説明

支持部材、支持構造及び板状物の加工方法

【課題】板状物の反りに起因した割れ、クラックを抑制し、支持部材上から板状物を剥離する際に板状物が破損するのを低減することができる支持部材、支持構造及び板状物の加工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る支持部材11は、ウエーハWの一方の面を樹脂層12を介して保持するための支持部材であって、ウエーハWの外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部14を有するフィルムで形成されており、凹部14は、凹部14の中心にウエーハWの中心を位置づけた際にウエーハWの外縁と隙間15を有する内径で形成され、隙間15は、支持部材11の凹部14に紫外線硬化性樹脂を塗布し凹部14の中心にウエーハWの中心を位置づけて載置して押圧した際に、凹部14の紫外線硬化性樹脂にウエーハWの一部が埋没しウエーハWの外周全周に渡って紫外線硬化性樹脂が隆起するように設定されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物の裏面を研削して所定厚みへと薄化するために用いる支持部材、支持構造及び板状物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、板状物の研削時には、板状物の表面を保護するため、板状物の表面に保護テープが貼着される(例えば、特許文献1参照)。ところが、板状物を研削して厚みを所定厚さ(例えば、90μm)以下にする場合、加工中に板状物の反りを抑制できずに反動で板状物自身の反りの力で破損してしまう。さらには、加工中のナイフエッジ化により欠け(クラック)や割れが発生してしまう。
【0003】
そこで、従来では、剛体からなる支持部材上に板状物を貼着した後、板状物を研削する方法が採用されている(例えば、特許文献2参照)。また、通常、板状物はワックスや紫外線硬化樹脂等で支持部材上に貼着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−198542号公報
【特許文献2】特開2004−207606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、支持部材を剛体にすれば板状物の反りが抑制できるので薄加工は可能だが剥離が困難になり剥離時に破損してしまう。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、板状物の反りに起因した割れ、クラックを抑制し、支持部材上から板状物を剥離する際に板状物が破損するのを低減することができる支持部材、支持構造及び板状物の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは支持部材、支持構造及び板状物の加工方法について鋭意研究をした。その結果、板状物を保持するために用いる支持部材をフィルムで形成し、その形状を所定形状とすることにより、板状物を研削加工する際に、板状物の割れ、欠け(クラック)の発生を生じることなく、安定して研削加工を行うことができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。すなわち、板状物の外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部を有し、凹部はその凹部の中心に板状物の中心を位置づけた際に板状物の外縁と隙間を有する内径で形成され、支持部材の凹部に樹脂を塗布し凹部の中心に板状物の中心を位置づけて載置して押圧した際に、凹部の樹脂に板状物の一部が埋没して板状物の外周全周に渡って板状物の外縁と凹部の内径との間の隙間に樹脂が隆起するように形成されることにより、板状物の反りに起因した割れ、クラックを抑制し、支持部材上から板状物を剥離する際に板状物が破損するのを低減することができることを見出した。
【0008】
そこで、本発明に係る支持部材は、板状物の一方の面を樹脂を介して保持するための支持部材であって、該板状物の外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部を有するフィルムで形成されており、該凹部は、該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけた際に該板状物の外縁と隙間を有する内径で形成され、該隙間は、該支持部材の該凹部に樹脂を塗布し該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけて載置して押圧した際に、該凹部の該樹脂に該板状物の一部が埋没し該板状物の外周全周に渡って該樹脂が隆起するように設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る支持構造は、板状物の一方の面を樹脂を介して保持するための支持構造であって、該板状物の外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部を有するフィルムで形成されており、該凹部は、該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけた際に該板状物の外縁と隙間を有する内径で形成され、該隙間は、該支持部材の該凹部に樹脂を塗布し該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけて載置して押圧した際に、該凹部の該樹脂に該板状物の一部が埋没し該板状物の外周全周に渡って該樹脂が隆起するように設定されている支持部材と、該凹部に設けられ、前記樹脂を硬化させて形成される樹脂層と、該凹部の該樹脂層の表面に設けられる板状物と、を有し、該板状物の一部は該凹部内の該樹脂層に埋没し、該樹脂層は該板状物の外周全周に渡って該隙間から隆起して形成されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る板状物の加工方法は、支持部材上に配設された板状物の裏面を研削して所定厚みへ薄化する板状物の加工方法であって、