説明

改良された抗TrkB抗体

本発明は、チロシン受容体キナーゼB(TrkB)受容体を特異的に認識し、作動性である改良された抗体または抗原結合分子、およびそれらの使用の方法を提供する。このような分子をコードするポリヌクレオチドおよびベクターならびに該ポリヌクレオチドまたはベクターを有する宿主細胞も本発明において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年1月17日出願の米国仮特許出願61/021,820の優先権の利益を主張する。この出願の全ての記載は、出典明示により本出願に包含される。
【0002】
発明の分野
本発明は、チロシン受容体キナーゼB(TrkB)の抗体および抗原結合分子アゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
I.TrkB
チロシン受容体キナーゼB(TrkB)は、TrkAおよびTrkCを含む1回膜貫通受容体チロシンキナーゼのファミリーに属する。これらのチロシン受容体キナーゼ(trk)はニューロトロフィンの活性を媒介する。ニューロトロフィンは、ニューロンの生存および発達のために必要であり、ニューロン構造およびシナプス可塑性の調節を介してシナプス伝達を調節する。ニューロトロフィンは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)およびニューロトロフィン−4/5(NT−4/5)を含むが、これらに限定されない(Lo, KY et al., J. Biol. Chem., 280:41744-52 (2005))。TrkBはBDNFの高親和性受容体である(Minichiello, et al., Neuron 21:335-45 (1998))。trkへのニューロトロフィンの結合は、受容体を活性化し、二量体化し、受容体の細胞内ドメインの特定のチロシン残基を自己リン酸化する(Jing, et al. Neuron 9:1067-1079 (1992); Barbacid, J. Neurobiol. 25:1386-1403 (1994); Bothwell, Ann. Rev. Neurosci. 18:223 253 (1995); Segal and Greenberg, Ann. Rev. Neurosci. 19:463 489 (1996); Kaplan and Miller, Curr. Opinion Neurobiol. 10:381 391 (2000))。これらのホスホチロシン残基は、神経細胞死の抑制およびニューロトロフィンの他の効果を引き起こす細胞内シグナル伝達カスケードの成分に対するドッキング部位として働く。例えば、Shc、FRS−2、SH2B、rAPSおよびPLCγはリン酸化チロシン残基を介してTrkBと相互作用する。これらのアダプター分子と活性化TrkBの結合によって、マイトージェン活性タンパク質キナーゼ、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼおよびPLCγ経路を含むシグナル伝達経路が開始され、それによりニューロトロフィンの作用を介在する(Lo, KY et al., J. Biol. Chem., 280:41744-52 (2005))。
【0004】
II.糖尿病
正常な健康状態を維持するために、ヒト血流中のグルコースの濃度は比較的に狭い範囲内(血液1デシリットルあたり60−120ミリグラム)で制御されなければならない。血中グルコースがあまりに低く下がると、低血糖として知られている状態が脱力感、衰弱、頭痛、混乱および人格変化のような症状を伴って生じる。過度の血中グルコースまたは高血糖は、細胞、組織および臓器中の過剰のグルコースとタンパク質の化学反応により組織損傷を引き起こし得る。この損傷は、失明、腎不全、性的不全、アテローム性動脈硬化症および感染に対する脆弱性の増加の糖尿病性合併症を引き起こすと考えられている。
【0005】
糖尿病は連続的な病理学的に高い血中グルコース濃度と関連する;それは米国の死の主な原因の1つであり、すべての死亡の約5%に関与する。糖尿病は2つの主なサブクラス:若年性糖尿病またはインスリン依存型糖尿病(IDDM)としても知られているI型および成人発症型糖尿病または非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)としても知られているII型に分類される。
【0006】
II型糖尿病の診断は症状の評価ならびに尿および血液中のグルコースの測定を含む。血中グルコース濃度決定は正確な診断のために必要である。さらに特に、空腹時の血中グルコース濃度決定は使用される標準手段である。しかしながら、経口耐糖能試験(OGTT)は、絶食時の血中グルコース濃度よりもさらに高感度であると考えられている。II型糖尿病は異常な経口耐糖能(OGT)と関連する。したがって、一般的に糖尿病の診断のために必須ではないが、OGTTはII型糖尿病の診断における助けとできる(Emancipator K, Am J Clin Pathol 1997 November ;112(5):665 74; 2 Diabetes Mellitus, Decision Resources Inc., March 2000)。
【0007】
したがって、耐糖能異常は、II型糖尿病の診断のために必要とされる量未満の空腹時の血中グルコース濃度を有するが、OGTT中に正常者と糖尿病患者間の血漿グルコース応答を有する個体において診断される。耐糖能異常は前糖尿病患者状態と考えられ、耐糖能異常(OGTTにより定義される)はII型糖尿病の発症に関する強力な予測因子である(Haffner S M, Diabet Med 1997 August ; 14 Suppl 3:S12 8)。
【0008】
II型糖尿病は、血漿グルコース濃度の増加によって悪化する、膵臓機能の低下および/または他のインスリン関連プロセスと関連する進行性疾患である。したがって、II型糖尿病は、通常、長期の前糖尿病相を有し、種々の病態生理学的メカニズムは、前糖尿病状態において、病的な高血糖および耐糖能異常、例えば、グルコース利用および有効性、インスリン作用および/またはインスリン生産における異常を引き起こし得る(Goldberg R B, Med Clin North Am 1998 July ;82(4):805 21)。
【0009】
耐糖能障害と関連する前糖尿病状態は、また、腹部肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症および高血圧に対する素因と関連し得る(Groop L, Forsblom C, Lehtovirta M, Am J Hypertens 1997 September ;10(9 Pt 2):172S 180S; Haffner S M, J Diabetes Complications 1997 March-April, 11(2):69 76; Beck-Nielsen H, Henriksen J E, Alford F, Hother-Nielson O, Diabet Med 1996 September ;13 (9 Suppl 6):S78 84)。
【0010】
病的な高血糖または耐糖能異常の減少に焦点を合わせるII型糖尿病を発症する危険性を有する個体への早期介入は、II型糖尿病および関連合併症への進行を予防または遅延させ得る。したがって、異常経口耐糖能および/または血中グルコース濃度の上昇を有効に処置することにより、II型糖尿病への障害の進行を予防または抑制することができる。例えば、米国特許第7,109,174号、参照。
【0011】
インスリンおよびスルホニルウレア(経口低血糖治療剤)は、今日、米国にて処方されている糖尿病薬剤の2つの主な種類である。インスリンは、I型およびII型糖尿病の両方に対して処方されているが、スルホニルウレアは、通常、II型糖尿病のみに処方されている。スルホニルウレアは天然インスリン分泌を刺激し、インスリン抵抗性を低下させる;これらの化合物は代謝におけるインスリンの機能をもとに戻さない。スルホニルウレアを受ける約1/3の患者がそれに耐性になる。II型糖尿病患者の中にはスルホニルウレア治療に応答しない者がいる。スルホニルウレアの最初の処置に応答する患者の5−10%が、約10年後に、スルホニルウレア有効性の喪失を経験する可能性がある。例えば、米国特許第7,115,284号、参照。
【0012】
II型糖尿病の処置のために一般的に処方されている多数の抗糖尿病剤、例えば、スルホニルウレアおよびチアゾリジンジオンは、体重増加の望ましくない副作用を有する。前糖尿病状態を有するか、または診断されたII型糖尿病を有する患者における体重増加は、代謝および内分泌腺調節異常の強調による悪影響を引き起こし、そして肥満それ自体はII型糖尿病の発症および進行性の悪化に対する極めて重要な危険因子である。したがって、体重を維持するか、または減らす抗糖尿病薬剤を使用することが望ましい。例えば、米国特許第7,199,174号、参照。
【0013】
糖尿病、心臓疾患、卒中、高血圧およびいくつかの型の癌を含む多くの深刻な状態に関する個体の危険性を増加させるため、肥満は一般的かつ非常に深刻な公衆の健康状態問題である。20年にわたる肥満個体のかなりの数の増加が、多大な公衆の健康意識を引き起こした。ダイエットおよびエクササイズによる肥満の減少が関連危険因子を劇的に減少させることが試験により証明されたが、肥満が食欲の増加、高カロリー食に対する好み、身体活性の減少および脂質合成代謝の増加に寄与する遺伝的に受け継がれる因子と強く関連することを考慮すると、これらの処置は広く成功していない。例えば、米国特許第7,115,767号、参照。
【0014】
III.レット症候群
1966年にDr.Andreas Rettにより最初に同定されたレット症候群(RTT)は、遅発神経発達障害から生じる深刻なCNS障害である。それは、もっぱら、1/10,000−15,000の生児出生の割合ですべての民族の女児を冒す。RTTを有するいくつかの個体は若年で死亡する;しかしながら、多数は成人になることができ、深刻な障害を受ける。患者の25%までが心/呼吸不全で死亡する。今までのところ該疾患に対する有効な処置はない。
【0015】
見かけ上正常発達期間後、罹患している女児は6−18月齢にてRTT症状を発症し、今後数年にわたって進行的に悪化する。症状は、出生時は正常の頭囲、次に頭部成長の減速;後天的言語障害、コミュニケーション機能障害、認識機能障害;意図的な手の動きから型通りの手の動き(曲がりくねった手のもみ合わせ、手を洗う、拍手、軽くたたくなど)への変化;運動障害または悪化(歩行失調、硬直など);起きている間の呼吸困難;早期乳児期からの睡眠パターン障害;筋肉疲労および筋失調症を伴う異常筋緊張;末梢血管運動神経障害;進行性側弯症または後弯症;および成長遅延を含む。
【0016】
該障害は、また、中枢自律神経機能障害により特徴付けられ、Rett患者は以下の症状のいくつか、またはすべてを示す:呼吸停止、浅呼吸、過呼吸、遷延性無呼吸期間からなる多発性呼吸律動不整;ベースラインの心臓の迷走神経緊張の減少による心不整脈;および圧反射心臓感受性。これらの症状は致命的であり、Rett患者に突然死の危険性を与える。それらの患者は、脳幹未成熟ならびに心肺ネットワーク内の、および起きている間の視床下部または辺縁皮質からの統合的阻害の欠如を示す。さらに、脳幹ニューロトロフィンシグナル伝達(NGFおよびBDNF)の変化がRett患者において報告され、モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリン)および神経ペプチド(サブスタンスP)レベルが減少する。
【0017】
RTTは、大半の場合において、転写リプレッサーMeCP2(メチルCpGシトシン結合タンパク質2)をコードするX染色体関連遺伝子mecp2における変異により引き起こされる単一遺伝子疾患である。MeCP2は優先的にメチル化DNAに結合する。
【0018】
ニューロトロフィン因子BDNFはMeCP2の既知の直接標的であり、そしてノルエピネフリンおよびセロトニン神経に対する重要な栄養因子である。驚くべきことに、Mecp2−KOマウスは脳BDNFが不足しており、脳BDNFの遺伝子過剰発現が寿命を延長させ、いくつかの運動障害から救うことができる。ヒトにおいて同定されているBDNF機能不全は、レット症候群、ウィルムス腫瘍、無虹彩、尿生殖器異常および知的障害(WAGR)症候群(Han, et al., N Engl J Med (2008) 359(9):918-27)、メラノコルチン受容体MC4R機能不全による肥満(Farooqi and O'Rahilly, Endocrine Rev (2006) 27(7):710-18)、悪液質/筋肉消耗性症候群(Lin, et al., PloS, 3(4):e1900; WO 2007/088476)を含む。
【発明の概要】
【0019】
発明の概要
1つの局面において、本発明はチロシン受容体キナーゼB(TrkB)に結合する抗体を提供する。いくつかの態様において、抗体は:
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域、ならびに
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域を含み、
i)重鎖CDR3はアミノ酸配列V(T/V)(S/T/R/N)WFAY(配列番号:34)を含み;そして
ii)軽鎖CDR3可変領域はアミノ酸配列(S/M)QGT(H/A)(E/V/I)PYT(配列番号:42)を含み;そして
該抗体はTrkBアゴニストである。
【0020】
他の局面において、本発明はTrkBに特異的に結合する抗体を提供する。いくつかの態様において、抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域はそれぞれ以下の3つの相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含む;
i)重鎖可変領域のCDR1は配列番号:25のアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖可変領域のCDR2は配列番号:28、配列番号:29および配列番号:30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iii)重鎖可変領域のCDR3は配列番号:32および配列番号:33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iv)軽鎖可変領域のCDR1は配列番号:35、配列番号:36および配列番号:37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
v)軽鎖可変領域のCDR2は配列番号:39のアミノ酸配列を含み;
vi)軽鎖可変領域のCDR3は配列番号:40および配列番号:41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
抗体の態様に関して、いくつかの態様において、重鎖Vセグメントは配列番号:16と少なくとも90%の配列同一性を共有し、そして軽鎖Vセグメントは配列番号:24と少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0022】
いくつかの態様において、重鎖Vセグメントは配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を共有し、そして軽鎖Vセグメントは配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22および配列番号:23からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0023】
いくつかの態様において、重鎖CDR3は配列番号:32および配列番号:33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして軽鎖CDR3は配列番号:40および配列番号:41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの態様において、重鎖FR4はヒト生殖細胞のFR4である。いくつかの態様において、重鎖FR4は配列番号:50である。いくつかの態様において、重鎖Jセグメントはヒト生殖細胞のJH4部分配列WGQGTLVTVSS(配列番号:50)を含む。
【0025】
いくつかの態様において、軽鎖FR4はヒト生殖細胞のFR4である。いくつかの態様において、軽鎖FR4はヒト生殖細胞のJk2部分配列FGQGKLEIK(配列番号:61)である。
【0026】
いくつかの態様において、重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントはそれぞれ相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み;
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号:27のアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号:31のアミノ酸配列を含み;
iii)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号:38のアミノ酸配列を含み;そして
iv)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号:39のアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの態様において、
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号:28を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号:35を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3は配列番号:41を含む。
【0028】
いくつかの態様において、
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号:28を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号:36を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3は配列番号:40を含む。
【0029】
いくつかの態様において、
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号:28を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号:37を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3は配列番号:40を含む。
