説明

操作ペダル

【課題】部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らずペダルパッドをペダルアームに対して常に所定の取付状態で安定して取り付けることができるようにする。
【解決手段】ペダルアーム12の先端の挿入部18が挿入される挿入穴40がテーパ穴形状を成していて、その最小径部である一方の開口端部40aが支持部として機能するようになっており、ペダルアーム12はその開口端部40aによって支持される部分を支点として揺動することが許容される。このため、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず、挿入部18を挿入穴40に挿入した状態で嵌合部20を被嵌合部36に適切に嵌め込むことが可能となり、ペダルパッド30をペダルアーム12に対して常に所定の取付状態で安定して取り付けることができるとともに、組付作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操作ペダルに係り、特に、ペダルアームとペダルパッドとの取付構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 所定角度で曲げられた曲折部を挟んで先端側に挿入部が設けられ、反対側に嵌合部が設けられたパッド取付部を備えている棒状のペダルアームと、(b) 足踏み操作される踏面と反対側の裏面にそれぞれ設けられ、前記挿入部が軸方向から挿入される挿入穴を有する被挿入部と、前記嵌合部が軸心と直角方向から嵌め込まれる被嵌合部と、から成る被取付部を備えているペダルパッドと、を有し、(c) 前記パッド取付部および前記被取付部を介して前記ペダルパッドが前記ペダルアームに取り付けられて使用される操作ペダルが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
図6の車両用アクセルペダル100は、上記特許文献1に記載されているもので、ペダルアーム102の下端部分に設けられたパッド取付部104にペダルパッド120が一体的に取り付けられるようになっている。パッド取付部104は、丸棒状のペダルアーム102を所定形状に曲げ成形したもので、曲げ角度θ≒90°の曲折部106を挟んで先端側に挿入部108が設けられ、反対側に嵌合部110が設けられている。挿入部108および嵌合部110は何れも直線状を成している。一方、ペダルパッド120の裏面122には、被挿入部124および被嵌合部126が設けられており、それ等の被挿入部124および被嵌合部126によって被取付部128が構成されている。被挿入部124には挿入穴130が裏面122と平行に設けられており、前記挿入部108が裏面122と平行になる姿勢で軸方向の先端側からその挿入穴130内に挿入される。また、被嵌合部126は、互いに平行で且つ裏面122と平行に設けられた長手状の一対の把持爪132から成り、前記嵌合部110が裏面122と略平行な姿勢で軸心と直角な方向、すなわち図6における紙面の手前(表面)側から押圧されて一対の把持爪132の間に嵌め込まれることにより、それ等の把持爪132の弾性により所定の取付強度で係止されるようになっている。ペダルパッド120は、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されている。
【0004】
そして、このような車両用アクセルペダル100において、ペダルパッド120をペダルアーム102に組み付ける際には、先ず、ペダルアーム102の挿入部108を裏面122と平行な姿勢に保持して被挿入部124の挿入穴130内に挿入する。その場合に、ペダルアーム102の嵌合部110と被嵌合部126との干渉を避けるため、その嵌合部110が裏面122から手前(図6の紙面の表面)側へ離間するようにペダルアーム102を立てた状態で挿入作業を行なう。その後、その挿入部108の軸心まわりにペダルアーム102を回転させて、図6における右上方向へ倒し、嵌合部110を被嵌合部126に嵌め込む。これにより、ペダルパッド120がペダルアーム102のパッド取付部104に一定の姿勢で一体的に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の操作ペダルにおいては、ペダルパッドやペダルアームの各部の寸法や角度のばらつきにより、組付けの際に干渉したり無理な力が掛かったりして取付状態が不安定になる恐れがあるとともに、組付作業性が損なわれることがあった。