説明

撮影用照明装置、カメラ及び閃光装置

【課題】撮影時においてオーバラン発光により生じる露光オーバを防止する。
【解決手段】本発明の撮影用照明装置(1)は、発光部(3)と、前記発光部(3)が発光した光の反射光を検出する検出部(4)と、前記発光部(3)の発光開始後に前記検出部(4)が検出した前記反射光の総受光量(C)を、閾値(Vth)と比較する比較部と、を備え、前記総受光量(C)が前記閾値(Vth)以上となったときに、前記発光部(3)に発光停止信号を出力する撮影用照明装置(1)であって、前記閾値(Vth)が、前記発光開始後の経過時間に応じて変更されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影用照明装置、カメラ及び閃光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮影用照明装置において発光部は、発光停止信号が出力されても、直ちに発光を停止することができず、減衰しながら発光を継続し、その後、完全に発光が停止する。この、発光停止信号出力後の発光であるオーバラン発光は、調光制御等において制御誤差を生じさせる。特に、発光開始から短い時間で必要な受光量が確保されるような場合、発光開始から発光停止信号が出力されるまでの発光量に対する、オーバラン発光量の割合が大きくなり、撮影において検出部での受光量が必要量に達してから発光を停止したのでは露光オーバになる。このため、いわゆるTTL調光方式において、撮影に必要な発光量に基づいて発光停止後のオーバラン発光量を予測し、そのオーバラン発光量に応じて発光停止タイミングを早める補正を行う技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−222047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来技術は、TTL調光方式において、本発光の直前にモニタ発光と呼ばれる微少発光を行い、この発光による被写体からの反射光を測定することで本発光の必要発光量を算出し、この必要発光量に基づいて発光停止後のオーバラン光量を予測する技術である。
【0004】
本発明の課題は、モニタ発光を伴わないで閃光撮影を行う場合にも、撮影時においてオーバラン発光により生じる露光オーバを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、発光部(3)と、前記発光部(3)が発光した光の反射光を検出する検出部(4)と、前記発光部(3)の発光開始後に前記検出部(4)が検出した前記反射光の総受光量(C)を、閾値(Vth)と比較する比較部と、を備え、前記総受光量(C)が前記閾値(Vth)以上となったときに、前記発光部(3)に発光停止信号を出力する撮影用照明装置(1)であって、前記閾値(Vth)が、前記発光開始後の経過時間に応じて変更されることを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の撮影用照明装置(1)であって、前記閾値(Vth)が、撮影における適切な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量(A)に、補正係数(α)を乗じたものであることを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の撮影用照明装置(1)であって、任意の前記経過時間での前記補正係数(α)は、該経過時間において前記発光部(3)に対して前記発光停止信号を出力した場合における、該経過時間後に検出される反射光の総受光量(C)であるオーバラン総受光量(B)を加味して変更される値であることを特徴する撮影用照明装置(1)である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の撮影用照明装置(1)であって、前記補正係数(α)をα(t)、前記必要総受光量(A)をA、経過時間tで前記発光部(3)に前記発光停止信号を出力した場合における前記オーバラン総受光量(B)をB(t)としたときに、
α=1−B(t)/A
