説明

支持杭及び支持杭の貫入工法

【課題】施工が容易で工期が短く安価で環境にも優しい支持杭及び支持杭の貫入工法を提供する。
【解決手段】本発明の支持杭1は機械的強度の高い硬質プラスチック材料によって形成される管状の杭本体5と、杭本体5の貫入方向先端7に取り付けられるヘッドキャップ9と、ヘッドキャップ9に接続され、外周面に設けられたスクリュー羽根25によって地盤G中に回転貫入される支持翼11とを備えている。また本発明の支持杭の貫入工法は支持杭1を使用しリーダー付きロット3に接続する貫入準備工程と、リーダー付きロット3を回転させて支持杭1を回転貫入する貫入実行工程と、支持層Bに到達後、リーダー付きロット3を地上に引き抜く貫入終了工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために貫入される基礎工事用の支持杭及び当該支持杭の貫入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に軟弱地盤等の上に建築物等を構築する場合には、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために基礎工事に先立って鋼製の支持杭を地盤中に打設する工事が行われている。
【0003】
しかしながら、鋼製の杭はコストが高いという問題がある。一方、近時においては機械的強度に優れ、安価な硬質プラスチック材料等によって形成される構造材料も数多く開発されており、種々の分野で使用されている。
そしてこのような構造材料を基礎工事用の支持杭に適用できれば支持杭の構築に掛かる大幅な労力の削減と工期の短縮等を図ることが可能となるが、地盤貫入時に掛かる貫入抵抗等によって支持杭の折損が生ずるおそれがあり、当該支持杭の折損を防止する画期的な支持杭の構造と支持杭の貫入工法の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景技術及び背景技術が抱えていた問題点の存在を踏まえてなされたものであって、施工が容易で低コストの支持杭及び支持杭の貫入工法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に記載した発明は、軟弱地盤等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために貫入される基礎工事用の支持杭において、当該支持杭は機械的強度の高い硬質プラスチック材料によって形成される管状の杭本体と、杭本体の貫入方向先端に取り付けられるヘッドキャップと、ヘッドキャップに接続され、外周面に設けられたスクリュー羽根によって地盤中に回転貫入される支持翼とを備えていることを特徴とする支持杭である。
【0006】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した支持杭において、前記杭本体の貫入方向後端には貫入後端開口部を閉塞するエンドキャップが取り付けられていることを特徴とする支持杭である。
【0007】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した支持杭において、前記杭本体の内部にはコンクリート、土砂、発泡スチロール等によって構成される充填材が充填されていることを特徴とする支持杭である。
【0008】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載した支持杭において、前記支持翼には支持杭を回転貫入する機械装置のリーダー付きロット先端に接続され、リーダー付きロットの回転を支持翼に伝達する係合構造が設けられていることを特徴とする支持杭である。
【0009】
請求項5に記載した発明は、軟弱地盤等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために貫入される基礎工事用の支持杭の貫入工法において、当該支持杭の貫入工法は、支持杭を地盤中に貫入する機械装置のリーダー付きロットに管状の杭本体を装着し、リーダー付きロットの先端にヘッドキャップと支持翼を接続する貫入準備工程と、リーダー付きロットを所定の方向に回転させながら下方に移動させることによって地盤を掘削し杭本体、ヘッドキャップ及び支持翼を地盤中に回転貫入する貫入実行工程と、支持翼の先端が支持層に到達後、リーダー付きロットとの接続状態を解除し、リーダー付きロットを地上に引き抜く貫入終了工程とを備えていることを特徴とする支持杭の貫入工法である。
【0010】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した支持杭の貫入工法において、前記貫入終了工程の後工程として貫入終了後の杭本体の貫入後端開口部をエンドキャップによって閉塞する貫入完了工程が設けられていることを特徴とする支持杭の貫入工法である。
