説明

撹拌混合機能付肥料散布機。

【課題】 肥料の撹拌混合具合が作業者の視覚の判断のみでおこなわれず、容易に混合状態を判断できる撹拌混合機能付肥料散布機を提供する。
【解決手段】 散布する肥料を貯留するホッパ6を有し、ホッパ6内に投入された複数種類の肥料を混合するための撹拌混合部4,5を有し、ホッパ底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機において、ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を設けた。また、前記撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの撹拌混合部の回転累積数を基に制御部が報知機能を作動させる。さらに、撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの経過時間を基に制御部が報知機能を作動させることを特徴とした撹拌混合機能付肥料散布機を提案する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌混合機能付肥料散布機に関するもので、特に散布作業前に複数の肥料をホッパ内で撹拌混合する場合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来知られたホッパ内で複数の肥料を撹拌混合する機能を有した肥料散布機として、特開2002−142522号公報(特許文献1)や特開2003−210013号公報(特許文献2)のものが開示されている。
【特許文献1】特開平11−62794号公報
【特許文献1】特開平11−62794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の撹拌混合機能付肥料散布機は、ホッパに散布する複数の肥料を投入し、ホッパ内の撹拌混合部を作動させ肥料を混合した後、ホッパ底部に設けた落下孔の開度を開閉調節することで散布量を調節して散布していた。しかし、複数の肥料を撹拌混合する際、肥料の混合が十分に行われたのかどうかを作業者の視覚でのみ判断するものであったため、混合が不十分のうちに散布が開始される場合や撹拌混合時間を必要以上に浪費し作業効率を悪くする等の問題があった。また、撹拌混合作業中に混合具合を確認するために撹拌混合部に近づき、不用意に回転部に接触し巻き込まれる等の危険がある。
【0004】
このため本発明の目的は、肥料の撹拌混合具合が作業者の視覚の判断のみでおこなわれず、容易に混合状態を判断できる撹拌混合機能付肥料散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、散布する肥料を貯留するホッパを有し、該ホッパ内に投入された複数種類の肥料を混合するための撹拌混合部をホッパ内に有し、該ホッパ底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機において、ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を設けたことを特徴とした撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。
【0006】
また、前記撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの撹拌混合部の回転累積数を基に制御部が報知機能を作動させることを特徴とした0005欄記載の撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。
【0007】
さらに、撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの経過時間を基に制御部が報知機能を作動させることを特徴とした0005欄記載の撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。
【発明の効果】
【0008】
ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を有したことにより、肥料の混合が終了したかどうかを作業者の視覚に頼ることなく誰でも簡単に判断できるため、混合が不十分のうちに肥料が散布される不都合や必要以上に撹拌混合を行う無駄を回避できる。また、混合状態を確認するために其の都度ホッパ内の撹拌混合部を確認する必要がないために、ホッパ内回転部から離れての確認が可能となり作業者の安全を確保できるとともに、運転席から離れずに確認ができるため作業効率が向上する。
【0009】