の関係を満たすことを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮影用照明装置(1)であって、前記検出部(4)が、前記反射光を該反射光の大きさに対応する電流値を有する電流として検出し、前記電流がキャパシタ(5)に流れて電荷として蓄えられ、前記閾値(Vth)と前記キャパシタ(5)に生じる電圧とをコンパレータ(6)で比較する調光回路を有することを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の撮影用照明装置(1)であって、前記検出部(4)が、前記反射光を該反射光の大きさに対応する電流値を有する電流として検出し、前記電流値の積分値がディジタル信号に変換され、前記閾値(Vth)と前記ディジタル信号をディジタルコンパレータで比較するディジタル調光回路を有することを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影用照明装置(1)であって、前記検出部(4)がカメラの撮影用レンズを介さずに到達した反射光を検出する外部調光装置(1)であることを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影用照明装置であって、前記検出部がカメラの撮影用レンズを通過した反射光を検出するTTL調光装置であることを特徴とする撮影用照明装置である。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮影用照明装置(1)を含むカメラである。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮影用照明装置(1)であって、カメラと、前記カメラに対して着脱可能な閃光装置(2)とを備え、前記発光部(3)が前記閃光装置(2)に備えられ、前記検出部(4)及び前記比較部(6)が前記カメラに設けられていることを特徴とする撮影用照明装置(1)である。
請求項11に記載の発明は、発光部(3)と、前記発光部(3)が発光した光の反射光を検出する検出部(4)と、前記発光部(3)の発光開始後に前記検出部(4)が検出した前記反射光の総受光量(C)を、閾値(Vth)と比較する比較部(6)と、を備え、前記総受光量(C)が前記閾値(Vth)以上となったときに、前記発光部(3)に発光停止信号を出力する閃光装置(2)であって、前記閾値(Vth)が、前記発光開始後の経過時間に応じて変更されることを特徴とするカメラに対して着脱可能な閃光装置(2)である。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の閃光装置(2)であって、前記閾値(Vth)が、撮影における適切な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量(A)に、補正係数(α)を乗じたものであり、任意の前記経過時間での前記補正係数(α)は、該経過時間において前記発光部(3)に対して前記発光停止信号を出力した場合における、該経過時間後に検出される反射光の総受光量(C)であるオーバラン総受光量(B)を加味して変更される値であることを特徴する閃光装置(2)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モニタ発光を伴わない閃光撮影時において、オーバラン発光により生じる露光オーバを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態にかかる撮影用照明装置1の構成図である。本実施形態で撮影用照明装置1は、発光部3を発光させて、その反射光(被写体からの反射光)をカメラの撮影用レンズを介さずに(通さずに)受光部4によりリアルタイムに測定し、その反射光の総受光量が閾値に到達したときに発光を停止する、モニタ発光を行わない外部調光装置であり、カメラに着脱可能な閃光装置2に内蔵されている。
【0009】
撮影用照明装置1は、閃光を発光するキセノン管等の発光部3と、発光部3で発光した光を受光して光電流を発生するフォトダイオード等の受光部4とを備える。更に撮影用照明装置1は、受光部4で受光した光電流を蓄え、電圧値に変換するキャパシタ5と、キャパシタ5の電圧を閾値Vthと比較するコンパレータ6と、閾値Vthを発生する電圧発生回路7とを有する調光回路10と、各部を制御する制御部8と、制御部8に接続されたメモリ9とを備える。
【0010】
ここで、閾値Vthは、撮影における適切な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量Aに、発光開始後の経過時間に応じて変更される補正係数α(t)を乗じたものである。以下、この補正係数α(t)について説明する。
【0011】
図2は、閃光装置2の一般的なフル発光波形である。横軸は発光部3の発光開始からの時間t、縦軸は発光部3での発光量を示している。発光部3の発光量は、発光開始後、短い時間で立ち上がり、時間tpにおけるピークPを過ぎると発光は緩やかに減少する。
【0012】
