説明

改良されたマルチウェルアッセイプレート

本発明は、分析化学の分野、特には発光検出に依存するハイスループットの(生物)化学的及び生物学的アッセイのための特有の平坦度を有するマルチウェルアッセイプレートに関する。マルチウェルアッセイプレートが提供され、上層は、アッセイ試料を受ける為の多数の隣接する試料ウェルを規定する壁を含み、該ウェルの底を規定する下層を有し、底表面は該ウェルから外方を向き且つ該底表面が該プレート底で多数の偽ウェルを形成する格子型構造を備えられており、該偽ウェルの合計の容積が、該試料ウェルの合計の容積よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、分析化学の分野に関し、特には発光検出に依存するハイスループットの(生物)化学的及び生物学的アッセイにおける使用の為のマルチウェルアッセイプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多数の方法及び系が、化学的、生物化学的及び/又は生物学的アッセイを行うために開発されてきた。これらの方法及び系は、医療的診断、食品及び飲料品試験、環境モニタリング、製造品質管理、薬剤発見及び基礎的科学研究を含む種々の適用において重要である。該適用に依存して、アッセイ方法及び検出系は、以下の特徴の1以上を有することが望ましい:i)ハイスループット、ii)高感度、iii)広いダイナミックレンジ、iv)高い精密度及び/又は正確度、v)低コスト、vi)試薬の低消費、vii)試料の取扱い及び処理についての既存の装置との利用可能性、viii)結果へ短時間であること、ix)干渉物及び複雑な試料マトリックスに対する非感受性、及びx)複雑でないフォーマット。これらの特徴において又は他の性能パラメーターにおける改良を組み入れるような方法における使用のための、新しいアッセイ方法への実質的な価値及び対象/系への実質的な価値がある。
【0003】
典型的には、試料及び試薬がマルチウェルアッセイプレート(マルチウェルテストプレート、マイクロプレート又はマイクロタイタープレートとしても知られる)において蓄えられ、処理され及び/又は分析される。マルチウェルアッセイプレートは、様々な形、サイズ及び形状をとることができる。便宜上、いくつかの標準が、ハイスループットアッセイについて、試料を処理する為に用いられるいくつかの装置の為に出た。マルチウェルアッセイプレートは典型的に、標準的なサイズ及び形状で作成され並びにウェルの標準的な配置を有している。いくつかのよく確立されたウェル配置は、96ウェルプレート(12×8のウェル配列)、384ウェルプレート(24×16のウェル配列)及び1536ウェルプレート(48×32のウェル配列)について見られるそれらを含む。Society for Biomolecular Screening(SBS)は、種々のプレートフォーマットについての推奨されたマイクロプレート規格を発表した(http://www.sbsonline.orgを参照されたい)。例えば、SBS標準化プレートは、高さにおいて14.35mm、幅において85.48mm及び長さにおいて127.76mmの、標準化された寸法を有する。
【0004】
標準化プレートフォーマットにおいて実施されるアッセイは、これらのプレートを保管すること及び移動することにとって容易に利用できる装置並びに、プレート内へ及びプレート外へ液体を迅速に分注することにとって容易に利用できる(ロボット)装置を利用できる。種々の装置が、プレートのウェル中の又はウェルからのシグナル、例えば放射活性、蛍光、化学発光、及び光学的吸光度などを迅速に測定する為に市販入手可能である。
【0005】
プレートのウェル中の又はウェルからのシグナル、例えば放射活性、蛍光、化学発光及び/又は光学的吸光度などの検出が高い精密度及び正確度で行われ得ることを確保する為に、プレートの全体の「平坦度」が非常に重要である。最適な平坦度からのいくらかの逸脱は、検出の減少した正確度及び減じられたデータ品質を結果するであろう。また、それは、自動化された環境における誤った取扱いの問題を引き起こしうる。アッセイウェル底の平坦度、特にはウェル間平坦度が、光学的イメージング装置、例えばCCDイメージャー、及び自動化装置の他のタイプでの使用にとって重要である。すなわち、マイクロプレート設計の分野における現在の挑戦の1つは、マルチウェルアッセイプレートの平坦度、特には平底ウェルプレートの平坦度を改良することである。底平坦度とも時々いわれるプレート平坦度は、該ウェル底から支持体表面への距離が異なる範囲として定義されうる。例えば、300μm未満の平坦度を有する96ウェルプレートは、該ウェル底が、最大で互の300μmの距離内にあることを示す。
【0006】
