説明

改良された自動車用架橋ワイヤ

本発明は、金属導体、この金属導体を取囲んでいる難燃性絶縁層、および場合によりこの絶縁層を取囲んでいるワイヤジャケットを含んでいる、自動車用架橋ワイヤである。この自動車用ワイヤは、1またはそれ以上のいくつかの自動車用ケーブルテストプロトコルの規格:(a)SAE J−1128、(b)ISO−6722、(c)LV 112、(d)クライスラーMS−8288、および(e)ルノー36−36−05009/−Lに合格する。特に、この難燃性絶縁層は、架橋性熱可塑性ポリマーおよび金属カーボネートから調製される。絶縁層の製造のための難燃性組成物は、従来の解決法よりも優れた経済的および加工処理の改良を示す。本発明はまた、自動車用低引張主ワイヤの調製方法およびこれから製造された自動車用ワイヤでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用ワイヤおよびケーブル用途に関する。特に本発明は、低引張主ワイヤ用途のための絶縁材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用ワイヤは、自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)(SAE)、産業組織、または様々な自動車製造業者によって示された、ある難燃性能を達成することが求められている。例えば低引張主ケーブルは、SAE J−1128、ISO−6722、LV 112、クライスラー(Chrysler)MS−8288、およびルノー(Renault)36−36−05−009/−Lの規格の1またはそれ以上に合致しなければならない。
【0003】
とりわけ、金属ヒドロキシド、または金属ヒドロキシドの組み合わせを難燃剤として組み込んでいるポリオレフィン−ベース配合物は、様々な規格を満たすように設計された。残念なことに、これらの解決法は、不適切であることが証明されているが、その理由は、難燃性を付与するために多量の金属ヒドロキシドが必要とされ、これによって配合物へ有意なコストが加わるからである。
【0004】
金属ヒドロキシドの種類の中で、一定の金属ヒドロキシドは、加工処理の問題を提起する。例えば、アルミニウムトリヒドロキシド(ATH)は、混合率の問題を提起する。具体的には、ATHは約175℃以上の温度で分解する。同様に、ハロゲン化難燃剤を有するポリオレフィン−ベース配合物は、これら自体の一連の問題を引起こす。とりわけ、これらは環境問題を引起こし、高価な解決法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、SAE J−1128性能およびほかの規格を達成する、多量の金属ヒドロキシドまたはハロゲン化難燃剤を含有する配合物の低コスト代替物へのニーズがある。より具体的には、金属ヒドロキシドの難燃性の利点を利用し、これらの利点を示すために必要とされる金属ヒドロキシドの量を最小限にする、低コストの加工処理しうる代替物へのニーズがある。同様に、このような組成物の選択方法へのニーズもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属導体、この金属導体を取囲んでいる難燃性絶縁層、および場合によりこの絶縁層を取囲んでいるワイヤジャケットを含んでいる、自動車用架橋ワイヤである。この自動車用ワイヤは、1またはそれ以上のいくつかの自動車用ケーブルテストプロトコルの規格:(a)SAE J−1128、(b)ISO−6722、(c)LV 112、(d)クライスラーMS−8288、および(e)ルノー36−36−05−009/−Lに合格する。特にこの難燃性絶縁層は、架橋性熱可塑性ポリマーおよび金属カーボネートから調製される。絶縁層の製造のための難燃性組成物は、従来の解決法よりも優れた経済的および加工処理の改良を示す。本発明はまた、自動車用低引張主ワイヤの調製方法およびこれから製造された自動車用ワイヤでもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の自動車用架橋ワイヤは、金属導体、この金属導体を取囲んでいる難燃性絶縁層、および場合によりこの絶縁層を取囲んでいるワイヤジャケットを含んでいる。この自動車用ワイヤは、1またはそれ以上のいくつかの自動車用ケーブルテストプロトコルの規格:(a)SAE J−1128、(b)ISO−6722、(c)LV 112、(d)クライスラーMS−8288、および(e)ルノー36−36−05−009/−Lに合格する。
【0008】
金属導体は、自動車用ワイヤ用途において用いられている周知の金属導体のいずれか、例えば銅であってもよい。