図3は図2における特定の時間tで発光停止信号を出力した場合の発光部3の発光量のを示した図である。図3(a)は、発光開始から比較的早い時間t1で発光停止信号が出力された場合を示した図である。図中領域c1は、発光開始から発光停止信号が出力される時間t1までの発光部3における発光量の総和を示す。また、発光部3は、発光停止信号が出力されても直ちに発光を停止することができず、減衰しながら発光を継続し、その後、完全に発光が停止する。図中領域b1は、この発光停止信号出力後における発光部3の発光であるオーバラン発光量の総和を示す。図示するように、発光開始から比較的早い時間t1で停止信号を出力した場合、オーバラン発光量の総和b1の、発光停止信号が出力される時間t1までの発光量の総和c1に対する比率は大きく、図示する例の場合にはオーバラン発光量の総和b1と、発光停止信号が出力されるまでの発光量の総和c1とは略等しくなっている。なお、このように発光開始から比較的早い時間で発光停止信号を出力する場合とは、発光開始から短い時間で適正な露出となる場合で、例えば近距離の被写体を照明した場合や、反射率の高い被写体を照明した場合が考えられる。
【0013】
図3(b)は、時間t1の後であり且つピークとなる時間tpより前の時間t2(t1<t2<tp)で発光停止信号を出力した場合の発光波形を示した図である。発光開始から発光停止信号が出力される時間t2までの発光部3における発光量の総和c2に対する、オーバラン発光量の総和b2の比率は、時間t1の場合よりは少なくなる。このような状況は、図3(a)の場合よりも被写体の距離が若干遠い場合、又は、図3(a)の場合よりも被写体の反射率が若干低い場合が考えられる。
【0014】
図3(c)は、図2に示した発光のピークPにおける時間t3(=tp)(t1<t2<t3)で発光停止信号を出力した場合の発光波形を示した図である。発光開始から発光停止信号が出力される時間t3までの発光部3における発光量の総和c3に対する、オーバラン発光量の総和b3の比率は、時間t2の場合より更に少なくなる。このような状況は、図3(b)の場合よりも更に被写体の距離が遠い場合、又は、図3(b)の場合よりも更に被写体の反射率が低い場合が考えられる。
【0015】
図3(d)は、発光のピークPを越えた時間t4(t1<t2<t3<t4)で停止信号を出力した場合の発光波形を示した図である。発光開始から発光停止信号が出力される時間t4までの発光部3における発光量の総和c4に対する、オーバラン発光量の総和b4の比率は、図3(c)の場合より更に少なくなり、オーバラン発光の影響はかなり小さくなる。これは、発光部3の発光が自然に終了する直前で適正な露出となって発光停止信号が出される、いわゆるフル発光に近い状況であり、遠方の被写体を照明した場合や、被写体の反射率が低い場合が考えられる。
【0016】
図4(a)〜(d)は、図3(a)〜(d)のそれぞれの場合の受光部4における反射光の受光量を示した図である。受光部4で受光する発光開始から発光停止までの総受光量Cと発光停止後のオーバラン発光の反射光によるオーバラン総受光量Bとで形成される各図の波形は、図3で示す発光停止までの発光量aと発光停止後のオーバラン発光量bとで形成される各図の波形と、縦軸の縮尺が異なるが略同様な波形となる。例えば、図4(a)〜(d)が、発光部の発光開始から時間tnまでの間に受光部4が検出した総受光量Cnが撮影における適切な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量に達したときに発光停止信号を出力したときの波形であるとすると、図4(a)〜(d)における発光開始から発光停止までの総受光量C1,C2,C3,C4の面積は全て等しくなる。一方、オーバラン総受光量Bnは、図4(a)のB1が一番大きく、図4(d)のB4が一番小さいが、いずれの場合もオーバラン総受光量Bの影響により、露出オーバの状況になる。
【0017】
図5は、現実的な撮影距離、例えば被写体と閃光装置2との間の距離が約2m〜8mの範囲における、被写体との距離と受光部4における閃光撮影時の受光量との関係を示したグラフである。受光部4での総受光量Cが、必要総受光量Aに達したときに発光停止信号を出力した場合をグラフX1で示す。このグラフX1上では、いずれの場合も、発光停止信号の出力後に受光部4が受光したオーバラン総受光量Bnの分だけ露出オーバの状況になる。この状況をある程度解消するため、例えば実際の必要総受光量Aになるよりも前に発光停止信号を出力することも考えられる。このときの発光部3の発光開始から時間tnまでの間に受光部4が検出する総受光量Cnを、必要総受光量Aに定数である補正係数αを一律に乗じた値、すなわち
C=Aα 式(1)
