説明

撮影支援システム、方法及びプログラム、並びに携帯端末

【課題】撮影された画像の証拠としての信頼性を高める。
【解決手段】携帯端末は、クライアント端末からの検査情報と、電子黒板13の位置情報とを取得する。携帯端末で撮影が指示された場合には、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているかの適否が判定され、否の場合には撮影が禁止される。適の場合には、続いて携帯端末の位置情報及びカメラユニットの姿勢情報が取得され、それらに基づいて撮影の範囲内に電子黒板が存在するかの有無が判定される。有の場合には撮影が実行されるが、無の場合には撮影が禁止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設・土木現場における施工検査の記録を残すための撮影を支援する撮影支援システム、方法及びプログラム、並びに携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設・土木現場において、施工検査の記録を残すための撮影が行われている。撮影は、施工検査に関する情報が書かれた黒板を写し込むように行われる。国土交通省が発注する公共事業の現場に関しては、撮影した画像を証拠として提出することが義務付けられている。証拠としての信頼性を保つため、提出する画像には、デジタル加工を施すことが認められておらず、後から修正することができない。このため、撮影の都度、黒板に書かれた情報に間違いがないかを確認しながら正確に撮影を行うことが要求される。
【0003】
しかし、黒板に書かれる情報は、工事名、工事番号、実測寸法、設計寸法、年月日、立会者、及び施工者等と、多岐にわたるから、これらの情報に間違いのない状態で撮影が行われるとは限らない。
【0004】
また、工事現場等では、被写体となる対象が相互に似ていることが多いから、異なる対象を被写体として撮影が行われる可能性がある。対象が異なる場合であっても、そのことを画像から判断することは難しい。このため、正しい対象が撮影されているかは、作業員の注意力や倫理観に委ねられているのが現状である。
【0005】
そこで、正確に撮影が行われるように、多くの支援システムが開発されている。例えば、特許文献1の支援システムは、施工検査に関する情報を予め入力する端末と、この端末から受信した情報を表示する電子黒板とを備えている。この支援システムによれば、施工検査に関する情報の入力作業を事前に丁寧に正しく行うことができ、電子黒板に表示される情報に間違いがある可能性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−065668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の支援システムで撮影された画像であっても、正しい対象が撮影されているか否かの判断はできない。このため、従来と同様、正しい対象が撮影されているかは、従業員の注意力や倫理観に委ねられたままであり、撮影された画像の証拠として信頼性は低い。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、撮影された画像の証拠としての信頼性を高めることができる撮影支援システム、方法及びプログラム、並びに携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撮影支援システムでは、各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段と、電子黒板自体の位置情報を取得する第1位置取得手段と、検査情報を表示するディスプレイとを備えた電子黒板と、カメラと、回線を通じて検査情報及び電子黒板の位置情報を受信する通信ユニットと、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する第1判定手段と、第1判定手段で電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止手段を備えた携帯端末とを備えたものである。
【0010】
また、携帯端末は、携帯端末自体の位置情報を取得する第2位置取得手段と、カメラの姿勢情報を取得するカメラ姿勢センサと、電子黒板の位置情報、携帯端末自体の位置情報、及びカメラの姿勢情報に基づいて、カメラによる撮影の範囲内に電子黒板が存在しているか否かを判定する第2判定手段とを備え、撮影禁止手段が、第2判定手段でカメラによる撮影の範囲内に電子黒板が存在していないと判定された場合にもカメラによる撮影を禁止するのが好ましい。
【0011】
また、電子黒板が、ディスプレイの姿勢情報を取得するディスプレイ姿勢センサを備え、通信ユニットが、回線を通じて、さらにディスプレイの姿勢情報を受信し、携帯端末が、携帯端末自体の位置情報を取得する第2位置取得手段と、カメラの姿勢情報を取得するカメラ姿勢センサと、電子黒板の位置情報、携帯端末自体の位置情報、カメラの姿勢情報、及びディスプレイの姿勢情報に基づいて、カメラとディスプレイとが略正対した状態にあるか否かを判定する第2判定手段とを備え、撮影禁止手段が、第2判定手段によってカメラとディスプレイとが略正対した状態でないと判定された場合にもカメラによる撮影を禁止するようにすることが好ましい。
