説明

改善された速度論性能の有機フォトクロミック組成物

【課題】 向上した速度論性能のフォトクロミック組成物、およびポリマー基材における有機フォトクロミック化合物の性能を改善するための方法を提供すること。
【解決手段】 有機フォトクロミック化合物、および必要に応じて、キャリア、安定化剤および/または従来の添加剤を含む改善されたフォトクロミック組成物が提供され、ここでこの改善は、少なくとも1種の速度論促進添加剤を含有することを含む。この速度論促進添加剤は、ポリマー有機ホスト材料(例えば、重合体およびポリマーコーティング)における有機フォトクロミック化合物の性能を改善するのに十分な量で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した速度論性能のフォトクロミック組成物、およびポリマー基材における有機フォトクロミック化合物の性能を改善するための方法に関する。より詳細には、本発明は、有機フォトクロミック化合物、および必要に応じて、キャリア、安定化剤および/または従来の添加剤を含む改善されたフォトクロミック組成物に関し、ここでこの改善は、少なくとも1種の速度論促進添加剤を含有することを含む。この速度論促進添加剤は、ポリマー有機ホスト材料(例えば、重合体(polymerizates)およびポリマーコーティング)における有機フォトクロミック化合物の性能を改善するのに十分な量で使用される。なおより詳細には、本発明は、中に有機フォトクロミック化合物および速度論促進添加剤(例えば、エポキシ含有化合物、可塑剤および/または有機ポリオール)を組み込んだポリマー基材から作製されたフォトクロミック物品(例えば、眼用レンズ)に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物は、日光または水銀ランプの光中の紫外線のような紫外線を含む放射線に曝露された際に、色の可逆変化を示す。フォトクロミック化合物の種々のクラスは、合成され、日光により誘発される可逆性の色変化または暗化(darkening)が所望される適用における使用について示唆されてきている。最も広く記載されたクラスは、オキサジン、クロメン(chromene)およびフルギド(fulgide)である。
【0003】
フォトクロミック化合物は、当該分野において記載される種々の方法によって、眼用レンズのようなプラスチック基材に組み込まれ得る。このような方法として、基材の表面内へこの化合物を溶解または分散すること(例えば、フォトクロミック化合物の熱溶液中への基材の浸漬、またはこの基材の表面上にフォトクロミック化合物を沈積し、この基材中にこのフォトクロミック化合物を熱により移動させることによる、フォトクロミック化合物の基材内への吸収)を含む。用語「吸収(imbibition)」または「吸収する(imbibe)」は、フォトクロミック化合物の基材への浸透、このフォトクロミック化合物の基材への溶媒補助された移動吸収、気相移動および他のこのような移動機構を意味し、含むことが意図される。
【0004】
フォトクロミック化合物がポリマー基材を浸透する程度は、一般的に、温度の上昇、ポリマー基材の表面におけるフォトクロミック化合物の濃度の増加、およびポリマー基材との接触の期間の増加とともに、増加する。フォトクロミック化合物が組み込まれる容易さはまた、フォトクロミック化合物の特性およびポリマー基材の特性に依存する。フォトクロミック化合物の分子サイズ、融点および溶媒溶解度ならびにこのポリマー基材の感受性の全てが、フォトクロミック化合物の組み込みの容易さに影響する。フォトクロミック物品の製造に影響を及ぼす多数の変数のために、幾つかの場合、フォトクロミック化合物は、十分な均一性で、および十分な深さまでプラスチック基材内に組み込まれないかもしれない。これは、フォトクロミック化合物の悪い性能およびフォトクロミック物品の不適切な可逆的色変化を生じ得る。
【0005】
フォトクロミック化合物をポリマー基材へ組み込むための方法は、米国特許第4,286,957号、同第4,880,667号、同第5,789,015号および同第5,975,696号に開示されている。このような方法における可塑剤の使用または回避は、米国特許第4,880,667号および同第5,789,015号に言及されている。米国特許第4,880,667号第5欄第53〜58行に、表面下へのフォトクロミック化合物の拡散を改善するために、可塑剤がポリマーホストを形成するために使用されるモノマー材料に加えられ得ることが記載されている。米国特許第5,789,015号第7欄第66行〜第8欄第2行において、不活性液体(すなわち、レンズの表面を可塑化しない液体)が、可塑基材内に含浸される2種のフォトクロミック添加剤の懸濁液を形成するために使用される。フォトクロミック化合物をポリマー基材へ組み込むプロセスにおいて使用される種々のフォトクロミック組成物が、米国特許第5,185,390号、同第5,391,327号および同第5,770,115号に開示されている。
【0006】
上記フォトクロミック組成物およびフォトクロミック化合物をポリマー基材内に組み込む方法は、一般に、当該分野で公知であり、本発明のプロセスにおいて使用され得る。
【0007】
フォトクロミック化合物とのエポキシ含有化合物の使用は、米国特許5,395,566号、同第5,462,698号、同第5,621,017号および同第5,776,376号に開示されている。米国特許第5,395,566号は、少なくとも一つのラジカル重合可能な基および少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物のフォトクロミック組成物およびフォトクロミック化合物を開示する。米国特許第5,462,698号は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物、フルギド化合物および二種の異なる(メタ)アクリルモノマーのフォトクロミック組成物を開示する。米国特許第5,621,017号は、ラジカル重合モノマー、フォトクロミック化合物および光重合開始剤のフォトクロミック組成物を開示する。米国特許第5,776,376号は、少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物から構成される重合可能なモノマー、種々のモノマー、α−メチルスチレンダイマーおよびフォトクロミック化合物のフォトクロミック組成物を開示する。
【0008】
エポキシ含有化合物およびフォトクロミック化合物を含有する組成物を開示する上記特許の各々において、この組成物はラジカル重合可能な成分を含み、フォトクロミックレンズを作製するために重合された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フォトクロミック化合物をポリマー基材に組み込むための方法が存在するが、このような方法における改善が求められている。現在、有機フォトクロミック化合物および必要に応じてキャリア、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レオロジー調整剤、および/またはレベリング剤(leveling agent)を含むフォトクロミック組成物における速度論促進添加剤の使用は、フォトクロミック性能試験における増加した等級によって証明されるように、フォトクロミック化合物の性能を改善する。この試験の等級は、15分における光学密度(ΔOD)の変化がBleach(T1/2)によって割られ、次いで、10,000を掛けられる際に得られる結果として、定義される。フォトクロミック物品は、本発明の改善されたフォトクロミック組成物をポリマー基材に組み込む移動プロセスによって製造され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、速度論促進添加剤は、本明細書中において、フォトクロミック吸収組成物に加えられる際に、実施例29に記載されるフォトクロミック性能試験における高い等級を生じる材料として定義される。フォトクロミック性能を改善する量の速度論促進添加剤は、本明細書中において、速度論促進添加剤を実質的に含まないフォトクロミック吸収組成物と比べて、フォトクロミック性能試験における高い等級を得るために、フォトクロミック吸収組成物において使用するのに必要な量として、定義される。速度論促進添加剤である材料として、エポキシ含有化合物、可塑剤、有機ポリオールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
操作実施例を除いて、または他に示さない限り、本明細書中で使用される成分または反応条件の量を表現する全ての数は、全ての例において、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。
【0012】
本明細書中で引用される特許および論文の開示は、フォトクロミック化合物、可塑剤、ラクトンポリエステル、安定剤、ポリ(尿素−ウレタン)、ポリマー有機ホスト材料、フォトクロミック組成物(すなわち、フォトクロミック吸収組成物)、フォトクロミック化合物をポリマー基材に組み込む方法およびハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズを製造するための方法に関し、これらはまとめて、本明細書中において、参考として援用される。
【0013】
用語「重量%」が本明細書中でフォトクロミック組成物に関して使用される各々の例において、記載される重量%が、フォトクロミック組成物の全重量に基づくことが理解されるべきである。
【0014】
本発明は、以下を提供する。
1.フォトクロミック吸収組成物であって、以下:
有機フォトクロミック化合物、ならびに、必要に応じて
キャリア、
紫外線安定剤、
紫外線吸収剤、
酸化防止剤、
レオロジー調整剤、および/または
均衡剤
を含み、ここで、改良は、フォトクロミック性能試験を測定した場合、フォトクロミック性能を改善する量の速度論促進添加剤を含む、
フォトクロミック吸収組成物。
2.前記速度論促進添加剤が、エポキシ含有化合物、可塑剤、有機ポリオール、またはこのような速度論促進添加剤の混合物から選択される、項目1に記載の組成物。
3.項目2に記載の組成物であって、前記エポキシ含有化合物が、以下の式I、II、III:
【0015】
【化1】

【0016】
によって表される群またはそれらの混合物から選択され、ここで、
(i)Rが、水素またはC〜Cアルキルであり;
(ii)nが、1、2、3または4から選択される整数であり;
nが、1である場合、
Aは、C〜C20アルキル、置換C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、置換C〜C20シクロアルキル;未置換もしくは置換アリール基、フェニルおよびナフチル;アリール(C〜C)アルキル、置換アリール(C〜C)アルキル、アクリルオキシ、メタアクリルオキシ;−C(O)Y基(ここで、Yは、C〜C20アルキル、C〜Cアルコキシまたはアリールである);または−R−(OR)−OH基もしくは−(OR)−OH基(ここで、Rは、C〜Cアルキレンであり、そしてmは、1〜20の整数である)から選択され;該アルキルおよびシクロアルキル置換基は、カルボキシ、ヒドロキシもしくはC〜Cアルコキシであり、該アリールおよびアリール(C〜C)アルキル置換基は、カルボキシ、ヒドロキシ、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルキルであり;あるいは
nが、2〜4である場合、
Aは、C〜C20アルキレン、置換C〜C20アルキレン、C〜C20シクロアルキレン、置換C〜C20シクロアルキレン;未置換もしくは置換アリーレン基、フェニレンおよびナフチレン;アリール(C〜C)アルキレン、置換アリール(C〜C)アルキレン;−C(O)Z(O)C−基(ここで、Zは、C〜C20アルキレンもしくはアリーレンである);−R−(OR)−基もしくは−(OR)−基(Rおよびmは、前に定義されるものと同一である);フタロイル、イソフタトイル、テレフタロイル;ヒドロキシル−置換フタロイル、ヒドロキシ−置換イソフタロイル、ヒドロキシ置換テレフタロイル;または以下の式:
【0017】
【化2】

