pまでの距離である。
【0050】
図9が示すように、レンズ装置20及びレンズ装置21は、光軸VL、VRが相反する方向に移動して輻輳点pで交差するように、其々のシフトレンズ205を相反する方向に駆動制御する。
【0051】
輻輳距離Cp、基線長a、輻輳角θの関係は式(6)が示す関係となる。
Cp= (a / 2) / tan(θ/ 2) …(6)
【0052】
輻輳距離Cpで撮影された映像をスクリーンに投影し、レンズ装置20の映像を左目で、レンズ装置21の映像を右目で視認する事で立体映像を視聴する事が出来る。この場合、視聴者は、光軸VL、VRの交点として表される輻輳点までの距離である輻輳距離Cpが視聴者からスクリーンまでの距離より短い場合は、スクリーンより手前に被写体が存在するように感じ、輻輳距離Cpが視聴者からスクリーンまでの距離より長い場合は、スクリーンより奥に被写体が存在するように感じる。
【0053】
次にシフトレンズ駆動目標位置の算出方法について説明する。
シフトレンズ駆動目標位置Scは単位時間内目標輻輳距離Ctc及びズームレンズ位置Zpから算出する事が出来る。図10は輻輳距離位置Cp及びシフトレンズ駆動目標位置Sc及びズームレンズ位置Zpの関係を示している。ここで輻輳距離位置Cpと単位時間内目標輻輳距離Ctcは同じ単位であり、同等と考えて良い。シフトレンズ駆動目標位置Scの計算は、図10に示すような特性をテーブルデータ化しておき、シフトレンズ駆動目標位置Scを導き出す方法が一般的である。例えばズームレンズ位置ZpがZp1の値であり、単位時間内目標輻輳距離CtcがC1の値の時に、シフトレンズ駆動目標位置ScはS1の値となる。またズームレンズ位置ZpがZp1の値であり、単位時間内目標輻輳距離CtcがC2の値の時に、シフトレンズ駆動目標位置ScはS2の値となる。
ここでレンズ装置21は、光軸VLと光軸VRが平行となる位置を基準にレンズ装置20の光軸VRとは相反する方向に同角度量光軸VLが変化するように制御される。
【0054】
図10から分かるように、ズームレンズ位置Zpが望遠側に比べ、広角側では、輻輳距離の変化に対して、シフトレンズ位置Spの変化量は小さい。シフトレンズ位置Spの位置検出精度は、シフトレンズ駆動域全域に対して同等である為、ズームレンズ位置Zpが望遠側に比べ、広角側の輻輳距離Cp変化に対しての位置検出精度が低くなる。従って輻輳距離設定値が同じだとしても、ズームレンズ位置Zpが広角側の輻輳距離Cpの方が、望遠側の輻輳距離Cpに比べ、位置誤差量が大きくなる。そのため、広角側においてズームレンズ位置Zpに対して演算される輻輳距離Cpは、異なる値となる場合が生ずる。従って、輻輳距離Cpをそのまま表示することで、輻輳距離設定値を変更していないにも関わらず、ズーム位置を変化させると輻輳距離Cpが変化し、撮影者にレンズが誤動作していると、勘違いさせることに繋がる。
【0055】
次に、単位時間内目標輻輳距離の算出方法について説明する。
図11は輻輳距離設定値(撮影条件設定値)CcがCc1からCc2に変化した時の時間経過に対する単位時間内目標輻輳距離Ctcと輻輳距離Cpとの関係を示している。T0は輻輳距離設定値CcがCc1からCc2に変化した時の時間を示し、単位時間ΔTは制御周期の時間を示す。単位時間内目標輻輳距離の最大変動量CtcMaxは、単位時間ΔTの時間内に輻輳距離Cpが駆動出来る最大駆動量に対応する。単位時間内目標輻輳距離の最大変動量CtcMaxは、シフトレンズの単位時間ΔTあたりの最大駆動量ScMaxと図10に示すような特性を示すテーブルデータに基づいて算出することが出来る。例えばズームレンズ位置ZpがZp1の時に、シフトレンズ位置SpがS1の時に、最大駆動量ScMaxが|S2−S1|の時は、|C2−C1|が単位時間内目標輻輳距離の最大変動量CtcMaxとなる。単位時間内目標輻輳距離Ctcが輻輳距離設定値Cc2になるまで、単位時間ΔT毎に単位時間内目標輻輳距離の最大変動量CtcMax分変化した値が算出される。
【0056】
次に輻輳距離設定値の変化を検出する方法について説明する。
図12は、輻輳距離設定値が変化した事を検出する為のフローチャートである。
S301で処理を開始し、S302に進む。