【0009】
難燃性絶縁層は、架橋性熱可塑性ポリマーおよび金属カーボネートを含んでいる難燃性組成物から調製される。金属カーボネートは、約140秒またはそれ以上の、35kW/m2の熱流速を有するコーンカロリメトリーを用いて測定されたピーク発熱までの時間(TTPHRR)を、100mmの長さおよび幅、および1.3mmの厚さを有するテスト標本へ付与するのに十分な量で存在する。より好ましくはこのTTPHRRは、145秒またはそれ以上である。好ましくはこの難燃性組成物は、約2重量%未満のシリコーンポリマーを含有する。より好ましくはこの難燃性組成物は、実質的にシリコーンポリマーを含まない。
【0010】
架橋性熱可塑性樹脂は、好ましくはポリオレフィンである。適切なポリオレフィンは、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、およびこれらのブレンドを包含する。好ましくはこれらのポリオレフィンポリマーは、実質的にハロゲンフリーである。
【0011】
エチレンポリマーは、その用語が本明細書において用いられている場合、エチレンのホモポリマー、またはエチレンと、3〜12炭素原子、好ましくは4〜8炭素原子を有する1またはそれ以上のアルファ−オレフィンの小さい割合、および場合によりジエンとのコポリマーであり、またはこのようなホモポリマーとコポリマーとの混合物またはブレンドである。この混合物は、機械的ブレンドまたは現場ブレンドであってもよい。これらのアルファ−オレフィンの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンである。このポリエチレンはまた、エチレンと不飽和エステル、例えばビニルエステル(例えばビニルアセテートまたはアクリルまたはメタクリル酸エステル)とのコポリマー、エチレンと不飽和酸、例えばアクリル酸とのコポリマー、またはエチレンとビニルシラン(例えばビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン)とのコポリマーであってもよい。
【0012】
ポリエチレンは、均質または不均質であってもよい。これらの均質ポリエチレンは通常、1.5〜3.5の範囲の多分散性(Mw/Mn)、および本質的に均一なコモノマー分布を有し、示差走査熱量計によって測定された場合の、単一の比較的低い融点を特徴とする。不均質ポリエチレンは通常、3.5超の多分散性(Mw/Mn)を有し、均一なコモノマー分布を欠く。Mwは、重量平均分子量として規定され、Mnは、数平均分子量として規定される。
【0013】
ポリエチレンは、1立方センチメートルあたり0.860〜0.960グラムの範囲の密度を有してもよく、好ましくは1立方センチメートルあたり0.870〜0.955グラムの範囲の密度を有する。これらはまた、10分あたり0.1〜50グラムの範囲のメルトインデックスを有しうる。このポリエチレンがホモポリマーであるならば、そのメルトインデックスは好ましくは、10分あたり0.75〜3グラムの範囲にある。メルトインデックスは、ASTM D−1238、条件Eで決定され、190℃および2160グラムで測定される。
【0014】
低圧または高圧方法は、ポリエチレンを生成しうる。これらは、従来技術によって気相方法で、または液相方法(すなわち、溶液またはスラリー方法)で生成されうる。低圧方法は典型的には、1平方インチあたり(「psi」)1000ポンド以下の圧力で行なわれ、一方、高圧方法は典型的には、15,000psi以上の圧力で行なわれる。
【0015】
これらのポリエチレンを調製するための典型的な触媒系は、マグネシウム/チタンベース触媒系、バナジウムベース触媒系、クロムベース触媒系、メタロセン触媒系、およびほかの遷移金属触媒系を包含する。これらの触媒系の多くは、チーグラー・ナッタ触媒系またはフィリプス(Phillips) 触媒系と呼ばれることが多い。有用な触媒系は、シリカ−アルミナ担体上のクロムまたはモリブデンオキシドを用いた触媒を包含する。
【0016】
有用なポリエチレンは、高圧方法(HP-LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、非常に低密度のポリエチレン(VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびメタロセンコポリマーによって製造されたエチレンの低密度ホモポリマーを包含する。
【0017】
高圧方法は典型的には、フリーラジカル開始重合であり、管状反応器または攪拌オートクレーブにおいて実施される。管状反応器において、圧力は、25,000〜45,000psiの範囲内にあり、温度は、200〜350℃の範囲にある。攪拌オートクレーブにおいて、圧力は、10,000〜30,000psiの範囲にあり、温度は、175〜250℃の範囲にある。
