説明

操作装置

【課題】プッシュプッシュ式の操作装置において、操作部材の移動方向の製品サイズの縮小化を可能とする。
【解決手段】プッシュプッシュ式の操作装置において、ベース部材1のインシュレータ3に第1のカム溝22と第2のカム溝25を設ける。操作部材4のホルダ6にロックピン30を取り付ける。ロックピン30は、操作部材4の移動方向(矢印A1,A2方向)に対して直交する矢印B方向に延び、かつその延び方向にスライド可能に配置した。ロックピン30は、操作部材4の移動に伴い両端部の先端部31a,32aが第1および第2のカム溝22,25を摺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるプッシュプッシュ式の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュプッシュ式の操作装置、例えばプッシュプッシュ式のスイッチ装置においては、固定側のベース部材(ケース)と可動側の操作部材(操作子)との間に、操作部材を選択的に押込み位置にロックするためのロック機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。このロック機構は、ベース部材側に設けられV字状の係合部を有するハート型のカム溝と、操作部材に取り付けられ当該操作部材の移動に基づき先端部の係止部が前記カム溝を摺動するロックピンとから構成されている。このスイッチ装置において、操作部材は復帰用付勢手段である圧縮コイルばねにより原位置方向に付勢されていて、原位置に位置された操作部材を1回押圧操作すると、ロックピンの係止部がカム溝を摺動して係合部に係合することで操作部材が押込み位置にロックされ、操作部材を再度押圧操作すると、係合部に対する前記係止部の係合が解除されて操作部材は原位置に復帰移動される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−17871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスイッチ装置におけるロック機構においては、ロックピンの腕は、操作部材の移動方向に沿って長く延びているのが一般的である。このため、操作装置(スイッチ装置)において、そのロックピンの腕の長さが、製品の長さ寸法に影響を及ぼしており、その方向(操作部材の移動方向)の製品サイズが大きくなってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プッシュプッシュ式の操作装置において、操作部材の移動方向の製品サイズの縮小化が可能な操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明の操作装置は、
ベース部材と、
このベース部材に押圧方向およびこの押圧方向とは反対方向へ往復移動可能に設けられ、復帰用付勢手段により前記押圧方向とは反対方向へ付勢された操作部材と、
前記ベース部材および前記操作部材のうちの一方の部材に設けられ、V字状をなす係合部を有するハート型のカム溝と、
前記ベース部材および前記操作部材のうち前記カム溝が設けられた部材とは反対側の部材に取り付けられ、前記操作部材の移動に基づき先端部が前記カム溝を摺動するとともに前記係合部に対して係脱するロックピンと、を備え、
前記操作部材が前記押圧方向とは反対方向の原位置に位置された状態から1回押圧操作されることに伴い前記ロックピンの先端部が前記カム溝の前記係合部に係合することで前記操作部材が押込み位置にロックされ、前記押込み位置にロックされた前記操作部材が再度押圧操作されることに伴い前記係合部に対する前記ロックピンの先端部の係合が解除されて前記操作部材が前記原位置に復帰される構成のものであって、
前記ロックピンは、前記操作部材の移動方向に対して交差する方向に延び、かつその延び方向に沿ってスライド可能に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロックピンは、操作部材の移動方向に対して交差する方向に延び、かつその延び方向に沿ってスライド可能に配置されているので、ロックピンの腕が操作部材の移動方向に延びているものとは違い、操作部材の移動方向の製品サイズの縮小化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示すスイッチ装置(操作装置)の分解斜視図
【図2】操作部材が原位置に位置された状態でのスイッチ装置を示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図
【図3】図2(b)のX1−X1線に沿う縦断正面図
【図4】図2(a)のX2−X2線に沿う縦断左側面図