該支持部材と該板状物との少なくとも一方が紫外線を透過する物質からなり、上記の支持部材を準備する支持部材準備工程と、準備された該支持部材の該凹部に紫外線硬化樹脂を塗布し、該板状物の表面を該紫外線硬化樹脂と対面させ、該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけて、該板状物を該凹部の該紫外線硬化樹脂に埋没させて該板状物の外周全周に渡って該隙間から該紫外線硬化樹脂が隆起するまで前記板状物を押圧して載置する板状物載置工程と、該板状物載置工程を実施した後、該紫外線硬化樹脂に該支持部材又は板状物を介して紫外線を照射して該紫外線硬化樹脂を硬化させて該支持部材上に板状物を固定する板状物固定工程と、該板状物固定工程を実施した後、該支持部材側を保持テーブルで保持して板状物の裏面を研削し該所定厚みに薄化する薄化工程と、該薄化工程を実施した後、該紫外線硬化樹脂を加熱又は加水して軟化させ、該板状物から該支持部材及び紫外線硬化樹脂を剥離する除去工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明においては、前記薄化工程を実施した後、前記除去工程を実施する前に、前記板状物側に粘着シートを貼着するとともに該粘着シートを介して環状フレームに装着する転写工程を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の支持部材によれば、板状物の反りに起因した割れ、クラックを抑制し、支持部材上から板状物を剥離する際に板状物が破損するのを低減することができる。
また、本発明の板状物の加工方法によれば、支持部材をフィルムで形成しても板状物は樹脂を介して支持部材の凹部に保持されているため、接地体積が広くなり板状物の反りが抑制でき板状物の割れ及びクラックの発生を抑制することができる。更に、支持部材はフィルムで形成されているため樹脂は熱又は加水等の外的刺激によって容易に軟化するため、板状物を破損させることなく板状物から支持部材及び樹脂を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、支持構造の構成を簡略に示す図である。
【図2】図2は、支持部材の斜視図である。
【図3】図3は、ウエーハの断面図である。
【図4】図4は、ウエーハの斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る板状物の加工方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、貼着装置の構成の一例を示す図である。
【図7】図7は、樹脂供給手段の操作の状態を示す図である。
【図8】図8は、熱硬化性樹脂を滴下する様子を示す図である。
【図9】図9は、支持部材上に熱硬化性樹脂が滴下された状態を示す図である。
【図10】図10は、支持部材上にウエーハを降下させる様子を示す図である。
【図11】図11は、支持部材上にウエーハを降下させた状態を示す図である。
【図12】図12は、UVを照射する状態を示す図である。
【図13】図13は、研削装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図14】図14は、ウエーハを薄化する工程を示す図である。
【図15】図15は、ウエーハを薄化した後の状態を示す図である。
【図16】図16は、ウエーハから支持部材及び樹脂層を剥離する様子を示す図である。
【図17】図17は、ウエーハから支持部材及び樹脂層を剥離した状態を示す図である。
【図18】図18は、ウエーハから支持部材及び樹脂層を剥離する他の一例を示す図である。
【図19】図19は、ウエーハから支持部材及び樹脂層を剥離する他の一例を示す図である。
【図20】図20は、本実施形態に係る板状物の加工方法の他の一例を示すフローチャートである。
【図21】図21は、ウエーハの裏面側に粘着シートを貼着する様子を示す図である。
【図22】図22は、ウエーハから支持部材及び樹脂層を剥離する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
<支持構造>
図1は、支持構造の構成を簡略に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る支持構造10は、支持部材11と、樹脂層12と、板状物(ウエーハ)Wとを有するものである。
【0016】
(支持部材)
支持部材11は、紫外線硬化樹脂を硬化させて形成される樹脂層12を介してウエーハWの一方の面を保持するための部材である。支持部材11は、ウエーハWの外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部14を有するフィルムで形成されている。
【0017】
凹部14は、その中心にウエーハWの中心を位置付けた際にウエーハWの外縁(端面)Waと隙間15を有する内径で形成されている。ウエーハWが円形の場合には凹部14は円形に形成される。
【0018】
支持部材11を形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリエステル(Polyester)等が挙げられる。
【0019】
ウエーハWは、紫外線硬化樹脂に紫外線(UV)を照射して硬化させて形成される樹脂層12を介して保持されるようにしている。そのため、支持部材11側からUVを照射する際には、支持部材11はUVを透過させることのできる材料によって形成されたフィルムで形成されていることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。UVをウエーハW側から照射する際には、支持部材11はUVの透過性が低い材料によって形成されたフィルムで形成されていてもよい。
【0020】
支持部材11の斜視図を図2に示す。図2に示すように、支持部材11は円形としているが、これに限定されるものではなく、ウエーハWの形状に応じて任意の形状としてもよい。
【0021】