【0012】
また、携帯端末が、カメラによる撮影で得られる画像データを、任意の情報に紐付ける紐付け情報を入力するユーザインタフェースを備えることも好ましい。
【0013】
また、携帯端末が、電子黒板の位置情報に対応する検査ポイントの検査情報にカメラによる撮影で得られた画像データを紐付ける紐付け手段を備えることが好ましい。
【0014】
また、各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を入力する情報入力端末を備え、検査情報取得手段が、情報入力端末から回線を通じて検査情報を受信するようにすることも好ましい。
【0015】
さらに、ディスプレイを、第1位置取得手段によって取得した位置情報またはその位置情報に対応する検査ポイントの検査情報を表示するようにするのもよい。
【0016】
本発明の携帯端末では、各検査ポイントの位置情報を含む検査情報、及び検査情報をディスプレイに表示する電子黒板からその電子黒板自体の位置情報を回線を通じて受信する通信ユニットと、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する判定手段と、判定手段で電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止手段とを備えたものである。
【0017】
本発明の撮影支援方法では、各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を電子黒板が取得する情報取得ステップと、電子黒板がそれ自体の位置情報を取得する位置取得ステップと、検査情報を電子黒板に表示するステップと、回線を通じて検査情報及び電子黒板の位置情報を携帯端末が受信する受信ステップと、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する判定ステップと、判定ステップで電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止ステップとを有するものである。
【0018】
本発明の撮影支援プログラムでは、各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を取得する情報取得ステップ、電子黒板自体の位置情報を取得する位置取得ステップ、及び検査情報を表示するステップを電子黒板に実行させ、回線を通じて検査情報及び電子黒板の位置情報を受信する受信ステップ、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する判定ステップ、及び判定ステップで電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止ステップを携帯端末に実行させるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カメラ付きの携帯端末において、検査情報に対する電子黒板の位置情報の適否を判定し、その判定結果が否の場合にカメラによる撮影を禁止するから、電子黒板を、正しい対象とともに撮影できる位置に配置しなければ撮影を行うことができないため、撮影された画像の証拠としての信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】撮影支援システムの構成を示す概略図である。
【図2】クライアント端末の構成を示すブロック図である。
【図3】電子黒板の構成を示すブロック図である。
【図4】携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図5】携帯端末のCPUの機能を示す機能ブロックである。
【図6】サーバの構成を示すブロック図である。
【図7】撮影支援システムの処理手順を説明するフローチャートである。
【図8】電子コンパスを備える電子黒板の構成を示すブロック図である。
【図9】電子黒板と携帯端末とが正対しているか否かを判断する例の処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す撮影支援システム11は、建設・土木現場における施工検査の記録を残すための撮影を支援するシステムである。撮影支援システム11は、検査情報を入力するクライアント端末12と、このクライアント端末12で入力された検査情報を表示する電子黒板13と、この電子黒板13とともに検査ポイントを撮影するカメラ付き携帯端末(以下、単に携帯端末という)14と、携帯端末14による撮影で得られた画像データを管理するサーバ15とを備えている。
【0022】
クライアント端末12は、検査情報を入力する情報入力端末として機能する。また、このクライアント端末12は、検査の準備段階において検査マップやシートを作成したり、検査後の段階において検査結果をまとめた検査結果レポートを作成する際に用いられる。なお、この例では、クライアント端末12を操作して検査情報を入力しているが、電子黒板13や携帯端末14を操作して検査情報を入力するように構成してもよい。この場合には、電子黒板13と携帯端末14のうちの検査情報を入力する一方から他方の機器に必要な検査情報が送られるようにすればよい。
