擦弦機構、並びに擦弦機構を設けた擦弦楽器並びに電気擦弦楽器
【課題】擦弦機構は、多くの人に演奏の機会を提供でき、なおかつ、従来の擦弦楽器では不可能であった重層的な和音演奏や、対位法的ポリフォニック的な演奏また和声演奏を、一人の演奏者によって演奏を可能にする、器楽演奏の可能性を広げる画期的な擦弦機構を提供する。
【解決手段】擦弦部材1と、擦弦部材の回転動力である速度制御モーター3と、速度制御モーターの回転動力を擦弦部材に伝達する伝達部材2と、フットペダル4aの操作に基づいて速度制御モーターの回転速度を制御する速度制御装置4によって構成される。
【解決手段】擦弦部材1と、擦弦部材の回転動力である速度制御モーター3と、速度制御モーターの回転動力を擦弦部材に伝達する伝達部材2と、フットペダル4aの操作に基づいて速度制御モーターの回転速度を制御する速度制御装置4によって構成される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の弦楽器には、弓を用いて弦を擦って演奏する種類のものがある。西洋のバイオリン属やチェロ属の楽器や、中国の胡弓である。「弦を擦って演奏する楽器」を略して、擦弦楽器と呼ばれる場合がある。
【0002】
また近年、電気的な手法によって弦振動を増幅し、演奏に用いる電気擦弦楽器が開発された。バイオリン属やチェロ属の楽器の形状をもとにした電気擦弦楽器のエレキバイオリン、エレキチェロなどがある。バイオリンやチェロを原型にしたエレキバイオリンやエレキチェロは、圧電素子を用いて弦振動を検出するピックアップを設置しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、擦弦手段に回転体を用いて、持続音を発生せしめ、演奏に用いるものもある(例えば、特許文献2記載参照。)。
【0004】
また、ハーディ・ガーディと呼ばれるヨーロッパの弦楽器がある。木製円盤の曲面に松ヤニを塗って、円盤をハンドルによって手回し、回転する円盤によって擦弦する(非特許文献3記載)。
【0005】
【特許文献1】特許公開2004−144774号公報
【特許文献2】特許公開平9−6332号公報
【非特許文献1】「世界音楽文化図鑑」アラン・ブラックウッド著、別宮貞得監訳、東洋書林、2001年6月5日第1刷発行、P118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べたバイオリン属やチェロ属の擦弦楽器、また特許文献1記載の電気擦弦楽器などにおいて、擦弦は右手に持った弓によって行われる。
【0007】
従来の演奏法は、長細い弓の一端を持ち、その弓を使って弦を擦る。その瞬間に最適な擦弦状態を作り出す技術を習得するには、膨大な練習量が必要とされる。弓を動かすのは、主に腕の動きによるものであり、例えばバイオリンやチェロの練習では、長時間腕を動かしつづけることになる。
【0008】
演奏者がお年寄りであると、弓を使って擦弦する楽器の練習そのものが身体的に大きな負担となる場合があり、演奏練習そのものが困難である。
【0009】
また、右手に弓を持って演奏するため、左手の指による押弦によって音程を決定する。左手の指だけに頼って押弦をしていくために、演奏は単旋律的メロディー的なものにならざるを得ず、重層的な音の堆積によって作られる和音や、西洋クラシックに代表されるような複数声部の同時演奏である和声や、対位法的な音楽構成を持つ楽曲演奏には、複数の演奏者による合奏に頼るしかなかった。
【0010】
特許文献2記載の発音持続装置は、弦接触部材の回転動作の調節を手動で行う。片手で弦を押さえ、もう片方の手で発音持続装置の操作を行うとするものであり、従来の擦弦楽器の音楽構成の範囲を超えるものとは言い難い。非特許文献1のハーディ・ガーディにおいても同様である。
【0011】
本発明の擦弦機構は、このような従来の擦弦楽器が有していた問題を解決するものであり、擦弦楽器の豊かな音楽表現力を損なわないで、多くの人に演奏の機会を提供し、なおかつ単体の擦弦楽器の持つ音楽構成の範囲を広げるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明は上記課題を解決するために、請求項1に記載の、擦弦部材と、擦弦部材の回転動力である速度制御モーターと、速度制御モーターの回転動力を擦弦部材に伝達する伝達部材と、フットペダルの操作に基づいて速度制御モーターの回転速度を制御する速度制御装置によって構成されることを特徴とする擦弦機構を提供する。
【0013】
擦弦部材を速度制御モーターによって回転させ、速度制御モーターの回転速度をフットペダルの操作によって制御する機構を用いることで、腕の動きで弓を動かして擦弦する必要がなくなった。弦を押さえ、回転している擦弦部材に弦を押し当てるだけで擦弦ができるためである。
【0014】
フットペダルは、自動車や電動ミシン等に、広く用いられているものであり、年齢や性別を問わず、多くの人に使用されている。フットペダルは、操作が簡単なうえ、身体的負担の少ない操作手段である。
【0015】
よって、フットペダルを用いることによって、楽器演奏による身体的な負担を軽くすることが可能になった。
【0016】
また、弓の代わりに擦弦部材を用いることで、同時に擦弦可能な弦の本数を増やすこともできた。
【0017】
従来の弓を用いた擦弦楽器であると、同時に擦弦できるのは、一本の弦、ないしは隣り合う二本の弦までであった。しかし、擦弦部材を用いることで、同時に二、三弦、またそれ以上の本数の弦を、同時に擦弦出来るようになった。また隣り合っていない、複数の弦を同時に押さえ、擦弦することが可能になった。
【0018】
また、フットペダルを用いて擦弦部材の回転を操作する手段によって、従来の擦弦楽器において弓を扱うはずの手を、弦を押さえることに使えるようになった。
【0019】
そのため、従来の擦弦楽器では、複数の楽器とその奏者を必要とした和音、複数声部を同時かつ並行的に演奏する和声や、対位法的な構成を持つ楽曲を、一人の奏者で演奏することができる。
【0020】
請求項2に記載の、前記擦弦部材は、円盤形状の回転体と、回転体の曲面に弾性体の層を設け、更に弾性体の上に弦と接触し擦弦する摩擦体を着脱可能な両面テープまたは接着剤によって設置したことを特徴とする擦弦機構を提供する。
【0021】
弾性体を設けないで、摩擦体を直接、回転体に設置すると、振動する弦が回転体にぶつかって、「カチカチカチ」と雑音が生ずる。円盤形状の回転体に、弾性体の層を設け、その上に弦と接触して擦弦する摩擦体を設置したことで、弾性体がクッションの役割をして、雑音を軽減することが可能となった。
【0022】
請求項3に記載の、擦弦機構を設けたことを特徴とするアコースティックの擦弦楽器を提供する。
【0023】
また請求項4に記載の、擦弦機構を設けたことを特徴とする電気擦弦楽器を提供する。
【0024】
本発明の擦弦機構を用いた擦弦楽器並びに電気擦弦楽器によって、従来の擦弦楽器における問題点を改善することが可能になった。本発明の擦弦機構を用いた擦弦楽器は、後に実施例を記載して説明している。
