説明

擬竹及びその製造方法

【課題】 擬竹において深みがあって明瞭な筋模様を安定して呈することができるようにする。
【解決手段】 まず、第1の熱可塑性合成樹脂6により、その表面に長手方向に延びる複数本の突条部2aとこれら突条部2aの間に位置する凹溝2bとを有する形状のベース層2を押出し成形する。次に、このベース層2の表面上に、当該ベース層2の表面の色よりも濃い色の第2の熱可塑性合成樹脂を溶融状態で供給して上記凹溝2bに入り込ませることにより、当該凹溝2bに入り込ませた部分の厚みがこれに隣接する突条部2aの表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなる形状の表層3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真竹の代替として竹垣等に利用される擬竹及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、擬竹としては、合成樹脂で構成されたものが知られており、真竹に似せるために様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、予め成形された芯材を送出する過程において、二連式の押出成形機を用いてその芯材の表面に緑色や黄色等の樹脂層を形成するとともに、適所に節部に相当する暗色模様の樹脂層を形成し、その先でローラによって上記樹脂層の表面に模様を印刷する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−100277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、真竹には表面に長手方向に延びる筋模様があり、この筋模様を上記のような印刷によって擬竹の表面に施した場合には、単調な深みのない模様となってしまい、擬竹を真竹に酷似させることは難しい。
【0005】
ここで、合成樹脂成形品に対して筋模様を呈する技術としては、擬竹に関するものではないが、合成樹脂成形品に木質感を与えるために当該合成樹脂成形品に柾目模様を施す技術が特開平4−153017号公報に開示されている。
【0006】
この技術は、二色の熱可塑性合成樹脂を用いて、第1の合成樹脂を押出し成形する過程で、その表面に木材色に着色した第2の合成樹脂を上記押出し方向と直交する方向に設けられた細孔から押出して、その表面上に表層を形成するとともに、その細孔に対応する部分では、その押出し圧によって第2の合成樹脂を第1の合成樹脂に押し込ませて当該部分では他の部分よりも表層の厚みが厚くなるように表層の厚みに差を生じさせ、その厚みの差による色の濃淡によって柾目模様を呈するものである。
【0007】
しかしながら、このような方法では、第1の合成樹脂が硬化する前の形状が不安定な状態で、その上に供給する第2の合成樹脂の供給量を幅方向に変化させることにより第2の合成樹脂からなる表層の厚みを変えるものなので、表層の厚みが安定せず、筋模様を安定して形成することは難しい。
【0008】
また、表層の厚みを厚くした部分からその両脇に向かっては、表層の厚みがなだらかに変化するため、筋部分とその両脇の部分との境界が曖昧となり、明瞭な筋模様が得られ難い。
【0009】
特に、真竹では筋模様が明瞭に表れているので、擬竹では真竹に酷似させるために明瞭な筋模様を呈することが望まれる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、擬竹において深みがあって明瞭な筋模様を安定して呈することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、筋模様を呈する擬竹の製造方法であって、第1の熱可塑性合成樹脂により、その表面に長手方向に延びる複数本の突条部とこれら突条部の間に位置する凹溝とを有する形状のベース層を押出し成形し、この突条部及び凹溝を有するベース層の表面上に、当該ベース層の表面の色よりも濃い色の第2の熱可塑性合成樹脂を溶融状態で供給して上記凹溝に入り込ませることにより、当該凹溝に入り込ませた部分の厚みがこれに隣接する突条部の表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなる形状の表層を形成することを特徴とする擬竹の製造方法である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の擬竹の製造方法において、上記ベース層を、上記突条部とこれに隣接する凹溝との境界面が突条部の表面に対して略直交する方向の平面で構成される形状に成形することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の擬竹の製造方法において、上記ベース層を、その表面がこのベース層の長手方向からみて略円弧状となる形状に成形することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬竹の製造方法において、上記ベース層の幅方向についてそのベース層の表面上での突条部が占める割合が中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなる形状にベース層を成形することを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、第1の合成樹脂により形成されたベース層と、そのベース層の表面上に当該ベース層の色よりも濃い色の第2の合成樹脂により形成された表層とを備えた擬竹であって、上記ベース層の表面には、長手方向に延びる複数本の突条部とこれら突条部の間に位置する凹溝とが幅方向に交互に形成されており、上記各突条部とこれに隣接する凹溝との境界面は突条部の表面に対して略直行する方向の平面によって構成され、上記表層は、上記突条部の表面上に位置するとともに上記凹溝に入り込んで、当該凹溝に入り込んだ部分の厚みがこれに隣接する突条部の表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする擬竹である。