【0023】
図2に示すように、クライアント端末12は、操作部16と、ディスプレイ17と、CPU18と、RAM19と、通信インタフェース(以下、通信I/Fと略す)20と、ハードディスクドライブ(以下、HDDと略す)21と、データバス22とを備えている。
【0024】
操作部16は、キーボード23及びマウス24(図1参照)を備えており、このキーボード23及びマウス24を操作することにより、検査マップの作成や検査情報の入力などを行うことができる。入力される検査情報としては、工事物件名、施主、施工者などの工事に共通のものや、各検査ポイントについての検査対象の種類(柱、梁など)、検査内容(配筋検査など)、設計情報(設計寸法や配筋数、配筋の種類)、検査対象の位置情報などがある。検査情報は、それ自体をクライアント端末12から直接に入力する必要はなく、例えば指定された検査ポイントに応じた設計情報や位置情報をサーバ15から取得するように構成してもよい。
【0025】
ディスプレイ17には、検査マップや検査結果レポートを作成するための各種ウィンドウが表示される。操作者は、例えば、キーボード23及びマウス24を操作して、このウィンドウに表示される検査マップ上の検査すべき位置を指定することによって、検査ポイントの位置を入力することができる。
【0026】
CPU18は、クライアント端末12の各部を制御する。RAM19は、CPU18が処理を実行する際の作業用メモリとして用いられる。通信I/F20は、例えばTCP/IPなどのインターネットに適合した通信プロトコルに基づいて、インターネット(図示省略)などの回線を経由したデータの送受信を行う。これにより、電子黒板13は、携帯端末14とサーバ15とのデータの遣り取りが可能となる。なお、機器間で行うデータの送受信は、例えば機器間で直接に赤外線の投光・受光を行う赤外線通信のように機器間に直接の回線が形成されるような通信であってもよい。
【0027】
また、通信I/F20は、デジタルカメラ及び記録媒体(いずれも図示省略)等の外部機器と、直接データの遣り取りをする。データバス22は、クライアント端末12の各部を接続し、各部の相互間でのデータの授受を可能にしている。
【0028】
電子黒板13は、検査ポイントを撮影する際に検査情報を表示する。図3に示すように、電子黒板13は、操作部25と、ディスプレイ26と、CPU27と、RAM28と、通信ユニット29と、GPSユニット30と、データバス31とを備えている。
【0029】
操作部25は、電子黒板13の電源をオン・オフする電源スイッチ(図示省略)等を備えている。また、操作部25を操作することにより、検査者名、立会者や実測寸法などを入力することができる。ディスプレイ26は、工事物件名、施主、施工者などの等の各検査ポイントに共通の検査情報と、検査対象の種類、検査内容、設計情報、検査対象の位置情報などの検査ポイントごとの検査情報を表示する。また、ディスプレイ26には、検査者名、立会者や実測寸法などの操作部25で入力した情報や、現在の年月日を検査日として表示することができる。
【0030】
検査ポイントごとの検査情報を表示する際には、GPSユニット30によって測位される電子黒板自体の位置情報と検査情報に含まれる各検査ポイントの位置情報とに基づいて、電子黒板13が位置している検査ポイントを特定し、その特定した検査ポイントの検査情報を表示する。なお、検査ポイントを特定するには、例えば検査ポイントに対して電子黒板13が配置されていると考えられる程度の距離範囲内で、電子黒板13との距離が最も短い1つの検査ポイントを選択することにより行うことができる。
【0031】
また、検査ポイントを手動で選択し、その選択した検査ポイントの検査情報を表示させるように構成することもできるが、電子黒板13を写し込んで撮影される画像の信頼性を担保する上では、自動的に検査ポイントを特定して表示させるのがよい。
【0032】
検査情報は、クライアント端末12から送信され通信ユニット29で受信される。もちろん、検査情報をサーバ15を経由して受信するように構成してもよく、携帯端末14を経由して受信するように構成してもよい。ディスプレイ26に表示される検査情報は、操作部25等が操作された場合であっても変更することはできないようにされており、電子黒板13の側で検査情報を改ざんすることはできないようにしてある。これにより、検査情報の信頼性を担保している。なお、ディスプレイ26に、撮影対象の位置を担保する情報として電子黒板自体の位置情報を表示することも好ましい。
【0033】
なお、ディスプレイ26に表示する検査情報などは、上記のものに限られず、適宜に設定することができる。また、それに応じた検査情報をクライアント端末12に入力すれば
よい。
【0034】