に変更すると、図5においてグラフX2で示すように総受光量Cnは全体的に少なくなる。この場合、近距離では露出オーバの程度が低くなるが、遠距離においては露出アンダーの状況が生じてしまう。これは、上式においてαを定数としたが、実際はオーバラン総受光量Bnの必要総受光量Aに対する比率が一定の値ではなく、発光開始後の経過時間によって異なるため、補正係数αも時間よって異なるからである。
【0018】
次に、時間によって異なる補正係数αを求める。撮影における適性な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量A、発光部の発光開始から時間tnまでの間に受光部4が検出した総受光量Cn(=閾値)、オーバラン総受光量(総受光量)Bnの関係は以下のようになる。
A=C(t)+B(t) 式(2)
この式(2)及び上式(1)よりαは、
α(t)=1−B(t)/A 式(3)
となる。
【0019】
式(3)において、オーバラン総受光量B(t)と、必要総受光量Aの値より補正係数α(t)を求めると以下の表のようになった。なお、補正係数α(t)の値は50μsごとに求めた。
【0020】
【表1】

【0021】
本実施形態の撮影用照明装置1は、図1で示すメモリ9にこの表のデータが記録されている。そして、この表に記録された補正係数αの発光開始からの経過時間に応じた値を、制御部8が50μsごとに読み出し、経過時間tにおける補正係数αの値を元にVthの値を演算して電圧発生回路7にその値のVthを発生させる。
【0022】
次に、本実施形態の撮影用照明装置1の動作について説明する。まず、制御部8から、閃光の発光信号が発光部3に送信され、発光部3より閃光が発生される。この閃光は被写体に照射され、その照射された光の反射光が受光部4によって受光される。この受光電流はキャパシタ5によって蓄積されて電圧値に変換される。この電圧値は、コンパレータ6で閾値Vthと比較される。ここで、閾値Vthは、必要総受光量Aに時間によって変化する補正係数α(t)を乗じたものである。補正係数αの値は、上述の表の値に従い、発光からの経過時間によって50μsごとに変化する。したがって、Vthの値も発光からの経過時間によって50μsごとに変化する。
【0023】
発光部3の発光開始から時間tまでの間に受光部4が検出した総受光量Cが閾値Vthになると、発光停止信号が出力され、発光部3の発光は停止する。その後の、発光部3のオーバラン発光の反射光であるオーバラン総受光量Bを受光部4が検出する。そして、オーバラン総受光量Bと総受光量Cとを足した値が受光部4の総受光量となる。この、総受光量は、式(2)より適正露出を確保するための必要総受光量Aと略等しい。
【0024】
図6は発光開始からの任意の時間tにおいて、必要総受光量Aが受光部4により受光された場合に、必要総光量Aにおける、発光停止時間tまでの総受光量C(閾値Vth)とオーバラン総受光量Bとの占める割合を示した図である。図示するように、Vthは時間によって補正係数αの値と同様に段階的に変動するが、Vthとオーバラン総受光量Bとを足した総受光量は略一定の値Aとなり、常に適正な露出が確保される。
【0025】
なお、以上、撮影用照明装置1の発光部3の充電電圧がフル充電電圧に達している場合に、コンパレータ6の閾値Vthを発光開始からの時間tにより変化させる例について説明した。しかし、一般には撮影用照明装置1の発光部3の充電電圧は常にフル充電されるとは限らない。実際、フル充電電圧の80%程度で発光可能を意味するレディ表示が点灯する。このときの発光量はフル充電の場合に比べ60%となる。しかし、充電電圧によらず発光波形は、その最大発光量が変化するだけで、時間軸である横軸方向の形状は略同様である。図7は異なる充電電圧の場合の照明装置1の発光量の時間変位を示す波形図であり、Y1はフル充電の場合、Y2はフル充電電圧の80%程度に充電された場合である。図8は、図7のY1及びY2の場合において同じ発光時間tで発光を停止した場合の発光量を示した図である。図示するように、充電電圧によらず発光波形は、その最大発光量が変化するために縦軸の縮尺が異なるが、それ以外略類似する波形となる。したがって、充電電圧に拘わらず、発光後の経過時間によるコンパレータ6の閾値Vthの補正係数は等しい。
【0026】
また、図9は、充電電圧が異なるが、受光部4での必要発光量が同じ場合の制御の様子を図示したものである。図9のZ1はフル充電の場合で、Z2はレディ表示点灯するがフル充電されていない充電状態である。両方ともに必要総発光量Aは同じであるが、発光停止信号が出力される時間tは異なる。しかしコンパレータ6の閾値Vthは時間に応じて適切な値に変化するため、オーバラン総受光量Bを含めた総受光量AはZ1,Z2とも等しくなる。
