説明

操作入力装置

【課題】傾動時にユーザが望まない回転運動が抑制されて、傾動時の操作性が安定で確実な操作入力装置を提供する。
【解決手段】操作入力装置1においては、ノブ2とともに傾動するローテーションシャフト3の鍔部にリブが形成され、アッパハウジング13には溝部が形成されている。ユーザが操作入力装置1を傾動操作すると、リブと溝部とが嵌合することによって、傾動時の回動が抑制されて、傾動時の不安定性や誤操作が回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野において多様な形態の操作入力装置が用いられているが、1つの装置で押下や回転などの複数の操作を受け付けるかたちの操作入力装置がある。その一例が下記特許文献1に示されている。同文献には、操作時の目視による確認が不要で誤操作がないと主張された他方向操作スイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−128862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の操作を受け付ける操作入力装置のなかには、回転操作と所定方向(例えば8方向)への傾動(揺動)操作を受け付けるタイプの装置がある。このタイプの操作入力装置においては、ユーザが傾動させた場合に、力のかけかたによっては回転運動が発生してしまう場合がある。
【0005】
こうした傾動時の回転は、ユーザが望まない操作結果を生むことや誤操作となる可能性がある。また傾動時に不安定で操作性が悪いことも意味する。したがって、傾動時に回転が起きないような操作入力装置が望まれるが、従来技術においては、この課題が認識されているとはいい難い。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、傾動時にユーザが望まない回転運動が抑制されて、傾動時の操作性が安定で確実な操作入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る操作入力装置は、使用者が把持する把持部を備え、使用者が前記把持部を把持して前記把持部が有する仮想的な操作軸線を傾動させる傾動操作を実行するにつれて前記把持部とともに傾動し、使用者が前記把持部を把持して前記把持部が有する操作軸線周りに前記把持部を回動させる回動操作を実行するにつれて前記把持部とともに回動する操作体と、前記操作体の傾動範囲を限定するように、傾動した前記操作体に当接して停止させる停止部と、前記操作体に形成された第1凹凸部と、傾動した前記操作体の回動を前記第1凹凸部と嵌合して抑制するように、前記停止部によって傾動が停止された前記操作体の前記第1凹凸部と嵌合する位置に形成された第2凹凸部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これにより本発明に係る操作入力装置では、使用者による傾動操作と回動操作とを受け付ける機能を有したうえで、操作体の傾動が停止した状態において凹凸嵌合によって操作体の回動を抑制する。したがって傾動時における不安定な操作性が回避できて、傾動時におけるユーザが望まない回動による誤操作が抑制される。
【0009】
また前記第2凹凸部は前記停止部に形成されたとしてもよい。
【0010】
この発明によれば、操作体の傾動を停止する停止部に、操作体の回動を抑制する凹凸部を形成する。したがって停止部に傾動の停止と傾動時の回動の抑制との2つの機能をもたせた簡易で合理的な構成とできる。
【0011】
また前記操作体は、前記回動における周方向に沿って径方向外方に突出した鍔部を備え、その鍔部に前記第1凹凸部は形成されたとしてもよい。
【0012】
この発明によれば、操作体に径方向外方に突出した鍔部を形成して、そこに凹凸部を設けるので、凹凸を設けやすい形状によって凹凸嵌合の機構を備えることができる。
【0013】
また前記停止部は、前記回動における周方向に沿って前記鍔部を覆う覆い部であり、前記第2凹凸部は、その覆い部に形成されているとしてもよい。
【0014】
この発明によれば、操作体の鍔部を周方向に沿って覆う覆い部によって傾動した操作体の鍔部を停止させ、その覆い部に凹凸を形成して傾動した操作体の回動を抑制する。よって鍔部と覆い部とによる簡素な構成によって傾動の停止と傾動時の回動の抑制とが効果的に達成できる。
【0015】
また前記覆い部は、前記回動における周方向に沿って、前記鍔部を径方向の外方から覆う第1覆い部と、その第1覆い部から径方向内方に屈折して、前記中間領域において軸方向から、周方向に沿って、前記鍔部を覆う第2覆い部と、を備え、前記第1凹凸部は、前記鍔部の表面に、前記回動における周方向に沿って周期的に形成された凹凸形状であり、前記第2凹凸部は、前記第2覆い部の表面に、前記回動における周方向に沿って周期的に形成された凹凸形状であるとしてもよい。
【0016】
この発明によれば、操作体に形成された鍔部を覆う覆い部を、径方向外方と軸方向とから覆うように形成し、軸方向から覆う部分と鍔部とに凹凸嵌合する構造を設けるので、操作体を覆うハウジングの形状を効果的に利用して、傾動の停止と傾動時の回動の抑制とが達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例における操作入力装置の斜視図。
【図2】操作入力装置の(a)平面図および(b)正面図。
【図3】操作入力装置の断面を有する斜視図。
【図4】操作入力装置のA−A断面図。
【図5】ノブの(a)平面図および(b)A1−A1断面図。
【図6】ローテーションシャフトの(a)平面図、(b)A2−A2断面図、(c)底面図。
【図7】中心軸の(a)平面図および(b)A3−A3断面図。
【図8】スイングシャフトの(a)平面図および(b)A4−A4断面図。
【図9】スライダーの(a)平面図および(b)A5−A5断面図。
【図10】プレスラバーの(a)平面図および(b)A6−A6断面図。
【図11】ホルダーの(a)平面図および(b)A7−A7断面図。
【図12】基板の(a)平面図および(b)A8−A8断面図。
【図13】クリック板の(a)平面図および(b)A9−A9断面図。
【図14】カバーの(a)平面図および(b)A10−A10断面図。
【図15】ケースの(a)平面図および(b)A11−A11断面図。
【図16】アッパハウジングの(a)平面図および(b)A12−A12断面図。
【図17】傾動操作時の操作入力装置を示す図。