【0018】
により表される基から選択され、ここで、RおよびRは、各々、C〜Cアルキル、塩素もしくは臭素であり;pおよびqは、各々、0〜4の整数であり、
【0019】
【化3】

【0020】
は、二価のベンゼン基または二価のシクロへキサンを表し;
【0021】
【化4】

【0022】
が、二価のベンゼン基である場合、Gは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、−(C)−もしくは
【0023】
【化5】

【0024】
であり;または
【0025】
【化6】

【0026】
が、二価のシクロヘキサン基である場合、Gは、−O−、−S−、−CH−、もしくは−C(CH−であり;該アルキレンおよびシクロアルケン置換基は、カルボキシ、ヒドロキシもしくはC〜Cアルコキシであり;該アリーレンおよびアリール(C〜C)アルキレン置換基は、カルボキシ、ヒドロキシ、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルキルであり;そして
(iii)Bは、C〜C20アルキル、置換C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、置換C〜C20シクロアルキル;未置換もしくは置換アリール基、フェニルおよびナフチル;アリール(C〜C)アルキルもしくは置換アリール(C〜C)アルキルから選択され;該アルキルおよびシクロアルキル置換基は、カルボキシ、ヒドロキシもしくはC〜Cアルコキシであり、該アリールおよびアリール(C〜C)アルキル置換基は、カルボキシ、ヒドロキシ、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルキルである、
組成物。
4.項目3に記載の組成物であって、Rが、水素であり;nが、1である場合、Aは、C〜C10アルキル、フェニル、−R−(OR)−OHもしくは−(OR)−OH(Rは、C〜Cアルキレンであり、mは、1〜20の整数である)から選択され、またはnが、2〜4である場合、Aは、C〜C10アルキレン、フェニレン、−R−(OR)−もしくは−(OR)−(Rおよびmは、前に定義したものと同一である);またはフタロイルから選択され;Bは、C〜C10アルキル、フェニルもしくはフェニル(C〜C)アルキルから選択される、
組成物。
5.項目2に記載の組成物であって、前記エポキシ含有化合物が、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、グリシジルフタルイミド、N,N’−ジグリシジルトルイジン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ビスフェノールAもしくは水素付加ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、テレフタル酸のジグリシジルエステル、ジグリシジル1,2,3,6−テトラヒドロフタレート、スピログリコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテルまたはこのようなエポキシ含有化合物の混合物から選択される、
組成物。
6.項目2に記載の組成物であって、前記可塑剤が、アビエテート、アセテート、アジパート、アゼラート、ベンゾアート、ビフェニル、カプリラート、シトラート、ドデカンジオエート、エーテル、フマレート、グルタレート、グリコレート、イソフタレート、ラウレート、マレアート、ミリステート、オレアート、パルミテート、パラフィン誘導体、ホスフェート、フタレート、リチノレート、セバケート、ステアレート、スルホンアミド、タータラート、テレフタレート、トリメリテート、またはこのような可塑剤の混合物から選択される、組成物。
7.項目2に記載の組成物であって、前記有機ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アミド含有ポリオール、多価ポリビニルアルコール、またはこのようなポリオールの混合物から選択される、組成物。
8.項目2に記載の組成物であって、前記速度論促進添加剤が、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ジグリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタレート、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(エチレングリコール)モノラウレート、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、ジグリシジル−1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラヒドロフランジオール、ポリエチレングリコールジベンゾエートまたはこのような速度論促進添加剤の混合物から選択される、組成物。
9.前記フォトクロミック化合物が、400〜700nmの範囲内に、少なくとも1本の活性化された吸収極大を有する、項目1に記載の組成物。
10.項目9に記載の組成物であって、前記フォトクロミック化合物が、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピラン、キノピラン、フェナントロピラン、オキサジン、金属ジチゾネート、フルギド、フルギミド、またはそれらの混合物から選択される、組成物。
11.前記キャリアが、溶媒、多価樹脂、またはそれらの混合物から選択される、項目1に記載の組成物。
12.項目11に記載の組成物であって、前記キャリアが、水、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、n−メチルピロリドン、2−エトキシエチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、プロピオン酸メチル、エチレングリコール、ヒドロキシ(C〜C)アルキルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチルアール、ポリプロピオン酸ビニル、セルロースアセテートブチレート、またはこのようなキャリアの混合物から選択される、組成物。
13.有機ポリマーホスト材料にフォトクロミックを付与するプロセスであって、有機フォトクロミック化合物は、フォトクロミック組成物からの有機ポリマーホスト材料に吸収され、改良は、有機フォトクロミック化合物、およびフォトクロミック性能試験を測定した場合にフォトクロミック性能を改善する量の速度論促進添加剤を含む、フォトクロミック組成物を利用する工程を包含する、プロセス。
14.前記速度論促進添加剤が、エポキシ含有化合物、可塑剤、有機ポリオール、またはそれらの混合物から選択される、項目13に記載のプロセス。
15.項目14に記載のプロセスであって、前記エポキシ含有化合物が、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、グリシジルフタルイミド、N,N’−ジグリシジルトルイジン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ビスフェノールAもしくは水素付加ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、テレフタル酸のジグリシジルエステル、ジグリシジル1,2,3,6−テトラヒドロフタレート、スピログリコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテルまたはこのようなエポキシ含有化合物の混合物から選択される、
プロセス。
16.項目14に記載のプロセスであって、前記可塑剤が、アビエテート、アセテート、アジパート、アゼラート、ベンゾアート、ビフェニル、カプリラート、シトラート、ドデカンジオエート、エーテル、フマレート、グルタレート、グリコレート、イソフタレート、ラウレート、マレアート、ミリステート、オレアート、パルミテート、パラフィン誘導体、ホスフェート、フタレート、リチノレート、セバケート、ステアレート、スルホンアミド、タータラート、テレフタレート、トリメリテート、またはこのような可塑剤の混合物から選択される、プロセス。
17.項目14に記載のプロセスであって、前記有機ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アミド含有ポリオール、多価ポリビニルアルコール、またはこのようなポリオールの混合物から選択される、プロセス。
18.前記フォトクロミック組成物が、溶媒、多価樹脂、またはそれらの混合物から選択されるキャリアをさらに含む、項目13に記載のプロセス。
19.前記フォトクロミック組成物が、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、レオロジー調整剤、均衡剤、またはそれらの混合物をさらに含む、項目13に記載のプロセス。
20.項目13に記載のプロセスであって、前記有機ポリマーホスト材料が、ポリ(ウレア−ウレタン)、ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)、ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチルアール、ならびにポリオール(アリルカーボネート)モノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールメタクリレートモノマー、アルコキシル化多価アルコールアクリレートモノマー、ジアリリデンペンタエリスリトールモノマー、ウレタンアクリレートモノマー、ビニルベンゼンモノマー、スチレンモノマー、およびこのようなモノマーの混合物のポリマーから選択される、
プロセス。
21.項目13に記載のプロセスにより作製された、製品。
22.項目14に記載のプロセスにより作製された、製品。
23.項目18に記載のプロセスにより作製された、製品。
24.項目19に記載のプロセスにより作製された、製品。
25.項目20に記載のプロセスにより作製された、製品。
【0027】
本発明の実施において使用され得るエポキシ含有化合物は、以下の図式I、II、IIIによって表される化合物またはそれらの混合物から選択され得る。
【0028】
【化7】

【0029】
図式I、IIおよびIIIにおいて、Rは水素またはC〜Cアルキルである。文字のnは、1、2、3または4から選択される整数である。図式Iにおいてnが1に等しい場合、AはC〜C20アルキル、置換されたC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、置換されたC〜C20シクロアルキル;非置換または置換のアリール基、フェニルおよびナフチル;アリール(C〜C)アルキル、置換されたアリール(C〜C)アルキル、アクリルオキシ、メタクリルオキシ;−C(O)Y基(ここで、Yは、C〜C20アルキル、C〜Cアルコキシまたはアリール);または−R−(OR)−OH基もしくは−(OR)−OH基(ここで、RはC〜Cアルキレンであり、mは1〜20の整数である)から選択される。このアルキル基およびシクロアルキル基の置換基は、カルボキシ、ヒドロキシおよび/またはC〜Cアルコキシである。アリール基およびアリール(C〜C)アルキル基の置換基は、カルボキシ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシおよび/またはC〜Cアルキルである。nが2〜4の場合、Aは、C〜C20アルキレン、置換されたC〜C20アルキレン、C〜C20シクロアルキレン、置換されたC〜C20シクロアルキレン;非置換または置換のアリーレン基、フェニレンおよびナフチレン;アリール(C〜C)アルキレン、置換されたアリール(C〜C)アルキレン;−C(O)Z(O)C−基(ここで、Zは、C〜C20アルキレンまたはアリーレンである);−R−(OR)−基または−(OR)−基(ここで、Rおよびmは、本明細書中以下に定義されるものと同じである);フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル、ヒドロキシ置換したフタロイル、ヒドロキシ置換したイソフタロイル、ヒドロキシ置換したテレフタロイル;または以下の図式IV:
【0030】
【化8】

【0031】
によって表される基(ここで、RおよびRは、各々、C〜Cアルキル、塩素または臭素であり;pおよびqは、各々0〜4の整数であり;
【0032】
【化9】

【0033】
は二価のベンゼン基または二価のシクロヘキサン基を表し;
【0034】
【化10】

【0035】
が二価のベンゼン基である場合、
Gは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、−(C)−または
【0036】
【化11】

【0037】
であり;あるいは
【0038】
【化12】

【0039】
が二価のシクロヘキサン基である場合、
Gは、−O−、−S−、−CH−、または−C(CH−である)から選択される。このアルキレン基およびシクロアルキレン基の置換基は、カルボキシ、ヒドロキシおよび/またはC〜Cアルコキシである。アリール基およびアリール(C〜C)アルキレン基の置換基は、カルボキシ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシおよび/またはC〜Cアルキルである。
【0040】
図式IIおよびIIIにおいて、Bは、C〜C20アルキル、置換されたC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、置換されたC〜C20シクロアルキル;非置換または置換のアリール基、フェニルおよびナフチル;アリール(C〜C)アルキルまたは置換されたアリール(C〜C)アルキルから選択される。このアルキル置換基およびシクロアルキル置換基は、カルボキシ、ヒドロキシおよび/またはC〜Cアルコキシである。このアリールおよびアリール(C〜C)置換基は、カルボキシ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシおよび/またはC〜Cアルキルである。
【0041】
1つの考慮された実施形態において、Rは水素またはメチルである。nが1である場合、AはC〜C20アルキル、ヒドロキシル置換したC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、ヒドロキシ置換したC〜C20シクロアルキル、フェニル、ナフチル、アリール(C〜C)アルキル;基−C(O)Y(ここで、Yは、C〜C20アルキル、C〜Cアルコキシまたはアリールである);−R−(OR)−OH基または−(OR)−OH基(ここで、Rは、C〜C)アルキレンであり、mは1〜20の整数である);アクリルオキシまたはメタクリルオキシから選択される。nが2〜4である場合、Aは、C〜C20アルキレン、ヒドロキシル置換したC〜C20アルキレン、C〜C20シクロアルキレン、フェニレン、ナフチレン、アリール(C〜C)アルキレン;−R−(OR)−基または−(OR)−基(ここで、Rおよびmは、以前に定義されるものと同じである);フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル、または図式IVによって表される基(ここで、RおよびRは、各々、C〜Cアルキル、塩素または臭素であり;pおよびqは各々0〜4の整数であり;
【0042】
【化13】

【0043】
は、二価のベンゼン基または二価のシクロヘキサン基を表し;
【0044】
【化14】

【0045】
が二価のベンゼン基である場合、Gは−O−、−C(O)−、−CH−、または−(C)−であり、
【0046】
【化15】

【0047】
が二価のシクロヘキサン基である場合、Gは−O−または−CH−である)から選択される。
【0048】
Bは、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル;非置換のアリール基およびヒドロキシル置換したアリール基、フェニルおよびナフチル;またはアリール(C〜C)アルキルから選択される。
【0049】
別の考慮された実施形態において、Rは水素である。nが1である場合、Aは、C〜C10アルキル、フェニル、−R−(OR)−OH基、または−(OR)−OH基から選択され、ここで、RはC〜Cアルキレンであり、mは1〜20の整数である。nが2〜4である場合、Aは、C〜C10アルキレン、フェニレン、−R−(OR)−基または−(OR)−基(ここで、Rおよびmは、本明細書中以前に定義されるものと同じである。);およびフタロイルから選択される。Bは、C〜C10アルキル、フェニルまたはフェニル(C〜C)アルキルから選択される。
【0050】
分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物の例として、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、グリシジルフタルイミド、N,N−ジグリシジルトルイジン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ビスフェノールAまたは水素添加したビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、テレフタル酸のジグリシジルエステル、ジグリシジル1,2,3,6−テトラヒドロフタレート、スピログリコールジグリシジルエーテルおよびヒドロキノンジグリシジルエーテルが挙げられる。このような化合物は、個々に、または混合物として合わせて、使用され得る。
【0051】
可塑剤は、一般に、プラスチックを作製する当該分野において公知である。代表的には、可塑剤は、可撓性、作業性能、または伸展性を増加するために、重合または配合の間に、プラスチックまたはエラストマーへ組み込まれる。本発明の可塑剤として、上記のエポキシ含有化合物および本明細書以下に記載された種々の有機ポリオールを除く、一般的に公知のクラスの可塑剤が挙げられる。可塑剤のクラスの例は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第20巻,439〜458頁、1992中のIbert Mellan、Noyes Development Corporation、1967によるPlasticizer Evaluation and PerformanceのTable 117、Chemical Names of Plasticizers and their Brand Names、140−188頁、およびModern Plastics Encyclopedia、Mid−November 1998 Issue,第75巻、第12号、C−105〜C−115頁に列挙されている。
【0052】
本明細書中において、使用するために考慮された可塑剤の種々のクラスとして、アビエチン酸エステル(例えば、アビエチン酸メチル);酢酸エステル(例えば、三酢酸グリシジル);アジピン酸エステル(例えば、アジピン酸ジブチル)、アゼライン酸エステル(例えば、アゼライン酸ジイソオクチル(diisoocytyl azelate));安息香酸エステル(例えば、二安息香酸ポリエチレングリコール);ビフェニル(例えば、樟脳);カプリル酸エステル(例えば、ジカプリル酸ブタンジオール);クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル);ドデカン二酸エステル(例えば、ドデカン二酸ジオクチル);エーテル(例えば、ジベンジルエーテル);フマル酸エステル(フマル酸ジオクチル);グルタル酸エステル(例えば、グルタル酸ジイソデシル);グリコール酸エステル(例えば、ジグリコール酸ジ(2−エチルヘキシル));イソフタル酸エステル(例えば、イソフタル酸ジメチル);ラウリン酸エステル(例えば、ポリ(エチレングリコール)モノラウレート);マレイン酸エステル(例えば、マレイン酸ジブチル);ミリスチン酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル);オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸メチル);パルミチン酸エステル(例えば、パルミチン酸テトラヒドロフルフリル);パラフィン誘導体(例えば、クロメネート(chlomenate)パラフィン);リン酸エステル(例えば、リン酸(2−エチルヘキシル)ジフェニル);フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジオクチル);リシノール酸エステル(例えば、リシノール酸メトキシエチル);セバシン酸エステル(例えば、セバシン酸ジエチル);ステアリン酸エステル(例えば、ペンタクロロステアリン酸メチル);スルホンアミド(例えば、トルエンスルホンアミド);酒石酸エステル(例えば、酒石酸ブチル);テレフタル酸エステル(例えば、テレフタル酸ジオクチル);トリメリト酸エステル(例えば、トリメリト酸トリオクチル)ならびにこのような可塑剤の混合物が挙げられる。
【0053】
本発明において使用され得る有機ポリオールの例としては、以下が挙げられる:(a)ポリエステルポリオール;(b)ポリエーテルポリオール;(c)アミド含有ポリオール;(d)ポリビニル多価アルコール;および(e)このようなポリオールの混合物。1つの企図される実施形態では、この有機ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはこれらの混合物から選択される。
【0054】
ポリエステルポリオールは、一般的に知られている。これらは、当該分野で公知の低分子量ジオール、トリオールおよび多価アルコール(必要に応じて一価アルコールと組み合わされる)を、ポリカルボン酸と共に利用する従来の技術により調製される。このような低分子量ポリオールの例としては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールが挙げられる。適切なポリカルボン酸の例としては、以下が挙げられる:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸およびこれらの混合物。上記の酸が存在する場合、これらの無水物もまた使用され得、そして用語「ポリカルボン酸」に含まれる。トリオールまたは多価アルコールが使用される場合、モノカルボン酸(例えば、酢酸および/または安息香酸)は、ポリエステルポリオールの調製において、およびこのようなポリエステルポリオールが所望されるかもしれないいくつかの目的のために使用され得る。
【0055】
さらに、ポリエステルポリオールは、本明細書において、脂肪酸で修飾されたポリエステルポリオールまたは脂肪酸グリセリド油(すなわち、このような修飾部を含有する従来のアルキドポリオール)を含むと理解される。さらに、酸と同様の様式で反応してポリエステルポリオールを形成する特定の材料はまた有用である。このような材料としては、ラクトン(例えば、カプロラクトン、プロピオラクトンおよびブチロラクトン)、およびヒドロキシ酸(例えば、ヒドロキシカプロン酸およびジメチロールプロピオン酸)が挙げられる。ラクトンポリエステルは、米国特許第3,169,945号に記載される。市販のラクトンポリエステルまたはポリカプロラクトンポリオールは、PLACCEL(Daicell
Co.Ltd.)およびTONE(Union Carbide)の商品名で販売されている。ポリカプロラクトンポリオールの具体例は、ε−カプロラクトンおよびポリオール(例えば、ジオールまたはトリオール)の反応により得られる物質である。
【0056】
ポリエーテルポリオールは、一般的に知られている。ポリエーテルポリオールの例としては、種々のポリオキシアルキレンポリオール、ポリアルコキシル化ポリオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール)、およびこれらの混合物が挙げられる。酸または塩基触媒付加を使用してアルキレンオキシド、またはアルキレンオキシド混合物を、多価アルコールイニシエータまたは多価アルコールイニシエータの混合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなど)と縮合させることにより、周知の方法に従って、ポリオキシアルキレンポリオールを調製し得る。例示的なアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、アラルキレンオキシド(例えば、スチレンオキシド)およびハロゲン化アルキレンオキシド(例えば、トリクロロブチレンオキシド)などが挙げられる。より好ましいアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドまたはランダムオキシアルキル化もしくは逐次オキシアルキル化を使用したそれらの混合物が挙げられる。このようなポリオキシアルキレンポリオールの例としては、ポリオキシエチレン(すなわち、ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレン(すなわち、ポリプロピレングリコール)が挙げられる。
【0057】
ポリアルコキシル化ポリオールは、以下の図式V:
【0058】
【化16】

