説明

改良型型枠および該型枠による対象物の製造又は施工方法

【課題】 脱型を容易に行うことができる改良型型枠を提供することである。
【解決手段】 製造又は施工しようとする対象物の壁面と基礎型枠(12)との間に、弾性材料層(18)を配置し、弾性材料層の内部に配置された有孔プレート(16)をスペーサ(14)を介して基礎型枠に取り付けることによって、弾性材料層を基礎型枠に固定するように構成されていることを特徴とする改良型型枠(10)が提供される。弾性材料層は、例えばウレタンゴムで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、型枠および該型枠による対象物の製造又は施工方法に関する。より詳細には、本発明は、脱型が容易な改良型型枠および該型枠による対象物の製造又は施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物やプラスチック製品(以下「対象物」という)を設計図どおりに施工し又は製作するには、対象物の壁面をかたどった型枠が用いられる。従来、型枠として、鋼材料、木質材料、合成樹脂材料などが用いられており、対象物の性質や形状に適合した材料が使用される。
【0003】
型枠を用いて対象物を製造又は施工するに際して、対象物の製造又は施工工程の最後に、型枠を取り外す、いわゆる脱型作業が必要不可欠となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の型枠では、対象物の形状が複雑な場合には脱型時に型枠を破損させてしまうおそれがあるという弊害があった。また、従来の型枠では、バール等を使用して脱型すると、時間がかかるうえ、型枠の転用ができないという弊害があった。さらに、脱型を容易にするため、型枠本体を小さく分割すると、コスト高になるとともに、作業や管理がしにくいという弊害があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、脱型を容易に行うことができる改良型型枠および該型枠による対象物の製造又は施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の改良型型枠は、製造又は施工しようとする対象物の壁面と基礎型枠との間に、弾性材料層を配置し、前記弾性材料層の内部に配置された有孔プレートをスペーサを介して前記基礎型枠に取り付けることによって、前記弾性材料層を前記基礎型枠に固定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載の改良型型枠を用いた対象物の製造又は施工方法は、作業台上に基礎型枠を固定する段階と、前記基礎型枠にスペーサを固定する段階と、前記スペーサに有孔プレートを取り付ける段階と、前記対象物の壁面が形作られるように、弾性材料層形成用型枠を配置する段階と、前記基礎型枠と前記弾性材料層形成用型枠との間に隙間に、流動状態になった弾性材料を流し込む段階と、前記弾性材料が硬化した後に、前記弾性材料層形成用型枠を取り外して弾性材料層を露出させる段階と、前記弾性材料層によって構成される空間に、前記対象物の形成材料を注入する段階とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の改良型型枠および該型枠を用いた対象物の製造又は施工方法によれば、対象物が、弾力性のある弾性材料層と接触しているので、脱型の際に、型枠を破損させることなしに、比較的に容易に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る改良型型枠について詳細に説明する。本実施の形態では、図9(a)に示されるコンクリート製品(以下「対象物」という)22を製造するための型枠を例にとって説明する。対象物22には、複数の凹部22aが設けられている。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る改良型型枠は、対象物22の各凹部22aの形状よりも小さめに形成される基礎型枠12を備えている。基礎型枠12は、後述するスペーサを取り付けるため、鋼材料で形成するのが好ましいが、他の任意の材料(例えば、木質材料)で形成してもよい。
【0010】
改良型型枠10は又、基礎型枠12の外面の適当な箇所に取り付けられたスペーサ14を備えている。基礎型枠12が鋼材料で形成されている場合には、丸鋼を基礎型枠12に溶接してスペーサ14とするのがよい。
【0011】
改良型型枠10は又、スペーサ14に取り付けられた有孔プレート16を備えている。基礎型枠12が鋼材料で形成され、スペーサ14が丸鋼で形成されている場合には、有孔プレート16として、有孔メタルプレート又は鋼製ネットを使用し、これらを丸鋼に溶接して固定するのがよい。有孔プレート16をスペーサ14に取り付けることにより、基礎型枠12と有孔プレート16との間には、スペーサ14の厚み分の隙間が形成されることとなる。
【0012】
改良型型枠10は又、基礎型枠12の外面に配置され、スペーサ14と有孔プレート16の厚みよりも大きい厚みを有する弾性材料層18を備えている。弾性材料層18は、例えばウレタンゴムなどで形成される。なお、弾性材料層18の外面が対象物22の壁面の箇所に実質的に位置決めされるように、弾性材料層18の厚みが選定されている。
【0013】