【0025】
また従来の弦楽器においても、本発明の擦弦機構を設置することで、音楽構成の範囲を広げることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の擦弦機構は、多くの人に演奏の機会を提供でき、なおかつ、従来の擦弦楽器では不可能であった対位法的ポリフォニック的な演奏、また複雑で重層的な和音、和声演奏を一人の演奏者において可能にさせ、器楽演奏の可能性を広げる画期的な擦弦機構である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
まず図1において、本発明の擦弦機構の説明を行う。図1は、本発明の擦弦機構の各部材の相互関係を説明するために記載した図である。
【0029】
円盤形状の擦弦部材1は、伝達部材2を介して、速度制御モーター3を回転動力として回転する。速度制御装置4は、フットペダルの操作に基づいて、速度制御モーター3の回転速度の制御を行う。
【0030】
速度制御モーター3は、ヘッドギアを設けて、モーターとヘッドギアが一体になっているものとしている。使用用途に応じて、ヘッドギアを用いることは、一般に広く行われている技術だと考えた。以下、モーターの駆動を受けて回転するヘッドギアの駆動軸を、速度制御モーター3の駆動軸3aとして記述している。
【0031】
擦弦部材1は、円盤形状の実施を例に記載した。図1において、擦弦部材1の側面である曲面は、俵のように曲面中央に膨らみを有した形状で記載している。擦弦部材1の角が弦に接触すると、雑音を生じる場合や、摩擦体7がめくれる場合があるからである。主に4種類の異なる側面形状を有する擦弦部材1を制作して実施に用いた。それらは図20に記載している。
【0032】
伝達部材2は、速度制御モーター3の駆動軸3aにカプラーを設け、二つのユニバーサル・ジョイントを介して回転動力を伝達する機構を実施例として記載した。他にも、タイミングベルトやギヤを用いて、伝達部材2とした実施がある。
【0033】
作動時に発生するノイズを軽減させるためには、伝達部材2のような中継の部材を減らしていくことが望ましい。ノイズを小さくするために擦弦部材1を速度制御モーター3の駆動軸3aに直接設置した実施もある。擦弦部材1を速度制御モーター3の駆動軸3aに直接に設置した場合、伝達部材2は設けないことになる。
【0034】
擦弦部材1を回転させる回転軸2aは、ベアリング2bによって、両端を支持され、回転する。回転軸2aと擦弦部材1の関係を分かりやすくするために、ベアリング2b並びに緩衝材5は、切断したものとして記載した。
【0035】
4は速度制御装置である。図解を容易にするために、電気コードによって接続される実施を例に記載した。速度制御装置4のフットペダルは、踏み込み式のフットペダルを用いた実施例を記載し、速度制御モーター3と速度制御装置4の間をつなぐ電気コードは速度制御装置4の中に含まれるものとして記載した。速度制御モーター3並びに速度制御装置4には、オリエンタルモーター株式会社製のAXUシリーズの製品を使用した。
【0036】
踏み込み板4aは、シーソーのように、つま先と踵の相互の上下運動で、踏み込み板4aの操作を行う。
【0037】
また踏み込み板4aに、足を引っ掛けるためのベルトを設置した実施がある。
【0038】
5は緩衝材である。本発明の擦弦機構を弦楽器本体に設置した場合に、ノイズの原因となる速度制御モーター3や伝達部材2から生じる振動を、楽器本体に伝えないようにするために設けた。
【0039】
図2において、円盤形状の擦弦部材1の説明を行う。
【0040】
円の中心からのびる放射線が描かれている層6は弾性体、その外の層7は摩擦体である。摩擦体7にはトレーシングペーパーや普通印刷紙、馬の尾毛、また釣り用のビニール糸やカーボン糸を試験的に用いた。摩擦体7の設置の手段として、内側に両面テープを使用した。
【0041】
摩擦体7は、上記記載のトレーシングペーパー以下の材料と、接着に用いた両面テープを一つの層として、摩擦体7としている。両面テープを用いた理由は、摩擦体7を着脱可能な状態で固定するためである。弾性体6の材質にゴムを用いた場合、接着剤を用いて、摩擦体7を設置した実施もある。摩擦体7を着脱可能な状態で設置することで、摩擦体7の交換をすることができる。
【0042】
回転体8を、木材や木繊維によって作られた集成材から制作して、側面の表面を滑らかにして、直接松ヤニを付着させた実施がある。弾性体6と摩擦体7を設置しないものである。結果は、弦と回転体が弦振動によって、小刻みにぶつかり合い、カチカチと雑音が生じた。
【0043】
そのため、摩擦体7の下層に弾性体6を用いた。これによって、弦振動から生じる雑音を軽減させることが可能になった。
【0044】
弾性体6の実施には、2ミリメートルのスポンジの層や、2ミリメートルのゴムの層で実施した。スポンジやゴムの厚みや接着方法、幅によって、擦弦状態は影響を受けた。
【0045】
従来の擦弦楽器に使用される馬の尾毛の場合を参考にすると、一般にチェロを擦弦する弓に張られる馬の尾毛は、バイオリンの弓に張られる馬の尾毛に比べ、太くて硬い尾毛が用いられる。
【0046】
それから推測して、低音弦を擦弦する擦弦部材1の弾性体6にゴム板を用い、高音弦を擦弦する擦弦部材1にスポンジを用いて、擦弦する弦の太さの違いによって、弾性体6を変えた実施もある。
【0047】
実施において、硬さの異なる上記の弾性体を重ねて、弾性体6の層として用いた実施もある。
【0048】
図3において、円盤形状の擦弦部材1における摩擦体7の設置する際の、継ぎ目αについて説明する。
【0049】
図3は側面から擦弦部材1を見た図で、継ぎ目αの実施例を記載している。
【0050】
摩擦体7は、切り端の両端が重ならないように切り揃えて、弾性体6の上に設置する。切り端が重なると段差が出来てしまい、擦弦時に弦が引っ掛かって雑音のもとになるためである。
【0051】
また、単に切り揃えるだけではなく、図3記載のように、継ぎ目αが斜めになるよう角度をつけて切り揃えた。斜めに切り揃えることで、弦の引っ掛かりを軽減することができた。
【0052】
図4において、円盤形状の擦弦部材1の代わりに、摩擦体7を円環状にして、ベルト式に回転させる実施を説明する。
【0053】
9はベルトのガイドまたはガイドローラー、黒く塗りつぶされた10は平ベルトを示す。11は弦である。回転軸2aに、平ベルト10を回転させるためのプーリー2cを設置した。
【0054】
円盤形状の擦弦部材1を用いた場合、擦弦部材1を設置するスペースを確保することが設計の前提条件となり、その他の周辺部材の設計は、そこから従属的に決めることになる。
【0055】
図4のように摩擦体7をベルトにすることで、設置スペースにかかわる設計の選択肢を広げるものである。
【0056】
図4に記載したのは平ベルト10であるが、平ベルトの代わりに、高いトルクを伝達することができるタイミングベルトを用いた実施もある。平ベルト10やタイミングベルトを設けないで、円環状にした摩擦体7のみを回転させる実施もある。
