説明

攪拌装置

【課題】 低コストでシンプルな構造ながら各攪拌羽根や剪断羽根の自転速度を個別に調整可能とし、材料の種類や性状、或いは用途等、広範囲で利用可能な攪拌装置を提供する。
【解決手段】 攪拌槽3の上位に配設した駆動モータ5の駆動軸6を攪拌槽3の中心部へ垂下させ、この駆動軸6には同心でかつ径が大小二段の固定ギヤ7a、7bを遊嵌させて攪拌槽3に固着する。また、駆動軸6下端部には支持部材8を固着し、この支持部材8の端縁部には下端に攪拌羽根9aと剪断羽根9bを備えた複数の従動軸10a、10bを回転自在に軸支する一方、各従動軸10a、10bの上端に固着した従動ギヤ11a、11bをそれぞれ前記何れかの固定ギヤ7a、7bと噛合させ、駆動軸6の回転に伴って支持部材8に軸支した各従動軸10a、10bがそれぞれ所望速度で自転しながら駆動軸6周囲を公転するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン型状の攪拌槽内に供給される各種材料を攪拌羽根や剪断羽根にて攪拌・混合処理する攪拌装置に関し、特に攪拌羽根や剪断羽根をそれぞれ自転させながら同時に攪拌槽中心部の駆動軸周囲を公転させて攪拌・混合処理を行う攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パン型状の攪拌槽内に備えた攪拌羽根や剪断羽根を所定速度で自転させながら、同時に攪拌槽中心部に位置する駆動軸周囲を公転させる構成とすることにより、供給材料の攪拌・混合処理能力を効果的に高めた、一般に遊星タービンミキサやプラネタリーミキサ等と呼ばれる攪拌装置がある。ところで、この攪拌装置の攪拌羽根や剪断羽根を自転させる機構としては、例えば、特許文献1、2に示されるように、駆動軸周囲に配した固定ギヤに攪拌羽根や剪断羽根の自転用従動ギヤを噛合させておき、攪拌羽根や剪断羽根が駆動軸周囲を公転するのに伴い、固定ギヤに噛合させた従動ギヤが回転して攪拌羽根や剪断羽根を自転させるように構成したものや、特許文献3、4に示されるように、駆動モータを複数備え、各駆動モータにて攪拌羽根と剪断羽根を公転させながらそれぞれ個別に自転させるように構成したものなどがある。
【0003】
なお、上記のうち前者構成の装置では、攪拌羽根や剪断羽根の自転速度は全て同じであるが、後者構成の装置では、各駆動モータの回転速度を調整することにより攪拌羽根と剪断羽根の自転速度をそれぞれ個別に設定でき、供給する材料の種類や性状、或いは用途等に応じた攪拌・混合処理を可能としている。
【特許文献1】実公平3−23301号公報
【特許文献2】実公昭58−17623号公報
【特許文献3】特許第3942598号公報
【特許文献4】登録実用新案第3035906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各攪拌羽根や剪断羽根の自転用に個別に駆動モータを備えるとなるとコストアップを招くばかりか、装置構造も複雑なものとなってメンテナンス面においても不利であると考えられる。
【0005】
本発明は上記の点に鑑み、低コストでシンプルな構造ながら各攪拌羽根や剪断羽根の自転速度を個別に調整可能とし、材料の種類や性状、或いは用途等、広範囲で利用可能な攪拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の攪拌装置では、パン型状の攪拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を前記攪拌槽の中心部へ垂下させ、該駆動軸には同心でかつ径が大小二段の固定ギヤを遊嵌させて攪拌槽に固着すると共に、駆動軸下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の端縁部には下端に攪拌羽根と剪断羽根を備えた複数の従動軸を回転自在に軸支する一方、各従動軸の上端に固着した従動ギヤをそれぞれ前記何れかの固定ギヤと連動させ、駆動軸の回転に伴って支持部材に軸支した各従動軸がそれぞれ所定速度で自転しながら駆動軸周囲を公転するように構成したことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2記載の攪拌装置では、攪拌羽根を備えた従動軸の従動ギヤを小径の固定ギヤと連動させる一方、剪断羽根を備えた従動軸の従動ギヤを大径の固定ギヤと連動させるようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の攪拌装置では、剪断羽根は、従動軸に複数のブレードを放射状に、かつ上下方向に所定間隔で固着して成ることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の攪拌装置では、剪断羽根は、従動軸に同心でかつ水平に配した複数のリング体を上下方向に所定間隔で固着すると共に、各リング体の外周縁及び/または内周縁に複数のブレードを所定間隔で固着して成ることを特徴としている。
【0010】
また、請求項5記載の攪拌装置では、剪断羽根は、従動軸に同心でかつ水平に配した複数のリング体を上下方向に所定間隔で固着すると共に、各リング体の上下縁部に切り込みを連設して略ノコ歯状に形成して成ることを特徴としている。
【0011】
また、請求項6記載の攪拌装置では、前記各リング体を従動軸に対して所定角度で傾斜させた状態で固着したことを特徴としている。
【0012】
また、請求項7記載の攪拌装置では、前記各リング体を従動軸に対して側面視で左右交互に所定角度で傾斜させた状態で固着したことを特徴としている。
【0013】
また、請求項8記載の攪拌装置では、剪断羽根は、従動軸に枠体を固着すると共に、該枠体内側に所定メッシュサイズの網体を貼着して成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載の攪拌装置によれば、パン型状の攪拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を前記攪拌槽の中心部へ垂下させ、該駆動軸には同心でかつ径が大小二段の固定ギヤを遊嵌させて攪拌槽に固着すると共に、駆動軸下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の端縁部には下端に攪拌羽根と剪断羽根を備えた複数の従動軸を回転自在に軸支する一方、各従動軸の上端に固着した従動ギヤをそれぞれ前記何れかの固定ギヤと連動させ、駆動軸の回転に伴って支持部材に軸支した各従動軸がそれぞれ所定速度で自転しながら駆動軸周囲を公転するように構成したので、一基の駆動モータにて各攪拌羽根や剪断羽根を個別に所望速度にて自転させることが可能となり、低コストでかつシンプルな構成でありながら、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0015】
また、請求項2記載の攪拌装置によれば、攪拌羽根を備えた従動軸の従動ギヤを小径の固定ギヤと連動させる一方、剪断羽根を備えた従動軸の従動ギヤを大径の固定ギヤと連動させるようにしたので、剪断羽根の自転速度を攪拌羽根よりも高速に調整でき、材料の効果的な剪断処理が可能となって、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0016】
また、請求項3記載の攪拌装置によれば、剪断羽根は、従動軸に複数のブレードを放射状に、かつ上下方向に所定間隔で固着して成るので、材料の効果的な剪断処理が可能となり、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0017】
また、請求項4記載の攪拌装置によれば、剪断羽根は、従動軸に同心でかつ水平に配した複数のリング体を上下方向に所定間隔で固着すると共に、各リング体の外周縁及び/または内周縁に複数のブレードを所定間隔で固着して成るので、周速が比較的速く剪断に有効な位置に配置されたブレードにて材料のより効果的な剪断処理が可能となり、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0018】