CPU27は、電子黒板13の各部を統括的に制御する。RAM28は、CPU27が処理を実行する際の作業用メモリとして用いられる。通信ユニット29は、回線を経由して、クライアント端末12及び携帯端末14との間でデータの送受信を行う。
【0035】
第1位置取得手段としてのGPSユニット30は、GPS衛星からの信号に基づいて、電子黒板13の現在地を測位してその位置情報を取得する。データバス31は、電子黒板13の各部を接続し、CPU27を機能させる。なお、GPS以外の手法によって、電子黒板13の現在地を取得してもよい。
【0036】
携帯端末14は、図4に示すように、操作パネル32と、ディスプレイ33と、CPU34と、RAM35と、ROM36と、通信ユニット37と、カメラユニット38と、画像処理回路39と、LCDドライバ40と、圧縮伸長処理回路41と、GPSユニット42と、電子コンパス43と、データバス44とを備えている。
【0037】
操作パネル32は、これを操作して画像を撮影したり、撮影した画像をクライアント端末12に送信したりする。ディスプレイ33は、撮影の際にスルー画を表示したり、各種メニューを表示したりする。CPU34は、携帯端末14の各部を統括的に制御する。RAM35は、CPU34が処理を実行する際の作業用メモリとして用いられる。ROM36には、撮影支援プログラム45が格納されている。撮影支援プログラム45がRAM35から読み出されて実行されることにより、携帯端末14の撮影支援システムの各種機能が実現される。
【0038】
通信ユニット37は、携帯端末14を携帯電話として機能させるための通話用の通信機能の他、回線を経由して通信を行うことにより、クライアント端末12及び電子黒板13との間でデータの送受信を行う。通信ユニット37は、クライアント端末12から、検査ポイント毎の検査情報を受信するとともに、電子黒板13から、電子黒板13の位置情報を受信する。なお、検査情報をサーバ15を経由して受信するように構成してもよく、電子黒板13を経由して受信するように構成してもよい。
【0039】
カメラユニット38は、撮影レンズと、この撮影レンズを通して被写体を撮像するイメージセンサと、このイメージセンサから出力されるアナログの撮像信号に各種処理を施してデジタルの画像データに変換する撮像信号処理回路などからなる。(いずれも図示省略)。
【0040】
カメラユニット38から出力される画像データは、画像処理回路39に送られる。画像処理回路39は、入力される画像データに対して階調変換、ホワイトバランス(WB)補正、γ補正などの各種画像処理と、YC変換処理とを施す。YC変換処理により変換された輝度信号Yと色差信号Cr、Cbの画像データは、LCDドライバ40に入力される。LCDドライバ40は、順次に入力される画像データに基づいて、ディスプレイ33を駆動する。これにより、ディスプレイ33にスルー画像を表示する。
【0041】
操作パネル32の操作により撮影が指示された時に、静止画の撮影が行われる。圧縮伸長処理回路41は、この静止画の撮影の際に、画像処理回路39によりYC変換処理された画像データを所定の圧縮形式、例えばJPEG形式で圧縮処理する。圧縮処理が施された画像データは、保存先の設定に応じて、携帯端末14の内部メモリや装着されたメモリカードへ記憶される(いずれも図示省略)。撮影支援プログラム45が起動されているときには、画像データは、メモリカードなどに保存された後に、CPU34によって対応する検査ポイントに紐付けられてから、通信ユニット37を介してはクライアント端末12に送られる。
【0042】
第2位置取得手段としてのGPSユニット42は、携帯端末14の現在地を測位してその位置情報を取得する。電子コンパス43は、カメラユニット38の姿勢を測りその姿勢情報を取得するものであり、カメラ姿勢センサとして機能する。データバス44は、携帯端末14の各部を接続し、各部の相互間でのデータの授受を可能にしている。
【0043】
撮影支援プログラム45によって、図5に示すように、CPU34は、第1判定手段46と、第2判定手段47と、撮影禁止手段48として機能する。第1判定手段46は、電子黒板13の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する。具体的に、第1判定手段46は、電子黒板13の位置が、検査情報に含まれるいずれかの検査ポイントの位置から所定の範囲内であれば適合と判定し、所定の範囲外であれば否と判定する。
【0044】
第2判定手段47は、電子黒板13の位置情報、携帯端末14の位置情報、及びカメラユニット38の姿勢情報に基づいて、カメラユニット38による撮影の範囲内に電子黒板13が存在する(有)か否(無)かを判定する。第1判定手段46、第2判定手段47による判定は、いずれも平面的な範囲ではなく、3次元空間としての範囲、すなわち高さ(高度)や仰角などまでを考慮して判定することが好ましい。
【0045】
撮影禁止手段48は、第1判定手段46で否と判定された場合、第2判定手段47で無と判定された場合のいずれの場合にも、カメラユニット38による撮影を禁止する。
【0046】
サーバ15は、撮影支援プログラム45を携帯端末14に配信したり、検査情報を管理したりする。図6に示すように、サーバ15は、CPU49と、RAM50と、通信I/F51と、HDD52と、データバス53とを備えている。