【0027】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)上述のように、オーバラン発光を生じても、予めオーバラン発光の受光量の総和Bを加味して発光開始後の経過時間に応じて変更されるVthが定められているため、受光部3が受光する総受光量は一定の値Aとなる。ゆえに常に適正な露出が確保される。これによりモニタ発光を行わない外部調光においても調光精度が向上し、特に被写体距離の遠近の差による露出レベルの差をなくすことが出来る。また、従来、露出オーバになりやすく、発光量の調整が困難であった至近距離での外部調光での撮影も可能となる。
(2)本実施形態によると、モニタ発光は行わないため、モニタ発光によって生じうる撮影の遅れを生じることがない。
(3)本実施形態によると、充電電圧に拘わらず、発光後の経過時間によるコンパレータ6の閾値Vthの補正係数は同じ値でよいため、制御部8の電圧制御が容易である。
(4)充電電圧が異なると、発光停止信号が出力される時刻が異なってくるが、この場合もコンパレータ6の閾値Vthが時間に応じて適切な値に変化するため、オーバラン総受光量を含めた総受光量は充電電圧によらず等しくなる。
【0028】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0029】
(1)本実施形態では、本発明に係る撮影用照明装置1は、カメラに着脱可能な閃光装置2に含まれている例について説明したが、これに限定されない。撮影用照明装置1は、閃光装置2に内蔵されたカメラに含まれていてもよい。また、発光部3がカメラに着脱可能な照明装置に含まれ、撮影用照明装置1の他の部分がカメラに含まれる構成であってもよい。また、閃光装置2が内蔵されたカメラは、一眼レフカメラであってもよく、またいわゆるコンパクトカメラであってもよい。
【0030】
(2)本実施形態では、調光制御をアナログ回路で行う形で解説したが、ディジタル回路で制御する場合にも本発明の方法は適用できる。ディジタル調光回路の場合で、発光停止信号はディジタルコンパレータの出力であり、アナログ回路の閾値は、ディジタルカウントとすることができる。本実施形態のアナログ回路と同様に、発光開始後、一定周期でディジタルコンパレータの閾値を書き換えることで同様の補正が可能となる。
【0031】
(3)本実施形態では、モニタ発光を行わない外部調光を例に説明した。ディジタルカメラのTTL制御では本発光の前にモニタ発光を行うので、外部調光制御で示したような補正制御は一般には必要ない。しかし、モニタ発光を行わない銀塩フィルムカメラのTTL調光や、ディジタルカメラであっても低速シャッタ時間での後幕シンクロでは、モニタ発光なしでTTL制御(リアルタイムTTL)を行うことがある。後幕シンクロではシャッタ時間が長いと、モニタ発光と本発光が時間的に離れるため撮影者に好まれない場合がある。また、モニタ発光で撮影が終わってしまったと誤解される場合がある。このため、リアルタイムTTL制御でも、本発明を同様に適用することができる。この場合、カメラの撮影用レンズを通して入射した被写体反射光を検出する測光センサを用いるが、コンパレータの閾値は発光開始後、経過時間に応じて上述の実施形態と同様に変更させることができる。
なお、第1実施形態〜第3実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態にかかる撮影用照明装置1の構成図である。
【図2】閃光装置の一般的なフル発光の発光量をグラフである。
【図3】図2の特定時間で発光停止信号を出力した場合の発光量を示したグラフである。
【図4】図3(a)〜(d)のそれぞれの場合に対応した、受光部における受光量を示したグラフである。
【図5】被写体と閃光装置との距離が約2m〜8mの範囲における、距離と受光量との関係を示したグラフである。
【図6】時間tにおいて必要総光量が得られた場合の必要総光量における、発光停止時間tまでの総受光量と、オーバラン総受光量の割合を示した図である。
【図7】異なる充電電圧における発光量を示した図であり、Y1はフル充電の場合、Y2はフル充電電圧の80%程度の場合である。
【図8】図7のY1及びY2の場合において同じ時間tで発光を停止した場合の発光量を示した図である。
【図9】充電電圧が異なるが、発光目標量が同じ場合の制御の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1:撮影用照明装置、2:閃光装置、3:発光部、4:受光部、5:キャパシタ、6:コンパレータ、7:電圧発生回路、8:制御部、9:メモリ、Vth:閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
