説明

改善されたベーカリー製品、ベーカリー製品及びベーキング材料を改善する方法、及びベーキングにおいてベタインを使用する方法。

本発明は、焼いた場合にベーカリー製品のテクスチャ特性を改善する有効量においてベタイン及び酵素の組み合わせを含む改善されたベーカリー製品に関する。改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加、及びそれらの組み合わせ中から選ばれる。本発明はまた、小麦粉、水、酵素及びベタイン、そして所望による更なる材料を配合し、そして得られた混合物を加工してベーカリー製品を得る工程を含むベーカリー製品の特性を改善する方法であって、該ベタイン及び酵素は、焼いた場合に該ベーカリー製品の特性を改善する有効量において提供される、方法に関する。
さらにまた、本発明は、本質的に酵素及びベタイン、そして所望により乳化剤の組み合わせからなる、ベーキング材料に関し、該酵素及びベタイン及び可能な乳化剤は全て、焼いた場合のベーカリー製品のテクスチャ特性を改善し得る有効量において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベタイン及び酵素を含む、改善されたベーカリー製品に関する。本発明はまた、ベーカリー製品のテクスチャ特性並びに該ベーカリー製品の鮮度を改善する方法に関する。本発明の好ましい実施態様において、乳化剤が、酵素/ベタインの組み合わせに対する更なる改善効果を与えるために使用される。本発明はまた、酵素及びベタインに基づく改善されたベーキング材料に関し、そしてベーキングに於けるベタインの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は、その精製された形態において、しばしば乳化剤とともに、食品製造において一般的に使用され、ベーカリー製品のやわらかさを改善し、ベーカリー製品から水分移動を遅延させ、ベーカリー製品の劣化を遅延させそして該製品に滑らかでやわらかいテクスチャを付与する。食品製造において、多くの工程において伝統的な化学的技術の代替を見出すこと及び合成化学品を置き換えることが必要不可欠である。
【0003】
焼いた製品の分野に於いて、焼いた製品のやわらかさを増し、水分移動を減少させ、保存寿命を延長する解決法を見出し、そして鮮度を改善しそして望ましい外観、味及びテクスチャを生み出す、絶え間のない必要性がある。ベーカリー製品の品質は、貯蔵中に徐々に劣化することが知られている。パンの身は柔らかさ及び弾力を失いそして硬くもろくなる。この劣化は大部分は、ベーキングの間に不定形の状態から結晶化状態へゼラチン化する澱粉の移行である、デンプンの老化に起因する。用語、劣化は、オーブンから取り出された後に起こる、焼いた製品の特性におけるそのような望ましくない変化を意味する。劣化は、製造及び消費時間の間に横たわる時間が長くなるにつれ、より深刻となる問題である。上記された問題は、パンの身の固さの増加、パンの身からの水分の蒸散、風味を失うこと及び風味の変化、並びに微生物劣化を含む。食品産業において、眼及び味覚を満足させる製品を作り出す絶え間のない努力がなされている。外観、風味及びテクスチャのような焼いた製品の官能特性は出来るだけ少ない劣化であるべきである。劣化の結果として、一般的に、外観、味及びテクスチャは、消費者に不愉快なものとなり、そしてこのことは、焼いた製品のより短い保存寿命をもたらす。
【0004】
このよく知られている問題への満足な解決は今までのところ、全く見出されていない。例えば、封止剤を用いて焼いた製品を包みその水分保持性を増加させることによりこの問題を解決する試みがなされてきた。油脂、ワックス及び単純なシロップの添加もまた試みられてきた。油脂及びワックスは封止剤として功を奏したが、望ましくない口当たり及び外観が製品に発生した。また、ワックス及び油脂は、これらは滑らかな表面に容易に接着しなかったという事実により、糖衣つやだしには適切でなかった。シロップは封止剤としても問題を解決しなかった。これらは長い保存寿命にわたり水分移動を防がず、高い水分活性を有する製品からの水分移動も十分に防がなかった。
【0005】
先行技術において、ベーカリー製品の劣化の良くない側面を減少させる方法の示唆がある。パンにおける変化は、ベーキングの間ゼラチン化した澱粉の再結晶化過程の結果として、オーブンから取り出した後速やかに始まる。欧州特許出願公開第0412807号明細書において、α−アミラーゼ又は乳化剤が、パンの身の初期の固さの減少に作用し得ることを開示している。
【0006】
酵素が焼いた製品の製造に使用されるパン生地へ添加される場合、抗劣化効果が得られ
ることが、ベーキングの実践においてよく知られている。さらに米国特許第6,197,352号明細書によると、1種以上の乳化剤が、小麦粉又はパン生地に添加され得る。乳化剤はパン生地の柔軟性を改善しそして得られたパンの堅さ及びその貯蔵安定性に影響を与え得る。乳化剤は、油/水/空気接触面の間の表面張力を低下させる効果を有し、乳化安定性を高める。