【0047】
CPU49は、サーバ15の各部を統括的に制御する。RAM50は、CPU49が処理を実行する際の作業用メモリとして用いられる。通信I/F51は、クライアント端末12や携帯端末14とのデータの送受信を行う。HDD52は、検査情報や検査結果を格納する。データバス52は、サーバ15の各部を接続し、各部を接続し、各部の相互間でのデータの授受を可能にしている。
【0048】
次に、撮影支援システム11の処理手順について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。施工検査の準備段階において、作業員は、事務所等に設置されたクライアント端末12を操作し、検査ポイントの位置を指定したり、検査ポイント毎に検査内容を入力したりする。この時、クライアント端末12は、必要に応じて、サーバ15からデータを取得する(ステップ(以下、Sと略す)11)。例えば、指定された検査ポイントに対する検査対象の種類や設計情報、位置情報をサーバ15から取得して、検査情報の入力が行われる。
【0049】
現場では、電子黒板13の電源を投入するとともに、携帯端末14の撮影支援プログラム45を起動する。これにより、CPU34が第1判定手段46、第2判定手段47、撮影禁止手段48として機能するとともに、カメラユニット38で撮像されるスルー画がディスプレイ33に表示されるようになる(S12)。また、撮影支援プログラム45の起動後には、クライアント端末12からの検査情報を携帯端末14が受信し、これがRAM35に記憶される(S13)。
【0050】
検査情報の受信後、撮影指示待ちの状態になる(S14)。検査員が操作パネル32を操作して撮影を指示すると(S14のYES)、電子黒板13からその位置情報が取得される(S15)。続いて、RAM35に記憶している各検査ポイントの位置情報と、取得した電子黒板13の位置情報とを用いて、電子黒板13の位置情報が検査情報に適合しているかの適否が判定される(S16)。
【0051】
この判定で適とされた場合(S16でYES)には、続いて携帯端末14は、GPSユニット42から携帯端末14自体の位置情報を取得するとともに、電子コンパス43からカメラユニット38の姿勢情報を取得する(S17)。携帯端末14の位置情報及びカメラユニット38の姿勢情報に基づいてカメラユニット38による撮影の範囲が特定され、その特定された撮影範囲と電子黒板13の位置情報とから、その撮影範囲内に電子黒板13が存在するかの有無が判定される(S18)。
【0052】
そして、上記判定で有とされると(S18でYES)、カメラユニット38が駆動されて静止画の撮影が行われる(S19)。電子黒板13では、GPSユニット30で測位されている電子黒板自体の位置情報と検査情報に含まれる各検査ポイントの位置情報とに基づいて、電子黒板13が位置している検査ポイントが特定され、その特定した検査ポイントの検査情報を表示するので、検査ポイントの検査対象とともに、その検査ポイントに固有の検査情報が表示されている電子黒板13が撮影される。
【0053】
上記撮影で得られた画像データは、電子黒板13の位置情報が検査情報に適合しているかの適否を判定した際に、電子黒板13が所定の範囲内とされた検査ポイントに対して自動的に紐付けられてから(S20)、クライアント端末12に送信される(S21)。そして、クライアント端末12、あるいはこのクライアント端末12から画像データの転送を受けたサーバ15によって、画像データが検査情報とともに管理される。
【0054】
一方、電子黒板13の位置情報が検査情報に適合しているかの適否の判定で、否と判定された場合(S16でNO)、及びカメラユニット38による撮影の範囲内に電子黒板13が存在するかの有無の判定で無と判定された場合(S18でNO)には、いずれもカメラユニット38による撮影が禁止される(S22)。
【0055】
撮影が実行されてから、また撮影が禁止されてからは、撮影支援プログラムの終了指示がされたか否かが判定される(S23)。終了指示がなければ(S23でNO)、撮影指示待ちの状態になり(S14)、終了指示があれば(S23でYES)撮影支援プログラムが終了される。
【0056】
以上説明したように、この撮影支援システム11では、電子黒板13が検査ポイントの近くに配置されていない場合に、携帯端末14による撮影が禁止されるから、間違った検査ポイントや偽った検査ポイントで撮影を行うことができない。このため、正しい検査対象が撮影されているという信頼性が高い。
【0057】
また、携帯端末14による撮影の範囲内に電子黒板13が存在しない場合に、携帯端末14による撮影が禁止されるから、用いなければならない電子黒板13以外の黒板を用いて撮影を行うことができない。このため、作業員による別の黒板を用いた不正が防止される。
【0058】
上記実施形態では、撮影した画像データを自動的に紐付けているが、携帯端末の操作パネルの操作によって箇所に紐付けてもよい。また、画像データを、図面や工事スケジュール等の任意の情報に紐付けるようにしてもよい。紐付けた画像データは、携帯端末、クライアント端末、サーバなどで紐付けられた情報とともに表示するように構成することで、画像の整理を容易にすることができる。