例えば図6の車両用アクセルペダル100において、曲折部106の曲げ角度θがばらつくと、嵌合部110が被嵌合部126に対して傾斜するため、一対の把持爪132の間に嵌め込むことができなくなることがあるとともに、嵌め込むことができても片方の把持爪132のみに係止されるなどして取付強度が低下する可能性があった。ペダルパッド120側の被挿入部124および被嵌合部126の位置関係がばらつく場合も同様である。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らずペダルパッドとペダルアームとを常に所定の取付状態で安定して取り付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 所定角度で曲げられた曲折部を挟んで先端側に挿入部が設けられ、反対側に嵌合部が設けられたパッド取付部を備えている棒状のペダルアームと、(b) 足踏み操作される踏面と反対側の裏面にそれぞれ設けられ、前記挿入部が軸方向から挿入される挿入穴を有する被挿入部と、前記嵌合部が軸心と直角方向から嵌め込まれる被嵌合部と、から成る被取付部を備えているペダルパッドと、を有し、(c) 前記パッド取付部および前記被取付部を介して前記ペダルパッドが前記ペダルアームに取り付けられて使用される操作ペダルにおいて、(d) 前記挿入穴は、前記挿入部の軸方向の一部を支持する支持部と、その支持部によって支持される部分を支点として前記ペダルアームが揺動することを許容する逃げ部とを有することを特徴とする。
【0009】
第2発明は、第1発明の操作ペダルにおいて、前記支持部は、前記挿入穴のうち前記ペダルアームの前記曲折部側の開口端部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
第3発明は、第1発明の操作ペダルにおいて、(a) 前記支持部は、前記挿入穴の軸方向の中央よりも前記ペダルアームの前記曲折部側であって、その曲折部側の開口端から所定寸法だけ内部に入った位置に設けられており、(b) その支持部の両側にそれぞれ設けられる前記逃げ部のうち少なくとも前記曲折部側の逃げ部は、その支持部から離間するに従って拡径するテーパ穴形状を成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような操作ペダルにおいては、ペダルアームの先端の挿入部が挿入される挿入穴は支持部と逃げ部とを有し、その支持部によって支持される部分を支点としてペダルアームが揺動することが許容されるため、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず挿入部を挿入穴内に挿入した状態で嵌合部を被嵌合部に適切に嵌め込むことが可能となり、ペダルパッドをペダルアームに対して常に所定の取付状態で安定して取り付けることができるとともに、組付作業性が向上する。
【0012】
第2発明では、挿入穴のうちペダルアームの曲折部側の開口端部に支持部が設けられているため、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず被挿入部と曲折部との位置関係のばらつきが抑制され、ペダルアームに対するペダルパッドの取付位置が安定する。
【0013】
第3発明では、挿入穴の軸方向の中央よりもペダルアームの曲折部側であって、その曲折部側の開口端から所定寸法だけ内部に入った位置に支持部が設けられているため、第2発明と同様に、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず被挿入部と曲折部との位置関係のばらつきが抑制されて、ペダルアームに対するペダルパッドの取付位置が比較的安定する。また、支持部の両側にそれぞれ設けられる逃げ部のうち少なくとも曲折部側の逃げ部は、その支持部から離間するに従って拡径するテーパ穴形状を成しているため、挿入部を挿入穴内に挿入する際にテーパ穴形状の逃げ部によって案内されつつ支持部の内側へ挿入されるようになり、組付作業が一層容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が適用された車両用アクセルペダルの一例を示す図で、(a) はペダルパッドの裏面側から見た背面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面の拡大図、(c) は(a) におけるIC−IC断面の拡大図、(d) は(a) におけるID部を拡大して示す断面図である。
