改良型核酸クローニング
【課題】核酸クローニングについての改善されたシステムの提供。
【解決手段】本発明は、核酸を互いに連結するための改善された系を提供する。詳細には、本発明は、レシピエント分子に容易かつ直接連結され得る、DNA生成物分子を生成するための技術を提供する。本発明はさらに、生成物分子の方向付けられた連結(すなわち、分子のコレクション内の特定の分子の選択的連結)のための方法を提供する。本発明はまた、エキソンシャッフリングの方法を提供し、ここで複数の異なる生成物分子は、単一の連結反応において生成される。本発明のDNA操作系は、他の核酸操作系(例えば、リボザイム媒介系)に容易に組み込まれ、そしてまた自動化も可能である。
【解決手段】本発明は、核酸を互いに連結するための改善された系を提供する。詳細には、本発明は、レシピエント分子に容易かつ直接連結され得る、DNA生成物分子を生成するための技術を提供する。本発明はさらに、生成物分子の方向付けられた連結(すなわち、分子のコレクション内の特定の分子の選択的連結)のための方法を提供する。本発明はまた、エキソンシャッフリングの方法を提供し、ここで複数の異なる生成物分子は、単一の連結反応において生成される。本発明のDNA操作系は、他の核酸操作系(例えば、リボザイム媒介系)に容易に組み込まれ、そしてまた自動化も可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、同時係属中の米国仮出願番号09/225,990および同60/114,909(これらの出願の各々は、1999年1月5日に出願された)に対して、優先権を主張する。これらの出願の各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(合衆国政府の補助金)
本明細書中に記載される研究のいくつかまたはすべては、米国国立衛生研究所からの助成金番号RO1 GM 52409、および全米科学財団からの助成金番号MCB9604458によって援助された;合衆国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
分子生物学の革命は、二本鎖DNAを切断し得、その結果、DNAフラグメント(このDNAフラグメントは、互いに連結されて新規ないわゆる「組換え」DNA分子を生成し得る)が産生される、酵素の発見と共に始まった(例えば、Cohenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 70:1293、1973;Cohenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 70:3274、1973を参照のこと;米国特許第4,740,470号;同第4,468,464号;同第4,237,224号もまた参照のこと)。この革命は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の発見によって拡張された。このPCRは、特定のDNAセグメントの迅速な増幅を可能にし、続いて切断され得、そして他のDNA分子に連結され得る大量の物質を産生する(例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;5,333,675号を参照のこと)。
【0004】
しかし、これらの消化および増幅技術の能力にも関わらず、実質的な改善の余地が残っている。「制限酵素」と呼ばれる消化酵素に対する依存性は、分子生物学的実験を非常に高価にし得る。さらに、これらの酵素の多くは、効率的ではないか、または所望されない要素が夾雑し得る粗調製物においてのみ利用可能である。
【0005】
最初に、PCR増幅は、伝統的な切り貼り(cut−and−paste)クローニング法に付随する多くの困難さをそれ自体避け得るようであった。なぜなら、PCRは、最初に制限酵素で切断されることなしに、他の分子に直接連結され得るDNA分子を生成すると考えられたからである。しかし、経験によって、大部分のPCR生成物は、直接的クローニングに抵抗性であることが示されている。この観察についての1つの可能性のある説明は、多くの好熱菌のDNAポリメラーゼ(最も一般に使用される酵素であるTaqを含む)が、末端の3’−dAMP残基をそれらが増幅する生成物に付加することを示す研究から生じた。Invitrogen(Carlsbad,CA)は、最近、その3’−dAMP残基が連結される分子が単一の不対3’−dTMP残基を含むようにプロセスされる場合に、このような末端dAMPタグ化生成物を直接的にクローニングするためのシステム(TA Cloning Kit(登録商標);米国特許第5,487,993号)を開発した。Invitrogenのシステムは、非常に有用であると判明したが、単一のヌクレオチドオーバーハング(A残基)のみを有する生成物の連結に制限されることによってそれ自体は適用において限定され、そして、連結されるDNA分子の3’末端においてオーバーハングが存在しなくてはならないという点においてさらに制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
核酸クローニングについての改善されたシステムの開発の必要性が存在する。特に所望されるシステムは、制限酵素に最小の依存性を有するDNA連結を可能にし、効率的な連結を提供し、そして広範な種々の化学構造を有するDNAの連結のために一般に有用である。最適なシステムは、方向付けられた連結(すなわち、一緒に連結されるDNA分子が、互いに1つの方向でのみ結びつけられる連結)さえ提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、核酸を互いに連結するための改善されたシステムを提供する。詳細には、本発明は、レシピエント分子に容易かつ直接的に連結され得るDNA生成物分子を産生するための技術を提供する。その生成物分子は、そのような連結を受けるために制限酵素を用いて切断される必要がない。本発明の好ましい実施形態において、そのDNA生成物分子は、反復するDNA合成反応を通して生成され、その結果、生成物分子が増幅された生成物分子である。
【0008】
本発明のシステムは、3’オーバーハングを有するか、5’オーバーハングを有するか、またはオーバーハングを有さない生成物分子を生成するための技術および試薬を提供し、そしてさらに、これらの生成物分子をレシピエント分子と連結するためのツールを提供する。ここでオーバーハングが利用され、オーバーハングの長さおよび配列は、実施者の要求に従って変化され得る。オーバーハングを含有する生成物は、任意の利用可能な手段(例えば、酵素的連結または宿主細胞への形質転換を含む)によって互いに連結され得る。例えば、少なくとも12ヌクレオチドのオーバーハングを含有する分子は、互いにアニーリングされ得、そして最初に連結されることなしにE.coliへの形質転換によって互いに連結され得る(例えば、Rashtchianら、Annalytical Biochemistry 206:91、1992を参照のこと)。
【0009】
本発明のシステムはさらに、生成物分子の方向付けられた連結のための方法(すなわち、分子の収集物中の特定の分子の選択的連結のための方法)を提供し、複数の異なる生成物分子が単一の連結反応中で産生される、エキソンシャッフリングの方法もまた提供する。本発明の好ましい実施形態は、機能的なタンパク質ドメイン、特に、保存された遺伝子ファミリー中で天然に見出されるドメインをコードする生成物分子の連結を包含する。本発明の代替的なまたはさらなる好ましい実施形態は、複数成分の連結反応を包含し、ここでは3つ以上の核酸分子が互いに連結される。いくつかの実施形態において、これらの複数の分子は、単一の配置でのみ連結され;他の場合では、複数の配置が達成され得る。
【0010】
本発明のDNA操作システムは、他の核酸操作システム(例えば、リボザイム媒介システム)を用いて容易に組み込まれ得、そしてまた自動化が可能である。詳細には、1つの局面において、RNAからなる一本鎖オーバーハングを有する二本鎖DNA分子が提供される。さらに、別の局面において、核酸分子のライブラリーが提供され、ここでライブラリーの各メンバーは、1)ライブラリーのすべてのメンバーに共通である少なくとも1つの核酸部分;および2)ライブラリーの異なるメンバーにおいて異なる、少なくとも2つの核酸部分を含む、核酸分子のライブラリーもまた、本発明によって提供される。好ましい実施形態において、ライブラリーの核酸部分の各々はタンパク質コード配列をコードし、そして各ライブラリーメンバーは、連続するポリペプチドをコードする。なお別の特に好ましい実施形態において、変動する核酸部分の各々は、タンパク質の機能的ドメインをコードする。この機能的ドメインは、好ましくは、組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子ファミリー、動物の脂肪酸シンターゼ遺伝子ファミリー、ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリー、ペプチドシンテターゼ遺伝子ファミリー、およびテルペンシンターゼ遺伝子ファミリーからなる群より選択される遺伝子ファミリーにおいて天然に見出されるものである。
【0011】
本発明のなお別の局面において、ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法が提供される。上記の方法は以下の工程を包含する:1)第1の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、RNAからなる少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;2)第2の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、上記第1の二本鎖DNA分子上のRNAオーバーハングに相補的な少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;および3)上記第1の二本鎖DNA分子および上記第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される、工程。特定の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも3つの二本鎖DNA分子を提供する工程および連結する工程を包含する。
【0012】
本発明のさらなる局面は、ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法を包含し、上記方法は以下の工程を包含する:1)第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、伸長反応の間にコピーされない少なくとも1つの塩基を含み、その結果、上記伸長反応は、第1のオーバーハングを含む生成物分子を産生する、工程;2)上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および3)上記第1の二本鎖DNA分子および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程。特定の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも3つの二本鎖DNA分子を提供する工程および連結する工程を包含する。
【0013】
本発明のなおさらなる局面において、ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法が提供され、上記方法は以下の工程を包含する:1)第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、少なくとも1つの潜在的な切断点を含む、工程;2)第1の二本鎖DNA分子を、上記潜在的な切断点で切断可能なプライマーの切断を生じる条件に曝して、その結果、上記第1のオーバーハングが、上記第1のDNA分子上で生成する、工程;3)上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および4)上記第1および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程。特定の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも3つの二本鎖DNA分子を提供する工程および連結する工程を包含する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)RNAからなる一本鎖オーバーハングを有する二本鎖DNA分子。
(項目2)核酸分子のライブラリーであって、該ライブラリーの各メンバーは、
ライブラリーのすべてのメンバーに共通である少なくとも1つの核酸部分;および
ライブラリーの異なるメンバーにおいて異なる、少なくとも2つの核酸部分
を含む、核酸分子のライブラリー。
(項目3)前記ライブラリーの核酸部分の各々が、タンパク質コード配列をコードし、そして各ライブラリーメンバーは、連続するポリペプチドをコードする、項目2に記載のライブラリー。
(項目4)前記変動する核酸部分の各々が、タンパク質の機能的ドメインをコードする、項目3に記載のライブラリー。
(項目5)前記機能的ドメインが、組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子ファミリー、動物の脂肪酸シンターゼ遺伝子ファミリー、ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリー、ペプチドシンテターゼ遺伝子ファミリー、およびテルペンシンターゼ遺伝子ファミリーからなる群より選択される遺伝子ファミリーにおいて天然に見出されるものである、項目4に記載のライブラリー。
(項目6)ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法であって、該方法は以下の工程:
第1の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、RNAからなる少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;
第2の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、上記第1の二本鎖DNA分子上のRNAオーバーハングに相補的な少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;および
上記第1の二本鎖DNA分子および上記第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される、工程
を包含する、方法。
(項目7)ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法であって、該方法は以下の工程:
第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、伸長反応の間にコピーされない少なくとも1つの塩基を含み、その結果、上記伸長反応は、第1のオーバーハングを含む生成物分子を産生する、工程;
上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および
上記第1の二本鎖DNA分子および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程
を包含する、方法。
(項目8)ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法であって、該方法は以下の工程:
第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、少なくとも1つの潜在的な切断点を含む、工程;
第1の二本鎖DNA分子を、上記潜在的な切断点で切断可能なプライマーの切断を生じる条件に曝して、その結果、上記第1のオーバーハングが、上記第1のDNA分子上で生成する、工程;
上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および