【0059】
図8、図9は、携帯端末のカメラと電子黒板のディスプレイとが略正対した状態であるか否かを判定し、略正対した状態ではないと判定したときにカメラによる撮影を禁止する例を示すものである。なお、以下に説明する他は、上記実施形態と同様であり、実質的に同じ部材には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、電子黒板13は、電子コンパス61を内蔵している。この電子コンパス61は、ディスプレイ26の姿勢、すなわちディスプレイ26がいずれの方向に向けて表示を行っているかを測りその姿勢情報を取得する。すなわち、電子コンパス61は、ディスプレイ姿勢センサとして機能する。ディスプレイ26の姿勢情報は、電子黒板13の位置情報とともに、携帯端末14に送られて、通信ユニット37により受信される。
【0061】
第2判定手段47は、携帯端末14の位置情報とカメラユニット38の姿勢情報、電子黒板13から取得した電子黒板13の位置情報とディスプレイ26の姿勢情報に基づいて、カメラユニット38とディスプレイ26とが略正対した状態にあるか否かを判定する。略正対した状態である場合には、撮影を許容し、略正対した状態でない場合には、撮影を禁止する。
【0062】
上記の第2判定手段47の判定は、ディスプレイ26に表示されている内容を正しく読めるようにカメラユニット38によって撮影することができるか否かの判定である。したがって、各情報に基づいて求められるカメラユニット38とディスプレイ26の相互の位置関係及び姿勢が、上記のように撮影することができる状態のときに、略正対した状態と判定する。
【0063】
より具体的には、この例では、図9に示すように、第2判定手段47は、携帯端末14の位置情報及びカメラユニット38の姿勢情報に基づいて撮影範囲内に電子黒板13が存在するかの有無を判定する(S18)。そして、この判定が有の場合に(S18でYES)、さらにディスプレイ26の姿勢情報を取得し、その姿勢情報と、先に取得したカメラユニット38の姿勢情報とに基づいて、ディスプレイ26がカメラユニット38に向いているか否かを判定する(S31)。
【0064】
第2判定手段47でディスプレイ26がカメラユニット38に向いていると判定(S31でYES)された場合には、撮影が実行されるが、撮影範囲内に電子黒板13が存在しないと判定された場合(S18でNO)、及び撮影範囲内に電子黒板13が存在する(S18でYES)が、ディスプレイ26がカメラユニット38に向いていないと判定された場合(S31でNO)には、撮影が禁止される。
【0065】
これにより、カメラユニット38とディスプレイ26とが略正対した状態の場合に撮影を行うことができ、撮影された画像はディスプレイ26に表示されている内容を正しく読むことができるものとなる。
【0066】
なお、上記実施形態では、携帯端末14による撮影の許容・禁止の判定を、第1判定手段と第2判定手段とで二段階で行っているが、これに限定されず、一段階で判定を行うだけでもよい。例えば、撮影範囲に電子黒板が存在するか否かの判定を行わないようにしてもよい。また、撮影が禁止される場合に、操作者に撮影が禁止されている理由を表示するなどの通知を行ってもよい。
【0067】
上記各実施形態では、電子黒板13,携帯端末14に必要な撮影支援プログラムを予め格納しているが、例えば携帯端末14には、検査を開始するのに先立って、サーバ15が携帯端末14にそれが必要とする撮影支援プログラムを配信するように構成することも好ましい態様である。同様に、サーバ15が電子黒板13にそれが必要とする撮影支援プログラムを配信するように構成するようにしてもよい。さらに、サーバ15が電子黒板13,携帯端末14のいずれか一方あるいは両方に対して検査情報を配信する構成とすることも好ましい態様である。
【符号の説明】
【0068】
11 撮影支援システム
12 クライアント端末
13 電子黒板
14 携帯端末
26 ディスプレイ
29,37 通信ユニット
30,42 GPSユニット
38 カメラユニット
43,61 電子コンパス
46 第1判定手段
47 第2判定手段
48 撮影禁止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段と、電子黒板自体の位置情報を取得する第1位置取得手段と、検査情報を表示するディスプレイとを備えた電子黒板と、
カメラと、回線を通じて検査情報及び電子黒板の位置情報を受信する通信ユニットと、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する第1判定手段と、第1判定手段で電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止手段を備えた携帯端末とを備えたことを特徴とする撮影支援システム。
【請求項2】