また、撹拌混合終了の判断を、撹拌開始からの撹拌部の回転累積数を基に制御部が報知機能を作動させるように構成することにより、直接肥料を撹拌混合する部分の回転数を基にしているため、予め測定した混合完了累積回転数データとの誤差が出にくく、制御部を構成するにあたり容易に回路構成できる。
【0010】
さらに、撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの経過時間を基に制御部が報知機能を作動させるように構成することにより、予め測定した混合完了時間データに基づきタイマーの調整をすることで容易に混合時間調整が可能で、制御部を構成するにあたり容易に回路構成できるとともに、作業者が現場の状況等の判断により簡単に時間変更が可能に構成することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の平面断面図、図2は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の一部断面した側面図、図3は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機のホッパ部の断面を示す側面図、図4はホッパ底部の肥料落下量調整用シャッタの作動説明図、図5は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の後面図、図6は制御部の説明図、図7は回転センサーを使用した場合の制御部のフロー図、図8はタイマーを使用した制御部のフロー図を示したものである。
【0012】
本発明の実施例として、進行方向と直交する方向に長尺のホッパを有する撹拌混合機能付肥料散布機を例に説明をする。フレーム1前方下部には左右一対のロアリンクピン11が、フレーム1前方上部にはトップブラケット10を備え、図3に示すようにトラクタ8の三点リンク機構に装着できるように構成されている。フレーム1は進行方向と直行する方向に横長状の肥料を貯留するホッパ6を保持していて、ホッパ6上面には上面カバー61が前後方向開閉自在に設けられていて、散布する肥料は上面カバー61を開けてホッパ6内に投入される。
【0013】
ホッパ6内には、第1撹拌部4と第2撹拌部5で構成する撹拌混合部が設けてある。第1撹拌部4は、U字状の樋62に撹拌羽根43を有した左右方向の第1回転軸41を内設し、リボン状螺旋に形成された前記撹拌羽根43により一方方向へ肥料を移送するとともに撹拌する。移送方向末端には、掻き上げ材42が設けてあり隣接する樋に肥料を移動する。
【0014】
また、第1撹拌部4と平行に隣接した第2撹拌部5は、第1撹拌部と同じくU字状の樋620に撹拌羽根430を有した左右方向の第2回転軸51を内設し、リボン状螺旋に形成された前記撹拌羽根430により第1撹拌部と逆方向へ肥料を移送するとともに撹拌する。移送方向末端には、掻き揚げ材420が設けてあり隣接する第1撹拌部4の樋に肥料を移動する。これによりホッパ6内肥料は、図1に示す矢印Z方向に連続して循環されるとともに撹拌される。
【0015】
U字状の樋62,620底には、肥料を落下排出させるための排出口63,630がそれぞれ設けてあり、それぞれ回転移送の末端側に複数個配列され、樋幅の略2分の1の長さに亘って設けてある。
【0016】
樋底板外面には、排出口63,630の開度を調節するシャッタ板64,640が密着されて設けてあり、シャッタ板64,640をホッパ6幅方向にスライドさせ、シャッタ板64,640に設けた落下口65,650と排出口63,630を重合させ、重合した開口量により散布量を調節するように構成されている。シャッタ板64,640は、フレーム1前方部に設けたシャッタ開閉レバー71をトラクタ8に乗車した作業者が操作することでスライドする。
【0017】
シャッタ開閉レバー71は、フレーム1に左右水平方向の回動軸で前後方向に回動可能に設けてあり、レバーガイド70に表示された希望する散布量目盛り701に合わせて、シャッタ開閉レバー71を回動させると、シャッタ板64,640がスライドし排出口63,630が希望量開く構成となっている。
【0018】
シャッタ開閉レバー71を前方に回動すると、シャッタ開閉レバー71の操作部側と回動軸に対し反対側の下方端部には、第1シャッタ開閉ロッド77が回動自在に連結されていて、該第1シャッタ開閉ロッド77他端に回動自在に連結されたリンクアーム78が、図4に示す矢印方向に回動する。リンクアーム78は、回動軸780を中心に2本のアームをL字状に設けてあり、一方のアームには前記第1シャッタ開閉ロッド77が連結され他方のアームには第2シャッタ開閉ロッド72が回動自在に連結されている。該第2シャッタ開閉ロッド72の他端は、樋62,620の略中間部に垂直方向に設けた支持軸73に水平方向回動自在に設けた揺動板75の一端に回動自在に連結されていて、揺動板75はシャッタ板64,640にそれぞれ連結ロッド74,740を介して連結されて図4矢印方向に作動し、排出口63,630が開き肥料が落下し散布が行われる。