【0007】
ベタインは、従来使用された材料の組み合わせの代替として、水分移動を遅延させ及び官能特性を改善する製品を提供するために焼いた製品へ添加されてきた。ベタイン(また、トリメチルグリシン、TMG、グリシンベタイン、オキシノイリン又は1−カルボキシ−N,N,N−トリメチルメタナミニウム ヒドロキシド(化学式C511NO2)としても知られる)は、テンサイ、ホウレンソウ及びブロッコリーのような、植物中に見出される天然物である。ベタインは、非常に吸湿性のある有機浸透圧保護剤である。それはまた、水分活性を低下させ、ゆえに保存寿命を延長させ、栄養面での利点を加えそして風味を改善するため、食品における保湿剤として作用する。それは、無水ベタイン(結晶水を含まない)又はベタイン一水和物として入手し得る。ベタインはまた、その正に帯電した窒素原子と負に帯電した酸素原子の間で分子内塩を形成する。ベタインサプリメントは、テンサイ加工の副生成物として製造される。これらは、粉末、タブレット及びカプセルの形態で得られる。
【0008】
1960年まで、ベタインは主に、胃における酸濃度を増加させるために医薬 製剤において主に用いられた。今日では、それは、体重増加を促進するために 動物の飼料に使用されてきた。ベタインはまた、非刺激性でありそして保湿特 性を有するため、化粧品において用いられる。食品産業においては、使用領域 は、食品保存料、ダイエットサプリメント及び水分補給飲料である。
ベタインは、心臓血管系の健康における重要な役割を果たす栄養素である。ベタインは、その他の栄養素とともに、血管へ有害となり得る、それにより心臓疾患、発作、及び末梢血管障害(脚及び足への血流を減少させる)の進行に寄与する天然型アミノ酸、であるホモシステインの潜在的毒性レベルを低下させるのに役立つことが研究により示唆された。哺乳類の体内において、ベタインはビタミンと類似した機能を有する。その作用機構は、葉酸及びビタミンB12の機構と密接に関係があり、ホモシステインが分解され、そしてこの物質の毒性レベルを血流において低下させる。ベタインは、肝臓、腎臓、睾丸、脾臓、膵臓及び心臓中に存在し、心臓発作及び肝臓における脂肪沈着のような重篤な健康状態のリスクを低下させる。ベタインの誘導体であるジメチルグリシンは、免疫応答を増強させる。ベタインもまた、非常に浸透性の尿に対し腎細胞を保護するのに主要な役割を果たす。
【0009】
ベタインは天然物であり、ゆえに食品産業におけるその使用は非常に関心のあるものである。米国特許第6,217,930号の発明者らは、ベタインが、食品へ通常添加されるその他の成分の組み合わせ、即ち、乳化剤、増粘剤、酵素、繊維及び果物、により提供される目的を単独で達成することを見出した。その得られた利点は、焼いた製品からの水分移動を遅延させる能力、焼いた製品の劣化を遅延させる能力及び焼いた製品に対するよりなめらかでよりやわらかなテクスチャの付与を含む。さらに、ベタインはまた、粘度を減少させることにより焼いた製品の製造における混合及び処理を容易にすることによって、焼いた製品の製造を容易にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、酵素及びベタインの組み合わせが、酵素単独又はベタイン単独の使用により得られたものよりも多い利点をもたらす改善されたベーカリー製品に関する。本発明の試
験において、酵素と組み合わせたベタインは、それらの別々の影響力の和よりも、抗劣化特性を改善することに対しより大きな影響力を有することが見出された。この相乗効果は驚くべきものであった。本発明による組み合わせは、該組み合わせの単独成分よりも、パンの柔らかさを増加させることにおいて、そして劣化を減少させることにおいてより良好であった。ベタインは、焼かれた製品において酵素及び乳化剤を代替し得ることが既に知られていた。しかし本発明の驚くべき結果は、ベタインは、ベーカリー製品において酵素と組み合わせた場合、ベーカリー製品の鮮度及びやわらかさに、更に大きな好ましい効果さえも示すことである。本発明の実施態様は、相乗的に有効量においてさらに乳化剤を含む上記の焼き製品を対象とする。この組み合わせは、酵素及び乳化剤のみを用いた同様のベーカリー製品と比較して、やわらかさ及び有効期限における大きな改善を示した。
【0019】
本発明の実施態様は、小麦粉及び水並びに酵素及びベタインを含むベーカリー製品を対象とし、酵素及びベタインは相乗効果を有しそして焼いた場合に酵素及び乳化剤のみを用いた従来のベーカリー製品と比較して、該ベーカリー製品のやわらかさを増し、ベーカリー製品の保存寿命を有意に改善し、劣化を遅れさせ及び鮮度を保持し得る。
【0020】