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の擬竹において、上記ベース層は、その表面がこのベース層の長手方向からみて略円弧状となる形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項5または6に記載の擬竹において、上記ベース層の幅方向についてそのベース層の表面上での突条部が占める割合が、中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなるように設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、予め定まった形状の突条部及び凹溝を表面にもつベース層を成形しておいてから、その表面に溶融樹脂を供給して表層を形成するものなので、その表層の厚みが安定して得られ、かつ、筋部分とその両脇の部分との境界が明瞭になる。しかも、表層の厚みの差によって、換言すれば表層を透過する光の量の差によって筋模様を表しているので、その透過中に光が分散されるため、印刷よりも深みのある筋模様とすることができる。従って、深みがあって明瞭な筋模様を安定して呈することができる。
【0019】
ここで、請求項2に係る発明のように、上記ベース層を、上記突条部とこれに隣接する凹溝との境界面が突条部の表面に対して略直交する方向の平面で構成される形状に成形すれば、表層の突条部の表面上に位置する部分と凹溝に入り込んだ部分とでその厚みを不連続もしくはほぼ不連続的に変化させることができるので、筋部分とその両脇の部分との境界をはっきりさせることができ、筋模様をより明瞭にすることができる。
【0020】
また、請求項3に係る発明のように、上記ベース層を、その表面がこのベース層の長手方向からみて略円弧状となる形状に成形すれば、筋模様だけでなく形状的にも真竹に酷似した擬竹を製造することができる。
【0021】
さらに、請求項4に係る発明のように、上記ベース層の幅方向についてそのベース層の表面上での突条部が占める割合が中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなる形状にベース層を成形すれば、筋模様を呈する構造を利用して幅方向両端部に向かうに従って淡い色を呈するようにできる。そして、このように幅方向両端部に向かうに従って淡い色を呈することにより、真竹ではその円形状の形状のために幅方向の両端が淡い色に見えるので、さらに真竹に酷似させることができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、ベース層の表面に複数本の突条部とこれら突条部の間に位置する凹溝とが形成され、このベース層の表面上に形成される表層の厚みは、上記凹溝に入り込んだ部分の厚みがこれに隣接する突条部の表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなっているので、表層の厚みの差により深みのある筋模様を呈することができる。また、上記各突条部とこれに隣接する凹溝との境界面が突条部の表面に対して略直交する方向の平面によって構成されているので、このベース層の表面上に形成される表層の厚みは、突条部の表面上に位置する部分と凹溝に入り込んだ部分とで不連続もしくはほぼ不連続的に変化するため、筋部分とその両脇の部分との境界をはっきりさせることができ、筋模様を明瞭に呈することができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、上記ベース層は、その表面がこのベース層の長手方向からみて略円弧状となる形状に形成されているので、筋模様だけでなく形状的にも真竹に酷似した擬竹とすることができる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、上記ベース層の幅方向についてそのベース層の表面上での突条部が占める割合が、中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなるように設定されているので、幅方向の両端部に向かうに従って擬竹の色が淡くなり、さらに真竹に酷似した擬竹とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1に、本発明の擬竹10を製造する擬竹製造装置の模式図を示す。この擬竹製造装置は、擬竹10を押出し成形する押出成形機1と、その先で押出し成形された擬竹10を冷却する冷却層4と、さらにその先で冷却された擬竹10を挟み込んで送出する上下一対のローラ5とを備えている。
【0027】
上記擬竹10は、第1の熱可塑性合成樹脂6からなるベース層2と、この第1の熱可塑性合成樹脂6の表面の色よりも濃い色の第2の熱可塑性合成樹脂からなる表層3とを備え、上記ベース層2の表面上に上記表層3が積層され、全体として断面幅広矩形状になっている(図3参照)。
【0028】
上記押出成形機1は、上記第1の熱可塑性合成樹脂6からなるベース層2を押出し成形するとともに、その表面上に第2の熱可塑性合成樹脂7を溶融状態で供給して、当該ベース層2の表面上に上記表層3を形成するものである。
【0029】