【図18】傾動操作時の嵌合状態を横方向から示す図。
【図19】傾動操作時の嵌合状態を下方向から示す図。
【図20】傾動操作時の回転の様子を示す図。
【図21】クリック板の詳細を示す図。
【図22】傾動操作時の移動可能範囲を示す図。
【図23】傾動操作時の所望の方向と実際の方向の例を示す図。
【図24】軸押し操作時の操作入力装置を示す図。
【図25】軸押し操作時の操作入力装置の詳細を示す図。
【図26】フォトインタラプタの配置例を示す斜視図。
【図27】フォトインタラプタの配置例を示す平面図。
【図28】傾動操作および軸押し操作の判定方法を示す表。
【図29】操作入力装置の車両内への搭載例を示す図。
【図30】クリック板の変更例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施例に係る操作入力装置1(以下、装置)の斜視図である。図2は装置1の(a)平面図、(b)側面図であり、図3はA−A断面で切断されて内部が可視化された斜視図、図4はA−A断面図である。
【0019】
装置1は、ノブ2、ローテーションシャフト3、中心軸4、スイングシャフト5、スライダ6、プレスラバー7、ホルダー8、基板9、クリック板10、カバー11、ケース12、アッパハウジング13、揺動プランジャ40、揺動スプリング41、回転プランジャ50、回転スプリング51を備える。図5から図16はそれら個々の図である。なお図5から図16におけるA1−A1からA12−A12までの断面は、図4に示されたA−A断面と同じ断面である。なお装置1の材質は、例えばプレスラバー7をラバー(ゴム)製、揺動プランジャ40を真鍮製、揺動スプリング41、回転スプリング51をステンレス製あるいは鋼線とし、他は樹脂製とすればよい。
【0020】
以下の説明での水平は、特に説明しない限り、図4における図示水平方向を指すとする。また垂直は、特に説明しない限り、その水平方向と垂直な方向を指すとする。また以下の説明での上、下は、特に説明しない限り、図4における上方、下方を指すとする。
【0021】
図1に示されているように、操作入力装置1は、ユーザがノブ2を把持して、軸押し、回転、8方向傾動(揺動)の操作入力が行える装置である。ノブ2の図4における図示左右方向の中心を通る仮想的な直線を操作軸線Lとする。操作軸線Lはノブに固定されて、ノブ2の運動とともに運動する仮想的な線とする。
【0022】
軸押し操作では、ユーザは操作軸線Lと平行方向にノブ2を下方へ押圧する。ユーザは、回転操作では、ノブ2を操作軸線Lを中心軸として回動させる。傾動(揺動)操作では、ユーザはノブ2を8方向に傾動させる。図17(後述)に示されているように、基板9の基板面と垂直方向の仮想的な軸線を垂直軸線Vとする。ノブ2が傾動操作されていない状態で操作軸線Lは垂直軸線Vと重なるとする。垂直軸線Vおよび操作軸線L上に傾動中心点Pがあり、ノブ2が傾動操作されることにより操作軸線Lが、傾動中心点Pを中心として垂直軸線Vから傾斜する。以上の操作の詳細は後述する。
【0023】
図2に示されているように、装置1は、ケース12の図示上方にノブ2が突出した形状を有する。装置1の下部はカバー11によって覆われている。装置1は、例えば自動車車両の車室内における運転者の手が届く範囲内の場所に、ケース12に形成された孔部(後述)をねじ留めするなどして、カバー11が車室側に露出しないかたちで固定される。
【0024】
ノブ2、ローテーションシャフト3、中心軸4、スイングシャフト5、スライダ6、プレスラバー7、ホルダー8、基板9、クリック板10、カバー11、ケース12、アッパハウジング13、揺動プランジャ40は、一部分を除いて基本的に、垂直軸線V方向に直交な断面が円形状を有する。
【0025】
図5(a)、(b)にはノブ2の平面図、A1−A1断面図が示されている。ノブ2は、図示上部にある上面20から、ローテーションシャフト3を図示上方から包み込む筒部21が延設された形状を有する。筒部21の内面22にローテーションシャフト3が挿入されて、ノブ2とローテーションシャフト3とが固定される。
【0026】
図6(a)、(b)、(c)にはローテーションシャフト3の平面図、A2−A2断面図、底面図が示されている。ローテーションシャフト3は、円板形状の円板部30から2つの円筒部31、32が図示下方に延設されている。内側円筒部31は、中心軸4を図示上方と径方向外方から包む。そして内側円筒部31は、スイングシャフト5によって径方向外方から包まれる。外側円筒部32は、スイングシャフト5を図示上方と径方向外方から包む。したがってスイングシャフト5は、内側円筒部31と外側円筒部32とによって径方向内方と外方から挟まれる。
【0027】
ローテーションシャフト3の外側円筒部32は、図示下方の部分が、傾動中心点Pを中心とする球形状の球状部33となっている。ローテーションシャフト3の上方への運動は、球状部33の表面がアッパハウジング13に当接することにより制止される。球状部33の図示下端には径方向外方に向けて鍔部34が延設されている。
【0028】
円板部30の図示下方の面における、内側円筒部31と外側円筒部32の間の領域には、図示下方に突出した複数の凸部35が、周方向に渡って形成されている。図6(b)、(c)に示されているように、凸部35は、径方向に伸びる稜線を有する山形の突起が周方向に沿って規則的に形成されており、これによりノブ2の回動操作は、所定の回動角度ずつ刻まれた回動操作となる(後述)。
【0029】
鍔部34の上面の径方向内方の部分に、周方向に沿って等間隔に、図示上方に突出した複数個のリブ36(凸部)が形成されている。具体的には、台形状(四角形状)の断面(径方向に直交する断面)を有するリブ36が、鍔部34の上面に径方向外方へ伸びるように形成されている。
【0030】
図7(a)、(b)には中心軸4の平面図、A3−A3断面図が示されている。中心軸4は、軸部42の下方に半球形状の球状部43が形成され、さらにその下方に筒部44が形成されている。球状部43の図示左右方向に棒形状の棒状部46が形成されている。棒状部46の先端の近傍に突起部47が形成されている。
【0031】
軸部42はローテーションシャフト3の内側円筒部31内に挿入される。球状部43は、スライダー6によって下方から支持される。棒状部46は、ホルダー8の貫通孔部82(後述)内を通って、スイングシャフト5に形成された孔部58(後述)内に先端および突起部47が挿入されて固定される。
【0032】
