説明

改善された貯蔵安定性を有する表面改質硬質カラメル

本発明は表面活性剤及び/又は疎水性物質で改質した表面を有し、改善された貯蔵寿命を特徴とする硬質カラメルに関する。本発明の別の態様において、硬質カラメルは酸、場合により緩衝化酸を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面活性剤で改質した表面を有し、改善された貯蔵安定性を特徴とする硬質カラメルに関する。
【背景技術】
【0002】
含糖カラメルは温湿な雰囲気で水分を吸収し、このため長い貯蔵の後に通常、ねばつく軟質ないし潮解性の製品が生じる。先行技術で公知の無糖硬質カラメルも貯蔵安定性の点で改善の余地がある。この欠点は硬質カラメルの製造に使用される砂糖代用品又はその混合物の種類と組成に基づいている。
【0003】
ドイツ特許公開公報第2729896号は、溶融キシリトールにキシリトールの融点以下の温度で粉末状のキシリトールを加える、キシリトールからの硬質カラメルの製造方法を開示する。ところがキシリトールは大変結晶化しやすいから、必要なガラス状構造をもたない多結晶無水製品が得られる。それ故製品は10重量%以下のソルビトールを含む。ところがソルビトールには一連の欠点がある。例えば吸湿性が高い。従ってソルビトール含有製品は長く貯蔵すると湿ってねばつく。
【0004】
米国特許第4,971,798号は水素化イソマルツロースを含む硬質カラメルを開示する。水素化イソマルツロースはイソマルトとも呼ばれ、6−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(1,6−GPS)と立体異性体1−0−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(1,1−GPM)のほぼ等モル混合物である。特に1,1−GPMは溶解度が低いため、上記の硬質カラメルで使用される水素化イソマルツロースは再結晶の傾向があり、このため硬質カラメルが混濁する。
【0005】
EP0886474B1は1−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(1,1−GPS)並びに1,6−GPS、1,1−GPM及び1,1−GPSからなる1,1−GPS含有甘味料混合物のカラメルでの使用を開示する。1,1−GPSは1,1−GPMの結晶化傾向を抑制する。その1,1−GPS含量に基づき、このカラメルは吸湿性がなく、貯蔵性が改善される。
【0006】
EP0847242B1は、1,1−GPM及び1,6−GPSからなり、57重量%以上の1,1−GPMを有する甘味料を使用して調製する硬質カラメルを記載する。この硬質カラメルは表面に微結晶境界層を形成し、これが明らかに硬質カラメルの吸水性と粘着性を減少し、貯蔵安定性を高めることに寄与する。さらに1,1−GPMが濃厚な硬質カラメルは高い温度安定性を有する。
【0007】
硬質カラメルの貯蔵安定性をコーティングによって改善するための多数の方法が先行技術で知られている。
【0008】
例えばDE19532396C2は、心部と被覆を有し、被覆が57重量%:43重量%〜99重量%:1重量%の割合の1,6−GPS及び1,1−GPMからなる1,6−GPS濃縮混合物並びに1重量%:99重量%〜42重量%:57重量%の割合の1,6−GPS及び1,1−GPMからなる1,1−GPM濃縮混合物の少なくとも1つの層を含む糖衣製品を記載する。このようにコーティングした製品は異なる組成の層列で覆われる。特に心部と外層の間に単数又は複数の1,1−GPM濃縮層を配置すれば、糖衣製品の長い耐久性が得られる。従来の水素化イソマルツロースと比較して1,1−GPM濃縮層の溶解度が低いため、一方では心部から糖衣表面への水分の拡散が阻止され、他方では温湿な雰囲気で環境から心部への水分の浸入が減少するから、このような条件下でも耐久性が改善される。
【発明の開示】
【0009】
ところが従来先行技術で周知の硬質カラメルが全体として貯蔵性の点で改善の余地があることは明らかである。そこで本発明の根底にある技術問題は、改善された貯蔵安定性を有する硬質カラメルを提供することである。
【0010】
本発明は少なくとも1つの表面活性剤で改質した表面を有する硬質カラメルを提供することによって、発明の根底をなす問題を解決する。また本発明は食用酸特に緩衝化酸を含む硬質カラメルを提供することによって、発明の根底をなす問題を解決する。
【0011】
改質された表面を有する本発明の硬質カラメルは、食用酸特に緩衝化酸を含む本発明の硬質カラメルと同様に、貯蔵時に環境からの水分の吸収が、表面活性剤で表面を改質しない又は食用酸を含まない従来の硬質カラメルよりはるかに少ないのが特徴である。従って本発明に基づく硬質カラメルは吸水の大幅な減少により、従来の硬質カラメルより貯蔵安定性がはるかに高い。硬質カラメル表面の本発明に基づく改質のもう一つの利点は、貯蔵安定性を高めるために、含糖硬質カラメルも無糖硬質カラメルもこの方法で処理できることである。従って表面活性剤で改質した表面を有する含糖硬質カラメルと食用酸を含む含糖硬質カラメルは、従来の含糖硬質カラメルと対照的にねばつかず、潮解しない。表面活性剤で改質した表面を有する無糖硬質カラメルと食用酸を含む無糖硬質カラメルは、従来の無糖硬質カラメルと対照的に、砂糖代用品の再結晶が大幅に減少する。こうして本発明に基づく硬質カラメルは長い貯蔵の後でも有利な視覚的外観を有する。硬質カラメル表面の本発明に基づく改質は外観を損なわず、硬質カラメルの味覚をまったく又はごく僅かしか損なわない利点がある。硬質カラメルの本発明に基づく表面改質のもう一つの利点は、簡単かつ極めて安価に実施されることである。従来の方法で製造された完成硬質カラメルを、表面活性剤を含む溶液又は表面活性剤自体の中に単に浸漬するだけである。完成硬質カラメルに表面活性剤を含む溶液又は表面活性剤自体を吹き付けるか、又はこれでコーティングすることもできる。
【0012】
本発明に基づき、硬質カラメルが環境から水分をあまり吸収しないように、少なくとも1つの表面活性剤を使用して、硬質カラメルの表面を改質することによって、硬質カラメルの貯蔵安定性が改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
そこで本発明は少なくとも1つの表面活性剤により表面を改質した硬質カラメルに関する。
【0014】
本発明に関連して「硬質カラメル」とは、糖類及び/又は砂糖代用品、特に糖アルコールの溶液を乾燥物含量95%以上になるまで煮詰めることによって作られる甘味品を意味する。煮詰めることによって生じる低い残留含水量に基づき、硬質カラメルは硬い、しばしばガラス状の堅さを有する。さらに硬質カラメルは着香物質、香味物質、着色料及び粘稠度調節物質を含む。硬質カラメルはバッチ式、連続式又は溶融押出法で製造することができる。硬質カラメルは例えばマルチトールシロップからなる充填剤を含むか又は含まない形押し又は流し込み成形品として提供される。軟質カラメルと異なり、硬質カラメルは脂肪を含まない。
【0015】
本発明に関連して「表面活性剤」又は「界面活性剤」とは、特にその溶液が界面、例えば水/油の界面で著しく濃縮され、それによって界面張力を、気液系の場合は表面張力を低下させる有機物質を意味する。
【0016】
硬質カラメル表面の本発明に基づく改質のために使用される表面活性剤は、硬質カラメルの製造のために通常使用される離型ワックス又は離型剤、例えばレシチン又はカルナウバろう/蜜ろうの組合せではない。離型ワックス又は離型剤は、液状硬質カラメル生地を形押し又は流し込み成形して硬質カラメルとする前に、液状硬質カラメル生地の搬送のために使用されるコンベアベルトにこの生地が粘着することを防止するためのものである。製造工程に基づき形押し及び流し込み成形によりごく少量の離型ワックス/離型剤が硬質カラメルに入り込む。このようにして離型ワックス又は離型剤は硬質カラメル製造工程の間、特に硬質カラメルの形押し又は流し込み成形の前に使用されるが、本発明に基づき硬質カラメル表面の改質のために使用される表面活性剤は硬質カラメルの形押し及び流し込み成形の後に、即ち硬質カラメル製造工程の後に完成硬質カラメルに塗布されるのである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、表面活性剤は分離ワックス又は分離剤、特にレシチン又はカルナウバろう/蜜ろう混合物でなく、もっぱら硬質カラメルの表面にあり、カラメルの中にはない。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態は表面活性剤で改質された表面を有する硬質カラメルに関し、表面活性剤は乳化剤である。
【0019】
本発明に関連して「乳化剤」とは、各相が解離して熱力学的に安定な最終系となることを阻止し又は遅らせることによって、乳液即ち互いに混合しない2つ以上の液体の分散系を長期間にわたり安定化する物質を意味する。乳化剤は各相の間の界面張力を低下し、界面膜により、また立体又は電気障壁を形成することによって乳液を安定化し、こうして乳化された粒子の合流を阻止する。従って乳化剤は混合不能な相の間の界面張力を減少するために、界面又は表面活性特性を持たねばならない。また乳化剤は、粒子が互いに反発し、又は粒子の周りに安定な保護層を形成するように、粒子に荷電させることができなければならない。乳化剤は通常、油状ないしワックス状、しばしば粉末状の物質である。乳化剤の構造上の特徴は両親媒性分子構造である。乳化剤の分子は、強い極性の物質にアフィニティーを持つ少なくとも1つの基(極性又は親水性基)及び無極性物質にアフィニティーを持つ少なくとも1つの基(無極性又は親油性基)を有する。分子に親水性基と親油性基が共存することによって、乳化剤が親水性相とも親油性相とも相互作用することが可能になる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、硬質カラメルの表面改質のために使用される乳化剤は高分子脂肪酸のモノグリセリド、高分子脂肪酸のジグリセリド、高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステル又はそれらの混合物である。モノグリセリドは特にグリセリンと高分子脂肪酸との部分エステルを意味する。本発明に基づき硬質カラメルの表面改質のために使用されるモノグリセリドは市販のモノグリセリドであってもよい。これは僅かな割合のトリグリセリドを含むモノ及びジエステル、即ちジグリセリドの混合物からなる。