【図2】図1の車両用アクセルペダルの組付手順を説明する図である。
【図3】図1の車両用アクセルペダルに比較して、曲げ角度θのばらつきに起因して被挿入部と曲折部との位置関係のばらつきが大きくなる実施例を示す図で、図1(d) に対応する断面図である。
【図4】被挿入部の挿入穴形状が異なる3種類の他の実施例を示す図で、何れも図1(d) に対応する断面図である。
【図5】被挿入部の構成が異なる更に別の実施例を示す図で、(a) は図1(d) に対応する断面図、(b) は(a) の右側から見た側面図である。
【図6】従来の車両用アクセルペダルを示す図で、図1(a) に対応する背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、例えば運転者によって足踏み操作される車両用のアクセルペダルに好適に適用されるが、車両用の他の操作ペダルや車両用以外の操作ペダルにも適用され得る。
【0016】
ペダルアームは、例えば断面円形の丸棒鋼等の金属製の棒材が好適に用いられ、プレスによる曲げ加工等によって所定形状に曲げ成形されるが、繊維強化プラスチック等の所定の要求強度を満たす金属以外の材料を採用することもできる。このペダルアームは、例えばパッド取付部よりも上方位置において略水平な支持軸まわりに回動可能に車両等に配設されて使用される。ペダルパッドは、例えば合成樹脂材料にて構成されるが、金属材料等の他の材料製とすることもできる。合成樹脂製のペダルパッドの一部に必要に応じて金属等をインサート成形することも可能である。
【0017】
ペダルアームに設けられる曲折部の曲げ角度は、ペダルパッドを安定して支持する上で90°程度が適当で、例えば70°〜110°程度の範囲内が望ましいが、それ以外の角度で構成することも可能である。その曲折部の両側の挿入部および嵌合部は、何れも直線状を成すように構成され、ペダルパッドに設けられる挿入穴および被嵌合部も、同様に直線状を成すように構成される。挿入穴および被嵌合部は、例えばペダルアームがペダルパッドの裏面に接する状態で取り付けられるように、その裏面に接するように裏面と平行に設けることが望ましいが、ペダルアームがペダルパッドの裏面から浮いた状態で取り付けられるようにしても良い。その場合に、ペダルアームはペダルパッドの裏面と平行に取り付けられても良いが、例えば被嵌合部を裏面に対して傾斜させることにより、ペダルアームがペダルパッドの裏面に対して傾斜する姿勢で取り付けられるようになっていても良い。
【0018】
被挿入部に設けられる挿入穴は貫通穴であっても良いが、曲折部と反対側の端部が塞がっている有底穴であっても良い。この挿入穴には支持部および逃げ部が設けられ、逃げ部は、例えば支持部から離間するに従って拡径するテーパ穴形状とされるが、挿入部よりも大径の挿入穴を設けるとともに、挿入部と略同一の内径寸法の内向きフランジを支持部として設けるだけでも良い。その場合は、支持部以外の大径の挿入穴がそのまま逃げ部として機能する。テーパ穴形状とする代わりに、径寸法を段階的に変化させて逃げ部を設けることも可能である。
【0019】
ペダルアームは、挿入部が前記支持部によって支持される部分を支点として揺動することが許容されるが、この揺動は、支持部により支持される部分を支点として、挿入部の長手方向においてシーソーのように所定角度だけ回動したり、旋回回転したりする運動である。これにより、例えば曲折部の曲げ角度θがばらついても、挿入部を挿入穴内に挿入した状態で嵌合部を被嵌合部と平行になる姿勢に調整して適切に嵌め込むことができる。逃げ部によって許容される揺動の程度、すなわち逃げ部の逃げ量(テーパ穴のテーパ角度など)は、例えば上記曲げ角度θのばらつき等の寸法公差や誤差を吸収し、挿入部を挿入穴内に挿入した状態で嵌合部が被嵌合部と平行になる姿勢で適切に嵌め込むことができるように適宜定められる。
【0020】
