説明

改良された光増感剤処方物およびそれらの用途

【課題】高増殖性組織における選択的な光増感剤の蓄積の改良された速度、疾患に冒された組織における光増感剤の治療上有効な量を達成するための短縮された時間、並びにPDTの副作用例えば治療部位の不快さ並びに皮膚および眼の光過敏症の発生および強さの低下をもたらす光力学治療に有用な低濃度光増感剤処方物の提供。
【解決手段】疎水性光増感剤および該疎水性光増感剤を可溶化するアルコール性賦形剤混合物からなる処方物であって、ここで該光増感剤は周知のPDI光増感剤組成物または薬剤より実質的に少ない量で存在し、そして光力学治療療法に関する性質が向上している高増殖性組織疾患の光力学治療に有用な低濃度光増感剤処方物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光力学治療の領域に関し、特に改良された光力学治療のための処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
光力学治療(PDT)は、高増殖性細胞を特徴とする種々の疾患例えばガンおよび或る皮膚の症状例えば乾癬に関する次第に一般的になっている療法のオプションになってきている。高増殖性の上皮性疾患(表皮性疾患および粘膜病)は、主な健康上の問題であり、そして彼または彼女の生涯の間に少なくとも一回ほとんどすべてのヒトに影響している。高増殖性の上皮性疾患の他の例は、皮膚腫瘍(基底細胞ガン、扁平上皮ガン、メラノーマ)、バレットの(Battet’s)食道、ウイルスによる疾患(いぼ、単純ヘルペス、尖形コンジローマ)、女性の性器系(子宮頚、膣、外陰)および粘膜組織の悪性前期および悪性の疾患を含む。
【0003】
PDTは、高増殖性の細胞および組織に酸化損傷を誘発する特定の波長で光照射と組み合わされて光増感剤(PS)を使用する。高増殖性の組織が選択的にPSを保持しそして次に誘発された細胞の損傷がPSの蓄積の領域に局在することが考えられる。多数のタイプの光増感剤が評価されてきており、そしてPDTに少なくとも部分的に有効であることが示されている。周知のPDT光増感剤は、ソラレン、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フェオホルバイド、バクテリオフェオホルバイドおよびフタロシアニン、並びにプロトポルフィリンIXへの前駆物例えば5−アミノレビュリン酸(ALA)を含む。
【0004】
多くの部分で、PDT療法の有効性は、光増感剤(PS)の光化学的、光生物学的および薬物動態的/光治療的性質に依存する。その結果、PSの処方は、成功する高増殖性疾患の光力学治療における決定的なファクターである。治療的に有用であるためには、PS処方は、正確かつ好都合な投与を助けつつ、高増殖性の目的細胞により容易かつ選択的に内部伝達できる形でPSを投与すべきである。周知の光力学薬剤は、体重1kgに対してミリグラム(mg/kg)で投与されるが、ミリグラム以下のPSの投与は、特定の脈管に提案されてきておりそして創傷の治癒を促進する。しかし、上皮性の組織の治療では、同様な低投与量の処方は、特にPSが全身的に投与される療法では、PDTの有効性を低下させるだろう。本明細書で使用されるとき、「低濃度処方物」は、周知のPDT処方物および薬剤に比べて、実質的に低下したPS濃度を有する処方物として規定される。同様に、「低濃度治療」は、低濃度の処方物で光増感剤を投与するすべてのPDT療法をいう。
【0005】
Temoporfinとしても知られそして商品名Foscam(商標)により知られているm−テトラ(ヒドロキシフェニル)クロリン(「m−THPC」)は、ガン特に進行した頭部および頚部の扁平上皮ガンのPDTに有効であることが示されている光増感剤である。m−THPCに関する推奨される投与量は、体重1kgあたり0.15mgであり、そして静脈内注射による投与のために4mg/mL溶液で提供される。
【0006】
光力学治療用の他の通常使用されているポルフィリンのいくつかは、ヘマトポルフィリンIX(HplX)、ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)、および種々のHpD製剤例えばPhotofrin(商標)(ポルフィマーナトリウム、Axcan Pharma PDT Inc.)である。食道ガンおよび気管支非小細胞性ガンの療法では、Photofrin(商標)は、体重1kgあたり2mgの推奨される投与量を有するが、それは2.5mg/mLの溶液で無水Photofrin(商標)を再構成した後、注射により投与される。他のヘマトポルフィリン誘導体であるPhotogem(商標)は、体重1kgあたり1−2mgの推奨投与量を有し、それは5mg/mLの原液から注射により投与される。
