改良されたコアを有する多孔性インプラント装置
インプラント装置は、インプラントの外側表面を形成する外側部分を有している。この外側部分は、この外側部分を貫く通路を定めている多孔質材料からなる。内側部分は、前記外側表面から前記通路を通ってアクセスすることができる処理領域を備える外表面を有している。処理領域は、骨または軟組織への直接的な付着のために処理されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/624,608号の継続出願であって、この米国特許出願の利益を主張し、この米国特許出願の内容を、ここでの言及によって本明細書にすべて援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多孔性インプラントに関し、特には多孔質材料をコアに取り付けて有するインプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
歯科インプラントは、患者の本来の歯が喪失または損傷した患者の歯群の1つ以上の欠如歯部に修復歯または人工歯を固定するために、一般的に使用されている。歯科インプラントは、典型的には、欠如歯部において患者の下顎骨または上顎骨に開けられた穴へとねじ込まれ、あるいは圧入される。典型的には、歯科インプラント装置は、1ピースまたは2ピースにて提供される。2ピースの装置においては、固定部材またはインプラントが、別個の歯冠支持具(歯科支台)を支持し、歯冠支持具が、インプラントと修復歯との間の仲立ちをもたらす。1ピースの一体型の装置においては、装置が、装置のインプラント部の歯冠側に支台部を有している。いずれの場合も、修復歯は、典型的には、公知の方法に従って作られた陶歯冠である。
【0004】
2ピースの装置としては、高さが下顎骨または上顎骨の頂点までである二回法手術用インプラント(骨内インプラントとも称される)が存在する。この場合、手術は多くの場合に2段階で実行される。最初の段階において、欠如歯部において患者の歯肉が切開され、この欠如歯部において患者の下顎骨または上顎骨に穴が開けられ、次いで歯科インプラントが適切なドライバを使用して穴へとねじ込まれ、あるいは打ち込まれる。その後に、インプラントの支台との結合用の構造を閉じるために、インプラントへとキャップが装着され、歯肉がインプラントを覆って縫合される。数ヵ月の期間を経て、患者の顎骨がインプラントの周囲に成長し、インプラントを周囲の骨に堅固に固定する。これはオッセオインテグレーションとして知られるプロセスである。
【0005】
オッセオインテグレーションに続く手術の第2の段階においては、歯科医がインプラントの部位において歯肉を再び開き、インプラントへと支台を固定し、所望により仮の人工歯または仮の治癒用部材を固定する。次いで、適切な恒久用の人工歯または歯冠が、支台ならびに周囲の歯肉組織および歯群から得られた1つ以上の歯型などから作成される。仮の人工歯または治癒用部材が取り除かれ、例えばセメントまたは固定具によって支台へと取り付けられる恒久用の人工歯によって置き換えられる。
【0006】
あるいは、歯肉貫通型(transgingival)インプラントとも称される一回法手術用の2ピースインプラントが、支台との結合のために歯肉を貫いて延びるがゆえに、1つの段階にて配置される。1ピースのインプラントも、1つの段階にて顎に配置される。
【0007】
既存の歯科インプラントの周囲の骨へのオッセオインテグレーションは、適切であることが証明されているが、歯科インプラントのオッセオインテグレーションのさらなる改善が望まれる。例えば、患者は、手術からインプラントが咬合力を十分に受けることができる時点までの治癒時間が、最短であることを好むと考えられる。また、喫煙者、糖尿病患者、および/または異常に遅い骨の成長などの高リスク患者のために、強力なオッセオインテグレーションのインプラントを提供することが望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】歯科インプラント装置の側方からの斜視図である。
【図2】図1の歯科インプラント装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示した線3−3に沿う、図1の歯科インプラント装置の下方から見た断面図である。
【図4】図1の歯科インプラント装置の表面の多孔質材料の一部分の拡大図である。
【図5】代替の歯科インプラント装置の側面断面図である。
【図6】さらに別の代替の歯科インプラント装置の側面部分断面図である。
【図7】さらなる代替の歯科インプラント装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜3を参照すると、インプラントへのオッセオインテグレーションを改善するために、骨に配置されるインプラント装置10は、インプラント装置の長期安定性を向上させるべく骨が内側に成長することができる多孔質材料14からなる外側部分12を有している。そのような多孔質材料は、さらに詳しく後述されるとおり、周囲の骨との高い摩擦係数ゆえに、即座に荷重を加えてもよいように短期安定性も向上させる。外側部分を支持してインプラント装置10に強度を加える内側部分またはコア16の表面または周囲に外側部分12を配置することができる。コア16は、外側部分12を貫いてコア16へと成長した骨とのオッセオインテグレーションをさらに向上させるための表面処理18を有することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、コア16は、インプラント10を骨の穴に適切に配置し、長期および短期の両方の安定性を向上させるために、コア16に対する外側部分12の回転を制限するように構成された外形または外周19を有することもできる。
【0010】
次に、さらに詳しくは、図示の例では、インプラント10は、下顎骨または上顎骨へと挿入される歯科インプラントである。インプラント10は、1つ以上の人工歯を固定するために使用され、歯冠側の頭部またはヘッド20を備えている。内側部分またはコア16は、ヘッド20から根尖側へと延びている。一形態においては、ヘッド20およびコア16が一体に形成されるが、螺合(threading)、摩擦適合(friction fit)、溶接(レーザまたは電子ビーム)などによって互いに固定される別々の部品であってもよい。別個のアンカー(anchor)22(ステム(stem)または根尖部とも称される)が、ヘッド20とアンカー22とが協働してインプラント10上でヘッド20とアンカー22との間に多孔質の外側部分14を保持するよう、コア16に係合するように構成される。
【0011】
図示の例では、ヘッド20の歯冠側の端部24が、別個の支台(abutment)の対応する構造を受け入れる雄または雌の係合構造を備えるように構成されている。しかし、当然のことながら、図示の二回法インプラント10の代わりに、ヘッド20が、歯肉を貫いて延びて一回法インプラントを形成する高い高さを有してもよく、あるいは1ピースのインプラントを形成する一体の支台を有してもよい。
【0012】
ヘッド20は、根尖側の端面28へと延びる円柱形または先細りの外表面26を有している。外側部分12に当接して外側部分12をコア16上に保持する段部が根尖側の端面28によって形成されるよう、コア16は、外表面26の直径と比べて小さい外径を有しており、ヘッド20の根尖側の端面28から根尖側へと延びている。ある特定の形態においては、外側部分12が、コア16を受け入れる穴30を有するスリーブ(sleeve)またはカラー(collar)である。一形態においては、カラー12が、約0.03インチ(約0.75mm)という半径方向の厚さを有している。外側部分12の歯冠側の端部32が、根尖側の端面28に面し、さらには/あるいは当接する。外側部分12の根尖側の端部34は、アンカー22に面し、さらには/あるいは係合する。
【0013】
外側部分12をヘッド20とアンカー22との間に固定すべく、コア16の根尖側の端部56にアンカー22を固定することができる。アンカー22は、コア16を受け入れるための穴36を有することができ、次いでこれら2つの部品を一体に溶接し、外側部分12をコア16に恒久的に固定することができる。当然のことながら、螺合または圧入によって一体に保持されるコア16およびアンカー22や、アンカー22と一体のコア16や、上述のようにヘッド20と一体ではなく、ヘッド20から完全に分かれたコア16など、多孔質の外側部分12がコア16に隣接した位置に保たれる限りにおいて、多数の代替の構成が考えられる。
【0014】
コア16、ヘッド20、およびアンカー22(これらの部品のうちの1つ以上が分かれているか、あるいは一体に形成されているかにかかわらず)は、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、ジルコニウム、コバルトクロムモリブデン合金、一例としてポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのポリマー、セラミック、および/または複合材料などの適切な生体適合性材料で製作される。
【0015】
ヘッド20およびアンカー22の外表面26および37は、インプラント10を骨の穴に螺合させるためのねじ山38を有することができ、あるいは穴へと圧入されてもよい。したがって、外表面26および37は、代替または追加として、皮質骨および/または海綿骨の成長を促進するための表面処理をしてもよい。これに加え、あるいはこれに代えて、ヘッド20が歯肉層へと延びる場合に、ヘッドの外表面26を、上皮または軟組織の関門(barrier)を促進し、さらには/あるいは軟組織の成長を促進するように、処理することができる。この場合、関門または軟組織の成長の処理を、軟組織に隣接して位置させることができ、あるいは骨と軟組織との間の界面に位置させることができる。そのような処理として、マクロまたはマイクロスレッディング(threading)、周状または環状の溝、エッチング(酸によるエッチングなど)またはブラスト(例えば、HA粒子を含んでも含まなくてもよいが、サンドブラスト)によって引き起こされる他のパターン化された凹所または無作為な凹所、あるいはチタニア(酸化チタン)または軟組織と生体適合材料との間に何らかの付着を生み出す他の材料の皮膜を挙げることができる。外表面26および37の表面処理は、後述されるコア16の表面処理と同じでも、同じでなくてもよい。
【0016】
図4を参照すると、外側部分12を形成する多孔質材料14は、金属を含んでもよく、一形態においては、代用骨ならびに/あるいは細胞および組織の受容材料として有用な高度に多孔性の生体適合材料である多孔質タンタル部分40である。そのような材料の例は、インディアナ州ワルソーのZimmer, Inc.から一般的に入手可能なTrabecular Metal(商標)の技術を使用して製造される。Trabecular Metal(商標)は、Zimmer Technology, Inc.の商標である。そのような材料を、米国特許第5,282,861号(その開示が、ここでの言及によって本明細書にすべて援用される)に詳しく開示されている方法で化学蒸着(「CVD」)プロセスによってタンタルなどの生体適合性の金属で含浸および被覆される網状ガラス質炭素発泡体基材から形成することができる。ニオブ、タンタルおよびニオブの合金、あるいはタンタルおよびニオブの他の金属との合金など、他の金属も使用することもできる。
【0017】
図4に示されるとおり、多孔質タンタル構造40は、互いにつながった多数の部材、紐(ligament)、または梁(beam)42を含んでおり、これらの部材42の間に開いた空間44が定められ、各々の部材42が、一般に例えばタンタルなどの金属48の薄い膜で覆われた炭素の芯46を含んでいる。多孔質タンタル構造40の全体を貫く海綿骨の成長が妨げられないように、部材42間の開いた空間または通路44は、行き止まりのない連続的なチャネル(channel)のマトリックス(matrix)を形成している。換言すると、骨が、外側部分12によって形成されるインプラント10の外部表面50から、外側部分12の通路44を通って概ね半径方向に、コア16へと成長することができる。
【0018】
多孔質タンタルは、最大75%〜85%またはそれ以上の空隙を含むことができる。したがって、多孔質タンタルは、組成に関して実質的に一様かつ一貫的であり、自然の海綿骨の構造によく似ており、したがってインプラント10を患者の顎の周囲の骨へと固定して安定性を高めるべく、海綿骨が内側に成長することができるマトリックスをもたらす軽量で丈夫な多孔質構造である。そのような多孔質金属部品12の粗い外部表面は、上記から示唆されるように、初期の安定性をさらに高めるように、インプラント10を受け入れる穴を形成している隣接の骨との比較的高い摩擦係数を有している。この構造は、インプラントの移動を拘束することによって優れた審美的結果を生み出すことができる。これらのインプラントは、骨移植術などの追加の外科手術を必要とせずに配置することができ、減少または衰弱した歯槽部分や、骨の成長が異常に遅く、あるいは異常に少ない患者など、伝統的なインプラントの効果が少なかった領域に配置することができる。
【0019】
より具体的には、多孔質材料と骨との間の高レベルの摩擦が、術後に即座の安定性をもたらす。材料の表面から延びるタンタルの支柱が、骨の成長を刺激し、配置の時点でインプラントを固定することができる擦過(rasping)作用を生む。多孔質材料を形成するきわめて生体適合性の高いタンタル金属が、骨が材料に直接対向することを可能にする。骨が材料へと成長してインプラントを保持するための初期の機械的な固定を迅速に増大させる素早いオッセオインテグレーション応答をもたらすことを可能にする多孔性の足場をタンタルが形成する。骨が内側に成長したインプラントは、骨が表面に成長するにすぎない同等サイズのインプラントよりも高い安定性を有することができる。最後に、内側に成長した骨とそのような多孔質材料との複合体は、中実な金属インプラントよりもはるかに骨に近い弾性特性を有し、骨をインプラントの近くに維持することにつながる荷重環境を生み出す。
【0020】
初期の安定性に関しては、多孔質材料を有するインプラントが骨の穴または空洞へと挿入されるとき、多孔質材料が、インプラント装置が配置されようとする骨の側壁から骨片を削り、砕き、さらには/あるいはそぎ取ることによって骨へと食い込む。インプラントが穴または空洞へと挿入されるとき、この「擦過」作用によって、側壁にわずかな凹所またはくぼみを形成することができる。このことにより、インプラント装置が穴の内部でくぼみから出るべく回転するためのすき間を持たないため、穴または空洞におけるインプラント装置の回転またはねじり運動を制限することができる。
【0021】
さらに擦過作用は、微細孔への骨の圧縮ゆえに、インプラント装置および多孔質材料の微細孔へのオッセオインテグレーションを加速させる。第1に、骨構造が削られることで、骨が出血を生じ、これが骨芽細胞および破骨細胞などの有益な細胞の生成を推進することによって骨の成長を刺激する。第2に、多孔質材料の微細孔へと落下した骨片が、骨の再形成を助ける。骨の再形成のプロセスにおいて、骨芽細胞が骨片を足場として使用し、骨片の周囲に新たな骨材料を生成する。その一方で、骨を分解してカルシウムなどの無機物を骨片から再び血流へと放出することによる吸収を通じて、破骨細胞が骨片を取り除く。骨芽細胞が、微細孔およびインプラント装置の周囲から削り取られた骨片を、摘出部位の内部および周囲の新たな健康な骨で置き換え続ける。このように、多孔質材料は、ねじりまたは回転に対する抵抗に優れ、即座またはきわめて早期の荷重を可能にし、改良されたオッセオインテグレーションによって長期安定性を向上させる。骨が内側に成長したこのようなインプラントは、骨が表面に成長するにすぎない同等サイズのインプラントよりも高い安定性を有する。例えば、典型的には長さ16mmのインプラントを必要とする荷重に、長さ8mmのインプラントで適切に対処することができる。これらの利点は、多孔質インプラントの形態を問わずに実現可能である。
【0022】
多孔質タンタル構造40を、構造を個々の用途に合わせて選択的にあつらえるために、種々の密度にて作製することができる。特には、多孔質タンタルを、一様であっても、あるいは変化していてもよい実質的に任意の所望の多孔率および孔サイズに製造することができ、したがって骨の内側への成長ならびに石灰化のための優れたマトリックスをもたらすために、周囲の自然の骨に調和させることができる。これは、根尖側の端部においては孔が海綿骨に適合するようにより大きく、歯冠側の端部においては皮質骨に適合し、あるいは軟組織の内側への成長を受け入れるようにより小さいなど、単一のインプラントにおける孔サイズの漸次的変化を含む。さらには、多孔質タンタルを、高い機械的応力の領域においては孔がより少なくて密度がより高いように製造することができる。これを、タンタルにおいて孔をより小さくする代わりに、孔のすべてまたは一部を中実な材料で満たすことによって達成することもできる。
【0023】
多孔質構造にさらなる初期の機械的強度および安定性をもたらすために、多孔質構造に、非吸収性ポリマーまたは吸収性ポリマーなどのフィラー材料を含浸させることができる。多孔質構造への含浸のための非吸収性ポリマーの例として、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアクリル酸メチル(PMMA)、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、およびポリフェノールスルホンなどのポリアリールエーテルケトン(PAEK)を挙げることができる。
【0024】
吸収性ポリマーの例としては、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポロヒドロキシ酪酸(PHB)、およびポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ならびにこれらの共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、およびポリオルトエステルが挙げられる。吸収性のフィラー材料によってさらなる初期の機械的強度および安定性をもたらすことによって、チタン製の補強用インプラントコアが、必ずしも多孔質材料の全長を貫く必要がない。吸収性材料は、骨が成長してこの材料を置き換えるときに吸収されることで、インプラントの強度および安定性を維持すると考えられる。
【0025】
再び図1を参照すると、表面処理18が、骨への直接的な取り付けのために、内側部分またはコア16の外表面52の処理領域54へと行われる。そのようなコア16の骨への強力な取り付けにより、安定性が向上する。これに代え、あるいはこれに加えて、インプラント200および300(図6および7)について後述されるようにインプラント上のコアが歯肉を貫いて延びているときに上皮関門、軟組織関門、または軟組織の成長を促進するように表面処理の種類を選択することができる。
【0026】
処理領域54が外側部分12を貫いて概ね半径方向に成長する骨との直接接触のためにアクセス可能であるように、処理領域54は、外側部分12によって覆われている。一形態においては、処理領域54が、外側部分12の下方だけを延び、外側部分12に覆われていない部分を過ぎて延びないように、処理領域54は、外側部分12に整列または対応する。この場合、処理領域54の表面領域および外周が、外側部分12と同じまたはほぼ同じである。別の手法によれば、処理領域54は、コア16上の外側部分12によって直接には覆われない位置に配置してもよい。例えば、処理領域54が、コア16の全体を覆うことができる一方で、外側部分12が、コア16の一部分だけを歯冠−根尖の方向に延びてもよい。あるいは、処理領域54の外周が外側部分12の外周と同じ形状であるか否かにかかわらず外側部分12の下方だけを延びるよう、処理領域54は、外側部分12の表面積よりも小さい表面積を有してもよい。少なくとも、処理領域54の少なくとも一部分が外側部分12の下方を延びており、通路44を通ってインプラント10の外表面50からアクセス可能である。
【0027】
スリーブまたはカラーの代わりに、外側部分12が、インプラント10の外周の一部分だけを形成してもよく、あるいはインプラント10の1つ以上の側にだけ位置してもよい。その場合、コア16の処理領域54を、外側部分12によって覆われる領域だけに整列するように構成しても、あるいはそのように構成しなくてもよい。
【0028】
一形態においては、処理領域54が少なくとも粗面化される。これは、処理領域54をグリットブラストまたはサンドブラストし、コア16の外表面52に約20〜50μmの平均粗さ(Ra)を有するくぼみの無作為なパターン(random pattern)を生成することによって実行することができる。このブラスト処理を、ヒドロキシアパタイト(HA)または他の生体適合性材料を吹き付けることによって行うことができる。1つの手法によれば、処理領域54が、サンドブラストだけで処理されているが、代替として、サンドブラストに代え、あるいはサンドブラストに加えて、種々の異なる処理を受けることができる。例えば、無作為なまたはパターン化された粗面化を生成するための処理領域54の酸によるエッチングが挙げられる。
【0029】
処理18の他の例では、処理領域54が、生体適合性材料の少なくとも1つの皮膜を有することができる。皮膜は、HA、コラーゲン、ペプチド、またはコア16への骨の成長を促進する(さらには/あるいは、コアが歯肉を貫いて延びる場合に軟組織の成長を促進する)他の成長因子などの生体反応性材料を含むことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、皮膜は、抗菌性であってよく、Ag、Cu、またはZnなどの遷移金属イオン、他の殺菌性ポリマー、抗生物質、ならびに/あるいは処理領域54への細菌の定着を防止するためのナノスケールの凹凸を含むことができる。より良好な取り付けのために、他の皮膜を適用して、皮膜へ多孔性を形成してもよい。例として、Zimmer, Inc.によって提供され、骨または軟組織への固定を改善すべく皮膜を貫く微細孔および凹凸を形成するチタン粉末をコア16へと焼結させて含んでいる網目状構造チタン(Cancellous Structure Titanium(CSTi))を挙げることができる。処理領域54は、これに代え、あるいはこれに加えて、ねじ山または環状溝などの周方向を向いた凹凸や他の凹凸のパターン(マクロ、マイクロ、またはナノのいずれのスケールでもよい)などの他の粗面化処理を、骨(あるいは、コアが歯肉の付近または歯肉の中へと延びる場合には軟組織)への直接的な取り付けに意図的に関係する限りにおいて受けることができる。
【0030】
典型的には、インプラントは、インプラントの露出領域への処理を1つの工程で行うことができるよう、インプラントが完全に組み立てられた後にサンドブラストなどで処理される。しかしながら、この場合に、コア16の外表面52が処理され、次いで覆われるため、インプラント10の部品が、組み立ての前に別々に処理される。すなわち、最初にコア16を有するヘッド20、多孔性の外側部分12、およびアンカー22が、上述のように成形される。次いで、ヘッド20およびコア16が、骨または軟組織との直接的な係合のために上述のようにサンドブラストまたは他の方法によって処理される。ヘッド20およびコア16は、外側部分12がコア16へと取り付けられる前かつヘッド20がアンカー22へと取り付けられる前に、アンカー22とは別に処理される。
【0031】
一形態においては、コア16の根尖側の端部56を含むヘッド20の全体が、ブラスト処理される。しかし、当然のことながら、コア16だけが処理またはブラストされる領域であって、ヘッド20の残りの部分は、処理からマスクされてもよい。これは、インプラント10の他の露出領域が、皮膜、異なる粒子または異なるサイズの粒子によるブラスト、パターンエッチング、など、コア16において実行される処理によって損傷する可能性がある異なる種類の処理を受ける場合に、望ましいかもしれない。また、根尖側の端部56の側壁57を、インプラント10が組み立てられたときにアンカー22内に隠れるため、マスクすることができ、あるいは必要であれば滑らかな接続面をもたらすためにマスクすることができる。
【0032】
ひとたび処理領域54が完成すると、多孔性の外側部分12がコア16へと取り付けられ、次いでアンカー22がコア16へと取り付けられ、レーザ溶接、螺合、または他の恒久的接続によってコア16に固定される。図示の形態においては、コア16の根尖側の端部56がアンカー22の穴36に配置された後で、二者がアンカー22の根尖側の端部60の継ぎ目58に沿って一体にレーザ溶接される。ヘッド20およびアンカー22が一体にレーザ溶接されるとき、溶接プロセスによってアンカー22の粗面化処理が不都合にも平滑化されてしまう可能性があり、溶接による影響を被った領域についてアンカー22へとサンドブラスト処理を再び行う必要がある場合がある。
【0033】
インプラント10の別の態様においては、コア16が、ヘッド20と外側部分12との間の回転を制限するように成形される。インプラント10が骨の穴へと挿入されているときに外側部分12がコア16およびヘッド20に対して回転可能であると、(ヘッド20が依然として回転する一方で)外側部分12が不都合にも骨と結合し、インプラント10を骨の穴へと最後まで正しく挿入することができない可能性がある。また、良好なオッセオインテグレーションが生じるのは、咬合力が加わるときに口腔における多孔性の外側部分12の位置の変化(例えば、インプラント上での回転による)があまり大きくなく、外側部分12を貫く初期の脆弱な骨の成長が維持される場合である。これにより、インプラント10にさらなる長期および短期安定性がもたらされる。これらの目標を達成するために、回転防止の接続が、外側部分12とコア16との間に形成される。
【0034】
詳細には、インプラント10が通常は長手軸Lを定める一方で、コア16の外周19が軸Lに垂直な断面上を延びている。また、外側部分12の穴30を定め、軸Lの周囲を延びている概ね円柱形の壁62を外側部分12は有している。
【0035】
コア16の外表面52は、少なくとも1つの概ね長手方向に延びる溝またはフルート(flute)68を有している。図示の形態においては、外表面52が、コア16の周囲のフルート68の円周配列を形成している。したがって、フルート68が、外周19に側面を形成し、外側部分12がコア16へと軸方向に挿入されるときに外側部分12の壁62へと食い込む比較的尖った角またはエッジ64を有する概ね多角形の形状を外周19に与えている。エッジ64は、各々のフルート68を半径rで凹状に湾曲した表面66によって形成することによって比較的鋭く形成される。したがって、一形態においては、コア16が少なくとも2つの隣接する凹状の表面66を有し、隣接する2つの表面66の接合部が、カラーとの係合のための尖端またはエッジ64を形成する。これにより、カラー12をコア16に対して回転して固定するために、エッジ64が外側部分12の壁62に概ね固定される。
【0036】
凹状の表面66の半径rは、コア16が咬合力を適切に吸収するための強度を有するために十分な大きさを保つように、十分に小さく設定される。さらに、半径rは、コア16とカラー12との間に強力な非回転の接続をもたらすための鋭いエッジを有する尖端64をもたらすために十分に大きい。一形態においては、外周19は、インプラントの所望のサイズに応じて、約0.060〜0.230インチの直径d(エッジからエッジまで)および約0.031〜0.250インチの半径rを有する6〜12個の凹状の面66の間でさまざま異なる。図示の形態においては、コア16の8つの側面66が、約0.0625インチの半径および約0.120インチの直径(エッジからエッジまで)を有している。壁62の内径は、約0.114インチであり、各々のエッジ64が少なくとも約0.003インチだけ壁62へと食い込む。製作公差により、食い込みの深さは約0.002インチ〜0.006インチの間となりうる。一形態においては、強力な回転防止の係合を形成するために、エッジ64は、少なくとも約0.002インチは壁62へと食い込むべきである。
【0037】
半径rは、多孔性の外側部分12への概ね一様な食い込み深さを維持するために、すべての側面66について同じであるが、当然のことながら、半径rは所望に応じて異なってもよい。これにより、他よりも強力な保持のために、コア16の反対向きの2つの側または4つの側など、外周19の周上の特定の地点においてのみ半径方向に大きく延びて壁62へとより深く食い込むエッジを生じさせることができる。
【0038】
代替の形態においては、外周19が、他の非円形の形状であってよい一方で、壁62が円形のままである。これにより、外側部分12に対して回転する(あるいは反対に、外側部分12を回転させる)ためのすき間を有していない変化する半径を有するコア16の断面が生じる。この場合、外周19は、平坦な側面の多角形(正多角形であっても、正多角形でなくてもよい)または広い意味での長円形(楕円、長円、2つの半円を直線でつないだ形状、など)であってよく、あるいは湾曲した側面および平坦な側面の何らかの他の組み合わせであってよい。他の代替例においては、壁62および外周19が、コア16と壁62との間の回転をさらに上手く減らすために、一例としては断面において長円形の外周および六角形の壁を有するなど、異なる非円形の形状を有する。これらの場合、外周19に対する壁62の初期の回転により、摩擦またはコア16の一部分の壁62への食い込みによって壁62がコア16に対して固定される。
【0039】
さらに別の代替の形態においては、インプラントが、コア16の外表面52が円柱形である一方で、外側部分12の壁62が非円形であることで、両者の間に摩擦適合が形成されるよう、対向する構成を有することができる。
【0040】
さらなる代替の形態においては、外周19が、壁62の非円形の形状に対応する非円形の形状を有することで、2つの構成部品の間の回転を制限することができる。例えば、外周19またはコア16は、回転に抗するべく壁62の平坦な部位に一致して係合する少なくとも1つの平坦な面または部位を備える外表面52を有することができる。一形態においては、コア16および壁62の両方が、整列した多角形断面を有することができる。
【0041】
さらに、インプラント10が概ね円柱形の外表面50を有することができる一方で、インプラント10が骨の穴へと押し込みまたはねじ込みされるときの周囲の骨との摩擦をさらに大きくするために、根尖側へと延びるにつれて直径が減少するようなモールス型のテーパをインプラント10が有してもよいことに、注意すべきである。また、インプラント10の外周が、骨の円形の穴とのさらなる摩擦を生じさせるための非円形の形状を有してもよい。
【0042】
図5を参照すると、代替のインプラント100は、ポケット108(この例では、テーパ状の概ね弾丸形のポケット108)を形成するようにコア106の根尖側の端部104を覆う多孔性の外側部分102を有することができる。この場合、コア106の外表面110は、通路44(図4)によって多孔性の外側部分102の全体を貫いて延びる骨(あるいは、コア106が歯肉に隣接または歯肉を貫通して延びる場合には、軟組織)への直接的な付着のために、インプラント10に関して上述した処理18と同様の処理112を受ける。
【0043】
図6を参照すると、別のインプラントの形態を、骨に加え、あるいは骨よりもむしろ、軟組織を受け入れるためのインプラント上の多孔性の外側部分およびコアのためにもたらすことができる。例えば、インプラント200は、歯肉を貫通する張り出した端部202がインプラント200の骨内部分212から歯冠側へと延びている一回法のインプラントである。この場合、張り出した端部202の外側部分204は、コア206の周囲に取り付けられた完全または部分的なリング(ring)の形態であってよい。処理210は、インプラント10と同様にコア206の外表面208に行われている。
【0044】
図7を参照すると、さらに別の形態においては、支台300は、この支台が別個の二回法の歯科インプラントに取り付けたときに軟組織を受け入れるための支台上のコア304の周囲に取り付けられた多孔性の外側部分またはリング302を有している。コア302は、インプラント10において上述したような処理308を受けた外表面306を有している。
【0045】
別の手法によれば、本明細書において述べた処理領域がゾーンであり、各々のインプラントが、複数のゾーンを有することができ、各々のゾーンが別の目的を達成するように選択された処理を受ける。一形態においては、インプラントの長手軸に沿って少なくとも2つの別個のゾーンが存在し、それらのゾーンは、互いに隣接していても、離れていてもよい。ある事例では、1つ以上のゾーンを骨の内部に配置することができ、その処理が骨の成長のために選択される一方で、他の1つ以上のゾーンが軟組織の内部へと延び、それらの処理が軟組織の成長(あるいは、上述の関門(barrier)の確立)のために選択される。骨の内部のゾーンを、皮質骨または海綿骨の成長のために特に選択することができる。一形態においては、インプラント10は、例えば骨の成長のために、複数の軸方向に間隔を空けて位置する部分的なまたは完全なリングを有することができる。図示の例では、インプラント200が、軟組織の成長のための1つ以上のゾーン214と、骨の成長のための1つ以上の多孔質のゾーンまたは処理ゾーン216(図6に破線で示されている)とを有することもできる。同様に、支台300も、ゾーンのうちの1つ以上を有することができ、ゾーンのうちの1つ以上を有するインプラントによって支持されることができる。
【0046】
また、当然のことながら、内側部分の処理領域を意図的に覆う多孔性の外側部分の組み合わせを、骨の長さに沿ったインプラントや、膝、股、肩、肘、背骨などの関節のインプラントなど、歯科インプラント以外の骨内インプラントに使用できる。
【0047】
本発明を好ましい設計を有するものとして説明したが、本発明を、本発明の技術的思想および技術的範囲の範囲内でさらに変更することが可能である。したがって、本出願は、本発明の全体的な原理を使用する本発明のあらゆる変種、用途、および翻案を包含する。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知または通例の実務に含まれ、添付の特許請求の範囲の技術的範囲に含まれるような本明細書の開示からの逸脱も包含する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/624,608号の継続出願であって、この米国特許出願の利益を主張し、この米国特許出願の内容を、ここでの言及によって本明細書にすべて援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多孔性インプラントに関し、特には多孔質材料をコアに取り付けて有するインプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
歯科インプラントは、患者の本来の歯が喪失または損傷した患者の歯群の1つ以上の欠如歯部に修復歯または人工歯を固定するために、一般的に使用されている。歯科インプラントは、典型的には、欠如歯部において患者の下顎骨または上顎骨に開けられた穴へとねじ込まれ、あるいは圧入される。典型的には、歯科インプラント装置は、1ピースまたは2ピースにて提供される。2ピースの装置においては、固定部材またはインプラントが、別個の歯冠支持具(歯科支台)を支持し、歯冠支持具が、インプラントと修復歯との間の仲立ちをもたらす。1ピースの一体型の装置においては、装置が、装置のインプラント部の歯冠側に支台部を有している。いずれの場合も、修復歯は、典型的には、公知の方法に従って作られた陶歯冠である。
【0004】
2ピースの装置としては、高さが下顎骨または上顎骨の頂点までである二回法手術用インプラント(骨内インプラントとも称される)が存在する。この場合、手術は多くの場合に2段階で実行される。最初の段階において、欠如歯部において患者の歯肉が切開され、この欠如歯部において患者の下顎骨または上顎骨に穴が開けられ、次いで歯科インプラントが適切なドライバを使用して穴へとねじ込まれ、あるいは打ち込まれる。その後に、インプラントの支台との結合用の構造を閉じるために、インプラントへとキャップが装着され、歯肉がインプラントを覆って縫合される。数ヵ月の期間を経て、患者の顎骨がインプラントの周囲に成長し、インプラントを周囲の骨に堅固に固定する。これはオッセオインテグレーションとして知られるプロセスである。
【0005】
オッセオインテグレーションに続く手術の第2の段階においては、歯科医がインプラントの部位において歯肉を再び開き、インプラントへと支台を固定し、所望により仮の人工歯または仮の治癒用部材を固定する。次いで、適切な恒久用の人工歯または歯冠が、支台ならびに周囲の歯肉組織および歯群から得られた1つ以上の歯型などから作成される。仮の人工歯または治癒用部材が取り除かれ、例えばセメントまたは固定具によって支台へと取り付けられる恒久用の人工歯によって置き換えられる。
【0006】
あるいは、歯肉貫通型(transgingival)インプラントとも称される一回法手術用の2ピースインプラントが、支台との結合のために歯肉を貫いて延びるがゆえに、1つの段階にて配置される。1ピースのインプラントも、1つの段階にて顎に配置される。
【0007】
既存の歯科インプラントの周囲の骨へのオッセオインテグレーションは、適切であることが証明されているが、歯科インプラントのオッセオインテグレーションのさらなる改善が望まれる。例えば、患者は、手術からインプラントが咬合力を十分に受けることができる時点までの治癒時間が、最短であることを好むと考えられる。また、喫煙者、糖尿病患者、および/または異常に遅い骨の成長などの高リスク患者のために、強力なオッセオインテグレーションのインプラントを提供することが望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】歯科インプラント装置の側方からの斜視図である。
【図2】図1の歯科インプラント装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示した線3−3に沿う、図1の歯科インプラント装置の下方から見た断面図である。
【図4】図1の歯科インプラント装置の表面の多孔質材料の一部分の拡大図である。
【図5】代替の歯科インプラント装置の側面断面図である。
【図6】さらに別の代替の歯科インプラント装置の側面部分断面図である。
【図7】さらなる代替の歯科インプラント装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜3を参照すると、インプラントへのオッセオインテグレーションを改善するために、骨に配置されるインプラント装置10は、インプラント装置の長期安定性を向上させるべく骨が内側に成長することができる多孔質材料14からなる外側部分12を有している。そのような多孔質材料は、さらに詳しく後述されるとおり、周囲の骨との高い摩擦係数ゆえに、即座に荷重を加えてもよいように短期安定性も向上させる。外側部分を支持してインプラント装置10に強度を加える内側部分またはコア16の表面または周囲に外側部分12を配置することができる。コア16は、外側部分12を貫いてコア16へと成長した骨とのオッセオインテグレーションをさらに向上させるための表面処理18を有することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、コア16は、インプラント10を骨の穴に適切に配置し、長期および短期の両方の安定性を向上させるために、コア16に対する外側部分12の回転を制限するように構成された外形または外周19を有することもできる。
【0010】
次に、さらに詳しくは、図示の例では、インプラント10は、下顎骨または上顎骨へと挿入される歯科インプラントである。インプラント10は、1つ以上の人工歯を固定するために使用され、歯冠側の頭部またはヘッド20を備えている。内側部分またはコア16は、ヘッド20から根尖側へと延びている。一形態においては、ヘッド20およびコア16が一体に形成されるが、螺合(threading)、摩擦適合(friction fit)、溶接(レーザまたは電子ビーム)などによって互いに固定される別々の部品であってもよい。別個のアンカー(anchor)22(ステム(stem)または根尖部とも称される)が、ヘッド20とアンカー22とが協働してインプラント10上でヘッド20とアンカー22との間に多孔質の外側部分14を保持するよう、コア16に係合するように構成される。
【0011】
図示の例では、ヘッド20の歯冠側の端部24が、別個の支台(abutment)の対応する構造を受け入れる雄または雌の係合構造を備えるように構成されている。しかし、当然のことながら、図示の二回法インプラント10の代わりに、ヘッド20が、歯肉を貫いて延びて一回法インプラントを形成する高い高さを有してもよく、あるいは1ピースのインプラントを形成する一体の支台を有してもよい。
【0012】
ヘッド20は、根尖側の端面28へと延びる円柱形または先細りの外表面26を有している。外側部分12に当接して外側部分12をコア16上に保持する段部が根尖側の端面28によって形成されるよう、コア16は、外表面26の直径と比べて小さい外径を有しており、ヘッド20の根尖側の端面28から根尖側へと延びている。ある特定の形態においては、外側部分12が、コア16を受け入れる穴30を有するスリーブ(sleeve)またはカラー(collar)である。一形態においては、カラー12が、約0.03インチ(約0.75mm)という半径方向の厚さを有している。外側部分12の歯冠側の端部32が、根尖側の端面28に面し、さらには/あるいは当接する。外側部分12の根尖側の端部34は、アンカー22に面し、さらには/あるいは係合する。
【0013】
外側部分12をヘッド20とアンカー22との間に固定すべく、コア16の根尖側の端部56にアンカー22を固定することができる。アンカー22は、コア16を受け入れるための穴36を有することができ、次いでこれら2つの部品を一体に溶接し、外側部分12をコア16に恒久的に固定することができる。当然のことながら、螺合または圧入によって一体に保持されるコア16およびアンカー22や、アンカー22と一体のコア16や、上述のようにヘッド20と一体ではなく、ヘッド20から完全に分かれたコア16など、多孔質の外側部分12がコア16に隣接した位置に保たれる限りにおいて、多数の代替の構成が考えられる。
【0014】
コア16、ヘッド20、およびアンカー22(これらの部品のうちの1つ以上が分かれているか、あるいは一体に形成されているかにかかわらず)は、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、ジルコニウム、コバルトクロムモリブデン合金、一例としてポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのポリマー、セラミック、および/または複合材料などの適切な生体適合性材料で製作される。
【0015】
ヘッド20およびアンカー22の外表面26および37は、インプラント10を骨の穴に螺合させるためのねじ山38を有することができ、あるいは穴へと圧入されてもよい。したがって、外表面26および37は、代替または追加として、皮質骨および/または海綿骨の成長を促進するための表面処理をしてもよい。これに加え、あるいはこれに代えて、ヘッド20が歯肉層へと延びる場合に、ヘッドの外表面26を、上皮または軟組織の関門(barrier)を促進し、さらには/あるいは軟組織の成長を促進するように、処理することができる。この場合、関門または軟組織の成長の処理を、軟組織に隣接して位置させることができ、あるいは骨と軟組織との間の界面に位置させることができる。そのような処理として、マクロまたはマイクロスレッディング(threading)、周状または環状の溝、エッチング(酸によるエッチングなど)またはブラスト(例えば、HA粒子を含んでも含まなくてもよいが、サンドブラスト)によって引き起こされる他のパターン化された凹所または無作為な凹所、あるいはチタニア(酸化チタン)または軟組織と生体適合材料との間に何らかの付着を生み出す他の材料の皮膜を挙げることができる。外表面26および37の表面処理は、後述されるコア16の表面処理と同じでも、同じでなくてもよい。
【0016】
図4を参照すると、外側部分12を形成する多孔質材料14は、金属を含んでもよく、一形態においては、代用骨ならびに/あるいは細胞および組織の受容材料として有用な高度に多孔性の生体適合材料である多孔質タンタル部分40である。そのような材料の例は、インディアナ州ワルソーのZimmer, Inc.から一般的に入手可能なTrabecular Metal(商標)の技術を使用して製造される。Trabecular Metal(商標)は、Zimmer Technology, Inc.の商標である。そのような材料を、米国特許第5,282,861号(その開示が、ここでの言及によって本明細書にすべて援用される)に詳しく開示されている方法で化学蒸着(「CVD」)プロセスによってタンタルなどの生体適合性の金属で含浸および被覆される網状ガラス質炭素発泡体基材から形成することができる。ニオブ、タンタルおよびニオブの合金、あるいはタンタルおよびニオブの他の金属との合金など、他の金属も使用することもできる。
【0017】
図4に示されるとおり、多孔質タンタル構造40は、互いにつながった多数の部材、紐(ligament)、または梁(beam)42を含んでおり、これらの部材42の間に開いた空間44が定められ、各々の部材42が、一般に例えばタンタルなどの金属48の薄い膜で覆われた炭素の芯46を含んでいる。多孔質タンタル構造40の全体を貫く海綿骨の成長が妨げられないように、部材42間の開いた空間または通路44は、行き止まりのない連続的なチャネル(channel)のマトリックス(matrix)を形成している。換言すると、骨が、外側部分12によって形成されるインプラント10の外部表面50から、外側部分12の通路44を通って概ね半径方向に、コア16へと成長することができる。
【0018】
多孔質タンタルは、最大75%〜85%またはそれ以上の空隙を含むことができる。したがって、多孔質タンタルは、組成に関して実質的に一様かつ一貫的であり、自然の海綿骨の構造によく似ており、したがってインプラント10を患者の顎の周囲の骨へと固定して安定性を高めるべく、海綿骨が内側に成長することができるマトリックスをもたらす軽量で丈夫な多孔質構造である。そのような多孔質金属部品12の粗い外部表面は、上記から示唆されるように、初期の安定性をさらに高めるように、インプラント10を受け入れる穴を形成している隣接の骨との比較的高い摩擦係数を有している。この構造は、インプラントの移動を拘束することによって優れた審美的結果を生み出すことができる。これらのインプラントは、骨移植術などの追加の外科手術を必要とせずに配置することができ、減少または衰弱した歯槽部分や、骨の成長が異常に遅く、あるいは異常に少ない患者など、伝統的なインプラントの効果が少なかった領域に配置することができる。
【0019】
より具体的には、多孔質材料と骨との間の高レベルの摩擦が、術後に即座の安定性をもたらす。材料の表面から延びるタンタルの支柱が、骨の成長を刺激し、配置の時点でインプラントを固定することができる擦過(rasping)作用を生む。多孔質材料を形成するきわめて生体適合性の高いタンタル金属が、骨が材料に直接対向することを可能にする。骨が材料へと成長してインプラントを保持するための初期の機械的な固定を迅速に増大させる素早いオッセオインテグレーション応答をもたらすことを可能にする多孔性の足場をタンタルが形成する。骨が内側に成長したインプラントは、骨が表面に成長するにすぎない同等サイズのインプラントよりも高い安定性を有することができる。最後に、内側に成長した骨とそのような多孔質材料との複合体は、中実な金属インプラントよりもはるかに骨に近い弾性特性を有し、骨をインプラントの近くに維持することにつながる荷重環境を生み出す。
【0020】
初期の安定性に関しては、多孔質材料を有するインプラントが骨の穴または空洞へと挿入されるとき、多孔質材料が、インプラント装置が配置されようとする骨の側壁から骨片を削り、砕き、さらには/あるいはそぎ取ることによって骨へと食い込む。インプラントが穴または空洞へと挿入されるとき、この「擦過」作用によって、側壁にわずかな凹所またはくぼみを形成することができる。このことにより、インプラント装置が穴の内部でくぼみから出るべく回転するためのすき間を持たないため、穴または空洞におけるインプラント装置の回転またはねじり運動を制限することができる。
【0021】
さらに擦過作用は、微細孔への骨の圧縮ゆえに、インプラント装置および多孔質材料の微細孔へのオッセオインテグレーションを加速させる。第1に、骨構造が削られることで、骨が出血を生じ、これが骨芽細胞および破骨細胞などの有益な細胞の生成を推進することによって骨の成長を刺激する。第2に、多孔質材料の微細孔へと落下した骨片が、骨の再形成を助ける。骨の再形成のプロセスにおいて、骨芽細胞が骨片を足場として使用し、骨片の周囲に新たな骨材料を生成する。その一方で、骨を分解してカルシウムなどの無機物を骨片から再び血流へと放出することによる吸収を通じて、破骨細胞が骨片を取り除く。骨芽細胞が、微細孔およびインプラント装置の周囲から削り取られた骨片を、摘出部位の内部および周囲の新たな健康な骨で置き換え続ける。このように、多孔質材料は、ねじりまたは回転に対する抵抗に優れ、即座またはきわめて早期の荷重を可能にし、改良されたオッセオインテグレーションによって長期安定性を向上させる。骨が内側に成長したこのようなインプラントは、骨が表面に成長するにすぎない同等サイズのインプラントよりも高い安定性を有する。例えば、典型的には長さ16mmのインプラントを必要とする荷重に、長さ8mmのインプラントで適切に対処することができる。これらの利点は、多孔質インプラントの形態を問わずに実現可能である。
【0022】
多孔質タンタル構造40を、構造を個々の用途に合わせて選択的にあつらえるために、種々の密度にて作製することができる。特には、多孔質タンタルを、一様であっても、あるいは変化していてもよい実質的に任意の所望の多孔率および孔サイズに製造することができ、したがって骨の内側への成長ならびに石灰化のための優れたマトリックスをもたらすために、周囲の自然の骨に調和させることができる。これは、根尖側の端部においては孔が海綿骨に適合するようにより大きく、歯冠側の端部においては皮質骨に適合し、あるいは軟組織の内側への成長を受け入れるようにより小さいなど、単一のインプラントにおける孔サイズの漸次的変化を含む。さらには、多孔質タンタルを、高い機械的応力の領域においては孔がより少なくて密度がより高いように製造することができる。これを、タンタルにおいて孔をより小さくする代わりに、孔のすべてまたは一部を中実な材料で満たすことによって達成することもできる。
【0023】
多孔質構造にさらなる初期の機械的強度および安定性をもたらすために、多孔質構造に、非吸収性ポリマーまたは吸収性ポリマーなどのフィラー材料を含浸させることができる。多孔質構造への含浸のための非吸収性ポリマーの例として、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアクリル酸メチル(PMMA)、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、およびポリフェノールスルホンなどのポリアリールエーテルケトン(PAEK)を挙げることができる。
【0024】
吸収性ポリマーの例としては、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポロヒドロキシ酪酸(PHB)、およびポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ならびにこれらの共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、およびポリオルトエステルが挙げられる。吸収性のフィラー材料によってさらなる初期の機械的強度および安定性をもたらすことによって、チタン製の補強用インプラントコアが、必ずしも多孔質材料の全長を貫く必要がない。吸収性材料は、骨が成長してこの材料を置き換えるときに吸収されることで、インプラントの強度および安定性を維持すると考えられる。
【0025】
再び図1を参照すると、表面処理18が、骨への直接的な取り付けのために、内側部分またはコア16の外表面52の処理領域54へと行われる。そのようなコア16の骨への強力な取り付けにより、安定性が向上する。これに代え、あるいはこれに加えて、インプラント200および300(図6および7)について後述されるようにインプラント上のコアが歯肉を貫いて延びているときに上皮関門、軟組織関門、または軟組織の成長を促進するように表面処理の種類を選択することができる。
【0026】
処理領域54が外側部分12を貫いて概ね半径方向に成長する骨との直接接触のためにアクセス可能であるように、処理領域54は、外側部分12によって覆われている。一形態においては、処理領域54が、外側部分12の下方だけを延び、外側部分12に覆われていない部分を過ぎて延びないように、処理領域54は、外側部分12に整列または対応する。この場合、処理領域54の表面領域および外周が、外側部分12と同じまたはほぼ同じである。別の手法によれば、処理領域54は、コア16上の外側部分12によって直接には覆われない位置に配置してもよい。例えば、処理領域54が、コア16の全体を覆うことができる一方で、外側部分12が、コア16の一部分だけを歯冠−根尖の方向に延びてもよい。あるいは、処理領域54の外周が外側部分12の外周と同じ形状であるか否かにかかわらず外側部分12の下方だけを延びるよう、処理領域54は、外側部分12の表面積よりも小さい表面積を有してもよい。少なくとも、処理領域54の少なくとも一部分が外側部分12の下方を延びており、通路44を通ってインプラント10の外表面50からアクセス可能である。
【0027】
スリーブまたはカラーの代わりに、外側部分12が、インプラント10の外周の一部分だけを形成してもよく、あるいはインプラント10の1つ以上の側にだけ位置してもよい。その場合、コア16の処理領域54を、外側部分12によって覆われる領域だけに整列するように構成しても、あるいはそのように構成しなくてもよい。
【0028】
一形態においては、処理領域54が少なくとも粗面化される。これは、処理領域54をグリットブラストまたはサンドブラストし、コア16の外表面52に約20〜50μmの平均粗さ(Ra)を有するくぼみの無作為なパターン(random pattern)を生成することによって実行することができる。このブラスト処理を、ヒドロキシアパタイト(HA)または他の生体適合性材料を吹き付けることによって行うことができる。1つの手法によれば、処理領域54が、サンドブラストだけで処理されているが、代替として、サンドブラストに代え、あるいはサンドブラストに加えて、種々の異なる処理を受けることができる。例えば、無作為なまたはパターン化された粗面化を生成するための処理領域54の酸によるエッチングが挙げられる。
【0029】
処理18の他の例では、処理領域54が、生体適合性材料の少なくとも1つの皮膜を有することができる。皮膜は、HA、コラーゲン、ペプチド、またはコア16への骨の成長を促進する(さらには/あるいは、コアが歯肉を貫いて延びる場合に軟組織の成長を促進する)他の成長因子などの生体反応性材料を含むことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、皮膜は、抗菌性であってよく、Ag、Cu、またはZnなどの遷移金属イオン、他の殺菌性ポリマー、抗生物質、ならびに/あるいは処理領域54への細菌の定着を防止するためのナノスケールの凹凸を含むことができる。より良好な取り付けのために、他の皮膜を適用して、皮膜へ多孔性を形成してもよい。例として、Zimmer, Inc.によって提供され、骨または軟組織への固定を改善すべく皮膜を貫く微細孔および凹凸を形成するチタン粉末をコア16へと焼結させて含んでいる網目状構造チタン(Cancellous Structure Titanium(CSTi))を挙げることができる。処理領域54は、これに代え、あるいはこれに加えて、ねじ山または環状溝などの周方向を向いた凹凸や他の凹凸のパターン(マクロ、マイクロ、またはナノのいずれのスケールでもよい)などの他の粗面化処理を、骨(あるいは、コアが歯肉の付近または歯肉の中へと延びる場合には軟組織)への直接的な取り付けに意図的に関係する限りにおいて受けることができる。
【0030】
典型的には、インプラントは、インプラントの露出領域への処理を1つの工程で行うことができるよう、インプラントが完全に組み立てられた後にサンドブラストなどで処理される。しかしながら、この場合に、コア16の外表面52が処理され、次いで覆われるため、インプラント10の部品が、組み立ての前に別々に処理される。すなわち、最初にコア16を有するヘッド20、多孔性の外側部分12、およびアンカー22が、上述のように成形される。次いで、ヘッド20およびコア16が、骨または軟組織との直接的な係合のために上述のようにサンドブラストまたは他の方法によって処理される。ヘッド20およびコア16は、外側部分12がコア16へと取り付けられる前かつヘッド20がアンカー22へと取り付けられる前に、アンカー22とは別に処理される。
【0031】
一形態においては、コア16の根尖側の端部56を含むヘッド20の全体が、ブラスト処理される。しかし、当然のことながら、コア16だけが処理またはブラストされる領域であって、ヘッド20の残りの部分は、処理からマスクされてもよい。これは、インプラント10の他の露出領域が、皮膜、異なる粒子または異なるサイズの粒子によるブラスト、パターンエッチング、など、コア16において実行される処理によって損傷する可能性がある異なる種類の処理を受ける場合に、望ましいかもしれない。また、根尖側の端部56の側壁57を、インプラント10が組み立てられたときにアンカー22内に隠れるため、マスクすることができ、あるいは必要であれば滑らかな接続面をもたらすためにマスクすることができる。
【0032】
ひとたび処理領域54が完成すると、多孔性の外側部分12がコア16へと取り付けられ、次いでアンカー22がコア16へと取り付けられ、レーザ溶接、螺合、または他の恒久的接続によってコア16に固定される。図示の形態においては、コア16の根尖側の端部56がアンカー22の穴36に配置された後で、二者がアンカー22の根尖側の端部60の継ぎ目58に沿って一体にレーザ溶接される。ヘッド20およびアンカー22が一体にレーザ溶接されるとき、溶接プロセスによってアンカー22の粗面化処理が不都合にも平滑化されてしまう可能性があり、溶接による影響を被った領域についてアンカー22へとサンドブラスト処理を再び行う必要がある場合がある。
【0033】
インプラント10の別の態様においては、コア16が、ヘッド20と外側部分12との間の回転を制限するように成形される。インプラント10が骨の穴へと挿入されているときに外側部分12がコア16およびヘッド20に対して回転可能であると、(ヘッド20が依然として回転する一方で)外側部分12が不都合にも骨と結合し、インプラント10を骨の穴へと最後まで正しく挿入することができない可能性がある。また、良好なオッセオインテグレーションが生じるのは、咬合力が加わるときに口腔における多孔性の外側部分12の位置の変化(例えば、インプラント上での回転による)があまり大きくなく、外側部分12を貫く初期の脆弱な骨の成長が維持される場合である。これにより、インプラント10にさらなる長期および短期安定性がもたらされる。これらの目標を達成するために、回転防止の接続が、外側部分12とコア16との間に形成される。
【0034】
詳細には、インプラント10が通常は長手軸Lを定める一方で、コア16の外周19が軸Lに垂直な断面上を延びている。また、外側部分12の穴30を定め、軸Lの周囲を延びている概ね円柱形の壁62を外側部分12は有している。
【0035】
コア16の外表面52は、少なくとも1つの概ね長手方向に延びる溝またはフルート(flute)68を有している。図示の形態においては、外表面52が、コア16の周囲のフルート68の円周配列を形成している。したがって、フルート68が、外周19に側面を形成し、外側部分12がコア16へと軸方向に挿入されるときに外側部分12の壁62へと食い込む比較的尖った角またはエッジ64を有する概ね多角形の形状を外周19に与えている。エッジ64は、各々のフルート68を半径rで凹状に湾曲した表面66によって形成することによって比較的鋭く形成される。したがって、一形態においては、コア16が少なくとも2つの隣接する凹状の表面66を有し、隣接する2つの表面66の接合部が、カラーとの係合のための尖端またはエッジ64を形成する。これにより、カラー12をコア16に対して回転して固定するために、エッジ64が外側部分12の壁62に概ね固定される。
【0036】
凹状の表面66の半径rは、コア16が咬合力を適切に吸収するための強度を有するために十分な大きさを保つように、十分に小さく設定される。さらに、半径rは、コア16とカラー12との間に強力な非回転の接続をもたらすための鋭いエッジを有する尖端64をもたらすために十分に大きい。一形態においては、外周19は、インプラントの所望のサイズに応じて、約0.060〜0.230インチの直径d(エッジからエッジまで)および約0.031〜0.250インチの半径rを有する6〜12個の凹状の面66の間でさまざま異なる。図示の形態においては、コア16の8つの側面66が、約0.0625インチの半径および約0.120インチの直径(エッジからエッジまで)を有している。壁62の内径は、約0.114インチであり、各々のエッジ64が少なくとも約0.003インチだけ壁62へと食い込む。製作公差により、食い込みの深さは約0.002インチ〜0.006インチの間となりうる。一形態においては、強力な回転防止の係合を形成するために、エッジ64は、少なくとも約0.002インチは壁62へと食い込むべきである。
【0037】
半径rは、多孔性の外側部分12への概ね一様な食い込み深さを維持するために、すべての側面66について同じであるが、当然のことながら、半径rは所望に応じて異なってもよい。これにより、他よりも強力な保持のために、コア16の反対向きの2つの側または4つの側など、外周19の周上の特定の地点においてのみ半径方向に大きく延びて壁62へとより深く食い込むエッジを生じさせることができる。
【0038】
代替の形態においては、外周19が、他の非円形の形状であってよい一方で、壁62が円形のままである。これにより、外側部分12に対して回転する(あるいは反対に、外側部分12を回転させる)ためのすき間を有していない変化する半径を有するコア16の断面が生じる。この場合、外周19は、平坦な側面の多角形(正多角形であっても、正多角形でなくてもよい)または広い意味での長円形(楕円、長円、2つの半円を直線でつないだ形状、など)であってよく、あるいは湾曲した側面および平坦な側面の何らかの他の組み合わせであってよい。他の代替例においては、壁62および外周19が、コア16と壁62との間の回転をさらに上手く減らすために、一例としては断面において長円形の外周および六角形の壁を有するなど、異なる非円形の形状を有する。これらの場合、外周19に対する壁62の初期の回転により、摩擦またはコア16の一部分の壁62への食い込みによって壁62がコア16に対して固定される。
【0039】
さらに別の代替の形態においては、インプラントが、コア16の外表面52が円柱形である一方で、外側部分12の壁62が非円形であることで、両者の間に摩擦適合が形成されるよう、対向する構成を有することができる。
【0040】
さらなる代替の形態においては、外周19が、壁62の非円形の形状に対応する非円形の形状を有することで、2つの構成部品の間の回転を制限することができる。例えば、外周19またはコア16は、回転に抗するべく壁62の平坦な部位に一致して係合する少なくとも1つの平坦な面または部位を備える外表面52を有することができる。一形態においては、コア16および壁62の両方が、整列した多角形断面を有することができる。
【0041】
さらに、インプラント10が概ね円柱形の外表面50を有することができる一方で、インプラント10が骨の穴へと押し込みまたはねじ込みされるときの周囲の骨との摩擦をさらに大きくするために、根尖側へと延びるにつれて直径が減少するようなモールス型のテーパをインプラント10が有してもよいことに、注意すべきである。また、インプラント10の外周が、骨の円形の穴とのさらなる摩擦を生じさせるための非円形の形状を有してもよい。
【0042】
図5を参照すると、代替のインプラント100は、ポケット108(この例では、テーパ状の概ね弾丸形のポケット108)を形成するようにコア106の根尖側の端部104を覆う多孔性の外側部分102を有することができる。この場合、コア106の外表面110は、通路44(図4)によって多孔性の外側部分102の全体を貫いて延びる骨(あるいは、コア106が歯肉に隣接または歯肉を貫通して延びる場合には、軟組織)への直接的な付着のために、インプラント10に関して上述した処理18と同様の処理112を受ける。
【0043】
図6を参照すると、別のインプラントの形態を、骨に加え、あるいは骨よりもむしろ、軟組織を受け入れるためのインプラント上の多孔性の外側部分およびコアのためにもたらすことができる。例えば、インプラント200は、歯肉を貫通する張り出した端部202がインプラント200の骨内部分212から歯冠側へと延びている一回法のインプラントである。この場合、張り出した端部202の外側部分204は、コア206の周囲に取り付けられた完全または部分的なリング(ring)の形態であってよい。処理210は、インプラント10と同様にコア206の外表面208に行われている。
【0044】
図7を参照すると、さらに別の形態においては、支台300は、この支台が別個の二回法の歯科インプラントに取り付けたときに軟組織を受け入れるための支台上のコア304の周囲に取り付けられた多孔性の外側部分またはリング302を有している。コア302は、インプラント10において上述したような処理308を受けた外表面306を有している。
【0045】
別の手法によれば、本明細書において述べた処理領域がゾーンであり、各々のインプラントが、複数のゾーンを有することができ、各々のゾーンが別の目的を達成するように選択された処理を受ける。一形態においては、インプラントの長手軸に沿って少なくとも2つの別個のゾーンが存在し、それらのゾーンは、互いに隣接していても、離れていてもよい。ある事例では、1つ以上のゾーンを骨の内部に配置することができ、その処理が骨の成長のために選択される一方で、他の1つ以上のゾーンが軟組織の内部へと延び、それらの処理が軟組織の成長(あるいは、上述の関門(barrier)の確立)のために選択される。骨の内部のゾーンを、皮質骨または海綿骨の成長のために特に選択することができる。一形態においては、インプラント10は、例えば骨の成長のために、複数の軸方向に間隔を空けて位置する部分的なまたは完全なリングを有することができる。図示の例では、インプラント200が、軟組織の成長のための1つ以上のゾーン214と、骨の成長のための1つ以上の多孔質のゾーンまたは処理ゾーン216(図6に破線で示されている)とを有することもできる。同様に、支台300も、ゾーンのうちの1つ以上を有することができ、ゾーンのうちの1つ以上を有するインプラントによって支持されることができる。
【0046】
また、当然のことながら、内側部分の処理領域を意図的に覆う多孔性の外側部分の組み合わせを、骨の長さに沿ったインプラントや、膝、股、肩、肘、背骨などの関節のインプラントなど、歯科インプラント以外の骨内インプラントに使用できる。
【0047】
本発明を好ましい設計を有するものとして説明したが、本発明を、本発明の技術的思想および技術的範囲の範囲内でさらに変更することが可能である。したがって、本出願は、本発明の全体的な原理を使用する本発明のあらゆる変種、用途、および翻案を包含する。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知または通例の実務に含まれ、添付の特許請求の範囲の技術的範囲に含まれるような本明細書の開示からの逸脱も包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部分と内側部分とを備えるインプラント装置であって、
前記外側部分が、該外側部分を貫く通路を定めている多孔質材料で作られ、インプラントの外側表面を形成しており、
前記内側部分が、前記通路を通って前記外側表面からアクセスすることができる処理領域を備える外表面を有しており、前記処理領域が、骨または軟組織への直接的な付着のために処理されているインプラント装置。
【請求項2】
前記処理が、前記外表面の少なくとも粗面化を含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項3】
前記処理が、生体反応性材料による前記外表面の少なくともコーティングを含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項4】
前記処理が、
ねじ山、
環状溝、
表面の凹所、
少なくとも1つの生体適合性皮膜、および
少なくとも1つの多孔性皮膜
のうちの少なくとも1つを有する前記処理領域を含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項5】
前記外側部分に対して歯冠側に配置された頭部と、前記外側部分の下方に配置されたコア部とをさらに備えており、前記処理が前記コア部へと行われている請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項6】
前記コア部の前記処理が、前記頭部に行われる処理とは異なる請求項5に記載のインプラント装置。
【請求項7】
前記処理が、前記コア部にのみ行われている請求項5に記載のインプラント装置。
【請求項8】
当該インプラント装置において軸方向に間隔を開けて位置する少なくとも2つの処理領域を含んでおり、1つの処理領域が軟組織を貫いて延びるように配置され、別の処理領域が骨を貫いて延びるように配置されている請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項9】
前記インプラントが、下顎骨または上顎骨に配置される歯科インプラントを含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項10】
前記外側部分が、金属を含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項11】
前記外側部分が、タンタルを含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項12】
インプラント装置であって、
当該インプラント装置によって概ね定められる長手軸と、
骨の穴に配置されるように構成され、多孔質材料を有しているカラーと、
前記カラーの内側に受け入れられるコアであって、前記カラーに係合して前記カラーを回転可能に固定するために、前記軸に対して垂直に広がる断面において非円形である外周を有しているコアと
を備えているインプラント装置。
【請求項13】
前記外周が、前記カラーに係合する少なくとも1つの平坦な表面を含んでいる請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項14】
前記外周が、
多角形、
湾曲している、
長円形
のうちの少なくとも1つである請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項15】
前記外周が、少なくとも1つの凹状に湾曲した表面を含んでいる請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項16】
前記コアが、前記カラーとの係合のための尖端を形成する接合部において隣接する前記凹状に湾曲した表面のうちの少なくとも2つを有している請求項15に記載のインプラント装置。
【請求項17】
前記尖端が、前記カラーへと食い込むエッジを形成している請求項16に記載のインプラント装置。
【請求項18】
前記コアが、概ね長手方向に延びる少なくとも1つの溝を形成している外表面を有している請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項19】
前記外表面が、前記コアの周囲に周方向に配列された複数の溝を備えている請求項18に記載のインプラント装置。
【請求項20】
前記カラーが、前記多孔質材料によって形成されて前記カラーの全体を概ね半径方向に貫いて延びている通路を備えており、前記コアが、前記カラーによって覆われる処理領域を有している表面をさらに備えており、該処理領域が、骨または軟組織への直接的な付着のために処理されている請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項21】
前記処理領域が、粗面化されており、あるいは生体適合性材料の少なくとも1つの皮膜を有している請求項20に記載のインプラント装置。
【請求項22】
インプラント装置を形成する方法であって、
骨または軟組織との直接の係合のためにコアを処理するステップと、
多孔性の外側部分を前記コアの前記処理された領域を覆うように固定するステップと
を含む方法。
【請求項23】
処理が、前記外側部分を前記コアへと組み付ける前に前記コアを処理することを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
処理が、
ねじ山、
環状溝、
表面の凹所からなるパターン、
無作為に配置された表面の凹所、
酸によるエッチングによって形成された表面の凹所、
ブラストによって形成された表面の凹所、
少なくとも1つの生体適合性皮膜、および
少なくとも1つの生体反応性皮膜
のうちの少なくとも1つを前記コアに形成することを含む請求項22に記載の方法。
【請求項1】
外側部分と内側部分とを備えるインプラント装置であって、
前記外側部分が、該外側部分を貫く通路を定めている多孔質材料で作られ、インプラントの外側表面を形成しており、
前記内側部分が、前記通路を通って前記外側表面からアクセスすることができる処理領域を備える外表面を有しており、前記処理領域が、骨または軟組織への直接的な付着のために処理されているインプラント装置。
【請求項2】
前記処理が、前記外表面の少なくとも粗面化を含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項3】
前記処理が、生体反応性材料による前記外表面の少なくともコーティングを含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項4】
前記処理が、
ねじ山、
環状溝、
表面の凹所、
少なくとも1つの生体適合性皮膜、および
少なくとも1つの多孔性皮膜
のうちの少なくとも1つを有する前記処理領域を含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項5】
前記外側部分に対して歯冠側に配置された頭部と、前記外側部分の下方に配置されたコア部とをさらに備えており、前記処理が前記コア部へと行われている請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項6】
前記コア部の前記処理が、前記頭部に行われる処理とは異なる請求項5に記載のインプラント装置。
【請求項7】
前記処理が、前記コア部にのみ行われている請求項5に記載のインプラント装置。
【請求項8】
当該インプラント装置において軸方向に間隔を開けて位置する少なくとも2つの処理領域を含んでおり、1つの処理領域が軟組織を貫いて延びるように配置され、別の処理領域が骨を貫いて延びるように配置されている請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項9】
前記インプラントが、下顎骨または上顎骨に配置される歯科インプラントを含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項10】
前記外側部分が、金属を含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項11】
前記外側部分が、タンタルを含んでいる請求項1に記載のインプラント装置。
【請求項12】
インプラント装置であって、
当該インプラント装置によって概ね定められる長手軸と、
骨の穴に配置されるように構成され、多孔質材料を有しているカラーと、
前記カラーの内側に受け入れられるコアであって、前記カラーに係合して前記カラーを回転可能に固定するために、前記軸に対して垂直に広がる断面において非円形である外周を有しているコアと
を備えているインプラント装置。
【請求項13】
前記外周が、前記カラーに係合する少なくとも1つの平坦な表面を含んでいる請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項14】
前記外周が、
多角形、
湾曲している、
長円形
のうちの少なくとも1つである請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項15】
前記外周が、少なくとも1つの凹状に湾曲した表面を含んでいる請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項16】
前記コアが、前記カラーとの係合のための尖端を形成する接合部において隣接する前記凹状に湾曲した表面のうちの少なくとも2つを有している請求項15に記載のインプラント装置。
【請求項17】
前記尖端が、前記カラーへと食い込むエッジを形成している請求項16に記載のインプラント装置。
【請求項18】
前記コアが、概ね長手方向に延びる少なくとも1つの溝を形成している外表面を有している請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項19】
前記外表面が、前記コアの周囲に周方向に配列された複数の溝を備えている請求項18に記載のインプラント装置。
【請求項20】
前記カラーが、前記多孔質材料によって形成されて前記カラーの全体を概ね半径方向に貫いて延びている通路を備えており、前記コアが、前記カラーによって覆われる処理領域を有している表面をさらに備えており、該処理領域が、骨または軟組織への直接的な付着のために処理されている請求項12に記載のインプラント装置。
【請求項21】
前記処理領域が、粗面化されており、あるいは生体適合性材料の少なくとも1つの皮膜を有している請求項20に記載のインプラント装置。
【請求項22】
インプラント装置を形成する方法であって、
骨または軟組織との直接の係合のためにコアを処理するステップと、
多孔性の外側部分を前記コアの前記処理された領域を覆うように固定するステップと
を含む方法。
【請求項23】
処理が、前記外側部分を前記コアへと組み付ける前に前記コアを処理することを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
処理が、
ねじ山、
環状溝、
表面の凹所からなるパターン、
無作為に配置された表面の凹所、
酸によるエッチングによって形成された表面の凹所、
ブラストによって形成された表面の凹所、
少なくとも1つの生体適合性皮膜、および
少なくとも1つの生体反応性皮膜
のうちの少なくとも1つを前記コアに形成することを含む請求項22に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2013−512006(P2013−512006A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539941(P2012−539941)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055975
【国際公開番号】WO2011/066098
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507385637)ジマー デンタル, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055975
【国際公開番号】WO2011/066098
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507385637)ジマー デンタル, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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