上記第1および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、3’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための本発明のプロセスを示す。
【図2】図2は、テンプレート分子を、少なくとも1つのリボヌクレオチドプライマーを含む1つ以上のプライマーとハイブリダイズさせることによって、5’オーバーハングを産生するためのプロセスを示す。
【図3】図3は、1つ以上の5’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための本発明のプロセスを示す。
【図4−1】図4は、1つ(図4A)またはそれより多い(図4B)5’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための代替的な本発明のプロセスを示す。
【図4−2】図4は、1つ(図4A)またはそれより多い(図4B)5’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための代替的な本発明のプロセスを示す。
【図5】図5は、平滑末端を有する分子の連結を可能にするプロセスを示す。
【図6】図6は、組織プラスミノーゲンアクチベーター遺伝子ファミリーのメンバーを示す。
【図7】図7は、ヒトおよび動物の障害の処置のための薬物として現在使用されている特定のポリケチド化合物の一覧を示す。
【図8】図8は、エリスロマイシンおよびラパマイシンの産生の原因である細菌のポリケチドシンターゼ遺伝子の異なる機能的ドメインを示す。
【図9】図9は、エリスロマイシンおよびラパマイシンの産生の原因である細菌のポリケチドシンターゼ遺伝子の異なる機能的ドメインを示す。
【図10】図10は、特定のモジュラーポリケチドシンターゼ遺伝子のタンパク質機能的ドメインを示す。
【図11】図11は、薬剤として現在使用されているペプチドシンテターゼによって生成される生成物の一覧を示す。
【図12】図12は、特定のモジュラーペプチドシンテターゼ遺伝子のタンパク質機能的ドメインを示す。
【図13】図13は、srfAペプチドシンテターゼオペロンの構造を示す。
【図14】図14は、イソプレンビルディングブロックの重合を通してのイソプレノイドの合成を示す。
【図15】図15は、イソプレノイド、またはテルペンシンターゼによって触媒される、特定の環化および分子間結合形成を示す。
【図16】図16は、イソプレノイドシンターゼ中の天然のエキソンと機能的ドメインとの間の対応の概略図を表す。
【図17】図17は、方向付けられた連結反応の1つの一般的な例を示す。
【図18】図18は、本発明の特定の方向付けられた連結反応の模式図を示す。
【図19A】図19Aは、Flip(Genbank登録番号X64829)として公知のグルタミン酸レセプターエキソンのヌクレオチド配列を示す。
【図19B】図19Bは、Flop(Genbank登録番号X64830)として公知の利用されるグルタミン酸レセプターエキソンのヌクレオチド配列を示す。
【図20】図20は、本発明の方向付けられた連結反応において産生される増幅されたハイブリッド分子を示す。
【図21】図21は、図20のハイブリッド分子における連結接合部のヌクレオチド配列を示す。
【図22−1】図22は、ヒトβグロビン遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【図22−2】図22は、ヒトβグロビン遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【図22−3】図22は、ヒトβグロビン遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【図23】図23は、本発明の同一性エキソンシャッフリング反応を示す。
【図24】図24は、本発明の位置的エキソンシャッフリング反応を示す。
【図25】図25は、特定の本発明の方向付けられた連結技術のコンビナトリアルポテンシャルを示す。
【図26】図26は、本発明に従う、組み合わせたプライマーに基づく/リボザイム媒介核酸操作スキームの1つのバージョンを示す。
【図27】図27は、特定の本発明の方法の実施において利用され得るロボットシステムを示す。
【図28】図28は、3’オーバーハングを含む本発明の生成物分子を利用する方向付けられた連結反応の模式図を示す。
【図29】図29は、本発明の反応におけるプライマーの複製および/または連結の成功を決定するために使用され得る特定のバイオアッセイ技術の概略を示す。
【図30】図30は、リボザイムに媒介される方向付けられた連結反応を示す。
【図31】図31は、図30の反応において利用される構築物を示す。
【図32】図32は、図30の反応の生成物を示す。
【図33】図33は、図30の反応の生成物を示す。
【図34】図34は、DNAオーバーハングクローニング(「DOC」)を使用して生成される種々のキメラを示す。親の遺伝子を、1行目および2行目に示す。5つのキメラ遺伝子を、親の遺伝子の下に示す。ぎざぎざの端は、イントロン13および15の部分のみが増幅されたことを示す。キメラ遺伝子の長さ(塩基対で)が同定される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(定義)
「クローニング」−−用語「クローニング」は、本明細書中で使用される場合、事前に連結されていない核酸断片が互いに連結することを通じての新規な核酸分子の産生を意味する。このような連結によって産生される分子は、複製される前においてでさえ、本願の目的のための「クローン」と見なされる。
【0016】
「方向付けられた連結」−−用語「方向付けられた連結」とは、本明細書中で生成物分子に適用される場合、制限酵素で最初に切断されることなく、生成物分子が1つ以上のレシピエント分子に連結され得ることを意味する。好ましくは、生成物分子のプロセシングは、連結に先立って、全く必要とされない。
【0017】
「発現」−−核酸配列の「発現」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、1つ以上の(i)DNA配列からのRNAテンプレートの産生;(ii)mRNAを産生するプレmRNAのプロセシング(例えば、スプライシングおよび/または3’末端形成);および(iii)mRNAの翻訳が生じたことを意味する。
【0018】
「遺伝子」−−本発明の目的のために、用語「遺伝子」とは、その当該分野で理解されている意味を有する。しかし、当業者は、用語「遺伝子」が、当該分野で種々の意味を有し、いくつかの遺伝子は、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)および/またはイントロン配列を含み、そして他の遺伝子は、コード配列に限定されないことを理解する。当該分野の「遺伝子」の定義は、タンパク質をコードしないが、むしろ機能的RNA分子(例えば、tRNA)をコードする核酸に対する言及することもさらに理解され得る。明確にする目的のために、本発明者らは、本明細書中で使用されるように、用語「遺伝子」は、一般的に、タンパク質をコードする核酸の一部をいうことに注目する;この用語は、必要に応じて、調節配列を含み得る。この定義は、用語「遺伝子」の非タンパク質コード発現単位への適用を除外することを意図するのではないが、むしろ、大部分の場合において、この文書において使用される場合、この用語は、たまたまタンパク質コード核酸に適用されることを明らかにすることを意図する。
【0019】
「遺伝子フラグメント」−−「遺伝子フラグメント」は、この用語が本明細書中で使用される場合、完全なタンパク質コード分子よりも短いタンパク質コードDNA分子の断片を意味する。好ましくは、このフラグメントは、少なくとも約12塩基長、より好ましくは、少なくとも約15〜20塩基長であり、そして少なくとも数百から数千塩基対長であり得る。このフラグメントは、タンパク質コード配列を含む必要はないが、むしろもともとの遺伝子の非コード配列を表し得ることが理解されるべきである。
【0020】
「ハイブリッド核酸」−−「ハイブリッド核酸」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、少なくとも第1のセグメントおよび第2のセグメントを含む核酸分子を意味し、これらの各々は、天然に存在するが、天然において他と直接的に連結され、この第1および第2のセグメントが、ハイブリッド核酸において互いに直接的に連結される。
【0021】
「オーバーハング配列」−−「オーバーハング配列」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、二本鎖領域から突き出した核酸の一本鎖領域を意味する。
【0022】
「プライマー」−−用語「プライマー」とは、本明細書中で使用される場合、テンプレート核酸分子に対して伸長された能力によって特徴付けられるポリヌクレオチド分子をいい、その結果、その配列がテンプレート分子の少なくとも一部の配列と相補的であるポリヌクレオチド分子が、プライマーと連結される。好ましいプライマーは、少なくとも約15nt長である。特に好ましいプライマーは、約18〜30の範囲内の長さを有し、好ましくは約20ヌクレオチドよりも長い。
【0023】
「生成物分子」−−「生成物分子」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載されるように産生される核酸分子である。好ましくは、この生成物分子は、本発明に従うオリゴヌクレオチドプライマーの伸長によって産生される。生成物分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、二本鎖部分を含む生成物分子はまた、一本鎖の3’オーバーハングまたは5’オーバーハングを含む。他の好ましい実施形態において、生成物分子は平滑末端を有する。生成物分子が、反復するDNA合成反応において産生される場合(例えば、PCR反応)、これは、「増幅生成物」といわれる。
【0024】
「レシピエント分子」−−「レシピエント分子」は、この用語が本明細書中で使用される場合、生成物分子が連結される核酸分子である。レシピエント分子は、ベクターであり得るが、ベクターであることが必須であるわけではない。一般的に、レシピエント分子は、実施者によって選択される任意の分子であり得る。
【0025】
「ベクター」−−「ベクター」は、この用語が本明細書中で使用される場合、分子のインビボまたはインビトロ複製を方向付けるに十分な配列を含む核酸分子である。ベクターがインビボ複製配列を含む場合、これらの配列は、自己複製配列、または細胞内にすでに存在する別の核酸へのベクターの組込みを方向付けるに十分な配列であり得、その結果、ベクター配列は、すでに存在する核酸の複製の間に複製される。このようなすでに存在する核酸は、細胞に対して内因性であり得るか、または実験的操作を通して細胞に導入され得た。好ましいベクターは、外来性核酸分子(好ましくは、本発明の生成物分子)がベクターに導入および連結され得るクローニング部位を含む。特に好ましいベクターは、ベクターに導入された核酸配列のインビボ発現またはインビトロ発現を方向付けるそれらの能力について選択される制御配列をさらに含む。このような制御配列には、例えば、転写制御配列(例えば、1つ以上のプロモーター、調節結合部位、エンハンサー、ターミネーターなど)、スプライシング制御配列(例えば、1つ以上のスプライシングドナー部位、スプライシングアクセプター部位、スプライシングエンハンサーなど)、および翻訳制御配列(例えば、シャイン ダルガルノ配列、開始コドン、終止コドンなど)を含み得る。ベクターはまた、いくつかのコード配列を含み得、その結果、ベクターに導入された配列の転写および翻訳は、融合タンパク質の産生を生じる。
(特定の好ましい実施形態の説明)
(3’オーバーハングを有する生成物分子)
1つの局面において、本発明は、レシピエント分子に直接連結され得る3’オーバーハングを有する生成物分子を生成するための試薬および方法を提供する。3’オーバーハングの長さおよび配列は、使用者によって決定され得る。
【0026】
図1は、本発明のこの局面の1つの実施形態を示す。この図において示されるように、テンプレート核酸分子の標的領域に隣接する第1のプライマーおよび第2のプライマーが提供される。少なくともプライマーの1つは、その5’末端に1つ以上のリボヌクレオチドを含む。詳細には、プライマー1がxヌクレオチド長であり、プライマー2がyヌクレオチド長であるならば、n1=0〜xの全体数(0を含む)であり、そしてn2=0〜yの全体数(0を含む)である。但し、(i)n1およびn2は、両方とも0ではあり得ないこと;および、伸長反応において使用されるDNAポリメラーゼがRNAプライマーを伸長し得る場合、(ii)n1は単にxであり得ること(またはn2は単にyであり得ること)を除外する。DNAポリメラーゼの広範な種々の特徴(例えば、RNAが単独で、またはハイブリッドRNA/DNA分子の一部として示されるか否かに関わらず、RNAプライマーを伸長する能力、RNAをDNAにコピーする能力)は、当該分野で周知である(例えば、製造業者のカタログ、Myersら、Biochem.6:7661、1991を参照のこと)。そしてこのような特徴が特定のDNAポリメラーゼについて公知でない場合、慣用的なアッセイは、これらを決定するために利用可能である(例えば、Bebenekら、Met.Enzymol.262:217、1995を参照のこと;実施例3もまた参照のこと)。
【0027】
本発明の特定の好ましい実施形態において、プライマー1および2の各々は、少なくとも1つの5’末端リボヌクレオチド残基を含む。他の好ましい実施形態において、少なくとも1つのプライマーは、少なくとも2つのリボヌクレオチド残基を含み、これらのうちの1つは、5’末端残基である。このプライマーは、少なくとも3、4、5、6〜10、またはそれよりも多くのリボヌクレオチド残基を含み得、そしてさらに、上記のように、完全にRNAであり得る。好ましくは、このリボヌクレオチド残基は、互いに連続している。
【0028】
プライマー1およびプライマー2の各々のヌクレオチド配列は、実施者により選択され、そして標的核酸の配列と十分に相補的である必要はない。当該分野において公知のように、完全な相補性は、首尾のよいDNA合成には必要とされないが、一般に、プライマーの少なくとも3’末端ヌクレオチドがテンプレートと完全に対合することが所望される。しかし、プライマーの5’端は、対合することが全く必要とされず、そしてさらなる配列をこのプライマー中に含めることによって、標的配列にさらなる配列を付加することが当該分野において一般的である。当然、テンプレートとハイブリダイズしない伸長可能な3’末端の5’の部分を、プライマーに含め、そしてまた、このテンプレートとハイブリダイズするなおさらなる5’部分を含めることもまた受け入れられ得る。本発明の目的のために、プライマー配列における任意のこのようなバリエーション、または任意の他の利用可能なバリエーションは、(i)少なくとも1つのプライマーがこのプライマーの5’端に存在するかまたは、このプライマーから除去されている際には、このプライマーの新しい5’端を作製するか(例えば、アルカリ処理、好ましくは続いて、キナーゼ処理によって)のいずれかであるリボヌクレオチドを含み;および(ii)各プライマーが、生成物分子が生成される反応条件下で十分満足にかつ十分特異的にハイブリダイズする限り、受け入れられ得る。
【0029】
プライマー設計の他の考慮は、当該分野において周知であり(例えば、Newtonら(編)、PCR:Essential Data Series,John Wiley&Sons,New York,New York,1995;Dieffenbach(編),PCR Primer:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1995;Whiteら(編),PCR Protocols:Current Methods and Applications;Methods in Molecular Biology,The Human Press,Totowa,NJ,1993;Innisら、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,San Diego,CA,1990;Griffinら(編),PCR Technology,Current Innovations,CRC Press,Boca Raton,FL 1994を参照のこと(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される))。例えば、ハイブリダイズしている残基のおよそ50%がGまたはCであることが、しばしば、所望され;そして最適な伸長のために、3’末端残基もまたGまたはCであることが所望され得る。