【0007】
しかし、周知の光力学治療は、高増殖性細胞によるPSの比較的非選択的な吸収および維持から影響をうけ、それはPDT照射サイクル中の正常な組織の破壊を生ずる。その上、高濃度のPS処方物は、副作用例えば全身性の治療後の皮膚および眼の光過敏性、並びに治療部位の刺激および痛みの発生、強さおよび持続時間を増大させる。
【0008】
PSによる治療後の皮膚および眼の全身性光敏感性は、従来の光力学治療の文献にひろく記載された副作用であり、そして光増感剤の全身投与を要するPDT法において特に普通に生ずる。これらの治療後、もし患者が可視の光に曝されるならば、患者は、広く広がりそして激しい紅斑(皮膚の赤み)のリスクを生ずる全身性の皮膚の光過敏性を経験する。光増感剤が局所的に適用される治療の処方では、治療する域は、6週間以上光過敏性のままであろう。全身性または局所的な光過敏性のすべての期間中、患者は、光増感剤を皮膚および血流から取り除くために日光および明るい室内の光を避けねばならない。患者は、また、戸外にいるとき保護衣類およびサングラスを用いなければならない。
【0009】
従来のPDT療法にともなう他の副作用は、注射部位の刺激および痛みである。患者が、光力学薬剤の投与中PS注射の部位で灼熱または他の不愉快な感覚を経験することはきわめて普通のことである。PS投与の部位での他の周知の治療後の合併症は、静脈炎、リンパ管炎および化学熱傷を含む。PDTは、化学療法および或る照射療法を含む他のガンの療法より遙かに外傷性ではないが、PDTに特異的な副作用の発生および/または強さを低下させるための好都合なしかもコストのかからない方法が求められている。
【0010】
特許文献1および2は、腫瘍に壊死(組織の死亡)を誘発するために光照射(652−653nm)と組み合わされたm−THPCを含む選択されたジヒドロポルフィリンおよびテトラヒドロポルフィリンの使用を開示している。特に、これらの文献は、m−THPCが0.255mg/kgで投与された場合に比べて0.5mg/kgで投与されたときに生ずる腫瘍の壊死の深さを記載している。詳細には、これらの文献は、m−THPCが多い投与量で投与されたとき、腫瘍の深さが43%増大することを教示している(それぞれ、5.41±0.39mmおよび3.79±0.28mm)。
【0011】
特許文献3は、血管の再狭窄および内膜過形成の治療に限定される「低投与量PDT」法を記載している。この文献は、元来用いられていたのよりも実質的に低いレベルの強度での光力学療法の合計として「低投与量PDT」を規定し、そして3つの変数すなわち光増感剤の濃度、光投与量および照射時間からなる方法を教示している。その上、この文献は、1つの変数の増加が他のものを減少させることを教示している。そして、この文献は、照射量または他のパラメーターにおける変化に包含されない、それらとは無関係な光増感剤の投与量の作用を教示していない。さらに、この文献は、PDTにより他の高増殖性の組織または細胞のタイプを治療する場合における光増感剤の濃度の重要性を教示していない。
【0012】
特許文献4は、670−780nmの波長で光感作である制限された群のヒドロモノベンゾポルフィリンすなわち「グリーンポルフィリン」を開示している。この光の波長は、PDTにおけるグリーンポルフィリンの少ない投与量の使用を可能にすると思われる身体の組織へより深く浸透するものと考えられる。その上、この文献は、記載されたグリーンポルフィリン化合物について0.1mg/kgから10mg/kgに及ぶ投与量を開示しているが、このクラスまたは他のクラスの光増感剤に関する光増感剤の濃度の効果を記載していない。
【0013】
【特許文献1】米国特許4992257
【特許文献2】米国特許5162519
【特許文献3】米国特許6609014
【特許文献4】米国特許5399583
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の従来技術は、細胞毒性に対する減少した光増感剤の濃度の影響を教示しておらずまたは予想もしていない。その上、より有効でありそして周知のPDT法および処方より低い激しい副作用を有するPS処方物が求められている。本発明は、これらの要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
身体における高増殖性の組織および正常な組織からの分化における光増感剤のより早い濃度をもたらす光増感剤処方物を提供するのが本発明の目的である。
