説明

改良された衝撃特性を有するポリエステル組成物の製造方法

【課題】ポリエステル樹脂(c)と、α−オレフィンとエポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーとのコポリマー(a)とコア−シェル化合物(b)との混合物とを含む熱可塑性組成物の製造方法。
【解決手段】本発明製造方法は、コポリマー(a)が溶融状態である温度かつ60〜180℃の最高温度で(a)と(b)の混合物を押出しで製造する第1段階と、第1段階で製造した(a)と(b)の混合物をポリエステル樹脂(c)と一緒に押出すか、混合して熱可塑性組成物を製造する第2段階とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された衝撃特性を有するポリエステル組成物の製造方法に関するものである。本発明はさらに、上記方法で得られる新規なポリエステル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、包装材料、電気またはエレクトロニクスの分野で使用できる優れた寸法安定性、耐熱性または耐薬品性を有する。しかし、変形加工操作時にポリエステルの分子量が低下し、それによって、衝撃特性が低下することがある。
【0003】
衝撃特性を高くするためにエチレンと不飽和エポキシドのコポリマーのような衝撃改質剤が使用できる。例えば特許文献1(欧州特許第EP963412号公報)には特定のメルトフローインデックスを有するエチレンと不飽和エポキシドのコポリマーを含むポリエステルを用いた射出部品が開示されている。この部品は押出が容易な粘度を有する組成物から作られる。
【0004】
特許文献2(米国特許第5 854 346号明細書)にはエチレンと不飽和エポキシドのコポリマーと、コア−シェル衝撃改質剤とを含む芳香族ポリエステル組成物が開示されている。この特許に記載の方法では各成分がポリエステル中へ別々に導入されている。
【0005】
上記組成物は改良された衝撃特性を有するが、衝撃特性が不十分な場合がある。さらに、押出または射出用のポリエステル組成物は加工が容易な粘度特性を有する必要がある。また、コア−シェル化合物は微粉状であるため、プロセス条件によってはコア−シェル化合物が凝集するので、ポリエステル中への直接使用は実際には不可能である。
【0006】
さらに、上記組成物は高温すなわち180℃以上の温度で製造されるので、高温用の機器、例えば押出機を用い、一般に加工装置と接触しているホッパを介して各成分を連続的に供給する。しかし、供給ホッパが加工装置と接触していると、熱が押出機からホッパへ伝達されて、ホッパ中に存在する各種成分の温度が上昇する。その結果、上記のエチレンと不飽和エポキシドのコポリマーは粘着性になり、押出機の供給口が詰まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第EP963412号公報
【特許文献2】米国特許第5 854 346号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、上述の問題の少なくとも一つを解決できる方法を見出す必要がある。これがまさに本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、
ポリエステル樹脂(c)と、
α−オレフィンとエポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーとのコポリマー(a)と、
コア−シェル化合物(b)と、
を含む熱可塑性組成物の製造方法において、
下記段階から成ることを特徴とする方法にある:
コポリマー(a)が溶融する温度かつ60〜180℃の最高温度で、(a)と(b)を含む混合物を押出しで製造する第1段階と、
第1段階で得られた(a)と(b)の混合物をポリエステル樹脂(c)と一緒に押出すか、混合して熱可塑性組成物を製造する第2段階。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によって、ポリエステル組成物の衝撃挙動は上記第1混合段階を実施しない従来法の組成物と比較して驚くほど改良される。さらに、得られるポリエステル組成物の粘度が下がるためポリエステル組成物の変形加工、例えば射出による変形加工が容易になる。コポリマー(a)および/またはコア−シェル化合物(b)をポリエステル中へ直接導入した場合に生じる実施上の問題も解決される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の別の対象は本発明方法および以下に示す本発明の実施形態で得られる組成物にある。下記実施形態は単独または互いに組み合わせて実施できる。
【0012】
第1段階の(a)と(b)の混合物を製造する段階は最高温度が70〜140℃になるように実施するのが有利である。
【0013】
本発明の一実施例では、第1段階での(a)と(b)の混合物の製造段階を、共回転二軸押出機または逆回転二軸押出機またはコニーダまたはインターナルミキサまたは一軸押出機、好ましくは一軸押出機で、溶融状態で混合して実施する。(a)と(b)の混合物の製造段階は、溶融状態の混合を含めて、本明細書では全て「押出」とみなされる。
【0014】
第1段階の(a)と(b)の混合物の滞留時間は10〜300秒であるのが好ましい。
【0015】
ポリエステル樹脂(c)との混合物を製造する第2段階は、混合物の温度が180〜320℃になるように実施できる。この第2段階は、共回転二軸押出機または逆回転二軸押出機またはコニーダまたはインターナルミキサまたは一軸押出機、好ましくは共回転二軸押出機で、溶融状態で混合して実施する。