隙間15は、支持部材11の凹部14に紫外線硬化樹脂を塗布し、凹部14の中心にウエーハWの中心を位置付けて載置して押圧した際に、凹部14の紫外線硬化樹脂にウエーハWの一部が埋没しウエーハWの外周全周に渡って紫外線硬化樹脂が隆起するように設計されている。そのため、支持部材11は、支持部材11をフィルムで形成してもウエーハWは樹脂層12を介して凹部14に保持することができるため、支持部材11と、ウエーハWの樹脂層12とが接触する体積は大きくなる。その結果、ウエーハWの反りに起因した割れ及びクラックを抑制し、支持部材11上からウエーハWを剥離する際にウエーハWが破損するおそれを低減することができる。
【0022】
(接着剤)
樹脂層12は、支持部材11の凹部14に設けられる。樹脂層12は、紫外線硬化性樹脂を用いて形成されるものである。紫外線硬化性樹脂は、紫外線により三次元架橋し硬化する樹脂である。また、紫外線硬化樹脂には、水分を吸収すると膨潤して軟化し、保持力が低下する樹脂も含まれる。紫外線硬化性樹脂は、紫外線により三次元架橋し硬化する樹脂であればよく、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、(1)ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる、少なくとも分子鎖両端末に(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル化合物、(2)少なくとも分子中に2個の(メタ)アクリル基を有する親水性(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ディスコ株式会社製の「レジロック」等が好適に用いられる。これら樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
紫外線硬化性樹脂としては、未硬化時には粘度が1000mPa・s以上50000mPa・s、好ましくは3000mPa・s以上50000mPa・sであり、紫外線照射により硬化するとショア硬度Dタイプで30以上90以下、好ましくは40以上90以下の硬度になるものであることが好ましい。また、紫外線硬化性樹脂は40℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下の温水を吸収すると膨潤して保持力が低下する任意の樹脂組成物を使用することができる。
【0024】
なお、紫外線硬化性樹脂は、一般に電子線の照射又は単なる加熱によっても硬化するため、紫外線硬化性樹脂を硬化させる手段としては、UV照射、電子線照射、加熱のいずれかあるいはこれらの併用としてもよい。
【0025】
紫外線硬化性樹脂は、透明であることが望ましい。そのとき使用される透明の紫外線硬化性樹脂とは、完全硬化したときでも可視光線の透過性が高い樹脂をいう。樹脂層12の透明性は、例えば、厚さが50μm〜100μmのシート状に成形した際の550nmでの光線透過率が80%以上のものが好ましく、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上であるものを指す。樹脂層12を表示素子用基板等に用いる場合には、樹脂層12の透明性は85%以上であることが好ましい。
【0026】
なお、紫外線硬化性樹脂は、支持部材11とウエーハWを接着させるものであるため、樹脂層12として従来から用いられているホットメルトタイプのワックスを使用することもできるが、後にウエーハWを研削加工した後、剥離する際にウエーハWに割れやクラックが生じる虞がある。これに対し、樹脂層12は紫外線硬化性樹脂を硬化させて得られるものであるため、水分を含むと膨潤して保持力が低下するので、ウエーハWを樹脂層12から容易に剥離することができるため、好ましい。
【0027】
(ウエーハW)
ウエーハWを形成する材料としては、例えば、シリコン(Si)、サファイア、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等が挙げられる。図3は、ウエーハWの断面図であり、図4は、ウエーハWの斜視図である。図3、4に示すように、ウエーハWは、硬質の円盤形状の部材であり、欠け及び割れが生じるのを抑制するために、端面Waが断面半円状に面取りされている。ウエーハWの表面W1には回路が形成されている。
【0028】
なお、ウエーハWは、UVを透過させることのできる材料によって形成されていることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0029】
本実施形態に係る支持構造10によれば、支持部材11がフィルムで形成されていてもウエーハWは樹脂層12を介して凹部14に保持することができ、ウエーハWの樹脂層12との接地体積は広くなるため、ウエーハWの反りに起因した割れ、クラックを抑制し、支持部材11上からウエーハWを剥離する際にウエーハWが破損するのを低減することができる。
【0030】
<板状物の加工方法>
次に、支持部材11を用いて作製した支持構造10を用いてウエーハWを研削する方法について、以下に説明する。
【0031】
図5は、本実施形態に係る板状物の加工方法の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、板状物の加工方法は、支持部材11上に配設されたウエーハWの裏面W2を研削して所定厚みへ薄化する方法であり、以下の工程を含む。
(a) 支持部材11を準備する支持部材準備工程(ステップS11)
(b) 準備された支持部材11の凹部14に紫外線硬化樹脂を塗布し、ウエーハWの表面W1を紫外線硬化樹脂と対面させ、凹部14の中心にウエーハWの中心を位置付けて、ウエーハWを凹部14の紫外線硬化樹脂に埋没させてウエーハWの外周全周に渡って隙間15から紫外線硬化樹脂が隆起するまでウエーハWを押圧して載置する板状物載置工程(ステップS12)
(c) 板状物載置工程(ステップS12)を実行した後、支持部材11を介して紫外線硬化樹脂にUVを照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて支持部材11上にウエーハWを固定する板状物固定工程(ステップS13)