【0030】
プライマーの5’末端残基として(または除去が新しい5’末端プライマー残基を作製する残基として)少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む、図1に示されるようなプライマーは、当該分野において利用可能な任意の技術によって調製され得る。例えば、このようなプライマーが、化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチド試薬を供給する会社(例えば、Oligos,Etc.,Inc.Bethel,ME)は、代表的に、実施者により好まれるように、ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチド、またはRNAのみのヌクレオチドを調製する。あるいは、RNA配列は、標準的な技術(例えば、Mooreら、Science 256:992,1992;Smith(編),RNA:Protein Interactions,A Practical Approach,Oxford University Press,1998(これらは、特に、RNA連結による部位特異的な改変を含むRNA分子の構築を議論している;これらの参考文献の各々は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)を使用してDNA配列に連結され得る。
【0031】
図1に示されるにように、伸長反応は、DNA合成が第1および第2のプライマーの各々からプライムされるように行われ、そして少なくとも一方の鎖の5’端に少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を有する二本鎖DNA/RNAハイブリッド分子が、作製される。本質的ではないが好ましくは、伸長反応に利用されるDNAポリメラーゼは、外来の3’ヌクレオチドを付加しないものである。また、上記のように、このプライマーの一方または両方が、その3’残基としてリボヌクレオチドを有する場合、伸長工程に利用されるDNAポリメラーゼは、リボヌクレオチドプライマーから伸長し得るものでなければならない。
【0032】
図1は、次いで、ハイブリッド分子がリボヌクレオチド残基を除去する処理に曝されることを示す。図1に示されるように、この処理は、上昇したpH(例えば、水酸化ナトリウム[NaOH]のような塩基での処理)に曝される。あるいは、DNA残基を妨げることなくRNA残基を除去する任意の他の処理(例えば、RNaseに曝すことなど)は、この工程に用いられ得る。
【0033】
リボヌクレオチド残基がハイブリッド分子から除去される場合、得られる分子は、二本鎖部分および少なくとも一方のその端に一本鎖3’オーバーハングを残す。図1は、両端に一本鎖3’オーバーハングを有する生成物分子を示す。このオーバーハングの配列および長さは、このプライマーの5’端に存在するRNAの配列および長さによって決定された。明らかに、オーバーハングの任意の配列および長さは、選択され得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、オーバーハングの配列および長さは、市販の制限酵素による二本鎖DNAの切断によって生成されるものに対応し、その結果、この生成物分子は、その酵素で切断されているレシピエント分子に連結され得る。3’オーバーハングを残す種々の酵素が、当該分野において公知であり、AatII、AlwnI、NsiI、SphIなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
他の好ましい実施形態において、3’オーバーハングの配列および長さは、別の本発明の生成物分子において作製される3’オーバーハングを有する塩基対に対して選択され、その結果、この2つの分子は、共に容易に連結され得る(例えば、実施例1を参照のこと)。
【0035】
さらに、生成物分子の2つの端での3’オーバーハングは、同じ配列または長さを有することを必要としないことが理解される(例えば、実施例1を参照のこと)。1つのみの配向においてレシピエント分子に連結され得るか、または特定の配置において2つの異なるレシピエント核酸分子(例えば、3様式の連結)に連結され得る、核酸分子を作製することが、しばしば所望される。従って、本発明の生成物分子の3’オーバーハングの配列および長さを操作し得ることが非常に価値がある。
【0036】
図1を参照して理解され得るように、リボヌクレオチド除去処理により残される端の性質は、その後の連結反応における生成物分子の挙動に影響し得る。特に、リボヌクレオチドのアルカリ加水分解は、5’−リン酸基ではなく5’−OH基を残す。当該分野において公知であるように、少なくとも1つの末端リン酸基は、代表的には、核酸分子の首尾のよい連結に必要とされる。従って、図1に示される生成物分子が適切な末端リン酸基を欠くレシピエント分子に連結されるべきである場合(例えば、ホスファターゼでの処理に曝されるために)、連結の前に、レシピエント分子に5’リン酸基を付加することが所望される。任意の利用可能な技術が、このようなリン酸基付加を達成するために利用され得;最も一般的には、リン酸基は、ポリヌクレオチドキナーゼでの処理によって付加される。
【0037】
図1に示される生成物分子は、任意の所望のレシピエント分子に連結され得る。好ましくは、レシピエント分子は、生成物分子における少なくとも1つの3’オーバーハングの少なくとも一部に相補的である、少なくとも1つの3’オーバーハングを有する。このレシピエント分子は、3’末端部分が生成物分子の3’オーバーハングの3’末端部分に相補的であるが生成物分子3’オーバーハングに相補的でない3’オーバーハングを有する場合、1以上のギャップがハイブリダイゼーション後に存在し、このギャップが、連結前にDNAポリメラーゼで埋められ得ることが理解される。生成物分子の3’オーバーハングの配列および長さは、実施者により選択されるので、このアプローチは、完全な3’オーバーハングハイブリダイゼーションが生じた場合に存在しない組換え分子に配列を付加するために用いられ得る。本発明の目的のために、生成物分子およびレシピエント分子の相補性3’末端部分は、少なくとも1ヌクレオチドの長さであるべきであり、そして2個、3個、4個、5個、6個〜10個のヌクレオチドの長さ、またはそれを超える長さであり得る。特定の好ましい実施形態において、相補性3’末端部分は、約6個未満のヌクレオチドの長さであり、その結果、連結(通常、4℃または14℃で行われる)の効率が保存され、そしてより長い配列のアニーリングと関連する問題が、回避される。
【0038】
好ましいレシピエント分子としては、線状ベクターが挙げられるがこれに限定されない。このようなベクターは、例えば、生成物分子に存在するオーバーハングに相補的な3’オーバーハングを生成する制限酵素での消化によって線状化され得る。あるいは、このような線状ベクターは、実施者により、他の生成物分子に存在する3’オーバーハングと適合するように選択される1以上の3’オーバーハングを含む、本明細書中に記載されるような生成物分子として調製され得る。
【0039】
当業者は、生成物分子が本発明に従って容易に作製され得、その結果、所定の生成物分子の各端が異なる3’オーバーハングを有することを理解する。このような分子は、指向性クローニング実験において使用され得、ここでそれらは、単一の配向においてのみ、1以上の他の分子に連結され得る。このような指向性連結ストラテジーは、3以上の分子が互いに連結されることが所望される場合に特に有用である。このような多成分連結反応において、個々の分子による自己連結の可能性を最小化し、そしてまた、分子が不適切な配向にある1以上の分子と一緒に連結する機会を低減することは、しばしば有用である。
【0040】
(5’オーバーハングを有する生成物分子)
図2〜4は、5’オーバーハングを有する生成物分子を生成するための本発明のストラテジーを示す。例えば、図2に示されるように、テンプレート分子は、少なくとも1つのリボヌクレオチドを含む1以上のプライマーとハイブリダイズされ得る。本発明のこの実施形態に関して、リボヌクレオチドがこのオリゴヌクレオチドの5’末端に位置されることは必要とされないが、これは受け入れられ得る。プライマーは、2、3、4、5、6〜10またはそれよりも多くのリボヌクレオチドを含み得、そして伸長反応に利用されるDNAポリメラーゼがリボヌクレオチドプライマーを伸長する場合には、全体的にリボヌクレオチドであり得る。すなわち、図2において、n1およびn2の少なくとも1つは、1以上の全ての数であり、そしてn3およびn4は、各々、0以上の全ての数である。図3に示される特定の本発明の実施形態は、2つのプライマーを利用する。当業者は、各プライマーが伸長を可能にするに十分満足にテンプレート分子とハイブリダイズする、プライマーの3’残基で終結する部分を含むことを理解する。しかし、このプライマーの残部の配列は、テンプレート分子の配列と相補的である必要がない。さらに、当業者はまた、用いられているDNAポリメラーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を含む場合、エキソヌクレアーゼ活性が伸長が生じ得るプライマー中の位置に戻って破壊することを可能にする限り、プライマーにおいて最も3’の残基がテンプレートとハイブリダイズすることがさらに必須ではないことを理解する。
【0041】
プライマーとのハイブリダイゼーション後に、伸長反応は、リボヌクレオチドをコピーしないDNAポリメラーゼを用いて行われる。例えば、本発明者らは、VentR(登録商標)およびVentR(登録商標)(エキソ(exo)-)がテンプレートとしてリボヌクレオチド塩基を使用しないことを見出した(実施例1を参照のこと);対照的に、TthおよびTaqポリメラーゼは、もちろん、逆転写酵素と同様に、リボヌクレオチドを複製し得ることが報告されている(Myersら、Biochem.6:7661、1991)。他のDNAポリメラーゼは、標準的技術、または例えば、実施例3に記載されるような技術に従ってリボヌクレオチドをコピーするそれらの能力について試験され得る。
【0042】
図2に示される伸長反応は、所望される場合、増幅反応として繰り返され得る。図2に示される実施形態は、生成物が2つの5’オーバーハングを有する二本鎖分子(これらの各々は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む)であるこのような増幅を示す。当業者は、各5’オーバーハングの配列および長さ(ならびにリボヌクレオチド組成)が、実施者により選択されること、ならびに示される2つの生成物分子のオーバーハングが同じでも異なっていてもよいことを理解する。
【0043】
次いで、この生成物分子は、生成物分子の少なくとも5’末端残基に相補的である5’オーバーハングを含む1以上のレシピエント分子とハイブリダイズされ得る。ギャップがハイブリダイゼーション後に残っている場合、それらは、公知の技術に従ってDNAポリメラーゼにより埋められ得る。ギャップがリボヌクレオチド残基を含む場合、このギャップが埋められることを保障するために、RNAをコピーするDNAポリメラーゼを用いることが好ましくあり得る。上記のように、このようなDNAポリメラーゼとしては、例えば、Tth、Taq、および逆転写酵素が挙げられる。他のDNAポリメラーゼは、公知の技術、または例えば、実施例3に記載される技術に従って、RNAをコピーするそれらの能力について試験され得る。
【0044】
一旦、任意のギャップが埋められると、この生成物分子およびレシピエント分子は、一緒に連結され得る。DNAリガーゼは、(i)隣接するデオキシリボヌクレオチドの間;(ii)デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドとの間;または(iii)隣接するリボヌクレオチドの間のニック(nick)を閉じることが公知である。従って、DNA残基およびRNA残基の両方を含むハイブリッド分子が、生成され得る。この分子は、標準的な技術に従ってインビトロでか、またはこのような分子をコピーし得る宿主細胞中への導入後にインビボでかのいずれかで、DNAへとコピーされ得る(例えば、Escherichia coliは、デオキシリボヌクレオチドと塩基対合するリボヌクレオチドを除去し、そして置換し得ることが報告されている−−Sancar、Science
266:1954、1994を参照のこと)。あるいは、連結の実行ではなく、ハイブリダイズした化合物をDNAに複製することが所望され得る(例えば、DNAプライマーを用いるPCRによってか、またはリボヌクレオチドをコピーし得るDNAポリメラーゼを用いるPCRによって)。また、いくつかの場合、例えば、酵母細胞の同時形質転換について当該分野において公知であるように、連結が、インビトロではなくインビボで達成され得ることが言及されるべきである。
【0045】
図2に示されるように、生成物分子は、単一のレシピエント分子のみで、および1つの端にて連結される。当業者は、生成物分子が代わりに単一のレシピエント分子にか、または2つの異なるレシピエント分子にかのいずれかで、その端の両方に連結され得ることを理解する。
【0046】
図3は、1以上の5’オーバーハングを有する生成物分子を作製する代替アプローチを示す。この実施形態において、リボヌクレオチドプライマー残基およびRNAをコピーし得ないDNAポリメラーゼを用いる代わりに、本発明者らは、プライマーにおける改変塩基を利用する。この改変塩基は、DNAポリメラーゼによってコピーされない。広範な種々の改変塩基が当該分野において公知である(例えば、米国特許第5,660,985号を参照のこと;またはOligos,Etc.[Bethel,ME]により提供されるカタログのような種々のカタログもまた参照のこと);特定のDNAポリメラーゼによりコピーされないものは、例えば、製造業者のカタログを参照することによって、既知の技術に従う慣用的なスクリーニングによって、または例えば、実施例3に記載されるように、同定され得る。
【0047】
改変塩基は、標準的な技術(例えば、Sancar、Science 266:1954,1994)に従って、改変塩基をコピーするDNAポリメラーゼを用いるインビトロまたはインビボでのDNA複製によってか、あるいは塩基の除去、続いてギャップの修復によってかのいずれかで、レシピエント分子へのその連結の前または後に、生成物分子から除去され得る。
【0048】
図4は、少なくとも1つの5’オーバーハングを有する生成物分子を作製するための本発明の実施形態を示す。図4に示される特定の実施形態において、本発明のストラテジーは、1個(図4A)または2個(図4B)の3’オーバーハングを含む出発分子に適用され、その結果、この出発分子は、3’オーバーハング含有化合物から5’オーバーハング含有分子に変換される。しかし、当業者は、同じアプローチが平滑末端であるか、または1個または2個の3’または5’オーバーハングを含むかのいずれかである出発分子に、1個または2個の5’オーバーハングを付加するために十分同様に適用され得ることを理解する。
【0049】
図4に示される出発物質は、任意の利用可能な手段によって得られ得る。この分子は、1個または2個の3’オーバーハングを有し得(R1およびR2の少なくとも1つが、少なくとも1個のヌクレオチドの長さであることを意味する)、そして例えば、前駆体フラグメントの制限エンドヌクレアーゼ切断によってか、ポリメラーゼ連鎖増幅によってか、または任意の他の手段によって、生成され得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、出発分子は、PCRにより生成され、そして上記のように、各端に、1個の3’dATPを含む。図4Aは、1個のみの3’オーバーハングを有する出発分子への本発明の方法の適用を示す;図4Bは、2個の3’オーバーハングを有する出発分子への本発明の方法の適用を示す。