筒部44の内面45には揺動プランジャ40、揺動スプリング41が挿入される。揺動スプリング41の弾性復元力によって揺動プランジャ40が下方に付勢される。揺動プランジャ40は、クリック板10に形成された凹形状面(後述)に押圧される。
【0033】
揺動プランジャ40は径が大きい円柱形状の大径部40aと径が小さい円柱形状の小径部40cとの間がテーパ部40bによってつながれて、小径部40cの先端は曲面形状の先端面40dとなっている。揺動プランジャ40は揺動スプリング41とともに中心軸4の筒部44内に挿入されて、揺動スプリング41の弾性によって付勢されて先端面40dがクリック板10の凹形状面103に当接する。
【0034】
図8(a)、(b)にはスイングシャフト5の平面図、A4−A4断面図が示されている。スイングシャフト5は、円筒部52の下部に球形状の球状部55が形成されている。球状部55の下端から、周方向に間隔を置いて、径方向外方に向けて突出する突出部56が形成されている。
【0035】
上述のとおり円筒部52は、ローテーションシャフト3の外側円筒部32内に挿入される。円筒部52の内面53にはローテーションシャフト3の内側円筒部31が挿入される。円筒部52の上側端面には、軸方向に伸びる孔部54が、周方向に間隔を置いて複数個(例えば2個)形成されている。孔部54内には回転プランジャ50、回転スプリング51が挿入される。
【0036】
スイングシャフト5の球状部55の外面は、ローテーションシャフト3の球状部33の内面と例えば1mm程度の間隔で離間するとすればよい。スイングシャフト5の球状部55の外側表面は傾動中心点Pを中心とする球形状とする。球状部55の内面には2個の孔部58が形成されて、中心軸4の棒状部46の先端および突起部47を収容、固定する。回転プランジャ50は円柱形状部50aに曲面形状の先端面50bを備えた形状を有し、回転スプリング51とともにスイングシャフト5の孔部54に収容されて、図示上方へ付勢されて、先端面50bがローテーションシャフト3の円板部30の下面へ当接する。
【0037】
図9(a)、(b)にはスライダ6の平面図、A5−A5断面図が示されている。スライダ6は、上下方向に貫通孔部61が形成された円筒形状である。貫通孔部61において上端近傍の部分は、球状にえぐられた球状部60とされている。貫通孔部61において下端近傍の部分は、台形形状にえぐられた台形状部62とされている。貫通孔部61の径は、中心軸4の傾動の障害とならないように図示下方ほど大きくされている。
【0038】
球状部60は中心軸4の球状部43を下方から支持する。貫通孔部61には中心軸4の筒部44が挿入される。台形状部62は、プレスラバー7の上端面71(後述)の上に置かれる。球状部60の図示上方には中心軸4の棒状部46などを間隔を置いて収容するような形状が形成されている。
【0039】
図10(a)、(b)にはプレスラバー7の平面図、A6−A6断面図が示されている。プレスラバー7は、円筒部70の下端から径方向外方に鍔部73が形成されている。鍔部73における径方向内方の部分は、円筒部70から傾斜して形成された傾斜部72とされている。プレスラバー7の円筒部70の上面71には、スライダ6の台形状部62の水平面部分が置かれる。プレスラバー7の鍔部73の下端面全体が基板9上に当接し、鍔部73の径方向外方先端がホルダ8の段差部84内に挿入される。円筒部70の内側端面の径は、中心軸4の傾動の障害とならないように図示下方ほど大きくされている。
【0040】
図11(a)、(b)にはホルダー8の平面図、A7−A7断面図が示されている。ホルダー8は、筒形状の筒部80の下端から径方向外方に鍔部81が延設された形状を有する。筒部80は上方ほど小径とすればよい。筒部80の図示左右部分には、縦方向に長い貫通孔部82が1個ずつ形成されている。貫通孔部82には中心軸4の棒状部46が挿入される。鍔部81には、周方向に間隔を置いて孔部83が形成されている。孔部83には、ケース11の突出部112(後述)が挿入される。ホルダー8の図示下方には、プレスラバー7の鍔部73の径方向外方先端が挿入される段差部84が形成されている。
【0041】
図12(a)、(b)には基板9の平面図、A8−A8断面図が示されている。基板9は、円板形状で、下側の面が各種素子が配置された基板面90とされている。基板9の中心には孔部91が、そしてホルダー8の孔部83と重なる位置に孔部92が形成されている。孔部91には中心軸4が挿入される。孔部92にはケース11の突出部112(後述)が挿入される。
【0042】
図13(a)、(b)にはクリック板10の平面図、A9−A9断面図が示されている。クリック板10は、上方に向けて開口した凹部を備えて、ケース11の上面の中央部に載置される。そして、揺動プランジャ40の先端(下方の先端)が凹部内に当接されることにより、クリック板10は、中心軸4を中心位置に安定化させる役割などを果たす。
【0043】
クリック板10の凹部は、垂直軸線Vと直交方向の断面が円形状であり、主に3層構造となっている。すなわちクリック板10の凹部は、上側から、径が大きい円筒状の大径円筒部100、径が小さい円筒状の小径円筒部101、表面が主に曲面状である凹形状面103となっている。大径円筒部100は、ユーザによる傾動操作時に、クリック板10が中心軸4の傾動の障害とならないために形成される。
【0044】
小径円筒部101には、ユーザによる軸押し操作時に、水平方向の端面102を先頭にして中心軸4の筒部44が挿入される。凹形状面103は、ユーザによる傾動操作時に、揺動プランジャ40の先端(下端)が当接しつつ移動する面である。
【0045】
凹形状面103には、揺動プランジャ40の先端を誘導するための形状が形成されている(後述)。クリック板10の固定方法は、例えば図示しない孔部を用いて基板9にねじ止めする等、各種方法を任意に採用すればよい。
【0046】
図14(a)、(b)にはカバー11の平面図、A10−A10断面図が示されている。カバー11は、装置1を裏側(車両装備時にユーザから不可視の側)を覆う部材であり、底面110の径方向端部から円筒部111が形成されている。底面110には複数個の突起部112が上方に突出するように形成されている。突起部112は、ホルダー8の孔部84、基板9の孔部92を貫通して配置される。突起部112の上端面は、ユーザによる軸押し操作時に突き当て面113にローテーションシャフト3の鍔部34の下端面が当接して、過加重が抑制される。