(d) 板状物固定工程(ステップS13)を実行した後、支持部材11側を保持テーブルで保持してウエーハWの裏面W2を研削し所定厚みに薄化する薄化工程(ステップS14)
(e) 薄化工程(ステップS14)を実施した後、紫外線硬化樹脂を加熱又は加水して軟化させ、ウエーハWから支持部材11及び樹脂層12を剥離する除去工程(ステップS15)
【0032】
なお、本実施形態においては、支持部材11側からUVを照射するため、支持部材11の材料としてUVの透過性が高い材料を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、ウエーハW側からUVを照射する際には、UVの透過性が高い材料を用いてウエーハWを形成するようにする。また、支持部材11及びウエーハWの両方をUVの透過性が高い材料を用いて形成するようにしてもよい。
【0033】
支持構造10の形成には、従来から一般に用いられている貼着装置が用いられる。貼着装置の構成の一例を図6に示す。本実施形態では、貼着装置20を使用して、樹脂層12を介してウエーハWを支持部材11で保持し、支持構造10を形成する方法について説明する。
【0034】
図6に示すように、貼着装置20は、支持部材11を保持する定盤21と、支持部材11上に紫外線硬化性樹脂を供給する樹脂供給手段22と、定盤21の上方に定盤21と対向して配設されるウエーハWの片面を下方に露出させた状態で露出面と反対側の他面を保持する保持パッド23と、紫外光(UV)照射手段24とを有する。また、支持部材11及び保持パッド23は貼着室25の内部に設けられ、樹脂供給手段22は貼着室25の内部と外部との間を移動可能に設けられている。
【0035】
定盤21は、支持部材11が載置される水平上面21aを有している。定盤21は、UVを透過させるために、石英ガラス等の透明又は半透明な硬質材料により形成されている。
【0036】
樹脂供給手段22は、アーム部31の先端に樹脂滴下部32が配設されて構成され、アーム部31の旋回動又は水平移動により、樹脂滴下部32を、定盤21に保持された支持部材11の中央部の上方(作用位置)と、定盤21の上方から退避した位置(非作用位置)とに選択的に位置付けることができる。
【0037】
UV照射手段24は、定盤21の下方に設けられ、定盤21を透過して水平上面21aに載置された支持部材11の下方からUVを照射する。紫外光照射手段24としては、例えばキセノンフラッシュ型のUVランプを使用することができる。
【0038】
保持パッド23は、多孔質材料により形成され、図示しない吸引源に連通している。保持パッド23は、ステンレス等の金属によって構成される基台35に設置されている。保持パッド23及び基台35は、昇降動手段40によって昇降可能に支持されている。保持パッド23は、保持するウエーハWの形状に対応させた形状に形成され、ウエーハWが円形である場合は円盤形状に形成される。
【0039】
昇降動手段40は、鉛直方向に起立する複数のガイドロッド41と、上方から鉛直方向に垂下する昇降ロッド42と、ガイドロッド41に対して摺動可能であるとともに上部が昇降ロッド42の下端に固定され下部が基台35を保持する基台保持部43と、昇降ロッド42を昇降させるモータ44とを備えている。昇降動手段40は、モータ44によって駆動されて昇降ロッド42が昇降するのに伴い、基台保持部43がガイドロッド41に案内されて昇降し、基台保持部43とともに保持パッド23及び基台35が昇降するように構成されている。また、昇降動手段40には、昇降ロッド42の鉛直方向位置の認識を介して保持パッド23の鉛直方向位置を検出する昇降位置検出手段であるエンコーダ45を備え、エンコーダ45によって認識された昇降位置情報は、制御手段46において認識され、認識した情報に基づいて制御手段46がモータ44を制御し、保持パッド23の昇降位置を制御することができる。
【0040】
昇降ロッド42の下端には、圧力検出手段47が連結されている。圧力検出手段47は、保持パッド23にかかる圧力を検出する荷重検出器であり、制御手段46は、圧力値に基づき保持パッド23の昇降を制御することができる。
【0041】
貼着装置20は、貼着室25の内外を移動可能に配設された液体滴下手段50を有している。液体滴下手段50は、定盤21の水平上面21a上に液体を供給する機能を有し、アーム部51の先端に滴下ヘッド52が配設されて構成されている。アーム部51の旋回動又は水平移動により、液体滴下手段50は、滴下ヘッド52が定盤21の水平上面21aの中央部上方に位置して液体を滴下する位置(作用位置)と、滴下ヘッド52が定盤21の上方から退避した位置(非作用位置)とに位置させることができる。
【0042】
貼着室25の側部には、支持部材11が貼着されるウエーハWの搬出入口となる開閉自在な開閉扉25aが設けられている。開閉扉25aが開いた状態を検知する開閉センサ25bが設けられ、開閉扉25aが開いた状態ではそのことを制御手段46が検知し、貼着室25の内部において支持部材11の貼着作業が行われないようにする。貼着室25は、UVカットガラスで覆われ、内部を視認できるとともに、紫外線が外部に漏れるのを抑制する構成となっている。
【0043】
次に、図5〜図22を参照して本実施形態に係る板状物の加工方法の各工程を説明する。まず、支持部材11を準備する(支持部材準備工程:ステップS11)。支持部材11は、上述の通り、UVを透過する物質で形成されている。支持部材11は、その中心部分に凹部14を有する(図1、2参照)。
【0044】
準備した支持部材11を定盤21の水平上面21a上に設置する。
【0045】
ウエーハWを保持パッド23に接触させ、保持パッド23において負圧を作用させてウエーハWを吸引保持する。ウエーハWは保持パッド23の所定の位置に位置決めして保持する。
【0046】
準備された支持部材11の凹部14に紫外線硬化樹脂を塗布し、ウエーハWの表面W1を凹部14と対面させ、凹部14の中心にウエーハWの中心を位置づけて、ウエーハWを凹部14の紫外線硬化樹脂に埋没させてウエーハWの外周全周に渡って隙間15から紫外線硬化樹脂が隆起するまでウエーハWを押圧して載置する(板状物載置工程:ステップS12)。
【0047】