基礎型枠12の外面に配置される弾性材料層18が、スペーサ14と有孔プレート16の厚みよりも大きい厚みを有しているため、図1に示されるように、弾性材料層18の内部に有孔プレート16が位置することとなる。
【0014】
以上のように構成された改良型型枠10を用いて、対象物22を製造する方法について説明する。図2は、対象物22を製造する方法に関する各工程を示したフロー図である。まず、作業台の上に基礎型枠12を固定する(図3参照)。次いで、基礎型枠12に、スペーサ14となる丸棒を溶接する(図4(a)参照)。次いで、スペーサ14に有孔プレート16を取り付ける(図4(b)参照)。弾性材料層形成用型枠20を所定箇所に設置する(図5(a)参照)。弾性材料層形成用型枠20は、対象物22の凹部22aに対応する形状を有している(図5(b)参照)。次いで、基礎型枠12と弾性材料層形成用型枠20との間に形成される隙間に、加熱して流動状態になったウレタンゴムを流し込む(図6参照)。そして、ウレタンゴムが硬化すると、弾性材料層形成用型枠20を取り外す(図7参照)。しかる後、改良型型枠10によって形成された空間に、コンクリートを打設する(図8参照)。最後に、改良型型枠10を取り外すと、対象物であるコンクリート製品22が得られる。この際、基礎型枠12の外面に弾性材料層18が形成されているので、脱型の際、対象物22を傷つけることなく、容易に作業を行うことができる。なお、有孔プレート16がスペーサ14を介して基礎型枠12に堅固に固定されているので、脱型の作業の際に弾性材料層18が対象物22にくっついて剥がれるおそれはない。また、有孔プレート16は、蒸気養生時に高温に曝される弾性材料層18が膨張するのを抑制する役目を果たす。
【0015】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0016】
例えば、前記実施の形態では、対象物22が複数の凹部22aを有するコンクリート製品であるが、図9(b)に示されように、複数の凸部22′aを有する対象物22′について、本発明の改良型型枠10および施工方法を適用してもよい。
【0017】
また、前記実施の形態では、コンクリート製品に関連して説明されているが、コンクリート製品以外の対象物(例えば、プラスチック製品)について、本発明の改良型型枠10および施工方法を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る改良型型枠を示した断面図である。
【図2】図1の型枠を用いてコンクリート製品を製造する方法についての各工程を示したフロー図である。
【図3】作業台上に基礎型枠が固定されている状態を示した斜視図である。
【図4】図4(a)は、基礎型枠にスペーサが取り付けられている状態を示した図、図4(b)は、スペーサに有孔プレートが取り付けられている状態を示した図、図4(c)は、有孔プレートの斜視図である。
【図5】図5(a)は、弾性材料層形成用型枠を基礎型枠の間に配置した状態を示した図、図5(b)は、弾性材料層形成用型枠を示した斜視図である。
【図6】基礎型枠と弾性材料層形成用型枠との間に隙間に、流動状態になったウレタンゴムを流し込む状態を示した図である。
【図7】弾性材料層形成用型枠を取り外して弾性材料層を露出させる状態を示した図である。
【図8】弾性材料層によって構成される空間にコンクリートを注入する状態を示した図である。
【図9】図9(a)は、製造しようとする製品を示した斜視図、図9(b)は、製造しようとする別の製品を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 改良型型枠
12 基本型枠
14 スペーサ
16 有孔プレート
18 弾性材料層
20 弾性材料層形成用型枠
22、22′ コンクリート製品(対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造又は施工しようとする対象物の壁面と基礎型枠との間に、弾性材料層を配置し、 前記弾性材料層の内部に配置された有孔プレートをスペーサを介して前記基礎型枠に取り付けることによって、前記弾性材料層を前記基礎型枠に固定するように構成されていることを特徴とする改良型型枠。
【請求項2】
改良型型枠を用いた対象物の製造又は施工方法であって、
作業台上に基礎型枠を固定する段階と、
前記基礎型枠にスペーサを固定する段階と、
前記スペーサに有孔プレートを取り付ける段階と、
前記対象物の壁面が形作られるように、弾性材料層形成用型枠を配置する段階と、
前記基礎型枠と前記弾性材料層形成用型枠との間に隙間に、流動状態になった弾性材料を流し込む段階と、
前記弾性材料が硬化した後に、前記弾性材料層形成用型枠を取り外して弾性材料層を露出させる段階と、
前記弾性材料層によって構成される空間に、前記対象物の形成材料を注入する段階と、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−152868(P2007−152868A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354596(P2005−354596)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(505455473)有限会社テクノクリート (1)
【出願人】(591182961)日本仮設株式会社 (9)
【出願人】(599032350)株式会社ミナト建材 (1)
【Fターム(参考)】