【0050】
図4Aを参照すると、出発物質は、出発分子の3’オーバーハング残基に実質的に隣接する出発分子中の第1配列とハイブリダイズする第1部分、出発分子の3’オーバーハングの少なくとも1つの残基と整列しかつハイブリダイズし得ない第2部分、および出発分子と整列しないが、出発分子の3’オーバーハングの最後の残基を通り越して(プライマーにおける5’)伸長する第3部分を含む少なくとも1つのプライマーとハイブリダイズされる。
【0051】
プライマーの第1部分の長さおよび配列は、出発分子の3’オーバーハングに隣接する出発分子の配列によって決定される。プライマーの第1部分によるハイブリダイゼーションは、3’オーバーハングの少なくとも1つの残基がプライマーの第2部分と整列しかつハイブリダイズし得ない限り、3’オーバーハングへと伸長し得る。プライマーの第2部分の長さおよび配列は、第2部分が3’オーバーハングの少なくとも1つの残基と、好ましくは(しかし、本質的ではなく)少なくとも3’末端残基とハイブリダイズし得ないという点で、出発分子の3’オーバーハングの長さおよび配列によって、ある程度まで決定される。このようなハイブリダイゼーションが回避される限り、プライマーのこの第2部分の正確な配列が、実施者により選択され得る。プライマーの第3部分の長さ(すなわち、図4Aにおけるnの値、これは、1以上の全ての数である)および配列(すなわち、図4AにおけるNの同一性)もまた、実施者により決定される。この第3部分は、生成物分子において5’オーバーハングとなる。
【0052】
図4Aに示されるように、本発明のプライマーからの1回または複数回の伸長が、行われる。第2プライマーの非存在(ならびにプライマーと出発分子の3’オーバーハングとの間のミスマッチ、これは出発分子のその鎖の3’端の伸長を妨害する)に起因して、ただの線形的であり、そして指数関数的ではない伸長が達成されることが、当業者によって理解される。もちろん、この伸長反応に用いられるDNAポリメラーゼが、1以上の末端3’残基を付加するDNAポリメラーゼである場合、この生成物分子は、3’オーバーハングおよび5’オーバーハングを有し得る。
【0053】
一旦、5’オーバーハングを有する生成物分子が生成されると、これは5’オーバーハングもまた含む、任意のレシピエント分子(この少なくとも一部が生成物分子の5’オーバーハングの一部に相補的である)とハイブリダイズされ得る。このハイブリダイズした化合物は、各鎖上にニック(または、生成物分子およびレシピエント分子の5’オーバーハングが長さにおいて完全には一致していない場合、ギャップをさらに含み得る)、および生成物分子の5’オーバーハングの直前に少なくとも1つのミスマッチを含む。次いで、このハイブリダイズした化合物は、ミスマッチ塩基(これは、プライマーの第2部分とハイブリダイズしない出発分子の3’オーバーハングの部分に対応する)を除去するために、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性に曝される。次いで、消化した化合物は、エキソヌクレアーゼ消化により作製されたギャップを埋めて、そして続いて任意の残っているニックを修復するように連結するために、DNAポリメラーゼに曝される。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素は、当該分野において周知であり(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Pfu、VentR(登録商標)、Deep VentR(登録商標)などを含む);他の酵素は、標準的な技術に従ってそれらの能力について試験され得る。
【0054】
当業者は、図4Aに示される方法が3’オーバーハングの位置に依存して出発分子のいずれかの鎖に適用され得ることを理解する。図4Bに示されるように、この方法は、同時に両方の鎖にさらに適用され得るが、各鎖について一回の伸張反応のみを実行するかまたは独立した伸長反応を実行することは、このような実施形態にとって重要である。増幅(すなわち、複数回の変性および伸長)は、実行されない。なぜなら、このような増幅は、5’オーバーハングおよびこの5’オーバーハングのすぐ3’にミスマッチを有する分子ではなく、プライマーによって運命付けられる配列を有する平滑末端分子(または、3’ヌクレオチドを付加するDNAポリメラーゼが用いられる場合には、3’オーバーハングを有するもの)の生成を生じるからである。
【0055】
図4Bに示されるように、2つの3’オーバーハングを有する出発分子は、本発明の方法を適用することによって、2つの5’オーバーハングを含む生成物分子へと変換される。この出発分子は、図4Aの考察において上記されるような第1部分、第2部分および第3部分を含む、2個の本発明のプライマーとハイブリダイズされる。次いで、各プライマーは、一回の(または独立した)伸長反応において伸長される。両方の伸長反応が、同時にまたは同じ厳密な出発分子において実行されることが必要とされないことは、当業者によって理解される。各プライマーの伸長は、異なる反応ベジクル(vessicle)においてさらに実行され得る。
【0056】
伸長反応において生成される二本鎖分子の各々は、配列および長さが第3部分のものに対応する、単一の5’オーバーハングを有する。次いで、これらの二本鎖分子の鎖は、互いに分離される。個々の鎖は、所望される場合に別々に精製され得るが、これは、必要とされない。次いで、鎖は、(それらが、一緒ではない場合)一緒に混合され、そしてアニーリングされ、その結果、プライマーの伸長により合成された2個の新しい鎖は、互いにアニーリングする機会を有する。このアニーリング反応の生成物は、2個の5’オーバーハングを有する本発明の生成物分子である。理解されるように、これらのオーバーハングは、長さおよび/または配列が同じでも異なっていてもよい。
【0057】
この生成物分子は、1以上のレシピエント分子とハイブリダイズされ得、このレシピエト分子の各々は、5’末端部分(少なくとも1個のヌクレオチドの長さ)が生成物分子の5’オーバーハングの(同じ長さの)5’末端部分と相補的である5’オーバーハングを有する。ハイブリダイゼーション後に残っている任意のギャップが、DNAポリメラーゼで埋められ得;次いで、生成物分子およびレシピエト分子が、一緒に連結され得る。
【0058】
(平滑末端生成物分子)
図5は、平滑末端分子の連結を可能にする本発明の実施形態を示す。示されるように、一緒に連結されるべき平滑末端出発分子が、提供される。このような分子は、例えば、1以上の制限酵素での前駆体の消化(必要に応じて、続いて、任意のオーバーハング端を埋めることまたは戻って破壊すること)、PCR(例えば、外来3’ヌクレオチドを付加しないDNAポリメラーゼの使用――参照は、特定のDNAポリメラーゼの特徴を決定するために製造業者のカタログに対してなされ得る。例えば、VentR(登録商標)は、95%よりも多く平滑末端を生じることが報告されており;VentR(登録商標)(エキソ(exo)-)は、任意のヌクレオチドのうち、約70%の平滑末端および30%の1個のヌクレオチドの3’オーバーハングを生じることが報告されている;Pfuは、平滑末端分子のみを生じることが報告されている)、化学合成などを含む、任意の利用可能な技術によって調製され得る。出発分子は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。図5に示されるように、この出発分子は、二本鎖である。
【0059】
出発分子は、一緒に連結されるべき2つの異なる出発分子の少なくとも1つの末端残基に各々がハイブリダイズする架橋分子にハイブリダイズされる。明確には、出発分子が2本鎖である場合、これらは架橋分子に曝露される前に、架橋分子との首尾よいハイブリダイズか生じ得るように変性されるべきである。架橋分子は、各出発分子の1つより多くの残基にハイブリダイズし得、そして/または2つの出発分子にハイブリダイズする部分の間に、ハイブリダイズしない部分を含み得る。架橋分子はまた、ハイブリダイズ後にそれらが互いに隣接するに十分な長さを有し得るか、または、ギャップが、個々の架橋分子の間でハイブリダイズした化合物に存在するに十分な短さであり得る。好ましくは、少なくとも1つのプライマーが、ハイブリダイズされた化合物の最も3’で出発する分子の3’末端にハイブリダイズする。このプライマーは、所望する場合、5’オーバーハングが生じるように末端を過ぎて伸長され得る。そのようなオーバーハングは、図5に示されない。
【0060】
次いで、ハイブリダイズした化合物が、利用可能な技術の任意の集合によって2本鎖DNA分子に変換される。例えば、ギャップは、DNAポリメラーゼを用いて充填され得、そして任意の残存するニックが、DNAリガーゼを用いて閉じられる。または、一方の鎖にギャップが存在しない場合、その鎖は、最初に連結され得、そしてインビトロまたはインビボにおいて、他方の鎖におけるギャップを閉じるためか、もしくは置換鎖を合成するために、DNAポリメラーゼが続いて適用される(例えば、出発分子に対して最も3’位置にハイブリダイズした架橋分子からプライムされる)。本発明の1つの好ましい実施形態において、ギャップは充填され、そしてニックが閉じられ、次いで組換え分子の全体が、PCR増幅によって複製される。所望される場合、1つ以上の3’末端残基を添加するDNAポリメラーゼが利用され得、その結果、生じた増幅生成物は、1つ以上の3’オーバーハングを有する可能性が高い。上記のように、そのような生成物は、Invitrogen TA Cloning Kit(登録商標)システムの使用において生じるように、相補的3’オーバーハングで別の分子に容易に連結され得る。
【0061】
(適用)
上記に提供された生成物分子および連結ストラテジーは、種々の任意の状況において有用である。制限のためではなく明確化のみの目的で、本発明者らは、本明細書でより詳細に、これらの状況のいくつかを議論する。
【0062】
上記のように、本発明は、他の分子に直接連結され得る(すなわち、最初に制限酵素を用いて消化されることを伴わない)核酸分子を提供するための技術および試薬を生み出した。本発明はまた、そのような連結を達成するための技術を提供する。本発明は、任意の配列の核酸分子を互いに連結するために使用され得、従って、遺伝子クローニングの分野において最も広く潜在的な適用を有する。
【0063】
本発明の技術および試薬が、DNA分子の特定の配列、それらのタンパク質をコードする能力、または任意の他の特徴に関わらず、任意のDNA分子を他の任意のDNA分子に連結するために利用され得ることを、当業者は理解する。この特徴は、例えば、別のフラグメントにおいて所望されない切断を生成する特定の酵素で1つのフラグメントの切断を避けることか、または使用されるタンパク質酵素の挙動を適応させるために他の調整がなされることが所望され得る場合に、連結されている分子の正確な配列がしばしばクローニングストラテジーの設計に影響を与え得る従来の制限エンドヌクレアーゼ依存のクローニング系から、本発明の系を区別する。
【0064】
(タンパク質をコードする遺伝子の生成)
本発明の特定の好ましい実施形態において、本発明の連結反応に含まれる1つ以上のDNA分子は、オープンリーディングフレーム(すなわち、タンパク質をコードする配列)を含む。特に好ましい実施形態において、一緒に連結される少なくとも2つのDNA分子は、オープンリーディングフレーム配列を含み、そしてそれらの連結は、単一ポリペプチドがコードされるように一緒に連結された両方のオープンリーディングフレームを含む、ハイブリッドDNAを生成する。本発明に従って、2つ以上のDNA分子の連結が、少なくとも1つの連結接合点にわたる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを生成する場合、連結が、ハイブリッドタンパク質をコードする新規の遺伝子を生成したとみなされる。
【0065】
しかし、タンパク質をコードする遺伝子を生成するために使用される本発明の系の1つの実施形態において、互いに連結されるDNA分子は、既知の生物学的活性の1つ以上の個別の機能的ドメインをコードするように選択され、その結果、2つ以上のそのようなDNA分子の連結は、二機能的ポリペプチドまたは多機能的ポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子を生成する。多くのタンパク質が個別の機能的ドメインを有することは、当該分野で周知である(例えば、Traut,Mol.Cell.Biochem.70:3、1986;Goら、Adv.Biophys.19:91、1985を参照のこと)。そのようなドメインが、しばしば互いに分離され、そして各個々の機能的ドメインの活性が保存される様式で他の個別の機能的ドメインと連結され得ることもまた、周知である。
【0066】
機能的タンパク質ドメインをコードする正確なDNA配列の選択において、幾分かの可撓性が許容されることを、当業者は理解する。例えば、DNA配列を、天然に存在するタンパク質の機能的ドメインに含まれる正確なアミノ酸残基をコードするDNA配列のみに制限することは、しばしば望ましくない。さらなるDNA配列が、例えば、特定の選択された機能的ドメインとそれが連結される任意の他の機能的ドメイン間の可撓性を提供し得るリンカー配列をコードするDNA配列が含まれ得る。
【0067】
あるいはまたはさらに、いくつかの状況において、研究者らによって、特定の機能的ドメインを含む全てよりも少ないアミノ酸配列をコードするDNA配列を選択することが有用であることが見出されている(例えば、WO98/01546を参照のこと);そのような場合において、他のアミノ酸が、引き続く連結の結果として添加し戻され得る(すなわち、隣接して連結されたDNA分子によってコードされ得る)か、または完全に除外され得る。当業者は、目的とするタンパク質ドメインを記載する文献を適切なように参照した後に、彼らの特定の実験的問題にこれらの基本原理を適用させることに容易に彼ら自身を精通させ得る。
【0068】
本発明に従って連結される個々のDNA分子またはDNA分子の組み合わせによってコードされ得る機能的タンパク質ドメインの型のほんのわずかの例を与えると、周知のモジュラー(modular)ドメインとしては、例えば、DNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガー、ホメオドメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフなど)、ATPまたはGTP結合ドメイン、膜貫通スパンニングドメイン(transmembrane spanning domain)、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン(例えば、ロイシンジッパー、TPR反復、WD反復、STYXドメイン(例えば、Wishartら、Trends Biochem.Sci.23:301、1998を参照のこと)など)、Gタンパク質ドメイン、チロシンキナーゼドメイン(例えば、Shokat、Chem.Biol.2:509、1995を参照のこと)、SRC相同性ドメイン(例えば、Sudol、Oncogene 17:1469、1998を参照のこと)、SH2ドメイン(例えば、Schaffhausen、Biochim.Biophys.Acta 28:61、1995を参照のこと)、PTBドメイン(例えば、van der Greerら、Trends Biochem Sci 20:277、2995を参照のこと)、PHドメイン(例えば、Musacchioら、Trends Biochem Scie 18:343、1993を参照のこと)、特定の触媒ドメイン、細胞表面レセプタードメイン(例えば、Campbellら、Immunol.Rev.163:11、1998を参照のこと)、炭水化物認識ドメイン(例えば、Kishoreら、Matrix Biol.15:583、1997を参照のこと)、免疫グロブリンドメイン(例えば、Rapley、Mol.Biotechnol.3:139、1995を参照のこと)などが挙げられる(Hegyiら、J.Protein.Chem.16:545、1997;Baronら、Trends Biochem.Sci.16:13、1997もまた参照のこと)。
【0069】