前記携帯端末は、携帯端末自体の位置情報を取得する第2位置取得手段と、カメラの姿勢情報を取得するカメラ姿勢センサと、電子黒板の位置情報、携帯端末自体の位置情報、及びカメラの姿勢情報に基づいて、カメラによる撮影の範囲内に電子黒板が存在しているか否かを判定する第2判定手段とを備え、
前記撮影禁止手段は、第2判定手段でカメラによる撮影の範囲内に電子黒板が存在していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止することを特徴とする請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項3】
前記電子黒板は、ディスプレイの姿勢情報を取得するディスプレイ姿勢センサを備え、
前記通信ユニットは、回線を通じて、さらにディスプレイの姿勢情報を受信し、
前記携帯端末は、携帯端末自体の位置情報を取得する第2位置取得手段と、カメラの姿勢情報を取得するカメラ姿勢センサと、電子黒板の位置情報、携帯端末自体の位置情報、カメラの姿勢情報、及びディスプレイの姿勢情報に基づいて、カメラとディスプレイとが略正対した状態にあるか否かを判定する第2判定手段とを備え、
前記撮影禁止手段は、第2判定手段によってカメラとディスプレイとが略正対した状態でないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止することを特徴とする請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項4】
前記携帯端末は、カメラによる撮影で得られる画像データを、任意の情報に紐付ける紐付け情報を入力するユーザインタフェースを備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮影支援システム。
【請求項5】
前記携帯端末は、電子黒板の位置情報に対応する検査ポイントの検査情報にカメラによる撮影で得られた画像データを紐付ける紐付け手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮影支援システム。
【請求項6】
各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を入力する情報入力端末を備え、
前記検査情報取得手段は、情報入力端末から回線を通じて検査情報を受信することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の撮影支援システム。
【請求項7】
前記ディスプレイは、第1位置取得手段によって取得した位置情報またはその位置情報に対応する検査ポイントの検査情報を表示することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の撮影支援システム。
【請求項8】
各検査ポイントの位置情報を含む検査情報、及び検査情報をディスプレイに表示する電子黒板からその電子黒板自体の位置情報を回線を通じて受信する通信ユニットと、
電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止手段とを備えたことを特徴とする携帯端末。
【請求項9】
電子黒板の表示内容とともに検査ポイントをカメラ付の携帯端末で撮影するための撮影支援方法において、
各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を電子黒板が取得する情報取得ステップと、
電子黒板がそれ自体の位置情報を取得する位置取得ステップと、
検査情報を電子黒板に表示するステップと、
回線を通じて検査情報及び電子黒板の位置情報を携帯端末が受信する受信ステップと、
電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する判定ステップと、
判定ステップで電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止ステップとを有することを特徴とする撮影支援方法。
【請求項10】
電子黒板の表示内容とともに検査ポイントをカメラ付の携帯端末で撮影するための撮影支援プログラムにおいて、
各検査ポイントの位置情報を含む検査情報を取得する情報取得ステップ、電子黒板自体の位置情報を取得する位置取得ステップ、及び検査情報を表示するステップを電子黒板に実行させ、
回線を通じて検査情報及び電子黒板の位置情報を受信する受信ステップ、電子黒板の位置情報が検査情報に適合しているか否かを判定する判定ステップ、及び判定ステップで電子黒板の位置情報が検査情報に適合していないと判定された場合にカメラによる撮影を禁止する撮影禁止ステップを携帯端末に実行させることを特徴とする撮影支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−89921(P2012−89921A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232607(P2010−232607)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】