【0021】
本発明の特に好ましい実施形態ではモノグリセリドはDimodan PV(登録商標)である。発明の別の好ましい実施形態では、モノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製されるエステルはクエン酸エステル、特にモノ及びジグリセリドの混合物のクエン酸エステルである。とりわけモノ−ジグリセリドのクエン酸エステルはSugin 472 C/IKV(登録商標)である。
【0022】
また本発明に基づく乳化剤はソルビタンエステルである。ソルビタンエステルはソルビタンのモノ、ジ及びトリエステルである。ソルビタン又は一無水ソルビトールは、ソルビトールから1モルの水を脱離することによって生じる4価アルコールである。とりわけ硬質カラメルの表面改質のために使用されるソルビタンエステルはソルビタントリエステル、特にSorbester 65(登録商標)又はポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、特にTween 60(登録商標)である。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態は、表面活性剤で改質した表面を有する硬質カラメルに関し、表面活性剤は疎水性物質である。
【0024】
本発明に関連して「疎水性物質」とは、水に浸透しないで、その中に残るという特徴を有する化合物である。従って疎水性化合物は界面活性剤に属する。
【0025】
本発明の好ましい実施態様では、硬質カラメルの表面を改質する疎水性物質は、少なくとも1つの脂肪酸グリセリド、好ましくは複数の飽和脂肪酸グリセリドの混合物を包含する。
【0026】
グリセリド混合物は好ましくはSpezialoel 2685(登録商標)である。また本発明に基づきグリセリド混合物は飽和脂肪酸のトリグリセリドの混合物であって、飽和脂肪酸は特に8〜10個の炭素原子を有する。硬質カラメルの表面改質のために使用されるトリグリセリド混合物はとりわけMiglyol 854(登録商標)である。
【0027】
本発明に基づき使用されるトリグリセリド混合物はさらに蜜ろうを含むことができる。本発明に基づき蜜ろうを含むトリグリセリド混合物は、特にMiglyol 855(登録商標)であることが好ましい。
【0028】
本発明に基づき、複数の表面活性剤で改質した表面を有する本発明の硬質カラメルが提供されることはもちろんである。複数の表面活性剤で硬質カラメル表面を処理することによって、貯蔵安定性の改善に関して極めて有利な相乗効果が得られる。
【0029】
また本発明は、硬質カラメル表面の改質のために使用される表面活性剤、特に油状の粘稠度を有するか又は油であるならば、硬質カラメルの消費の際に口内でまず油だけでなく、香料に含まれる芳香物質もしゃぶり取られるように、さらに香料を含む表面活性剤を提供する。好ましい実施形態では表面活性剤が例えば芳香エッセンスを含むことができる。発明の別の好ましい実施形態では表面活性剤自体が芳香エッセンスである。
【0030】
本発明の特に好ましい実施形態は、表面活性剤で改質した表面を有する硬質カラメルに関し、表面改質した硬質カラメルが酸、特に食用酸を含む。本発明に関連して「酸」又は「食用酸」とは、特にその緩衝効果に基づき硬質カラメル中の砂糖及び/又は砂糖代用品の再結晶に影響を及ぼし、特に再結晶を減少し、こうして硬質カラメルの吸水を減少し、それによって硬質カラメルの貯蔵安定性を改善することに寄与する有機酸を意味する。そこで本発明に基づき食用酸を使用して硬質カラメルを調製することによって、表面活性剤で改質した表面を有する本発明の硬質カラメルの貯蔵安定性をさらに高める。
【0031】
とりわけ本発明の硬質カラメルに含まれる食用酸はリンゴ酸、クエン酸又は乳酸である。乳酸を使用する場合は、本発明に基づき乳酸が硬質カラメルの全重量に対して好ましくは1重量%の量で含まれるものとする。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の硬質カラメルが緩衝化酸を含むものとする。本発明に関連して「緩衝化酸」とは、水素イオン又は水酸化物イオンを加えてもそのpH値がまったく又は僅かしか変化しない電解質水溶液を意味する。弱酸又は強塩基のすべての塩で酸を緩衝化することができる。酸の緩衝のために使用されるこれらの緩衝物質の作用は水素イオン又は水酸化物イオンの捕獲反応に基づいている。
【0033】
本発明の硬質カラメルの調製のために使用される緩衝化酸は同じ酸の中性塩で緩衝化することが好ましい。緩衝化乳酸を使用する場合は、乳酸緩衝物質として乳酸の中性塩、とりわけ乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムにより乳酸を緩衝化する。特に本発明の硬質カラメルは、硬質カラメルの全重量に対して0.1重量%〜2重量%の緩衝化乳酸を含むことが好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの表面活性剤で改質した表面を有する本発明の硬質カラメルは含糖硬質カラメルである。
【0035】
本発明に関連して「砂糖」又は「糖類」とはスクロース、例えば精製糖の形の精製結晶質スクロース、精糖、精製白糖、白糖又は中白糖、例えば液糖の形のスクロース水溶液、加水分解により部分的に転化したスクロースの水溶液、例えば転化糖シロップ又は転化液糖、グルコースシロップ、乾燥グルコースシロップ、結晶水を含むデキストロース又は結晶水を含まないデキストロースのような製品を意味する。このようにして本発明に基づく含糖硬質カラメルは、甘味料としてスクロース、転化液糖、転化糖シロップ、デキストロース及び/又はグルコースシロップを含む硬質カラメルである。
【0036】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの表面活性剤で改質した表面を有する本発明の硬質カラメルは無糖硬質カラメルである。
【0037】
本発明に関連して「無糖硬質カラメル」とは、甘味料として糖類を含まず、即ちスクロース、転化液糖、転化糖シロップ、デキストロースもグルコースシロップも含まないが、砂糖代用品を含む硬質カラメルを意味する。「砂糖代用品」の概念は、食品の甘味づけのために使用することができる、上記の糖類以外のすべての物質を包含する。「砂糖代用品」の概念は強力甘味物質、例えばアスパルテーム、アセスルファム−K、シクラメート及びサッカリンのほかに、例えばラクチトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、1,6−GPS、1,1−GPS及び1,1−GPM及びフルクトース、ロイクロース、ソルボース、イソマルツロース、縮合パラチノース、水素化縮合パラチノース及びフルクトオリゴ糖を包含する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、無糖硬質カラメルは上記の糖類の最大含量が乾燥重量に対して0.5重量%のカラメルである。
【0039】
本発明の無糖硬質カラメルは甘味料としてマルチトールシロップ、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、1,6−GPS(6−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール)、1,1−GPS(1−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール)、1,1−GPM(1−0−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール)又はその混合物を含むことが好ましい。
【0040】
1,6−GPSと1,1−GPMの好ましく使用される混合物はイソマルトであり、1,6−GPSと1,1−GPMがほぼ等モル量で存在する。本発明によれば本発明無糖硬質カラメルに甘味料として1,6−GPSと1,1−GPMの1,6−GPS濃縮混合物及び1,6−GPSと1,1−GPMの1,1−GPM濃縮混合物、特にDE19532396C2で開示された混合物を含むことができる。なおこの刊行物の開示内容は1,6−GPS濃縮及び1,1−GPM濃縮甘味料混合物の説明と調製に関して、本発明の開示内容に完全に包含されている。本発明に基づき甘味料として1,6−GPSと1,1−GPMの1,1−GPS含有混合物、特にEP0625578B1で開示された混合物を使用することもできる。なおこの刊行物の開示内容は1,1−GPS、1,6−GPS及び1,1−GPM含有甘味料混合物の説明と調製に関して、本発明の開示内容に完全に包含されている。
【0041】
少なくとも1つの表面活性剤で改質した表面を有する本発明に基づく無糖硬質カラメルは上記の砂糖代用品のほかに、さらに単数又は複数の強力甘味物質、特にシクラメート、サッカリン、アスパルテーム、グリシリジン、ネオヘスペリジン・ジヒドロカルコン、タウマチン、モネリン、アセスルファム、アリテーム及び/又はスクラロースを含むことができる。
【0042】
