説明

改善された触媒系

ターンオーバー数の高いカルボニル化のための連続カルボニル化法、カルボニル化反応媒体、及びその生成物の流れに関する。この方法は、ヒドロキシル基の供給源及び触媒系の存在下、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素でカルボニル化する工程を備える。触媒系は、(a)二座ホスフィン、アルシン又はスチビン配位子と、(b)VIB族もしくはVIIIB族金属又はこれらの化合物から選択される触媒金属と、を含む。触媒金属の触媒活性濃度は、ACCF(生成物kg・時間−1・dm−3)として測定されると0.5未満に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化、新規なカルボニル化反応媒体、及び新規なカルボニル化反応媒体を用いたエチレン性不飽和化合物のカルボニル化法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール又は水と、触媒系であって第VIII族金属、例えばパラジウム、及びホスフィン配位子、例えばアルキルホスフィン、シクロアルキルホスフィン、アリールホスフィン、ピリジルホスフィン又は二座ホスフィンからなる触媒系と、の存在下での一酸化炭素を用いたエチレン性不飽和化合物のカルボニル化が、数多くの欧州特許及び特許出願に記載された(例えば特許文献1〜13参照)。特に、二座ホスフィン配位子が、より高い反応速度を実現し得る触媒系を提供することが開示されている(特許文献11〜13参照)。
【0003】
そのような二座ホスフィン配位子により大きな改善が提示され、任意に置換されたアリール部分の利用可能な隣接炭素原子を介して前記リン原子に結合した、前記アリール部分の形態の架橋基が開示された(特許文献14参照)。そのような配位子は、より安定しており、反応速度が過去に開示されたものよりも有意に高く、エチレンのカルボニル化では不純物をほとんど又は全く生成しない。前記配位子中の各リン原子は、2個の第3級炭素原子にも結合している。
【0004】
しかし、従来の金属触媒反応は、パラジウム化合物がパラジウム金属に還元されるにつれ、連続操作の途中過程で触媒が不活化され、そのためその方法の経済的実現性の重要な因子に影響を与えるという欠点をまねく傾向がある(例えば、特許文献14参照)。この問題には、反応媒体中でポリマー分散剤などの安定化化合物を使用して、触媒系から損失した金属の回収を改善するという取り組みがあった(特許文献15)。しかし興味深いことに、それらの例のいずれも、連続法には事実上関係しておらず、それゆえ、金属又は他の因子の再生に対する影響の知識を、開示から得ることはできない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第0055875号
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第04489472号
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開第0106379号
【特許文献4】ヨーロッパ特許出願公開第0235864号
【特許文献5】ヨーロッパ特許出願公開第0274795号
【特許文献6】ヨーロッパ特許出願公開第0499329号
【特許文献7】ヨーロッパ特許出願公開第0386833号
【特許文献8】ヨーロッパ特許出願公開第0441447号
【特許文献9】ヨーロッパ特許出願公開第0489472号
【特許文献10】ヨーロッパ特許出願公開第0282142号
【特許文献11】ヨーロッパ特許出願公開第0227160号
【特許文献12】ヨーロッパ特許出願公開第0495547号
【特許文献13】ヨーロッパ特許出願公開第0495548号
【特許文献14】国際特許出願公開第96/19434号
【特許文献15】国際特許出願公開第01/10551号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルボニル化工程の間に合理的安定性を示し、比較的高い反応速度を実現できる触媒系が開発されたが、依然として改善された触媒活性が求められている。適切には、本発明は
、とりわけエチレン性不飽和化合物の改善された連続カルボニル化法、及びエチレン性不飽和化合物の連続カルボニル化法のためのカルボニル化反応媒体を提供することを目的とする。詳細には触媒系を含む二座ホスフィン配位子への改善が探求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
パラジウム及び他の第VIB族又はVIIIB族貴金属は、高価な製品であり、上述のとおり、この製品の使用率は、そのような金属を用いたカルボニル化法の経済的実現性に影響を与える。触媒金属の使用効率の一表現が、ターンオーバー数(TON)であり、それはカルボニル化生成物のモル数/触媒金属のモル数と定義されている。高いTON数は、より効率的かつ対費用効果のある方法を示す。これまでは、カルボニル化生成物を高い割合で製造して、これに関する収率を最大にすることに、努力が注がれてきた。
【0007】
反応媒体の単位容量あたりの触媒活性は、反応媒体の単位容量から得られる、単位時間あたりのカルボニル化生成物の製造に関する表現であり、生成物kg・時間−1・dm−3の単位で測定される。この測定値は、活性触媒濃度因子(ACCF)として公知である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ヒドロキシル基の供給源と、(a)二座ホスフィン、アルシン又はスチビン配位子、及び(b)触媒金属の触媒活性濃度がACCF(生成物kg・時間−1・dm−3)として測定されると0.5未満に保持された、第VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物からなる触媒系と、の存在下、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素でカルボニル化する工程からなる、ターンオーバーの高い連続カルボニル化方法が提供される。
【0009】
本明細書における連続は、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素、ヒドロキシル基の供給源、及び好適には触媒系の各濃度が、工程の間に実質的に一定に保持されることを意味する。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、反応媒体中に、エチレン性不飽和化合物と、一酸化炭素と、ヒドロキシル基の供給源と、(a)二座ホスフィン、アルシン又はスチビン配位子、及び(b)カルボニル化反応体中の触媒金属の触媒活性濃度が、ACCF(生成物kg・時間−1・dm−3)として測定されると0.5未満に保持された、第VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物から選択される前記触媒金属とからなる触媒系と、を含む連続カルボニル化法のためのカルボニル化反応媒体及びその生成物流れが提供される。
【0011】
疑いを避けるために、連続法のカルボニル化反応媒体のACCFは、一般に生成物流れで測定される。
本発明の好ましい特徴は、従属クレーム及び以下の説明から明白となろう。
【0012】
ACCFは好適には、0.4未満、より好適には0.35未満、最適には0.30未満である。
典型的には、ACCFの範囲は、0.005〜0.49、より典型的には0.01〜0.39、最も典型的には0.05〜0.34である。特に好ましいのは、0.1〜0.29kg・dm−3・時間−1のACCFである。
【0013】
典型的には、本発明の低いACCFは、カルボニル化反応媒体の適切な希釈により保持される。希釈は好適には、触媒金属以外の反応媒体成分の1種を用いて、より好適には更なる溶媒、カルボニル化生成物又はヒドロキシル基含有化合物を用いて実行される。溶媒として作用することが可能ならば、カルボニル化生成物が特に好ましい。
【0014】
触媒系は好適には、更なる成分(c)として酸も含む。
「酸」は、酸又はその塩を意味するものとし、したがって酸の関連物と解釈しなければならない。
【0015】
適切には、触媒系の成分a),b),c)(存在するならば)の全てを、カルボニル化が行われる反応容器そのものに添加することができる。あるいは成分a),b),c)(存在するならば)を、いずれかの順序で連続して添加して触媒系を形成させることができ、又は特定の順序で、容器に直接添加するか、もしくは容器の外部で添加して、その後、容器に添加することができる。例えば、酸成分c)を(存在するならば)、最初に二座配位子成分a)に添加してプロトン化配位子を形成させてもよく、その後、プロトン化配位子を金属又はその化合物(成分b))に添加して触媒系を形成させてもよい。あるいは配位子成分a)及び金属又はその化合物(成分b))を混合してキレート化金属化合物を形成させてもよく、その後、酸(成分c))を任意に添加する。あるいは酸成分c)が使用される場合、いずれかの2成分を一緒に反応させて中間体部分を形成させ、その後、それを反応容器に添加して第3の成分を添加するか、又は最初に第3の成分と反応させ、その後、反応容器に添加する。しかし、連続法では、成分a),b),c)の全てを互いに独立して連続的に一定速度で添加することが好ましい。
【0016】
本発明は、二座配位子と酸の両方の相対モル濃度を、これまで予見された濃度を超えるレベルにすることで、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化で触媒系を用いた場合に、意外で予期しない利点が得られ、先行技術の系の欠点の少なくとも一部が軽減又は少なくとも低減する、先に定義された触媒系にも関する。いずれの場合でも、本発明の触媒系の使用により、少なくともより安定した系が得られ、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化反応のターンオーバー数が改善される。
【0017】
用いる二座配位子の量は、広い範囲内で変動してもよい。存在する第VIBもしくはVIIIB族金属のモル数に対する存在する二座配位子のモル数の比が、金属のモルあたり好適には1〜50モル、例えば1〜10モル、特に1〜5モルとなるような量で、二座配位子が存在する。より好適には、第VIIIB金属に対する式Iで示される化合物のモル:モル範囲は、1:1〜3:1の範囲内、最適には1:1〜1.25:1の範囲内である。簡便には、これらの低モル比を適用することが可能であるため、式Iで示される化合物の過剰な使用が避けられ、そのためこれらの通常は高価な化合物の消費を最小限に抑えられることが有利である。適切には、本発明の触媒は、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化反応においてその場で使用する前に、別個のステップで調製される。
【0018】
しかし、過剰な酸系では、金属に対する前記配位子(即ち、成分b)に対する成分a))の比が、少なくとも2:1モル比になるように、配位子が触媒系又はその前駆体中で過剰に存在してもよい。そのような系での金属に対する配位子の比は好適には、2:1モル比よりも大きく、より好適には2:1〜1000:1の範囲内、より好適には2.5:1〜1000:1の範囲内、より好適には3:1〜1000:1の範囲内、より好適には5:1〜750:1の範囲内、より好適には7:1〜1000:1の範囲内、特に8:1〜900:1の範囲内、より好適には10:1〜500:1の範囲内、より好適には20:1〜400:1の範囲内、より好適には50:1〜250:1の範囲内、最適には50:1超の範囲内、例えば51:1以上、より具体的には51:1〜250:1又は〜1000:1である。あるいは前記比は、15:1〜45:1の範囲内、好適には20:1〜40:1、より好適には25:1〜35:1の範囲内であってもよい。
【0019】
上述のとおり、酸が存在してもよく、配位子に対する酸(即ち、成分a)に対する成分c))の比が好適には、少なくとも2:1モル比となるような量で、酸が触媒又はその前
駆体中で過剰であってもよい。そのような酸が過剰な系での配位子に対する酸の比は好適には、2:1モル比よりも大きく、より好適には2:1〜100:1の範囲内、より好適には4:1〜100:1の範囲内、より好適には5:1〜95:1の範囲内、より好適には5:1超〜95:1の範囲内、より好適には5:1超〜75:1の範囲内、より好適には10:1〜50:1の範囲内、より好適には20:1〜40:1の範囲内、より好適には20:1超〜40:1の範囲内(例えば25:1〜40:1、又は25:1〜30未満:1)、より好適には30:1超で適切には先に示された上限で(例えば30:1〜40:1)、又は50:1で、又はより好適には35:1超で、より好適には37:1超で、適切には先に示された上限のいずれかである。この段落の範囲のそれぞれは、先に開示された金属に対する配位子のそれぞれの比の範囲、即ち、成分b)に対する成分a)の比と一緒に用いることができる。
【0020】
酸が過剰な系で、先に示された金属に対する配位子の比、及び配位子に対する酸の比で作業する利点は、金属のターンオーバー数(TON)が更に増加したことで証明されるとおり、意外にも、低いACCFにより触媒系の安定性が更に改善したことから明白である。触媒系の安定性を改善することにより、カルボニル化反応スキームでの金属の使用が、最小限に抑えられる。
【0021】
要するに、用いられる個々の二座配位子ごとに、ホスフィン、アルシン又はスチビンが完全にプロトン化されるような酸のレベルでなければならない。つまり改善された効果を示すために、配位子のレベルは、配位子:金属モル比に示した最小レベルを超えていなければならず、酸のレベルは、プロトン化を促進するために存在する配位子のレベルに関して、酸:配位子モル比で示す最小レベルを超えていなければならない。
【0022】
酸が過剰な系での金属に対する酸(即ち、成分b)に対する成分c))のモル比は好適には、少なくとも4:1、より好適には4:1〜100000:1、より好適には10:1〜75000:1、より好適には20:1〜50000:1、より好適には25:1〜50000:1、より好適には30:1〜50000:1、より好適には40:1〜40000:1、より好適には100:1〜25000:1、より好適には120:1〜25000:1、より好適には140:1〜25000:1、より好適には200:1〜25000:1、最適には550:1〜20000:1、又は2000:1超〜20000:1になるような量で、酸が触媒系又はその前駆体中で存在する。あるいは比は、125:1〜485:1、より好適には150:1〜450:1、より好適には175:1〜425:1、より好適には200:1〜400:1、最適には225:1〜375:1の範囲内であってもよい。この段落のこれらの範囲のそれぞれは、先に開示された金属に対する配位子の比の範囲、即ち、成分b)に対する成分a)の比のそれぞれ、及び/又は先に開示された配位子に対する酸の比の範囲、即ち、成分a)に対する成分c)の比のそれぞれと一緒に用いることができる。
【0023】
疑いを避けるために、前述の比及び比の範囲の全てが、後述のより詳細に示される配位子の実施形態全てに適用される。しかし、酸の存在が任意であり、本発明で不可欠ではないことにも留意すべきである。したがって、系での過剰な酸の可能性も任意であり、本発明にとって不可欠ではない。
【0024】
先に示された本発明のACCFの態様の利点は、金属のターンオーバー数(TON)の増加に証明されたとおり、触媒系の安定性が改善することから明白である。触媒系の安定性を改善することにより、カルボニル化反応スキームでの金属の使用が最小限に保持される。
【0025】
本発明の一つの実施形態において、二座ホスフィン配位子は、一般式(I)
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、
Arは、リン原子が利用可能な隣接炭素原子に結合した、任意に置換されたアリール部分を含む架橋基であり、
A,Bは、それぞれ独立して低級アルキレンを表し、
K,D,E,Zは、アリール部分(Ar)の置換基であり、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2526、SR27、C(O)SR27、もしくは−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)(式中、Jは、低級アルキレンを表す)を表すか、又はK,Z,D,Eから選択される2個の隣接基が、結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、更なるフェニル環を形成しており、それが水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2526、SR27もしくはC(O)SR27から選択される置換基1個以上により任意に置換されており、
13〜R18は、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又はHetを表し、好適にはそれぞれ独立して低級アルキル、アリール、又はHetを表し、
19〜R27は、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又はHetを表し、
〜R12は、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又はHetを表し、好適にはそれぞれ独立して低級アルキル、アリール又はHetを表し;
,Q,Qは(存在するならば)、それぞれ独立してリン、ヒ素又はアンチモンを表し、したがって後者の2種の場合、先のホスフィン又はリンの参照が改められ、好適にはQ,Qは両者ともリンを表し、より好適にはQ,Q,Qは(存在するならば)全てリンを表す)で示される。
【0028】
適切には本発明の二座ホスフィンは、好適には第VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物、より好適には好ましいパラジウムへの二座配位が可能でなければならない。
K,D,E,Zが、−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表す場合、K,D,E,Zのそれぞれは、AもしくはBが結合するアリール炭素に隣接するアリール炭素上にあるか、又はそのように隣接していない場合には残りのK,D,EもしくはZ基(それ自体は−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表す)に隣接する。
【0029】
本発明の実施形態での二座配位子の具体的であるが非限定的な例としては、以下のもの
:1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジ−tert−ペンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ナフタレンが挙げられる。それにも関わらず、他の二座配位子を本発明の範囲を逸脱せずに予見し得ることが、当業者には理解されよう。
【0030】
用語「Ar」又は「アリール」は、本明細書で用いられる場合には、5〜10員、好適には6〜10員炭素環式芳香族基、例えばフェニル及びナフチルを包含し、その基は、K、D、E又はZに加えて、アリール、低級アルキル(アルキル基そのものが、以下に定義されたとおり任意に置換又は終結されていてもよい)、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27又はC(S)NR2526(式中、R19〜R27は、それぞれ独立して、水素、アリール、又は低級アルキル(アルキル基そのものが、以下に定義するとおり任意に置換又は終結されていてもよい)を表す)から選択される置換基1個以上で任意に置換されている。更にアリール部分は、縮合された多環基、例えばナフタレン、ビフェニレン、又はインデンであってもよい。
【0031】
式Iで示される化合物中の用語「第VIB族又はVIIIB族の金属」には、Cr,Mo,W,Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Os,Ir,Pt,Pdなどの金属を包含するものとする。金属は好適には、Ni,Pt,Pdから選択される。金属はより好適には、Pdである。疑いを避けるために、本明細書における第VIB族又はVIIIB族金属の参照では、近代元素周期表の第6族、8族、9族及び10族を包含するとみなさなければならない。
【0032】
用語「Het」は、本明細書で用いられる場合には、4〜12員、好適には4〜10員環系を包含し、その環は、窒素、酸素、硫黄及びそれらの混合物から選択されるヘテロ原子を1個以上含み、その環は、二重結合を1個以上含むか、又は非芳香族、部分芳香族もしくは完全芳香族の性質であってもよい。その環系は、単環式、二環式又は縮合であってもよい。本明細書で同定された各「Het」基は、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、低級アルキル(アルキル基そのものが、以下に定義されたとおり任意に置換又は終結されていてもよい)、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27又はC(S)NR2526(式中、R19〜R27は、それぞれ独立して、水素、アリール、又は低級アルキル(アルキル基そのものが、以下に定義するとおり任意に置換又は終結されていてもよい)を表す)から選択される置換基1個以上で任意に置換されている。つまり用語「Het」としては、任意に置換されたアゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリル及びピペラジニルなどの基が挙げられる。Hetでの置換は、Het環の炭素原子、又は適宜、1個以上のヘテロ原子の位置であってもよい。
【0033】
「Het」基は、窒素酸化物の形態であってもよい。
用語「低級アルキル」は、本明細書で用いられる場合には、C〜C10アルキルを意味し、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びヘプチル基が挙げられる。他に断りがなければ、アルキル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合には、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和、環式、非環式又は部分環式/非環式であってもよく、そして/あるいはハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27、C(S)NR2526、アリール又はHet(式中、R19〜R27は、それぞれ独立して、水素、アリール、又は低級アルキルを表す)から選択される置換基1個以上により置換又は終結されていてもよく、そして/あるいは酸素もしくは硫黄原子1個以
上、又はシラノもしくはジアルキルシリコン基により中断されていてもよい。
【0034】
低級アルキル基、又はR,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20,R21,R22,R23,R24,R25,R26,R27,K,D,E,Zが表すものであって、アリール及びHetを置換し得るアルキル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合には、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和、環式、非環式又は部分環式/非環式であってもよく、酸素もしくは硫黄原子1個以上、又はシラノもしくはジアルキルシリコン基によりにより中断されていてもよく、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19,OC(O)R20,C(O)R21,C(O)OR22,NR2324,C(O)NR2526,SR27,C(O)SR27,C(S)NR2526,アリール又はHetから選択される置換基1個以上により置換されていてもよい(式中、R19〜R27は、それぞれ独立して、水素、アリール、又は低級アルキルを表す)。
【0035】
同様に、用語「A,B,J(存在する場合)が式Iで示される化合物中で表す低級アルキレン」は、本明細書で用いられる場合には、その基の少なくとも2箇所で他の部分に結合したC〜C10基を包含し、他については「低級アルキル」と同様に定義される。
【0036】
上述の基を置換又は終結していてもよいハロ基としては、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが挙げられる。
本明細書内の式で示される化合物が、アルケニル基を含む場合、シス(E)/トランス(Z)異性が生じてもよい。本発明は、本明細書内で定義されたいずれかの式で示される化合物の各立体異性体、そして適宜、その各互変異性体形態を、その混合物と共に包含する。ジアステレオ異性体、又はシス/トランス異性体の分離は、従来の技術、例えば式の一つで示される化合物の立体異性混合物、又はその適切な塩もしくは誘導体の分画結晶、クロマトグラフィー又はHPLCにより実現してもよい。式の一つで示される化合物の各鏡像異性体も、対応する光学的に純粋な中間体から、又は解析により、例えば適切なキラルサポートを用いた対応するラセミ体のHPLCにより、又は適宜、対応するラセミ体と適切な光学活性酸もしくは塩基との反応により形成されたジアステレオ異性体塩の分画結晶により、製造してもよい。
【0037】
立体異性体は全て、本発明の方法の範囲内に包含される。
式Iで示される化合物が、本発明の触媒系の形成において、第VIBもしくはVIIIB族金属又はその化合物と配位する配位子として機能し得ることは、当業者には理解されよう。典型的には、第VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物は、式Iで示される化合物のリン、ヒ素及び/又はアンチモン原子1個以上に配位している。
【0038】
好適にはR〜R18は、それぞれ独立して低級アルキル又はアリールを表す。より好適にはR〜R18は、それぞれ独立してC〜Cアルキル、C〜Cアルキルフェニル(フェニル基は、本明細書に定義されたとおり任意に置換されている)又はフェニル(フェニル基は、本明細書に定義されたとおり任意に置換されている)を表す。より好適にはR〜R18は、それぞれ独立してC〜Cアルキルを表し、それは本明細書に定義されたとおり任意に置換されている。最適にはR〜R18は、それぞれ非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びシクロヘキシルを表す。
【0039】
代わりに、又は追加として、基R〜R、R〜R、R〜R、R10〜R12、R13〜R15又はR16〜R18のそれぞれが一緒になって、独立して環構造、例えば1−ノルボルニル又は1−ノルボルナジエニルを形成していてもよい。複合基の更なる例としては、R〜R18の間で形成された環構造が挙げられる。あるいは基の1個以上
が、配位子に結合する固相を表していてもよい。
【0040】
本発明の好適な実施形態において、R,R,R,R10,R13,R16は、それぞれ本明細書に定義された同一の低級アルキル基、アリール基又はHet部分であり、R,R,R,R11,R14,R17は、それぞれ本明細書に定義された同一の低級アルキル基、アリール基、又はHet部分であり、R,R,R,R12,R15,R18は、それぞれ本明細書に定義された同一の低級アルキル基、アリール基、又はHet部分である。R,R,R,R10,R13,R16はより好適には、互いに同一のC〜Cアルキル基、特に非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル又はシクロヘキシルであり、R,R,R,R11,R14,R17は、それぞれ独立して先に定義された同一のC〜Cアルキル基であり、R,R,R,R12,R15,R18は、それぞれ独立して先に定義された同一のC〜Cアルキル基である。例えば、R,R,R,R10,R13,R16はメチルであり、R,R,R,R11,R14,R17はエチルであり、R,R,R,R12,R15,R18はn−ブチル又はn−ペンチルである。
【0041】
本発明の好適な実施形態において、各R〜R18基は、本明細書に定義された同一の低級アルキル基、アリール基又はHet部分を表す。各R〜R18は好適には、同一のC〜Cアルキル基、特に非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びシクロヘキシルを表す。各R〜R18は最適には、メチル基である。
【0042】
式Iで示される化合物において、各Q,Q,Qは(存在するならば)好適には、同一である。Q,Q,Qは(存在するならば)好適にはリンである。
式Iで示される化合物において、A,B,J(存在するならば)は好適には、それぞれ独立して本明細書に定義されたとおり、例えば低級アルキル基で任意に置換されたC〜Cアルキレンを表す。A,B,J(存在するならば)が表す低級アルキレン基は好適には、非置換である。A,B,Jが独立して表し得る好適な低級アルキレンは、−CH−又は−C−である。A,B,J(存在するならば)のそれぞれは最適には、本明細書に定義された同一の低級アルキレン基、特に−CH−である。
【0043】
式Iで示される化合物において、K,D,E,Zが、−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)とはならない場合、K,D,E,Zは好適には、水素、低級アルキル基、フェニル基又は低級アルキルフェニル基である。K,D,E,Zはより好適には、水素、フェニル基、C〜Cアルキルフェニル基、又はC〜Cアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基である。K,D,E,Zは最適には、水素である。
【0044】
式Iで示される化合物において、K,D,E,Zが、結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成していない場合、K,D,E,Zは好適には、それぞれ独立して、水素、低級アルキル基、フェニル基、又は低級アルキルフェニル基である。K,D,E,Zはより好適には、それぞれ独立して、水素、フェニル基、C〜Cアルキルフェニル基、又はC〜Cアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基である。K,D,E,Zは好適には、同一の置換基、最適には、水素を示す。
【0045】
式Iで示される化合物において、K,D,E,Zがいずれも−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)ではなく、かつK,D,E,Zが結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成していない場合、K,D,
E,Zのそれぞれは好適には、先に定義された水素、低級アルキル、アリール、又はHetから選択される同一の基を表し、特に水素又はC〜Cアルキル(より詳細には非置換のC〜Cアルキル)、特に水素を表す。
【0046】
式Iで示される化合物において、K,D,E,Zのうちの2個が結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成している場合、そのフェニル環は好適には、アリール、低級アルキル(アルキル基そのものが、以下に定義されるとおり任意に置換又は終結されていてもよい)、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27又はC(S)NR2526(式中、R19〜R27は、それぞれ独立して、水素又は低級アルキル(アルキル基そのものは、以下に定義されるとおり任意に置換又は終結されていてもよい)を表す)から選択される置換基1個以上で任意に置換されている。フェニル環はより好適には、いずれの置換基にも置換されておらず、即ち、それは水素原子である。
【0047】
式Iで示される化合物として好適には、A,Bが、それぞれ独立して非置換のC〜Cアルキレンであり、K,D,Z,Eが、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、フェニル、C〜Cアルキルフェニル、もしくは−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)(式中、Jは、非置換のC〜Cアルキレンを表す)であるか、K,Z,D,Eのうちの2個が、結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成しており、それが低級アルキル、フェニル又は低級アルキルフェニルから選択される置換基1個以上により任意に置換されているものが挙げられる。
【0048】
〜R18は、それぞれ独立してC〜Cアルキル、フェニル又はC〜Cアルキルフェニルを表す。
式Iで示される化合物としてより好適なものは、A,Bが、両者とも−CH−又はC、特にCHであり、K,D,Z,Eが、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキルフェニル、C〜Cアルキル、もしくは−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)(式中、Jは、Aと同一である)であるか、K,D,E,Zのうちの2個が、結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、非置換のフェニル環を形成しており、R〜R18が、それぞれ独立してC〜Cアルキルであるものが挙げられる。
【0049】
式Iで示される化合物としてより好適なものは、R〜R18が、互いに同一であり、それぞれC〜Cアルキル、特にメチルであるものが挙げられる。
式Iで示される化合物としてより好適なものは、K,D,Z,Eが、それぞれ独立して、水素もしくはC〜Cアルキルからなる群から選択され、特にK,D,Z,Eのそれぞれが、同一の基を表し、特にK,D,Z,Eのそれぞれが水素であるもの、又は、Kが−CH−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)であり、D,Z,Eが、水素もしくはC〜Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、特にD,Eの両者が、同一の基を表し、特にD,Z,Eが、水素であるものが挙げられる。
【0050】
式Iで示される具体的な化合物として特に好適なものは、R〜R12が互いに同一であって、メチル基を表し、A,Bが同一であり、−CH−を表し、K,D,Z,Eが、同一であり、水素であるものが挙げられる。
【0051】
更なる実施形態において、Q,Qのうちの少なくとも一方に結合する少なくとも1個の(CR)基、即ち、CR、CR、CR
又はCR101112は、代わりとして基(Ad)で表されてもよい。ここでAdは、それぞれ独立して第3級炭素原子のいずれか1個を介してリン原子に結合した任意に置換されたアダマンチル又はコングレシル基であり、上記の任意の置換は、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2526、SR27又はC(O)SR27から選択される置換基1個以上によるか、あるいはQ,Qのいずれか一方もしくは両方、又はQ(存在するならば)に結合した両方の(CR)基が、後により詳細に定義される、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基(2−ホスファアダマンチル基(2−PA基)とも呼ばれる)又はその誘導体を形成しているか、あるいは式
【0052】
【化2】