【0016】
(a)/(b)比は1/9〜9/1、好ましくは1/4〜1.5/1にするのが有利である。
【0017】
組成物は、組成物の全質量に対して20〜99質量%、例えば50〜97質量%のポリエステル樹脂(c)と、1〜80質量%、例えば3〜50質量%の(a)と(b)の混合物とを含むことができる。
【0018】
ポリエステル樹脂(c)は、本発明の第1変形例では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸(PETG)とのコポリエステルの中から選択できる。
【0019】
ポリエステル樹脂(c)は、本発明の第2変形例では、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびポリ乳酸(PLA)の中から選択できる。
【0020】
本発明の一実施例では、樹脂(c)のポリエステルの一部をポリカーボネートで置換する。この実施形態では、「ポリエステル樹脂(c)」とはポリカーボネートとポリエスエルとの混合物を意味する。
【0021】
混合物(a+b)を製造する段階の前に、コポリマー(a)と化合物(b)とを低温予混合できる。
【0022】
コア−シェル化合物(b)のシェル部分は重合状態で下記を含むことができる:
(1)アルキル鎖が1〜12、好ましくは1〜4の炭素原子を含むアルキルメタクリレート、および/または、
(2)6〜12の炭素原子を含む芳香族ビニル有機化合物、例えばスチレン、および/または
(3)アクリロニトリル、
(このシェル部分は架橋されていてもよい)
【0023】
コア−シェル化合物(b)のコア部分は重合された状態で下記を含むことができる:
(1)4〜12、好ましくは4〜8の炭素原子を含む共役ジエン、または、
(2)アルキル鎖が1〜12、好ましくは1〜8の炭素原子を含むアルキルアクリレート。
【0024】
コア−シェル化合物(b)は下記の中から選択するのが有利である:
(1)ブタジエンを含むコアと、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物、
(2)2−エチルヘキシルアクリレートを含むコアと、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物、
(3)ブタジエンを含むコアと、アクリロニトリルとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物。
【0025】
本発明の一実施形態では、化合物(b)はブタジエンを含むコアと、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有し、ポリエステル樹脂(c)はPBTを含む。
本発明の別の実施形態では、化合物(b)は2−エチルヘキシルアクリレートを含むコアと、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有し、ポリエステル樹脂(c)はPLAを含む。
【0026】
シェルの質量とコアの質量との比は例えば1:1〜20:1である。
【0027】
エポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーはグリシジルメタクリレートであるのが好ましい。
コポリマー(a)はエチレンとグリシジルメタクリレートとのコポリマーおよびエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマーの中から選択するのが有利である。
【0028】
本発明のさらに別の対象は本発明方法によって得られる組成物にある。
本発明方法で得られる熱可塑性組成物は、コア−シェルタイプのエラストマー化合物およびエポキシ官能基を有するエチレンモノマーを含むオレフィンコポリマーを含むポリヒドロキシアルカン(PHA)酸組成物で構成できる。
【0029】
熱可塑性組成物のその他の有利な特徴(任意)は以下の通り:
(1)エポキシ官能基を有するエチレンモノマーがグリシジル(メタ)アクリレートである、
(2)オレフィンコポリマーが、アルキル鎖が1〜30の炭素原子を含む、エチレンと、グリシジルメタクリレートと、任意成分のアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである、
(3)熱可塑性組成物が、エポキシ官能基を有するエチレンモノマーを含むオレフィンコポリマー以外の追加のオレフィンポリマーをさらに含む。この追加のオレフィンポリマーがエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、エチレンと酸またはアイオノマーのビニルエステルとのコポリマー、好ましくはエチレンとアルキル鎖が1〜20のアルキルアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチレンアクリレートまたはn−ブチルアクリレートとのコポリマーである、
(4)コア−シェル化合物のコアのポリマーはガラス遷移温度が20℃以下で、シェルのポリマーはガラス遷移温度が20℃以上である、
(5)コアの量がコア−シェル化合物の全質量の60〜95%である、
(6)コア−シェル化合物の寸法が50〜600nm(ナノメートル)である、
(7)PHAがポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)の中から選択される。
【0030】
本発明方法で得られた熱可塑性組成物を用いることで部品または物品、例えば包装材料の全部または一部を製造できる。この部品/物品は例えば射出、プレスまたはカレンダリングによって組成物を形成する段階で製造し、必要に応じてアニーリング段階を実施する。
【0031】
本発明の対象は、α−オレフィンとエポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーとのコポリマー(a)と、コア−シェル化合物(b)と、ポリエステル樹脂(c)とを含む熱可塑性組成物の製造方法にある。
【0032】
コポリマー(a)
コポリマー(a)はその全質量に対して99.9〜40質量%、有利には83.5〜55質量%のα−オレフィンを含むことができる。
コポリマー(a)はその全質量に対して0.1〜15質量%、有利には1.5〜10質量%のエポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーを含むことができる。
本発明の一実施形態では、コポリマー(a)はα−オレフィン以外にエポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーを含む。コポリマー(a)はこのモノマーをコポリマー(a)の全質量に対して0〜45質量%、有利には15〜35質量%含むことができる。
【0033】
本発明では、成分(a)および(b)中に存在する各種モノマーの量はISO規格8985を用いた赤外線分光法で測定できる。
α−オレフィンの例としては2〜6の炭素原子を含むα−オレフィン、例えばエチレンまたはプロピレンが挙げられる。α−オレフィンとしてはエチレンが好ましい。
【0034】
エポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーの例としては下記のものが挙げられる:脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエートおよびイタコネート、グリシジル(メタ)アクリレートおよび脂環式グリシジルエステルおよびエーテル、例えば2−シクロヘキセン−1−グリシジルエーテル、シクロヘキセン−4,5−ジグリシジルカルボキシレート、シクロヘキセン−4−グリシジルカルボキシレート、5−ノルボルネン−2−メチル−2−グリシジルカルボキシレートおよびエンドシス−ビシクロ−(2.2.1)−5−ヘプテン−2,3−ジグリシジルジカルボキシレート。
【0035】
エポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーはグリシジルメタクリレートであるのが好ましい。α−オレフィン以外でエポキシ官能基を有してない不飽和エチレンモノマーは、24以下の炭素原子を含むことができる。このモノマーの例としては飽和カルボン酸ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ジエンおよびアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートが挙げられる。後者は本明細書ではアルキル(メタ)アクリレートという用語でまとめられる。
【0036】
α−オレフィン以外でエポキシ官能基を有しない不飽和エチレンモノマーはアルキル(メタ)アクリレートであるのが有利である。アルキル鎖が1〜12、有利には1〜6、さらには1〜4の炭素原子を含むものが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートはn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルアクリレートであるのが有利である。アルキル(メタ)アクリレートはn−ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルアクリレートであるのが好ましい。メチルアクリレートであるのが最も好ましい。
【0037】
本発明のコポリマー(a)のメルトフローインデックス(ASTM規格D 1238に従って190℃、2.16kgで測定)は例えば1〜500g/10分にすることができる。
【0038】
コポリマー(a)は各種モノマーのラジカル共重合で得られる。通常200〜2500バールの圧力で運転する「ラジカル重合」プロセスを使用できる。このプロセスは主として2つのタイプの反応装置すなわちオートクレーブタイプの反応装置または管状タイプの反応装置を用いて工業的に実施される。この重合プロセスは当業者に周知であり、例えば下記文献に記載のプロセスを使用できる。
【特許文献3】フランス国特許第2 498 609号公報
【特許文献4】フランス国特許第2 569 411号公報
【特許文献5】フランス国特許第2 569 412号公報
【0039】
コア−シェル化合物(b)
コア−シェル化合物(b)は一般に1μ\ochm以下の粒径、有利には200〜500nmの粒径を有するエラストマーコアと少なくとも一つの熱可塑性のシェルとを有する微粉末の形をしている。
【0040】
コアの例としては、イソプレンのホモポリマーまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレンと30モル%以下のイソプレン以外のビニルモノマーとのコポリマー、ブタジエンと30モル%以下のブタジエン以外のビニルモノマーとのコポリマーが挙げられる。ビニルモノマーは例えばイソプレン、ブタジエン、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリルまたはアルキルメタクリレートにすることができる。
【0041】
コアの別のファミリはアルキルアクリレートのホモポリマーおよびアルキルアクリレートと30モル%以下のアルキルアクリレート以外のビニルモノマー、例えばスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンまたはイソプレンとのコポリマーで形成される。アクリレートのアルキル鎖は一般に2〜20の炭素原子を含む。アルキルアクリレートはブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートであるのが有利である。
【0042】
コア−シェル化合物(b)のコアは完全または部分的に架橋されていてもよい。架橋に必要なことはコアの製造時に少なくとも二官能性モノマーを加えることだけであり、そのモノマーはポリオールのポリ(メタ)アクリル酸エステル、例えばブチレンジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートの中から選択できる。他の二官能性モノマーの例はジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートである。重合中にコモノマーとして無水不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドのような官能性不飽和モノマーを導入するか、グラフトによってコアを架橋できる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。
【0043】
シェルは一般にスチレンのホモポリマー、アルキルスチレンのホモポリマーまたはアルキルメタクリレート、例えばメチルメタクリレートのホモポリマーで構成される。シェルはさらに、少なくとも70モル%のこれらのモノマーの一つと、30モル%以下のその他の上記モノマーの中から選択される少なくとも一つの別のコモノマーとのコポリマー、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルで構成される。スチレンを含むシェルを有するコア−シェル化合物(b)またはメチルメタクリレートを含むシェルを有するコア−シェル化合物(b)を用いるのが好ましい。
【0044】
化合物(b)は2つ以上のシェルを含むことができる。
コポリマー(b)とその製造方法の例は下記特許文献に記載されている:
【特許文献6】米国特許第US 4 180 494号明細書
【特許文献7】米国特許第US 3 808 180号明細書
【特許文献8】米国特許第US 4 096 202号明細書
【特許文献9】米国特許第US 4 260 693号明細書
【特許文献10】米国特許第US 3 287 443号明細書
【特許文献11】米国特許第US 3 657 391号明細書
【特許文献12】米国特許第US 4 299 928号明細書
【特許文献13】米国特許第US 3 985 704号明細書
【0045】
好ましい化合物(b)として、コア−シェル化合物(b)は下記の中から選択される:
(1)ブタジエンを含むコアと、モル比(M)/(S)が2.33以上であるのが好ましいメチルメタクリレートまたはメチルメタクリレート(M)とスチレン(S)との混合物を含むシェルとを有する化合物、
(2)アルキルアクリレート、好ましくは2−エチルヘキシルアクリレートおよびn−ブチルアクリレートの中から選択されるアルキルアクリレートを含むコアと、メチルメタクリレートまたはモル比(M)/(S)が2.33以上であるメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物、
(3)ブタジエンを含むコアと、モル比(A)/(S)が2.33以上であるのが好ましいアクリロニトリル(A)とスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物。
【0046】
コアは化合物(b)の60〜90質量%、シェルは40〜10質量%にするのが有利である。
重合中にコモノマーとして無水不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドのような官能性不飽和モノマーを導入するか、グラフトしてシェルを官能化することもできる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0047】
ポリエステル樹脂(c)
ポリエステル樹脂(c)はエステルタイプの反復単位を含むポリマーを意味する。このポリマーは、グリコールとジカルボン酸またはその誘導体との縮合反応またはヒドロキシ酸またはその誘導体、例えばそのダイマーの反応で得られる飽和生成物である。
このポリマーは、8〜14の炭素原子を含む芳香族ジカルボン酸と、式HO(CH2nOH(ここで、nは2〜10の整数であるのが好ましい)の少なくとも一つの脂肪族環式または脂環式グリコールとの縮合生成物を含むことができる。
【0048】
ポリエステルは複数の二酸および/または複数のグリコールから合成できるので、以降、コポリエステルとよぶ。
50モル%以下の芳香族ジカルボン酸を、少なくとも一つの別の芳香族ジカルボン酸によって置換でき、および/または、20モル%以下の芳香族ジカルボン酸を例えば2〜12の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸によって置換できる。
【0049】
ポリエステルは下記(1)と(2)から得られるエステルを含むことができる:
(1)芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、重安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン酸、エチレンビス(p−安息香酸)、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香酸)、エチレンビス(パラ−オキシ安息香酸)および/または1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香酸);
(2)グリコール、例えばエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび/またはシクロヘキサンジメタノール。
【0050】
ポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(1,4−ブチレン)テレフタレート(PBT)、1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)または1,4−シクロヘキシレンジメチレンイソフタレートにすることができる。
【0051】
コポリエステルの例としては、ポリエチレン(テレフタレート−co−イソフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート−co−イソフタレート)、1,4−シクロへキシレンジメチレン(テレフタレート−co−イソフタレート)およびエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸とのコポリエステル(PETGとして知られる)が挙げられる。
【0052】
ポリエステル樹脂(c)は、下記の再生可能な材料を起源とするポリエステルすなわち動植物または非石油化学起源の出発材料から得られるポリエステルを含むまたはこのポリエステルで構成できる:
(1)ポリ乳酸:例えば乳酸のポリマーおよびコポリマー(PLA)またはグリコール酸のポリマーおよびコポリマー(PGA)、または
(2)ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ホモポリマーまたはコポリマー(PHA)、すなわち例えばPHBポリ(ヒドロキシブチレート)、PHBV〔ヒドロキシブチレート−バレレート、例えばポリ(3−ヒドロキシブチレート)−ポリ(3−ヒドロキシバレレート)のコポリマー〕、PHBHx(ヒドロキシブチレート−ヘキサノエートのコポリマー)、PHBO(ヒドロキシブチレート−ヘキサノエートコポリマー)。
【0053】
再生可能な材料起源のポリエステルの中で、PLAはCargill社から商品名Natureworks(登録商標)の製品、Toyota社の商品名Ecoplastic(登録商標)の製品またはMitsui Chemical社の商品名Lacea(登録商標)の製品の中から選択できる。さらに、再生可能資源から得られるポリマーの中で、PHBVはZeneca社の商品名Biopol(登録商標)(例えばBiopol(登録商標)D600G)の製品、Biomer社の製品またはMetabolix社の製品の中から選択できる。
【0054】
ポリエステルはさらに、コポリエーテルエステルにすることもできる。これはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーである。ポリエーテル単位は、ポリエーテルジオール、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ジカルボン酸単位、例えばテレフタル酸および短鎖延長剤のジオール単位、例えばグリコール(エタンジオール)または1,4−ブタンジオールから得られる。ポリエーテルおよび二酸の配列によってフレキシブルセグメントを形成し、一方で、グリコールまたはブタンジオールおよび二酸の配列によってリジッドセグメントを形成する。
【0055】
種々のポリエステルの混合物を用いることもできる。
PBTまたはPLAは、ポリエステル樹脂(c)として本発明方法で使用できるのが有利である。
【0056】
本発明の一実施例では、ポリエステルの一部をポリカーボネートで置換する。この実施形態では、「ポリエステル樹脂(c)」とはポリカーボネートとポリエステルとの混合物を意味する。
【0057】
ポリエステル樹脂(c)のメルトフローインデックス(250℃、2.16kg下で測定)は2〜100、有利には10〜80にすることができる。
【0058】
第1段階:
(a)と(b)の混合物の製造
製造の第1段階は、コポリマー(a)が溶融状態にある温度かつ60〜180℃、好ましくは70〜140℃の最高温度で、(a)と(b)を含む混合物を押出して行う。
コポリマー(a)の融点はISO 11357-03方法でDSCで測定できる。
押出によって実施するこの段階では、混合物は基本的にポリエステル樹脂(c)を全く含まない。押出は材料を連続混合および変形加工する方法である。混合物を押出すには温度調整されたシースとその内部で回転する少なくとも一つのスクリューとを有する機械にコポリマー(a)と化合物(b)とを供給する。このスクリューは顆粒をブレンドし、ダイへ向かって運搬し、熱と剪断の作用で均一な溶融混合物を製造する。ダイによってプラスチック物に所望形状を与える。押出機出口で造粒装置を用いることもできる。押出による混合中の滞留時間は10〜300秒、好ましくは30〜240秒であるのが好ましい。
例えば、二軸押出機または一軸押出機を使用できる。押出には例えば一軸タイプの押出機を用いて低剪断のスクリュープロフィルを用いるのが好ましい。
【0059】
第2段階:
熱可塑性組成物の製造
コポリマー(a)、化合物(b)およびポリエステル樹脂(c)を含む熱可塑性組成物の製造は、一軸または二軸押出機、ブレンダーまたはBuss(登録商標)Ko-Kneaderタイプの装置で熱可塑性ポリマーを加工して行う。組成物の最高温度は180〜320℃にすることができ、用いるポリエステルに依存する。
製造の第2段階は二軸または一軸の押出機で実施するのが好ましい。
【0060】
(a)と(b)との混合物は供給ホッパを介して連続的に導入できる。
驚くことに、本発明方法を使用すると、良好な衝撃強度特性を有する熱可塑性組成物が得られる。理論に縛られるものではないが、本発明方法による組成物のこの良好な衝撃特性は熱可塑性組成物中への(a)および(b)の良好な分布によって説明できると本発明者は考える。
【0061】
さらに、本発明方法によって微粉末の化合物をポリエステル中で直接使用する時の問題が解決する。さらに、(a)と(b)との混合物はコポリマー(a)単独より粘着性が低いので、加工装置供給口での問題も解決する。
【0062】
本発明熱可塑性組成物は、その特性の一部を改良する添加剤、例えば滑剤、粘着防止剤、酸化防止剤、紫外線安定剤または充填剤をさらに含むことができる。充填剤はガラス繊維、難燃剤、タルクまたはチョークにすることができる。これらの添加剤は製造の第1または第2段階で組成物に添加できる。
【実施例】
【0063】
本発明の組成物および構造物を製造するために下記化合物を用いた:
(a)25重量%のアクリレートと8重量%のグリシジルメタクリレートとを含むエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマー(DSC(ISO 11357−03)で測定した融点は65℃)
(b1)ブタジエン、メチルメタクリレートおよびスチレンを含むコア−シェル化合物(アルケマ社からClearstrength(登録商標)E920で市販)
(b2)2−エチルヘキシルアクリレートおよびメチルメタクリレートを含むコア−シェル化合物(アルケマ社からDurastrength(登録商標)D440で市販)
ポリエステル(c1):ポリブチレンテレフタレート、
ポリエステル(c2):ポリ乳酸。
【0064】
本発明の組成物(1)、(2)および比較組成物(1bis)、(2bis)は成分(a)、(b1)、(b2)、(c1)および(c2)を[表1]に示す比率で含む。
組成物(1)は2段階で調製した:
第1段階で成分(a)および(b1)を[表1]に示す比率で押出によって混合する。押出は直径が60mmでL/D比が28の一軸タイプの押出機で実施する。混合物の最高温度は133℃である。
第2段階で、得られた混合物を[表1]に示す比率でポリエステル(c1)と一緒に押し出す。
【0065】
組成物(1bis)も2段階で調製した:
第1段階で成分(a)および(b1)を[表1]に示す比率で押出によって混合する。押出は組成物(1)の場合と同じ押出機で実施するが、ここでは最高混合物温度を198℃にする。
第2段階では、得られた混合物を[表1]に示す比率でポリエステル(c1)と一緒に押し出す。
【0066】
組成物(1)および(1bis)と同じ成分を同じ比率で含む組成物(1ter)を、組成物(1)および(1bis)の製造の第2段階と同じ条件下で成分(a)、(b1)および(c1)を混合して一段階で調製した。
組成物(2)も2段階で調製した:
第1段階で成分(a)および(b2)を[表1]に示す比率で混合する。混合は組成物(1)の混合の第1段階と同じ押出条件下で押出して実施する。最高混合物温度は105℃である。
第2段階では、得られた混合物を[表1]に示す比率でポリエステル(c2)と一緒に押し出す。
【0067】
組成物(2bis)は2段階で調製した。第1段階で成分(a)および(b2)を[表1]に示す比率で混合する。混合は組成物(1bis)の混合の第1段階と同じ条件下で押し出して実施する。最高混合物温度は175℃である。
第2段階では、得られた混合物を[表1]に示す比率でポリエステル(c2)と一緒に押し出す。
【0068】
組成物(2ter)も同様に2段階で調製した。第1段階で成分(a)および(b2)を[表1]に示す比率で混合する。混合は最高混合物温度が72℃になるような条件下で押し出して実施する。
第2段階では、得られた混合物を[表1]に示す比率でポリエステル(c2)と一緒に押し出す。
組成物(2)、(2bis)および(2ter)と同じ成分を同じ比率で含む組成物(2qua)を、組成物(2)、(2bis)および(2ter)の製造の第2段階と同じ押出条件下で成分(a)、(b2)および(c2)を混合して一段階で調製した。
【0069】
「シャルピーノッチ付き衝撃」特性はISO規格179:2000に従って測定した。シャルピー衝撃値が高ければ高いほど衝撃強度は良い。この特性は室温(23℃)および低温条件下(−20℃または−40℃)で測定した。得られた値は[表1]にまとめた。
【0070】
【表1】

【0071】
本発明方法で製造した組成物は従来法を用いて得られたものと比較して改良された衝撃特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)と(2):
(1)ポリエステル樹脂(c)、
(2)(a)α−オレフィンとエポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーとのコポリマーと(b)コア−シェル化合物の混合物、
を含む熱可塑性組成物の製造方法において、
下記段階を含むことを特徴とする方法:
コポリマー(a)が溶融する温度かつ60〜180℃の最高温度で(a)と(b)の混合物を押し出す第1段階;
第1段階で得られた(a)と(b)の混合物をポリエステル樹脂(c)と一緒に押出すか、混合して熱可塑性組成物を製造する第2段階。
【請求項2】
(a)と(b)の混合物を製造する第1段階を、最高温度が70〜140℃になるように実施する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)と(b)の混合物を製造する第1段階を一軸押出機で実施する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)と(b)の混合物を製造する第1段階の滞留時間を10〜300秒にする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリエステル樹脂(c)との混合物を製造する第2段階を、混合物温度が180〜320℃になるように実施する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)/(b)比を1/9〜9/1にする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)/(b)比を1/4〜1.5/1にする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
組成物が、組成物の全質量に対して20〜99質量%のポリエステル樹脂(c)と、1〜80質量%の(a)と(b)の混合物とを含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリエステル樹脂(c)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸とのコポリエステル(PETG)の中から選択する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリエステル樹脂(c)を、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびポリ乳酸(PLA)の中から選択する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
樹脂(c)のポリエステルの一部をポリカーボネートで置換する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
衝撃改質剤を製造する段階の前に、コポリマー(a)と化合物(b)とを低温で予混合する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
コア−シェル化合物(b)のシェル部分が重合した状態で下記(1)〜(3)を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法:
(1)アルキル鎖が1〜12、好ましくは1〜4の炭素原子を含むアルキルメタクリレート、および/または、
(2)6〜12の炭素原子を含む芳香族ビニル有機化合物、例えばスチレン、および/または
(3)アクリロニトリル、
(このシェル部分は架橋していてもよい)
【請求項14】
コア−シェル化合物(b)のコア部分が重合した状態で下記(1)または(2)を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法:
(1)4〜12、好ましくは4〜8の炭素原子を含む共役ジエン、または、
(2)アルキル鎖が1〜12、好ましくは1〜8の炭素原子を含むアルキルアクリレート。
【請求項15】
コア−シェル化合物(b)を下記(1)〜(3)の中から選択する請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法:
(1)ブタジエンを含むコアと、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物、
(2)2−エチルヘキシルアクリレートを含むコアと、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物、
(3)ブタジエンを含むコアと、アクリロニトリルとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物。
【請求項16】
シェルの質量とコアの質量との比が1:1〜20:1である請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
エポキシ官能基を有する不飽和エチレンモノマーがグリシジルメタクリレートである請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
コポリマー(a)をエチレンとグリシジルメタクリレートとのコポリマーおよびエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマーの中から選択する請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物。

【公表番号】特表2012−533642(P2012−533642A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520072(P2012−520072)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051473
【国際公開番号】WO2011/007093
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】