説明

改善された発現、活性、及び安定性を有するセルラーゼ変異体、並びにこれらの使用方法

本開示発明はセルラーゼ変異体に関する。特に、本願は改善された発現、活性、及び/又は安定性を有するセルラーゼ変異体に関する。このセルラーゼ変異体、このセルラーゼ変異体を含む組成物、及びこれらの使用方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年6月3日に提出された米国仮出願No.61/183,959に対して優先権を主張する。この仮出願の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示発明は、米国政府の支援によって、米国エネルギー省から供与された制限条件付き供与番号DE−FC36−08GO18078の下でなされた。米国政府は、本開示発明にある一定の権利を有する。
【0003】
本願開示発明は、酵素、特にセルロース変異体に関する。また、該セルロース変異体をコードする核酸、該セルロース変異体を含む組成物、さらなる有用なセルロース変異体を特定する方法、および該組成物を使用する方法も開示される。
【背景技術】
【0004】
セルロース及びヘミセルロースは光合成により生産される最も豊富な植物資源である。それらは、加水分解によりポリマー基質を単体糖類にすることができる細胞外酵素を作り出すバクテリア、イーストと糸状菌を含む、たくさんの微生物によって分解され、エネルギー源として使われることができる(Aroら,J.Biol.Chem.,第276巻,no.26,24309−24314頁,6月29日,2001年)。非再生資源の限界が近づいているので、主要な再生可能エネルギー源となるセルロースの潜在力は莫大である(Krishnaら.,Bioresource Tech.第77巻:193−196,2001年)。生物学的プロセスによるセルロースの有効利用は、食物、飼料および燃料の不足を克服することへの一つの手段である(Ohmiyaら,Biotechnol.Gen.Engineer.Rev.第14巻、365−414頁,1997年)。
【0005】
セルラーゼはセルロース(ベータ−1、4−グルカン又はベータD−グルコシド結合)を加水分解して、グルコース、セロビオース、セロオリゴサッカライド及び同種のものを生成する酵素である。セルロースは従来から3つの型に分類されている。エンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)(「EG」)、エキソグルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)(「CBH」)およびベータ−グルコシダーゼ([ベータ]−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ:EC3.2.1.21)(「BG」)である(Knowlesら,TIBTECH 5、255−261頁、1987年;Schulein、 Methods Enzymol.、160、25、234−243頁、1988年)エンドグルカナーゼはセルロース繊維の非晶質部分に主に作用し、他方、セロビオヒドロラーゼは結晶セルロースも分解することができる。(Nevalainen及びPenttila、 Mycota、303−319頁、1995年)。従って、したがって、結晶セルロースの効率的な可溶化のためには、セルラーゼ系中にセロビオヒドロラーゼが存在することが要求される(Suurnakkiら、 Cellulose、第7巻、189−209頁、2000年)。ベータグルコシダーゼはD−グルコース単位をセロビオース、セロオリゴ糖、および他のグルコシドから遊離することが知られている。(Freer、J. Biol.Chem.第268巻、No.13、9337−9342頁、1993年)。
【0006】
セルラーゼは、多種類の細菌、酵母および糸状菌によって産生されることが知られている。ある種の糸状菌は、結晶形態のセルロースを分解する能力のある完全なセルラーゼ系を産生し、その結果これらのセルラーゼは発酵によって大量に容易に産生される。多くの酵母、たとえばサッカロマイセスサレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、セルロースを分解する能力を欠いているので、糸状菌は特別な役割を果たす(例えば、Wood ら,Methods in Enzymology,160:87−116,1988参照)。
【0007】
CBH、EGおよびBGの糸状菌セルラーゼの分類はさらに拡張されて、各分類の中に複数の構成分を含むことができる。たとえば、複数のCBH、EGおよびBGが、多様な糸状菌源、たとえばトリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)(ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)とも呼ばれる。)から単離されており、これらは、2のCBH、すなわちCBHI(「CBH1」)およびCBHII(「CBH2」)、少なくとも8のEG、すなわちEGI(「EG1」)、EGII(「EG2」)、EGIII(「EG3」)、EGIV(「EG4」)、EGV(「EG5」)、EGVI(「EG6」)、EGVII(「EG7」)およびEGVIII(「EG8」)ならびに少なくとも5のBG、すなわちBG1、BG2、BG3、BG4およびBG5については公知の遺伝子を含んでいる。EGIV、EGVIおよびEGVIIIもキシログカナーゼ活性を有している。
【0008】
結晶セルロースをグルコースに効率的に転化するために、CBH、EGおよびBGの分類のそれぞれからの構成分を含む完全なセルラーゼ系が必要とされ、単離された成分では結晶セルロースを加水分解するのがより低度に有効である(Filhoら、Can.J.Microbiol.第42巻、1−5頁、1996年)。異なった分類からのセルラーゼ成分の間に相乗関係が観察されている。とりわけ、EG型のセルラーゼとCBH型のセルラーゼとは相乗的に相互作用して、セルロースをより効率的に分解する。
【0009】
セルラーゼは、洗剤組成物の洗浄能力を高める目的のために、柔軟剤として使用するために、綿織物の感触および外観を改善するために等、織物の処理に有用であることが従来技術で知られている。(Kumarら、Textile Chemist and Colorist、第29巻、37−42頁、1997年)。洗浄効果が向上されたセルラーゼ含有洗剤組成物(US Pat.No.4、435、307;GB App.Nos.2、095、275及び2、094、826)及び布製品に対して風合い及び外観を改善するために使用すること(US Pat.Nos.5、648、263、5、691、178、及び5、776、757;GB App.No.1、358、599)が開示されている。糸状菌および細菌中で産生されたセルラーゼは相当な関心を持たれている。とりわけ、トリコデルマ種(たとえば、トリコデルマロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)またはトリコデルマレーシ)は、結晶形態のセルロースを分解する能力のある完全なセルラーゼ系を産生することが示されている。
【0010】
セルラーゼ組成物はこれまで開示されてきているが、新しく改良されたセルラーゼ組成物の必要性がいまだ存在する。一般家庭用の洗剤、ストーンウォシュ用組成物又は洗濯用洗剤等に用いるための性能が改良されたセルラーゼについて特別な関心が集まるであろう。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
【0012】
本明細書は酵素、特にセルラーゼ変異体に関する。このセルラーゼ変異体をコードしている核酸、このセルラーゼ変異体を含む組成物、追加的に有用なセルラーゼ変異体を同定する方法、及びこれらの使用方法も開示する。
【0013】
本明細書はセルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置番号の5,18,19,28,30,32,35,38,79,80,89,100,102,103,104,105,111,117,119,121,125,126,133,137,138,139,140,141,143,150,158,162,177,180,181,182,185,186,188,190,191,192,193,196,201,207,225,226,228,229,230,233,234,236,240,243,245,251,252,258,267,268,274,292,293,303,304,306,307,313,319,322,328,331,338,340,346,361,362,363,364,365,371,384,394,396,400,406,407,414,417,422,427,431,433,436,440,441,443,444,445、及び447からなる群より選択される1つ以上の位置において置換を含む、セルラーゼ変異を開示する。幾つかの態様において、1つ以上の位置における置換は対照CBH2と比較して、改善された発現、活性、及び/又は安定性を有する。幾つかの態様において、この変異体は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置番号において、(i)63,77,129,146,147,151,153,157,161,189,194,197,203,204,208,211,237,239,244,247,254,277,281,285,288,289,294,327,339,344,356,378,382、及び405からなる第一グループ、又は(ii)94,98,107,120,134,144,154,178,179,206,210,214,231,232,266,272,275,291,312,316,323,343,360,380,381,386,399,410,413,416,426,及び429からなる第二グループ、から選択される1つ以上の位置における更なる置換を含む。幾つかの態様において、1つ以上の位置における置換は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10位からなる群から選択される。
【0014】
他の側面において、本開示発明は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置において、63,77,129,146,147,151,153,157,161,189,194,197,203,204,208,211,237,239,244,247,254,277,281,285,288,289,294,327,339,344,356,378,382、及び405からなる群より選択される1つ以上の位置において置換を含む、セルラーゼ変異体であって、前記位置が配列番号3で定義される対照セロビオヒドラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、前記セルラーゼが一部位変異体である場合、この部位が、K/E,R/Q,N/D,Q/E,D/N、又はE/Qではない、セルラーゼ変異体を提供する。幾つかの態様において、1つ以上の位置における置換は対照CBH2と比較して、改善された発現、活性、又は安定性を有するセルラーゼ変異体となる。幾つかの態様において、この単離されたセルラーゼ変異体は、更に、(i)5,18,19,28,30,32,35,38,79,80,89,100,102,103,104,105,111,117,119,121,125,126,133,137,138,139,140,141,143,150,158,162,177,180,181,182,185,186,188,190,191,192,193,196,201,207,225,226,228,229,230,233,234,236,240,243,245,251,252,258,267,268,274,292,293,303,304,306,307,313,319,322,328,331,338,340,346,361,362,363,364,365,371,384,394,396,400,406,407,414,417,422,427,431,433,436,440,441,443,444,445,及び447からなる第一グループ、又は(ii)94,98,107,120,134,144,154,178,179,206,210,214,231,232,266,272,275,291,312,316,323,343,360,380,381,386,399,410,413,416,426,及び429からなる第二グループから選択されるから選択される1つ以上の更なる位置において更なる置換を含み、前記更なる位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる。幾つかの態様において、1つ以上の位置における置換は1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10位からなる群から選択される。
【0015】
他の側面において、本開示発明は、セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の94,98,107,120,134,144,154,178,179,206,210,214,231,232,266,272,275,291,312,316,323,343,360,380,381,386,399,410,413,416,426,及び429からなる群より選択1つ以上の位置において1つ以上の置換を含む、セルラーゼ変異体であって、前記セルラーゼ変異体が一部位置換を有しており、この一部位置換はV94E,P98L,E107Q,M120L,M134G,M134L,M134V,L144G,L144R,L144S,T154A,A178V,L179C,V206L,S210L,S210R,T214M,T214Y,G231P,G231I,G231A,G231N,G231S,G231T,T232V,H266S,H266A,W272A,W272D,W272Y,N275L,S316P,V323L,V323N,V323Y,G360R,S380T,A381T,E399N,E399D,R413Y,R413P,及びA416からなる群より選択される1つではない、セルラーゼ変異体を提供する。幾つかの態様において、1つ以上の位置における置換は対象CBH2と比較して、改善された発現、活性、及び/又は安定性を有するセルラーゼ変異体となる。幾つかの態様において、この変異体は、(i)5,18,19,28,30,32,35,38,79,80,89,100,102,103,104,105,111,117,119,121,125,126,133,137,138,139,140,141,143,150,158,162,177,180,181,182,185,186,188,190,191,192,193,196,201,207,225,226,228,229,230,233,234,236,240,243,245,251,252,258,267,268,274,292,293,303,304,306,307,313,319,322,328,331,338,340,346,361,362,363,364,365,371,384,394,396,400,406,407,414,417,422,427,431,433,436,440,441,443,444,445、及び447からなる第一グループ;又は(ii)63,77,129,146,147,151,153,157,161,189,194,197,203,204,208,211,237,239,244,247,254,277,281,285,288,289,294,327,339,344,356,378,382、及び405からなる第二グループ、から選択される1つ以上の位置において更なる置換を含む。前記更なる位置が配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置番号である。幾つかの態様において、1つ以上の位置における置換は1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10位からなる群から選択される。
【0016】
本開示発明はセルラーゼ変異体を更に提供する。この変異体は、セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、111,144,154,162,410、及び413からなる群より選択される1つ乃至6つの置換を含み、該置換は、111位においてロイシン又はセリン、144位においてロイシン、グルタミン、又はトリプトファン、154位においてスレオニン、システイン、又はバリン、162位においてチロシン、又はアスパラギン、410位においてアルギニン又はセリン、及び413位においてセリン、トリプトファン、又はタイロシンであり、これらの位置番号は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸に対応して数えられるものであり、このセルラーゼ変異体が一部位置換からなる場合、この一部位置換がS413Yではない。
【0017】
本開示発明により提供されたセルラーゼ変異体は、セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、98,194,313,316,384、及び443からなる群より選択される1つ乃至6つの位置での置換を含み、該置換は98位においてプロリン又はレクチン、194位においてリジン、システイン、又はグルタミン、313位においてセリン又はスレオニン、316位においてセリン又はプロリン、384位においてグリシン、システイン、又はグルタミン、及び443位においてアスパラギン又はイソロイシンであり、前記位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、このセルラーゼ変異体が一部位置換からなる場合、1つの位置換が、P98L置換、K194E置換、及びS316P置換から選択される1つを含まない。
【0018】
更に、本開示発明は、セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、153,161,203,233,422、及び444からなる群より選択される1つ乃至6つの位置において置換を含み、該置換が、153位におけるアルギニン又はグルタミン、161位におけるアスパラギン、アラニン、又はトリプトファン、203位におけるアルギニン又はヒスチジン、233位におけるプロリン又はバリン422位におけるグルタミン又はバリン、及び
444位におけるプロリン又はグルタミンであり、これらの位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、前記セルラーゼ変異体が1つの置換からなる場合、この1つの置換はR153Q置換ではない、セルラーゼ変異体を提供する。
【0019】
更に、本開示発明は、セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、98,111,144,313,316,413、及び422からなる群より選択される1つ乃至6つの位置において置換を含み、該置換が、98位においてプロリン又はロイシン、111位においてロイシン又はセリン、144位においてロイシン又はトリプトファン、313位においてセリン又はスレオニン、316位においてセリン又はプロリン、413位においてセリン又はトリプトファン、及び422位においてグルタミン又はバリンであり、これらの位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、前記セルラーゼ変異体が1つの置換からなる場合、この1つの置換はS316P置換ではない、セルラーゼ変異体を提供する。
【0020】
本開示発明の更なる側面において、セルラーゼ変異体が提供され、この変異体は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の98位においてグルタミンを含み、T138C,S316P,S343Q,Q362I,S386C,C400S、及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む。
【0021】
更に、提供されるセルラーゼ変異体は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の138位においてシステインを含み、S316P,S343Q,Q362I,S386C,C400S、及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む。
【0022】
他の側面において、このセルラーゼ変異体は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の316位においてプロリンを含み、S343Q,Q362I,S386C,C400S、及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む。
【0023】
更に、本開示発明は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の343位においてグルタミンを含み、Q362I,S386C,C400S、及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体を提供する。
【0024】
本開示発明は、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の362位においてイソロイシンを含み、S386C,C400S、及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体も提供する。
【0025】
1つの側面において、提供されるセルラーゼ変異体は、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の386位においてシステインを含み、C400S及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む。
【0026】
更に、本開示発明は、セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、配列番号3で定義する対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)に対応して番号付けされた位置、98,111,182,291,316,362、及び400位において、98位ではプロリン又はロイシン、111位ではロイシン又はセリン、182位ではアスパラギン又はトリプトファン、291位ではセリン又はグルタミン酸、316位ではセリン又はプロリン、及び400位ではシステイン又はセリンの置換を含み、前記セルラーゼ変異体が1つの置換からなる場合、この1つの置換はP98L置換及びS316P置換からなる群より選択される1つではない、セルラーゼ変異体を提供する。幾つかの態様において、この変異体は更にL439P置換又はT74S置換を更に含む。
【0027】
本開示発明の幾つかの好適な態様において、発明の概要で説明する、前述のパラグラフのいずれかのセルラーゼ変異体は、ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)CBH2,ヒポクレアコニンギ(Hypocrea koningii)CBH2,フミコーラインソレンス(Humicola insolens)CBH2,アクレモニウムセルロイティクス(Acremonium cellulolyticu)CBH2,アガリクスビスポラス(Agaricus bisporus)CBH2,フサリウムオシスポラム(Fusarium osysporum)EG,フェノロカエテクリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)CBH2,タラロマイセスエメルソニ(Talaromyces emersonii)CBH2,セルモビフィダフスカ(Thermobifida. Fusca)6B/E3 CBH2,セルモビフィダフスカ(Thermobifida fusca)6A/E2 EG,及びセルロモナスフィミ(Cellulomonas fimi)CenA EGからなる群より選択される親セルラーゼ由来である。幾つかの態様において、このセルラーゼ変異体は配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、及び配列番号12からなる群のメンバーに対して、少なくとも75%、80%,85%,90%,95%,96%,97%,98%又は99%同一であるアミノ酸配列を有する親セルラーゼ由来である。幾つかの態様において、この変異体は単離されている。更に、本開示発明はこのセルラーゼ変異体を含む組成物も提供する。幾つかの好適な態様において、この組成物はセルラーゼ変異体を多く含む。
【0028】
他の側面において、本開示発明は発明の概要の前述のパラグラフのいずれかで説明するセルラーゼ変異体をコードする単離された核酸を提供する。調節配列に作動可能に結合している単離された核酸を含む発現ベクターも提供され、この発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。幾つかの態様において、好適な条件下で培養培地中で宿主細胞を培養してセルラーゼ変異体を生成する工程を含むセルラーゼ変異体を生成する方法も提供される。
【0029】
発明の概要の前述の段落にいずれかのセルラーゼ変異体を含む組成物も提供される。幾つかの好適な態様において、この組成物はスブチリシン、中性メタロプロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドロラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、及びペルオキシダーゼから選択される少なくとも1つの追加的な酵素を含む。本開示発明はこの組成物を、布の表面又は布を含む製品に接触させる工程を含む、布製品の洗浄又は処理方法を提供する。更に、この組成物を、布の表面又は布を含む製品に接触させる工程を含む、毛羽立ちを取る又は表面を最終加工する方法も提供する。
【0030】
幾つかの好適な態様において、発明の概要における前述の段落のいずれかのセルラーゼ変異体とバイオマスとを接触させる工程を含むバイオマスを糖に転化する方法も提供される。幾つかの好適な態様において、発明の概要における前述の段落のいずれかのセルラーゼ変異体を含む酵素組成物をバイオマス組成物に接触させて、糖溶液を生成する工程と、この糖溶液を、燃料を生成するのに十分な条件下で発酵性微生物と接触させる工程とを含む、燃料を生成する方法も提供される。
【0031】
本開示発明の他の目的、特徴、及び利点は以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、この詳細な説明及び特定の実施例は、本開示発明の好適な態様を示しており、説明の目的にのみ提供されるものであることをご理解いただきたい。本開示発明の範囲及び精神の範囲内の各種変更及び修飾は、この詳細な説明を読むことにより当業者が理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1はハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)CBH2,ヒポクレアコニンギ(Hypocrea koningii)CBH2,フミコーラインソレンス(Humicola insolens)CBH2,アクレモニウムセルロイティクス(Acremonium cellulolyticus)CBH2,アガリクスビスポラス(Agaricus bisporus)CBH2,フサリウムオシスポラム(Fusarium osysporum)EG,フェノロカエテクリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)CBH2,タラロマイセスエメルソニ(Talaromyces emersonii)CBH2,セルモビフィダフスカ(Thermobifida. Fusca)6B/E3 CBH2,セルモビフィダフスカ(Thermobifida fusca)6A/E2 EG,及びセルロモナスフィミ(Cellulomonas fimi)CenA EGの各種セルラーゼの成熟形態のアミノ酸配列のアラインメントである。
【0033】
図2AはCBH2 SELの荷電変化の生成物としての予備処理されたコーンストーバー(PCS)のアッセイウィナーの予測値に対する実測値の相対度数のグラフを提供する。CBH2の荷電が減少するとPCSアッセイウィナー相対度数が有意に高くなる。
図2BはCBH2 SELの荷電変化の生成物としての、リン酸膨張セルロース(PASC)アッセイウィナーの予測値に対する実測値の相対度数のグラフを提供する。PASCウィナーの有意に高い度数は、荷電変化のない変異体に観察された。
【0034】
図3はpTTTpyrG−cbh2のプラスミドマップを提供する。
【0035】
図4はT.reesei ku80欠失カセットの概略図である。
【0036】
図5はsla選択マーカーとT.reesei ku80との置換による野生型ku80の不活性化を示す。
【0037】
図6はT.reesei pyr2欠失カセットの概略図である。
【0038】
図7はhyr2遺伝子をhygR選択マーカー及びamdSフラグメントで置換することによるpyr2遺伝子の不活性化を示す。
【0039】
図8はT.reesei hygR欠失カセットの概略図である。
【0040】
図9はpyr2選択マーカーと異種hyrgR遺伝子の置換によるhyrgR遺伝子の不活性化を示している。
【0041】
図10はT.reesei bgl1欠失カセットの概略図を提供する。
【0042】
図11はT.reesei egl3欠失カセットの概略図を提供する。
【0043】
図12はcreリコンンビナーゼの発現に用いるT.reeseiテロメアベクターの概略図である。
【0044】
図13は所望の遺伝子(GOI)のポリヌクレオチドの導入によるpyr2選択マーカーの不活性化と、amdS選択マーカーの活性化を説明する。例示的な態様において、このGIOはCBH2変異体をコードする。
【0045】
図14は四欠失株由来のMAD6宿主細胞の誘導体の概略図を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0046】
各種態様の詳細な説明
【0047】
本開示発明は酵素、特にセルラーゼ変異体に関する。このセルラーゼ変異体、このセルラーゼ変異体を含む酵素、このセルラーゼ変異体を含む組成物、更なる有用なセルラーゼ変異体を同定する方法、及びこの組成物を使用する方法も提供される。
【0048】
前述の発明の概要と以下の詳細な説明の両方は例示的及び説明にのみ用いるものであり、本開示発明の組成物及び方法を限定するためのものではない。別に定義しない限り、ここに違った形で定義されない限り、ここに使ったすべての技術の、そして科学用語は、一般的に、当業者によって理解されているのと同じ意味を持っている。本出願において、単数の使用は別に定義されない限り、複数も含むものとする。「又は」の使用は別に定義しない限り、「及び/又は」を意味する。同様に「含む」(comprise、comprising、comprises、including、及びincludes)は限定を意図する意味に用いない。開示されている全ての特許、刊行物、並びにこれらに記載のアミノ酸配列は明示的に参照により本明細書に援用される。本明細書で提供する標題は本開示発明の各種側面又は態様を限定するたけのものではない。本開示発明は明細書全体を参照することにより、理解されるべきである。即ち、本明細書における用語は明細書全体を参照することにより完全に定義される。
【0049】
別に定義しない限り、ここに使ったすべての技術の、そして科学用語は、一般的に、当業者によって理解されているのと同じ意味を持っている。Singletonら,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,2D ED.,JohnWiley and Sons,New York (1994年)及びHale及びMarham,THE HARPER DICTIONARY OF BIOLoGY,Harper Perennial,New York(1991年)は、本開示発明で用いられる数多くの用語の一般的な辞書である。本明細書で述べたものと同類のまたは等しい技術および物質は、発明の実施に用いることができるが、ここでは、好ましい態様を開示する。数の範囲は範囲を定義している数を含めている。違った形で示されない限り、塩基配列は左から右に向かって5’末端から3’末端を表す;アミノ酸配列は、左から右に向かって、アミノ末端からカルボキシ末端を表す。専門家は特に本分野の定義と用語についてSambrookら,MOLECULAR CLONING :A LABORATORY MANUAL(Second Edition),Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.,1989,and Ausubel FMら.,Current Protocols in Molecular Biology,JohnWiley&Sons,New York,NY,1993,を参考にすることができる。本開示発明は、説明された特定の方法、手段、試薬等が変更されるときに、これらに限定されないことは理解される。
I.定義
【0050】
以下の用語は明細書全体を参照することにより完全に理解される。
【0051】
ここで用いる「ポリペプチド」の語はペプチド結合で結合したアミノ酸残渣の単鎖よりなる化合物をいう。ここで用いる「タンパク質」の語は「ポリペプチド」の語と同義である。
【0052】
「変異体」は、C−もしくはN−末端のいずれかもしくは双方への1以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の1もしくは多数の異なる部位における1以上のアミノ酸の置換、もしくはタンパク質の一方もしくは双方の末端における、もしくはアミノ酸配列中の1以上の部位における1以上のアミノ酸の欠失によって前駆体タンパク質(たとえば、野生型タンパク質)から誘導されたタンパク質、または1以上のアミノ酸が、電荷を変えることによって(すなわち、正電荷を除くこと、負電荷を加えること、または正電荷を除くことおよび負電荷を加えることの双方によって)修飾されることを意味する。このセルラーゼ変異体の調製は当業者に知られている方法により行うことができる。好適な態様において、セルラーゼ変異体は、好ましくは天然タンパク質をエンコードしたDNA配列の変更、適切な宿主細胞内でのDNA配列の形質転換及び生産酵素を形成するような修飾されたDNA配列の発現によって達成できる。本開示発明の酵素の変異体は、前駆体アミノ酸配列と比較して変更されたアミノ酸配列を含むペプタイドを含む。ここで、変異体酵素は、前駆体酵素が有していたセルロース分解能を有しており、いくつかの特定の様相においては変更された性質を示す。例えば、セルラーゼ変異体は改善されたpHの至適条件、高められた温度又は酸化安定性、セルロース以外の基質への低められた親和性又は結合性を示すがセルロース分解活性は維持したままである。発現されたセルラーゼ誘導体の機能的な活性が保持されている本開示発明に応じた変異体は、セルラーゼ変異体酵素をエンコードしているDNA断片から引き出されることが予想される。例えば、セルラーゼをエンコードしているDNA断片は、さらに、セルラーゼ領域の機能的な活性が保持されている5’または3’末端のどちらかで、このセルラーゼDNA配列に接続したヒンジ部またはリンカーをエンコードしているDNA配列または部分を含む。「変異体」及び「誘導体」の語は本明細書において等しく用いる。
【0053】
「等しい残基」とは、三次構造がエックス線結晶解析によって決定されている前駆物質セルラーゼに対する三次構造のレベルで相同を決定することによって定義される。等しい残基は、セルラーゼ及びハイポクレアジェコリーナCBH2の特定アミノ酸残基の主鎖原子のうちの2つ以上の原子座標(NのN、CAのCA、CのC及びOのO)が、位置あわせをしたときに、0.13nm及び、好ましくは0.1nm内にあるものと定義される。最良モデルが、問題となるハイポクレアジェコリーナCBH2のセルラーゼの非水素タンパク質原子の原子座標の最大オーバーラップを与えるように、方向付けられて置かれた後に、位置あわせは達成される。この最良モデルは、利用しうる高解像度での実験的回析データに対して最も低い解離因子(R)を与える結晶モデルである。例えば、US2006/0205042を参照のこと。
【0054】
ハイポクレアジェコリーナCBH2の特定の残基に機能的に類似している同等の残基は、ハイポクレアジェコリーナCBH2の特定の残基について定義され帰属される様式で、タンパク質の構造、基質との結合、又は触媒反応を、変え、修飾し、又は寄与するような立体配座をとることができるセルラーゼのアミノ酸であると定義される。さらに、この同等の残基は、所与の残基の主鎖原子は相同の位置を占めることに基づく同等の判断基準を満たさないかも知れないけれども、その残基の側鎖原子の少なくとも2の原子座標がハイポクレアジェコリーナCBH2の対応する側鎖原子から0.13nmに存在する程度に類似した位置を占める(その三次構造がX線結晶学によってすでに得られている)セルラーゼの残基である。ハイポクレアジェコリーナCBH2の結晶構造は、Zouら、1999年(非特許文献5、前掲)に示されている。
【0055】
「核酸分子」は、RNA、DNA及びcDNA分子を含む。遺伝暗号の退縮の結果として、CBH2及びこれらの変異体のような与えられたタンパクをエンコードしている塩基配列の多様性が生じる理解される。本開示発明は、遺伝暗号の退縮を与えることができるすべてのCBH2をコードしている変異塩基配列を予測するものである。
【0056】
「非相同の」核酸構築物または配列は、それが発現する細胞固有のものではない配列の一部を有している。制御配列に関する非相同とは、発現を現在調節している同じ遺伝子を調節するために生来機能しない制御配列(すなわちプロモーター又はエンハンサー)をいう。一般的に、非相同な塩基配列はそれらのもともとの細胞又は遺伝子の一部には本来存在しないものであり、感染、トランスフェクション、形質転換、顕微注入、エレクトロポーション又は同様の方法により細胞へ添加されたものである。「非相同な」核酸構築物は、ネイティブの細胞の中で発見された制御シーケンス/DNAコーディングシーケンスの組み合わせと同じであるか、ネイティブの細胞で発見されるものとは異なる制御シーケンス/DNAコーディングシーケンスの組み合わせを含む。
【0057】
ここで用いる「ベクター」という語は、異なる宿主細胞間を輸送することを目的とする核酸構築物である。発現ベクターとは、異質細胞内で、相同なDNA断片を取り込み、発現させる能力があるベクターをいう。多くの原核又は真核細胞のベクターは市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当該技術分野においてよく知られている。
【0058】
従って、「発現カセット」又は「発現ベクター」は、目的細胞内のある特定の核酸を転写させる一連の特定の核酸要素と共に用いる組み換え処理により、または合成的に生産された核酸構築物である。組み換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA、ウイルス又は核酸断片に取り込むことができる。典型的には、発現ベクターが取り込まれた組み換えカセット部分は、他の配列の中に、転写されるべき核酸配列及びプロモーターになる。
【0059】
本明細書で用いる「プラスミド」という語は、クローニングベクターとして用いられる環状2本鎖DNA(double−stranded(ds))構築体であり、多くのバクテリア及び幾つかの真核生物において染色体外にある自己複製する遺伝子要素を形成するものである。
【0060】
本明細書で用いる「選択マーカー−エンコードヌクレオチド配列」の語は細胞において発現できるヌクレオチド配列をいい、選択マーカーの発現により対応する選択因子の存在下、または成長環境で発現遺伝子を含む細胞は成長できるようになる。
【0061】
本明細書で用いられる「プロモーター」という語は、下流遺伝子を直接転写する核酸配列をいう。このプロモーターは一般的に目的遺伝子を発現する宿主細胞に適している。このプロモーターは、他の転写又は翻訳調節核酸配列(「制御配列」ともいう)と共に、与えられる遺伝子の発現に必要である。一般的には、この転写又は翻訳調節配列には、プロモーター塩基配列、リボゾーム結合部位、転写開始又は終了塩基配列、翻訳開始又は終了配列、及びエンハンサー、又は活性配列を含むがそれらに限られない。
【0062】
「キメラ遺伝子」又は「非相同核酸構造」は、調節領域を含む、異なる遺伝子の形質転換部分を構成する非野生型遺伝子(すなわち、宿主内に導入されたもの)をいう。宿主細胞の形質転換をするためのキメラ遺伝子構築物は、一般的に異種のタンパク質コーディング配列、または選択マーカーのキメラ遺伝子の中に、形質転換細胞に、例えば、抗生物質抵抗性を与えているタンパク質をエンコードしている選択マーカー遺伝子と操作可能に接続した転写の規制の部分(促進因子)から構成されている。本開示発明の典型的なキメラ遺伝子は、宿主細胞への輸送については、構成要素となる転写調節領域、又はこれらを誘発する転写調節領域、タンパク質コード配列及びターミネーター配列を含む。キメラ遺伝子構築体は、目的タンパク質の分泌が必要な場合には、シグナルペプチドをエンコードする第2のDNA配列も含む。
【0063】
核酸配列は、他の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに、「作動可能に結合している」。例えば、分泌リーダーをコードしているDNAは、もしそれが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現するなら、ポリペプチドに関するDNAと作動可能に結合する。プロモーター又はエンハンサーは、もしそれが、配列の転写に影響するなら、コード配列と作動可能に結合する。又はリボゾーム結合部位は、それが、転写を促進するような位置にあるならば、コード配列と作動可能に結合している。一般に「作動可能に結合」とは結合するDNA配列が隣接し、分泌開始端部の場合、隣接しかつリーディングフレーム中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。結合は、適宜の制限酵素認識部位で連結反応により達成される。そのような部位が存在しない場合、従来方法によりPCR用の合成オリゴヌクレオチド・アダプタ、リンカーまたはプライマーを用いる。
【0064】
ここで用いる、「遺伝子」の語はポリペプチド鎖の生成に関するDNAの染色体断片を意味し、コード領域に先行または後に続く領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)またはリーダー配列及び3’非翻訳(3’UTR)またはトレーラー配列)、及び個々のコード断片(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0065】
一般に、配列番号1としてここに提供された野生型配列に対する中から高ストリンジェンシー条件下で、変異体CBH2をエンコードする核酸分子はハイブリダイズする。しかし、場合によっては、CBH2エンコーディング核酸配列によってエンコードされたタンパク質は天然タンパク質と同じ又は実質的に同じアミノ酸配列を有する一方で、実質的に異なるコドン使用頻度を有するCBH2エンコーディング核酸配列を、採用される場合がある。例えば、コーディング配列は、宿主によって利用される特定コドンの頻度に従い、特定の原核生物又は真核生物の発現システムにおいて、CBH2の発現を早くするために修飾される。Te’oら、(FEMS Microbiology Letters、第190巻、13−19頁、2000年)、は、例えば、糸状菌の発現についての遺伝子の最適化について記載している。
【0066】
核酸配列は、2つの配列が中〜高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件下でお互いに特異的にハイブリダイズする場合、対照核酸配列に「選択的にハイブリダイズ可能」であると考えられる。ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合体又はプローブの融点(Tm)に基づいている。例えば、「最大ストリンジェンシー」は典型的にTm−5℃(プローブのTmより5℃低い)で起こる;「高ストリンジェンシー」はTmより約5−10℃低い温度で起こる;「ゆるやかな」又は「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmより約10−20℃低い温度で起こる;及び「低ストリンジェンシー」はTmより約20−25℃低い温度で起こる。機能的に、最大のストリンジェンシー条件は、ハイブリダーゼーションプローブと厳密な同一性またはほぼ厳密な同一性を有する配列を同定するために使われることができ;一方、高いストリンジェンシーは、プローブと約80%以上同一性を有する配列を同定するために使われる。
【0067】
中間ストリンジェンシー又は高ストリンジェンシー条件は、本技術分野でよく知られている(例えば、Sambrookら、1989年、Chapters9及び11、及びin Ausubel、F.M.、ら、1993年を参照のこと。これらは参照によりここに組み込まれる。)高ストリンジェンシー条件の例としては、50%ホルムアミド、5XSSC、5Xデンハード溶液、0.5%SDS及び100μg/ml変性キャリアDNA中、約42℃でのハイブリダイゼーションを行い、続いて2XSSC及び0.5%SDS中で、室温で2回洗浄し、0.1XSSC及び0.5%SDS中で、更に42℃で2回洗浄する。
【0068】
例えば、細胞又は核酸、タンパク質、又はベクターについてここで用いる「組換え体」は、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、非相同核酸配列又はタンパク質の導入によりあるいは天然の核酸又はタンパク質の修飾により、改変されているか、その細胞がそのように修飾された細胞由来であるこことを意味する。従って、例えば、組換え細胞は、天然細胞携帯(非組換え体)内には見られない遺伝子を発現するか、他の手段で天然遺伝子を以上に発現するか、又は未発現のままにするか、又は全く発現しない。
【0069】
ここに用いる「形質転換」「安定な形質転換」「遺伝子組み換え」の語は、細胞に関して、ゲノムに組み込まれ、または複数の世代を通して維持されているエピゾームプラスミドとして非天然(非相同)核酸配列を有する細胞を意味している。
【0070】
ここで用いられる、「発現」という語は、ポリペプチドが、遺伝子の核酸シーケンスに基づいて生み出される過程を言う。この過程は転写と翻訳の両方を含む。
【0071】
核酸配列を細胞のなかに挿入するという文意の中で用いられている「導入」の語は、「トランスフェクション」、又は「形質転換」又は「形質導入」を意味し、核酸配列を真核又は原核細胞に組み込むことを含み、核酸配列が細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体又はミトコンドリアDNA)に組み込まれ、自己複製子へ転換されるか、一時的に発現される(例えば、トランスフェクトmRNA)。
【0072】
「CBH2発現」という語は、cbh2遺伝子又はそれらの変異体の転写及び翻訳をいう、この生産物はRNA前駆体、mRNA、ポリペプチド、翻訳後調節過程のポリペプチド及びトリコデルマコニンギ(Trichoderma koningii)、ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)(トリコデルマロンギブラキアタム(Trichoderma Longibrachiatum)(トリコデルマレーシ(Trichoderma reesei))、又はトリコデルマビリデ(Trichoderma viride)、としても知られている)及び、ハイポクレアシュワイニッチ(Hypocrea schweinitzii)等の、関連種由来の新規タンパク質を有する生産物を言う。実施例で示す方法であるが、CBH2発現を測定する方法は、CBH2タンパクについてのウエスタンブロット、cbh2のmRNAに対してのノザンブロット及び逆転写ポリメラーセ連鎖反応(RT−PCR)測定、並びに、以下で説明されているリン酸膨張セルラーゼ及びPAHBAHアッセイ、(a)PASC:(Karlsson、J.ら、(2001年)、Eur.J.Biochem、第268巻、6498−6507頁、Wood、T.(1988)in Methods in Enzymology、第160巻、Biomass Part a Cellulose and Hemicellulose (Wood、W.&Kellog、S.Eds.)、19−25頁、Academic Press、 San Diego、 CA、USA)及び(b)PAHBAH:(Lever、M.(1972年)Analytical Biochemistry、47、273、Blakeney、A.B.&Mutton、L.L.(1980年)Journal of Science of Food and Agriculture、第31巻、889、Henry、R.J.(1984年)Journal of the Institute of Brewing、第90巻、37頁)を含む。
【0073】
「選択的スプライシング」は、複数のイソ型ポリペプチドを単一遺伝子から生成する方法を言い、該スプライシングは該遺伝子の全部ではないが、いくつかをプロセッシングする間、非連続エキソンをつなげる工程を含む。従って、特定のエキソンはいくつかの選択エキソンの1つに接続され、メッセンジャーRNAを形成する。この選択的にスプライスされたmRNAは、いくつかの部分が共通で、いくつかの部分が異なる、ポリペプチド(スプライス変異体)を生産する。
【0074】
「シグナル配列」という語は、細胞外への成熟型タンパクの分泌を促進するN末端部分アミノ酸配列である。細胞外タンパク質成熟型は、分泌過程の中で分裂するシグナル配列を欠いている。
【0075】
「宿主細胞」という語は、ベクターを含み、発現構築物の複製、及び/又は転写又は、転写及び翻訳(発現)を支える細胞である。本開示発明で用いられる宿主細胞は、大腸菌のような原核生物の細胞又は、酵母菌、植物、昆虫、両生類又は哺乳類のような真核細胞である。一般的には、宿主細胞は糸状菌である。
【0076】
「糸状菌」という語は、当該技術分野において糸状菌であると認められる任意の又は全ての糸状菌を意味する。好ましい、細菌は、アルペルギウス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、フサリウム(Fusarium)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、ペニシリウム(Penicillium)、フミコーラ(Humicola)、ニューロスポラ(Neurospora)又はエメリセラ(Emericella)、ハイポクレア(Hypocrea)などそれらの別の有性型からなる群より選択される。無性の工業用菌類であるトリコデルマレーシは子嚢菌類のハイポクレアジェコリーナのクローンの誘導体であることは明らかである。Kuhlsら、PNAS(1996)93:7755−7760参照。
【0077】
「セロビオサッカライド」という語は、例えば、セロビオースのように、2−8のグルコース単位を含み、β−1,4結合を有する少糖類を言う。
【0078】
「セルラーゼ」、「セルロース分解酵素」、又は「セルラーゼ酵素」の語は、セルロースポリマーをより短いセロオリゴ糖オリゴマー、セロビオース、及び/又はグルコースに分解する能力を有する酵素の分類をいう。エキソグルカナーゼ、エキソセロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、及びグルコシダーゼのようなセルラーゼの多くの例は、細菌、植物及びバクテリアを含むセルロース分解能を有する有機体から得られる。これらの微生物から作られるこの酵素は、セルロースのグルコース転化有用な作用をする3タイプのタンパク質;エンドグルカナーセ(EG)、セロビオハイドラーゼ(CBH)、及びベータ−グルコシダーゼ(BG)の混合物である。これらの3の異なる型のセルラーゼ酵素は相乗的に作用し、セルロース及びその誘導体をグルコースへ転化する。
【0079】
木材腐敗菌であるトリコデルマ、堆肥バクテリアであるサーモモノスポラ(現サーモビヒダ)、バチルス及びセルロモナス;ストレプトマイセス;及び糸状菌フミコーラ、アスペルギウス及びフザリウムを含む多くの微生物はセルロースを加水分解する酵素を作る。
【0080】
ハイポクレアジェコリーナ由来CBH2は、グルコース化加水分解酵素ファミリー6(以下Cel6)のメンバーであり、特にハイポクレアジェコリーナにおいて確立されたグルコース化加水分解酵素ファミリー6の第一のメンバーである(以下Cel6A)。グルコース化加水分解酵素ファミリー6はエンドグルカナーゼ及びセロビオハイドラーゼ/エキソグルカナーゼを含んでおり、CBH2は後者である。したがって、CBH2、CBH2型タンパク質及びCel6セロビオハイドラーゼという語は、ここにおいて互換的に使用される。
【0081】
「セルロース結合領域」という語は、ここにおいて、セルラーゼのアミノ酸配列の一部分又セルラーゼ又はそれらの誘導体のセルロース結合活性に含まれる酵素の領域を言う。セルロース結合領域は、一般的にセルラーゼとセルロース、セルロース誘導体またはそれらのその他の多糖類同等物を非共有結合にすることにより機能する。従って、セルロース結合領域は触媒中心に起因する著しい触媒活性を示さない。他言すれば、セルロース活性部位は、触媒活性を有する構造成分とは区別されるセルロース酵素タンパク質の三次構造の構造成分である。セルロース結合部位とセルロース結合構成要素という語はここでは同義に使用される。
【0082】
ここにおいて、「界面活性剤」という語は、表面活性特性を有すると当該技術分野で認められている任意の化合物をいう。従って、例えば、界面活性剤は、一般的に洗剤中入っている陰イオン性、陽イオン性及び非イオン性の界面活性剤から成る。陰イオン性界面活性剤は直鎖又は分岐のアルキル・ベンゼン・スルホン酸塩;直鎖又は分岐アルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩;アルキル又はアルケニル硫酸塩;オレフィンスルフォン酸塩;及びアルカンスルフォン酸塩を含む。両性界面活性剤は、4級アンモニウム塩スルフォンサン塩、及びベタイン型両性界面活性剤を含む。そのような両性界面活性剤は同一分子内にプラス及びマイナスに帯電した部分を有している。非イオン性界面活性剤は高級脂肪酸アルカノールアミド又はそれらのアルキレン酸化物の付加物、脂肪酸グリセリンモノエステル及び同種のものだけでなく、ポリオキシアルキレンエーテルも同様に含まれる。
【0083】
ここで用いる「セルロース含有繊維」とは、天然セルロース物質及び人工セルロース物質(例えば、ジュート、麻、ラミー、レーヨン及びライオセル)を含む綿または非綿含有セルロース含有物から作成されるいかなる縫合又は非縫合織物、毛糸又は繊維をいう。
【0084】
ここで用いられる「綿を含む布地」とは、純粋な綿又は、綿織布、綿ニット、綿デニム、綿毛糸、原綿(綿花)及び同種のものを含んだ綿混合物から作成されるいかなる縫合又は非縫合織物、毛糸又は繊維をいう。
【0085】
ここで用いる「ストーンウォシュ組成物」とは、セルロース含有織物のストーンウォシュに用いる製剤を言う。ストーンウォシュ組成物はセルロース含有布地を販売するに先立って加工するために用いられる、すなわち、製造過程において用いられる。対照的に、洗浄組成物は汚れた衣類の洗浄することを対象としており、工業的生産過程においては使用されない。
【0086】
ここで用いられる「洗浄組成物」は、セルロースを含んだ汚れた布地の洗濯に対する洗浄手段に用いることを意図された混合物である。本開示発明の文脈中、そのような組成物生物は、セルラーゼ及び界面活性剤に加えて、さらに加水分解酵素、原材料、漂白剤、漂白活性剤、青味剤、蛍光染料、ケーキング抑制剤、マスキング剤、セルラーゼ活性剤、抗酸化剤、及び可溶化剤を含む。
【0087】
ここで用いる「cbh2遺伝子の発現の減少又は排除」とは、cbh2遺伝子が遺伝子から削除されているために、組み換え宿主微生物によって発現できないこと;又は機能的なCBH2酵素が宿主の微生物によって生み出されないように、cbh2遺伝子が修飾されていることのどちらかを意味する。
【0088】
ここで用いる「変異体cbh2遺伝子」は、ハイポクレアジェコリーナ由来のcbh2遺伝子の核酸配列が、コーディングシーケンスを取り除き、追加し、および/または処理することによって変更されたことを意味する。
【0089】
ここで用いる、「精製する」という語は、一般に、遺伝子組換された核酸またはタンパク質を含む細胞を生化学的精製、および/またはカラムクロマトグラフィーにかけることを意味する。
【0090】
ここで用いる「活性の」又は「生物学的に活性の」とは、ある特定のタンパク質と関係のある生物学的活性を言い、ここでは、互換的に使用される。例えば、プロテアーゼと関係する酵素活性はタンパク質分解であり、実際に、活性を有するプロテアーゼはタンパク質分解活性を有している。このことは、与えられたタンパク質の生物活性は一般に当業者によってそのタンパク質に帰属するどのような生物活性でも言うと理解される。
【0091】
ここで用いる「濃縮する」という語は、CBH2が入手できる、野生型又は自然発生する細菌性のセルラーゼ組成物に見られるCBH2濃度よりも相対的に高い濃度である。この濃縮する、高める、促進されたという語は、互換的に用いられる。
【0092】
野生型糸状菌セルラーゼ組成物は、天然に存在する糸状菌源によって産生されたものであり、それは1以上のBGL、CBHおよびEG成分を含み、これらの成分のそれぞれは該糸状菌源によって産生された割合で認められる。したがって、濃縮されたCBH組成物はCBHを変えられた割合で有し、CBHの他のセルラーゼ成分(すなわち、EG、ベータ−グルコシダーゼおよび他のエンドグルカナーゼ)に対する比は高められている。従来技術で知られた任意の手段によって、CBHを増加するか、あるいは少なくとも1の他の成分を減少(または除去)することによって、この比は増加されることができる。
【0093】
「単離された」又は「精製された」の語は、本来有している成分の少なくとも1つを除去した核酸又はアミノ酸を意味する。
【0094】
従って、図示するように、自然発生的なセルラーゼシステムは、至適pHにおけるイオンクロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、分子ふるい及び同種のものを含むものであり、出版された文献中に記載の分離技術により、大幅に精製された組成物に精製される。例えば、イオン交換クロマトグラフィー(たいていは陰イオン交換クロマトグラフィー)において、pH勾配又は塩勾配又はpH及び塩の両者の勾配を用いた溶出により、セルラーゼ組成物を分離することは可能である。精製されたCBHは、最終的にCBH濃度の高い溶液となる酵素溶液に添加される。可能であれば、他のセルラーゼをエンコードしている1以上の遺伝子の欠損部分と関連して、CBHをエンコードした遺伝子の過剰発現させる分子遺伝学的方法を用いて、微生物により生産されるCBHの量を多くすることは可能である。
【0095】
細菌のセルラーゼは1以上のCBH成分を含んでいる。この異なる成分は、イオン交換クロマトグラフィー及び同種のものを介して分離することが可能な、遺伝的に異なった等電点を有する。単一CBH成分又はCBH成分の組み合わせのどちらか一方が、酵素溶液中に用いられる。
【0096】
酵素溶液中に用いる場合、CHB2の相同体又は変異体成分は一般的にバイオマスから可溶糖の放出速度を最も高くするのに十分な量が添加されている。追加された同族体または変異体のCBH2成分の量は、糖化される生物量のタイプに依存しており、熟練した者によって直ちに決定することができる。酵素溶液中に用いる、セルラーゼ組成物中の、相同又は変異CBH2成分の重量パーセントは、1乃至100の間であり、好ましくは約1、好ましくは約5、好ましくは約10、好ましくは約15、又は好ましくは約20重量パーセントから、好ましくは約25、好ましくは約30、好ましくは約35、好ましくは約40、又は好ましくは約50重量パーセントまでである。さらに、好ましい範囲は、約0.5から15重量パーセント、約0.5から20重量パーセント、約1から約10重量パーセント、約1から約15重量パーセント、約1から約20重量パーセント、約1から約25重量パーセント、約5から約20重量パーセント、約5から約25重量パーセント、約5から約30重量パーセント、約5から約35重量パーセント、約5から約40重量パーセント、約5から約45重量パーセント、約5から約50重量パーセント、約10から約20重量パーセント、約10から約25重量パーセント、約10から約30重量パーセント、約10から約35重量パーセント、約10から約40重量パーセント、約10から約45重量パーセント、約10から約50重量パーセント、約15から約60重量パーセント、約15から約65重量パーセント、約15から約70重量パーセント、約15から約75重量パーセント、約15から約80重量パーセント、約15から約85重量パーセント、約15から約95重量パーセントである。しかしながら、(酵素溶液中に)用いられたときに、セルラーゼ組成物中の、あるEGタイプの成分に対する相同又は変異CBH成分の重量パーセントは、好ましくは約1、好ましくは約5、好ましくは約10、好ましくは約15、又は、好ましくは約20重量パーセントから、好ましくは約25、好ましくは約30、好ましくは約35、好ましくは約40、好ましくは45、又は好ましくは約50重量パーセントまでである。さらに、好ましい範囲は、約0.5から15重量パーセント、約0−5から20重量パーセント、約1から約10重量パーセント、約1から約15重量パーセント、約1から約20重量パーセント、約1から約25重量パーセント、約5から約20重量パーセント、約5から約25重量パーセント、約5から約30重量パーセント、約5から約35重量パーセント、約5から約40重量パーセント、約5から約45重量パーセント、約5から約50重量パーセント、約10から約20重量パーセント、約10から約25重量パーセント、約10から約30重量パーセント、約10から約35重量パーセント、約10から約40重量パーセント、約10から約45重量パーセント、約10から約50重量パーセント、約15から約20重量パーセント、約15から約25重量パーセント、約15から約30重量パーセント、約15から約35重量パーセント、約15から約40重量パーセント、約15から約45重量パーセント、約15から約50重量パーセントである。
II.セルラーゼ
【0097】
セルラーゼは、当該技術分野において、セルロース(ベータ−1,4グルカン又はベータD−グルコシド結合)を加水分解し、グルコース、セロビオース、セロビオオリゴサッカライド及び同種のものを生産する酵素として知られている。上記のように、セルラーゼは伝統的に3つの主クラスに分類される:エンドグルカナーゼ(EC3−2−1−4)(「EG」)、エキソグルカナーゼ又はセロビオハイドラーゼ(EC3−2−1−91)(「CBH」)及びベータグルコシダーゼ(EC3−2−1−21)(「BG」)である。
【0098】
ある特定の細菌は、エキソセロビオハイドラーゼ又はCBH型セルラーゼ及びベータグルコシダーゼ又はBG型セルラーゼを含む複合的なセルラーゼシステムを生産する。しかしながら、ときどきこれらのシステムは、或るときにはこれらのシステムはCBHタイプセルラーゼを欠き、一般にほとんどまたは全くCBHタイプセルラーゼを含まない細菌性セルラーゼを含む場合がある。加えて、EG成分及びCBH成分は、セルロースをより効果的に分解するために相乗的に相互作用をすることが示されている。この異なった成分、すなわち、複合成分又は完全なセルラーゼシステムの中のさまざまなエンドグルカナーゼ及びエキソセロビオハイドラーゼは、等電点、分子量、グリコシル化度、基質特異性及び酵素活性パターンなどにおいて、一般的に異なる性質を有する。
【0099】
エンドグルカナーゼ型セルラーゼは、セルロースの結晶化度の低い部分の内部ベータ−1,4グルコシド結合を加水分解し、エキソセロビオハイドラーゼ型セルラーゼは、セルロースの還元又は非還元末端からセロビオースを加水分解する。それは、エンドグルカナーゼ成分の作用はエキソエロビオハイドラーゼ成分によると認められる新しい鎖端を作ることによるエキソセロビオハイドラーゼの作用を大いに促進することができるということになる。さらに、ベータグルコシダーゼタイプのセルラーゼは、セロビオースのような糖質残基を含むグルコシドだけでなく、メチル−β−Dグルコシド及びp−ニトロフェニルグルコシドのようなアルキル及び/又はアリールβ−D−グルコシダーゼの加水分解に触媒作用をすることが示されている。このことは、微生物の唯一の生産物として、グルコースを生産し、セロビオハイドラーゼ及びエンドグルカナーゼを抑制するセロビオースを減らすか又は排除する。
【0100】
セルラーゼは、洗浄能力を高めるために、柔軟成分として、及び綿布製品の風合いを改善するために、洗剤組成物中に多くの使用例が見られる(Hemmpel、ITB Dyeing/Printing/Finishing、第3巻、5−14頁、1991年;Tyndall、Textile Chemist and Colorist、第24巻、23−26頁、1992年;Kumarら、Textile Chemist and Colorist、第29巻、37−42頁、1997年)。一方その作用機能は、本開示発明の一部ではないが、セルラーゼの柔軟性及び色の回復特性はセルラーゼ組成物中のアルカリ性エンドグルカナーゼ成分に起因するものである。実証例として、US Nos.5,648,263、5,691,178、及び5,776,757がある。これらは、特定のアルカリ性エンドグルカナーゼ成分が豊富なセルラーゼ組成物を含んでいる洗剤成分は、アルカリ性エンドグルカナーゼ成分が豊富でないセルラーゼ組成物と比較すると、処理した衣類に対して色の回復及び柔軟性の改善を与えることができる。更に、そのようなアルカリ性エンドグルカナーゼ成分を洗剤成分へ用いることは、洗剤組成物のpH要件を補完していることを示している。(すなわち、US No.5,648,263、5,691,178、及び5,776,757に開示されているように、7.5から10のアルカリ性のpHにおいて最大活性を示すことによる)
【0101】
セルラーゼ組成物は、綿を含む布製品を分解し、最終的にこの布製品において強度が低くなることが示唆され(US No.4,822,516)、セルラーゼ組成物を市販の洗剤成分に使用することをためらう原因となっている。エンドヌクレアーゼ成分から成っているセルラーゼ組成物は、完全なセルラーゼシステムから成っている組成物に比べて綿を含んだ布に対して低い強度損失を示すことが示唆されている。
【0102】
セルラーゼは、セルラーゼバイオマスをエタノールに分解すること(ここにおいて、セルラーゼがセルラースをグルコースに分解し、酵母又は他の微生物がさらにグルコースをエタノールに発酵させる)において、機械パルプ(Pereら、 In Proc. Tappi Pulping Conf.、Nashville、TN、27−31、pp.693−696、1996年)の処理、飼料添加物(WO91/04673)としての使用のために、そして粒子湿式粉砕において有益であることが明らかにされている。
【0103】
大部分のCBH及びEGは、リンカーペプタイド(Suurnakkiら、2000年)による、セルロース結合ドメイン(CBD)から分離されたコアドメインを含む多重ドメイン構造を有する。コアドメインは、酵素がセルロースに結合することによりセルロースとCBDの相互作用が起きる活性部位を含んでいる。(van Tilbeurgh ら.、1986;Tomme ら.、Eur.J.Biochem.第170巻、575−581頁、1988年)このCBDは、結晶セルロースの加水分解に特に重量である。セロビオハイドラーゼが結晶セルラースを加水分解する能力は、CBDが存在しないときには明らかに減少することが示されている。(Linder and Teeri、J.Biotechnol.第57巻、15−28頁、1997年)しかしながら、CBDの確かな役割及び作用機能はいまだ憶測の範疇にある。CBDは、セルロース表面での有効な酵素の濃度を増加することにより(Stahlbergら、Bio/Technol.第9巻、286−290頁、1991年)、及び/又はセルロース表面から、1本鎖セルロースを分離することにより(Tormoら、EMBO J. vol.15、No.21、5739−5751頁、1996年)、酵素活性を高めるということが示唆されてきた。異なる基質上におけるセルラーゼドメインの効果に関する研究の多くは、パパインを用いた有効なタンパク質分解によりコアプロテインを生産することができたので(Tommeら、 1988年)、セロビオハイドラーゼのコアプロテインを用いて実施した。数多くのセルラーゼは特定の文献に開示されており、(その例は以下のものに含まれる):Trichoderma reeseiの例:Shoemaker、S.ら.、Bio/Technology、1:691−696、1983年、この文献はCBH1を開示する。Teeri、T.ら、 Gene、51:43−52、1987年、この文献はCBH2を開示する。Trichoderma以外の主由来のセルラーゼも説明されている、例えば、Ooiら、Nucleic Acids Research、vol.18、No.19、1990年、この文献は、Aspergillus aculeatus由来のエンドグルカナーゼF1−CMCのシークエンスをコードしているcDNAを開示している。Kawaguchi T.ら、Gene 173(2):287−8、1996年、この文献はAspergillus aculeatus由来のベータグルコシダーゼ1をエンコードしているcDNAのクローニング及び配列決定を開示している。Sakamoto ら、Curr.Genet.第27巻、435−439頁、1995年、この文献はAspergillus kawachii IFO 4308由来のエンドグルカナーゼCMCase−1をエンコードしているcDNAの塩基配列を開示している。Saarilahti ら、Gene、第90巻、9−14頁、1990年、この文献はErwinia carotovara由来のエンドグルカナーゼを開示している。Spilliaert Rら、Eur J Biochem.224(3):923−30、1994年この文献はRhodothermus marinu由来の熱耐性ベータグルカナーゼをコードしているbglAのクローニング及び配列決定を開示している。Haildorsdottir ら、Appl Microbiol Biotechnol.49(3):277−84、1998年、これはグリコシルハイドラーゼ ファミリー12の熱耐性セルラーゼをエンコードしているRhodothermus marinus遺伝子のクローニング、配列決定及び過剰発現を開示している。熱ストレス条件下又は界面活性剤の存在中での性能の改善、高められた特異的活性、基質開裂パターンを変更すること、及び/又はin vitroにおける高レベルでの発現のような改善された性質を有する新規セルラーゼを確立し、特徴づけることが求められている。
【0104】
さまざまな量のCBH型、EG型及びBG型セルラーゼからなる新しく改良されたセルラーゼ組成物生物は:(1)高められた洗浄能力(柔軟成分として機能し、及び/又は綿布の風合いを改善する)を示す洗剤組成物中への使用(例えば、「ストーンウォッシュ」又は「生物研磨」);(2)低品質なウッドパルプ又は他のバイオマスから糖を生産する組成物中への使用(例えば、バイオエタノール生産)及び/又は(3)食品組成物へ使用することにより重要な意味を持つ。
【0105】
本開示発明はセルラーゼ変異体を含む全セルラーゼ調製物を提供する。ここで用いる、「全セルラーゼ調製物」は、自然発生及び非自然発生組成物の両方を定義する。「自然発生」組成物は、自然発生源によって生産されるものであって、1以上のセロビオハイドラーゼタイプ、1以上のエンドグルカナーゼタイプ及び1以上のβ−グルコシダーゼタイプから構成され、これらの組成物は自然発生源により生産された比率で存在する。自然発生組成物は、セルロース分解酵素に関して、成分酵素の比率が自然界の有機体によって生産されるものと変わらないように、修飾されていない有機体によって生産されたものである。「非自然発生」組成物は、(1)自然発生の割合又は非自然発生の割合、すなわち、改変割合のどちらかの割合でセルロース分解酵組成物と結合している組成物;又は(2)1以上のセルロース分酵素を過剰発現するように又は発現しないように修飾された有機体;又は(3)少なくとも1のセルロース分解酵素が欠失するように修飾された有機体、によって生産された組成物を包含する。従って、幾つかの態様において、全セルラーゼ混合物は、1以上の各種EGs及び/又はCBHsの欠失を有する。例えば、EG1は単独で、又は他のEGs及び/又はCBHsと共に欠失している。
【0106】
一般に、全セルラーゼ調製物は、酵素、たとえば、(i)エンドグルカナーゼ(EG)または1,4−β−d−グルカン−4−グルカノヒドロラーゼ(EC3.2.1.4)、(ii)エキソグルカナーゼ、たとえば1,4−β−d−グルカングルカノヒドロラーゼ(セロデキストリナーゼとしても知られている。)(EC3.2.1.74)および1,4−β−d−グルカンセロビオヒドロラーゼ(エキソ−セロビオヒドロラーゼ、CBH)(EC3.2.1.91)、および(iii)β−グルコシダーゼ(BG)もしくはβ−グルコシドグルコヒドロラーゼ(EC3.2.1.21)をこれらに限定されることなく含む。
【0107】
本開示発明では、全セルラーゼ調製物は、セルロース素材の加水分解に有用である任意の微生物由来のものであることができる。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は糸状菌の全セルラーゼである。「糸状菌」は、真菌類(Eumycota)および卵菌類(Oomycota)の亜門のすべての糸状型を含む。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス、エメリセラ(Emericella)、フサリウム、フミコーラ、ムコール、マイセリオフソーラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、スシタリジウム(Scytalidium)、シーラビア(Thielavia)、トリプロクラジウム(Tolypocladium)またはトリコデルマ種の全セルラーゼである。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は、アスペルギルスアクレアタス、アスペルギルスアワモリ、アスペルギルスフォチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルスジャポニカ(Aspergillus japonica)、アスペルギルスニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)またはアスペルギルオリザエ(Aspergillus oryzae)の全セルラーゼである。他の実施態様では、全セルラーゼ調製物は、フサリウムバクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウムセレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウムクルックウェレンス(Fusarium crookwellense)、フサリウムカルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウムグラミネアラム(Fusarium graminearum)、フサリウムグラミナム(Fusarium graminum)、フサリウムヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウムネガンディ(Fusarium negundi)、フサリウムオキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウムレティクラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウムロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウムサンブシナム(Fusarium sambucinum)、フサリウムサルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウムスポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウムサルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウムトルロサム(Fusarium torulosum)、フサリウムトリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)またはフサリウムベネナタム(Fusarium venenatum)の全セルラーゼである。他の実施態様では、全セルラーゼ調製物は、フミコーラインソレンス、フミコーララヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコールミーヘイ(Mucor miehei)、マイセリオフソーラサーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポーラクラッサ(Neurospora crassa)、スシタリジウムサーモフィラム(Scytalidium thermophilum)またはシーラビアテレストリス(Thielavia terrestris)の全セルラーゼである。他の実施態様では、全セルラーゼ調製物は、トリコデルマハージアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマコニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマレーシ、たとえばRL−P37(Sheir−Neissら、Appl.Microbiol.Biotechnology、1984年、第20巻、p.46−53;Montenecourt B.S.、Can.、1987年)、QM9414(ATCC No.26921)、NRRL 15709、ATCC 16361、56764、56466、56767またはトリコデルマビリデ、たとえばATCC 32098および32086の全セルラーゼである。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は、トリコデルマレーシRutC30の全セルラーゼであり、これはアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)からトリコデルマレーシATCC 56765として入手可能である。
【0108】
本開示発明に用いるのに適した市販のセルラーゼ調製物の例は、たとえばCELLUCLAST(商標)(Novozymes A/S社から入手可能)およびLAMINEX(商標)、IndiAge(商標)およびPrimafast(商標)LAMINEX BG酵素、(Danisco US社、Genencor部門から入手可能)を含む。
【0109】
本開示発明では、全セルラーゼ調製物は、セルロース素材を加水分解する能力のある酵素の発現をもたらす、従来技術で知られた任意の微生物培養方法由来のものであることができる。発酵は、セルラーゼが発現されまたは単離されるのを可能にする好適な培地中および条件下の、実験室または工業用発酵槽中の、振とうフラスコ培養、小規模または大規模発酵、たとえば連続、バッチ、流加もしくは固相発酵を含むことができる。
【0110】
一般に、セルロース素材を加水分解する能力のある酵素の産生に適した細胞培地中で、微生物は培養される。培養は、従来技術で知られた手順を用いて炭素および窒素源ならびに無機塩を含む好適な栄養培地中で行われる。好適な培地、成長およびセルラーゼの産生に適した温度範囲および他の条件は従来技術で知られている。非限定的な例として、トリコデルマレーシによるセルラーゼの産生のための普通の温度範囲は24℃〜28℃である。
【0111】
一般に、全セルラーゼ調製物は、発酵によって産生され最低限の回収および/もしくは精製をされた状態で、またはされない状態で用いられる。たとえば、セルラーゼが細胞によって細胞培地中に分泌されると、セルラーゼを含む細胞培地が用いられることができる。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は、培地および細胞を包含する発酵物質の非分画内容物を含む。あるいは、全セルラーゼ調製物は、任意の都合のよい方法、たとえば沈降、遠心分離、親和性、ろ過または従来技術で知られた任意の他の方法によって処理されることができる。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は、たとえば濃縮され、そしてさらなる精製なしに用いられることができる。ある実施態様では、全セルラーゼ調製物は、細胞生存率を減少しまたは細胞を殺す化学剤を含む。ある実施態様では、細胞は従来技術で知られた方法を用いて溶解されまたは透過性にされる。
III.分子生物学
【0112】
1の実施態様では、本開示発明は、糸状菌中で機能するプロモーターの調節下における変異体cbh2遺伝子の発現を提供する。したがって、本開示発明は、組換え遺伝学の分野のルーチンの手法に依存する(たとえば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、1989年、第2版;Kriger、Gene Transfer and Expression:A laboratory Manual、1990年;およびAusubelら編、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、1994年、米国、ニューヨーク州、Greene Publishing and Wiley−Interscience社参照)。
cbh2核酸配列を変異する方法
【0113】
変異を導入する従来技術で知られた任意の方法が、本開示発明によって検討されることができる。
【0114】
本開示発明は、変異体cbh2の発現、精製および/または単離ならびに使用に関する。これらの酵素は、好ましくはハイポクレアジェコリーナ由来のcbh2遺伝子を用いる組換え方法によって調製される。発酵ブロスは精製されまたはされないで用いられることができる。
【0115】
ハイポクレアジェコリーナ由来のcbh2遺伝子の単離およびクローン化後に、従来技術で知られた他の方法、たとえば部位特異的変異誘発法が用いられて、発現されたcbh2変異体中の置換されたアミノ酸に対応する置換、付加または欠失が行われる。ここでも、部位特異的変異誘発法および発現されたタンパク質中にアミノ酸の変化を導入する他の方法は、従来技術で知られている(Sambrookら、上掲;およびAusubelら、上掲)。
【0116】
ハイポクレアジェコリーナCBH2のアミノ酸配列変異体をコードするDNAは、従来技術で知られた多様な方法によって調製される。これらの方法は、以下のものに限定されることなく、部位特異的(または、オリゴヌクレオチド媒介)変異誘発法、PCR変異誘発法およびハイポクレアジェコリーナCBH2をコードする予め調製されたDNAのカセット変異誘発法による調製を含む。
【0117】
部位特異的変異誘発法は、置換変異体を調製するための好まれる方法である。この技術は従来技術で周知である(たとえば、Carterら、Nucleic Acids Res.、1985年、第13巻、p.4431−4443およびKunkelら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1987年、第82巻、p.488参照)。手短にいうと、DNAの部位特異的変異誘発法を実施する、出発DNAは、最初に所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブリダイズして、かかる出発DNAの一本鎖にすることによって変えられる。ハイブリダイゼーション後、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、および出発DNAの一本鎖をテンプレートとして用いて、DNAポリメラーゼが用いられて第二の鎖が合成される。したがって、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドが、得られた二本鎖DNA中に取り込まれる。
【0118】
PCR変異誘発法も、出発ポリペプチド、すなわちハイポクレアジェコリーナCBH2のアミノ酸配列変異体をつくるのに適している。Higuchi、PCR Protocols、1990年、p.177−183、Academic Press社:およびValleteら、Nuc.Acids Res.、1989年、第17巻、p.723−733参照。たとえば、Cadwellら、PCR Methods and Applications、1992年、第2巻、p.28−33も参照。手短にいうと、PCR中に少量のテンプレートDNAが出発物質として用いられると、テンプレートDNA中の対応する領域とは配列がわずかに異なるプライマーが用いられて、そのプライマーがそのテンプレートとは異なる位置においてのみテンプレート配列とは異なる比較的大量の特異的DNA断片が生成されることができる。
【0119】
変異体を調製するための他の方法であるカセット変異誘発法は、Wellsら、Gene、1985年、第34巻、p.315−323に記載された手法に基くものである。出発物質は、変異されるべき出発ポリペプチドDNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。出発DNA中の1または複数のコドンが同定される。同定された1または複数の変異部位の各側上に、特有の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなければならない。かかる制限部位が存在しないならば、出発ポリペプチドDNA中の適当な場所に制限部位を導入する上記のオリゴヌクレオチド媒介変異誘発法を用いて、該制限部位が生成されることができる。プラスミドDNAはこれらの部位で切断されて直線にされる。制限部位間のDNAの配列をコードするが所望の1または複数の変異を含む二本鎖オリゴヌクレオチドが、標準的な手順を用いて合成され、その際該オリゴヌクレオチドの二本鎖は別々に合成され、そして次に標準的な手法を用いて一緒にハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと呼ばれる。このカセットは、直線にされたプラスミドにそれが直接、結合されるように、該直線にされたプラスミドの両末端と相容性である5’および3’末端を有するように設計される。このプラスミドは今、変異されたDNA配列を有する。
【0120】
上記の代わりの方法で、または上記に加えて、変異体CBH2をコードする所望のアミノ酸配列は決められることができ、またかかるアミノ酸配列変異体をコードする核酸配列は合成的に生成されることができる。
【0121】
このように調製された1または複数の変異体CBH2は、しばしば、このセルラーゼの目的とする用途に依存してさらなる修飾に付されることができる。かかる修飾は、アミノ酸配列のさらなる変更、1または複数の非相同ポリペプチドへの融合および/または共有結合的修飾を含むことができる。
IV.cbh2核酸およびCBH2ポリペプチド
A.変異体cbh2型核酸
【0122】
野生型cbh2の核酸配列は配列番号1に示される。本開示発明は、本明細書に記載された変異体セルラーゼをコードする核酸分子を包含する。核酸分子はDNA分子であることができる。
【0123】
CBH2変異体をコードするDNA配列がDNA構成体中にクローン化された後、このDNAは微生物を形質転換するために用いられる。本開示発明に従って変異体CBH2を発現する目的のために形質転換されるべき微生物は、好都合にはトリコデルマ種に由来する菌株を含むことができる。したがって、本開示発明に従って変異体CBH2セルラーゼを調製するための好まれる様式は、変異体CBH2の一部または全部をコードするDNAの少なくとも断片を含むDNA構成体によって、トリコデルマ種宿主細胞を形質転換することを含む。DNA構成体は一般にプロモーターに機能的に結合される。形質転換された宿主細胞は次に所望のタンパク質を発現するような条件下に育成される。その後、所望のタンパク質産生物は実質的な均一性まで生成されることができる。
【0124】
しかし、実際には、変異体CBH2をコードする所与のDNAのための最善の発現媒体はハイポクレアジェコリーナとは異なることがあるかもしれない。したがって、変異体CBH2の源有機体と系統発生的相似性を持つ形質転換宿主中でタンパク質を発現することがもっとも好都合かもしれない。アスペルギルスニガーが発現媒体として用いられることができる。アスペルギルスニガーを用いる形質転換手法の説明については、国際公開第98/31821号参照。この開示内容は参照によってその全体が取り込まれる。
【0125】
したがって、アスペルギルス種発現系の本明細書の記載は、例示の目的のためのみにおよび本開示発明の変異体CBH2を発現するための一つの選択肢として提供される。しかし、当業者は変異体CBH2をコードするDNAを適切であれば異なる宿主細胞中に発現したい気がするかもしれない。そこで、最適の発現宿主を決定するには変異体CBH2の源が考慮されなければならないことが理解されなければならない。さらに、当業者は、従来技術で入手できる用具を用いるルーチンの手法によって、特定の遺伝子について最適の発現系を選択する能力があるだろう。
B.変異体CBH2ポリペプチド
【0126】
本開示発明の変異体CBH2は、前駆体CBH2のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する。CBH2変異体のアミノ酸配列は、前駆体アミノ酸配列の1以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって前駆体CBH2のアミノ酸配列とは異なっている。好まれる実施態様では、前駆体CBH2はハイポクレアジェコリーナCBH2である。ハイポクレアジェコリーナCBH2の成熟アミノ酸配列は配列番号3に示される。したがって、本開示発明は、ハイポクレアジェコリーナCBH2中の特定の同定された残基と同等である位置にアミノ酸残基を有するCBH2変異体に関する。CBH2同属体の残基(アミノ酸)はハイポクレアジェコリーナCBH2の残基と、それが相同である(すなわち、一次あるいは三次構造における位置において対応している)か、あるいはハイポクレアジェコリーナCBH2中の特定の残基に、またはその残基の部分に機能的に類似している(すなわち、化学的もしくは構造的に結合し、反応しもしくは相互作用する、同一または類似した機能的能力を有する)ならば、同等である。本明細書で用いられる付番は、成熟CBH2アミノ酸配列の付番(配列番号3)に対応するように意図されている。
【0127】
相同を決定するアミノ酸配列のアラインメントは、好ましくは「配列比較アルゴリズム」を用いることによって決定される。比較のための配列の最適のアラインメントは、たとえばAdv.Appl.Math.1981年、第2巻、p.482のSmith & Watermanの局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.、1970年、第48巻、p.443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、1988年、第85巻、p.2422の相似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行によって(米国、ウィスコンシン州、Madison、Science Dr、575、Genetic Computer Group社、Wisconsin Genetics Softwear Package中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または目視検査によって実施されることができる。目視検査は図形処理パッケージ、たとえばカナダ国、モントリオール、Chemical Computing Group社によるMOEを用いてもよい。
【0128】
配列相似性を決定するのに適しているアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムであり、これはAltschulら、J.Mol.Biol.、1990年、第215巻、p.403−410に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Information(www.nih.gov)を通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは最初に、データベース配列中の同じ長さのワードで並べられたときに、ある正の閾値スコアTに一致するか、あるいはそれを満たすクエリー配列中の長さWのショートワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。これらの最初の近傍ワードヒットは、これらを含むもっと長いHSPを見出すための出発点の役割をする。このワードヒットは、比較されている2の配列に沿って、累積アラインメントスコアが増えることができる限り遠くまで両方向に拡張される。累積アラインメントスコアが最大到達値から量Xだけ減少したとき;累積スコアがゼロ以下になったとき;またはいずれかの配列が末端に達したときに、ワードヒットの伸長は停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは初期値としてワード長さ(W)11、BLOSUM62スコアマトリクス(HenikoffおよびHenikoff、Proc.Natl.Acad.USA、1989年、第89巻、p.10915参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M’5、N’−4および両ストランドの比較を用いる。
【0129】
BLASTアルゴリズムは、次に2の配列の相似性の統計解析を実施する(KarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.USA、1993年、第90巻、p.5857−5787参照)。BLASTアルゴリズムによって示される相似性の1の尺度は最小和確率(P(N))であり、これは2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然によって起きる確率の目安を与える。たとえば、試験アミノ酸配列とプロテアーゼアミノ酸配列とを比較したときの最小和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、もっとも好ましくは約0.001未満であるならば、該アミノ酸配列はプロテアーゼに相似しているとみなされる。
【0130】
本開示発明の目的のために、同一性の程度は、従来技術で知られたコンピュータプログラム、たとえばGCGプログラムパッケージ(ウィスコンシンパッケージのためのプログラムマニュアル、第8版、1994年8月、米国、53711、ウィスコンシン州、Madison、Science Dr、575、Genetic Computer Group社)(Needleman S.B.およびWunsch C.D.、Journal of Molecular Biology、1970年、第48巻、p.443―445)において提供されるGAPによって、以下のポリヌクレオチド配列比較用の設定値、すなわち5.0のGAPクリエーションペナルティおよび0.3のGAPエクステンションペナルティを有するGAPを用いて適当に決定される。
【0131】
トリコデルマレーシCBH2と他のセルラーゼとの間の構造アラインメントが、トリコデルマレーシCBH2(配列番号3)と中程度から高度の相同性、たとえば約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはさらに99%を有する他のセルラーゼにおける同等の/対応する位置を同定するために用いられることができる。当該構造アラインメントを得る1の方法は、GCGパッケージからのPile Upプログラムを、ギャップペナルティの初期値、すなわち3.0のギャップクリエーションペナルティおよび0.1のギャップエクステンションペナルティで用いることである。他の構造アラインメント方法は疎水性クラスター解析(Gaboriaudら、FEBS Letters、1987年、第224巻、p.149−155)およびリバーススレッディング(HuberおよびTorda、Protein Science、1998年、第7巻、142−149頁)を含む。
【0132】
各種の参照セルラーゼの成熟型の典型的アラインメントが図1に示される。参照セルラーゼは、ハイポクレアジェコリーナ(トリコデルマレーシとしても知られている。)CBH2、(配列番号3)、ハイポクレアキニンギCBH2(配列番号4)、フミコーラインソレンスCBH2(配列番号5)、アクレモニウムセルロリティカスCBH2(配列番号6)、アガリカスビスポラスCBH2(配列番号7)、フサリウムオシスポラムEG(配列番号8)、ファネロキーテクリソスポリウムCBH2(配列番号9)、タラロマイセスエメルソニCBH2(配列番号10)、サーモビフィダ.フスカ6B/E3 CBH2(配列番号11)、サーモビフィダフスカ6A/E2 EG(配列番号12)およびセルロモナスフィミCenA EG(配列番号13)を含む。配列は、ClustalWおよびMUSCLE多重配列アラインメントアルゴリズムを用いてアラインメントされた。図1の配列アラインメントのセルラーゼの同一性パーセントを示すマトリクスは、表1に示される。
【表1】

【0133】
配列検索は典型的には、所与の核酸配列をGenBank DNA Sequencesおよび他の公共データベース中の核酸配列と比較して評価するときに、BLASTINプログラムを用いて実施された。GenBank DNA Sequencesおよび他の公共データベース中のアミノ酸配列に対してすべてのリーディングフレームにおいてすでに翻訳されている核酸配列を検索するためには、BLASTEXプログラムが好まれる。BLASTINおよびBLASTEXの双方とも、11.0のオープンギャップペナルティおよび1.0のエクステンションギャップペナルティの初期値パラメータを用いて作動され、BLOSUM−62マトリクスを用いる(Altschulら、1997年参照)。
V.組換えCBH2変異体の発現
【0134】
本開示発明の方法は、変異体CBH2を発現する細胞を用いることに依存し、CBH2発現の特別な方法は要求されない。変異体CBH2は好ましくはこの細胞から分泌される。本開示発明は、変異体CBH2をコードする核酸配列を含む発現ベクターをすでに形質導入され、形質転換されまたはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。培養条件、たとえば温度、pH等は、形質導入、形質転換またはトランスフェクションの前に親宿主細胞についてすでに用いられたものであり、当業者には明らかであろう。
【0135】
1の研究方法では、糸状菌細胞または酵母細胞は、宿主細胞株中で変異体CBH2をコードするDNAセグメントに機能しうるように連結され、該変異体CBH2が該宿主細胞株中で発現されるように機能するプロモーターまたは生物学的に活性なプロモーター断片または1以上(たとえば、一連)のエンハンサーを有する発現ベクターをトランスフェクトされる。
A.核酸構成体/発現ベクター
【0136】
変異体CBH2をコードする天然または合成ポリヌクレオチド断片(「CBH2をコードする核酸配列」)は、糸状菌細胞または酵母細胞中に導入しそして複製する能力のある非相同核酸構成体またはベクター中に取り込まれることができる。本明細書に開示されたベクターおよび方法は、変異体CBH2の発現のために宿主細胞中で用いるのに適している。任意のベクターが、それが複製可能であり、かつそれが導入される細胞中で生存可能である限り、用いられることができる。多数の好適なベクターおよびプロモーターが当業者には知られており、商業的に入手可能である。クローン化および発現ベクターはSambrookら、1989年、Ausubel F Mら、1989年およびStrathernら、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、1981年にも記載されており、これらのそれぞれは参照によって本明細書に明示的に取り込まれる。糸状菌に適切な発現ベクターは、van den Hondel、C.A.M.J.J.ら、Bennett,J.W.およびLasure,L.L.編、More Gene Manipulations in Fungi、1991年、p.396−428、AcademicPress社に記載されている。適切なDNA配列は、多様な手順によってプラスミドまたはベクター(本明細書では「ベクター(類)」と総称される。)中に挿入されることができる。一般に、DNA配列は、標準的な手順によって適切な1または複数の制限エンドヌクレアーゼ部位中に挿入される。かかる手順および関連したサブクローン化手順は、当業者の知識の範囲内であるとみなされる。
【0137】
変異体CBH2のコーディング配列を含む組換え糸状菌は、変異体CBH2をコードする配列を含む非相同核酸構成体を選択された株の糸状菌の細胞中に導入することによって、産生されることができる。
【0138】
所望の型の変異体cbh2核酸配列が得られると、これは多様な様式で修飾されることができる。配列が非コーディングフランキング領域を含む場合には、該フランキング領域は切除、変異生成等に付される。したがって、転移、トランスバージョン、欠失および挿入が天然に存在する配列上に実施されることができる。
【0139】
選択された変異体cbh2をコードする核酸は、周知の組換え技術に従って適当なベクター中に挿入され、CBH2発現の能力のある糸状菌を形質転換するために用いられることができる。遺伝子暗号の本質的な縮重性のために、実質的に同じまたは機能的に同等のアミノ酸配列をコードする他の核酸配列が、変異体CBH2をクローン化し発現するために用いられることができる。したがって、コーディング領域中のかかる置換は、本開示発明によって保護される配列変異体に属すると評価される。任意およびすべてのこれらの配列変異体は、親CBH2をコードする核酸配列について本明細書に記載されたのと同じ様式で用いられることができる。
【0140】
本開示発明は、上記の変異体CBH2をコードする核酸配列の1以上を含む組換え核酸構成体も含む。この構成体は、その中に本開示発明の配列が前方向または逆方向で挿入されているベクター、たとえばプラスミドまたはウイルスベクターを含む。
【0141】
非相同核酸構成体は、変異体cbh2のためのコーディング配列を(i)別個に;(ii)さらなるコーディング配列、たとえば融合タンパク質コーディング配列またはペプチドコーディング配列との組み合わせで(この場合、該cbh2コーディング配列が主要なコーディング配列である);(iii)適当な宿主中でのコーディング配列の発現に有効な非コーディング配列、たとえばイントロンおよび制御要素、たとえばプロモーターおよびターミネーター要素または5’および/もしくは3’非翻訳領域との組み合わせで;および/または(iv)cbh2コーディング配列が非相同遺伝子であるベクターまたは宿主の環境において、含むことができる。
【0142】
本開示発明の1の側面では、非相同核酸構成体が、変異体CBH2をコードする核酸配列をin vitro細胞中に移すために用いられ、該in vitro細胞は樹立糸状菌株および樹立酵母株を用いることが好まれる。変異体CBH2の長期間の産生のためには、安定な発現が好まれる。安定な形質転換体を生成するのに有効な任意の方法が、本開示発明を実施するのに用いられることができるということになる。
【0143】
適切なベクターは、典型的には選択可能マーカーをコードする核酸配列、挿入部位および適当な制御要素、たとえばプロモーターおよび停止配列を備えている。ベクターは、宿主細胞中のコーディング配列の発現に有効な、該コーディング配列に機能しうるように連結された調節配列、たとえば非コーディング配列、たとえばイントロンおよび制御要素、すなわちプロモーターおよびターミネーター要素または5’および/もしくは3’非翻訳領域を含むことができる。多数の適当なベクターおよびプロモーターが当業者に知られており、その多くは商業的に入手可能であり、および/またはSambrookら(上掲)に記載されている。
【0144】
典型的なプロモーターは、構造性プロモーターおよび誘導性プロモーターの双方を含み、その例はCMVプロモーター、SV40早期プロモーター、RSVプロモーター、EF−1アルファプロモーター、記載されているようなテットオン(tet−on)またはテットオフ(tet off)系におけるテット反応エレメント(TRE)を有するプロモーター(Clon TechおよびBASF)、ベータアクチンプロモーターおよびある種の金属塩の転化によって上方調節されることができるメタロチオニンプロモーターを含む。プロモーター配列は、発現の目的のために特定の糸状菌によって認識されるDNA配列である。これは、変異体CBH2ポリペプチドをコードするDNA配列に機能しうるように連結されている。かかる連結は、本開示発明の発現ベクター中の変異体CBH2ポリペプチドをコードするDNA配列の開始コドンに関してのプロモーターの位置決めを含む。プロモーター配列は、変異体CBH2ポリペプチドの発現を媒介する転写および翻訳制御配列を有する。この例は、アスペルギルスニガー、アスペルギルスアワモリまたはアスペルギルスオリザエグルコアミラーゼ、アルファアミラーゼまたはアルファグルコシダーゼをコードする遺伝子;アスペルギルスニジュランスgpdAまたはtrpC遺伝子;ニューロスポーラクラッサcbh1またはtrp1遺伝子;アスペルギルスニガーまたはリゾムコールミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼをコードする遺伝子;ハイポクレアジェコリーナ(トリコデルマレーシ)cbh1、cbh2、egl1、egl2または他のセルラーゼをコードする遺伝子由来のプロモーターを含む。
【0145】
適当な選択可能マーカーの選択は宿主細胞に依存し、異なる宿主のための適切なマーカーは従来技術で周知である。典型的な選択可能マーカー遺伝子は、アスペルギルスニジュランスまたはトリコデルマレーシ由来のargB、アスペルギルスニジュランス由来のamdS、ニューロスポーラクラッサまたはトリコデルマレーシ由来のpyr4、アスペルギルスニガーまたはアスペルギルスニジュランス由来のpyrGを含む。さらなる典型的な選択可能マーカーは、以下のものに限定されることなく、trpc、trp1、oliC31、niaDまたはleu2を含み、これらは変異体株、たとえばtrp−、pyr−、leu−等を形質転換するために用いられる非相同核酸構成体に包含される。
【0146】
かかる選択可能マーカーは、糸状菌によっては普通、代謝されない代謝産物を利用する能力を形質転換体に与える。たとえば、酵素アセトミダーゼをコードする、ハイポクレアジェコリーナ由来のamdS遺伝子は、形質転換体細胞にAcetamideを窒素源としてその上で成長することを可能にする。選択可能マーカー(たとえば、pyrG)は、選択的最少培地上で成長する能力を栄養要求性変異体株に回復することができ、または選択可能マーカー(たとえば、olic31)は、阻害剤もしくは抗生物質の存在下に成長する能力を形質転換体に与えることができる。
【0147】
選択可能マーカーをコードする配列は、従来技術で用いられる一般的な方法を使用して任意の適当なプラスミド中にクローン化される。典型的なプラスミドは、pUC18、pBR322、pRAXおよびpUC100を含む。pRAXプラスミドはアスペルギルスニジュランス由来のAMAL配列を有し、これはアスペルギルスニガー中で複製することを可能にする。
【0148】
本開示発明の実施は、特に示されない限り、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の慣用の手法を用い、これらは当業者の技能の範囲内である。かかる手法は文献に完全に説明されている。たとえば、Sambrookら、1989年;Freshney、Animal Cell Culture、1987年;Ausubelら、1993年;およびColiganら、Current Protocol in Immunology、1991年参照。
B.CBH2産生のための宿主細胞および培養条件
(i)糸状菌
【0149】
かくして、本開示発明は、対応する非形質転換糸状菌と比較して、変異体CBH2の産生または発現をもたらすのに有効な様式で修飾され、選択されおよび培養された細胞を含む糸状菌を提供する。
【0150】
変異体CBH2の発現のために処理されおよび/または修飾されることができる親糸状菌の種の例は、以下のものに限定されることなく、トリコデルマ、たとえばトリコデルマレーシ、トリコデルマロンギブラキアタム、トリコデルマビリデ、トリコデルマコニンギ;ペニシリウム種、フミコーラ種、たとえばフミコーラインソレンス;アスペルギルス種、クリソスポリウムフサリウム種およびエメリセラ種を含む。
【0151】
CBH2発現細胞は、親糸状菌株を培養するために典型的に用いられる条件下に培養される。一般に、細胞は、生理的塩および栄養素、たとえばPourquie,J.ら、Biochemistry and Genetics of Cellulose Degradation、Aubert,J.P.ら編、1988年、p.71−86、Academic Press社、およびIlmen,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.1977年、第63巻、p.1298−1306に記載されているようなものを含有する標準的な培地中で培養される。培養条件も標準的であり、たとえば培養物は振とう培養器または発酵槽中28℃で、所望のレベルのCBH2の発現が達成されるまで温置される。
【0152】
所与の糸状菌のための好まれる培養条件は、科学文献中におよび/または糸状菌源、たとえばアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC;www.atcc.org/)から見出されることができる。糸状菌の成長が達成された後、この細胞は、変異体CBH2の発現を生じさせまたは可能にするために有効な条件に曝露される。
【0153】
CBH2をコードする配列が誘導性プロモーターの制御下にある場合には、誘発剤、たとえば糖、金属塩または抗生物質が、CBH2発現を誘発するのに有効な濃度で培地に添加される。
【0154】
1の実施態様では、株はアスペルギルスニガーを含み、これは過剰発現されたタンパク質を得るために有用な株である。たとえば、アスペルギルスニガーバールアワモリ(Aspergillus niger var awamori)dgr246は、高められた量の分泌型セルラーゼを分泌することが知られている(Goedegebuurら、Curr.Genet、2002年、第41巻、p.89−98)。アスペルギルスニガーバールアワモリの他の株、たとえばGCDAP3、GCDAP4およびGAP3−4が知られている(Wardら、Appl.Microbiol.Biotechnol.、1993年、第39巻、p.738−743)。
【0155】
他の実施態様では、株はトリコデルマレーシを含み、これは過剰発現されたタンパク質を得るために有用な株である。たとえば、Sher−Neissら、Appl.Microbiol.Biotechnol.、1984年、第20巻、p.46−53によって記載されたRL−P37は、高められた量のセルラーゼ酵素を分泌することが知られている。RL−P37の機能的同等物は、リコデルマリーゼイ株RUT−C30(ATCC No.56765)および株QM9414(ATCC No.26921)を含む。これらの株は変異体CBH2を過剰発現するのに有用であろうと予想される。
【0156】
潜在的に有害な天然のセルロース分解活性のない変異体CBH2を得ることが望まれるときは、変異体CBH2をコードするDNA断片を有するDNA構成体またはプラスミドの導入前に1以上のセルラーゼ遺伝子を欠失させたトリコデルマ宿主細胞株を得ることが有用である。かかる株は、米国特許第5,246,853号および国際公開第92/06209号に開示された方法によって調製されることができ、これらの開示内容は参照によって本明細書に取り込まれる。宿主微生物中に1以上のセルラーゼ遺伝子を欠いている変異体CBH2セルラーゼを発現することによって、同定およびその後の精製の手順が簡略化される。クローン化されたトリコデルマ種由来の任意の遺伝子、たとえばcbh1、cbh2、egl1およびegl2遺伝子、ならびにEG IIIおよび/またはEGVタンパク質をコードする遺伝子が欠失されることができる(たとえば、それぞれ、米国特許第5,475,101号および国際公開第94/28117号参照)。
【0157】
遺伝子の欠失は、従来技術で知られた方法によって、欠失または分離されるべき所望の遺伝子の型をプラスミド中に挿入することによって達成されることができる。欠失プラスミドは次に、所望の遺伝子コーディング領域の内側の適切な1または複数の制限酵素部位で切断され、そしてその遺伝子コーディング配列またはその一部が選択可能マーカーで置き換えられる。欠失または分離されるべき遺伝子の遺伝子座からのフランキングDNA配列、好ましくは約0.5〜2.0kbのものが、選択可能マーカー遺伝子の両側に残る。適切な欠失プラスミドは、一般にその中に存在する特有の制限酵素部位を有し、フランキングDNA配列を含む欠失された遺伝子を有する断片および選択可能マーカー遺伝子が、単一の直鎖状片として除かれることを可能にする。
【0158】
選択可能マーカーは、形質転換された微生物の検知を可能にするように選択されなければならない。選択された微生物中に発現されている任意の選択可能マーカー遺伝子が適当である。たとえば、アスペルギルス種では、選択可能マーカーは、形質転換体中の該選択可能マーカーの存在がその特性に有意に影響を与えないように選択される。かかる選択可能マーカーは、アッセイ可能な産生物をコードする遺伝子であることができる。たとえば、アスペルギルス種遺伝子の機能性コピーが用いられることができ、これは、宿主株中に欠けているならば、栄養要求性表現型を示す宿主株をもたらす。同様に、選択可能マーカーはトリコデルマ種についても存在する。
【0159】
1の実施態様では、アスペルギルス種のpyrG−誘導体株は、機能性pyrG遺伝子によって形質転換され、これはかくして形質転換のための選択可能マーカーを提供する。pyrG−誘導体株は、フルオロオロチン酸(FOA)に耐性であるアスペルギルス種株の選択によって得られることができる。pyrG遺伝子は、ウリジンの生合成に要求される酵素であるオロチジン−5’−モノホスフェートデカルボキシラーゼをコードする。無傷pyrG遺伝子を有する株は、ウリジンを欠いているがフルオロオロチン酸に敏感である培地中で成長する。FOA耐性を選び出すことによって、機能性のオロチジンモノホスフェートデカルボキシラーゼ酵素を欠いており成長のためにウリジンを要求するpyrG−誘導体株を選択することが可能である。FOA選択手法を用いて、機能性オロテートピロホスホリボシルトランスフェラーゼを欠いているウリジン要求株を得ることも可能である。この酵素をコードする遺伝子の機能性コピーを有するこれらの細胞を形質転換することが可能である(BergesおよびBarreau、Curr.Genet.、1991年、第19巻、p.359−365、およびHartingsveldtら、pyrG遺伝子に基づくアスペルギルスニガーのための相同性形質転換系の開発(Development of a Homologous Transformation system for Aspergillus niger based on the pyrG)、Mol.Gen.Genet.、1986年、第206巻、p.71−75)。誘導体株の選択は、上で言及したFOA耐性手法を用いて容易に実施され、したがってpyrG遺伝子が選択可能マーカーとして好ましくは用いられる。
【0160】
第2の実施態様では、ハイポクレア種(ハイポクレア種(トリコデルマ種))のpyr4−誘導体株が機能性pyr4遺伝子によって形質転換され、これはかくして形質転換のための選択可能マーカーを提供する。pyr4−誘導体株は、フルオロオロチン酸(FOA)に耐性であるハイポクレア種(トリコデルマ種)の選択によって得られることができる。pyr4遺伝子は、ウリジンの生合成に要求される酵素であるオロチジン−5’−モノホスフェートデカルボキシラーゼをコードする。無傷pyr4遺伝子を有する株は、ウリジンを欠いているがフルオロオロチン酸に敏感である培地中で成長する。FOA耐性を選び出すことによって、機能性のオロチジンモノホスフェートデカルボキシラーゼ酵素を欠いており成長のためにウリジンを要求するpyr4−誘導体株を選択することが可能である。FOA選択手法を用いて、機能性オロテートピロホスホリボシルトランスフェラーゼを欠いているウリジン要求株を得ることも可能である。この酵素をコードする遺伝子の機能性コピーを有するこれらの細胞を形質転換することが可能である(BergesおよびBarreau、1991年)。誘導体株の選択は、上で言及したFOA耐性手法を用いて容易に実施されることができ、したがってpyr4遺伝子が選択可能マーカーとして好ましくは用いられる。
【0161】
1以上のセルラーゼ遺伝子を発現する能力を欠くようにpyrG−アスペルギルス種またはpyr4−ハイポクレア種(トリコデルマ種)を形質転換するために、分離されたまたは欠失されたセルラーゼ遺伝子を含む単一のDNA断片が、次に欠失プラスミドから単離され、そして適切なpyr−アスペルギルスまたはpyr−トリコデルマ宿主を形質転換するために用いられる。形質転換体は次に、それぞれ、pyrGまたはpyr4遺伝子産物を発現するそれらの能力に基づいて同定され選択され、かくして宿主株のウリジン栄養要求性を相補する。得られた形質転換体についてサザンブロット分析が次に実施されて、適切なpyr4選択可能マーカーによって欠失されるべき遺伝子のゲノムコピーのコーディング領域の一部またはすべてを置換る二重クロスオーバー組み込み事象を特定しおよび確認する。
【0162】
上記の特定のプラスミドベクターはpyr−形質転換体の調製に関するものであるけれども、本開示発明はこれらのベクターに限定されない。各種の遺伝子が、上記の手法を用いてアスペルギルス種またはハイポクレア種(トリコデルマ種)の株中で欠失され、置き換えられることができる。さらに、任意の入手可能な選択可能マーカーが上記のとおりに用いられることができる。事実、クローン化されかくして同定された任意の宿主、たとえばアスペルギルス種またはハイポクレア種の遺伝子が、上記の戦略を用いてゲノムから欠失されることができる。
【0163】
上記のように、用いられる宿主株は、非機能性遺伝子または選択された選択可能マーカーに相当する遺伝子を欠くかまたは有するハイポクレア種(トリコデルマ種)の誘導体であることができる。たとえば、アスペルギルス種のためにpyrGの選択可能マーカーが選択されると、特定のpyrG−誘導体株が形質転換手順において受容体として用いられる。また、たとえばハイポクレア種のためにpyr4の選択可能マーカーが選択されると、特定のpyr4−誘導体株が形質転換手順において受容体として用いられる。同様に、アスペルギルスニジュランスの遺伝子、amdS、rgB、trpC、niaDと同等なハイポクレア種(トリコデルマ種)の遺伝子を含む選択可能マーカーが用いられてよい。対応する受容体株は、よって、誘導体株、たとえばそれぞれ、argB−、trpC−、niaD−でなければならない。
【0164】
CBH2変異体をコードするDNAが、次に適当な微生物中への挿入のために調製される。本開示発明によれば、CBH2変異体をコードするDNAは、機能するセルロース分解活性を有するタンパク質をコードするのに必要なDNAを含む。CBH2変異体をコードするDNA断片は、糸状菌のプロモーター配列、たとえばアスペルギルス中のglaA遺伝子のプロモーターまたはトリコデルマ中のegl1遺伝子のプロモーターに機能しうるように結合されることができる。
【0165】
CBH2変異体をコードするDNAの1より多いコピーが株の中で組換えられて、過剰発現を促進することができることも意図される。CBH2変異体をコードするDNAは、該変異体をコードするDNAを有する発現ベクターの構築によって調製されてよい。CBH2変異体をコードする挿入されたDNA断片を有する発現ベクターは、所与の宿主生物中で自律的に複製する能力があるか、又は該宿主のDNA中に組み込まれる能力がある任意のベクターであることができ、典型的にはプラスミドである。好まれる態様では、遺伝子の発現を得るための2種類の発現ベクターが検討される。第1は、その中でプロモーター、遺伝子コーディング領域およびターミネーター配列の全てが発現されるべき遺伝子に由来する、DNA配列を含む。遺伝子の末端削除は、不所望のDNA配列(たとえば、望まないドメインをコードする配列)を欠失することによって、それ自身の転写および翻訳調節配列の制御下で発現されるべきドメインを残すことが望まれる場合に、得られることができる。選択可能なマーカーも該ベクター上に含まれることができ、新規の遺伝子配列の複数コピーの宿主中への組み込みのための選択を可能にする。
【0166】
第2の種類の発現ベクターは予め組み立てられており、高レベルの転写に要求される配列および選択可能マーカーを含む。遺伝子またはその一部のコーディング領域が、この汎用の発現ベクター中に、発現カセットプロモーターおよびターミネーター配列の転写制御下にあるように挿入されることができることが検討される。
【0167】
たとえば、アスペルギルスでは、pRAXはかかる汎用の発現ベクターである。遺伝子またはその一部は、強いglaaプロモーターの下流に挿入されることができる。
【0168】
たとえば、ハイポクレアでは、pTEXはかかる汎用の発現ベクターである。遺伝子またはその一部は、強いglaaプロモーターの下流に挿入されることができる。
【0169】
上記のベクターでは、本開示発明のCBH2変異体をコードするDNA配列は、構造遺伝子へのリ−ディングフレームにおいて、転写および翻訳配列、すなわち適当なプロモーター配列およびシグナル配列と機能しうるように連結されなければならない。プロモーターは、宿主細胞中で転写活性を示す任意のDNA配列であることができ、また宿主細胞と相同か、あるいは非相同のタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる。任意的なシグナルペプチドは、CBH2変異体の細胞外産生をもたらす。シグナル配列をコードするDNA配列は、好ましくは発現されるべき遺伝子に天然に付随しているものである。しかしながら、任意の適当な源、たとえばトリコデルマ由来のエキソセロビオヒドラーゼまたはエンドグルカナーゼからのシグナル配列が、本開示発明において意図される。
【0170】
本開示発明の変異体CBH2をコードするDNA配列とプロモーターとの結合および適当なベクター中への挿入に用いられる手法は、従来技術で周知である。
【0171】
上記のDNAベクターまたは構成体は、公知の技術、たとえば形質転換、トランスフェクション、マイクロインジェクション、マイクロポレーション、バイオリスティック砲撃等に従って宿主細胞に導入されることができる。
【0172】
好まれる形質転換技術では、ハイポクレア種(トリコデルマ種)中のDNAへの細胞壁の透過性が非常に低いことが考慮されなければならない。したがって、所望のDNA配列、遺伝子または遺伝子断片の取り込みは、よくても最小量である。形質転換プロセスの前に、誘導体株(すなわち、用いられた選択可能マーカーに相当する機能性遺伝子を欠いている)中のハイポクレア種(トリコデルマ種)の細胞壁の透過性を増加させるための多数の方法が存在する。
【0173】
形質転換のためにアスペルギルス種またはハイポクレア種(トリコデルマ種)を調製するための本開示発明において好まれる方法は、糸状菌の菌糸体由来のプロトプラストの調製を含む。Campbellら、Improved transformation efficiency of A.niger using homologous niaD gene for nitrate reductase、Curr.Genet.、1989年、第16巻、p.53−56参照。菌糸体は、出芽した生長性胞子から得られることができる。菌糸体は、細胞壁を消化する酵素で処理されてプロトプラストをもたらす。プロトプラストは、次に懸濁媒質中で浸透圧スタビライザーの存在によって保護される。これらのスタビライザーは、ソルビトール、マンニトール、塩化カリウム、硫酸マグネシウム等を含む。通常、これらのスタビライザーの濃度は0.8M〜1.2M間で様々である。懸濁媒質中で約1.2Mのソルビトール溶液を用いることが好ましい。
【0174】
宿主株(アスペルギルス種またはハイポクレア種(トリコデルマ種))中へのDNAの取り込みは、カルシウムイオン濃度に依存する。通常、約10mMのCaCl〜50mMのCaClが取り込み溶液において用いられる。取り込み溶液中にカルシウムイオンが必要なことの他に、一般的に含まれる他の成分は、緩衝系、たとえばTE緩衝液(10mMのTris、pH 7.4;1mMのEDTA)または10mMのMOPS、pH 6.0緩衝液(モルフォリンプロパンスルホン酸)およびポリエチレングリコール(PEG)である。ポリエチレングリコールは細胞膜を融解する作用をし、かくして媒質の含有物が宿主細胞、例としてアスペルギルス種あるいはハイポクレア種の株の細胞質へ送入されることを可能にし、またプラスミドDNAが核に移入されると考えられている。この融解はしばしば、宿主染色体中に組み込まれたプラスミドDNAの複数コピーを残す。
【0175】
通常、10〜10/mL、好ましくは2×10/mLの密度にて透過性処理に付されたアスペルギルス種のプロトプラストまたは細胞を含む懸濁液が、形質転換に用いられる。同様に、10〜10/mL、好ましくは2×10/mLの密度にて透過性処理に付されたハイポクレア種(トリコデルマ種)のプロトプラストまたは細胞を含む懸濁液が、形質転換に用いられる。適当な溶液(たとえば、1.2Mソルビトール;50mMのCaCl)中のこれらのプロトプラストまたは細胞の100μLの量が、所望のDNAと混合される。一般に、高濃度のPEGが取り込み溶液に添加される。25%PEG 4000の0.1〜1の量が、プロトプラスト懸濁液に添加されることができる。しかし、プロトプラスト懸濁液に約0.25の量を添加することが好ましい。添加物、たとえばジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウム等も取り込み溶液に添加され、形質転換を補助してもよい。
【0176】
一般に、上記混合物は次に、10〜30分間、約0℃において培養される。追加のPEGが次に混合物に添加され、所望の遺伝子またはDNA配列の取り込みをさらに増加する。25%PEG4000は、一般に形質転換混合物の量の5〜15倍の量で添加される。しかし、これより多いおよび少ない量が適当であることもある。25%PEG4000は、好ましくは形質転換混合物の量の約10倍である。PEGが添加された後、形質転換混合物は次に室温か、あるいは氷上において培養され、その後ソルビトールおよびCaCl2溶液が添加される。プロトプラスト懸濁物が次に、さらに成長培地の融解アリコートに添加される。この成長培地は、形質転換体の成長のみを許容する。所望の形質転換体を生育するのに適している任意の成長培地が、本開示発明に用いられることができる。しかし、Pyr+形質転換体が選択されるならば、ウリジンを含んでいない成長培地を用いることが好ましい。その後のコロニーが、ウリジンを含んでいない成長培地上に移され精製される。
【0177】
この段階では、安定な形質転換体は、不安定な形質転換体よりも速い成長速度、および、たとえばトリコデルマではウリジンを含んでいない固形成長培養培地上の不規則ではなくて滑らかな輪郭を有する円形のコロニーの形成によって、不安定な形質転換体とは識別されることができる。さらに、ある場合には、安定性のさらなる試験が、固形非選択(すなわち、ウリジンを含んでいる)培地上で形質転換体を成長させ、この培養培地から胞子を回収し、そしてのちにウリジンを含んでいない選択培地上で出芽し成長するであろうこれらの胞子のパーセントを測定することによって、行われることができる。
【0178】
上記の方法の特定の態様では、1または複数のCBH2変異体は、液状培地中における成長の後に、該CBH2変異体の適切な翻訳後プロセシングの結果として、宿主細胞から活性型で回収される。
(ii)酵母
【0179】
本開示発明は、CBH2産生のための宿主細胞として酵母の使用も意図する。加水分解性酵素をコードするいくつかの他の遺伝子が、酵母サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の様々な株に発現されている。これらは、2のエンドグルカナーゼ(Pentillaら、Yeast、1987年、第3巻、p.175−185)、2のセロビオヒドロラーゼ(Pentillaら、Gene、1988年、第63巻、p.103−112)およびトリコデルマレーシ由来の1のベータ−グルコシダーゼ(CummingsおよびFowler、Curr.Genet.、1996年、第29巻、p.227−233)、アウレオバシジウムプルランス(Aureobasidium pullulans)由来のキシラナーゼ(LiおよびLjungdahl、Appl.Environ.Microbiol.、1996年、第62巻、第1号、p.209−213)、小麦由来のアルファアミラーゼ(Rothsteinら、Gene、1987年、第55巻、p.353−356)等をコードする配列を含む。さらに、ブチリビリオフィブリソルベンスエンド−[ベータ]−1,4−グルカナーゼ(END1)、ファネロキーテクリソスポリウムセロビオヒドロラーゼ(CBH1)、ルミノコッカスフラベファシエンスセロデキストリナーゼ(CEL1)およびエンドマイセスフィブリゼルセロビアーゼ(Bgl1)をコードするセルラーゼ遺伝子カセットが、サッカロマイセスセレビシエの実験室株中で成功裡に発現された(Van Rensburgら、Yeast、1998年、第14巻、p.67−76)。
C.宿主細胞中へのCBH2をコードする核酸配列の導入
【0180】
本開示発明はさらに、遺伝子操作されて、細胞外に供給された変異体CBH2をコードする核酸配列を含む細胞および細胞組成物を提供する。親細胞または細胞株は、クローニングベクターまたは発現ベクターを用いて遺伝子操作される(すなわち、形質導入され、形質転換されまたはトランスフェクトされる)ことができる。ベクターは、さらに記載されるように、たとえばプラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態をしていることができる。
【0181】
本開示発明の形質転換の方法は、糸状菌のゲノムへの形質転換ベクターのすべてまたは一部の安定な取り込みをもたらすことができる。しかし、自己複製染色体外形質転換ベクターの維持をもたらす形質転換も意図される。
【0182】
多くの標準的なトランスフェクション方法が、大量の非相同タンパク質を発現するトリコデルマレーシ細胞株を産生するために用いられることができる。DNA構成体をトリコデルマのセルラーゼ産生株中に導入するための公表された方法のいくつかは、Lorito、Hayes、DiPietroおよびHarman、Curr.Genet.、1993年、第24巻、p.349−356;Goldman、VanMontaguおよびHerrera−Estrella、Curr.Genet.、1990年、第17巻、p.169−174;Pentilla、Nevalainem、Ratto、SalminenおよびKnowles、Gene、1987年、第6巻、p.155−164を、アスペルギルスイェルトンについて、HamerおよびTimberlake、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1984年、第81巻、p.1470−1474を、フサリウムバジャーについて、PodilaおよびKolattukudy、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1991年、第88巻、p.8202−8212を、ストレプトマイセスについて、Hopwoodら、The John Innes Foundation、1985年、英国、Norwichを、およびバチルスビリギジについて、DeRossi、Bertarini、RiccardiおよびMatteuzzi、FEMS Microbiol.Lett.、1990年、第55巻、p.135−138を含む。
【0183】
非相同核酸構成体(発現ベクター)を糸状菌(たとえば、ハイポクレアジェコリーナ)中に導入する他の方法は、以下のものに限定されることなく、粒子または遺伝子銃の使用、形質転換工程前の糸状菌細胞壁の透過性向上(たとえば、高濃度のアルカリ、たとえば0.05M〜0.4MのCaCl2または酢酸リチウムの使用によって)、プロトプラスト融合またはアグロバクテリウムを介した形質転換を含む。ポリエチレングリコールおよびCaCl2を用いたプロトプラストまたはスフェロプラストの処理による糸状菌の形質転換の典型的な方法は、Campbell,E.I.ら、Curr.Genet.、1989年、第16巻、p.53−56、およびPentilla、Gene、1988年、第63巻、p.11−22に記載されている。
【0184】
外来の核酸配列を宿主細胞中に導入するための周知の方法のいずれも用いられることができる。これらは、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、生物言語学、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクター、ウイルスベクターおよびクローン化されたゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来の遺伝子物質を宿主細胞中に導入するための他の周知の方法のいずれかの使用を含む(たとえば、Sambrookら、上掲参照)。同様に用いられるのは、米国特許第6,255,115号に記載されたアグロバクテリウムを介したトランスフェクション法である。用いられる特定の遺伝子組換え方法が、非相同遺伝子を発現する能力のある宿主細胞中に少なくとも1の遺伝子を成功裡に導入することができることのみが必要である。
【0185】
さらに、変異体CBH2をコードする核酸配列を含む非相同核酸構成体は、in vitroで転写されることができ、そして得られたRNAが周知の方法、たとえばイインジェクションによって宿主細胞中に導入されることができる。
【0186】
本開示発明はさらに、糸状菌セルラーゼ組成物を産生するのに用いられる、糸状菌、たとえばハイポクレアジェコリーナおよびアスペルギルスニガーの新規かつ有用な形質転換体を含む。本開示発明は、糸状菌、とりわけ変異体CBH2コーディング配列、または内因性cbhコーディング配列の欠失を含む糸状菌の形質転換体を含む。
【0187】
変異体cbh2のコーディング配列を含む非相同核酸構成体の導入に引き続いて、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、またはCBH2をコードする核酸配列の発現を増幅するのに適当なように修飾された慣用の栄養培地中で、この遺伝子組換えによって修飾された細胞が培養されることができる。培養条件、たとえば温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞についてすでに用いられたものであり、当業者には明らかであろう。
【0188】
かかる非相同核酸構成体がその中に導入された細胞の子孫は、一般にこの非相同核酸構成体中に認められる変異体CBH2をコードする核酸配列を含むと考えられる。
【0189】
本開示発明はさらに、糸状菌セルラーゼ組成物を産生するのに用いられる糸状菌、たとえばハイポクレアジェコリーナの新規かつ有用な形質転換体を含む。アスペルギルスニガーも、変異体CBH2を産生するのに用いられることができる。本開示発明は、糸状菌、とりわけ変異体cbh2コーディング配列、または内因性cbh2コーディング配列の欠失を含む糸状菌の形質転換体を含む。
【0190】
糸状菌の安定な形質転換体は、一般に不安定な形質転換体よりも速い成長速度、および、たとえばトリコデルマでは固形成長培養培地上の不規則ではなくて滑らかな輪郭を有する円形のコロニーの形成によって、不安定な形質転換体とは識別されることができる。さらに、ある場合には、安定性のさらなる試験が、固形非選択培地上で形質転換体を成長させ、この培養培地から胞子を回収し、そしてのちに選択培地上で出芽し成長するであろうこれらの胞子のパーセントを測定することによって、行われることができる。
VI.組換えCBH2タンパク質の単離および精製
【0191】
一般に、細胞培養で産生された変異体CBH2タンパク質は培地中に分泌され、たとえば、細胞培地から望ましくない成分を除くことによって精製され単離されることができる。しかし、ある場合には、変異体CBH2タンパク質は、細胞溶解物からの回収を必要とする細胞型で産生されることができる。かかる場合には、変異体CBH2タンパク質は、当業者によってルーチンに用いられる技術を使用して、その中で産生された細胞から精製される。その例は、以下のものに限定されることなく、親和性クロマトグラフィー(Tilbeurghら、FEBS Lett.、1984年、第16巻、p.215)、イオン交換クロマトグラフ法(Goyalら、Bioresource Tecnol.、1991年、第36巻、p.37−50;Fliesら、Eur.J.Appl.Microbiol.、1983年、第17巻、p.314−318;Bhikhabhaiら、J.Appl.Biochem.、1984年、第6巻、p.336−345;Ellouzら、J.Chromatography、1987年、第396巻、p.307−317)、たとえば高分解能を有する物質を用いるイオン交換(Medveら、J.Chromatography、1998年、第A808巻、p.153−165)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(TomazおよびQueiroz、J.Chromatography、1999年、第A865巻、p.123−128)、および二相分配法(Brumbauerら、Bioseparation、1999年、第7巻、p.287−295)を含む。
【0192】
典型的には、変異体CBH2タンパク質は、選択された特性、たとえば特定の結合剤、たとえば抗体もしくは受容体への結合親和性を有するタンパク質、または選択された分子量範囲もしくは等電点範囲を有するタンパク質を分離するために分画される。
【0193】
所与の変異体CBH2タンパク質の発現が達成されると、それによって産生されたCBH2タンパク質は細胞または細胞培養物から精製される。かかる精製に適した典型的な手順は以下のもの、すなわち抗体−親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈降;逆相HPLC;シリカ上またはカチオン交換樹脂、たとえばDEAE上のクロマトグラフィー;クロマト分画;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈降;および、たとえばSephadex G−75を用いるゲルろ過を含む。タンパク質精製の各種の方法が用いられることができ、かかる方法は従来技術で知られており、たとえばDeutscher、Methods in Enzymology、1990年、第182巻、第57号、p.779;Scopes、Methods Enzymol.、1982年、第90巻、p.479−491に記載されている。選択される1または複数の精製段階は、たとえば用いられた産生工程および産生された特定のタンパク質の性質に依存する。
VII.cbh2およびCBH2の用途
【0194】
変異体cbh2核酸、変異体CBH2タンパク質および変異体CBH2タンパク質活性を含む組成物は、多種多様な用途への利用が見出され、これらの一部が以下に記載される。
【0195】
様々な量のBG型、EG型および変異体CBH型セルラーゼを含む新規かつ改善されたセルラーゼ組成物は、高められた清浄化能力、柔軟化剤としてのおよび/または綿布地の感触を改善する機能(たとえば、「ストーンウォッシング」または「バイオポリシング」)を示す洗剤組成物へ、木材パルプを糖に分解するための組成物へ(たとえば、バイオエタノールの製造のために)および/または飼料組成物への利用を見出す。各型のセルラーゼの単離および特性解析は、かかる組成物の側面を調節する能力を提供する。
【0196】
1の方法では、本開示発明のセルラーゼは洗剤組成物へまたは感触および概観を改善する布地の処理への利用を見出す。
【0197】
セルラーゼ分解産生物の加水分解の速度は、ゲノムに挿入されたcbh遺伝子の少なくとも1の追加のコピーを有する形質転換体を用いることによって増加されることができるので、セルロースまたはヘテログリカンを有する産生物は、より速い速度分解でおよびより高い程度まで分解されることができる。セルロースからの産生物、たとえば紙、綿、セルロースダイアパー等は、埋立地中でより効率的に分解されることができる。したがって、形質転換体から得られることができる発酵産生物または形質転換体そのものが、過密な埋立地に加重される多様なセルロース産生物の分解を液化によって促進するために組成物中に用いられることができる。
【0198】
分離された糖化および発酵は、それによってバイオマス、たとえばトウモロコシ茎葉、中に存在するセルロースがグルコースに転化されそしてその後酵母株がグルコースをエタノールに転化するプロセスである。同時の糖化および発酵は、それによってバイオマス、たとえばトウモロコシ茎葉、中に存在するセルロースがグルコースに転化されかつ同時におよび同じ反応器中で酵母株がグルコースをエタノールに転化するプロセスである。したがって、他の方法では、本開示発明の変異体CBH型セルラーゼは、バイオマスからエタノールへの分解に利用を見出す。セルロースの容易に利用可能な源からのエタノールの産生は、安定な再生可能燃料源をもたらす。
【0199】
セルロースに基づいた供給原料は、農業廃棄物、草木および他の低価値バイオマス、たとえば都市ごみ(たとえば、古紙、木花ごみ等)から構成される。任意のこれらのセルロース供給原料の発酵からも、エタノールは産生されることができる。しかし、セルロースはまず糖に転化されなければならず、その後で初めてエタノールへの転化ができる。
【0200】
非常に多彩な供給原料が、本開示発明の変異体CBHに用いられることができ、使用のために選択されるものは、転化が行われる地域に依存することができる。たとえば、米国中西部では、農業廃棄物、たとえば麦わら、トウモロコシ茎葉およびバガスが優位を占めるだろうし、他方、カリフォルニアではコメわらが優位を占めるだろう。しかし、任意の入手可能なセルロース性バイオマスが、任意の地域で用いられることができることが理解されなければならない。
【0201】
本開示発明の方法は、有機生産物、化学製品および燃料、プラスチックおよび他の生産物または中間品のための、化学供給原料としてのまたは微生物のための発酵供給原料としての、単糖、二糖および多糖の産生に用いられることができる。特に、処理残留物(乾燥ディスティラーズグレイン、醸造使用済み穀粒、サトウキビバガス等)の価値は、セルロースまたはヘミセルロースの部分的または完全な溶解によって上げられることができる。エタノールに加えて、セルロースおよびヘミセルロースから産生されることができる一部の化学製品は、アセトン、アセテート、グリシン、リシン、有機酸、(たとえば、乳酸)、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、エチレングリコール、フルフラール、ポリヒドロキシアルカノエート、シス,シス−ムコン酸、動物飼料およびキシロースを含む。
【0202】
高められた量のセロビオヒドロラーゼを有するセルラーゼ組成物は、エタノール産生への利用を見出す。このプロセスからのエタノールはさらに、オクタン価向上剤としてまたは直接、ガソリンの代わりに用いられることができ、燃料としてのエタノールは石油由来の生産物よりも環境に優しいのでこのことは有利である。エタノールの使用は空気の品質を改善し可能性として地域的なオゾンレベルおよびスモッグを低減することが知られている。その上、ガソリンの代わりとしてのエタノールの使用は、非再生可能エネルギーおよび石油化学供給原料への突然の移行の衝撃を和らげる上で戦略的に重要であるといえる。
【0203】
セルロース性バイオマス、たとえば木、草本植物、都市固形廃棄物および農林業廃棄物からの糖化および発酵プロセスによって、エタノールは産生されることができる。しかし、微生物によって産生された天然に存在するセルラーゼ混合物内の個々のセルラーゼ酵素の割合は、バイオマス中のセルロースからグルコースへの急速な転化のためにはもっとも効率的というわけではないかもしれない。エンドグルカナーゼは新しいセルロース鎖末端を生成する作用をし、該新しいセルロース鎖末端自体はセロビオヒドロラーゼの作用のための基質となり、それによって全セルロース系の加水分解の効率を改善することが知られている。したがって、増加されたまたは最適化されたセロビオヒドロラーゼ活性は、エタノールの産生を大幅に高めることができる。
【0204】
したがって、本開示発明のセロビオヒドロラーゼは、セルロースからその糖成分への加水分解に用途を見出す。1の実施態様では、変異体セロビオヒドロラーゼは、発酵性有機体の添加の前にバイオマスに添加される。第2の実施態様では、変異体セロビオヒドロラーゼは、発酵性有機体と同時にバイオマスに添加される。任意的に、他のセルロース成分がどちらの実施態様でも存在することができる。
【0205】
他の実施態様では、セルロース性供給原料は前処理されてもよい。前処理は、高められた温度および希酸、濃酸または希釈アリカリ溶液の添加によることができる。前処理溶液は、ヘミセルロース成分を少なくとも部分的に加水分解し、そして次に中和されるのに十分な時間添加される。
【0206】
セルロースへのCBH2の作用の主要産物はセロビオースであり、これは(たとえば、糸状菌セルラーゼ産生物中の)BG活性によるグルコースへの転化に利用可能である。セルロース性バイオマスの前処理によってか、あるいはバイオマスへの酵素作用によって、グルコースおよびセロビオースに加えて他の糖がバイオマスから入手可能にされることができる。バイオマスのセミセルロース含有量は、(セミセルロースによって)糖、たとえばキシロース、ガラクトース、マンノースおよびアラビノースに転換されることができる。かくして、バイオマス転化プロセスでは、酵素的糖化は、他の中間体または最終産生物への生物学的または化学的転化に利用可能にされる糖を産生することができる。したがって、バイオマスから生成された糖は、エタノールの生成に加えて多様なプロセスに用途を見出す。かかる転化の例はグルコースからエタノールへの発酵(M.E.Himmelら、「Fuels and Chemicals from Biomass」中のp.2−45、1997年、ACS Symposium Series 666、B.C.SahaおよびJ.Woodward編)およびグルコースから2,5−ジケト−D−グルコース(米国特許第6,599,722号)、乳酸(R.DattaおよびS−P.Tsai、p.224−236、上掲)、サクシネート(R.R.Gokarn、M.A.EitemanおよびJ.Srigher、p.237−263、上掲)、1,3−プロパンジオール(A−P.Zheng、H.BieblおよびW−D.Deckwar、p.264−279、上掲)、2,3−ブタンジオール(C.S.Gong、N.CaoおよびG.T.Tsao、p.280−293、上掲)への他の生物学的転化、およびキシロールからキシリトール(B.C.SahaおよびR.J.Bothast、p.307−319、上掲)への化学的および生物学的転化である。また、たとえば国際公開第98/21339号参照。
【0207】
本開示発明の洗剤組成物は、(セロビオヒドロラーゼ含有量にかかわらず、すなわちセロビオヒドロラーゼのない、実質的にセロビオヒドロラーゼのないまたはセロビオヒドロラーゼが高められた)セルラーゼ組成物に加えて、界面活性剤、たとえばアニオン性、非イオン性および両性界面活性剤、ヒドロラーゼ、ビルダー、漂白剤、青味剤および蛍光染料、ケーキ防止剤、溶解剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。すべてのこれらの成分は洗剤分野で知られている。上記のセルラーゼ成分は、液状希釈剤で、顆粒で、乳剤で、ゲルで、ペースト等で洗剤組成物に添加されることができる。かかる形態は当業者に周知である。固形洗剤組成物が用いられるときは、セルラーゼ組成物は、好ましくは顆粒として配合される。好ましくは、顆粒はセルラーゼ保護剤を含有するように配合されることができる。より完全な議論のためには、「CBH2型成分の欠けたセルラーゼ組成物を含有する洗剤組成物」の表題の米国特許第6,162,782号参照。この内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0208】
好ましくは、セルラーゼ組成物は全洗剤組成物に対して約0.00005重量パーセント〜約5重量パーセント用いられる。より好ましくは、セルラーゼ組成物は全洗剤組成物に対して約0.0002重量パーセント〜約2重量パーセント用いられる。
【0209】
さらに、変異体CBH2核酸配列は、関連した核酸配列の同定および特性解析への利用を見出す。関連した遺伝子または遺伝子産物を測定(予測または確認)するのに有用な多数の手法は、以下のものに限定されることなく、(A)DNA/RNA分析、たとえば(1)過剰発現、異所性発現および他の種における発現;(2)遺伝子ノックアウト(逆遺伝学、標的ノックアウト、ウイルス誘発遺伝子抑制(VIGS)(Baulcomb、100 Years of Virology、CalisherおよびKorizinek編、1999年、第15巻、p.189−201、米国、ニューヨ−ク州、ニューヨ−ク、Spring−Verlag社参照);(3)遺伝子のメチル化状態の分析、とりわけフランキング調節領域;および(4)in situハイブリダイゼーション;(B)遺伝子産物分析、たとえば(1)組換えタンパク質発現;(2)抗血清産生、(3)免疫学的局在決定;(4)触媒活性または他の活性の生化学アッセイ;(5)リン酸化状態;および(6)酵母2ハイブリッド分析による他のタンパク質との相互作用;(C)経路解析、たとえば遺伝子もしくは遺伝子産物をその過剰発現表現型に基づいてまたは関連した遺伝子との配列相同性によって特定の生化学的もしくシグナル経路内に置くこと;および(D)特定の代謝またはシグナル経路における単離遺伝子およびその産物の関与を測定または確認するために実施されることもでき、また遺伝子の機能を測定するのに役立つ他の分析を含む。
【実施例】
【0210】
本開示発明は、特許請求された本開示発明の範囲を限定する意図は決してない以下の実施例においてさらに詳細に記載される。添付された図面は、本開示発明の明細事項および記載と一体部分とみなされることが意図される。以下の実施例は特許請求された本開示発明を例示するが、限定しないために提供される。
【0211】
以下に続く実験の開示では、以下の略号が適用される:M(モル濃度)、mM(ミリモル濃度);μM(マイクロモル濃度);nM(ナノモル濃度)モル(mol)(モル数);mmol(ミリモル数);μmol(マイクロモル数);nmol(ナノモル数);gm(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);pg(ピコグラム);L(リットル);mlおよびmL(ミリリットル);μlおよびμL(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);U(単位);V(ボルト);MW(分子量);sec(秒);min(s)(分);h(s)およびhr(s)(時);℃(摂氏度);QS(十分量);ND(行われていない);NA(適用不可);rpm(毎分回転数);HO(水);dHO(脱イオン水);HCl(塩酸);aa(アミノ酸);bp(塩基対);kb(キロ塩基対);kD(キロダルトン);cDNA(コピーまたは相補的DNA);DNA(デオキシリボ核酸);ssDNA(一本鎖DNA);dsDNA(二本鎖DNA);dNTP(デオキシリボヌクレオチド3リン酸);RNA(リボ核酸);MgCl2(塩化マグネシウム);NaCl(塩化ナトリウム);w/v(重量対体積);v/v(体積対体積);g(重力);OD(光学密度);CNPG(クロロニトロフェニル−ベータ−D−グルコシド);CNP(2−クロロ−4−ニトロフェノール);APB(酸前処理バガス);PASC(リン酸膨潤セルロース);PCS(酸前処理トウモロコシ茎葉);piまたはPI(性能指数);HPLC(高圧液体クロマトグラフィー);PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)RT−PCR(逆転写PCR);およびSEL(部位評価ライブラリー)。
実施例1
アッセイ
【0212】
下記の実施例では以下のアッセイが用いられた。以下に与えられた手順からの何らかの逸脱は、実施例に示されている。これらの実験では、反応の完了後に生成された産生物の吸光度を測定するために、分光光度計が用いられた。
A.残存グルコースの測定のためのヘキソキナーゼアッセイ
【0213】
CBH2変異体を発現するハイポクレアジェコリーナ培養物上清からの残存グルコースが、ヘキソキナーゼアッセイを用いて測定された。5μlの量の上清が、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar平底PS)中の195μlのグルコースヘキソキナーゼアッセイ(Instrumentation Laboratory社、蘭国、Breda)に加えられた。このプレートは室温で15分間培養された。培養後、吸光度が340nmODで測定された。残存グルコースを発現する培養物の上清が、さらなる検討のために合体物から除かれた。
B.タンパク質含有量測定のためのHPLC
【0214】
集められた培養物上清からのCBH2変異体タンパク質の濃度が、Proswift RP 2Hカラム(Dionex社)を備えたAgilent 1100(Hewlet Packard社)HPLCを用いて測定された。10マイクロリットルのサンプルが、ろ過された脱イオン水中の50μlの10%アセトニトリルと混合されて、0.01%トリフルオロ酢酸を含有する10%アセトニトリルで平衡化された後のHPLCカラムに注入された。化合物は10%〜30%アセトニトリルで0.3分〜1分の傾斜を用いて、引き続いて30%〜65%で1分〜4分の傾斜によって溶出された。CBH2変異体のタンパク質濃度は、精製野生型CBH2を用いて生成された較正曲線から決定された(6.25、12.5、25、50μg/ml)。性能指数(PiまたはPI)を計算するために、変異体によって産生された(平均)総タンパク質と、同じ施量において野生型によって産生された(平均)総タンパク質との比が、平均化された。
C.リン酸膨潤セルロース(PASC)による比活性の決定
【0215】
セルロースの加水分解:リン酸膨潤セルロース(PASC)が、公表された方法に従ってAvicelから調製された(Walseth、Tappi、1971年、第35巻、p.228;およびWood、Biochem J、1971年、第121巻、p.353−362)。この物質は、酢酸ナトリウムの最終濃度が50mM、pH5.0となるように緩衝液および水で1w/v%混合物になるまで希釈された。50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中のPASCの1%懸濁物の100マイクロリットルが、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar平底PS)中に分注された。CBH2欠失株からの10マイクロリットルの5mg/ml培養物上清がこのPASCに添加され、そして野生型CBH2か、あるいは変異体CBH2を発現するハイポクレアジェコリーナ細胞からの5、10、15または20μlの集められた培養物上清がそれに添加された。ハイポクレアジェコリーナ(トリコデルマレーシとも呼ばれる。)由来のCBH2遺伝子の欠失は、米国特許第5,861,271号および第5,650,322号に記載されている。酢酸塩緩衝液の分注量は、総量における差を埋めるように添加された。マイクロタイタープレートは密封され、熱電対付き培養器中50℃で900rpmの連続振とう下に培養された。2時間後に加水分解反応は、各ウェルに100μlのグリシン緩衝液、pH10の添加によって停止された。加水分解反応生成物はPAHBAHアッセイによって分析された。
PAHBAHアッセイ:PAHBAH還元糖(5w/v%p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド)(PAHBAH、Sigma社#H9882,0.5N HCl中溶解物)、(Lever、Anal Biochem、1972年、第47巻、273−279頁)の150μlのアリコートが、空のマイクロタイタープレートのすべてのウェルに添加された。10マイクロリットルの加水分解反応上清がPAHBAH反応プレートに添加された。すべてのプレートは密封され、69℃で900rpmの連続振とう下に培養された。1時間後にプレートは氷上に5分間置かれ、そして室温で5分間720xgで遠心分離された。生成されたPAHBAH反応混合物の80μLのサンプルは、汚れていない(読み取り)プレートに移され、分光光度計において410nmで吸光度が測定された。セロビオース標準物が対照として含められた。施量応答曲線が野生型CBH2タンパク質について作られた。
D.希酸前処理トウモロコシ茎葉(PCS)の加水分解による比活性の測定
【0216】
前処理トウモロコシ茎葉(PCS):トウモロコシ茎葉が記載されたように2w/w%HSOで前処理され(Schellら、Appl Biochem Biotechnol、2003年、第105巻、p.69−86)、脱イオン水で複数回洗われて4.5のpHを有するペーストが得られた。酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)が次に50mMの酢酸ナトリウムの最終濃度まで添加され、そして必要によりこの混合物は次に1N NaOHを用いてpH5.0まで滴定された。反応混合物中のセルロース濃度は、約7%であった。65マイクロリットルのこのセルロース懸濁物は、96ウェルマイクロタイタープレートにウェルごとに添加された(Nunc社平底PS)。CBH2欠失株からの10マイクロリットルの5mg/ml培養物上清がPCSに添加され、そして野生型CBH2か、あるいは変異体CBH2を発現するハイポクレアジェコリーナ細胞からの5、10、15または20μlの集められた培養物上清がそれに添加された。酢酸塩緩衝液の埋め合わせ量が、総量における差を埋めるように添加された。プレートの密封後、このプレートは熱電対付き培養器中に50℃で1300rpmの連続振とう下に5分間置かれた。このプレートは次に乾燥を防止するために80%湿度下に220rpmで振とうされながら50℃で培養された。7日後にプレートは氷上に5分間置かれ、加水分解反応が、各ウェルに100μlのグリシン緩衝液、pH10の添加によって停止された。加水分解反応生成物はPAHBAHアッセイによって分析された。
PAHBAHアッセイ:PAHBAH還元糖試薬(5w/v%p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド)(PAHBAH、Sigma社#H9882,0.5N HCl中溶解物)、(Lever、Anal Biochem、1972年、第47巻、273−279頁)の150μlのアリコートが、空のマイクロタイタープレートのすべてのウェルに添加された。10マイクロリットルの加水分解反応上清がPAHBAH反応プレートに添加された。すべてのプレートは密封され、69℃で900rpmの連続振とう下に培養された。1時間後にプレートは氷上に5分間置かれ、そして室温で5分間720xgで遠心分離された。生成されたPAHBAH反応混合物の80μLのサンプルは、汚れていない(読み取り)プレートに移され、分光光度計において410nmで吸光度が測定された。セロビオース標準物が対照として含められた。施量応答曲線が野生型CBH2タンパク質について作られた。
E.アンモニア前処理コーンストーバー(CC)の加水分解による比活性の測定
【0217】
コーンコブを粉砕し、0.9mmのスクリーンを通して、WO2001110901の実施例4に記載のように前処理した(この方法を参照により本明細書に援用する。)前処理したコーンコブを50mM酢酸ナトリウム中7%のセルロース懸濁液として用いた。この懸濁液を1ウェル当り65マイクロリットルで、96ウェルマイクロタイタープレート(Numc Flat Bottom PS)に添加した。精製されたT.reeseiベータグルコシダーゼ1(Cel3A)0.23mg/mlで懸濁した株(△egl1、△egl2、△cbh1、△cbh2)からの上清3.4mg/mlの20μlを各ウェルに添加した。野生型CBH2又はCBH2変異体のいずれかを発現しているH.jecorina細胞由来のプールされた培養上清を20又は40マイクロリットル添加した。酢酸緩衝液を添加して、総量を同じにした。このプレートを50℃、220rpm、乾燥を防ぐために80%の湿度で、インキュベートした。3日後このプレートを氷上に5分間静置し、100μlの100mMグリシン、pH10.0を添加した。混合後、このプレートを5分間3000rpmで遠心分離した。10μlの上清を190μlの水で希釈した。この希釈した溶液20μlを、100μl ABTSグルコースアッセイ混合液(2.74mg/mlの2,2‘アジノ−ビス(3−エチルベンゾ−チアゾ−6−スルホン酸、0.333U/mlのホースラディッシュペルオキシダーゼ タイプIV、1U/mlのグルコースオキシダーゼ)を含む新たな96ウェルマイクロタイタープレート(Costar Flat Bottm PS)に移し、マイクロタイター分光光度計(Spectramax Plus384、Molecular Devise)でA420の上昇を記録した。グルコース濃度の範囲は、各プレートにおける標準曲線(6.25、12.5、25、50、100、200、400mM)の範囲内にあった。アッセイは2回行った。ラングミュラー方程式(Y=(xa)/(x+b)にデータを当てはめて野生型CBH2について、投与反応曲線を作成した。CBH2変異体の活性をサンプルプレートの野生型CBH2の計算された値で割って性能指数を計算した。
F.エタノールの存在下における変異体CBH2の安定性
【0218】
野生型CBH2およびCBH2変異体の安定性が、49℃において4.5%エタノールの存在下に試験された。CBH2変異体を発現するハイポクレアジェコリーナ細胞の培養物上清の集合物(80μl)が、ウェルごとに10μlの40.5%EtOHを含む96ウェルプレート(Greiner社V底PS)に添加された。このプレートは密封され、熱電対付き培養器中49℃で16時間900rpmで振とうされながら培養された。培養後にプレートは氷上に5分間置かれた。残存CBH2活性が、上記のリン酸膨潤セルロース(PASC)加水分解アッセイを用いて測定された。
【0219】
残存活性を計算するために、5、10、15および20μlのEtOH培養されたCBH2の残存活性PASCアッセイへの添加によって生成された産生物の値が、5、10、15および20μlのEtOHを含まないCBH2のPASCアッセイへの添加によって生成された産生物の値によって割られた。これらの4の比の個々の値は、次に平均化されて平均残存活性を与えた。変異体についてのPIを決定するために、変異体についての平均残存活性の値が次に野生型CBH2対照の残存活性の平均によって割られた。
G.CBH2変異体の熱安定性
【0220】
野生型CBH2およびCBH2変異体の熱安定性が、53℃で試験された。CBH2変異体を発現するハイポクレアジェコリーナ細胞の培養物上清の集合物(80μL)が、96ウェルプレート(Greiner社V底PS)に添加された。このプレートは密封され、熱電対付き培養器中53℃で16時間900rpmで振とうされながら培養された。培養後にプレートは氷上に5分間置かれた。残存CBH2活性が、上記のリン酸膨潤セルロース(PASC)加水分解アッセイを用いて測定された。
【0221】
残存活性を計算するために、5、10、15および20μlの熱処理されたCBH2の残存活性PASCアッセイへの添加によって生成された産生物の値が、5、10、15および20μlの加熱されていないCBH2のPASCアッセイへの添加によって生成された産生物の値によって割られた。これらの4の比の個々の値は、次に平均化されて平均残存活性を与えた。変異体についてのPIを決定するために、変異体についての平均残存活性の値が次に野生型CBH2対照の残存活性の平均によって割られた。
実施例2
【0222】
ハイポクレアジェコリーナCBH2タンパク質をコードする配列(配列番号1)を有するTTTpyr−cbh2プラスミドが、部位評価ライブラリー(Site Evauation Library)(SEL)を作成するためにBASFClear社(蘭国、Leiden)、GeneArt社(独国、Regensburg)およびSloning Bio Technology社(独国、Puchheim)に送られた。TTTpyr−cbh2のプラスミドマップは図3に示される。ハイポクレアジェコリーナCBH2成熟タンパク質(配列番号3)のそれぞれの部位における位置ライブラリーの作成が、表2−1に示すように、上記業者に要求された。CBH2完全長タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。
【0223】
以下の配列番号1は、参照ハイポクレアジェコリーナCBH2をコードするDNA配列を記載する。
[式1]

【0224】
配列番号2はハイポクレアジェコリーナCBH2完全長タンパク質配列を示す。
[式2]

【0225】
配列番号3はハイポクレアジェコリーナCBH2成熟タンパク質配列を示す。
[式3]

【0226】
表2−1で列挙されている162部位のそれぞれについて、平均で18個の置換変異体が作成された。このライブラリーをCBH2変異体タンパク質をコードしている精製プラスミドとして受け取った。
【表2】

【表3】

【0227】
Sloning Bio Technology社(独国、Puchheim)およびBASFClear社(蘭国、Leiden)により4つのCBH2組み合わせライブラリーも生成した。表2−2乃至表2−5は合成CBH2組み合わせライブラリーのメンバー中に存在する置換を列挙している(番号付けはCBH2成熟タンパク質アミノ酸配列に基づいている)。
【表4】

【表5】

CBH2変異体タンパク質の生成
【0228】
CBH2変異体配列をコードする読み取り枠を有する精製pTTTpyr−cbh2プラスミド(pcbh1、Amp(商標)、Acetamide(商標))が、上で特定した業者から得られた。ハイポクレアジェコリーナ株(Δeg1、Δeg2、Δcbh1、Δcbh2)のプロトプラストがpTTTpyr構成体によって形質転換され、Acetamideを含む選択寒天培地上で28℃で7日間育成された。手短に言うと、ハイポクレアジェコリーナのバイオリスティック形質転換は以下の手順およびその中のセロビオヒドロラーゼI(CBHI、Cel7a)、セロビオヒドロラーゼII(CBHII、Cel6a)、エンドグルカナーゼI(EGI、Cel7b)およびエンドグルカナーゼII(EGII、Cel5a)をコードする遺伝子が不活性化されている株を用いて実施された。バイオリスティック形質転換法によるこのハイポクレアジェコリーナの形質転換は、Bio−Rad社(米国、カリフォルニア州、Hercules)からのBiolistic(商標)PDS−1000/he粒子送達系を用いて、製造業者の指示(国際公開第05/001036号および米国特許出願公開第2006/0003408号参照)に従って達成された。胞子が収穫され、Acetamide寒天上に移され、28℃で7日間培養された。胞子は155グリセロール中に収穫され、さらなる使用のために−20℃で貯蔵された。CBH2変異体タンパク質の産生のために、10μlの胞子懸濁物が、PVDFフィルタープレート中の2%のグルコース/ソホロース混合物;6.0g/Lグリシン、4.7g/L(NH4)2SO4;5.0g/L KH2PO4;1.0g/L MgSO4・7H2O;33.0g/L PIPPS;pH5.5を補充された200μlのグリシン最少培地に添加され、炭素源としての約2%のグルコース/ソホロース混合物、10ml/Lの100g/LのCaCl2、2.5ml/Lのトリコデルマレーシ微量元素(400X):175g/L無水クエン酸;200g/L FeSO4・7H2O;16g/L ZnSO4・7H2O;3.2g/L CuSO4・5H2O;1.4g/L MnSO4・H2O;0.8g/L H3BO3の滅菌後添加をされた。各CBH2変異体は正副4通りに育成された。プレートを酸素透過性膜でシールした後、プレートは220rpmで振とうされながら28℃で6時間培養された。培地を低圧力下にマイクロタイタープレートに移すことによって、上清が収穫され、実施例1に記載されたヘキソキナーゼアッセイを用いて残存グルコースの有無について試験された。
実施例3
CBH2変異体の発現、活性および性能
【0229】
ハイポクレアジェコリーナ電荷変異体が、関心の対象である様々な特性について試験された。特に、セルラーゼ変異体が、実施例1に記載されたようにHPLCアッセイ(HPLC)を用いてタンパク質の発現について、PASC加水分解アッセイ(活性PASC)およびPCS加水分解アッセイ(活性PCS)を用いて比活性について、エタノールの存在下における安定性(EtOH比率)および熱安定性(熱比率)について試験された。CBH2電荷変異体の性能データが表3−1に示される。
【0230】
性能指数(PI)は、変異体セルラーゼの性能と親セルラーゼまたは参照セルラーゼの性能との比である。下に記載される様々な項が突然変異を記述するのに用いられる。すなわち、アップ突然変異はPI>1を有し、中立突然変異はPI≧0.5を有し、非有害突然変異はPI>0.05を有し、有害突然変異はPI=0.05を有し、合体可能突然変異は変異体が少なくとも1の特性について性能指数値≧0.5を有するような突然変異である。合体可能突然変異は、合体されて1以上の所望の特性について適切な性能指数を有するタンパク質を産み出すことができる突然変異である。突然変異が起きる位置は以下のように分類される。すなわち、非制限位置は少なくとも1の特性について20%以上の中立突然変異を有し、制限位置は活性および安定性について20%未満の中立突然変異を有する。完全制限位置は活性または安定性について中立突然変異を有しない。
【0231】
これらのデータは、任意のCBH2を遺伝子操作するために用いられることができる。たとえ遺伝子操作されるべきCBH2が特定の位置においてハイポクレアジェコリーナCBH2のアミノ酸とは異なるアミノ酸を有していても、最良の選択である置換、たとえばハイポクレアジェコリーナCBH2野生型アミノ酸への置換を特定することによって、これらのデータが所望の特性を変える置換を見出すために用いられることができる。
【0232】
表3−1は、ハイポクレアジェコリーナCBH2の2828の変異体についての性能指数値(PiまたはPI)を示す。0.05以下の性能指数は0.05に固定され、同表中にボールドイタリック体で示される。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】

【表42】

【表43】

【表44】

【表45】

【表46】

【表47】

【表48】

【表49】

【表50】

【表51】

【表52】

【表53】

【表54】

【表55】

【表56】

【表57】

【表58】

【表59】

【表60】

【表61】

【0233】
非組み合わせ変異体はPi値の0.05以下であるものである。ハイポクレアジェコリーナCBH2において、2828変異体のうち6つが組み合わせ変異体とはならなかった。それらはA121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yであった。ハイポクレアジェコリーナCBH2に対してこれらの置換を1つを有する任意のCBH2が、この位置における組み合わせ可能な置換の1つ、又はハイポクレアジェコリーナCBH2の121、243、322、328、又は463に存在するアミノ酸を変異することにより、改善された。
【表62】

【表63】

【表64】

【表65】

【表66】

【表67】

【表68】

実施例4
CBH2タンパク質の分類
【0234】
前述のように、セルラーゼ変異体の機能は、性能指数(PI)として定量化される。これは親又は参照セルラーゼの性能に対する変異体の性能の比である。変異体を説明するために用いる各種用語を以下で定義する。高度な変異体は1より大きいPIを有する。中程度の変異体は0.5より大きいPIを有する。有害ではない変異体は0.05より大きいPIを有する。有害な変異体は0.05のPIを有する。組み合わせ可能な変異体は少なくとも1つの性質について0.5の性能指数を有し、全ての性質について、0.05より大きい性能指数を有するものである。組み合わせ可能な変異体は、1つ以上の好ましい性質について適切な性能指数を有するタンパク質を提供するために組み合わせることができる。変異が生じる位置は、少なくとも1つの性質について20%より大きい中程度の変異を有する。制限部位は、活性及び安定性について20%未満の中程度の変異を有する。
【0235】
表4−1に示すように、CBH2の試験された162個の位置について、162個の全てが非制限的であった。非制限部位はそれらが数多くの組み合わせ可能変異体を有しているから、組み合わせ可能ライブラリーの構築に用いるのに最も適した位置である。
【表69】

【表70】

【表71】

【表72】

実施例5
CBH2変異体活性への電荷変化の効果
【0236】
この実施例では、セルラーゼ活性の前処理トウモロコシ茎葉(PCS)アッセイにおける、CBH2活性への電荷の変化の効果が評価された。手短に言うと、CBH2 CEL中のPCSウィナーの数が、正味電荷特性の変化として測定された。表9−1では、PCSアッセイでの実測されたウィナーと予測されたウィナーとの比(o/e)が測定された。ボールドイタリック体の値は、それぞれの列に列挙された10個のランダム分布の平均値プラスマイナス標準偏差値(sd)とは有意に異なっている。
【表73】

【0237】
表5−1及び図2Aに示されるように、低くなっている荷電(例えば、―1、−2)はPCSアッセイにおいてCBH2ウィナーの有意に高い相度数となり、高くなっている荷電(+1)はPCSアッセイにおいて有意に低い度数となっている。対照的に、表5−2及び図2Bにおいて示すように、CBH2ウィナーの有意に高い度数は荷電変化のない変異体において観察され(例えば、0)、CBH2ウィナーの有意に低い頻度は荷電変化のある変異体について観察された(例えば、―2、−1、+2)。
【0238】
対照的に、PCS上のCBH2活性は荷電の減少に相関関係がある。PASC上のCBH2活性はセルロース分解活性とは相関を示さなかったが、PCS物質については特異性を示した。
実施例6
トリコデルマレーシスクリーニング株の生成
【0239】
酵素変異体のアミノ酸配列に関係のない因子の存在下でBCH2変異体発現の濃度を高めるために改善されたスクリーニング株を生成した。特に、T.reeseiスクリーニング変異体をターゲティングベクターと組み合わせて作成し、cbh2変異体遺伝子の組み込みを強めた(例えば、調節配列と作動可能に組み合わせたコード領域)。本開示発明を開発する間に調製された新しい株は変異ライブラリーをスクリーニングするために有利である幾つかの変異を組み合わせる。遺伝子改変工程の概要は図4に示す。
【0240】
T.reesei四欠失誘導体からのku80の欠失:MUS52の単一オーソログである、ヒトKU80のN.crassaオーソログ、をH.jecorinaQM6a(Trichoderma reesei)のゲノム配列でBLASTINサーチにより同定し、T.reesei ku80と名づけた。タンパク質IDは58213。http://genome.jgi−psf.org/Trire2/Trire2.home.html。T.reesei ku80のヌクレオチド配列は配列番号23で定義される。
[式4]


【0241】
T.reesei ku80遺伝子を本分野の標準的な方法を用いて四欠失誘導株から欠失させた。簡単に言うと、ku80配列の5’末端の1.3kbとku80配列の3‘末端の2.3kbの間にある選択マーカーを用いて、ku80カセットを構築した。図5に概要を示す。このハーバサイドクロリムロンエチルに対する変異T.reesei alsをWO2008/039370に記載の様に、選択マーカーとして用いた。ku80ノックアウトカセットのヌクレオチド配列は7685ベースペアの長さである。1塩基乃至1271塩基は5’末端ku80ホモロガス領域に相当する。1280塩基乃至7685塩基はals−クロリムロンエチル耐性変異体(A190D)に相当する。5381塩基乃至7685塩基は3’末端ku80ホモロガス領域に相当する。このku80ノックアウトカセットのヌクレオチド配列は配列番号14で定義される。
[式5]

[式6]

[式7]

[式8]

【0242】
T.reesei△ku80四欠失誘導株からのArchy2株の生成:このku80ノックアウト株からpyr2遺伝子を欠失させる。pyr2欠失カセットはT.reesei cbh1プロモーター、ハイグロマイシン耐性遺伝子、及び5’及び3’pyr2配列に隣接している部分的なamdS選択マーカーを含む。概要を図6に示す。このベクターを使用すると、pyr2ノックアウト形質転換体のハイグロマイシン及びフルオロオロ酸の耐性をスクリーニングすることができる。部分的なamdS遺伝子は、この遺伝子の3‘部分を含んでいるが、プロモーター及びコード領域のアミノ末端部分を欠いている。pyr2ノックアウトカセットのヌクレオチド配列は9252ベースペアの長さを有する。1塩基−1994塩基はpyr2の3’ホモロガス領域に相当する。2002塩基乃至3497塩基はT.reesei cbh1プロモーターに相当する。3563塩基乃至5449塩基はハイグロマイシン選択マーカーに相当する。5450塩基乃至7440塩基はA.nidulans amdSの3’部分的マーカーに相当する。7441塩基乃至9259塩基はpyr2の5’ホモロガス領域に相当する。pyr2ノックアウトカセットのヌクレオチド配列は配列番号15で定義される。
[式9]

[式10]

[式11]

[式12]

【0243】
Archy2 T.reesei株からのArchy3株の生成:Archy2株は同じpyr2遺伝子座に組み込み、ハイグロマイシン遺伝子をpyr2遺伝子のコード領域で置き換えるために、ベクターで形質転換した。このハイグロマイシン欠失カセットを図7で示す。このpyr2遺伝子座に再び導入されたpyr2遺伝子は、T.reesei cbh1プロモーターと部分的選択マーカーの間に導入された。この株はウリジンプロトトロフィーで選択することができ、ハイグロマイシンに対して感受性がある。hygRノックアウトカセットは9088ベースペアの長さである。1塩基乃至1994塩基はpyr2の3’ホモロガス領域に相当する。1995塩基乃至3497塩基はT.reesei cbh1プロモーターに相当する。3564塩基乃至5137塩基はpyr2選択マーカーに相当する。5280塩基乃至7270塩基はA.nidulans amdSの3’部分的マーカーに相当する。7271塩基乃至9088塩基はpyr2の5’ホモロガス領域に相当する。hygRノックアウトカセットのヌクレオチド配列は配列番号16で定義される。
[式13]

[式14]

[式15]

[式16]

【0244】
Archy3 T.reesei株からのA5D株の生成:野生型T.reesei bgl1を当分野で知られているダブルリコンビナントベクターを用いてArchy3から欠失させた。ハイグロマイシン耐性は、 bgl1欠失のための選択マーカーとして用いた。更に、ハイグロマイシン耐性マーカーをloxP部位に隣接させた。この欠失カセットを図8に示す。次いで、ハイグロマイシン耐性形質転換体をbgl1について解析した。bgl1の欠失が確認された株を形質転換の選択のためにcreリコンビナーゼ及び機能amdSをコードしているテロメアベクターで形質転換したcreリコンビナーゼ発現及びloxPのループアウトによりハイグロマイシン除去を促進した。creリコンビナーゼをコードしているテロメアベクターを図10で説明する。形質転換体はまずアセトアミド培地で得られ、その後、ポテトデキストトースアガーに移して、同様にハイグロマイシン培地上で平板培養して、ハイグロマイシン感受性を調査した。ハイグロマイシンに感受性のある株は再度ポテトデキストロース培地に移され、同様にして、アセトアミド培地に平板培養された。アセトアミド上で育成する力が少ない株が選択され、この事をテロメアベクターの損失の指標とする。bgl1ノックアウトカセットは配列番号17で定義される。
[式17]

[式18]

[式19]

【0245】
テロメアベクター、pTTT−cre、のヌクレオチド配列は配列番号18で定義される。
[式20]

[式21]

[式22]

[式23]

[式24]

【0246】
A5D T.reesei株からのMAD6株の生成:野生型egl3をbgl1欠失で、前に説明した方法を用いて、A5D株から欠失させた。欠失カセットの概要は図9に示す。ハイグロマイシン耐性はegl3欠失についての選択マーカーを用いた。このハイグロマイシン耐性マーカーをloxP部位に隣接させた。形質転換体をegl3の欠失[に用いた方法]でこの株から排除した。egl3欠失カセットの核酸配列は配列番号19で定義される。
[式25]

[式26]

[式27]

実施例7
活性及び熱安定性アッセイにおける選択された一部位置換CBH2変異体の解析
【0247】
T.reesei株の6欠失体(△egl1、△egl2、△egl3、△chb1、△cbh2、△bgl1)のプロトプラストをWO2009/048488に記載のように、pTTTpyrGベクターにコードされている選択されたCBH2 SEL変異体で形質転換した。胞子を収穫し、アセトアミドアガー上で再度平板培養し、28℃で7日間インキュベートした。次いで、アガー上で胞子を形成しているトリコデルマ株を25mlYEG培地(5g/L酵母抽出物、20g/Lグルコース)に接種し、28℃、200rpmで2日間インキュベートして、CBH2変異体を生成した。このYEG培養物の5mlを2%グルコース/ソホロース混合物を含むグリシン培地、45mlに接種した。この培地を6ウェルマイクロタイタープレートに注ぎ、酵素高含有環境下、28℃で5日間静置してインキュベートした。02μmフィルターでろ過して細胞を除去した。10kD分子量を取り除くビバスピンスピンセルを用いて、上清を濃縮した。この変異体を50℃でリン酸膨張セルロース(PASC)、50℃で希酸処理コーンストーバー(PCS)、50℃及び75℃で希アンモニア処理コーンコブの加水分解能力について試験を行った。更に、各種変異体は熱安定性についても試験を行った。
【0248】
リン酸膨張セルロース上での酵素活性は、以下の違いを除いては、実施例1で説明したように行った。各ウェルにCBH2欠失株(△egl1、△egl2、△cbh1、△cbh2)からの上清中4.9μgのタンパク質を含むものを10μl添加した。このプレートを200rpmで振とうしながら、50℃でインキュベートした。2時間後、このプレートを5分間氷上に置き、100μlの100mMグリシン、pH10、を添加した。混合の後、このプレートを5分間遠心分離した。40μlの上清を160μlの水で希釈した。10μlの希釈された溶液を100μlのABTSグルコースアッセイ混合物(2.74mg/mlの2,2’アジノ−ビス(3−エチルベンゾ−チアゾ−6−スルホン酸、1U/mlのホースラディッシュペルオキシダーゼ、タイプIV、1U/mlのグルコースオキシダーゼ)を含む新しい96ウェルマイクロタイタープレート(Costar Flat Bottom PS)に移し、A420の上昇をマイクロタイター分光光度計(Spectramax Plus 348 Molecular Devices)で記録した。グルコース濃度は各プレートの標準曲線の範囲内であった(0;0.008;0.016;0.031;0.063;0.125;0.25;0.5;1mg/ml)。アッセイは2回行った。Temkin isotherm方程式(Y=a+b(1n(1+cx))にデータをあてはめて、野生型CBH2の投与量反応曲線を作成し、サンプルプレートの野生型CBH2の計算された活性でCBH2変異体の活性を割って、性能指数を算出した。
【0249】
PCS 50℃
洗浄された希酸処理コーンストーバー上の酵素活性を以下の違いを除いては、実施例1、セクションDで説明したのとほぼ同様に試験した。各ウェルにCBH2欠失株(△egl1、△egl2、△cbh1、△cbh2)からの上清中49μgのタンパク質を含むものを10μl添加した。このプレートを200rpmで振とうしながら、50℃でインキュベートした。2時間後、このプレートを5分間氷上に置き、100μlの100mMグリシン、pH10、を添加した。混合の後、このプレートを5分間遠心分離した。40μlの上清を190μlの水で希釈した。10μlの希釈された溶液をABTSを含む新しい96ウェルマイクロタイタープレート(Costar Flat Bottom PS)に移し、PASCアッセイについて説明したように、評価及び解析した。
【0250】
コーンコブ 50℃
コーンコブ50℃における酵素活性を以下の違いを除いて、実施例1、セクションEで説明したのと同様に行った。各ウェルにCBH2欠失株(△egl1、△egl2、△cbh1、△cbh2)由来上清に46.55μgのタンパク質を含む10μlを添加し、4.90μgのT.reesei CBH1、6.48μgのT.reesei Xyn2Y5(Xiong ら.Exthemophiles 8:393−400、2004)、2.28μgのFusarium verticilliodia(Fv)51A、5.32μgのFv3A、0.76μgのFv43D、及び2.45μgのT.reesei BGL1で懸濁した。このFusarium verticillioides酵素はUS61/245269に説明されている(参照により本明細書に援用する)。CBH2変異体を発現している形質転換されたT.reesei株の異なる容量の上清を実施例1で説明する様に添加した。このプレートを200rpmで振とうしながら、50℃で2日間インキュベートした。
【0251】
コーンコブ 75℃
コーンコブを粉砕して、0.9mmスクリーンを通過させて、WO2006/110901(参照により本明細書に援用する)の実施例4に記載されているように前処理した。前処理したコーンストーバーを50mM酢酸ナトリウム、pH5.0中7%セルロース懸濁液70マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート(Costar Flat Bottom PS)1ウェル当りに添加した。46.55μgのタンパク質を含むCBH2欠失株(△egl1、△egl2、△cbh1、△cbh2)の上清、4.90μgのCBH1変異体(S8P/T41I/N89D/S92T/S113N/S196T/P227L/D249K/T255P/S278P/E295K/T296P/T332Y/ V403D/S411F/T462I)、6.84μgのT.reesei Xyn2 Y5(Xiongら,Exthremophiles、第8巻、393−400頁、2004年)、2.28μgのFv51A、5.32μgのFv3A、0.76μgのFv43D,2.45μgのTalaromyces emersoniiベータグルコシダーゼを添加した。野生型CBH2又はCBH2変異体のいずれかを発現しているH.jecorina細胞からの上清を最大で20マイクロリットル添加した。酢酸緩衝液を添加して、総量を同じにした。このプレートを200rpmで振とうしながら、57℃でインキュベートした。2日後このプレートを5分間氷上に置き、100mMグリシン、pH10.0、100μlを添加した。混合後、このプレートを3000rpmで5分間インキュベートした。10μlの上清を190μlの水で希釈した。この希釈溶液10μlの100μlのABTSグルコースアッセイ混合物を含む新しい96ウェルマイクロタイタープレート(Costar Flat Bottom PS)に移し、前述のように、評価及び解析を行った。
【0252】
CBH2熱安定性アッセイ
CBH2変異体の熱安定性を試験するために、50μlの上清をPCR機器中で、50乃至70℃の温度範囲で試験した。0.0025%のTween80を含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0中に0.625mg/mlのセロトリオースを含む80μlの溶液を20μlの上清とインキュベートして、残余活性を測定した。1時間後、100mMグリシンpH10を40μl添加した。20μlを80μlのABTS試薬(上掲)に添加して、OD420における呈色を5分間記録した。擬似融点(Tm)を各温度における残余活性を以下の式に当てはめて計算した。
Y=1/(1+exp(-(a*(1-b/c-ln(c/b)+d*((1/c)-(1/d)))/e))
式中、熱キャパシティー(kcalmol−1*−1)bは融点(K)である。cはアッセイ温度(K)、dはエントロピー変化(kcalmol−1*−1)、eは気体係数(kcalmol−1*−1)である。
【表74】

【表75】

【表76】

【0253】
変異のカテゴリーを分類した。少なくとも1つの性質について0.75より大きいPIを有し、全ての性質で0.05より大きいPIを有する変異体を包含するものは高度に組み合わせ可能変異体とした。前述の例で説明したように、幾つかの変異体は2つの高い組み合わせ可能変異を有しており、対象CBH2酵素よりも高い活性及び/又は安定性を有している。高い組み合わせ可能への蓄積が各別個の変異がすぐれた活性、熱安定性及び/又は発現レベルを変異体酵素に付与するために、十分ではない、有利な変異体を作成するために用いることができる。
実施例8
CBH2組み合わせライブラリー変異体及びそれらの活性
【0254】
合成CBH2組み合わせライブラリーをGeneOrcle(Mountain View、CA)により生成した。表8−1はCBH2成熟アミノ酸配列にしたがっている)このライブラリーは表7−1に列挙されているTm及び/又は特性に基づいて、高度な変異体及び/又は高度に組換え可能な変異として分類した。
【表77】

このライブラリーは、プライマー、GACCGGACGTGTTTTGCCCTTCAT(配列番号20)及びGTGTGACCGGCTTTGGCGAGTG(配列番号21)を用いて、H.jecorina宿主細胞中でpyr2遺伝子座の組み込みを強化するために、cbh1プロモーターの上流約1.1kbまでと、amdSマーカーの下流約1.85kbまでに隣接するcbh2遺伝子を増幅して、得られたPCR産物として提供された。スクリーニングする株への発現カセットの相同組換えの概要を図11に示す。配列番号20及び配列番号21のプライマーを用いて、pTTTpyrG−CBH2から増幅されたPCR断片(親のcbh1プロモーター、cbh2遺伝子、及び/又は部分的amdS遺伝子)の核酸配列を配列番号22で定義する。
[式28]

[式29]

[式30]

【0255】
実施例6で説明したAD5 H.jecorina株(△egl1、△egl2、△cbh1、△cbh2、△bgl1)をUS2006/00904084に記載の直鎖DNAライブラリーで形質転換して、アセトアミドを含む選択培地で28℃、7日間育成した。(0.6g/Lのアセトアミド、1.68g/LのCsCl、20g/Lのグルコース、6g/LのKHPO、0.6g/LのMgSO・7HO、0.6g/LCaCl・2HO、0.5g/Lのウリジン、微量元素、10g/Lの低融点アガロース)。24時間後、1.2g/Lのフルオロオロ酸(FOA)を懸濁した選択アガーを積層させた。全部で380コロニーを1.2g/LのFOAを含むポテトデキストロースアガープレートに移して、28℃で4乃至5日間インキュベートした。胞子を新しいポテトデキストロースアガーに移し、28℃で3日間インキュベートした。あるいは、実施例6で説明したMDA6株のプロトプラストをAD5の変わりに、変異ライブラリーメンバーの発現に用いることができる。同様に、追加的なセルラーゼが失活させられているMAD6株の誘導体のプロトプラストもこの目的に用いることができる。そのような誘導体は十分に低いセルラーゼ活性を有している。
【0256】
CBH2セルラーゼタンパク質生成について、胞子を96ピンプリケーターを用いてPVDフィルタープレート(6.0g/Lのグリシン,4.7g/Lの(NH4)2SO;5.0g/LのKHPO;1.0g/LのMgSO4・7HO;33.0g/LのPIPPS;pH5.5;滅菌した2%グルコース/ソホロース混合物を炭素源として含む、10ml/Lの100g/LのCaCl,2.5ml/LのT.reesei微量元素(400X):175g/Lの無水クエン酸;200g/LのFeSO4・7HO;16g/LのZnSO4・7HO;3.2g/LのCuSO4・5HO;1.4g/LのMnSO4・O;0.8g/LのHBO)中に2%のグルコース/ソホロースを含む200μLのグリシン最小培地へ移した。各CBH2変異体について4回育成を行った。このプレートを酸素透過性膜で密閉した後、28℃で6日間インキュベートした。培養培地をマイクロタイタープレートへ低圧下で移すことにより上清を回収した。
【0257】
57℃でコーンコブ上で改善された活性を示した全部で10の変異体を単離した。これらの株のゲノムDNAを単離し、それらのcbh2遺伝子を決定した。このCBH2変異体を所望の性質について試験した。コーンコブ及びコーンストーバーにおける組み合わせライブラリーメンバーの置換と活性を表8−2に示す。洗浄された希酸前処理コーンストーバー(PCS 50℃)50℃でのコーンコブ(CC 50℃)、75℃でのコーンコブ(CC 75℃)は実施例7に記載のように決定した。
【表78】

実施例9
CBH2一部位及び二部位置換変異体及びそれらの活性
【0258】
CBH2変異体をコードしている合成遺伝子をGebeOracle(Mountain Viwe,CA)によりpTTTpyrG中で構築した。表9−1は構築された一部位及び二部位置換変異体を列挙する(番号付けはCBH2成熟アミノ酸配列に基づく)。
【表79】

【0259】
CBH2熱安定性アッセイ2
CBH2変異体の熱安定性を試験するために、50μlの上清を50乃至70℃にわたる温度範囲でPCR機器でインキュベートした。残存活性を0.0025%Tween80を含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0中0.625mg/mlセロトリオースを含む培地80μLで上清20又はlをインキュベートした。1時間後、40μlの100mMグリシン、pH10を添加した。20μlを80μlのABTSに添加して、OD420での発色を5分間記録した。各温度での残存活性を以下の式にあてはめて、仮の融点(Tm)を計算した。
【0260】
このライブラリーは、プライマー、GACCGGACGTGTTTTGCCCTTCAT(配列番号20)及びGTGTGACCGGCTTTGGCGAGTG(配列番号21)を用いて、H.jecorina宿主細胞中でpyr2遺伝子座の組み込みを強化するために、cbh1プロモーターの上流約1.1kbまでと、amdSマーカーの下流約1.85kbまでに隣接するcbh2遺伝子を増幅して、得られたPCR産物として提供された。配列番号20及び配列番号21のプライマーを用いて、pTTTpyrG−CBH2から増幅されたPCR断片(親のcbh1プロモーター、cbh2遺伝子、及び/又は部分的amdS遺伝子)の核酸配列は実施例8において配列番号22として定義されている。
【0261】
変異体を実施例8で説明したようにマイクロタイタープレート上で育成した、振とうフラスコの育成について、25mlのYEG培地(5g/L酵母抽出物、20g/Lグルコース)をアガー上で胞子形成しているTrichoderma株を接種して、28℃、200rpmで2日間インキュベートした。次いで、5mlのYEG培地を2%のグルコース/ソホロース混合物を含む、振とうフラスコ中45mlのグリシン培地の接種に用いた。接種に次いで、培地を共鳴アコースティックインキュベーター(Applikon)中で28℃で3日間インキュベートした。細胞を0.2μmフィルターでろ過して除去した。上清を10kDa分子量を除去するビバスピンスピンセルを用いて濃縮した。
【0262】
マイクロライタープレート上で育成したサンプルを実施例1で説明する様にHPLCによりCBH2生成レベルについて解析した。マイクロタイタープレートと振とうフラスコ育成サンプルの両方を所望の性質について試験した。表9−2は所望の複数の性質についてのCBH2変異体の性質を列挙する。
【表80】

【表81】

1Tm=仮の融点(Tm)は熱安定性アッセイ2で決定された
2IR=安定性についての性能指数は熱安定アッセイ2により決定された
【0263】
CBH2熱安定性アッセイ3
CBH2変異体の熱安定性を解析するために、40μLの上清を50℃のPCR機器中でインキュベートした。試験は3回繰り返した。サンプルはインキュベーション後、30、60、及び120分後に取り出した。10μlの上清を残存活性を0.0025%Tween20を含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0中1mg/mlのセロトリオースを含む溶液50μlとインキュベートして残存活性を決定した。1時間後、40μlの100mMグリシン、pH10、を添加した。3倍濃度のABTS試薬(上掲)の15μLを添加してOD420での定職を3分間記録した。時間内の残存活性を指数関数元帥の式にあてはめた。
Y=Aoexp(−kt)
式中、Aoはt=0における活性、tは時間、kは減衰係数。性能指数(PI)は以下の式で計算した。
PI=−log(kvariant)/−log(kwt
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置番号の5,18,19,28,30,32,35,38,79,80,89,100,102,103,104,105,111,117,119,121,125,126,133,137,138,139,140,141,143,150,158,162,177,180,181,182,185,186,188,190,191,192,193,196,201,207,225,226,228,229,230,233,234,236,240,243,245,251,252,258,267,268,274,292,293,303,304,306,307,313,319,322,328,331,338,340,346,361,362,363,364,365,371,384,394,396,400,406,407,414,417,422,427,431,433,436,440,441,443,444,445、及び447からなる群より選択される1つ以上の位置において置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項2】
前記変異体が、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置番号において、
(i)63,77,129,146,147,151,153,157,161,189,194,197,203,204,208,211,237,239,244,247,254,277,281,285,288,289,294,327,339,344,356,378,382、及び405からなる第一グループ、又は
(ii)94,98,107,120,134,144,154,178,179,206,210,214,231,232,266,272,275,291,312,316,323,343,360,380,381,386,399,410,413,416,426,及び429からなる第二グループ、から選択される1つ以上の更なる位置における更なる置換を含む、請求項1に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項3】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置において、63,77,129,146,147,151,153,157,161,189,194,197,203,204,208,211,237,239,244,247,254,277,281,285,288,289,294,327,339,344,356,378,382、及び405からなる群より選択される1つ以上の位置において置換を含む、セルラーゼ変異体であって、前記位置が配列番号3で定義される対照セロビオヒドラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、前記セルラーゼが一部位変異体である場合、この部位が、K/E,R/Q,N/D,Q/E,D/N、又はE/Qではない、セルラーゼ変異体。
【請求項4】
前記変異体が更に、
(i)5,18,19,28,30,32,35,38,79,80,89,100,102,103,104,105,111,117,119,121,125,126,133,137,138,139,140,141,143,150,158,162,177,180,181,182,185,186,188,190,191,192,193,196,201,207,225,226,228,229,230,233,234,236,240,243,245,251,252,258,267,268,274,292,293,303,304,306,307,313,319,322,328,331,338,340,346,361,362,363,364,365,371,384,394,396,400,406,407,414,417,422,427,431,433,436,440,441,443,444,445,及び447からなる第一グループ、又は
(ii)94,98,107,120,134,144,154,178,179,206,210,214,231,232,266,272,275,291,312,316,323,343,360,380,381,386,399,410,413,416,426,及び429からなる第二グループから選択されるから選択される1つ以上の更なる位置において更なる置換を含み、前記更なる位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる、請求項3に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項5】
セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置、94,98,107,120,134,144,154,178,179,206,210,214,231,232,266,272,275,291,312,316,323,343,360,380,381,386,399,410,413,416,426,及び429からなる群より選択1つ以上の位置において1つ以上の置換を含む、セルラーゼ変異体であって、前記セルラーゼ変異体が一部位置換を有している場合、この一部位置換はV94E,P98L,E107Q,M120L,M134G,M134L,M134V,L144G,L144R,L144S,T154A,A178V,L179C,V206L,S210L,S210R,T214M,T214Y,G231P,G231I,G231A,G231N,G231S,G231T,T232V,H266S,H266A,W272A,W272D,W272Y,N275L,S316P,V323L,V323N,V323Y,G360R,S380T,A381T,E399N,E399D,R413Y,R413P,及びA416からなる群より選択される1つではない、セルラーゼ変異体。
【請求項6】
請求項5に記載のセルラーゼ変異体であって、前記変異体が、
(i)5,18,19,28,30,32,35,38,79,80,89,100,102,103,104,105,111,117,119,121,125,126,133,137,138,139,140,141,143,150,158,162,177,180,181,182,185,186,188,190,191,192,193,196,201,207,225,226,228,229,230,233,234,236,240,243,245,251,252,258,267,268,274,292,293,303,304,306,307,313,319,322,328,331,338,340,346,361,362,363,364,365,371,384,394,396,400,406,407,414,417,422,427,431,433,436,440,441,443,444,445,及び447からなる第一グループ;又は
(ii)63,77,129,146,147,151,153,157,161,189,194,197,203,204,208,211,237,239,244,247,254,277,281,285,288,289,294,327,339,344,356,378,382、及び405からなる第二グループ、
から選択される1つ以上の位置において更なる置換を含み、前記更なる位置が配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して数えられる位置番号である、請求項5に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項7】
前記1つ以上の位置における置換が2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,及び25位からなる群より選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項8】
セルラーゼ変異体であって、前記変異体がセルラーゼ活性を有する成熟形態であり、111,144,154,162,410、及び413からなる群より選択される1つ乃至6つの位置における置換を含み、前記が
111位ではロイシン又はセリン
144位ではロイシン、グルタミン、又はトリプトファン
154位ではスレオニン、システイン、又はバリン、
162位ではタイロシン、又はアスパラギン
410位ではアルギニン又はセリン、及び
413位ではセリン、トリプトファン、又はタイロシン、であり、
これらの位置番号は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸に対応して数えられるものであり、このセルラーゼ変異体が一部位置換からなる場合、この一部位置換がS413Yではない、セルラーゼ変異体。
【請求項9】
セルラーゼ変異体であって、前記変異体がセルラーゼ活性を有する成熟形態であり、98,194,313,316,384,及び443からなる群より選択される1つ乃至6つの位置での置換を含み、該置換が
98位ではプロリン又はレクチン
194位ではリジン、システイン、又はグルタミン、
313位ではセリン又はスレオニン、
316位ではセリン又はプロリン、
384位ではグリシン、システイン、又はグルタミン、及び
443位ではアスパラギン又はイソロイシン、であり、
前記位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、1つの位置換が、P98L置換、K194E置換、及びS316P置換を含まない、セルラーゼ変異体。
【請求項10】
セルラーゼ変異体であって、前記変異体がセルラーゼ活性を有する形態であり、153,161,203,233,422,及び444からなる群より選択される1つ乃至6つの位置において置換を含み、該置換が、
153位ではアルギニン又はグルタミン、
161位ではアスパラギン、アラニン、又はトリプトファン、
203位ではアルギニン又はヒスチジン、
233位ではプロリン又はバリン
422位ではグルタミン又はバリン、及び
444位ではプロリン又はグルタミン、であり、
これらの位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、前記セルラーゼ変異体が1つの置換からなる場合、この1つの置換はR153Q置換ではない、セルラーゼ変異体。
【請求項11】
セルラーゼ変異体であって、前記変異体がセルラーゼ活性を有する形態であり、98,111,144,313,316,413,及び422からなる群より選択される1つ乃至6つの位置において置換を含み、該置換が、
98位ではプロリン又はロイシン
111位ではロイシン又はセリン、
144位ではロイシン又はトリプトファン、
313位ではセリン又はスレオニン、
316位ではセリン又はプロリン、
413位ではセリン又はトリプトファン、及び
422位ではグルタミン又はバリン、であり、
これらの位置は配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされており、前記セルラーゼ変異体が1つの置換からなる場合、この1つの置換はS316P置換ではない、セルラーゼ変異体。
【請求項12】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の98位においてグルタミンを含み、T138C,S316P,S343Q,Q362I,S386C,C400S,及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項13】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の138位においてシステインを含み、S316P,S343Q,Q362I,S386C,C400S,及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項14】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の316位においてプロリンを含み、S343Q,Q362I,S386C,C400S,及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項15】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の343位においてグルタミンを含み、Q362I,S386C,C400S,及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項16】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の362位においてイソロイシンを含み、S386C,C400S,及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項17】
配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列に対応して番号付けされる位置の386位においてシステインを含み、C400S及びS406Pからなる群より選択される1つの置換を含む、セルラーゼ変異体。
【請求項18】
400位にセリンを含み、406位にプロリンを含む、請求項1に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項19】
セルラーゼ活性を有する成熟形態であり、配列番号3で定義する対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)に対応して番号付けされた位置、98,111,182,291,316,362,及び400位において1つ乃至7つの置換を含み、該置換が、
98位ではプロリン又はロイシン、又はグルタミン
111位ではロイシン又はセリン、
182位ではアスパラギン又はトリプトファン、
291位ではセリン又はグルタミン酸、
316位ではセリン又はプロリン、及び
400位ではシステイン又はセリン、であり
前記セルラーゼ変異体が1つの置換からなる場合、この1つの置換はP98L置換及びS316P置換からなる群より選択される1つではない、セルラーゼ変異体。
【請求項20】
前記変異体がL439P又はT74S置換を更に含む、請求項19に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項21】
前記変異体がハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)CBH2,ヒポクレアコニンギ(Hypocrea koningii)CBH2,フミコーラインソレンス(Humicola insolens)CBH2,アクレモニウムセルロイティクス(Acremonium cellulolyticus)CBH2,アガリクスビスポラス(Agaricus bisporus)CBH2,フサリウムオシスポラム(Fusarium osysporum)EG,フェノロカエテクリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)CBH2,タラロマイセスエメルソニ(Talaromyces emersonii)CBH2,セルモビフィダフスカ(Thermobifida. Fusca)6B/E3 CBH2,セルモビフィダフスカ(Thermobifida fusca)6A/E2 EG,及びセルロモナスフィミ(Cellulomonas fimi)CenA EGからなる群より選択される親セルラーゼ由来である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項22】
前記変異体が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、及び配列番号12からなる群のメンバーに対して、少なくとも75%,80%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,又は99%同一であるアミノ酸配列を有する親セルラーゼ由来である、請求項1乃至21に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項23】
前記変異体が単離されている、請求項1乃至22のいずれか1項に記載のセルラーゼ変異体。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載のセルラーゼ変異体を含む組成物。
【請求項25】
前記組成物が、前記セルラーゼ組成物を多く含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載のセルラーゼ変異体をコードしている単離された核酸。
【請求項27】
調節配列に作動可能に結合している請求項26に記載の単離された核酸配列を含むベクター。
【請求項28】
請求項27の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項29】
好適な条件下の培地において請求項28の宿主細胞を培養してセルラーゼ変異体を生成する工程を含む、セルラーゼ変異体を生成する方法。
【請求項30】
請求項29の宿主細胞及び培地を含む組成物。
【請求項31】
請求項29の培地の上清中にセルラーゼ変異体を含む組成物。
【請求項32】
スブチリシン、中性メタロプロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドロラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、及びペルオキシダーゼから選択される少なくとも1つの追加的な酵素を含む、請求項24の組成物。
【請求項33】
請求項24又は32の組成物を、布の表面又は布を含む製品に接触させる工程を含む、布製品の洗浄又は処理方法。
【請求項34】
請求項24又は32の組成物を、布の表面又は布を含む製品に接触させる工程を含む、毛羽立ちを取る又は表面を最終加工する方法。
【請求項35】
請求項24又は32の組成物とバイオマスを接触させる工程を含む、バイオマスを糖に転換する方法。
【請求項36】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載のセルラーゼ変異体を含む酵素組成物をバイオマス組成物に接触させて、糖溶液を生成する工程と、
この糖溶液を、燃料を生成するのに十分な条件下で発酵性微生物と接触させる工程とを含む、燃料を生成する方法。

【公表番号】特表2012−528598(P2012−528598A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514152(P2012−514152)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037328
【国際公開番号】WO2010/141779
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】