【0047】
図15(a)、(b)にはケース12の平面図、A11−A11断面図が示されている。ケース12は、装置1の胴体部分(ノブ2以外の部分)を覆う部材である。ケース12は、装置内部を径方向外方から覆う円筒形状の円筒部120と、装置内部を軸方向上方から覆う主に円板形状の円板部121とを備える。円板部121の径方向内側部分は、下方に向けて傾斜した傾斜部122となっている。円筒部120の下端には図示左右方向に突出した突出部123が形成されている。突出部123に形成された孔部124を用いた例えばねじ止めによって、ケース12を(ひいては装置1を)車両の車室内に固定すればよい。
【0048】
図16(a)、(b)にはアッパハウジング13の平面図、A12−A12断面図が示されている。アッパハウジング13は、円筒形状の円筒部130の軸方向上側端部から径方向内側へ折り返されて折り返し部131が形成された形状を有する。ユーザが傾動操作をした場合に、折り返し部131の下側端面に、ローテーションシャフト3の鍔部34のうちで傾動によって上昇する部分が当接して、傾動運動を停止させる。
【0049】
折り返し部131の下側端面には溝部132が形成されている。溝部132における個々の溝は、折り返し部131の径方向内側端部から径方向外方へ延びるように形成され、そうした溝が折り返し部131の全周に渡って並ぶように形成されている。折り返し部131の下側端面における溝部132は、傾動したローテーションシャフト3の鍔部34に形成されたリブ36と嵌合する。
【0050】
この嵌合により、ユーザの傾動操作によってローテーションシャフト3が傾動した状態において、ローテーションシャフト3が回転することが抑制される。したがって傾動操作時にユーザの意図しない回転運動が抑制されて、確実に傾動操作のみが実行できる。
【0051】
以上の構成のもとでの装置1の傾動(揺動)操作、軸押し操作、回転(回動)操作を、より詳細に説明する。なおホルダー8、基板9、クリック板10、カバー11、ケース12、アッパハウジング13は(例えば車室内に)固定状態にあるので、これらの操作のいずれに対しても運動しない。
【0052】
まず傾動(揺動)操作を説明する。図17には、図4に図示右方への傾動操作が行われた状態が示されている。ユーザが傾動(揺動)操作、すなわちノブ2を把持して操作軸線Lを傾斜させる操作を実行すると、図17に示されたように、ノブ2、ローテーションシャフト3、中心軸4、スイングシャフト5が傾動操作された方向に傾斜する。上述のとおり、スライダ6の貫通孔部61の内側端面、プレスラバー7の円筒部70の内側端面は、中心軸4の傾動の障害にならないように鉛直軸線Vに対して傾斜している。傾動操作は、傾動中心点Pを中心とする回転運動である。傾動の際、中心軸4の球状部43はスライダ6の球状部60上を摺動し、スイングシャフト5の球状部55はアッパハウジング13の折り返し部131の内側端面に摺動する。
【0053】
傾動操作により、揺動スプリング41によって図示下方に付勢された揺動プランジャ40の先端(下端)が、クリック板10の凹形状面103内を滑動する。凹形状面103内には、傾動操作時に所定の傾動方向へ揺動プランジャ40の先端を誘導するガイド部104が形成されている。その詳細は後述する。
【0054】
傾動操作は、ローテーションシャフト3の鍔部34における傾斜操作方向と反対側(傾動によって上昇する側)の部分が当接することによって停止される。この当接において、ローテーションシャフト3の鍔部34に形成されたリブ36と、アッパハウジング13に形成された溝部132とが嵌合する。これにより、傾動操作時の回転運動が抑制される。
【0055】
次に軸押し操作を説明する。図24に、図4の装置1に対して軸押し操作が行われた状態が示されている。ユーザが軸押し操作、すなわちノブ2を図示下方へ押圧する操作を実行すると、図24に示されているように、ノブ2、ローテーションシャフト3、中心軸4、スイングシャフト5、スライダ6が下方へ平行移動する。
【0056】
その際、ラバーによって形成されたプレスラバー7は、ラバーの弾性によって変形する。軸押し量(中心軸4が図示下方に平行移動する距離)がゼロから増加するにつれてプレスラバー7の形状は徐々に変形していくが、軸押し量がある量を超えると、図24に示されているようにプレスラバー7の傾斜部72が急激に大きく変形する。この大きな変形がユーザの手にクリック感を感じさせる。
【0057】
また軸押し操作により、中心軸4の筒部44が下方に平行移動すると、図25に示されているように、クリック板10の小径円筒部101内に筒部44が挿入される。筒部44の径(直径)は、小径円筒部101の径(直径)よりもわずかに短く設定されており、小径円筒部101内に筒部44が挿入されると、筒部44は傾くことができなくなる。これにより、軸押し操作時にユーザが望まない傾動が抑制されて、確実に軸押し操作が行える。
【0058】
次に回転(回動)操作を説明する。ユーザが回動操作、すなわちノブ2を操作軸線L周りに回転させる操作を実行すると、ノブ2とローテーションシャフト3が回動する。中心軸4の棒状部46が回転しようとしても固定されたホルダー8が制止するので、中心軸4は回動しない。したがって中心軸4の棒状部46の先端が固定されたスイングシャフト5も回動しない。スライダ6、プレスラバー7も回動しない。
【0059】
上述のとおりローテーションシャフト3の下側の面には、図6のように凸部35が形成されている。ユーザによってノブ2が回動操作される際に、回動プランジャ50は上下方向に運動する。回動プランジャ50は回動スプリング51によって上方に向けて付勢されるので、凸部35がある位置では凸部35がない位置と比べてより強く下方に押される。
【0060】
これにより、ノブ2の回動操作において、凸部35の間の位置でノブ2の回動角度は安定する。図6(c)には、凸部35の間の安定位置35aが示されている。凸部35が周方向に等間隔に形成されていることによって安定位置35aも周方向に等間隔に配置される。ノブ2の回動はこの安定位置35aで安定する。隣り合う安定位置35a間の角度ずつ、ノブ2の回動は刻まれることとなる。
【0061】
以下で装置1をより詳細に説明する。図18、図19には、ローテーションシャフト3のリブ36とアッパハウジング3の溝部132の嵌合の様子が示されている。上述のとおり、ローテーションシャフト3の鍔部34には、周方向に等間隔にリブ36が形成されている。同様に、アッパハウジング13にも周方向に等間隔に溝部132が形成されている。
【0062】
図16の例ではリブ36は周方向に等間隔に8個、溝部132は周方向に等間隔に24個形成されている。溝部132の個数は、安定位置35aの1周分の個数と同数とされている。ノブ2およびローテーションシャフト3の回動が安定位置35aによって安定化された状態で傾動されたときに嵌合し合う位置にリブ36と溝部132は形成されている。なお操作入力装置1では、揺動方向数(8)を1周分の回転クリック数(24)の約数としている。揺動方向数と1周分の回転クリック数がこの制約を満たさないと、傾動操作時のリブ36と溝部132との嵌合が成立しない。操作入力装置1においては、揺動方向数と1周分の回転クリック数とを8と24から変更してもよいが、その場合もこの制約は満たすようにする。
【0063】
傾動操作時にリブ36と溝部132とが嵌合し合うことによって傾動した状態でのノブ2やローテーションシャフト3の回転運動が禁止、抑制される。図20に示された従来の操作入力装置では、傾動時にユーザが望まない回転運動が発生してしまうことがあったが、本実施例の操作入力装置1では、傾動時の回動が抑制されることにより、傾動時の操作性が安定化し、誤操作が抑制される。
【0064】
図21には、クリック板10の凹形状面103に形成されたガイド部104が示されている。図23に示されているように、従来の操作入力装置では、ユーザが傾動(揺動)操作をした場合に、操作感が曖昧で、意図した傾動方向に実際には傾動せず誤操作が生じる可能性があった。ガイド部104は、クリック板10の凹形状面103における揺動プランジャ40が揺動スプリング41によって付勢されて当接する部分の形状によって、傾動操作における操作感を明確にして誤操作の可能性を小さくする部位である。
【0065】
ガイド部104は、揺動プランジャ40の先端(下端)が当接して、傾動操作時に所定の傾動方向へと適切に誘導されるように凹形状面103上に形成された凸部である。図21の例では、所定の傾動方向は垂直軸線V周りの全周を8等分した8方向とされている。
【0066】
ガイド部104は、非傾動状態(つまり図4のように操作軸線Lが垂直軸線Vと重なっている状態)で揺動プランジャ40の先端が当接する位置の外縁を周方向に囲む環状凸部106と、その環状凸部106から、径方向外方に向けて放射状に、8つの所定傾動方向の間の8つの境界に形成された線状凸部105と、を含む。
【0067】
図21のB1−B1断面図に示されたように、環状凸部106の形状は、例えば環状の稜線を有するようにクリック板10から突出した形状とし、環状凸部106に囲まれた領域は球面状に滑らかな凹部を形成するとすればよい。ユーザが非傾動状態にあるノブ2を傾動操作した場合に、環状凸部106を超える際にユーザの手はクリック感を感じる。このクリック感によって、ユーザは傾動状態になったことが認識できる。
【0068】
また図21のB1−B1断面図およびB2−B2断面図に示されたように、線状凸部105の形状は、例えば線状の稜線を有するようにクリック板10から突出した形状とし、線状凸部105に挟まれた領域は曲面状に滑らかな凹部を形成するとすればよい。
【0069】
ユーザがノブ2を傾動操作する場合に、8本の線状凸部105によって分割された8方向が適切な傾動方向となる。その8方向D1からD8が図22に示されている。8つの傾動方向D1からD8のそれぞれの両側部に線状凸部105が形成されているので、ユーザは所望の傾動方向に安定して傾動させることができる。
【0070】
なおユーザによるノブ2の傾動操作において許容される操作方向は、線状凸部105によって区画された上記D1からD8の8方向のみではない。図22には、操作軸線Lとノブ2の上面20の交点を点Qとして、ユーザの傾動操作による点Qの移動可能範囲が示されている。すなわち点Qの移動可能範囲は図22に示された円内のすべてである。
【0071】
図22に示された移動可能範囲の外縁は、傾動したローテーションシャフト3がアッパハウジング13に当接(上述のとおりリブ36と溝部132が嵌合)して傾動が停止された状態での傾動角度に対応する。装置1は、ユーザがノブ2を傾動操作する際に、隣接する傾動方向へ移る(例えばD1方向からD2方向へ移行する)ことを許容する。例えば点Qが鉛直軸線L周りの円運動を描くように傾動操作させることもできる。
【0072】
その際、揺動プランジャ40の先端が線状凸部105を超えるときに、ユーザの手はクリック感を感じる。これにより、隣の傾動方向へ移ったことを認識することができる。したがってユーザが傾動方向を変えた場合に、傾動方向が実際に変更できたことが確実に認識できる。またユーザは、隣の傾動方向に移る際のクリック感がないことにより、所望の傾動方向へ操作できていることを確実に認識できる。なお揺動プランジャ40の滑動が可能なように、ガイド部における凹形状のRは揺動プランジャ40の先端面40dのRよりも大きくする。
【0073】
次に、装置1の軸押し操作について説明する。軸押し操作時の装置1は図24、図25に示されている。図24は全体図であり、図25は部分拡大図である。上述のとおり、ユーザの軸押し操作によって、ノブ2、ローテーションシャフト3、中心軸4、スイングシャフト5、スライダ6が下方へ平行移動する。その際、ラバーによって形成されたプレスラバー7は、ラバーが有する弾性によって変形する。
【0074】
軸押し量(中心軸4が図示下方に平行移動する距離)がゼロから増加するにつれてプレスラバー7の形状は徐々に変形していくが、軸押し量がある量を超えると、図24に示されているようにプレスラバー7の傾斜部72が急激に大きく変形(座屈)する。この大きな変形がユーザの手にクリック感を感じさせる。
【0075】
クリック板10には、小径円筒部101が形成されている。中心軸4が下方に押されることにより、中心軸4の円筒部44が小径円筒部101内に挿入、嵌合される。図24(a)は軸押しの途中の段階、図24(b)および図25右図は、完全に中心軸1を押し切った状態(1ストローク完了状態)を示している。図24(a)の段階は、例えば1.5mmストロークした状態であり、プレスラバー7の傾斜部72が坐屈して円筒部70の底面が基板9の図示上面に当接している。図24(b)はさらに軸押しが進行した状態(例えば2mmストローク)で、プレスラバー7がさらに変形しつつ、ローテーションシャフト3の鍔部34の底面にカバー11の突起部112の突き当て面113が突き当たって最終的に軸押しが停止される。これによりユーザは押し切ったことを確実に認識する。
【0076】
小径円筒部101の径(直径)は円筒部44の径(直径)と同じかわずかに長くして、円筒部44が挿入された状態で円筒部44が傾動しないようにする。これにより軸押し操作を行ったときに中心軸4さらにはノブ2が安定化され、軸押し時の傾動が抑制される。図25に示されているように、円筒部44の角部に面取り部44a(あるいはR形状)、クリック板10の小径円筒部101の角部に面取り部101a(あるいはR形状)のいずれか又は両方を形成すれば、円筒部44の小径円筒部101への挿入が容易になり好適である。
【0077】
従来の操作入力装置では、軸押し時にノブが不安定であり、軸押し時にユーザが意図しない傾動が起きてしまうことがあった。しかし装置1では、軸押し時にクリック板10と中心軸4とが嵌合するので、軸押し時にノブ2の不安定感がなく、軸押し時に意図しない傾動で誤操作が起きない。したがって従来にない高い操作性が達成できる。
【0078】
次に、装置1における回転操作、軸押し操作、傾動操作の検知について、図26から図29を参照しながら説明する。
【0079】
図26は、ケース12、アッパハウジング13を除いた状態での装置1の斜視図である。図27は、さらにノブ2、ローテーションシャフト3、スイングシャフト5を除いた状態での平面図である。図28は、検出結果の算出ルーチンを示す図である。図29は、操作入力装置1を自動車車両に搭載した場合の構成図である。
【0080】
図29に示されているように、装置1は車両100のエアコン装置101やオーディオ装置102、ナビゲーション装置102等に電気的に接続されて、車両100の乗員からこれらの各種の車載装置への操作入力を受け付ける装置として機能する。
【0081】
図26、図27に示されているように、スイングシャフト5の4つの鍔部56の下方に4個のフォトインタラプタ14a、14b、14c、14dが配置されている。フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dには、LEDなどにより光を出力する発光部140と、受光素子を備えて発光部140から発光された光を受光する受光部141とが、対向する位置に配置されている。
【0082】
鍔部56は内部が空洞状となっており、ユーザが例えば軸押し操作を行うと、鍔部56が下方へ平行移動することにより、4個のフォトインタラプタ14a、14b、14c、14dがそれぞれ4個の鍔部56内に挿入される。鍔部56の内部の空洞領域には遮断壁56aが形成されており、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dが鍔部56内に挿入されると、遮断壁56aが発光部140と受光部141との間に入り込んで、発光部140から受光部141へ伝達される光を遮断する。
【0083】
フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dが鍔部56の外にある状態では、発光部140から発光された光は受光部141で受光される。フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dは、受光部141が光を受光したらオフを出力し、受光部141が光を受光しないとオンを出力する。
【0084】
装置1は、上述のとおりユーザから、図27に示されたD1からD8の8方向の傾動操作、および軸押し操作、回動操作を受け付ける。スイングシャフト5の4個の鍔部56、および4個のフォトインタラプタ14a、14b、14c、14dは、D1、D3、D5、D7方向に配置されている。
【0085】
4個の鍔部56は、ユーザによる軸押し操作あるいは傾動操作によって下方に押されて、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dのうちのいずれか(あるいは全て)がオンとなる。軸押し操作および8方向の傾動操作のうちのいずれであるかによって、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dのオンオフの組み合わせが異なる。
【0086】
その様子が図28に示されている。すなわちユーザが軸押し操作を実行したら、4個の鍔部56が平行に下方に移動して、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dの全てがオンとなる。またユーザがD1方向に傾動操作したら、D1方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。したがってD1方向への傾動操作の場合フォトインタラプタ14aのみがオンとなり、他のフォトインタラプタ14b、14c、14dはオフとなる。
【0087】
ユーザがD3方向に傾動操作したら、D3方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。したがってD3方向への傾動操作の場合フォトインタラプタ14bのみがオンとなり、他のフォトインタラプタ14a、14c、14dはオフとなる。
【0088】
ユーザがD5方向に傾動操作したら、D5方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。したがってD5方向への傾動操作の場合フォトインタラプタ14cのみがオンとなり、他のフォトインタラプタ14a、14b、14dはオフとなる。
【0089】
ユーザがD7方向に傾動操作したら、D7方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。したがってD7方向への傾動操作の場合、フォトインタラプタ14cのみがオンとなり、他のフォトインタラプタ14a、14b、14dはオフとなる。
【0090】
またユーザがD2、D4、D6、D8方向に傾動したら、その傾動方向の左右両側にあるフォトインタラプタがオンになるように、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14d、および鍔部56、の形状や位置関係を設定する。
【0091】
これにより、ユーザがD2方向に傾動操作したら、その両側のD1、D3方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。D1、D3方向にはフォトインタラプタ14a、14bがある。したがってD2方向への傾動操作の場合、フォトインタラプタ14a、14bがオンとなり、フォトインタラプタ14c、14dはオフとなる。