【0057】
これより、本発明の擦弦機構を一組設置した擦弦楽器の実施例について、図5、図6、図7、図8を参照しながら説明する。
【0058】
弦保持部12と弦巻き取り部13によって弦11を張り渡す。従来の弦楽器に用いる金属弦を使用することを想定しており、金属弦の多くが、弦の一端に小さな金具を設けてある。この金具は、弦を固定する手段として用いられている。
【0059】
図中において、11aで示される丸い部材が、金具である。金具11aによって、弦を保持する構造を採用した。
【0060】
弦保持部12は、弦を通す切れ目を設け、その切れ目に金具11aが引っかかることによって、弦11を保持するものである。
【0061】
弦11を2本張り渡した実施を例に記載した。弦11の本数は、2本から増やすことも、減らすことも可能である。弦11が押さえられ、回転する擦弦部材1によって擦弦されて生じた弦振動を、下駒14を介して響板15に振動を伝達する。
【0062】
響板15は、図6に見るように膨らみを有する構造になっている。この響板15の部分が平板なものを用いた実施もある。胡弓は、この部分が蛇の皮を使用してあり、それを転用した実施もある。
【0063】
弦11の下に、指盤16がある。指盤16には、音程位置を示す目盛り17と、数字18を設けた。
【0064】
数字譜という楽譜の種類がある。大正琴において、広く使われている楽譜の形式で、音程を数字で記譜する。弦を押さえる各キーにはそれぞれ数字があてられており、演奏者が数字譜の数字に従ってキーを押さえて弦を弾くと、曲が演奏できる。西洋の五線譜による記譜法よりも譜読が容易で、初心者でも演奏練習をすることが可能である。
【0065】
図5から図8に記載した、本発明の擦弦機構を設けた擦弦楽器も、数字譜の使用を想定し、指盤16に設けた目盛り17に対応した数字18を設けた。
【0066】
指盤の一端に上駒9を設ける。
【0067】
本体20のA−Aから切断し、内部構造を記載した側面図が図6である。
【0068】
本体20は、中に仕切り21が入った箱の形状になっている。仕切り21に、緩衝材5を挟んで、速度制御モーター3を固定ネジ22によって設置する。
【0069】
響板15から発する音を、共鳴筒23によって共鳴させる。
【0070】
図7は、下から見た図である。
【0071】
図7記載の共鳴筒23の底面には、何も設けていないので、響板15が見えている。共鳴筒23の底面に紙や薄い板を設けた実施もある。薄い板や紙を設けると、音響を変化させることができる。
【0072】
足24によって、本体20の底面が浮かせてある。底面の隙間から、音が周囲に広がる仕組みになっている。
【0073】
25は、速度制御モーター3を取り外す時に開けるフタであり、ネジで四隅を固定する実施を例にして記載した。速度制御モーター3を交換する必要がある場合、フタ25を外して速度制御モーター3を取り出す。
【0074】
図8は、着席した演奏者が、本発明の擦弦機構を1組用いた擦弦楽器を演奏している図である。台26に本体20をのせて演奏する形態を記載した。
【0075】
図9から図15に記載したのは、本発明の擦弦機構を二つ用いた電気擦弦楽器の実施例を記載した。
【0076】
前記の図5から図8に記載した擦弦楽器の各部材を示す符号のうち、弦11,弦11の一端に設けられた金具11a、弦保持部12,弦巻き取り部13を、図9から図15に記載した電気擦弦楽器に転用した。
【0077】
若干の形状や寸法の差異はあるが、同じ機能を果たす部材には、符号を転用した方が理解を容易にすると考えたからである。
【0078】
図9から図15に記載した電気弦楽器は、図1に記載の擦弦機構を二つ使用している。よって、擦弦機構の各部材の数字表記も、そのまま用いた。
【0079】
実施において、弦振動を検出するのは、主にバイオリン属やチェロ属の楽器を原型とする電気擦弦楽器に使用されている圧電素子を用いたピックアップを設置した。設置した位置は、下駒27と擦弦部材1の間の本体26に、圧電素子の板を設置した。
【0080】
ピックアップは、従来の製品を使用したため、図には記載していない。
【0081】
従来のエレキギターやエレキバイオリンにおいて、ピックアップにかかわる電気機材、配線や出力端子、入力端子、音量つまみや音質調整のつまみは、楽器本体に設置されている。本発明の擦弦機構を設置した電気擦弦楽器のボディ26の、一部を削って凹みを作り、エレキバイオリン設けられている、電気機材を組み込んだ実施もある。
【0082】
弦巻き取り部13と弦保持部12によって、弦11を設置した。弦保持部12は、弦11を通す穴を設け、弦11の一端に設けられている金具11aを引っ掛けることで、弦11を固定する。
【0083】
ボディ26は、エレキギターやエレキバイオリンのように、木材から切り出して成形した。
【0084】
速度制御モーター3を設置するために、取り付け部材28をボディ26に設けた。取り付け部材28は、図5から図8に記載した擦弦楽器の仕切り21と同様に、緩衝材5を間に挟んで速度制御モーター3をネジ止めする。
【0085】
実施において、図9から図15に記載した電気擦弦楽器は、弦11を8本張り渡した。それに伴い弦保持部12と弦巻き取り部13の数も8組設けた。
【0086】
図9から図15に記載した電気擦弦楽器において、弦11と擦弦部材1の間隔を弦ごとに調節できるように、下駒27は弦ごとに独立しており、なおかつ高さ調節を可能にする構造を有している。よって、下駒27も8個設置した。
【0087】
下駒17の詳細な構造は、図12を参照しながら説明する。弦11と接触する端は、山形に削った。下駒27の高さ調節に用いる高さ調節ネジ29をねじ込む穴をあけ、それから下駒27を差し込む下駒穴30をあける。下駒穴30の位置は、図10あるように、弦保持部12と擦弦部材1との間にする。そして下駒27を、ボディ26に設けた下駒穴30に、着脱可能な状態で差し込んだ。
【0088】
31は擦弦部材1を保護する保護板である。楽器が転倒した場合に、擦弦部材1を保護する。また、ベアリング2bを設ける役割も担っている。図1記載のように、緩衝材5を間に挟んでベアリング2bを設置した。また、実施によっては、ベアリング2bの周りに緩衝材5を設けない場合もあった。
【0089】
指盤32は、図5から図8に記載した擦弦楽器と機能的に、大きな差異はない。音程位置をあらわす目盛り33もある。図9から図15に記載した楽器には、この指盤32が2本、並列に並べてある。擦弦部材1が2組用いられているためである。
【0090】
なお、演奏練習の際に、目盛り33に数字ではなく、目盛りの示す音階名を併記した。これは、音程位置を視覚的に認識するものであり、初心者向けの練習への導入として、鍵盤楽器などにおいても広く用いられている。
【0091】
また、目盛り33の位置に、フレット加工を施した実施もある。
【0092】