光増感剤の投与と照射との間の間隔(医薬−光の間隔または「DLI」)を短縮する光増感剤処方物および光力学治療法を提供するのが本発明の他の目的である。
【0016】
周知のPS組成物よりも患者に外傷をより減らして投与できる光増感剤処方物を提供するのが本発明のさらに他の目的である。
周知の光増感剤組成物および方法よりも低下した激しい副作用を生ずる光増感剤処方物を提供するのが本発明の別の目的である。
【0017】
手短にいえば、本発明は、疎水性光増感剤(PS)に関する低濃度処方物および光力学治療(「PDT」)に関する改良された方法を開示している。開示された低濃度処方物を使用するPDT治療が、より正確な、より有効なそしてより好都合な投与法を提供することが分かった。本発明の処方物が、(1)疾患に冒された組織に蓄積する治療的に有効なレベルの光増感剤に要する時間を短縮し、そして(2)疾患に冒された組織対健康な組織における光増感剤の十分な比を達成する時間を短縮して有利な作用を達成することをさらに見いだした。その結果、本発明の処方物は、PS付与/投与と照射との間の時間の間隔(医薬−光の間隔または「DLI」)を短縮し、そして「同日」PDT治療オプションを提供できる。本発明の処方物は、光増感剤が少なくとも1つの予め選択された投与で投与されるPDT治療処方(PDTのための低濃度治療を含む)に使用できる。特に、m−テトラ−ヒドロキシ−フェニルクロリン(m−THPC)が光増感剤であるとき、体積比3:2の精製プロピレングリコールとエタノールとの混合物中の0.8mg/mLから0.04mg/mLの濃度が、疾患にかかった組織に蓄積し、そして「1日」または一晩の投与および活性化治療方法が可能であるほど十分に早く疾患に冒された組織と正常な組織との間に区別を生ずる。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、以下の既述から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、周知の光増感剤の濃度の処方物を使用するPDTよりも光増感剤の低濃度処方物を使用する光力学治療(「PDT」)が有効であり、そして標準的なプラクティスよりも有用性が増大するという驚くべき発見の結果である。その結果、本発明は、従来の光力学治療および標準的なPDT治療よりも顕著な利点をもたらす。本発明の利点は、高増殖性組織における選択的な光増感剤の蓄積の改良された速度、疾患に冒された組織における光増感剤の治療上有効な量を達成するための短縮された時間、並びにPDTの副作用例えば治療部位の不快さ並びに皮膚および眼の光過敏症の発生および強さの低下を含む。本発明は、PDTの治療の有効性を犠牲にすることなく、光増感剤の投与と刺激との間の時間の間隔(「医薬−光の間隔」またはDLI)を顕著に短縮する。これらの結果は、非常に驚くべきことでありそして当業者が現在理解していることに反するものである。
【0019】
本発明によれば、光増感剤に関する低濃度処方物(以下、「低濃度処方物」とする)は、光力学治療に使用されるために提供される。低濃度処方物は、同じまたは同様なガンを治療するのに使用される従来技術の光増感剤組成物および薬剤より賦形剤の体積あたり実質的に少ない光増感剤を含む。好ましい態様では、低濃度処方物は、PDTで現在使用されているかまたは研究されている周知の光増感剤組成物に存在する光増感剤の1/50−1/3に等しい量で光増感剤を含む。
【0020】
好ましくは、本発明の低濃度処方物は、静脈内注射に好適であり、そして少なくとも1つの賦形剤を含む。賦形剤の例は、アルコール/プロピレングリコール混合物、アルコール(例えばエタノール)、水/アルコール混合物、および所定の疎水性光増感剤と相溶性で患者に無毒である他の溶媒を含む。特定の賦形剤混合物は、同様に疎水性の光増感剤の群のための低濃度処方物の利点を最適にすることが見いだされる。個々の疎水性の光増感剤のための好適な賦形剤は、一般に当業者に周知である。
【0021】
低濃度処方物の特定の例は、光増感剤m−テトラ(ヒドロキシフェニル)クロリン(「m−THPC」)についてもたらされる。処方物は、処方物1mLあたり約0.8mgのm−THPCを含み、それは4mg/mLの濃度を有する周知のm−THPC組成物の濃度の1/5である。好ましい賦形剤は、特にv/v比で3:2のプロピレングリコールおよびエタノール混合物である。
【0022】
本発明の低濃度処方物の使用は、投与の方法にかかわらず、周知かつ標準のPDT法の同様な利点を与える。そして、本発明の低濃度処方物は、他の方法例えば局所の注射および局所の付与により投与できる。局所の注射および/または局所の付与では、賦形剤の例は、アルコール/プロピレングリコール混合物、アルコール、水/アルコール混合物の単独、またはこれらとPS溶解度および/または皮膚とのPSの接触または浸透の増大、維持またはコントロールに有用であると当業者が周知している他の溶媒/添加物との組み合わせを含む。
【0023】
高濃度光増感剤処方物の全身投与が、患者に広範囲の副作用をもたらすことについて、多くの文献がある。そのため、PSの全身投与を含むPDT法では、本発明の低濃度処方物の利点は、明らかである。
【0024】
低濃度処方物は、PDT療法の最も普通の副作用を低下させるかまたは排除する。例えば、本発明の低濃度処方物を投与された患者は、周知の光増感剤処方物の注射中に生ずる灼熱または他の痛みの感覚を経験することがない。その上、高濃度の処方物に通常ともなう注射後の合併症すなわち静脈炎、リンパ管炎および化学熱傷は、本発明の低濃度処方物の注射後観察されなかった。
【0025】
或る場合には、PDT療法において周知の光力学治療の推奨された濃度より実質的に低い濃度で光増感剤を投与することが望ましい。以後、これは「低濃度治療」とされる。これらの低濃度治療では、本発明の低濃度処方物は、周知の光増感剤処方物の代わりに使用されて光増感剤の少なくとも予め選択された投与量(体重1kgあたりmg)を投与する。予め選択された投与量は、従来の光増感剤組成物を使用する標準のPDTで投与される推奨される投与量に等しいかまたはそれより少ない。PDTに関する本発明の低濃度治療の利点は、医薬−光の間隔の短縮、皮膚の光過敏の持続時間および強さの低下並びに光増感剤の非常に少ない投与量のさらに好都合な投与を含む。
【0026】
本発明の低濃度処方物および低濃度治療法の顕著な利点は、光増感剤に必要な時間がより短く、選択的に高増殖性の組織に蓄積して疾患に冒された組織の顕著な局在化した壊死に影響し、一方正常な組織とは触れることがない。従って、本発明の処方物および方法により付与されるとき、光増感剤は、周知の光増感剤組成物を使用するPDT療法より迅速にしかも大きな程度で疾患に冒された組織に蓄積する。そして、本発明の低濃度処方物および低濃度治療は、注射と照射との間に要する時間を短縮し、従ってPDT法全体を短縮する。そして、本発明は、周知の光増感剤組成物を使用する従来のPDTより好都合かつ快適な「同日」PDT療法オプションを患者に本質的に提供できる。
【0027】
本発明の低濃度処方物および低濃度治療は、従来の高濃度PDT療法および周知の光増感剤処方物よりもユニークかつ驚くべき治療後の利点を提供する。本発明の低濃度治療に従って本発明の低濃度処方物を使用することは、PDT治療後、より急速に正常の組織中の安全なレベルに光増感剤を低下させる。元来、健康な組織特に皮膚における光増感剤の治療後の保持は、従来のPDTおよび周知の光増感剤組成物の主な副作用である。光増感剤が投与された後、光増感剤が実質的な時間組織例えば皮膚に残るため、患者が日光、室内の光または活性化波長を含むすべての他の光源に曝されることは、広く広がりしかも激しい紅斑を起こす。患者は、光増感剤を皮膚中で安全なレベルに低下させるために、標準のPDT投与後数週間以上日光および明るい室内の光を避けなければならない。患者は、また、全身性の皮膚過敏症のこの期間中戸外で時間を過ごすとき、保護的衣類およびサングラスを用いねばならない。PDT療法でPDTを使用することは、この副作用の持続時間および強さを劇的に低下させる。
【0028】
低濃度治療として上記で定義された本発明による光力学治療の改良された方法は、以下の段階からなる。
1)上記のように低濃度処方物を投与することにより光増感剤の予め選択された投与量(体重1kgあたりmg)を治療域に投与する段階。
2)光増感剤が選択的にターゲット高増殖性組織に蓄積するのに十分な時間経過させる段階。
【0029】
3)治療域を吸収されそして光増感剤を活性化する波長を有する照射により照射して光増感剤付近の高増殖性組織を破壊する励起状態の一重項酸素および酸素を形成する段階。
本発明の1つの態様における医薬−光の間隔(DLI)は、光増感剤の投与後5−48時間に及ぶ。正確なDLIは、光増感剤と特定の治療との間を変化し、それは当業者に一般に周知である。本発明の方法の他の好ましい態様では、1−24時間のDLIが最適である。
【0030】
他の好ましい態様では、低濃度治療は、周知の光増感剤組成物の濃度より67−98%少ない濃度での光増感剤の投与を含むだろう。上記のように、医薬−光の間隔は、好ましくは、1−24時間であり、「同日」または1晩の治療を可能にする。
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、それにより本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0031】
(標準m−THPC処方物(「m−THPC」)とm−THPCの低濃度処方物(「m−THPC−dl」)との投与後の患者におけるm−THPCの組織の蓄積の比較)
【0032】
この実験では、2つの処方物は研究かつ比較されて投与後患者の組織中のm−THPC吸収を示した。標準処方物(「m−THPC」)は、標準濃度の光力学治療のためのm−THPCを含み、それは4mg/mLであった。第二の処方物(「m−THPC−dl」)は、0.8mg/mLのm−THPCを含む低濃度処方物である。それぞれの処方物は、賦形剤として精製プロピレングリコールおよび精製エタノール(3:2、v/v)の混合物により製造された。それぞれの患者は、体重1kgあたり0.05mgのm−THPCを受けた。
【0033】
2つの異なる処方物の投与後、患者中の蛍光蓄積がモニターされ、そしてm−THPC処方物とm−THPC−dl処方物との間の薬物動力学の相違を見いだした。驚くべきことに、腫瘍および病巣周囲の皮膚における蛍光蓄積は、静脈注射の第一日目で標準(4mg/mL)m−THPC処方物により治療された患者では遅かった。得られた結果を以下に示す。
【0034】
(m−THPC(4mg/mL)処方物の注射後の蛍光検出)
測定点 時間点(測定された蛍光/テストされた患者)
15分 1時間 3時間 1日 2日
腫瘍 0/11 0/11 4/11 すべて すべて
病巣周囲の皮膚 0/11 0/11 2/11 10/11 すべて
無傷の皮膚 0/11 0/11 2/11 8/11 9/11
【0035】
(m−THPC−dl(0.8mg/mL)処方物の注射後の蛍光検出)
測定点 時間点(測定された蛍光/テストされた患者)
15分 1時間 3時間 1日 2日
腫瘍 0/16 5/16 12/16 すべて すべて
病巣周囲の皮膚 0/16 2/16 11/16 すべて すべて
無傷の皮膚 0/16 0/16 10/16 すべて すべて
【0036】
上記の表で示されるように、m−THPCは、標準(4mg/mL)のm−THPC処方物よりも早くm−THPC−dl処方物(「低濃度処方物」)を使用して腫瘍に蓄積された。詳細には、医薬の注射後1時間で、m−THPC蛍光は、標準(4mg/mL)処方物により処理されたすべの患者で検出されないが、m−THPC−dlを注射された患者では、測定可能な蛍光は、患者の30%を越えて腫瘍に観察された。注射後3時間で、強い蛍光が、標準(4mg/mL)のm−THPC群における患者の約30%に対して、m−THPC−dl患者の75%の腫瘍において観察された。
【0037】
注射後1日で、蛍光は、m−THPC−dl患者のすべての点で観察された。標準(4mg/mL)群では、病巣周囲の皮膚および無傷の皮膚が、注射2日後でさえも観察されなかった患者が存在した。2日から3週間の期間内で、標準(4mg/mL)m−THPC処方物と低濃度処方物「m−THPC」との間に、薬物動態における有意の相違は観察されなかった。
【実施例2】
【0038】
(m−THPCが可溶化製剤Lipofundin(商標)を水性リピドにより希釈されたとき標準m−THPC処方物(「m−THPC」)および低濃度処方物の投与後患者におけるm−THPCの組織蓄積の比較)
【0039】
この実施例では、2つの処方物は、検討されそして比較されて投与後の患者の組織中のTHPC吸収を示した。光力学治療のためのm−THPCの標準濃度を含む標準処方物(「m−THPC」)は、4mg/mLである。第二の処方物(「m−THPC−Lipo」)は、0.08mg/mLのm−THPC(50倍の希釈)を含む低濃度処方物である。それは、可溶化製剤Lipofundin(商標)MCT(10%、B.Braun Melsungen AG、Melsungen、ドイツ)を含む水性リピドにより4mg/mLの濃度を有する標準m−THPC溶液の希釈によって製造された。それぞれの患者は、体重1kgあたり0.05mgのm−THPCを静脈注射された。
【0040】
2つの異なる処方物の投与後、患者における蛍光の蓄積がモニターされ、そしてm−THPCとm−THPC−Lipo処方物との間の薬物動態における相違は、見いだされなかった。
【0041】
(m−THPC(4mg/mL)処方物の注射後の蛍光の検出)
測定点 時間点(測定された蛍光/テストされた患者)
15分 1時間 3時間 1日 2日
腫瘍 0/11 0/11 4/11 すべて すべて
病巣周囲の皮膚 0/11 0/11 2/11 10/11 すべて
無傷の皮膚 0/11 0/11 2/11 8/11 9/11
【0042】
(m−THPC−Lipo(0.08mg/mL)処方物の注射後の蛍光検出)
測定点 時間点(測定された蛍光/テストされた患者)
15分 1時間 3時間 1日 2日
腫瘍 0/10 0/10 3/10 すべて すべて
病巣周囲の皮膚 0/10 0/10 2/10 9/10 すべて
無傷の皮膚 0/10 0/10 1/10 9/10 すべて
【0043】
上記の表に示されているように、腫瘍に蓄積されたm−THPCは、医薬の4mg/mLの濃度を有する標準m−THPC処方物に使用により、そして0.08mg/mLの医薬濃度を有する希釈した形m−THPC−Lipoの使用により同様に行われた。特に、医薬の注射の初めの24時間以内(m−THPCの実際的な使用のための最も重要な期間)の腫瘍中のm−THPC蓄積のプロフィルは、使用される両方の処方物におけるm−THPCの非常に異なる濃度にかかわらず、両方の処方物について主要な相違を有しなかった。
【0044】
これらの結果は、「m−THPC−dl」により実施例1で観察されたユニークさおよび予想されない結果に強力な証拠になる。実施例2の賦形剤は、一般に、実施例1に見いだされた特別な溶媒混合物より疎水性光増感剤の分子のための良好な「溶媒」であると理解されるために、特別な溶媒混合物による腫瘍組織内の蓄積におけるこのような明確な結果を有することは従って驚くべきことである。
【0045】
他の実施例は、「標準濃度」の1/5から1/10の範囲内の希釈された処方物が好ましい範囲の態様であることを示す。
実施例に関連して本発明の好ましい態様を既述したが、本発明は、精密な態様に制限されず、そして種々の変化および改変が、請求の範囲に規定された本発明の範囲または趣旨から離れることなく、当業者により実施できることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性光増感剤および該疎水性光増感剤を可溶化するアルコール性賦形剤混合物からなる処方物であって、ここで該光増感剤は周知のPDI光増感剤組成物または薬剤より実質的に少ない量で存在し、そして該処方物は光力学治療療法について向上した性質を有することを特徴とする高増殖性組織疾患の光力学治療に有用な低濃度光増感剤処方物。
【請求項2】
該光増感剤が周知の光増感剤組成物または薬剤の量の1/3−1/50の量で存在する請求項1の低濃度処方物。
【請求項3】
該光増感剤が、ソラレン、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フェオホルバイド、バクテリオフェオホルバイド、フタロシアニン、および5−アミノレビュリン酸(ALA)からなる群から選ばれる請求項1の低濃度処方物。
【請求項4】
該光増感剤が、m−テトラ(ヒドロキシフェニル)クロリン(m−THPC)であり、該賦形剤混合物がv/v比で3:2の精製プロピレングリコールおよびエタノールである請求項1の低濃度処方物。
【請求項5】
a.請求項1の低濃度処方物中の光増感剤の少なくとも1つの予め選択された投与量を投与する段階、
b.該光増感剤を高増殖性組織に選択的に蓄積させることができる時間すなわち一般に48時間より短い時間経過させる段階、および
c.該光増感剤を活性化しそして該光増感剤を組織に対して有毒になる適切に選択された波長を有する放射を該治療域に付与する段階
からなることを特徴とする疾患のPDT療法のための低濃度治療の方法。
【請求項6】
経過させる時間が1−24時間の間である請求項5の方法。
【請求項7】
該PDT療法が、24時間以内に開始され完了する請求項5の方法。

【公表番号】特表2008−509998(P2008−509998A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527830(P2007−527830)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/026051
【国際公開番号】WO2006/023194
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502359666)セラムオプテック インダストリーズ インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】