【0092】
同様にユーザがD4方向に傾動操作したら、その両側のD3,D5方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。D3,D5方向にはフォトインタラプタ14b、14cがある。したがってD4方向への傾動操作の場合、フォトインタラプタ14b、14cがオンとなり、フォトインタラプタ14a、14dはオフとなる。
【0093】
ユーザがD6方向に傾動操作したら、その両側のD5,D7の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。D5,D7方向にはフォトインタラプタ14c、14dがある。したがってD6方向への傾動操作の場合、フォトインタラプタ14c、14dがオンとなり、フォトインタラプタ14a、14bはオフとなる。
【0094】
ユーザがD8方向に傾動操作したら、その両側のD7,D1方向の鍔部56のみが下方に押されて、他の方向の鍔部56は下方に押されない。D7,D1方向にはフォトインタラプタ14d、14aがある。したがってD8方向への傾動操作の場合、フォトインタラプタ14d、14aがオンとなり、フォトインタラプタ14b、14cはオフとなる。
【0095】
以上の性質を用いて装置1は、軸押し操作およびD1からD8の8方向の傾動操作のうちいずれの操作がなされたかを、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dのオンオフ出力の組み合わせから検知する。
【0096】
すなわち図28に示されているとおり、フォトインタラプタ14aのみがオンで、フォトインタラプタ14b、14c、14dがオフの場合、D1方向への傾動操作であると検知する。フォトインタラプタ14a、14bがオンで、フォトインタラプタ14c、14dがオフの場合、D2方向への傾動操作であると検知する。フォトインタラプタ14bのみがオンで、フォトインタラプタ14a、14c、14dがオフの場合、D3方向への傾動操作であると検知する。
【0097】
フォトインタラプタ14b、14cがオンで、フォトインタラプタ14a、14dがオフの場合、D4方向への傾動操作であると検知する。フォトインタラプタ14cのみがオンで、フォトインタラプタ14a、14b、14dがオフの場合、D5方向への傾動操作であると検知する。フォトインタラプタ14c、14dがオンで、フォトインタラプタ14a、14bがオフの場合、D6方向への傾動操作であると検知する。
【0098】
フォトインタラプタ14dのみがオンで、フォトインタラプタ14a、14b、14cがオフの場合、D7方向への傾動操作であると検知する。フォトインタラプタ14d、14aがオンで、フォトインタラプタ14b、14cがオフの場合、D8方向への傾動操作であると検知する。フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dが全てオンの場合、軸押し操作であると検知する。
【0099】
図29に示されているように、操作入力装置1(装置)は例えば車両(自動車)100に装備される。装置1の基板9には、CPU95、RAM96、ROM97が装備されている。CPU95は装置1に関する各種演算などの情報処理を司り、特に装置1へのユーザの操作(が何であるか)を検知する。
【0100】
RAM96はCPU95の作業領域のための揮発性の記憶部であり、ROM97はCPU95での処理で用いられる各種データやプログラムなどを記憶する不揮発性の記憶部である。図29に示されているように、基板9と上記フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dとは電気的に接続されており、フォトインタラプタ14a、14b、14c、14dのオンオフ出力が基板9で取得される。図28の判定ルーチンはプログラム化されてROM97に記憶されており、それをCPU95が実行して傾動方向および軸押し操作の判定を実行すればよい。
【0101】
装置1はさらに回転検出部14eを備えて、ユーザによる回転操作を検出する。図26に示されているように、回転検出部14eはホルダー8の水平面から上方へ突出する棒状の形状を有する。ローテーションシャフト3の鍔部34の径方向外方の端面にはギア(歯車)が形成されている。回転検出部14eの側面にもギアが形成されており、両ギアは嵌合している。
【0102】
ユーザの回動操作によってノブ2およびローテーションシャフト3が回動したら、これらのギアによって回動が回転検出部14eに伝達される。回転検出部14eは回転角度を検出する機能を有する。回転検出部14eによって検出された回転角度が基板9に伝達されて、ユーザが入力した回転角度がCPU95で認識される。
【0103】
以上のとおりCPU95で認識されたユーザによる入力の情報(軸押し操作、8方向の傾動操作、回動操作のうちのどれか、さらに回動操作における回転角度)は、車両100に装備されたエアコン装置101、オーディオ装置102、ナビゲーション装置103などへ送信されて、入力に従いこれらの装置が制御される。
【0104】
なお図28に示された判定ルーチンのうちで、D2、D4、D6、D8方向の判定においては、2個のフォトインタラプタがオンとなることが条件だが、ユーザがうまく操作できなかった場合に2個のフォトインタラプタが同時にオンしない可能性がある。装置1では、こうした場合を判定ルーチンのプログラムによってソフトウェア的に解決すればよい。具体的には、例えば1個のフォトインタラプタがオンとなってから所定時間(例えば数十から100msec)は判定を下さず、所定時間以内に別のフォトインタラプタがオンとなったらそれらのフォトインタラプタが同時にオンとなったとみなせばよい。
【0105】
また図28では4個のフォトインタラプタがオンの場合に軸押し操作だと判定するが、ユーザがうまく4個オンできない可能性も考えられる。したがって判定ルーチンのプログラムにおいて、例えば3個以上がオンの場合は軸押し操作だと判定するようにすればよい。
【0106】