前記発光部が発光した光の反射光を検出する検出部と、
前記発光部の発光開始後に前記検出部が検出した前記反射光の総受光量を、閾値と比較する比較部と、を備え、
前記総受光量が前記閾値以上となったときに、前記発光部に発光停止信号を出力する撮影用照明装置であって、
前記閾値が、前記発光開始後の経過時間に応じて変更されることを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影用照明装置であって、
前記閾値が、撮影における適切な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量に、補正係数を乗じたものであることを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮影用照明装置であって、
任意の前記経過時間での前記補正係数は、該経過時間において前記発光部に対して前記発光停止信号を出力した場合における、該経過時間後に検出される反射光の総受光量であるオーバラン総受光量を加味して変更される値であることを特徴する撮影用照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮影用照明装置であって、
前記補正係数をα(t)、前記必要総受光量をA、経過時間tで前記発光部に前記発光停止信号を出力した場合における前記オーバラン総受光量をB(t)としたときに、
α=1−B(t)/A
の関係を満たすことを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮影用照明装置であって、
前記検出部が、前記反射光を該反射光の大きさに対応する電流値を有する電流として検出し、
前記電流がキャパシタに流れて電荷として蓄えられ、
前記閾値と前記キャパシタに生じる電圧とをコンパレータで比較する調光回路を有することを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の撮影用照明装置であって、
前記検出部が、前記反射光を該反射光の大きさに対応する電流値を有する電流として検出し、
前記電流値の積分値がディジタル信号に変換され、
前記閾値と前記ディジタル信号をディジタルコンパレータで比較するディジタル調光回路を有することを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影用照明装置であって、
前記検出部がカメラの撮影用レンズを介さずに到達した反射光を検出する外部調光装置であることを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮影用照明装置であって、
前記検出部がカメラの撮影用レンズを通過した反射光を検出するTTL調光装置であることを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮影用照明装置を含むカメラ。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮影用照明装置であって、
カメラと、前記カメラに対して着脱可能な閃光装置とを備え、
前記発光部が前記閃光装置に備えられ、
前記検出部及び前記比較部が前記カメラに設けられていることを特徴とする撮影用照明装置。
【請求項11】
発光部と、
前記発光部が発光した光の反射光を検出する検出部と、
前記発光部の発光開始後に前記検出部が検出した前記反射光の総受光量を、閾値と比較する比較部と、を備え、
前記総受光量が前記閾値以上となったときに、前記発光部に発光停止信号を出力する閃光装置であって、
前記閾値が、前記発光開始後の経過時間に応じて変更されることを特徴とするカメラに対して着脱可能な閃光装置。
【請求項12】
請求項11に記載の閃光装置であって、
前記閾値が、撮影における適切な露光状態を確保するために必要とされる必要総受光量に、補正係数を乗じたものであり、
任意の前記経過時間での前記補正係数は、該経過時間において前記発光部に対して前記発光停止信号を出力した場合における、該経過時間後に検出される反射光の総受光量であるオーバラン総受光量を加味して変更される値であることを特徴する閃光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−122359(P2009−122359A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295680(P2007−295680)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】