上駒34は、図13に詳細を記載した。図9から図15に記載した楽器において、太い弦にテンション、張りを持たせるために上駒の弦接触面を階段状にずらした。従来の弦楽器の多くは、上駒の弦接触面は直線的に設置してあり、弦の長手方向に対して直角をなすように設置されている。
【0093】
上駒34の弦接触面を階段状にずらしたのは、チェロに使われている従来の弦を、図9から図15に記載した電気擦弦楽器に使用したために、このような形になった。
【0094】
そのため、弦の太さや、弦の材質が変わると、従来の弦楽器の上駒のように、弦接触位置が直線的に配置され得る可能性がある。
【0095】
スペーサー35は、指盤32の演奏に適した位置に固定するために用いた。弦11と指盤32との間隔を微調節できるように、指盤32はネジ留めにして、着脱可能な状態にした。スペーサー35の形状を変えることで、指盤32の位置を微調整することができる。
【0096】
図10は上方から見た外観図で、図解を容易にするために、弦11は記載していない。図11は弦11を設置した場合の外観図である。
【0097】
図14は、演奏方法の例を記載した図である。楽器を足の間に置き、足で速度制御装置4の踏み込み板4aを操作し、演奏している。ボディ26を、演奏者の着席している椅子に置いている。
【0098】
演奏者の身体の位置と、楽器の相互関係が分かりやすくなるように、演奏者の左足と、左足で操作される速度制御装置4を電気コードの途中から省略して記載した。
【0099】
演奏者から見て、右側に位置する擦弦部材1を右足のフットペダルで操作し、右側の擦弦部材1によって擦弦される弦11を、右手で押さえて擦弦し、演奏する。左側も同様に行う。
【0100】
実施において、右手によって、擦弦される4本の弦11はバイオリンのように高い音域を発音できる弦を張り、左手によって演奏される4本の弦11はチェロの弦を張った。これによって、右手でバイオリンの音域を、左手でチェロの音域を演奏することが可能になった。
【0101】
図15は、楽器の支持部材36を記載した。着脱可能な方法で、ボディ26を固定する。実施において、三脚の支持部材36を制作し、それを例に記載した。
【0102】
図16,図17において、本発明の擦弦機構と、従来のバイオリンの下駒と弓の位置関係を図に記載して、擦弦の構造を比較して説明する。
【0103】
図16は、バイオリンに使われる弓に張られた馬の尾毛37と下駒38であり、擦弦時の位置関係を記載した。図17が、擦弦部材1の円盤の輪郭線と弦11の位置関係を記載した。図16,図17は共に、4本ずつ弦11が張ってある場合を例に記載してある。
【0104】
従来のバイオリンは、馬の尾毛37は、張り渡された4本の弦のうち、隣り合った二本しか、同時に擦弦することが出来ない。これが、従来の弦楽器における構造的な問題である。
【0105】
本発明の擦弦機構において、擦弦部材1は、演奏されない時点では、弦11と触れていない。演奏者が弦11を押さえた時点から、擦弦部材1と弦11が接触し、擦弦されるようになっている。
【0106】
弦11を押さえる方向は、円盤の中心方向に向かって、弦11を押し下げるのであり、弦11を円盤形状の擦弦部材1の外周に押し当てる方向を言う。
【0107】
図4記載の円環状にした摩擦体7をベルト式に回転させる実施においても、弦11との位置関係は同じで、演奏者が弦11を押さえたら、弦11と円環状の摩擦体7が接触し、擦弦されるような位置関係で設置している。
【0108】
擦弦部材1,または図4記載の実施においても、押さえられた弦11をすべて、例えば4本同時に擦弦することができる。隣り合っていない複数の弦11を同時に擦弦することもできる。
【0109】
図18において、円盤形状の擦弦部材1の側面形状について説明する。
【0110】
実施において、様々な形状の回転体8を制作した。それらを実施例として記載した。
【0111】
左から、形状加工を施していない回転体8(V)。面取り加工を施した回転体8(W)。円盤の側面の中央部が膨らんでおり、俵のような形状にした回転体8(X)。膨らみが片寄って、すぼんだ形になっている回転体8(Y)、主にこの4種の形状を制作した。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の擦弦機構であり、各部材の相互関係を説明するために記載した図。
【図2】擦弦部材の、摩擦体と弾性体と回転体と回転軸を記載した図。
【図3】擦弦部材に用いた摩擦体の繋ぎ目を記載した図。
【図4】平ベルトを用いた擦弦機構の実施例を記載した図。
【図5】本発明の擦弦機構を一組用いた擦弦楽器を上方から見た図。
【図6】図5記載の擦弦楽器のA−A断面および側面図。
【図7】図5記載の擦弦楽器を下方から見た図。
【図8】図5記載の擦弦楽器の演奏例を記載した図。
【図9】本発明の擦弦機構を2組用いた電気擦弦楽器の側面図。
【図10】弦を張り渡していない状態の電気擦弦楽器を上方から見た図。
【図11】電気擦弦楽器に弦を8本張り渡した形態の図。
【図12】電気擦弦楽器の下駒の構造を説明する図11におけるB−B断面図。
【図13】電気擦弦楽器の上駒の拡大図。
【図14】電気擦弦楽器の演奏例を記載した図。
【図15】電気擦弦楽器と、電気擦弦楽器を支持する三脚を記載した側面図。
【図16】バイオリンの下駒を記載した図。
【図17】擦弦部材の輪郭線と弦を記載した図。
【図18】擦弦部材の形状を比較する図。
【符号の説明】
【0113】
2 伝達部材
2a 擦弦部材1の回転軸
2b 回転軸2aを保持するベアリング
3 速度制御モーター
3a 速度制御モーターの駆動軸
4 速度制御装置
4a 踏み込み板
9 ガイドローラー
11 弦
11a 弦の一端に設けてある金具
12 弦保持部
13 弦巻き取り部
14 下駒
16 指盤
17 音程位置を示す目盛り
18 目盛りに併記した数字
19 上駒
20 擦弦機構を一組用いた擦弦楽器の本体
21 仕切り
22 固定ネジ
23 共鳴筒
24 足
25 フタ
26 擦弦機構を二組用いた電気擦弦楽器のボディ
27 電気擦弦楽器の下駒
28 取り付け部材
29 高さ調節ネジ
30 下駒穴
31 保護板
32 電気擦弦楽器の指盤
33 電気擦弦楽器の音程位置を示す目盛り
34 電気擦弦楽器の上駒
35 スペーサー
36 支持部材
37 従来のバイオリンに使用される弓に張り渡された馬の尾
毛
38 バイオリンの下駒
【背景技術】
【0001】
従来の弦楽器には、弓を用いて弦を擦って演奏する種類のものがある。西洋のバイオリン属やチェロ属の楽器や、中国の胡弓である。「弦を擦って演奏する楽器」を略して、擦弦楽器と呼ばれる場合がある。
【0002】
また近年、電気的な手法によって弦振動を増幅し、演奏に用いる電気擦弦楽器が開発された。バイオリン属やチェロ属の楽器の形状をもとにした電気擦弦楽器のエレキバイオリン、エレキチェロなどがある。バイオリンやチェロを原型にしたエレキバイオリンやエレキチェロは、圧電素子を用いて弦振動を検出するピックアップを設置しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、擦弦手段に回転体を用いて、持続音を発生せしめ、演奏に用いるものもある(例えば、特許文献2記載参照。)。
