説明

改良されたクロロメチルセフェム誘導体調製方法

本発明は、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体の改良された製造方法を提供する。
【化1】


ここで、Rは、カルボキシ保護基、すなわち、簡単に脱保護できる置換メチル基、例えば、t−ブチル基、ジフェニルメチル基、4−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、2−クロロベンジル基、またはベンジル基を表す。Rは水素原子、炭素1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のフェノキシ基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体の改良された製造方法を提供する。
【化1】

ここで、Rは、カルボキシ保護基、すなわち、簡単に脱保護できる置換メチル基、例えば、t−ブチル基、ジフェニルメチル基、4−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、2−クロロベンジル、またはベンジル基を表す。Rは、水素原子、炭素1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のフェノキシ基を表す。
【0002】
本発明の方法で調製された式(I)のクロロメチルセフェム誘導体は、式(II)のセファロスポリン系抗生物質の調製に有用である。
【化2】

ここで、Rは、カルボン酸イオンまたはCOORを表す。なお、Rは、水素原子、エステル、または塩形成可能な対イオンを表す。Rは、H、CH、CRCOORを表す。なお、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは、CH、CHOCH、CHOCOCH、CH=CH、または、
【化3】

を表す。
【0003】
式(II)のセファロスポリン系抗生物質は、広範囲の生物活性を有する。特に、式(II)のセファロスポリン系抗生物質は、非常に良好な抗生物質活性を有する。
【背景技術】
【0004】
セファロスポリン系薬合成時の鍵となる中間体として、式(I)の3−クロロメチルセフェムが重要であるため、多くの調製方法が報告されている(米国特許第4,853,468号、米国特許第4,789,740号)。多くの場合、式(IV)のクロロアゼチジノンを得るために、式(III)のスルホニルアゼチジノン誘導体は、塩素や酸化塩素など、様々な塩素化試薬でアリール/エン型(allylic/ene-type)塩素化される。さらに、式(I)のクロロメチルセフェムを得るために、式(IV)のクロロアゼチジノン化合物は、塩基存在下かつ低温条件下で環化される。
【化4】

ここで、RおよびRは、上記と同様であり、Rは、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基の付加されたフェニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基の付加されたフェニル基、またはヘテロアリール基を示す。
【0005】
報告された方法に基づく、スルホニルアゼチジノン中間体の調製は、通常多くの不純物生成を伴い、スルホニルアゼチジノンが低純度のものになってしまう。これは式(I)のクロロメチルセフェムの低収率に帰結する。
【0006】
さらに、スルホニルアゼチジノン中間体の調製中に生じる副生成物は、アセトン/水系の既存の方法では完全には取り除くことができない。そして、この副生成物をこの段階で取り除けない場合、塩素化および環化という次段階への転換中に、さらに不純物が生成してしまう。このように、スルホニルアゼチジノン中間体から副生成物を除去できる方法が必要となっている。
【0007】
加えて、DMF中のアンモニアによる環化の最終段階で、我々は塩基添加中に不純物生成が高くなることを発見した。このことは、より良い反応率およびその結果としてのより良い収率をもたらすような、代替方法の開発を必要とする。
【0008】
我々は、鋭意研究・検討を重ねた結果、遂に、上記の問題を全て対処することができ、かつ、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体を製造することができる、きれいな方法を特定するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主たる目的は、式(VII)の3−クロロメチルアゼチジノン化合物を介して、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体を製造するための単純かつ効果的な方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、工場生産クラスの規模での取り扱いが困難である危険な試薬を使うことなく、式(VII)のクロロメチルアゼチジノン化合物の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、多くの不純物の生成をコントロールすることにより、きれいな方法でスルホニルアゼチジノンの調製を行うこと、また、副生成物を除去する方法論を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、不純物生成を最小、かつ、反応率を最大にしながら、式(VII)のクロロメチルアゼチジノン化合物の環化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体の改良された製造方法を提供する。
【化5】

ここで、Rは、簡単に保護解除可能なカルボキシ保護基、すなわち、置換メチル基、例えば、t−ブチル基、ジフェニルメチル基、4−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、2−クロロベンジル、またはベンジル基を表す。Rは、水素原子、炭素1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のフェノキシ基を表す。本方法は、
(i) 式(V)の化合物を、アリールスルフィン酸または炭素数1〜6のアルキル基が付加されたスルフィン酸の金属塩、塩基および溶媒を用いて、25℃〜40℃の範囲の温度で、式(VI)の化合物(ここで、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表す。)に転化する段階であって、4〜8.0の範囲のpHでアリールスルフィン酸の金属塩を加えることで改良がなされる段階と、
(ii) 式(VI)の化合物を、塩素化剤を用いて、塩基および溶媒存在下で、15℃〜40℃の範囲の温度で塩素化することで、式(VII)の化合物を製造する段階(ここで、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表し、他の符号は全て上記と同様である。)と、
(iii) 式(VII)の化合物を、溶媒中の塩基を用いて−60℃〜+50℃の範囲の温度で環化することで、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体を製造する段階と、
からなる。
【0014】
式(I)のクロロメチルセフェム誘導体の合成方法はスキームIに示される。
【化6】

ここで、RおよびRは、上記と同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の態様において、Rで示されるヘテロアリール基は、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、または2−メルカプト−5−メチルテトラゾールから選ばれる。
【0016】
また、本発明の他の態様において、段階(i)での転化は、p−トルエンスルフィン酸銅(II)、ベンゼンスルフィン酸銅(II)、p−トルエンスルフィン酸銀(II)、ベンゼンスルフィン酸銀(II)、などから選ばれるアリールスルフィン酸の金属塩を用いて、アセトン、THF、ジオキサン、ジグリム、2−ブタノン、アセトニトリル、ならびにメタノールやエタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、から選ばれる溶媒存在下で、かつ水の存在下または非存在下で、行われる。
【0017】
また、本発明の他の態様において、段階(i)は、pHを4〜8、好ましくは5〜7、の範囲で制御しながら、アンモニア、ならびに炭酸カルシウムや炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ/アルカリ土類金属の炭酸塩/重炭酸塩から選ばれる塩基、または、ジイソプロピルエチルアミンやトリエチルアミンなどの有機塩基を用いることにより、行われる。
【0018】
また、本発明の他の態様において、段階(ii)で用いられる塩素化剤は、塩基存在下で、塩素ガスやHOCl、ClO、CHOClなどから選ばれる。
【0019】
また、本発明の他の態様は、段階(ii)で用いられる塩素化剤は、ジオキサン、四塩化炭素、酢酸エチル、アセトニトリル、ジグリム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、トルエン、またはこれらの混合物から選ばれるものが、気体として、または溶媒中における溶液として、用いられる。
【0020】
また、本発明の他の態様においては、段階(ii)で用いられる塩基は、炭酸カルシウムや炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ/アルカリ土類金属の炭酸塩/重炭酸塩から選ばれる。
【0021】
また、本発明の他の態様において、段階(iii)の環化は、アンモニア、炭酸アンモニウムや酢酸アンモニウムのようなアンモニウム塩、ジイソプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、メチルアミンやトリエチルアミンのような有機アミンなどから選ばれる塩基を用いて、行われる。
【0022】
また、本発明の他の態様において、環化段階(iii)は、DMFやアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、4−ホルミルモルホリン、4−アセチルモルホリン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、THF、1−メチルピロリドン−2−オン(NMP)、二塩化メチレンなどから選ばれる溶媒中、またはこれらの混合物中で行われる。
【0023】
本発明の他の態様において、出発物質は先行技術での公知文献より調製され得る。
【0024】
上述の技術は、商業的、技術的、および経済的観点から魅力的であり、式(VII)のクロロメチルアゼチジノン誘導体の提供に適している。
【0025】
本発明を異なる態様で適用することによって、または、本発明を開示の範囲内で変更することによって、他の多くの有益な結果を得ることができる。
【0026】
本発明は、下記実施例とともに表されるが、この範囲に発明を限定すべきではない。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
段階1
p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(V)の調整
ディーン−スターク水分離器に固定されたRBフラスコ中の乾燥トルエン(500ml)に、p−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシド(25g)および2−メルカプトベンゾチアゾール(8.9g)を窒素雰囲気下27℃で加えた。反応混合物を、還流条件下で30分間加熱し、5時間還流温度を維持した。反応終了後、次の段階に必要な、p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得るために、溶媒を脱気条件の下で除去した。
【0028】
段階2
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(VI)の調整
p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(25gのp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシドから得られたもの)に、アセトン(220ml)を撹拌しながら加え、得られた28〜30℃で透明な溶液を20〜25℃に冷却した。この温度で、撹拌しながら水(32ml)を加えた。溶液のpHを、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて6.0〜7.0に調整した。20〜25℃で、p−トルエンスルホン酸銅(II)(13.0g)を、90〜120分の間に数度に分けて撹拌された溶液に加えた。この間、pHは、5.5〜6.5に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて維持した。反応終了後、反応混合物をハイフロ床(hyflo bed)を通じて濾過し、当該ハイフロ床をアセトンで洗浄した。濾液は、ロータリーエバポレータ内で、溶媒を除去するために脱気し、濃縮した。そして、残渣に酢酸エチル(125ml)と水(125ml)を加え、5〜10分間撹拌した後、塩化ナトリウムを加えた。そして、有機層を分離し、水で2回洗浄した。この有機層を、25℃未満の条件で脱気し、ペースト状物質が得られるまで濃縮した。そして、スラリーを得るために、メタノールを加え、28〜30℃で撹拌し、その後に2〜5℃に冷却した。得られたスラリーを、この温度で1時間撹拌、濾過し、冷メタノールで洗浄した。濾液は、脱気条件の下で25℃未満で濃縮し、p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得た。これは次段階に用いられるが、これ以上の純化は何もなされない(HPLC純度89〜90%)。
【0029】
段階3
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(VII)の調製
上記p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(段階2で示されたp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシド25.0gから得られたもの)に1,4−ジオキサン(150ml)を加え、次に炭酸水素ナトリウム(90g)を26〜28℃の条件下で加えた。最後に、Cl/CCl(12.5%(w/v))(60ml)をゆっくり加えた。反応終了後、反応混合物を濾過し、ジクロロメタン(150ml)で洗浄した。濾液に、冷水(450ml)を加えて有機層を分離し、チオ硫酸ナトリウム溶液と水で順にそれぞれ洗浄した。そして、有機層を、従来通り、チャコールで処理し、濃縮し、仕上げて、p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得た。これは、精製せずに次の段階で使用される。
【0030】
段階4
p−メトキシベンジル−7−フェニルアセトアミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレート(I)の調製
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロエチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(25.0gのp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシドから得られたもの)に、1−メチルピロリジン−2−オン(125ml)を28〜30℃で加え、透明な溶液を得るために撹拌した。この溶液に、ジクロロメタン(50ml)を加え、−50〜−40℃に冷却した。反応混合物に、1−メチルピロリジン−2−オン(25ml、2〜5℃)中のアンモニア水溶液(25%、8.8ml)を、−50℃で2〜5分かけて加え、−40℃まで温度を上昇させた。反応混合物は−45〜−40℃で15〜20分間撹拌した。この反応混合物に、冷希釈HCl(1:1、27ml、2〜5℃)を−50〜−40℃で5分間かけて滴下で加えた。この反応混合物を2〜5℃の冷水(900ml)に注ぎ入れた。そして、ジクロロメタンを加え、5〜10分間撹拌し、有機層を分離した。水層は、ジクロロエタンでさらに抽出した。これら有機層は一緒にし、5〜10℃の冷水で4回洗浄した。20℃未満の脱気条件下で、溶媒を完全に除去した。残渣に、メタノール(175ml)を28〜30℃の条件下で加え、スラリーを得るべく、10〜15分間撹拌し、3〜5℃に冷却した。スラリーを、この温度で1時間かけて撹拌し、濾過し、冷メタノールで洗浄した。このように得られた物質を脱気条件下で4〜5時間ほど乾燥させ、p−メトキシベンジル−7−フェニルアセトアミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを無色の固体として得た(15.1g)。
【0031】
[実施例2]
段階1
p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(V)の調製
ディーン−スターク水分離器に固定されたRBフラスコ中の乾燥トルエン(500ml)に、p−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシド(25g)および2−メルカプトベンゾチアゾール(8.9g)を窒素雰囲気下27℃で加えた。反応混合物を、還流条件下で30分加熱し、5時間還流温度を維持した(反応は、溶媒としてジオキサン中でなされてもよい)。反応終了後、次の段階に必要な、p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得るために、溶媒を脱気条件の下で除去した。
【0032】
段階2
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートの調製
p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(25gのp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシドから得られたもの)に、アセトン(220ml)を撹拌しながら加え、得られた28〜30℃で透明な溶液を20〜25℃に冷却した。この温度で、撹拌しながら水(32ml)を加えた。溶液のpHを、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて6.0〜7.0に調製した。20〜25℃で、p−トルエンスルホン酸銅(II)(13.0g)を90〜120分の間に数度に分けて撹拌された溶液に加えた。この間、pHは、5.5〜6.5に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて維持した。反応終了後、反応混合物をハイフロ床(hyflo bed)を通じて濾過し、当該ハイフロ床をアセトンで洗浄した。濾液は、ロータリーエバポレータ内で、溶媒を除去するために脱気し、濃縮した。そして、残渣に酢酸エチル(125ml)と水(125ml)を加え、5〜10分間撹拌した後、塩化ナトリウムを加えた。そして、有機層を分離し、水で2回洗浄した。この有機層を、25℃未満の条件で脱気し、ペースト状物質が得られるまで濃縮した。そして、スラリーを得るために、メタノールを加え、28〜30℃で撹拌し、その後に2〜5℃に冷却した。得られたスラリーを、この温度で1時間撹拌、濾過し、冷メタノールで洗浄した。濾液は、脱気条件の下で25℃未満で濃縮し、p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得た。これは次段階に用いられるが、これ以上の純化は何もなされない(HPLC純度89〜90%)。
【0033】
段階3
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートの調製
上記p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(段階2で示されたp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシド25.0gから得られたもの)に1,4−ジオキサン(150ml)を加え、次に炭酸水素ナトリウム(90g)を26〜28℃の条件下で加えた。最後に、Cl/CCl(12.5%(w/v))(60ml)をゆっくり加えた。反応終了後、反応混合物を濾過し、ジクロロメタン(150ml)で洗浄した。濾液に、冷水(450ml)を加えて有機層を分離し、チオ硫酸ナトリウム溶液と水で順にそれぞれ洗浄した。そして、有機層を、従来通り、チャコールで処理し、濃縮し、仕上げて、p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得た。これは、精製せずに次の段階で使用される。
【0034】
段階4
p−メトキシベンジル−7−フェニルアセトアミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートの調製
p−メトキシベンジル−2−(2−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(25.0gのp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシドから得られたもの)は、実施例1の段階3に従い得られたものであり、DMF(125ml)に加え、−40℃に冷却した。DMF中のアンモニア液(11.5ml)を加え、反応が終了するまで同温度で維持した。反応混合物は、希釈HClで酸性化し、濾過した。得られた固体を、チャコール(charcoal)を用いてDMF:メタノール(2:9)で抽出、濃縮し、冷メタノールで処理し、p−メトキシベンジル−7−フェナセトアミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレート(13.6g)を得た。
【0035】
[参考実施例3]
段階1
p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(V)の調製
ディーン−スターク水分離器に固定されたRBフラスコ中の乾燥トルエン(500ml)に、p−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシド(25g)および2−メルカプトベンゾチアゾール(8.9g)を窒素雰囲気下27℃で加えた。反応混合物を、還流条件下で30分加熱し、5時間還流温度を維持した(反応は、溶媒としてジオキサン中でなされてもよい)。反応終了後、次の段階に必要な、p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得るために、溶媒を脱気条件の下で除去した。
【0036】
段階2
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(VI)の調製
p−メトキシベンジル−2−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(25gのp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシドから得られたもの)に、アセトン(220ml)を撹拌しながら加え、得られた28〜30℃で透明な溶液を20〜25℃に冷却した。この温度で、撹拌しながら水(32ml)を加えた。20〜25℃で、p−トルエンスルフィン酸塩銅(II)(12.8g)を、90〜120分の間に数度に分けて撹拌された溶液に加えた。反応終了後、反応混合物をハイフロ床(hyflo bed)を通じて濾過し、当該ハイフロ床をアセトンで洗浄した。濾液は、ロータリーエバポレータ内で、溶媒を除去するために脱気し、濃縮した。そして、残渣に酢酸エチル(125ml)と水(125ml)を加え、5〜10分間撹拌した後、塩化ナトリウムを加えた。そして、有機層を分離し、水で2回洗浄した。この有機層を、25℃未満の条件で脱気し、ペースト状物質が得られるまで濃縮した。そして、スラリーを得るために、メタノールを加え、28〜30℃で撹拌し、その後に2〜5℃に冷却した。得られたスラリーを、この温度で1時間撹拌、濾過し、冷メタノールで洗浄した。濾液は、脱気条件の下で25℃未満で濃縮し、p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得た。これは次段階に用いられるが、これ以上の純化は何もなされない(HPLC純度75〜80%)。
【0037】
段階3
p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(VII)の調製
上記p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(段階2で示されたp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシド25.0gから得られたもの)に1,4−ジオキサン(150ml)を加え、次に炭酸水素ナトリウム(90g)を26〜28℃の条件下で加えた。最後に、Cl/CCl(12.5%(w/v))(60ml)をゆっくり加えた。反応終了後、反応混合物を濾過し、ジクロロメタン(150ml)で洗浄した。濾液に、冷水(450ml)を加えて有機層を分離し、チオ硫酸ナトリウム溶液と水で順にそれぞれ洗浄した。そして、有機層を、従来通り、チャコールで処理し、濃縮し、仕上げて、p−メトキシベンジル−2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートを得た。これは、精製せずに次の段階で使用される。
【0038】
段階4
p−メトキシベンジル−7−フェナセトアミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートの調製
p−メトキシベンジル−2−(2−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−クロロメチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテート(25.0gのp−メトキシベンジル−6−フェナセトアミドペンシラネート−1−オキシドから得られたもの)を、上記実施例1の段階3に従い得られたものであり、DMF(125ml)に加え、−40℃に冷却した。DMF中のアンモニア液(11.5ml)を加え、反応が終了するまで同温度で維持した。反応混合物を希釈HClで酸性化し、濾過した。得られた固体を、チャコールを用いてDMF:メタノール(2:9)で抽出、濃縮し、冷メタノールで処理することで、p−メトキシベンジル−7−フェナセトアミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレート(11.4g)を得た。
【0039】
[効果]
実施例の比較
【表1】

【0040】
表1から次の結論を得ることができる。
・段階(ii)におけるpH調節は、2−(p−トルエンスルホニルチオ)−α−(1−メチルエテニル)−4−オキソ−3−フェナセトアミド−1−アゼチジンアセテートの純度を上げる。
・環化段階でNMPを使用すると、DMFを使用した場合に比べて収量が多い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のクロロメチルセフェム誘導体の改良された製造方法であって、
【化1】

(ここで、Rは、カルボキシ保護基、すなわち、簡単に脱保護できる置換メチル基、例えば、t−ブチル基、ジフェニルメチル基、4−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、2−クロロベンジル、またはベンジル基を表す。Rは、水素、炭素1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のフェノキシ基を表す。)
前記方法は、
(i) 式(V)の化合物を式(VI)の化合物へ転化する段階と、
【化2】

【化3】

(ここで、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表す。なお、25℃〜40℃の範囲の温度で、アリールスルフィン酸または炭素数1〜6のアルキル基が付加されたスルフィン酸の金属塩、塩基および溶媒が用いられる。また、4.0〜8.0の範囲のpHでアリールスルフィン酸の金属塩を加えることで改良がなされる。)
(ii) 式(VI)の化合物を、塩素化剤を用いて、塩基および溶媒存在下で、15℃〜40℃の範囲の温度で塩素化して、式(VII)の化合物を製造する段階と、
【化4】

(ここで、Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表し、他の符号は全て上記と同様である。)
(iii) 式(VII)の化合物を、塩基を用いて、溶媒中で、−60℃〜+50℃の範囲の温度で環化することで、式(I)のクロロメチルセフェム誘導体を製造する段階と、
を有する。
【請求項2】
段階(i)で用いられるアリールスルフィン酸の金属塩は、p−トルエンスルフィン酸銅(II)、ベンゼンスルフィン酸銅(II)、トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸銀(II)、ベンゼンスルフィン酸銀(II)から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(i)で用いられる溶媒は、水の存在下または非存在下で、アセトン、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ならびにメタノール、エタノール、およびイソプロパノールのようなアルコール類から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
段階(i)における、アリールスルフィン酸または炭素数1〜6のアルキル基が付加されたスルフィン酸の金属塩の添加は、好ましくは、pH5〜7の範囲で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(i)で用いられる塩基は、アンモニア、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンから選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(ii)で用いられる塩素化剤は、溶媒の存在下または非存在下で、塩素ガス、HOCl、ClO、CHOClから選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
塩素化剤は、ジオキサン、四塩化炭素、酢酸エチル、アセトニトリル、ジグリム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、トルエン、またはこれらの混合物から選ばれる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
段階(ii)で用いられる溶媒は、ジオキサン、四塩化炭素、酢酸エチル、アセトニトリル、ジグリム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、トルエン、またはこれらの混合物から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
段階(iii)での環化は、アンモニア、ならびに炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムのようなアンモニウム塩、ならびにN,N−ジイソプロピルアミン、N,N−ジエチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミンのような有機アミンから選ばれる塩基を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
段階(iii)で用いられる溶媒は、1−メチルピロリドン−2−オン(NMP)、DMF、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、ジオキサン、THF、二塩化メチレンから選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物の調製に有用である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【化5】

(ここで、Rは、カルボン酸イオンまたはCOORを表す。なお、Rは、水素原子、エステル、または塩形成可能な対イオンを表す。Rは、H、CH、CRCOORを表す。なお、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは、CH、CHOCH、CHOCOCH、CH=CH、または、
【化6】

を表す。)

【公表番号】特表2006−507289(P2006−507289A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547902(P2004−547902)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004721
【国際公開番号】WO2004/039813
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(504380943)オーキッド ケミカルズ アンド ファーマシューティカルズ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ORCHID CHEMICALS & PHARMACEUTICALS LIMITED
【Fターム(参考)】