S302で現在の単位時間内目標輻輳距離Ctc2を算出し、S303に進む。
S303では、直前に保持していた単位時間内目標輻輳距離Ctc1と現在の単位時間内目標輻輳距離Ctc2との差が、0より大きい所定の閾値以上であるかを判断する。閾値以上の時はS304に進む。閾値より小さい時はS306に進む。
S304では、現在の単位時間内目標輻輳距離Ctc2を次回の判断時のために直前に保存していた単位時間内目標輻輳距離Ctc1として保持し、S305に進む。
S305では、輻輳距離設定値に変化が有ったと判断し、S307に進む。
S306では、輻輳距離設定値に変化が無いと判断し、S307に進む。
S307で処理を終了する。
以上により、輻輳距離設定値の変化を検出する。
ここではS302の処理で、単位時間内目標輻輳距離Ctcを輻輳距離設定値の変化の判断の対象としていたが、輻輳距離設定値Ccを変化判断の対象としても良い。
【0057】
更にシフトレンズ駆動目標位置Sc及びズームレンズ位置Zpを変化判断の対象としても良い。この場合ズームレンズ位置Zpが変化していない状態でシフトレンズ駆動目標位置Scが変化している時は、焦点距離の設定によりシフトレンズが駆動されているのではなく、輻輳距離設定値の変化でシフトレンズが駆動されていると判断出来る。従って、シフトレンズ駆動目標位置Scの変化量が、0より大きい所定の閾値以上(第2の閾値以上)であり、且つズームレンズ位置Zpの変化量が、0より大きい所定の閾値以下(第3の閾値以下)の時に輻輳距離設定値に変化有りと判断しても良い。
【0058】
更に単位時間内目標焦点距離Atc又は焦点距離設定値Ac又はズームレンズ駆動目標位置Zc又はズームレンズ位置Zp又は焦点距離Apを変化判断の対象としても良い。
この場合、焦点距離の設定が行われている時は、輻輳距離設定値Ccが変化しなくても、輻輳距離Cpが変化してしまう。従って、焦点距離が設定されていると判断した時は、輻輳距離設定値の変化が無い時の同等の処理を行う事により、輻輳距離出力部224からレンズ装置20の外部の機器に出力される輻輳距離情報である輻輳距離Cpの不要なふらつきを防止する事が出来る。
【0059】
更に本実施例では、輻輳距離設定値Ccに応じて、ズームレンズ位置を駆動させていないが、輻輳距離設定値Ccに応じてズームレンズ位置を駆動する場合は、シフトレンズ駆動目標位置Sc及びズームレンズ駆動目標位置Zcの関係から輻輳距離設定値の変化を判断しても良い。この場合、シフトレンズ駆動目標位置Sc及びズームレンズ駆動目標位置Zcと図2の特性から導きだした輻輳距離の目標位置の変化量が、0より大きい所定の閾値以内の時に輻輳距離設定値に変化が無いと判断しても良い。
【0060】
次に出力輻輳距離情報の決定方法について説明する。
図13は、出力輻輳距離情報Cpoを決定する為のフローチャートである。
S401で処理を開始し、S402に進む。
S402で現在の輻輳距離を最新の輻輳距離Cp2として算出し、S403に進む。
S403では、輻輳距離設定値に変化があるかの判断を行い、変化ありと判断した場合は、S406に進む。変化無しと判断した場合はS404に進む。
S404では、以前の処理で輻輳距離設定値に変化有りとの判断から変化無しとの判断に切換った時間を変化無し開始時間とし、変化無し開始時間からの経過時間が一定時間Tlim2以上か否かを判断する。
ここで一定時間Tlim2は、単位時間内目標輻輳距離Ctcと輻輳距離Cpとの制御遅れを考慮し、単位時間ΔTとする。
S404で一定時間Tlim2経過と判断した場合は、S405に進む。一定時間Tlim2経過していないと判断した場合はS406に進む。
S405では、出力輻輳距離情報Cpoと最新の輻輳距離Cp2との差が予め定められた、0より大きい閾値ΔClim以上(第1の閾値以上)の時は、S406に進む。出力輻輳距離情報Cpoと最新の輻輳距離Cp2との差が予め定められた閾値ΔClim未満(第1の閾値未満)の時は、S408に進む。ここで前記閾値ΔClimは、焦点距離を広角端から望遠端に変化させた時に変化する輻輳距離Cpの変化量を予め測定し、その値より大きな値が設定される。