第2発明では、被挿入部の挿入穴のうちペダルアームの曲折部側の開口端部に支持部が設けられているが、他の発明の実施に際しては、ペダルアームの挿入部の軸方向の一部を支持できる範囲で、挿入穴の何処に支持部を設けても良い。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用アクセルペダル10の一例を示す図で、(a) はペダルパッド30の裏面32側から見た背面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面の拡大図、(c) は(a) におけるIC−IC断面の拡大図、(d) は(a) におけるID部を拡大して示す断面図である。この車両用アクセルペダル10は、断面円形の丸棒鋼にて構成されているペダルアーム12の下端部分に設けられたパッド取付部14にペダルパッド30が一体的に取り付けられたもので、ペダルアーム12はパッド取付部14よりも上方部分において略水平な支持軸まわりに回動可能に車両に配設される。パッド取付部14は、ペダルアーム12をプレスにより所定形状に曲げ成形したもので、曲げ角度θ≒90°の曲折部16を挟んで先端側に挿入部18が設けられ、反対側に嵌合部20が設けられている。挿入部18および嵌合部20は何れも直線状を成している。
【0022】
一方、ペダルパッド30の裏面32、すなわち運転者によって足踏み操作される踏面33と反対側の面には、被挿入部34および被嵌合部36が設けられており、それ等の被挿入部34および被嵌合部36によって被取付部38が構成されている。被挿入部34には挿入穴40が裏面32と平行に設けられており、前記挿入部18が裏面32と平行な姿勢で軸方向の先端側から挿入されるようになっている。この挿入穴40は貫通穴で、挿入部18が挿入される側すなわち前記曲折部16側の開口端部40aは、その挿入部18と略等しい径寸法(本実施例では挿入部18よりも僅かに小さい径寸法)で裏面32に接するように設けられており、反対側の開口端へ向かうに従って径寸法が大きくなるテーパ穴形状を成している。本実施例では、テーパ穴形状の挿入穴40のうち径寸法が最小の開口端部40aが支持部として機能し、その開口端部40a以外の部分は逃げ部に相当する。
【0023】
前記被嵌合部36は、互いに平行で且つ裏面32と平行に設けられた長手状の一対の把持爪42から成り、前記嵌合部20が裏面32と略平行な姿勢で軸心と直角な方向、すなわち図1(b) における上方から押圧されて一対の把持爪42の間に嵌め込まれることにより、裏面32に略接する状態でそれ等の把持爪42の弾性により所定の取付強度で係止されるようになっている。ペダルパッド30は、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されている。本実施例のペダルパッド30は長手形状を成していて、被挿入部34の挿入穴40は、そのペダルパッド30の長手方向と直角な方向に設けられ、被嵌合部36はペダルパッド30の長手方向に設けられており、且つ、それ等の延長線が前記曲げ角度θと略同じ角度で交差する位置関係で設けられている。
【0024】
そして、このような車両用アクセルペダル10において、ペダルパッド30をペダルアーム12に組み付ける際には、先ず、図2に白抜き矢印Aで示すようにペダルアーム12の挿入部18を裏面32と平行な姿勢に保持して被挿入部34の挿入穴40内に挿入(圧入)する。その場合に、ペダルアーム12の嵌合部20と被嵌合部36との干渉を避けるため、その嵌合部20が裏面32から離間するようにペダルアーム12を立てた状態で挿入作業を行なう。図2の(a) は、ペダルパッド30の裏面32側から見た背面図で、(b) は(a) の下方から見た側面図であり、これ等の図において実線で示すペダルアーム12は、挿入部18が挿入穴40内に挿入された状態である。
【0025】
その後、図2(b) に白抜き矢印Bで示すように、挿入穴40の中心線まわりにペダルアーム12を回転させて右側へ倒し、嵌合部20を被嵌合部36に嵌め込む。これにより、ペダルアーム12のパッド取付部14にペダルパッド30が一定の姿勢で所定の取付強度で一体的に取り付けられる。図2の(a) 、(b) において一点鎖線で示すペダルアーム12は、このようにペダルアーム12がペダルパッド30に一体的に取り付けられた状態(図1と同じ)で、本実施ではペダルアーム12がペダルパッド30の裏面32に略接する状態で裏面32と略平行になる姿勢で取り付けられる。
【0026】
ここで、本実施例の車両用アクセルペダル10においては、ペダルアーム12の先端の挿入部18が挿入される挿入穴40がテーパ穴形状を成していて、その最小径部である一方の開口端部40aが支持部として機能するようになっており、ペダルアーム12はその開口端部40aによって支持される部分を支点として揺動することが許容される。このため、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず、挿入部18を挿入穴40に挿入した状態で嵌合部20を被嵌合部36と平行になる姿勢でその被嵌合部36に適切に嵌め込むことが可能となり、ペダルパッド30をペダルアーム12に対して常に所定の取付状態で安定して取り付けることができるとともに、組付作業性が向上する。