【図5】図3のX3−X3線に沿う縦断右側面図
【図6】ベース部材のうちのインシュレータ単体を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図
【図7】操作部材のうちのホルダ単体を示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図
【図8】(a)〜(d)はロックピンの動きを説明する作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の操作装置をプッシュプッシュ式のスイッチ装置に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
まず、図1〜図5において、ベース部材1は、ボデー2とインシュレータ3とを組み合わせることによって構成されている。また、操作部材4は、ノブ5とホルダ6とを組み合わせることによって構成されている。これらボデー2、インシュレータ3、ノブ5およびホルダ6は、電気絶縁材、この場合電気絶縁性を有する合成樹脂により形成されている。
【0010】
このうちボデー2は、矩形の筒状をなしていて、後部の上下両側に弾性変形可能な係合爪7を2個対向状態で有している(図2(b)、図5参照)。インシュレータ3は、後部にコネクタ部8を有するとともに、このコネクタ部8の外側の上下に対向する2側面に係合凸部9を有していて、これら係合凸部9を前記係合爪7に係合させることによってボデー2に固定状態に取り付けられている。コネクタ部8の内部には、複数本の端子10(図4参照)が設けられている。また、インシュレータ3には、前方に向けて突出する接続端子11が複数本設けられている。これら接続端子11には、プリント配線基板12が取り付けられる。プリント配線基板12は、これに形成された接続孔13を接続端子11に嵌合して半田付けすることにより取り付けられる。
【0011】
インシュレータ3の内側の側面(図1において前部の左側の側面)の所定部位には、側方へ突出する一対の接点案内凸部14(図3、図4、図6参照)が設けられている。これら一対の接点案内凸部14は、前後方向に延びていて、対向する内側に一対の固定接点15が設けられている。また、インシュレータ3において、一対の接点案内凸部14の外側(図4、図6において上下の外側)に位置させて、第1のカム溝形成部18と第2のカム溝形成部19とが設けられている。
【0012】
このうち第1のカム溝形成部18には、図8(a)に示すように、V字状をなす係合部20を有するハート型のカム凸部21の周りにハート型のカム溝である第1のカム溝22が形成されている。この第1のカム溝22の底面に相当する部位には、後述するロックピン30の一端部側の先端部31aが摺動する際に逆戻りしないようにするために、複数の段差部24が形成されている。この第1のカム溝22の構成については、従来のカム溝と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、図8(a)に示すように、第2のカム溝形成部19には、V字状をなす係合部20を有するハート型のカム凸部21の周りにハート型のカム溝である第2のカム溝25が形成されている。この第2のカム溝25の底面に相当する部位には、第1のカム溝22のような段差部24は形成されておらず、平坦面となっている。この第2のカム溝25の底面に相当する部位には、後述するロックピン30の他端部側の先端部32aが摺動するようになっている。
【0013】
前記操作部材4におけるホルダ6は、前記ボデー2に後方から挿入され、そのボデー2から突出した当該ホルダ6の前端部に、前記ノブ5が、当該ホルダ6と一体に前後方向へ往復移動するように取着されている。したがって、操作部材4は、押圧方向である後方(図1の矢印A1方向)およびこれとは反対方向である前方(図1の矢印A2方向)へ往復移動可能に設けられている。ホルダ6とインシュレータ3との間には、圧縮コイルばね27(図1、図5参照)が配設されている。この圧縮コイルばね27は、ホルダ6ひいては操作部材4を押圧方向とは反対の前方(矢印A2方向)へ付勢する復帰用付勢手段を構成している。
【0014】
ホルダ6において、インシュレータ3の前記第1および第2のカム溝形成部18,19に対向する位置に位置させて、ロックピン収容溝28(図1、図3、図5、図7参照)が形成されている。このロックピン収容溝28は、操作部材4の移動方向に対して交差、この場合直交する上下方向(図1、図5の矢印B方向)に延びていて、このロックピン収容溝28にロックピン30が収容されている。
【0015】