S406では、最新の輻輳距離Cp2を前の輻輳距離Cp1として保持し、S407に進む。S407では、最新の輻輳距離Cp2(第1の撮影条件情報)を出力輻輳距離情報Cpo(出力撮影条件情報)として決定し、S409に進む。S408では、前の輻輳距離Cp1(第2の撮影条件情報)を出力輻輳距離情報Cpoとして決定し、S409に進む。S409で、処理を終了する。
ここで、S408の処理で前の輻輳距離Cp1の代わりに輻輳距離目標位置Ctcを出力輻輳距離情報として決定しても良い。また、輻輳距離設定値Ccと輻輳距離Cpとの差から駆動時間を算出し、その時間を一定時間Tlim2として設定しても良い。更に前の輻輳距離Cp1の代わりに輻輳距離設定値Ccを出力輻輳距離情報Cpoとして決定しても良い。
【0061】
次に実施例2の処理について説明する。
輻輳距離操作部22から出力された輻輳距離設定値Ccは、輻輳距離設定指令入力部201で受信され、単位時間内目標輻輳距離算出部202に出力される。単位時間内目標輻輳距離算出部202は輻輳距離設定値Ccより単位時間内目標輻輳距離Ctcを算出し、シフトレンズ目標位置算出部203に出力する。シフトレンズ目標位置算出部203は単位時間内目標輻輳距離Ctcとズームレンズ位置Zpからシフトレンズ駆動目標位置Scを算出し、シフトレンズ駆動制御部204に出力する。シフトレンズ駆動制御部204は、シフトレンズ駆動目標位置Scを元に、シフトレンズ205を駆動し、シフトレンズ駆動目標位置Scとシフトレンズ位置Spが一致するように制御する。シフトレンズ位置検出部206は、シフトレンズ位置Spを検出し、輻輳距離算出部221に出力する。
【0062】
焦点距離操作部23から出力された焦点距離設定値Acは、焦点距離設定指令入力部111で受信され、単位時間内目標焦点距離算出部112に出力される。単位時間内目標焦点距離算出部112は焦点距離設定値Acより単位時間内目標焦点距離Atcを算出し、ズームレンズ目標位置算出部113に出力する。ズームレンズ目標位置算出部113は単位時間内目標焦点距離Atcからズームレンズ駆動目標位置Zcを算出し、ズームレンズ駆動制御部114に出力する。ズームレンズ駆動制御部114は、ズームレンズ駆動目標位置Zcを元に、ズームレンズ115を駆動し、ズームレンズ駆動目標位置Zcとズームレンズ位置Zpが一致するように制御する。ズームレンズ位置検出部116は、ズームレンズ位置Zpを検出し、輻輳距離算出部221に出力する。
【0063】
輻輳距離算出部221は、シフトレンズ位置Sp及びズームレンズ位置Zpから輻輳距離Cpを算出し、輻輳距離Cpを輻輳距離決定部223に出力する。輻輳距離設定変化状態判断部は、単位時間内目標輻輳距離Ctcから輻輳距離設定値に変化があるか否かの判断を行い、その結果を輻輳距離決定部223に出力する。輻輳距離決定部223は、輻輳距離Cp及び輻輳距離設定値に変化があるか否かの判断結果から、出力輻輳距離情報を決定し、出力輻輳距離を輻輳距離出力部224に出力する。輻輳距離出力部224は、出力輻輳距離情報を撮像装置13に出力する。撮像装置13は出力輻輳距離情報を外部表示装置14に出力する。
【0064】
以上により、輻輳距離設定値を変化させていないのにも関わらず、シフトレンズ位置及びズームレンズ位置の変化やシフトレンズ位置検出精度変化に起因して、出力される輻輳距離情報が変化することがない撮影情報出力装置を実現することが出来る。
ここで本実施例においては、光軸調整用のシフトレンズを用いて輻輳距離制御を行なっているが、シフトレンズの代わりに可変頂角プリズムを使用しても良い。あるいは、2つのレンズ装置それぞれを機械的にパン駆動し、2つのレンズ装置の光軸のなす角を直接制御しても同様の効果が得られる。
【0065】
上記の実施例においては、被写体距離操作部11,焦点距離操作部12、23、輻輳距離操作部22等の操作部は、カメラやデマンドに構成され、外部表示装置14は撮像装置13に接続され、その他の構成要素はレンズ装置10、20に構成されるものとして例示した。しかし、本発明は、これに限定されることはなく。図1,8に示したレンズ装置10,20に含まれる構成要素で、レンズや絞り等の光学要素、及び、それらの駆動制御部、位置検出部以外の構成要素は、レンズ装置以外に構成されてもよく、操作装置やカメラ内、或いは、独立した制御装置内に構成してもよい。また逆に、外部表示装置、被写体距離操作部11,焦点距離操作部12、23、輻輳距離操作部22等の操作部は、レンズ装置外に構成されるものとして記載したが、これに限定されることはなく、レンズ装置内に構成することによっても、本発明の同様の効果を享受することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 レンズ装置