図7に示すように、樹脂供給手段22が、水平方向であって貼着室25に進入していく方向(X軸方向)に移動し、必要に応じてX軸方向と水平方向に直交するY軸方向にも移動する。そして、図8に示すように、樹脂滴下部32を支持部材11の中央部上方に位置させ、樹脂滴下部32から所定量の紫外線硬化樹脂55aを滴下する。図9に示すように、支持部材11の中央部の上に山状の塊の紫外線硬化樹脂55bが堆積される。なお、紫外線硬化性の樹脂55aの所定量は、所望厚みの樹脂層12がウエーハWの片面全面に渡って形成される量である。
【0048】
次に、制御手段46が昇降動手段40の駆動を開始し、ウエーハWを吸引保持した保持パッド23を基台35とともに降下させていき、図10に示すように、ウエーハWの露出した面で紫外線硬化樹脂55bを押圧する。保持パッド23の位置は、昇降位置検出手段45によって検出されており、保持パッド23を所定位置まで下降させると、そのことが昇降位置検出手段45によって検出され、制御手段46が昇降動手段40の駆動を停止する。保持パッド23が所定位置まで下降することにより、紫外線硬化樹脂55bの上にウエーハWの表面W1側を押圧し、紫外線硬化樹脂55bはウエーハWの全面にわたって広がり、図11に示すように、端面Waの一部及び表面W1の全面に紫外線硬化樹脂55cが塗布される。一方、裏面W2には紫外線硬化樹脂55cが塗布されないようにして、裏面W2を上方に露出させる。また、昇降動手段40の駆動開始とともに圧力検出手段47による圧力の検出も開始する。保持パッド23の下降による紫外線硬化樹脂55bの押圧によって圧力値は上昇し、昇降動手段40の駆動停止による保持パッド23の下降停止後は徐々に圧力が低下する。そして、保持パッド23が停止した状態で圧力検出手段47における計測値がゼロになるまでその位置で待機させる。
【0049】
板状物載置工程(ステップS12)を実行した後、紫外線硬化樹脂55cに支持部材11側から支持部材11を介してUVを照射して紫外線硬化樹脂55cを硬化させて形成される樹脂層12により支持部材11上にウエーハWを固定する(ステップS13:板状物固定工程)。
【0050】
具体的には、圧力の計測値がゼロになると、図12に示すように、UV照射装置24をオンにして、支持部材11の下方に配置されたUV照射装置24から支持部材11側に向けてUVを照射する。UVは定盤21及び支持部材11を透過して紫外線硬化樹脂55cに照射される。これにより、ウエーハWと支持部材11との間に均一な厚さで応力が均一化された樹脂層12が形成される。UVの照射を受けた紫外線硬化樹脂55cが硬化することで、ウエーハWは樹脂層12を介して支持部材11に強固に固定され、支持された状態となる。
【0051】
なお、本実施形態においては、紫外線硬化樹脂55cに支持部材11側から支持部材11を介してUVを照射するようにしているが、これに限定されるものではなく、ウエーハWがUVの透過性が高い材料で形成されている場合には、紫外線硬化樹脂55cにウエーハW側からウエーハWを介してUVを照射するようにしてもよい。
【0052】
板状物固定工程(ステップS13)を実行した後、支持部材11側を保持テーブルで保持してウエーハWの裏面W2を研削し所定厚みに薄化する(ステップS14:薄化工程)。すなわち、ウエーハWは支持部材11に支持された状態で、ウエーハWの裏面W2の研削を行う。ウエーハWの研削には、従来から一般に用いられている研削装置を用いて行われる。次に、研削装置の一例を説明する。
【0053】
研削装置60の構成の一例を示す斜視図を図13に示す。図13に示すように、研削装置60は、装置ハウジング61を具備している。装置ハウジング61は、細長く延在する直方体形状の主部62と、該主部62の後端部(図13において右上端)に設けられ実質上鉛直に上方に延びる直立壁63とを有している。直立壁63の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール64が設けられている。この一対の案内レール64に研削手段としての研削ユニット65が上下方向に移動可能に装着されている。
【0054】
研削ユニット65は、移動基台67と該移動基台67に装着されたスピンドルユニット68を具備している。移動基台67は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部69が設けられており、この一対の脚部69に上記一対の案内レール64と摺動可能に係合する被案内溝70が形成されている。このように直立壁63に設けられた一対の案内レール64に摺動可能に装着された移動基台67の前面には前方に突出した支持部72が設けられている。この支持部72にスピンドルユニット68が取り付けられる。
【0055】
スピンドルユニット68は、支持部72に装着されたスピンドルハウジング73と、スピンドルハウジング73に回転自在に配設された回転スピンドル74とを具備している。スピンドルユニット68を構成するスピンドルハウジング73は略円筒状に形成され、軸方向に貫通する軸穴を備えている。スピンドルハウジング73に形成された軸穴に挿通して配設される回転スピンドル74は、その中央部には径方向に突出して形成されたスラスト軸受フランジが設けられており、軸穴の内壁との間に供給される高圧エアーによって回転自在に支持される。スピンドルハウジング73に回転可能に支持された回転スピンドル74は、一端部(図13中、下端部)がスピンドルハウジング73の下端から突出して設けられており、その一端(図13中、下端)にホイールマウント75が設けられている。そして、このホイールマウント75の下面に研削ホイール76が取り付けられる。ホイールマウント75に設けた複数のボルト挿通孔に複数の締結ボルト77を挿通して、ボルト挿通孔に対応して設けられている研削ホイール76のネジ穴に各々螺着することにより、ホイールマウント75と研削ホイール76とは着脱可能に装着されている。また、この研削ホイール76の下面に複数の研削砥石78が設けられている。
【0056】