上記ベース層2を構成する第1の熱可塑性合成樹脂6としては、例えばAS(acrylonitrile-styrene)樹脂、SAS(styrene-acrylonitrile-silicone rubber)樹脂、ASA(acrylate-styrene-acrylonitrile)樹脂、ABS(acrylonitrile-butadience-styrene)樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、もしくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が使用可能である。
【0030】
また、上記第1の熱可塑性合成樹脂6は、その材質そのものの色が淡い色のものであるか、もしくはそのような色に着色されたものであることが好ましい。さらに好ましくは、真竹の内側の色であるベージュ色に着色されたものである。上記着色においては、溶融状態の樹脂に顔料を添加することにより所望の色に調合できる。
【0031】
この顔料としては、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、オーカー等の着色顔料、もしくは炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、焼成クレイ等の体質顔料(充填剤)を挙げることができる。
【0032】
上記表層3を構成する第2の熱可塑性合成樹脂7としても、上記第1の熱可塑性合成樹脂6と同様に、例えばAS(acrylonitrile-styrene)樹脂、SAS(styrene-acrylonitrile-silicone rubber)樹脂、ASA(acrylate-styrene-acrylonitrile)樹脂、ABS(acrylonitrile-butadience-styrene)樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、もしくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が使用可能であり、上記第1の熱可塑性合成樹脂6と相溶性があることが好ましい。
【0033】
また、上記第2の熱可塑性合成樹脂7は、上記第1の熱可塑性合成樹脂6よりも濃い色であって真竹の外側の色である緑色または黄色のものであるか、あるいはそのような色に着色されたものであることが好ましい。この第2の熱可塑性合成樹脂7の着色においても、上記第1の熱可塑性合成樹脂6と同様の顔料を使用することができる。
【0034】
上記押出成形機1は、上記第1の熱可塑性合成樹脂6を溶融状態で送り出す第1のスクリューシリンダ1aと、この第1のスクリューシリンダ1aの先端に取付けられる金型1cとを備え、さらにこの金型1cの上面に、上記第2の熱可塑性合成樹脂7を溶融状態で送り出す第2のスクリューシリンダ1bが設けられている。
【0035】
上記金型1cには、上記第1のスクリューシリンダ1aの軸心方向に延在して当該金型1cを貫通する流通路1dが設けられており、この流通路1d内に上記第1のスクリューシリンダ1aから第1の熱可塑性合成樹脂6が送り出されるようになっている。
【0036】
また、上記金型1cには、上記流通路1dの中間部分から当該流通路1dの延在する方向と略直交する方向のうちの上方に延在して当該金型1cの上面に開口する連通路1eが設けられており、この連通路1e内に上記第2のスクリューシリンダ1bから第2の熱可塑性合成樹脂7が送り出されるようになっている。
【0037】
そして、上記流通路1dの連通路1eから上流側の部分で上記ベース層2が押出し成形され、連通路1eから下流側の部分で流通路1dの断面形状が上方に大きくなり、上記表層3が形成されるようになっている。
【0038】
上記流通路1dは、上流側の端部では、上流から下流に向かうに従ってその断面形状が次第に小さくなるようにテーパー状に形成されており、当該流通路1d内に第1の熱可塑性合成樹脂6が流れ込み易くなっている。また、そのテーパー状に形成された部分と上記連通路1eとの間では、上記流通路1dは、上記ベース層2を成形する所定の断面形状に形成されている。
【0039】
この所定の断面形状とは、具体的には図2に示すように、略幅広矩形状であり、その上面1fには下方向に突出する複数の突部及びこれらの間に位置する凹部が幅方向に交互に形成されている。そのため、この部分の流通路1dを第1の熱可塑性合成樹脂6が通過すると、上記凹部によってその表面に長手方向に延びるように複数本の突条部2aが形成されるとともに、上記突部によってこれら突条部2aの間に位置する凹溝2bとが形成され、これら突条部2aと凹溝2bとが幅方向に交互に並んだベース層2が押出し成形される。
【0040】
なお、本実施形態では、上記連通路1dの上面に形成された各突部の先端面及び各凹部の底面は互いに略平行になっており、それらの境界面は上記突部の先端面及び凹部の底面に対して略直交した平面によって構成されているので、上記ベース層2の表面の各突条部2aとこれに隣接する凹溝2bの境界面2cも、上記突条部2aの表面に対して略直交する方向の平面によって構成されるようになる。
【0041】
また、上記各突部の先端面の高さ位置は、流通路1dの幅方向における中央部の突部の方が両端部の突部よりも低くなっているとともに、各凹部の底面の高さ位置は、流通路1dの幅方向における中央部の凹部の底面の方が両端部の凹部の底面よりも低くなっている。このため、上記ベース層2の各突条部2aの高さは、中央部の方が両端部よりも低くなるとともに、凹溝2bの底面も、中央部の方が両端部よりも低くなる。
【0042】
さらには、流通路1dの幅方向中央部では、突部の幅が大きく凹部の幅が小さいが、両端部では逆に突部の幅が小さく凹部の幅が大きくなっている。このため、上記ベース層2の幅方向についてそのベース層2の表面上での突条部2aが占める割合が中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなるようになる。
【0043】
一方、上記連通路1eは、図示はしないが、上記連通路1dと略同程度の幅に形成されており、この連通路1eを通じて上記ベース層2の表面上の幅方向全域に亘って第2の熱可塑性合成樹脂7が供給可能となっている。
【0044】
また、上記流通路1dの連通路1eから下流側の部分での流通路1dの断面形状は、図3に示すように、上述したベース層2を成形する部分での断面形状と比べその上面1gがわずかに高くてかつフラットな面となっている。そして、この上面1gは、上述した連通路1eから上流側の部分での断面形状における上面1fに形成された凹部の底面のうち最も高い位置にある底面よりも0.05mm〜0.1mm高くなるように設定されている。
【0045】
以上のように構成された上記押出成形機1では、第1の熱可塑性合成樹脂6が溶融状態でスクリューシリンダ1aによって金型1cの流通路1d内に送り出されることにより、上述したように、表面に長手方向に延びる複数本の突条部2aと、これら突条部2aの間に位置する凹溝2bとが幅方向に交互に形成されたベース層2が押出し成形される。
【0046】
また、第2の熱可塑性合成樹脂7が溶融状態でスクリューシリンダ1bによって金型1cの連通路1e内に送り出されることにより、この第2の熱可塑性合成樹脂7は、上記連通路1eを通じてベース層2の表面上に供給されるとともに、上記スクリューシリンダ1bによって加圧されているので、上記ベース層2の表面の凹溝2bに入り込む。
【0047】
このとき、上記ベース層2の表面上の突条部2a及び凹溝2bは予め押出し成形されているので、上記第2の熱可塑性合成樹脂7は上記凹溝2bにスムーズに入り込んで、ベース層2の表面と上記第2の熱可塑性合成樹脂7との境界面は安定した凹凸面となる。
【0048】
そして、ベース層2の表面上に供給された第2の熱可塑性合成樹脂7は、流通路1dの連通路1eから下流側の部分によって、その表面が平滑であって、上記ベース層2の凹溝2bに入り込んだ部分の厚みが突条部2bの表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなる形状の表層3が成形され、ベース層2の表面上に表層3が積層された擬竹10が押出し成形される。
【0049】
このように製造された擬竹10では、表層3の厚みが厚い部分では当該表層3の色が強く現れて濃い色となり、表層3の厚みが薄い部分では当該表層3が透けてベース層2の表面の色が見えるため淡い色となって筋模様が表れる。しかもこの筋模様は、表層3を透過する光の量の差によって表れているので、その透過中に光が分散されるため、印刷よりも深みのある筋模様となっている。
【0050】
本実施形態の押出成形機1による擬竹10の製造方法では、予め定まった形状の突条部2a及び凹溝2bを表面にもつベース層2を成形しておいてから、その表面に溶融樹脂を供給して表層3を形成しているので、その表層3の厚みが安定して得られ、かつ、筋部分とその両脇の部分との境界が明瞭になる。従って、深みがあって明瞭な筋模様を安定して呈することができる。
【0051】
また、上記突条部2aとこれに隣接する凹溝2bとの境界面2cが突条部2aの表面に対して略直交する方向の平面で構成される形状にベース層2を押出し成形しているので、表層3の突条部2aの表面上に位置する部分と凹溝2bに入り込んだ部分とでその厚みを不連続もしくはほぼ不連続的に変化させることができ、筋部分とその両脇の部分との境界をはっきりさせることができる。よって、筋模様をより明瞭にすることができる。
【0052】
さらに、上記ベース層2の幅方向についてそのベース層2の表面上での突条部2aが占める割合が中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなる形状にベース層2を成形しているので、筋模様を呈する構造を利用して幅方向両端部に向かうに従って淡い色を呈するようにできる。そして、このように幅方向両端部に向かうに従って淡い色を呈することにより、真竹ではその円形状の形状のために幅方向の両端が淡い色に見えるので、さらに真竹に酷似させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記ベース層2の各突条部2aの高さは、ベース層2の幅方向における中央部の方が両端部よりも低くなるとともに、凹溝2bの底面も、中央部の方が両端部よりも低くなっているので、表層3の厚みは全体として中央部の方が両端部よりも厚くなり、中央部の筋部分及びその両脇の部分は両端部のそれよりも濃い色となっている。
【0054】
なお、本発明の擬竹10及びその製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0055】
例えば、上記連通路1dにおけるベース層2を成形する部分では、その上面1fに形成された各突部と各凹部との境界面は、上記突部の先端面及び凹部の底面に対して略直交した平面によって構成されていればよく、必ずしもその角度が90°である必要はない。例えば、図4(a)に示すように、上記境界面は、上記突部の先端面及び凹部の底面に直交する直交面に対して若干傾斜していてもよい。
【0056】
特に、上記境界面が突部の根元に食い込むように傾斜していれば、その部分に対応するベース層2の突条部2aの表面とこれに隣接する境界面2cとのなす角度が鋭角になるので、さらに筋部分とその両脇の部分との境界をはっきりさせることができる。
