説明

改善された増殖能を有する細胞およびその評価方法

【課題】急性期の疾患の治療に対応し得るよう、迅速かつ大量に増殖し得る細胞を供給する方法を提供する。
【解決手段】生体組織の修復および再生に利用可能な増殖能を有する細胞を提供する。該細胞は、同種血清存在下で培養した際の増殖率が、異種血清存在下で培養した際の増殖率より高い、骨髄幹細胞由来のものであって、特定の遺伝子の少なくとも1つの発現量が低減、あるいは別の特定の遺伝子の少なくとも1つの発現量が増加している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体外で迅速かつ大量に増殖し得る細胞およびその利用に関するものであり、より詳細には、生体組織の修復および再生に利用可能な増殖能を有する細胞およびその評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、損傷を受けた神経組織の機能回復は非常に困難と考えられてきた。しかし、近年になって、成熟脳において自己増殖能と多分化能を保持する神経幹細胞が発見され、その後、中枢神経系に関する再生医療の研究が精力的に行われている。
【0003】
幹細胞を用いる再生医療として実用化に最も近いと考えられているのは、損傷部位に細胞を補充する細胞療法である。細胞療法において、レシピエントの損傷された組織細胞を補充するために、ドナーから提供される細胞(以下、ドナー細胞と称する。)は生体外で培養されて、増殖および/または分化させた後に適切な形態にてレシピエントの生体内へ投与される。
【0004】
脳神経疾患に関しては、神経系細胞への分化能を有する細胞を組織から抽出し、培養後のドナー細胞を個体へ移植することが、虚血モデル、外傷モデルなどにおいて試みられている。例えば、本発明者らは、神経細胞へ分化し得る細胞を含む細胞画分が骨髄細胞中に存在することを既に見出しており、さらに、ラット脊髄脱髄モデルへこれらの細胞を移植すると脱髄された神経軸索が再有髄化することを確認している(特許文献1参照)。
【0005】
ドナー細胞は、疾患の治療、特に、急性期の症状を有する疾患(例えば、脳梗塞による虚血脳疾患など)の治療に用いられる場合、迅速かつ大量に増殖することが必要である。そのため、生体外でドナー細胞を増殖する際に、細胞の生存率を向上させ、増殖率を高めるように様々な試みがなされている。例えば、特許文献5には、細胞増殖率をより高めるために基底膜細胞外基質上で間葉系幹細胞を培養する方法が開示されている。
【0006】
増殖促進物質として血清が一般的に使用されている。幹細胞の培養においては、異種動物血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)など)を10〜20%程度添加した培地が広く使用されている。ヒト血清を使用する試みもなされているが、倫理的観点から胎児血清の使用は困難であるため、成人ヒト血清が使用されている(例えば、特許文献6〜8を参照のこと)。
【0007】
血清を添加しない培地もまた開発されている。例えば、特許文献2には、白血球阻害因子が細胞増殖の速度を増加させることが開示されており、特許文献3には、造血細胞を増殖させるための組換えヒト血清アルブミンを含む培地が開示されている。同様の増殖促進因子を用いる技術として、特許文献4には、ビタミンCおよび塩基性繊維芽細胞増殖因子を含む培地中で間葉系幹細胞を培養する方法が開示されており、他の増殖因子(例えば、上皮細胞増殖因子、神経細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、トロンボポエチン、インターロイキンなど)を用いる技術もまた知られている。ただし、血清添加培地と同等の増殖効果を示す無血清培養技術は未だ知られていない。
【特許文献1】WO02/00849(平成14(2002)年1月3日国際公開)
【特許文献2】特表2002−518990号公表(平成14年7月2日公表)
【特許文献3】特開2005−204539号公報(平成17年8月4日公開)
【特許文献4】特開2006−136281号公報(平成18年6月1日公開)
【特許文献5】特開2003−52360号公報(平成15年2月25日公開)
【特許文献6】特開平10−179148号公報(平成10年7月7日公開)
【特許文献7】特開2003−235548号公報(平成15年8月26日公開)
【特許文献8】特開2006−55106号公報(平成18年3月2日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、FBSのような動物血清はロットによる組成の差が大きいだけでなく、ウイルス、プリオンなどの病原体混入の危険性を有しており、ヒトへの適用は必ずしも好ましくない。従って、成人ヒト血清を用いることができれば、さらに、ドナー細胞を採取した個体と同一の個体の血清を用いることが可能であれば、適合性および安全性の観点から非常に好ましいといえる。すなわち、安全性の問題も然ることながら、他種血清や無血清の培地を使用すると、適合性の問題から細胞に不要な選択がかかり、増殖後の細胞の形質が当初のものから変化してしまっている可能性が強い。しかし、血清として成人ヒトを用いた場合、増殖促進活性が著しく劣るとされ、治療目的の幹細胞等の培養においても、FBSが代替手段として常套的に使用されているのが現状である。すなわち、成人ヒト血清単独では十分な細胞増殖促進活性を示さないため、一定の増殖効果を得るためには、さらにFBSを添加するか(特許文献6)または他の増殖因子を添加する(特許文献7)ことが不可欠とされている。しかしながら、増殖因子などの添加によりFBSと同程度の増殖効果が得られた場合であっても、上述したような急性期の疾患の治療に対応し得る、迅速かつ大量に増殖し得るドナー細胞は得られていない。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体組織の修復および再生に利用可能な増殖能を有する細胞を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはすでに、生体から採取された試料中の細胞の増殖率を飛躍的に向上させる技術(細胞増殖方法)を完成させている(特願2007−267211(未公開))。この技術をヒト細胞に適用すれば、細胞が由来する動物と同種の動物個体の血清(同種血清)である成人ヒト血清を添加した培地を用いて細胞培養を行った場合であっても、細胞が由来する動物と異種の動物個体の血清(異種血清)であるFBSを添加した培地を用いた細胞培養よりも高い増殖率が得られるという結果を得ている。この方法を用いることにより成人ヒト血清で培養した幹細胞は、脳梗塞において極めて良好な修復活性を有していることも示された。すなわち、上記技術は、細胞治療等に好適な新たな形質を有する細胞の製造方法であり得る。本発明者らは、このような細胞を特徴付けることを試み、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に係る哺乳動物細胞は、改善された増殖能を有していることを特徴としている。本発明に係る哺乳動物細胞は、同種血清存在下における増殖率が異種血清存在下における増殖率より高く、生体組織の修復および再生にも適している。本発明に係る哺乳動物細胞は、表2および6に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が低減している。また、本発明に係る哺乳動物細胞は、表3および7に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が増加している。本発明に係る哺乳動物細胞は、表2および6に記載の遺伝子全ての発現量が低減していても、表3および7に記載の遺伝子全ての発現量が増加していてもよい。さらに、本発明に係る哺乳動物細胞は、幹細胞に由来することが好ましく、この幹細胞は骨髄に由来することがより好ましく、ヒト由来であることがより好ましい。
【0012】
本発明に係る評価方法は、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であるか否かを評価する方法であって、評価すべき細胞において表2〜3および6〜7に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定する工程を包含することを特徴としている。本発明に係る評価方法は、上記発現量を、評価すべき細胞と同じ供給源から調製されかつ異種血清を用いて培養されたコントロール細胞における目的遺伝子の発現量と比較する工程をさらに包含してもよい。また、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞の同種血清存在下における増殖率と異種血清存在下における増殖率とを比較する工程をさらに包含してもよい。この場合、評価すべき細胞はヒト細胞であることが好ましく、同種血清はヒト自家血清であることが好ましく、異種血清はFBSであることが好ましい。また、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞において表4〜5に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定する工程をさらに包含してもよい。
【0013】