研削装置60は、研削ユニット65を上記一対の案内レール64に沿って上下方向(チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削ユニット送り機構80を備えている。この研削ユニット送り機構80は、直立壁63の前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ネジロッド81を具備している。この雄ネジロッド81は、その上端部及び下端部が直立壁63に取り付けられた軸受部材82、83によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材82には雄ネジロッド81を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ84が配設されており、このパルスモータ84の出力軸が雄ネジロッド81に伝動連結されている。移動基台67の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)が形成されており、この連結部には鉛直方向に延びる貫通雌ネジ穴(図示していない)が形成されており、この雌ネジ穴に上記雄ネジロッド81が螺合せしめられている。よって、パルスモータ84が正転すると移動基台67、即ち研削ユニット65が下降、即ち前進せしめられ、パルスモータ84が逆転すると移動基台67、即ち研削ユニット65が上昇、即ち後退せしめられる。
【0057】
装置ハウジング61の主部62にはチャックテーブル機構85が配設されている。チャックテーブル機構85は、保持テーブル(チャックテーブル)86と、該チャックテーブル86の周囲を覆うカバー部材87と、該カバー部材87の前後に配設された蛇腹手段88a、88bとを備えている。チャックテーブル86は、図示しない回転駆動手段によって回転せしめられるようになっており、その上面にウエーハWを図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。また、チャックテーブル86は、図示しないチャックテーブル移動手段によって被加工物載置域89とスピンドルユニット68を構成する研削ホイール76と対向する研削域Aとの間で移動せしめられる。蛇腹手段88a、88bはキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段88aの前端は主部62の前面壁に固定され、後端はカバー部材87の前端面に固定されている。蛇腹手段88bの前端はカバー部材87の後端面に固定され、後端は装置ハウジング61の直立壁63の前面に固定されている。チャックテーブル86が矢印Xで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段88aが伸張されて蛇腹手段88bが収縮され、チャックテーブル86が矢印Yで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段88aが収縮されて蛇腹手段88bが伸張せしめられる。次に、研削装置60を用いたウエーハWの薄化方法について説明する。
【0058】
図14に示すように、チャックテーブル86をA方向に回転させながら、B方向に回転する研削砥石78の回転軌道の最外周がウエーハWの中心を通るように研削砥石78とウエーハWの裏面W2とを接触させることにより、裏面W2を一様に研削する。そして、ウエーハWが所定厚みに薄化(例えば、30μm〜80μm)されたところで、図15に示すように、研削ユニット65を上昇させて研削を終了する。このようにすることで、所定厚さに薄化されたウエーハW’が得られる。
【0059】
この薄化工程(ステップS14)において、ウエーハW’の外周全周に渡り形成された端面Waは、硬化した樹脂層12によって支持部材11に貼着され、樹脂層12によって外周側及び端面Waの上方側から押さえつけられるように保持される。このようにウエーハW’が保持された状態でウエーハW’の研削を行うことにより、端面WaがなければウエーハW’に反りが発生してしまうほど薄化した場合でも、樹脂層12からウエーハW’の外周が剥離することがないため、ウエーハW’の割れや欠け(クラック)が発生するのを抑制することができる。
【0060】
薄化工程(ステップS14)を実施した後、樹脂層12を加熱又は加水して軟化させウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を剥離する(ステップS15:除去工程)。
【0061】
樹脂層12を加熱して軟化させる場合には、図16に示すように、ウエーハW’及び支持部材11の表裏を反転させてから、ウエーハW’の裏面W2を図6の貼着装置20の定盤21に設置する。
【0062】
ウエーハW’を定盤21に吸引して保持した状態で支持部材11及び樹脂層12をウエーハW’の表面W1から剥離し、図17に示すように、支持部材11及び樹脂層12を完全に取り去ってウエーハW’の表面W1が露出した状態とする。支持部材11と樹脂層12とを剥離する場合には、樹脂層12と支持部材11との間に鋭利な剥離治具を差し込む等して、剥離を容易化することが望ましい。
【0063】
このようにして、ウエーハW’が形成される。このようにして形成されたウエーハW'は、樹脂層12によってしっかりと保持された状態で研削されたものであるため、割れや欠けのないものとなる。
【0064】
次に、樹脂層12に加水して軟化させる方法を説明する。樹脂層12に加水して軟化させる場合には、図18に示すように、温水(例えば、温度が90℃)91を入れた水槽92を用意する。この水槽92の底部の中心位置には支持台93が設けられている。樹脂層12を軟化させる場合、ウエーハW’及び樹脂層12が付いている支持部材11を温水91に浸漬するとともに、支持台93の上にウエーハW’及び樹脂層12が付いている支持部材11を設置してウエーハW’が支持台93によって支持されるようにする。このようにすることで、樹脂層12は含水して膨潤し、樹脂層12の保持力は低下し、ウエーハW’から容易に剥離可能な状態となる。
【0065】
ウエーハW’及び樹脂層12が付いている支持部材11を温水91に所定時間(樹脂層12が膨潤して粘着力が低下するのに必要な時間)浸漬した後、ウエーハW’を温水91に浸漬させたままの状態で、図19に示すように、支持部材11及び樹脂層12をウエーハW’から剥離して温水91の外部に取り出す。温水91に浸漬したことによって樹脂層12の粘着力は低下しているため、ウエーハW’からの剥離を容易に行うことができる。
【0066】
本実施形態においては、樹脂層12を加熱又は加水して軟化させ、ウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を剥離するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、樹脂層12を軟化させてウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を剥離するようにできる手段であれば用いることができる。
【0067】
このように、本実施形態に係る板状物の加工方法によれば、支持部材11をフィルムで形成してもウエーハWは樹脂層12を介して支持部材11の凹部14に保持されているため、接地体積が広くなりウエーハWの反りが抑制できウエーハWの割れ及びクラックの発生を抑制することができる。更に、支持部材11はフィルムで形成されているため樹脂層12は熱又は加水等の外的刺激によって容易に軟化するため、ウエーハW’を破損させることなくウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を容易に除去することができる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る板状物の加工方法は、ウエーハWを、例えば厚さが10μm以上80μm以下に研削して所定厚みへ薄化する場合でもウエーハWの反りやウエーハWの割れ及びクラックの発生を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る板状物の加工方法は、これに限定されるものではない。図20は、本実施形態に係る板状物の加工方法の他の一例を示すフローチャートである。図20に示すように、本実施形態に係る板状物の加工方法は、薄化工程(ステップS14)を実施した後、紫外線硬化樹脂の除去工程(ステップS15)を実施する前に、ウエーハW’側に粘着シートを貼着するとともに該粘着シートを介して環状フレームに装着する転写工程(ステップS21)を更に備える。
【0070】
すなわち、図21に示すように、ウエーハW’及び支持部材11の表裏を反転させ、ウエーハW’の裏面W2側に粘着シート95を貼着するとともに粘着シート95を介して環状フレーム96に装着する(ステップS21:転写工程)。粘着シート95は、例えば厚さが90μm程度のポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどからなるシート基材と、シート基材の一方の面に厚さが10μm程度塗布された粘着層とを備えたものが用いられる。粘着シート95の粘着層にウエーハW’の裏面W2が貼着される。粘着シート95の粘着層の周縁部には、リング状に形成された金属製の環状フレーム96が貼着され、ウエーハW’は粘着シート95を介して環状フレーム96と一体となって支持された状態となる。
【0071】
ウエーハW’の裏面W2側を粘着シート95に貼着した後、上述のように、樹脂層12を加熱又は加水して軟化させ、ウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を剥離する(ステップS15:除去工程)。ウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を剥離する際には、図22に示すように、樹脂層12とウエーハW’との間に鋭利な剥離治具を差し込む等して、支持部材11及び樹脂層12を完全に取り去ってウエーハW’の表面W1が露出した状態とする。これによりウエーハW'が得られる。
【0072】
よって、粘着シート95にウエーハW'を貼着した場合でも、粘着シート95に貼着されたウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を容易に剥離することができ、ウエーハW’から支持部材11及び樹脂層12を剥離しても割れや欠けのないウエーハW’が容易に得られる。
【実施例】
【0073】
以下、本実施形態の支持構造を実施例により具体的に説明する。ただし、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1〜5(Run No.1〜5):中央に凹部を有するPETフィルムを用いて固定)
直径が20.32cm、厚さが300μmで、凹部(直径:17.272cm、深さ:200μm)が施された支持部材であるPETフィルムに、固定剤として紫外線硬化型樹脂(「レジロック」、ディスコ社製)を使用した。まず、PETフィルムの凹部の中央に紫外線硬化型樹脂を塗布し、回路が形成される前のサファイアウエーハ(直径:15.24cm)を紫外線硬化型樹脂上に設置した後、サファイアウエーハを溶剤紫外線硬化型樹脂の樹脂厚さが120μmとなるように精密プレス機で加圧(100N)した。そして、PETフィルム側からUVを照射して溶剤紫外線硬化型樹脂を硬化させ、サファイアウエーハを接着剤によってPETフィルムに貼り付けた。そして、ビトリファイド砥石を用いてサファイアウエーハの露出面を仕上げ厚みが80μmとなるように研削した。その後、目視及び光学顕微鏡にて接着剤の剥がれ、サファイアウエーハの割れ、クラックの有無及びサファイアウエーハと接着剤との剥離の有無の観察を行った。この観察は、各サファイアウエーハについて5枚ずつを対象とした。各々の各観察結果を表1に示す。
【0075】
(比較例1〜5(Run No.6〜10):平滑な平面のPETフィルムを用いて固定)
実施例1において、支持部材として、凹部が形成されていない平滑な平面のPETフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして行った。接着剤の剥がれ、サファイアウエーハの割れ、クラックの有無及びサファイアウエーハと接着剤との剥離の有無の各観察結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように、比較例2(Run No.7)で、研削加工において、接着剤の剥がれが観察され、比較例1〜5(Run No.6〜10)の全てで、サファイアウエーハの割れ、クラックが発生したことが確認された。詳しくは、サファイアウエーハの外周部分に塗布された接着剤が剥がれ、その剥がれた部分からウエーハの割れ及びクラックが発生したことが確認された。これに対し、実施例1〜5(Run No.1〜5)では、研削加工において、接着剤の剥がれ、サファイアウエーハの割れ、クラック及びサファイアウエーハと接着剤との剥離は確認されず、いずれも優れていることが確認された。よって、サファイアウエーハと接着剤との剥離はないが、サファイアウエーハを研削加工する際にサファイアウエーハを固定するPETフィルムの表面の凹部の有無により、サファイアウエーハの割れ、クラックの発生への影響の違いが生じることが確認された。
【0078】
以上の試験結果から明らかなように、サファイアウエーハを接着剤を介して支持部材として表面の中央部に凹部を有するPETフィルムに固定することで、サファイアウエーハを80μm以下と更に薄膜化した場合においてもファイアウエーハの割れ、クラックの発生を生じることなく、研削加工を安定して行うことができることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
10 支持構造
11 支持部材
12 樹脂層
14 凹部
15 隙間
20 貼着装置
21 定盤
21a 水平上面
22 樹脂供給手段
23 保持パッド
24 紫外光照射手段(UV照射装置)
25 貼着室
25a 開閉扉
25b 開閉センサ
31 アーム部
32 樹脂滴下部
35 基台
40 昇降動手段
41 ガイドロッド
42 昇降ロッド
43 基台保持部
44 モータ
45 エンコーダ(昇降位置検出手段)
46 制御手段
47 圧力検出手段
50 液体滴下手段
51 アーム部
52 滴下ヘッド
55a〜55c 紫外線硬化樹脂
60 研削装置
61 装置ハウジング
62 主部
63 直立壁
64 案内レール
65 研削ユニット
67 移動基台
68 スピンドルユニット
69 脚部
70 被案内溝
72 支持部
73 スピンドルハウジング
74 回転スピンドル
75 ホイールマウント
76 研削ホイール
77 締結ボルト
78 研削砥石
80 研削ユニット送り機構
81 雄ネジロッド
82、83 軸受部材
84 パルスモータ
85 チャックテーブル機構
86 保持テーブル(チャックテーブル)
87 カバー部材
88a、88b 蛇腹手段
89 被加工物載置域
91 温水
92 水槽
93 支持台
95 粘着シート
96 環状フレーム
A 研削域
W、W' ウエーハ
W1 表面
W2 裏面
Wa 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物の一方の面を樹脂を介して保持するための支持部材であって、
該板状物の外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部を有するフィルムで形成されており、
該凹部は、該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけた際に該板状物の外縁と隙間を有する内径で形成され、
該隙間は、該支持部材の該凹部に樹脂を塗布し該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけて載置して押圧した際に、該凹部の該樹脂に該板状物の一部が埋没し該板状物の外周全周に渡って該樹脂が隆起するように設定されていることを特徴とする支持部材。
【請求項2】
板状物の一方の面を樹脂を介して保持するための支持構造であって、
該板状物の外径よりも大きい外径で且つ中央に凹部を有するフィルムで形成されており、
該凹部は、該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけた際に該板状物の外縁と隙間を有する内径で形成され、
該隙間は、該支持部材の該凹部に樹脂を塗布し該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけて載置して押圧した際に、該凹部の該樹脂に該板状物の一部が埋没し該板状物の外周全周に渡って該樹脂が隆起するように設定されている支持部材と、
該凹部に設けられ、前記樹脂を硬化させて形成される樹脂層と、
該凹部の該樹脂層の表面に設けられる板状物と、
を有し、
該板状物の一部は該凹部内の該樹脂層に埋没し、
該樹脂層は該板状物の外周全周に渡って該隙間から隆起して形成されてなることを特徴とする支持構造。
【請求項3】
支持部材上に配設された板状物の裏面を研削して所定厚みへ薄化する板状物の加工方法であって、
該支持部材と該板状物との少なくとも一方が紫外線を透過する物質からなり、請求項1に記載された支持部材を準備する支持部材準備工程と、
準備された該支持部材の該凹部に紫外線硬化樹脂を塗布し、該板状物の表面を該紫外線硬化樹脂と対面させ、該凹部の中心に該板状物の中心を位置づけて、該板状物を該凹部の該紫外線硬化樹脂に埋没させて該板状物の外周全周に渡って該隙間から該紫外線硬化樹脂が隆起するまで前記板状物を押圧して載置する板状物載置工程と、
該板状物載置工程を実施した後、該紫外線硬化樹脂に該支持部材又は板状物を介して紫外線を照射して該紫外線硬化樹脂を硬化させて該支持部材上に板状物を固定する板状物固定工程と、
該板状物固定工程を実施した後、該支持部材側を保持テーブルで保持して板状物の裏面を研削し該所定厚みに薄化する薄化工程と、
該薄化工程を実施した後、該紫外線硬化樹脂を加熱又は加水して軟化させ、該板状物から該支持部材及び紫外線硬化樹脂を剥離する除去工程と、
を備えることを特徴とする板状物の加工方法。
【請求項4】
前記薄化工程を実施した後、前記除去工程を実施する前に、前記板状物側に粘着シートを貼着するとともに該粘着シートを介して環状フレームに装着する転写工程を更に備える請求項3に記載の板状物の加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate