説明

改善されたキシロース資化能を有するザイモモナス(Zymomonas)

Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の変異プロモーターを含有するキメラキシロースイソメラーゼ遺伝子を導入することによって、ザイモモナス(Zymomonas)の株を操作した。前記プロモーターは、キシロースイソメラーゼの発現の増加を指令し、そして株が、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のために操作される場合、キシロースの改善された資化能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年3月27日に出願された米国仮特許出願第61/039878号明細書(本明細書において引用により援用される)の利益を主張する。
【0002】
政府の権利についての陳述
本発明は、エネルギー省から授与された契約番号04−03−CA−70224およびDE−FC36−03GO13146に基づく米国政府の助成により行われた。米国政府は、本発明において所定の権利を有する。さらに、米国政府は、米国エネルギー省と国立再生可能エネルギー研究所(ミッドウエスト研究所の一部局)との間の契約番号DE−AC36−99GO10337に基づいて、本発明の権利を有する。
【0003】
本発明は、微生物学および遺伝子操作の分野に関する。より具体的には、改善されたキシロース資化能を有するザイモモナス(Zymomonas)株の遺伝子操作について記載する。
【背景技術】
【0004】
微生物によるエタノールの産生は、化石燃料の代替的エネルギー源を提供し、従って、現在の重要な研究の分野である。キシロースは、加水分解されたリグノセルロース材料における主要ペントースであり、従って、多量に利用可能な低コストの炭素基質を提供することができるため、エタノール、ならびに他の有用な産物を産生する微生物は、キシロースを炭素源として使用することが可能であることが望ましい。天然ではキシロースを資化しないザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)および他のエタノール産生細菌を、1)キシロースからキシルロースへの変換を触媒するキシロースイソメラーゼ;2)キシルロースをリン酸化して、キシルロース5−リン酸を形成させるキシルロキナーゼ;3)トランスケトラーゼ;および4)トランスアルドラーゼをコードする遺伝子の導入によって、キシロース資化のために遺伝子操作することができる。
【0005】
キシロース代謝のためにZ.モビリス(Z.mobilis)株(米国特許第5514583号明細書、米国特許第5712133号明細書、米国特許第6566107号明細書、国際公開第95/28476号パンフレット、Feldmann et al.(1992)Appl Microbiol Biotechnol38:354−361、Zhang et al.(1995)Science267:240−243)、ならびにザイモバクター・パルメ(Zymobacter palmae)株(Yanase et al.(2007)Appl.Environ.Mirobiol.73:2592−2599)を操作することには成功している。しかし、典型的には、操作された株はキシロース上ではグルコース上ほど良好に増殖せず、そしてエタノールを産生しない。キシロース資化能について操作された株はキシロース培地上での継代培養によって適応され、改善されたキシロース資化能を有する株を生じており、米国特許第7,223,575号明細書ならびに同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080286870号明細書に記載されている。しかし、改善のための遺伝的基礎については決定されていない。
【0006】
改善されたキシロース資化能を有するザイモモナス(Zymomonas)、および他のエタノール産生細菌の遺伝子操作株の必要性が依然として存在する。出願人らは、キシロース資化能のために操作され、そして改善されたキシロース資化能のために適応されたZ.モビリス(Z.mobilis)株の遺伝子操作を発見し、そしてその発見を使用して、改善されたキシロース資化能のために株を操作した。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、改善されたザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(Pgap)から発現されるキシロースイソメラーゼをコードするキメラ遺伝子で形質転換することによってキシロース資化能について遺伝子操作された細菌の株に関する。この株はまた、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のための遺伝子によっても形質転換される。改善されたPgapは生来のPgapより高い発現を指令し、キシロースイソメラーゼの発現について改善されたPgapを有さない株と比較して改善されたキシロース資化能を生じる。
【0008】
本明細書では、形質転換によって導入される遺伝子を含むザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される組換え細菌株について説明する。前記遺伝子は以下を含む:
a)改善されたPgapである、−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを含み、前記位置番号がZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、単離された核酸分子;ならびに
b)キシロースイソメラーゼをコードする作動可能に連結された単離された核酸分子。
上記の形質転換工程によって導入される遺伝子は、Pgapの発現の増強のための変異を含むキメラ遺伝子であってもよい。
【0009】
また、本明細書では、遺伝子、例えば、キメラ遺伝子で形質転換する工程を含む、ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される細菌株を操作するための方法について説明する。前記キメラ遺伝子は、以下を含む;
a)改善されたPgapである、−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを含み、前記位置番号がZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、単離された核酸分子;ならびに
b)キシロースイソメラーゼ酵素をコードする作動可能に連結された単離された核酸分子。
【0010】
本明細書では、ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択されるキシロース資化細菌株を操作するための別の方法について説明する。前記方法は、任意の順序で、以下の工程を含む:
a)トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のための遺伝子またはオペロンで形質転換する工程;ならびに
b)キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼの発現のための遺伝子またはオペロンで形質転換する工程であって、キシロースイソメラーゼ酵素は、改善されたPgapである、−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターから発現され、前記位置番号がZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、単離された核酸分子である、前記工程。
【0011】
また、本明細書では、形質転換によって導入されるキメラ遺伝子を含むザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される組換え細菌株を培地において培養する工程を含む、キシロースを含む培地からのエタノールの産生のための方法について説明する。前記キメラ遺伝子は以下を含む:
a)改善されたPgapである、−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを含み、前記位置番号は、Z.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、単離された核酸分子;ならびに
b)キシロースイソメラーゼをコードする作動可能に連結された単離された核酸分子。
【0012】
さらに、本明細書では、ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される組換え細菌株について説明し、この組換え細菌株は、0.256mMのNADH、50mMキシロース、10mMのMgSO4、10mMトリエタノールアミン、および1U/mlソルビトールデヒドロゲナーゼを含む反応混合物中20μLの無細胞抽出物を30℃で反応させることによって測定した際に、少なくとも約0.1μモル産物/mgタンパク質/分を産生させるレベルでキシロースイソメラーゼを発現するように操作され、ここで、D−キシルロースが産物である。
【0013】
本発明の様々な実施形態は、以下の詳細な説明、図面、および本出願の一部をなす添付の配列の説明からさらに詳細に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】トランスケトラーゼ(A)の酵素アッセイのストラテジーを示す。
【図1B】トランスアルドラーゼ(B)の酵素アッセイのストラテジーを示す。
【図1C】キシロースイソメラーゼ(C)の酵素アッセイのストラテジーを示す。
【図1D】キシルロキナーゼ(D)の酵素アッセイのストラテジーを示す。
【図2】PgapxylABで形質転換したT2C、T3C、T4C、およびT5C系統におけるキシロースイソメラーゼ(XI)およびキシルロキナーゼ(XK)活性のグラフを示す。
【図3】PgapxylABで形質転換したT2C、T3C、T4C、およびT5C系統におけるトランスアルドラーゼ(TAL)およびトランスケトラーゼ(TKT)活性のグラフを示す。
【図4】選択された適応キシロース資化株コロニーの理論的エタノール収率%およびキシロース資化%のグラフを示す。
【図5】5%グルコースを含むRM(リッチ培地)(RMG)で50代まで増殖する前および後の5%キシロースを含むRM(RMX5%)上で70時間目の適応キシロース資化株の増殖のグラフを示す。
【図6A−B】(A)pZB188;(B)pZB188/aadAのプラスミド地図を示す。
【図6C】(C)pZB188/aadA−GapXylAのプラスミド地図を示す。
【図6D】(D)大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットPgapXylAの略図を示す。
【図7A−B】(A)pMODTM−2−<MCS>;(B)pMOD−リンカーのプラスミド地図を示す。
【図7C】(C)pMOD−リンカー−Specのプラスミド地図を示す。
【図8】pLDHSp−9WWのプラスミド地図を示す。
【図9】pMOD−リンカー−Spec−801GapXylAのプラスミド地図を示す。
【図10A−B】(A)pMOD−リンカー−Spec−801GapXylA;(B)pZB188/aadA−GapXylAのプラスミド地図を示す。
【図10C】(C)pZB188/aadA−801GapXylAのプラスミド地図を示す。
【図11】Pgap−大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現プラスミドを保持する3つの株(X1、X2およびX2)ならびにコントロールプラスミドを保持する3つの株(C1、C2およびC3)のキシロース含有培地における増殖曲線(OD600対時間)のグラフを示す。
【図12A】(A)線形目盛上にプロットした、スペクチノマイシンを伴わないキシロース含有培地における株ZW641、ZW658、X1およびC1の増殖曲線(OD600対時間)のグラフを示す。
【図12B】(B)対数目盛上にプロットした、スペクチノマイシンを伴わないキシロース含有培地における株ZW641、ZW658、X1およびC1の増殖曲線(OD600対時間)のグラフを示す。
【図13A】(A)線形目盛上にプロットした、株ZW658と比較した、801Pgap−XylAが組み込まれた3つの株(#8−2、#8−4、#8−5)および641Pgap−XylAが組み込まれた3つの株(#6−1、#6−3、#6−5)の増殖曲線(OD600対時間)のグラフを示す。
【図13B】(B)対数目盛上にプロットした、株ZW658と比較した、801Pgap−XylAが組み込まれた3つの株(#8−2、#8−4、#8−5)および641Pgap−XylAが組み込まれた3つの株(#6−1、#6−3、#6−5)の増殖曲線(OD600対時間)のグラフを示す。
【0015】
表3は、キシロースイソメラーゼのProfile HMMの表である。表3を、電子データと共に提出し、本明細書に参照として援用される。
【0016】
本発明は、以下の詳細な説明、および本出願の一部をなす添付の配列の説明からさらに詳細に理解することができる。
【0017】
以下の配列は、米国特許法施行規則第1.821〜1.825条(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則」)に従い、そして世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998年)ならびにEPOおよびPCTの配列表の要件(規則5.2および49.5(aの2)、ならびに実施細則第208号および付属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列データに使用した記号および形式は米国特許法施行規則第1.822条に記載の規則に従う。
配列番号1は、Z.モビリス(Z.mobilis)のCP4株由来のZmPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号2は、Z.モビリス(Z.mobilis)のZM4株由来のZmPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号3は、pZB4由来のZmPgapのヌクレオチド配列であり、これはまた、株ZW641および8XL4のPgapxylABオペロンでもある。
配列番号4は、株ZW658由来の改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号5は、株8b由来の改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号6は、PgapのpZB4変種における−190(ZW658)および−89(8b)変異の両方を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号7は、PgapのCP4変種におけるZW658由来の−190変異を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号8は、PgapのCP4変種における8b由来の−89変異を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号9は、PgapのCP4変種における−190(ZW658)および−89(8b)変異の両方を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号10は、PgapのZM4変種におけるZW658由来の−190変異を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号11は、PgapのZM4変種における8b由来の−89変異を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号12は、PgapのZM4変種における−190(ZW658)および−89(8b)変異の両方を有する改善されたPgapのヌクレオチド配列である。
配列番号13および14は、pZB4由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(Pgap)を含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号15および16は、pZB4由来のtalコード領域を含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号17および18は、Pgapおよびtalフラグメント由来のPgaptalを含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号19および20は、pZB186由来のloxP::Cmを含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号21は、pMODPgaptaltktCmプラスミドの完全なヌクレオチド配列である。
配列番号22および23は、pMODPgaptaltktCmを収容する形質転換体におけるtalおよびtktコード領域を含有する3kbのDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号24は、pMODPgapxylABCmプラスミドの完全なヌクレオチド配列である。
配列番号25および26は、pMODPgapxylABCmを含むT2C、T3C、T4CおよびT5C組み込み体由来の1.6kbのPgapxylA DNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号27および28は、ZW641およびZW658由来のPgapを含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号29〜31は、ZW641およびZW658由来のPgapを配列決定するためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号32および33は、Specr−カセットを含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号34は、キシロースイソメラーゼ発現カセットPgapXylAの完全ヌクレオチド配列である。
配列番号35および36は、pMOD2−<MCS>の異なるマルチクローニング部位を置換するために使用されるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
配列番号37および38は、それぞれ、プラスミドpMOD−リンカー−Spec−801GapXylAおよびpMOD−リンカー−Spec−641GapXylAを得るため、pMOD−リンカー−Specに挿入するための株ZW801−4およびZW641由来のPgapxylA領域の増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号39および40は、8XL4および8b由来のPgapを含有するDNAフラグメントの増幅のためのプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号41は、8XL4および8b由来のPgapを配列決定するためのプライマーの完全ヌクレオチド配列である。
【0018】
表1
キシロースイソメラーゼのタンパク質およびコード領域配列番号の概要



1このコード配列は、ストレプトマイセス・ルビギノーサス(Streptomyces rubiginosus)コード配列に基づいて、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)タンパク質(ストレプトマイセス・ルビギノーサス(Streptomyces rubiginosus)タンパク質との間に3アミノ酸の差異を有する)をコードするように設計される。
2このコード配列は、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)コード配列に基づいて、サーマス・カルドフィラス(Thermus Caldophilus)タンパク質(ストレプトマイセス・ルビギノーサス(Streptomyces rubiginosus)タンパク質との間に21アミノ酸の差異を有する)をコードするように設計される。
3このコード配列は、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来であり、そしてサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)タンパク質に翻訳されるが、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)コード配列は、コドン縮重による差異を有し得る。
【0019】
表2
キシロース資化のための遺伝子およびタンパク質配列番号の概要

【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、キシロースイソメラーゼの高発現を有するように遺伝子操作されたキシロース資化組換え細菌株、およびキシロースイソメラーゼ発現の増加のために細菌を操作するための方法について説明する。キシロースイソメラーゼの発現は、より強力なプロモーターにする少なくとも1つの変異を有する改善されたザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(ZmPgap)によって指令される。ZmPgapは、Z.モビリス(Z.mobilis)のCP4およびZM4株(CP4株ZmPgap:配列番号1およびZM4株ZmPgap:配列番号2)のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対して−190位、−89位、または両方の位置に変異を有する。本明細書に記載のキシロース資化組換え細菌株は、キシロース含有培地上での発酵が改善されている。キシロース含有培地で増殖させる場合、上記のように操作したエタノールまたは他の産物を産生する細菌を、産生の増加のために使用してもよい。例えば、エタノールの増量は、化石燃料の代替エネルギー源として使用することができる上記のように操作されたザイモモナス(Zymomonas)のようなエタノール産生菌から得ることができる。
【0021】
明細書および特許請求の範囲の解釈のために、以下の略語および定義が使用される。
【0022】
本明細書において使用する用語「含む」、「含んでいる」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「含有する」もしくは「含有している」またはそれらの他の任意の表現は、非排他的な包含を含むことが意図される。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに限定される必要はなく、明確に列挙されていない他の要素、あるいはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に本来備わっている他の要素を含んでもよい。さらに、異なることを述べている場合を除き、「または」は、包含的論理和を指すものであって、排他的論理和を指すものではない。例えば、条件AまたはBは、次のもののいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在し)かつBが偽であること(または存在しないこと)、Aが偽であり(または存在せず)かつBが真であること(または存在すること)、ならびにAおよびBが両方とも真であること(または存在すること)。
【0023】
また、本発明の要素または成分の前に置かれている不定冠詞「a」および「an」は、要素または成分の事例(即ち、発生)の数に関して非制限的であることが意図される。従って、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読み取るべきであり、そして要素または成分の単数形もまた、数が明らかに単数であることを意味しない限り、複数を含む。
【0024】
「遺伝子」は、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)に調節配列を含み得る特定のタンパク質または機能的RNA分子を発現する核酸フラグメントを指す。「生来の遺伝子」または「野生型遺伝子」は、それ自体の調節配列と共に天然に見出されるような遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然には一緒に見出されない調節およびコード配列を含む、生来の遺伝子ではない任意の遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ起源に由来するが天然に見出されるものとは異なる様式で配列される調節配列およびコード配列を含むことができる。「内因性遺伝子」は、生物体のゲノム内の天然の位置にある生来の遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物体内に通常は見出されないが遺伝子導入により宿主生物体内に導入された遺伝子を指す。外来遺伝子は、その遺伝子が生来存在しない生物体内に挿入された生来の遺伝子またはキメラ遺伝子を含むことができる。
【0025】
用語「遺伝子構築物」は、1つ以上の特定のタンパク質または機能的RNA分子の発現をコードする核酸フラグメントを指す。遺伝子構築物において、遺伝子は、生来、キメラ、または自然にはない外来性のものであってもよい。典型的には、遺伝子構築物は「コード配列」を含む。「コード配列」は、具体的なアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。
【0026】
「プロモーター」または「開始制御領域」は、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’側に局在する。プロモーターは、そのままの形で生来の遺伝子から誘導することができるか、または天然に見出される多様なプロモーターから誘導される多様なエレメントからなるか、またはなお、合成DNAセグメントを含み得る。当業者であれば、多様なプロモーターは多様な組織もしくは細胞タイプ、または多様な発生段階において、あるいは多様な環境条件に応答して、遺伝子の発現を指令することができることを理解している。ほとんどの時期におけるほとんどの細胞タイプにおいて遺伝子を発現させるプロモーターを、通常、「構成性プロモーター」と呼ぶ。
【0027】
本明細書において使用する用語「発現」は、遺伝子に由来するコード(mRNA)または機能的RNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すことができる。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑制することが可能であるアンチセンスRNA転写物の産生を指す。「過剰発現」は、通常の産生レベルを超えるトランスジェニック生物体または非形質転換生物体における遺伝子産物の産生を指す。「共抑制」は、同一または実質的に類似する外来または内因性遺伝子の発現を抑制することが可能であるセンスRNA転写物または断片の産生を指す(米国特許第5,231,020号明細書)。
【0028】
本明細書において使用する「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを含まず、かつ細胞によってタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。
【0029】
本明細書において使用する「形質転換」は、遺伝的に安定に遺伝する核酸フラグメントの宿主生物体への伝達を指す。伝達された核酸は、宿主細胞において維持されるプラスミドの形態であってもよく、またはある伝達された核酸を、宿主細胞のゲノムに組込んでもよい。形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生物体を、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換された」生物体と呼ぶ。
【0030】
本明細書において使用する用語「プラスミド」および「ベクター」は、しばしば細胞の中心的代謝の部分ではない遺伝子を担持する染色体外エレメントを指し、通常は、環状二本鎖DNA分子の形態である。そのようなエレメントは、任意の起源に由来する一本鎖または二本鎖DNAあるいはRNAの自律的反復配列、ゲノム組込み配列、ファージもしくはヌクレオチド配列で、線状あるいは環状であってもよく、ここで、プロモーターフラグメントおよび適切な3’非翻訳配列を含む選択された遺伝子産物に対するDNA配列を細胞に導入することが可能である独特な構築物に、多くのヌクレオチド配列が接続または組換えられている。
【0031】
用語「作動可能に連結される」は、一方の機能が他方によって影響されるような、単一の核酸フラグメントに対する核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、それがコード配列の発現に影響を及ぼすことが可能である場合、コード配列に作動可能に連結される(即ち、コード配列はプロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0032】
用語「選択マーカー」は、同定因子、通常、マーカー遺伝子の効果、即ち、抗生物質に対する耐性に基づいて選択することが可能な抗生物質または化学耐性遺伝子を意味し、ここで、効果は、目的の核酸の遺伝を追跡する、および/または目的の核酸を受け継いでいる細胞もしくは生物体を同定するために使用される。
【0033】
本明細書において使用する用語「コドン縮重」は、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、ヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝子コードの性質を指す。当業者は、所定のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用における特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」について周知である。従って、宿主細胞において改善された発現のための遺伝子を合成する場合、遺伝子のコドン使用頻度が宿主細胞に好適なコドン使用頻度に近付くように遺伝子を設計することが望ましい。
【0034】
用語「コドン最適化」は、様々な宿主の形質転換のための遺伝子または核酸分子のコード領域を指すため、これは、DNAによってコードされるポリペプチドを改変することなく宿主生物体の典型的なコドン使用に反映するための遺伝子または核酸分子のコード領域におけるコドンの改変を指す。
【0035】
用語「Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター」および「ZmPgap」は、Z.モビリス(Z.mobilis)ゲノムにおいてグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼコード領域の上流に天然に存在する塩基配列を有するプロモーター活性を有する核酸分子を指す。これらの用語は、CP4株およびZM4株のようなZ.モビリス(Z.mobilis)の株のプロモーター(それぞれ、配列番号1および2)、ならびにpZB4のZmPgap(配列番号3)のような実質的に異なるレベルでの発現を指令する配列および/または長さが異なる変種を指す。
【0036】
用語「異種の」は、目的の位置において天然では見出されないことを意味する。例えば、異種遺伝子は、宿主生物体内において天然では見出されないが遺伝子導入により宿主生物体内に導入される遺伝子を指す。例えば、キメラ遺伝子に存在する異種核酸分子は、天然では相互に関連しないコード領域およびプロモーターセグメントを有する核酸分子のような、キメラ遺伝子の他方のセグメントと関連することが天然では見出されない核酸分子である。
【0037】
本明細書において、「単離された核酸分子」は、場合により、合成、非天然もしくは改変されたヌクレオチド塩基を含有していてもよい一本鎖または二本鎖であるRNAあるいはDNAのポリマーである。DNAのポリマーの形態の単離された核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つもしくはそれ以上のセグメントからなり得る。
【0038】
一本鎖形態の核酸フラグメントが、温度および溶液のイオン強度の適切な条件下で他の核酸フラグメントにアニーリングすることができる場合、核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA分子のような別の核酸フラグメントに「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、そしてSambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)、特にその中のChapter11およびTable11.1(それらの全体が本明細書において参照として援用される)に例示される。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件を調整して、中程度に類似のフラグメント(例えば、遠位関係の生物体由来の相同配列)〜高度に類似のフラグメント(例えば、近位関係の生物体由来の機能的酵素を複製する遺伝子)をスクリーニングすることができる。ポストハイブリダイゼーション洗浄は、ストリンジェンシー条件を決定する。好適な条件の1つの組は、室温で15分間の6×SSC、0.5%SDSから開始し、次いで、45℃で30分間の2×SSC、0.5%SDSを反復し、次いで、50℃で30分間の0.2×SSC、0.5%SDSを2回反復する一連の洗浄を使用する。ストリンジェントな条件のより好適な組は、0.2×SSC、0.5%SDSにおける最後の2回の30分間の洗浄の温度を60℃にまで上昇させたことを除いて、洗浄が上記と同一である、より高い温度を使用する。高度にストリンジェントな条件の別の好適な組は、0.1×SSC、0.1%SDS中65℃での最後の2回の洗浄を使用する。ストリンジェントな条件のさらなる組は、例えば、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーションおよび2×SSC、0.1%SDS、それに続く、0.1×SSC、0.1%SDSによる洗浄を含む。
【0039】
ハイブリダイゼーションでは、2つの核酸が相補配列を含有することが必要であるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、塩基間のミスマッチが可能である。核酸にハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度、当該分野において周知の変数に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドのTmの値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(より高いTmに対応する)は、次の順序で減少する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドでは、Tmを計算するための式が導き出されている(Sambrook et al.、上掲、9.50−9.51を参照のこと)。より短い核酸、即ち、オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションでは、ミスマッチの位置がより重要になり、そしてオリゴヌクレオチドの長さは、その特異性を決定する(Sambrook et al.、上掲、11.7−11.8を参照のこと)。1つの実施形態では、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは、少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドであり;そして最も好ましくは、長さは、少なくとも約30ヌクレオチドである。さらに、当業者であれば、必要であれば、プローブの長さのような要因に従って、温度および洗浄液の塩濃度を調整することができることを理解するであろう。
【0040】
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「大部分」は、当業者による配列の人による評価、またはBLASTのようなアルゴリズムを使用するコンピュータ自動化配列比較および同定(Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1993))のいずれか一方によって、ポリペプチドもしくは遺伝子を推定的に同定するのに十分なポリペプチドのアミノ酸配列もしくは遺伝子のヌクレオチド配列を含む部分である。一般的に、ポリペプチドまたは核酸配列を、既知のタンパク質または遺伝子に相同であると推定的に同定するためには、10連続アミノ酸以上または30ヌクレオチド以上の配列が必要である。さらに、ヌクレオチド配列に対して、20〜30連続ヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブは、遺伝子同定(例えば、サザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば、細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのインサイチュハイブリダイゼーション)の配列依存的方法に使用してもよい。さらに、プライマーを含む特定の核酸フラグメントを得るために、12〜15塩基の短いオリゴヌクレオチドを、PCRにおける増幅プライマーとして使用してもよい。従って、ヌクレオチド配列の「大部分」は、配列を含む核酸フラグメントを特異的に同定および/または単離するのに十分な配列を含む。本明細書は、特定の真菌タンパク質をコードする完全なアミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。本明細書において報告した配列の利益を有する当業者であれば、これからは、当業者に既知の目的の開示された配列のすべてまたは大部分を使用することができる。従って、本発明は、添付の配列表に報告された完全な配列、ならびに上記で定義した配列の大部分を含む。
【0041】
用語「相補的な」は、相互にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド塩基間の関係を説明するために使用される。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンに相補的であり、そしてシトシンはグアニンに相補的である。
【0042】
用語「相同性」および「相同」は、本明細書において同義に使用される。それらは、核酸フラグメントを指し、ここで、1ヌクレオチド塩基以上の変化は、核酸フラグメントが、遺伝子発現を仲介するか、または所定の表現型を産生する能力に影響を及ぼさない。これらの用語はまた、初期の改変されていないフラグメントに対して得られた核酸フラグメントの機能的特性を実質的に変更しない1ヌクレオチド以上の欠失または挿入のような本発明の核酸フラグメントの改変を指す。従って、当業者が理解しているように、本発明は、特定の例示的配列を超えるさらなる配列をも包含することが理解される。
【0043】
さらに、当業者は、本発明に包含される相同な核酸配列もまた、中程度のストリンジェントな条件(例えば、0.5×SSC、0.1%SDS、60℃)下で、本明細書に例示した配列、または本明細書に開示され、そして本明細書に開示された核酸配列のいずれかに機能的に等価であるヌクレオチド配列のいずれかの部分にハイブリダイズするそれらの能力によって定義されることを認識している。
【0044】
当該分野において既知の用語「同一性パーセント」は、配列を比較することによって決定される2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該分野において、「同一性」はまた、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関係の程度を意味し、場合により、そのような配列のストリング間の一致によって決定されるとおりであり得る。「同一性」および「類似性」は、限定されないが、1.)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2.)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3.)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humania:NJ(1994);4.)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);および5.)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載の方法を含む既知の方法によって、容易に計算することができる。
【0045】
同一性を決定するための好適な方法は、試験する配列間の最適な一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公に利用可能なコンピュータプログラムに編集されている。配列アラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングスイートのMegAlignTMプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を使用して、実施することができる。配列のマルチプルアラインメントは、Clustal V(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151−153(1989); Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl. Biosci.,8:189−191(1992)により記載されている)と標識され、そしてLASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングスイートのMegAlignTMプログラム(DNASTAR Inc.)に見出されるアラインメント方法に対応する「アラインメントのClustal V方法」を含む数種のアルゴリズムを包含する「アラインメントのClustal方法」を使用して、実施される。マルチプルアラインメントでは、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する。Clustal方法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性パーセントの計算についてのデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸については、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用する配列のアラインメント後、同じプログラムにおいて「配列距離」表を調べることによって、「同一性パーセント」を得ることが可能である。さらに、「アラインメントのClustal W方法」は入手可能であり、そしてClustal W(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151−153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.8:189−191(1992)により記載されている)と標識され、そしてLASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングスイートのMegAlignTMv6.1プログラム(DNASTAR Inc.)に見出されるアラインメント方法に対応する。マルチプルアラインメントのデフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用する配列のアラインメント後、同じプログラムにおいて「配列距離」表を調べることによって、「同一性パーセント」を得ることが可能である。
【0046】
多くのレベルの配列同一性が他の種由来のポリペプチドを同定するのに有用であることが当業者によく理解されており、ここで、そのようなポリペプチドは、同じまたは類似の機能または活性を有する。同一性パーセントの有用な例として次のものが挙げられるが、これらに限定されない:24%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または24%〜100%の任意の整数の百分率は、本発明を説明するのに有用であり得、例えば、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%。適切な核酸フラグメントは、上記の相同性を有するだけではなく、典型的には、少なくとも50アミノ酸、好ましくは、少なくとも100アミノ酸、より好ましくは、少なくとも150アミノ酸、なおより好ましくは、少なくとも200アミノ酸、最も好ましくは、少なくとも250アミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
【0047】
用語「配列解析ソフトウェア」は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の解析に有用な任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列解析ソフトウェア」は、商業的に入手することができるか、または独立して開発することができる。典型的な配列解析ソフトウェアとして、1.)プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version9.0,Genetics Computer Group (GCG),Madison,WI);2.)BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990));3.)DNASTAR(DNASTAR,Inc.Madison,WI);4.)Sequencher(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI);および5.)Smith−Watermanアルゴリズムを組み入れたFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Plenum:New York,NY)が挙げられるが、これらに限定されない。本出願に関して、配列解析ソフトウェアを解析に使用する場合、特に断りのない限り、解析の結果は、言及したプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解されよう。本明細書において使用する「デフォルト値」とは、最初に初期化した時に本来導入されている任意の組の値またはパラメータを意味する。
【0048】
ここで使用した標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野において周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T. Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY,1989(以後、「Maniatis」);ならびにSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W. Experiments with Gene Fusions;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,New York,1984;ならびにAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley−Interscienceにより出版、1987に記載されている。
【0049】
改善されたZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターの発見
Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ZmPgapまたはPgap)のプロモーターは、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびザイモバクター・パルメ(Zymobacter palmae)におけるキメラ遺伝子の発現に使用されている。キシロース代謝のための遺伝子を発現させるためにこのプロモーターを使用した場合、得られるキシロース資化能は典型的には所望される効果を示さない。さらに、限定的なキシロース資化能力を有する4つのキシロース代謝酵素(キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、トランスケトラーゼ、およびトランスアルドラーゼ)を発現するように操作された組換えZ.モビリス(Z.mobilis)株が、改善されたキシロース資化能のためキシロース培地に対して適応された(同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080286870号明細書に記載されている)。
【0050】
出願人らは、本明細書の実施例3に記載のように、ZW658(ATCC番号PTA−7858)と呼ばれる改善されたキシロース資化株が、ZmPgapから発現されるオペロン(PgapxylABオペロン)としてゲノムに組み込まれたキシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼ酵素の発現を増加することを発見した。出願人らは、作動可能に連結されたコード領域の発現の増加を指令するプロモーターを担うPgapxylABオペロンのプロモーターに新規の1つのヌクレオチド変化が存在することをさらに発見した。ヌクレオチド変化は、キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼ活性の増加を有さなかったZW658に対する前駆体株におけるPgapxylABオペロンのZmPgapの配列と比較して、株ZW658におけるPgapxylABオペロンのPgapの配列において新規のものである。それ故、この単一ヌクレオチド変化を有するPgapは改善されたプロモーターである。
【0051】
出願人らは、さらに、4つのキシロース資化酵素をコードする遺伝子で個別に操作し、そして改善されたキシロース資化能について個別に適応されたZ.モビリス(Z.mobilis)株(米国特許第7,223,575号明細書に記載の株8b)もまた、PgapxylABオペロンとしてゲノムに組み込まれたキシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼ酵素の発現を増加することを発見した。出願人らは、ZW658 Pgapのヌクレオチド変化とは異なる位置にある8b株におけるPgapxylABオペロンのPgapの新規の1つのヌクレオチド変化が存在することをさらに発見した。PgapxylABオペロンによってコードされるキシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼ酵素の発現の増加に基づいて、PgapxylABオペロンの変異Pgapもまた改善されたプロモーターを提供する。
【0052】
ZW658および8b株PgapxylABオペロンのPgapにおいて新たに同定されたヌクレオチド変化は、Z.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対してそれぞれ、−190および−89位に存在する。発見した−190位のヌクレオチド変化はGからTへの変化であり、そして発見した−89位のヌクレオチド変化はCからTへの変化である。
【0053】
位置番号は配列の変動によって変化し得るため、塩基の変化の配列構成は重要な因子である。
【0054】
−190位置は、配列構成:

に存在する(それぞれ、配列番号1、2、および3に対応するCP4、ZM4、およびpZB4のZmPgapの位置であって、ここで、太字かつ下線を付したGは、変異によってTに変化した塩基である)。この位置は、CP4株およびZM4株のZmPgap配列中で−190位であるが、pZB4中のプロモーター配列では、−21位においてTが欠失しているため、pZB4において−189位である。
【0055】
−89位置は、配列構成:

に存在する(それぞれ、配列番号1、2、および3に対応するCP4、ZM4、およびpZB4のZmPgapの位置であって、ここで、太字かつ下線を付したCは、変異によってTに変化した塩基である)。この位置は、CP4株およびZM4株のZmPgap配列中で−89位であるが、pZB4中のプロモーター配列では、−21位においてTが欠失しているため、pZB4においては−88位である。本発明のプロモーターは、−190位、−89位、またはこれらの位置の両方にZmPgapのヌクレオチド変化を有する。好ましくは、この変化は−190位におけるGからTへの変化であり、そして−89位におけるCからTへの変化である。これらの改変を含む本発明のプロモーターは、改善されたPgapsである。
【0056】
−190位および−89位における他のヌクレオチドへの変化は、ZmPgapの改善された活性を提供し得る。加えて、ZmPgap内の他の位置におけるヌクレオチド変化も、ZmPgapの改善された活性を提供し得る。
【0057】
ZmPgapの天然に存在する配列は、単一の配列ではなく、プロモーターの機能に対して実質的な影響を及ぼさないいくつかの変動を配列内に有してもよい。プロモーターの機能に対して実質的な影響を及ぼさないとは、プロモーター配列が、天然のザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株に存在するZmPgapによって指令される発現のレベルと実質的に同様の発現レベルを指令することを意味する。配列の変動は、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する−29位のCP4株およびZM4株(それぞれ、配列番号1および2)(ここで、CP4ではAが存在し、そしてZM4ではGが存在する)の間の差異のように、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の異なる単離体または株の間で自然に発生し得る。
【0058】
天然に存在する配列の変動に加えて、機能に実質的に影響を及ぼさないヌクレオチド変化が、当業者に公知のPCR、クローニング、形質転換、および株増殖を含む日常的な操作手順の間に発生し得る。例には、−21位においてTの欠失を有するpZB4のZmPgapがある。
【0059】
プロモーターの機能に実質的に影響を及ぼさない、異なる天然の株または操作された株において生じるZmPgap配列の任意のヌクレオチド変化は、pZB4のZmPgapに存在する−21位後方のTの欠失(配列番号3)のようなZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターの配列に存在し得る。それ故、プロモーターの機能に影響を及ぼす、即ち、実質的に、プロモーターの機能を改善する上記の−190位および−89位における変異は、実質的に同様の活性(天然のレベル)を有するZmPgap配列のいずれかにおいて作製してもよく、そして機能に影響を及ぼさない変動と共に同時に発生することができる。
【0060】
−190位および/または−89位に記載の変異を有する改善されたPgap変異の例として、株ZW658由来のプロモーター配列(配列番号4)、株8b由来のプロモーター配列(配列番号5)、およびpZB4由来である同じZmPgap変種の二重変異(配列番号6)が挙げられる。改善されたPgap配列のさらなる例には、CP4由来のZmPgap変種における−190位の変異、−89位の変異、または二重変異(それぞれ、配列番号7、8、および9)ならびにZM4由来のZmPgap変種における−190位の変異、−89位の変異、または二重変異(それぞれ、配列番号10、11、および12)がある。
【0061】
加えて、プロモーターの機能に実質的に影響を及ぼさないZmPgapの長さの変動も生じる。本発明は、−190位の変異および/または−90の変異が追加される前の活性に実質的な変化を有さない、様々な長さのZmPgapsにおけるZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対して、−190位および/または−89位での記載の変異を有する改善されたPgapsを含む。
【0062】
改善されたPgapの調製
−190位および/または−89位における記載の変異は、当業者に公知に任意の方法によってZmPgap核酸分子に導入することができる。例えば、変異および周囲のDNA配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、そしてより大きなプロモーターDNAフラグメントにクローニングして、変異を伴わないセグメントと置換してもよい。変異およびいくつかの隣接するプロモーター配列を含有するプライマーを、合成し、そしてPCRに使用して、プロモーターフラグメントを調製してもよい。全プロモーターDNAフラグメントを、共にライゲートされる複数のオリゴヌクレオチドとして合成してもよい。部位特異的変異誘発を使用して、変異を導入してもよい。加えて、ZW658株または8b株由来のDNAをテンプレートして使用して、PCR増幅DNAフラグメントとして変異プロモーターを調製してもよい。
【0063】
改善されたPgapを使用するキシロースイソメラーゼの発現
本明細書に記載のプロモーターを、ZmPgapからの発現と比較してキシロースイソメラーゼの増加した発現を指令するために、キシロースイソメラーゼをコードする異種核酸分子(heterologous nucleic molecule)に作動可能に連結させることができる。キメラ遺伝子由来の改善されたPgapおよびキシロースイソメラーゼコード領域はまた、一般に3’末端制御領域を含む。末端制御領域は様々な遺伝子に由来してもよく、そしてしばしば標的宿主細胞に生来の遺伝子から採られる。キメラ遺伝子の構築は当該分野において周知である。
【0064】
本発明において改善されたPgapからキシロースイソメラーゼを発現させるために、キメラ遺伝子において、いずれのキシロースイソメラーゼコード領域を使用してもよい。キシロースイソメラーゼ酵素は、EC5.3.1.5のグループに属する。使用することができる適切なキシロースイソメラーゼタンパク質およびコード配列の例を表1に示す。特に適切な例には、大腸菌(E.coli)(それぞれ、配列番号42および43)、ならびにラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(それぞれ、配列番号44および45)由来のものがある。
【0065】
キシロースイソメラーゼタンパク質およびコード配列の他の多くの例が、参考文献、および当業者に周知のバイオインフォマティクスデータベースにおいて同定される。さらに、本明細書に記載のコード配列または当該分野において列挙されているコード配列を使用して、天然に存在する他の相同体を同定することができる。例えば、上記のキシロースイソメラーゼをコードする核酸フラグメントのそれぞれを使用して、同じまたは他の細菌種から相同タンパク質をコードする遺伝子を単離することもできる。配列依存的プロトコルを使用する相同遺伝子の単離は、当該分野において周知である。
【0066】
配列依存的プロトコルの例として次のものが挙げられるが、これらに限定されない:1.)核酸ハイブリダイゼーションの方法;2.)核酸増幅技術の様々な使用によって例示されるDNAおよびRNA増幅の方法[例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、Mullis et al.、米国特許第4,683,202号明細書;リガーゼ連鎖反応(LCR)、Tabor,S.et al.,Proc.Acad.Sci.USA82:1074(1985);または鎖置換増幅(SDA)、Walker,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:392(1992)];および3.)ライブラリー構築および相補性によるスクリーニングの方法。
【0067】
例えば、上記のキシロースイソメラーゼコード領域に対して類似のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列は、本核酸フラグメントのすべてまたは一部をDNAハイブリダイゼーションプローブとして使用し、当業者に周知の方法論を使用して、任意の所望の細菌由来のライブラリーをスクリーニングすることによって、直接単離し得る。開示された核酸配列に基づく特異的オリゴヌクレオチドプローブは、当該分野において公知の方法(Maniatis、上掲)によって、設計および合成することができる。さらに、全配列を直接使用して、当業者に公知の方法(例えば、ランダムプライマーDNAラベリング、ニックトランスレーションもしくは末端ラベリング技術)によってDNAプローブを、または利用可能なインビトロ転写システムを使用してRNAプローブを合成することができる。さらに、本配列の一部(または全長)を増幅するために、特異的プライマーを設計し、そして使用することができる。得られた増幅産物は、増幅反応中に直接標識するか、または増幅反応後に標識することができ、そして適切なストリンジェンシーの条件下で全長DNAフラグメントを単離するためのプローブとして使用することができる。
【0068】
典型的に、PCR型増幅技術では、プライマーは異なる配列を有し、相互に相補的ではない。所望される試験条件に依存して、プライマーの配列は標的核酸の効率的かつ忠実な複製を提供するように設計すべきである。PCRプライマーの設計方法は当該分野において共通および周知である(Thein and Wallace,“The use of oligonucleotides as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorders”,in Human Genetic Diseases: A Practical Approach,K.E.Davis Ed.,(1986)pp33−50,IRL.:Herndon,VA;およびRychlik,W.,In Methods in Molecular Biology,White,B.A.Ed.,(1993)Vol.15,pp31−39,PCR Protocols:Current Methods and Applications.Humania:Totowa,NJ)。
【0069】
一般的に、記載の配列の2つの短いセグメントを、DNAまたはRNAから相同遺伝子をコードするより長い核酸フラグメントを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応プロトコルにおいて使用することができる。ポリメラーゼ連鎖反応はまた、クローニングされた核酸フラグメントのライブラリーに対して実施してもよく、ここで、一方のプライマーの配列が記載の核酸フラグメントから誘導され、そして他方のプライマーの配列は微生物遺伝子をコードするmRNA前駆体の3’末端に対するポリアデニル酸トラクトの存在を利用することができる。
【0070】
あるいは、第2のプライマー配列は、クローニングベクターに由来する配列に基づき得る。例えば、当業者は、RACEプロトコル(Frohman et al.,PNAS USA 85:8998(1988))に従い、PCRを使用して、転写物における単一のポイントと3’または5’末端との間の領域のコピーを増幅することによってcDNAを作製することができる。3’および5’方向において得られるプライマーは、本配列から設計することができる。市販の3’RACEまたは5’RACEシステム(例えば、BRL,Gaithersburg,MD)を使用して、特異的3’または5’cDNAフラグメントを単離することができる(Ohara et al.,PNAS USA 86:5673(1989);Loh et al.,Science 243:217(1989))。
【0071】
あるいは、これらのキシロースイソメラーゼをコードする配列を、相同体の同定のためのハイブリダイゼーション試薬として用いてもよい。核酸ハイブリダイゼーション試験の基本成分として、プローブ、目的の遺伝子または遺伝子フラグメントを含有することが疑わしいサンプル、および特異的ハイブリダイゼーション方法を挙げることができる。プローブは、典型的に、検出しようとする核酸配列に相補的な一本鎖核酸配列である。プローブは、検出しようとする核酸配列に「ハイブリダイズ可能」である。プローブの長さは、5塩基〜数万塩基変動することができ、そして行おうとする特異的試験に依存する。典型的には、約15塩基〜約30塩基のプローブが適切である。検出しようとする核酸配列に相補的である必要があるのは、プローブのうち一部のみである。さらに、プローブと標的配列との間の相補性は、完全である必要はない。ハイブリダイゼーションは、不完全な相補的分子間で生じ、その結果、ハイブリダイズした領域における塩基の所定の画分は、適切な相補的塩基と対合しない。
【0072】
ハイブリダイゼーション方法については、良好に定義され、かつ当該分野において公知である。典型的には、プローブおよびサンプルは、核酸ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で混合しなければならない。これには、無機塩または有機塩の存在下、適切な濃度および温度条件下でプローブとサンプルとを接触させることが必要である。プローブおよびサンプル核酸は、プローブとサンプル核酸との間の任意の可能なハイブリダイゼーションが生じ得るのに十分に長い時間、接触させなければならない。混合物中のプローブまたは標的の濃度は、ハイブリダイゼーションが生じるのに必要な時間を決定する。プローブまたは標的濃度が高いほど、必要とされるハイブリダイゼーションインキュベーション時間は短い。カオトロピック剤が添加されていてもよい。カオトロピック剤は、ヌクレアーゼ活性を阻害することによって、核酸を安定化する。さらに加えて、カオトロピック剤は、室温で短いオリゴヌクレオチドプローブの高感度かつストリンジェントなハイブリダイゼーションを可能にする(Van Ness and Chen,Nucl.Acids Res.19:5143−5151(1991))。適切なカオトロピック剤として、とりわけ、塩化グアニジウム、チオシアン酸グアニジウム、チオシアン酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウムおよびトリフルオロ酢酸セシウムが挙げられる。典型的に、カオトロピック剤は、約3Mの最終濃度で存在する。所望であれば、ホルムアミドをハイブリダイゼーション混合物に、典型的には30〜50%(v/v)で添加することができる。
【0073】
様々なハイブリダイゼーション溶液を用いることができる。典型的に、これらは、約20〜60体積%、好ましくは、30%の極性有機溶媒を含む。一般的なハイブリダイゼーション溶液は、約30〜50%v/vホルムアミド、約0.15〜1M塩化ナトリウム、約0.05〜0.1M緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウム、Tris−HCl、PIPESまたはHEPES(pH範囲:約6〜9))、約0.05〜0.2%界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、または0.5〜20mMの間のEDTA、FICOLL(Pharmacia Inc.)(約300〜500kdal)、ポリビニルピロリドン(約250〜500kdal)および血清アルブミンを用いる。また、典型的なハイブリダイゼーション溶液には、約0.1〜5mg/mLの非標識キャリア核酸、フラグメント化核酸DNA(例えば、仔ウシ胸腺またはサケ精子DNA、または酵母RNA)、および約0.5〜2%wt/volであってもよいグリシンが含まれる。多様な極性水溶性または膨潤性の薬剤(例えば、ポリエチレングリコール)、アニオン性ポリマー(例えば、ポリアクリレートもしくはポリメチルアクリレート)およびアニオン性糖ポリマー(例えば、硫酸デキストラン)を含む体積排除剤のような他の添加剤が含まれてもよい。
【0074】
核酸ハイブリダイゼーションは、多様なアッセイ形式に応用することができる。最も適切なものの1つは、サンドイッチアッセイ形式である。サンドイッチアッセイは、特に、非変性条件下でのハイブリダイゼーションに応用することができる。サンドイッチ型アッセイの主要な構成要素は固相支持体である。固相支持体は、非標識かつ配列の一部に相補的な固定化された核酸プローブを、これに吸着した形またはこれに共有結合した形で有する。
【0075】
バイオインフォマティックアプローチ
あるいは、キシロースイソメラーゼタンパク質はかなりよく知られており豊富に存在するため、さらなるキシロースイソメラーゼタンパク質を、Pfam(Pfam:clans,web tools and services:R.D.Finn,J.Mistry,B.Schuster−Boeckler,S.Griffiths−Jones,V.Hollich,T.Lassmann,S.Moxon,M.Marshall,A.Khanna,R.Durbin,S.R.Eddy,E.L.L.Sonnhammer and A.Bateman,Nucleic Acids Research(2006)Database Issue34:D247−D251)で同定されたキシロースイソメラーゼタンパク質のファミリーを使用して、構築された触媒部位残基およびProfile Hidden Markov Model(HMM)に基づいて同定することができる。
【0076】
Profile HMMは、HMMERソフトウェアパッケージ(Janelia Farm Research Campus,Ashburn,VA)のhmmsearchアルゴリズムを使用して調製される。Profile HMMの元になる理論については、Durbin et al.((1998)Biological sequence analysis:probabilistic models of proteins and nucleic acids,Cambridge University Press)およびKrogh et al.((1994)J.Mol.Biol.235:1501−1531)に記載されており、この理論により、1組のタンパク質が、その組のタンパク質のアラインメントにおける各位置に存在する各アミノ酸の確率に基づいて特徴付けられる。
【0077】
BRENDAデータベースにおいて参照される実験的に確認された機能を有する32のキシロースイソメラーゼタンパク質配列を使用して調製されたキシロースイソメラーゼのProfile HMMは、キシロースイソメラーゼの同定のための基礎を提供する。BRENDAは、実験的文献から抽出された酵素速度論、物理的、および生化学的特性についての詳細な情報を含有し、そして関連するデータベース(Cologne University BioInformatics Center)へのリンクを伴う、人が管理している(human−curated)データベースである。これらの32のタンパク質の配列番号を表1に示す。これらの32のタンパク質配列を使用して、デフォルトパラメータによるClustalWを使用して多重配列アラインメント(MSA)を作製した。MSAの結果を入力データとして使用して表3に示すProfile HMMを調製した。この表ではアミノ酸を1文字コードによって表す。各位置の第1の線は、一致エミッションスコア:その状態において各アミノ酸が存在する確率を表す(最も高いスコアを強調して示す)。第2の線は挿入エミッションスコアを表し、そして第3の線は状態遷移スコアを表す:M→M、M→I、M→D;I→M、I→I;D→M、D→D;B→M;M→E。
【0078】
Profile HMMに加えて、4つの触媒部位アミノ酸がキシロースイソメラーゼに特有である:ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)キシロースイソメラーゼ配列に対する位置番号でヒスチジン54、アスパラギン酸57、グルタミン酸181、およびリジン183。E値が3×10-10以下でキシロースイソメラーゼProfile HMMに適合しこれらの4つの触媒部位残基を有する任意のタンパク質はそのコード領域を改善されたPgapを含むキメラ遺伝子中に構築して本明細書に記載のように細菌株に形質転換することができるキシロースイソメラーゼである。現在、90%の非重複レベルに減少したGenBank配列データベースにおける251のタンパク質がこれらの基準に一致する。これらの配列は、当業者によって容易に同定することができるため、本明細書において、それらのすべてを配列番号と共に示すわけではない。利用可能になるこれらの基準に適合するさらなる配列もまた、本明細書に記載のように使用することができる。
【0079】
当該分野において公知であるとおり、遺伝子コードの縮重によるアミノ酸配列をコードするDNA配列の変動が存在し得る。コドンを、標的宿主細胞におけるアミノ酸配列の発現のために最適化して、コードされる最適な発現を提供する。
【0080】
キシロースイソメラーゼ発現のための細菌細胞の操作
本明細書に記載のキメラ遺伝子は、さらなる操作のために、典型的に、ベクターにおいて構築されるかまたはベクターにトランスファーされる。ベクターは、当該技術分野において周知である。あるベクターは、広範な宿主細菌において複製することが可能であり、そして接合によって移行することができる。pRK404ならびに3つの関連ベクター:pRK437、pRK442、およびpRK442(H)の完全かつ注釈付き配列が利用可能である。これらの誘導体は、グラム陰性菌における遺伝子操作のための価値のあるツールであることが証明されている(Scott et al.,Plasmid 50(1):74−79(2003))。
【0081】
他の周知のベクターを様々な標的宿主細胞に使用することができる。種々の宿主に有用なベクターの例が、同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20070092957A1号明細書、11〜13頁(本明細書において参照として援用される)に記載されている。米国特許第5,514,583号明細書に記載のpZB188のような大腸菌(E.coli)およびザイモモナス(Zymomonas)の両方において複製することができるベクターが、ザイモモナス(Zymomonas)における発現に特に有用である。ベクターとして、細胞における自律複製のためのプラスミド、および細菌のゲノムに組み込もうとする構築物を担持するプラスミドを挙げることができる。DNA組み込みのためのプラスミドとして、トランスポゾン、標的細菌ゲノムに対して相同の核酸配列の領域、または組み込みを支持する他の配列を挙げることができる。さらなるタイプのベクターは、例えば、EPICENTRE(登録商標)から市販されているシステムを使用して、産生されるトランスポゾンであってもよい。所望される標的宿主および所望される機能のための適切なベクターを選択するための仕方は周知である。
【0082】
改善されたPgapおよび作動可能に連結されたキシロースイソメラーゼコード領域を含むキメラ遺伝子を有するベクターを、凍結融解形質転換、カルシウム仲介形質転換、エレクトロポレーション、または接合を使用するような周知の方法により導入することによって、細菌細胞を操作することができる。キシロースイソメラーゼ酵素を発現させることによってキシロース資化について操作しようとする任意の細菌細胞は、本明細書に記載のように株を操作するための形質転換のための標的宿主細胞である。特に適切な宿主細胞は、ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)である。導入されたキメラ遺伝子は、安定に複製するプラスミド上で細胞中で維持することができるか、または導入後にゲノムに組み込むことができる。
【0083】
細菌細胞ゲノムに組み込まれた改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子で株を操作するために、相同組換え、トランスポゾン挿入、またはトランスポソーム挿入のような当該分野において周知の方法を使用することができる。相同組換えでは、標的組み込み部位にフランキングするDNA配列を、スペクチノマイシン−耐性遺伝子または他の選択マーカー、および改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子に界接して配置し、選択マーカーおよび改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子を標的ゲノム部位に挿入する。さらに、対応する部位特異的リコンビナーゼの発現後、耐性遺伝子がゲノムから切り出されるように、選択マーカーを部位特異的組換え部位に結合させてもよい。本明細書の実施例1および6において使用するEPICENTRE(登録商標)のEZ::Tnインビトロ転移システムを使用する転移が、改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子の組み込みに特に適切である。
【0084】
キシロースイソメラーゼ活性
本明細書に記載の株では、キシロースイソメラーゼ活性レベルは、当該分野において先に記載のレベルより高い。これらの株は、0.256mMのNADH、50mMキシロース、10mMのMgSO4、10mMトリエタノールアミン、および1U/mlソルビトールデヒドロゲナーゼを含む反応混合物中20μLの無細胞抽出物を30℃で反応させることによって測定した際に、少なくとも約0.1μモル産物/mgタンパク質/分を産生させるレベルでキシロースイソメラーゼを発現するように操作され、ここで、D−キシルロースが産物である。株は、少なくとも約0.14、0.2、または0.25μモル産物/mgタンパク質/分を産生するレベルで、キシロースイソメラーゼを発現してもよい。本明細書に記載の改善されたPgapを有する高発現プロモーターを使用して、キシロースイソメラーゼコード領域を発現させて、これらの酵素活性レベルを得てもよい。以下に記載のさらなる3つのキシロース代謝経路酵素活性の存在下でもたらされる高キシロースイソメラーゼ活性レベルは、株にキシロース含有培地上での改善された増殖を提供する。
【0085】
全キシロース資化経路の操作
改善されたPgapおよびキシロースイソメラーゼコード領域を含むキメラ遺伝子で形質転換することに加えて、細菌株もまた、キシロース資化に必要な他の3つの酵素:キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のために操作され、米国特許第5514583号明細書、米国特許第5712133号明細書、米国特許第6566107号明細書、国際公開第95/28476号パンフレット、Feldmann et al.((1992)Appl Microbiol Biotechnol 38:354−361)、Zhang et al.((1995)Science 267:240−243))、およびYanase et al.((2007)Appl.Environ.Mirobiol.73:2592−2599)に記載されている。
【0086】
4つのすべての酵素をコードする遺伝子が存在すると、キシロース資化経路が完成してキシロース資化株を生じることが公知である。3つのさらなる酵素は、個々のキメラ遺伝子から発現させてもよく、または2つ以上のコード領域を含むオペロンから発現させてもよい。
【0087】
キメラ遺伝子は、キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子について上記のように、プロモーター、コード領域、および3’末端制御領域を作動可能に連結させることによって、構築してもよい。当該分野において周知のとおり、プロモーターは、標的宿主細胞において活性なプロモーターとして選択される。ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)において使用することができるプロモーターとして、ZmPgapおよびザイモモナス(Zymomonas)エノラーゼ遺伝子のプロモーターが挙げられる。キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼのコード領域は、キシロースを資化することが可能ないずれのグラム陰性菌、例えば、ザントモナス(Xanthomonas)、クレブシエラ(Klebsiella)、エシェリキア(Escherichia)、ロドバクター(Rhodobactor)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、アセトバクター(Acetobacter)、グルコノバクター(Gluconobacter)、リゾビウム(Rhizobium)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、サルモネラ(Salmonella)、およびシュードモナス(Pseudomonas)由来であってもよい。使用することができるタンパク質配列およびそれらのコード領域配列の例を表2に示す。大腸菌(E.coli)由来のキシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼ酵素をコードする配列(それぞれ、配列番号107、119、および131)が好適である。これらの配列を使用して、完全なキシロース資化経路を発現させるために使用することができるキシロースイソメラーゼについて上記のようなさらなるコード配列を同定してもよい。
【0088】
さらに、キシロースイソメラーゼについて上記のようなPfamタンパク質ファミリーおよびProfile HMMを含むバイオインフォマティクス方法を適用して、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼ酵素を同定してもよい。これらの酵素をコードする配列は、コドン縮重による多様性を有してもよく、そしてまた、上記のように、特定の宿主における発現のために最適化されたコドンであってもよい。
【0089】
オペロンは、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のために構築してもよい。1つ以上のコード配列を、改善されたPgapから発現されるキシロースイソメラーゼコード領域に作動可能に連結させ、オペロンを形成させてもよい。典型的には、キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼは1つのオペロンから発現され、そしてトランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼは本明細書の実施例1に記載のように第2のオペロンとして発現される。
【0090】
これらの酵素は、安定に複製するプラスミド上に局在するか、またはゲノムに組み込まれたキメラ遺伝子もしくはオペロンから発現させてもよい。
【0091】
改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子を有する細菌株の改善された増殖
改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子を有する本明細書に記載のキシロース資化性細菌株、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株は、他の糖(「混合糖」)の非存在または存在下でキシロースを含有する培地において改善された増殖を示す。混合糖類は、キシロースに加えて少なくとも1つの糖を含む。細胞の代謝のエネルギー源を提供し得る任意の糖、またはキシロースを含有する混合物に存在する任意の糖が含まれていてもよい。バイオマス糖化から産生される糖上で本発明の株を増殖させることが望ましい。典型的に、バイオマスは、例えば、国際公開第2004/081185号パンフレットならびに同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国仮特許出願第60/670437号明細書に記載のように、前処置され、次いで、Lynd,L.R.,et al.(Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2002)66:506−577)によって概説されているように、糖化酵素で処置される。バイオマス糖化は、典型的に、キシロースとグルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、マンノース、および/またはアラビノースとの混合物を含み得る糖類を生成する。
【0092】
最大限の産生および発酵効率のために、キシロースを含む高レベルの糖類を含有する培地において、本明細書に記載の株を増殖させることが望ましい。これは、バイオマス糖化糖類の直接使用、またはほとんど希釈を伴わない使用を可能にし、それによって、エタノールのような商業的規模の産生に所望される発酵容積が縮小される。より大きな濃度のエタノールのような産物が産生され得るように、高い糖類濃度が使用される。発酵培地中の混合糖の濃度は、典型的に、約120g/L〜約300g/Lまでの間、より典型的には、約150g/L〜約235g/Lの間である。
【0093】
例えば、エタノールなどの商業的生産に所望される高濃度混合糖条件では、ソルビトールを発酵培地に含めてもよい。ソルビトール(D−ソルビトールおよび/またはL−ソルビトール)は、同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080286870号明細書に記載のように、約2mM〜200mMの間、典型的に、約2mM〜100mMの間、または5mM〜20mMの間の濃度で培地に存在してもよい。同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080081358号明細書に記載のように、マンニトール、ガラクチトールまたはリビトールを、ソルビトールの代わりにまたはソルビトールと組み合わせて培地に使用してもよい。
【0094】
キシリトール培地における発酵条件下で、改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子を有する本明細書に記載の株は、ZmPgapから発現されるキシロースイソメラーゼを含む株より改善された増殖を有する。正確な改善は、株のバックグランド、使用する培地、および一般的な増殖条件に依存して、変動する。例えば、本明細書の実施例8、図13Aに示すように、50g/Lキシロースを含有する培地で増殖させる場合、1時間後、改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子を含む株は、改善されたPgapを伴わない株より約2〜5倍高いOD600まで増殖した。
【0095】
改善されたキシロース資化株の発酵
改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子ならびにキシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のための遺伝子またはオペロンを有する操作されたキシロース資化株は、株の天然産物である産物、または株が産生するように操作された産物を産生するための発酵に使用することができる。例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびザイモバクター・パルメ(Zymobacter palmae)は、天然のエタノール産生菌である。例として、本発明のZ.モビリス(Z.mobilis)株によるエタノールの産生について説明する。
【0096】
エタノール産生のためには、改善されたPgap−キシロースイソメラーゼキメラ遺伝子を有する組換えキシロース資化性Z.モビリス(Z.mobilis)をキシロースを含む混合糖を含有する培地と接触させる。増殖が阻害されるほど混合糖類の濃度が高い場合、培地は、ソルビトール、マンニトール、またはそれらの混合物を含んでいる。ガラクチトールまたはリビトールを、ソルビトールまたはマンニトールの代わりに使用するか、またはソルビトールまたはマンニトールと組み合わせてもよい。Z.モビリス(Z.mobilis)は、発酵が発生し、そしてエタノールが産生される培地で増殖する。発酵は、空気、酸素、または他の気体の補充を伴わずに(嫌気性、微好気性(microaerobic)、または微好気性(microaerophilic)発酵のような条件を含み得る)、少なくとも約24時間稼動させるが、30時間もしくは以上行ってもよい。エタノール産生が最大に到達するタイミングは、発酵条件に依存してばらつきがある。典型的には、インヒビターが培地中に存在する場合、より長い発酵期間が必要である。発酵は約30℃〜約37℃の間の温度、約4.5〜約7.5のpHで行ってもよい。
【0097】
本Z.モビリス(Z.mobilis)を、キシロースを含む混合糖類を含有する培地中、実験規模の発酵槽、および商業的量のエタノールが産生される大規模化された発酵において増殖させることができる。エタノールの商業的産生が所望される場合、さまざまな培養方法論を適用することができる。例えば、本Z.モビリス(Z.mobilis)株からの大規模産生を、バッチおよび連続培養方法論の両方によって産生させることができる。古典的なバッチ培養方法は閉鎖系であり、培地の組成は培養の開始時に設定され、培養プロセス中に人工的に変更されることはない。それ故、培養プロセスの開始時に培地に所望の生物体を接種し、増殖または代謝活動を可能にして、系には何も添加しない。しかし、典型的には、「バッチ」培養は炭素源の添加についてのバッチ処理であり、しばしば、pHおよび酸素濃度のような因子を制御することが試みられる。バッチ系では、系の代謝物およびバイオマス組成は培養が終了する時点まで絶えず変化する。バッチ培養物内で、細胞は、静的な対数期を通過して高増殖対数期に達し、最終的に、増殖速度が減少または停止する定常期へと加減する。処理を行わなければ、定常期の細胞は最終的に死滅する。対数期の細胞は、しばしば、いくつかの系の最終産物または中間体の大部分の産生を担う。定常期または指数期後の産生は他の系において得ることができる。
【0098】
標準的なバッチ系の1つの変形は流加培養系である。流加培養プロセスもまた、本Z.モビリス(Z.mobilis)株の増殖に適切であり、培養の進行に伴って基質を増量しながら添加することを除いて、典型的なバッチ系を含む。異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害し易い場合、および培地中の基質量を制限することが所望される場合、流加培養系が有用である。流加培養系における実際の基質濃度の測定は、困難であるため、これは、pH、およびCO2のような排気体分圧のような測定可能な因子の変化に基づいて、見積もられる。バッチおよび流加培養方法は当該分野において一般的かつ周知であり、その例は、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Crueger,Crueger,and Brock,Second Edition(1989)Sinauer Associates,Inc.,Sunderland.MA、またはDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36,227,(1992)(本明細書において参照として援用される)に見出すことができる。
【0099】
エタノールの商業的産生は連続培養によっても達成することができる。連続培養は開放系であり、規定された培養培地が連続的にバイオリアクターに添加され、同時に等量の順化培地が処理のために取り出される。一般的に、連続培養は細胞を一定の高液体相密度で維持し、細胞は主に対数増殖期にある。あるいは、連続培養を固定化された細胞によって実施してもよく、炭素および栄養物が連続的に添加され、価値のある産物、副産物および不要産物が細胞塊から連続的に取り出される。細胞の固定化は、当業者に公知である天然および/または合成材料からなる広範な固相支持体を使用して実施することができる。
【0100】
連続または半連続培養によって、細胞増殖または最終産物の濃度に影響を及ぼす1つの因子またはいくつかの因子を調節することが可能である。例えば、1つの方法は、炭素源のような制限されている栄養物または窒素レベルを一定速度で維持し、そして他のすべてのパラメータを加減することが可能である。他の系では、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼす多くの因子を連続的に変更することができる。連続系は定常状態の増殖条件を維持しようとし、それ故、培地を抜き取ることによって起きる細胞の消失は、培養における細胞増殖速度に対して均衡を保たなければならない。連続培養プロセスのための栄養物および増殖因子を調節する方法ならびに産物形成の速度を最大限にするための技術については、産業微生物学の分野において周知であり、さまざまな方法がBrock、上掲によって詳述されている。
【0101】
以下の発酵レジメンがエタノール産生に特に適切である。所望される本発明のZ.モビリス(Z.mobilis)株を、オービタルシェーカー中、約150rpmで振盪しながら約30℃〜約37℃で振盪フラスコ中、半複合培地(semi−complex medium)で増殖させ、次いで、類似の培地を晩有する10L種発酵槽に移す。発酵パラメータがエタノール産生に最適化されている産生発酵槽に種培養物を移す場合、OD600が3〜6の間になるまで、種培養物を種発酵槽で嫌気的に増殖させる。種タンクから産生タンクに移される典型的な播種容積は、約2%〜約20%v/vの範囲である。典型的な発酵培地は、リン酸カリウム(1.0〜10.0g/l)、硫酸アンモニウム(0〜2.0g/l)、硫酸マグネシウム(0〜5.0g/l)、酵母抽出物またはダイズを主材料とする製品(0〜10g/l)のような複合窒素源のような最小培地成分を含有する。最終濃度で約5mMのソルビトールまたはマンニトールが培地中に存在する。キシロース、およびグルコース(またはスクロース)のような少なくとも1つのさらなる糖を含む混合糖類は、炭素源を提供し、エタノールの率および力価を最大限にするために初期のバッチ処理された炭素源(50〜200g/l)の枯渇に際して発酵容器に連続的に添加する。炭素源供給速度は、培養物が、酢酸のような毒性の副産物の形成をもたらし得るグルコースの過渡の蓄積を生じないことを確実にするために、動力学的に調整する。利用する基質から産生されるエタノールの収率を最大限にするために、最初にバッチ処理するか、または発酵過程中に供給されるリン酸塩の量によって、バイオマスの増殖を制限する。発酵は、(水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、もしくは水酸化ナトリウムのような)苛性溶液および硫酸またはリン酸のいずれかを使用して、pH5.0〜6.0で制御する。発酵槽の温度は、30℃〜35℃に制御する。発泡を最小限にするために、消泡剤(任意のクラス−シリコーンを主材料とするもの、有機物を主材料とするものなど)を、必要に応じて容器に添加する。場合により、汚染を最小限にするために、抗生物質耐性マーカーが存在する株について、カナマイシンのような抗生物質を使用してもよい。
【0102】
上記の条件の任意の組、および当該分野において周知であるこれらの条件におけるさらなる変形は、キシロース資化性組換えザイモモナス(Zymomonas)株によるエタノールの産生のための適切な条件である。
【実施例】
【0103】
実施例は、本明細書に記載の本発明を例示する。
【0104】
一般的方法
ここで使用した標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野において周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T. Molecular Cloning:A Laboratory Manua,第2版;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY)(1989)(以後、「Maniatis」);ならびにSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.,and Enquist,L.W. Experiments with Gene Fusions;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);ならびにAusubel,F.M.et.al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceにより出版、Hoboken,NJ(1987)に記載されている。
【0105】
略語の意味は次のとおりである:「kb」はキロベースを意味し、「bp」は塩基対を意味し、「nt」はヌクレオチドを意味し、「hr」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「L」はリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「μM」はマイクロモルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「pmol」はピコモルを意味し、「Cm」はクロラムフェニコールを意味し、「Cmr」はクロラムフェニコール耐性を意味し、「Cms」はクロラムフェニコール感受性を意味し、「Spr」はスペクチノマイシン耐性を意味し、「Sps」はスペクチノマイシン感受性を意味し、「XI」はキシロースイソメラーゼであり、「XK」はキシルロキナーゼであり、「TAL」はトランスアルドラーゼであり、「TKT」はトランスケトラーゼであり、「EFT」は発酵経過時間を意味し、「RM」は10g/Lの酵母抽出物+2g/LのKH2PO4を含有するリッチ培地を意味し、「MM」は10g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH42SO4および0.2g/LのKH2PO4を含有する接合培地(mating medium)を意味する。
【0106】
酵素アッセイのためのザイモモナス(Zymomonas)の無細胞抽出物の調製
細胞を、50mlのRM+2%グルコース中、30℃で、1晩、1.0〜1.2のOD600まで増殖させた。細胞を4500rpmで10分間、4℃で、遠心分離により回収した。上清を廃棄し、そして細胞ペレットを25ml氷冷音波処理用緩衝液(10mMのTris、pH7.6、10mMのMgCl2)で洗浄し、続いて、4500rpmで10分間、遠心分離を行った。ペレットを2.0〜2.5ml音波処理用緩衝液+1mMジチオスレイトールに再懸濁した。500μLアリコートを、1分間、エッペンドルフ遠心管中、4℃で遠心分離した。上清のほとんどを廃棄し、約10〜20μLを残してペレットの乾燥を防止した。細胞を凍結し、そしてアッセイを行うまで約80℃で貯蔵した。アッセイの前に細胞を融解し、そして500μLの音波処理用緩衝液+1mMジチオスレイトールで再懸濁した。混合物を,Branson sonifier 450を使用して、45秒間、62%デューティサイクルおよび2の出力制御関数で、2回音波処理し、各音波処理の間に、約3〜5分間、サンプルを冷却した。サンプルを、14,000rpmで60分間、Beckman微量遠心機中、4℃で遠心分離した。上清を新しい試験管に移し、4℃で保持した。タンパク質濃度を決定するためにピアス(Pierce)BCAアッセイを使用した。
【0107】
トランスケトラーゼ(TKT)アッセイは、この酵素が他の酵素要素より不安定であるため、通常、最初に実施した。TKTアッセイの概念図を図1Aに示す。
【0108】
マイクロプレートアッセイでは、20μLの無細胞抽出物を次の最終濃度の成分を含んだ反応混合物の各ウェルに30℃で添加した:0.37mMのNADP、50mMのTrisHCl pH7.5、8.4mMのMgCl2、0.1mMのTPP((チアミン塩化ピロリン酸)、0.6mMのE4P(エリトロース−4−リン酸)、4mMのBHP(βヒドロキシピルビン酸)、4U/mlのPGI(ホスホグルコースイソメラーゼ)、および4U/mlのG6PD(グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)。A340を、3〜5分間、プレートリーダー上で読み取った。TKT活性を以下のとおりに算出した:
1単位は、30℃における1μmolのD−フルクトース6−リン酸/分の形成に対応する。
U(μモル/分)=勾配(dA340/分)*反応物の容積(μL)/6220/0.55cm
(NADP→NADPHのモルは1cmキュベットにおける1Lあたり1モルあたり6220 A340である)
(マイクロプレートにおける1ウェルあたり200μLの路長=0.55cm)
比活性(μモル/分−mg)=μモル/分/タンパク質濃度(mg)
【0109】
トランスアルドラーゼ(TAL)アッセイの基礎を図1Bに示す。マイクロプレートアッセイでは、20μLの無細胞抽出物を次の最終濃度の成分を含んだ反応混合物の各ウェルに30℃で添加した:0.38mMのNADH、87mMトリエタノールアミン、17mMのEDTA、33mMのF6P(フルクトース−6−リン酸)、1.2mMのE4P(エリトロース−4−リン酸)、2.0U/mlのGDH(グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、および20U/mlのTPI(トリオースリン酸イソメラーゼ)。プレートを5分間、インキュベートし、次いで、A340を3〜5分間、読み取った。TAL活性を以下のとおりに算出した:
1単位は、30℃における1分間あたりの1μmolのD−グリセルアルデヒドの形成に対応する。
U(μモル/分)=勾配(dA340/分)*反応物の容積(μL)/6220/0.55cm
(NADH→NADのモルは1cmキュベットにおける1Lあたり1モルあたり6220 A340である)
(マイクロプレートにおける1ウェルあたり200μLの路長=0.55cm)
比活性(μモル/分−mg)=μモル/分/タンパク
【0110】
キシロースイソメラーゼ(XI)アッセイの基礎を図1Cに示す。マイクロプレートアッセイでは、20μLの無細胞抽出物を次の最終濃度の成分を含んだ反応混合物の各ウェルに30℃で添加した:0.256mMのNADH、50mMキシロース、10mMのMgSO4、10mMトリエタノールアミン、および1U/mlのSDH(ソルビトールデヒドロゲナーゼ)。A340を、3〜5分間、プレートリーダー上で読み取った。XI活性を以下のとおりに算出した:
1単位のXIは、30℃における1分間あたりの1μモルのD−キシルロースの形成に対応する。
U(μモル/分)=勾配(dA340/分)*反応物の容積(μL)/6220/0.55cm
(NADHP→NADのモルは1cmキュベットにおける1Lあたり1モルあたり6220 A340である)
(マイクロプレートにおける1ウェルあたり200μLの路長=0.55cm)
比活性(μモル/分−mg)=μモル/分/タンパク質濃度(mg)
【0111】
キシルロキナーゼ(XK)アッセイの基礎を図1Dに示す。
マイクロプレートアッセイでは、20μLの無細胞抽出物を、次の最終濃度の成分を含んだ反応混合物の各ウェルに30℃で添加した:0.2mMのNADH、50mMのTrisHCl pH7.5、2.0mmのMgCl2−6H2O、2.0MのATP、0.2MのPEP(ホスホエノールピルビン酸)、8.5mMのD−キシルロース、5U/mlのPK(ピルビン酸キナーゼ)、および5U/mlのLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)。A340を、3〜5分間、プレートリーダー上で読み取った。XI活性を以下のとおりに算出した:
1単位は、30℃における1分間あたりの1μモルのD−キシルロースからD−キシルロース−5−リン酸への形成に対応する。
U(μモル/分)=勾配(dA340/分)*反応物の容積(μL)/6220/0.55cm
(NADH→NADのモルは1cmキュベットにおける1Lあたり1モルあたり6220 A340である)
(マイクロプレートにおける1ウェルあたり200μLの路長=0.55cm)
比活性(μモル/分−mg)=μモル/分/タンパク質濃度(mg)
【0112】
HPLC方法
分析は、LC 3DのAgilent 1100シリーズHPLCおよびAgilent ChemStationソフトウェアで行った。カラムは、BioRad Micro−Guard Cartridge Cation−H(125−0129)を備えたBioRad Aminex HPX−87H(HPLC Organic Analysis Column 125−0140)であった。操作条件は以下のとおりであった:
【0113】

【0114】
実施例1
キシロース発酵性ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株の構築
同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080286870号明細書に記載のように、キシロース発酵性ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の株を、連続的な転位事象を介して、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼをコードする4つのキシロース資化遺伝子を含有する2つのオペロン、PgapxylABおよびPgaptaltktをZW1(ATCC番号31821)のゲノムに組み込むことによって構築し、続いて、キシロースを含有する選択培地に適応した。以前に、米国特許出願公開第20030162271号明細書に記載の8bと呼ばれるキシロースを発酵させるザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株を、相同組換えおよびトランスポゾンアプローチの組み合わせを介して、選択抗生物質マーカーと共に2つのオペロンPgapxylAxylBおよびPenotaltktをザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)5Cのゲノムに組み込むことによって構築し、続いて、適応およびNTG変異誘導を行った。新たな株の調製では転位(EpicentreのEZ::Tnインビトロ転位システム)を使用した。このアプローチは,部位特異的相同組換えとは対照的に、利点として組み込み部位の複数の選択肢および比較的高い挿入頻度を付与するからである。キシロース資化酵素をコードする4つの遺伝子を配置し、組み込みのための2つの個別のオペロン:PgapxylABおよびPgaptaltktとしてクローニングした。組み込み体の選択のために、2つのP1ファージCreリコンビナーゼ認識配列(loxP)によってフランキングされる抗生物質耐性マーカー、クロラムフェニコール耐性(Cmr)遺伝子を各オペロンに付着させた。2つのオペロンの組み込みを2段階の連続様式:Pgaptaltkt、続いて、PgapxylABで達成した。Cm耐性選択は、各組み込み後、プラスミド上のCreリコンビナーゼを発現させ、続いて、プラスミドのキュアリングによって除去されるため、両方の組み込みに使用した。このプロセスにより、選択のために同じ抗生物質マーカーを複数回使用することが可能であった。さらに重要なことに、それは、オペロンの組み込みの選択のために導入される抗生物質マーカーの除去を可能にした。このプロセスは、商業的用途のための発酵株に対する抗生物質耐性遺伝子のネガティブな影響を排除する。
【0115】
転位のためのpMODPgaptaltktCmの構築
米国特許出願公開第20030162271号明細書(その明細書の実施例9)に記載のように、大腸菌(E.coli)由来のトランスケトラーゼ(tkt)コード領域を含有する2.2kbのDNAフラグメントを、BglII/XbaI消化によってpUCtaltkt(米国特許出願公開第20030162271号明細書)から単離し、そしてBamHI/XbaIで消化したpMOD(Epicentre Biotechnologies,Madison,WI)ベクターにクローニングし、pMODtktを得た。ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)gap(Pgap;グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子のプロモーター領域を大腸菌(E.coli)トランスアルドラーゼのコード領域(tal)に次のとおりに融合することによって、Pgaptalと命名されるPCRフラグメントを作製した。配列番号13および14のプライマーを使用して、Pgapフラグメント(その構築については米国特許第5514583号明細書(実施例3)に記載されている)をpZB4から増幅した。pZB4は、Pgap−xylA/xylBオペロンおよびPeno−tal/tktオペロンを含有する。配列番号15および16のプライマーを使用して、talコード領域フラグメントをpZB4から増幅した。テンプレートとしてPgapおよびtalフラグメントを使用し、配列番号17および18のプライマーを使用して、Pgaptalフラグメントを増幅した。このフラグメントをXbaIで消化し、tktコード領域の上流のプラスミドpMODtktにクローニングした。Cmlox(F,sfi)およびCmlox(R,sfi)プライマー(配列番号19および20)ならびにテンプレートとしてpZB186を使用するPCRによって、loxP::Cmフラグメントを作製した。pZB186は、生来のZ.モビリス(Z.mobilis)プラスミド、ならびに米国特許第514583号明細書(実施例3)およびZhang et al.((1995)Science267:240−243)に記載のpACYC184の組み合わせである。最後に、loxP::CmPCRフラグメントを、Pgaptaltktを含有するプラスミドのSfiI部位に挿入し、組み込みプラスミドpMODPgaptaltktCmを形成させた。このプラスミドでは、Pgaptaltkt loxP::Cmフラグメントを、pMODベクターの2つのモザイク末端(mosaic end)(トランスポザーゼ結合部位)の間に挿入した。pMODPgaptaltktCmプラスミドの完全なヌクレオチド配列を、配列番号21として示す。
【0116】
ZW1におけるpMODPgaptaltktCmの転位および形質転換
プラスミドpMODは、pUCに基づくベクターであり、従って、ザイモモナス(Zymomonas)における非複製ベクターである。プラスミドpMODPgaptaltktCmを、Mg2+の存在下、室温で1時間、トランスポザーゼで処置し、そして(200オーム、25μFおよび16kV/cmに設定したBioRad Gene Pulserを使用する)エレクトロポレーションによってZW1細胞を形質転換するために使用した。エレクトロポレートした細胞を、50g/Lグルコースおよび1mMのMgSO4を補充した10g/L酵母抽出物、5g/Lトリプトン、2.5g/Lの(NH42SO4、0.2g/LのK2HPO4)からなる接合培地(mating medium)(MM)中、6時間、30℃でインキュベートした。形質転換混合物を、50g/Lグルコースおよび120μg/mLクロラムフェニコールを補充したMM中に15g/LのBacto寒天を含有する寒天プレート上でプレーティングし、そして30℃で嫌気的にインキュベートした。約2日間後、形質転換体が目視で認められた。形質転換/転位頻度は、約3×101/μgのDNAであった。
【0117】
合計で39個のCmr形質転換体コロニーを得た。21個のコロニーを拾い出し、そしてPCRおよび酵素活性アッセイによってさらに分析した。プライマー配列番号22および23を使用するPCRにより、形質転換体におけるtalおよびtktコード領域を含有する3kbのDNAフラグメントの存在を確認した。21個の組込み体コロニー由来のプラスミドDNAによる戻し形質転換により、大腸菌(E.coli)で戻し形質転換体が作製されなかったことから、talおよびtktは、ZW1のゲノムに組み込まれたことが示唆された。マイクロプレート用に改変したプロトコル(一般的方法)を使用して、これらの組み込み体をトランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼ活性について試験した。ピアス(Pierce)BCAタンパク質アッセイを、タンパク質濃度の決定するために使用した。形質転換体を、120μg/mlクロラムフェニコール)を補充した2%(w/v)グルコースを含有するRM培地中、50ml円錐遠心管中で30℃で増殖させた。酵素アッセイでは、コントロール株8bおよびZW1も増殖させた(ZW1ではRM+2%グルコースを使用した)。OD600が1.0に到達したときに細胞を回収した。細胞を1回洗浄し、そして音波処理用緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.6および10mMのMgCl2)に再懸濁した。米国特許出願公開第20030162271号明細書に記載のように、酵素アッセイを行った。単位はμモル/分−mgとして示される。1つを除いて、すべてのサンプルはトランスアルドラーゼ活性およびトランスケトラーゼ活性を有した。
【0118】
tktプローブを使用して、PstIで消化した選択された組み込み体のゲノムDNAおよびプラスミドDNAに対し、サザンハイブリダイゼーションを実施した。ZW1 DNAは、tktプローブとはハイブリダイズしなかった。すべての組み込み体ゲノムDNAサンプルにおいて共通の1.5kbのバンドが認められたが、これは、tkt中のPstI部位とtal中のPstI部位との間に予想されるDNAフラグメントである。第2の認められる高分子量(6kbもしくはそれ以上)のバンドは、独立した系統T2、T3、T4およびT5の間で独特であり、各系統における個別のゲノム組み込み部位を示した。興味深いことに、T5のプラスミドDNAおよびゲノムDNAの両方ともtktプローブとハイブリダイズし、Pgaptaltktもまた、生来のプラスミド上のT5に組み込まれた可能性があることを示した。Cmrマーカーを除去するためのさらなるCre処置のためにこれらの4つの株(T2、T3、T4およびT5)を選択した。
【0119】
taltkt組み込み体からCmrマーカーを除去するためのCre処置
染色体からCmrマーカーを取り出すため、T2、T3、T4およびT5をpZB188/Spec−Creで形質転換した。このプラスミドは、Creリコンビナーゼの発現カセットを含有するザイモモナス(Zymomonas)−大腸菌(E.coli)シャトルベクターpZB188[Zhang et al.(1995)Science267:240−243;米国特許第5514583号明細書]の誘導体である。pZB188/Spec−Creは、それがカナマイシン−耐性遺伝子の代わりにスペクチノマイシン−耐性遺伝子を有することを除いて、実施例10に記載されているCre発現ベクター(pZB188/Kan−Cre)と同一である。2%グルコースおよび200μg/mlスペクチノマイシン)を補充したMM寒天プレート上で形質転換体を選択した。Spr耐性コロニーを拾い出して、2%グルコースおよび200μg/mlスペクチノマイシンを補充したRM寒天プレートおよび2%グルコースおよび120μg/mLのCmを補充したRM寒天プレート上に移した。採取したコロニーの100%がCmsであったことから、CreによるCmrの高い効率の切り出しが示された。SprCms形質転換体を、RM+2%グルコース中、37℃、2〜5回の連日継代で培養し、pZB188aadACreFをキュアリングした。各継代時に細胞を希釈し、拾い出して、200μg/mLのSpを含むまたは含まない同じ培地のさらなるプレートに移すために、RM+2%グルコース寒天プレート上にプレーティングした。PCRによってSpsコロニーを分析して、pZB188aadACreFの消失を確認した。組み込み体のプラスミドがキュアリングされた子孫を、T2C、T3C、T4CおよびT5Cと命名した。これらの転位組み込み体が安定であるかどうかを調べるために、これらの4つの株を、RM+2%グルコース中で増殖させ、次いで、10mlの同じ培地に移し、そして37℃で、2回反復測定の試験管中で増殖させた。細胞を、10日間連日、または約100代まで継代した。1代および10代継代後、コロニーを希釈し、そしてコロニー単離のためにRMGプレート上にプレーティングした。試験した各株の各継代由来の12個のコロニーが、5’Pgapおよび3’tktプライマー(配列番号13および23)を使用するコロニーPCRによるPgaptaltktの存在についてポジティブであった。トランスアルドラーゼ活性およびトランスケトラーゼ活性もまた、(一般的方法に記載のとおりに)1代および10代の継代後の単離体について測定した。4つのすべての組み込み体は、非選択的倍地上の100代目後もTAL活性およびTKT活性の両方について同様のレベルを有したことから、これらの組み込み体が遺伝的に安定であることが示唆された。
【0120】
転位のためのpMODPgapxylABCmの構築
次の工程は、ZW1::Pgaptaltkt組み込み体(T2C、T3C、T4CおよびT5C)にPgapxylAB loxP::Cmオペロンをさらに組み込むことであった。プラスミドpMODPgaptaltktCm(上記)に基づいて、組み込みプラスミドpMODPgapxylABCmを構築した。SacI/SfiI消化によってPgaptaltktDNAフラグメントを取り出した。SacI、NotI、およびSfiI制限部位を含有するアダプターフラグメントを、ライゲーションによって導入した。次いで、pZB4(米国特許第5514583号明細書)から単離したPgapxylABのNotIフラグメントを、アダプターのNotI部位にクローニングした。キシロースイソメラーゼ(XI)はxylAによってコードされ、そしてキシルロキナーゼ(XK)はxylBによってコードされる。pMODPgapxylABCmプラスミドの完全なヌクレオチド配列を、配列番号24として示す。
【0121】
T2C、T3C、T4CおよびT5CにおけるpMODPgapxylABCmの転位および形質転換
PgaptaltktCmの組み込みと同様のアプローチを使用して、T2C、T3C、T4CおよびT5Cを、トランスポザーゼで処置したpMODPgapxylABCm(上記)で形質転換/転位した。Cm選択後の2回の形質転換/転位実験で、6つの組み込み体(T3CCmX1、T3CCmX2、T3CCmX3、T4CCmX1、T5CCmX1、T5CCmX2)を得た。すべてについて、2つの組のプライマー:配列番号25、および26、ならびに配列番号15および16を使用するPCRによって、xylABの存在か確認されたが、但し、T2CcmX1およびT2CcmX6については、プライマー配列番号25および26を使用すると、PCRフラグメントが検出されなかった。
【0122】
2つのPCRネガティブ系統を含む組み込み体を、XI、XK、TALおよびTKT活性についてアッセイした(一般的方法)。図2および3に示される結果は、6つのxylAB組み込み体T3CCmX1、T3CCmX2、T3CCmX3、T4CCmX1、T5CCmX1、およびT5CCmX2はすべて、XI、XK、TALおよびTKT活性を有したことを示した。ネガティブな親コントロールと比較して、XIおよびXK活性が新たに獲得された(図2)。TALおよびTKT活性は、親コントロールと同じように維持された。すべての結果は、タンパク質が生成され、かつ機能的であることを示した。酵素活性レベルにはばらつきが認められたが、TIおよびXK活性は、同じプラスミドで形質転換/転位されたZW1組み込み体のTIおよびXK活性と同様であった。XI、XK、TALおよびTKTの活性のレベルは株8bより低かった。
【0123】
xylABオペロンの組み込みを、サザンハイブリダイゼーションによって確認した。6系統のゲノムDNAおよびプラスミドDNAの両方を、SphIで消化し、そしてジゴキシゲニン標識xylBプローブにハイブリダイズさせた。xylBにおけるSphI部位およびpMODベクター上の隣接するクローニング部位におけるもう1つのSphI部位から作製される約3kbの共通のバンドは、すべてのゲノムDNAサンプルに存在し、さらに、ゲノムDNAサンプル中に、より高い分子量のハイブリダイズバンドが認められたことから、染色体にPgapxylABオペロンのための4つの組み込みの部位が存在することが示された。T3CCmX1およびT3CCmX2は同じ組み込み部位を有するようであり、T3CCmX3およびT4CCmX1は同じ組み込み部位を有し得、そしてT5CCmX1およびT5CCmX2はそれぞれ個別の組み込み部位を有した。PstIによる同じDNAの消化、それに続く、tktプローブとのサザンハイブリダイゼーションにより、各組み込み体はそのそれぞれの親株と同じハイブリダイゼーションパターンを有したことが実証された。
【0124】
キシロース培地におけるZW1::Pgaptaltkt PgapxylAB Cm組み込み体の適応
キシロース資化のための4つのすべての酵素活性が存在しているにもかかわらず、先の観察(米国特許出願公開第20030162271号明細書)では、組み込み体は、キシロース上で直ぐには増殖しないことが示された。キシロース上での増殖は、(試験管中またはプレート上のいずれかにおける)キシロース培地上での長期のインキュベーション、適応と呼ばれるプロセス後、生じ得る。
【0125】
株は、以下のとおりに適応させた。ZW1::PgaptaltktPgapxylABCm組み込み体株を、RMX(10g/l酵母抽出物、2g/lのKH2PO4、20g/lまたは2%(w/v)キシロースを含有する)を含有する試験管、ならびにMMGXまたはMMXプレート(10g/L酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH42SO4、0.2g/LのK2HPO4、1mMのMgSO4、1.5%(w/v)寒天、0.025%(w/v)グルコースおよび4%(w/v)キシロースもしくは4%(w/v)キシロースのみ)上に播種した。低レベルのグルコースを使用して、初期の増殖を支持し、適応中の変異の可能性を増加させた。培養およびプレートの両方におけるキシロースに対する適応について少なくとも5つ試みたうちの1つが成功であった。30℃での10日間の嫌気的インキュベーションの後、17および19個のコロニーが、それぞれT3CCmX1およびT3CCmX2細胞をプレーティングしたMMGX上で認められた。コロニーは小さく、そしてプレート上では健常でないように見えた(透明であった)。12個のコロニー(T3CCmX1プレーティング由来の4個:T3CCmX11、T3CCmX12、T3CCmX13およびT3CCmX110;T3CCmX2プレーティング由来の8個:T3CCmX24、T3CCmX25、T3CCmX26、T3CCmX27、T3CCmX28、T3CCmX29、T3CCmX211およびT3CCmX212)をRMGCm120に播種し、そしてさらなる適応のために3mlのRMXに移して、キシロース上でより迅速に増殖することが可能な系統を得た。
【0126】
3mlのRMXを含有する試験管における組み込み体の適応は、30℃で行った。OD600を、スペクトロニック(Spectronic)601分光光度計で絶えずモニターした。増殖が対数期の中間部に到達したら、培養をRMXの新鮮な管に移した。このプロセスを7継代連続した。継代の間に増殖速度および最終OD(非線形的な読み取り)が改善された。
【0127】
6回目の継代において、培養物をRMXプレート上から画線して、単一のコロニーを単離した。3つの組込み体:T3CCmX13、T3CCmX26およびT3CCmX27が、RMX画線プレート上で他より迅速に増殖したが、これらを、以下の表および考察でX13、X26およびX27と称する。最良のキシロース資化増殖体をスクリーニングするために、TX13、X26およびX27に対するそれぞれ4個の大きな(L1−4)および4個の小さな(S1−4)コロニーを選択し、そして増殖、糖資化、およびエタノール産生をモニターし得るように、RMX試験管中で増殖させた。コロニーを、1晩、30℃で増殖させ、続いて、2回反復測定の試験管中3mlのRMXにOD600=0.05を播種した。X27は、RMGにおいて他の培養物より遅く増殖し、6.5時間後に再度播種した。69時間(X27では62.5時間)後、サンプルを、HPLC分析(一般的方法)のために採取した。図4は、69時間目(すべてのX27培養物については62.5時間)での培養の平均エタノール収率(理論的収率の%)およびキシロース資化(%)を示す図表である。大きなコロニーと小さなコロニーとの間で、有意差は認められなかった。X27の性能は、キシロース上のX26と比較して、より良好であったが、それは、グルコース上では、より遅い増殖を示した。従って、最上位の性能を示すもの、X13(X13L3)およびX26(X26L1)の大きなコロニーを、pH制御された発酵におけるさらなる評価のために選択した。発酵を、RMG(6%グルコース)、RMX(6%キシロース)およびRMGX(8%:4%;グルコース:キシロース)中、37℃で、株X13L3およびX26L1、ならびにコントロール株8bについて行った。RMG(6%)およびRMGX(8%:4%)で増殖したX13L3およびX26L1によるグルコースの発酵は、かなり迅速に進行した。RMGX(8%:4%)におけるキシロースの発酵は、X13L3およびX26L1では両方とも株8bと比較して緩徐であった。さらに、RMX(6%)上、37℃での増殖は、X13L3およびX26L1の両方とも、長い停滞の後に生じた。いくらかの単離体、X13b、X13cおよびX13FLを、RMX(6%)発酵から回収した。これらの単離体を、本来の株X13a(X13L3の単離体)およびX26と共に、本実施例において先に記載のようにCre処置に供して、ZW1::PgaptaltktPgapxylABCm株からCmrマーカーを取り出した。得られたCre処置されたCmrを含まない組込み体を:X13aC、X13bC、X13cC、X13FLCおよびX26Cと命名した。
【0128】
実施例2
株ZW658の適応および選択
先に記載のように、RMX上、30℃での初期のZW1::PgaptaltktPgapxylABCm株の適応により、これらの条件における株の増殖が顕著に改善された。しかし、適応された株は、RMX(6%)における37℃での増殖および発酵の間、長い停滞を蒙る。より高い糖濃度および温度を含む好適なプロセス条件でのキシロース発酵のために組込み体をさらに改善するために、進化または適応プロセスをRMX(5%)中37℃で継続させた。連続継代を行い、そして最も良好な資化増殖体を選択した。このプロセスで使用した組込み体は、X13aC、X13bC、X13cC、X26CおよびX13FLCを含んだ。これらの5つの株をRMX中30℃で6継代増殖させた後、さらに5〜16代の継代のために37℃でRMX(5%)に移した。すべての継代中および後、培養物をRMXプレート上に画線し、そして37℃でインキュベートして、単一のコロニーを単離した。大きなコロニーについてさらに、RMXプレート上での画線および37℃でのインキュベートを3〜4回行い、コロニーを精製した。最終的な大きなコロニーを、RMX(5%)における37℃での増殖試験のために選択した。
【0129】
RMX(5%)培地における37℃での適応由来の株の評価
連続継代による適応後に単離した18個のコロニーを、はじめに、RMX(5%)試験管中、37℃で試験した。12の株を、第2の試験管評価のために選択した。比較のために、株8bをすべての評価に含めた。18個のコロニーを、RMGで37℃で1晩増殖させ、遠心分離し、そして細胞を第1の評価のために試験管中4mlのRMX(5%)に37℃で静置状態で接種した。増殖(OD600、非線形的)およびエンドポイントのHPLC結果(低い残留キシロースおよび高エタノール)に基づいて、12の株を第2の評価のために選択した。
【0130】
第2の評価の目的の1つは、キシロース上での改善された増殖の安定性および株のキシロース資化能を試験することであった。12のすべての株を安定性研究に供して、適応された株を非選択培地に暴露して37℃で50代連続的に継代培養させた後にそれらが安定であるかどうかを調べた。RMG(5%)継代培養の前および後の培養物をRMX(5%)試験管に播種し、そして評価のために37℃で増殖させた。非線形的ODを、Spectronic 601分光光度計により試験管の直接読み取りによってモニターした。RMGにおける50代の増殖の前および後のRMX(5%)における増殖の70時間目のODを、図5にプロットした。結果は、ほとんどの株がRMG、37℃において50代後も安定であったことを示した。(定常期における)エンドポイントの上清もまた、キシロースおよびエタノール濃度についてHPLCによって分析した。これらの培養物において低い残留キシロースおよび高いエタノール濃度が認められたことから、株が増殖し、そしてキシロースを良好に発酵したという事実が支持された。
【0131】
上記の試験管評価(低い残留キシロース、高いエタノール濃度およびより高いOD)ならびに高度の糖類における、および酢酸塩の存在下でのより良好な増殖体を選択するための高濃度のグルコースおよび/またはキシロース(20%まで)、およびグルコースおよびキシロースと酢酸塩との混合物による以後のマイクロタイタープレート増殖スクリーニングの結果に基づいて、全体的に最も良好な性能を示した、例えば株番号26を、ZW658と称した。
【0132】
実施例3
ペントースリン酸経路酵素活性のアッセイ
組み込まれた遺伝子によってコードされる4つのキシロース資化酵素(実施例1に記載)の活性を、(実施例1の)高度の糖および37℃における適応について選択された株のうち3つについて、一般的方法に記載のとおりに測定し、そして(実施例2の)さらに適応された株ZW658における同じ酵素の活性と比較した。結果を、μモルの産物/mgタンパク質/分で表し、表4に示す。
【0133】
表4.異なるキシロース資化適応Z.モビリス(Z.mobilis)株における酵素活性

【0134】
xylABオペロンの両方のメンバーについての活性レベルは、部分的に適応された前駆体株におけるレベルと比較して、さらに適応された株ZW658において約4〜8倍増化した。tal/tktオペロンからの酵素の発現レベルは、ZW658と部分的に適応された前駆体株との間で、ほとんどまたは全く変化が認められなかった。
【0135】
実施例4
部分的に適応された株およびZW658におけるXYLABオペロンのプロモーター領域の配列比較
xylABを駆動するGAPプロモーター(Pgap)の制御下での両方の遺伝子の産物の酵素活性レベルの明確な変化がZW658をもたらす適応の結果として認められたため、部分的に適応された株(実施例1;その後株番号ZW641が与えられた)およびZW658由来のそのオペロンのプロモーター領域をPCRによって増幅し、そして配列決定した。PCRフラグメントを、recGコード領域由来の順方向PCRプライマー(PC11;配列番号27)(ここにPgapxylABオペロンを組み込んだ)およびxylAコード領域由来の逆方向プライマー(PC12;配列番号28)を使用して、調製した。得られた961bpのPCR産物を、プライマーLM121、LM122、およびLM123(配列番号29、30、および31)を使用して配列決定した。ZW641由来のプロモーター配列を配列番号3に示し、そしてZW658由来のプロモーター配列を配列番号4に示す。これらのプロモーター配列は、両方とも、Z.モビリス(Z.mobilis)株CP4におけるPgapの公開された配列(配列番号1)とは1箇所の位置において異なることを見出した:GAPコード領域のATG開始コドンから数えて上流の5’末端の方向へ−21位の次の(Tの)1塩基欠失である。この配列の変化は両方の株に存在するため、それは、ZW641のPgapとZW658のPgapとの間の発現の差異に寄与しない。この共通の変化に加えて、ZW641およびZW658のPgap配列の間に1塩基対の差異も認められた。ZW641株由来の配列におけるXylAのコード領域開始ATGに対する−189位のGが、ZW658由来の配列ではTに置き換えられた。2つの配列の間ではそれ以外の違いは認められず、GAPプロモーター領域におけるこの1つの塩基変化による発現レベルの違いがそのプロモーターの制御下の遺伝子によってコードされる両方のタンパク質に見出された酵素活性の増加を担うようであった。
【0136】
実施例5
Z.モビリス(Z.mobilis)ZW641においてXYLA/Bオペロンを駆動する同じPGAPを有するZ.モビリス(Z.mobilis)のためのキシロースイソメラーゼ発現ベクターの構築
出発物質として大腸菌(E.coli)/Z.モビリス(Z.mobilis)シャトルベクター(pZB188)を使用して、以下に記載のように、スペクチノマイシンに対する耐性およびZ.モビリス(Z.mobilis)における大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼの発現を付与するプラスミド構築物(pZB188/aada−GapXylA;ここで、Gapはプロモーターを表す)を作製した(図6A)。pZB188の構築に関与する工程については、米国特許第5,514,583号明細書に開示されている。簡単に説明すると、この7008bpのプラスミドは、2つの異なる複製開始点を、大腸菌(E.coli)およびZ.モビリス(Z.mobilis)に対して1つずつ有するため、それぞれの細菌種において複製することが可能である。pZB188はまた、テトラサイクリン(すなわちTCr−カセット)に対する耐性を付与するDNAフラグメントも含む。pZB188/aada−GapXylAの構築における第1の工程は、pZB188からTcr−カセットを取り出し、それを、スペクチノマイシンに対する耐性を付与するDNAフラグメント(即ち、Specr−カセット)で置き換えることであった。以下に詳細に説明するように、pZB188からTcr−カセットを切り出すために、プラスミドをClaIおよびBssHIIで切断し、そして得られた大きなベクターフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって精製した。テンプレートしてプラスミドpHP15578(Cahoon et al,(2003)Nature Biotechnology 21:1082−1087)ならびにプライマー1(配列番号32)および2(配列番号33)を使用して、PCRによってSpecr−カセットを作製した。プラスミドpHP15578は、Specr−カセットおよびそのプロモーターの完全なヌクレオチド配列を含有し、3’(9)−O−ヌクレオチジルトランスフェラーゼをコードするトランスポゾンTn7 aadA遺伝子(GenBank受託番号X03043)の公開された配列に基づく。
プライマー1(配列番号32)
CTACTCATTTatcgatGGAGCACAGGATGACGCCT
プライマー2(配列番号33)
CATCTTACTacgcgtTGGCAGGTCAGCAAGTGCC
【0137】
プライマー1(順方向プライマー)の下線を付した塩基は、Specr−カセットのプロモーターの直ぐ上流(GenBank受託番号X03043のnt4〜22に)にハイブリダイズする一方、小文字は、プライマーの5’末端に付加されたClaI部位に対応する。プライマー2(逆方向プライマー)の下線を付した塩基は、Specr−カセットの終止コドンから約130塩基下流(GenBank受託番号X03043のnt1002〜1020)にハイブリダイズする一方、小文字は、プライマーの5’末端に付加されたAflIII部位に対応する。1048bpのPCR作製したSpecr−カセットをClaIおよびAflIIIで二重消化し、そして得られたDNAフラグメントを、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen、カタログ番号28104)を使用し、および販売者の推奨するプロトコルに従って、精製した。次の工程では、(damメチル化に対して感受性である)ClaIでの切断のための非メチル化プラスミドDNAを得るための大腸菌(E.coli)SSC110(dcm-、dam-)から単離されたプラスミドpZB188を、ClaIおよびBssHIIで二重消化して、Tcr−カセットを取り出し、そして得られた大きなベクターフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって精製した。次いで、このDNAフラグメントおよびクリーンアップされたPCR産物を共にライゲートし、そしてStratagene(カタログ番号200239)から得られた化学的にコンピテントな細胞を使用して、形質転換反応混合物を大腸菌(E.coli)JM110に導入した。BssHIIおよびAflIIIは適合性の「接着末端」を生成するが、両方の部位が一緒に連結されるとそれらの部位が破壊されることにさらに留意すること。形質転換体を、スペクチノマイシン(100μg/ml)を含有するLB培地上でプレーティングし、37℃で増殖させた。正確なサイズ挿入部を有するプラスミドを含有するスペクチノマイシン耐性形質転換体を、NotIによる制限消化分析によって同定し、さらなる操作のために選択したプラスミドを以下でpZB188/aadAと称する。この構築物の環状図を図6Bに示す。
【0138】
次の工程では、pZB188/aadAをNcoIおよびAclIの両方の酵素で切断し、そしてアガロースゲル電気泳動によって大きなベクターフラグメントを精製した後、大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットを、pZB188/aadAのNcoIおよびAclI部位の間に挿入した。大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットとしての役割を果たす約2KbpのDNAフラグメントを、プラスミドpZB4の構築物をNcoIおよびClaIで切断し、そしてアガロースゲル電気泳動によって関連DNAフラグメントを精製することによって、プラスミドpZB4から単離した。プラスミドpZB4については、米国特許第5514583号明細書に詳述されており、そして大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットPgapXylA(配列番号34)の略図を、図6Dの枠内の概念図に示す。
【0139】
大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットを含有するフラグメントは、それぞれ、その5’末端にNcoI部位および3’末端にClaI部位を有する。米国特許第5514583号明細書においてより詳細に記載されているように、このフラグメントは、キシロースイソメラーゼをコードする大腸菌(E.coli)xylAオープンリーディングフレーム(nt620〜1942)の完全なオープンリーディングフレームに正確に融合される強力な構成性Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)プロモーター(nt316〜619)を含有する。それはまた、キシロースイソメラーゼ終止コドンの直後に続く小さなステムループ領域(nt1965〜1999)を含有する。大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットを、標準的な連結反応で、pZB188/aadAのNcoIおよびAclI部位の間に挿入した。ClaIおよびAclIは適合性の「接着末端」を作製するが、両方の部位が一緒に連結されるとそれらの部位が破壊されることにさらに留意すること。次いで、ライゲーション反応混合物を、大腸菌(E.coli)SSC110(dcm-、dam-)にエレクトロポレートして、Z.モビリス(Z.mobilis)のその後の形質転換のための非メチル化プラスミドDNAを入手し、そして形質転換された細胞を、100μg/mlのスペクチノマイシンを含有するLB培地上でプレーティングした;増殖は37℃であった。正確なサイズの挿入物を有するプラスミドを有するスペクチノマイシン耐性形質転換体を、NotI、NcoIおよびAclIによる制限消化分析によって同定した。Z.モビリス(Z.mobilis)ZW641株において大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼのさらなる操作および過剰発現のために選択したプラスミドを以下では「pZB188/aadA−641Gap−XylA」と称する;このプラスミド構築物の環状図を図6Cに示す。
【0140】
たとえ、配列番号34のヌクレオチド配列が同じ大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセット(PgapXylA)に対応するとしても、配列番号34のヌクレオチド配列は、同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080286870号明細書および米国特許出願公開第20080187973号明細書における配列番号34に記載のヌクレオチド配列と同一ではないに留意することが重要である。本研究における配列番号34に開示されたDNA配列は、米国特許出願公開第20080286870号明細書および米国特許出願公開第20080187973号明細書における配列番号34のnt599に対応するPgapにおいて1bpの欠失を有する。先の特許出願に報告されたヌクレオチド配列は、Z.モビリス(Z.mobilis)株CP4のPgapの公開されたDNA配列(Conway et al.J.Bacteriol.169(12):5653−5662(1987))に基づいていたが、当時、プロモーターは再配列決定されなかった。しかし、最近、本発明者らは、pZB4におけるPgapもまた同じヌクレオチドを欠き、そして3つのすべての特許出願に使用された大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセット(PgapXylA)が上記のこのプラスミドから駆動されることを発見した。
【0141】
実施例6
Z.モビリス(Z.mobilis)ZW658およびZW801−4においてXYLA/Bオペロンを駆動する同じPGAPを有する大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現ベクターの作製
プラスミドpZB188/aada−801GapXylAは、pZB188−aadA−641GapXylA(図6C)と同一であるが、ZW658において大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンの発現を駆動するPgapの−189位に存在するG→T変異に対応するPgapにおける1つのヌクレオチド置換を有する。以下に記載のようにZW658から連続的に誘導された株ZW800およびZW801−4にも同じ点変異が存在する。ZW800およびZW801−4の構築および特徴付けについては、同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願第11/862566号明細書に詳述されている。ZW800は、この活性を不活化するグルコース−フルクトースオキシドレダクターゼ(GFOR)酵素をコードする配列へのスペクチノマイシン耐性カセットの二重交差挿入を有するZW658の誘導体である。ZW801−4は、部位特異的組換えによってスペクチノマイシン耐性カセットが欠失され、タンパク質を未成熟にトランケートするインフレームの終止コドンが後に残ったZW800の誘導体である。これらの操作のいずれも、ZW658においてXylA/Bオペロンを駆動する変異Pgapプロモーターのヌクレオチド配列を変異しなかった。それ故、「801GAPプロモーター」とは、次の株:ZW658、ZW800、およびZW801−4に存在するプロモーター配列を指す。
【0142】
pZB188/aadA−801GapXylAを作製するために使用した工程およびプラスミド中間体を、プラスミドpMOD−リンカーを出発点として時系列で説明する。
【0143】
pMOD−リンカーの構築
プラスミドpMOD−リンカーの前駆体は、EPICENTRE(登録商標)から市販されているpMODTM−2<MCS>Transposon Construction Vector(カタログ番号MOD0602)であった。図7Aに示すように、pMODTM−2<MCS>は、アンピシリン耐性遺伝子(ampR)、大腸菌(E.coli)複製開始点(ori)、およびTn5トランスポザーゼが相互作用する2つのモザイク末端(ME)の間に位置するマルチクローニング部位を有する。pMOD−リンカーの構築における第1の工程は、pMOD2−<MCS>における本来のマルチクローニング部位を取り出すことであったが、これは、それを、AsiSi、FseIおよびSbfIに独特の制限部位を有する新たなマルチクローニング部位で置き換えることであった。これは、プラスミドをEcoRIおよびHindIIIで切断し、そしてアガロースゲル電気泳動により大きな(約2.5Kbpの)ベクターフラグメントを精製することによって行った。次いで、新たなマルチクローニング部位を、両方ともそれらの5’末端でリン酸化された2つの合成オリゴヌクレオチド、リンカーB(配列番号35)およびリンカーT(配列番号36)を共にアニーリングすることによって作製した。

【0144】
これらのオリゴヌクレオチドは相互に相補的であり、そして一緒にアニーリングすると両末端に一本鎖オーバーハング(小文字)を有する二本鎖のリンカーを形成し、このリンカーは、DNAフラグメントが、上記の大きなpMODTM−2<MCS>ベクターフラグメントのEcoRI部位とHindIII部位との間に連結することを可能にする。上記のように、この合成リンカーもまた、以後のクローニング工程に使用することができる3つの固有の制限部位(AsiSi、FseIおよびSbfI)を含有する。SbfI部位には細線で下線を付し、FseI部位には太線で下線を付し、そしてAsiSI部位には2本の細線で下線を付す。リンカーBおよびリンカーTを共にアニーリングし、そして標準的なライゲーション反応において、得られたDNAフラグメントをpMODTM−2<MCS>のEcoRI部位とHindIII部位との間に挿入した。連結反応混合物を使用して大腸菌(E.coli)DH10Bを形質転換して、形質転換された細胞を、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地上でプレーティングした。次いで、プラスミドDNAを新たなマルチクローニング部位を含有する代表的なアンピシリン耐性コロニーから単離した。得られたプラスミド構築物(以下、「pMOD−リンカー」と称する)の環状図を図7Bに示す。
【0145】
pMOD−リンカー−Specの構築
スペクチノマイシンに対する耐性(Specr)を付与し、そして両方の末端に野生型loxP部位を有するDNAフラグメントを上記のpMOD−リンカー構築物のAsiSI部位とFseI部位との間に挿入した。loxPフランキングSpecrカセットの供給源は、米国特許出願第11/862566号明細書に詳述されているプラスミドpLDH−Sp−9WW(図8)であった。第1の工程では、MOD−リンカープラスミドDNAを、FseIおよびAsiSIで連続的に消化し、そしてZymo Research Corporation(カタログ番号DO4003)から購入したDNA Clean&ConcentratorTM−5スピンカラムキットを使用して、大きなベクターフラグメントを精製した。次に、プラスミドpLDH−Sp−9WWもまた、同じ2つの酵素で二重消化し、そしてloxPフランキングSpecrカセットを含有する小さな(約1.1Kbpの)DNAフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって精製した。次いで、2つのDNAフラグメントを共に連結し、そしてエレクトロポレーションを使用して形質転換反応混合物を大腸菌(E.coli)DH10Bに導入した。形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)およびスペクチノマイシン(100μg/ml)を含有するLB培地上に置き、そして増殖は37℃とした。次いで、プラスミドDNAを正確なサイズのDNAフラグメントを含有するアンピシリン耐性コロニーのうちの1つから単離し、そしてこれを以後の操作に使用した。構築物(以下、「pMOD−リンカー−Spec」と称する)の環状図を図7Cに示す。
【0146】
pMOD−リンカー−Spec−801GapXylAおよびpMOD−リンカー−Spec−641GapXylAの構築
Pgap全体、XylAコード領域、ならびにXylAおよびXylBオープンリーディングフレームの間に存在するステムループ領域を含有するDNAフラグメントを、プライマー3および4(それぞれ、配列番号37および38)ならびに再懸濁した細胞をテンプレートとして使用して、ZW801−4からPCR増幅した。既に記載のように、DNA配列解析により、ZW801−4は、組み込まれた大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンの発現を駆動するPgapプロモーターにおいて−189位でZW658と同じG→T点変異を有し、そして両方の株のPgapが同一であることが示された。
プライマー3(配列番号37)
TCACTCATggccggccGTTCGATCAACAACCCGAATCC
プライマー4(配列番号38)
CTACTCATcctgcaggCCGATATACTTATCGATCGTTCC
【0147】
プライマー3(順方向プライマー)の下線を付した塩基は、Pgapの最初の22塩基(および配列番号34のnt316〜337)にハイブリダイズする一方、小文字は、プライマーの5’末端に付加されたFseI部位に対応する。プライマー4(逆方向プライマー)の下線を付した塩基は、XylA終止コドンの後方に存在するステムループ領域の直ぐ下流(および配列番号34の最後の12nt)にハイブリダイズする一方、小文字は、プライマーの5’末端に付加されたSbfI部位に対応する。
【0148】
PCR産物を、FseIおよびSbfIで二重消化し、そしてZymo Research Corporation(カタログ番号DO4003)から購入したDNA Clean&ConcentratorTM−5スピンカラムキットを使用して精製した。次に、プラスミドpMOD−リンカー−Specを同じ2つの酵素で切断し、そして得られた大きなベクターフラグメントを、同じ手順を使用して精製した。次いで、2つのDNAフラグメントを共に連結し、そしてエレクトロポレーションを使用して、形質転換反応混合物を、大腸菌(E.coli)DH10Bに導入した。細胞を、アンピシリン(100μg/ml)およびスペクチノマイシン(100μg/ml)を含有するLB培地上にプレーティングし、そして増殖は37℃であった。正確なサイズの挿入物のプラスミドを含有する形質転換体を、テンプレートとしてプライマー3および4ならびに再懸濁したコロニーを使用するPCR(「コロニーPCR」)によって同定した。さらなる操作のために選択したプラスミドを、以下で、pMOD−リンカー−Spec−801GapXylAと称し、そしてこの構築物の環状図を図9に示す。
【0149】
Pgap−XylA遺伝子DNAフラグメントのPCR増幅に使用したテンプレートがZW641の細胞懸濁液であったことを除いて、上記の同じ工程を使用して、以下、「pMOD−リンカー−Spec−641GapXylA」と称するもう1つのプラスミドを作製した。ZW658(およびZW801−4)とZW641とを区別するPgapにおけるG→T置換を除いて、pMOD−リンカー−Spec−641GapXylAおよびpMOD−リンカー−Spec−801GapXylAは同一である。
【0150】
pZB188−aadA−801GapXylAの構築
実施例6の最初の段落に記載のように、pZB188−aadA−801GapXylAは、pZB188−aadA−641GapXylAに同一なZ.モビリス(Z.mobilis)の大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現ベクターであるが、それは、ZW658(およびZW801−4)に組み込まれたPgap−XylA/Bオペロンの発現を駆動するPgapにおける同じG→T置換を有する。このプラスミドを構築するため、pMOD−リンカー−Spec−801GapXylA(図10A)をMluIおよびSalIで二重消化し、そしてより小さなDNAフラグメント(約1100bp)を、アガロースゲル電気泳動およびZymoclean Gel DNA Recovery Kit(カタログ番号D4001、Zymo Research)を使用して、精製した。このフラグメントはPgapのG→T置換およびXylA ORFの一部を含有するが、後者の構築物を同じ2つの酵素で切断し、そして大きなベクターフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって精製した後、pZB188−aadA−641GapXylA(図10B)において対応するフラグメントを置き換えるために使用した。次いで、2つのフラグメントを共にライゲートし、そしてエレクトロポレーションを使用して、ライゲーション反応混合物を、大腸菌(E.coli)DH10Bに導入した。形質転換体を、スペクチノマイシン(100μg/ml)を含有するLB培地上でプレーティングし、そして増殖は37℃であった。プラスミドDNAをスペクチノマイシン耐性コロニーから単離し、そしてPgapプロモーターG→T置換の存在を、DNA配列解析によって確認した。以後の操作に使用したプラスミド(「pZB188−aadA−801GapXylA」)を図10Cに示す。
【0151】
実施例7
ZW641における大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼの過剰発現
表4における酵素活性測定値は、ZW641からZW658へのトランジション中にキシロースイソメラーゼ活性およびキシルロキナーゼ活性が劇的に増加することを示す。キシロースイソメラーゼが、ZW641におけるキシロース上での増殖の律速酵素であるという仮説を試験するため、マルチコピープラスミド、pZB188/aadA−641GapXylA(図6C)を使用して、酵素をこの株で過剰発現させた。この実験のコントロールは、Pgap−大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットを欠くマルチコピープラスミドpZB188/aadAで形質転換されたZW641であった(図6B)。これらの両方のプラスミドの構築については、実施例5に記載されており、そして形質転換プロトコルは、本質的に、同一出願人が所有しかつ同時係属中の米国特許出願公開第20080187973号明細書の実施例5に記載のとおりであった。簡単に説明すると、エレクトロポレーションを使用して、非メチル化プラスミドDNA(dcm-およびdam-株である大腸菌(E.coli)SSC110から単離された)をZW641に導入し、そして形質転換細胞を、200μg/mlスペクチノマイシンを含有するLB培地上にプレーティングした。嫌気条件下30℃で48時間の培養期間後、各プラスミドについて、3つの初代形質転換体を無作為に選択し、そしてこれらを、さらなる特徴付けのために同じ増殖培地を含有する寒天プレート上にパッチした(移した)。
【0152】
図11は、641Pgap−大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現プラスミドを保持する3つの株(X1、X2およびX2)ならびにコントロールプラスミドを保持する3つの株(C1、C2およびC3)のキシロース含有培地における増殖曲線(OD600対時間)を示す。この実験は、振盪フラスコ(150rpmで15ml試験管中5mlの培養液)中30℃で実施し、そして増殖培地は、スペクチノマイシン(200μg/ml)をも含有するmRM3−X10(10g/L酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、1g/LのMgSO4および100g/Lキシロース)であった。培養は、上記の段落において記載のパッチしたプレート由来の1植菌耳の細胞から開始し、そしてそれぞれの場合の初期OD600は約0.13であった。ZW641と同様に、コントロールプラスミドを含む3つの株はキシロース上ではほとんど増殖しなかった。全く対照的に、ZW641を、641Pgap−大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現プラスミド、pZB188/aadA−641GapXylAで形質転換した場合、キシロース上での増殖の速度および程度(最終OD600値)の両方とも劇的に改善された。このプラスミドを有する3つのすべての株は、図11に示す実験において同じ挙動を示したため、X1株およびC1株のみをさらなる特徴付けに供した。
【0153】
図12は、スペクチノマイシンを伴わない同じキシロース含有増殖培地におけるZW641、ZW658、X1およびC1の並列比較を示す。この実験の条件は、上記の条件と同一であったが、20ml培養液を、50ml試験管中で増殖させ、そして初期OD600は約1/4であった(0.035)。図12Aに示す増殖曲線を線形目盛(OD600対時間)でプロットする一方、図12Bは、指数増殖速度を比較するために、対数目盛(logOD600対時間)に対してプロットした同じ実験データを示す。この実験から、X1の指数増殖速度は、キシロース適応株ZW658とほとんど同じ速さであること、およびこの株は、コントロールプラスミドを伴っても伴わなくても親株ZW641よりかなり良好にキシロース上で増殖することが明らかである。それ故、(マルチコピープラスミド由来の641Pgapプロモーターによって駆動される)ZW641におけるキシロースイソメラーゼの高発現は、キシロース上での増殖に対して、キシロースイソメラーゼ活性の増加がZW658に対して及ぼす効果(表4に示す)に類似の効果を及ぼす。X1の最終的なバイオマス収量は、ZW658によって得られる収量の約1/2であるが、このデータから、ZW641におけるキシロース上での増殖の律速酵素はキシロースイソメラーゼであることが明らかである。図11および12に示される実験から、次の他の2つの興味深い可能性がさらに示唆される:(1)ZW641からZW658へのトランジション中に生じるキシロースイソメラーゼ活性の大きな増加(表4)が、「キシロース適応」プロセス中に生じたキシロース上でのより良好な増殖の主な原因であったこと;および(2)キシロースイソメラーゼ活性の増加は、ZW658に存在する染色体上に組み込まれたPgap−XylA/Bオペロンの発現を駆動するPgapプロモーターにおけるG→T置換から生じ得たこと。
【0154】
実施例8
ZW641における大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼのトランスポゾン仲介組み込み
ZW641および2つのプラスミド構築物(pMOD−リンカー−Spec−801GapXylAおよびpMOD−リンカー−Spec−641GapXylA)を使用して、ZW658に組み込まれたXylA/Bオペロンの発現を駆動するG→T置換を有するPgapプロモーター(以後、「801GAPプロモーター」と称する)が、ZW641における対応するプロモーター(以後、「641GAPプロモーター」と称する)より強力であるという仮説を試験した。ZW641は、キシロース上ではほとんど増殖することができず、そしてこの株でキシロースイソメラーゼが過剰発現すると、キシロース上での増殖がより速くなる(実施例7、図11および12)ため、ZW641をこれらの実験に選択した。基本理念は、(641GAPプロモーターまたは801GAPプロモーターによって駆動される)大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ遺伝子の追加のコピーをZW641の染色体へ導入すること、およびどちらの構築物がキシロース上で最も速く増殖するかを調べることであった。Epicentreのトランスポソーム技術を使用して、2つのキメラ遺伝子の染色体組み込みを達成した。
【0155】
既に示したように、pMOD−リンカー−Spec−641GapXylAおよびpMOD−リンカー−Spec−801GapXylAは、後者の構築物のPgapプロモーターにG→T点変異が存在することを除いて、同一のプラスミドである。両方の場合においてDNAへの無作為な挿入に使用された転移因子は、2つの19bpのモザイク末端(ME)およびそれらの間に挟まれる全DNAフラグメントからなる。図9に示すように、トランスポゾンと称されるこのエレメントは、スペクチノマイシン耐性カセット(Specr)および下流のPgap−大腸菌(E.coli)キシロースイソメラーゼ発現カセットを含有する。トランスポソームを形成するために使用したプロトコルは、本質的に、EZ::TNTMpMODTM−2<MCS>Transposn Construction Vector(カタログ番号MOD0602)についてのEpicentreの取扱説明書に記載のプロトコルと同じであった。8μL反応物は、Mg++イオンを含まない1.5μLの5’−リン酸化、平滑末端化されたトランスポゾンDNA(約250ng/μL)、4μLのEpicentreのEZ::TNトランスポザーゼおよび2.5μLの80%(v/v)グリセロールを含有した。コントロールトランスポソーム反応混合物も同一であったが、但し、トランスポザーゼの代わりに4μLの滅菌水を使用した。反応物を室温で30分間、インキュベートし、次いで、緩徐な異性化工程に必要な2〜7日間のインキュベーション期間、4℃に移した(これにより、活性なトランスポソームが形成する;この手順を使用すれば、トランスポソームは、−20℃で少なくとも3箇月間、安定である)。
【0156】
本質的に、米国特許第5,514,583号明細書に記載のプロトコルと同じ形質転換プロトコルを使用して、トランスポソームをZW641にエレクトロポレートした。簡単に説明すると、40μLの形質転換反応物は、10%(v/v)グリセロール中約1010個の細胞/ml、1μLのEpicentreのTypeOneTMRestrictionインヒビター(カタログ番号TYO261H)および1μLのコントロールまたはトランスポソーム反応混合物を含有した。エレクトロポレーターの設定は、1.6kv/cm、200Ω、および25μF、およびキュベットのギャップ幅は0.1cmであった。エレクトロポレーション後、形質転換物を1.0mlのMMG培地(50g/Lグルコース、10g/L酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH42SO4、0.2g/LのK2HPO、および1mMのMgS04)で希釈し、そして細胞を約3時間、30℃で回復させた。次いで、細胞を、室温で、滅菌1.5ml微量遠心管中、遠心分離(13,000×g、5分間)によって回収し、そして上清を注意深く取り除いた。細胞ペレットを、200μLの液体MMG培地に再懸濁し、そして100μLアリコートの各細胞懸濁液を、1.5%寒天および200μg/mlのスペクチノマイシンを含有するMMG培地上でプレーティングした。30℃、嫌気条件下での72時間のインキュベーション期間後、3個のコロニーがコントロールプレート上で認められ、13個のコロニーが641GapXylAトランスポソームプレート上で認められ、そして18個のコロニーが801GapXylAトランスポソームプレート上で認められた。さらなる特徴付けのために、両方のトランスポソームプレート由来の6個のコロニーを無作為に選択し、そしてこれらを、MMX培地および200μg/mlのスペクチノマイシンを含有する寒天プレート上にパッチした;増殖条件は上記のとおりであった。MMX培地は、MMG培地と同じであるが、但し、グルコースの代わりに50g/Lのキシロースを含有した。新鮮なMMX+スペクチノマイシンプレート上での2回の増殖後、キシロース上で最も増殖した6つの株(各トランスポソームについて3つ)を、下記の実験に使用した。
【0157】
図13Aは、641Gap−XylAトランスポソーム(#6−1、#6−3および#6−5)によって得られた3つのZW641株ならびにキシロース含有培地において801GapXylAトランスポソーム(#8−2、#8−4および#8−5)を受容した3つの株の線形増殖曲線を示す。同じデータを図13Bに対数目盛でプロットする。この実験は、振盪フラスコ(150rpmで15ml試験管中7ml培養液)中30℃で実施し、そしてmRM3−X10(10g/L酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、1g/LのMgSO4および100g/Lキシロース)が増殖培地であった。培養は、上記のパッチしたプレート由来の1植菌耳の細胞から開始し、そして初期ODは極めて類似していた(約0.02〜0.03)。この実験のコントロールは、染色体に組み込まれた大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンを駆動するPgapにおけるG→T置換を有するキシロース適応株ZW658であった。
【0158】
親株(ZW641)と同様に、641GapXylA発現カセットの染色体外に組み込まれた追加のコピーを有する3つの株ではキシロース含有培地における増殖が極めて不良であったが、特に、株#6−5の増殖速度およびバイオマス収量(OD600)の両方にいくつかの若干の改善が認められたようであった(図12Aと図13Aとを比較すること)。対照的に、801GapXylAトランスポゾンによって得られた3つのすべての株は、キシロース上で親株よりかなり良好に増殖した(図13Aおよび13B)。事実、形質転換体のうちの2つ(#8−4および#8−5)は、この糖上において、641GapXylA発現カセットを含有するマルチコピープラスミドpZB188/aadA−GapXylAを所有するZW658およびZW641形質転換体とほぼ同様に良好に増殖した(図12と図13とを比較すること)。転移は無作為な事象であり、そして6つのすべての株は、染色体の異なる場所に挿入された641GapXylAまたは801GapXylA発現カセットを有するため、同じトランスポソームを使用してこの実験において観察された外来遺伝子発現の差異は、位置効果による可能性がある。例えば、位置効果は、#6−1および#6−3より良好な#6−5の増殖、ならびに#8−4および8−5より不良な#8−2の増殖を説明し得る。それでも、分析した集団のサイズが小さいにもかかわらず、図13に示す結果は、ZW658およびZW801−4において大腸菌(E.coli)XylA/Bオペロンを駆動するPgapプロモーターに存在するG→T変異が、親株ZW641と比較して、これらの株で観察されるより高いキシロースイソメラーゼ活性およびキシロース上でのより良好な増殖を担うという見解を強力に支持する。
【0159】
実施例9
キシロース資化Z.モビリス(Z.mobilis)の独立して適応させた株の導入遺伝子GAPプロモーター領域の酵素活性および配列比較
また、ZW658に類似の遺伝子導入および株適応の経過を使用して、株8b(実施例1および米国特許出願公開第20030162271号明細書)を得たため、ペントースリン酸経路の導入遺伝子活性およびPgapxylABオペロンの配列を、この独立した株の産生について部分的およびより完全に適応された株で比較した。部分的適応株8XL4および最終適応株8bにおけるPgapxylABオペロンの産物の酵素活性を、一般的方法に記載の技術を使用して測定し、そしてμモルの産物/mgタンパク質/分で表した結果を表5に示す。
【0160】
表5.異なるキシロース資化適応Z.モビリス(Z.mobilis)株における酵素活性

【0161】
ZW658より以前の株がキシロース上での増殖の増強を可能にする変異を得た場合に生じた適応の場合と同様に、株8bではxylABオペロンでの両方の遺伝子の産物の活性が、その先祖株8XL4より増加した。さらに述べると、測定した酵素活性の増加はそれほど適応されていない株より約5倍増加した。
【0162】
8bおよび8XL4株においてxylABオペロンの発現を指令するPgapを配列決定した。PCRフラグメントを、プロモーターの5’末端由来の順方向PCRプライマー(GAP−F8;配列番号39)およびxylAコード領域由来の逆方向プライマー(XylAB851R;配列番号5)を使用して調製した。得られたPCR産物を、プライマーGAP−F8、XylAB449R、およびXylAB851R(配列番号39、41、および40)を使用して配列決定した。ZW8XL4由来のプロモーター配列を配列番号3に示し、8b由来のプロモーター配列を配列番号5に示す。ZW641およびZW658におけるxylABオペロンのPgapにおける場合と同様に、これらのプロモーター配列もまた、両方とも、株CP4のPgapの公開された配列との間で1つの差異を有した。これらの共通の変化に加えて、ZW641およびZW658のPgap配列の間にも1つの塩基対の違いが認められた。8XL4と8bとの比較では、開始ATGに対して−189位でのGからTへの変化が認められなかった一方、開始ATGに対して−89位においてCからTへの変化が生じた。
【0163】
株ZW658のPgapxylABオペロンのプロモーター配列の場合と同様に、新規の配列の制御下でのコード領域からのタンパク質の産生が部分的に適応された株由来の同じプロモーターの配列よりも多く産生されることを可能にする新規の配列への適応中に、株8bにおいてPgapxylABオペロンのプロモーター配列が変化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形質転換によって導入されたキメラ遺伝子を含むザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される組換え細菌株であって、前記キメラ遺伝子が:
a)改善されたPgapである、−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを含み、前記位置番号がZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、単離された核酸分子;ならびに
b)キシロースイソメラーゼ酵素をコードする作動可能に連結された単離された核酸分子、を含む、前記組換え細菌株。
【請求項2】
塩基置換が:
a)−190位におけるGからTへの置き換え;および
b)−89位におけるCからTへの置き換え
である、請求項1に記載の組換え株。
【請求項3】
改善されたPgapが、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、および12からなる群から選択される配列を含む、請求項2に記載の組換え株。
【請求項4】
キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のための遺伝子でさらに形質転換された、請求項1に記載の組換え株。
【請求項5】
キメラ遺伝子がキシルロキナーゼをコードする作動可能に連結された単離された核酸分子をさらに含んでオペロンを形成している、請求項1に記載の組換え株。
【請求項6】
キシロースイソメラーゼ酵素が、4つの触媒部位残基:ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)キシロースイソメラーゼ配列(配列番号X)に対する位置番号でヒスチジン54、アスパラギン酸57、グルタミン酸181、およびリジン183を有し、表3に示されるxylAファミリーのタンパク質に関するPfam Profile HMMを使用して調査した場合、3×10-10以下のE−値パラメータを有するタンパク質である、請求項1に記載の組換え株。
【請求項7】
キシロースイソメラーゼ酵素が、配列番号42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、および104からなる群から選択される配列に90%アミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の組換え株。
【請求項8】
ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される細菌株を操作するための方法であって:
a)改善されたPgapである、−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを含み、前記位置番号がZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、単離された核酸分子;ならびに
b)キシロースイソメラーゼ酵素をコードする作動可能に連結された単離された核酸分子、を含むキメラ遺伝子で前記細菌を形質転換する工程
を含む、前記方法。
【請求項9】
ザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択されるキシロース資化細菌株を操作するための方法であって、任意の順序で、以下の工程:
a)トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼの発現のための遺伝子またはオペロンで前記細菌を形質転換する工程;ならびに
b)キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼの発現のための遺伝子またはオペロンで形質転換する工程であって、前記キシロースイソメラーゼ酵素が−190位、−89位、または−190位および−89位の両方からなる群から選択される位置に塩基置換を有するZ.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(改善されたPgap)から発現され、前記位置番号がZ.モビリス(Z.mobilis)のCP4株およびZM4株におけるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの天然のATG翻訳開始コドンに対する番号である、前記工程、を含む、前記方法。
【請求項10】
キシロースを含む培地において、請求項1に記載の組換え細菌株を培養する工程;
任意のシステムにおいてエタノール産生に適切な発酵条件を維持する工程、
それによって、培養した請求項1に記載の組換え細菌株が、キシロースをエタノールに変換することを容易にする工程、
を含む、エタノールの産生のための方法。
【請求項11】
0.256mMのNADH、50mMキシロース、10mMのMgSO、10mMトリエタノールアミン、および1U/mlソルビトールデヒドロゲナーゼを含む反応混合物中20μLの無細胞抽出物を30℃で反応させることによって測定した際に、少なくとも約0.1μモル産物/mgタンパク質/分を産生させるレベルでキシロースイソメラーゼを発現するように操作されたザイモモナス(Zymomonas)およびザイモバクター(Zymobacter)からなる群から選択される組換え細菌株であって、D−キシルロースが産物である、前記組換え細菌株。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A−B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7A−B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A−B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate


【公表番号】特表2011−515107(P2011−515107A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501997(P2011−501997)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038164
【国際公開番号】WO2009/120731
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(510119681)アライアンス フォア サステイナブル エナジー エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】