本発明に係る製造方法は、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞を生体外で製造するための方法であって、生体から採取された試料中の細胞を、抗凝固剤と実質的に接触させることなく培地中で培養する工程を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る細胞は、著しく改善された増殖率を有しているという、これまでの常識からは全く予測し得ない効果を奏する。その結果、本発明に係る細胞は、生体外で迅速かつ大量に増殖し得るので、生体組織の修復および再生に利用可能であり、特に、急性期の症状を有する疾患の治療において要求される迅速かつ大量に増殖し得る細胞として利用され得る。また、本発明に係る細胞は、細胞に最適な培養条件で増殖させているため、生体組織の修復および再生に好適な性状を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔1.細胞〕
本発明は、改善された増殖能に有している細胞を提供する。より詳細には、本発明は、同種血清存在下における増殖率が異種血清存在下における増殖率より高い細胞を提供する。なお、本発明に係る細胞は、生体組織の修復および再生に利用されることが好ましい哺乳動物細胞である。
【0016】
本発明に係る細胞は、特定の遺伝子の発現量が、同種血清を用いた培養時に異種血清を用いた培養時と比較して低減していることを特徴としており、より詳細には、表2に記載の遺伝子(遺伝子番号3〜22)および表6に記載の遺伝子(遺伝子番号81〜222)の少なくとも1つの発現量が低減している。より好ましくは、本発明に係る細胞において、表2および6に記載の遺伝子全ての発現量が低減している。表2および6には、従来取得され得る細胞(すなわち、異種血清(例えばFBS)を含有する培地を用いた培養法で得られる細胞)と比較して発現量が低減している遺伝子に関する情報が記載されている。すなわち、本発明に係る細胞は、同種血清を用いる培養によって、異種血清を用いて培養された培養細胞よりも表2および6に記載の遺伝子の発現量が低減している細胞といえる。
【0017】
また、本発明に係る細胞は、特定の遺伝子の発現量が、同種血清を用いた培養時に異種血清を用いた培養時と比較して増加していることを特徴としており、より詳細には、表3に記載の遺伝子(遺伝子番号23〜31)および表7に記載の遺伝子(遺伝子番号223〜287)の少なくとも1つの発現量が増加している。より好ましくは、本発明に係る細胞において、表3および7に記載の遺伝子全ての発現量が増加している。表3および7には、従来取得され得る細胞(すなわち、異種血清を含有する培地を用いた培養法で得られる細胞)と比較して発現量が増加している遺伝子に関する情報が記載されている。すなわち、本発明に係る細胞は、同種血清を用いる培養によって、異種血清を用いて培養された培養細胞よりも表3および7に記載の遺伝子の発現量が増加している細胞といえる。
【0018】
本明細書において、「発現量が低減(または増加)している」は、当該分野において周知のアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づく「Signal Log Ratio」が「−1≦」または「1≦」(すなわち、遺伝子発現量の比が2倍以上である(表6および7))、より好ましくは「−2≦」または「2≦」である(すなわち、遺伝子発現量の比が4倍以上である(表2および3))ことが意図される。本明細書において用いられる場合、「表に記載の遺伝子」は、表に記載された「Probe Set ID」によって特定される遺伝子(その遺伝子の機能を保持した変異体を含む。)が意図される。これらの遺伝子はGene Symbolで示される遺伝子に相当する。Gene Symbolは米国NCBIによって、各遺伝子に一義的に対応付けされている名称である。Probe Set IDとGene Symbolの対応の詳細についてはAFFYMETRIX 社のNetAffixデータベースに記載されており、当業者であれば容易に理解される。遺伝子について用いられる場合、「変異体」は、「遺伝子変異体」と置換可能に用いられ、(i)特定された遺伝子の塩基配列に1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるもの、(ii)特定された遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列からなるもの、あるいは(iii)特定された遺伝子の塩基配列と少なくとも80%同一な塩基配列からなるもの、のいずれかが意図され、いずれの場合も、特定された遺伝子の機能を保持しているものである。本明細書において用いられる場合、「遺伝子の機能」は「その遺伝子によってコードされるタンパク質の機能」と置換可能に用いられる。「表に記載の遺伝子」によってコードされるタンパク質は、機能が周知のタンパク質であり、その機能を確認するためのアッセイ系も当該分野においてよく知られている。よって、当業者は、当該分野の周知技術を用いることにより、上述したような遺伝子変異体を容易に作製し得かつその機能を容易に確認し得る。例えば、ハイブリダイゼーションの具体的手順および「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件については、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第3版, J. SambrookおよびD. W. Russll編, Cold Spring Harbor Laboratory, NY (2001)」(本明細書中に参考として援用される。)に記載されている方法のような周知の方法に従って行うことができる。
【0019】
また、表に記載の遺伝子の機能を保持した遺伝子変異体によってコードされるタンパク質は、表に記載の遺伝子によってコードされるタンパク質の変異体であり得る。タンパク質について用いられる場合、「変異体」は、「タンパク質変異体」と置換可能に用いられ、特定された遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるものが意図される。当業者はまた、当該分野の周知技術を用いることにより、上述したようなタンパク質変異体を容易に作製し得かつその機能を容易に確認し得る。
【0020】
本発明に係る細胞は、組織の修復および再生に利用可能な増殖能を有する細胞である。組織の修復および再生に用いられるドナー細胞としては、自家または他家の組織幹細胞もしくは体性幹細胞または胚性幹細胞が挙げられる。よって、本発明に係る細胞は、組織幹細胞、体性幹細胞または胚性幹細胞に由来する細胞であり得る。なお、倫理的な問題、感染症の危険性、または免疫抑制剤使用の必要性などを考慮すると、自家細胞、とりわけ、非侵襲的にドナー細胞を確保できる体性幹細胞(例えば、骨髄細胞)に由来する細胞であることが好ましい。
【0021】
組織幹細胞、体性幹細胞または胚性幹細胞は哺乳動物個体の組織または体液から供給され得、これらの細胞の供給源に好ましい組織としては、例えば、筋肉組織、骨組織、皮膚、リンパ系組織、脈管、消化器、および胚(ヒト胚を除く)などが挙げられ、供給源に好ましい体液としては、例えば、骨髄液、血液(末梢血もしくは臍帯血)およびリンパ液などが挙げられる。特に、修復および再生の対象が神経系組織である場合、ドナー細胞の供給源としては、例えば、骨髄、末梢血、臍帯血、胎児胚、脳などが挙げられ、修復および再生の対象が造血組織である場合、骨髄、末梢血、臍帯血、胎児胚などが挙げられる。なお、当業者は、当該分野において周知の技術を用いて、目的の細胞を容易に調製し得る。
【0022】
本発明に係る細胞は、組織の修復および再生に利用可能な細胞であるので、接着性の細胞であることが好ましく、例えば、間葉系細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、角膜幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞などの体性幹細胞、胎児幹細胞などの胚性幹細胞単核細胞(ヒト胚を除く)の他、骨芽細胞、繊維芽細胞、靱帯細胞、上皮細胞、血管内皮細胞などの細胞に由来することがより好ましい。なお、急性期の神経疾患の治療に用いることが意図される場合は、本発明に係る細胞は、幹細胞、特に間葉系幹細胞に由来することが好ましい。間葉系幹細胞とは、間葉系組織の間質細胞の中に微量に存在する多分化能および自己複製能を有する幹細胞であり、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などの結合組織細胞に分化するだけでなく、神経細胞や心筋細胞への分化能を有することが近年見出されている。なお、幹細胞は未分化な状態の方が増殖率および生体内導入後の生存率が高いので、本発明に係る細胞は幹細胞に由来する未分化な状態の細胞であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る細胞は、ヒト由来の細胞であることが好ましいが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯類、チンパンジーなどの霊長類、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの偶蹄目、ウマなどの奇蹄目、ウサギ、イヌ、ネコなど)に由来する細胞であってもよい。
【0024】
本明細書において用いられる場合、同種血清は、細胞の由来する個体の血清(自己血清)であることが好ましいが、採取が困難である場合は同種の他個体の血清(他家血清)でもよい。本発明に係る細胞がヒト由来の細胞である場合は成人ヒト自己血清であることが好ましい。
【0025】
上述したように、本発明に係る細胞は、同種血清存在下における増殖率が異種血清存在下における増殖率より高い細胞である。本発明に係る細胞の培養に用いられる培地としては、細胞の種類、所望の分化の方向およびレベル、ならびに必要とされる増殖率などに応じて、当該分野において公知の種々の標準培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、NPBM、αMEMなど)から適宜選択されるが、DMEMが好適に用いられる。
【0026】
なお、表4には、DMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子であって、αMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子と比較して発現量が低減している遺伝子(遺伝子番号32〜50)に関する情報が記載されている。また、表5には、DMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子であって、αMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子と比較して発現量が増加している遺伝子(遺伝子番号51〜80)に関する情報が記載されている。本発明に係る細胞は、表2および6に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が低減している上に、用いられる培地の種類に応じて、表4に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が低減していても増加していてもよく、あるいは表5に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が増加していても低減していてもよい。また、本発明に係る細胞は、表3および7に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が増加している上に、用いられる培地の種類に応じて、表4に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が低減していても増加していてもよく、あるいは表5に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が増加していても低減していてもよい。
【0027】
〔2.製造方法〕
本発明は、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞を生体外で製造するための製造方法を提供する。本発明に係る製造方法は、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞を生体外で製造するために、生体から採取された試料中の細胞を、抗凝固剤と実質的に接触させることなく培地中で培養する工程を包含することを特徴としている。本発明に係る製造方法の具体的態様を以下に説明するが、上述したように本発明者らによる細胞増殖方法でもあり得るので、本発明に係る製造方法のより具体的な態様については、特願2007−267211に記載の内容が援用される。
【0028】
本発明に用いられる試料は、組織の修復および再生に利用可能な増殖能を有する細胞を含んでいる組織または体液である。好ましい組織としては、例えば、筋肉組織、骨組織、皮膚、リンパ系組織、脈管、消化器、および胚(ヒト胚を除く)などが挙げられ、好ましい体液としては、例えば、骨髄液、血液(末梢血もしくは臍帯血)およびリンパ液などが挙げられる。生体から採取された試料は、その試料全体をそのまま本発明に適用されてもよく、必要に応じて、不要な成分の除去、特定の細胞分画の精製、酵素処理などの処理を行った後に本発明に適用されてもよい。
【0029】
本発明に適用される細胞は、接着性の細胞であればよく、例えば、間葉系細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、角膜幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞などの体性幹細胞、胎児幹細胞などの胚性幹細胞単核細胞(ヒト胚を除く)の他、骨芽細胞、繊維芽細胞、靱帯細胞、上皮細胞、血管内皮細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、急性期の神経疾患の治療に用いる細胞を製造する場合は、幹細胞、特に間葉系幹細胞が好適に利用される。
【0030】
幹細胞は未分化な状態の方が増殖率および生体内導入後の生存率が高いので、未分化な状態の幹細胞が本発明に用いられてもよい。例えば、虚血性脳疾患の処置など、迅速かつ大量の細胞増殖が必要とされる場合においては、採取した幹細胞を未分化な状態のままで増殖させることによって、短期間に必要な細胞数を得ることができる。一定の細胞種へ分化した細胞が所望される場合は、幹細胞または芽細胞を未分化な状態で大量に製造し、次いで、当該分野における公知の技術を用いて所望の細胞種へ分化させて用いればよい。
【0031】
なお、本発明に適用される細胞は、ヒト細胞であることが好ましいが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯類、チンパンジーなどの霊長類、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの偶蹄目、ウマなどの奇蹄目、ウサギ、イヌ、ネコなど)の細胞であってもよい。
【0032】
本明細書において「抗凝固剤と実質的に接触しない」とは、細胞の採取から培養期間全体のいずれかの時点において使用する抗凝固剤の量を実質的に減少させている(通常用いられる量と比較して低減させている)ことを意味し、例えば、抗凝固剤を、細胞採取のための容器(採血管など)の内壁を濡らす程度に溶液形態で添加するか、もしくは全く添加しないか、または培養開始時の試料中の抗凝固剤を実質的に除去した場合に得られる状態を意味する。
【0033】
本発明に係る細胞を製造するためには、試料を採取する際に添加される抗凝固剤の量が少ないことが好ましく、採取された細胞は、凝血を避けるために採取後速やか(30分以内)に培養工程に移行されることが好ましい。より好ましくは、細胞と抗凝固剤とが実質的に接触しないようにする。これにより、従来のおよそ3〜100倍という驚くべき増殖率を有している細胞が得られる。
【0034】
本発明に係る製造方法において、採取された試料が接触する抗凝固剤の量は、該試料の容積に対して5U/mL未満であることが好ましく、2U/mL未満であることがより好ましく、0.2U/mL未満であることがさらに好ましい。また、培養開始時の培地に含まれている抗凝固剤の量は0.5U/mL未満好ましく、0.2U/mL未満であることがより好ましく、0.02U/mL未満であることが最も好ましい。
【0035】
本明細書において「抗凝固剤」とは、体液中または培地中に存在する場合に細胞表面に結合して、細胞外マトリクスに存在する抗血液凝固作用を有するタンパク質と相互作用することにより、細胞と細胞外マトリクス、細胞同士または細胞と基質とが接着することを阻害する物質を意味する。本発明に係る製造方法において、抗凝固剤としては、典型的には、ヘパリンおよびヘパリン誘導体(例えば、特開2005−218308号公報において開示される、ヘパリンを構成するD−グルコサミンの6位を脱硫酸したグリコサミノグリカンなど)またはそれらの塩が用いられることが好ましい。
【0036】
また、本発明に係る製造方法において、培地は血清を含有していることが好ましい。本発明に好適に用いられる血清は、培養される細胞が由来する動物と同種の動物個体の血清(同種血清)であればよく、細胞の由来する個体の血清(自己血清)であることが好ましいが、採取が困難である場合は同種の他個体の血清(他家血清)でもよい。また、この血清は、末梢血由来の血清であっても、臍帯血由来の血清であってもよい。好ましい実施形態において、本発明に用いられる血清は成人ヒト自己血清である。
【0037】
本発明に用いられる培地は、細胞の種類、所望の分化の方向およびレベル、ならびに必要とされる増殖率などに応じて、当該分野において公知の種々の標準培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、NPBM、αMEMなど)から適宜選択される。このような標準培地に、血清が添加され、さらに必要に応じてアミノ酸等の栄養因子、抗生物質、増殖因子および/または成長因子などが加えられ得る。
【0038】
血清含有培地は、一般に、標準培地に対して12%未満の量で血清を加えたものが使用される。上記培地の血清含有量は1〜20容積%であることが好ましく、より好ましくは3〜12%であり、さらに好ましくは5〜10%である。なお、成人ヒト血清が用いられる場合、血清提供者の負担を考えると血清量は少ないほど好ましい。
【0039】
本発明に係る製造方法は、細胞密度が5,500個/cm以上になった時点で継代培養する工程をさらに包含することが好ましく、該継代培養する工程は、細胞の総数が1×10個以上になるまでを繰り返されることがより好ましい。また、本発明に係る製造方法の培養する工程において、培地交換は少なくとも週1回行われることが好ましい。
【0040】
〔3.評価方法〕
本発明は、生体外で培養した細胞が、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であるか否かを評価する評価方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞において特定の遺伝子の発現量を測定する工程を包含することを特徴としている。一実施形態において、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞において表2〜3および6〜7に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定する工程を包含し得る。本実施形態に係る評価方法は、表2〜3および6〜7に記載の遺伝子の少なくとも1つの、コントロール細胞における遺伝子の発現量と比較する工程をさらに包含してもよい。
【0041】
本発明において、コントロール細胞は、評価すべき細胞と同じ供給源から調製されかつ異種血清を用いて培養された細胞が用いられる。コントロール細胞における目的遺伝子の発現量は、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量を測定する際に同時に測定されてもよく、予め取得されていてもよい。すなわち、本発明に係る評価方法は、コントロール細胞における目的遺伝子の発現量を測定する工程をさらに包含してもよい。
【0042】
本発明を用いれば、対象とする遺伝子が表2および6に記載の遺伝子である場合、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量が、コントロール細胞における該遺伝子の発現量より低い場合に、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であると評価される。また、対象とする遺伝子が表3および7に記載の遺伝子である場合、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量が、コントロール細胞における該遺伝子の発現量より高い場合に、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であると評価される。
【0043】
本発明において、遺伝子の発現量の測定は、mRNA量に基づいて行われてもタンパク質量に基づいて行われてもよい。上述したように、「表に記載の遺伝子」は、表に記載された「Probe Set ID」によって特定される遺伝子(その遺伝子の機能を保持した変異体を含む。)が意図され、当業者であれば、表中の「Gene Title」に基づいて容易に理解されるので、当業者は、mRNA量の測定に必要な配列なツール(例えば、プライマーまたはプローブ)を容易に構築し得るとともに、タンパク質量の測定に必要な抗体を容易に入手し得る。また、本発明に係る評価方法は、本実施例に記載のシステムにおいて遺伝子発現量の比が4倍以上であることを指標にして行われてもよい。
【0044】
本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞の同種血清存在下における増殖率と異種血清存在下における増殖率とを比較する工程を包含してもよい。本発明は、ヒト由来の細胞に適用されることが好ましく、この場合、同種血清はヒト自家血清またはヒト他家血清であり、異種血清はFBSであることが好ましい。これまで、ヒト血清は、FBSと比較して増殖促進活性が著しく劣り、ヒト血清単独では十分な細胞増殖促進活性を示さないことが知られており、ヒト血清使用時の細胞増殖率とFBS使用時の細胞増殖率とを比較することによって生体組織の修復および再生に利用可能であるか否かを評価し得るということは予期されるものではなかった。
【0045】
また、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞において表4〜5に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定する工程をさらに包含してもよい。上述したように、表4には、DMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子であって、αMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子と比較して発現量が低減している遺伝子に関する情報が記載されており、表5には、DMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子であって、αMEMを用いた培養法で得られる細胞由来の遺伝子と比較して発現量が増加している遺伝子に関する情報が記載されている。
【0046】
本発明を用いれば、評価すべき細胞の培養にDMEMが好適に用いられる場合、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量が、αMEMを用いて培養されたコントロール細胞における該遺伝子の発現量より低いときに、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であると評価される。また、評価すべき細胞の培養にαMEMが好適に用いられる場合、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量が、DMEMを用いて培養されたコントロール細胞における該遺伝子の発現量より高いときに、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であると評価される。
【0047】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0048】
〔1.培地の調製〕
培地(DMEMまたはαMEM)500mL、血清56.8mL、抗生物質5.7mL(ペニシリン10,000U/mL、ストレプトマイシン10mg/mLよりなる)、およびグルタミン5.7mL(292.3mg/L)を含む。)をろ過滅菌した後に4℃で保管した。この培地を使用時に37℃に加温した。なお、用いた血清は、自己末梢血由来の血清、他家末梢血由来の血清またはFBSである。
【0049】
〔2.ヒト間葉系幹細胞(hMSC)の調製、増殖および保存〕
内壁を予め微量のヘパリン(骨髄液1mLあたり0.1U)で濡らした採血管を用いて、2人の脳疾患患者AおよびBから別々に採取した骨髄液(60mL)をそれぞれ培地(210mL)と混合して骨髄液含有培養液を得た。これらの骨髄液含有培養液を培養液AおよびBとした。培養液AおよびBを、予め末梢血の検査に供して、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等に感染していないことを確認した後に、以下の実験の供した。
【0050】
18個のディッシュ(150mm径;IWAKI製Tissue culture dish #3030-150)にこの培養液AまたはB15mLおよび培地5mLを分注した(1ディッシュあたり総量20mL)。9ディッシュずつ異なるインキュベーターに静置して、これらの培養液に含まれる細胞を、37±0.5℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。
【0051】
培養開始4日目に培養容器に付着した間葉系幹細胞を洗浄した。この際、培地および培地中に浮遊している血球成分を吸引して分離/除去し、次いで、ディッシュに付着している間葉系幹細胞表面を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)5mLを用いて6回洗浄した。
【0052】
培養開始8日目に第一継代を行った。具体的には、PBS5mLを用いてディッシュ内を洗浄した後、分離液(0.25%トリプシン−2.21mM EDTA)4mLをディッシュに添加し、37℃で3分間インキュベートしてディッシュに付着した幹細胞を剥離した。剥離した細胞を含む分離液に同量の培地を加えた後に、傾斜法にて全量を回収した。ディッシュ9枚からの細胞を遠沈管9本に移して、800rpmで5分間遠心分離した。上清を除去した後、遠沈管にDMEMを加えて細胞を回収した。回収した細胞溶液を、再度800rpmで5分間遠心分離した。上清を除去した後、遠沈管に培地300mLを加えて細胞を回収した。この細胞溶液をディッシュ15枚に分注し、これらの細胞溶液に含まれる細胞を、初代培養と同様に37±0.5℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。同様の継代操作を残り9ディッシュについても行った。
【0053】
培養開始8日目の細胞数を血球計測盤で計数した(1.1×10個/ディッシュ)。さらに継代した後に同様に培養を継続した。培養開始20日目の細胞数が1.0×10であったので、回収した細胞を、凍結保存液(通常の濾過滅菌したRPMI20.5mL+血清20.5mL+デキストラン5mL+DMSO 5mL)に懸濁し、この細胞懸濁液を−150℃で凍結した。なお、ヒト血清使用による上記培養の結果得られた細胞を特に「体性基幹細胞」と呼ぶこととした。
【0054】
〔3.cDNAの合成および精製〕
異なる患者2名に由来するhMSCを上記のように培養し、得られた細胞を1×10cell/sampleに別々に調整し、それぞれからRNeasy Protect Min Kit (QIGEN,Cat.No.74124)を用いてtotal RNAを抽出した。細胞の破壊にはQIA shredder (QIAGEN,Cat.No.79654)を使用した。得られたRNA溶液を0.5μg/μlに調整し、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)を使用してRNAの品質をチェックした。
【0055】
GeneChip Eukaryotic Poly-A RNA Control Kit (AFFYMETRIX, P/N900433) およびMessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791) を用いて、1st strand cDNAを合成した。具体的には、70℃にて10分間反応させた反応溶液(I)に、反応溶液(II)を加えて20μlの反応系で42℃にて2時間反応させた。
【0056】
【化1】

【0057】
【化2】

【0058】
続いて、MessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791)を用いて、2nd strand cDNAを合成および精製した。具体的には、反応溶液(III)を、反応後の反応溶液(II)に加えて100μlの反応系で16℃にて2時間反応させ、キットに付属のcDNA Filter Cartridgeを用いて、最終的に24μlのNuclease-free Waterを2回に分けてFilterに添加して溶出することによってcDNAを精製した。
【0059】
【化3】

【0060】
〔4.IVT反応〕
MessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791)を用いて、IVT反応およびaRNAの精製を行った。具体的には、反応溶液(IV)を37℃にて14時間反応させた後、60μlのNuclease-free Waterを加えて反応を停止させ、キットに付属のaRNA Filter Cartridgeを用いて、最終的に100μlのNuclease-free WaterをFilterに添加して溶出することによってaRNAを精製した。得られたRNA溶液を20μg/32μlに調整し、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)を使用してRNAの品質をチェックした。
【0061】
【化4】

【0062】
〔5.Hybridization Cocktailの調製〕
MessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791)を用いて、aRNAをフラグメント化し、Hybridization Cocktailを調製した。具体的には、反応溶液(V)を94℃にて35分間反応させた後に、GeneChip Expression 3’-Amplification Reagents Hybridization control kit (AFFYMETRIX, P/N900454)を用いてHybridization Cocktailを調製し、99℃にて5分間反応させた後45℃で5分間反応させた。
【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
〔6.ハイブリダーゼーション〕
GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array (AFFYMETRIX, P/N900466)を1×Hybridization bufferで満たし、60rpm、45℃にて10分間のprehybridizationを行った。その後、1×Hybridization bufferを除き、調製したHybridization Cocktailで満たして60rpm、45℃にて一晩hybridizationを行った。
【0066】
〔7.洗浄および染色〕
Wash Buffer A (6×SSPE, 0.01% Tween-20)、Wash Buffer B (100mM MES,0.1M [Na+], 0.05% Tween-20) およびWaterをFluidics Stationにセットし、GCOS (GeneChip Operating Software)のプログラムよりPrimingを行った。次いで、Hybridization Cocktailを除き、Wash Buffer Aで満たしたArrayならびにSAPE Solution Mix (1×Stain buffer, 2mg/ml BSA, 10μg/ml SAPE)およびAntibody Solution Mix (1×Stain buffer, 2mg/ml BSA, 0.1mg/ml Goat IgG Stock, 3μg/ml biotinylated antibody)をFluidics Stationにセットした。その後、GCOSのプログラムにより洗浄および染色を行った。
【0067】
〔8.スキャン〕
Gene Array ScannerにArrayをセットし、スキャンおよび解析を行った。解析結果を表1〜5に示す。
【0068】
〔9.結果〕
異なる二名の患者に由来する2種類のhMSCを、自己末梢血由来の血清、他家末梢血由来の血清またはFBSを用いて培養し、それぞれの細胞に発現している遺伝子を比較した。また、異なる患者に由来する2種類のhMSCを、自己末梢血由来の血清および2種類の標準培地を用いて培養し、それぞれの細胞に発現している遺伝子を比較した。
【0069】
【化7】

【0070】
〔9−1:自己血清と他家血清との比較〕
特願2007−267211に記載の方法を用いて製造された細胞は、従来法を用いた場合よりも迅速に増殖し得る細胞である(図1および2)。図1は、成人ヒト自己血清またはFBSのいずれかを添加したDMEM培地中でのヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフであり、図2は、成人ヒト自己血清またはFBSのいずれかを添加したαMEM培地中でのヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフである。
【0071】
このような細胞に対して、自己末梢血由来の血清を用いて培養した場合(サンプル1または5)と他家末梢血由来の血清を用いて培養した場合(サンプル2または6)との間の遺伝子発現の差異を調べた。その結果、サンプル1とサンプル2との間の「Signal Log Ratio」、およびサンプル5とサンプル6との間の「Signal Log Ratio」が一致する遺伝子(すなわち、両者ともに「−2≦」または「2≦」の「Signal Log Ratio」を示す遺伝子)は、遺伝子番号(Gene No.)1〜2の2つのみであった(表1)。このことより、自己血清および他家血清のいずれを用いても、本発明の「体性基幹細胞」を取得し得るといえる。
【0072】
【表1】

【0073】
なお、本実施例にて用いられたアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づいて、表1に記載の遺伝子のうち遺伝子番号1によって示される遺伝子は、自己末梢血由来の血清を用いて培養した場合に「absence(全く発現していないか、または統計学的に発現していないとみなされるべき発現量である)」と判定され、他家末梢血由来の血清を用いて培養した場合に「presence(明らかに発現しているか、または統計学的に発現しているとみなされるべき発現量である)」と判定されている。このように、遺伝子番号1によって示される遺伝子の発現は、自己末梢血由来の血清を用いる場合と他家末梢血由来の血清を用いる場合との間で明確に差別化され得る。よって、本発明に係る細胞が、自己血清を用いて培養されたのか、または他家血清を用いて培養されたのかを判定する必要がある場合は、遺伝子番号1によって示される遺伝子の発現量を指標し得るといえる。
【0074】
〔9−2:同種血清と異種血清との比較〕
特願2007−267211に記載されるように、同種血清(ヒト血清)を用いて製造された細胞は、異種血清(FBS)を用いた場合よりも迅速に増殖し得る細胞である(図1および2)。このような細胞に対して、同種血清を用いて培養した場合(サンプル1または5)と他家末梢血由来の血清を用いて培養した場合(サンプル3または7)との間の遺伝子発現の差異を調べた。その結果、サンプル1とサンプル3との間の「Signal Log Ratio」、およびサンプル5とサンプル7との間の「Signal Log Ratio」が一致する遺伝子(すなわち、両者ともに「−2≦」または「2≦」の「Signal Log Ratio」を示す遺伝子)は、遺伝子番号3〜31の29個であった(表2および3)。
【0075】
【表2】

【0076】
表2には、同種血清含有培地を用いた培養法で製造した細胞において、異種血清含有培地を用いた培養法で得られる細胞と比較して発現量が低減している遺伝子に関する情報が示されている。すなわち、本発明に係る細胞は、同種血清を用いる培養によって、異種血清を用いて培養された培養細胞よりも表2に記載の遺伝子の発現量が低減している細胞といえる。
【0077】
なお、本実施例にて用いられたアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づいて、表2に記載の遺伝子のうち遺伝子番号(Gene No.)3〜5によって示される遺伝子は、同種血清含有培地を用いて培養した場合に「absence」と判定され、異種血清含有培地を用いて培養した場合に「presence」と判定されている。このように、遺伝子番号3〜5によって示される遺伝子の発現は、同種血清含有培地を用いて培養した場合と異種血清含有培地を用いて培養した場合との間で明確に差別化され得る。よって、表2に記載の遺伝子の発現量に基づいて本発明に係る細胞を特定する場合は、遺伝子番号3〜5のいずれかによって示される遺伝子の発現量を指標にすることがより好ましいといえる。
【0078】
【表3】

【0079】
表3には、同種血清含有培地を用いた培養法で製造した細胞において、異種血清含有培地を用いた培養法で得られる細胞と比較して発現量が増加している遺伝子に関する情報が示されている。すなわち、本発明に係る細胞は、同種血清を用いる培養によって、異種血清を用いて培養された培養細胞よりも表3に記載の遺伝子の発現量が増加している細胞といえる。
【0080】
なお、本実施例にて用いられたアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づいて、表3に記載の遺伝子のうち遺伝子番号(Gene No.)23〜25によって示される遺伝子は、同種血清含有培地を用いて培養した場合に「presence」と判定され、異種血清含有培地を用いて培養した場合に「absence」と判定されている。このように、遺伝子番号23〜25によって示される遺伝子の発現もまた、同種血清含有培地を用いて培養した場合と異種血清含有培地を用いて培養した場合との間で明確に差別化され得る。よって、表3に記載の遺伝子の発現量に基づいて本発明に係る細胞を特定する場合は、遺伝子番号23〜25のいずれかによって示される遺伝子の発現量を指標にすることがより好ましいといえる。
【0081】
〔9−3:異なる標準培地を用いた場合の比較〕
特願2007−267211に記載の方法を用いて製造された細胞は、用いる標準培地がDMEMであってもαMEMであっても、従来法を用いた場合よりも迅速に増殖し得る細胞である(図1および2)。細胞の培養に用いられる培地としては、細胞の種類、所望の分化の方向およびレベル、ならびに必要とされる増殖率などに応じて、当該分野において公知の種々の標準培地から適宜選択される必要がある。そこで、異なる標準培地を用いる際に指標とすべき遺伝子を検索した。
【0082】
本発明に係る製造方法によって製造された細胞に対して、DMEMを用いて培養した場合(サンプル1または5)とαMEMを用いて培養した場合(サンプル4または8)との間の遺伝子発現の差異を調べた。その結果、サンプル1とサンプル4との間の「Signal Log Ratio」、およびサンプル5とサンプル8との間の「Signal Log Ratio」が一致する遺伝子(すなわち、両者ともに「−2≦」または「2≦」の「Signal Log Ratio」を示す遺伝子)は、遺伝子番号32〜80の49個であった(表4および5)。
【0083】
【表4】

【0084】
表4には、DMEMを用いた培養法で製造した細胞において、αMEMを用いた培養法で得られる細胞と比較して発現量が低減している遺伝子(遺伝子番号32〜50)に関する情報が示されている。特に、表4に記載の遺伝子のうち遺伝子番号32〜34によって示される遺伝子は、DMEMを用いて培養した場合に「absence」と判定され、αMEMを用いて培養した場合に「presence」と判定されている。このように、遺伝子番号32〜34によって示される遺伝子の発現は、DMEMを用いて培養した場合とαMEMを用いて培養した場合との間で明確に差別化され得る。よって、表4に記載の遺伝子の発現量に基づいて本発明に係る細胞に好適な標準培地を選択する場合は、遺伝子番号32〜34のいずれかによって示される遺伝子の発現量を指標にすることがより好ましいといえる。
【0085】
【表5】

【0086】

【0087】
表5には、DMEMを用いた培養法で製造した細胞において、αMEMを用いた培養法で得られる細胞と比較して発現量が増加している遺伝子(遺伝子番号51〜80)に関する情報が示されている。特に、表5に記載の遺伝子のうち遺伝子番号51〜63によって示される遺伝子は、DMEMを用いて培養した場合に「presence」と判定され、αMEMを用いて培養した場合に「absence」と判定されている。このように、遺伝子番号51〜63によって示される遺伝子の発現もまた、DMEMを用いて培養した場合とαMEMを用いて培養した場合との間で明確に差別化され得る。よって、表5に記載の遺伝子の発現量に基づいて本発明に係る細胞に好適な標準培地を選択する場合は、遺伝子番号51〜63のいずれかによって示される遺伝子の発現量を指標にすることがより好ましいといえる。
【0088】
〔9−4:同種血清と異種血清との比較(2)〕
上記9−2と同様に、同種血清を用いて培養した細胞(サンプル1または5)と他家末梢血由来の血清を用いて培養した細胞(サンプル3または7)との間の遺伝子発現の差異を調べた。その結果、サンプル1とサンプル3との間の「Signal Log Ratio」、およびサンプル5とサンプル7との間の「Signal Log Ratio」が一致する遺伝子(すなわち、両者ともに「−1≦」または「1≦」の「Signal Log Ratio」を示す遺伝子)は、遺伝子番号81〜287の207個であった(表6および7)。
【0089】
【表6】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】
表6には、同種血清含有培地を用いた培養法で製造した細胞において、異種血清含有培地を用いた培養法で得られる細胞と比較して発現量が低減している遺伝子に関する情報が示されている。すなわち、本発明に係る細胞は、同種血清を用いる培養によって、異種血清を用いて培養された培養細胞よりも表6に記載の遺伝子の発現量が低減している細胞といえる。
【0096】
なお、本実施例にて用いられたアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づいて、表6に記載の遺伝子のうち遺伝子番号81〜89によって示される遺伝子は、同種血清含有培地を用いて培養した場合に「absence」と判定され、異種血清含有培地を用いて培養した場合に「presence」と判定されている。このように、遺伝子番号81〜89によって示される遺伝子の発現は、同種血清含有培地を用いて培養した場合と異種血清含有培地を用いて培養した場合との間で明確に差別化され得る。よって、表6に記載の遺伝子の発現量に基づいて本発明に係る細胞を特定する場合は、遺伝子番号81〜89のいずれかによって示される遺伝子の発現量を指標にすることがより好ましいといえる。
【0097】
【表7】

【0098】

【0099】

【0100】
表7には、同種血清含有培地を用いた培養法で製造した細胞において、異種血清含有培地を用いた培養法で得られる細胞と比較して発現量が増加している遺伝子に関する情報が示されている。すなわち、本発明に係る細胞は、同種血清を用いる培養によって、異種血清を用いて培養された培養細胞よりも表7に記載の遺伝子の発現量が増加している細胞といえる。
【0101】
なお、本実施例にて用いられたアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づいて、表7に記載の遺伝子のうち遺伝子番号223〜229によって示される遺伝子は、同種血清含有培地を用いて培養した場合に「presence」と判定され、異種血清含有培地を用いて培養した場合に「absence」と判定されている。このように、遺伝子番号223〜229によって示される遺伝子の発現もまた、同種血清含有培地を用いて培養した場合と異種血清含有培地を用いて培養した場合との間で明確に差別化され得る。よって、表7に記載の遺伝子の発現量に基づいて本発明に係る細胞を特定する場合は、遺伝子番号223〜229のいずれかによって示される遺伝子の発現量を指標にすることがより好ましいといえる。
【0102】
〔10.本発明の細胞の効果〕
特願2007−267211に記載の方法を用いて製造された細胞による、神経疾患の患者に対する効果を検証した。対象患者(52歳、男性)は、虚血性神経疾患(脳梗塞:右内頸動脈閉塞)により左半身麻痺を発症した。治療前の症状として、左半身麻痺、特に上肢に強い麻痺があり、手を開いたり握ったりすることが全くできず、物(積木など)を握ったり離したりすることができず、腕を肩の位置より高く上げることができず、手首を曲げたり伸ばしたりすることもできなかった。
【0103】
この患者から、内壁を予め微量のヘパリン(骨髄液1mLあたり0.1U)で濡らした採血管を用いて、骨髄液を60mL採取し、210mLの培地中に添加し、総量270mLとした。この骨髄液含有培養液を18等分して、15mLずつ150mm径のディッシュ(IWAKI製Tissue culture dish #3030-150)中に播種し、培地を5mLずつ添加して1ディッシュあたり総量20mLとした。播種後、9ディッシュずつ、別々のインキュベーターに静置して、37±0.5℃、5%の炭酸ガス雰囲気下で培養した。骨髄液は、予め末梢血の検査によって、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等に感染していないことを確認した。
【0104】
培地は、ダルベッコ改変イーグル培地500mLに、自己末梢血由来の血清56.8mL、抗生物質5.7mL(ペニシリン10,000U/mL、ストレプトマイシン10mg/mLよりなる)、およびグルタミン5.7mL(292.3mg/L)を添加して調製し、ろ過滅菌し、小分けして4℃の保冷庫に保管したものを、予め37℃に保って使用した。
【0105】
4日目に培養容器に付着した間葉系幹細胞を洗浄するに当たって、培地および培地中に浮遊している血球成分を吸引して分離、除去し、次いで洗浄液としてリン酸緩衝食塩水5mLを用いて、付着している間葉系幹細胞表面を6回洗浄した。
【0106】
8日目に第一継代を行うにあたり、リン酸緩衝食塩水5mLを用いて洗浄後、付着した幹細胞を剥離するために、分離液(0.25%トリプシン−2.21mM EDTA)4mLをディッシュに添加し、3分間37℃でインキュベートし、剥れを確認した。付着分離させた分離液に同量の培地を加え、傾斜法にて全量を回収した。ディッシュ9枚分の細胞を遠沈管9本に移して、遠心分離機により800rpmで5分間遠心した。分離後各遠沈管の上澄み液を除去し、DMEMを加えて細胞を集めた。集めた細胞溶液を、再度800rpmで5分間遠心した。遠心分離後、各遠沈管の上澄み液を除去し、培地300mLを加えて細胞を集めた。この細胞溶液をディッシュ15枚に小分けして継代し、初代培養と同様に37±0.5℃、炭酸ガス濃度5%中でインキュベートした。同様の継代操作を残り9ディッシュについても行った。
【0107】
13日目に、洗浄、剥離、遠心分離を上記と同様に行い、小分けしたもので細胞数を血球計測盤で計測したところ、1.1×10個に達していたので、更に継代させた。培養を継続し、20日目に同様の細胞数計測を行ったところ、細胞総数が1.0×10に達したので、洗浄、剥離、遠心分離を行い、凍結保存液(通常の濾過滅菌したRPMI20.5mLと、患者から採取した自己血清20.5mL、デキストラン5mL、DMSO 5mL)を加え、本発明の体性基幹細胞を製造した。なお、体性基幹細胞を含む画分に含まれる細胞成分における間葉系幹細胞の比率は98%以上(CD105陽性(陽性率=99.9%)、CD34陰性(陰性率=98.8%)、CD45陰性(陰性率=98.5%))であった。この体性基幹細胞画分を、発症の43日後に上記の患者に静脈内に30分間で投与した(図3)。副作用は全く認められなかった。
【0108】
本発明の体性基幹細胞の投与により、以下の結果が得られた。すなわち、この患者は、細胞治療前は左手指全5指の運動機能不全であったが、細胞投与の翌朝には全く動かなかった左手の指が動くようになり、握ったり開いたりができるようになった。1週間後には運動機能改善が見られ、ステイック運搬運動が可能となった。2週間後には、脳梗塞が著明に縮小していることがMRIによって確認された(図4)。また、手を握ったり開いたりすることが、より早くできるようになり、積木をつまんだり、離したりすることもできるようになった。腕も肩の位置より高く上げ、「バンザイ」することができるようになった。肘の曲げ伸ばしおよび手首の曲げ伸ばしもできるようになった。図6に、細胞治療の前後にわたるこの患者の脳梗塞レベルの推移を、脳梗塞の評価のための周知のスケール(NIHSS:米国立衛生研究所脳卒中スケール、JSS:日本脳卒中学会脳卒中スケール、MRS:修正ランキンスケール)を用いて示す。
【0109】
図4は、この患者の脳MRI画像である。右大脳の脳梗塞で障害された部位(白色部分)の縮小がみられる。また、図5は、同じ患者のサーモグラフィー像であるが、治療1週間後において、頭部の高温領域が顕著に縮小しており、損傷部位における脳血流の回復が認められる。これらの結果は、上記の運動機能回復と合わせて、本発明の体性基幹細胞の投与により、亜急性期以降の顕著な改善効果を示すことが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、組織の修復および再生に非常に有用であり、特に早期の細胞療法が有効な疾患(例えば、脳神経に損傷を受けた患者の脳神経再生など)に甚大な効果を奏するとともに、細胞提供者の不足および身体的負担を軽減するので、医学分野、薬学分野などに大いに貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】成人ヒト自己血清またはFBSのいずれかを添加したDMEM培地中でのヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフである。
【図2】成人ヒト自己血清またはFBSのいずれかを添加したαMEM培地中でのヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフである。
【図3】本発明の体性基幹細胞の治療メカニズムを示した図である。縦軸は症状の軽重、横軸は発症からの経過時間、矢印は本発明の体性基幹細胞の投与時期をそれぞれ示す。矢印から右側において、上側の曲線は体性基幹細胞の投与を受けた対象の症状の推移を、下側の曲線は、投与を受けなかった対象の症状の推移をそれぞれ示す。
【図4】本発明の体性基幹細胞の投与前および投与の2週間後における虚血性神経疾患患者の脳MRI画像である。損傷部位は白色部分として示される。
【図5】本発明の体性基幹細胞の投与前および投与の1週間後における虚血性神経疾患患者のサーモグラフィー像である。高温を示す濃色領域が投与の1週間後において顕著に縮小している。
【図6】虚血性神経疾患患者の本発明の体性基幹細胞の投与の前後にわたる脳梗塞レベル(NIHSS:米国立衛生研究所脳卒中スケール、JSS:日本脳卒中学会脳卒中スケール、MRS:修正ランキンスケール)の推移を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表2および6に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が低減していることを特徴とする哺乳動物細胞。
【請求項2】
表3および7に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量が増加していることを特徴とする哺乳動物細胞。
【請求項3】
同種血清存在下における増殖率が、異種血清存在下における増殖率より高いことを特徴とする請求項1または2に記載の哺乳動物細胞。
【請求項4】
幹細胞に由来することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項5】
前記幹細胞が骨髄に由来することを特徴とする請求項4に記載の哺乳動物細胞。
【請求項6】
ヒト由来であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項7】
生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であるか否かを評価する方法であって、
評価すべき細胞において表2〜3および6〜7に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定する工程
を包含することを特徴とする評価方法。
【請求項8】
前記発現量を、評価すべき細胞と同じ供給源から調製されかつ異種血清を用いて培養されたコントロール細胞における目的遺伝子の発現量と比較する工程をさらに包含することを特徴とする請求項7に記載の評価方法。
【請求項9】
評価すべき細胞の同種血清存在下における増殖率と異種血清存在下における増殖率とを比較する工程をさらに包含することを特徴とする請求項7または8に記載の評価方法。
【請求項10】
前記評価すべき細胞がヒト細胞であり、前記同種血清がヒト自家血清であり、前記異種血清がFBSであることを特徴とする請求項9に記載の評価方法。
【請求項11】
生体組織の修復および再生に利用可能な細胞を生体外で製造するための方法であって、
生体から採取された試料中の細胞を、抗凝固剤と実質的に接触させることなく培地中で培養する工程
を包含することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
前記培養する工程が、非接着細胞と分離した接着細胞を培養することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記接着細胞の細胞密度が5,500個/cm以上になった時点で継代培養する工程をさらに包含することを特徴とする請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記継代培養する工程が、前記接着細胞の総数が1×10個以上になるまで繰り返されることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記培養する工程において、1週間に少なくとも1回の培地交換が行われることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−100719(P2009−100719A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278083(P2007−278083)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(307014555)北海道公立大学法人 札幌医科大学 (31)
【出願人】(506100495)NCメディカルリサーチ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】