説明

攪拌機における醗酵槽の脱臭機構

【課題】攪拌部分のみを吸気して脱臭することにより、脱臭効率の優れた攪拌機における醗酵槽の脱臭機構を提供する。
【解決手段】攪拌走行の際に醗酵槽1上端より露出する攪拌羽根14を覆うロータリーカバー15と、攪拌の際にロータリーカバー15に連通される脱臭用固定フード17と、脱臭用固定フード17に連通され、攪拌走行に伴い発生する臭気を吸引する脱臭吸引ダクト18と、攪拌走行に伴い移動する脱臭吸引ダクト18に連通される臭気回収固定ダクトとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌機における醗酵層の脱臭機構に関する。詳しくは堆肥製造施設内の発酵槽内を攪拌機によって攪拌する際に発生する臭気の脱臭機構に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より畜産の蓄糞および食品残渣等の有機物の堆肥化を目的とする堆肥製造設備が提案されており、例えば特許文献1に記載されている。具体的には図6に示すように、一定の幅と長さの醗酵槽101と醗酵槽101内を長手方向に走行する攪拌機102を設け、醗酵槽101内に投入された蓄糞は、攪拌機102の攪拌作用によって、醗酵槽101内を排出側に向かって送られる。蓄糞の醗酵は、好気性の土壌菌によるもので、攪拌と醗酵槽101の底部に敷設した空気補給用散気管からの空気により70度以上の高温醗酵状態となり、高温醗酵を終了した蓄糞は堆肥に成長して排出側に送り出される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−230311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら醗酵槽内に投入された蓄糞が攪拌機の羽根によって攪拌される際にはアンモニアを主成分とする刺激臭が発生する。この刺激臭に対しては環境保全のために堆肥製造設備が設置される建物内の脱臭・換気が行われているのが一般的であるが、非常の大きな設備投資を必要とし、かつ維持費やメンテナンスなどで経営的負担を強いられているのが現状である。
【0005】
また、例えば図7に示すように、走行する攪拌機102を被包したカバー103を設け、このカバー103にフレキシブルな吸引用ホースを連通して吸気・脱臭させる手段が開発されているが、攪拌機を作動させるモーターやギヤーなどの各部品が高温のアンモニア臭などに常に晒されることによる錆や化学反応によって耐久性が著しく低下するという問題がある。
【0006】
また、攪拌機が醗酵槽の長手方向に対して往復走行するために移動しながらの吸気となり脱臭装置との接続機構が非常に複雑となる問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、攪拌の際に発生する臭気を吸気・脱臭することにより、醗酵槽からの臭気の発生を大幅に抑制することができる攪拌機における醗酵槽の脱臭機構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る攪拌機における醗酵槽の脱臭機構は、醗酵槽上を走行する攪拌機の攪拌羽根により醗酵槽内に投入された堆肥原料を攪拌しながら醗酵させる際に発生する臭気を吸気・脱臭する攪拌機における醗酵槽の脱臭機構において、攪拌走行の際に前記醗酵槽上端より露出される攪拌羽根を覆うロータリーカバーと、攪拌の際に前記ロータリーカバーに連通される脱臭用固定フードと、前記脱臭用固定フードに連通され、攪拌走行に伴い発生する臭気が吸引される脱臭吸引ダクトと、前記攪拌走行に伴い移動する脱臭吸引ダクトに連通される臭気回収固定ダクトを備える。
【0009】
ここで、攪拌走行の際に醗酵槽上端より露出する攪拌羽根をロータリーカバーによって覆うと共に、ロータリーカバーと脱臭用固定フードとを連通状とすることにより、攪拌の際に発生する臭気を吸引することで醗酵槽内からの臭気の発生を大幅に抑制することが可能となる。
【0010】
また、脱臭用固定フードの吸気口に、ロータリーカバーとの連通時のみ、吸気口が開口される遮蔽板部が設けられることにより、攪拌機による攪拌以外の台車のみの走行によって脱臭用固定フードによる醗酵槽内からの臭気の吸気を行うことが可能となる。
【0011】
また、臭気回収固定ダクトが醗酵槽の始端から終端に沿って設けられる散水用水槽に沿って配置され、臭気回収固定ダクトに脱臭吸引ダクトが散水用水槽内の水を介して連通されることにより、臭気が漏れることなく脱臭吸引ダクトと臭気回収固定ダクトとの連通が可能となり、機械的な接触がないためにメンテナンスが軽減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の攪拌機における醗酵槽の脱臭機構によれば、醗酵槽内での畜糞の攪拌中に発生する臭気を攪拌羽根の上半部分を覆うロータリーカバーによって臭気を滞留させながら吸気することにより臭気を飛散させることなく回収することができる。
【0013】
また、吸気された臭気は散水用水槽に沿って設置される脱臭用固定フードに対して水を介して臭気回収移動ダクトによって接続されることから漏れなく通気させることが可能となると共に、機械的な接触がないために接続部分の損傷がなく、メンテナンスが軽減される。
【0014】
また、攪拌羽根のみを覆う機構とすることにより、台車上に設置される駆動モーターやギヤー等の各部品がアンモニアを主成分とする臭気に晒されることなく錆などによる品質低下を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した攪拌機における醗酵槽の一例の概要を示す平面説明図である。
【0016】
ここで示す醗酵槽は、投入口Aから堆肥化取出口Bまでの全長が84m、高さ1.5m、幅5mとされ、その中央が仕切られることにより2列状の醗酵槽1が形成されている。これらの醗酵槽1の底部には、一定間隔ごとに散気管2が配置されている。そして醗酵槽1の長手方向の一側面に沿って散水用水槽3が設置されている。この散水用水槽3は、散布ポンプ(図示せず。)によって散水用水槽3内に貯留された水を散布ノズル(図示せず。)を介して醗酵槽1全体に渡って水を散布する機構とされている。
【0017】
また、醗酵槽1を構成する醗酵槽壁4、4上にレール5、5が設置され、このレール5、5上を走行可能とされる台車6が設けられている。そして台車6上には攪拌機7が取り付けられといる。
【0018】
次に、図2は、本発明を適用した攪拌機の一例を示す平面図、図3は、本発明を適用した攪拌機の一例を示す正面図、図4は、本発明を適用した攪拌機の一例を示す側面図である。
【0019】
ここで、醗酵槽1の醗酵槽壁4、4、4上端には、レール5がそれぞれ配置されている。そしてこれらのレール5上に、その長手方向より直角状に跨るように台車6が走行自在な状態で載置されている。
【0020】
この台車6は、醗酵槽壁4、4、4上の進行方向に配置される走行用枠体30と、この走行用枠体30上に、その進行方向に対して略直角状に攪拌機支持レール10が平行状に渡設された構成とされている。そして走行用枠体30の前後下部にそれぞれ車輪8が取り付けられ、これらの車輪8は駆動モーター9によって駆動回転自在な機構とすることにより台車6は醗酵槽1の投入口Aから堆肥化取出口Bまでを自在に走行できる機構とされている。
【0021】
また、攪拌機支持レール10上には、攪拌機支持レール10上を駆動モーター9Aによる車輪8Aの駆動回転によって走行する攪拌機支持基台11が設置されている。更に、攪拌機支持基台11上には、攪拌機7が取り付けられている。この攪拌機7は、攪拌機支持基台11上に固定される攪拌羽根支持部12、攪拌羽根支持部12に連結枢支される支持アーム13、支持アーム13の先端に回転自在に連結される攪拌羽根14とこの攪拌羽根14の上半分を覆う半円筒形状のロータリーカバー15とから構成されている。
【0022】
ここで、攪拌羽根14は支持アーム13間に横架される回転軸16に攪拌羽根14が横方向に等間隔、かつ放射方向に周設されている。そして回転軸16は支持アーム13に取り付けられる駆動モーター9Bと連動され駆動回転自在な機構とされている。
【0023】
また、支持アーム13と攪拌羽根支持部12との間に油圧シリンダー26が設けられ、この油圧シリンダー26の伸縮によって支持アーム13を上下方向に回動させることで攪拌羽根14およびロータリーカバー15とを上下方向に自在に移動できる機構とされている。
【0024】
また、攪拌羽根14によって醗酵槽1内を攪拌させる場合には、ロータリーカバー15の下端が醗酵槽1上端で水平状となり、更にロータリーカバー15の一端側が斜め状に切断されて開口部22が形成されている。
【0025】
次に、図5(図5(A)は攪拌前の状態を示し、図5(B)は攪拌中の状態を示す)で示すように、ロータリーカバー15の開口部22に対峙する台車6上に脱臭用固定フード17が配置されている。この脱臭用固定フード17は、ロータリーカバー15の開口部22に密封状に連接できる吸気口31が開口されると共に、その上部に脱臭吸引ダクト18が連通状に架設されている。この脱臭吸引ダクト18には吸引ポンプ(図示せず。)が設けられ、この吸引ポンプによって攪拌作業の際に噴出する臭気がロータリーカバー15内より脱臭用固定フード17を介して脱臭吸引ダクト18によって吸気されることになる。
【0026】
また、脱臭用固定フード17の下部は醗酵槽1内に開口状とされ、脱臭用固定フード17の吸気口31近傍には上端が連結枢支される遮蔽板部19が設けられている。
【0027】
この遮蔽板部19は、ロータリーカバー15と脱臭用固定フード17が連結されていない場合には、その自重によって鉛直上に垂下されることによって脱臭用固定フード17の吸気口31を遮蔽した状態が維持されることとなる(図5(B)参照)。
【0028】
また、脱臭用固定フード17の吸気口31上端に、その基部側が吸気口31より突出すると共に、その中途が連結枢支された遮蔽板部押上げ片20が設けられている。更にロータリーカバー15の開口部22には遮蔽板部押上げ片20の吸気口31より突出部分を下方へ押し下げる開閉片部21が設けられている。
【0029】
これによりロータリーカバー15と脱臭用固定フード17を連結する際に、ロータリーカバー15の開閉片部21が脱臭用固定フード17の遮蔽板部押上げ片20の突出部分を下方へ押し下げることによって遮蔽板部押上げ片20の枢支点を中心にテコの原理で遮蔽板部19を押し開くこととなる。
【0030】
また、脱臭用固定フード17内には脱臭吸引ダクト18の下端が開放状に立設されている。この脱臭吸引ダクト18の一端側には醗酵槽1に沿って形成される散水用水槽3に向けて鉛直状に垂下される臭気回収移動ダクト23が連結されている。
【0031】
一方、散水用水槽3内には、その長手方向に沿って臭気回収固定ダクト24が設けられている。この臭気回収固定ダクト24は、散水用水槽22の外壁25上端より散水用水槽22内の中央下方に向けて折り曲げ形成されることにより臭気回収固定ダクト24内が水Cによって密閉される。
【0032】
ここで、臭気回収移動ダクト23の下端開口部25は散水用水槽3内より臭気回収固定ダクト24内に開放状となるように折り曲げ形成されている。これにより臭気回収移動ダクト23は散水用水槽3内を移動しながら臭気回収固定ダクト24内に臭気を放出することとなる。
【0033】
そして臭気回収固定ダクト24には脱臭装置(図示せず。)等の設備が連設され、臭気や有害物質が除去された状態で屋外へ排気されることとなる。
【0034】
以上の構成よりなる本発明の攪拌機における醗酵槽では、畜舎から出た生の畜糞は藁やおが屑などの水分調整材を混ぜることで水分を60%程度に調整され、醗酵槽1に投入されることとなる。
【0035】
また、醗酵槽1内に投入された畜糞は、攪拌機7の攪拌作用によって、醗酵槽1内を排出側に向かって送られることとなる。畜糞の醗酵は、好気性の土壌菌によるもので、攪拌と散水と醗酵槽1の底部に敷設される散気管2からの空気により高温醗酵状態となる。醗酵が活発になるのは、投入側から10m前後からで、この時点から約30mの間が高温醗酵域である。醗酵槽1内の醗酵は、排出側までの残り10mで終了し、高温醗酵を終了した畜糞は堆肥舎へ送られることになる。
【0036】
更に、醗酵槽1上を走行する台車6に取り付けられる攪拌機7の攪拌羽根14には半円筒形状のロータリーカバー15が取付けられ、支持アーム13によって攪拌羽根14が醗酵槽1内に移動され、ロータリーカバー15と脱臭用固定フード17とが連通される。
【0037】
これにより攪拌羽根14によって畜糞が攪拌される際に発生される臭気は、ロータリーカバー15内に滞留しながら脱臭用固定フード17内を通り脱臭吸引ダクト18によって吸気される。
【0038】
脱臭吸引ダクト18により吸引された臭気は、脱臭吸引ダクト18に連通される臭気回収移動ダクト23を通して散水用水槽3に設けられる臭気回収固定ダクト24内に放出される。
【0039】
ここで、臭気回収移動ダクト23の開口端側は台車6の走行に伴い、散水用水槽3内の貯留水内を移動し、更に、散水用水槽3内の貯留水によって密閉状とされた臭気回収固定ダクト24内に開口されることによって臭気は外部に漏れることなく、臭気回収固定ダクト24内に吸気回収されて脱臭装置(図示せず。)を介して屋外に排気される。
【0040】
このようにして攪拌中に発生する臭気は、ロータリーカバー15および脱臭用固定フード17によって醗酵槽1外へ放出するのを抑制されると共に、吸気された臭気は漏れることなく臭気回収固定ダクト24より外部に脱臭した後に屋外に排気される。
【0041】
また、臭気回収移動ダクト23と臭気回収固定ダクト24との接続が散水用水槽3内の貯留水を介して行われることから、機械的な接触による損耗、あるいは損壊の発生を抑制し、かつ臭気回収移動ダクト23と臭気回収固定ダクト24との接続部分より臭気が漏れることを大幅に抑制することが可能となる。
【0042】
更に、攪拌を行わない場合には、支持アーム13によって攪拌羽根14とロータリーカバー15とを醗酵槽1の上方に移動する。この際には脱臭用固定フード17の吸気口31に設けられる遮蔽板部19によって、脱臭用固定フード17の吸気口31が遮蔽された状態となり、更に台車6を醗酵槽1上に走行させることにより、醗酵槽1内の畜糞の表面から発生される臭気は、脱臭用固定フード17内に滞留しながら脱臭吸引ダクト18によって吸気される。このようにして攪拌による醗酵作業を行わない場合でも醗酵槽1内から発生する臭気を台車6による往復走行を繰り返すことによって臭気の吸気・脱臭を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した攪拌機における醗酵槽の概要を示す平面説明図である
【図2】本発明を適用した攪拌機の一例を示す平面図である。
【図3】本発明を適用した攪拌機の一例を示す正面図である。
【図4】本発明を適用した攪拌機の一例を示す側面図である。
【図5】本発明を適用した攪拌機の要部拡大説明図である。
【図6】従来の攪拌式醗酵の一例を示す説明図である。
【図7】従来の攪拌式醗酵槽の脱臭機構を一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 醗酵槽
2 散気管
3 散水用水槽
4 醗酵槽壁
5 レール
6 台車
7 攪拌機
8、8A 車輪
9、9A、9B 駆動モーター
10 攪拌機支持レール
11 攪拌機支持基台
12 攪拌羽根支持部
13 支持アーム
14 攪拌羽根
15 ロータリーカバー
16 回転軸
17 脱臭用固定フード
18 脱臭吸引ダクト
19 遮蔽板部
20 遮蔽板部押上げ片
21 開閉片部
22 開口部
23 臭気回収移動ダクト
24 臭気回収固定ダクト
25 外壁
26 油圧シリンダー
30 走行用枠体
31 吸気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醗酵槽上を走行する攪拌機の攪拌羽根により醗酵槽内に投入された堆肥原料を攪拌しながら醗酵させる際に発生する臭気を吸気・脱臭する攪拌機における醗酵槽の脱臭機構において、
攪拌走行の際に前記醗酵槽上端より露出される攪拌羽根を覆うロータリーカバーと、
攪拌の際に前記ロータリーカバーに連通される脱臭用固定フードと、
前記脱臭用固定フードに連通され、攪拌走行に伴い発生する臭気が吸引される脱臭吸引ダクトと、
前記攪拌走行に伴い移動する脱臭吸引ダクトに連通される臭気回収固定ダクトを備える
ことを特徴とする攪拌機における醗酵槽の脱臭機構。
【請求項2】
前記脱臭用固定フードの吸気口に、前記ロータリーカバーとの連通時のみ、該吸気口が開口される遮蔽板部が設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の攪拌機における醗酵槽の脱臭機構。
【請求項3】
前記臭気回収固定ダクトが前記醗酵槽の始端から終端に沿って設けられる散水用水槽に沿って配置され、前記臭気回収固定ダクトに前記脱臭吸引ダクトが前記散水用水槽内の水を介して連通される
ことを特徴とする請求項1または2記載の攪拌機における醗酵槽の脱臭機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−161408(P2009−161408A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2290(P2008−2290)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(595134858)豊栄物産株式会社 (6)
【Fターム(参考)】