このロックピン30は、図1に示すように金属製の線材により形成されたもので、長手方向の両端部に同方向へ向けて折曲された折曲部31,32を有するとともに、長手方向の中間部にU字状に折曲された中間折曲部33を有し、全体としてE字状をなしていて、前記ロックピン収容溝28に当該ロックピン収容溝28の延び方向(矢印B方向)に沿ってスライド可能に収容されている。このロックピン30は、ホルダ6に設けられた押圧突部34(図3参照)により前記第1および第2のカム溝形成部18,19側に押されていて、一端部側の折曲部31の先端部31aが第1のカム溝22に摺動可能に当接するとともに、他端部側の折曲部32の先端部32aが第2のカム溝25に摺動可能に当接している。
【0016】
ホルダ6において、ロックピン収容溝28の前部側には、可動接点取付部35(図5参照)が形成されていて、この可動接点取付部35に可動接点36が取り付けられている。この可動接点36は、図1に示すようにコ字状をなしていて、両側の先端部に接点部36aを有している。可動接点36の両接点部36aは、前記接点案内凸部14の内面に沿って前後方向に摺動可能に当接していて、操作部材4の移動に伴い前記固定接点15に対して接離する。一対の固定接点15と可動接点36により、スライド式のスイッチ要素37(図4参照)を構成している。
【0017】
次に上記構成の作用を説明する。
図2〜図5は、圧縮コイルばね27の付勢力で前方へ付勢された操作部材4が原位置に位置された状態が示されている。この状態では、図8(a)に示すように、ホルダ6に取り付けられたロックピン30における一端部の折曲部31の先端部31aは、第1のカム溝22においてカム凸部21の前方に位置し、他端部の折曲部32の先端部32aは、第2のカム溝25においてカム凸部21の前方に位置している。また、このとき、ホルダ6に取り付けられた可動接点36の一対の接点部36aは、図4に示すように固定接点15の前方に位置していて、当該固定接点15から離間している。したがって、スイッチ要素37はオフ状態である。
【0018】
この状態からノブ5が後方へ押圧操作されると、操作部材4が後方(矢印A1方向)へ移動する。これに伴い、ロックピン30および可動接点36も同方向へ移動する。このうち、ロックピン30における一端部の折曲部31の先端部31aは、図8(b)の矢印C1で示すように第1のカム溝22に沿って摺動し、カム凸部21の後方まで移動する。また、ロックピン30における他端部の折曲部32の先端部32aも、折曲部31の先端部31aの摺動に合わせて同図の矢印C1で示すように第2のカム溝25に沿って摺動し、カム凸部21の後方まで移動する。また、可動接点36は、矢印A1方向への移動に伴い、両接点部36aが一対の固定接点15に接触し、スイッチ要素37はオン状態となる。
【0019】
そして、ノブ5に対する押圧力が解除されると、操作部材4は圧縮コイルばね27の付勢力により前方(矢印A2方向)へ移動する。これに伴い、ロックピン30における一端部の折曲部31の先端部31aは、図8(c)の矢印C2で示すように第1のカム溝22に沿って摺動し、カム凸部21の係合部20に係合する。また、ロックピン30における他端部の折曲部32の先端部32aも、折曲部31の先端部31aの摺動に合わせて同図の矢印C2で示すように第2のカム溝25に沿って摺動し、カム凸部21の係合部20に係合する。これらの係合により、操作部材4は押込み位置にロックされる。このとき、可動接点36の両接点部36aは固定接点15に接触した状態が維持され、スイッチ要素37はオン状態が維持される。
【0020】
次に、ノブ5が再度押圧操作されると、操作部材4が後方(矢印A1方向)へ移動し、これに伴い、ロックピン30および可動接点36も同方向へ移動する。このうち、ロックピン30における一端部の折曲部31の先端部31aは、図8(d)の矢印C3で示すように第1のカム溝22に沿って摺動し、係合部20に対する係合が解除され、カム凸部21の後方まで移動する。また、ロックピン30における他端部の折曲部32の先端部32aも、折曲部31の先端部31aの摺動に合わせて同図の矢印C3で示すように第2のカム溝25に沿って摺動し、係合部20に対する係合が解除され、カム凸部21の後方まで移動する。また、可動接点36は、矢印A1方向へ移動するが、両接点部36aは一対の固定接点15に接触したままで、スイッチ要素37はオン状態のままである。
【0021】
そして、ノブ5に対する押圧力が解除されると、操作部材4は圧縮コイルばね27の付勢力により前方(矢印A2方向)へ移動する。これに伴い、ロックピン30における一端部の折曲部31の先端部31aは、図8(d)の矢印C4で示すように第1のカム溝22に沿って摺動し、カム凸部21の前方(図8(a)で示す位置)まで移動する。また、ロックピン30における他端部の折曲部32の先端部32aも、折曲部31の先端部31aの摺動に合わせて同図の矢印C4で示すように第2のカム溝25に沿って摺動し、カム凸部21の前方(図8(a)で示す位置)まで移動する。これにより、操作部材4は原位置に復帰する。このとき、可動接点36の両接点部36aは固定接点15から離間し、スイッチ要素37はオフ状態となる。