【0019】
シャッタ板64,640の落下口65,650下方には可撓性の案内筒641が設けてある。図5は、案内筒641の使用例を示したもので、案内筒641の先端部は、ホッパ6の下部に掛け渡した横支持材642の切欠き溝に取り付けた固定リング643に案内筒641を挿入し希望位置で固定可能で、A,B部のように複数本をまとめることや、C部のように単体で散布することも選択でき、D部のように延長横支持材を使用し、ホッパ6の幅より外側に散布することも可能である。また、案内筒641を使用しないで直接散布することも可能である。
【0020】
撹拌混合部は、フレーム1前方に突設させた入力軸20と、トラクタ8の図示していないPTO軸と図示していないユニバーサルジョイントで連結し動力を伝達され駆動される。入力軸20は入力ケース2内のベベルギヤ22と連結され、歯合するベベルギヤ22により入力軸20と直交する左右方向の一方に出力軸23により動力は伝達される。前記入力ケース2は、フレーム1に支持されていて、左右一側面はパイプ状のフレームで支持されていて、前記出力軸23はこのパイプ内に貫入されている。
【0021】
出力軸23の外側他端には駆動スプロケット30が固着されていて、動力はこれに巻着されたローラーチェーン33により、中間スプロケット31を経由し減速され、第1スプロケット34及び第2スプロケット35に伝達され、これらが固着されている第1回転軸41及び第2回転軸51を回転させる。該回転軸にはそれぞれリボン状螺旋に成形された撹拌羽根43,430と移送方向の末端には掻き上げ材42,420が設けてあり、図2に示すa,bの矢印方向に相互に隣接する内方に掬い上げるように回転する。32はテンションスプロケットで、取付け位置を移動させてローラーチェーン33の張り調整を行う。
【0022】
撹拌羽根43,430は、互いに内方に掻き上げるように逆回転し、第1撹拌部4と第2撹拌部5の肥料は互いに逆方向に移送される。また、移送方向の末端側のそれぞれの掻き上げ材42,420により、他方の樋62,620に肥料が掻き飛ばされ移動し、肥料が連続循環するとともに撹拌混合するように構成されている。散布作業の時は、撹拌混合部を作動させて散布するとブリッジ現象や偏り散布が解消され均一な散布ができる。
【0023】
フレーム1の両側面側には、スタンド12が設けてあり、ホッパ6に肥料を投入する際にホッパ6底部分を地面の接触等から保護するとともに、キャスター車輪13を付けると格納時等の移動に便利である。
【0024】
入力軸20には、回転軸と直交する面を有する検知プレート212が固着されていて一体に回転する。検知プレート212の外周部には孔が複数あけられていて、この孔を感知して回転を検知する回転センサー211が入力ケース2側部に取り付けられている。
【0025】
入力軸20にトラクタ8から回転動力が伝達されている場合、入力軸20と一体に回転する検知プレート212の回転を回転センサー211が検知して制御部が判断する。
【0026】
回転センサー211の検知信号により入力軸の累積回転回数が検知可能であるため、連動している第1撹拌部4と第2撹拌部5の累積回転回数も割り出すことができる。これを利用して予め複数の肥料の最適混合累積回転回数を測定して措き、最適混合累積回転回数になるとブザーやランプ等により撹拌混合が終了したことを知らせる報知機能を設けることができる。また、運転席近傍に設けた制御部の操作部91に終了までの残り回数や終了回数等を表示することも可能となる。これにより、肥料の混合が終了したことを簡単に知ることができ、混合状態が其の都度ばらつくことがなく精度の良い肥料散布が可能となるとともに、過剰に混合時間を費やすことがない。さらに、作業者は上面カバー61を開けて混合状態を確認する必要がなく、ホッパ6内の回転部から作業者を保護できる。また、運転席から離れずに確認ができるため作業効率が向上する。本例は、入力軸20の回転を回転センサー211が検出しているが、検出場所は撹拌混合部までの動力伝達部の回転部を検出して行うことが可能である。
【0027】
前記のように累積回転回数の検知によらず、撹拌開始からの経過時間を基に予め複数の肥料の最適混合時間を測定して措き、最適混合時間になると前記と同じくブザーやランプ等により撹拌混合が終了したことを知らせる報知機能を設けることもできる。この場合時間はタイマーを設けることで簡単に設定でき、運転席近傍に設けた操作部91にタイマーの調節部を設けると現場の肥料の種類や各条件に合致した時間にアレンジも可能である。
また、上記単独ではなく、累積回転回数と時間を併用して測定し報知機能を作動させてもよい。
【0028】
本例においては、トラクタ8に装着する肥料散布機について示したが、自走式の走行台車に装着した撹拌混合機能付肥料散布機等にも適用可能である。