好ましい実施態様は、ベタイン、酵素及び乳化剤の組み合わせに関し、該組み合わせにおいて、それぞれの成分は、焼いた場合に、酵素及び乳化剤のみを用いた従来のベーカリー製品と比較して、ベーカリー製品のやわらかさを更に増加させ、保存寿命を改善しそして有意に劣化を防止しそして該ベーカリ製品の鮮度を保持するのに相乗的な有効量において存在する。本発明によれば、焼いたベーカリー製品のやわらかさは、酵素及び乳化剤のみを用いた同様のベーカリー製品と比較して5乃至50%増加し得る。
如何なる理論にも束縛されることなしに、ベタイン及び酵素は、ベーカリー製品の保存中にパンの身が固まる速さを遅くすると考えられている。また、それらは、ベーキング中及びベーキング後の結晶化過程を選択的に変化させると考えられている。
【0021】
好ましい実施態様において、ベタインは、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.01質量%乃至約5.0質量%の量でベーカリー製品中に存在する。より好ましくは、ベタインは、0.1質量%乃至約0.5質量%、最も好ましくは約0.1質量%乃至約0.2質量%の範囲の量で存在する。
【0022】
好ましい実施態様において、前記酵素が、小麦粉1kgあたり約0.01乃至約20mgの酵素タンパクの範囲の量で焼いた製品中に存在する。
【0023】
好ましい実施態様において、前記乳化剤が、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.01乃至約2.0質量%の量で焼いた製品中に存在する。
【0024】
ベタイン及び酵素、そして所望により乳化剤は、好ましくはベーキング時に単に添加されるためにベーキング材料として提供される。そのようなベーキング材料において、小麦粉1kg当りのベタインの量は、0.1乃至50gであり、そしてベーキングにおいて用いられる小麦粉1kg当りの酵素タンパクの量は0.01乃至20mgである。乳化剤が含まれる場合、小麦粉1kgあたりの量は、0.1乃至20gである。
【0025】
ここで用いられる用語ベタインは、化合物であるトリメチルグリシン及びその塩を指す。
【0026】
ここで用いられる用語酵素は、小麦粉を焼くベーカリー製品において使用される酵素を指す。本発明において有用な典型的な酵素は、炭水化物分解酵素、タンパク質分解酵素及び脂質分解酵素である。抗−劣化酵素の例は、endo−α−アミラーゼ、exo−α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼ、のような、種々の耐熱性を有
する細菌、穀物、真菌由来のアミラーゼ、並びに、プルラナーゼ(pullunalase)、グリコシルトランスフェラーゼ、アミログルコシダーゼ、1,4−α−グルカン分枝酵素、4−α−グルカノトランスフェラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、アシルトランスフェラーゼ、ペクチン酸リアーゼ、キシラナーゼ、キシログルカンエンドトランスグルコシダーゼ、ペントサナーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、α−グルコシダーゼ及びその組み合わせを含むがこれに限定されない。
【0027】
ここで用いられる用語乳化剤は、ベーキングにおいて使用される乳化剤を指す。典型的な乳化剤は、グリセロールモノステアレート、エトキシ化された、コハク酸化された、アセチル化された又はラクチル化されたモノグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウム、レシチン、リン脂質、ポリオキシエチレンステアレート、ポリソルベート、プロピレングリコールモノエステル、ポリグリセロールエステル、脂肪酸のエステル及びモノグリセリドのエステル、及びその混合物を含む種々の脂肪酸組成物のモノ−及びジグリセリドである。
【0028】
用語“ベーカリー製品”は種々の製品を指す。こここで用いられるように、米国政府規制21 C.F.R.Sec.170.3において定義された通りに使用され、即ち、焼いた製品、及び全てのインスタント及び焼くだけで食べられる製品を含む、ベーキングミックス、小麦粉、及び食べる前に作ることを必要とするミックスという意味で使用される。ベーカリー製品の材料は対象となる製品に基づいて変化する。本発明のベーカリー製品は、少なくとも以下の材料、即ち、水、小麦粉、酵素及びベタインを含む。ベーカリー製品はまた、乳化剤を含み得る。本発明のベーカリー製品は典型的にはまた、当業者によく知られた甘味料及び油脂及び様々な天然及び人工香料及び着色剤を含むであろう。その他の栄養素、防腐剤、酸化防止剤及び充填物又は酵母を含むその他の材料もまた存在し得る。ベーカリー製品は、完全に焼かれるか又は後に最終の焼きのために短期間の追加時間が必要とされる半焼き状態におかれるかのどちらかであり得る。ベーカリー製品はまた、まだ焼かれていない状態においてさらなる使用まで置かれ得る。生の製品を保存するために冷凍が使用され得る。
【0029】
用語“焼いた製品(baked product)”は、オーブン中で熱により調理された製品を指す。
【0030】
用語“テクスチャ特性”は、焼かれた場合のベーカリー製品の物理学的特性を指す。本発明に関して検討された重要なテクスチャ特性は、やわらかさ、まとまり及び弾力性である。これらは、さらに劣化に加えて、貯蔵中のベーカリー製品の物理学的特性に影響する。テクスチャ特性全体はしばしば保存寿命と呼ばれる。
【0031】
ここで用いられる用語、やわらかさは、圧力に対して硬くないベーカリー製品を指す。
【0032】
ここで用いられる用語、劣化は、オーブンから出した後に起こるベーカリー製品の特性における望ましくない変化を指す。ベーカリー製品の品質は、貯蔵中に徐々に悪化することが知られている。パンの身は柔らかさ及び弾力を失いそして硬くそしてもろくなる。
【0033】
ここで用いられる用語、保存寿命は、ベーカリー製品が劣化せずに持続するであろう時間の長さを指す。
【0034】
ここで用いられる用語、鮮度は、まだ劣化して(staled)いないか、劣化して(deteriorated)いない場合のベーカリー製品の良好な特性を指す。
【0035】
本発明は、主にソフトなベーカリー製品に関する。前記ベーカリー製品は典型的には0
.85以上のAwを有する。Awは、当業者に良く知られる、水分活性を指す。ソフトな焼いた製品の群は、パン、ケーキ、ドーナッツ、ブラウニー、ワッフル、マフィン、ロール、ベーグル、シュトルーデル、ペストリー、クロワッサン、ピザ、ロールパン、パンケーキ、カップケーキ、焼いた栄養バー、ソフトクッキー、クラッカーなどを含むが、これらに限定されない。好ましいベーカリー製品は焼いたパン製品である。
【0036】
ここで用いられる用語、パン生地は、混合物はベーカリー製品を製造するための原料となる物である、小麦粉、水及びその他の材料の、まだ焼かれていない混合物を指す。
【0037】
ここで用いられる用語、小麦粉は、細粉又は粗引きのどちらかであり得る、穀物、特に小麦の穀粉ふるいにかけそして製粉することにより製造される、粉末を指す。
【0038】
本発明は以下の実施例によりさらに詳述されるが、該実施例は決して本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
以下の材料を含む、焼いた製品を、順位付け試験のために製造した。
材料 質量%
スポンジ:
中位の全粒小麦粉 60.0
小麦バイタルグルテン(vital wheat gluten) 8.0
パノダン(PANODAN)(登録商標)205K 0.25
インスタントイースト 1.6
水 50.0
グリンドアミル(GRINDAMYL)(登録商標)
マックスライフ(MAX−LIFE)U1045 20mg/kg

パン生地:
中位の全粒小麦粉 40.0
食塩 2.2
プロピオン酸カルシウム 0.13
蜂蜜 11.0
糖蜜 3.0
インスタントイースト 0.75
ディモダン(DIMODAN)(登録商標)PH300 0.375
高フルクトースコーンシロップ 4.0
植物油 2.7
アゾジカーボンアミド 25ppm
アスコルビン酸 120ppm
水 15.0
ベタフィン(Betafin)BF20 表Iによる可変量
【0040】
ベーキングはスポンジを作ることにより開始した。材料をボウルの中に入れ、そしてドー・フックを用いて1分間低速において混合し、次に、3分間中速において攪拌した。パン生地を30℃に設定したキャビネット中で3時間発酵させた。次に、追加の材料をボウルへ加えそしてパン生地を1分間低速において混合し、そして8分間中速において混合した。得られたパン生地を5分間休ませ、次に小片に分けそして丸めた。パン生地をここでパン成形機を用いて円筒形に成形し、油を塗った鍋におき、そして40℃、相対湿度85
%で60分間発酵させた(試験)。パン生地をオーブン中に置きそして200℃で24分間焼いた。
【0041】
パノダン(登録商標)205Kは、ダニスコ エイ/エス(Danisco A/S)より提供された、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステルである。ディモダン PH300は、ダニスコ エイ/エスより入手可能な、トリグリセリドとグリセロールの間のエステル化より製造された蒸留モノ−グリセリドである。グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE U1045は、ダニスコ エイ/エスより入手可能な、ベーカリー酵素コンビネーションである。ベタフィン(Betafin)BF20は、ダニスコ カンパニー フィンフィーズ フィンランド オイ(Danisco company Finnfeeds Finland Oy)より入手可能な、テンサイ由来のベタイン製品である。
【0042】
試験において、パネリストに3つのサンプルを、甘味、苦味、かみごたえ、鮮度及び全体的な好みについての順に順位付けするように依頼した。χ二乗検定を、全体の順位付けの統計的差異を決定するために行った。確率水準0.05における有意性のためには、検定のχ二乗は5.99を上回ることが必要とされる。
【0043】
結果を表1に示す。結果より、鮮度の問題のみが、この確率水準において有意であることを示した。全体的な順位付けテストは0.1%の水準において有意であることを示した。
【0044】
より高レベルのベタイン量(0.4%ベタフィンBF20)は、対照及びより低レベルのベタイン(0.2%)の両方と統計的差異があることが示され、そして鮮度に関して、それらよりも高い順位であった。全体的な好みに関して、ベタインの高レベル及び低レベル(0.2%及び0.4%)の間の違いは低い有意性を示し、そして0.4%ベタインは全体的な順位付けにおいてよりよい順位であった。
【0045】
実施例2
以下の材料を含む、焼いた製品を製造した。
材料 質量%
スポンジ:
精白製パン用小麦粉 75.0
油脂 2.0
ディモダン(登録商標)PH300 表IIによる0又は0.5
インスタントイースト 1.3
水 43.0
グリンドアミル(登録商標)マックスライフ(MAX−LIFE)U1045
表IIによる0又は20mg/kg

パン生地:
精白製パン用小麦粉 25.0
食塩 2.0
プロピオン酸カルシウム 0.25
インスタントイースト 0.7
高フルクトースコーンシロップ 12.0
アスコルビン酸 30ppm
水 11.1
ベタイン 表IIによる可変量
【0046】
ベーキングはスポンジを作ることにより開始した。材料をボウルの中に入れ、そしてドー・フックを用いて1分間低速において混合し、次に3分間中速において攪拌した。パン生地を30℃に設定したキャビネット中で3時間発酵させた。追加の材料をここでボウルへ加えそしてパン生地を1分間低速において混合し、そして8分間中速において混合した。得られたパン生地を5分間休ませ、次に小片に分けそして丸めた。パン生地をここでパン成形機を用いて円筒形に成形し、油を塗った鍋におき、そして40℃、相対湿度85%で60分間発酵させた(試験)。パン生地をオーブン中に置きそして200℃で22分間焼いた。
【0047】
酵素(グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE U1045)、乳化剤(ディモダン(登録商標)PH300)及びベタイン(ベタフィンBF20)(小麦粉の質量から計算して、0.1%及び0.2%)の組み合わせを、ベタインのみ添加したサンプル(小麦粉の質量から計算して、0.1乃至0.5%、酵素も乳化剤も添加しなかったもの)並びに比較サンプル(酵素、乳化剤もベタインも添加せず)との比較において試験した。酵素と乳化剤とを含みベタイン含まないものと、又はベタインのみ単独で添加したものと比較した場合、保存寿命の試験の間中、酵素、乳化剤及びベタインの組み合わせは、有意に、よりやわらかなパン(約10%)をもたらした。上記のテストの数値を表IIに示す。
【0048】
ディモダン(登録商標)PH300は、ダニスコ エイエスより入手可能な、蒸留モノ−グリセリド乳化剤である。グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE U1045は、ダニスコ エイ/エスより入手可能な、ベーカリー酵素コンビネーションである。ベタフィンBF20は、ダニスコ カンパニー フィンフィーズ フィンランド オイより入手可能な、テンサイ由来のベタイン製品である。
【0049】
1日目において、3つの成分の組み合わせは、対照サンプルと比較してパンのやわらかさが約35%良好な結果を得、そして酵素プラス乳化剤は、対照と比較してパンの柔らかさが19%良好な結果を得た。単純にベタインを添加した(0.4%)ものは、1日目において対照サンプルと比較して約11%良好な結果を得た。
【0050】
11日目において、0.1%及び0.3%のベタインのみ変化させたものは、有意に対照サンプルよりも固かったが、0.2%、0.4%及び0.5%のベタインのみのサンプルは、対照サンプルと有意な差はなかった。0.1乃至0.5%の量におけるベタインのみのものは、パン製品の保存寿命を延長するとは思われなかった。11日目において、ベタイン、酵素及び乳化剤の組み合わせを用いたパンのやわらかさは、対照サンプルと比較して約50乃至52%良好であった。酵素と乳化剤との組み合わせは、対照サンプルよりも44%やわらかかった。
【0051】
パンをやわらかくすることにおいて、そしてまた、パン製品の保存寿命の延長において、酵素、乳化剤及びベタインの間に相乗効果が存在することが明らかである。試験結果は、酵素プラス乳化剤の先行技術の方法と比較して、1日目におけるベーキング直後には約13%よりやわらかなパンを、そして11日目にはや約5%良好なやわらかさを示す。
【0052】
実施例3
以下の材料を含む、焼いた製品を製造した。
材料 質量%
スポンジ:
精白製パン用小麦粉 75.0
油脂 2.0
ディモダン(登録商標)PH300 表IIIによる0又は0.5
インスタントイースト 1.3
水 43.0
グリンドアミル(登録商標)マックスライフ(MAX−LIFE)U1045
表IIIによる0又は20mg/kg

パン生地:
精白製パン用小麦粉 25.0
食塩 2.0
プロピオン酸カルシウム 0.25
インスタントイースト 0.7
高フルクトースコーンシロップ 12.0
アスコルビン酸 30ppm
水 11.1
ベタイン 表IIIによる可変量
【0053】
焼いた製品を実施例2と同様に製造した、そしてグリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE U1045、ディモダン(登録商標)PH300及びベタフィンBF20の可変量を表IIIに示す。
【0054】
ディモダン(登録商標)PH300は、ダニスコ エイエスより入手可能な、蒸留モノ−グリセリド乳化剤である。GERINDAMYL(登録商標)MAX−LIFE U1045は、ダニスコ エイ/エスより入手可能な、ベーカリー酵素コンビネーションである。ベタフィンBF20は、ダニスコ カンパニー フィンフィーズ フィンランド オイより入手可能な、テンサイ由来のベタイン製品である。
【0055】
酵素(グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE U1045)とベタイン(ベタフィンBF20)の組み合わせ並びに乳化剤(ディモダン(登録商標) PH300)とベタイン(ベタフィンBF20)の組み合わせを、ベタインを添加しない酵素又は乳化剤のみの対照サンプルとの比較において試験した。ベタインを添加しない酵素又はベタインを添加した乳化剤又は乳化剤単独のものと比較した場合、保存寿命の試験の間中、酵素とベタインの組み合わせは、有意によりやわらかなパン(約5乃至25%)をもたらした。
【0056】
1日目において、酵素とベタイン(0.2%)組み合わせは、乳化剤のみ添加したサンプルと比較してパンの柔らかさが約13%良好な結果を得、そして、乳化剤プラスベタイン添加サンプル及び酵素のみ添加したサンプルと比較してパンの柔らかさが約7%良好な結果を得た。
【0057】
9日目において、酵素とベタイン(0.2%)の組み合わせは、乳化剤のみ添加したサンプルと比較してパンの柔らかさが約24%良好な結果、乳化剤プラスベタイン添加サンプルと比較してパンの柔らかさが約19%良好な結果、酵素のみ添加したサンプルと比較してパンの柔らかさが約13%良好な結果を得た。パン生地にベタインとともに又はベタインなしで添加した乳化剤については、パンのやわらかさに関して有意な効果を示さなかった。
【0058】
表I
【表1】

【0059】
表II
【表2】

【0060】
表III
【表3】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉及び水を含む改善されたベーカリー製品であって、該ベーカリー製品はさらに、焼いた場合に該ベーカリー製品のテクスチャ特性を改善する有効量において、ベタイン及び酵素の組み合わせを含み、前記改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加及びその組み合わせからなる群より選ばれる、改善されたベーカリー製品。
【請求項2】
前記ベタイン及び前記酵素は、焼いた場合に該ベーカリー製品の該特性の少なくとも1つを改善する相乗効果をもたらす、請求項1に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項3】
前記ベーカリー製品が、焼いた場合に該ベーカリー製品の該特性の少なくとも1つをさらに改善するのに相乗的に有効量の乳化剤をさらに含む、請求項1に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項4】
ベタインが、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.01質量%乃至約5.0質量%の範囲の量で存在する、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項5】
ベタインが、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.1質量%乃至約0.5質量%の範囲の量で存在する、請求項4に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項6】
ベタインが、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.1質量%乃至約0.2質量%の範囲の量で存在する、請求項5に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項7】
前記酵素が、炭水化物分解酵素、タンパク質分解酵素及び脂質分解酵素からなる群より選ばれる、請求項1に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項8】
前記酵素が、アミラーゼを含む、請求項7に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項9】
前記酵素が、小麦粉1kgあたり約0.01乃至約20mgの酵素タンパクの範囲の量で存在する、請求項7に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項10】
前記ベーカリー製品が、0.85以上のAwを有するソフトベーカリー製品である、請
求項1に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項11】
前記ベーカリー製品が、パン、ケーキ、ドーナッツ、ブラウニー、ワッフル、マフィン、ロール、ベーグル、シュトルーデル、ペストリー、クロワッサン、ピザ、ロールパン、パンケーキ、カップケーキ、焼いた栄養バー、ソフトクッキー及びクラッカーからなる群より選ばれる、請求項10に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項12】
前記ベーカリー製品がパン製品である、請求項11に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項13】
前記ベーカリー製品が焼いた、半焼き又は焼いていないベーカリー製品である、請求項1に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項14】
前記焼いたベーカリー製品のやわらかさが、酵素及び乳化剤のみを用いたベーカリー製品と比較して5%乃至50%増加されている、請求項3に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項15】
前記焼いたベーカリー製品の劣化が、酵素及び乳化剤のみを用いた同様のベーカリー製品と比較して有意に遅延している、請求項3に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項16】
前記焼いたベーカリー製品の鮮度が、酵素及び乳化剤のみを用いた同様のベーカリー製品と比較して有意に保持されている、請求項3に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項17】
前記焼いたベーカリー製品の保存寿命が、酵素及び乳化剤のみを用いた同様のベーカリー製品と比較して有意に増加している、請求項3に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項18】
乳化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、グリセロールモノステアレート、エトキシ化された、コハク酸化された、アセチル化された又はラクチル化されたモノグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウム、レシチン、リン脂質、ポリオキシエチレンステアレート、ポリソルベート、プロピレングリコールモノエステル、ポリグリセロールエステル、脂肪酸のエステル及びモノグリセリドのエステル、及びその混合物から成る群より選ばれる、請求項3に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項19】
前記乳化剤が、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.01質量%乃至約2.0質量%の範囲の量で存在する、請求項3に記載の改善されたベーカリー製品。
【請求項20】
小麦粉、水、酵素及びベタイン、そして所望による更なる材料を配合し、そして得られた混合物を加工してベーカリー製品を得る工程を含むベーカリー製品の特性を改善する方法であって、該ベタイン及び酵素は、焼いた場合に該ベーカリー製品の特性を改善する有効量において提供され、該改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加及びその組み合わせからなる群より選ばれる、方法。
【請求項21】
前記加工が、パン生地を形成すること、半焼きすること、及び焼くことから選ばれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法がさらに、乳化剤を、ベタイン、酵素及び乳化剤の組み合わせが、焼いた場合に該ベーカリー製品の該特性の少なくとも1つを相乗的に改善させるのに十分な量において前記混合物中に焼く前に含めることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ベタインが、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.01質量%乃至約5.0質量%の範囲の量で供給される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ベタインが、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.1質量%乃至約0.2質量%の範囲の量で供給される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記酵素が、小麦粉1kgあたり約0.01乃至約20mgの酵素タンパクの範囲の量で供給される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記酵素が、炭水化物分解酵素、タンパク質分解酵素及び脂質分解酵素からなる群より選ばれる、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記乳化剤が、小麦粉の質量に基づいて計算して、約0.01質量%乃至約2.0質量%の範囲の量で供給される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
乳化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、グリセロールモノステアレート、エトキシ化された、コハク酸化された、アセチル化された又はラクチル化されたモノグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウム、レシチン、リン脂質、ポリオキシエチレンステアレート、
ポリソルベート、プロピレングリコールモノエステル、ポリグリセロールエステル、脂肪酸のエステル及びモノグリセリドのエステル、及びその混合物から成る群より選ばれる、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
本質的に、酵素及びベタイン、及び所望により担体、の組み合わせから成るベーキング材料であって、該酵素及びベタインはいずれも、酵素のみ又はベタインのみのどちらかを用い製造されたベーカリー製品によりもたらされる特性と比較して、焼いた場合にベーカリー製品のテクスチャ特性を改善し得る有効量において供給され、該改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加及びその組み合わせからなる群より選ばれる、ベーキング材料。
【請求項30】
酵素の量が、該ベーキングに使用される小麦粉1kg当り0.01乃至20mgであり、そしてベタインの量が、小麦粉1kg当り0.1乃至50gである、請求項28に記載のベーキング材料。
【請求項31】
本質的にベタイン、酵素及び乳化剤、及び所望により担体、の組み合わせからなるベーキング材料であって、
該組み合わせが、該ベタインなしで該酵素及び乳化剤の同様の量を用いて生産されたベーカリー製品によりもたらされる特性と比較して、焼いた場合のベーカリー製品のテクスチャ特性を改善しえる相乗的に有効量において含み、該改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加及びその組み合わせからなる群より選ばれる、ベーキング材料。
【請求項32】
ベタインの量が、該ベーキングに使用される小麦粉1kg当り0.1乃至50gであり、そして酵素の量が、小麦粉1kgに対し0.01乃至20mgであり、そして乳化剤の量が小麦粉1kgに対し0.1乃至20gである、請求項30に記載のベーキング材料。
【請求項33】
ベーカリー製品の製造においてベタインを使用する方法であって、ベタインが、焼いた場合の該ベーカリー製品のテクスチャ特性を改善するために酵素と組み合わせて焼く工程において使用され、該改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加及びその組み合わせからなる群より選ばれるものである、ベーキング材料。
【請求項34】
焼いた場合のベーカリー製品のテクスチャ特性を改善するためのベタインの使用。
【請求項35】
前記改善された特性は、やわらかさの増加、劣化の減少、保存寿命の増加及びその組み合わせからなる群より選ばれる、請求項34に記載の使用。

【公表番号】特表2009−539393(P2009−539393A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514818(P2009−514818)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055998
【国際公開番号】WO2007/144433
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(504273748)
【Fターム(参考)】