【0027】
例えば、ペダルアーム12の曲折部16の曲げ角度θが図1(d) に一点鎖線や破線で示すようにばらついた場合でも、図2に実線で示すように挿入部18を挿入穴40内に挿入した状態で、その挿入穴40の中心線まわりにペダルアーム12を回動させ、嵌合部20を被嵌合部36と平行になる姿勢で適切に嵌め込むことができる。逃げ部として機能する挿入穴40によって許容される揺動の程度、すなわちテーパ穴形状のテーパ角度は、上記曲げ角度θのばらつきを吸収して、挿入部18を挿入穴40内に挿入した状態で嵌合部20を被嵌合部36と平行になる姿勢で適切に嵌め込むことができるように適宜定められる。ペダルパッド30側の被挿入部34および被嵌合部36の位置関係がばらつく場合も、テーパ穴形状の挿入穴40によってそのばらつきが吸収され、ペダルパッド30をペダルアーム12に対して適切に取り付けることができる。
【0028】
また、本実施例では、挿入穴40のうちペダルアーム12の曲折部16側の開口端部40aが最小径寸法とされて支持部として機能するため、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず被挿入部34と曲折部16との位置関係のばらつきが抑制され、ペダルアーム12に対するペダルパッド30の取付位置が安定する。例えば図3に示す挿入穴50のように、軸方向の中央部分に最小径寸法の支持部52が設けられ、その両側に支持部52から離間するに従って拡径するテーパ穴形状の逃げ部54、56が設けられている場合に、曲折部16の曲げ角度θが一点鎖線や破線で示すようにばらついた場合、被挿入部34に対する曲折部16の位置が図の上下方向に変位するため、ペダルアーム12に対するペダルパッド30の取付位置がばらつくのである。図1の実施例においても厳密には変位するが、図3の場合に比較してばらつき(変位量)が小さくなる。図3は、図1の(d) に対応する断面図である。
【0029】
なお、上記図3の挿入穴50も本発明の一実施態様であり、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず、挿入部18を挿入穴50に挿入した状態で嵌合部20を被嵌合部36に適切に嵌め込むことが可能で、ペダルパッド30をペダルアーム12に対して常に所定の取付状態で安定して取り付けることができる。
【0030】
図4の(a) 〜(c) は、被挿入部34に設けられる挿入穴の更に別の例を示す図で、それぞれ前記図1(d) に対応する断面図である。(a) の挿入穴60は、前記第1実施例の挿入穴40と同様に、前記曲折部16側の開口端部60aが挿入部18と略等しい径寸法(実施例では挿入部18よりも僅かに小さい径寸法)で支持部として機能し、反対側の開口端へ向かうに従って径寸法が大きくなるテーパ穴形状を成しているが、その開口端部60aは、一定の径寸法で軸方向に所定の幅寸法を備えている。この場合は、開口端部60a内に挿入(圧入)される挿入部18がより高い取付強度で安定してペダルパッド30に固定されるようになる。
【0031】
図4の(b) の挿入穴62は、前記図3の挿入穴50と同様に軸方向の中間部分に最小径寸法の支持部64が設けられ、その両側に支持部64から離間するに従って拡径するテーパ穴形状の逃げ部66、68が設けられているが、支持部64の位置が軸方向の中央よりも曲折部16側(図4(b) における右側)であって、その曲折部16側の開口端から所定寸法だけ内部に入った位置に設定されている。本実施例においても、支持部64が曲折部16側に偏った位置に設けられているため、前記第1実施例と同様に、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず被挿入部34と曲折部16との位置関係のばらつきが抑制されて、ペダルアーム12に対するペダルパッド30の取付位置が比較的安定する。また、支持部64の両側にそれぞれ設けられる逃げ部64、66が、何れも支持部64から離間するに従って拡径するテーパ穴形状を成しており、挿入部18を挿入穴62内に挿入する際には、その挿入部18が一方の逃げ部66によって案内されつつ支持部64の内側へ挿入されるようになり、組付作業が一層容易になる。前記図3の挿入穴50も、上記挿入穴62と同様に挿入部18が一方の逃げ部54によって案内されつつ支持部52の内側へ挿入されるため、組付作業が容易になるという同様の効果が得られる。
【0032】
図4の(c) の挿入穴70は、上記挿入穴62と同様に、軸方向の中間部分に最小径寸法の支持部72が設けられ、その両側に逃げ部74、76が設けられるとともに、支持部72の位置が軸方向の中央よりも曲折部16側(図4(c) における右側)であって、その曲折部16側の開口端から所定寸法だけ内部に入った位置に設定されているが、支持部72は、前記開口端部60aと同様に一定の径寸法で軸方向に所定の幅寸法を備えている。したがって、支持部72内に挿入(圧入)される挿入部18がより高い取付強度で安定してペダルパッド30に固定されるようになる。また、曲折部16側に位置する一方の逃げ部74は、支持部72から離間するに従って拡径するテーパ穴形状を成しており、挿入部18を挿入穴70内に挿入する際の組付作業が容易になる。なお、他方の逃げ部74は、支持部72よりも大きい一定の径寸法の円筒穴形状を成しており、これにより支持部72によって支持される部分を支点としてペダルアーム12が揺動することが許容され、部材各部の寸法や角度のばらつきに拘らず、挿入部18を挿入穴70に挿入した状態で嵌合部20を被嵌合部36に適切に嵌め込むことが可能で、ペダルパッド30をペダルアーム12に対して常に所定の取付状態で安定して取り付けることができる。
【0033】
図5の実施例は、前記第1実施例の挿入穴40の開口端部40aに等角度間隔(実施例は90°間隔)で複数の内向きの突起80が設けられ、それ等の突起80によって支持部が構成されている場合である。突起80は、滑らかに膨出させられており、挿入部18を挿入穴40内に挿入する際の組付作業が容易になるとともに、ペダルアーム12の挿入部18との接触面積が小さいため、その突起80によって支持される部分を支点とするペダルアーム12の揺動が容易になる。図5の(a) は図1の(d) に対応する断面図で、(b) は(a) の右側から見た側面図である。なお、上記突起80は、挿入部18を位置決めして支持できるように3箇所以上に設けられれば良い。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
10:車両用アクセルペダル(操作ペダル) 12:ペダルアーム 14:パッド取付部 16:曲折部 18:挿入部 20:嵌合部 30:ペダルパッド 32:裏面 34:被挿入部 36:被嵌合部 38:被取付部 40、60:挿入穴(逃げ部) 40a、60a:開口端部(支持部) 50、62、70:挿入穴 52、64、72:支持部 54、56、66、68、74、76:逃げ部 80:突起(支持部) θ:曲げ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度で曲げられた曲折部を挟んで先端側に挿入部が設けられ、反対側に嵌合部が設けられたパッド取付部を備えている棒状のペダルアームと、
足踏み操作される踏面と反対側の裏面にそれぞれ設けられ、前記挿入部が軸方向から挿入される挿入穴を有する被挿入部と、前記嵌合部が軸心と直角方向から嵌め込まれる被嵌合部と、から成る被取付部を備えているペダルパッドと、
を有し、前記パッド取付部および前記被取付部を介して前記ペダルパッドが前記ペダルアームに取り付けられて使用される操作ペダルにおいて、
前記挿入穴は、前記挿入部の軸方向の一部を支持する支持部と、該支持部によって支持される部分を支点として前記ペダルアームが揺動することを許容する逃げ部とを有する
ことを特徴とする操作ペダル。
【請求項2】
前記支持部は、前記挿入穴のうち前記ペダルアームの前記曲折部側の開口端部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の操作ペダル。
【請求項3】
前記支持部は、前記挿入穴の軸方向の中央よりも前記ペダルアームの前記曲折部側であって、該曲折部側の開口端から所定寸法だけ内部に入った位置に設けられており、
該支持部の両側にそれぞれ設けられる前記逃げ部のうち少なくとも前記曲折部側の逃げ部は、該支持部から離間するに従って拡径するテーパ穴形状を成している
ことを特徴とする請求項1に記載の操作ペダル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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