【0057】
逆に、上記傾斜面が突部の根元を張り出すように傾斜していれば、その部分に対応するベース層2の突条部2aの表面とこれに隣接する境界面2cとのなす角度が鈍角になるので、筋部分とその両脇の部分との境界にグラデーションを付けることができる。
【0058】
このように、ベース層2の突条部2aの表面とこれに隣接する境界面2cとのなす角度を微妙に変えることにより、筋部分とその両脇の部分との境界の明瞭性をコントロールすることができる。
【0059】
また、図4(b)に示すように、ベース層2を、その表面がこのベース層2の長手方向からみて略円弧状となる形状に成形すれば、筋模様だけでなく形状的にも真竹に酷似した擬竹を製造することができる。
【0060】
この場合には、表層3の表面も上記ベース層2の表面と略平行であって平滑な円弧状の面に形成することが好ましい。
【0061】
さらには、上述した金型1cを、ベース層2を押出し成形するものと、そのベース層2の表面上に表層3を形成するものとに分割してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ベース層2の表面にのみ表層3を積層する形態を示したが、金型1cの連通路1eから下流側での流通路1dの断面形状を幅方向に広くすれば、ベース層2の側面にも表層3を積層することも可能である。
【0063】
なお、上記実施形態では、断面略幅広矩形状の擬竹10について示したが、金型1cの流通路1dの断面形状を変えるだけで、断面略円形状の擬竹10の表面に筋模様を呈することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の擬竹を製造する擬竹製造装置の模式図である。
【図2】図1におけるI−I線断面図である。
【図3】図1におけるII−II線断面図である。
【図4】他の実施形態を示す金型の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 押出成形機
1a 第1のスクリューシリンダ
1b 第2のスクリューシリンダ
1c 金型
1d,1e 流通路
2 ベース層
2a 突条部
2b 凹溝
2c 境界面
3 表層
4 冷却層
5 ローラ
6 第1の熱可塑性合成樹脂
7 第2の熱可塑性合成樹脂
10 擬竹

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋模様を呈する擬竹の製造方法であって、第1の熱可塑性合成樹脂により、その表面に長手方向に延びる複数本の突条部とこれら突条部の間に位置する凹溝とを有する形状のベース層を押出し成形し、この突条部及び凹溝を有するベース層の表面上に、当該ベース層の表面の色よりも濃い色の第2の熱可塑性合成樹脂を溶融状態で供給して上記凹溝に入り込ませることにより、当該凹溝に入り込ませた部分の厚みがこれに隣接する突条部の表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなる形状の表層を形成することを特徴とする擬竹の製造方法。
【請求項2】
上記ベース層を、上記突条部とこれに隣接する凹溝との境界面が突条部の表面に対して略直交する方向の平面で構成される形状に成形することを特徴とする請求項1に記載の擬竹の製造方法。
【請求項3】
上記ベース層を、その表面がこのベース層の長手方向からみて略円弧状となる形状に成形することを特徴とする請求項1または2に記載の擬竹の製造方法。
【請求項4】
上記ベース層の幅方向についてそのベース層の表面上での突条部が占める割合が中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなる形状にベース層を成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬竹の製造方法。
【請求項5】
第1の合成樹脂により形成されたベース層と、そのベース層の表面上に当該ベース層の色よりも濃い色の第2の合成樹脂により形成された表層とを備えた擬竹であって、上記ベース層の表面には、長手方向に延びる複数本の突条部とこれら突条部の間に位置する凹溝とが幅方向に交互に形成されており、上記各突条部とこれに隣接する凹溝との境界面は突条部の表面に対して略直行する方向の平面によって構成され、上記表層は、上記突条部の表面上に位置するとともに上記凹溝に入り込んで、当該凹溝に入り込んだ部分の厚みがこれに隣接する突条部の表面上に位置する部分の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする擬竹。
【請求項6】
上記ベース層は、その表面がこのベース層の長手方向からみて略円弧状となる形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の擬竹。
【請求項7】
上記ベース層の幅方向についてそのベース層の表面上での突条部が占める割合が、中央部から両端部に向かうに従って次第に大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項5または6に記載の擬竹。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−56153(P2006−56153A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241010(P2004−241010)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】