代表的には、そのようなドメインは、公知の生物学的活性のタンパク質内の配列相同性の領域を同定する(少なくとも、相同性を示すタンパク質の部分に関して)、相同性比較によって同定される。任意の特定の機能的ドメインの空間的な干渉は、しばしばX線結晶学、NMRなどのような構造的研究によって確認される。
【0070】
本発明に従って、タンパク質の有用な「機能的ドメイン」は、たとえその部分が、その活性を維持するためにより大きなポリペプチド分子内に包埋され続けなければならないとしても、その部分が残りのタンパク質から分離された場合に保存されている既知の生物学的活性を有するタンパク質の任意の部分である。関連する生物学的活性は、ドメインが天然に見出される特定のタンパク質の完全な生物学的活性を構成する必要はなく、そして代表的にはそうではないが、通常、その活性の一部分のみを示す(例えば、特に他の分子に結合する能力を示すが、結合分子を切断または修飾するさらなる活性は含まない)。上記のように、多くのそのようなドメインは、すでに文献に記載されている;他のものは、相同性検索、好ましくは生物学的活性に関与する配列を明確にするための当該分野で公知のような変異研究と組み合わせて同定され得る。
【0071】
本発明は、今や実質的に普遍的に認知された、進化の間の新規遺伝子の生成が、しばしば、2つ以上のすでに存在する機能的タンパク質ドメインをコードするDNA配列の新規な組合せに関与していたという認識を含む(例えば、Gilbertら、Proc Natl Acad Sci USA、94:7698、1997;Streletsら、Biosystems、36:37、1995を参照のこと)。実際に、タンパク質「ファミリー」は、しばしば、たとえ異なるファミリーのメンバーによって果たされる生物学的役割の全体が、全く関連し得ないとしても、特定の機能的ドメインをそれらが共通して使用することによって規定される(そのようなファミリーのさらなる議論は、以下のエキソンシャッフリングを議論する節を参照のこと)。従って、本発明は、実験室において進化的なプロセスを模倣するために使用され得る技術および試薬を提供する。本発明の系の普遍性および実験室的な単純さは、所望の順序で互いに連結する特定のDNAモジュールを選択し得る研究者らに、目的の新規な結果を生成するために確率的なプロセスを待機しなければならない母なる自然を超える有意な利点を提供する。
【0072】
従って、本発明に従って利用される好ましいタンパク質の機能的ドメインとしては、遺伝子ファミリー(すなわち、タンパク質ファミリーの異なるメンバーをコードする遺伝子の集合体)を生成するための進化を通じて再利用された機能的ドメインが挙げられる。特定のタンパク質ドメインの再利用によって作製される例示的な遺伝子ファミリーとしては、以下が挙げられる:例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子ファミリー(例えば、図6を参照のこと);電位作動型(voltage−gated)ナトリウムチャネルのファミリー(例えば、Marbanら、J.Physiol.508:647、1998を参照のこと);接着分子の特定のファミリー(例えば、Taylorら、Curr.Top.Microbiol.Imunol 228:135、1998を参照のこと);種々の細胞外ドメインタンパク質ファミリー(例えば、Engel、Matrix Biol.15:295、1996;Bork、FEBS Lett.307:49、1992;Engel、Curr.Opin.Cell.Biol.3:779、1991を参照のこと);プロテインキナーゼCファミリー(例えば、Dekkerら、Curr.Op.Struct.Biol.5:396、1995を参照のこと);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー(例えば、Naismithら、J.Inflamm 47:1,1995を参照のこと);溶解素ファミリー(例えば、Lopezら、Microb.Drug Resist.3:199、1997を参照のこと);核ホルモンレセプター遺伝子スーパーファミリー(例えば、Ribeiroら、Annu.Rev.Med.46:443,1995;Carson−Juricaら、Endocr.Rev.11:201,1990);ニューレキシンファミリー(例えば、Misslerら、J.Neurochem.71:1339、1998を参照のこと);チオレドキシン遺伝子ファミリー(例えば、Sahrawyら、J.Mol.Evol.、42:422、1996を参照のこと);ホスホリル転移タンパク質ファミリー(例えば、Reizerら、Curr.Op.Struct.Biol.7:407、1997を参照のこと);細胞壁ヒドロラーゼファミリー(例えば、Hazlewoodら、Prog.Nuc.Acid Res.Mol.Biol.61:211、1998を参照のこと)、および合成タンパク質の特定のファミリー(例えば、脂肪酸シンターゼ、ポリケチドシンターゼ(例えば、WO98/01546;米国特許第5,252,474号;米国特許第5,098,837号;EP特許出願第791,655号;EP特許出願第791,656号を参照のこと)、ペプチドシンテターゼ(例えば、Mootzら、Curr.Op.Chem.Biol.1:543、1997;Stachelhausら、FEMS Microbiol.Lett 125:3、1995を参照のこと)およびテルペンシンターゼ)。
【0073】
本発明は、これらのファミリー中に存在する異なる機能的ドメインをコードするDNA分子が、インフレーム融合体を生成するために互いに連結されることを可能にし、その結果、選択された機能的ドメインの異なる配置を含むポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子が生成される。(i)天然の特定の遺伝子ファミリーにおいて利用されるドメインのみが、(新規の配置で)互いに連結されるか、または(ii)異なる遺伝子ファミリーにおいて天然に利用されるドメインが互いに連結されるかにおいて、実験が、実施され得ることが理解される。
【0074】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、ともに連結されるように選択されたDNAモジュールは、合成酵素ファミリーのメンバーの少なくとも1つの機能的ドメインまたは機能的ドメインの部分をコードするモジュールを含む。上記のように、種々の酵素ファミリーが公知であり、それらのメンバーは、関連する生物学的に活性な化合物の合成を担う。特定の目的のファミリーとしては、脂肪酸シンターゼファミリー、ポリケチドシンターゼファミリー、ペプチドシンテターゼファミリー、およびテルペンシンターゼファミリー(時折、テルペノイドシンターゼファミリー、またはイソプレノイドシンターゼファミリーと呼ばれる)が挙げられる。これらの酵素ファミリーの個々のメンバーは、マルチドメインタンパク質であり、これは、特定の生物学的に活性な化合物の合成を触媒する。任意の特定のファミリーメンバーについて、異なるタンパク質ドメインが、全体の合成反応において異なる工程を触媒する。各ファミリーメンバーは、異なる化合物の合成を触媒する。なぜなら、各々が、タンパク質の機能的ドメインの異なる集合体または配置を含むからである。本願の文脈において理解されるように、本発明は、これらの遺伝子ファミリーにおいて利用される種々のタンパク質ドメインを新たな方法で互いに連結して、機能的ドメインが選択された遺伝子ファミリーの天然に存在するメンバーによって生成される活性に関連する生物学的活性を有すると予測される新たな化学実体の生成を触媒する新規な合成酵素を生成し得るシステムを提供する。
【0075】
本発明のこの局面をより明らかに例示するために、本発明者らは、上記の特に好ましい合成酵素タンパク質ファミリーの各々の特定の特徴および性状を以下で議論する。
【0076】
(動物脂肪酸シンターゼファミリー)
動物脂肪酸シンターゼは、2つの多機能性ポリペプチド鎖を含み、その各々は、7つの別々の機能的ドメインを含む。脂肪酸分子は、アセチル部分と連続的なマロニル部分との反復縮合を含む反応において、2つのポリペプチド鎖の間の境界で合成される(例えば、Smith,FASEB J.8:1248,1994;Wakil,Biochemistry 28:4523,1989(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。最も一般的には、この縮合反応において生成されるβ−ケト中間体は、完全に還元されて、パルミチン酸を生成する;しかし、特定の場合において、代替基質または代替の鎖終結機構が使用され、その結果、一連の生成物は、分岐鎖、奇数に番号付けられた炭素(odd carbon−numbered)、およびより短い鎖長の脂肪酸分子を含む。これらの分子は、生物学的系において一連の役割を有し、この役割としては、以下が挙げられる:(i)ステロイドのような種々のシグナル伝達分子の生成における前駆体として作用する、ならびに(ii)コレステロール代謝の調節に関与する。
【0077】
当業者は、本発明の開示を考慮して、本明細書中に記載される技術および試薬が、脂肪酸シンターゼ分子の1つ以上の機能的ドメインをコードするDNA分子に望ましく適用され得、その結果、この分子が、他のDNA分子に連結されて、目的の新たなハイブリッドDNA、好ましくは、新規な合成能力を有し得るハイブリッド動物脂肪酸シンターゼ遺伝子をコードするものを作製し得ることを容易に認識する。
【0078】
(ポリケチドシンターゼファミリー)
ポリケチドは、大きくかつ構造的に多様なクラスの天然生成物を示し、この天然の生成物としては、多くの重要な抗生物質、抗真菌剤、抗癌剤、駆虫薬、および免疫抑制化合物(例えば、エリスロマイシン、テトラサイクリン、アンホテリシン、ダウノルビシン、アベルメクチン、およびラパマイシン)が挙げられる。例えば、図7は、特定のポリケチド化合物のリストを示し、これは、ヒトおよび動物の障害の処置において薬学的薬物として現在使用されている。
【0079】
ポリケチドは、タンパク質酵素(適切に命名されたポリケチドシンターゼ)によって合成され、この酵素は、脂肪酸シンターゼによって使用される様式といくらか類似した様式でアシルチオエステルの反復性の階的な縮合を触媒する。ポリケチドの間の構造多様性は、縮合反応において使用される特定の「スターター」または「エクステンダー」単位(通常は、アセテートまたはプロピオネート単位)の選択および縮合後に観察されるβ−ケト基の異なる程度のプロセシングの両方を介して生成される。例えば、いくつかのβ−ケト基は、β−ヒドロキシアシル基に還元される;他のものは、両方ともこの点まで還元され、続いて、2−エノイル基に脱水される;さらに他のものは、飽和アシルチオエステルに全て還元される。
【0080】
ポリケチドシンターゼ(PKS)は、モジュラータンパク質であり、ここでは異なる機能的ドメインが、合成反応の異なる工程を触媒する(例えば、Cortesら、Nature 348:176,1990;MacNeilら、Gene 115:119,1992;Schweckeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7839,1995を参照のこと)。例えば、図8および9(WO98/01546から)は、それぞれ、エリスロマイシンおよびラパマイシンの生成を担う細菌ポリケチドシンターゼ遺伝子の異なる機能的ドメインを示す(図10もまた、参照のこと)。これらの遺伝子の各々は、いわゆる「クラスI」細菌PKS遺伝子の例である。示されるように、ポリケチド鎖伸長の各サイクルは、1つ以上の他の機能的ドメイン(アシルトランスフェラーゼ[AT]ドメイン、β−ケトアシルレダクターゼ[KR]ドメイン、エノイルレダクターゼ[ER]ドメイン、デヒドラターゼ[DH]ドメイン、およびチオエステラーゼ[TE]ドメインからなる群より選択される)とともに、一方の末端ではβ−ケトアシルACPシンターゼドメイン(KS)、および他方の末端ではアシルキャリアタンパク質(ACP)ドメインを含む、機能的ドメインの集合体を含む触媒単位によって達成される。
【0081】
クラスII細菌性PKS遺伝子はまた、モジュラーであるが、鎖伸長の触媒を担う機能的ドメインの1つのセットのみをコードし、芳香族ポリケチドを生成する;これらのドメインは、連続伸長サイクルにおいて適切なように、再利用される(例えば、Bibbら、EMBO J.8:2727,1989;Shermanら、EMBO J.8:2717,1989;Fernandez−Morenoら、J.Biol.Chem.267:19278,1992;Hutchinsonら、Annu.Rev.Microbiol.49:201,1995を参照のこと)。多様性は、特定の伸長単位(通常、アセテート単位)の選択、および芳香族生成への完全な鎖の環化を触媒する特定のシクラーゼ(異なる遺伝子によってコードされる)の存在によって主に生じる。
【0082】
クラスI PKS機能的ドメインにおける種々の改変およびクラスI PKS機能的ドメインの置換は、合成酵素によって生成されるポリケチド生成物の化学組成を変化させ得ることが公知である(例えば、Cortesら、Science 268:1487,1995;Kaoら、J.Am.Chem.Soc.117:9105,1995;Donadioら、Science 252:675,1991;WO 93/1363を参照のこと)。クラスII PKSに関して、異なるクラスII PKS遺伝子クラスター(例えば、異なるシクラーゼ)の状況下で、1つの微生物系統から異なる微生物系統へのPKS遺伝子の導入が、新規のポリケチド化合物の生成を生じ得ることが公知である(例えば、Bartelら、J.Bacteriol.172:4816,1990;WO 95/08548を参照のこと)。
【0083】
本発明は、改変されたPKS遺伝子を生成するための新規の系を提供し、ここで、改変された遺伝子によってコードされる機能的ドメインの配列および/または数は、任意の天然に存在するPKS遺伝子において見出されるものと異なる。任意のPKS遺伝子フラグメントが、本発明に従って使用され得る。好ましくは、このフラグメントは、少なくとも1つの他のPKS機能的ドメインに連結されて、新規のPKS酵素を生成し得るPKS機能的ドメインをコードする。種々の異なるポリケチドシンターゼ遺伝子が、ポリケチドの驚異的なプロデューサーである細菌生物または真菌生物から主にクローニングされている(例えば、Schweckeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7839,1995;米国特許第5,252,474号;米国特許第5,098,837号;EP特許出願791,655;EP特許出願791,656(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと;また、WO 98/51695、WO 98/49315およびそれらの中で引用される参考文献(これらもまた、参考として援用される)を参照のこと)。任意のこのような遺伝子のフラグメントが、本発明の実施において使用され得る。
【0084】
(ペプチドシンテターゼファミリー)
ペプチドシンテターゼは、種々のペプチドの非リボソーム生成を触媒するポリペプチド酵素の複合体である(例えば、Kleinkaufら、Annu.Rev.Microbiol.41:259,1987を参照のこと;米国特許第5,652,116号;米国特許第5,795,738号もまた参照のこと)。これらの複合体は、特定のアミノ酸を認識し、そしてポリペプチド鎖へのアミノ酸の付加の触媒を担う、1つ以上の活性ドメイン(DDA)を含む。D−アミノ酸の付加を触媒するDDAはまた、L−アミノ酸のD−アミノ酸へのラセミ化(recemization)を触媒する能力を有する。この複合体はまた、伸長するアミノ酸鎖を終結し、そして生成物を放出する、保存されたチオエステラーゼドメインを含む。図11は、現在、薬理学的薬剤として使用されているペプチドシンテターゼによって生成される生成物の例示的な表を示す。
【0085】
ペプチドシンテターゼをコードする遺伝子は、酵素の機能的ドメイン構造に平行するモジュラー構造を有する(例えば、Cosminaら、Mol.Microbiol.8:821,1993;Kratzxchmarら、J.Bacteriol.171:5422,1989;Weckermannら、Nuc.Acids res.16:11841,1988;Smithら、EMBO J.9:741,1990;Smithら、EMBO J.9:2743,1990;MacCabeら、J.Biol.Chem.266:12646,1991;Coqueら、Mol.Microbiol.5:1125,1991;Diezら、J.Biol.Chem.265:16358,1990を参照のこと;図12もまた参照のこと)。例えば、図13(米国特許第5,652,116号からの)は、1つの例示的なペプチドシンテターゼ遺伝子オペロンである、srfAオペロンの構造を示す。
【0086】
特定のペプチドシンテターゼによって生成されるペプチドの配列は、シンテターゼに存在する機能的ドメインの集合体によって決定される。従って、本発明は、互いへの特定のペプチドシンテターゼ機能的ドメインの迅速な連結を可能にする系を提供することによって、新規のペプチドシンターゼ遺伝子(機能的ドメインの配列および/または数は、天然に存在するペプチドシンターゼ遺伝子と比較すると、異なる)が生成され得るメカニズムを提供する。このような新規の遺伝子によってコードされるペプチドシンターゼ酵素が、新規のペプチド生成物を生成することが予期される。従って、本発明は、ハイブリッドペプチドシンターゼ遺伝子の作用を通じた新規のペプチドの生成のための系を提供する。
【0087】
(テルペンシンターゼファミリー)
イソプレノイドは、構造がイソプレン基礎単位の改変を示す化合物である。このイソプレノイドファミリーとしては、一次代謝生成物(例えば、ステロール、カロテノイド、増殖レギュレーターならびにドリコール、キノンおよびタンパク質のポリプレノール(polyprebol)置換基)および二次代謝生成物(例えば、モノテルペン、セスキテルペンおよびジテルペン)のクラスに分けられ得る広範な構造的に多様な化合物が挙げられる。この一次代謝生成物は、生物学的現象(例えば、膜の完全性の保存、光防護、発生プログラムの編成および特定の膜系に対する必須の生化学的活性の係留)に重要である;この二次代謝生成物は、細胞間伝達に関与するプロセスに関与し、そして植物とその環境との間の相互作用を媒介するようである(例えば、Stevens,Isopentoids in Plants[Nesら、編],Macel Dekkerら、New York,65−80頁、1984;Gibsonら、Nature 302:608,1983;およびStoesslら、Phytochemistry 15:855,1976を参照のこと)。
【0088】
イソプレノイドは、イソプレンビルディングブロック(building block)の重合を介して合成され、中間分子または最終生成物分子内で環化(または他の分子内結合形成)により結合される。この重合反応は、イソプレン単位上の二重結合において、電子が豊富な炭素原子上での電子欠乏炭素の攻撃を指向するプレニルトランスフェラーゼにより触媒される(米国特許第5,824,774号からの図14を参照のこと)。環化および他の分子内結合形成反応は、イソプレノイド(またはテルペン)シンターゼにより触媒される(米国特許第5,824,774号からの図15を参照のこと)。
【0089】
テルペンシンターゼタンパク質は、機能的ドメインが、天然のエキソンと対応する傾向があるモジュラータンパク質である(例えば、本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,824,774号を参照のこと)。米国特許第5,824,774号からの図16は、イソプレノイドシンターゼ内での天然のエキソンおよび機能的ドメインとの間の対応の模式図を示す。上の図は、TEAS遺伝子内のエキソンの構成を示し、これはHVS遺伝子およびカスベン(casbene)シンターゼ遺伝子のエキソンの構成とほとんど同一であり;下の図は、TEAS遺伝子およびHVS遺伝子のエキソンの構成に対する機能的ドメインのアライメントを示す。
【0090】
本出願の観点から理解されるように、本発明は、イソプレノイドシンターゼ機能的ドメインをコードするDNA分子が、天然に生じるイソプレノイドシンターゼ遺伝子において観察される機能的ドメインと比較して機能的ドメインの配置および/または数が変化する、新規のハイブリッドイソプレノイドシンターゼ遺伝子を生成するために互いに連結され得る、系を提供する。これらの新規のハイブリッド遺伝子は、新しいイソプレノイド化合物の合成を触媒することが期待される、新規のハイブリッドタンパク質をコードする。
【0091】
上述するように、本発明のいくつかの実施形態において、1つのタンパク質ファミリー由来の機能的ドメインをコードするDNA分子が、異なるタンパク質ファミリー由来の機能的ドメインをコードするDNA分子に連結される。本発明に従って特に興味深いのは、ポリケチドシンターゼ機能的ドメインをコードするDNAが、ペプチドシンテターゼ機能的ドメインをコードするDNAに連結される反応である。代わりの好ましい実施形態は、ポリケチドシンターゼ機能的ドメインおよびペプチドシンテターゼ機能的ドメインのいずれかまたは両方との、脂肪酸シンターゼ機能的ドメインの結合を含む。次いで、このようなファミリー間結合反応により作製されたハイブリッド遺伝子は、ポリケチド、脂肪酸、および/またはペプチドに関する新規な化合物の合成を触媒するタンパク質をコードするそれらの遺伝子の能力を決定するための公知の技術に従って、試験され得る。
【0092】
また上述されるように、特定の実験において互いに連結されるように選択されるDNA分子は、機能的ドメインをコードする分子またはその部分に限定されず;「リンカー」アミノ酸をコードする分子がさらに、または代わりに使用され得、同様に、非コード分子が所望の最終生成物に依存して使用され得る。
【0093】
たった1例を与えるために、連結された分子が宿主細胞またはインビトロの発現系に導入される場合、その制御配列が連結される他のDNA配列の発現を調節する特定の制御配列を、最後の連結された分子中に含むことが、時々所望され得る。例えば、転写制御配列、RNAスプライシング制御配列、他のRNA改変制御配列、および/または翻訳制御配列が、共に連結される1つ以上のDNA分子に含まれ得る。広範な種々のこのような発現制御配列は、当該分野で周知であり(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、New York、1989、(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと);当業者は、それらの特定の適用における使用のために所望の制御配列を選択することに関する考察に精通している。一般に、このような制御配列が、これらが連結される他のDNAの発現をそれらのDNA配列が細胞またはインビトロの発現系に導入される場合に指向する限り、このような制御配列は本発明に従う使用のために適切である。
【0094】
本発明に従って、所望して使用され得る他のDNAモジュールとしては、例えば、検出可能なタンパク質部分(例えば、色の変化または蛍光もしくは発光の誘導のような検出可能な反応を触媒する酵素部分、あるいは公知のモノクローナル抗体と相互作用する部分など)をコードするモジュール、連結される生成物DNA分子(例えば、GSTドメイン、銅キレートドメインなど)によりコードされる任意のポリペプチドの簡単な精製を可能にする部分をコードするモジュールまたは研究者によって所望される任意の他のモジュールが挙げられる。
【0095】
(指向性連結)
本明細書中に記載されるように、本発明技術の1つの特定の価値の高い適用は、複数の異なる核酸分子の、互いの連結についてである。3’または5’のオーバーハングを有する生成物分子を提供する本発明の実施形態は、それらのオーバーハングの配列および長さが実施者の自由に選択されるのを可能にすることから、分子は、特定の指定されたパートナーとのみの特定の指定された順序での連結のために容易に調製され得、その結果多数のメンバーでの連結反応が、偽の連結生成物または所望されない連結生成物のほんの最小の生成しか伴わずに実施され得る。
【0096】
図17は、本発明に従う、このような指向性(directional)連結反応の1つの一般的な例の模式図を示す(図18〜22および実施例1は、特定の例を記載する)。示されるように、第1の核酸分子(「A」として指定される)は、1方の末端で第1のオーバーハング(「オーバーハング1」として指定される)を含む。第2の核酸分子である「B」は、オーバーハング1に相補的ある第2のオーバーハング(「オーバーハング1’」)および好ましくはオーバーハング1に関連しないでそして確かに同一でない第3のオーバーハング(「オーバーハング2」)に隣接される。第3の核酸分子である「C」は、オーバーハング2と相補的な第4のオーバーハング「オーバーハング2’」を含む。当業者によって理解されるように、これらの核酸分子の3つ全てを含む連結反応は、たった1つの反応生成物「ABC」を生成し、そして「AC」生成物または環状の「B」生成物を、このような生成物を生成するために共に連結されなければならない末端の不一致のために生成しない。
【0097】
(変異誘発)
別の特に有用な適用において、本発明の技術および試薬は、共に連結される核酸分子のヌクレオチド配列を変更するために利用され得る。別個の変異誘発反応は、必要とされない。むしろ、配列および長さが実施者により選択され得るプライマーおよび/またはオーバーハングは、連結される分子間の一本鎖の領域を作製するために利用され、この一本鎖領域は、所望されるような新しい配列または変更された配列を含む。これらの一本鎖領域は、後に、新しい配列に相補的な鎖を合成するポリメラーゼにより満たされ得る。あるいはまたはさらに、伸長反応または増幅反応においてコピーされる特定の生成物分子鎖に配列を加えるプライマーが用いられ得る。
【0098】
(エキソンシャッフリング)
本明細書中に記載される技術および試薬の1つの特定の適用は、DNA分子の特定のコレクションまたはエキソンが互いに連結された、ハイブリッド核酸分子のライブラリーの生成における。つまり、「エキソンシャッフリング」反応は、単一反応混合物(以下でさらに記載される、例えば、連結混合物またはスプライシング反応)が少なくとも2つ、および好ましくは少なくとも10、100、1000、10,000、100,000、または1,000,000の異なる生成物分子を生成する反応である。
【0099】
本明細書中に使用される場合、用語「エキソン」とは、別のDNA分子に連結されるべき任意のDNAをいう。エキソンは、タンパク質コード配列を含んでもよいか、独占的にタンパク質をコードし得てもよいか、または全くタンパク質コード配列を含まなくてもよい。用語「エキソンシャッフリング」は、本発明の技術および試薬を用いて、1つより多い可能な配置で互いに連結され得るエキソンのコレクションが生成され得ることを示すことが意図される。例えば、図23において描かれるように、本発明の技術および試薬は、単一の上流エキソンであるAが、異なる内部エキソン(図23におけるB1〜B4)のコレクションのいずれか1つに連結され得る連結反応において用いられ得、この内部エキソンは順番に、さらに下流のエキソンであるCに連結される。
【0100】
当業者は、図23が、本発明に従って「同一性エキソンシャッフリング」反応(すなわち、特定のエキソンの同一性が、シャッフリング反応の異なる生成物において異なる反応)のまさに1つの特定の実施形態を示すことを容易に認める。関連する反応の広範なアレイが、本発明の「エキソンシャッフリング」の概念内に、および特定の「同一性エキソンシャッフリング」の概念内に含まれる。例えば、1つより多いエキソンは、特定のシャッフリング反応において変更され得る。実際に、図23において描かれるように、シャッフリング生成物の中で均一である上流末端エキソンおよび下流末端エキソンを有することは必要とされない。しかし、このような一貫性は、特定の利点(1セットの増幅プライマーを用いて全てのシャッフリング生成物を増幅する能力(以下でより詳細に考察される)を含む)を提供し得る。しかし、不変の隣接エキソンが保存される場合でさえ、1つより多い内部エキソンが変更され得る;付加的な不変の内部エキソンもまた提供される場合でさえ、そうである。
【0101】
図24は、本発明に従って実施され得るエキソンシャッフリング反応の異なる種類の実施形態を示す。図24において示される特定の実施形態において、上流(A)のエキソンおよび下流(H)のエキソンは、広範な種々の可能な内部エキソン(B〜G)と組み合わせて提供される。全てのエキソンは、適合性のあるオーバーハングを有する。このような反応において、生成物分子において見出される内部エキソンの配置についての可能性は、無限である。また、エキソン(選択的な隣接エキソン以外のエキソン)は、エキソン鎖の特定の位置に制限されないことから、シャッフリングのこの型は、「位置的(positional)シャッフリング」といわれる。
【0102】
もちろん、当業者は、図24が本発明の位置的シャッフリング系のほんの1つの例示的な実施形態であることを認識する。例えば、少なくとも2つのセットの適合性のあるオーバーハングを用いること、および潜在的内部エキソンが適合性のある末端により隣接されないことを保証することがたぶん所望され;さもなければ、分子内環化は、本発明の連結における競合反応として重大な複雑化を表し得る。また、固定された他の位置全てを保持し(例えば、図17)つつ、1つの位置での同一性シャッフリングを可能にすることという極値と全ての位置で完全なシャッフリングを可能にすることという極値との間の中間物を示すエキソンシャッフリング反応を実施することが可能である。ただオーバーハングの適合性を選択することだけより、実施者は、異なる部位でのより高い変動性を可能にするが、特定の鎖の部位で組み込まれ得るエキソンの数を制限し得る。
【0103】
本発明の利点の1つは、必要に応じて位置的バリエーションと組み合わせて、同時に多数の部位のバリエーションを可能にすること(すなわち、特定のエキソン配列が異なる生成物分子において異なる位置で終わり得る可能性)である。この現象の重要性のほんの1つの例を与えるために、図25は、他の技術が、エキソンの鎖の1つの位置を一度に変更し得るライブラリーの生成を可能にし得ることを示す。10の異なるエキソンが、各々の位置で用いられ得るエキソンの3つの鎖について、30個の異なる変異体が生成され得る(A1BC、A2BC、A3BC、...A10BC、AB1C、AB2C、...AB10C、ABC1、ABC2、...ABC10)。対照的に、3つ全ての位置が、同時に変更され得る場合、本発明に従って可能なように、1000個の異なる変異体が生成され得る。
【0104】
上述されるように、進化的プロセスが、既存のエキソンを再分類することにより、しばしば新しい遺伝子を生成することは、現在受け入れられている。大きな遺伝子ファミリーは、明らかにエキソンシャッフリングにより生成されている。本発明に従って、特定の選択された機能的ドメインを互い(上記を参照のこと)に連結することおよびそれらの遺伝子ファミリーにおいて見出されるエキソンをシャッフルすることの両方のために本発明の技術を用いることが所望され、その結果(少なくとも2つの)生成物遺伝子のライブラリーが生成される。
【0105】
本発明のエキソンシャッフリング技術は、エキソンの任意の所望されるコレクションに適用され得る。好ましくは、それらの技術は、タンパク質コード配列を含むエキソンに適用される。さらに好ましくは、それらの技術は、異なるメンバーの遺伝子ファミリー(上記の考察を参照のこと)における進化において再使用されているタンパク質コードエキソンに適用される。本発明のエキソンシャッフリング系の1つの特定の好ましい実施形態において、シャッフルされるエキソンは、合成酵素の機能的ドメインを示す。連結に関して、上記で考察されるように、ファミリー内でまたはファミリー間(between)またはファミリーの間で(among)から、エキソンを再分類する。
【0106】
本発明のエキソンシャッフリング技術が適用され得る特定の好ましい遺伝子ファミリーとしては、組織プラスミノーゲン活性化遺伝子ファミリー、動物脂肪酸シンターゼ遺伝子ファミリー、ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリー、ペプチドシンテターゼ遺伝子ファミリー、およびテルペンシンターゼ遺伝子ファミリーが挙げられるがこれらに限定されない。このクラスI細菌ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリーは、機能的ドメインの共直線および触媒能力がこのファミリーについて非常に良く確立されるという点で、本発明のエキソンシャッフリング技術の適用のために、特定の魅力のある標的を示す。