【0059】
で表され得、式中、aおよびbは、それぞれ正の数であり、aとbとの合計は、2〜70であり、RおよびRは、それぞれ、水素、メチルまたはエチルであり、好ましくは水素またはメチルであり、そしてDは、以下から選択される二価の連結基である:直鎖アルキレンまたは分枝鎖アルキレン(通常1〜8の炭素原子を含有する)、フェニレン、C〜Cアルキル置換フェニレンまたは上述の図式IVで表される基。このような物質は、当該分野で周知の方法により調製され得る。このような一般的に使用される方法の1つは、ポリオール(例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール)を、オキシラン含有物質(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、α−ブチレンオキシドまたはβ−ブチレンオキシド)と反応させて、ヒドロキシ官能基を有するエトキシル化ポリオール、プロポキシル化ポリオール、ブトキシル化ポリオールと一般的に呼ばれる物質を形成する工程を包含する。
【0060】
ポリアルコキシル化ポリオールを調製する際に使用するために適切なポリオールの例としては、以下が挙げられる:低分子量ポリオール;フェニレンジオール(例えば、オルト、メタ、およびパラジヒドロキシベンゼン);アルキル置換フェニレンジオール(例えば、2,6−ジヒドロキシトルエン、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、および4−ヒドロキシベンジルアルコール);ジヒドロキシビフェニル(例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよび2,2’−ジヒドロキシビフェニル);ビスフェノール(例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール);4,4’−オキシビスフェノール;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(dihydroxybenzenephenone);4,4’−チオビスフェノール;フェノールフタレイン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;4,4’−(1,2−エテンジイル)ビスフェノール;および4,4’−スルホニルビスフェノール;ハロゲン化ビスフェノール(例えば、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)および4,4’−イソプロピリデンビス(2,3,5,6−テトラクロロフェノール));ならびにビスシクロヘキサノール(これは、対応するビスフェノールの水素添加により調製され得る)(例えば、4,4’−イソプロピリデンービスシクロヘキサノール;4,4’−オキシビスシクロヘキサノール;4,4’−チオビスシクロヘキサノール;およびビス(4−ヒドロキシシクロヘキサノール)メタン)。
【0061】
ポリエーテルポリオールはまた、一般的に知られているポリ(オキシテトラメチレン)ジオール、またはルイス酸触媒(例えば、三フッ化ホウ素、塩化すず(IV)および塩化スルホニル)の存在下でのテトラヒドロフランの重合により調製されるポリテトラヒドロフランジオールを含む。
【0062】
1つの企図される実施形態において、ポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリアルコキシル化ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオールまたはこれらの混合物の群から選択される。
【0063】
アミド含有ポリオールは、一般的に知られており、そして代表的には、二酸またはラクトンおよび低分子量ポリオール(例えば、脂肪族ジオール、トリオールなど)と、本明細書以下に記載されるようなジアミンまたはアミノアルコールとの反応から調製される。例えば、アミド含有ポリオールは、ネオペンチルグリコール、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンの反応により調製され得る。このアミド含有ポリオールはまた、例えば、カルボキシレート、カルボン酸、またはラクトンと、アミノアルコールとの反応によりアミノリシスにより調製され得る。適切なジアミンおよびアミノアルコールの例としては、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、フェニレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0064】
ポリビニル多価アルコールは、一般的に知られており、そして例えば、適切なイニシエータの存在下での酢酸ビニルの重合、次いでこのアセテート部分の少なくとも一部の加水分解により調製され得る。加水分解プロセスにおいて、ポリマー骨格に直接結合したヒドロキシル基が、形成される。ホモポリマーに加えて、酢酸ビニルおよびモノマー(例えば、塩化ビニル)のコポリマーが調製され得、そして同様の様式で加水分解されてポリビニル多価アルコール−ポリ塩化ビニルコポリマーを形成し得る。
【0065】
フォトクロミック組成物において使用される速度論促進添加剤(kinetic enhancing additive)の量は、その量がフォトクロミック性能を改善する量であれば、重要ではない。このような量は、フォトクロミック組成物の0.1重量%〜99.9重量%の範囲であり得る。1つの企図される実施形態において、速度論促進添加剤の量は、フォトクロミック組成物の1〜75重量%の範囲である。別の企図される実施形態において、速度論促進添加剤の量は、2〜50重量%の範囲である。なおさらなる企図される実施形態において、速度論促進添加剤の量は、3〜30重量%の範囲である。使用される速度論促進添加剤の量は、記載される範囲を含めて、これらの値の任意の組合せの範囲(例えば、0.15〜99.85重量%)であり得るが、ただし、使用される量は、フォトクロミック性能を改善する量である。
【0066】
フォトクロミック組成物への速度論促進添加剤の添加から生じるフォトクロミック性能の改善は、フォトクロミック性能試験において、速度論促進添加剤を含まない組成物よりも高い評点(rating)であることにより証拠付けられる。改善パーセントは、速度論促進添加剤を含まない組成物の評点を、速度論促進添加剤を含む組成物の評点から減算し、その結果を速度論促進添加剤を含まない組成物の評点で割って、100をかけることにより決定され得る。改善パーセントが高いほど、速度論促進添加剤の効果は大きく、そしてより好ましい結果である。例えば、10、15、20、30、50、90、100、200、500、1000、1500およびより高い改善パーセントは、1〜10未満の改善パーセントより望ましい。
【0067】
本発明のフォトクロミック組成物において使用されるフォトクロミック化合物は、単独でかまたは1種以上の他の適切な補完的な有機フォトクロミック化合物(すなわち、400〜700ナノメートルの範囲内に少なくとも1つの活性化吸収極大を有し、そして活性化された場合に適切な色(hue)へと発色する有機フォトクロミック化合物)との組合せで使用され得る。
【0068】
補完的な有機フォトクロミック化合物としては、米国特許第4,719,296号;同第5,166,345号;同第5,236,958号;同第5,252,742号;同第5,359,085号;および同第5,488,119号に開示されるような重合可能なフォトクロミック化合物が挙げられ得る。補完的有機フォトクロミック化合物のさらなる例としては、ナフトピラン(例えば、ナフト[1,2−b]ピランおよびナフト[2,1−b]ピラン)、キノピラン、インデノナフトピラン、オキサジン(例えば、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン)、フェナントロピラン(例えば、置換2H−フェナントロ[4,3−b]ピランおよび3H−フェナントロ[1,2−b]ピラン化合物)、ベンゾピラン(例えば、ピラン環の2位に置換基を有するベンゾピラン化合物)、ならびにこのようなフォトクロミック化合物の混合物が挙げられる。このようなフォトクロミック化合物は、以下に記載される:米国特許第3,562,172号;同第3,567,605号;同第3,578,602号;同第4,215,010号;同第4,342,668号;同第4,816,584号;同第4,818,096号;同第4,826,977号;同第4,880,667号;同第4,931,219号;同第5,066,818号;同第5,238,981号;同第5,274,132号;同第5,384,077号;同第5,405,958号;同第5,429,774号;同第5,458,814号;同第5,466,398号;同第5,514,817号;同第5,552,090号;同第5,552,091号;同第5,565,147号;同第5,573,712号;同第5,578,252号;同第5,637,262号;同第5,645,767号;同第5,656,206号;同第5,658,500号;同第5,658,501号;同第5,674,432号;および同第5,698,141。スピロ(インドリン)ピランはまた、Techniques in Chemistry,Volume III,「Photochromism」,第3章,Glenn H.Brown,Editor,John Wiley and Sons,Inc.,New York,1971の文章中に記載される。
【0069】
企図される他の補完的フォトクロミック物質は、金属−ジチゾネート(dithiozonate)(例えば、例えば、米国特許第3,361,706号に記載される水銀ジチゾネート(dithizonate));および米国特許第4,931,220号(第20欄第5行〜第21欄第38行)に記載される、フルギドおよびフルギミド(fulgimide)(例えば、3−フリルおよび3−チエニルフルギドおよびフルギミド))である。
【0070】
本発明のフォトクロミック物品は、1つのフォトクロミック化合物または所望の場合フォトクロミック化合物の混合物を含み得る。
【0071】
本明細書中に記載されるフォトクロミック物質の各々は、フォトクロミック組成物が結合されるポリマー基材が、所望の結果としての色(例えば、フィルタリングされていない日光で活性化された場合の実質的に中間の色、すなわち、活性化されたフォトクロミック化合物の色にできるだけ近い中間色)を示すような量(または比率)で使用され得る。中間灰色および中間褐色が好ましい。中間色および色を記述する方法のさらなる考察は、米国特許第5,645,767号第12欄第66行〜第13欄第19行に見出され得る。
【0072】
ポリマー有機ホスト物質中に取り込まれる、フォトクロミック組成物において使用されるフォトクロミック化合物の量は、活性化の際に裸眼で識別可能なフォトクロミック効果を生じるのに十分な量が使用されるならば、重要ではない。一般的に、このような量は、フォトクロミック量として記載され得る。使用される特定の量は、しばしば、その照射の際に所望される色の強度、およびフォトクロミック組成物を組み込むために使用される方法に依存する。代表的には、取り込まれるフォトクロミック化合物が多いほど、特定の限界まで色の強度が大きくなる。
【0073】
上述の使用されるフォトクロミック化合物の相対量は、変化し、かつこのような化合物の活性化種の色の相対強度、所望される最終的な色、およびフォトクロミック組成物のポリマー基材への適用方法に部分的に依存する。代表的な商業的インビビションプロセスにおいて、受容ポリマー基材中に取り込まれるフォトクロミック化合物の総量は、フォトクロミック化合物が取り込まれるかまたは塗布される表面1平方センチメートルあたり約0.05〜約2.0ミリグラム、例えば、0.2〜約1.0ミリグラムの範囲であり得る。
【0074】
フォトクロミック組成物中に組み込まれるフォトクロミック化合物の量は、その組成物の重量に基づいて、0.1〜99.9重量%の範囲であり得る。フォトクロミック組成物が速度論促進添加剤とフォトクロミック化合物との組み合わせである一連の企図される実施形態において、フォトクロミック化合物の量は、25〜99重量%、50〜98重量%、または70〜97重量%の範囲である。本発明のフォトクロミック組成物において使用されるフォトクロミック化合物の量は、記載される範囲を含むこれらの値の任意の組合せの間の範囲であり得る(例えば、0.15〜99.85重量%)。
【0075】
3種以上の成分がフォトクロミック組成物中に存在する別の一連の企図される実施形態において、フォトクロミック化合物の量は、速度論促進添加剤の量に等しい(例えば、各々5重量%)か;速度論促進添加剤の量より少ない(例えば、4重量%のフォトクロミックおよび16重量%の速度論促進添加剤)か;または速度論促進添加剤の量より多い(例えば、40重量%のフォトクロミック化合物および10重量%の速度論促進添加剤)。このフォトクロミック組成物中の全成分の合計は、100%である。
【0076】
本発明の任意のキャリアは、溶媒(すなわち、水性溶媒、有機溶媒またはこのような溶媒の混合物)、ポリマー樹脂、または溶媒とポリマー樹脂との混合物であり得る。溶媒−キャリアの例としては、水、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、n−メチルピロリドン、2−エトキシエチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、プロピオン酸メチル、エチレングリコール、アセトニトリル、ブタノール、メチルイソブチルケトン、メチルクロロホルム、イソプロパノールおよびこのような溶媒の混合物が挙げられる。ポリマー樹脂の例としては、ヒドロキシ(C〜C)アルキルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP);5〜50部のヒドロキシ(C〜C)アルキルセルロースと95〜50部のPVPとの混合物、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルと塩化ビニリデンとのコポリマー、ポリプロピオン酸ビニル、酢酸酪酸セルロース、およびこのようなポリマー樹脂の混合物が挙げられる。
【0077】
キャリアが溶媒である場合、フォトクロミック組成物は、単一工程インビビションプロセスまたは高沸点液体を含み得る多工程プロセス、および米国特許第5,789,015号に記載されるような超音波エネルギーの適用を使用して、ポリマー基材表面上に付着され得る;フォトクロミック組成物は、米国特許第4,286,957号に記載されるように、ポリマー基材上に直接置かれた一枚の紙のような一時的支持体に塗布され得る;フォトクロミック組成物は、無極性溶媒を利用し得、この無極性溶媒は、米国特許第5,975,696号に記載されるような2層浸漬浴において使用される;あるいは、フォトクロミック組成物は、フォトクロミック組成物をポリマー基材中に移動させるための、当該分野で公知の種々の方法で使用され得る。
【0078】
フォトクロミック組成物中のキャリアが、ポリマー樹脂を含む場合、この樹脂は、組成物のその他の成分のためのフィルム形成バインダーとして本質的に作用する。キャリアとその他の成分との間の親和性(すなわち、フォトクロミック化合物および速度論促進添加剤のキャリア中の溶解度)は、均一な溶液を形成し、かつ上述の濃度で樹脂フィルムからこれらの化合物を容易に除去または移動させることを可能にするのに十分であるべきである。また、このポリマー樹脂は、表面上に傷を残さずに、基材の表面から容易に除去され得るように、塗布されるポリマー基材に強く接着するべきではない。
【0079】
アジュバント物質はまた、フォトクロミック組成物中に組み込まれ得る。例えば、紫外線吸収剤および/または安定化剤は、フォトクロミック物質の疲労耐性を改善するために、フォトクロミック組成物中に含まれ得る。以下のようなアジュバントが企図される:ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、酸化防止剤(例えば、ポリフェノール酸化防止剤)、紫外線吸収剤(例えば、非対称ジアリールオキサルアミド(diaryloxalamide)(オキサニリド(oxanilide))化合物、および一重項酸素クエンチャー(例えば、有機リガンドとのニッケルイオン「錯体(complete)、またはこのような物質の混合物。これらは、単独で使用され得るか、または本明細書以下に記載されるさらなる従来の成分と組み合わせて使用され得る。このような安定化剤は、米国特許第4,720,356号、同第5,391,327号および同第5,770,115号に記載される。
【0080】
本発明のプロセスにおいて使用される、フォトクロミック組成物は、この組成物または得られる層に所望の物理的特徴を付与するさらなる従来の成分;このフォトクロミック組成物を基材に塗布するために使用されるプロセスのために必要とされるさらなる従来の成分;および/またはこの組成物から作製される層を増強するさらなる従来の成分を、さらに含み得る。このようなさらなる成分としては、レオロジー制御剤(例えば、シリカ)およびレベリング剤(leveling agent)(例えば、界面活性剤)が挙げられる。
【0081】
フォトクロミック組成物(すなわち、フォトクロミック化合物、速度論増強(kinetic enhancing)添加剤および任意の成分)は、任意の従来の技術によって調製され得る。例えば、個々の成分が混合され得、そしてニートで使用され得るか、または適切な溶媒に溶解され得、その後合わせられ得るか、または成分の各々が連続的に溶解され得るか、または(必要に応じて加熱されて)適切なキャリアに組み込まれ得る。
【0082】
フォトクロミック組成物は、少なくとも1つの主要な面(すなわち、ポリマーホストのインビビション受容表面の厚みに対応する面以外の、平坦な面または湾曲した面)に、斑点のないコーティングまたは均一な厚みのフィルムを製造するために適切な当該分野において公知の技術によって、塗布される。1つの意図される実施形態において、この組成物は、得られるフィルムが、形成されるとすぐに実質的に乾燥する(すなわち、容易に揮発可能な溶媒が、この組成物がプラスチックホストの受容表面に塗布される際に実質的に揮発し、これによって実質的に乾燥したフィルムを残す)ような様式で、塗布される。使用され得る塗布技術としては、スプレー、ブラッシング、カーテンコーティング、スピンコーティング、浸漬コーディング、および展色ブレードまたはワイヤバーの使用が挙げられる。
【0083】
フォトクロミック組成物をポリマーホストに塗布する前に、この組成物が塗布されるポリマーの表面は、好ましくは、洗浄される。洗浄は、この表面を水性媒体(例えば、セッケン水)で洗浄して、埃および汚れを除去すること、この表面を有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)で洗浄して、この表面上に存在する任意の有機フィルムを除去すること;および/またはこのプラスチック材料の表面上に存在する任意の静電荷を除去することによって、達成され得る。静電荷の除去は、表面の上の空気をイオン化させ、これによって静電荷が流れること、または他の様式で中和されることを可能にする、伝導性経路を作製する、市販の装置によって達成され得る。
【0084】
フォトクロミック組成物が塗布されるプラスチック材料の表面は、加熱工程の間に、フォトクロミック化合物のインビビションおよび速度論増強添加剤を受け入れるべきである。レセプター表面がインビビションに耐えられない場合、この表面は、ポリマーホストの表面下へのフォトクロミック組成物の改善された拡散を可能にするように(例えば、この表面を物理的にかまたは化学的にエッチングすることによって)処理され得る。受け入れ表面は、通常、ポリマーの形成の間に、このポリマーをわずかに過少硬化させることによって、達成され得る。このような技術は、重合の分野において通常である。
【0085】
ポリマー有機ホスト材料の表面へのフォトクロミック組成物の塗布に続いて、実質的に乾燥したフィルムまたはコーティングが、完全に乾燥される。乾燥は、空気中室温で好都合に実施され得る;しかし、樹脂フィルムまたはコーティング内でのフォトクロミック化合物の結晶化を回避する、他の乾燥条件が、場合が認める場合、使用され得る。その後、コーティングされたポリマー物品は、使用されるフォトクロミック化合物の沸点より低い温度で、実質的に均一に加熱される。加熱は、コーティングされたポリマーホストの実質的に均一な加熱を生じる任意の好都合な技術によって、達成され得る。1つの意図される実施形態において、加熱は、従来の熱風循環オーブンにおいて達成され、これは、均一な加熱を可能にし、従って、ポリマーホスト内への、フォトクロミック化合物および速度論増強添加剤の移動のための一定の駆動力を可能にする。加熱はまた、減圧において、または不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)を使用して、達成され得る。
【0086】
コーティングされたポリマー物品が加熱される温度は、変化し、そして利用される特定のフォトクロミック化合物および速度論増強添加剤の沸点および蒸気圧、ならびに合成ポリマー物品の軟化温度に依存する。このような温度は、好ましくは、フォトクロミック化合物および速度論増光添加剤の沸点の近くであるがそれより低く、そして合成ポリマー物品の軟化温度より低いべきである。さらに、このような温度(すなわち、フォトクロミック移動または取り込み温度)は、フォトクロミック化合物、および速度論増強添加剤の分解(熱分解)を回避するようなものであるべきである。従って、選択される移動温度は、フォトクロミック化合物および速度論増強添加剤の蒸気圧を、これらの化合物の有意な分解およびポリマーホストの軟化なしに、ポリマーホストへのその移動を可能にするに十分に上昇させるために十分である。
【0087】
速度論増強添加剤およびフォトクロミック化合物(例えば、クロメン系フォトクロミック化合物)の沸点および蒸気圧は、この化合物およびそれらの置換基の性質に依存して変化するので、全てのフォトクロミック組成物に適用可能な1つの温度範囲は、記載され得ない。しかし、上記要件を考慮して、当業者は、コーティングされたポリマー物品を加熱するための適切な温度を容易に決定し得る。フォトクロミック化合物および速度論増強添加剤の沸点より5℃と50℃との間で低い温度の移動温度が、これらの化合物の有意な分解がこのような温度において起こる場合を除いて、考慮される。一般に、インビビションの分野において、有機フォトクロミック化合物およびポリマーレンズに関して使用される温度は、100℃と160℃との間である。1つの意図される実施形態において、フォトクロミック化合物および他の移動可能な成分の沸点より5℃と10℃との間で低い移動温度が、使用される。
【0088】
コーティングされたポリマー物品は、フォトクロミック化合物のかなりの部分(すなわち、フォトクロミック量)およびフォトクロミック性能を改善する量の速度論増強添加剤が、プラスチック物品の表面の下に拡散し、そして浸透することを可能にするために十分な時間、上記移動温度に維持される。代表的に、商業的なインビビションプロセスにおける加熱時間は、移動温度において、1時間〜12時間、通常は4時間〜9時間である。
【0089】
フォトクロミック化合物および速度論増強添加剤が、ポリマーホストの表面に接着された樹脂フィルムまたはコーティングからポリマーホスト材料へと移動する機構は、確実には確立されていない。熱拡散、昇華および濃縮、または上記機構の組み合わせが、移動を達成させ得ることが仮定される。特定の機構が何であれ、フォトクロミック化合物および速度論増強添加剤は、ポリマー基材(通常はその表面下の領域)に浸透し、そしてポリマーホスト材料内に組み込まれる。この様式で、フォトクロミック量のフォトクロミック物質およびフォトクロミック性能改善量の速度論増強添加剤は、プラスチックホストの平坦な表面内に、この表面を横切って移動する。
【0090】
フォトクロミックおよび速度論増強添加剤の、ポリマー物品内への移動に続いて、コーティングされたポリマーは、例えば、室温に、冷却され、そして引き続いて、そのフォトクロミック化合物および速度論増強添加剤の濃度が減少した残余の樹脂フィルムが、ポリマーホストの表面から除去される。フォトクロミック化合物および速度論増強添加剤が消耗されたフィルムの除去は、任意の適切な技術;好ましくは、プラスチックの表面の光学的特性を損なわない技術によって達成され得る。好都合には、消耗されたフィルムは、このフィルムを適切な溶媒(例えば、セッケン水または有機溶媒(例えば、トリクロロエチレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン−トルエン混合物)、または他の溶媒(例えば、アセトン、二塩化エチレン、クロロホルムおよびクロロベンゼン))に接触させることによって、このポリマー基材から剥がされる。フォトクロミック組成物を調製するために使用されたものと同じ溶媒が、残余の樹脂フィルムを除去するために、使用され得る。
【0091】
フィルムまたはコーティングを有機溶媒と接触させるための適切な方法は、蒸気脱脂ユニットにおける方法であり、ここで、コーティングされた基材は、選択された溶媒の蒸気に曝露され、この蒸気が、ポリマー材料の表面に凝縮して流れ、これによって、フォトクロミックおよび速度論増強添加剤が消耗された樹脂フィルムまたはコーティングを、この基材から洗い流す。あるいは、樹脂フィルムまたはコーティングは、ポリマー基質を溶媒の浴に浸漬させること、コーティングされた表面に溶媒をスプレーすること、またはフィルムもしくはコーティングを基材から物理的に剥がすことによって、除去され得る。フォトクロミックおよび速度論増強添加剤が消耗または消費されたフィルムまたはコーティングがポリマー物品の表面から除去された後に、この表面は、水、溶媒または適切な水性媒体(例えば、セッケンまたは界面活性剤溶液など)で洗浄され得、そして乾燥され得る。所望であれば、このポリマー物品は、有機プラスチック材料の染色において使用される従来の分散色素または可溶性色素で、当該分野において周知の技術(例えば、従来の色素浴)を使用して、染色され得る。その後、この染色されたポリマー物品は、例えばセッケン水で、洗浄され、そして乾燥される。ポリマー物品の染色は、消費された樹脂フィルムまたはコーティングの除去の直後に、表面の洗浄の前に、実施され得る。あるいは、染色は、フォトクロミック組成物が塗布される前に、実施され得る。
【0092】
ポリマーホスト材料は、通常、透明であるが、半透明または不透明でさえあり得る。ホスト材料は、フォトクロミック物質を活性化させる電磁スペクトルの部分(すなわち、この物質のオープン形態または着色形態を生じる紫外(UV)光の波長、およびそのUV活性化形態(すなわち、オープン形態)におけるその物質の最大吸収波長を含む可視スペクトルの部分)を透過することのみを、必要とする。
【0093】
1つの意図される実施形態において、ホストの色は、フォトクロミック化合物の活性化形態の色をマスクしない(すなわち、色の変化が観察者に容易に明らかである)ような色である。別の意図される実施形態において、ポリマー有機ホスト材料は、固体の透明かまたは光学的に透明な物質であり、例えば、光学適用(例えば、平面レンズ、眼のレンズおよびコンタクトレンズ、窓、自動車の透明部品(例えば、風防ガラス)、航空機の透明部品、プラスチックシート、ポリマーフィルムなど)に適切な材料である。
【0094】
本明細書中に記載されるフォトクロミックインビビション組成物と共に使用され得る、1つのポリマー有機ホスト材料は、非弾性ポリ(ウレア−ウレタン)である。非弾性ポリ(ウレア−ウレタン)とは、本明細書中において、(a)少なくとも1種のポリオール(例えば、ジオール);(b)少なくとも2つのイソシアナト基を有する、少なくとも1種のポリイソシアネート;(c)少なくとも2つのアミノ基を有する、少なくとも1種のポリアミンであって、各アミノ基が独立して、一級アミノおよび二級アミノから選択される、ポリアミン;ならびに必要に応じて、(d)少なくとも3つのヒドロキシル基を有する、少なくとも1種のポリオールを含む反応物の反応生成物と定義される。1つの意図される実施形態において、イソシアネート反応物のイソシアナト基の数は、ポリオール反応物のヒドロキシル反応物の数より大きい。
【0095】
ポリ(ウレア−ウレタン)の調製は、2000年2月4日に出願された米国特許出願番号09/499,054、および米国特許第3,866,242号;同第5,811,506号;同第5,962,617号;および同第5,962,619号に記載されている。
【0096】
本明細書中に記載されるフォトクロミック組成物と共に使用され得る、さらなるポリマー有機ホスト材料の例としては、以下のポリマー(すなわち、ホモポリマー)およびコポリマーが挙げられる:ポリオール(アリルカーボネート)モノマー(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマー)、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールビスメタクリレートモノマー、アルコキシル化多価アルコールアクリレートモノマー(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー)、ジアリリデンペンタエリスリトールモノマー、ウレタンアクリレートモノマー(例えば、米国特許第5,373,033号に記載されるもの)、およびビニルベンゼンモノマー(例えば、米国特許第5,475,074号に記載されるもの)およびスチレン;ポリマー(すなわち、ホモポリマーおよびコポリマー)、単官能性または多官能性(例えば、二官能性または多官能性)アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマー、ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート))、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリウレタン、ポリチオウレタン、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)ポリビニルブチラール、ならびに以下のポリマー(すなわち、ホモポリマーおよびコポリマー)、ジアリリデンペンタエリスリトール(特に、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)およびアクリレートモノマー(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル)とのコポリマー)。ポリマー有機ホスト材料のさらなる例は、米国特許第5,753,146号、第8欄第62行から第10欄第34行に開示されている。
【0097】
透明コポリマー、および透明ポリマーのブレンドもまた、ホスト材料として適切である。1つの意図される実施形態において、フォトクロミック組成物のためのホスト材料または基材は、熱可塑性ポリカーボネート樹脂(例えば、LEXANの商品名で販売される材料のような、ビスフェノールAおよびホスゲンから誘導される炭酸結合した樹脂;MYLARの商品名で販売される材料のようなポリエステル;PLEXIGLASの商品名で販売される材料のような、ポリ(メチルメタクリレート);ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(このモノマーは、CR−39の商品名で販売されている)の重合体、およびポリオール(アリルカーボネート、例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と、他の共重合性モノマー材料とのコポリマーの重合体(例えば、酢酸ビニルとのコポリマー(例えば、80〜90%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と10〜20%の酢酸ビニルとのコポリマー、特に、80〜85%のビス(アリルカーボネート)と15〜20%の酢酸ビニルとのコポリマー)、ならびに米国特許第4,360,653号および同第4,994,208号に記載されるような、末端ジアクリレート官能基を有するポリウレタンとのコポリマー);ならびに米国特許第5,200,483号に記載されるような、脂肪族ウレタンとのコポリマー(その末端部分は、アリル官能基またはアクリリル官能基を含む)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、以下のモノマーのポリマー:ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールビスメタクリレートモノマーおよびエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;酢酸セルロース、プロピオン酸セルソース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリスチレン、ならびにスチレンとメチルメタクリレート、スチレンと酢酸ビニル、およびスチレンとアクリロニトリルとのコポリマー)から調製された、光学的に透明な重合有機材料である。
【0098】
より具体的に意図されるものは、本発明のフォトクロミック組成物と、使用される光学有機樹脂モノマーとを使用して、光学的に透明なポリマーコーティングおよび重合体(すなわち、光学的適用(例えば、眼鏡において使用するためのレンズ(例えば、平面レンズまたは眼鏡レンズ)、あるいはコンタクトレンズとして使用するため)に適した材料)を製造することである。光学的に透明な重合体は、約1.35〜約1.75、例えば、約1.495〜約1.66の範囲であり得る屈折率を有し得る。
【0099】
ポリマー有機ホスト材料の他の例は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版、第6巻、669〜760頁に記載される、熱可塑性または熱硬化性のコーティングである。1つの意図される実施形態において、熱硬化性コーティングが使用される。基材の表面に塗布され、そして本発明のフォトクロミック組成物を吸収するポリマーコーティングは、硬化の際にポリマー層を形成する、以下から選択されるコーティングであり得る:ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート)、ポリ無水物、ポリアクリルアミド、またはエポキシ樹脂(例えば、ポリ酸硬化エポキシ樹脂)。
【0100】
ホスト材料として特に意図されるものは、Sola Internationalによって販売されるSpectralite(登録商標)レンズ、PPG Industries,Inc.によって、CR−の指定(例えば、CR−307およびCR−407)で販売されるTRIVEXTMレンズおよび光学樹脂の重合体、ならびにハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズとして使用されるために調製された、重合体である。両方の型のコンタクトレンズを製造するための方法は、米国特許第5,166,345号、第11欄第52行から第12欄第52行に開示されている。本発明のフォトクロミック組成物と共に使用されることが意図される、さらなる重合体は、米国特許第5,965,630号に記載される、水含有量が高いソフトコンタクトレンズ、および米国特許第5,965,631号に記載される、延長装着コンタクトレンズを形成するために使用される重合体である。
【0101】
本発明のフォトクロミック組成物を用いて調製されたフォトクロミック物品は、シリカ、チタニア、および/またはジルコニアベースの、硬質コーティング材料でコーティングされ得る。あるいは、紫外線硬化型(curable)の有機硬質コーティング材料が、硬質表面層を形成するために適用され得る。このような保護的コーティング剤(例えば、耐摩擦性コーティング剤)の適用は、コーティング技術において用いられる任意の方法(例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、拡散コーティング、カーテンコーティング、ディップコーティングまたはロールコーティング)により得る。他のコーティング剤および/または表面処理剤(例えば、反射防止表面、疎水性コーティング剤など)もまた、本発明のフォトクロミック物品の少なくとも1つの表面に、個々にかまたは連続的に適用され得る。反射防止コーティング剤(例えば、単層または複層の金属酸化物、金属フッ化物、または他の材料)は、真空エバポレーション、スパッタリング、またはいくつかの他の方法を介して、本発明のフォトクロミック物品(例えば、レンズ)上に、沈着され得る。
【0102】
本発明は、本発明における多くの改変および変更が当業者に明白であるので、単に例示的であることを意図する以下の実施例において、より詳細に記載される。
【0103】
実施例1〜実施例4および比較例1は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEG(DGE))を有さない阻害組成物と比較した場合、フォトクロミック阻害組成物中に5グラムまたは4重量%のPEG(DGE)を含有することの、フォトクロミック性能等級に対する効果、および、このフォトクロミック組成物における、20グラムまたは16重量%までの5グラム増分によってPEG(DGE)の量を増加させることの効果を、実証する。
【0104】
(実施例1)
以下の材料を、BRINKMAN PT−3000ホモジナイザーとともに使用するのに適切な容器に、記載される順序および様式で添加した:
【0105】
【表1】