改質した表面を有する本発明含糖又は無糖硬質カラメルはさらに着色料、芳香物質、香味物質、結合剤及び/又は充填剤を含むことができる。着色料として合成着色料も天然着色料も考えられる。適当な合成着色料は例えばエリトロシン、インジゴ・カーミン、タートラジン又は二酸化チタンである。適当な天然着色料は例えばカロチノイド例えばβカロチン、リボフラビン、クロロフィル、アントシアン、ベタニン等である。充填剤として例えばポリデキストロース又はイヌリンを使用することができる。結合剤として例えばアルギン酸塩、ゼラチン又はセルロースのグループの化合物を使用することができる。香味物質は常用される物質、例えば精油、合成香料又はその混合物、例えば植物油又は果実油例えばレモン油、果実エッセンス、ペパーミント油、チョウジ油、アニス等を包含する。
【0043】
本発明によれば表面活性剤で改質した表面を有する本発明の硬質カラメル、特に本発明に基づく無糖硬質カラメルは医薬活性成分も含むものとする。
【0044】
また本発明は、少なくとも1つの食用酸、特に少なくとも1つの緩衝化酸を含む硬質カラメルを提供することによって、発明の根底をなす問題を解決する。
【0045】
即ち本発明に基づき少なくとも1つの酸、特に食用酸を使用して硬質カラメルを調製することにより、貯蔵中の硬質カラメルの吸水を減少する。従って食用酸を使用して調製した本発明の硬質カラメルは、改善された貯蔵安定性を特徴とする利点がある。
【0046】
本発明に基づく硬質カラメルに含まれる食用酸は好ましくはリンゴ酸、クエン酸又は乳酸である。乳酸を使用する場合は、本発明に基づき乳酸が硬質カラメルの全重量に対して好ましくは1重量%の量で硬質カラメルに含まれるものとする。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の硬質カラメルが緩衝化酸を含むものとする。
【0048】
本発明の硬質カラメルに含まれる緩衝化酸は、その緩衝効果に基づき硬質カラメル中の砂糖及び/又は砂糖代用品の再結晶に影響を及ぼし、特に減少して、硬質カラメルの吸水を減少し、それによって硬質カラメルの貯蔵安定性を改善する。
【0049】
硬質カラメルの調製のために使用される緩衝化食用酸を、同じ酸の中性塩で緩衝化することが好ましい。従って緩衝化乳酸を使用する場合は、乳酸緩衝化物質としてとりわけ乳酸の中性塩、特に乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで乳酸を緩衝化する。特に本発明の硬質カラメルは硬質カラメルの全重量に対して0.1重量%〜2重量%の緩衝化乳酸を含むことが好ましい。
【0050】
酸又は緩衝化酸を含む本発明の硬質カラメルは含糖及び無糖硬質カラメルである。本発明に基づく含糖又は無糖硬質カラメルはさらに着色料、芳香物質、香味物質、結合剤及び/又は充填剤を含むことができる。
【0051】
また本発明は硬質カラメルの表面改質のための表面活性剤の使用に関し、その際硬質カラメルは含糖及び無糖硬質カラメルである。そこで本発明は含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のための表面活性剤の使用に関する。
【0052】
本発明に基づき、硬質カラメルの表面の改質又は硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のために使用される表面活性剤は、乳化剤又は疎水性物質である。
【0053】
本発明によれば、使用される乳化剤は高分子脂肪酸のモノグリセリド、高分子脂肪酸のジグリセリド、このようなモノグリセリド又はジグリセリドを使用して調製したエステル又はそれらの混合物である。本発明に基づき好ましく使用されるモノグリセリドはDimodan PV(登録商標)である。モノグリセリド及び/又はジグリセリドの本発明に基づき好ましく使用されるエステル化生成物はクエン酸エステル、特にSugin 472 C/IKV(登録商標)である。本発明に基づき乳化剤としてソルビタンエステル、例えばソルビタントリステアレート、例えばSorbester 65(登録商標)又はポリオキシエチレンソルビタンモノスレアラート、例えばTween 60(登録商標)を使用することもできる。
【0054】
本発明によれば、使用する疎水性物質は少なくとも1つの飽和脂肪酸グリセリド又は複数の飽和脂肪酸グリセリドの混合物を含むものとする。発明の好ましい実施態様では複数の飽和脂肪酸グリセリドの混合物はSpezialoel 2685(登録商標)である。発明の別の好ましい実施態様では、複数のグリセリドの混合物は、飽和脂肪酸、特に8〜10個の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリドの混合物を含む。本発明に基づき好ましく使用されるトリグリセリド混合物はMiglyol 854(登録商標)である。使用する飽和脂肪酸のトリグリセリド混合物は、本発明に基づきさらに蜜ろうを含むことができる。本発明に基づき好ましく使用される密ろう含有トリグリセリド混合物はMiglyol 855(登録商標)である。
【0055】
また本発明は含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のための食用酸、特に緩衝化食用酸の使用に関する。
【0056】
硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のために使用される食用酸は、好ましくはリンゴ酸、クエン酸又は乳酸である。硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のために緩衝化食用酸を使用し、その際食用酸を同じ酸の中性塩で緩衝化することが特に有利である。従って緩衝化乳酸を使用する場合は、乳酸緩衝物質として、好ましくは乳酸の中性塩、特に乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで乳酸を緩衝化する。
【0057】
また本発明は含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵安定性を高める方法に関し、その場合少なくとも1つの表面活性剤を塗布することによって、既製の硬質カラメルの表面を改質する。
【0058】
そこで本発明に基づき、硬質カラメルを調製した後に少なくとも1つの表面活性剤を硬質カラメル表面に塗布することによって、硬質カラメルの貯蔵寿命を改善する。硬質カラメル自体は従来の方法で調製することができる。例えば甘味料又は甘味料混合物と水をキャンデー調理鍋で十分に長い期間にわたり140℃〜200℃の温度で煮沸し、場合によっては真空下で煮沸を行うことによって、硬質カラメルを調製することができる。生地を約100℃〜120℃の温度に冷却した後、香味料及び食用酸と場合によってはさらなる甘味料を加える。続いて生地を流し込み又は形押し成形してボンボンとし、さらに冷却する。連続式調理設備で硬質カラメルの調製を行うこともできる。代案として、溶融押出法で硬質カラメルを調製することもできる。但しこの場合は水を加えない。
【0059】
硬質カラメルを調製した後、完成硬質カラメルを本発明に基づき表面改質する。本発明の方法の好ましい実施態様では、完成硬質カラメルを単数又は複数の表面活性剤を含む溶液もしくは乳液、又は表面活性剤自体の中に浸漬し、続いて乾燥する。本発明の方法の別の実施態様では、完成硬質カラメルに単数又は複数の表面活性剤を含む溶液又は乳液もしくは表面活性剤自体を吹き付け、続いて乾燥する。本発明の方法のさらに別の実施態様では、コーティング法を使用して表面活性剤を完成硬質カラメルの表面に塗布する。例えば軟質コーティング法を使用して単数又は複数の表面活性剤を硬質カラメルに塗布することができる。本発明によれば「軟質コーティング」とは、乳液又は液体に溶解した又は含まれる表面活性剤を、運動する硬質カラメルに被着し、塗布のつど単数又は複数の表面活性剤の粉末を散布することを意味する。硬質コーティング法を使用して表面活性剤を硬質カラメルに塗布することもできる。本発明によれば「硬質コーティング」とは、同じく乳液又は液体に溶解した又は含まれる表面活性剤を、運動する硬質カラメルに被着し、但し軟質コーティング法と異なり表面活性剤の粉末を散布しないことを意味する。
【0060】
本発明によれば表面活性剤の溶液もしくは乳液又は表面活性剤は、それが液状である限り、さらに香味物質、例えば芳香エッセンスなどの香料を含むことができる。
【0061】
また本発明に基づき、硬質カラメルに表面活性剤を被着するためにコーティング法を適用する場合は、同時に又は事前又は事後に砂糖又は砂糖代用品を硬質カラメルの心部に適用する。硬質カラメルのコーティングのために例えば単数又は複数の表面活性剤のほかに溶解した糖類又は糖代用品も含む溶液を使用することができる。また軟質コーティングで硬質カラメルに溶液を被着した後に散布する表面活性剤粉末は、例えば糖類粉末を含むことができる。他方では砂糖又は砂糖代用品の溶液及び/又は糖類粉末ですでにコーティングした硬質カラメルに、表面活性剤を含む溶液又は表面活性剤を含む粉末を塗布することができる。本発明に基づき例えば表面活性剤を含む溶液及び/又は表面活性剤を含む粉末ですでにコーティングした硬質カラメルを、続いて砂糖又は砂糖代用品の溶液及び/又は糖類粉末でコーテョングすることも可能である。
【0062】
下記の図及び実施例に基づき発明を詳述する。
【実施例】
【0063】
(実施例1)含糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善
含糖硬質カラメルの調製
従来の方法に従って砂糖・グルコースシロップ(100/100)から流し込み成形硬質カラメルを調製した。調製は、調合物をバッチ釜で煮沸し、続いて生地を流し込み成形して行った。含糖硬質カラメルの組成を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表面改質
次いで乳化剤と油の混合物を使用して含糖硬質カラメルの表面を改質した。
【0066】
流し込み成形硬質カラメルを4つに分けて、乳化剤・油溶液に浸漬して改質した。表2は4つの試料の表面改質の仕方を示す。
【0067】
【表2】