【0053】
(式中、
49,R54は、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、又はアリールを表し;
50〜R53は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、又はHetを表し;
Yは、酸素、硫黄又はN−R55を表し、R55は、存在するならば、水素、低級アルキル又はアリールを表す)で示される環系を形成している。
【0054】
この実施形態において、式Iは、
(Ad)(CR−A−(K,D)Ar(E,Z)−B−Q(Ad)(CR
(式中、K,D,E,Zが、−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)の代わりに−J−Q(Ad)(CR13(R14)(R15を表してもよいことを除き、Ar,A,B,K,D,E,Z,Q,Q,Q,R〜R27は、先に定義されたとおりであり、Adは、先に定義されたとおりであり、
S+U≧1であれば、S及びU=0,1又は2;
T+V≦3であれば、T及びV=0,1又は2;
W及びX=0,1又は2)と表してもよい。
【0055】
先に示されたR〜R18,Q〜Q,A,B,J(存在するならば),K,D,E,Z,R19〜R27に関する好ましい実施形態に加えて、それらの全ては、少なくとも1個の(Ad)基が存在する場合に以下のことも適用される、本発明の実施形態に等しく適用される。
【0056】
式Iで示される化合物としてさらに好適なものは、A,Bが、両者とも−CH−又は−C−、特に−CH−であり、K,D,Z,Eが、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキルフェニル、C〜Cアルキル、もしくは−J−Q(Ad)(CR13(R14)(R15))(式中、Jは、Aと同一である)であるか、又はK,D,E,Zのうちの2個が、結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、非置換のフェニル環を形成しており、R〜R,R〜R,R13〜R15(存在するならば)が、
それぞれ独立してC〜Cアルキルを表し、Q,Qに結合した(Ad)基の総数が≧3、即ち、S+U≧3であり、W及びX=0、1又は2であるものである。
【0057】
式Iで示される化合物としてさらに好適なものは、R〜R,R〜R,R13〜R15(存在するならば)が同一であり、それぞれC〜Cアルキル、特にメチルを表し、Q,Qに結合した(Ad)基の総数が≧3、即ち、S+U≧3であるものがある。
【0058】
式Iで示される化合物としてさらに好適なものは、K,D,Z,Eが、それぞれ独立して、水素もしくはC〜Cアルキルから選択され、特にK,D,Eのそれぞれが同一の基を表し、特にK,D,Eのそれぞれが水素を表すもの、或いは、Kが−CH−Q(Ad)(CR13(R14)(R15を表し、D,Z,Eが、それぞれ独立して、水素もしくはC〜Cアルキルからなる群から選択され、特にD,Eの両方が同一の基を表し、特にD,Z,Eが、水素を表し、W及びX=0,1又は2であるものがある。
【0059】
式Iで示される化合物として特に好適なものは、R〜R,R〜Rが、それぞれ同一であってメチル基であるもの、又は、Q,Qに結合した(Ad)基の総数が2、即ち、S+U=2であり、A,Bが同一、−CH−であり、K,D,Z,Eが同一であり、水素であるものがある。
【0060】
式Iで示される化合物として特に好適なものは、Adがそれぞれの例の同じ位置でQ又はQに結合したものが挙げられる。好適にはS≧1かつU≧1、より好適にはS=2かつU≧1又はその逆、最適にはS及びU=2(ここでSは、Qに結合した(Ad)基の数であり、Uは、Qに結合した(Ad)基の数である)である。
【0061】
本発明の実施形態の二座配位子の具体的であるが非限定的な例としては、以下のものがある。1,2−ビス(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジ−5−tert−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(1−アダマンチルtert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジコングレシルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ホスファアダマンチル−p−メチル)ベンゼン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ホスファアダマンチル−p−メチル)ベンゼン、1−(tert−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、及び1−[(p−(2,2,6,6−テトラメチルホスフィナン−4−オン)ホスフィノメチル)]−2−(ホスファアダマンチル−p−メチル)ベンゼンが挙げられ、ここで「ホスファアダマンチル」は、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル、2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキシアダマンチル、又は2−ホスファ−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキシアダマンチル。上記に関わらず、他の二座配位子を本発明の範囲を逸脱せずに予見し得ることが、当業者には理解されよう。
【0062】
更なる実施形態において、二座ホスフィン配位子は、一般式(III )
【0063】
【化3】