11 被写体距離操作部
106 フォーカスレンズ位置検出部
116 ズームレンズ位置検出部
121 被写体距離算出部
122 被写体距離設定変化状態判断部
123 被写体距離決定部
22 輻輳距離操作部
206 シフトレンズ位置検出部
221 輻輳距離算出部
222 輻輳距離設定変化状態判断部
223 輻輳距離決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された撮影条件に応じて可動光学部材が駆動され、該撮影条件に影響を与える少なくとも1つの光学部材である撮影条件決定光学部材の位置が検出されるレンズ装置における該撮影条件の情報を出力する撮影情報出力装置であって、
撮影条件として撮影条件設定値を設定する撮影条件設定手段と、
該少なくとも1つの光学部材の位置に基づき撮影条件の情報を算出撮影条件として算出する撮影条件算出手段と、
該撮影条件設定値の変化の有無を判断する設定変化判断手段と、
該算出撮影条件、及び、該設定変化判断手段による該撮影条件設定値の変化の有無の判断に応じて、出力する撮影条件情報を決定する、出力情報決定手段と、
該撮影条件情報を出力する撮影条件出力手段と、
を有することを特徴とする撮影情報出力装置。
【請求項2】
前記設定変化判断手段は、撮影条件設定判断値に基づいて前記撮影条件設定値の変化の有無を判断し、
前記出力情報決定手段は、
該設定変化判断手段により該撮影条件設定値が変化したと判断されてから、第1の時間が経過するまでを設定更新状態と判断し、
該設定更新状態でない時を設定維持状態と判断し、該設定更新状態の時は、第1の撮影条件情報を前記撮影条件情報として決定し、該設定維持状態の時は第2の撮影条件情報を前記撮影条件情報として決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影情報出力装置。
【請求項3】
前記設定変化判断手段は、撮影条件設定判断値に基づいて前記撮影条件設定値の変化の有無を判断し、
前記出力情報決定手段は、
前記設定変化判断手段により前記撮影条件設定値が変化したと判断されてから、第1の時間が経過するまでを設定更新状態と判断し、該設定更新状態でない時を設定維持状態と判断し、
該設定更新状態においては、第1の撮影条件情報を前記撮影条件情報として決定し、該設定維持状態においては、該第1の撮影条件情報と第2の撮影条件情報との差が第1の閾値以上の場合には、該第1の撮影条件情報を前記撮影条件情報として決定し、該第1の閾値未満の場合には、該第2の撮影条件情報を前記撮影条件情報として決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影情報出力装置。
【請求項4】
前記第1の閾値は、前記撮影条件設定値が変更されていない時の前記第1の撮影条件情報の変化量より大きな値であることを特徴とする請求項3に記載の撮影情報出力装置。
【請求項5】
前記撮影条件設定判断値は、前記撮影条件設定値であり、
前記設定変化判断手段は、撮影条件設定判断値の変化量が所定の閾値以上の時に、該撮影条件設定値が変化したと判断する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項6】
前記撮影条件設定判断値は、前記可動光学部材の駆動に影響を与える、前記撮影条件とは異なる、撮影条件の設定値であり、
前記設定変化判断手段は、該撮影条件設定判断値の変化量が、所定の閾値以上の時には、該撮影条件設定値に変化はないと判断する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項7】
前記撮影条件設定判断値は、前記可動光学部材ではない撮影条件決定光学部材の位置であり、