【0018】
好ましいポリマーは、エチレンと不飽和エステルまたは酸からなるコポリマーであり、これらは周知であり、従来の高圧技術によって調製することができる。これらの不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであってもよい。これらのアルキル基は、1〜8炭素原子を有してもよく、好ましくは1〜4炭素原子を有する。これらのカルボキシレート基は、2〜8炭素原子を有してもよく、好ましくは2〜5炭素原子を有する。エステルコモノマーであるとされるコポリマーの部分は、コポリマーの重量を基準にして5〜50重量%の範囲にあってもよい。アクリレートおよびメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。これらのビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノエートである。不飽和酸の例は、アクリル酸またはマレイン酸を包含する。
【0019】
エチレン/不飽和エステルコポリマーまたはエチレン/不飽和酸コポリマーのメルトインデックスは、10分あたり0.5〜50グラムの範囲にあってもよく、好ましくは10分あたり2〜25グラムの範囲にある。
【0020】
エチレンとビニルシランとのコポリマーもまた、用いることができる。適切なシランの例は、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランである。このようなポリマーは典型的には、高圧方法を用いて製造される。このようなエチレンビニルシランコポリマーの使用は、湿分架橋性組成物が望まれるときに望ましい。場合により、湿分架橋性組成物は、フリーラジカル開始剤の存在下にビニルシランでグラフト化されたポリエチレンを用いて得ることができる。シラン含有ポリエチレンが用いられるとき、この配合物中の架橋触媒(例えばジブチル錫ジラウレートまたはドデシルベンゼンスルホン酸)または別のルイスまたはブレンステッド酸または塩基触媒を含めることもまた、望ましいことがある。
【0021】
VLDPEまたはULDPEは、エチレンと、3〜12炭素原子、好ましくは3〜8炭素原子を有する1またはそれ以上のアルファ−オレフィンとのコポリマーであってもよい。VLDPEまたはULDPEの密度は、1立方センチメートルあたり0.870〜0.915グラムの範囲にあってもよい。VLDPEまたはULDPEのメルトインデックスは、10分あたり0.1〜20グラムの範囲にあってもよく、好ましくは10分あたり0.3〜5グラムの範囲にある。エチレン以外の1または複数のコモノマーであるとされるVLDPEまたはULDPEの部分は、コポリマーの重量を基準にして1〜49重量%の範囲にあってもよく、好ましくは15〜40重量%の範囲にある。
【0022】
第三コモノマーが含まれていてもよい。例えば別のアルファ−オレフィンまたはジエン、例えばエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、またはジシクロペンタジエンである。エチレン/プロピレンコポリマーは一般に、EPRと呼ばれ、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは一般に、EPDMと呼ばれる。第三コモノマーは、コポリマーの重量を基準にして1〜15重量%の量で存在してもよく、好ましくは1〜10重量%の量で存在する。このコポリマーが、エチレンを含む2または3コモノマーを含有することが好ましい。
【0023】
LLDPEは、VLDPE、ULDPE、およびMDPEを包含しうる。これらはまた、線状であるが、一般に1立方センチメートルあたり0.916〜0.925グラムの範囲の密度を有する。これは、エチレンと、3〜12炭素原子、好ましくは3〜8炭素原子を有する1またはそれ以上のアルファ−オレフィンとのコポリマーであってもよい。メルトインデックスは、10分あたり1〜20グラムの範囲であってもよく、好ましくは10分あたり3〜8グラムの範囲にある。
【0024】