【0064】
(式中、
,A、ならびにA,A,Aは(存在するならば)、それぞれ独立して低級アルキレンを表し、
は、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF又は−A−Q(X)Xからなる群から選択され、
は、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CFもしくは−A−Q(X)Xからなる群から選択され、
は、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CFもしくは−A−Q(X)X10からなる群から選択されるか、又は
,Eの両者が、結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されたフェニル環を形成しており、
は、CR(R)(R)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、Xは、CR(R)(R)、コングレシルもしくはアダマンチルを表すか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III a
【0065】
【化4】

【0066】
で示される環系を形成しており、
は、CR(R)(R)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、Xは、CR10(R11)(R12)、コングレシルもしくはアダマンチルを表すか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III b
【0067】
【化5】

【0068】
で示される環系を形成しており、
は、CR13(R14)(R15)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、Xは、CR16(R17)(R18)、コングレシルもしくはアダマンチルを表すか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III c
【0069】
【化6】

【0070】
で示される環系を形成しており、
は、CR31(R32)(R33)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、Xは、CR34(R35)(R36)、コングレシルもしくはアダマンチルを表すか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III d
【0071】
【化7】

【0072】
で示される環系を形成しており、
は、CR37(R38)(R39)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、X10は、CR40(R41)(R42)、コングレシルもしくはアダマンチルを表すか、又はX,X10が、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,X10が、結合するQと一緒になって、式III e
【0073】
【化8】

【0074】
で示される環系を形成しており、
この更なる実施形態において、
,Q、及びQ,Q,Q(存在するならば)は、それぞれ独立してリン、ヒ素又はアンチモンを表し、
Mは、第VIB族もしくはVIIIB族金属又はそれらの金属カチオンを表し、
は、任意に置換されたシクロペンタジエニル、インデニル又はアリール基を表し、
は、それぞれが独立して、水素、低級アルキル、アルキルアリール、ハロ、CO、P(R43)(R44)R45又はN(R46)(R47)R48から選択される配位子の1個以上を表し、
〜R18,R31〜R42は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、ハロ、又はHetを表し、
19〜R30,R43〜R48は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級
アルキル、アリール、又はHetを表し、
49,R54,R55は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、又はアリールを表し、
50〜R53は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、又はHetを表し、
,Y,Y,Y,Yは、存在するならば、それぞれ独立して酸素、硫黄、又はN−R55を表し、
n=0又は1;
m=0〜5;
ただし、n=1ならばm=0、そしてn=0ならばm≠0とする)で示される。
【0075】
式III で示される化合物において、両方のKが−A−Q(X)Xを表し、Eが−A−Q(X)X10を表す場合、Dは好適には、−A−Q(X)Xを表す。
【0076】
この実施形態において、R〜R18,R31〜R42は好適には、存在するならば、それぞれ独立して、水素、任意に置換されたC〜Cアルキル、C〜Cアルキルフェニル(ここでフェニル基は、本明細書に定義されたとおり任意に置換されている)、トリフルオロメチル又はフェニル(ここでフェニル基は、本明細書に定義されたとおり任意に置換されている)を表す。R〜R18,R31〜R42は好適には、存在するならば、それぞれ独立して、水素、本明細書に定義されたとおり任意に置換されたC〜Cアルキル、トリフルオロメチル又は任意に置換されたフェニルを表す。R〜R18,R31〜R42は好適には、存在するならば、それぞれ独立して、水素、非置換のC〜Cアルキル、又は非置換のC〜CアルキルもしくはOR19(式中、R19は、水素又は非置換のC〜Cアルキルを表す)から選択される置換基1個以上で任意に置換されたフェニルを表す。R〜R18,R31〜R42はより好適には、存在するならば、それぞれ独立して、水素又は非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル,シクロヘキシル、特にメチルを表す。R〜R18,R31〜R42は最適には、存在するならば、それぞれ独立して非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びシクロヘキシル、特にメチルを表す。
【0077】
代わりに、又は追加として、基R〜R、R〜R、R〜R、R10〜R12、R13〜R15、R16〜R18、R31〜R33、R34〜R36、R37〜R39、又はR40〜R42(存在するならば)の1個以上が、結合する炭素原子と一緒になって、独立して環状アルキル構造、例えば1−ノルボルニル又は1−ノルボルナジエニルを形成していてもよい。
【0078】
代わりに、又は追加として、基R,R,R,R,R,R,R10,R11,R13,R14,R16,R17,R31,R32,R34,R35,R37,R38、又はR40,R41(存在するならば)の1個以上が、結合する炭素原子と一緒になって、独立して環状アルキル構造、好適にはC〜C環状アルキル構造、例えばシクロヘキシル及びシクロペンチルを形成していてもよく、R,R,R,R12,R15,R18,R33,R36,R39,R42は(存在するならば)、それぞれ独立して先に定義された水素、低級アルキル、トリフルオロメチル又はアリール、特に非置換のC〜Cアルキル及び水素、特に非置換のC〜Cアルキルを表す。
【0079】
特に好適な実施形態において、R〜R18,R31〜R42のそれぞれは、存在するならば、水素ではない。適切には、そのような組合せは、Q,Q,Q,Q,Q
が、それぞれ、水素原子を担わないX〜X10の炭素原子に結合していることを意味する。
【0080】
,R,R,R10,R13,R16,R31,R34,R37,R40(存在するならば)は好適には、それぞれ本明細書に定義された同一の置換基を表し、R,R,R,R11,R14,R17,R32,R35,R38,R41は(存在するならば)、それぞれ本明細書に定義された同一の置換基を表し、R,R,R,R12,R15,R18,R33,R36,R39,R42(存在するならば)は好適には、それぞれ本明細書に定義された同一の置換基を表す。R,R,R,R10,R13,R16,R31,R34,R37,R40(存在するならば)はより好適には、それぞれ同一のC〜Cアルキル、特に非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルもしくはシクロヘキシル、又はトリフルオロメチルを表し、R,R,R,R11,R14,R17,R32,R35,R38,R41は(存在するならば)、それぞれ本明細書に定義された同一のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルを表し、R,R,R,R12,R15,R18,R33,R36,R39,R42は(存在するならば)、それぞれ本明細書に定義された同一のC〜Cアルキル、又はトリフルオロメチルを表す。例えば、R,R,R,R10,R13,R16は(存在するならば)、それぞれメチルを表し、R,R,R,R11,R14,R17は(存在するならば)、それぞれエチルを表し(存在するならば)、R,R,R,R12,R15,R18は(存在するならば)、それぞれn−ブチル又はn−ペンチルを表す。
【0081】
特に好適な実施形態において、それぞれR〜R18,R31〜R42基は(存在するならば)、本明細書に定義された同一の置換基を表す。好適にはそれぞれR〜R18,R31〜R42基は、同一のC〜Cアルキル基、特に非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びシクロヘキシル、又はトリフルオロメチルを表す。それぞれR〜R18,R31〜R42基は最適には、非置換のC〜Cアルキル、特にメチルを表す。
【0082】
用語アダマンチルは、本明細書で用いられる場合には、1又は2位でそれぞれQ,Q,Q,Q,Qに結合していてもよいアダマンチル基を意味する。トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシルは、アダマンチル基の系統名であり、適切にはそれぞれQ,Q,Q,Q,Qは、トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基1又は2個の1位又は2位に結合していてもよい。好適にはQ,Q、ならびにQ,Q,Qは、存在するならばアダマンチル基1個以上の第3級炭素に結合している。適切には、アダマンチル基が非置換アダマンチルを表す場合、Q,Q、ならびにQ,Q,Qは、存在するならば好適にはトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基1個以上の1位に結合しており、即ち、アダマンチル基の炭素原子は、水素原子を担っていない。
【0083】
アダマンチル基は、水素原子以外に、低級アルキル、−OR19、−OC(O)R20、ハロ、ニトロ、−C(O)R21、−C(O)OR22、シアノ、アリール、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−CF、−P(R56)R57、−PO(R58)(R59)、−PO、−PO(OR60)(OR61)、又はSO(R62)(式中、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、低級アルキル、シアノ及びアリールは、先に定義されたとおりであり、R56〜R62は、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又はHetを表す)から選択される置換基1個以上を任意に含んでいてもよい。
【0084】
適切には、アダマンチル基が、先に定義されたとおり置換基1個以上で置換されている場合、非常に好ましい置換基としては、非置換のC〜Cアルキル、−OR19、−OC(O)R20、フェニル、−C(O)OR22、フルオロ、−SOH、−N(R23)R24、−P(R56)R57、−C(O)N(R25)R26及びPO(R58)(R59)、−CF(式中、R19は、水素、非置換のC〜Cアルキル又はフェニルを表し、R20、R22、R23、R24、R25、R26は、それぞれ独立して、水素又は非置換のC〜Cアルキルを表し、R56〜R53、R56は、それぞれ独立して非置換のC〜Cアルキル又はフェニルを表す)が挙げられる。
【0085】
適切には、アダマンチル基は、水素原子以外に、先に定義された置換基を最大10個、好適には先に定義された置換基を最大5個、より好適には先に定義された置換基を最大3個含んでいてもよい。適切には、アダマンチル基が、水素原子以外に、本明細書に定義された置換基を1個以上含む場合、好適にはそれぞれの置換基は、同一である。好ましい置換基は、非置換のC〜Cアルキル及びトリフルオロメチル、特に非置換のC〜Cアルキル、例えばメチルである。非常に好ましいアダマンチル基は、水素原子のみを含み、即ち、アダマンチル基は、置換されていない。
【0086】
アダマンチル基が式III で示される化合物中に1個以上存在する場合、各アダマンチル基は好適には、同一である。
用語2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基は、X,Xと、結合するQとの組合わせにより形成される2−ホスファアダマンチル基、X,Xと、結合するQとの組合わせにより形成される2−ホスファアダマンチル基、X,Xと結合するQとの組合わせにより形成される2−ホスファアダマンチル基、X,Xと結合するQとの組合わせにより形成される2−ホスファアダマンチル基、ならびにX,X10と結合するQとの組合わせにより形成される2−ホスファアダマンチル基(ここでQ,Q,Q,Q,Qは、アダマンチル基の2位に存在し、それは不可欠な部分を形成しており、Q,Q,Q,Q,Qのそれぞれは、リンを表す)を意味するものとする。
【0087】
2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基(本明細書では2−ホスファアダマンチル基と呼ばれる)は、水素原子以外に、置換基1個以上を任意に含んでいてもよい。適切な置換基としては、アダマンチル基に関して本明細書に定義されたそれらの置換基が挙げられる。非常に好ましい置換基としては、低級アルキル、特に非置換のC〜Cアルキル、特にメチル、トリフルオロメチル、−OR19(式中、R19は、本明細書に定義されたとおりであり、特に非置換のC〜Cアルキル又はアリールである)及び4−ドデシルフェニルが挙げられる。2−ホスファアダマンチル基が1を超える置換基を含む場合、好適には各置換基は、同一である。
【0088】
2−ホスファアダマンチル基は好適には、1位、3位、5位又は7位の1箇所以上の位置で、本明細書で定義された置換基で置換されている。2−ホスファアダマンチル基はより好適には、1位、3位及び5位のそれぞれで置換されている。適切にはそのような組合せは、2−ホスファアダマンチル基のリン原子が水素原子を有さないアダマンチル骨格中の炭素原子に結合していることを意味する。最適には、2−ホスファアダマンチル基は、1位、3位、5位及び7位のそれぞれで置換されている。2−ホスファアダマンチル基が、1個を超える置換基を含む場合、好適には各置換基は、同一である。特に好適な置換基は、非置換のC〜Cアルキル及びトリフルオロメチル、特に非置換のC〜Cアルキル、例えばメチルである。
【0089】
2−ホスファアダマンチル基は好適には、2−ホスファアダマンチル骨格中に、2位の
リン原子以外に更なるヘテロ原子を含む。適切な更なるヘテロ原子としては、酸素及び硫黄原子、特に酸素原子が挙げられる。2−ホスファアダマンチル基はより好適には、6位、9位及び10位に1個以上の更なるヘテロ原子を含む。2−ホスファアダマンチル基はより好適には、6位、9位及び10位のそれぞれに更なるヘテロ原子を含む。最適には2−ホスファアダマンチル基が、2−ホスファアダマンチル骨格中に更なるヘテロ原子を2個以上含む場合、更なるヘテロ原子のそれぞれは、同一である。特に好適な2−ホスファアダマンチル基は、本明細書に定義された置換基1個以上で任意に置換されていてもよく、2−ホスファアダマンチル骨格の6位、9位及び10位のそれぞれに酸素原子を含む。
【0090】
本明細書に定義された非常に好適な2−ホスファアダマンチル基としては、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル基、2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル基、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキシアダマンチル基、及び2−ホスファ−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキシアダマンチル基が挙げられる。最適には2−ホスファアダマンチルは、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル基又は2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル基から選択される。
【0091】
2−ホスファアダマンチル基が式III で示される化合物中に1個を超えて存在する場合、各2−ホスファアダマンチル基は好適には同一である。
用語「2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基」の上記定義は、それが式I中に存在し、式III 中のX、即ち、X、X、X・・・X10が、式I中のCR、即ち、CR・・・CR161718を示す場合に、その基に等しく適用される。
【0092】
用語コングレシルは、本明細書で用いられる場合には、それぞれQ,Q,Q,Q,Qに結合し得るコングレシル基(ジアマンチル基としても知られる)を意味する。Q,Q,Q,Q,Qは好適には、存在するならば、コングレシル基の第3級炭素原子の一つに結合している。適切にはコングレシル基が非置換である場合、Q,Q,Q,Q,Qは、存在するならば、好適には1個以上のコングレシル基の1位に結合している。
【0093】
コングレシル基は、水素原子以外に、1個以上の置換基を任意に含んでいてもよい。適切な置換基は、アダマンチル基に関して本明細書に定義されたそれらの置換基を包含する。非常に好適な置換基としては、非置換のC〜Cアルキル、特にメチル、及びトリフルオロメチルが挙げられる。最適にはコングレシル基は、非置換であり、水素原子のみを含む。
【0094】
コングレシル基が式III で示される化合物中に1個を超えて存在する場合、各コングレシル基は好適には同一である。
式III a、III b、III c、III d又はIII eで示される環系が、式III で示される化合物中に1個以上存在する場合、R50〜R53は好適には、それぞれ独立して低級アルキル、アリール又はHetを表し、その基は、本明細書に定義されたとおり任意に置換及び/又は終結されている。そのような組合せは、それぞれ式III a〜III eで示される環系のQ,Q,Q,Q,Qが、水素原子を担う炭素原子に結合していないことを意味する。より好適にはR50〜R53は、それぞれ独立して、任意に置換されたC〜Cアルキル、好適には非置換のC〜Cアルキル、非置換のC〜CアルキルもしくはOR19(式中、R19は、非置換のC〜Cアルキルを表す)で任意に置換されたフェニル、又はトリフルオロメチルを表す。より好適にはR50〜R53は、それぞれ
本明細書に定義された同一の基、特に非置換のC〜Cアルキル、特にメチルを表す。
【0095】
式III a〜III eで示される環系が式III で示される化合物中に1個以上存在する場合、R49,R54は好適には、それぞれ独立して、任意に置換されたC〜Cアルキル、好適には非置換のC〜Cアルキル、非置換のC〜CアルキルもしくはOR19(式中、R19は、非置換のC〜Cアルキルを表す)で任意に置換されたフェニル、トリフルオロメチル又は水素を表す。より好適にはR49〜R54は、本明細書に定義された同一の基、特に水素を表す。
【0096】
式III a〜III eで示される環系が式III で示される化合物中に1個以上存在する場合、Y〜Yは好適には、同一である。最適にはY〜Yのそれぞれは、酸素を表す。式III a〜III eで示される環系が式III で示される化合物中に1個以上存在する場合、そのような環系のそれぞれは好適には、同一である。
【0097】
本発明の好適な実施形態としては、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であるもの、XがCR(R)(R)であり、Xがアダマンチルであり、XがCR(R)(R)であり、Xがアダマンチルであるもの、XがCR(R)(R)であり、Xがコングレシルであり、XがCR(R)(R)であり、Xがコングレシルであるもの、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系又は2−ホスファアダマンチル基を形成しているもの、XがCR(R)(R)であり、Xがアダマンチルであり、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系又は2−ホスファアダマンチル基を形成しているもの、XがCR(R)(R)であり、Xがコングレシルであり、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系又は2−ホスファアダマンチル基を形成しているもの、X〜Xがそれぞれ独立してアダマンチルであるもの、X〜Xがそれぞれ独立してコングレシルであるもの、X,Xがそれぞれ独立してアダマンチルであり、X,Xがそれぞれ独立してコングレシルであるもの、X,Xが独立してアダマンチルであり、X,Xが独立してコングレシルであるもの、X,Xが独立してアダマンチルであり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であるもの、X,Xが独立してコングレシルであり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であるもの、X,Xが独立してアダマンチルであり、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系又は2−ホスファアダマンチル基を形成しているもの、X,Xが独立してコングレシルであり、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系又は2−ホスファアダマンチル基を形成しているもの、X,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しているもの、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチル基を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチル基を形成しているものが挙げられる。
【0098】
非常に好適な本発明の実施形態としては、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であるもの、XがCR(R)(R)であり、Xがアダマンチルであり、XがCR(R)(R)であり、Xがアダマンチルであるもの、XがCR(R)(R)であり、Xがコングレシルであり、XがCR(R)(R)であり、Xがコングレシルであるもの、X〜Xがそれぞれ独立してアダマンチルであるもの、X〜Xがそれぞれ独立してコングレシルであるもの、
,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X
,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しているもの、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチル基を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチル基を形成しているものが挙げられる。
【0099】
式III で示される化合物において、Xは好適には、Xと同一であり、Xは、Xと同一である。より好適にはXは、X,Xならびに存在するならばX,Xと同一であり、Xは、X,Xならびに存在するならばX,X10と同一である。より好適にはX〜Xは、同一である。最適には、X〜Xは、存在するならばX〜X10のそれぞれと同一である。
【0100】
式III で示される化合物において、好適には、X,Xは同一の置換基を表し、X,Xは同一の置換基を表し、X,Xは(存在するならば)同一の置換基を表し、X,Xは(存在するならば)同一の置換基を表し、X,X10は(存在するならば)同一の置換基を表す。
【0101】
式III で示される化合物において、好適には、Kは−A−Q(X)X、水素、低級アルキル、−CF、フェニル、又は低級アルキルフェニルを表す。より好適にはKは、−A−Q(X)X、水素、非置換のC〜Cアルキル、非置換のフェニル、トリフルオロメチル又はC〜Cアルキルフェニルを表す。
【0102】
特に好適な実施形態において、式III で示される化合物中のKは、水素を表す。
が水素を表さない別の実施形態において、Kは、−A−Q(X)Xを表す。好適にはXは、X又はXと同一であり、Xは、X又はXと同一である。より好適にはXは、X,Xの両方と同一であり、Xは、X,Xの両方と同一である。より好適には−A−Q(X)Xは、−A−Q(X)X又は−A−Q(X)Xのいずれか一方と同一である。最適には−A−Q(X)Xは、−A−Q(X)X,−A−Q(X)Xの両方と同一である。
【0103】
は最適には、式III で示される化合物中の水素を表す。
式III で示される化合物において、好適には、Dは、−A−Q(X)X、水素、低級アルキル、CF、フェニルもしくは低級アルキルフェニルを表し、Eは、−A−Q(X)X10、水素、低級アルキル、CF、フェニルもしくは低級アルキルフェニルを表すか、又はD,Eは、結合するシクロペンタジエニル環の炭素と一緒になって、任意に置換されたフェニル環を形成している。より好適にはDは、−A−Q(X)X、水素、フェニル、C〜Cアルキルフェニル、非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル、もしくは−CFを表し、Eは、−A−Q(X)X10、水素、フェニル、C〜Cアルキルフェニル、非置換のC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル、もしくはCFを表すか、あるいは、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、フェニル、C〜Cアルキルフェニル、非置換のC〜Cアルキルもしくは−CFから選択される基1個以上で任意に置換されたフェニル環を形成している。
【0104】
適切にはD,Eが、結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されたフェニル環を形成している場合、金属M又はそのカチオンは、インデニル環系に結合している。
【0105】
特に好適な実施形態において、式III で示される化合物中のDは、水素を表す。
が水素を表さない別の実施形態において、Dは、−A−Q(X)Xを表
す。好適にはXは、X又はXと同一であり、Xは、X又はXと同一である。より好適にはXは、X,Xの両方と同一であり、Xは、X,Xと同一である。より好適には−A−Q(X)Xは、−A−Q(X)X又は−A−Q(X)Xのいずれか一方と同一である。最適には−A−Q(X)Xは、−A−Q(X)X及び、存在するならば−A−Q(X)Xの両方と同一である。
【0106】
特に好適な実施形態において、式III で示される化合物中のEは、水素を表す。
が水素を表さない別の実施形態において、Eは、−A−Q(X)X10を表す。好適には、X10はX又はXと同一であり、XはX又はXと同一である。より好適にはX10はX,Xの両方と同一であり、XはX,Xと同一である。より好適には−A−Q(X)X10は、−A−Q(X)X又は−A−Q(X)Xのいずれか一方と同一である。最適には−A−Q(X)X10は、−A−Q(X)X,−A−Q(X)Xの両方、ならびに存在するならば−A−Q(X)X,−A−Q(X)Xと同一である。
【0107】
式III で示される化合物において、D,Eが、結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されたフェニル環を形成していない場合、K,D,Eのそれぞれは好適には、同一の置換基を表す。
【0108】
別の好適実施形態において、D,Eが、結合するシクロペンタジエニル環の炭素と一緒になって、非置換のフェニル環を形成している。
式III で示される化合物の非常に好適な実施形態としては、K,D,Eが本明細書に定義された同一の置換基であり、特にK,D,Eが水素であるもの、Kが水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素と一緒になって非置換のフェニル環を形成しているもの、Kが本明細書に定義された−A−Q(X)Xであり、D,Eが両者ともHであるもの、Kが本明細書に定義された−A−Q(X)Xであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、非置換のフェニル環を形成しているもの、Kが−A−Q(X)Xであり、Dが−A−Q(X)Xであり、Eが−A−Q(X)X10であるものが挙げられる。
【0109】
式III で示される化合物として特に好適なものは、D,Eが水素原子であり、又は結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、非置換のフェニル環を形成しているもの、特にD,Eが水素である化合物が挙げられる。
【0110】
式III で示される化合物において、好適には、A,A,A,A,Aは(存在するならば)、それぞれ独立して本明細書に定義されたとおり、例えば低級アルキルで任意に置換されたC〜Cアルキレンを表す。適切にはA,A、ならびにA,A,Aは(存在するならば)、キラル炭素原子を有していてもよい。A〜Aが表し得る低級アルキレン基は、好適には非置換である。A〜Aが独立して表し得る特に好ましい低級アルキレンは、−CH−又は−C−である。最適には、A,A、ならびにA,A,Aのそれぞれは(存在するならば)、本明細書に定義された同一の低級アルキレン、特に−CH−を表す。
【0111】
式III で示される化合物において、好適にはQ,Q、ならびにQ,Q,Qは(存在するならば)、同一である。最適にはQ,Q、ならびにQ,Q,Qは(存在するならば)リンである。
【0112】
式III で示される化合物が、本発明の触媒系の形成において、第VIB族もしくはVIIIB
族金属又はその化合物と配位する配位子として機能し得ることは、当業者には理解されよう。典型的には、第VIBもしくはVIIIB族金属又はその化合物は、式III で示される化合物のリン、ヒ素及び/又はアンチモン原子1個以上に配位している。式III で示される化合物を広範には「メタロセン」と呼べることは、理解されよう。
【0113】
適切にはn=1でありLが任意に置換されたシクロペンタジエニル又はインデニル基を表す場合、式III で示される化合物は、シクロペンタジエニル環2個、インデニル環2個、又はインデニル環1個とシクロペンタジエニル環1個のいずれかを含んでいてもよい(その環系のそれぞれは本明細書に記載されたとおり任意に置換されていてもよい)。そのような化合物は、金属M又はその金属カチオンが環系2個でサンドイッチされていることから「サンドイッチ化合物」と呼ぶことができる。各シクロペンタジエニル及び/又はインデニル環系は、互いに関して実質的に同一平面状にあってもよいが、又はそれらは互いに関して偏向していてもよい(一般に、ベントメタロセンと呼ばれる)。
【0114】
あるいはn=1でありLがアリールを表す場合、本発明の化合物は、シクロペンタジエニル環1個又はインデニル環1個のいずれか一方(その環系のそれぞれは、本明細書に定義されたとおり任意に置換されていてもよい)、及び本明細書に定義されたとおり任意に置換されたアリール環1個を含んでいてもよい。適切にはn=1でありLがアリールを表す場合、本明細書に定義された式III で示される化合物の金属Mは、典型的には金属カチオンの形態である。
【0115】
本発明の特に好適な実施形態において、式III で示される化合物では、n=1、Lは本明細書に定義されたとおりで、m=0である。
式III で示される化合物中でn=1であれば、好適には、Lは、シクロペンタジエニル環、インデニル環又はアリール環を表し、その環のそれぞれは、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF又はフェロセン(Lが表し得るシクロペンタジエニル環、インデニル環又はアリール環が、フェロセニル基のシクロペンタジエニル環に直接結合していることを意味するものとする)から選択される置換基1個以上により任意に置換されている(式中、R19〜R30は、本明細書に定義されたとおりである)。より好適には、Lが表し得るシクロペンタジエニル環、インデニル環又はアリール環が、置換されている場合、それは、好適には非置換のC〜Cアルキル、ハロ、シアノ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24(式中、R19,R20,R21,R22,R23,R24は、それぞれ独立して、水素又はC〜Cアルキルを表す)から選択される置換基1個以上で置換されている。より好適にはLが表し得るシクロペンタジエニル環、インデニル環又はアリール環が、置換されている場合、それは、好適には非置換のC〜Cアルキルから選択される置換基1個以上で置換されている。
【0116】
n=1である場合、Lは好適には、本明細書に定義されたとおり任意に置換されたシクロペンタジエニル、インデニル、フェニル又はナフチルを表す。好適にはシクロペンタジエニル、インデニル、フェニル又はナフチル基は、非置換である。より好適にはLは、シクロペンタジエニル、インデニル又はフェニルであり、その各環のそれぞれは、非置換である。最適にはLは、非置換のシクロペンタジエニルを表す。
【0117】
あるいはn=0である場合、本発明の化合物は、シクロペンタジエニル環又はインデニル環を1個だけ含む(その環系のそれぞれは、本明細書に定義されたとおり任意に置換されていてもよい)。そのような化合物は、「半サンドイッチ化合物」と呼ぶことができる。好適にはn=0である場合、mは1〜5であり、そのため式III で示される化合物の金
属Mは電子数18を有する。言い換えれば、式III で示される化合物の金属Mが鉄である場合、配位子Lにより影響される電子の総数は、典型的には5である。
【0118】
本発明の特に好適な別の実施形態において、式III で示される化合物では、n=0、Lは、本明細書に定義されたとおりで、m=3又は4、特に3である。
式I II で示される化合物において、nが0であり、mが0でない場合、好適にはL
は、配位子1個以上を表し、そのそれぞれは、独立して低級アルキル、ハロ、−CO、−P(R43)(R44)R45又は−N(R46)(R47)R48から選択される。より好適にはLは、配位子1個以上を表し、そのそれぞれは、独立して非置換のC〜Cアルキル、ハロ、特にクロロ、−CO、−P(R43)(R44)R45又は−N(R46)(R47)R48(式中、R43〜R48は、独立して、水素、非置換のC〜Cアルキル又はアリールから選択され、例えばフェニルである)から選択される。
【0119】
適切には式III で示される化合物中の金属M又はその金属カチオンは、典型的にはシクロペンタジエニル環、存在するならばインデニル環のシクロペンタジエニル部分、存在するならばアリール環、及び/又は存在するならば配位子Lに結合している。典型的には、シクロペンタジエニル環、又はインデニル環のシクロペンタジエニル部分は、金属とのペンタハプト結合様式を示すが、シクロペンタジエニル環、又はインデニル環のシクロペンタジエニル部分と金属との間の他の結合様式、例えばトリハプト配位も、本発明の範囲に包含される。
【0120】
最適には式III で示される化合物では、n=1、m=0であり、Lは、本明細書に定義されたとおりであり、特に非置換のシクロペンタジエニルである。
好適にはMは、第VIBもしくはVIIIB族金属を表す。言い換えれば、金属Mの総電子数は、18である。
【0121】
式III で示される化合物において、好適にはMは、Cr,Mo,Fe,CoもしくはRu、又はそれらの金属カチオンを表す。より好適にはMは、Cr,Fe,CoもしくはRu、又はその金属カチオンを表す。最適にはMは、第VIIIB族金属又はその金属カチオンから選択される。特に好適な第VIIIB族金属は、Feである。本明細書に定義された金属Mは、カチオン形態であってもよいが、好適にはそれは、本明細書に定義されたLとLの少なくとも一方との配位により、本質的に残りの電荷を含まない。
【0122】
式III で示される特に好ましい化合物として次のものが挙げられる。
(1)XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、R〜R12のそれぞれが独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルであり、特にR〜R12のそれぞれが、同一であり、特にR〜R12のそれぞれが、非置換のC〜Cアルキル、特にメチルを表し、A,Aが同一であって−CH−を表し、K,D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素を表し、Q,Q両者ともがリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(2)XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、Kが−CH−Q(X)Xであり、ここでXがCR13(R14)(R15)であり、XがCR16(R17)(R18)であり、R〜R18のそれぞれ、独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルであり、特にR〜R18のそれぞれが同一であり、特にR〜R18のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素を表
し、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(3)XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、Kが−CH−Q(X)Xであり、ここでXがCR13(R14)R15、XがCR16(R17)(R18)であり、R〜R18のそれぞれが独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルを表し、特にR〜R18のそれぞれが同一であり、特にR〜R18のそれぞれが、非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeをであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(4)XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、ここでR〜R12のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルであり、特にR〜R12のそれぞれが同一、特にR〜R12のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q両者ともがリンであり、Kが水素又はC〜Cアルキル、特に水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(5)XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、Eが−CH−Q(X)X10であり、ここでXがCR37(R38)(R39)、X10がCR40(R41)(R42)であり、R〜R12及びR37〜R42のそれぞれが独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルであり、特にR〜R12及びR37〜R42のそれぞれが同一、特にR〜R12及びR37〜R42のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−を表し、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Kが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(6)XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでXがCR13(R14)(R15)、XがCR16(R17)(R18)であり、Dが−CH−Q(X)X、ここでXがCR31(R32)(R33)、XがCR34(R35)(R36)であり、Eが−CH−Q(X)X10、ここでXがCR37(R38)(R39)、X10がCR40(R41)(R42)であり、R〜R18及びR31〜R42のそれぞれが独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチル、特にR〜R18及びR31〜R42のそれぞれが同一であり、特にR〜R18及びR31〜R42のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Q,Q,Qがそれぞれリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(7)X,X,X,Xが独立してアダマンチル、特にX〜Xが同一のアダマンチル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、K,D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、Q,Q両者がリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(8)X,X,X,Xが独立してアダマンチル、特にX〜Xが同一のアダマンチル基であり、Kが−CH−Q(X)Xであり、ここでX,Xが独立してアダマンチル、特にX〜Xが、同一のアダマンチル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(9)X,X,X,Xが独立してアダマンチルを表し特にX〜Xが同一のアダマンチル基であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してアダマンチル、特にX〜Xが同一のアダマンチル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(10)X,X,X,Xが独立してアダマンチル、特にX〜Xが同一のアダマンチル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q両者がリンであり、Kが水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(11)X,X,X,Xが独立してアダマンチルであり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してアダマンチルであり、Dが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してアダマンチルであり、Eが−CH−Q(X)X10、ここでX,X10が独立してアダマンチル、特にX〜X10が同一のアダマンチル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Q,Q,Qがそれぞれリンであり、MがFeであり、n=1、Lがシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(12)X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、X,Xが結合するQと一緒になって、2−ホスファアダマンチルを形成し、A,Aが同一であって−CH−であり、K,D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、Q,Q両者がリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(13)X,Xが結合するQと一緒になって、2−ホスファアダマンチルを形成し、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(14)X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが、結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(15)X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、X,Xが結合するQと一緒になって、2−ホスファアダマンチルを表し、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q両者がリンであり、Kが水素又は非置
換のC〜Cアルキル、特に水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(16)X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、X,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、Dが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって、2−ホスファアダマンチルを形成し、Eが−CH−Q(X)X10、ここでX,X10が結合するQと一緒になって2−ホスファアダマンチルを形成し、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Q,Q,Qがそれぞれリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(17)X,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しており、Y,Yが両者とも酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が水素であり、A,Aが同一であって−CH−であり、K,D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、Q,Q両者がリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニル(pucと呼ばれる)を表し、m=0であるもの。
(18)X,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しており、Y,Y両者が酸素であり、R50〜R53が非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が、水素であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって式III cで示される環系を形成しており、Yが酸素であり、R50〜R53が独立して、水素、非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が水素であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが同一であって水素又はC〜Cアルキル、特に水素であり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(19)X,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しており、Y,Y両者が酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が水素であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって式III cで示される環系を形成しており、Yが酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が水素であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(20)X,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しており、Y,Y両者が酸素を表し、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が水素であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q両者がリンであり、Kが水素又は非置換のC〜Cアルキル特に水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表し、m=0であるもの。
(21)X,Xが結合するQと一緒になって式III aで示される環系を形成しており、X,Xが結合するQと一緒になって式III bで示される環系を形成しており、Y,Y両者が酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が、水素であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって、式III cで示される環系を形成しており、Yが酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が、水素であり、Dが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが結合するQと一緒になって式III cで示される環系を形成しており、Yが酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が、水素であり、Eが−CH−Q(X)X10、ここでX,X10が結合するQと一緒になって式III eで示される環系を形成しており、Yが酸素であり、R50〜R53が独立して非置換のC〜Cアルキル又はCFから選択され、R49,R54が、水素であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Q,Q,Qがそれぞれリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(22)X,X,X,Xが独立してコングレシル、特にX〜Xが同一のコングレシル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、K,D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、Q,Q両者がリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(23)X,X,X, Xが独立してコングレシル、特にX〜Xが同一のコングレシル基であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してコングレシルであり、特にX〜Xが同一のコングレシル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(24)X,X,X,Xが独立してコングレシル、特にX〜Xが同一のコングレシル基であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してコングレシル、特にX〜Xが同一のコングレシル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(25)X,X,X,Xが独立してコングレシル、特にX〜Xが同一のコングレシル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q両者がリンであり、Kが水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(26)
,X,X,Xが独立してコングレシルであり、Kが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してコングレシルであり、Dが−CH−Q(X)X、ここでX,Xが独立してコングレシルであり、Eが−CH−Q(X)X10、ここでX,X10が独立してコングレシル、特にX〜X10が同一のコングレシル基であり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Q,Q,Qがそれぞれリンであり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(27)X,Xが独立してアダマンチル、特にX,Xが同一のアダマンチル基で
あり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)、ここでR,R,R,R10,R11,R12のそれぞれが独立してC〜Cアルキル又はトリフルオロメチル、特にR〜R,R10〜R12のそれぞれが同一であり、特にR〜R,R10〜R12のそれぞれが、非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、K,D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、Q,Q両者がリンであり、MがFeであり、n=1、Lがシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(28)X,Xが独立してアダマンチル、特にX,Xが同一のアダマンチル基であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでXがアダマンチル、特にX,X,Xが同一のアダマンチル基であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、XがCR16(R17)(R18)、ここでR〜R,R10〜R12,R16〜R18のそれぞれが、独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルであり、特にR〜R、R10〜R12,R16〜R18のそれぞれが同一であり、特にR〜R,R10〜R12,R16〜R18のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが同一であって水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(29)X,Xが独立してアダマンチル、特にX,Xが同一のアダマンチル基であり、Kが−CH−Q(X)X、ここでXがアダマンチル、特にX,X,Xが同一のアダマンチル基であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、XがCR16(R17)(R18)であり、ここでR〜R,R10〜R12,R16〜R18のそれぞれが独立して非置換のC〜Cアルキル又はトリフルオロメチル、特にR〜R,R10〜R12,R16〜R18のそれぞれが同一であり、特にR〜R,R10〜R12,R16〜R18のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q,Qがそれぞれリンであり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
(30)X,Xが独立してアダマンチル、特にX,Xが同一のアダマンチル基であり、XがCR(R)(R)であり、XがCR10(R11)(R12)であり、ここでR,R,R,R10,R11,R12のそれぞれが、独立してC〜Cアルキル又はトリフルオロメチルであり、特にR〜R,R10〜R12のそれぞれが同一であり、特にR〜R,R10〜R12のそれぞれが非置換のC〜Cアルキル、特にメチルであり、A,Aが同一であって−CH−であり、Q,Q両者がリンであり、Kが水素又は非置換のC〜Cアルキル、特に水素であり、D,Eが結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって非置換のフェニル環を形成しており、MがFeであり、n=1、Lが、シクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルであり、m=0であるもの。
【0123】
この実施形態での二座配位子の具体的であるが非限定的な例としては、以下のもの:1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1−ヒドロキシメチル−2−ジメチルアミノメチルフェロセン、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1−ヒドロキシメチル−2,3−ビス−(ジメチルアミノメチルフェロセン、1,2,3−トリス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジイソブチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジシクロペンチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス
(ジエチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジイソプロピルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジ−(1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファアダマンチルメチル))フェロセン、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン−ビスメチルヨーダイド、1,2−ビス(ジヒドロキシメチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−α,α−(p−(2,2,6,6−テトラメチルホスフィナン−4−オン))ジメチルフェロセン、及び1,2−ビス(ジ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファアダマンチルメチル))ベンゼンが挙げられる。それにも関わらず、他の二座配位子を本発明の範囲を逸脱せずに予見し得ることが、当業者には理解されよう。
【0124】
更なる態様によれば、本発明は、本発明に定義された触媒系の存在下で、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素及びヒドロキシル基含有化合物と接触させることを含む、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化法を提供する。この方法は好適には、上記のステップを含む液相連続法である。
【0125】
適切にはヒドロキシル基含有化合物は、水、又はヒドロキシル官能基を有する有機分子を含む。好適にはヒドロキシル官能基を有する有機分子は、分枝状又は直鎖状であってもよく、本明細書に定義された低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2526、SR27、又はC(O)SR28から選択される置換基1個以上で任意に置換されていてもよい、アリールアルカノールをはじめとするアルカノール、特にC〜C30アルカノールを含む。非常に好適なアルカノールは、C〜Cアルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブチルアルコール、n−ブタノール、フェノール及びクロロカプリルアルコールである。モノアルカノールが最適であるが、ポリアルカノール、好適にはジ〜オクタオール、例えばジオール、トリオール、テトラオールから選択されるポリアルカノール、及び糖を使用してもよい。典型的にはそのようなポリアルカノールは、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリトリトール、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)エタン、ノンノース、セルバース、ガラクトース及び他の糖から選択される。好適な糖としては、スクロース、フルクトース及びグルコースが挙げられる。特に好適なアルカノールは、メタノール及びエタノールである。最適なアルカノールは、メタノールである。
【0126】
アルコールの量は、重要ではない。一般に、カルボニル化されるエチレン性不飽和化合物の量を超える量が用いられる。つまりアルコールは、反応溶媒としても作用するが、所望なら、別個の溶媒を用いてもよい。
【0127】
反応の目的生成物が、用いられるヒドロキシル基含有化合物の供給源により、少なくとも一部決定されることは理解されよう。水がヒドロキシル基含有化合物として用いられる場合、目的生成物は対応するカルボン酸であるが、アルカノールが用いられれば対応するエステルが生成される。
【0128】
本発明の方法が、請求された比より上又は下のモル比になる成分を有する触媒系で出発してもよいが、そのような比が反応の過程で請求された前記範囲内の値まで進むことも理解されよう。
【0129】
もちろん、成分の一部又は全てを更なる量添加して触媒系中の使用可能な成分レベルを
保持するために、触媒系に存在するそのような成分のレベルを本発明の過程で変更し得ることは理解されよう。触媒系の成分の一部は、反応過程で系から除去される可能性があり、それゆえレベルを補充して、実際の触媒系のレベルを保持する必要性が生じ得る。
【0130】
上記のように、本明細書に記載されたホスフィンが、本発明の酸と共に、第VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物と配位して錯体を形成する配位子として機能し得ることは、当業者には理解されよう。この錯体は、本発明の効果的触媒の一部を表してもよく、つまり本明細書に記載された触媒系の一部を表してもよい。
【0131】
本発明による方法では、一酸化炭素を純粋な形態で用いるか、又は窒素、二酸化炭素もしくは希ガス、例えばアルゴンなどの不活性気体で希釈して用いてもよい。少量の、典型的には5%未満の容量の水素が、存在してもよい。
【0132】
ヒドロキシル基含有化合物に対するエチレン性不飽和化合物の比(容量/容量)は、広い限界内で変動してもよく、適切には1:0.1〜1:10、好適には2:1〜1:2の範囲に含まれ、ヒドロキシル基含有化合物が最大50:1超の反応媒体である場合、ヒドロキシル基含有化合物が最大で大過剰になる。
【0133】
一酸化炭素に対するエチレン性不飽和化合物のモル比は、好適には1:1〜100:1の範囲内、より好適には1:1超、より好適には少なくとも3:1、特に3:1〜50:1、最適には3:1〜15:1の範囲内である。
【0134】
エチレン性不飽和化合物のカルボニル化法に用いられる溶解された本発明の第VIB又はVIIIB族金属の総量は、重要ではない。好適には、第VIB族又はVIIIB族金属が、エチレン性不飽和化合物のモルあたり10−7〜10−1モル、より好適にはエチレン性不飽和化合物のモルあたり10−6〜10−2モル、最適には10−5〜10−2モルの範囲内であれば、良好な結果を得ることができる。不飽和化合物に対する式I又は式III で示される二座化合物の量は、好適には、エチレン性不飽和化合物のモルあたり10−7〜10−1モル、より好適には10−6〜10−2モル、最適には10−5〜10−2モルの範囲内である。
【0135】
適切には、本発明にとって不可欠ではないが、本明細書に定義されたエチレン性不飽和化合物のカルボニル化を、1種以上の非プロトン性溶媒中で実施してもよい。適切な溶媒としては、ケトン、例えばメチルブチルケトン;エーテル、例えばアニソール(メチルフェニルエーテル)、2,5,8−トリオキサノナン(ジグリム)、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジエチレングリコールのジメチルエーテル;エステル、例えば酢酸メチル、アジピン酸ジメチル、安息香酸メチル、フタル酸ジメチル及びブチロラクトン;アミド、例えばジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルホルムアミド;スルホキシド及びスルホン、例えばジメチルスルホキシド、ジイソプロピルスルホン、スルホラン(テトラヒドロチオフェン−2,2−ジオキシド)、2−メチルスルホラン、ジエチルスルホン、テトラヒドロチオフェン、1,1−ジオキシド及び2−メチル−4−エチルスルホラン;そのような化合物のハロ類を含む芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン;そのような化合物のハロ類を含むアルカン、例えばヘキサン、ヘプタン、2,2,3−トリメチルペンタン、塩化メチレン及び四塩化炭素;ニトリル、例えばベンゾニトリル及びアセトニトリルが挙げられる。
【0136】
非常に適切なものは、約25℃(298.15K)及び1×10Nm−2で50未満の値、より好適には3〜8の範囲内の誘電率を有する非プロトン性溶媒である。本明細書
では所定の溶媒での誘電率は、通常の意味で用いられ、真空の誘電体を用いたコンデンサの能力に対する、誘電体としての物質を用いた同コンデンサの能力の比を表す。一般の有機液の誘電率の値は、一般的参考文献、例えば1995年にCRCプレスから発行されたデビッド.R.ライド他編「ハンドブック・ オブ・ケミストリー・アンド・フィジック
ス、第76版」(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition,edited by David R. Lide et al)に見出され、通常は、約20℃又は25℃、即ち、293.15K又は298.15Kの温度、及び大気圧、即ち、約1×10Nm−2で引用されるか、又は引用された変換因子を用いてその温度及び圧力に容易に変換することができる。特定の化合物の文献データが入手できない場合、誘電率は確立された物理化学的方法を用いて容易に測定することができる。
【0137】
例えば、アニソールの誘電率は4.3(約21℃(294.2K))であり、ジエチルエーテルでは4.3(約20℃(293.2K))であり、スルホランでは43.4(約30℃(303.2K))であり、ペンタン酸メチルでは5.0(約20℃(293.2K))であり、ジフェニルエーテルでは3.7(約10℃(283.2K))であり、アジピン酸ジメチルでは6.8(約20℃(293.2K))であり、テトラヒドロフランでは7.5(約22℃(295.2K))であり、ノナン酸メチルでは3.9(約20℃(293K))である。好ましい溶媒は、アニソールである。
【0138】
ヒドロキシル基含有化合物がアルカノールである場合、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素及びアルカノールのエステルカルボニル化生成物が非プロトン性溶媒であるため、非プロトン性溶媒を反応により生成させる。
【0139】
該方法は、過剰の非プロトン性溶媒中で、即ち、ヒドロキシル基含有化合物に対する非プロトン性溶媒の比(v/v)を少なくとも1:1として実施してもよい。この比は好適には、1:1〜10:1の範囲内であり、より好適には1:1〜5:1の範囲内である。最適にはその比(v/v)は、1.5:1〜4:1の範囲内である。
【0140】
前述のことにも関わらず、反応は、外部から添加された非プロトン性溶媒、即ち、反応そのものから生成されていない非プロトン性溶媒の非存在下で実施することが好ましい。
本発明の触媒化合物は、「均一」触媒として作用する。
【0141】
用語「均一」触媒は、担持されたのではなく、単に混和された、又は好適には本明細書に記載された適切な溶媒中で、カルボニル化反応の反応体(例えば、エチレン性不飽和化合物、ヒドロキシル含有化合物、及び一酸化炭素)を用いてその場で形成された触媒、即ち、本発明の化合物を意味するものとする。
【0142】
簡便には本発明の方法は、本明細書に定義された第VIBもしくはVIIIB族金属又はその化合物を適切な溶媒、例えば先に記載されたヒドロキシル基含有化合物又は非プロトン性溶媒の1種に溶解し(特に好ましい溶媒は具体的なカルボニル化反応のエステル又は酸生成物、例えばエチレンカルボニル化ではプロピオン酸メチル)、続いて本明細書に定義された式I又はIII で示される化合物及び酸と混和することにより実施してもよい。
【0143】
一酸化炭素を、反応に不活性の他の気体の存在下で用いてもよい。そのような気体の例としては、水素、窒素、二酸化炭素及び希ガス、例えばアルゴンが挙げられる。
式I又はIII で示される化合物と混和できる適切な第VIBもしくはVIIIB族金属又はその化合物としては、コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、白金、クロム、モリブデン及びタングステンが挙げられ、好適にはコバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム及び白金が挙げられる。化合物b)は好適には、第VIIIB族金属又はその化合物である。
その金属は好適には、第VIIIB族金属、例えばパラジウムである。第VIIIB族金属は好適には、パラジウム又はその化合物である。即ち、成分b)は好適にはパラジウム又はその化合物である。そのような第VIB又はVIIIB族金属の適切な化合物としては、硝酸;硫酸;低級アルカン酸(最大C12)、例えば酢酸及びプロピオン酸;スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸及び2−ヒドロキシプロパンスルホン酸;スルホン化イオン交換樹脂;過ハロゲン酸(perhalic acid)、例えば過塩素酸;ハロゲン化カルボン酸、例えばトリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸;オルトリン酸;ホスホン酸、例えばベンゼンホスホン酸;ならびにルイス酸とブレンステッド酸との相互作用から得られる酸、によるそのような金属の塩、又はそれらから得られる弱配位アニオンを含む化合物が挙げられる。適切なアニオンを提供し得る他の供給源としては、任意にハロゲン化されたホウ酸テトラフェニル誘導体、例えば、ホウ酸ペルフルオロテトラフェニルが挙げられる。追加として、0価パラジウム錯体、特に反応活性配位子、例えばトリフェニルホスフィン又はアルケン、例えばジベンジリデンアセトン又はスチレン又はトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが用いられてもよい。
【0144】
こうして酸は(存在するならば)、18℃の水溶液中で測定されたpKa が、6未満、より好適には5未満、最適には4未満、特に3未満、より特別には2未満の酸から選択される。適切な酸としては、先に列挙された酸が挙げられる。酸は好適には、スルホン酸又は他の幾つかの酸、例えば過塩素酸、リン酸、ホスホン酸メチル、硫酸及びスルホン酸からなる群から選択されるもののいずれか、より好適には18℃の水溶液中で測定されたpKa が4未満のスルホン酸又は他の酸(先に列挙されたものから選択)、より好適には18℃の水溶液中で測定されたpKa が2未満のスルホン酸であり、より好適には酸は以下のスルホン酸:メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、及び2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸からなる群から選択され、最適には酸は、メタンスルホン酸である。
【0145】
アニオンは、18℃の水溶液中で測定されたpKa が、6未満、より好適には5未満、最適には4未満、特に3未満の1種以上の酸、反応を妨害しないカチオンとの塩、例えば金属塩又は大きな有機塩、例えばアルキルアンモニウム、及び反応条件下で分解してその場でアニオンを生成し得る前駆体、例えばエステルから得られるか、又はそれらとして導入されてもよい。適切な酸及び塩としては、先に列挙された酸及び塩が挙げられる。
【0146】
存在するアニオンの量は、触媒系の触媒挙動にとって重要ではない。金属に対するアニオンのモル比は、1:1〜500:1、好適には2:1〜100:1、特に3:1〜30:1であってもよい。アニオンが酸と塩との組合わせにより提供される場合、酸と塩との相対的割合は、重要でない。
【0147】
上述のとおり、本発明の触媒系は、典型的には均一に用いられる。
本発明の触媒系は、好適には1種以上の反応体で形成される液相で構成されるか、又は適切な溶媒の使用により構成されてもよい。
【0148】
ヒドロキシル提供化合物の量に対する反応で用いられるエチレン性不飽和化合物の量のモル比は重要でなく、広い限界内で、例えば0.001:1〜100:1モル/モルで変動してもよい。
【0149】
本発明の配位子を用いるカルボニル化反応の生成物は、適切な手段で他の成分から分離してもよい。しかし、一般に有意に高い選択性で証明され得るとおり、有意に少ない副生
成物が形成され、それにより生成物の初回分離の後に更に精製される必要性が低下することが本発明の利点である。更なる利点は、触媒系を含む他の成分が、新鮮な触媒を最小限に補充されることにより、更なる反応でリサイクル及び/又は再使用できることである。
【0150】
カルボニル化は好適には、−10〜150℃、より好適には0℃〜140℃、より好適には15℃〜140℃、最適には20℃〜120℃の温度で実施する。特に好適な温度は、80℃〜120℃で選択されるものである。有利にはカルボニル化は、中温で実施することができる。
【0151】
好適には低温カルボニル化を操作する場合、カルボニル化は、−30℃〜49℃、より好適には−10℃〜45℃、より好適には0℃〜45℃、より好適には10℃〜45℃、最適には15℃〜45℃で実施する。特に好適であるのは、15〜35℃の範囲内である。
【0152】
カルボニル化は好適には、0.80×10N.m−2〜90×10N.m−2、より好適には1×10N.m−2〜65×10N.m−2、最適には1〜30×10N.m−2のCO分圧で実施する。特に好適であるのは、5〜20×10N.m−2のCO分圧である。
【0153】
低圧カルボニル化も好適に包含される。低圧カルボニル化を操作する場合、カルボニル化は好適には、0.1〜5×10N.m−2、より好適には0.2〜2×10N.m−2、最適には0.5〜1.5×10N.m−2のCO圧で実施する。
【0154】
エチレン性不飽和化合物は、非置換であっても、又は先に「アリール」基に関して定義された基で置換されていてもよい。特に適した置換基としては、アルキル及びアリール基に加え、ハロゲン化物、硫黄、リン、酸素及び窒素などのヘテロ原子を含む基が挙げられる。置換基の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、又はチオアルコキシ基が挙げられる。適切なエチレン性不飽和化合物としては、エテン、プロペン、ヘキセン、ビニル化合物、例えば酢酸ビニル、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセンなど、最大C30、即ち、炭素原子を2〜30個有するものが挙げられ、直鎖状又は分枝状、環式又は非環式又は部分環式であってもよく、二重結合が炭素鎖の適切な位置にあってもよく、その全ての立体異性体も挙げられる。
【0155】
その上、該不飽和化合物は、不飽和結合を1個以上有してもよく、それゆえ例えばエチレン性不飽和化合物の範囲は、ジエンまで及ぶ。不飽和結合は、内部であっても末端であってもよく、本発明の触媒系は、内部オレフィンの変換において特に有利である。
【0156】
特に好適であるのは、分子あたりに炭素原子を2〜22個有するオレフィン、例えばエテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、例えばオクタ−2−エン、オクタ−3−エン、オクタ−4−エン、デセン及びドデセン、トリイソブチレン、トリプロピレン、内部C14オレフィン、及び内部C15〜C18オレフィン、1,5−シクロオクタジエン、シクロドデセン、ペンテン酸メチルならびにペンテンニトリル、例えばペンタ−2−エンニトリルである。
【0157】
エチレン性不飽和化合物は、好適には分子あたりに炭素−炭素二重結合を1〜3個有するアルケンである。適切なジエンの非限定的例としては、以下のもの:1,3−ブタンジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、特に1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0158】
別の好ましい不飽和化合物の分類は、カルボン酸の不飽和エステル及び不飽和カルボン酸のエステルからなる。例えば出発原料は、カルボン酸、例えば酢酸もしくはプロピオン酸のビニルエステルであってもよく、又はそれは不飽和酸のアルキルエステル、例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸のメチルもしくはエチルエステルであってもよい。
【0159】
更なる好ましい不飽和化合物の分類は、通常はカルボニル化を拒絶するシクロアルカジエンからなる。例えば出発原料は、ジエステル、ジアミド又は二酸などを提供するジシクロペンタジエン又はノルボルナジエンであってもよく、それらは重合反応でのモノマーとして次の使用を見出してもよい。
【0160】
触媒系と共に安定化化合物を使用すると、触媒系から損失した金属の回収を改善するのにも有利となり得る。触媒系を液体反応媒体中で用いる場合、そのような安定化化合物で、第VI族又はVIIIB族金属の回収を促してもよい。
【0161】
それゆえ好適には触媒系は、液体反応媒体中に、液体担体に溶解されたポリマー分散剤を含み、前記ポリマー分散剤は、触媒系の第VIもしくはVIIIB族金属又は金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を、液体担体中で安定化させることができる。
【0162】
液体反応媒体は、反応の溶媒であってもよいが、又は1種以上の反応体もしくは反応生成物そのものを含んでいてもよい。液体形態の反応体又は反応生成物は、溶媒もしくは希釈液に混和性であるか、又はそれに溶解させることができる。
【0163】
ポリマー分散剤は、液体反応媒体に可溶性であるが、反応速度又は熱伝導にとって障害となるため反応媒体の粘度を有意に上昇させてはならない。温度及び圧力の反応条件下での液体媒体への分散剤の溶解度は、あまり大きくてはならず、そうすれば金属粒子上への分散剤分子の吸着が有意に抑制される。
【0164】
ポリマー分散剤は、前記第VI族又はVIIIB族金属又は金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を、反応媒体中で安定化させることができるため、触媒分解の結果形成された金属粒子が、液体反応媒体中で懸濁状態で保持され、再生のために液体と一緒に反応体から排出されて、任意に更なる量の触媒を製造する際に再使用される。金属粒子は通常、コロイド寸法、例えば平均粒度5〜100nmであるが、場合により、より大きな粒子が形成されてもよい。ポリマー分散剤の一部は金属粒子の表面に吸着されるが、分散剤分子の残余は、液体反応媒体に少なくとも一部が溶媒和されたままの状態であり、こうして分散された第VI族又はVIIIB族金属粒子が安定化されて、反応器の壁又は反応器のデッドスペースに固定されず、そして粒子の衝突又はその結果起こる凝固により生成し得る金属粒子の凝集体が形成されない。粒子の凝集の一部は、適切な分散剤の存在下でも起こり得るが、分散剤の種類及び濃度を最適化すれば、そのような凝集は比較的低レベルになるはずであり、凝集体は緩くしか形成されないため、それらは撹拌により分解して粒子を再分散させることができる。
【0165】
ポリマー分散剤は、グラフトコポリマー及びスターポリマーなどのポリマーをはじめとするホモポリマー又はコポリマーを含んでいてもよい。
好適にはポリマー分散剤は、十分に酸性又は塩基性の官能価を有することで、前記第VI族又はVIIIB族金属又は金属化合物のコロイド懸濁液を実質的に安定化させる。
【0166】
実質的に安定化させるとは、溶液相からの前記第VI族又はVIIIB族金属の沈殿が、実質的に避けられることを意味する。
この目的で特に好ましい分散剤としては、カルボン酸、スルホン酸、アミン及びアミド
、例えばポリアクリラート、複素環式化合物、特に含窒素複素環式化合物、置換ポリビニルポリマー、例えばポリビニルピロリドンをはじめとする酸性もしくは塩基性ポリマー、又は前述のもののコポリマーが挙げられる。
【0167】
そのようなポリマー分散剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミン、ポリグリシン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ−L−ロイシン、ポリ−L−メチオニン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−セリン、ポリ−L−チロシン、ポリ(ビニルベンゼンスルホン酸)及びポリ(ビニルスルホン酸)から選択してもよい。
【0168】
他の適切なポリマー分散剤は、反応混合物に可溶性の窒素含有ポリマーであり、それらの製造方法は、本明細書に参考として援用されるEP1330309に記載されている。それに記載された適切なポリマーの例は、ポリアルキレンイミン、特にポリエチレンイミン;ポリマー鎖上に脂肪族窒素含有基を有するポリビニルアミン;エチレン性不飽和カルボキシアミドのポリマー、例えばポリ(メタ)アクリルアミド;非環式又は環式N−ビニルアミドのポリマー、例えばポリビニルホルムアミド又はポリビニルカプロラクタムである。ポリマーは、一分子中に異なる窒素含有モノマー、及び所望なら窒素不含モノマーを有していてもよい。窒素原子は、主鎖又は側基に存在してもよい。アミノ基を含むそのようなポリマーの場合、それらは、例えばアミノ基の一部又は全てに、アルキル、アリール、アシル、又はポリオキシアルキレン基などの置換基を担っている。好ましいのは、可溶性窒素含有ポリマーとしてのポリエチレンイミンを用いることである。それらは、好適には式(I)又は(III )で示されるポリエチレンイミン単位又はその分枝状異性体を含む。
【0169】
【化9】

【0170】
記載された更なる化合物は、ポリマー鎖上に脂肪族窒素含有基を有するポリビニルアミンの誘導体であり、特徴的構造要素として、式(IV)で示される単位を含む。
【0171】
【化10】

【0172】
更なる適切な化合物は、ポリアクリルアミド誘導体であり、特徴的構造要素として、式(V)で示される単位を含む。
【0173】
【化11】

【0174】
特に好ましいポリマーは、EP1330309に記載されたアミド化ポリエチレンイミンである。
他の代替例は、US公開2003/0069450に記載された可溶性カルボキシアミドであり、それらのカルボキシアミドは全て、本明細書に参考として援用される。一般に本明細書に開示されたカルボキシアミドは、式−CO−N<で示されるカルボキシアミド基を少なくとも1個有する。そのようなカルボキシアミドは、例えば、飽和又は不飽和の、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族化合物であってもよい。更にそのカルボキシアミドは、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄又はリン、例えば−O−、−S−、−NH−、−NR−、−CO−、−CO−O−、−N−、−CO−N<、−SiR2−、−PR−及び/もしくは−PR2−を含んでいてもよく、そして/又は例えば酸素、窒素、硫黄及び/もしくはハロゲン原子を含む官能基1個以上により置換されていてもよい。
【0175】
本明細書に開示された、分子中に式−CO−N<で示されるカルボキシアミド基を1個有する非常に好ましいカルボキシアミドは、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルアセトアミド、N,N−ジブチルアセトアミド、N,N−ジイソブチルアセトアミド、N,N−ジペンチルアセトアミド、N,N−ジヘキシルアセトアミド、N,N−ジオクチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジプロピルプロピオンアミド、N,N−ジイソプロピルプロピオンアミド、N,N−ジブチルプロピオンアミド、N,N−ジイソブチルプロピオンアミド、N,N−ジペンチルプロピオンアミド、N,N−ジヘキシルプロピオンアミド及びN,N−ジオクチルプロピオンアミドである。
【0176】
示したオリゴマー及びポリマーカルボキシアミドの適切な例は、アクリル化オリゴアルキレンイミン及びポリアルキレニミン、特にアクリル化オリゴエチレンイミン及びポリエチレンイミン;アクリル化オリゴビニルアミン及びポリビニルアミン;エチレン性不飽和カルボキシアミドのオリゴマー及びポリマー、例えばオリゴアクリルアミド及びポリアクリルアミド又はオリゴメタクリルアミド及びポリメタクリルアミド;ならびにアクリル酸アミド及び環状N−ビニルアミドのオリゴマー及びポリマー、例えばオリゴビニルホルムアミド及びポリビニルホルムアミド又はオリゴビニルカプロラクタム及びポリビニルカプロラクタムである。
【0177】
好適にはポリマー分散剤は、ペンダント基又はポリマーバックボーンのいずれかの中に酸性又は塩基性部分を組み入れている。好適には酸性部分は、6.0未満、より好適には5.0未満、最適には4.5未満の解離定数(pKa )を有する。塩基性部分は、好適には6.0未満、より好適には5.0未満、最適には4.5未満の塩基解離定数(pKb )を有し、pKa 及びpKb は25℃の希釈水溶液中で測定される。
【0178】
適切なポリマー分散剤は、反応条件での反応媒体に可溶性であることに加え、ポリマー
バックボーン中に、又はペンダント基として、酸性又は塩基性部分を少なくとも1個含む。我々は、酸及びアミド部分、例えばポリビニルピロリドン(PVP)及びポリアクリラート、例えばポリアクリル酸(PAA)を組み入れたポリマーが特に適していることを見出した。本発明での使用に適したポリマーの分子量は、反応媒体の性質及びそのポリマーの溶解度に依存する。我々は、通常、その平均分子量が100,000未満であることを見出した。平均分子量は、好適には1,000〜200,000、より好適には5,000〜100,000、最適には10,000〜40,000の範囲内であり、例えば、PVPが用いられる場合には、Mwは、好適には10,000〜80,000、より好適には20,000〜60,000の範囲内であり、PAAの場合には、ほぼ1,000〜10,000程度である。
【0179】
反応媒体中の分散剤の効果的濃度は、用いられる各反応/触媒系ごとに決定しなければならない。
分散された第VI族又はVIIIB族の金属は、例えばろ過により、反応器から除去された液体流れから回収され、その後、廃棄されるか、又は処理されて触媒もしくは他の適用例に再使用するよう進められてもよい。連続法では液体流れは、外部熱交換器を通して循環されてもよく、そのような場合、これらの循環装置でパラジウム粒子用のフィルターを設置することが簡便であろう。
【0180】
ポリマーと金属の質量比g/gは好適には、1:1〜1000:1、より好適には1:1〜400:1、最適には1:1〜200:1である。ポリマーと金属の質量比g/gは好適には、最大1000、より好適には最大400、最適には最大200である。
【0181】
反応媒体は好適には液相反応媒体、より好適には液相連続反応系である。
反応媒体中では好適には、媒体中に存在する遊離酸、即ち、ホスフィン配位子と直接結合していない酸の量は、500ppm、より好適には1000ppm 、最適には2000ppm を超える。
【0182】
疑いを避けるために、先に記載されたそれぞれの特徴は、そのような特徴が特定の態様と不適合であるか、又は互いに排他的である場合を除き、先に示された本発明の様々な態様のいずれか又は全てに等しく適用可能である。
【0183】
本明細書に挙げた文書は全て、参考として援用される。
以下の実施例及び図面は、本明細書を更に例示するものである。これらの実施例は、先に示されたより広範の開示に含まれる具体的な材料の例示とみなすべきであり、広範の開示を限定するものとみなしてはならない。
【0184】
図1は、表1に示された一連の実施例のデータに基づく実施例1〜5,7及び比較例6のTON対ACCFのプロットを示す。表2は、実施例8〜11のデータを示す。
(製造例1)
1,2−ビス−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンの製造
【0185】
【化12】

【0186】
この配位子の製造を、実施例18によりWO99/47528に開示された手法で実施した。
(製造例2)
1,2−ビス(ジ(ジメチルアダマンチル)ホスフィノメチル)フェロセンの製造
この配位子の製造は、実施例1により、WO03/003936に開示された手法で実施した。
(実施例1〜5,7及び比較例6)
本発明により触媒されたエチレン、一酸化炭素及びメタノールからのプロパン酸メチルの製造
例示された連続法は、触媒系の存在下、液相中で一酸化炭素、エチレン及びメタノールの精製された流れを反応させて、所望の生成物、プロパン酸メチルを生成させることを含んだ。
【0187】
反応は、反応容器中で100℃、12バール(ゲージ圧)で実施した。
触媒系は、パラジウム塩、ホスフィン配位子及び酸の3成分から構成された。3種の触媒成分を一緒に混和して反応混合物に溶解させると、反応触媒又は触媒系、均一触媒となり、溶解した反応体を液相中で生成物プロパン酸メチルに変換した。
【0188】
連続操作の間に、触媒が緩やかであるが一定速度で分解し、新たな触媒の添加により交換されるが、さもなければ生成物プロパン酸メチルの生成速度が低下する。
反応容器に撹拌機と、反応器の上部ヘッドスペース部分に回収された未反応気体を再循環させる手段と、を取り付けた。反応容器のヘッドスペースからの未反応気体は、エチレンと一酸化炭素との混合物で構成され、基部の導入管を通して反応器に連続的に戻され、その結果、気体は反応混合物を連続的に通過した。
【0189】
気体は、反応容器に入ると、撹拌機により微小の泡に分散された。こうしてエチレン及び一酸化炭素を、反応混合物に溶解させた。
新たなエチレン及び一酸化炭素気体を、再循環気体に添加して、反応により使い果たされた2種の気体量を補充した。反応で使い果たされたメタノールを交換するために、新たなメタノールも連続的に反応容器に添加した。
【0190】
反応容器は、パラジウム塩、ホスフィン配位子及びスルホン酸の3成分の均一触媒と共に、かさ高の液体反応混合物を保持した。
生成物プロパン酸メチルを回収するために、反応混合物の流れを反応器から蒸留カラムへ連続して通過させた。
【0191】
蒸留カラムは、一段階「フラッシュ」型蒸留カラムであり、反応混合物のプロパン酸メチル及びメタノール成分の分画を、非揮発性の溶解した触媒成分から分離する手段を提供した。これは、反応混合物の分画をフラッシュカラムに通しながら、それを蒸発させることにより実現された。フラッシュカラムを通過した後、液体として残留する反応混合物の一部は、有用な触媒成分を尚も含み、反応容器に戻ると、触媒成分を進行中の反応に取り入れることができた。
【0192】
プロパン酸メチル生成物がメタノールを含まないことが必要であれば、第2の蒸留カラムを必要とした。この場合、プロパン酸メチルとメタノールとの混合物であるフラッシュカラムからの蒸気流れを、第2の蒸留カラムに通し、そこで純粋なプロパン酸メチルをより重い生成物として生成させ、カラムの基部から除去した。メタノールとプロパン酸メチルとの低沸点混合物が、軽い生成物として生成され、それをMeP精製カラムの頂部から連続して除去した。該方法で可能な限り効率的にメタノールを使用するために、メタノールとプロパン酸メチルとの低沸点混合物を反応容器に連続的に戻した。
【0193】
連続反応器ユニットを立ち上げた後、プロパン酸メチルが所望の生成速度に達したら、触媒成分の供給速度を徐々に低下させる工程に着手した。
プロパン酸メチルの生成速度を持続させるために、もはや分解されなくなったパラジウム触媒成分を、損失速度と均衡を保つ速度で、新たなパラジウムに連続して交換する必要があった。
【0194】
これにより、反応容器のヘッドスペース区分の一酸化炭素及びエチレンが一定濃度であることで示さたとおり、触媒成分の現存濃度が一定になり、所定のプロパン酸メチル生成速度が得られ、工程図の反応速度を持続することができた。これらの条件下ではパラジウム分解の速度が新たなパラジウムの添加速度と厳密に均衡を保っていたため、これをバランスポイントと呼んだ。
【0195】
バランスポイント条件下で新たなパラジウム触媒成分を添加する速度から、パラジウムターンオーバー数(TON)を計算した。これは、時間あたりの分解工程により消費されたパラジウムの各モル数ごとの、時間あたりに生成されたプロパン酸メチルのモル数と定義される。
【0196】
所定の制御条件で定常状態に達したら、変数全ての瞬間値を記録して、その時間に利用される条件下での該方法の性能を示す代表的データとして用いた。
パラジウムターンオーバー数に対するACCFの影響に関するデータを集めるために、反応混合物中の溶媒レベルを除く全ての変数を一定に保った。これらのレベルを、高レベル、比較的低レベル及び5種の比較的平均レベルに変換して、信頼性のある制御レベルを得た。添加の後、続いてプロパン酸メチル生成速度が確実に一定に保たれるよう注意深く調整した。
【0197】
こうして、様々なACCFにより得られた結果の比較の組合せを作成すると、触媒安定性への変換が明確に示された。
反応器へ供給されるパラジウム量は、ターンオーバー数の結果を計算するうえで重要である。触媒を触媒供給タンクに移す前に、触媒の各バッチをパラジウム含量について分析することにより、新たな触媒が系に供給される速度が確実に得られた。触媒供給系の一部であるバレットでのレベル低下のタイミングから、触媒の実際の供給速度を測定すれば、更に確実さが増した。
【0198】
表1は、実施例1〜5,7ならびに比較例6で得られた結果についてのパラジウムターンオーバー数(TON)に対するACCFの影響を示す。
実施例1〜5,7ならびに比較例6では、用いた酸はメタンスルホン酸であり、二座ホスフィン配位子は1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンであり、パラジウム化合物はトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムであった。
【0199】
【表1】

【0200】
比較例6、実施例1〜5,実施例7の結果は、TON対ACCFのプロットを示す図1により明確に示される。見て分かるとおり、低いACCFでは、TONが意外にも増加している。
【0201】
表1は、異なるデータポイントでのパラジウムの実測レベルと、計算したACCF因子及び得られたPdターンオーバー数を示す。
表2は、実施例8〜11で得られたパラジウムターンオーバー数(TON)に対するACCFの影響を示す。それは、計算したACCF因子及び得られたPdターンオーバー数を示す。
【0202】
実施例8〜11では、用いた酸はメタンスルホン酸であり、二座ホスフィン配位子は1,2−ビス(ジ(ジメチルアダマンチル)ホスフィノメチル)フェロセンであり、パラジウム化合物はトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムであった。
【0203】
【表2】

【0204】
いくつかの好ましい実施形態を図示及び記載したが、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱せずに、様々な変更及び改良が可能であることは、当業者には理解されよう。
【0205】
本願に関連して本明細書と同時又はそれに先立って出願され、本明細書の公的検閲を受ける論文及び文書の全てが留意されるが、そのような論文及び文書の全ての内容が、本明細書に参考として援用される。
【0206】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された方法又は工程のステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が互いに排他的である組合わせを除き、いずれの組合せで組合わせてもよい。
【0207】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された各特徴は、他に断りがなければ、同様、同一又は類似の目的を果たす別の特徴に置換えてもよい。つまり他に断りがなければ、開示された各特徴は、一連の同一又は類似の特徴の一例に過ぎない。
【0208】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴のいずれかの新規な一つ、もしくはいずれかの新規な組合せ、又はそのように開示されたいずれかの方法もしくは工程のステップのいずれかの新規な一つ、もしくはいずれかの新規な組合せに及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】TON対ACCFのプロットを示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基の供給源と、触媒系であって(a)二座ホスフィン、アルシン又はスチビン配位子、及び(b)触媒金属の触媒活性濃度が、ACCF(生成物kg・時間−1・dm−3)として測定されると0.5未満に保持された、VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物から選択される触媒金属を含む触媒系とが存在する条件において、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素でカルボニル化する工程からなる、ターンオーバーの高いカルボニル化のための連続カルボニル化方法。
【請求項2】
反応媒体中に、エチレン性不飽和化合物と、一酸化炭素と、ヒドロキシル基の供給源と、触媒系であって、(a)二座ホスフィン、アルシン又はスチビン配位子、及び(b)カルボニル化反応媒体中の触媒金属の触媒活性濃度が、ACCF(生成物kg・時間−1・dm−3)として測定されると0.5未満に保持された、VIB族もしくはVIIIB族金属又はその化合物から選択される触媒金属からなる触媒系と、を含有する、連続カルボニル化法のためのカルボニル化反応媒体及びその生成物流れ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒系の存在下で、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素及びヒドロキシル基含有化合物と接触させることを含む、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法。
【請求項4】
前記二座ホスフィン配位子が、一般式(I)
【化1】

で示される(式中、Arは、リン原子が利用可能な隣接炭素原子上に結合した、任意に置換されたアリール部分を含む架橋基であり、A,Bは、それぞれ独立して低級アルキレンであり、K,D,E,Zは、アリール部分(Ar)の置換基であってそれぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2526、SR27、C(O)SR27、もしくは−J−Q(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)(式中、Jは、低級アルキレンを表す)であるか、又はK,Z,D,Eから選択される2個の隣接基が、結合するアリール環の炭素原子と一緒になって、更なるフェニル環を形成しており、前記フェニル環が水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2526、SR27もしくはC(O)SR27から選択される置換基1個以上により任意に置換されており、R13〜R18は、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又はHetであり、R19〜R27はそれぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又はHetであり、R〜R12はそれぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール又は
Hetであり、Q,Q,Qは(存在するならば)それぞれ独立してリン、ヒ素又はアンチモンであり、したがって後者の2種の場合、先のホスフィン又はリンの参照が改められる)、請求項1〜3のいずれか記載の触媒系。
【請求項5】
それぞれQ,Q,Q(存在するならば)が、リンである、請求項4に記載の連続カルボニル化法。
【請求項6】
前記低いACCFがカルボニル化反応媒体の適切な希釈により保持される、請求項1〜5のいずれかに記載の連続カルボニル化方法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化方法。
【請求項7】
前記触媒系が更なる化合物(c)として酸も含む、請求項1〜6に記載の連続カルボニル化方法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化方法。
【請求項8】
この実施形態での二座配位子の具体的であるが非限定的な例として、以下のもの:1,2−ビス(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジ−5−tert−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(1−アダマンチルtert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジコングレシルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ホスファアダマンチル−p−メチル)ベンゼン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ホスファアダマンチル−p−メチル)ベンゼン、1−(tert−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、及び1−[(p−(2,2,6,6−tert−メチルホスフィナン−4−オン)ホスフィノメチル)]−2−(ホスファアダマンチル−p−メチル)ベンゼンが挙げられ、ここで「ホスファアダマンチル」が、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル、2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキシアダマンチル、又は2−ホスファ−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキシアダマンチルから選択される、請求項1〜7記載の連続カルボニル化方法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化方法。
【請求項9】
前記二座ホスフィン配位子が、一般式(III )
【化2】

で示される(式中、A,A、ならびにA,A,Aは(存在するならば)、それぞれ独立して低級アルキレンであり、Kは、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF又はA−Q(X)Xからなる群から選択され、Dは、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CFもしくは−A−Q(X)Xからなる群から選択され、Eは、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CFもしくは−A−Q(X)X10からなる群から選択されるか、又はD,Eの両者が、結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されたフェニル環を形成しており、Xは、CR(R)(R)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、Xは、CR(R)(R)、コングレシルもしくはアダマンチルを表すか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III a
【化3】

で示される環系を形成しており、Xは、CR(R)(R)、コングレシルもしくはアダマンチルであり、Xは、CR10(R11)(R12)、コングレシルもしくはアダマンチルであるか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体
を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III b
【化4】

で示される環系を形成しており、Xは、CR13(R14)(R15)、コングレシルもしくはアダマンチルであり、Xは、CR16(R17)(R18)、コングレシルもしくはアダマンチルであるか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成しているか、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III c
【化5】

で示される環系を形成しており、Xは、CR31(R32)(R33)、コングレシルもしくはアダマンチルであり、Xは、CR34(R35)(R36)、コングレシルもしくはアダマンチルであり、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成し、又はX,Xが、結合するQと一緒になって、式III d
【化6】

で示される環系を形成しており、Xは、CR37(R38)(R39)、コングレシルもしくはアダマンチルであり、X10は、CR40(R41)(R42)、コングレシルもしくはアダマンチルを表し、又はX,X10が結合するQと一緒になって任意に置換された2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基もしくはその誘導体を形成し、又はX,X10が結合するQと一緒になって、式III e
【化7】

で示される環系を形成し、この更なる実施形態において、Q,Q、ならびにQ,Q,Qは(存在するならば)、それぞれ独立してリン、ヒ素又はアンチモンであり、Mは、VIB族もしくはVIIIB族金属又はそれらの金属カチオンであり、Lは、任意に置換されたシクロペンタジエニル、インデニル又はアリール基であり、Lはそれぞれが独立して、水素、低級アルキル、アルキルアリール、ハロ、CO、P(R43)(R44)R45又はN(R46)(R47)R48から選択される配位子の1個以上であり、R〜R18,R31〜R42は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、ハロ、又はHetであり、R19〜R30,R43〜R48は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、又はHetであり、R49,R54,R55は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、又はアリールであり、R50〜R53は、存在するならば、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、アリール、又はHetであり、Y,Y,Y,Y,Yは、存在するならば、それぞれ独立して酸素、硫黄、又はN−R55であり、
n=0又は1;
m=0〜5;
ただし、n=1ならばm=0、かつn=0ならばm≠0とする)、請求項1〜3,6,7のいずれか一項に記載の連続カルボニル化法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化法。
【請求項10】
前記ヒドロキシル基含有化合物が、水、又はヒドロキシル官能基を有する有機分子を含む、請求項1〜9に記載の連続カルボニル化方法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化方法。
【請求項11】
前記エチレン性不飽和化合物が、(a)非置換であるか、又は低級アルキル(アルキル基そのものが、本明細書に定義されたとおり置換、非置換又は終結されていてもよい)、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、チオアルコキシ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、C(S)NR2526、SR27、C(O)SR27で置換されていてもよく、ここでR19〜R27は、それぞれ独立して、水素、アリール、又は低級アルキル(アルキル基そのものが、以下に定義するとおり置換、非置換、又は終結されていてもよい)であり、(b)炭素原子を2〜30個有し、直鎖状又は分枝状で、環式又は非環式又は部分環式であってもよく、(c)不飽和炭素−炭素結合を1個以上有していてもよい、請求項1〜10に記載の連続カルボニル化方法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化方法。
【請求項12】
第VIB族もしくはVIIIB族金属又はそれらの化合物が、元素周期表の第6族、8族、9族及び10族から選択される、請求項1〜11のいずれかに記載の連続カルボニル化方法、カルボニル化反応媒体、エチレン性不飽和化合物又は触媒系のカルボニル化方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504620(P2009−504620A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525618(P2008−525618)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002915
【国際公開番号】WO2007/020379
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500460209)ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】