【0068】
貯蔵寿命の測定
硬質カラメルの貯蔵寿命をストレステスト(25℃/70%r.F.(相対湿度))で検査した。貯蔵テスト中の吸水を重量法で測定した。さらに硬質カラメルを写真撮影した。典型的には、砂糖/グルコースシロップ硬質カラメルは湿った雰囲気で貯蔵すると、再結晶しないで、潮解する。
【0069】
結果
乳化剤/油混合物による表面改質は含糖硬質カラメルの吸水の明瞭な減少をもたらす。それによって貯蔵中のカラメルの潮解が防止される。こうして含糖硬質カラメルの貯蔵寿命が表面改質によって著しく改善される。
【0070】
(実施例2)イソマルト硬質カラメルの貯蔵寿命に対する表面活性剤の影響
試験1
純イソマルト・ガラス様体を流し込み成形した。硬質カラメルを乳化剤溶液又は乳化剤・脂肪混合物に浸漬することによってイソマルト硬質カラメルの表面を改質した。こうして処理したガラス様体を25℃/相対湿度80%で3日間開放貯蔵した。ストレステストでの吸水を測定し、貯蔵した試料を写真撮影した。表面が変化しなかったガラス様体を対照物質として貯蔵した。すべての試料の含水量は1.5重量%であった。
【0071】
表3はイソマルト硬質カラメルの表面改質に使用した乳化剤を示す。
【表3】

【0072】
表4はイソマルト硬質カラメルの表面改質のために使用した油脂を示す。
【表4】

【0073】
表5は乳化剤又は乳化剤−油/脂混合物で処理したイソマルト・ガラス様体のストレステストでの吸水を示す。
【0074】
【表5】

【0075】
乳化剤の量は、乳化剤−脂肪浸漬液中の割合(g/100g混合物)を表す。
【0076】
試験2
第2の試験では乳化剤と油脂の別の組合せをテストした。表6は使用した乳化剤及び油脂並びにストレステストでの硬質カラメルの吸水に対するそれらの影響を示す。
【0077】
【表6】

【0078】
こうして処理したイソマルト硬質カラメルは再結晶しない。試料の対139−18/139−19及び139−20/139−21ではSorbester 65/油脂の各組合せに対して混合比を変えた。
【0079】
試料139−18はストレステストの後に再結晶のない透明な表面を有する。「吸水」及び「外観」の基準によれば、この試料はストレステストの後に極めて高い貯蔵安定性を有する。
【0080】
結果:
乳化剤Sugin 472 C/IKV、Sorbester 65及びDimodan 65と油脂Miglyol 854、Miglyol 855及びSpezialoel 2685の組合せを使用すれば、イソマルト硬質カラメルの貯蔵安定性が著しく高められ、ストレステストの後に透明なガラス様体が得られる。
【0081】
(実施例3)酸含有イソマルト硬質カラメルの貯蔵安定性に対する表面活性剤の影響
酸含有イソマルト硬質カラメルの調製
煮沸の後に乳酸又は緩衝化乳酸を加えたイソマルトガラス様体を流し込み成形した。こうして得たイソマルト・ガラス様体を、続いて疎水性物質混合物に浸漬して表面を改質した。こうして処理したガラス様体を25℃/相対湿度80%で3日間開放貯蔵した。次にストレステストでの吸水を測定し、貯蔵した試料を写真撮影した。表面が変化しなかったガラス様体を対照物質として貯蔵した。
【0082】
表7はイソマルト・ガラス様体の調製のために使用した乳酸製品又は緩衝化乳酸を含む製品を示す。
【0083】
【表7】

【0084】
乳酸Purac FCC 80及び緩衝化乳酸Purac BF S/30は酸含有イソマルト硬質カラメルの調製に直接使用した。さらにその他の乳酸緩衝物質(「混合物」)を調製し、酸含有イソマルト硬質カラメルの調製のために使用した。表8は調製した乳酸緩衝物質を示す。
【0085】
【表8】

【0086】
乳酸製品、乳酸塩及び乳酸緩衝物質を使用して、pH値が酸性〜中性領域にある硬質カラメルを調製することができる。
【0087】
添加した酸、添加した乳酸塩及び緩衝化乳酸の濃度は、硬質カラメルの再結晶に影響する。そこで硬質カラメルの調製の際に添加物の種類のほかに、これらの添加物の濃度も変えた。
【0088】
表9は乳酸及び/又は乳酸緩衝物質を使用して調製した硬質カラメル並びに貯蔵の前のその含水量及びストレステストでの吸水を示す。
【0089】
【表9】

【0090】
再結晶は吸水に対応する。対照と比較して試料2−4、6、8−9及び12−14は著しく減少した再結晶を示す。純乳酸を含む試料のうち、特に1%の乳酸を含むカラメルは再結晶の減少を示す。純乳酸ナトリウムの添加は再結晶を増加し、これに対して純乳酸カルシウムの使用は再結晶の著しい減少をもたらす。乳酸緩衝物質の使用においても、乳酸カルシウムの使用は、乳酸ナトリウムよりもはるかに顕著に再結晶を阻止する。
【0091】
表面改質
乳酸及び/又は乳酸緩衝物質を使用して調製したイソマルト硬質カラメルを、続いて表面活性剤、特に乳化剤及び油脂を使用して表面改質した。表10は表面改質した酸含有イソマルト硬質カラメルの吸水と、使用した乳化剤及び油脂との関係を示す。
【0092】
Spezialoel 2685浸漬溶液の乳化剤量は常に5g/100gである。
【0093】
【表10】

【0094】
試料はストレステストの後、透明であった。視覚的に識別可能な再結晶は吸水に対応する。例外をなすのはSuginを含む試料MS140/13である。この試料はストレステストで水を失うが、視覚的にはDimodan又はSorbesterによる試料MS140/13と相違がない。すべての試料で再結晶は、表面改質しない硬質カラメルと比較して減少している。
【0095】
別の試験で、酸を含まないイソマルト硬質カラメルの表面への油脂なしのTween 60の塗布が再結晶に影響するか否かを調べた。こうして処理した硬質カラメルは、ストレステストで1.1重量%の水を吸収する。硬質カラメルの表面はストレステストの後に平滑であり、再結晶を示さない。
【0096】
結果:
乳酸緩衝物質を含むイソマルト硬質カラメルはストレステストで、酸を含まない硬質カラメル又は純乳酸を含む硬質カラメルより結晶が少ないことを示す。特に乳酸カルシウムを含む緩衝系の使用が有利であり、純乳酸カルシウムを添加しても再結晶を阻止する。
【0097】
油と乳化剤Sugin 472 C/IKV、Dimodan PV及びSorbester 65の混合物による表面改質は、乳酸及び/又は乳酸塩を含む、調べたすべての硬質カラメルの吸水と再結晶の著しい減少をもたらす。
【0098】
(実施例4)イソマルト硬質カラメルの貯蔵安定性に対する食用酸の影響
イソマルト硬質カラメルの調製
バッチ式調理器で固形イソマルトと脱塩水から、含水量約1.8%の溶融物を真空下で調理した。緩衝化酸を使用し、酸を溶液として溶融物にかき混ぜた。続いて再び元の含水量にするために、短時間の真空処理を行った。溶融物から流し込み及び形押し成形したイソマルト・ガラス様体を作った。
【0099】
緩衝化酸として緩衝化L−乳酸Purac BF S/30(80%溶液)及び緩衝化クエン酸CITROSTABIL(75%溶液、Jungbunzlauer)を加えた。
【0100】
形押し成形したガラス様体の組成をHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)及びカールフィッシャー滴定によって決定した。ガラス様体の組成を表11に示す。
【0101】
【表11】

【0102】
貯蔵安定性の測定
調製したガラス様体の貯蔵安定性をストレステスト(4日、25℃/相対湿度80%)で吸水と視覚的外観に基づいて調べた。
【0103】
表12はイソマルトガラス様体の吸水と組成の関係を示す。
【表12】

【0104】
得た結果が示すところでは、緩衝化酸の添加はイソマルト・ガラス様体の吸水を著しく減少する。その場合緩衝化乳酸の効果は緩衝クエン酸よりはるかに強い。吸水の減少は流し込み成形したガラス様体でも形押し成形したガラス様体でも同様に認められる。形押し成形したガラス様体の吸水量がやや高いのは、形押し成形したガラス様体の表面体積比が流し込み成形したガラス様体と比較して高いことによる。
【0105】
(実施例5)酸含有イソマルトHC硬質カラメルの貯蔵安定性に対する表面活性剤の影響 調理の後に乳酸又は緩衝化乳酸を加えたイソマルトHCガラス様体を流し込み成形した。イソマルトHCは1,6−GPS、1,1−GPM及び1,1−GPSの混合物であり、少量のソルビトール、マンニトール及びその他の糖アルコールを含んでいてもよい。続いてイソマルトHCガラス様体を疎水性物質混合物に浸漬して、表面を改質した。こうして処理したガラス様体を25℃/相対湿度80%で3日間開放貯蔵した。ストレステストでの吸水を測定し、貯蔵した試料を写真撮影した。表面が変化しなかったガラス様体を対照物質として貯蔵した。
【0106】
表13は硬質カラメルの調製に使用した乳酸及び緩衝化乳酸を示す。
【表13】

【0107】
緩衝化乳酸は直接使用した。また1.9重量%の乳酸“Purac FCC 80”及び98.1重量%の“Puracal PP/FCC”の混合物を調製した。酸含有硬質カラメルの調製のために、固形物基準で1重量%の乳酸又は固形物基準で1.35重量%の調製された混合物を使用した。
【0108】
表14は表面改質せずに調製した硬質カラメルの含水量及びストレステストでの吸水を示す。
【表14】

【0109】
再結晶は吸水に対応した。
【0110】
調製した酸含有イソマルトHC硬質カラメルを続いて表面活性剤により表面改質した。表面改質した酸含有硬質カラメルを次にストレステストで吸水について調べた。表15は酸含有イソマルトHC硬質カラメルの吸水に対する使用した表面活性剤の影響を示す。
【0111】
【表15】

【0112】
試料はストレステストの前に透明であり、僅かに油状の表面を有していた。視覚的に識別できる再結晶は吸水に対応した。表面改質しない硬質カラメルと比較して、すべての試料で再結晶が減少した。
【0113】
結果:
緩衝化乳酸を含むイソマルトHC硬質カラメルはストレステストで、酸を含まないイソマルトHC硬質カラメル又は乳酸と乳酸カルシウムの混合物を含むイソマルトHC硬質カラメルより再結晶が少ない。また乳酸と乳酸カルシウムの混合物を使用して調製した硬質カラメルは、酸なしで調製したイソマルトHC硬質カラメルより再結晶が少ない。上記の乳化剤油脂混合物による表面改質によって、イソマルトHC硬質カラメルの吸水と再結晶が減少する。
【0114】
(実施例6)マルチトールシロップ、イソマルト又はマルチトールシロップ・イソマルト混合物を含む硬質カラメルの貯蔵安定性に対する表面活性剤の影響
まずイソマルトを含む硬質カラメルの貯蔵安定性に対するマルチトールシロップ(Lycasin 80/55)の影響を調べるために、試験を行った。次に調製した硬質カラメルの貯蔵安定性に対する乳化剤及び油脂の影響を特定の試料で調べた。
【0115】
種々のマルチトールシロップ含量を有するイソマルト・ガラス様体及びGPM/GPS比が0.9で種々のマルチトールシロップ含量を有するイソマルト・ガラス様体を流し込み成形した。ガラス様体を25℃(相対湿度80%)で3日間開放貯蔵した。ストレステストでの吸水を測定し、貯蔵した試料を写真撮影した。
【0116】
表16は調製した硬質カラメルの組成、その含水量、ストレステストでの吸水を示す。
【表16】

【0117】
再結晶は吸水に対応した。GPM/GPS比0.9の硬質カラメルはGPM/GPS比1.0の比較可能な硬質カラメルより多くの水を吸収した。マルチトールシロップ含量30重量%及び35重量%の硬質カラメルは原形を喪失した。
【0118】
調製した硬質カラメルの一部を疎水性物質混合物に浸漬して、表面を改質した。表17は表面改質した硬質カラメルの組成を示す。
【0119】
【表17】

【0120】
表18は表17で説明した硬質カラメルの表面改質のために使用した乳化剤及び油脂並びにストレステストでの硬質カラメルの吸水に対するその影響を示す。
【表18】

【0121】
再結晶は吸水に対応した。表面処理した硬質カラメルは表面処理しないカラメルより吸水が少なかった。再結晶の阻止に関して最良の効果を得たのは、Sugin 472とSpezialoel 2685の混合物によるMS161系列の硬質カラメルである。
【0122】
(実施例7)乳化剤・油脂混合物で表面処理したイソマルト硬質カラメルのプロフィル分析
実施例2、3及び4で説明したように、酸を含む又は含まないイソマルト硬質カラメルを調製した。続いて表面を乳化剤・油脂混合物で処理した。表19はイソマルト硬質カラメルの組成及び表面改質の仕方を示す。
【0123】
【表19】

【0124】
カラメルの表面性状、味覚及び溶けだし挙動を試験した。その際上記の試験を評点方式で行った。それぞれの性質の発現を1(認められず)〜3(強い発現)で評価した。合計10人の被験者が試料を試食し、酸を含まない対照硬質カラメルは3回試験した。結果を図1、2及び3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】種々の表面処理を行ったイソマルト硬質カラメル(酸なし)の味覚及び溶けだし挙動に関する分析の結果を示す。
【図2】種々の表面処理を行ったイソマルト硬質カラメル(酸を含む)の味覚及び溶けだし挙動に関する分析の結果を示す。
【図3】種々の表面処理を行ったイソマルト硬質カラメル(対照見本)の味覚及び溶けだし挙動に関する分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面活性剤によって表面が改質された硬質カラメル。
【請求項2】
表面活性剤が乳化剤である請求項1に記載の硬質カラメル。
【請求項3】
乳化剤が高分子脂肪酸のモノグリセリド、高分子脂肪酸のジグリセリド、高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステル又はそれらの混合物である請求項2に記載の硬質カラメル。
【請求項4】
モノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステルがクエン酸エステルである請求項3に記載の硬質カラメル。
【請求項5】
乳化剤がソルビタンエステルである請求項2に記載の硬質カラメル。
【請求項6】
ソルビタンエステルがソルビタントリステアレートである請求項5に記載の硬質カラメル。
【請求項7】
ソルビタンエステルがポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートである請求項5に記載の硬質カラメル。
【請求項8】
表面活性剤が疎水性物質である請求項1に記載の硬質カラメル。
【請求項9】
疎水性物質が、少なくとも1つの飽和脂肪酸グリセリド又は複数の飽和脂肪酸グリセリドの混合物を含む請求項8に記載の硬質カラメル。
【請求項10】
グリセリド混合物が8〜10個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のトリグリセリドの混合物である請求項9に記載の硬質カラメル。
【請求項11】
トリグリセリド混合物がさらにろうを含む請求項10に記載の硬質カラメル。
【請求項12】
トリグリセリド混合物がさらに蜜ろうを含む請求項11に記載の硬質カラメル。
【請求項13】
硬質カラメルが酸を含む上記請求項のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項14】
酸が乳酸、リンゴ酸又はクエン酸である請求項13に記載の硬質カラメル。
【請求項15】
乳酸が硬質カラメルの全重量に対して1重量%の量で含まれている請求項14に記載の硬質カラメル。
【請求項16】
酸が緩衝化されている請求項13又は14に記載の硬質カラメル。
【請求項17】
緩衝化酸が乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで緩衝化された乳酸である請求項16に記載の硬質カラメル。
【請求項18】
緩衝化乳酸が硬質カラメルの全重量に対して0.1重量%〜2重量%の量で含まれている請求項17に記載の硬質カラメル。
【請求項19】
甘味料としてスクロース、転化液糖、転化糖シロップ、デキストロース及び/又はグルコースシロップを含む請求項1〜18のいずれか1項に記載の含糖硬質カラメル。
【請求項20】
甘味料としてマルチトールシロップ、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、1,6−GPS、1,1−GPS、1,1−GPM又はその混合物を含む請求項1〜18のいずれか1項に記載の無糖硬質カラメル。
【請求項21】
甘味料が1,6−GPSと1,1−GPMの等モル混合物である請求項20に記載の無糖硬質カラメル。
【請求項22】
さらに単数又は複数の強力甘味料を含む請求項20又は21に記載の無糖硬質カラメル。
【請求項23】
さらに着色料、香味料及び/又は充填剤を含む上記請求項のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項24】
さらに単数又は複数の医薬活性成分を含む上記請求項のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項25】
食用酸を含み、吸水性が減少した硬質カラメル。
【請求項26】
酸が乳酸、リンゴ酸又はクエン酸である請求項25に記載の硬質カラメル。
【請求項27】
乳酸が硬質カラメルの全重量に対して1重量%の量で含まれている請求項26に記載の硬質カラメル。
【請求項28】
酸が緩衝化されている請求項25又は26に記載の硬質カラメル。
【請求項29】
緩衝化酸が乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで緩衝化された乳酸である請求項28に記載の硬質カラメル。
【請求項30】
緩衝化乳酸が硬質カラメルの全重量に対して0.1重量%〜2重量%の量で含まれている請求項29に記載の硬質カラメル。
【請求項31】
硬質カラメルが含糖又は無糖硬質カラメルである請求項25〜30のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項32】
含糖又は無糖硬質カラメルの表面の改質のための表面活性剤の使用。
【請求項33】
含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のための表面活性剤の使用。
【請求項34】
表面活性剤が乳化剤又は疎水性物質である請求項32又は33に記載の使用。
【請求項35】
乳化剤が高分子脂肪酸のモノグリセリド、高分子脂肪酸のジグリセリド、高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステル又はそれらの混合物である請求項34に記載の使用。
【請求項36】
高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステルがクエン酸エステルである請求項35に記載の使用。
【請求項37】
乳化剤がソルビタンエステル、例えばソルビタントリステアレート又はポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートである請求項34に記載の使用。
【請求項38】
疎水性物質が少なくとも1つの飽和脂肪酸グリセリド又は複数の飽和脂肪酸グリセリドの混合物を含む請求項34に記載の使用。
【請求項39】
グリセリド混合物が8〜10個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のトリグリセリドの混合物である請求項38に記載の使用。
【請求項40】
トリグリセリド混合物がさらに蜜ろうを含む請求項39に記載の使用。
【請求項41】
含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のための食用酸の使用。
【請求項42】
食用酸がリンゴ酸、クエン酸又は乳酸である請求項41に記載の使用。
【請求項43】
食用酸が緩衝化されている請求項41又は42に記載の使用。
【請求項44】
緩衝化食用酸が乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで緩衝化された乳酸である請求項43に記載の使用。
【請求項45】
少なくとも1つの表面活性剤を塗布することによって完成硬質カラメルの表面を改質する、含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵安定性を高める方法。
【請求項46】
表面活性剤を含む溶液又は乳液に硬質カラメルを浸漬することによって表面活性剤を硬質カラメルに塗布する請求項45に記載の方法。
【請求項47】
表面活性剤を含む溶液又は乳液を硬質カラメルに吹き付けることによって表面活性剤を硬質カラメルに塗布する請求項45に記載の方法。
【請求項48】
表面活性剤を含む溶液又は乳液で硬質カラメルをコーティングすることによって表面活性剤を硬質カラメルに塗布する請求項45に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面活性剤によって表面が改質された硬質カラメルであって、表面活性剤が油状の粘稠度を有し乳化剤である、前記硬質カラメル。
【請求項2】
乳化剤が高分子脂肪酸のモノグリセリド、高分子脂肪酸のジグリセリド、高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステル又はそれらの混合物である請求項1に記載の硬質カラメル。
【請求項3】
モノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステルがクエン酸エステルである請求項2に記載の硬質カラメル。
【請求項4】
乳化剤がソルビタンエステルである請求項1に記載の硬質カラメル。
【請求項5】
ソルビタンエステルがソルビタントリステアレートである請求項4に記載の硬質カラメル。
【請求項6】
ソルビタンエステルがポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートである請求項4に記載の硬質カラメル。
【請求項7】
硬質カラメルが酸を含む上記請求項のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項8】
酸が乳酸、リンゴ酸又はクエン酸である請求項7に記載の硬質カラメル。
【請求項9】
乳酸が硬質カラメルの全重量に対して1重量%の量で含まれている請求項8に記載の硬質カラメル。
【請求項10】
酸が緩衝化されている請求項7又は8に記載の硬質カラメル。
【請求項11】
緩衝化酸が乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで緩衝化された乳酸である請求項10に記載の硬質カラメル。
【請求項12】
緩衝化乳酸が硬質カラメルの全重量に対して0.1重量%〜2重量%の量で含まれている請求項11に記載の硬質カラメル。
【請求項13】
甘味料としてスクロース、転化液糖、転化糖シロップ、デキストロース及び/又はグルコースシロップを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の含糖硬質カラメル。
【請求項14】
甘味料としてマルチトールシロップ、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、6−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール、1−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール、1−0−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール又はそれらの混合物を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の無糖硬質カラメル。
【請求項15】
甘味料が6−0−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトールと1−0−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトールの等モル混合物である請求項14に記載の無糖硬質カラメル。
【請求項16】
さらに単数又は複数の強力甘味料を含む請求項14又は15に記載の無糖硬質カラメル。
【請求項17】
さらに着色料、香味料及び/又は充填剤を含む上記請求項のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項18】
さらに単数又は複数の医薬活性成分を含む上記請求項のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項19】
食用酸を含み、吸水性が減少した硬質カラメル。
【請求項20】
酸が乳酸、リンゴ酸又はクエン酸である請求項19に記載の硬質カラメル。
【請求項21】
乳酸が硬質カラメルの全重量に対して1重量%の量で含まれている請求項20に記載の硬質カラメル。
【請求項22】
酸が緩衝化されている請求項19又は20に記載の硬質カラメル。
【請求項23】
緩衝化酸が乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで緩衝化された乳酸である請求項22に記載の硬質カラメル。
【請求項24】
緩衝化乳酸が硬質カラメルの全重量に対して0.1重量%〜2重量%の量で含まれている請求項23に記載の硬質カラメル。
【請求項25】
硬質カラメルが含糖又は無糖硬質カラメルである請求項19〜24のいずれか1項に記載の硬質カラメル。
【請求項26】
含糖又は無糖硬質カラメルの表面の改質のための表面活性剤の使用であって、表面活性剤が油状の粘稠度を有し乳化剤である、前記使用。
【請求項27】
含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のための表面活性剤の使用であって、表面活性剤が油状の粘稠度を有し乳化剤である、前記使用。
【請求項28】
乳化剤が高分子脂肪酸のモノグリセリド、高分子脂肪酸のジグリセリド、高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステル又はそれらの混合物である請求項26又は27に記載の使用。
【請求項29】
高分子脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドを使用して調製したエステルがクエン酸エステルである請求項28に記載の使用。
【請求項30】
乳化剤がソルビタンエステル、例えばソルビタントリステアレート又はポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートである請求項26又は27に記載の使用。
【請求項31】
含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵寿命の改善のための食用酸の使用。
【請求項32】
食用酸がリンゴ酸、クエン酸又は乳酸である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
食用酸が緩衝化されている請求項31又は32に記載の使用。
【請求項34】
緩衝化食用酸が乳酸カルシウム又は乳酸ナトリウムで緩衝化された乳酸である請求項33に記載の使用。
【請求項35】
少なくとも1つの表面活性剤を塗布することによって完成硬質カラメルの表面を改質する、含糖又は無糖硬質カラメルの貯蔵安定性を高める方法であって、表面活性剤が油状の粘稠度を有し乳化剤である、前記方法。
【請求項36】
表面活性剤を含む溶液又は乳液に硬質カラメルを浸漬することによって表面活性剤を硬質カラメルに塗布する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
表面活性剤を含む溶液又は乳液を硬質カラメルに吹き付けることによって表面活性剤を硬質カラメルに塗布する請求項35に記載の方法。
【請求項38】
表面活性剤を含む溶液又は乳液で硬質カラメルをコーティングすることによって表面活性剤を硬質カラメルに塗布する請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−508655(P2006−508655A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556264(P2004−556264)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013561
【国際公開番号】WO2004/049815
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】