【0011】
請求項7に記載した発明は、請求項5または6に記載した支持杭の貫入工法において、地上から地下の支持層までの距離が長い時には複数本の杭本体をソケットを介在させて接着接合することによって支持杭の長さを延長して使用するようにしたことを特徴とする支持杭の貫入工法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の支持杭によれば、硬質プラスチック製の管状の杭本体の採用により支持杭の施工コストの削減を図ることができる。
杭本体の貫入後端開口部にエンドキャップを取り付けた場合には、杭本体内への異物の侵入、落下が防止され安全性が向上する。
杭本体内部に充填材を充填した場合には杭本体の機械的強度を向上させることができる。またヘッドキャップにリーダー付きロットと接続するための係合構造を採用した場合には支持杭の一部である当該ヘッドキャップと支持翼を地盤の掘削手段として使用できるようになる。
杭本体はソケットによって延長することが可能であるから地上から地下の支持層までの距離が長い施工現場にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、下記に示す実施の形態1と実施の形態2を例に採って、本願発明に係る支持杭1の構成と、当該支持杭1を地盤G中に貫入する本願発明に係る支持杭の貫入工法について図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1では支持杭1を貫入する機械装置のリーダー付きロット3が支持杭1の管状の杭本体5の中心を貫通する外嵌合状態で支持杭1を貫入する外嵌合タイプの支持杭1Aについて説明し、実施の形態2では筒状のリーダー付きロット3の中心に内嵌合状態で杭本体5を収容した状態で支持杭1を貫入する内嵌合タイプの支持杭1Bについて説明する。
【0014】
実施の形態1に係る支持杭1Aは図1〜4に示すように軟弱地盤A等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤Aの下方に位置する頑強で支持層Bに支持させるために使用される。
具体的には支持杭1Aは機械的強度の高い硬質プラスチック材料によって形成される管状の杭本体5と、杭本体5の貫入方向先端7に取り付けられるヘッドキャップ9と、ヘッドキャップ9に接続され、地盤G中に回転貫入される支持翼11と、杭本体5の貫入方向後端13に取り付けられるエンドキャップ15とを備えている。
【0015】
杭本体5は一例として直径100〜400mm程度の硬質塩化ビニルパイプによって構成されている。そして杭本体5の管径や管の厚さは施工現場の地盤Gの状態や支持層Bまでの到達深度等に応じて適宜選択して使用される。
硬質塩化ビニルパイプは鋼管に比べて安価であり、錆の発生等腐食することがなく、適度な柔軟性と機械的強度を有することから杭本体5の材料として最適な材料ということが言える。
【0016】
また実施の形態1では比較的管径の大きな杭本体5が使用されており、支持杭1Aを貫入する機械装置のリーダー付きロット3は図2に示すように杭本体5の中心を貫くように杭本体5に対して内嵌状態で使用される。
杭本体5の貫入方向先端7の内壁面は幾分拡径されており、後述する支持翼11における側筒部17の上端部と接続される接続段部19となっている。
【0017】
ヘッドキャップ9は上面が開放された短寸の有底筒状の部材である。そして次に述べる支持翼11における側筒部17の外周面に水平に取り付けられている。
ヘッドキャップ9の上方に立ち上げられている側胴部21の内壁面と支持翼11における側筒部17の外周面との間にはリング状の収容空間23が設けられており、当該収容空間23内に上記杭本体5の貫入方向先端7が嵌合状態で収容されるようになっている。
【0018】
支持翼11は一例として金属製材料によって形成されており、図示しない係合構造によって上記リーダー付きロット3の先端に接続される側筒部17と、該側筒部17の外周面に設けられる一枚のスクリュー羽根25とを備えている。
側筒部17は上面が開放された有底円筒状の部材であり、閉塞された側筒部17の底部は中心が下方に突出するように円錐形状に形成されている。
スクリュー羽根25は側筒部17の外周面に設けられる螺線帯状の部材であり、支持杭1Aの回転貫入時には地盤Gを掘削する掘削手段として機能する。スクリュー羽根25は支持杭1Aの貫入後はそのままヘッドキャップ9と共に地盤G中に残り、支持杭1の支持力を向上させる支持力向上手段として機能する。
【0019】
エンドキャップ15は上面が閉塞され、底面が開放された筒状の部材で杭本体5の貫入方向後端13の貫入後端開口部を閉塞する目的で使用される。
従って容易に外れないように比較的重量のある金属製材料等によって形成されており、エンドキャップ15の側胴部21の内径は杭本体5の外径より幾分大きめに設定されている。