底読み取りマイクロプレートリーダー及び細胞培養適用の為に最適化された既知の平底1536ウェルフォーマット又は3456ウェルフォーマットのいくつかのタイプは、試料ウェルを規定する壁を含む、成形された枠からなる。該ウェルの底は、100μmの厚さを有する着色されていないシートにより形成されて、夫々のウェルの光学的測定の為の平坦な(250〜300μmの範囲内の)窓を提供する。このタイプのプレートの欠点は、それが2つの要素(枠とシート)から成ること及びそれが単一品として製造され得ないことである。代わりに、射出成形された枠は、該ウェル底を形成する該シートと組立てられる必要がある。さらに、ウェルに亘って250〜300μmのプレート平坦度は、該ウェルからの非常に正確な測定を得る為にしばしば十分でない。
【0007】
また、透明な底を有する2部品プレートもまた利用できる(例えば米国特許出願公開第2002/002219号明細書を参照されたい)。その中で、該ウェルの底は、無機材料、特にはガラスで作られている。該プレートは、シランと赤外線吸収性粒子とを有するポリマー性材料から作られる開口ウェルを有する上プレートと、実質的に平坦なガラスシートの下プレートとを接触させることにより製造される。赤外線溶接技術を用いて該上プレートを加熱することにより、溶かされた上プレートのポリマーが、該上及び下のプレートが冷却後に共有結合されるように、該下のガラスプレートを濡らす。該プレートは、個々のウェルに亘って及び全体のプレートに亘って良い平坦度を示すが、それらの材料及び製造の方法は高価であり且つ時間を費やす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
マルチウェルアッセイプレートの性能及びデータ品質をさらに改良する為の試みにおいて、本教示の目的は、他のマルチウェルアッセイプレートと比較して改良されたウェル底平坦度を有するマルチウェルテストプレートを提供することである。特に、約150μm以内、好ましくは約100μm以内のウェル間底平坦度を有する、高密度SBS標準化マルチウェルアッセイプレートを提供することが目的であり、これは、例えば単一品として射出成形することにより、コスト効率よく製造されうる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、個々のウェルに亘る及び全体のプレートに渡る特有の平坦度が、マルチウェルアッセイプレートの底表面に複数の浅い「偽(mock)」ウェルを備えることにより達成されるという驚くべき発見により満足される。本教示は、それ故に、マルチウェルアッセイプレートを提供し、これはアッセイ試料を受ける為の複数の隣接する試料ウェルを規定する壁を含む上層、該ウェルの底を規定する下層を含み、該ウェルの反対方向を向く底表面を有し、該底表面が、複数の隣接する偽ウェルを規定するリブ(rib、うね)を備えられ、ここで該偽ウェルの合計容積が該試料ウェルのそれよりも小さいことを特徴とする。
【0010】
また、該プレートを製造する方法も提供される。さらなる局面は、試験試料の貯蔵及び/又はアッセイの為に該プレートを使用する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明に従うマルチウェルアッセイプレートの斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aにおいて示されるマルチウェルアッセイプレートの斜視底面図である。
【図1C】図1Cは、図1Aにおいて示されるマルチウェルアッセイプレートの断面の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
マルチウェルプレートを作る典型的な方法である、射出成形の工程は、製品中に内力を生じる。これらの内力は、プレートを反らせそしてプレート平坦度を減少する傾向にある。該力及びすなわち該ウェルプレートの反りは、射出圧力、該プレート中の射出点の位置、型の温度、プラスチックの温度、及びマルチウェルアッセイプレートの設計などの多くの要因に依存する。プレートの反りすなわち曲がりは、多くの形及びパターンで発生しうる。例えば、該反りは特に、該底表面の側面の近くで又は中央だけで起こることがあり、及び、該プレートは、波形で又は凹凸形態で反りうる。
【0013】