【0030】
いくつかの態様において、
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号:29を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号:35を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3は配列番号:41を含む。
【0031】
いくつかの態様において、重鎖可変領域は配列番号:4の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有し、そして軽鎖可変領域は配列番号:11の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0032】
いくつかの態様において、重鎖可変領域は配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有し、そして軽鎖可変領域は配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0033】
いくつかの態様において、重鎖可変領域は配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有し、そして軽鎖可変領域は配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0034】
いくつかの態様において、重鎖可変領域は配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、そして軽鎖可変領域は配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの態様において、抗体は5×10−8M未満の平衡解離定数(KD)にてTrkBに結合する。
【0036】
いくつかの態様において、抗体はFAb’フラグメントである。いくつかの態様において、抗体はIgGである。いくつかの態様において、抗体は一本鎖抗体(scFv)である。いくつかの態様において、抗体はヒト定常領域を含む。
【0037】
いくつかの態様において、抗体はチロシンキナーゼ受容体Aまたはチロシンキナーゼ受容体Cに結合しない。いくつかの態様において、抗体はTrkBのリガンド結合ドメイン(LBD)に結合する。いくつかの態様において、抗体はTrkBへの脳由来神経栄養因子(BDNF)の結合と競合する。
【0038】
いくつかの態様において、抗体は配列番号:1を含む重鎖および配列番号:8を含む軽鎖を含む。
【0039】
いくつかの態様において、抗体は配列番号:1を含む重鎖および配列番号:9を含む軽鎖を含む。
【0040】
いくつかの態様において、抗体は配列番号:1を含む重鎖および配列番号:10を含む軽鎖を含む。
【0041】
いくつかの態様において、抗体は配列番号:3を含む重鎖および配列番号:8を含む軽鎖を含む。
【0042】
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗体および生理学的に適合性のある賦形剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。薬学的に許容される組成物の態様は抗体に関して上記のとおりである。
【0043】
いくつかの態様において、医薬組成物は、呼吸窮迫の減少または阻害において使用するための薬剤、例えば、ノルエピネフリンおよび/またはセロトニン経路の活性化因子をさらに含む。第2の薬剤は三環式抗鬱剤、例えば、デシプラミン(DMI)であり得る。いくつかの態様において、第2の薬剤はセロトニン1A受容体部分的アゴニスト、例えば、ブスピロン、フルオキセチンおよびレボキセチンである。いくつかの態様において、第2の薬剤はグルタミン酸AMPA受容体の活性化因子、例えば、アンパカインCX54である。いくつかの態様において、第2の薬剤はプロスタグランジン、プロゲステロンまたはTrkB活性の増強剤(例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤)である。
【0044】
いくつかの態様において、医薬組成物は個体における血中グルコース濃度を減少させる薬剤をさらに含む。いくつかの態様において、医薬組成物は個体における体重を減少させる薬剤をさらに含む。
【0045】
関連局面において、本発明は、本発明の抗体を個体に投与することにより、必要とする個体におけるBDNF機能不全による障害を処置、減少、阻害、改善および/または予防する方法を提供する。処置の方法の態様は抗体に関する上記および本明細書のとおりである。いくつかの態様において、抗体は全身的にまたは局所的に、例えば、経口的に、吸入的に、静脈内に、または腹腔内に投与される。いくつかの態様において、BDNF機能不全による障害は、レット症候群、WAGR症候群、MC4R機能不全による肥満および悪液質(例えば、癌、加齢、摂食障害またはオピオイドを含む薬物誘発性嘔吐による)からなる群から選択される。
【0046】
さらなる局面において、本発明は、必要とする個体における血中グルコース濃度および/または体重を減少させる方法であって、治療有効量の本発明の抗体を個体に投与することを含む方法を提供する。処置の方法の態様は抗体に関する上記および本明細書のとおりである。方法のさらなる態様に関して、いくつかの態様において、個体は前糖尿病である。いくつかの態様において、個体はI型糖尿病を有する。いくつかの態様において、個体はII型糖尿病を有する。いくつかの態様において、個体は過体重である。いくつかの態様において、個体は肥満である。
【0047】
いくつかの態様において、方法は治療有効量の血中グルコースの減少に有効な第2の薬剤を個体に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、第2の薬剤はインスリン、スルホニルウレア、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、PPARγアゴニスト、PPARαアゴニスト、PPARδアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、PPARα/γ/δパンアゴニスト、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV阻害剤およびGLP−1/GLP−1類似体からなる群から選択される。
【0048】
いくつかの態様において、方法は治療有効量の体重または肥満の減少に有効な第2の薬剤を個体に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、第2の薬剤はリパーゼ阻害剤、シブトラミン、CB−1阻害剤、トピラメート、アミリン、アミリン類似体、レプチン、PYY/PYY類似体およびGLP−1/GLP−1類似体からなる群から選択される。
【0049】
いくつかの態様において、第2の薬剤および抗体は混合物として投与される。いくつかの態様において、第2の薬剤および抗体は別々に投与される。
【0050】
定義
“抗体”は、非共有的に、可逆的に、特定の方法において対応する抗原に結合することができる、免疫グロブリンファミリーのポリペプチドまたは免疫グロブリンのフラグメントを含むポリペプチドを意味する。典型的な抗体構造単位はテトラマーを含む。それぞれのテトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、それぞれの対がジスルフィド結合を介して結合している1つの“軽鎖”(約25kD)および1つの“重鎖”(約50−70kD)を有する。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに多種多様な免疫グロブリンの可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκまたはλのいずれかとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらは順に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定める。それぞれの鎖のN−末端は、主に抗原認識に関与する約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)なる用語は、それぞれ軽鎖および重鎖のこれらの領域を意味する。本出願において使用されるとき、“抗体”は、例えば、TrkBに特異的な特定の結合を有する、すべての抗体の変異体およびそれらのフラグメントを含む。したがって、同じ結合特異性を有する、全長抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(ScFv)、Fab、Fab’およびこれらのフラグメントの多量体バージョン(例えば、F(ab’))は、この概念の範囲内である。
【0051】
“相補性決定ドメイン”または“相補性決定領域”(“CDR”)は、互換的に、VおよびVの超可変領域を意味する。CDRは、このような標的タンパク質に対して特異性を有する抗体鎖の標的タンパク質結合部位である。それぞれのヒトVまたはVに3つのCDR(CDR1−3、N−末端から連続して数える)が存在し、可変ドメインの約15−20%を構成する。CDRは標的タンパク質のエピトープと構造的に相補的であり、したがって結合特異性に直接関与する。VまたはVの残りの範囲、いわゆるフレームワーク領域は、より少ないアミノ酸配列を示す(Kuby, Immunology, 4th ed., Chapter 4. W.H. Freeman & Co., New York, 2000)。
【0052】
CDRおよびフレームワーク領域の位置は、当分野で既知の種々の定義を使用して決定される、例えば、Kabat, Chothia, international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブ上のimgt.cines.fr/)およびAbM(例えば、Johnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987); Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989); Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992); Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol., 273:927-748 (1997)、参照)。抗原結合部位の定義も、以下に記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219-221 (2000);およびLefranc, M.P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001); MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996);およびMartin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989); Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153 (1991);およびRees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141-172 (1996)。
【0053】
“結合特異性決定基”または“BSD”なる用語は、互換的に、抗体の結合特異性を決定するために必要な相補性決定領域内の最小の連続する、または連続しないアミノ酸配列を意味する。最小の結合特異性決定基は1つ以上のCDR配列内に存在し得る。いくつかの態様において、最小の結合特異性決定基は、抗体の重鎖および軽鎖のCDR3配列の一部または全長内(すなわち、これにより単に決定される)に存在する。
【0054】
本明細書において使用される“抗体軽鎖”または“抗体重鎖”は、それぞれ、VまたはVを含むポリペプチドを意味する。内因性Vは遺伝子セグメントV(可変)およびJ(接合部)によって、そして内因性VはV、D(多様性)およびJによってコードされる。VまたはVのそれぞれはCDRならびにフレームワーク領域を含む。本出願において、抗体軽鎖および/または抗体重鎖は、ときどき、“抗体鎖”として集合的に称され得る。これらの用語は、当業者が容易に認識することができるとき、VまたはVの基本構造を壊さない変異を含む抗体鎖を含む。
【0055】
抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼでの消化により生じる多くのよく特徴付けられているフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは抗体のヒンジ領域のジスルフィド結合を消化して、それ自体ジスルフィド結合によりV−C1に結合している軽鎖であるFab’のダイマーであるF(ab)’を生産する。F(ab)’を、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊するために穏やかな条件下で還元すると、F(ab)’ダイマーからFab’モノマーに変換され得る。Fab’モノマーは本質的にヒンジ領域の部分を有するFabである。Fundamental Immunology 3d ed. (1993)、参照。種々の抗体フラグメントが無傷の抗体の消化なる用語において定義されるが、当業者は、このようなフラグメントが化学的にまたは組換えDNA方法論を使用することによりデノボ合成され得ることを理解している。したがって、本明細書において使用される“抗体”なる用語は、また、完全な抗体の変異により生産される抗体フラグメント、または、組換えDNA方法論を使用してデノボ合成されるもの(例えば、一本鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定されるもの(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)、参照)のいずれかを含む。
【0056】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造のために、当分野で既知の全ての技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp. 77-96. Alan R. Liss, Inc. 1985、参照)。一本鎖抗体の生産のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を生産するために適用することができる。また、遺伝子組換えマウスまたは他の生物、例えば、他の哺乳動物が、ヒト化抗体を発現させるために使用され得る。あるいは、ファージディスプレイ技術は、選択された抗原に特異的に結合する抗体および異種Fabフラグメントを同定するために使用することができる(例えば、McCafferty et al., 上記;Marks et al., Biotechnology, 10:779-783, (1992)、参照)。
【0057】
非ヒト抗体をヒト化または霊長類化するための方法は当分野で既知である。一般的に、ヒト化抗体は、それに非ヒトである源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、インポート残基として称され、これは一般的にインポート可変ドメインから得られる。ヒト化は、齧歯動物のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより、Winter and co−workersの方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)、参照)にしたがって本質的に実施することができる。したがって、このようなヒト化抗体は、実質的に無傷のヒト可変ドメイン未満が非ヒト種由来の対応する配列により置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は、いくつかの相補性決定領域(“CDR”)残基および恐らくいくつかのフレームワーク(“FR”)残基が齧歯動物抗体の類似部位由来の残基により置換されている、一般的にヒト抗体である。
【0058】
“キメラ抗体”は、(a)定常領域またはその一部が改変、置換または交換されて、抗原結合部位(可変領域)が異なる、または改変されたクラスの定常領域、エフェクター機能および/または種、または、キメラ抗体に新規特性を与える完全に異なる分子、例えば、酵素、トキシン、ホルモン、成長因子および薬物に結合するようになっている;または(b)可変領域またはその一部が、異なる、または改変された抗原特異性を有する可変領域で改変、置換または交換されている、抗体分子である。
【0059】
“可変領域”または“V領域”なる用語は、互換的にFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4を含む重鎖または軽鎖を意味する。図1、参照。内因性可変領域は、免疫グロブリン重鎖V−D−J遺伝子または軽鎖V−J遺伝子によってコードされる。V領域は天然、組換えまたは合成であり得る。
【0060】
本明細書において使用される“可変セグメント”または“Vセグメント”なる用語は、互換的にFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3を含む可変領域の部分配列を意味する。図1、参照。内因性Vセグメントは、免疫グロブリンV遺伝子によってコードされる。Vセグメントは天然、組換えまたは合成であり得る。
【0061】
本明細書において使用される“Jセグメント”なる用語は、CDR3のC末端部分およびFR4を含む可変領域の部分配列を意味する。内因性Jセグメントは、免疫グロブリンJ遺伝子によってコードされる。図1、参照。Jセグメントは天然、組換えまたは合成であり得る。
【0062】
“ヒト化”抗体は、ヒトにおける免疫原性が低いが、非ヒト抗体の反応性を維持している抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を維持し、抗体の残りの部分をそれらのヒトのカウンターパートで置き換えることにより達成することができる。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)、参照。
【0063】