また、請求項5記載の攪拌装置によれば、剪断羽根は、従動軸に同心でかつ水平に配した複数のリング体を上下方向に所定間隔で固着すると共に、各リング体の上下縁部に切り込みを連設して略ノコ歯状に形成して成るので、周速が比較的速く剪断に有効な位置に配置されたノコ歯にて材料のより効果的な剪断処理が可能となり、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0019】
また、請求項6記載の攪拌装置によれば、前記各リング体を従動軸に対して所定角度で傾斜させた状態で固着したので、剪断処理を受けずに各リング体の間を素通りしてしまう材料を極力減らせ、材料のより効果的な剪断処理が可能となり、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0020】
また、請求項7記載の攪拌装置によれば、前記各リング体を従動軸に対して側面視で左右交互に所定角度で傾斜させた状態で固着したので、剪断処理を受けずに各リング体の間を素通りしてしまう材料を極力減らせ、材料のより効果的な剪断処理が可能となり、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0021】
また、請求項8記載の攪拌装置によれば、剪断羽根は、従動軸に枠体を固着すると共に、該枠体内側に所定メッシュサイズの網体を貼着して成るので、剪断処理を受けずに素通りしてしまう材料を極力減らせ、材料のより効果的な剪断処理が可能となり、多用途に利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る攪拌装置にあっては、パン型状の攪拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を下位の攪拌槽の中心部へ垂下させていると共に、該駆動軸には同心でかつ径が大小二段の固定ギヤを遊嵌させてそれぞれ攪拌槽に固着している。また、前記駆動軸の下端部には水平に配した略円盤状の支持部材を固着し、該支持部材の対向位置の端縁部には下端に攪拌羽根と剪断羽根を備えた一対の従動軸をそれぞれ回転自在に軸支していると共に、各従動軸の上端には所定径の従動ギヤを固着しており、攪拌羽根を備えた従動軸の従動ギヤを小径の固定ギヤと噛合させている一方、剪断羽根を備えた従動軸の従動ギヤを大径の固定ギヤと噛合させている。また、前記攪拌羽根は、従動軸の下端に材料の攪拌・混合処理に有効な平板状の攪拌ブレードを固着して成している一方、剪断羽根は、従動軸周囲に材料の剪断処理に有効な多数の薄板状の剪断ブレードを放射状に、かつ上下方向に一定間隔にて固着して成している。
【0023】
そして、上記構成の攪拌装置にて、攪拌槽内に供給した材料を攪拌・混合処理するときには、駆動モータにて駆動軸を所定速度にて回転させ、それに伴って回転する支持部材と共に攪拌羽根と剪断羽根を駆動軸周囲を公転させる。このとき、攪拌羽根の公転に伴って小径の固定ギヤと噛合させている上端の従動ギヤが回転し、適宜決定した小径の固定ギヤと従動ギヤのギヤ比によって攪拌羽根を所定の速度で、例えば駆動軸の略2倍の速度で自転させる一方、剪断羽根もその公転に伴って大径の固定ギヤと噛合させている上端の従動ギヤが回転し、適宜決定した大径の固定ギヤと従動ギヤのギヤ比によって剪断羽根を攪拌羽根よりも高速の、例えば駆動軸の略3〜4倍の速度で自転させる。こうして、攪拌槽内に供給した材料は、前記攪拌羽根によって攪拌処理を受けながら剪断羽根によって高速剪断処理を繰り返し受け、その結果、材料のダマ等の塊状物も残らず、ムラの少ない好適な攪拌・混合処理がなされていく。
【0024】
このように、一基の駆動モータにて各攪拌羽根や剪断羽根を個別に所望速度にて自転させることが可能で、またその構造もシンプルなものなので、低コストでメンテナンス性にも優れ、材料の種類や性状、或いは用途等、広範囲で利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0026】