【0022】
上記した実施形態によれば、ロックピン30は、操作部材4の移動方向(矢印A1方向および矢印A2方向)に対して交差する方向(矢印B方向)に延び、かつその延び方向に沿ってスライド可能に配置されているので、ロックピンの腕が操作部材の移動方向に延びているものとは違い、操作部材4の移動方向の製品サイズの縮小化が可能となる。
【0023】
また、カム溝(第1のカム溝22と第2のカム溝25)は、ロックピン30のスライド方向(矢印B方向)に並んで2箇所に設けられ、ロックピン30は、前記スライド方向の両端部の先端部31a,32aが、操作部材4の移動に基づきそれら第1のカム溝22と第2のカム溝25をそれぞれ摺動する構成となっている。これにより、操作部材4が押込み位置にロックされた際に操作部材4が傾くことを防止でき、操作部材4およびロックピン30の移動を安定化させることができる。
【0024】
この場合、第2のカム溝25にも第1のカム溝22と同様に段差部24を設けることも可能であるが、2つのカム溝で1個のロックピン30を移動させると、ロックピン30の移動不良が発生しやすいおそれがある。この点、2つのうちの一方の第2のカム溝25には段差部24を設けないようにし、段差部24のある第1のカム溝22によってロックピン30を主体的に移動させ、第2のカム溝25は、そのロックピン30の移動を補助するようにすることで、ロックピン30の移動を安定化させることができる。
【0025】
本発明は上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、第1および第2のカム溝22,25とロックピン30の配置を逆にし、第1および第2のカム溝22,25を可動側の操作部材4側に設け、ロックピン30を固定側のベース部材1側に設けるようにしてもよい。また、本発明は、スイッチ要素37のない操作装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0026】
図面中、1はベース部材、4は操作部材、15は固定接点、20は係合部、21はカム凸部、22は第1のカム溝(カム溝)、24は段差部、25は第2のカム溝(カム溝)、27は圧縮コイルばね(復帰用付勢手段)、30はロックピン、31は折曲部、31aは先端部、32は折曲部、32aは先端部、36は可動接点、37はスイッチ要素を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
このベース部材に押圧方向およびこの押圧方向とは反対方向へ往復移動可能に設けられ、復帰用付勢手段により前記押圧方向とは反対方向へ付勢された操作部材と、
前記ベース部材および前記操作部材のうちの一方の部材に設けられ、V字状をなす係合部を有するハート型のカム溝と、
前記ベース部材および前記操作部材のうち前記カム溝が設けられた部材とは反対側の部材に取り付けられ、前記操作部材の移動に基づき先端部が前記カム溝を摺動するとともに前記係合部に対して係脱するロックピンと、を備え、
前記操作部材が前記押圧方向とは反対方向の原位置に位置された状態から1回押圧操作されることに伴い前記ロックピンの先端部が前記カム溝の前記係合部に係合することで前記操作部材が押込み位置にロックされ、前記押込み位置にロックされた前記操作部材が再度押圧操作されることに伴い前記係合部に対する前記ロックピンの先端部の係合が解除されて前記操作部材が前記原位置に復帰される構成の操作装置であって、
前記ロックピンは、前記操作部材の移動方向に対して交差する方向に延び、かつその延び方向に沿ってスライド可能に配置されていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記カム溝は、前記ロックピンのスライド方向に並んで2箇所に設けられ、
前記ロックピンは、前記スライド方向の両端部の先端部が、前記操作部材の移動に基づき前記2箇所のカム溝をそれぞれ摺動することを特徴とする請求項1記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221571(P2012−221571A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82708(P2011−82708)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】