“対応するヒト生殖細胞配列”なる用語は、ヒト生殖細胞の免疫グロブリン可変領域配列によってコードされる他のすべての評価された可変領域のアミノ酸配列と比較して、参照可変領域のアミノ酸配列または部分配列に対して決定されたもっとも高いアミノ酸配列同一性を共有する、ヒト可変領域のアミノ酸配列または部分配列をコードする核酸配列を意味する。対応するヒト生殖細胞配列は、他のすべての評価された可変領域のアミノ酸配列と比較して、参照可変領域のアミノ酸配列または部分配列に対してもっとも高いアミノ酸配列同一性を有する、ヒト可変領域のアミノ酸配列または部分配列を意味することもできる。対応するヒト生殖細胞配列は、フレームワーク領域のみ、相補性決定領域のみ、フレームワークおよび相補性決定領域、可変セグメント(上記定義のとおり)または可変領域を含む配列もしくは部分配列の他の組合せであり得る。配列同一性は、本明細書に記載されている方法を使用して、例えば、BLAST、ALIGNまたは他の当分野で既知のアラインメントアルゴリズムを使用して2つの配列をアラインして決定することができる。対応するヒト生殖細胞の核酸またはアミノ酸配列は、参照可変領域の核酸またはアミノ酸配列と少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%、99%の配列同一性を有し得る。対応するヒト生殖細胞配列は、例えば、一般に利用することができる国際的なImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブ上のimgt.cines.fr/)およびV−base(ワールドワイドウェブ上のvbase.mrc-cpe.cam.ac.uk)を介して決定することができる。
【0064】
抗原、例えば、タンパク質と抗体または抗体由来結合剤間の相互作用の記載の関連において使用されるとき、“特異的に(または選択的に)結合”なるフレーズは、タンパク質および他の生物製剤の異種集団中で抗原の存在の決定要因となる結合反応を意味する。したがって、示される免疫アッセイ条件下で、特定の結合特異性を有する抗体または結合剤は、特定の抗原にバックグランドに対して少なくとも2倍結合し、サンプル中に存在する多量の他の抗原に実質的に結合しない。このような条件下での抗体または結合剤への特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性に対して選択された抗体または薬剤を必要とし得る。この選択は、例えば、他の種(例えば、マウス)由来のTrkB分子または他のTrkサブタイプ(例えば、TrkA、TrkCなど)と交差反応する抗体を除くことにより達成され得る。種々の免疫アッセイフォーマットが、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択するために使用され得る。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択するために日常的に使用される(特異的免疫反応性を測定するために使用することができる免疫アッセイフォーマットおよび条件の記載について、例えば、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual(1998)、参照)。一般的に特異的または選択的結合反応は、バックグラウンドシグナルに対して少なくとも2倍、さらに一般的にはバックグラウンドに対して少なくとも10から100倍以上のシグナルを生じる。
【0065】
“平衡解離定数(K、M)”なる用語は、結合速度定数(k、時間−1、M−1)で割られた解離速度定数(k、時間−1)を意味する。平衡解離定数は当分野で既知の何らかの方法を使用して測定することができる。本発明の抗体は、一般的に約10−7または10−8M未満、例えば、約10−9Mまたは10−10M未満、いくつかの態様において、約10−11M、10−12Mまたは10−13M未満の平衡解離定数を有する。
【0066】
本明細書において使用される“抗原結合領域”なる用語は、本発明のTrkB結合分子のドメインを意味し、これは該分子とTrkBの特異的結合に関与する。抗原結合領域は少なくとも1つの抗体重鎖可変領域および少なくとも1つの抗体軽鎖可変領域を含む。少なくとも1つのこのような抗原結合領域は本発明のそれぞれのTrkB結合分子に存在し、そしてそれぞれの抗原結合領域は他のものと同一であっても、異なっていてもよい。いくつかの態様において、本発明のTrkB結合分子の少なくとも1つの抗原結合領域はTrkBアゴニストとして作用する。
【0067】
“抗体アゴニスト”または“アゴニスト”なる用語は、互換的に、受容体を活性化し、全てのまたは部分的な(例えば、少なくとも60%)受容体介在応答を誘導することができる抗体を意味する。例えば、TrkBのアゴニストはTrkBに結合し、TrkB介在シグナル伝達を誘導する。いくつかの態様において、TrkB抗体アゴニストは、SH−SY5Y細胞と接触したとき、TrkBに結合し、神経突起伸長を誘導する能力により、またはそうでなければ本明細書に記載されているように同定することができる。他の態様において、TrkB抗体アゴニストは、本明細書に記載されているアノイキスアッセイにおいて測定される分離−依存アポトーシスから細胞を救出することができる能力により同定することができる。本明細書に記載されているアノイキスアッセイにおいて5nM未満、例えば、1nM、500pM、250pM、100pM、50pMまたは30pM未満のEC50を有する抗TrkB抗体は、TrkB抗体アゴニストと考えられる。
【0068】
“TrkB”または“チロシン受容体キナーゼB”なる用語は、互換的に、受容体チロシンキナーゼの3つのトロポミオシン−関連キナーゼ(Trk)ファミリーメンバーの1つを意味し、他のメンバーがTrkAおよびTrkCである。TrkBは、神経栄養チロシン受容体キナーゼ(NTRK)ファミリーのメンバーであり、神経栄養チロシンキナーゼ2型受容体(NTRK2)としても既知である。TrkBは、ニューロトロフィンと結合すると、それ自体およびMAPK経路のメンバーをリン酸化する膜結合受容体である。TrkBに対するリガンドは脳−由来神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロフィン−3を含む。例えば、Haniu, et al., Arch Biochem Biophys (1995) 322(1):256-264; Squinto, et al., Cell (1991) 65(5) 885-893;およびSoppet, et al., Cell (1991) 65(5) 895-903、参照。TrkBを介するシグナル伝達は細胞分化を引き起こす。この遺伝子の変異は肥満および気分障害と関連している。TrkBの異なるアイソフォームをコードする選択的転写スプライス変異が存在する。TrkBの核酸およびアミノ酸配列は既知であり、GenBank 受入番号 NM_001018064(gi:65506744、PRI 18−NOV−2007)の下に公開されている。GenBank 受入番号 BC075804.1、U12140.1、BC031835.1およびAF410899.1も参照。本明細書において使用されるTrkBポリペプチドは、BDNFまたはニューロトロフィン−3の結合により活性化され、それ自身およびMAPK経路のメンバーをリン酸化することにより細胞内シグナル伝達を引き起こす、機能的にチロシンキナーゼ受容体である。構造的に、TrkBアミノ酸配列はGenBank 受入番号 NP_001018074.1、AAB33109、AAL67968、AAL67964、AAC51371.1、AAH31835.1またはAAL67965.1のアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。構造的に、TrkB核酸配列はGenBank 受入番号 NM_001018064、S76473、BC075804.1、U12140.1、BC031835.1またはAF410899.1の核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。
【0069】
本発明のポリペプチドの“活性”は、天然細胞または組織におけるポリペプチドの構造、調節または生化学機能を意味する。ポリペプチドの活性の例は直接的活性および間接的活性の両方を含む。典型的な直接的活性は、リガンド結合、例えば、TrkBのリガンド結合ドメイン(LBD)(例えば、Naylor et al., Biochem Biophys Res Commun. 291(3):501-7 (2002)、参照)へのBDNFの結合、セカンドメッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、IP、DAGまたはCa2+)の生産または減少、イオン流出およびリン酸化または転写レベルの変化を含む、ポリペプチドとの直接的相互作用の結果である。TrkBの内容における典型的な間接的活性は、ポリペプチドと他の細胞または組織成分との相互作用の結果として、ポリペプチドの指定された活性に対する細胞もしくは組織における表現型または応答の変化、例えば、全血中グルコース濃度の減少として観察される。
【0070】
成人に対して使用されるとき、“肥満”なる用語は、30以上の肥満度指数(BMI)を有する個体を意味する。成人に対して使用されるとき、“過体重”は、25以上のBMIを有する個体を意味する。子供において、年齢に対する肥満度指数のグラフを使用して、85th以上のBMIパーセンタイルを“過体重”と考え、95th以上のBMIパーセンタイルを“肥満”と考える。例えば、Clinical Guidelines on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adult (National Heart, Lung and Blood Institute, June 17, 1998)およびPreventing and Managing the Global Epidemic of Obesity in Report of the World Health Organization Consultation of Obesity (WHO, Geneva, June 1997)、参照。
【0071】
“前糖尿病個体”は、空腹時の血液グルコース濃度が110mg/dlを超えるが126mg/dl未満であるか、または2時間PG記録が140mg/dlを超えるが200mg/dl未満である成人を意味する。患者由来サンプルと比較するために使用されるとき、“糖尿病患者個体”は、空腹時の血液グルコース濃度126mg/dlを超える、または2時間PG記録が200mg/dlを超える成人を意味する。“空腹時”は、少なくとも8時間カロリー摂取していないことを意味する。“2時間PG”は、水に溶解した75gの無水グルコースの当量を含むグルコース負荷後の患者の血液グルコース濃度を意味する。全体的試験は、一般的に経口グルコース負荷試験(OGTT)と称される。例えば、Diabets Care, 2003, 26(11): 3160-3167 (2003)、参照。
【0072】
核酸またはタンパク質に適用するとき、“単離された”なる用語は、核酸またはタンパク質が天然状態で関連している他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。それは好ましくは均質状態である。それは乾燥状態または水溶液のいずれであってもよい。純度および均質性は、一般的に分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。調製物に存在する優勢な種類のタンパク質は、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、その遺伝子の側面に位置しており、そして興味ある遺伝子以外のタンパク質をコードするオープン・リーディング・フレームと分離される。“精製された”なる用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルで実質的に1本のバンドを生じることを意味する。特に、それは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋、さらに好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0073】
“核酸”または“ポリヌクレオチド”なる用語は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはリボヌクレオチド(RNA)およびそれらのポリマーを意味する。具体的に限定されていない限り、該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然に存在するヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。他に記載のない限り、特定の核酸配列は、また、明示しなくても保存的に改変されたそれらの変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNPおよび相補配列ならびに明白に示された配列を包含する。具体的に、縮重コドン置換は、1以上の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を製造することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0074】
“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”なる用語は、本明細書で互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。該用語は、1個以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模擬物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。
【0075】
“アミノ酸”なる用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模擬物を意味する。天然アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされているもの、ならびに、後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は天然アミノ酸と同様の基本的な化学構造を有する化合物を意味し、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合しているα炭素を有する。このような類似体は修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的な化学構造を維持している。アミノ酸模擬体は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の様式で機能する化学化合物を意味する。
【0076】
“保存的に改変された変異体”はアミノ酸および核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、または核酸がアミノ酸配列をコードしていないとき、本質的に同一の配列を意味する。遺伝子コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が任意のあるタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードするポリペプチドを変化させることなく、記載の対応するコドンのいずれかに変えることができる。このような核酸変異体は保存的に改変された変異体の1種である“サイレント変異体”である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列は、また、核酸の全ての可能なサイレント変異体を意味する。当業者は、核酸のそれぞれのコドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および、通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)を、機能的に同一の分子を得るために改変できることを理解している。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変異体は、それぞれの記載されている配列に暗に含まれる。
【0077】
アミノ酸配列について、当業者は、コードされた配列中の1つのアミノ酸または数パーセントのアミノ酸を変化、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が“保存的に改変された変異体”である(該変化は化学的に同様のアミノ酸でアミノ酸の置換をもたらす)ことを理解している。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換目録は当分野で既知である。このような保存的に改変された変異体は、多型変異体、種間相同体および本発明の対立遺伝子に加えられ、除外されない。
【0078】
下記8個のグループはそれぞれ互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)、参照)。
【0079】
“配列同一性パーセント”は、比較ウィンドウにわたる2つの最適アライン配列を比較することにより決定され、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適アラインメントのために、付加または欠失を含まない参照配列(例えば、本発明のポリペプチド)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセントは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で存在する位置の数を決定し、マッチしている位置の数を得、マッチしている位置の数を比較ウィンドウの位置の全数で割り、配列同一性パーセントを得るためにその結果に100を掛けることにより計算される。