図中の1は、例えば、各種粉体同士の混合処理やモルタル・コンクリート等の混練処理等に使用可能な攪拌装置であって、移動用の車輪2にて支持されるパン型状の攪拌槽3を備え、該攪拌槽3の上部開放部はカバー体4で覆っていると共に、該カバー体4上には駆動モータ5を載置している。また、前記駆動モータ5の駆動軸6を下位の攪拌槽3の中心部へ垂下させていると共に、該駆動軸6には駆動軸と同心でかつ径の比較的小さい固定ギヤ7aと、径の比較的大きい固定ギヤ7bを遊嵌させ、これら両固定ギヤ7a、7b共にカバー体4とボルトにて固着している。
【0027】
前記駆動軸6の下端部には水平に配した略円盤状の支持部材8を固着しており、該支持部材8の対向位置の端縁部には、下端に攪拌羽根9aと剪断羽根9bを備えた一対の従動軸10a、10bをそれぞれ回転自在に軸支していると共に、各従動軸10a、10bの上端には所定径の従動ギヤ11a、11bを固着しており、攪拌羽根9aを備えた従動軸10aの従動ギヤ11aを小径の固定ギヤ7aと噛合させて連動させている一方、剪断羽根9bを備えた従動軸10bの従動ギヤ11bを大径の固定ギヤ7bと噛合させて連動させている。
【0028】
なお、各従動軸10a、10bの従動ギヤ11a、11bと固定ギヤ7a、7bとを連動させる手段として、本実施例においてはそれぞれ直接噛合させているが、例えば、チェーンやベルト等の伝達手段を介して連動させるようにしてもよい。
【0029】
前記攪拌羽根9aは、従動軸10aの下端側を、図に示すように二叉状に形成していると共に、分岐させたそれぞれの下端部には材料の攪拌・混合処理に有効な平板状の攪拌ブレード12を固着して成している。また、前記攪拌ブレード12は、攪拌ブレード12の進行方向前方側から後方側に向けて攪拌槽3底面から漸次離反するように傾斜させた状態にて固定していると共に、その前面側には攪拌槽3底面と摺動するようにウレタンゴム等の可撓性部材13を貼着しており、攪拌槽3底部の材料を掻き上げながら効果的に攪拌処理可能なように図っている。
【0030】
なお、攪拌ブレード12は、材料の種類や性状、或いは用途等に応じ、その傾斜角度や傾斜方向を適宜変更してもよく、例えば、攪拌ブレード12の進行方向前方側から後方側に向けて攪拌槽3底面に漸次接近するように傾斜した状態で固定して、攪拌槽3底部の材料を押し潰すようにしながら攪拌処理したり、或いは攪拌ブレード12を垂直に立てた状態で固定してもよい。
【0031】
一方、剪断羽根9bは、従動軸10b周囲に材料の剪断処理に有効な多数の薄板状の剪断ブレード14を放射状に、かつ上下方向に一定間隔にて固着して成しており、剪断ブレード14の回転によって材料を細かく剪断処理可能としている。
【0032】
なお、剪断羽根9bも、材料の種類や性状、或いは用途等に応じ、様々な構成のものを採用すればよく、例えば、図4に示すように、従動軸10bに同心でかつ水平に配した複数のリング体15を上下方向に一定間隔にて固着すると共に、各リング体15の外周縁に複数の剪断ブレード16を一定間隔で固着すれば、周速が比較的速く剪断に有効な位置に配置された剪断ブレード16にて材料のより効果的な剪断処理が可能となる。ここで、剪断ブレード16は、各リング体15の内周縁、或いは外周縁と内周縁の両方に固着することもできる。
【0033】
図5は、前記各リング体15を従動軸10bに対して所定角度、例えば5〜10度程度、傾斜させた状態で固着して成る剪断羽根9bを示すものであり、このように構成することによって、剪断処理を受けずに各リング15体の間を素通りしてしまう材料を極力減らせ、材料のより効果的な剪断処理が可能となる。また、各リング体15の傾斜方向を一様とせず、例えば図6に示すように、側面視で左右交互に傾斜させるようにしてもよい。
【0034】
図7は剪断羽根9bのまた別の実施例を示すものであり、従動軸10bに同心でかつ水平に配した複数のリング体17を上下方向に一定間隔にて固着すると共に、各リング体17の上下縁部に複数の切り込み18を連設して略ノコ歯状に形成し、このノコ歯が高速回転することによって材料を細かく剪断処理可能としている。なお、このリング17体についても、図5、図6の実施例で示したリング体15と同様に傾斜させた状態で従動軸10bに固着させてもよい。
【0035】
図8は剪断羽根9bのまた別の実施例を示すものであり、従動軸10bの対向位置に一対の枠体19を固着すると共に、該枠体19内側に所定メッシュサイズの網体20を貼着しており、この網体20が高速回転することによって材料を細かく分断して剪断処理可能としている。なお、前記網体20のメッシュサイズは、材料の種類や性状、或いは用途等に応じて適宜調整すれば良い。
【0036】
21は攪拌槽3内の材料を押し潰して解砕する押さえ羽根であって、前記支持部材8にアーム22の上端を固着している一方、アーム22の下端には水平に配した板体23を固着しており、該板体23は進行方向前方側から後方側に向けて攪拌槽3底面に漸次接近するように傾斜させた状態にて固定していると共に、その前面側には攪拌槽3底面と摺動するようにウレタンゴム等の可撓性部材24を貼着しており、攪拌槽3底部の材料を前記可撓性部材24にて攪拌槽3底面に押さえ付け、材料のダマ等の塊状物を繰り返し何度も押し潰して細かく解砕処理可能なように図っている。
【0037】
また、25は攪拌槽3の内周壁に付着する材料を掻き取って攪拌槽3の中心側に掻き寄せるスクレーパであって、支持部材8にアーム26の一端を固着している一方、アーム26の他端に垂直に配した板体27を固着し、該板体27の回転方向前面側にウレタンゴム等の可撓性部材28を貼着して成り、該可撓性部材28の外周端縁を攪拌槽3の内周壁に摺動させるように構成している。
【0038】
そして、上記構成の攪拌装置1にて、攪拌槽3内に供給した材料を攪拌・混合処理するとき、例えば、駆動軸6に遊嵌させる小径の固定ギヤ7aと、攪拌羽根9a上端の従動ギヤ11aとのギヤ比を2:1に設定しておくと共に、駆動軸6に遊嵌させる大径の固定ギヤ7bと、剪断羽根9b上端の従動ギヤ11bとのギヤ比を4:1に設定しておく。そして、駆動モータ5にて駆動軸6を所定速度(a)にて回転させると、それに伴って回転する支持部材8と共に攪拌羽根9aと剪断羽根9bが駆動軸6周囲を図3中の矢印方向へ速度(a)にて公転する。
【0039】
このとき、攪拌羽根9aは公転に伴って小径の固定ギヤ7aと噛合している上端の従動ギヤ11aが回転し、攪拌羽根9aは前記ギヤ比によって(a)の略2倍の速度(b)で自転する一方、剪断羽根9bも公転に伴って大径の固定ギヤ7bと噛合している上端の従動ギヤ11bが回転し、剪断羽根9bは前記ギヤ比によって(a)の略4倍の速度(c)で自転する。こうして、攪拌槽3内に供給した材料は、前記攪拌羽根9aによって攪拌処理を受けながら剪断羽根9bによって高速剪断処理を繰り返し受け、その結果、材料のダマ等の塊状物も残らず、かつムラの少ない好適な攪拌・混合処理がなされていく。
【0040】
このように、一基の駆動モータの駆動力にて各攪拌羽根や剪断羽根を個別に所望速度にて自転させることが可能で、またその構造も非常にシンプルなものなので、低コストでメンテナンス性にも優れ、材料の種類や性状、或いは用途等、広範囲で利用可能な使い勝手のよい攪拌装置とすることができる。
【0041】
なお、本実施例においては、駆動軸6に遊嵌させる大小二段の固定ギヤ7a、7b、攪拌羽根9aの従動ギヤ11a、及び剪断羽根9bの従動ギヤ11bのギヤ比を調整して、駆動軸6の回転速度(a)と、攪拌羽根9aの自転速度(b)と、剪断羽根9bの自転速度(c)の速度比を、(a):(b):(c)=1:2:4に設定しているが、特にこれに限定するものではなく、材料の種類や性状、用途等に応じて適宜調整すると良い。このとき、速度比を変更する場合には、例えば、駆動軸6に遊嵌させる大小二段の固定ギヤ7a、7bと、それに噛合させる攪拌羽根9a、剪断羽根9bの各従動ギヤ11a、11bをそれぞれ径の異なるものに変更しても良いし、或いは固定ギヤ7a、7bと攪拌羽根9a、剪断羽根9bの各従動ギヤ11a、11bとを噛合させずに、チェーンやベルト等にて巻回して連動させるようにすれば、固定ギヤ7a、7bか従動ギヤ11a、11bの何れか一方の径を変更すれば足り、調整が容易で好適である。
【0042】
また、本実施例においては、攪拌羽根と剪断羽根を一基ずつ備えるようにしているが、これに限定するものではなく、材料の種類や性状、用途等に応じて適宜数ずつ備えるようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る、攪拌装置の一実施例を示す、一部切り欠き正面図である。
【図2】図1の一部切り欠き側面図である。
【図3】図1のギヤ構造及び各羽根部分を示す一部省略した拡大平面図である。
【図4】剪断羽根の別の実施例を示す、拡大斜視図である。
【図5】剪断羽根の別の実施例を示す、拡大斜視図である。
【図6】剪断羽根の別の実施例を示す、拡大斜視図である。
【図7】剪断羽根の別の実施例を示す、拡大斜視図である。
【図8】剪断羽根の別の実施例を示す、拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1…攪拌装置 3…攪拌槽
5…駆動モータ 6…駆動軸
7a、7b…固定ギヤ 8…支持部材
9a…攪拌羽根 9b…剪断羽根
10a、10b…従動軸 11a、11b…従動ギヤ
13、24、28…可撓性部材 14、16…ブレード
15、17…リング体 18…切り込み
19…枠体 20…網体
21…押さえ羽根 25…スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン型状の攪拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を前記攪拌槽の中心部へ垂下させ、該駆動軸には同心でかつ径が大小二段の固定ギヤを遊嵌させて攪拌槽に固着すると共に、駆動軸下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の端縁部には下端に攪拌羽根と剪断羽根を備えた複数の従動軸を回転自在に軸支する一方、各従動軸の上端に固着した従動ギヤをそれぞれ前記何れかの固定ギヤと連動させ、駆動軸の回転に伴って支持部材に軸支した各従動軸がそれぞれ所定速度で自転しながら駆動軸周囲を公転するように構成したことを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
攪拌羽根を備えた従動軸の従動ギヤを小径の固定ギヤと連動させる一方、剪断羽根を備えた従動軸の従動ギヤを大径の固定ギヤと連動させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の攪拌装置。
【請求項3】
剪断羽根は、従動軸に複数のブレードを放射状に、かつ上下方向に所定間隔で固着して成ることを特徴とする請求項1または2記載の攪拌装置。
【請求項4】
剪断羽根は、従動軸に同心でかつ水平に配した複数のリング体を上下方向に所定間隔で固着すると共に、各リング体の外周縁及び/または内周縁に複数のブレードを所定間隔で固着して成ることを特徴とする請求項1または2記載の攪拌装置。
【請求項5】
剪断羽根は、従動軸に同心でかつ水平に配した複数のリング体を上下方向に所定間隔で固着すると共に、各リング体の上下縁部に切り込みを連設して略ノコ歯状に形成して成ることを特徴とする請求項1または2記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記各リング体を従動軸に対して所定角度で傾斜させた状態で固着したことを特徴とする請求項4または5記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記各リング体を従動軸に対して側面視で左右交互に所定角度で傾斜させた状態で固着したことを特徴とする請求項4または5記載の攪拌装置。
【請求項8】
剪断羽根は、従動軸に枠体を固着すると共に、該枠体内側に所定メッシュサイズの網体を貼着して成ることを特徴とする請求項1または2記載の攪拌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate