説明

改ざん防止用蓋及びその原板

【課題】 蓋を開放すれば開放したことが一目瞭然と判明する改ざん防止機能付きの蓋及びその原板を提供するものである。
【解決手段】 板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝6,7を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域8を設けた原板からなり、この円板状の原板を上記溝状域8に沿って絞り込んで天面部1を周回する周壁2を設け、この周壁2の下方部を内側に折り返して、周壁8の内面を周回する内側面部3を設けて構成してあり、上記周壁2に上記溝6,7と平行する複数本の切り込み線4,5を間隔をおいて設けてあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙に合成樹脂をラミネートした円板状の積層シートの周囲を絞り込んで天板部と周壁部を構成した蓋及びその原板に関する。
【背景技術】
【0002】
板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設けた原板からなり、この円板状の原板を上記溝状域に沿って絞り込んで天面部を周回する周壁を設け、この周壁の下方部を内側に折り返して周壁の内面を周回する内側面部を設けて構成した蓋及びその原板は公知である(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−72849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記公知の蓋は、現在アイスクリーム用紙カップの蓋として使用され、実用化されている。しかし、上記の蓋は実際に強固に製造され、一度開放してそのまま閉じても、開放したことが分からず、商品の陳列状態でいたずらされても判明しないという課題がある。
本発明は、この点に鑑み、蓋を開放すれば開放したことが一目瞭然と判明する改ざん防止機能付きの蓋及びその原板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのために、本発明改ざん防止用蓋は、板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設けた原板からなり、この円板状の原板を上記溝状域に沿って絞り込んで天面部を周回する周壁を設け、この周壁の下方部を内側に折り返して、周壁の内面を周回する内側面部を設けて構成してあり、上記周壁に上記溝と平行する複数本の切り込み線を間隔をおいて設けてあることを特徴とする。
上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁にまで達せず、周壁及び内側面部の下縁に切り込み線が存在しない構成であることを特徴とするものである。
上記溝が長手の溝と短手の溝とが交互に配列してあるとよい。
また、上記切り込み線が上記溝と一致して設けてあるとよい。
さらに、上記内側面部の上縁が内向きに折り曲げられているとよい。
【0005】
また、本発明改ざん防止用蓋は、上記周壁の内面を周回する内側面部に、間隔をおいて内向きに膨らむ多数の膨出部を設けたことを特徴とするものである。
上記膨出部を上記溝と平行して設け、膨出部の間隔を等間隔にしてある。
上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁にまで達せず、周壁及び内側面部の下縁に切り込み線が存在しない構成であることを特徴とするものである。
さらに、本発明改ざん防止用蓋は、上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁に達する短い下部切り込み線と、この周壁及び内側面部に該下部切り込み線の延長上に切り込み線のない部分を介在して上部切り込み線を設けてあることを特徴とする。
【0006】
また、本発明改ざん防止用蓋の原板は、板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設け、上記溝状域に上記溝と平行する複数本の切り込み線を間隔をおいて設けてあり、上記切り込み線が中間位置で分離してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の改ざん防止用蓋は、板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設けた原板からなり、この円板状の原板を上記溝状域に沿って絞り込んで天面部を周回する周壁を設け、この周壁の下方部を内側に折り返して、周壁の内面を周回する内側面部を設けて構成してあり、上記周壁に上記溝と平行する複数本の切り込み線を間隔をおいて設けてあることを特徴とするから、需要者が蓋を容器から開放する際に周壁を横方向に引いて蓋を開けようとするから、切り込み線の中間位置で引き裂かれることになり、蓋が開放された事実が明らかに残り、改ざん防止機能を発揮する効果がある。
【0008】
また、本発明改ざん防止用蓋は、上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁にまで達せず、周壁及び内側面部の下縁に切り込み線が存在しない構成であることを特徴とするものであるから、カップ状容器に蓋を施すときには切り込み線で分離することなく施蓋でき、そして、需要者が蓋を容器から開放する際に周壁を横方向に引いて蓋を開けようとするから、切り込み線の中間位置で引き裂かれることになり、蓋が開放された事実が明らかに残り、改ざん防止機能を発揮する効果がある。
【0009】
また、本発明改ざん防止用蓋は、上記溝が長手の溝と短手の溝とが交互に配列してあるから、改ざん防止用の切り込みのある蓋であっても、周壁を形成するための原板の絞り込みを容易とすることができる。
さらに、本発明改ざん防止用蓋は、上記切り込み線が上記溝と一致して設けてあるから、溝の加工と切り込み線の加工とを同時加工することができる効果がある。
また、本発明改ざん防止用蓋は、上記内側面部の上縁が内向きに折り曲げられているから、容器の上部フランジが上記内側面部の上縁と係合し、切り込み線位置での引き裂きが確実になる効果がある。
【0010】
さらに、本発明改ざん防止用蓋は、上記周壁の内面を周回する内側面部に、間隔をおいて内向きに膨らむ多数の膨出部を設けたから、容器に蓋を施した際、容器に対して蓋が強固に施され、需要者が蓋を容器から開放する際に周壁を横方向に引いて蓋を開けようとするから、切り込み線の中間位置で引き裂かれることになり、蓋が開放された事実が明らかに残り、改ざん防止機能を発揮する効果がある。
また、本発明改ざん防止用蓋は、上記膨出部を上記溝と平行して設け、膨出部の間隔を等間隔にしてあるから、容器に蓋を施した際、蓋の周壁が容器に対して均等に強く施される効果がある。
さらに、本発明改ざん防止用蓋は、上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁にまで達せず、周壁及び内側面部の下縁に切り込み線が存在しない構成であるから、蓋が容器に強く施された状態で、需要者が蓋を容器から開放する際に周壁を横方向に引いて蓋を開けようとするから、切り込み線の中間位置で引き裂かれることになり、蓋が開放された事実が明らかに残り、改ざん防止機能を発揮する効果がある。
【0011】
本発明改ざん防止用蓋は、上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁に達する短い下部切り込み線と、この周壁及び内側面部に該下部切り込み線の延長上に切り込み線のない部分を介在して上部切り込み線を設けてあるから、周壁の内側面部の膨出部によって、蓋を容器に強固に施し、施蓋時においても切り込み線から引き裂かれるおそれなく、開蓋時には確実に切り込み線で引き裂かれ、蓋が開放された事実が明らかに残り、改ざん防止機能を発揮する効果がある。
【0012】
本発明の改ざん防止用蓋の原板は、板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設け、上記溝状域に上記溝と平行する複数本の切り込み線を間隔をおいて設けてあり、上記切り込み線が中間位置で分離してあることを特徴とするものであるから、上記改ざん防止用蓋の構成材となる積層シート状の原板を提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の態様を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の改ざん防止用蓋の基本的な実施例を図1および図2にて説明する。この蓋は、円板状の天面部1と、この天面部1を周回する垂直状に垂下する周壁2と、この周壁2の内面を周回する内側面部3と、周壁2と内側面部3に形成した切り込み線4,5とから構成されている。
周壁2の切り込み線4と内側面部3の切り込み線5とは一部重なっているが、この切り込み線4,5が周壁2及び内側面部3の下縁にまで達せず、周壁2及び内側面部3の下縁に切り込み線が存在しない構成となっている。
【0015】
上記蓋の天面部1の外径は93ミリメートル、周壁2の高さが12ミリメートルであり、やや深い絞り込み加工により構成してある。
この周壁2の表面には、長手の溝6と短手の溝7が線状に縮幅して規則的に並んで起立しており、周壁2の表面は、きわめてよく整った形状になっている。内側面部3の表面もきわめてよく整った形状になっている。
【0016】
上記の蓋は、平方メートル当り320グラムの板状の表面に厚さ20マイクロメートルのポリプロピレン樹脂あるいは高密度ポリエチレン樹脂をラミネートし、同じく裏面に厚さ18マイクロメートルの低密度ポリエチレン樹脂あるいは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした積層シートに長方形状の長い長手の溝6と、同じく短手の溝7とを後述する原板の外周11を基端として、それぞれの先端を中心に向けて交互に配列して外周を周回する溝状域8として設けてある原板から構成してある。
【0017】
図3に原板が示してあり、この原板は、板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周11から中心に向けて溝6,7を等間隔に配列して、外周を周回する溝状域8を設けて構成してある。上記溝は長手の溝6と短手の溝7とを交互に配列して構成してある。
この溝状域8に等間隔に複数本(好ましくは4本から8本)の切り込み線4,5を長手の溝6と短手の溝7に平行して設けてある。好ましくはこの切り込み線を長手の溝6又は短手の溝7と一致させて設けるとよいが、必ずしも一致させることはない。この切り込み線4と5は中間の位置で分離してあり、この構成によって切り込み線4と5が、周壁2及び内側面部3の下縁にまで達せず、周壁2及び内側面部3の下縁に切り込み線が存在しない構成とすることができる。
【0018】
上記の円板状の原板を、長手の溝6と短手の溝7とに沿って絞り込んで、長手の溝6の内端を結ぶ仮想の円周線を天面部1の縁として天面部1を周回する周壁2を設けて、さらに、この周壁2の下方部を内側に折り返して内側面部3を設けてあり、折り返し縁が周壁2の下縁になっている。
周壁2の内面に内側面部3の内面を比較的低温及び中低圧の重合圧により接着してある。この内側面部に上縁が内向きに折り曲げられて形成したリブ12を設けてある。
【0019】
上記のように構成された本発明改ざん防止用蓋は、これが容器に閉蓋されるときには、切り込み線4,5の下縁部3が切り込まれていないから、閉蓋作業は円滑に行われる。
そこで一度、改ざん防止用蓋を容器から開放する際には、通常蓋全体を把持して水平状態のまま上方に開放することはなく、図4に示すように蓋の一個所を持って側方又は斜め上方に向けて開放するから、蓋の周壁2は切り込み線4、5箇所で分離することになる。
従って蓋が一度開放された痕跡が明らかに残され、確実に改ざん防止機能を発揮する。
【実施例2】
【0020】
この実施例2の構成は、上記実施例1の構成と同様であるが、周壁2の内面を周回する内側面部3に間隔をおいて、好ましくは等間隔に溝6,7と平行して内向きに膨らむ多数の膨出部13を設けたことを特徴とする。この膨出部13を形成するには、周壁2の内面に内側面部3の内面を比較的低温で中低圧の重合圧により接着する際、膨出部13の部位には重合圧をかけないようにして内側面部3を周壁2の内面に接着するようにしたものである。この膨出部13により蓋を容器14に施した際、蓋を容器に強固に施すことができ、容易に開蓋できないようになる。従って一度開蓋すれば切り込み線が確実に切り離され、蓋が開放された事実が明らかに残り、改ざん防止機能を発揮する。
【実施例3】
【0021】
この実施例3の構成は、上記実施例2の蓋に、実施例1,2の切り込み線4,5と異なる切り込み線を設けたものである。即ち、周壁2と内側面部3に下縁に達する短い下部切り込み線15と、この周壁2及び内側面部3に該下部切り込み線15の延長上に切り込み線のない部分16を介在して上部切り込み線17を設けたことを特徴とする。
この実施例3の構成では、蓋の内側面部に内向きに膨らむ多数の膨出部を設けてあるから、施蓋する際に短い下部切り込み線15に力がかかることなく、上部切り込み線が引き裂かれることなく施蓋が可能である。この施蓋状態で蓋を開放すると、上記下部切り込み線15から上部切り込み線17に容易に引き裂き力がかかり、蓋が開放されたことが明らかになり、改ざん防止機能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の改ざん防止用蓋の実施例1を示す斜面図で一部切欠して断面で示してある。
【図2】同じく実施例1の正面図で一部を切欠して断面で示してある。
【図3】本発明の改ざん防止用蓋の原板を示す平面図。
【図4】本発明の改ざん防止用蓋の機能を示す正面図。
【図5】本発明の改ざん防止用蓋の要部を拡大して示す断面図。
【図6】本発明の改ざん防止用蓋の実施例2の底面図。
【図7】本発明の改ざん防止用蓋の実施例3を施蓋状態で示す正面図で一部を切欠して示してある。
【符号の説明】
【0023】
1 天面部
2 周壁
3 内側面部
4 切り込み線
5 切り込み線
6 溝
7 溝
8 溝状域
11 外周
12 リブ
13 膨出部
14 容器
15 下部切り込み線
16 切り込み線のない部分
17 上部切り込み線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設けた原板からなり、この円板状の原板を上記溝状域に沿って絞り込んで天面部を周回する周壁を設け、この周壁の下方部を内側に折り返して、周壁の内面を周回する内側面部を設けて構成してあり、上記周壁に上記溝と平行する複数本の切り込み線を間隔をおいて設けてあることを特徴とする改ざん防止用蓋。
【請求項2】
上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁にまで達せず、周壁及び内側面部の下縁に切り込み線が存在しない構成であることを特徴とする上記請求項1に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項3】
上記溝が長手の溝と短手の溝とが交互に配列してある上記請求項1又は2に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項4】
上記切り込み線が上記溝と一致して設けてある上記請求項3に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項5】
上記内側面部の上縁が内向きに折り曲げられている上記請求項1ないし4の何れかに記載の改ざん防止用蓋。
【請求項6】
上記周壁の内面を周回する内側面部に、間隔をおいて内向きに膨らむ多数の膨出部を設けたことを特徴とする上記請求項1に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項7】
上記膨出部を上記溝と平行して設け、膨出部の間隔を等間隔にしてある上記請求項6に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項8】
上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁にまで達せず、周壁及び内側面部の下縁に切り込み線が存在しない構成であることを特徴とする上記請求項6又は7に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項9】
上記切り込み線が周壁及び内側面部の下縁に達する短い下部切り込み線と、この周壁及び内側面部に該下部切り込み線の延長上に切り込み線のない部分を介在して上部切り込み線を設けてあることを特徴とする上記請求項6又は7に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項10】
上記溝が長手の溝と短手の溝とが交互に配列してある上記請求項6乃至9のいずれかに記載の改ざん防止用蓋。
【請求項11】
上記切り込み線が上記溝と一致して設けてある上記請求項10に記載の改ざん防止用蓋。
【請求項12】
板紙に合成樹脂をラミネートした積層シートに円周状の外周から中心に向けて溝を等間隔に配列して外周を周回するように溝状域を設け、上記溝状域に上記溝と平行する複数本の切り込み線を間隔をおいて設けてあり、上記切り込み線が中間位置で分離してあることを特徴とする改ざん防止用蓋の原板。
【請求項13】
上記溝が長手の溝と短手の溝とが交互に配列してある上記請求項12に記載の改ざん防止用蓋の原板。
【請求項14】
上記切り込み線が上記溝と一致して設けてある上記請求項13に記載の改ざん防止用蓋の原板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−99394(P2007−99394A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230156(P2006−230156)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000177209)株式会社ソロカップジャパン (19)
【Fターム(参考)】