説明

操作感触付与型トラックボール装置

【課題】必要に応じて球体との間に充分な大きさの摩擦力を発生させ、メリハリの効いた操作感触を付与することができるトラックボール装置を提供する。
【解決手段】トラックボール装置10は、操作者により操作される球体12と、球体12を回転自在に支持する支持部材16と、球体12の回転状態を検出して検出信号を出力するセンサ24と、球体12の表面に接する摩擦部材26と、摩擦部材26を移動させて球体12の表面と摩擦部材26との間の接触圧を変化させるアクチュエータ28と、アクチュエータ28の駆動を制御する制御部30とを備える。摩擦力は専ら摩擦部材26によって発生しているため、滑りやすさ等を考慮する必要がなく、充分な摩擦力を得ることができるので、メリハリの効いた操作感触を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器や車載電装品等の入力デバイスとして利用することができる操作感触付与型トラックボール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のトラックボール装置に関して、磁性材料を含む球体(トラックボール)を支持部材によって回転自在に支持しておき、操作時の球体の回転状態を検出部で検出するとともに、その検出信号を制御部で制御して所定出力を得るトラックボール装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特にこの先行技術は、電磁石の磁力によって球体と支持部材との間の摩擦力を変化させ、球体の回転に必要な回転操作力を制御してクリック感等の操作感触を付与している。
【特許文献1】特開2004−265118号公報(第3−4頁、図3、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、先行技術のように外部負荷(磁力)によって支持部材と球体との間の摩擦力を変化させる場合、支持部材の材質や構造は、無負荷時(磁力を発生させない時)の滑りやすさも考慮して決定されている必要がある。この場合、支持部材は元々が滑りやすい性質のものとなることから、たとえ電磁石で外部負荷をかけても、それに見合った充分な摩擦力を得ることができない。したがって先行技術には、明確なクリック感等のメリハリの効いた操作感触を付与することが難しいという問題がある。
【0004】
そこで本発明は、必要に応じて球体との間に充分な大きさの摩擦力を発生させ、メリハリの効いた操作感触を付与することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明は、操作者により操作される球体と、球体の表面に接した状態で球体をその中心周りに回転自在に支持する支持部材と、球体の回転状態を検出して、その検出信号を出力するセンサと、球体の回転に対して操作感触を付与する操作感触付与手段と、センサから出力される検出信号に基づき操作感触付与手段による操作感触の付与動作を制御する制御手段とを備えた操作感触付与型トラックボール装置である。そして操作感触付与手段は、支持部材とは別に設けられて球体の表面に接する摩擦部材と、球体及び摩擦部材の少なくとも一方を移動させて球体の表面と摩擦部材との間の接触圧を変化させるアクチュエータとを有する構成である。
【0006】
上記のように本発明は、支持部材によって球体を回転自在に支持しつつ、これとは別の摩擦部材によって球体との間に摩擦力を発生させる構成である。この場合、摩擦部材について元から滑りやすさを考慮する必要がなく、その材質や構造は専ら摩擦力を発生させることだけを考慮して決定すればよい。このため、アクチュエータによって接触圧を変化させれば、それに見合った充分な摩擦力が発生することから、それによって球体(トラックボール)に明確なメリハリのある操作感触を付与することができる。
【0007】
より好ましくは、本発明の操作感触付与型トラックボール装置は以下の構成をさらに備える。すなわち本発明は、球体の中心を挟んで支持部材と反対側に設けられ、球体の表面を部分的に外側へ露出させた状態でその内側に球体の表面と接触可能な当接部を有した脱落防止部材をさらに備えてもよい。この場合、操作感触付与手段は、球体の表面に対して一方向から接する位置に摩擦部材を配置させ、この配置にてアクチュエータにより球体の表面に摩擦部材を押し付けることが好ましい。
【0008】
上記の構成によれば、球体が支持部材によって回転自在に支持されるとともに、脱落防止部材によってその反対側への脱落が確実に防止されるため、球体を安定して回転自在に支持することができる。特に、脱落防止部材が球体の中心を挟んで支持部材の反対側に位置することから、球体を支持部材と脱落防止部材(当接部)との間に挟み込むようにして支持することができる。また、この状態でも脱落防止部材は球体の表面を外側へ露出させていることから、操作者による操作性も阻害されない。なお、ここでいう「外側」は、脱落防止部材からみて支持部材と反対の方向を意味し、逆に「内側」は、脱落防止部材が支持部材に対向する方向を意味する。
【0009】
このように、球体がその中心を挟んで両側から支持される構造であれば、操作中(回転中)も球体自身の位置を安定させることができる。この状態でアクチュエータによって摩擦部材を一方向から押し付けると、その反対方向に反力が生じることから、それによって充分な摩擦力を得ることができる。また言うまでもなく、ここでも摩擦部材の材質や構造は摩擦力だけを考慮すればよいことから、摩擦部材によって明確でメリハリのある操作感触を付与することができる。なお、ここでいう「一方向」は特に限定がなく、支持部材から脱落防止部材に向かう方向に摩擦部材を押し付けてもよいし、支持部材や脱落防止部材と並行な方向に摩擦部材を押し付けてもよい。
【0010】
また上記の操作感触付与手段は、支持部材との間にて球体を挟み込む位置に摩擦部材を配置させるとともに、アクチュエータにより支持部材を介して球体の表面を摩擦部材に対して押し付ける構成であってもよい。
【0011】
この場合、支持部材ごと球体を摩擦部材に押し付けて摩擦力を得ることができるので、それだけ構造を簡素化することができる。またこの場合、支持部材を摩擦部材としても機能させることができるので、その分、必要に応じて強い摩擦力を得ることができる。
【0012】
上記のように支持部材を介して球体を摩擦部材に押し付ける構成の場合、以下の態様が好ましい。すなわちセンサは、検出光を用いて球体の回転に伴う表面の移動を検出する光学式センサからなり、支持部材及びアクチュエータには、支持部材が球体の表面と接する領域の中央位置にてアクチュエータの駆動方向に延びる中空部が形成されていてもよい。この場合、本発明の操作感触付与型トラックボール装置は、中空部内にセンサを配置した状態で検出光を用いた検出を行うことができる。
【0013】
上記の構成であれば、支持部材を介して球体を偏りなく摩擦部材に押し付けることができるし、支持部材の中央位置で検出光を用いた検出を行うため、球体の回転を全方向(前後方向及び左右方向)で精度よく検出することができる。
【0014】
また操作感触付与手段は、球体の中心を挟んで対向する位置に設けられ、それぞれ球体の表面に一方向から接する摩擦部材と、この摩擦部材を球体の表面に押し付けるアクチュエータとを組で有する第1の操作感触付与手段及び第2の操作感触付与手段から構成されていてもよい。この場合、上記の制御手段は、第1及び第2の操作感触付与手段による操作感触の付与動作を同時期に制御することができる。
【0015】
ここまでの構成では、球体又は摩擦部材の少なくとも一方を移動させて摩擦力を得ているため、球体と摩擦部材との相対移動によって球体に僅かな衝撃が加わったり、球体自身が微少に移動することもある。そこで、上記のように第1及び第2操作感触付与手段があって、全体として2組の摩擦部材及びアクチュエータを有する構成とし、これらを制御手段によって同時期に制御すれば、球体に僅かな衝撃が加わったり、球体を微少に移動させたりすることなく、必要な摩擦力を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の操作感触付与型トラックボール装置は、必要に応じて充分な摩擦力を得ることができ、それによって明確でメリハリのある操作感触を球体に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の操作感触付与型トラックボール装置は、例えば、各種の電子機器(コンピュータ機器、オーディオ機器、ビデオ機器)をはじめ、カーナビゲーション装置等の車載電装品用の入力デバイス(ユーザインタフェース)として利用することができる。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態のトラックボール装置10の構成を概略的に示す図である。トラックボール装置10は、例えば樹脂製の球体12を備えており、球体12を中心(立体の中心)周りに回転させてユーザによる操作入力を受け付ける入力デバイスである。
【0019】
〔基本構成〕
球体12を回転自在に支持するため、トラックボール装置10はベース体14、支持部材16、脱落防止部材18及び当接部20等を備えている。このうちベース体14及び脱落防止部材18は、それぞれ厚みを有した板状の部材であり、ここではベース体14と脱落防止部材18とが略平行に配置されている。また、ベース体14及び脱落防止部材18は、例えばコンピュータ等の筐体に連結されていたり、車載電装品の場合はインストルメントパネルに固定されていたりする形態である。
【0020】
図1には断面形状のみが示されているが、ベース体14には平面視で円形の貫通穴14aが形成されており、ベース体14の上面には貫通穴14aに通じるテーパー形状(すり鉢状)の窪み14bが形成されている。
【0021】
一方の脱落防止部材18にも、厚み方向に貫通するテーパー状の貫通穴18aが形成されており、この貫通穴18aは脱落防止部材18の下面から上面に向けて先細となっている。なお脱落防止部材18は、貫通穴18aを通じて球体12の表面の一部を上面側へ露出させており、この露出部分にてユーザが球体12を操作することができる。
【0022】
支持部材16及び当接部20は、例えば樹脂製又は金属製の球形体であり、これらの直径は球体12よりも遙かに小さい。図1の例では支持部材16の方が当接部20よりも僅かに直径が大きくなっているが、トラックボール装置10の実施にあたり特にこのような制約はない。
【0023】
支持部材16は、ベース体14に対して部分的(直径の3分の2程度)に埋め込まれた状態で固定されている。また当接部20は、脱落防止部材18に対して部分的に埋め込まれた状態で固定されている。これら支持部材16及び当接部20は、それぞれ窪み14b又は貫通穴18aの周方向に複数個(例えば3〜4個)ずつ配置されている。なお支持部材16及び当接部20は、それぞれベース体14又は脱落防止部材18に対して回転自在に支持されていてもよい。
【0024】
またベース体14には、例えば窪み14bの位置に光学式のセンサ24が埋め込まれている。センサ24は図示しない検出光を球体12の表面に照射し、その反射光を受光(又は撮像)して球体12の表面の移動(移動方向及び移動量)をリアルタイムに検出可能とする素子である。なおセンサ24の検出信号は、図1中にブロック要素として示されている制御部30に入力されている。
【0025】
この他にトラックボール装置10は、球体12に操作感触を付与する手段として摩擦部材26及びアクチュエータ28を備えている。摩擦部材26は球体12の下方に配置されており、その上面には球体12の表面形状に合致する凹面部(球面部)が形成されている。またアクチュエータ28は、例えばリニアソレノイド等の駆動源であり、そのプランジャの先端に上記の摩擦部材26が取り付けられている。アクチュエータ28は、通電時にプランジャの押出力を大きくして摩擦部材26を球体12の表面に強く押し付けることができる。またアクチュエータ28は、非通電時にプランジャの押出力をゼロに(解除)して摩擦部材26を球体12の表面から僅かに引き離すか、又は僅かに通電させてプランジャの押出力を小さくして、球体12の表面に摩擦部材26を僅かに接触させた状態に保持することができる。なおアクチュエータ28の動作(通電/非通電)は制御部30によって制御されている。
【0026】
制御部30は、例えば図示しない中央処理装置(CPU)を始め、ROMやRAM等のメモリデバイスを有したマイクロコンピュータである。また制御部30には、クロック発生回路や割り込みコントローラ、パルス幅変調IC、入出力管理用のドライバ回路、I/O等の周辺ICが組み込まれている。
【0027】
〔基本動作〕
次に、トラックボール装置10の基本動作について説明する。制御部30は、その動作時にメインプログラムを実行する。メインプログラムの実行に伴い、制御部30はセンサ24を駆動し、その検出光を用いた検出機能をアクティブにする。これを受けてセンサ24は検出光を照射し、球体12の表面からの反射光を受光して検出信号を生成する。検出信号(アナログ信号)は制御部30の入力ドライバ(ADC)にてデジタル信号に変換され、これを所定の割込周期でCPUがサンプリングする。CPUはサンプリングした検出信号に基づいて球体12の回転、つまり、その表面の移動(移動方向及び移動量)からユーザによる操作入力を認識する。
【0028】
また制御部30のCPUはユーザの操作入力を認識すると、ROMに記憶されている負荷情報を読み出し、この負荷情報に基づいてアクチュエータ28に対する駆動信号を生成する。駆動信号は例えばパルス幅変調(PWM)ICにて変調されたパルス信号に変換され、出力ドライバ(DAC)からアクチュエータ28に印加される。このとき、例えば負荷情報が「最大の操作感触を付与するもの」であれば、制御部30は例えばアクチュエータ28を最大のデューティ比で駆動し、摩擦部材26を最大の駆動力で球体12の表面に押し付ける。このとき、当接部20からの反力で球体12の表面と摩擦部材26との間に最大の摩擦力が発生するので、球体12の操作に対して最大の操作感触が付与されることになる。なお、制御部30による具体的な制御手法についてはさらに後述する。
【0029】
第1実施形態の構造によれば、支持部材16や当接部20は球体12を回転自在に支持するだけであり、球体12の表面との間に摩擦力を発生させているのは専ら摩擦部材26である。このため、支持部材16や当接部20の材質や構造について摩擦を考慮する必要がない。一方、摩擦部材26の材質や構造については特に滑りを考慮する必要がなく、専ら摩擦だけを考慮すればよい。したがって、摩擦部材26によって必要且つ充分な摩擦力を得ることができ、それによって明確なクリック感や抵抗感等のメリハリの効いた操作感触を付与することができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態について説明する。以下の説明では、図示も含めて第1実施形態と共通する事項については同じ符号を付し、その重複した説明を省略するものとする。
【0031】
図2は、第2実施形態のトラックボール装置102の構成を概略的に示した図である。以下、特に第1実施形態との違いを中心に説明する。
【0032】
第2実施形態のトラックボール装置102は、支持部材27と摩擦部材36とで球体12を回転自在に支持する構造である。すなわち、第2実施形態では支持部材27の形態が異なっており、支持部材27は球体12の鉛直下方に設置されている。また支持部材27には、その上面に球体12の表面形状に合致する凹面部(曲面部)が形成されている。そして支持部材27は、上記のアクチュエータ28のプランジャの先端に取り付けられており、アクチュエータ28の駆動によって支持部材27が上下に移動する構成となっている。
【0033】
一方、球体12の中心を挟んで支持部材27の反対側(つまり上方)に摩擦部材36が設置されている。図2では断面形状のみ示されているが、摩擦部材36は平面視で環状をなし、その中央に開口が形成された形態である。そして摩擦部材36は、その周縁(側面)にてベース体34に取り付けられている。なお第2実施形態では、摩擦部材36と球体12との接触面は環形状となる。
【0034】
〔基本動作〕
第2実施形態の場合、アクチュエータ28が駆動されると、支持部材27を介して球体12が摩擦部材36に押し付けられ、それによって摩擦力が発生する。このとき支持部材27を摩擦部材としても機能させることができるので、それだけ大きな摩擦力を得ることができる。なお、センサ24を用いたセンシング動作や操作感触の付与動作については第1実施形態と同様である。
【0035】
〔第3実施形態〕
次に第3実施形態について説明する。ここでも同様に、図示も含めて第1又は第2実施形態と共通する事項については同じ符号を付し、その重複した説明を省略するものとする。
【0036】
図3は、第3実施形態のトラックボール装置103の構成を概略的に示した図である。第3実施形態のトラックボール装置103は、第2実施形態と以下の点で相違する。
【0037】
第3実施形態では、支持部材40及びアクチュエータ38の構成が異なっている。アクチュエータ38は円柱形状の外形をなし、その内側にリング形状のアーマチュア38aを有している。また支持部材40は平面視でリング形状をなしており、その中央位置には中空部42が形成されている。この中空部42は、支持部材40が球体12の表面と接する領域の中央位置にてアクチュエータ38の内部をその駆動方向(ここでは上下方向)に延びている。そしてセンサ24は、中空部42内に配置されており、この中空部42を通じて検出光を照射し、その反射光を受光するものとなっている。
【0038】
〔基本動作〕
第3実施形態の場合、その基本動作は第2実施形態と同様である。加えて第3実施形態では、リング形状の支持部材40によって球体12を押し上げているため、球体12を偏りなく摩擦部材36に押し付けることができる。また、センサ24が中空部42内に配置されているため、球体12の左右方向(図中矢印X)及び前後方向(図中矢印Y)、そしてこれらを合成した全方向について球体12の回転を精度よく検出することができる。
【0039】
〔第4実施形態〕
続いて第4実施形態について説明する。上記と同様に、図示も含めて第1〜第3実施形態と共通する事項については同じ符号を付し、その重複した説明を省略するものとする。
【0040】
図4は、第4実施形態のトラックボール装置104の構成を概略的に示した図である。第4実施形態のトラックボール装置104は、第1実施形態と以下の点で相違する。
【0041】
第4実施形態では、脱落防止部材18に当接部20が設けられていない。また摩擦部材26及びアクチュエータ28は、球体12の中心を挟んで対向する位置にそれぞれ1組ずつ配置されている。また、これら対向する一対のアクチュエータ28の駆動方向はいずれも球体12の中心点を通り、互いに同一線上にある。そして第4実施形態では、ベース体14の貫通穴14a内にセンサ24が配置されている。
【0042】
〔基本動作〕
第4実施形態の場合、制御部30は2つのアクチュエータ28に対して同時に駆動信号を印加する。また駆動信号は、基本的に同一のパルス波形である。このため第4実施形態では、球体12が2つの摩擦部材26に挟まれた状態で摩擦力が発生し、球体12そのものの位置は変化しない。この点、第1〜第3実施形態では、アクチュエータ28,38の駆動によって球体12に僅かな衝撃が加わったり、僅かに球体12が移動したりすることがあるが、第4実施形態ではそのようなことはない。
【0043】
〔制御手法〕
最後に、制御部30による操作感触の付与に関する制御手法について概要を説明する。図5は、アクチュエータ28,38に印加される駆動パルスと、それに伴う操作感触の大きさの変化を示したタイミングチャートである。以下、それぞれについて説明する。
【0044】
図5中(A):上記のように制御部30にパルス幅変調ICを搭載した場合、制御部30からアクチュエータ28,38に印加される駆動パルスは、例えば周期Tを基本として、この周期T内でのパルス幅W1,W2が設定された波形となる。摩擦力を比較的小さくする場合、制御部30はパルス幅変調によって比較的小さいパルス幅W1を設定し、周期Tで駆動信号を印加する。一方、摩擦力を比較的大きくする場合、制御部30は比較的大きいパルス幅W2を設定する。
【0045】