何らの理論にとらわれることを望まないで、本教示に従うマルチウェルアッセイプレートの底側の偽ウェルは、該アッセイプレートを曲げ又は反らせる傾向にある、該アッセイプレート内の内力を相殺すると考えられる。結果として、それらの製造の間の該ウェル底の変形が減少される。驚くべきことに、該プレートの射出成形の点から見て、該偽ウェルの容積が、該アッセイウェルの容積よりも小さいことが特に有利であることが発見された。型は典型的には、硬化鋼、プレハードン鋼、アルミニウム及び/又はベリリウム−銅合金から構築される。相当な考慮が成形品及びそれらの型の設計に向けられ、これはとりわけ該成形品が該型中にとじ込められないであろうことを確保する為である。型は、少なくとも2の半分(コアー及びキャビティと呼ばれる)に分かれて、該成形品が抜き出されることを許す。ピンは、該コアーからの除去の最もよく知られた方法であるが、空気取出し、及び抜取板もまた該適用に依存して用いられうる。大抵の取出板は、該型の可動側上に見られるが、それらは固定側上に置かれてよい。該試料ウェルよりも小さい容積を有する該浅い偽ウェルは、該プレートから可動側の容易な除去を許し、一方で特有の全体のプレートの平坦度が得られる。
【0014】
本発明に従い、該偽ウェルの合計の容積は、該アッセイウェルの合計の容積の100%未満、好ましくは80%未満、より好ましくは60%未満、最も好ましくは50%未満である。
【0015】
これは、米国特許出願公開第2005/0106074号明細書に開示されたアッセイプレートと顕著に対照的である。そこでは、プレートの反りを防ぐ為に、プレートの底での「軽量化部分」の合計の容積が、アッセイウェルの合計の容積と本質的に等しくあらねばならないと教示される。さらに、米国特許出願公開第2005/0106074号明細書は、200μm未満の全体のプレート平坦度を有するSBS標準化プレートを開示しない。
【0016】
1つの実施態様において、該ウェルの該底を形成する該層の該底表面での浅い偽ウェル構造を含む、本発明に従うマルチウェルアッセイプレートは、最大で約200μm、好ましくは最大で約150μm、より好ましくは最大で約100μmのウェル底平坦度を有する。本明細書において示されるとおり、約80μm又は約80μm未満さえのウェル底平坦度を有するSBS標準化マルチウェルプレートが提供される。そのような特有のウェル底平坦度を有するマルチウェルアッセイプレート、特にはSBS基準を満足するそれらは、以前の技術において開示されていない。
【0017】
マイクロウェルプレートの他の実施態様が本教示の範囲からはずれることなく存在しうることが理解されうる。例えば、図示された実施態様は、長方形の構成の長方形のウェルを用いるが、そのような選択は単に任意のものであり、そして他の選択が、本発明の範囲内でなされうる。
【0018】
図1A〜1Cに関して、マルチウェルアッセイプレート21が提供され、これはアッセイ試料を受ける為の複数の隣接する試料ウェル24を規定する壁23を含む上層22を含む。該アッセイプレートの下層25は、該ウェル24の底を規定し、その上表面は該ウェル24の該底表面26である。該下層25は、該ウェル24の反対方向を向く底表面27を有する。該下層の該底表面27は、互いに交差する、複数の平行な直線状のリブ28を備えられて、図1Bにおいて最もよく示されるとおり、例えば互いに垂直に2つの方向に走るリブ28による底格子型構造29を形成する。すなわち、その底表面27で、該上層22中の該壁23により形成される該格子型構造を反影する底格子型構造29を形成する複数のリブ28を含み、それにより該プレート底で複数の「偽ウェル」30を形成するところのマルチウェルプレート21が提供される。好ましくは、偽ウェル30の数は、アッセイウェル24の数と等しい。例えば、1536ウェルプレート21が提供され、これはその底表面27で、好ましくは該上層22中に存在する該アッセイウェル24に沿った、1536の偽ウェルを含む。言い換えると、もし、図1Cにおいて示される断面の側面図において、該下層25の上側のウェル24を規定する該壁23が該下層25の反対側に伸びて、該偽ウェル30を規定する該リブ28を形成すると見えるならば、特に有利でありうる。
【0019】
偽ウェルの容積が、該型からの該プレートの遊離を容易にする為に、試料ウェルの容積よりも小さいことに注目されたい。
【0020】
該プレートの該上層における反り力(warping force)に対する十分な補償を提供する為に、該偽ウェルを規定する該リブの高さは、該試料ウェルを規定する該壁の高さの好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、最も好ましくは少なくとも約20%である。例えば、1つの実施態様において、マルチウェルプレートは、試料ウェルを規定する、高さにおいて約4〜5mmの壁を有する上層及び高さにおいて約1.5〜2mmのリブを備えられた底表面を含む。該リブの該高さは好ましくは、該壁の該高さの、好ましくは約80%未満であり、より好ましくは約70%未満であり、最も好ましくは約50%未満である。該幅は好ましくは、該試料ウェルを規定する該壁の幅と等しいが、等しいことに限定されない。
【0021】
さらなる局面において、該偽ウェルを規定する該下層の該底表面上の該リブは、該試料ウェルを規定する該上層の該壁の少なくともいくつかの下に位置される一方で、該ウェル底領域の下にリブはない。すなわち、1つの実施態様において、該試料ウェルは、該偽ウェルの間隔と同じ間隔で配置され、該試料ウェル及び該偽ウェルはさらに、該下層に関して対照的であるべく配置される(図1Cを参照されたい)。これは、該上層において生じうる反り力の良い補償を提供する一方で、該ウェルの該底表面におけるひけマーク(sink mark)が回避される。
【0022】
該プレートの該底表面での該偽ウェルは、該壁により形成される該格子型構造を写す為に該ウェルプレートの該上層中の該ウェルの正確なコピーである必要はない。例えば、該アッセイウェルが円形の周囲を有しうる一方で、該偽ウェルが、角のある周囲を有してよく、また、ここで該アッセイウェルの該壁と該底の間の隅が、液体が該壁を上がっていくのを防ぐ為に面取りされ、これは該偽ウェルに必要とされない。
【0023】
さらに、該アッセイプレートは、支持プラットフォーム上に立ったときに、少なくとも部分的に該リブ上で停止する。
【0024】
前記から、請求項に示されたとおりの発明の構成の範囲内で、上で記載された例以外の多くの変形もまた容易に想到できることが、当業者に明らかであろう。例えば、該ウェルプレートは、任意のパターン又は形状で配置された、任意のサイズ又は形状のウェルの任意の数を有してよく、及び種々のさまざまな材料から成ってよい。
【0025】
該プレートの該アッセイウェルは典型的には、複数の少量試料を並行して取扱い及びアッセイすることができる自動化された液体操作及びアッセイ系の為の高密度小体積フォーマットを提供する為に平面パターンで配置される。該ウェルは、任意の容量又は深さであってよい。ウェルは、四角の切り立った垂直の壁又は円錐の壁を含む任意の断面形状(平面図において)で作られうる。該偽ウェル及び該アッセイウェルの断面形状は本質的に同じであり、該アッセイウェルがより大きな深さを有することが好ましい。好ましいウェルは、円形又は四角の開口を有し、その直径又は一辺の長さは、1.0〜2.0mmである。例えば、本明細書において、開口の一辺が約1.7mmである正方形の開口を有するアッセイウェルと、および同じ正方形の断面を有する等しい数の偽ウェルとを含むアッセイプレートが提供される。
【0026】
該プレートは、約0.5mm〜約15mmの厚さを有しうる。本発明の好ましい実施態様は、プレート及びウェルの数、サイズ、形状及び構成についての工業標準(例えばSBS)マルチウェルプレートフォーマットを用いるマルチウェルアッセイプレートである。試料ウェルの高密度平面配置を有するプレートであって、その中において該ウェルの寸法及び該配置上のそれらの位置が提唱された標準に従い調整されている上記プレートは、提唱された標準へと製造されたマルチウェルプラットフォームに準拠するように設計された広い範囲の自動化装置との利用可能性を可能にする。標準フォーマットの例は、二次元配列で構成されたウェルを有する、8×12(96)、16×24(384)、32×84(1536)、及び48×72(3456)ウェルのアッセイプレートを含む。好ましい実施態様において、本発明のプレートは、提唱されたSBS工業標準に沿うフットプリント寸法を有する1536又は3456ウェルアッセイプレートである。これは、マイクロプレートに基づく全ての装置との利用可能性を保証する。
【0027】
小容量アッセイウェルの多数〜非常に多数を含むアッセイプレートを取り扱うときに生じる問題は、例えば試料の貯蔵、操作及び/又は分析の間の、試料蒸発である。典型的な3456ウェルプレートのウェルの表面積対容積の比は、96ウェルプレートのそれの約4倍である。蒸発速度は露出された表面積に直接に比例するので、96ウェルプレートの7mmウェルが10%を失うだろう時間と同じ時間内で、3456ウェルプレートの1mm直径ウェルはその容積の約40%を失うだろう。さらに、該プレート端での小ウェルは、該アッセイプレートの内部の小ウェルよりも有意に速く蒸発し、これは実行されている実験に対して又はプレート中の貯えられている化学物質に対して有害でありうる。試料蒸発を少なくとも部分的に克服する為に、本発明のマルチウェルアッセイプレートは、該プレートの該上層中に、複数の蒸発制御ウェル又は「ダミー」ウェルを含みうる。それに関する米国特許出願第60/493,415号及びPCT出願第PCT/US04/13516号の教示が、ダミーウェルを含むプレートの設計の為に用いられうる。例えば、該ダミーウェルは好ましくは、該上層内に配置された壁により規定されもする。該ダミーウェルは好ましくは、試料ウェルの配列の周囲に環を形成する。該ダミーウェルの深さは、該試料ウェルのそれと異なりうる。すなわち、1つの実施態様において、該プレートは、アッセイ又は化学物質貯蔵の為に用いられないウェルの配列を該上層内に組み込み、しかしこれは、アッセイ液体又は貯蔵溶媒により満たされることができてアッセイ又は貯蔵の為に用いられる該ウェル内の液体の蒸発を軽減する。本発明に従い、該ダミーウェルは好ましくは、該底表面上に対照的に反映される。
【0028】
加えて、該プレートは、該ウェルの液体内容物を囲む閉じられた環境を維持する為のふたの収容の為の欠刻、及び/又は装置による該プレートの光学的に誘導される自動化整列を可能とする為の印などの追加の有用な特徴を含みうる。該マイクロプレートは、手動の処理及びロボット化された系を用いる自動化処理を容易にする為の「ピンチバー(pinch bar)」を含みうる。さらに、増加した嵌め込み公差(nesting tolerance)及びリブ付けされた底面は、封をされたマイクロプレートと一緒でさえ、HTSプロトコルにおけるスタッカージャム(stacker jam)を回避しうる。
【0029】
さらなる局面は、本発明のマルチウェルアッセイプレートの製造に関する。該プレートは、標準的な手順に従う射出成形により、一体物として容易に成形されうる。
【0030】
好ましくは、同じプレートが安価に製造されることができるように及び次に(自動化された)化学的、生物化学的及び生物学的アッセイの種々の異なる作業課題の為に利用されることができるように、該プレートは、望ましい光学的、機械的及び化学的不活性および耐性を兼ね備える単一の材料から成形される。
【0031】
ポリマーの多くのタイプは、本明細書において提供されるとおりのマルチウェルプレートの製造の為に用いられうる。該プレートは、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などの硬質熱可塑性材料から作られうる。好ましくは、選択の材料は、該プレート上の小さい(例えば約1mm未満の)特徴の製作を許す為に、低い成形収縮(例えば約0.4%未満)及び低い溶融粘度を有する。
【0032】
例となる実施態様において、適当なポリマー又はポリマーの混合物が、該プレートの外壁に置かれた単一の又は多数の射出ゲートを用いて、(例えばステンレスの)スチールで作られた型へと射出される。該型は典型的に、該試料ウェルを形成する為に、研磨されたコアピンを有し、及び、成形品が凝固した後に該コアピンからの該成形品を取り外す為の抜取板を有する。
【0033】
マルチウェルプレートは、1より多い材料から作られてよく、例えば、成形加工の間に、2成分の射出成形を適用することにより作られてよい。1つの好ましい実施態様に従い、該材料は、該材料の脆性を減少するために、高衝撃ポリスチレン(HIPS)と混合されたポリスチレンを含む。好ましくは、約4〜約16重量%で、HIPSが該ポリスチレンと混合され、より好ましくは約8〜約12重量%で混合される。一般に、蛍光(例えばECL)測定において典型的に出会う試薬に対し不浸透性であり、生体分子の吸収に対して抵抗性であり、且つ光及び熱の中程度の水準に耐えることができる安価な材料から、該プレートは好ましくは作られる。有利に、該プレート材料は、ハイスループットスクリーニングの為の化学的ライブラリーを溶解する為に典型的に用いられる有機溶媒に対して不浸透性である。
【0034】
特定の局面において、本発明のマルチウェルプレートは、UV又は可視領域におけるスクリーニング波長により照射されたときに、低い自己蛍光を示す材料から作られる。そのようなプレートは、該ウェル底の低い内因性蛍光の故に、蛍光及び他の分光測定に特に適当である。好ましくは、該材料はスクリーニング波長での、5%より低い、より好ましくは4%より低い、及びさらに実質的には3%又はそれより低い自己蛍光を示す。
【0035】
1つの実施態様に従い、マルチウェルプレートの為の材料は、シクロオレフィン共重合体(COC)であり又はシクロオレフィン共重合体(COC)を含む。他の適当な材料は、スチレンアクリロニトリル(SAN)及びBarex(商標)樹脂を含む。
【0036】
本明細書において提供されるマイクロプレートは、透明(透き通ったもの)であってよく又は、それは不透明であってよい。着色されたプレートは、当技術分野で既知の着色剤を用いて作られてよい。典型的な着色剤は、TiO(白)、カーボンブラック、UV吸収材(黄)を含む。当技術分野の当業者は、該プレートの所望の特性に依存して、添加剤の他のタイプが含まれうることに気づくであろう。1つの実施態様において、シンチラント(scintillant)が、一体物として該プレートを射出成形する為に用いられる該可塑性材料に組み込まれる。
【0037】
本発明のさらなる局面は、例えば複数試料のアッセイ及び/又は試料の貯蔵の方法における、本明細書において提供されるマルチウェルアッセイプレートの使用方法に関する。
【0038】
少量の貯えられた化学的化合物が、貯蔵目的の為に用いられる1のマルチウェルプラットフォームから、同じ化合物の化学的又は生物学的活性についてのアッセイ、特には新薬、農薬、食品添加物及び化粧品についての小量試料の自動化されたスクリーニングを実施する為に用いられる他のマルチウェルプラットフォームへと移動されるところの自動化された又は集積された系において、該マルチウェルプレートは使用されうる。
【0039】
1つの実施態様において、本発明のプレートを用いるアッセイ、例えば(生物)化学的又は生物学的アッセイなどを実施する方法が提供される。該方法は、該アッセイを実施する為の該試料ウェルの少なくともいくつかを使用すること及び該ウェルについて実施された測定からのデータを分析することの段階を含みうる。それらの前例のないプレート平坦度の故に、本発明のプレートは特に、発光、例えば蛍光などの非常に正確な検出に適当である。
【0040】
マルチウェルアッセイプレートからの発光を測定する方法であって、本発明に従うプレートの少なくとも1つのアッセイウェルにおいて産生される発光の像を形成することを含む上記方法も提供される。発光の例は、蛍光、生物発光及びリン光を含む。
【0041】
該方法は、自動化プレートリーダーの使用、特には自動化光学的イメージング装置の使用を含みうる。好ましい実施態様において、本発明のプレートは、自動化CCDイメージングシステムを用いて、該ウェルの少なくとも1つにおいて産生された蛍光シグナルの検出を含むアッセイ方法において使用される。
【0042】
ウェル底のより均一且つより一貫性のある高さを提供することは、該イメージングシステムの焦点を再度合わせる必要性を最小限にし又は回避さえする。なぜなら、CCDカメラとウェル底表面との間の距離がウェル間で本質的に同じであるからである。
【0043】
例えば、パーキンエルマー ViewLux(商標)は、蛍光偏光(FP)、蛍光強度、時間分解蛍光(TRF)、発光及び吸光度のアッセイからの光の高感度且つ高速の測定の為の、ウルトラハイスループットマイクロプレートCCDイメージャーである。該検出器は、最適化されたテレセントリック光学レンズと組み合わされたペルチェ冷却CCDカメラである。該カメラは、−100℃で作動する背面照射型CCD(back illuminated CCD)である。落射蛍光励起の為に、高品質の光学系(optics)と一緒に非常に強力なフラッシュランプの配列がある。該装置は、ロボット装填及びバッチモード操作の両方を支援する。最大で64のプレートが、無人の操作の為に装填されうる。ユーザーは、必要に従い、バッチかロボット装填かを選ぶことができる。該装置は1の照射において全部のプレートを読み取るので、スループットは、プレート密度によって影響されない。連続的操作下における時間当たり200,000超の試料の1スループットが、1536ウェルプレートを読み取る蛍光強度を用いて達成されうる。プレート移動及びデータ処理を含む蛍光偏光アッセイの為に、典型的な処理時間はプレート当たり90秒未満である。
【実施例1】
【0044】
実施例
1536ウェルプレートの1のバッチが、白色顔料を含むポリスチレンの射出成形により調製された。射出成形は、Arburg S 220/270射出成形機械を用いて実施された。該プレートの下を形成する型半分の温度が70℃に設定された一方で、該プレートの上を形成する型半分が30℃に設定された。
【0045】
型設計は、該プレートの寸法が、マイクロプレートについてのSBS標準(高さにおいて14.35mm、幅において85.48mm及び長さにおいて127.76mm)を満足することを確保した。試料ウェル容積は、約12μlであった。該試料ウェルを規定する該壁は、高さにおいて4.8mmであった。該試料ウェルの正方形開口の一辺の長さは1.7mmであった。該試料ウェル壁の内側は、ISO1302 N−3(Ra=0.1)に従い磨かれた。該試料ウェルの底表面は、ISO1302 N−1(Ra=0.025)に従い磨かれた。該プレートの底は、同様の正方形の開口を有する1536の偽ウェルを備えられた。該偽ウェルを規定するリブは、1.6mmの高さを有した。1の偽ウェルの容積は約4μlであり、すなわち、試料ウェルの容積の約3分の1であった。該プレートは、12mmのスタック高さで、互いに積み重ねられることができた。
【0046】
5つのプレートが、該プレートの平坦度の分析の為に無作為に選択された。70の無作為に選択された個々のアッセイウェルの該底表面の位置が、底プレートに対する相対位置として測定された。全ての試料ウェルは、100μmの公差域内であった。以下の平均値が、全体のプレートの平坦度について観察された:
プレート1:82μm
プレート2:79μm
プレート3:80μm
プレート4:82μm
プレート5:79μm
【符号の説明】
【0047】
21 マルチウェルアッセイプレート
22 上層
23 壁
24 試料ウェル
25 下層
26 底表面
27 底表面
28 リブ
29 格子型構造
30 偽ウェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチウェルアッセイプレートであって、
アッセイ試料を受ける為の複数の隣接する試料ウェルを規定する壁を含む上層、及び
該ウェルの底を規定する下層であって、該下層が該ウェルと反対方向を向く底表面を有し且つ該底表面が該プレート底で複数の偽ウェルを形成する格子型構造を備えられている前記下層
を含み、
該偽ウェルの合計の容積が、該試料ウェルの合計の容積よりも小さいことを特徴とする、
前記アッセイプレート。
【請求項2】
該偽ウェルが、該試料ウェルの100%未満、好ましくは80%未満、より好ましくは60%未満、最も好ましくは50%未満の深さを有する、請求項1に記載のアッセイプレート。
【請求項3】
約200μm未満のプレート平坦度を有する、請求項1又は2に記載のアッセイプレート。
【請求項4】
約100μm未満、より好ましくは約80μm未満のプレート平坦度を有する、請求項3に記載のアッセイプレート。
【請求項5】
偽ウェルの数が、試料ウェルの数と等しい、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項6】
SBSマイクロプレート規格を満足する1536ウェルプレート又は3456ウェルプレートである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項7】
該試料ウェルに加えて、該上プレート内に複数のダミーウェルであって、液体を充填されうる前記ダミーウェルをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項8】
好ましくは射出成形により、一体物として作られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項9】
該プレートが、透明な又は不透明な材料から作られ、好ましくはポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、スチレンアクリロニトリル(SAN)及びシクロオレフィン共重合体(COC)から選択されるポリマーから作られ又はそれらの組合せから作られる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項10】
該プレートが、低い自己蛍光の材料から作られる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項11】
シンチラントが、該プレートの該材料中に組み込まれる、請求項8〜10のいずれか1項に記載のアッセイプレート。
【請求項12】
試料のアッセイの為及び/又は貯蔵の為に、請求項1〜11のいずれか1項に記載のアッセイプレートを使用する方法。
【請求項13】
マルチウェルアッセイプレートからの発光を測定する方法であって、好ましくは自動化プレートリーダーを用いて、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプレートの少なくとも1のアッセイウェルにおいて産生される発光の像を形成することを含む上記方法。
【請求項14】
光学的イメージングシステム、好ましくはCCDイメージングシステムの使用を含む、請求項13に記載の方法。

【図1A】
image rotate

image rotate

【図1C】
image rotate


【公表番号】特表2009−543048(P2009−543048A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518020(P2009−518020)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050321
【国際公開番号】WO2008/002142
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509002419)パーキンエルマー インク. (1)
【出願人】(509002752)アイティービー プレシシーテクニーク ホールディング ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】