あらゆるポリプロピレンが、これらの組成物において用いられてもよい。その例は、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとほかのオレフィンとのコポリマー、およびプロピレン、エチレン、およびジエンのターポリマー(例えばノルボルナジエンおよびデカジエン)を包含する。さらには、これらのポリプロピレンは、分散されるか、またはほかのポリマー、例えばEPRまたはEPDMとブレンドされてもよい。ポリプロピレンの例は、ポリプロピレン・ハンドブック:重合、特徴決定、特性、加工処理、用途(POLYPROPYLENE HANDBOOK: POLYMERIZATION, CHARACTERIZATION, PROPERTIES,PROCESSING, APPLICATIONS)3−14、113−176(E.ムーア・ジュニア(Moore,Jr.)1996年版)に記載されている。
【0025】
適切なポリプロピレンは、TPE、TPO、およびTPVの成分であってもよい。これらのポリプロピレン含有TPE、TPO、およびTPVは、この用途において用いることができる。
【0026】
適切な金属カーボネートの例は、カルシウムカーボネート、カルシウムマグネシウムカーボネート、およびマグネシウムカーボネートを包含する。自然発生金属カーボネートも本発明において有用であり、これはフンタイト(huntite)、マグネサイト、およびドロマイトを包含する。好ましくはこの金属カーボネートは、約10重量%またはそれ以上の量で存在する。より好ましくはこの金属カーボネートは、約20重量%またはそれ以上の量で存在する。
【0027】
この難燃性組成物はまた、金属ハイドレートを含んでいてもよい。適切な例は、アルミニウムトリヒドロキシド(ATHまたはアルミニウム三水和物としても公知である)およびマグネシウムヒドロキシド(マグネシウムジヒドロキシドとしても公知である)を包含する。ほかの難燃性金属ヒドロキシドは、当業者に公知である。これらの金属ヒドロキシドの使用は、本発明の範囲内で考察される。
【0028】
金属カーボネートおよび金属ヒドロキシドの表面は、シラン、チタネート、ジルコネート、カルボン酸、および無水マレイン酸−グラフト化ポリマーを包含する、1またはそれ以上の材料でコーティングされてもよい。適切なコーティングは、米国特許第6,500,882号に開示されているものを包含する。平均粒子サイズは、0.1マイクロメートル未満〜50マイクロメートルの範囲であってもよい。いくつかの場合、ナノ規模の粒子サイズを有する金属カーボネートまたは金属ヒドロキシドを用いることが望ましいことがある。この金属ヒドロキシドは、自然発生であってもよく、または合成であってもよい。
【0029】
金属ヒドロキシドは、存在するとき、金属カーボネートと金属ハイドレートとの組み合わせが、約140秒またはそれ以上のTTPHRRをテスト標本へ付与するような量で存在する。好ましくはこの金属ハイドレートは、金属カーボネート対金属ハイドレート比が、少なくとも約1:4であるような量で存在する。同様に好ましくは、この金属ハイドレートは、約40重量パーセント未満、より好ましくは約35重量パーセント未満の量で存在する。
【0030】
この難燃性組成物は、ほかの難燃性添加剤を含有してもよい。適切な非ハロゲン化難燃性添加剤は、赤燐、シリカ、アルミナ、チタンオキシド、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、オルガノ変性粘土、シリコーンポリマー、亜鉛ボレート、アンチモントリオキシド、ウオラストナイト、雲母、ヒンダードアミン安定剤、アンモニウムオクタモリブデート、メラミンオクタモリブデート、ガラス原料、中空ガラス微小球、膨張性化合物、および発泡性グラファイトを包含する。適切なハロゲン化添加剤は、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、およびデクロランプラスを包含する。
【0031】
これに加えて、この難燃性組成物は、ナノ粘土を含有してもよい。好ましくはこのナノ粘土は、0.9〜200ナノメートルサイズ範囲の少なくとも1つの寸法、より好ましくは0.9〜150ナノメートル、さらにより好ましくは0.9〜100ナノメートル、最も好ましくは0.9〜30ナノメートルにおける少なくとも1つの寸法を有する。
【0032】
好ましくはこれらのナノ粘土は、層化されており、ナノ粘土、例えばモンモリロナイト、マガジアイト(magadiite)、フッ素化合成雲母、サポナイト、フルオルヘクトライト、ラポナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ヘクトライト、バイデライト、バーミキュライト、カオリナイト、ノントロナイト、ボルコンスコイト、ステベンサイト、ピロサイト、ソーコナイト、およびケニヤアイトを包含する。これらの層化ナノ粘土は、自然発生であってもよく、または合成であってもよい。
【0033】
ナノ粘土のカチオン(例えばナトリウムイオン)のいくつかは、このナノ粘土を有機カチオン含有化合物で処理することによって、有機カチオンと交換されてもよい。あるいはまた、このカチオンは、水素イオン(プロトン)を含んでいてもよく、またはこれで置換されてもよい。好ましい交換カチオンは、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、およびポリアルキルアンモニウムである。適切なアンモニウム化合物の一例は、ジメチル、ジ(水素化タロー)アンモニウムである。好ましくはこのカチオン性コーティングは、層化ナノ粘土プラスカチオン性コーティングの総重量を基準にして、15〜50重量%で存在するであろう。最も好ましいナノ粘土において、このカチオン性コーティングは、層化ナノ粘土プラスカチオン性コーティングの総重量を基準にして30重量%超で存在するであろう。別の好ましいアンモニウムコーティングは、オクタデシルアンモニウムである。
【0034】
この組成物は、架橋性熱可塑性ポリマーとナノ粘土との間の適合性を改良するためにカップリング剤を含有してもよい。カップリング剤の例は、シラン、チタネート、ジルコネート、および無水マレイン酸でグラフト化された様々なポリマーを包含する。ほかのカップリング技術は、当業者には容易に明らかになるであろうし、この発明の範囲内で考察される。
【0035】
これに加えて、この難燃性組成物は、ほかの添加剤、例えば酸化防止剤、安定剤、発泡剤、カーボンブラック、顔料、加工助剤、ペルオキシド、硬化ブースター、スコーチ阻害剤を含有してもよく、充填剤を処理するための界面活性剤が存在してもよい。
【0036】
このワイヤが任意ワイヤジャケットを含んでいるならば、このワイヤジャケットは、可撓性ポリマー材料からできており、好ましくはメルト押し出しによって形成される。
【0037】
代替実施形態において、この難燃性絶縁層は、架橋性熱可塑性ポリマー、金属カーボネート、および金属ハイドレートを含んでいる難燃性組成物であって、金属カーボネートと金属ハイドレートとの組み合わせが、約120秒またはそれ以上のTTPHRRをテスト標本へ付与する組成物から調製される。金属カーボネート対金属ハイドレート比は、少なくとも約1:4である。同様に好ましくは、この金属ハイドレートは、約40重量%未満、より好ましくは約35重量%未満の量で存在する。好ましくは、この難燃性組成物は、約2重量%未満のシリコーンポリマーを含有する。より好ましくはこの難燃性組成物は、実質的にシリコーンポリマーを含んでいない。
【0038】
代替実施形態において、本発明は、自動車用架橋低引張主ワイヤの調製方法である。本発明の工程は、(a)絶縁層用難燃性組成物を選択する工程、(b)選択された難燃性組成物を絶縁層として金属導体の上全体に加えて、絶縁導体を形成する工程、および(c)この絶縁層を架橋する工程を含む。場合により、この実施形態はさらに、この導体の上全体にワイヤジャケットを加える工程を含んでいてもよい。適切な架橋方法は、ペルオキシド、e−ビーム、湿分硬化、およびほかの周知方法を包含する。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明は、既に記載された方法から調製された自動車用低引張主ワイヤである。さらには、本発明の難燃性組成物は、電気製品用途において有用であると考えられる。
【実施例】
【0040】
次の非限定例は、本発明を例証する。
【0041】
次の例示された組成物の各々について、これらの絶縁性組成物は、実験室規模のブラベンダーミキサーを用いて混合され、限界酸素指数(LOI)およびコーンカロリメトリーを用いて分析された。LOIは、ASTM D−2863にしたがって127mm×6.4mm×3.2mmテスト標本に対して実施された。コーンカロリメトリーは、ASTM E−1354にしたがって100mm×100mm×1.3mmテスト標本に対して、35kW/m2の熱流速でグリッドを用いずに実施された。コーンカロリメトリー測定は、ピーク発熱速度(PHRR)(kW/m2)、ピーク発熱速度までの時間(TTPHRR)(秒)、発火までの時間(TTI) (秒)、火災成長速度指数(FIGRA) (kW/m2)、および火災性能指数(FPI)(s−m2/kW)を包含する。FIGRAは、PHRRをTTPHRRで割って計算される。FPIは、TTIをPHRRで割って計算される。
【0042】
次の材料が、例示された組成物のために用いられた。エチレン−エチルアクリレート(EEA)は、1.30g/10分のメルトインデックス、0.93g/ccの密度、および15重量%のエチルアクリレートコモノマー含量を有していた。EEAは、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)から得られた。これは、アンプリファイ(Amplify)(商標)EA100として商業的に入手しうる。エチレン−ビニルアセテート(EVA)は、2.50g/10分のメルトインデックス、0.94g/ccの密度、および18重量%のビニルアセテートコモノマー含量を有していた。EVAは、デュポン(DuPont)から得られた。これは、エルヴァックス(Elvax)(商標)460として商業的に入手しうる。エチレン/オクテンコポリマーは、4.0g/10分のメルトインデックス、および0.9g/ccの密度を有していた。エチレン/オクテンコポリマーは、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから得られた。これは、アタン(Attane)(商標)4404として商業的に入手しうる。
【0043】
アルミニウムトリヒドロキシド(ATH)は、1.1ミクロンの平均粒子サイズを有していた。カルシウムカーボネート(CaCO3)は磨砕され、脂肪酸でコーティングされ、3.5ミクロンの平均粒子サイズを有していた。マグネシウムヒドロキシド(Mg(OH)2)が沈殿され、1.8ミクロンの平均粒子サイズを有していた。ナノ粘土は、特許協力条約出願番号第WO 01/83370号に記載されているように調製された合成有機−マガジアイトであった。
【0044】
亜鉛ステアレートは、標準ポリマーグレードとして得られた。亜鉛オキシドは、9m2/gの表面積を有し、ジンク・コーポレーション・オブ・アメリカ(Zinc Corporation of America)からカドックス(Kadox)(商標)911Pとして得られた。イルガノックス(Irganox)1010テトラキス[メチレン(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタンは、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Inc.) から入手可能である。
【0045】
ポリジメチルシロキサンは、60,000センチストークの25℃における粘度を有していた。シリコーン濃縮物は、低密度ポリエチレン中の50重量%の超高分子量シリコーンポリマーを含有し、ダウ・コーニング社(Dow Corning Inc.)からMB50−002として商業的に入手可能であった。シリカは、PPGインダストリーズ社からのHi−Sil135であった。
【0046】
これらの組成物は、18ゲージ/19−ストランドワイヤ上に押し出され、絶縁性組成物を架橋するために、4.5MeV電子ビームの10MRadへ付された。
【0047】
不一致実施例1〜5、比較例6、および実施例7
【表1】

次のデータについて、SAE J−1128平均燃焼時間は、この組成物が合格するためには70秒未満でなければならない。MS−8288平均燃焼時間は、この組成物が合格するためには30秒未満でなければならない。
【表2】

【0048】
コーンカロリメトリー結果が、SAE J−1128およびMS−8288配合物の合格と関連付けられた。約140秒またはそれ以上のTTPHRRを有する難燃性組成物は、SAE J−1128およびMS−8288の両方のテストに合格した。
【0049】
したがって、自動車用低引張ワイヤの絶縁層のための、金属カーボネートを含有する難燃性組成物は、約140秒またはそれ以上のピーク発熱速度までの時間を有することに基づいて選択されるべきである。
【0050】
難燃性組成物:実施例8〜12
【表3】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ワイヤであって、
a.金属導体;
b.(i)架橋性熱可塑性ポリマー、
(ii)約140秒またはそれ以上の、35kW/m2の熱流速を有するコーンカロリメトリーを用いて測定されたピーク発熱までの時間(TTPHRR)を、長さおよび幅が101.6mm、厚さ1.3mmを有するテスト標本へ付与するのに十分な量で存在する金属カーボネート、および
(iii)架橋剤
を含んでいる難燃性組成物から調製された、この金属導体を取囲んでいる難燃性絶縁層;および
c.この絶縁層を取囲んでいるワイヤジャケット
を含んでいるワイヤ。
【請求項2】
前記架橋性熱可塑性樹脂がポリオレフィンである、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項3】
前記金属カーボネートが、カルシウムカーボネート、カルシウムマグネシウムカーボネート、およびマグネシウムカーボネートからなる群より選択される、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項4】
前記金属カーボネートが、約10重量%またはそれ以上の量で存在する、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項5】
前記金属カーボネートが、約20重量%またはそれ以上の量で存在する、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項6】
前記難燃性組成物はさらに、金属カーボネートと金属ハイドレートとの組み合わせが、約140秒またはそれ以上のTTPHRRをテスト標本へ付与するような量で金属ハイドレートを含んでいる、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項7】
前記金属カーボネート対前記金属ハイドレート比が、少なくとも約1:4である、請求項6に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項8】
前記金属ハイドレートが、約40重量パーセント未満の量で存在する、請求項6に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項9】
前記金属ハイドレートが、約35重量パーセント未満の量で存在する、請求項6に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項10】
約2重量%未満のシリコーンポリマーを含有する、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項11】
実質的にシリコーンポリマーを含まない、請求項1に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項12】
自動車用ワイヤであって、
a.金属導体;
b.(i)架橋性熱可塑性ポリマー、
(ii)金属カーボネート、
(iii)金属ハイドレート、および
(iv)架橋剤
を含んでいる難燃性組成物から調製された、この金属導体を取囲んでいる難燃性絶縁層であって、金属カーボネートの量および金属ハイドレートの量が、約120秒またはそれ以上の、35kW/m2の熱流速を有するコーンカロリメトリーを用いて測定されたピーク発熱までの時間(TTPHRR)を、長さおよび幅が101.6mm、厚さ1.3mmを有するテスト標本へ付与するのに十分な組み合わせを生じる絶縁層;および
c.この絶縁層を取囲んでいるワイヤジャケット
を含んでいるワイヤ。
【請求項13】
前記金属カーボネートが、約10重量%またはそれ以上の量で存在する、請求項12に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項14】
前記金属ハイドレートが、約40重量%未満の量で存在する、請求項12に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項15】
前記金属カーボネート対前記金属ハイドレート比が、少なくとも約1:4である、請求項12に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項16】
約2重量%未満のシリコーンポリマーを含有する、請求項12に記載の自動車用ワイヤ。
【請求項17】
自動車用低引張主ワイヤの調製方法であって、
a.(i)架橋性熱可塑性ポリマー、
(ii)約140秒またはそれ以上の、35kW/m2の熱流速を有するコーンカロリメトリーを用いて測定されたピーク発熱までの時間(TTPHRR)を、長さおよび幅が101.6mm、厚さ1.3mmを有するテスト標本へ付与するのに十分な量で存在する金属カーボネート、および
(iii)架橋剤
を含んでいる難燃性組成物を選択する工程;
b.難燃性組成物の絶縁コーティングを金属導体の上全体に加えて、絶縁導体を形成する工程;および
c.この絶縁導体の上全体にワイヤジャケットを加える工程
を含む方法。
【請求項18】
請求項17にしたがって調製された自動車用低引張主ワイヤ。

【公表番号】特表2008−511128(P2008−511128A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530041(P2007−530041)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/029901
【国際公開番号】WO2006/026256
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】