【0080】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、“同一”または“同一性”パーセントなる用語は、同じ配列である2つ以上の配列または部分配列についていう。2つの配列が、比較ウィンドウまたは下記配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動アラインメントおよび目視検査により測定するとき指定された領域にわたり比較し、そして最大対応のために整列させたとき、特定のパーセントの同じ(すなわち、参照配列の特定の領域、または記載のないとき全体の配列にわたり、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性)であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを有するとき、2つの配列は“実質的に同一”である。本発明は、本明細書において例示されたポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、配列番号:1−11のいずれかの例示された可変領域;配列番号:12−24のいずれかの例示された可変セグメント;配列番号:25−42のいずれかの例示されたCDR;配列番号:43−61のいずれかの例示されたFR;および配列番号;62−73のいずれかの例示された核酸配列)と実質的に同一であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する。所望により、同一性は少なくとも約15、25または50のヌクレオチド長、さらに好ましくは100から500または1000以上のヌクレオチド長である領域、または参照配列の全長で存在することができる。アミノ酸配列に対して、同一または実質的同一は、少なくとも5、10、15または20のアミノ酸長、所望により少なくとも約25、30、35、40、50、75または100のアミノ酸長、所望により少なくとも約150、200または250のアミノ酸長である領域、または参照配列の全長で存在することができる。より短いアミノ酸配列、例えば、20以下のアミノ酸に対して、実質的同一は、1または2のアミノ酸残基が本明細書に定義されている保存的置換にしたがって保存的に置換されているとき、存在する。
【0081】
配列比較のために、一般的に1つの配列が参照配列として作用し、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターを使用できるか、または代わりのパラメーターを示すことができる。次に配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較して試験配列に対する配列同一性パーセントを計算する。
【0082】
本明細書において使用される“比較ウィンドウ”は、2つの配列を最適に整列化した後、1つの配列を同数の連続位置の参照配列と比較し得る、20から600、通常、約50から約200、さらに通常、約100から約150からなる群から選択される連続位置の数のいずれかのセグメントに対する言及を含む。比較のための配列のアラインメントの方法は、当分野で既知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局所的相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピューターでの手段(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または手動アラインメントおよび目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)、参照)により行うことができる。
【0083】
配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するために適当であるアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公的に入手できる。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化したとき、ある正の値の閾値スコアTとマッチするか、または満足させるいずれかである、検索配列における長さWの短いワードを同定することにより、高いスコアリング配列ペア(HSP)を同定することを含む。Tは、近隣ワードスコア閾値(Altschul et al., 上記参照)と呼ばれる。これらの最初の近隣ワードヒットが、それらを含有するより長いHSPの検索を開始するための種として作用する。このワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加することができる限り、それぞれの配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、核酸配列について、パラメーターM(マッチする残基のペアに対するリワードスコア(reward score);常に>0)およびN(マッチしない残基に対するペナルティースコア(penalty score);常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列について、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算する。それぞれの方向でのワードのヒットの延長は、累積アラインメントスコアがその到達した最大値から数量Xまで低下したとき;累積スコアが1つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの累積によってゼロもしくはそれ以下になったとき;または、いずれかの配列の末端に達したときに停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXはアラインメントの感度およびスピードを決定する。BLASTNプログラム(核酸配列に対して)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10を使用し、そしてBLOSUM62スコアリング・マトリックス(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915、参照)は、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0084】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的分析も実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの基準は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の2つのマッチが偶然に起こるであろう確率の指標を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が約0.2未満、さらに好ましくは約0.01未満、より好ましくは約0.001未満であるとき、核酸は参照配列と類似であると考えられる。
【0085】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一である目安は、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが以下に記載されているとおり第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、ポリペプチドは、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみにより異なるとき、一般的に第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である別の目安は、2つの分子またはそれらの相補体が以下に記載されているとおりストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるさらに他の目安は、配列を増幅するために同じプライマーを使用することができることである。
【0086】
抗原結合領域がどのように本発明のTrkB結合分子内に結合しているかの説明の文脈において使用されるとき“結合”なる用語は、領域の物理的結合に関するすべての可能な手段を含む。多数の抗原結合領域は、化学結合、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合またはジスルフィド結合)または非共有結合により頻繁に結合し、それらの結合は直接結合(すなわち、2つの抗原結合領域間をリンカーなしで)または間接結合(すなわち、2つ以上の抗原結合領域間を少なくとも1つのリンカー分子の助けで)のいずれかであり得る。
【0087】
“対象”、“患者”および“個体”なる用語は、互換的に哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類哺乳動物を意味する。哺乳動物は、また、実験哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターであり得る。いくつかの態様において、哺乳動物は家畜用哺乳動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)またはペット用哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)であり得る。
【0088】
“治療許容量”または“治療有効量”なる用語は、互換的に、所望の結果(すなわち、標的細胞のアポトーシス)をもたらすために十分な量を意味する。いくつかの態様において、治療許容量は望ましくない副作用を誘導しないか、または引き起こさない。治療許容量は、最初に低い用量を投与し、次に所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加することにより決定することができる。本発明のTrkB作動性抗体の“予防有効量”および“治療有効量”は、疾患症状(例えば、BDNFを含むTrkBリガンドの機能不全による、異常に低いレベルのTrkBシグナル伝達と関連する障害の症状)の発症を予防するか、または症状のそれぞれの重症度の低下をもたらすことができる。該用語は、また、疾患症状がない頻度および期間をそれぞれ促進または増加することができる。“予防有効量”および“治療有効量”は、また、TrkBの不十分な活性化による障害および疾患による欠陥または不全のそれぞれを予防または改善することができる。
【0089】
本明細書において使用される“呼吸器疾患”なる用語は、無気肺、嚢胞性線維症、レット症候群(RTT)、喘息、無呼吸(例えば、睡眠時無呼吸)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性呼吸困難、多呼吸、起座呼吸、リウマチ性肺疾患、肺鬱血または浮腫、慢性閉塞性気道疾患(例えば、気腫、慢性気管支炎、気管支喘息および気管支拡張症)、低換気、ピックウィック症候群、肥満−低換気症候群、乳幼児突然死症候群(SIDS)および高炭酸を含むが、これらに限定されない。さらに“呼吸器疾患”は、また、遺伝子異常に関連する既知のヒトの状態、例えば、シャルコー・マリー・ツース病、チェーン・ストークス呼吸障害、プラダーウィリ症候群、乳幼児突然死症候群、先天性中枢性低換気、びまん性間質性疾患(例えば、サルコイドーシス、塵肺症、過敏性肺炎、細気管支炎、グッドパスチャー症候群、特発性肺線維症、特発性肺ヘモジデリン沈着症、肺胞タンパク症、剥離性間質性肺炎、慢性間質性肺炎、線維化性肺胞炎、ハンマン・リッチ症候群、肺好酸球増多症、びまん性間質性線維症、ウェゲナー肉芽腫、リンパ腫様肉芽腫および脂質性肺炎)または腫瘍(例えば、気管支癌腫、細気管支肺胞癌腫、気管支カルチノイド、過誤腫および間葉性腫瘍)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は抗体のV領域を含む構造単位の概略図を説明する。重鎖は3つの遺伝子ファミリー(重鎖−V、DおよびJ)によってコードされ、そして軽鎖は2つの遺伝子ファミリー(カッパまたはラムダVおよびJ)によってコードされる。これらの遺伝子の組換えが無傷のV領域で生じる。CDR3配列は、重鎖の場合、重鎖V、DおよびJ遺伝子の組換え部位であり、そして軽鎖の場合、カッパまたはラムダVおよびJ遺伝子の組換え部位である。
【0091】
【図2】図2は参照抗体アミノ酸配列のヒトアミノ酸配列での置換の概略図を説明する。
【0092】
【図3】図3はForteBio Octetバイオセンサー技術を使用するバイオレイヤー干渉法による組換えTrkB抗原へのFab結合の分析を説明する。これらのカーブの数値データを表1および2に示す。
【0093】
【図4】図4はForteBio Octetバイオセンサー技術を使用するバイオレイヤー干渉法による組換えTrkB抗原へのIgG結合の分析を説明する。これらのカーブの数値データを表3に示す。
【0094】
【図5】図5はFabクローンTR134−4(配列番号:76および80)、TR135−8(配列番号:76および81)、TR139−2(配列番号:76および82)、TR151−1(配列番号:77および82)およびTR144−1(配列番号:78および81)の整列させた可変領域のアミノ酸配列(FR1からCDR3)および生殖細胞Vh1−02(配列番号:15)またはVkII A23(配列番号:79)の一番近い一本鎖ヒト可変領域翻訳との比較を説明する。すべてのFab Vh−領域のFR4(示していない)はヒト生殖細胞系JH4由来であり、配列WGQGTLVTVSS(配列番号:50)を有する。すべてのFab Vk−領域のFR4(示していない)はヒト生殖細胞系Jk2由来であり、配列FGQGKLEIK(配列番号:61)を有する。CDRは囲まれており、生殖細胞配列の対応する位置とは異なる残基(CDR3“BSD”配列を除く)は太字である。CDR3への親和性成熟変化は下線部分であり、Vk CDR3における生殖細胞系残基置換はイタリック体部分である。
【0095】
【図6】図6はIgGクローンTR127−2(配列番号:76)、TR143−3(配列番号:78)、TR154−2(配列番号:77)、TR119−1(配列番号:84)、TR129−1(配列番号:85)およびTR137−1(配列番号:86)の整列させた可変領域のアミノ酸配列(FR1からCDR3)および生殖細胞Vh1−02(配列番号:15)またはVkII A23(配列番号:83)の一番近い一本鎖ヒト可変領域翻訳との比較を説明する。すべてのIgG Vh−領域のFR4(示していない)はヒト生殖細胞系JH4由来であり、配列WGQGTLVTVSS(配列番号:50)を有する。すべてのIgG Vk−領域のFR4(示していない)はヒト生殖細胞系Jk2由来であり、配列FGQGKLEIK(配列番号:61)を有する。CDRは囲まれており、生殖細胞配列の対応する位置とは異なる残基(CDR3“BSD”配列を除く)は太字である。CDR3への親和性成熟変化は下線部分であり、Vk CDR3における生殖細胞系残基置換はイタリック体部分である。
【0096】
【図7】図7は、FabとヒトVセグメントとの結合が、ELISAアッセイにおいてA10F18.2 IgGの濃度が増加することによりブロックされることを説明する。
【0097】
【図8】図8A−DはNVP−LFD253(A)、NVP−LFD254(B)、NVP LFC325(C)またはNVP−LFC327(D)のヒトFc−TrkBへの結合を説明する。
【0098】
【図9】図9A−DはNVP−LFD253、NVP−LFD254、NVP−LFC325およびNVP−LFC327のヒトTrkB−FcまたはTrkC−Fc融合タンパク質へではなくヒトTrkB−Fc融合タンパク質への特異的結合を示すELISAアッセイを説明する。2μg/mlにて精製されたIgGを3つの異なるTrkファミリーメンバー(TrkA、TrkBおよびTrkC)との相互作用を試験することにより特異性を評価した。二次Abは、ヤギ−抗ヒトFab−HRP検出Abのみでブロックされ、処理される複製物である。
【0099】
【図10】図10A−Dはアノイキスアッセイにおいてアゴニスト活性におけるNVP−LFD253、NVP−LFD254、NVP−LFC325およびNVP−LFC327の評価を説明する。精製されたIgGを48時間、RIE−TrkB細胞において評価した。(−)は抗体で処理しなかった細胞である。
【0100】
【図11】図11A−DはIgG抗体NVP−LFD253、NVP−LFD254、NVP−LFC325およびNVP−LFC327に対する代表的なBiacoreキネティックトレース(kinetic trace)を説明する。Fc−TrkBをBiacoreチップ表面に固定した。IgGの連続希釈物をチップ上に30μL/分で流した。使用可能なバッファー中で、結合相を300秒、次に解離相を1200秒流した。
【0101】
【図12】図12は抗TrkBアゴニストmAbでの長期処理がMecp2−Birdマウスの寿命を延ばすことを説明する。Mecp2tm1.1Bird nullマウスは呼吸サイクルの期間の変動の増加、速いおよび遅い呼吸頻度の期間の交代、無呼吸の発生、平均呼吸頻度(および分時換気量)の増加を含むレット症候群を有する対象の多数の核呼吸機能障害を繰り返す。結局は、該マウスは致命的な呼吸不全で死ぬ。抗体A10は、本明細書に記載されている改良された抗TrkB抗体アゴニストの相補性結合決定基領域(CDR)および最小結合決定基を共有する親のマウスモノクローナル抗体を意味する。
【0102】
【図13】図13は抗TrkBアゴニストmAbで処理されたMecp2−Birdマウスにおける呼吸機能の改善を説明する。抗TrkBアゴニストmAbでの処理後のMecp2マウスの呼吸パラメーターを全身プレチスモグラフィーにより評価した。未処理Mecp2マウスは呼吸休止の増加(Penh)における年齢依存的な増加を示すが、mAb処理動物において減少した。年齢依存的Penhは、RTT患者において表現型模写のバルサルバ法の合併症であったが、気道抵抗性の増加を示した。呼吸頻度の増加および吸気時間の減少がmAbでの処理後の野生型およびMecp2マウスの両方で観察された。*p<.05、**p<.01 vs 同じ遺伝子型、反対の処理;#p<.05、##p<.01、###p<.001 vs 反対の遺伝子型、同じ処理;$p<.05、$$p<.01、$$$p<.001 MeCP2−KO/A10 vs MeCP2−WT/SAL。一方向ANOVA、次にステューデントt−検定。
【0103】
【図14】図14はカニクイザルへの食物摂取および体重、次に抗TrkBアゴニスト mAb LFI987の静脈内投与の効果を説明する。HC可変領域をサイレントIgG1骨格へ移すことにより、抗体クローンLFD253をLFI987に変換した。動物に1、5および8日目に0.3および3.0mg/kgのLFI987を静脈注射で3回投与した。データは平均±SE;n=4−6である。繰り返し測定、次にダネット検定におけるAnovaによる*P<0.05 vs ベースライン、LFI987は用量依存的に食物摂取および体重を有意に増加させた。
【発明を実施するための形態】
【0104】
詳細な説明
1.イントロダクション
本発明は、改良されたTrkB作動性抗体を提供する。本発明の改良されたTrkB作動性抗体はTrkBに特異的に結合し、TrkBを活性化する。本発明のTrkB作動性抗体の、TrkBアゴニストリガンド機能不全、例えば、BDNF機能不全による障害および疾患の症状の減少、阻害および予防における使用を見出した。本発明の抗TrkB作動性抗体を使用して処置できる典型的な疾患は、レット症候群、WAGR症候群、MC4R機能不全による肥満および悪液質/消耗性症候群(例えば、癌、加齢、摂食障害または薬物による)を含む。また、抗TrkB作動性抗体を、必要とする対象における血中グルコース濃度を減少させるために使用することを見出した。さらに、本発明のTrkB作動性抗体を、体重増加を予防するために使用することを見出した。TrkB活性化が高血糖およびその関連状態、肥満、前糖尿病およびII型糖尿病を予防するために有用である。
【0105】
2.一般的な改良された抗TrkB抗体
本発明の抗体は、トロポミオシン−関連キナーゼ(Trk)受容体チロシンキナーゼB(TrkB)に特異的に結合する。そうすることで、該抗体は、リガンド結合部位に結合し、天然リガンド(例えば、脳−由来神経栄養因子(BDNF)またはニューロトロフィン−3)の結合をブロックし、アンタゴニストとして作用するか、またはアゴニストとして作用し得る。いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体はTrkB受容体のアゴニストとして作用する。TrkB抗体アゴニストは、TrkBに特異的に結合し、TrkB介在細胞内シグナル伝達を活性化または増加させる抗体である。抗TrkB抗体は所望により本発明の方法にしたがって多量体を形成し、使用することができる。抗TrkB抗体は、全長テトラマー抗体(すなわち、2つの軽鎖および2つの重鎖を有する)、一本鎖抗体(例えば、ScFv)または1つ以上の抗原結合部位を形成し、TrkB−結合特異性を与える抗体フラグメントを含む、例えば、重鎖および軽鎖可変領域(例えば、Fab’または他の同様のフラグメント)を含む分子であり得る。
【0106】
抗TrkB抗体フラグメントは組換え発現、化学合成および抗体テトラマーの酵素消化を含むが、これらに限定されない当分野で既知のいずれかの方法により生産することができ、全長モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマまたは組換え生産により得ることができる。組換え発現は、当分野で既知のすべての適当な宿主細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞などに由来し得る。存在するとき、抗TrkB抗体の定常領域は、すべてのタイプまたはサブタイプであり得、適当なとき、本方法により処置される対象の種(例えば、ヒト、非ヒト霊長類または他の哺乳動物、例えば、家畜用哺乳動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)、ペット用哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)または齧歯動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ))から選択することができる。
【0107】
本発明の抗TrkB抗体または抗原結合分子は、ラクダ骨格を有する一本鎖ドメイン抗原結合単位も含む。ラクダファミリーの動物は、ラクダ、ラマおよびアルパカを含む。ラクダは軽鎖を欠いている機能抗体を生産する。重鎖可変(VH)ドメインは、自発的に折り畳み、抗原結合単位として独立して機能する。その結合表面は、古典的な抗原結合分子(Fab)または一本鎖可変フラグメント(scFv)における6つのCDRと比較して、3つのCDRのみを含む。ラクダ抗体は慣用の抗体の親和性に相当する結合親和性を達成することができる。本明細書において例示された抗TrkB抗体の結合特異性を有するラクダ骨格ベース抗TrkB分子は、当分野で既知の方法、例えば、Dumoulin et al., Nature Struct. Biol. 11:500-515, 2002; Ghahroudi et al., FEBS Letters 414:521-526, 1997;およびBond et al., J Mol Biol. 332:643-55, 2003を使用して生産することができる。
【0108】
本発明の改良された抗TrkB抗体は、参照抗体の特異性および親和性を維持しているが、ヒト生殖細胞V領域配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するV領域配列を有する、加工されたヒト抗体である。米国特許公開第2005/0255552号および米国特許公開第2006/0134098号、参照(これら両方の文献は出典明示により本明細書に包含させる)。改良の方法は、参照抗体の可変領域から抗原結合特異性を同定するために必要とされる最小の配列情報を同定し、その情報をヒトの部分V領域遺伝子配列のライブラリーに移し、ヒト抗体V領域のエピトープ−フォーカストライブラリーを製造する。微生物ベース分泌系は、抗体Fabフラグメントのようなライブラリーメンバーを発現するために使用することができ、ライブラリーを、例えば、コロニーリフト結合アッセイを使用して、抗原−結合Fabに関してスクリーニングする。例えば、米国特許公開第2007/0020685号、参照。陽性クローンは、最も高い親和性を有するクローンを同定するために、さらに特徴付けることができる。得られた加工されたヒトFabは、親である参照抗TrkB抗体の結合特異性を維持し、一般的に親抗体と比較して抗原に対して同等またはそれより高い親和性を有し、ヒト生殖細胞系の抗体V領域と比較して高い配列同一性であるV領域を有する。
【0109】
エピトープ−フォーカストライブラリーを製造するために必要とされる最小の結合特異性決定基(BSD)は、一般的に、重鎖CDR3(“CDRH3”)内の配列および軽鎖CDR3(“CDRL3”)内の配列により示される。BSDはCDR3の一部または全長を含み得る。BSDは連続する、または連続しないアミノ酸残基を含み得る。いくつかの場合において、エピトープ−フォーカストライブラリーは、BSDおよびヒト生殖細胞系Jセグメント配列を含む参照抗体からの独特のCDR3−FR4領域に連結したヒトVセグメント配列から構築される(図1および米国特許公開第2005/0255552号、参照)。あるいは、ヒトVセグメントライブラリーは、参照抗体Vセグメントの一部のみが最初にヒト配列のライブラリーにより置換される順次カセット置換により製造することができる。次に、残りの参照抗体アミノ酸配列の文脈において、結合をサポートする同定されたヒト“カセット”を、第2のライブラリースクリーンにおいて再結合し、完全なヒトVセグメントを製造する(米国特許公開第2006/0134098号、参照)。
【0110】
それぞれの場合において、参照抗体の特異性決定基を含む、対の重鎖および軽鎖CDR3セグメント、CDR3−FR4セグメントまたはJセグメントは、ライブラリーから得られた抗原結合剤が参照抗体のエピトープ−特異性を維持することができるように、結合特異性を抑制するために使用される。さらなる成熟変化を、最適の結合速度を有する抗体を同定するために、ライブラリー構築中にそれぞれの鎖のCDR3領域において導入することができる。得られた加工されたヒト抗体は、ヒト生殖細胞系ライブラリー由来のVセグメント配列を有し、CDR3領域内の短いBSD配列を維持し、ヒト生殖細胞系フレームワーク4(FR4)領域を有する。
【0111】
したがって、いくつかの態様において、抗TrkB抗体は、元の、または参照モノクローナル抗体由来の重鎖および軽鎖のCDR3内の最小の結合配列決定基(BSD)を含む。重鎖および軽鎖可変領域(CDRおよびFR)、例えば、VセグメントおよびJセグメントの残りの配列は、対応するヒト生殖細胞および親和性成熟アミノ酸配列に由来する。Vセグメントは、ヒトVセグメントライブラリーから選択することができる。さらなる配列純化は親和性成熟により成し遂げることができる。
【0112】
他の態様において、抗TrkB抗体の重鎖および軽鎖は、例えば、ヒトVセグメントライブラリーから選択される、対応するヒト生殖細胞配列由来のヒトVセグメント(FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3)および元のモノクローナル抗体からのCDR3−FR4配列セグメントを含む。CDR3−FR4配列セグメントは、さらに、配列セグメントを対応するヒト生殖細胞配列と置き換えることにより、および/または親和性成熟により純化され得る。例えば、BSDを取り囲むFR4および/またはCDR3配列を対応するヒト生殖細胞配列で置き換えることができるが、元のモノクローナル抗体のCDR3からのBSDは維持されている。
【0113】
いくつかの態様において、重鎖Vセグメントの対応するヒト生殖細胞配列はVh1−02である。いくつかの態様において、重鎖Jセグメントの対応するヒト生殖細胞配列はJH4である。いくつかの態様において、重鎖Jセグメントはヒト生殖細胞JH4部分配列WGQGTLVTVSS(配列番号:50)を含む。ヒト生殖細胞JH4由来の全長JセグメントはYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号:74)である。可変領域遺伝子は、免疫グロブリン可変領域遺伝子に関する標準命名にしたがって命名される。現在の免疫グロブリンの遺伝子情報は、例えば、ImMunoGeneTics(IMGT)、V−baseおよびPubMedデータベースにおけるワールドワイドウェブを介して利用することができる。Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(2):100-16; Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(3):161-74; Exp Clin Immunogenet. 2001;18(4):242-54;およびGiudicelli, et al., Nucleic Acids Res. 2005 Jan 1;33(Database issue):D256-61も参照。
【0114】
いくつかの態様において、軽鎖Vセグメントの対応するヒト生殖細胞配列はVKII A23である。いくつかの態様において、軽鎖Jセグメントの対応するヒト生殖細胞配列はJk2である。いくつかの態様において、軽鎖Jセグメントはヒト生殖細胞Jk2部分配列FGQGTKLEIK(配列番号:61)を含む。ヒト生殖細胞Jk2由来の全長JセグメントはYTFGQGTKLEIK(配列番号:75)である。
【0115】
いくつかの態様において、重鎖Vセグメントはアミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(G/A)Y(D/Y)MHWVRQAPGQGLEWMGWI(D/N)P(N/R)SG(G/D)T(N/R/S)Y(A/K)QKFQGRVTMTRDTSISTAYMEL(H/S)RL(R/T)SDDTAVYYC(A/T)(G/R)(配列番号:16)と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、軽鎖Vセグメントはアミノ酸配列D(I/V)VMTQ(S/T)PLS(L/S)PVTLGQPASISCRSSQSL(L/V)HS(D/N)GNTYL(N/S)W(L/Y)QQ(K/R/T)PGQPPRLLIYKISNRFSGVPDRFSGSGAGTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号:24)と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。
【0116】
いくつかの態様において、重鎖Vセグメントは配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。
【0117】
いくつかの態様において、軽鎖Vセグメントは配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。
【0118】
いくつかの態様において:
i)重鎖CDR3はアミノ酸配列モチーフV(T/V)(S/T/R/N)WFAY(配列番号:34)を含み;そして
ii)軽鎖CDR3はアミノ酸配列モチーフ(S/M)QGT(H/A)(E/V/I)PYT(配列番号:42)を含む。
【0119】
いくつかの態様において:
i)重鎖CDR3はVTTWFAY(配列番号:32)およびVTSWFAY(配列番号:33)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして
ii)軽鎖CDR3はMQGTHEPYT(配列番号:40)およびMQGTHVPYT(配列番号:41)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0120】
いくつかの態様において、本発明の抗体はアミノ酸配列(A/G)Y(D/Y)MH(配列番号:27)を含むCDR1;アミノ酸配列WI(D/N)P(N/R)SG(G/D)T(N/R/S)Y(A/K)QKFQG(配列番号:31)を含むCDR2;およびアミノ酸配列V(T/V)(S/T/R/N)WFAY(配列番号:34)を含むCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0121】
いくつかの態様において、本発明の抗体はアミノ酸配列RSSQSL(L/V)HSNGNTYL(N/S)(配列番号:38)を含むCDR1;アミノ酸配列KISNRFS(配列番号:39)を含むCDR2;およびアミノ酸配列(S/M)QGT(H/A)(E/V/I)PYT(配列番号:42)を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0122】
いくつかの態様において、重鎖可変領域は配列番号:43のアミノ酸配列を含むFR1;配列番号:44のアミノ酸配列を含むFR2;配列番号:49のアミノ酸配列を含むFR3;および配列番号:50のアミノ酸配列を含むFR4を含む。同定されたアミノ酸配列は、1つ以上の置換されているアミノ酸(例えば、親和性成熟から)または1つ以上の保存的に置換されているアミノ酸を有し得る。
【0123】
いくつかの態様において、軽鎖可変領域は配列番号:55のアミノ酸配列を含むFR1;配列番号:59のアミノ酸配列を含むFR2;配列番号:60のアミノ酸配列を含むFR3;および配列番号:61のアミノ酸配列を含むFR4を含む。同定されたアミノ酸配列は1つ以上の置換されているアミノ酸(例えば、親和性成熟から)または1つ以上の保存的に置換されているアミノ酸を有し得る。
【0124】
それらの全長にわたって、本発明の抗TrkB抗体の可変領域は、一般的に対応するヒト生殖細胞の可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約90%、例えば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の全可変領域(例えば、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4)アミノ酸配列を有する。例えば、抗TrkB抗体の重鎖は、ヒト生殖細胞の可変領域Vh1−02/JH4と少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を共有することができる。抗TrkB抗体の軽鎖は、ヒト生殖細胞の可変領域VKII A23/Jk2と少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を共有することができる。いくつかの態様において、フレームワーク領域内のアミノ酸のみが付加され、欠失され、または置換されている。いくつかの態様において、配列同一性比較はCD3を除く。
【0125】
いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体は、配列番号:4の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および軽鎖配列番号:11の可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0126】
いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択される重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および軽鎖配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0127】
いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体は、配列番号:1の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および配列番号:8の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローン LFC325)。
【0128】
いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体は、配列番号:1の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および配列番号:9の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローン LFC327)。
【0129】
いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体は、配列番号:1の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および配列番号:10の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローン LFD253)。
【0130】
いくつかの態様において、本発明の抗TrkB抗体は、配列番号:3の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および配列番号:8の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローン LFD254)。
【0131】
20未満のアミノ酸長の同定されたアミノ酸配列に関して、所望の特異的結合および/またはアンタゴニスト活性を維持している限り、1または2つの保存的アミノ酸残基置換は許容することができる。
【0132】
本発明の抗TrkB抗体は、一般的に約10−8Mまたは10−9M未満、例えば、約10−10Mまたは1011M未満、いくつかの態様において、約10−12Mまたは10−13M未満の平衡解離定数(K)でTrkBに結合する。
【0133】
3.TrkB作動性抗体を同定するためのアッセイ
作動性抗体は、抗TrkB抗体を製造し、次にそれぞれの抗体をTrkB介在事象を引き起こす、例えば、SH−SY5Y細胞の分化および/またはデンドリマー化(dendrification)を開始する能力について試験するか、可能性のあるTrkBアゴニストでの細胞の処理に応答したアノイキス(細胞基質相互作用の喪失によるアポトーシス)からの救出を測定するか、または、BaF3/TrkB細胞増殖アッセイを使用することにより同定することができる。
【0134】
SH−SY5Yアッセイは、SH−SY5Y細胞を平板培養し、細胞をレチノイン酸と、可能性のある作動性抗体および/またはBDNFの存在下または非存在下で処理し、次に神経突起伸長を測定することを含む。一般的に、レチノイン酸単独は少しの神経突起伸長を誘導する。BDNF単独は有意な神経突起伸長を誘導せず、抗体単独は有意な神経突起伸長を誘導しない。しかしながら、レチノイン酸、BDNFおよび抗体で処理された細胞は大規模な神経突起伸長を示す。典型的なSH−SY5YアッセイはKaplan DR, et al., Neuron 11:321-331 (1993)に記載されている。抗TrkB作動性抗体に関するアッセイ試験において、BDNFを試験抗体と置き換える。陽性対照細胞をBDNFに暴露する。
【0135】
BaF3造血細胞/TrkB細胞増殖アッセイは、TrkB受容体アゴニズムにより刺激される細胞の増殖を測定することを含む。例えば、BaF3細胞をIL−3含有完全RPMI培地で増殖させ、TrkBを発現するレトロウイルスで感染させる。細胞をIL−3の非存在下で洗浄し、並べる。可能な作動性抗体および細胞生存を、適当なインキュベーション後、(例えば、発光細胞生存能力検出試薬、例えば、Cell−Titer GloTMを使用して)測定する。陽性対照細胞をBDNFでインキュベートする。
【0136】
アノイキスアッセイは、ラット腸上皮性(RIE)/TrkB細胞を(例えば、DMEM培地中で)再懸濁し、細胞を、所望によりマルチウェル容器中で、可能性のある作動性抗体(例えば、1−20μg/mlの抗体の10μlで2.5×10細胞)と接触させることを含む。混合物をBDNF対照の存在または非存在下でインキュベートし、次に細胞生存能力について(例えば、発光細胞生存能力検出試薬、例えば、Cell−Titer GloTMを使用して)測定する。典型的なアノイキスアッセイはDouma et al., Nature 430:1034-1039(2004)に記載されている。
【0137】
TrkBアゴニストは、また、細胞をビンブラスチンおよびシスプラチン毒性から保護する能力について、SH−SY5Y細胞で評価することができる。このアッセイは、例えば、Scala et al., Cancer Res. 56(16):3737-42 (1996);およびJaboin et al., Cancer Res. 62(22):6756-63 (2002)に記載されている。
【0138】
4.抗TrkB作動性抗体を使用する方法
本発明の抗TrkB作動性抗体は、呼吸器障害および疾患、特に不十分なTrkBシグナル伝達によるもの;BDNF機能不全による障害および疾患;ならびに不十分なTrkBシグナル伝達による低い腸運動の疾患(例えば、炎症性腸症候群)を含む、TrkB活性の増加により恩恵を受ける何らかの疾患または状態を処置または改善するために使用することができる。
【0139】
本発明のTrkB作動性抗体はTrkBと相互作用し、それによりTrkB機能を調節することができる。本発明のTrkB作動性抗体は、TrkBの1つ以上の生物学的機能を調節する(例えば、促進する)ことができる。例えば、TrkB作動性抗体は、TrkBの二量体化、次にTrkB細胞内ドメインにおいて特定のチロシン残基の自己リン酸化を調節することができる。さらなる例として、TrkB作動性抗体は、TrkB関連細胞内シグナル伝達カスケード(例えば、マイトージェン活性タンパク質キナーゼ、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼおよびPLCγ経路)を開始させ、神経細胞死の抑制、神経突起伸長の促進およびニューロトロフィンの他の効果を引き起こすことができる。
【0140】
いくつかの態様において、本明細書に記載されているTrkB作動性抗体は、BDNF模擬物として作用し、BDNFおよび他のTrkBアゴニストリガンドの栄養活性を繰り返すために使用することができ、それにより、神経保護および神経栄養効果を発揮する。本願方法の抗TrkB作動性抗体は、TrkBへの結合に対してBDNFと競合し、それによりTrkB経路活性化およびシグナル伝達を活性化、増強または持続させることができる。いくつかの態様において、該TrkB作動性抗体はTrkBリガンド結合ドメインに結合し、それによりTrkBへの結合に対してBDNFと競合する。
【0141】
したがって、TrkB作動性抗体はインビトロおよびインビボでTrkB経路シグナル伝達を促進するために使用することができる。本発明のTrkB作動性抗体を、(例えば、罹患している対象におけるBDNF機能不全または別のTrkBアゴニストリガンドの機能不全による)異常に低いレベルのTrkB経路シグナル伝達と関連する障害の症状を診断、阻害、予防、改善、その障害から保護およびその障害を処置するために使用することを見出した。TrkBシグナル伝達の異常下方調節と関連する障害の非限定的な例は、例えば、MeCP2(これはBDNFに直接結合する)をコードする遺伝子における変異により特徴づけられるレット症候群(RTT);TrkB機能欠失変異による深刻な肥満および発育遅延(Giles, S., et al. (2004) Nature Neuroscience 7:1187-9)、ウィルムス腫瘍、無虹彩、尿生殖器異常および知的障害(WAGR)症候群(Han, et al., N Engl J Med (2008) 359(9):918-27)、メラノコルチン受容体MC4R機能不全による肥満(Farooqi and O'Rahilly, Endocrine Rev (2006) 27(7):710-18)、悪液質/筋肉消耗性症候群(Lin, et al., PloS, 3(4):e1900; WO 2007/088476)を含む。
【0142】
したがって、本発明は、治療または予防有効量の本明細書に記載されているTrkB作動性抗体;および医薬担体を含む医薬組成物を投与することを含む、BDNF機能不全(例えば、レット症候群(RTT)、WAGR症候群、メラノコルチン受容体MC4R機能不全による肥満、悪液質/筋肉消耗性症候群)による障害および疾患を処置、診断、予防および/または改善する方法を提供する。いくつかの態様において、本明細書に記載されている抗TrkB抗体は、全身的にまたは局所的に、例えば、経口的に、吸入的に、静脈内に、または腹腔内に投与される。
【0143】
本明細書に記載されている抗TrkB抗体を、また、呼吸疾患および障害、特にTrkB活性の不十分によるものの処置、診断、予防および/または改善するために使用することを見出した。典型的な呼吸器疾患は、レット症候群、睡眠時無呼吸、ピックウィック症候群および本明細書に記載されている他のものを含む。
【0144】
いくつかの態様において、医薬組成物は、さらに呼吸困難(例えば、呼吸窮迫)の症状の処置、診断、予防および/または改善において使用するための別の独立した薬剤、例えば、ノルエピネフリンおよび/またはセロトニン経路の小分子活性化因子(例えば、限定はしないが、三環式抗鬱剤デシプラミン(DMI)、セロトニン1A受容体部分的アゴニスト、ブスピロンおよびより選択的な抗鬱剤フルオキセチンおよびレボキセチン)、グルタミン酸AMPA受容体の活性化因子、例えば、アンパカイン、CX546、プロスタグランジン、プロゲステロンまたはTrkB活性の増強剤(例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤を含む)を含む。
【0145】
いくつかの態様において、呼吸器疾患または呼吸困難の症状の処置、診断、予防および/または改善に有効な治療および/または予防有効量の第2の薬剤をTrkBの抗体アゴニスト(または同じものを含む医薬組成物)と組み合わせて個体に投与する。いくつかの態様において、第2の薬剤およびTrkBの抗体アゴニスト(または同じものを含む医薬組成物)を混合物として投与する。いくつかの態様において、第2の薬剤はノルエピネフリンおよび/またはセロトニン経路の小分子活性化因子(例は三環式抗鬱剤デシプラミン(DMI)、セロトニン1A受容体部分的アゴニスト、ブスピロンならびにより選択的な抗鬱剤フルオキセチンおよびレボキセチンである)、グルタミン酸AMPA受容体の活性化因子、例えば、アンパカイン、CX546、プロスタグランジン、プロゲステロンまたはTrkB活性の増強剤(例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤)からなる群から選択される。
【0146】
本発明は、また、抗TrkB作動性抗体または同じものを含む医薬組成物を投与することを含む、呼吸窮迫の症状またはTrkBからの細胞内シグナル伝達の不十分による呼吸器疾患を処置、診断、予防および/または改善する方法を提供する。該症状は呼吸窮迫(例えば、喘鳴またはゼイゼイ音、呼吸停止、浅呼吸、過呼吸、遷延性無呼吸)、血液の酸素化の低下または減少(例えば、チアノーゼ、例えば、酸素の吸収障害、血液での肺の不十分な潅流などによる)、ノルエピネフリン(NE)含有量の減少、骨髄におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)発現ニューロンの減少および胸痛を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、該方法は治療または予防有効量の本明細書に記載されているチロシンキナーゼ受容体B(TrkB)の抗体アゴニストを個体に投与することを含む。いくつかの態様において、該方法は治療または予防有効量のTrkB作動性抗体および医薬担体を含む医薬組成物を個体に投与することを含む。いくつかの態様において、個体はレット症候群を有し、そして/または1つ以上の呼吸困難の症状を経験している。いくつかの態様において、個体は呼吸困難の症状に感染しやすい。
【0147】
いくつかの態様において、本発明のTrkB作動性抗体は、個体の高血糖および/または糖尿病またはそれらの症状を処置または軽減するために使用される。あるいは、または組合せにおいて、本発明の抗体は必要とする個体の体重を減少させるために使用することができる。いくつかの態様において、抗体は肥満を軽減するために使用される。これはインスリン抵抗性およびII型糖尿病により発症しやすい肥満個体に対して特に有効であり得る。
【0148】
本発明は、本明細書に記載されているTrkB作動性抗体(または同じものを含む医薬組成物)を投与することを含む神経細胞死を抑制する方法を提供する。例えば、本発明は、また、本発明のTrkB作動性抗体を必要とする個体に投与することにより神経変性または中枢神経系(CNS)疾患を処置または予防するための方法を提供する。典型的なCNS疾患は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病またはALS疾患を含む。
【0149】
TrkB活性の増加は、また、薬物乱用の軽減に関与している。例えば、米国特許公開第2005/0203011号、参照。したがって、本発明は、本発明のTrkB作動性抗体を必要とする個体に投与することにより薬物(例えば、アルコール、ニコチンおよび/または麻薬)乱用および依存を軽減するための方法を提供する。
【0150】
いくつかの態様において、抗体はヒト化抗体である。いくつかの態様において、抗体は一本鎖抗体である。いくつかの態様において、抗体はチロシンキナーゼ受容体Aまたはチロシンキナーゼ受容体Cに結合しない。いくつかの態様において、抗体はニューロトロフィン受容体p75NRに結合しない。いくつかの態様において、抗体はヒトTrkBに特異的に結合し、他の種のTrkB(例えば、非ヒト霊長類またはマウスTrkB)に最小限の結合をするか、あるいは結合しない。いくつかの態様において、抗体はヒトTrkBに特異的に結合し、他の種のTrkBに同様に結合する(すなわち、マウス、ラットおよび/または非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)を含む他の種のTrkBと交差反応する)。
【0151】
5.医薬組成物
本発明は、抗TrkB抗体または抗原結合分子を含む、薬学的に許容される担体とともに製剤化された医薬組成物に関する。組成物はさらに挙げられている障害を処置または予防するために適当である他の治療剤を含むことができる。薬学的担体は組成物を増強または安定にするか、または組成物の製造を容易にする。薬学的に許容される担体は生理学的に適合する、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。
【0152】
本発明の医薬組成物は、種々の当分野で既知の方法により投与することができる。投与ルートおよび/または経路は所望の結果に依存して変化する。投与は静脈内、筋肉内、腹膜内または皮下であることが好ましく、また、標的部位の近接に投与される。薬学的に許容される担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、経鼻、吸入、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適しているべきである。投与経路に依存して、活性化合物、すなわち、抗体、二重特異性および多重特異性分子を、化合物を不活性にし得る酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するために物質でコーティングし得る。
【0153】
抗体単独、または他の適当な成分との組合せは、吸引により投与されるエアロゾル製剤(すなわち、それらは“噴霧”され得る)で製造され得る。エアロゾル製剤は、許容される高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などに注入され得る。
【0154】
いくつかの態様において、組成物は無菌および液体である。適切な流動性は、例えば、コーティング剤、例えば、レシチンの使用、分散物の場合、必要な粒径の維持および界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトールおよび塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射可能な組成物の吸収の延長は組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことにより実現することができる。
【0155】
本発明の医薬組成物は、既知であり当分野で日常的に実施されている方法にしたがって製造することができる。薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法により部分的に決定される。したがって、本発明の医薬組成物の適当な種々の製剤がある。抗体を製剤化し、適当な用量およびスケジュールを決定するために適用することができる方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2005, Lippencott Williams & Wilkins (2006);and Martindale: The Complete Drug Reference, Sweetman, 2005, London: Pharmaceutical Press., and in Martindale, Martindale: The Extra Pharmacopoeia, 31st Edition., 1996, Amer Pharmaceutical Assn, and Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978(これらそれぞれを出典明示により本明細書に包含させる)において見出すことができる。医薬組成物は好ましくはGMP条件下で製造される。一般的に、治療有効量または有効用量の抗TrkB抗体が本発明の医薬組成物において使用される。抗TrkB抗体は当業者に既知の慣用の方法により薬学的に許容される投与形態に製剤化される。投与レジメンは所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調節される。治療または予防有効量の決定において、低い用量を投与し、次に最小の副作用で、または望ましくない副作用がなく所望の効果が達成されるまで徐々に増加する。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、経時的に数回の分割投与で投与してもよく、または治療状況の緊急性により指示されるとき、それに伴って用量を減少または増加してもよい。とりわけ、投与の容易性および投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で調剤することが有利である。本明細書において使用される投与単位形態は処置される対象に対する単位用量として適した物理的に分離した単位を意味し;それぞれの単位は必要な医薬担体と一緒に所望の治療効果を引き起こすように計算されたあらかじめ決められた量の活性な化合物を含む。
【0156】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性がなく、特定の患者、組成物および投与経路に関して所望の治療応答を達成するために有効な活性成分の量を得るために変化させることができる。選択された用量レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態および病歴ならびに因子などを含む種々の薬物動態因子に依存する。
【0157】
医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために必要な量よりも低い用量で医薬組成物において使用される本発明の抗体の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の組成物の有効用量は、処置される特定の疾患または状態、投与様式、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトまたは動物であるかどうか、投与される他の薬剤および処置が予防的または治療的であるかどうかを含む多数の異なる因子に依存して変化する。処置用量は安全性および有効性を最適化するために漸増する必要がある。抗体の投与に関して、用量は約0.0001から100mg/kg、さらに通常、0.01から5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、用量は1mg/kg体重または10mg/kg体重または1−10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な処置レジメンは、2週間に1回または1月に1回または3から6月に1回の投与を含む。
【0158】
薬剤が核酸である態様において、典型的な用量は約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重、例えば、約1mg/kg体重から約50mg/kg体重の範囲であり得る。いくつかの態様において、約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50mg/kg体重。
【0159】
抗体は単回または複数回で投与され得る。抗体を通常、複数回投与する。各投与間の間隔は、1週、1月、または1年ごとであり得る。間隔は、また、患者の抗TrkB抗体の血中レベルを測定することにより示されるように不定期であり得る。いくつかの方法において、用量は1−1000μg/mlの血漿抗体濃度、いくつかの方法において25−300μg/mlを達成するように調節される。あるいは、抗体を持続放出製剤として投与することができ、この場合、投与頻度は少なくてよい。用量および頻度は患者における抗体の半減期に依存して変化する。一般的に、ヒト化抗体がキメラ抗体および非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。用量および投与頻度は処置が予防的または治療的であるかどうかに依存して変化し得る。予防的適用において、比較的低用量を比較的低頻度で長期間投与する。ある患者は残りの生涯、処置を受け続ける。治療的適用において、ときどき、比較的高用量を比較的短間隔で、疾患の進行を遅らせるかもしくは停止させるまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで必要である。その後、患者は予防レジメンで投与され得る。
【0160】
TrkB抗体アゴニストは、体重を減少させるか、血中グルコース濃度を減少させるか、糖尿病を処置するか、もしくは糖尿病症状を緩和するか、神経変性疾患を処置するか、または薬物乱用を減少させるために有効であることが既知である薬剤と組み合わせて使用することができる。糖尿病を処置するために使用される典型的な薬剤は、例えば、インスリン;スルホニルウレア(例えば、グリピジドおよびアマリール)およびインスリン分泌促進剤(例えば、ナテグリニドおよびレパグリニド);メトホルミン;PPARガンマアゴニスト(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン)ならびにPPARアルファ、PPARデルタ、PPARアルファ/ガンマデュアルアゴニストおよびPPARアルファ/ガンマ/デルタパンアゴニスト;アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース);DPP−IV阻害剤(例えば、ビルダグリプチン);およびGLP−1/GLP−1類似体(例えば、エクセナチド)を含む。肥満を処置するために使用される典型的な薬剤は、例えば、リパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタット);シブトラミン;CB−1阻害剤(例えば、リモナバント);トピラメート;アミリン/アミリン類似体(例えば、プラムリンチド)、レプチン、PYY/PYY類似体;およびGLP−1/GLP−1類似体(例えば、エクセナチド)を含む。
【0161】
活性剤は、TrkB作動性抗体と共に混合物で投与することができ、また、それぞれ別々に投与することもできる。必ずしも必要ではないが、抗体薬剤および他の活性剤を同時に投与することができる。
【実施例】
【0162】
実施例
以下の実施例は、本願発明を限定することなく、説明のために提供する。
【0163】
実施例1:
以下の実施例はヒト生殖細胞のV領域配列と実質的にアミノ酸配列同一性を有する抗TrkB抗体の構築およびスクリーニングを提供する。
【0164】
方法
V領域のサブクローニング
V領域を元のモノクローナル抗体A10F18.2からサブクローニングした。PCRを使用して、V−重鎖およびV−カッパ領域のV遺伝子を増幅させ、クローニングに適当な制限酵素部位を発現ベクターに取り込ませた。V領域をFabフラグメントとしてクローニングし、発現ベクターから大腸菌において発現させた。参照FabをTrkB−抗原結合に対して試験した。TR3−1と称する。
【0165】
V領域もIgG発現ベクターにクローニングした。PCR増幅および付加された制限酵素認識部位を有するプライマーを使用して、Vh領域を増幅させ、ヒトIgG1定常領域を含み、アンピシリンおよびネオマイシン耐性を与える発現ベクターにてクローニングした。PCR増幅および付加された制限酵素認識部位を有するプライマーを使用して、Vk領域を増幅させ、ヒトカッパ定常領域を含み、アンピシリンおよびハイグロマイシン耐性を与える発現ベクターにてクローニングした。これらのベクターを種々の組合せにおいて試験し、機能分析のために完全IgGの一団を生産した。
【0166】
抗体精製
Fabフラグメントは、発現ベクターを使用して大腸菌からの分泌により発現させた。細胞を0.6のOD600まで2×YT培地中で増殖させた。3時間、33℃でIPTGを使用して発現を誘導した。構築されたFabをペリプラズム画分から得、標準方法にしたがって、連鎖球菌タンパク質Gを使用するアフィニティークロマトグラフィー(HiTrapタンパク質G HPカラム;GE Healthcare)により精製した。FabをpH2.0のバッファー中で溶離し、即座にpH7.0に調節し、pH7.4のPBS(PBSはカルシウムおよびマグネシウムなしである)にて透析した。
【0167】
IgGを一過性にトランスフェクトしたCHO細胞の培地(無血清)から生産した。IgGを、標準方法にしたがって、タンパク質Aを使用するアフィニティークロマトグラフィー(HiTrapタンパク質A HPカラム;GE Healthcare)により精製した。FabをpH2.7のバッファーに溶離し、即座にpH7.0に調節し、pH7.4のPBS(PBSはカルシウムおよびマグネシウムなしである)にて透析した。
【0168】
一般的なELISA
100ngの組換えFc−TrkB抗原を、一晩4℃でのインキュベーションにより、96ウェルマイクロタイタープレートに結合させた。プレートをPBS−Tween(“PBST”)中の5%のミルク溶液で1時間、33℃でブロックした。精製されたFabをPBSで希釈し、50μlをそれぞれのウェルに加えた。1時間33℃でインキュベーション後、プレートをPBSTで3回濯いだ。50μlの抗−ヒト−カッパ鎖HRPコンジュゲート(Sigma;PBSTにて0.1ng/mlに希釈された)をそれぞれのウェルに加え、プレートを40分、33℃でインキュベートした。プレートをPBSTで3回およびPBSで1回洗浄した。100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(“TMB”)基質(Sigma)をそれぞれのウェルに加え、プレートを〜5分間、室温でインキュベートした。反応を停止するために、100μlの0.2NのHSOをそれぞれのウェルに加えた。プレートを分光光度計において450nmにて読んだ。
【0169】
ブロッキングELISA
ELISAプレートを100ngのFc−TrkB抗原で被覆した。2倍希釈シリーズのA10F18.2 IgGを1時間、室温で抗原とインキュベートした。非結合IgGを洗い流し、50nMのFab溶液をそれぞれのウェルに加え、1時間、室温でインキュベートした。非結合Fabを洗い流し、結合Fabを抗−ヒトカッパ−HRPコンジュゲートで検出した。
【0170】
コロニーリフト結合アッセイ(“CLBA”)
Fabフラグメントライブラリーのスクリーニングを、抗原Fc TrkB−被覆ニトロセルロースフィルターを使用する、本質的に(米国特許公開第2005/0255552および2006/0134098号)に記載されているとおりに実施した。
【0171】
ForteBioを使用する親和性測定
IgGおよびFabフラグメントの結合速度を、ForteBio Octetバイオセンサーを使用して分析した。組換えFc−TrkB抗原を、製造業者の方法にしたがってEZ−link ビオチン化キット(Pierce)を使用して、ビオチン化した。次に抗原をストレプトアビジン−被覆センサー(ForteBio)と結合させた。Fab結合を、バイオレイヤー干渉分析および製造業者により提供されたソフトウェアを使用してリアルタイムでモニタリングした。親和性を測定された結合および解離定数から計算した。
【0172】
Biacoreを使用する親和性測定
すべてのBiacore試薬をGE Healthcareの一部のBiacore(Piscataway、NJ)から購入した。速度結合パラメーターの決定を、光学バイオセンサー Biacore S51を使用する表面プラズモン共鳴測定により行った。この技術は、受容体へのリガンドの結合(ka)および解離(kd)に関する微視的速度定数の非標識測定を可能にする。したがって、それはとりわけ抗体−抗原相互作用を特徴付けるために適当である。
【0173】
改良された抗体における結合試験を、Series S CM−5 Biacore センサーチップ(認定されている)(Biacore #BR−1005−30)上にFc−hTrkBを固定することにより行った。Fc−融合タンパク質の共有結合を‘アミンカップリングキット’(Biacore #BR−1000−50)にて行った。Fc−融合タンパク質を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5(Biacore #BR−1003−50)中にて5μg/mlで、10μL/分の流速で、EDC−活性化デキストラン表面に付着させた。
【0174】
種々の濃度の改良された抗体を、PBSプラス100mMのNaCl、0.005%のP20(Biacore #BR−1000−54)中でFc−TrkBキャプチャーチップ上に流した。得られたセンサーグラムをBiacore S51評価ソフトウェアを使用して分析した。すべての濃度からのデータを1:1 ラングミュアモデルに全体的に合わせた。
【0175】
アノイキスアッセイ
ラット腸上皮性(RIE)−TrkB細胞をアノイキスアッセイにおいて使用した。RIE/TrkB細胞をAccutase(Innovative Cell Technologies Inc., San Diego、CA)を使用して分離し、DMEM完全培地に再懸濁した。細胞を無血清DMEMで3回洗浄し、PBS中の2%のBSA(細胞培養グレード、#A8806−5G Sigma)貯蔵物から希釈された0.1%のBSAを含む無血清DMEMに再懸濁した。次に細胞を、96ウェル Corning Costar 超低クラスタープレート(Costar #3474)に、4.2×10細胞/mLにて60ml/ウェル(=2.5×10細胞/ウェル)で置いた。10mlのTrkB作動性抗体(PBS中で貯蔵)を1−20μg/mLの最終濃度で試験ウェルに加えた。細胞を37℃で1時間インキュベートした。10mlのヒトBDNF(R&D、0.1%のBSA/PBS中で20mg/mLで貯蔵)を10−50ng/mLの最終濃度で対照ウェルに加えた。BDNFをDMEM(SF)/0.1%BSAで希釈した。次に細胞をさらに24−48時間インキュベートした。80ml/ウェルのCell−Titer Glo(Promega, Madison, WI)を加え、プレートを穏やかな振とうに付した。15分後、液体を96ウェル白色の透明底プレートに移し、発光を読んだ。
【0176】
結果
V領域のクローニングおよび発現
Fab TR3−1は、ヒト定常領域と融合した、元の抗体、A10F18.2からの無傷のV領域を有し、大腸菌から精製された。TrkB抗原結合の希釈ELISA試験において、クローンFabは抗体濃度に依存する結合曲線を示した(データは示していない)。
【0177】
ライブラリー構築およびV領域カセット
エピトープ−フォーカストライブラリーを、結合特異性決定基(“BSD”)を含む元の抗体からの独特のCDR3−FR4領域に結合したヒトVセグメントライブラリー配列およびヒト生殖細胞系Jセグメント配列から構築した。これらの“全長”ライブラリーを、元の抗体におけるVセグメントの一部だけを最初にヒト配列のライブラリーにより置き換えた“カセット”ライブラリーの構築のためのベースとして使用した。2つの型のカセットを構築した。V−重鎖およびVカッパ鎖両方に関するカセットを、フレームワーク2領域内の重複している一般的な配列でのブリッジPCRにより製造した。このようにして、“フロント−エンド”および“ミドル”ヒトカセットライブラリーを、ヒトV−重鎖1およびV−カッパIIイソ型のために構築した。TrkB抗原への結合を支持するヒトカセットをコロニーリフト結合アッセイにより同定し、ELISAおよびForte分析における親和性にしたがってランク付けした。次に、最も高い親和性カセットのプールを、第2のライブラリースクリーンにおいて再結合し、完全ヒトVセグメントを生産した。
【0178】
ヒトVセグメントを有する高親和性Fabのプールの同定後、親和性成熟ライブラリーを構築した。ヒトVセグメントを有するFabクローンの一団の一般的なBSD配列を、変性PCRプライマーを使用して変異させ、ライブラリーを製造した。これらの変異ライブラリーを、コロニーリフト結合アッセイを使用してスクリーニングした。選択されたFabをELISAおよびForte分析で親和性に対してランク付けした。参照TR3−1 Fabと比較して、抗原に対する同様の、または改良された親和性を支持する変異を同定した。
【0179】
さらに、ヒト生殖細胞系への点突然変異を、ヒトVセグメントを有するそれぞれのFabの軽鎖のCDR3において行った。その位置ですべてのヒト生殖細胞系VkIIセグメントにコードされているアミノ酸である、位置89(Chothia番号)をSからMに変えた。
【0180】
Forte Octet分析を使用する、ヒトTrkB抗原に対するヒトVセグメントを有するFabおよびIgGの親和性
ヒトVセグメントを有するFabをコロニーリフト結合アッセイから単離し、抗原−結合ELISAにより確認した。抗原−結合ELISAにおいて強い陽性シグナルを示すFabクローンを精製し、さらに速度により参照FabTR3−1と比較して特徴付けた。結合速度を、タンパク質−タンパク質相互作用のリアルタイム非標識モニタリングのために、ForteBio Octetシステムを使用して分析した。代表的な速度分析は図3に示されている。計算された結合および解離定数は表1および2に示されている。
表1
【表1】

【0181】
表1は、ForteBio Octet バイオセンサー技術を使用するバイオレイヤー干渉法による組換えTrkB抗原へのFab結合の分析の要約であり、結合定数(Ka)、解離定数(Kd)および計算された親和性(KD)を示す。
表2
【表2】

【0182】
表2は、ForteBio Octet バイオセンサー技術を使用するバイオレイヤー干渉法による組換えTrkB抗原へのFab結合の分析の要約であり、結合定数(Ka)、解離定数(Kd)および計算された親和性(KD)を示す。
【0183】
FabクローンTR134−4、TR135−8、TR139−2、TR151−1およびTR144−1ならびに参照クローンTR3−1のすべての速度分析は、TrkB抗原に対して低ナノモル親和性を示した。クローンTR139−2およびTR151−1は、常に、参照対照と比較して、改良されたオフレート(Kd)および高い全体的な親和性を有した。TR144−1、TR135−8およびTR134−4は、常に、参照対照と比較して、ほぼ同じ全体的な親和性を有した。
【0184】
ヒトVセグメントを有するIgGを、また、CHO細胞の一過性のトランスフェクションから製造した。IgG製造物を精製し、さらに速度により参照IgG A10F18.2と比較して特徴付けた。ヒトVセグメントを有する2つのIgGに関する結合速度を、タンパク質−タンパク質相互作用のリアルタイム非標識モニタリングのために、ForteBio Octetシステムを使用して分析した。代表的な速度分析は図4に示されている。計算された結合および解離定数は表3に示されている。この結果は、ヒトVセグメントを有するIgGが参照A10F18.2 IgGに等しい親和性を有する抗原に結合することを示す。
表3
【表3】

【0185】
表3は、ForteBio Octet バイオセンサー技術を使用するバイオレイヤー干渉法による組換えTrkB抗原へのIgG結合の分析の要約であり、結合定数(Ka)、解離定数(Kd)および計算された親和性(KD)を示す。
【0186】
ヒト生殖細胞配列と同一性パーセント
V領域をPCR−増幅させ、制限酵素で消化させ、IgG発現ベクターにてクローニングした。TR134−4、TR144−1およびTR144−1からの重鎖をPCR−増幅させ、SalIおよびNheIで消化させた;得られたフラグメントを、ヒトIgG1定常領域を含む発現ベクターにてクローニングし、それぞれTR127、TR143およびTR154を得た。TR134−4、TR135−8およびTR139−2からの軽鎖をPCR−増幅させ、BssHIIおよびBsiWIで消化させた;得られたフラグメントを、ヒトカッパ定常領域を含む発現ベクターにてクローニングし、それぞれTR119、TR129およびTR137を得た。挿入物の同一性および完全性をDNAシークエンシングにより確認した。
表4
【表4】

*ND=行っていない;
ヒト生殖細胞系との同一性%はCDR3を除く
【0187】
表4はIgG発現ベクター内に含まれるV領域に対するヒト生殖細胞配列との同一性パーセントを説明する:すべてのパーセントはCDR3 BSD配列を除くV領域全域の一本鎖ヒト生殖細胞配列との同一性を示す。FabのVh−領域およびVk−領域のそれぞれは、ヒト生殖細胞アミノ酸配列と極めて近い。
【0188】
エピトープ特異性を示すためのブロッキングELISA
ブロッキングELISAを、方法セクションに記載されているヒトVセグメントを含む精製されたFabで行った。結果を図7に示す。すべてのFabクローンの結合が、元のモノクローナル抗体A10F18.2 IgGの濃度の増加によりブロックされ、Fabが元のモノクローナルIgGのように同じエピトープに結合することを示す。
【0189】
ELISAによるTrkBタンパク質への抗体結合
IgG抗体NVP−LFD253、NVP−LFD254、NVP−LFC325およびNVP−LFC327を、一過性のトランスフェクションにより生産し、本明細書に記載されているとおりに精製し、Fc−TrkBに対する特異的結合に関して評価した。ELISAをヒトTrkBおよび希釈シリーズのそれぞれの抗体:LFD253、LFD254、LFC325またはLFC327を使用して実施した。ELISAアッセイは、LFD253、LFD254、LFC325およびLFC327がヒトTrkBに結合することを示す。図8、参照。
【0190】
ヒトVセグメントを有するIgG(例えば、NVP−LFD253、NVP−LFD254、NVP−LFC325およびNVP−LFC327)は、TrkAまたはTrkCではなくTrkBに特異的に結合する。2μg/mlにて精製されたIgG抗体を3つの異なるTrkファミリーメンバー(TrkA、TrkBおよびTrkC)との相互作用を試験することにより特異性を評価した。二次Abは、ヤギ−抗−ヒトFab−HRP検出Abのみでブロックされ、処理される複製物である。図9A−Dに示されるとおり、LFD253、LFD254、LFC325またはLFC327はこれらの関連Trkファミリー受容体のいずれとも結合しない。
【0191】
アノイキスアッセイ:機能作動性
精製されたIgG(例えば、LFD253、LFD254、LFC325またはLFC327)を、ラット腸上皮性(RIE)−TrkB細胞を使用してアノイキスアッセイにおいて評価する。これらの細胞はアノイキス(分離依存アポトーシス)に感受性であるが、TrkB受容体の活性化で助けることができる。LFD253処理は、細胞生存により測定されるとおりアノイキスからRIE−TrkB細胞を助けることができ、この効果は用量依存的であった。図10A−D、参照。LFD253に対するこのデータから計算されたEC50は、4.1ng/ml(28pM)である。LFD254に対するこのデータから計算されたEC50は、24.0ng/ml(160pM)である。LFC325に対するこのデータから計算されたEC50は、41.8ng/ml(280pM)である。LFC327に対するこのデータから計算されたEC50は、26.9ng/ml(180pM)である。
【0192】
Biacoreによる抗体親和性測定
NVP−LFD253、NVP−LFD254、NVP−LFC325およびNVP−327の固定化Fc−TrkBへの結合に関する速度定数を測定した。図11A−Dは、それぞれのIgGに対する代表的なセットのキネティックトレースの詳細を示す。図11Aは62.5nMから3.9にまで2倍希釈されたLFD253の滴定のセンサーグラムを示す。図11Bは31.25nMから1.9にまで2倍希釈されたLFD254の滴定のセンサーグラムを示す。図11Cは31.25nMから1.95にまで2倍希釈されたLFC325の滴定のセンサーグラムを示す。図11Dは31.25nMから1.95にまで2倍希釈されたLFC327の滴定のセンサーグラムを示す。表5は、実験をBiacore S51評価ソフトウェアを使用するラングミュアモデルに全体的に合わせたとき、得られたデータの要約を示す。この抗体は二価であるが、結合は1:1事象として処理した。
表5
【表5】

【0193】
表5は抗体−受容体複合体の速い結合および遅い解離速度の両方を示す。センサーグラムを全体的に扱ったとき、もっとも合うものを得た。
【0194】
ここに記載の実施例および態様は、説明の目的のためのみであり、それに照らした様々な修飾または変化が当業者には示唆され、それらは本発明の精神および範囲の範囲内および添付の特許請求の範囲内に包含されることは理解されるべきである。この明細書において引用されている全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のためにそれら全体を引用により本明細書に包含させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシン受容体キナーゼB(TrkB)に結合する抗体であって、該抗体は
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域、ならびに
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域を含み、
i)重鎖CDR3はアミノ酸配列V(T/V)(S/T/R/N)WFAY(配列番号:34)を含み;そして
ii)軽鎖CDR3可変領域はアミノ酸配列(S/M)QGT(H/A)(E/V/I)PYT(配列番号:42)を含み;そして
該抗体はTrkBアゴニストである抗体。
【請求項2】
重鎖Vセグメントが配列番号:16と少なくとも90%の配列同一性を共有し、そして、軽鎖Vセグメントが配列番号:24と少なくとも90%の配列同一性を共有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
重鎖Vセグメントが配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を共有し、そして軽鎖Vセグメントが配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22および配列番号:23からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を共有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
i)重鎖CDR3が配列番号:32および配列番号:33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして
ii)軽鎖CDR3が配列番号:40および配列番号:41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
重鎖FR4がヒト生殖細胞FR4である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
重鎖FR4が配列番号:50である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
重鎖Jセグメントがヒト生殖細胞JH4部分配列WGQGTLVTVSS(配列番号:50)を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
軽鎖FR4がヒト生殖細胞FR4である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
軽鎖FR4が配列番号:61である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
軽鎖Jセグメントがヒト生殖細胞Jk2部分配列FGQGKLEIK(配列番号:61)を含む、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含む請求項1に記載の抗体であって:
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号:27のアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号:31のアミノ酸配列を含み;
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号:38のアミノ酸配列を含み;そして
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号:39のアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項12】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号:28を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号:35を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3が配列番号:41を含む、
請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号:28を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号:36を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3が配列番号:40を含む、
請求項11に記載の抗体。
【請求項14】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号:28を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号:37を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3が配列番号:40を含む、
請求項11に記載の抗体。
【請求項15】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号:25を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号:29を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号:32を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号:35を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号:38を含み;そして
vi)軽鎖CDR3が配列番号:41を含む、
請求項11に記載の抗体。
【請求項16】
重鎖可変領域が配列番号:4の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有し、そして軽鎖可変領域が配列番号:11の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項17】
重鎖可変領域が配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有し、そして軽鎖可変領域が配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を共有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項18】
重鎖可変領域が配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有し、そして軽鎖可変領域が配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項19】
重鎖可変領域が配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、そして軽鎖可変領域が配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項20】
抗体が5×10−8M未満の平衡解離定数(K)にてTrkBに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項21】
抗体がFAb’フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
【請求項22】
抗体がIgGである、請求項1に記載の抗体。
【請求項23】
抗体が一本鎖抗体(scFv)である、請求項1に記載の抗体。
【請求項24】
抗体がヒト定常領域を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項25】
抗体がチロシンキナーゼ受容体Aまたはチロシンキナーゼ受容体Cに結合しない、請求項1に記載の抗体。
【請求項26】
抗体がTrkBのリガンド結合ドメイン(LBD)に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項27】
抗体がTrkBへの脳由来神経栄養因子(BDNF)の結合と競合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項28】
抗体が配列番号:1を含む重鎖および配列番号:8を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項29】
抗体が配列番号:1を含む重鎖および配列番号:9を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項30】
抗体が配列番号:1を含む重鎖および配列番号:10を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項31】
抗体が配列番号:3を含む重鎖および配列番号:8を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項32】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域はそれぞれ以下の3つの相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含むTrkBに特異的に結合する抗体であって;
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号:25のアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号:28、配列番号:29および配列番号:30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号:32および配列番号:33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号:35、配列番号:36および配列番号:37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号:39のアミノ酸配列を含み;
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号:40および配列番号:41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項33】
請求項1に記載の抗体および生理学的に適合性のある賦形剤を含む薬学的に許容される組成物。
【請求項34】
医薬組成物が個体における血中グルコース濃度を減少させる薬剤をさらに含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
医薬組成物が個体における体重を減少させる薬剤をさらに含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
治療有効量の請求項1に記載の抗体を個体に投与することを含む、必要とする個体における血中グルコース濃度および/または体重を減少させる方法。
【請求項37】
個体が前糖尿病である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
個体がI型糖尿病である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
個体がII型糖尿病である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
個体が過体重である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
個体が肥満である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
治療有効量の血中グルコースを減少させるために有効な第2の薬剤を個体に投与することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
第2の薬剤および抗体が混合物として投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
第2の薬剤および抗体が別々に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
第2の薬剤がインスリン、スルホニルウレア、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、PPARγアゴニスト、PPARαアゴニスト、PPARδアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、PPARα/γ/δパンアゴニスト、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV阻害剤およびGLP−1/GLP−1類似体からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
治療有効量の体重または肥満を減少させるために有効な第2の薬剤を個体に投与することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
第2の薬剤および抗体が混合物として投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第2の薬剤が別々に投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
第2の薬剤がリパーゼ阻害剤、シブトラミン、CB−1阻害剤、トピラメート、アミリン、アミリン類似体、レプチン、PYY/PYY類似体およびGLP−1/GLP−1類似体からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
脳由来神経栄養因子(BDNF)機能不全による障害の症状を減少させるか、または阻害する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗体を必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項51】
BDNF機能不全による障害が、レット症候群、ウィルムス腫瘍、無虹彩、尿生殖器異常および知的障害(WAGR)症候群、メラノコルチン受容体MC4R機能不全による肥満および悪液質/筋肉消耗性症候群からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
BDNF機能不全による障害がレット症候群である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
抗体が全身的に投与される、請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A−B】
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【図8C−D】
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【図9】
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【図10A−B】
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【図10C−D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−510021(P2011−510021A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543295(P2010−543295)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031345
【国際公開番号】WO2009/092049
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】