【0004】
また、ハーディ・ガーディと呼ばれるヨーロッパの弦楽器がある。木製円盤の曲面に松ヤニを塗って、円盤をハンドルによって手回し、回転する円盤によって擦弦する(非特許文献3記載)。
【0005】
【特許文献1】特許公開2004−144774号公報
【特許文献2】特許公開平9−6332号公報
【非特許文献1】「世界音楽文化図鑑」アラン・ブラックウッド著、別宮貞得監訳、東洋書林、2001年6月5日第1刷発行、P118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べたバイオリン属やチェロ属の擦弦楽器、また特許文献1記載の電気擦弦楽器などにおいて、擦弦は右手に持った弓によって行われる。
【0007】
従来の演奏法は、長細い弓の一端を持ち、その弓を使って弦を擦る。その瞬間に最適な擦弦状態を作り出す技術を習得するには、膨大な練習量が必要とされる。弓を動かすのは、主に腕の動きによるものであり、例えばバイオリンやチェロの練習では、長時間腕を動かしつづけることになる。
【0008】
演奏者がお年寄りであると、弓を使って擦弦する楽器の練習そのものが身体的に大きな負担となる場合があり、演奏練習そのものが困難である。
【0009】
また、右手に弓を持って演奏するため、左手の指による押弦によって音程を決定する。左手の指だけに頼って押弦をしていくために、演奏は単旋律的メロディー的なものにならざるを得ず、重層的な音の堆積によって作られる和音や、西洋クラシックに代表されるような複数声部の同時演奏である和声や、対位法的な音楽構成を持つ楽曲演奏には、複数の演奏者による合奏に頼るしかなかった。
【0010】
特許文献2記載の発音持続装置は、弦接触部材の回転動作の調節を手動で行う。片手で弦を押さえ、もう片方の手で発音持続装置の操作を行うとするものであり、従来の擦弦楽器の音楽構成の範囲を超えるものとは言い難い。非特許文献1のハーディ・ガーディにおいても同様である。
【0011】
本発明の擦弦機構は、このような従来の擦弦楽器が有していた問題を解決するものであり、擦弦楽器の豊かな音楽表現力を損なわないで、多くの人に演奏の機会を提供し、なおかつ単体の擦弦楽器の持つ音楽構成の範囲を広げるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明は上記課題を解決するために、請求項1に記載の、擦弦部材と、擦弦部材の回転動力である速度制御モーターと、速度制御モーターの回転動力を擦弦部材に伝達する伝達部材と、フットペダルの操作に基づいて速度制御モーターの回転速度を制御する速度制御装置によって構成されることを特徴とする擦弦機構を提供する。
【0013】
擦弦部材を速度制御モーターによって回転させ、速度制御モーターの回転速度をフットペダルの操作によって制御する機構を用いることで、腕の動きで弓を動かして擦弦する必要がなくなった。弦を押さえ、回転している擦弦部材に弦を押し当てるだけで擦弦ができるためである。
【0014】
フットペダルは、自動車や電動ミシン等に、広く用いられているものであり、年齢や性別を問わず、多くの人に使用されている。フットペダルは、操作が簡単なうえ、身体的負担の少ない操作手段である。
【0015】
よって、フットペダルを用いることによって、楽器演奏による身体的な負担を軽くすることが可能になった。
【0016】
また、弓の代わりに擦弦部材を用いることで、同時に擦弦可能な弦の本数を増やすこともできた。
【0017】
従来の弓を用いた擦弦楽器であると、同時に擦弦できるのは、一本の弦、ないしは隣り合う二本の弦までであった。しかし、擦弦部材を用いることで、同時に二、三弦、またそれ以上の本数の弦を、同時に擦弦出来るようになった。また隣り合っていない、複数の弦を同時に押さえ、擦弦することが可能になった。
【0018】
また、フットペダルを用いて擦弦部材の回転を操作する手段によって、従来の擦弦楽器において弓を扱うはずの手を、弦を押さえることに使えるようになった。
【0019】
そのため、従来の擦弦楽器では、複数の楽器とその奏者を必要とした和音、複数声部を同時かつ並行的に演奏する和声や、対位法的な構成を持つ楽曲を、一人の奏者で演奏することができる。
【0020】
請求項2に記載の、前記擦弦部材は、円盤形状の回転体と、回転体の曲面に弾性体の層を設け、更に弾性体の上に弦と接触し擦弦する摩擦体を着脱可能な両面テープまたは接着剤によって設置したことを特徴とする擦弦機構を提供する。
【0021】
弾性体を設けないで、摩擦体を直接、回転体に設置すると、振動する弦が回転体にぶつかって、「カチカチカチ」と雑音が生ずる。円盤形状の回転体に、弾性体の層を設け、その上に弦と接触して擦弦する摩擦体を設置したことで、弾性体がクッションの役割をして、雑音を軽減することが可能となった。
【0022】
請求項3に記載の、擦弦機構を設けたことを特徴とするアコースティックの擦弦楽器を提供する。
【0023】
また請求項4に記載の、擦弦機構を設けたことを特徴とする電気擦弦楽器を提供する。
【0024】
本発明の擦弦機構を用いた擦弦楽器並びに電気擦弦楽器によって、従来の擦弦楽器における問題点を改善することが可能になった。本発明の擦弦機構を用いた擦弦楽器は、後に実施例を記載して説明している。
【0025】
また従来の弦楽器においても、本発明の擦弦機構を設置することで、音楽構成の範囲を広げることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の擦弦機構は、多くの人に演奏の機会を提供でき、なおかつ、従来の擦弦楽器では不可能であった対位法的ポリフォニック的な演奏、また複雑で重層的な和音、和声演奏を一人の演奏者において可能にさせ、器楽演奏の可能性を広げる画期的な擦弦機構である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
まず図1において、本発明の擦弦機構の説明を行う。図1は、本発明の擦弦機構の各部材の相互関係を説明するために記載した図である。
【0029】
円盤形状の擦弦部材1は、伝達部材2を介して、速度制御モーター3を回転動力として回転する。速度制御装置4は、フットペダルの操作に基づいて、速度制御モーター3の回転速度の制御を行う。
【0030】
速度制御モーター3は、ヘッドギアを設けて、モーターとヘッドギアが一体になっているものとしている。使用用途に応じて、ヘッドギアを用いることは、一般に広く行われている技術だと考えた。以下、モーターの駆動を受けて回転するヘッドギアの駆動軸を、速度制御モーター3の駆動軸3aとして記述している。
【0031】
擦弦部材1は、円盤形状の実施を例に記載した。図1において、擦弦部材1の側面である曲面は、俵のように曲面中央に膨らみを有した形状で記載している。擦弦部材1の角が弦に接触すると、雑音を生じる場合や、摩擦体7がめくれる場合があるからである。主に4種類の異なる側面形状を有する擦弦部材1を制作して実施に用いた。それらは図20に記載している。
【0032】
伝達部材2は、速度制御モーター3の駆動軸3aにカプラーを設け、二つのユニバーサル・ジョイントを介して回転動力を伝達する機構を実施例として記載した。他にも、タイミングベルトやギヤを用いて、伝達部材2とした実施がある。
【0033】
作動時に発生するノイズを軽減させるためには、伝達部材2のような中継の部材を減らしていくことが望ましい。ノイズを小さくするために擦弦部材1を速度制御モーター3の駆動軸3aに直接設置した実施もある。擦弦部材1を速度制御モーター3の駆動軸3aに直接に設置した場合、伝達部材2は設けないことになる。
【0034】
擦弦部材1を回転させる回転軸2aは、ベアリング2bによって、両端を支持され、回転する。回転軸2aと擦弦部材1の関係を分かりやすくするために、ベアリング2b並びに緩衝材5は、切断したものとして記載した。
【0035】
4は速度制御装置である。図解を容易にするために、電気コードによって接続される実施を例に記載した。速度制御装置4のフットペダルは、踏み込み式のフットペダルを用いた実施例を記載し、速度制御モーター3と速度制御装置4の間をつなぐ電気コードは速度制御装置4の中に含まれるものとして記載した。速度制御モーター3並びに速度制御装置4には、オリエンタルモーター株式会社製のAXUシリーズの製品を使用した。
【0036】
踏み込み板4aは、シーソーのように、つま先と踵の相互の上下運動で、踏み込み板4aの操作を行う。
【0037】
また踏み込み板4aに、足を引っ掛けるためのベルトを設置した実施がある。
【0038】
5は緩衝材である。本発明の擦弦機構を弦楽器本体に設置した場合に、ノイズの原因となる速度制御モーター3や伝達部材2から生じる振動を、楽器本体に伝えないようにするために設けた。
【0039】
図2において、円盤形状の擦弦部材1の説明を行う。
【0040】
円の中心からのびる放射線が描かれている層6は弾性体、その外の層7は摩擦体である。摩擦体7にはトレーシングペーパーや普通印刷紙、馬の尾毛、また釣り用のビニール糸やカーボン糸を試験的に用いた。摩擦体7の設置の手段として、内側に両面テープを使用した。
【0041】
摩擦体7は、上記記載のトレーシングペーパー以下の材料と、接着に用いた両面テープを一つの層として、摩擦体7としている。両面テープを用いた理由は、摩擦体7を着脱可能な状態で固定するためである。弾性体6の材質にゴムを用いた場合、接着剤を用いて、摩擦体7を設置した実施もある。摩擦体7を着脱可能な状態で設置することで、摩擦体7の交換をすることができる。
【0042】
回転体8を、木材や木繊維によって作られた集成材から制作して、側面の表面を滑らかにして、直接松ヤニを付着させた実施がある。弾性体6と摩擦体7を設置しないものである。結果は、弦と回転体が弦振動によって、小刻みにぶつかり合い、カチカチと雑音が生じた。
【0043】
そのため、摩擦体7の下層に弾性体6を用いた。これによって、弦振動から生じる雑音を軽減させることが可能になった。
【0044】
弾性体6の実施には、2ミリメートルのスポンジの層や、2ミリメートルのゴムの層で実施した。スポンジやゴムの厚みや接着方法、幅によって、擦弦状態は影響を受けた。
【0045】
従来の擦弦楽器に使用される馬の尾毛の場合を参考にすると、一般にチェロを擦弦する弓に張られる馬の尾毛は、バイオリンの弓に張られる馬の尾毛に比べ、太くて硬い尾毛が用いられる。
【0046】
それから推測して、低音弦を擦弦する擦弦部材1の弾性体6にゴム板を用い、高音弦を擦弦する擦弦部材1にスポンジを用いて、擦弦する弦の太さの違いによって、弾性体6を変えた実施もある。
【0047】
実施において、硬さの異なる上記の弾性体を重ねて、弾性体6の層として用いた実施もある。
【0048】
図3において、円盤形状の擦弦部材1における摩擦体7の設置する際の、継ぎ目αについて説明する。
【0049】
図3は側面から擦弦部材1を見た図で、継ぎ目αの実施例を記載している。
【0050】
摩擦体7は、切り端の両端が重ならないように切り揃えて、弾性体6の上に設置する。切り端が重なると段差が出来てしまい、擦弦時に弦が引っ掛かって雑音のもとになるためである。
【0051】
また、単に切り揃えるだけではなく、図3記載のように、継ぎ目αが斜めになるよう角度をつけて切り揃えた。斜めに切り揃えることで、弦の引っ掛かりを軽減することができた。
【0052】
図4において、円盤形状の擦弦部材1の代わりに、摩擦体7を円環状にして、ベルト式に回転させる実施を説明する。
【0053】
9はベルトのガイドまたはガイドローラー、黒く塗りつぶされた10は平ベルトを示す。11は弦である。回転軸2aに、平ベルト10を回転させるためのプーリー2cを設置した。
【0054】
円盤形状の擦弦部材1を用いた場合、擦弦部材1を設置するスペースを確保することが設計の前提条件となり、その他の周辺部材の設計は、そこから従属的に決めることになる。
【0055】
図4のように摩擦体7をベルトにすることで、設置スペースにかかわる設計の選択肢を広げるものである。
【0056】
図4に記載したのは平ベルト10であるが、平ベルトの代わりに、高いトルクを伝達することができるタイミングベルトを用いた実施もある。平ベルト10やタイミングベルトを設けないで、円環状にした摩擦体7のみを回転させる実施もある。
【0057】
これより、本発明の擦弦機構を一組設置した擦弦楽器の実施例について、図5、図6、図7、図8を参照しながら説明する。
【0058】
弦保持部12と弦巻き取り部13によって弦11を張り渡す。従来の弦楽器に用いる金属弦を使用することを想定しており、金属弦の多くが、弦の一端に小さな金具を設けてある。この金具は、弦を固定する手段として用いられている。
【0059】
図中において、11aで示される丸い部材が、金具である。金具11aによって、弦を保持する構造を採用した。
【0060】
弦保持部12は、弦を通す切れ目を設け、その切れ目に金具11aが引っかかることによって、弦11を保持するものである。
【0061】
弦11を2本張り渡した実施を例に記載した。弦11の本数は、2本から増やすことも、減らすことも可能である。弦11が押さえられ、回転する擦弦部材1によって擦弦されて生じた弦振動を、下駒14を介して響板15に振動を伝達する。
【0062】
響板15は、図6に見るように膨らみを有する構造になっている。この響板15の部分が平板なものを用いた実施もある。胡弓は、この部分が蛇の皮を使用してあり、それを転用した実施もある。
【0063】
弦11の下に、指盤16がある。指盤16には、音程位置を示す目盛り17と、数字18を設けた。
【0064】
数字譜という楽譜の種類がある。大正琴において、広く使われている楽譜の形式で、音程を数字で記譜する。弦を押さえる各キーにはそれぞれ数字があてられており、演奏者が数字譜の数字に従ってキーを押さえて弦を弾くと、曲が演奏できる。西洋の五線譜による記譜法よりも譜読が容易で、初心者でも演奏練習をすることが可能である。