図5中(B):上記のパルス幅W1が設定されると、それによって球体12に付与される操作感触は比較的小さくなる。一方、上記のパルス幅W2が設定されると、操作感触は比較的大きくなる。その他にも、パルス幅の設定によって操作感触を大小に調整可能である。また、このとき合わせて印加電圧を調整してもよい。
【0046】
本発明は上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。例えば、センサ24は光学式のものだけでなく、磁気反応式のものでもよい。また、アクチュエータ28,38は電磁式に限らず、油圧式や空圧式のものであってもよい。
【0047】
その他、図示とともに示した各種部材の形状や配置はいずれも好ましい例であり、本発明の実施に際してこれらを適宜変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態のトラックボール装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】第2実施形態のトラックボール装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】第3実施形態のトラックボール装置の構成を概略的に示す図である。
【図4】第4実施形態のトラックボール装置の構成を概略的に示す図である。
【図5】アクチュエータの駆動パルスと操作感触の大きさの変化を示したタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 トラックボール装置
12 球体
14 ベース体
16 支持部材
18 脱落防止部材
20 当接部
24 センサ
26 摩擦部材
27 支持部材
28 アクチュエータ
30 制御部
36 摩擦部材
38 アクチュエータ
38a アーマチュア
40 支持部材
42 中空部
102,103,104 トラックボール装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者により操作される球体と、
前記球体の表面に接した状態で前記球体をその中心周りに回転自在に支持する支持部材と、
前記球体の回転状態を検出して、その検出信号を出力するセンサと、
前記球体の回転に対して操作感触を付与する操作感触付与手段と、
前記センサから出力される検出信号に基づき前記操作感触付与手段による操作感触の付与動作を制御する制御手段とを備えた操作感触付与型トラックボール装置であって、
前記操作感触付与手段は、
前記支持部材とは別に設けられて前記球体の表面に接する摩擦部材と、
前記球体及び前記摩擦部材の少なくとも一方を移動させて前記球体の表面と前記摩擦部材との間の接触圧を変化させるアクチュエータとを有することを特徴とする操作感触付与型トラックボール装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作感触付与型トラックボール装置であって、
前記球体の中心を挟んで前記支持部材と反対側に設けられ、前記球体の表面を部分的に外側へ露出させた状態でその内側に前記球体の表面と接触可能な当接部を有した脱落防止部材をさらに備え、
前記操作感触付与手段は、
前記球体の表面に対して一方向から接する位置に前記摩擦部材を配置させ、この配置にて前記アクチュエータにより前記球体の表面に前記摩擦部材を押し付けることを特徴とする操作感触付与型トラックボール装置。
【請求項3】
請求項1に記載の操作感触付与型トラックボール装置であって、
前記操作感触付与手段は、
前記支持部材との間にて前記球体を挟み込む位置に前記摩擦部材を配置させるとともに、前記アクチュエータにより前記支持部材を介して前記球体の表面を前記摩擦部材に対して押し付けることを特徴とする操作感触付与型トラックボール装置。
【請求項4】
請求項3に記載の操作感触付与型トラックボール装置であって、
前記センサは、検出光を用いて前記球体の回転に伴う表面の移動を検出する光学式センサからなり、
前記支持部材及び前記アクチュエータには、前記支持部材が前記球体の表面と接する領域の中央位置にて前記アクチュエータの駆動方向に延びる中空部が形成されており、
前記中空部内に前記センサを配置した状態で検出光を用いた検出を行うことを特徴とする操作感触付与型トラックボール装置。
【請求項5】
請求項1に記載の操作感触付与型トラックボール装置であって、
前記操作感触付与手段は、
前記球体の中心を挟んで対向する位置に設けられ、それぞれ前記球体の表面に一方向から接する摩擦部材と、この摩擦部材を前記球体の表面に押し付けるアクチュエータとを組で有する第1の操作感触付与手段及び第2の操作感触付与手段から構成されており、
前記制御手段は、
前記第1及び第2の操作感触付与手段による操作感触の付与動作を同時期に制御することを特徴とする操作感触付与型トラックボール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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