【0107】
また、クラスIポリケチドシンターゼと動物脂肪酸シンターゼ、クラスIIポリケチドシンターゼ、および/または中間体クラスポリケチドシンターゼ(例えば、真菌性ポリケチドシンターゼで、この機能的構成および触媒的特性が、明らかに細菌クラスIポリケチドシンターゼとクラスIIポリケチドシンターゼとの間の機能的構成および触媒的特性の中間体である)との間の密接な機構的関係は、これらの異なるファミリーのうちの2つ以上の機能的なドメインをコードするDNAを混合するシャッフリング反応を特に興味をそそるものにする。このような反応は、新しい合成酵素のライブラリーを生成し、次いでこのライブラリーは、それらが興味深いかまたは所望される生物学的活性を有するか否かを決定するための任意の利用可能な技術に従ってアッセイされ得る新しい化合物のライブラリーを生成する。
【0108】
(既存の技術との統合)
本発明は、選択された核酸分子を互いに連結するために利用可能な方法のみを記載するわけではないことが認識される。例えば、確立された制限酵素に基づく技術は、本発明の系の都合の良さおよび他の利点を有さないが、明らかに、核酸分子の切断および連結を可能にする。また、リボザイムがRNAレベルまたはDNAレベルの核酸の切断および連結を媒介するのに用いられ得る技術が、開発されている(例えば、米国特許第5,498,531号;米国特許第5,780,272号;WO 9507351;WO 9840519、および1998年9月21日出願の米国特許出願番号 60/101,328を参照のこと(これらの各々が本明細書中で参考として援用される;実施例4もまた参照のこと))。
【0109】
核酸の操作のためのこれらの異なる系の各々が、特定の利点および不都合を提供する。例えば、リボザイム媒介系は、所望される場合にシャッフリング反応がインビボで実施され得る独特な利点を提供する(例えば、1998年9月21日出願の米国特許出願番号 60/101,328を参照のこと)。さらに、一旦目的のエキソンが第1のトランススプライシングリボザイム成分と連結されているシャッフリングカセットが生成されると、そのエキソンは、単純なトランススプライシング反応における第1のトランススプライシング成分と適合性のある第2のトランススプライシング成分に連結される任意の他のエキソンに連結され得る。従って、リボザイム媒介系が利用されればされるほど、そしてその使用により生成されるシャッフリングカセットの数が多くなればなるほど、その系はより強力になる。
【0110】
本明細書中に記載される技術のように、リボザイム媒介核酸操作は、エキソンシャッフリングのために使用され得、そして任意の選択された核酸分子のシームレスな連結を指向するために操作され得る。さらに、本発明の系のように、リボザイム媒介系は、連結を媒介する因子(リボザイム媒介系におけるリボザイム成分;本発明の系におけるオーバーハング)が、特定の選択された他の連結媒介因子とのみ適合性があるように操作され得る。この能力は、図17において描かれる指向性連結反応(ここで、エキソンのコレクションはともにインキュベートされるが特定の選択されたエキソンのみが互いに連結する状態になり得る)に類似の反応を実施することを能力を可能にする(例えば、実施例4および図29を参照のこと)。
【0111】
本発明の1つの特に好ましい実施形態は、上で参照される特許および特許出願において記載されるリボザイム媒介技術と本明細書中に記載されるプライマーに基づく操作技術の統合を示す。詳細には、本明細書中に記載されるプライマーに基づく核酸操作技術は、リボザイム関連シャッフリングカセットを構築するのに利用され、次いでこれは、ハイブリッド核酸分子を生成するためのスプライシング反応に用いられ、続いて、この分子は、発明のプライマーに基づくストラテジーを用いてクローン化され得そして操作され得る。
【0112】
図26は、このような組合せられたプライマーに基づく核酸操作スキーム/リボザイム媒介核酸操作スキームの1つのバージョンを示す。描かれるように、9つの異なる生成物分子が、発明のプライマーに基づく核酸操作ストラテジーを使用して生成される。これらの分子は、3つの異なるシャッフリングカセットを生成するために共に連結されるように設計される。この第1のシャッフリングカセットは、(i)カセットの転写を指向するプロモーター;(ii)第1のタグ配列;(iii)上流末端エキソン;および(iv)第1のリボザイム成分を含む。第2のシャッフリングカセットは、(i)カセットの転写を指向するプロモーター;(ii)第1のリボザイム成分と適合性のある第2のリボザイム成分(iii)内部エキソン;および(iv)第3のリボザイム成分(必要に応じて、第2のリボザイム成分との適合性はない)を含む。第3のシャッフリングカセットは、(i)カセットの転写を指向するプロモーター;(ii)第3のリボザイム成分と適合性のある第4のリボザイム成分(そして必要に応じて、第1のリボザイム成分と適合性がない);(iii)下流末端エキソン;および(iv)第2のタグ配列を含む。
【0113】
シャッフリングカセットが、本発明のプライマーに基づく技術を用いて生成され得る容易さを考慮すると、シャッフリングカセットがベクターに導入される必要はなく、シャッフリングカセットは直接転写され得る。もちろんそれらは、そう所望される場合には、好ましくは本発明のプライマーに基づく核酸操作技術により、ベクターに導入され得る。各々のカセットは転写され、そして転写生成物は、スプライシング条件下で、インビトロまたはインビボのいずれかで互いにインキュベートされ、3つのエキソンの各々を含むハイブリッド分子を生成する。次いで、このハイブリッド分子は、再び好ましくは本発明のプライマーに基づく操作技術を用いて、ベクターに導入され得まるかまたはさらに操作され得る。
【0114】
当業者は、1つより多くの内部カセットが、エキソンシャッフリング(位置的シャッフリングおよび/または同一性シャッフリングを含む)反応かまたは各エキソンのほんの1つのコピーが、予め決定された順番で、ハイブリッド分子に導入される指向性連結反応のいずれかにおいて、図26の系において用いられ得ることを認識する。あるいはまたはさらに、複数の代わりの上流もしくは下流のエキソンが用いられ得、またはこのような末端エキソンは除かれ得る。同一性エキソンシャッフリング反応の特に好ましい実施形態では、複数の代わりのエキソンが提供され、そしてハイブリッド分子において少なくとも2つの位置(例えば、1つの内部位置および1つの末端位置、2つの内部位置、または2つの末端位置)について、同時にシャッフルされる。
【0115】
図26において示される組み合わされたプライマーに基づく系/リボザイム媒介系の1つの利点は、本発明の方法に従って、示された分子を生成すること、および/またはそれらをベクターもしくは他の所望された場所にクローン化するのに必要とされるプライマーの数の考慮を通して認識され得る。例えば、67個のプライマーが、10個の異なる可能なエキソン生成物分子が「A」エキソン、「B」エキソン、および「C」エキソンの各々について生成される場合、最初の生成物分子を生成するのに必要とされる。これは、比較的多数のプライマーであるが、シャッフリングカセットの生成のために利用可能な代わりの方法(例えば、標準的な制限酵素に基づくクローニング技術)と比較して、本発明の系を用いて生成物分子が生成されてそして共に連結される容易によって正当化される。ほんの4つのプライマーしか、得られたシャッフリングカセットの増幅のために、またはそれらを他のDNA分子(例えば、ベクター)に連結するのに必要とされない。最も重要なことには、ほんの2つのプライマーしか、アセンブルされた遺伝子を増幅する(または連結する)ために必要とされない。特にエキソンシャッフリング反応が実施され、そしてアセンブルされた遺伝子のライブラリーが生成される場合、同じ2つのプライマーを用いてそのライブラリーのすべてのメンバーを増幅し得ることに価値がある。
【0116】
(自動化)
本発明の技術および試薬の1つの特に魅力的な特徴は、自動化に対するそれらの可能性である。特に、新規のハイブリッド核酸の大きなライブラリーが、本発明のエキソンシャッフリング反応において生成されている場合、多数の異なるサンプルの同時操作を達成するために、自動化されたシステム(例えば、Beckman 2000 Laboratory Automation Work Station)を用いることが所望され得る。
【0117】
本発明の方法の好ましい自動化された適用のほんの1つの例を与えるために、図27は、例えば、図27において描かれるようなエキソンシャッフリングを達成するために、そしてさらに所望される活性についてのシャッフリング反応の生成物をスクリーニングするために利用され得る自動化システムを示す。例えば、図26の最初の縦の欄に示される生成物分子は、必要な場合にある位置から別の位置にプレートを移動するのにORCAロボットアームに頼り、Biomek 2000システムをmultimek 96自動化96−チャンネルピペッターおよびPTC−225 DNAエンジン(MJ Research)と組合せて用いて、96ウェルプレートにおけるPCRによって生成され得る。
【0118】
好ましくは、各々のエキソンの生成物分子(例えば、n個の「A」エキソンであるA1−Anが調製される;同様にx個の「B」エキソンであるB1−Bx;そしてy個の「C」エキソンである、C1−Cyが調製される)の複数の代替物が、同時に、T7/X、1−4’、T7/5,6、およびY生成物と一緒に調製される。上述されるように、67個の異なるプライマーが、本明細書中に記載される本発明の方法論に従って、これらの生成物分子を生成するために必要とされる。
【0119】
次いで、自動化されたシステムは、所望される連結試薬と共に、一緒に適切な生成物分子をピペッティングするようにプログラムされ、図26の第2の縦の欄に示される型の30個のシャッフリングカセットを生成する。次いで、このシステムは、T7 RNAポリメラーゼを用いて、これらのシャッフリングカセットからRNAを生成するようにプログラムされる。次いで、「A」型、「B」型、および「C」型の転写生成物が、全ての可能な組合せで共に混合され、そしてトランス−スプライシング条件下で(なお、自動化システムにおいて)インキュベートされる。全体として、1000個の異なるスプライシング反応が実施される。
【0120】
次いで、各々のスプライシング反応の小さなアリコートが出され、そして増幅生成物がベクターのようなレシピエント分子と容易に連結され得るように本発明のプライマーを用いて増幅される。次いで、得られたプラスミドは、さらなる増幅のために宿主細胞(例えば、細菌細胞)に導入され得るか、またはあるいはインビボもしくはインビトロの発現系に導入され得、その結果アセンブルされてシャッフルされた遺伝子によってコードされる任意のタンパク質生成物が、アッセイされ得る。所望の発現系は、シャッフルされた核酸配列の性質に依存する。ほんの1つの例を与えるために、真菌性ポリケチドシンターゼ遺伝子フラグメント(例えば、真菌性ポリケチドシンターゼタンパク質の機能的ドメインをコードする)がこのアプローチに従ってシャッフルされた場合、それらの合成能を評価するために、1つ以上の真菌性細胞型または哺乳動物細胞型においてそれらにより生成されるハイブリッドタンパク質を発現することが所望され得る。
【0121】
(キット)
本発明の実施に有用な試薬は、キット中にともに提供され、アセンブルされることが所望され得る。特定の好ましいキットは、プライマー媒介の核酸操作反応およびリボザイム媒介の核酸操作反応の両方に有用である試薬を含む。
【0122】
(実施例)
(実施例1)
(5’オーバーハング配列を有する生成物分子の調製および連結)
本実施例は、3’末端のデオキシリボヌクレオチドおよびこれらの5’末端のリボヌクレオチドを含むハイブリッドプライマーを使用する、5’オーバーハングを有する生成物分子の調製および連結を記載する。
【0123】
図18は、実施された特定の実験の概略図を示す。示されるように、3つの異なる生成物分子が作製され、2つは、ヒトグルタミン酸レセプターのBサブユニットに対する遺伝子のエキソンに対応し、そして1つは、関連しないヒトβグロブリン遺伝子由来のイントロンに対応する。本発明者らの使用した特定のグルタミン酸レセプターエキソンは、FlipおよびFlopとして公知であり、そして図19Aおよび図19Bに示され、これらのエキソンのそれぞれのヌクレオチド配列を示す(それぞれ、GenBank登録番号X64829およびX64830)。
【0124】
本発明者らは、Vent(登録商標) DNAポリメラーゼおよびヒトGluR−B#7(ヒトグルタミン酸レセプターBサブユニットのエキソン13〜16を含むクローニングされたゲノムフラグメント)プラスミドまたはHβT7(ヒトβグロブリン遺伝子のエキソン1〜2を含むクローニングされたゲノムフラグメント)プラスミドを使用するPCRによって、本発明者らの3つの生成物分子のそれぞれを調製した。
【0125】
Flopエキソンを、全体のDNAでありFlopエキソンの最初の20塩基に対応する5’プライマー(図18のプライマー1;5’−AAATGCGGTTAACCTCGCAG、配列番号 )と、最も5’側の4残基が、図18に小文字で示されるようなRNAである3’プライマー(図18のプライマー2;5’−accuTGGAATCACCTCCCCC、配列番号 )とを組み合わせて、増幅した。このプライマーは、Flopエキソンの最後の18塩基およびイントロンの2塩基に対応する。さらに、これらのプライマーは、ヒトグルタミン酸レセプターFlopエキソン(115塩基対)およびイントロンの5’末端における最初の2残基の全てに対応するフラグメントを増幅する。
【0126】
イントロン1を、ヒトβグロブリンイントロン1の最初の18塩基に対応する配列であり、そして最も5’側の4塩基がRNAであり、そしてプライマー2の5’末端における4つのRNA残基に相補的である5’プライマー(図18のプライマー3;5’−agguTGGTATCAAGGTTACA、配列番号 );ヒトβグロブリンイントロン1の最後の20塩基に対応し、その最も5’側の2塩基がRNAである3’プライマー(図18のプライマー4、5’−cuAAGGGTGGGAAAATAGAC、配列番号 )を組み合わせて増幅した。これらのプライマーは、全体のイントロン(129bp)およびFlopエキソンの3’末端における最後の2残基に対応する2つのさらなる残基に対応するフラグメントを、共に増幅する。
【0127】
Flipエキソンを、ヒトグルタミン酸レセプターFlipエキソンの最初の18塩基に対応し、その最も5’側の2残基がRNAであり、そしてプライマー4の5’末端における2つのRNA残基に相補的である5’プライマー(図18のプライマー5、5’−agAACCCCAGTAAATCTTGC、配列番号
)と;全体のDNAである最後の20エキソン塩基に対応する3’プライマー(図18のプライマー6、5’−CTTACTTCCCGAGTCCTTGG、配列番号 )とを組み合わせて増幅した。これらのプライマーは共に、全体のFlipエキソン(115bp)およびイントロンの3’末端における最後の2つのヌクレオチドに対応するフラグメントを増幅する。
【0128】
それぞれの増幅反応は、以下を含んだ:400μモルの各々のプライマー、これらのプライマーは、(100μlの1×NEB T4リガーゼ緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.8)、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP、25μg/ml BSA)中のT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて)37℃で30分間リン酸化され、続いて200μlのヌクレアーゼを含まないdH2Oで10pモル/μlに希釈される;2単位のVentR(登録商標)(エクソ)ポリメラーゼ(NEB、Beverly、MA)、100μlの1×Vent緩衝液(10mM KCl、10mM (NH4)2SO4、20mM Tris、2mM MgSO4、0.1% Triton X−100);200μM dNTP;および5ngのテンプレートプラスミド。Robocycler(登録商標)gradient 40(Stratagene、La Jolla、CA)サーマルサイクラーにおいて、(i)95℃3分間;(ii)60℃3分間;(iii)72度3分間を1サイクル行った後、(i)95℃15秒間;(ii)60℃15秒間;(iii)72℃30秒間を35サイクル行った。