上記のとおり、本発明の装置1では、4個のフォトインタラプタによって8つの傾動方向(および軸押し操作)の検出を行っている。これを仮にフォトインタラプタではなく接触式のスイッチに変更した場合、接触式のスイッチのもつ弾性がユーザに操作感を与えることとなる。したがってスイッチのある方向(D1、D3、D5、D7)とない方向(D2、D4、D6、D8)とではユーザの操作感(ユーザの手が受ける反発力)が異なることとなり望ましくない。また接触式のスイッチを用いてユーザに8方向全てで同じ操作感を与えるためには8個のスイッチが必要となる。
【0107】
これに対して本発明の装置1では、フォトインタラプタは非接触の検出手段であり、ユーザに操作感を与える機能はクリック板10に集約されている。よって装置1は、8方向全てに同じ操作感が与えられ、さらに(8個より少ない)4個のフォトインタラプタで8方向の傾動方向および軸押し操作が検出できるとの顕著な効果を奏する。
【0108】
もちろん上記実施例で検出手段をフォトインタラプタから他のスイッチ、センサに変更してもよい。この場合も、少ない数(4個)の検出手段で8方向の傾動方向および軸押し操作が検知できるとの効果が達成される。また上記実施例では傾動操作が8方向の場合を示したが、本発明では傾動方向数は8に限定されない。傾動方向は、10、6、4、2などの偶数、あるいは3、5、7などの奇数でもよい。そして傾動方向数に応じてフォトインタラプタの装備数および位置とクリック板のガイド溝とローテーションシャフト3のリブ36(第1凹凸部)を傾動方向に応じて変更し、リブ36(第1凹凸部)の数の倍数の溝部132(第2凹凸部)をアッパハウジング13に形成すればよい。
【0109】
図30には、クリック板10のクリック板10’への変更が示されている。クリック板10にはユーザによる傾動操作を8方向に誘導するガイド部104が形成されている。クリック板10’にはユーザによる傾動操作を4方向に誘導するガイド部104’が形成されている。ガイド部104’における4方向は、隣り合う方向が直交する4方向であり、ガイド部104と同様に環状凸部と線状凸部とが形成されている。
【0110】
上述のとおり装置1では、揺動プランジャ40を傾動方向を誘導する機能はクリック板10に集約されている。クリック板10はカバー11と基板9の間に挟持されている。クリック板10の固定方法は、例えば基板9やカバー11にねじ止め、圧入、など既存の固定方法を任意に用いればよい。したがって装置1においてクリック板10を(例えばクリック板10’に)変更することは容易である。よって装置1では、傾動方向数を容易に変更できる。
【0111】
なおクリック板10’に変更した場合、上述のD1、D3、D5、D7方向へ傾動操作は誘導される。ガイド部104’の形状により、D2、D4、D6、D8方向への傾動は著しく困難となる。したがってクリック板10’を用いた場合に、上記図28の8方向用の判定プログラムを用いても、D2、D4、D6、D8方向の検知がなくなるのみであり、支障をきたさない。
【0112】
したがってクリック板10からクリック板10’に変更しても、上記図28の判定プログラムは変更せずに用いてよい。つまり本発明の装置1においては、8方向傾動用の判定プログラムを搭載すれば、クリック板を10から10’に変更するのみで、8方向傾動から4方向傾動へ変更できる。同様の理由で例えば2方向傾動への変更もクリック板の変更のみで対応できる。よって本発明の装置1では、操作方向違いの派生製品の低コスト化が実現できる。
【符号の説明】
【0113】
1 操作入力装置
2 ノブ(把持部)
3 ローテーションシャフト(操作体)
4 中心軸(操作体)
5 スイングシャフト
6 スライダー
7 プレスラバー
13 アッパハウジング(停止部)
36 リブ(第1凹凸部)
132 溝部(第2凹凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持する把持部を備え、使用者が前記把持部を把持して前記把持部が有する仮想的な操作軸線を傾動させる傾動操作を実行するにつれて前記把持部とともに傾動し、使用者が前記把持部を把持して前記把持部が有する操作軸線周りに前記把持部を回動させる回動操作を実行するにつれて前記把持部とともに回動する操作体と、
前記操作体の傾動範囲を限定するように、傾動した前記操作体に当接して停止させる停止部と、
前記操作体に形成された第1凹凸部と、
傾動した前記操作体の回動を前記第1凹凸部と嵌合して抑制するように、前記停止部によって傾動が停止された前記操作体の前記第1凹凸部と嵌合する位置に形成された第2凹凸部と、
を備えたことを特徴とする操作入力装置。
【請求項2】
前記第2凹凸部は前記停止部に形成された請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記操作体は、前記回動における周方向に沿って径方向外方に突出した鍔部を備え、
その鍔部に前記第1凹凸部は形成された請求項1又は2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記停止部は、前記回動における周方向に沿って前記鍔部を覆う覆い部であり、
前記第2凹凸部は、その覆い部に形成されている請求項3に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記覆い部は、
前記回動における周方向に沿って、前記鍔部を径方向の外方から覆う第1覆い部と、
その第1覆い部から径方向内方に屈折して、前記中間領域において軸方向から、周方向に沿って、前記鍔部を覆う第2覆い部と、
を備え、
前記第1凹凸部は、前記鍔部の表面に、前記回動における周方向に沿って周期的に形成された凹凸形状であり、
前記第2凹凸部は、前記第2覆い部の表面に、前記回動における周方向に沿って周期的に形成された凹凸形状である請求項4に記載の操作入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図3】
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【図18】
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【図19】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−204050(P2012−204050A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65655(P2011−65655)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】