【0065】
図5から図8に記載した、本発明の擦弦機構を設けた擦弦楽器も、数字譜の使用を想定し、指盤16に設けた目盛り17に対応した数字18を設けた。
【0066】
指盤の一端に上駒9を設ける。
【0067】
本体20のA−Aから切断し、内部構造を記載した側面図が図6である。
【0068】
本体20は、中に仕切り21が入った箱の形状になっている。仕切り21に、緩衝材5を挟んで、速度制御モーター3を固定ネジ22によって設置する。
【0069】
響板15から発する音を、共鳴筒23によって共鳴させる。
【0070】
図7は、下から見た図である。
【0071】
図7記載の共鳴筒23の底面には、何も設けていないので、響板15が見えている。共鳴筒23の底面に紙や薄い板を設けた実施もある。薄い板や紙を設けると、音響を変化させることができる。
【0072】
足24によって、本体20の底面が浮かせてある。底面の隙間から、音が周囲に広がる仕組みになっている。
【0073】
25は、速度制御モーター3を取り外す時に開けるフタであり、ネジで四隅を固定する実施を例にして記載した。速度制御モーター3を交換する必要がある場合、フタ25を外して速度制御モーター3を取り出す。
【0074】
図8は、着席した演奏者が、本発明の擦弦機構を1組用いた擦弦楽器を演奏している図である。台26に本体20をのせて演奏する形態を記載した。
【0075】
図9から図15に記載したのは、本発明の擦弦機構を二つ用いた電気擦弦楽器の実施例を記載した。
【0076】
前記の図5から図8に記載した擦弦楽器の各部材を示す符号のうち、弦11,弦11の一端に設けられた金具11a、弦保持部12,弦巻き取り部13を、図9から図15に記載した電気擦弦楽器に転用した。
【0077】
若干の形状や寸法の差異はあるが、同じ機能を果たす部材には、符号を転用した方が理解を容易にすると考えたからである。
【0078】
図9から図15に記載した電気弦楽器は、図1に記載の擦弦機構を二つ使用している。よって、擦弦機構の各部材の数字表記も、そのまま用いた。
【0079】
実施において、弦振動を検出するのは、主にバイオリン属やチェロ属の楽器を原型とする電気擦弦楽器に使用されている圧電素子を用いたピックアップを設置した。設置した位置は、下駒27と擦弦部材1の間の本体26に、圧電素子の板を設置した。
【0080】
ピックアップは、従来の製品を使用したため、図には記載していない。
【0081】
従来のエレキギターやエレキバイオリンにおいて、ピックアップにかかわる電気機材、配線や出力端子、入力端子、音量つまみや音質調整のつまみは、楽器本体に設置されている。本発明の擦弦機構を設置した電気擦弦楽器のボディ26の、一部を削って凹みを作り、エレキバイオリン設けられている、電気機材を組み込んだ実施もある。
【0082】
弦巻き取り部13と弦保持部12によって、弦11を設置した。弦保持部12は、弦11を通す穴を設け、弦11の一端に設けられている金具11aを引っ掛けることで、弦11を固定する。
【0083】
ボディ26は、エレキギターやエレキバイオリンのように、木材から切り出して成形した。
【0084】
速度制御モーター3を設置するために、取り付け部材28をボディ26に設けた。取り付け部材28は、図5から図8に記載した擦弦楽器の仕切り21と同様に、緩衝材5を間に挟んで速度制御モーター3をネジ止めする。
【0085】
実施において、図9から図15に記載した電気擦弦楽器は、弦11を8本張り渡した。それに伴い弦保持部12と弦巻き取り部13の数も8組設けた。
【0086】
図9から図15に記載した電気擦弦楽器において、弦11と擦弦部材1の間隔を弦ごとに調節できるように、下駒27は弦ごとに独立しており、なおかつ高さ調節を可能にする構造を有している。よって、下駒27も8個設置した。
【0087】
下駒17の詳細な構造は、図12を参照しながら説明する。弦11と接触する端は、山形に削った。下駒27の高さ調節に用いる高さ調節ネジ29をねじ込む穴をあけ、それから下駒27を差し込む下駒穴30をあける。下駒穴30の位置は、図10あるように、弦保持部12と擦弦部材1との間にする。そして下駒27を、ボディ26に設けた下駒穴30に、着脱可能な状態で差し込んだ。
【0088】
31は擦弦部材1を保護する保護板である。楽器が転倒した場合に、擦弦部材1を保護する。また、ベアリング2bを設ける役割も担っている。図1記載のように、緩衝材5を間に挟んでベアリング2bを設置した。また、実施によっては、ベアリング2bの周りに緩衝材5を設けない場合もあった。
【0089】
指盤32は、図5から図8に記載した擦弦楽器と機能的に、大きな差異はない。音程位置をあらわす目盛り33もある。図9から図15に記載した楽器には、この指盤32が2本、並列に並べてある。擦弦部材1が2組用いられているためである。
【0090】
なお、演奏練習の際に、目盛り33に数字ではなく、目盛りの示す音階名を併記した。これは、音程位置を視覚的に認識するものであり、初心者向けの練習への導入として、鍵盤楽器などにおいても広く用いられている。
【0091】
また、目盛り33の位置に、フレット加工を施した実施もある。
【0092】
上駒34は、図13に詳細を記載した。図9から図15に記載した楽器において、太い弦にテンション、張りを持たせるために上駒の弦接触面を階段状にずらした。従来の弦楽器の多くは、上駒の弦接触面は直線的に設置してあり、弦の長手方向に対して直角をなすように設置されている。
【0093】
上駒34の弦接触面を階段状にずらしたのは、チェロに使われている従来の弦を、図9から図15に記載した電気擦弦楽器に使用したために、このような形になった。
【0094】
そのため、弦の太さや、弦の材質が変わると、従来の弦楽器の上駒のように、弦接触位置が直線的に配置され得る可能性がある。
【0095】
スペーサー35は、指盤32の演奏に適した位置に固定するために用いた。弦11と指盤32との間隔を微調節できるように、指盤32はネジ留めにして、着脱可能な状態にした。スペーサー35の形状を変えることで、指盤32の位置を微調整することができる。
【0096】
図10は上方から見た外観図で、図解を容易にするために、弦11は記載していない。図11は弦11を設置した場合の外観図である。
【0097】
図14は、演奏方法の例を記載した図である。楽器を足の間に置き、足で速度制御装置4の踏み込み板4aを操作し、演奏している。ボディ26を、演奏者の着席している椅子に置いている。
【0098】
演奏者の身体の位置と、楽器の相互関係が分かりやすくなるように、演奏者の左足と、左足で操作される速度制御装置4を電気コードの途中から省略して記載した。
【0099】
演奏者から見て、右側に位置する擦弦部材1を右足のフットペダルで操作し、右側の擦弦部材1によって擦弦される弦11を、右手で押さえて擦弦し、演奏する。左側も同様に行う。
【0100】
実施において、右手によって、擦弦される4本の弦11はバイオリンのように高い音域を発音できる弦を張り、左手によって演奏される4本の弦11はチェロの弦を張った。これによって、右手でバイオリンの音域を、左手でチェロの音域を演奏することが可能になった。
【0101】
図15は、楽器の支持部材36を記載した。着脱可能な方法で、ボディ26を固定する。実施において、三脚の支持部材36を制作し、それを例に記載した。
【0102】
図16,図17において、本発明の擦弦機構と、従来のバイオリンの下駒と弓の位置関係を図に記載して、擦弦の構造を比較して説明する。
【0103】
図16は、バイオリンに使われる弓に張られた馬の尾毛37と下駒38であり、擦弦時の位置関係を記載した。図17が、擦弦部材1の円盤の輪郭線と弦11の位置関係を記載した。図16,図17は共に、4本ずつ弦11が張ってある場合を例に記載してある。
【0104】
従来のバイオリンは、馬の尾毛37は、張り渡された4本の弦のうち、隣り合った二本しか、同時に擦弦することが出来ない。これが、従来の弦楽器における構造的な問題である。
【0105】
本発明の擦弦機構において、擦弦部材1は、演奏されない時点では、弦11と触れていない。演奏者が弦11を押さえた時点から、擦弦部材1と弦11が接触し、擦弦されるようになっている。
【0106】
弦11を押さえる方向は、円盤の中心方向に向かって、弦11を押し下げるのであり、弦11を円盤形状の擦弦部材1の外周に押し当てる方向を言う。
【0107】
図4記載の円環状にした摩擦体7をベルト式に回転させる実施においても、弦11との位置関係は同じで、演奏者が弦11を押さえたら、弦11と円環状の摩擦体7が接触し、擦弦されるような位置関係で設置している。
【0108】
擦弦部材1,または図4記載の実施においても、押さえられた弦11をすべて、例えば4本同時に擦弦することができる。隣り合っていない複数の弦11を同時に擦弦することもできる。
【0109】
図18において、円盤形状の擦弦部材1の側面形状について説明する。
【0110】
実施において、様々な形状の回転体8を制作した。それらを実施例として記載した。
【0111】
左から、形状加工を施していない回転体8(V)。面取り加工を施した回転体8(W)。円盤の側面の中央部が膨らんでおり、俵のような形状にした回転体8(X)。膨らみが片寄って、すぼんだ形になっている回転体8(Y)、主にこの4種の形状を制作した。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の擦弦機構であり、各部材の相互関係を説明するために記載した図。
【図2】擦弦部材の、摩擦体と弾性体と回転体と回転軸を記載した図。
【図3】擦弦部材に用いた摩擦体の繋ぎ目を記載した図。
【図4】平ベルトを用いた擦弦機構の実施例を記載した図。
【図5】本発明の擦弦機構を一組用いた擦弦楽器を上方から見た図。
【図6】図5記載の擦弦楽器のA−A断面および側面図。
【図7】図5記載の擦弦楽器を下方から見た図。
【図8】図5記載の擦弦楽器の演奏例を記載した図。
【図9】本発明の擦弦機構を2組用いた電気擦弦楽器の側面図。
【図10】弦を張り渡していない状態の電気擦弦楽器を上方から見た図。
【図11】電気擦弦楽器に弦を8本張り渡した形態の図。
【図12】電気擦弦楽器の下駒の構造を説明する図11におけるB−B断面図。
【図13】電気擦弦楽器の上駒の拡大図。
【図14】電気擦弦楽器の演奏例を記載した図。
【図15】電気擦弦楽器と、電気擦弦楽器を支持する三脚を記載した側面図。
【図16】バイオリンの下駒を記載した図。
【図17】擦弦部材の輪郭線と弦を記載した図。
【図18】擦弦部材の形状を比較する図。
【符号の説明】
【0113】
2 伝達部材
2a 擦弦部材1の回転軸
2b 回転軸2aを保持するベアリング
3 速度制御モーター
3a 速度制御モーターの駆動軸
4 速度制御装置
4a 踏み込み板
9 ガイドローラー
11 弦
11a 弦の一端に設けてある金具
12 弦保持部
13 弦巻き取り部
14 下駒
16 指盤
17 音程位置を示す目盛り
18 目盛りに併記した数字
19 上駒
20 擦弦機構を一組用いた擦弦楽器の本体
21 仕切り
22 固定ネジ
23 共鳴筒
24 足
25 フタ
26 擦弦機構を二組用いた電気擦弦楽器のボディ
27 電気擦弦楽器の下駒
28 取り付け部材
29 高さ調節ネジ
30 下駒穴
31 保護板
32 電気擦弦楽器の指盤
33 電気擦弦楽器の音程位置を示す目盛り
34 電気擦弦楽器の上駒
35 スペーサー
36 支持部材
37 従来のバイオリンに使用される弓に張り渡された馬の尾
毛
38 バイオリンの下駒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擦弦部材と、前記擦弦部材の回転動力である速度制御モーターと、前記速度制御モーターの回転動力を前記擦弦部材に伝達する伝達部材と、フットペダルの操作に基づいて前記速度制御モーターの回転速度を制御する速度制御装置によって構成されることを特徴とする擦弦機構。
【請求項2】
前記擦弦部材は、円盤形状の回転体と、前記回転体の曲面に弾性体の層を設け、更に前記弾性体の上に摩擦体を着脱可能な両面テープまたは接着剤によって設置したことを特徴とする請求項1記載の擦弦機構。
【請求項3】
請求項1記載の前記擦弦機構を設けたことを特徴とするアコースティックの弦楽器。
【請求項4】
請求項1記載の前記擦弦機構を設けたことを特徴とする電気弦楽器。
【請求項1】
擦弦部材と、前記擦弦部材の回転動力である速度制御モーターと、前記速度制御モーターの回転動力を前記擦弦部材に伝達する伝達部材と、フットペダルの操作に基づいて前記速度制御モーターの回転速度を制御する速度制御装置によって構成されることを特徴とする擦弦機構。
【請求項2】
前記擦弦部材は、円盤形状の回転体と、前記回転体の曲面に弾性体の層を設け、更に前記弾性体の上に摩擦体を着脱可能な両面テープまたは接着剤によって設置したことを特徴とする請求項1記載の擦弦機構。
【請求項3】
請求項1記載の前記擦弦機構を設けたことを特徴とするアコースティックの弦楽器。
【請求項4】
請求項1記載の前記擦弦機構を設けたことを特徴とする電気弦楽器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−317917(P2006−317917A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104764(P2006−104764)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(305012728)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(305012728)
【Fターム(参考)】
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