このエンドキャップ15は杭本体5内への異物の侵入、落下等を防止する目的で必要に応じて設けられる。
【0020】
次にこのようにして構成される支持杭1Aを使用して行う本発明の支持杭の貫入工法について説明する。
本発明の支持杭の貫入工法は、(1)貫入準備工程と、(2)貫入実行工程と、(3)貫入終了工程と、(4)貫入完了工程とを備えることによって構成されている。
(1)貫入準備工程(図1、2参照)
貫入準備工程は支持杭1Aを地盤G中に貫入する機械装置のリーダー付きロット3に杭本体5を装着し、リーダー付きロット3の先端にヘッドキャップ9と支持翼11を接続する貫入に先立っての準備工程である。
【0021】
即ちリーダー付きロット3に対して杭本体5を外嵌状態で装着し、リーダー付きロット3の先端に図示しない係合構造を使用してヘッドキャップ9と支持翼11とを接続する。
そしてリーダー付きロット3の先端に接続された支持翼11はリーダー付きロット3と一体になって掘削方向に回転し得る状態となる。
【0022】
(2)貫入実行工程(図2、3参照)
貫入実行工程はリーダー付きロット3を所定の方向に回転させながら下方に移動させることによって地盤Gを掘削し支持杭1Aを地盤G中に回転貫入する工程である。
即ちリーダー付きロット3を所定の方向に回転させると支持翼11が掘削方向に回転するようになり、リーダー付きロット3の下方への移動によって杭本体5と、ヘッドキャップ9と、支持翼11は一体になって軟弱地盤Aから支持層Bに向けて貫入される。
【0023】
(3)貫入終了工程(図3参照)
貫入終了工程は支持翼11の先端が支持層Bに到達し、支持層Bに支持された後、リーダー付きロット3との接続状態を解除し、リーダー付きロット3を地上に引き抜く工程である。
即ち貫入実行時において掘削手段として機能していた支持翼11は支持層Bに到達後、リーダー付きロット3と切り離され、杭本体5とヘッドキャップ9と共に地盤G中に残り支持杭1としての機能を担うことになる。
【0024】
(4)貫入完了工程(図4参照)
貫入完了工程は貫入終了後の杭本体5の貫入方向後端13の貫入後端開口部をエンドキャップ15によって閉塞する工程である。
即ち貫入終了後の杭本体5の貫入方向後端13に対して上方からエンドキャップ15を被せ、杭本体5と共に構築される建築物等の基礎工事が開始できる状態にする工程である。
そして貫入完了後の支持杭1Aと一体化された基礎は頑強な支持層Bによって支持された状態になり、地震等の振動にも十分耐えられる頑強な構造の基礎となって建築物等を支承する。
【0025】
実施の形態2に係る支持杭1Bは図5〜7に示すような構成を有しており、前記実施の形態1に係る支持杭1Aと概略において同様の構成を有している。従ってここでは実施の形態1と異なる構成のみに絞って支持杭1Bの構成を説明し、支持杭1Aと同様の構成と支持杭1Bの貫入工法の詳細については省略する。
【0026】
具体的には杭本体5の直径が実施の形態1に係る支持杭1Aの杭本体5よりも小径に形成されており、杭本体5が円筒形状のリーダー付きロット3に対して内嵌状態で装着されている点が実施の形態1に係る支持杭1Aと実施の形態2に係る支持杭1Bの構成が相違している。
これに関連し、小径の杭本体5の貫入方向先端7は支持翼11における側筒部17の上端部に内嵌状態で支持されており、ヘッドキャップ9の側胴部21における内方の収容空間23にはリーダー付きロット3の先端が収容される構成となっている。
当該支持杭1Bの貫入に当たっては、上述した貫入準備を行った後、図5に示す貫入実行、図6に示す貫入終了、図7に示す貫入完了の順番で支持杭1Bの貫入工事が進められる。
【0027】
以上、本発明を実施するための最良の形態とその一例である実施の形態1について詳述し、実施の形態2について簡単に言及してきたが、具体的な構成は上述した構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
例えば、支持杭1A、1Bにおいて構成部材の1つとして設けられていたエンドキャップ15を省略することが可能であり、その場合には支持杭の貫入工法においても貫入完了工程を省略することが可能となる。
【0028】
エンドキャップ15を省略した場合には杭本体5内への異物の侵入や落下が懸念されるが、その場合杭本体5の内部に図8に示すようにコンクリート、土砂、発泡スチロール等によって構成される充填材Cを充填することも可能である。
地上から地下の支持層Bまでの距離が長いときには図9に示すように複数本の杭本体5をソケットSを介在させて接着接合することによって支持杭1の長さを延長することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は軟弱地盤等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために貫入される基礎工事用の支持杭の製造、施工分野等において利用でき、特に施工が容易で工期が短く環境にも優しい支持杭及び支持杭の貫入工法を適用したい場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る支持杭を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る支持杭を地盤中に貫入する途中の状態を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る支持杭を貫入終了後、リーダー付きロットを地上に引き抜いた状態を示す側断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る支持杭の貫入終了後の状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る支持杭を地盤中に貫入する途中の状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る支持杭を貫入終了後、リーダー付きロットを地上に引き抜いた状態を示す側断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る支持杭の貫入終了後の状態を示す側断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る支持杭を示す側断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施の形態に係る支持杭を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 支持杭 1A (外嵌合タイプの)支持杭
1B (内嵌合タイプの)支持杭 3 リーダー付きロット
5 杭本体 7 貫入方向先端
9 ヘッドキャップ 11 支持翼
13 貫入方向後端 15 エンドキャップ
17 側筒部 19 接続段部
21 側胴部 23 収容空間
25 スクリュー羽根 G 地盤
A 軟弱地盤 B 支持層
C 充填材 S ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために貫入される基礎工事用の支持杭において、当該支持杭は機械的強度の高い硬質プラスチック材料によって形成される管状の杭本体と、杭本体の貫入方向先端に取り付けられるヘッドキャップと、ヘッドキャップに接続され、外周面に設けられたスクリュー羽根によって地盤中に回転貫入される支持翼とを備えていることを特徴とする支持杭。
【請求項2】
請求項1に記載した支持杭において、前記杭本体の貫入方向後端には貫入後端開口部を閉塞するエンドキャップが取り付けられていることを特徴とする支持杭。
【請求項3】
請求項1または2に記載した支持杭において、前記杭本体の内部にはコンクリート、土砂、発泡スチロール等によって構成される充填材が充填されていることを特徴とする支持杭。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した支持杭において、前記支持翼には支持杭を回転貫入する機械装置のリーダー付きロット先端に接続され、リーダー付きロットの回転を支持翼に伝達する係合構造が設けられていることを特徴とする支持杭。
【請求項5】
軟弱地盤等の上に建築物等を構築するに当たり、建築物等の基礎を当該軟弱地盤の下方に位置する支持層に支持させるために貫入される基礎工事用の支持杭の貫入工法において、当該支持杭の貫入工法は、支持杭を地盤中に貫入する機械装置のリーダー付きロットに管状の杭本体を装着し、リーダー付きロットの先端にヘッドキャップと支持翼を接続する貫入準備工程と、リーダー付きロットを所定の方向に回転させながら下方に移動させることによって地盤を掘削し杭本体、ヘッドキャップ及び支持翼を地盤中に回転貫入する貫入実行工程と、支持翼の先端が支持層に到達後、リーダー付きロットとの接続状態を解除し、リーダー付きロットを地上に引き抜く貫入終了工程とを備えていることを特徴とする支持杭の貫入工法。
【請求項6】
請求項5に記載した支持杭の貫入工法において、前記貫入終了工程の後工程として貫入終了後の杭本体の貫入後端開口部をエンドキャップによって閉塞する貫入完了工程が設けられていることを特徴とする支持杭の貫入工法。
【請求項7】
請求項5または6に記載した支持杭の貫入工法において、地上から地下の支持層までの距離が長い時には複数本の杭本体をソケットを介在させて接着接合することによって支持杭の長さを延長して使用するようにしたことを特徴とする支持杭の貫入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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