【0106】
(1) 526の数平均分子量を有する、ポリエチレングリコールジクリシジルエーテル
(2) 紫外線を照射された際に青色を呈する、ナフト[1,2−b]ピラン
(3) 紫外線を照射された際に黄色を呈する、ナフト[1,2−b]ピラン
(4) Sandoz Chemical Corp.から入手可能な、ヒンダードアミン紫外線安定剤
(5) Ciba−Geigy Corporationから入手可能な、ポリフェノール性酸化防止剤。
【0107】
充填剤1を、容器に添加し、そして、5000rpmの速度にて、2分間か、または材料が溶解するまで、ホモジナイザーによって混合した。次いで、充填剤2を、この容器に添加し、そして、この材料が溶解するまで、得られた混合物を加熱および混合した。
【0108】
(実施例2)
添加したPEG(DGE)の量が10.0グラムであることを除いて、実施例1の手順に従った。
【0109】
(実施例3)
添加したPEG(DGE)の量が15.0グラムであることを除いて、実施例1の手順に従った。
【0110】
(実施例4)
添加したPEG(DGE)の量が20.0グラムであることを除いて、実施例1の手順に従った。
【0111】
(比較例1)
阻害組成物中にPEG(DGE)を含有しなかったことを除いて、実施例1の手順に従った。
【0112】
実施例5〜実施例11および比較例2は、実施例1〜実施例4および比較例1のために用いたものと異なるフォトクロミック化合物および安定剤を含有するフォトクロミック阻害組成物中に、種々の異なる速度論増強添加物を個々に含むことの、フォトクロミック性能等級に対する効果を実証する。
【0113】
(実施例5)
充填剤1において、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを、302の式量(FW)を有する、等量のトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)で置き換えたこと;および、充填剤2を、特定量の以下の化合物で置き換えたことを除いて、実施例1の手順に従った。
【0114】
【表2】

【0115】
(6) 紫外線を照射された際に青色を呈する、フォトクロミックナフト[1,2−b]ピラン
(7) 紫外線を照射された際に青緑色を呈する、フォトクロミックナフト[1,2−b]ピラン
(8) 紫外線を照射された際に黄橙色を呈する、フォトクロミックナフト[1,2−b]ピラン
(9) 紫外線を照射された際に黄橙色を呈する、フォトクロミックナフト[1,2−b]ピラン
(10) Ciba−Geigy Corporationから入手可能な、ヒンダードアミン紫外線安定剤
(実施例6)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、277のFWを有する、等量のN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン(DGGA)によって置き換えたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0116】
(実施例7)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、282のFWを有する、等量のジグリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタレート(DGTP)によって置き換えたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0117】
(実施例8)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、526の数平均分子量を有する、等量のポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG(DGE))によって置き換えたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0118】
(実施例9)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、380の数平均分子量を有する、等量のポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPG(DGE))によって置き換えたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0119】
(実施例10)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、530の数平均分子量を有する、等量のポリカプロラクトンジオール(PCLD)によって置き換えたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0120】
(実施例11)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、400の数平均分子量を有する、等量のポリ(エチレングリコール)モノラウレート(PEGML)によって置き換えたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0121】
(比較例2)
阻害組成物中にトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを含有しなかったことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0122】
実施例12〜実施例22および比較例3は、いくつかのフォトクロミック化合物の混合物、ならびに、先述の2組の実施例および比較例の阻害組成物において用いられた添加物を含有する、フォトクロミック阻害組成物中に、種々の異なる速度論増強添加物を個々に含むことの、フォトクロミック性能等級に対する効果を実証する。
【0123】
(実施例12)
充填剤2において以下の材料を用いたことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0124】
【表3】

【0125】
(10) 紫外線を照射された際に青灰色を呈する、フォトクロミックナフト[1,2−b]ピラン
(11) 紫外線を照射された際に緑青色を呈する、フォトクロミックスピロナフトキサジン
(12) Sandoz Chemical Corporationから入手可能な、ヒンダードアミン紫外線安定剤
(実施例13)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、620〜680のエポキシド等量を有する、等量のグリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル(GPTGE)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0126】
(実施例14)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、277のFWを有する、等量のN,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン(DGGA)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0127】
(実施例15)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、282のFWを有する、等量のジグリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタレート(DGTP)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0128】
(実施例16)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、284のFWを有する、等量のジグリシジル−1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート(DGCHDC)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0129】
(実施例17)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、526の数平均分子量を有する、等量のポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG(DGE))で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0130】
(実施例18)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、530の数平均分子量を有する、等量のポリカプロラクトンジオール(PCLD)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0131】
(実施例19)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、600の数平均分子量を有する、等量のポリ(エチレングリコール)(PEG−600)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0132】
(実施例20)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、650の数平均分子量を有するポリテトラヒドロフランの直鎖状ポリマーであると報告されている、等量のTERETHANE(登録商標) 650ポリエーテルグリコール(PTHF)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0133】
(実施例21)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、900の数平均分子量を有する、等量のポリ(エチレングリコール)(PEG−900)で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0134】
(実施例22)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを、ポリエチレングリコールジベンゾエート(PEGDB)であると報告されている、等量のBenzoflex P−200で置き換えたことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0135】
(比較例3)
阻害処方物中に、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを含有しなかったことを除いて、実施例12の手順に従った。
【0136】
実施例23〜実施例28および比較例4〜比較例7は、2つの異なる非エラストマー性の尿素−ウレタンレンズのための、フォトクロミック阻害組成物において、異なる速度論増強添加物を含有することの、性能等級に対する効果を実証する。
【0137】
(実施例23)
(パートA)
以下の材料を、アジテーター、温度計、窒素入口および加熱/冷却性能を備える、適切な反応容器に、記載される順序および様式で添加した。
【0138】
【表4】

【0139】
(13) 約400の等量を有する、ポリカプロラクトンジオール
(14) 約200の等量を有する、ポリカプロラクトンジオール
(15) 約1000の等量を有する、ポリカプロラクトンジオール
(16) Bayer Corporationから入手可能な、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
これらの材料の添加の後、容器に窒素を導入して窒素ブランケットを与え、そしてアジテーターを作動させた。プレポリマー反応混合物が250°F(121℃)の温度に達するまで、熱を加えた。さらなる加熱は続行しなかった。得られた発熱性反応物は、通常、約280°F(138℃)までの反応混合物の温度の上昇を引き起こした。温度が、約280°F(138℃)よりも上に上昇し続けた場合、冷却を行った。反応温度が、約220°F(104℃)に達した後、このプレポリマー生成物を、400メッシュフィルターを通して濾過した。得られた濾液を冷却し、そして適切な容器に移した。
【0140】
(パートB)
以下の材料を、反応物注入成形(RIM)機(例えば、Max Machinesから入手可能なMax Mixer)に、記載される順序および様式で添加した:
【0141】
【表5】

【0142】
充填剤1を、容器に添加した。充填剤2を添加し、そして内容物を、Max Mixer内で迅速に混合した。
【0143】
(パートC)
パートBの生成物を、鋳型外面を離型剤で処理した、60〜80mmを測定する鋳型に注ぎ、150℃まで予熱し、そして150℃の乾燥器に16時間配置した。その後、鋳型から重合体を取り出した。
【0144】
(パートD)
以下の材料を、BRINKMAN PT−3000ホモジナイザーとともに使用するのに適切な容器に、記載される順序および様式で添加した。
【0145】
【表6】

【0146】
チャージ1(Charge−1)を容器に加え、そして、5000rpmの速度で2分間または物質が溶解するまで、ホモジナイザーによって混合した。チャージ2を加え、得られた混合物を加熱し、そして物質が溶解するまで混合した。
【0147】
(パートE)
パートDの溶液を、スピンコーティングにより吸収処方物を試験レンズ表面に塗布することによってパートCにおいて調製された複製試料レンズに吸収させた。レンズに形成された樹脂フィルムの平均湿重量は、0.35〜0.40mg/レンズの範囲であった。この樹脂フィルムを乾燥した。次いで、レンズを、熱風炉内で135〜140℃にて8時間加熱した。冷却した後、この樹脂フィルムを、水でリンスし、アセトン浸漬組織で拭き取ることによって、試験サンプルから取り除いた。
【0148】
(比較実施例4)
ポリエチレングルコールジグリシジルエーテルをパートDのチャージ1に含めないこと以外は、実施例23の手順に従った。ヒドロキシプロピルセルロースおよびシリカの量は、同じままであった。他の物質量は、以下の通りであった:
【0149】
【表7】

【0150】
(実施例24)
以下の処方物をパートAに使用してプレポリマーを調製すること以外は、実施例23の手順に従った。
【0151】
【表8】

【0152】
(比較実施例5)
ポリエチレングルコールジグリシジルエーテルをパートDのチャージ1に含めないこと以外は、実施例24の手順に従った。ヒドロキシプロピルセルロースおよびシリカの量は、同じままであった。他の物質量は、比較実験4と同様であった。
【0153】
(実施例25)
パートDのチャージ1において、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(10g)を、530の数平均分子量を有するポリカプロラクトンジオール(PCLD)(6.67g)で置換すること以外は、実施例23の手順に従い、チャージ2においては、以下の物質を使用した。
【0154】
【表9】

【0155】
(実施例26)
パートDのチャージ1において、ポリカプロラクトンジオールを、900の数平均分子量を有する、同量のポリエチレングリコール(PEG−900)で置換すること以外は、実施例25の手順に従った。
【0156】
(比較実施例6)
ポリカプロラクトンジオールをパートDのチャージ1に含めないこと以外は、実施例25の手順に従った。ヒドロキシプロピルセルロースおよびシリカの量は、同じままであった。他の物質量は、比較実施例4の通りであった。
【0157】
(実施例27)
以下の処方物をパートAに使用してプレポリマーを調製すること以外は、実施例25の手順に従った。
【0158】
【表10】

【0159】
(実施例28)
以下の処方物をパートAに使用してプレポリマーを調製すること以外は、実施例26の手順に従った。
【0160】
【表11】

【0161】
(比較実施例7)
ポリカプロラクトンジオールをパートDのチャージ1に含めないこと以外は、実施例27の手順に従った。ヒドロキシプロピルセルロースおよびシリカの量は、同じままであった。他の物質量は、比較実施例4の通りであった。
【0162】
(実施例29)
(パートA)
実施例1〜4および比較実施例(CE)1の試験を、2つの異なるセットのサンプルレンズを用いて行った。「A」のレンズを、指定(designation)CR−307の下で、PPG Industries,Inc.によって販売されている光学的樹脂からキャスティングした。「B」のレンズは、Solaから入手したSpectraliteレンズであった。表1において、実施例番号は、AまたはBに従い、どのレンズを使用するかが示されている。これらのサンプルレンズを、食器洗い用洗剤および水で洗浄し、脱イオン水でリンスし、そしてアセトン浸漬組織で拭き取った後、実施例の溶液を塗布した。実施例1〜4および比較実施例1の溶液を、スピンコーティングにより吸収処方物のフィルムを試験レンズ表面に塗布することによって、サンプルレンズに吸収させた。樹脂フィルムの平均湿重量は、0.35〜0.40mg/レンズの範囲であった。塗布されたフィルムを乾燥した。次いで、レンズを、熱風炉内で135〜140℃にて8時間加熱した。冷却した後、この樹脂フィルムを、水でリンスし、アセトン浸漬組織で拭き取ることによって、試験サンプルから取り除いた。
【0163】
実施例5〜22ならびに比較実施例2および3を、CR−307モノマーからキャスティングしてレンズに個々に塗布した。これらの実施例の吸収溶液の塗布は、前記の実施例について行ったのと同じ様式で行った。コーティングされたレンズの加熱を、表2に示すように、7時間および/または8時間行った。
【0164】
(パートB)
パートAにおいて調製されたフォトクロミックレンズ、ならびに実施例23〜28および比較実施例4〜7のレンズを、紫外線吸光度について検査し(screen)、390ナノメーターの、匹敵するUV吸光度を有するレンズを、光学台上でフォトクロミック応答について試験した。この紫外線吸光度値により、レンズにおけるフォトクロミック化合物の量が示される。光学台を、72°F(22℃)の温度に維持した。実施例23〜28のレンズ、比較実施例4〜7のレンズ、ならびに実施例1〜4および比較実施例1で吸収させたレンズを、30分間活性化させ、そしてΔODを、最初の30秒後、次いで、15分後に測定した。実施例5〜22ならびに比較実験2および3で吸収させたレンズを、30分間活性化させ、そしてΔODを、15分後に測定した。
【0165】
光学台上で試験する前に、フォトクロミックレンズを、365ナノメーターの紫外線に約20分間曝露して、フォトクロミック化合物を活性化させ、次いで、75℃のオーブン内に約20分間置いて、このフォトクロミック化合物を漂白した(失活させた)。次いで、レンズを室温まで冷却し、室内蛍光灯に少なくとも3時間曝露し、次いで、少なくとも1時間覆いをした後、光学台上で試験した。この台に、300ワットのキセノンアーク燈、遠隔制御シャッター、Schott 3mm KG−2帯域通過フィルター(これは、短波長放射を除去する)、中性密度フィルター(neutral density filter)、試験されるべきレンズが挿入されるサンプル温度を維持するための、石英水電池(quartz water cell)/サンプルホルダーを取り付けた。
【0166】
測定を、0.67ミリワット/立方センチメートル(mW/cm)に調整した出力を用いるフォトクロミック性能試験において、光学台上で行った。出力の測定を、UV−A検出器(製造番号22411)を備えるGRASEBY Optronics Model S−371携帯光度計(製造番号21536)またはそれに匹敵する機器を使用して行った。UV−A検出器をサンプルホルダー内に配置して、光の出力を測定した。出力調整を、ランプのワット量の増減によって、または光路内に中性密度フィルターを加えることもしくは光路内の中性密度フィルターを取り除くことによって行った。
【0167】
モニタリングした、タングステン灯からの光の平行ビームは、レンズの表面に垂直に30°でサンプルを通過し、このタングステン灯からの光を、検出器に接続した明順応(photopic)フィルターを介して方向付けした。この検出器からの出力信号を、放射計によって処理した。試験条件の制御およびデータの取得を、Labtech Notebook Proソフトウエアおよび奨励されたI/O基板によって操作した。
【0168】
漂白状態から暗色状態への光学密度の変化(ΔOD)は、初期透過率を設定し、キセノン灯からシャッターを開いて紫外線照射を提供し、選択した時間において漂白状態から、活性化された(すなわち、暗くなった)状態まで試験レンズを変化させ、活性化状態における透過率を測定し、そして、式:ΔOD=log(%Tb/%Ta)(ここで、%Tbは、漂白状態における%透過率であり、%Taは、活性化状態における%透過率であり、そして対数は、10が底である)に従って光学密度の変化を測定することによって決定した。
【0169】
漂白速度(T1/2)は、活性化光源を取り除いた後に、最も高いΔODの半分に到達するための、コーティングレンズにおける活性化形態のフォトクロミック化合物のΔODの秒単位での時間間隔である。実施例1〜4および比較実施例1のフォトクロミック吸収レンズの結果を、表1に列挙し、実施例5〜22ならびに比較実施例2および3のフォトクロミック吸収レンズを、表2に列挙し、そして実施例23〜28および比較実施例4〜7のフォトクロミック吸収レンズを、表3に列挙した。これらの実施例において使用される略語によって速度論促進添加剤(KEA)を同定している欄は、表2および表3における実施例番号に含まれる。
【0170】
実施例5〜11の結果は、比較実施例2と比較され、実施例12〜22は、比較実施例3と比較され、実施例23は、比較実施例4と比較され、実施例24は、比較実施例5と比較され、実施例25および26は、比較実施例6と比較され、そして、実施例27および28は、比較実施例7と比較されるべきである。
【0171】
比較実施例の基材は、実施例の基材を作製するために使用される物質と同じバッチ由来であることが、重要である。これは、フォトクロミック性能試験の結果に対する、バッチにおける任意の変化の影響を回避するために行われる。
【0172】
フォトクロミック性能試験から得られる性能等級もまた、表1および表2に含まれる。フォトクロミック性能試験は、15分でのΔOD、およびフォトクロミック性能の等級を決定するための漂白等級の結果を使用する。この性能等級は、15分でのΔODをT1/2で除算するし、この結果に10,000を乗算することによって算出される。性能等級が高くなればなるほど、フォトクロミック化合物は、本発明の添加剤を有さない比較実施例と比較した場合、より速度論が増強される。
【0173】
【表12】

【0174】
【表13】

【0175】
【表14】

【0176】
【表15】

【0177】
表1の結果は、CR−307モノマー樹脂またはSpectraliteレンズのいずれかを使用して調製されるフォトクロミックレンズ、および実施例1〜4の溶液が30秒後に暗色になり、CE1の溶液を使用して調製されるフォトクロミックレンズよりも早く変色することを示している。各実施例の処理レンズに対する性能等級は、試験されたレンズの両型に対する比較実施例の性能等級よりも高かった。
【0178】
表2の結果は、実施例5〜11および12〜22の溶液を吸収したレンズが、対応する比較実施例2および3で吸収されたレンズよりも速い漂白速度および高い性能等級を示すことを示している。また、実施例8および17の溶液で処理したレンズについて、吸収時間が7〜8時間延ばされる場合、性能等級もまた増大された。
【0179】
表3の結果は、実施例23〜28において本発明のフォトクロミック阻害溶液を使用して調製される全てのフォトクロミックレンズが、30秒後および15分後に暗色になり、フォトクロミック性能試験において比較実施例4〜7を使用して調製されたフォトクロミックレンズよりも速く変色することを示している。各実施例のレンズに対する性能等級は、比較実施例の性能等級よりも高かった。
【0180】
本発明は、それらの特定の実施形態の特定の詳細に対する参照を用いて記載されてきた。このような詳細は、添付の特許請求の範囲に含まれる範囲を除いては、本発明の範囲に対する制限とみなされることは、意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック吸収組成物であって、以下:
有機フォトクロミック化合物、ならびに、必要に応じて
キャリア、
紫外線安定剤、
紫外線吸収剤、
酸化防止剤、および/または
レオロジー調整剤、ならびに、
エポキシ含有化合物、有機ポリオール、および、このような添加剤の混合物から選択される添加剤を含む、
フォトクロミック吸収組成物であって、ここで、該組成物は、該添加物を有さない組成物と比較して、改善された速度論効果を示す、組成物。

【公開番号】特開2006−52408(P2006−52408A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241891(P2005−241891)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【分割の表示】特願2002−546619(P2002−546619)の分割
【原出願日】平成13年11月15日(2001.11.15)
【出願人】(500189713)トランジションズ・オプティカル・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】