【0029】
図6において電気回路を説明すると、制御部9には回転センサー211が接続されて電気信号が送られる。操作部91は運転席近傍に配置され混合開始等のスイッチ類が配置され制御部9をコントロールする。制御部9はさらにリレー92と接続されていて、制御部9の演算結果によりリレー92を作動させ、これと接続しているブザー214を作動させる。時間を測定する場合制御部9にタイマーを設けると良い。
【0030】
図7において撹拌混合が終了したことを撹拌混合部の累積回転回数を検知し知らせる報知制御回路のフローを説明する。電源を入れ(S10)トラクタPTOのクラッチを入れると、入力軸20が回転する。続いて運転席近傍に配置された操作部91の混合開始スイッチをON(S11)にすると、回転センサー211の信号により制御部9がカウントを開始(S12)し、カウントが開始され予め設定したカウント設定値に達すると(S13)、ブザー214が作動(S14)し肥料の混合が終了したことを作業者に知らせる。操作部91に設けたブザー214の作動解除スイッチを押すことで報知制御回路が次の工程の待機状態となる。
【0031】
図8において撹拌混合が終了したことを撹拌開始からの経過時間を基に知らせる報知制御回路のフローを説明する。電源を入れ(S20)トラクタPTOのクラッチを入れると、入力軸20が回転する。続いて運転席近傍に配置された操作部91の混合開始スイッチをON(S21)にすると、タイマーが作動し制御部9が時間の測定を開始(S22)し、時間測定が開始され予め設定した時間設定値に達すると(S23)、ブザー214が作動(S24)し肥料の混合が終了したことを作業者に知らせる。操作部91に設けたブザー214の作動解除スイッチを押すことで報知制御回路が次の工程の待機状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の平面断面図。
【図2】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の一部断面した側面図。
【図3】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機のホッパ部の断面を示す側面図。
【図4】ホッパ底部の肥料落下量調整用シャッタの作動説明図。
【図5】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の後面図。
【図6】制御部の説明図。
【図7】回転センサーを使用した場合の制御部のフロー図。
【図8】タイマーを使用した制御部のフロー図。
【符号の説明】
【0033】
1 フレーム
10 トップブラケット
11 ロアリンクピン
12 スタンド
13 キャスター車輪
2 入力ケース
20 入力軸
211 回転センサー
212 検知プレート
214 ブザー
22 ベベルギヤ
23 出力軸
30 駆動スプロケット
31 中間スプロケット
32 テンションスプロケット
33 ローラーチェーン
34 第1スプロケット
35 第2スプロケット
4 第1撹拌部
41 第1回転軸
42,420 掻き上げ材
43,430 撹拌羽根
5 第2撹拌部
51 第2回転軸
6 ホッパ
61 上面カバー
62,620 樋
63,630 排出口
64,640 シャッタ板
641 案内筒
642 横支持材
643 固定リング
65,650 落下口
70 レバーガイド
71 シャッタ開閉レバー
72 第2シャッタ開閉ロッド
73 支持軸
74 連結ロッド
75 揺動板
77 第1シャッタ開閉ロッド
78 リンクアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布する肥料を貯留するホッパを有し、該ホッパ内に投入された複数種類の肥料を混合するための撹拌混合部をホッパ内に有し、該ホッパ底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機において、ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を設けたことを特徴とした撹拌混合機能付肥料散布機。
【請求項2】
撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの撹拌混合部の回転累積数を基に制御部が報知機能を作動させることを特徴とした請求項1記載の撹拌混合機能付肥料散布機。
【請求項3】
撹拌混合終了の判断は、撹拌開始からの経過時間を基に制御部が報知機能を作動させることを特徴とした請求項1記載の撹拌混合機能付肥料散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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