前記設定変化判断手段は、該撮影条件設定判断値の変化量が、所定の閾値以上の時には、該撮影条件設定値に変化はないと判断する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項8】
前記撮影条件設定値から前記可動光学部材の駆動目標位置である可動光学部材目標位置を算出する手段を有し、
前記撮影条件設定判断値は、前記駆動目標位置、及び、該可動光学部材ではない撮影条件決定光学部材の位置であり、
前記設定変化判断手段は、該可動光学部材目標位置の変化量が第2の閾値以上、且つ、該撮影条件設定判断値の変化量が第3の閾値以下の時に、前記撮影条件設定値が変化したと判断する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項9】
前記撮影条件設定値から2つ以上の可動光学部材の目標位置である可動光学部材目標位置をそれぞれの可動光学部材に対して算出する手段を有し、
前記撮影条件設定判断値は、前記撮影条件決定光学部材それぞれの駆動目標位置であり、
前記設定変化判断手段は、前記ぞれぞれの撮影条件決定光学部材の駆動目標位置の関係に応じて、前記撮影条件設定値の変化の有無を判断する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項10】
前記撮影条件設定値と前記撮影条件算出手段が算出した撮影条件情報を元に、前記撮影条件に対する単位時間内の目標となる単位時間内目標値を算出する単位時間内目標値算出手段を有し、
該単位時間内目標値に応じて、前記1つ以上の可動光学部材の駆動を制御する手段を有し、
前記撮影条件設定判断値は、前記単位時間内目標値である、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項11】
前記第1の撮影条件情報は、前記撮影条件算出手段が算出した最新の撮影条件情報であり、
第2の撮影条件情報は、設定更新状態から設定維持状態に変化する直前に前記撮影条件算出手段が算出した撮影条件情報である、
ことを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項12】
前記第1の撮影条件情報は、前記撮影条件算出手段が算出した最新の撮影条件情報であり、
第2の撮影条件情報は、前記撮影条件設定値である、
ことを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項13】
前記第1の撮影条件情報は、前記撮影条件算出手段が算出した最新の撮影条件情報であり、
第2の撮影条件情報は、前記単位時間内目標値である、
ことを特徴とする請求項10に記載の撮影情報出力装置。
【請求項14】
前記撮影条件は被写体距離であり、
前記可動光学部材はフォーカスレンズであり、
前記撮影条件決定光学部材は、フォーカスレンズ及びズームレンズである、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項15】
前記撮影条件は輻輳距離又は輻輳角であり、
前記可動光学部材は光軸調整用のシフトレンズ又は可変頂角プリズムであり、
前記撮影条件決定光学部材は、シフトレンズ又は可変頂角プリズム、及び、ズームレンズである、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項16】
前記撮影条件は被写界深度であり、
前記可動光学部材は絞りであり、
前記撮影条件決定光学部材は、絞り、フォーカスレンズ及びズームレンズである、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の撮影情報出力装置を含むレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−80065(P2013−80065A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219535(P2011−219535)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】