【0129】
本発明者らは、VentR(登録商標)およびVentR(登録商標)(エクソ)は、本発明者らのプライマーにおいてリボヌクレオチドをコピーしないことがわかったので、増幅後、各々の生成物分子は、一末端または両末端に5’リボヌクレオチドオーバーハングを含んだ(Flop生成物の3’末端における4ヌクレオチド;βグロブリンイントロン生成物の5’末端における4ヌクレオチド;βグロブリンイントロン生成物の3’末端における2ヌクレオチド;およびFlop生成物の5’末端における2ヌクレオチド)。
【0130】
各々の増幅された生成物を、エタノール(EtOH)で沈澱し、そして10μLに再懸濁し、3つの増幅生成物の全ての存在を確認するために、これらの2つを6%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。次いで、およそ等モル量のそれぞれのフラグメントを含むアリコート(それぞれ2〜4μL)を、1×New England Biolabs(NEB) T4リガーゼ緩衝液(50mM Tris(pH7.8)、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP、25μg/ml BSA)および0.5UのT4 DNAリガーゼ(NEB、Beverly、MA)を含有する連結反応において結合した。20μLの反応物を、4℃で一晩インキュベートし、連結が生じ得る。次いで、連結の生成物を、プライマー1および3およびTaqポリメラーゼを用いて増幅し、これはRNAをコピーする(Myersら、Biochem.6:7661、1991)。この増幅反応物は、1×Taq緩衝液(20mM Tris(pH9.0)、50mM KCl、0.1% Triton X−100)、200μM dNTP、5単位のTaqポリメラーゼ(Promega、Madison、WI)、2μLの連結混合物、および400μモルの各々のプライマーを含んだ。
【0131】
Taq増幅の生成物を図20に示し、そして製造業者の手引きに従って、TA
Cloning Kitを用いてPCR2.1ベクター(Invitrogen、Carsbad、CA)に連結した。複数(9つ)のクローンの配列分析(標準ジデオキシ配列決定法、およびUnited States Biochemical、Cleveland、OhioからのUniversalプライマーおよびReverseプライマーを用いて)によって、全ての連結が正しいことを確認した(図21および22を参照のこと)。このストラテジーは、リボヌクレオチド(rubonucleotide)オーバーハングを有する生成物分子を連結したので、これは時々リボヌクレオチドオーバーハングクローニング(ROC)と称される。
【0132】
(実施例2)
(3’オーバーハング配列を有する生成物分子の調製および連結)
本実施例は、3’末端にデオキシリボヌクレオチド、そして5’末端にリボヌクレオチドを含むハイブリッドプライマーを使用して、3’オーバーハングを有する生成物分子の調製および連結を記載する。
【0133】
図28は、実施された特定の実験の概略図を示す。示されるように、3つの異なる生成物分子が作製され、2つは、ヒトグルタミン酸レセプターのBサブユニットに対する遺伝子のFlipエキソンおよびFlopエキソンに対応し、そして1つは、関連しないヒトβグロブリン遺伝子由来のイントロンに対応する(実施例1を参照のこと)。
【0134】
3つの生成物分子のそれぞれを、RNAヌクレオチド、およびヒトゲノムDNAまたはHBT7のいずれかをコピーするPfuポリメラーゼを使用するPCRによって調製した(実施例1を参照のこと)。Flopエキソンを、実施例1のプライマー1および2で増幅した;イントロン1を、実施例1のプライマー3および4またはプライマー3および選択的プライマー4(5’−uucuAAGGGTGGGAAAATAG−3’;配列番号 )のいずれかで増幅した;Flipエキソンをプライマー5および6または選択的プライマー5(5’−agaaCCCAGTAAATCTTGC;配列番号 )およびプライマー6のいずれかで増幅した。
【0135】
それぞれ100μLの反応物は、2.5UのPfu Turbo(登録商標)ポリメラーゼ(Stratagene)、1×Cloned Pfu緩衝液(10mM (NH4)2SO4、20mM Tris(pH=8.8)、2mM MgSO4、10mM KCl、0.1% Triton X−100および0.1mg/ml BSA)、それぞれ200μMのdNTP、1mM MgSO4、ならびにそれぞれ最終濃度0.5μMのプライマーを含んだ。FlopおよびFlipの反応物は、375ngのヒトゲノムDNAを含むが、βグロブリン反応物は、5ngのHBT7 DNAを含んだ。PCR工程プログラムを、Robocycler gradient 40において、FlipフラグメントおよびFlopフラグメントについて、95℃5分間;50℃3分間;72℃3分間で一度行い、続いて95℃30秒間;50℃30秒間;72℃45秒間を40サイクルを行い、続いて72℃5分間を一回行った。アニーリング温度が46℃であることを除いて、同一のプログラムを使用して、βグロブリンイントロン1を増幅した。PfuポリメラーゼはRNAをコピーしない(stratagene
生成物文献)(PCR生成物文献)ので、PCR生成物は5’オーバーハングを含んだ。これらのオーバーハングは、5’RNAオーバーハングを充填するための5UのTthポリメラーゼ(Epicentre Technologies、Madison、WI)で、72℃30分間のインキュベーションの間に充填された。(より最近の実験において、TthよりもM−MLV RTを用いて、オーバーハングを充填することに注意すること。M−MLV RTを用いる場合、フラグメントをアガロースゲルで分離した後、1×第一鎖緩衝液(50mM
Tris(pH=8.3)、75mM KCl、3mM MgCl2)、10mM DTTおよび0.5mM dNTPの20μL中に、200UのM−MLV RTで処理した)。このストラテジーにおいて、Pfuポリメラーゼを使用し得る。これは、増幅反応の間、使用可能な熱安定性のDNAポリメラーゼの最も高い忠実度を有するが、平滑末端反応生成物をまだ作製する。
【0136】
増幅された親のPCR生成物を、アガロースゲルから切り出し、そして精製した。5μlのそれぞれ精製したサンプルを、質量についてアガロースゲル上で分画した。次いで、平滑末端化生成物を、温和な塩基への曝露を通じたリボヌクレオチドの除去によって3’オーバーハングを含む生成物に転換した。NaOH(1N)をそれぞれ8μlのゲル単離フラグメントに添加して、最終濃度0.2Nにし、そしてサンプルを45℃で30分間インキュベートした。塩基を2μlの1N HClの添加によって中和した。NaOH加水分解は、3’リン酸および5’−OHを作製するので、生成物を連結し得るようにリン酸化する必要がある。DNAフラグメントを、総量20μlの1×T4 リガーゼ緩衝液(USB)中において、37℃で30分間、10UのPNK(USB)を使用してリン酸化した。約25ng(3〜6μl)のそれぞれリン酸化した生成物を、20μlの最終容量中に結合し、そして5 Weiss UのT4 DNAリガーゼ(USB)を有する1×T4リガーゼ緩衝液中において、14μCで16時間連結した。
【0137】
キメラFlop−β−Flip生成物を生成するために、二次PCR増幅を、一次PCRに関する上記のように、テンプレートとしての1μlの連結反応物、プライマー1および6、ならびに58℃のアニーリング温度を用いて実施した。期待のサイズ(360bp)のキメラ生成物を観察した。この生成物をクローニングし、そして配列決定した;両方の連結接点を配列決定された8クローンの6つ中に回収した。それぞれ2つのクローンは、連結部位の1つにエラーを有した。1つのクローンにおいて、βグロブリンイントロンとFlipとの間の境界において3塩基対を喪失した。他方のクローンにおいて、AがTに変化した(データは示さず)。本発明者らは、この手順の充填工程の間に、Tthポリメラーゼがこれらのエラーを導入したと推測する。本明細書中に記載されるストラテジーは、DNAオーバーハングを含む分子の連結を含有するので、これは時々DNAオーバーハングクローニング(DOC)と称される。
【0138】
(実施例3)
(プライマーコピーおよび/または連結の成功を決定するためのバイオアッセイ)
本実施例は、特定のDNAポリメラーゼの特定の改変オリゴヌクレオチドプライマーをコピーする(すなわち、テンプレートとして使用する)能力を評価するために使用し得る技術を記載する。例えば、本明細書中に記載される技術は、特定の改変ヌクレオチドまたはリボヌクレオチド(あるいはそのコレクション)が1つ以上のDNAポリメラーゼによって複製され得るか否かを決定するために有用であり得る。
【0139】
図29は、本発明のバイオアッセイ技術の1つの実施形態を示す。示されるように、テンプレート分子とハイブリダイズする2つのプライマーを提供する。第一のプライマーは、特定のDNAポリメラーゼによって伸長可能であることが公知である;第二のプライマーは、DNAポリメラーゼによる複製をブロックする能力が公知ではない1つ以上の改変ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む。任意のヌクレオチド改変は、この系において研究され得る。
【0140】
図29に示されるように、両方のプライマーが伸長され、その結果、複製がブロックされる場合、5’オーバーハングを有する生成物分子が生成される;複製がブロックされない場合、平滑末端化生成物分子(または、使用されるDNAポリメラーゼに依存する単一ヌクレオチド3’−オーバーハングを含む分子)が生成される。
【0141】
次いで、生成物分子を、相補的5’オーバーハングを含み、そして選択マーカー(またはスクリーニングによって同定可能なマーカー)を有するベクターと共にインキュベートする。複製がブロックされた場合のみ、ハイブリダイゼーションが生じる。次いで、連結を試み、そして特定の改変が相補鎖におけるニックの連結を妨害しない限り、または改変がオーバーハングの5’末端に存在し、隣接する3’末端への連結を妨害する特性である限り、連結はうまくいく。実験を単純化し、任意の特定の反応における可変の数を最小化するために、複製をブロックする能力がすでに公知である場合、改変が、プライマーのまさに5’末端においてのみ組み込まれることが期待され、連結を妨害する能力のみを評価することが所望される。
【0142】
次いで、連結生成物を、宿主細胞(好ましくは、細菌)に導入する。問題の改変が複製をブロックし、そして(i)相補鎖における連結をブロックしないか;または、(ii)相補鎖における連結をブロックするが、インビボにおいてニック対をブロックしないか、のいずれかである場合にのみ、選択可能(またはさもなければ、同定可能)な細胞が増殖し、そして生存する。改変がプライマーの5’末端である場合、改変が複製をブロックしかつ両鎖の連結をブロックしない場合、細胞は増殖するのみである。
【0143】
もちろん、改変が1つ以上のリボヌクレオチドまたは他の除去可能なヌクレオチドを構成する場合、複製をブロックする能力がないことに起因するコロニーの非存在は、任意の5’ヌクレオチドと共に改変ヌクレオチドを除去する薬剤で、本来の生成物分子を処理し、次いで、得られた二次生成物分子(共通の3’オーバーハングを含有するベクターとともに、改変ヌクレオチドおよび任意の5’ヌクレオチドに相補な3’オーバーハングを含む)をインキュベートすることによって生じるコロニーの他の非存在から区別され得る。
【0144】
(実施例4)
(触媒的なリボザイムエレメントの操作された選択的互換性による、複数の核酸分子の指向性連結)
図30は、指向性連結反応を示す。これは、互換性のあるリボザイム成分の使用を通じた、特定のエキソンの選択的な連結を可能にする。示されるように、転写物は以下において生成される:(i)第一エキソン(A)は、αI5γのII群イントロン由来の第一のリボザイム成分に連結された;(ii)第二エキソン(B)は、(a)またαI5γのII群イントロン由来の第二のリボザイム成分(これは、第一のリボザイム成分と互換性がある)、および(b)Lactococus lactiのLTRBイントロン由来の第三のリボザイム成分(これは、第二のイントロン成分と互換性がない)によって隣接される;ならびに(iv)第三エキソンは、LTRBイントロン由来の第四のリボザイム成分に連結される(これは、第三のイントロン成分と互換性があるが、第一イントロン成分とはない)。これら3つの転写物は、スプライシング条件下で共にインキュベートされ、そして示されるように、ABC生成物のみ(およびACまたは環状B生成物は含まない)が生成された。
【0145】
全部で9つのプラスミドが本研究において使用された:pJD20、pB.E5.D4、pD4.E3(dC).B(2)、pLE12、pB.5’Lac、p3’Lac.B、pD4.E3(dC)B(2).5’Lac、およびp3’Lac.B.E5.D4。2回のPCR増幅を、全長aI5γイントロンを含むプラスミドpJD20(Jarrellら、Mol.Cell.Biol.8:2361、1988)をテンプレートとして使用して実施した。第一の反応は、5’エキソンの一部(27nt)とともにイントロンの一部(ドメイン1〜3およびドメイン4の73nt)を増幅した。以下の使用したプライマー;
【0146】
【化1】
を設計し、その結果、PCR生成物は、その末端にBamHI部位およびSalI部位を有した。PCR生成物をBamHIおよびSalIで消化し、そしてPBS−ベクター(Stratagene)に連結し、同一の酵素で消化し、その結果、T7プロモーターの下流に位置した。生じたプラスミドをpB.E5.D4と称し、そしてB.5’γシャッフリングカセットをコードする(図31を参照のこと)。
【0147】
pJD20をテンプレートとして用いる第二のPCR反応は、イントロンの異なる部分(ドメイン4の残存する65ntならびにドメイン5〜6)を、3’エキソンの一部(29nt)と共に増幅した。使用したプライマーである
【0148】
【化2】
を設計し、その結果、PCR生成物は、独特のKpnI部位およびBamHI部位をその末端に有した。PCR生成物をKpnIおよびBamHIで消化し、そして同一の酵素で消化したPBS−ベクターに連結した。その結果、PCR生成物は、T7プロモーターの下流に位置した。得られたプラスミドを、pD4.E3(dC).Bと称した(図31を参照のこと)。
【0149】
pD4.E3(dC).Bプラスミドの配列分析は、3’エキソン配列中に期待しない点変異を示した。期待した配列は、
【0150】
【化3】
であり;観察した配列は、
【0151】
【化4】
であった。
【0152】
次いで、部位指向性変異誘発反応を、QuickChange(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene、カタログ番号200518)を用いて実施して、3’エキソン配列にさらなるBamHI部位を挿入した。用いたプライマーは、
【0153】
【化5】
と称した。部位指向性変異誘発反応の結果として作製されたプラスミドを、pD4.E3.(dC).B(2)と称し、そして3’エキソンの長さが13ntに短くなっている3’γ.Bシャッフリングカセットをコードした(図31を参照のこと)。
【0154】
2つのさらなるPCR反応を、天然の5’エキソンおよび3’エキソンに隣接する全長LTRBイントロンをコードするプラスミドpLE12(Millsら、J Bacteriol.178:3531、1996)をテンプレートとして使用して、実施した。第一の反応において、プライマー
【0155】
【化6】
を使用して、LTRBイントロンの一部(ドメイン1〜3)および5’エキソンの一部(15nt)を増幅した。PCR生成物をTaqポリメラーゼで作成し、そしてTopo(登録商標)TA Cloning(登録商標)キット(Invitrogen)を使用して、PCR2.1 Topoベクター(Invitrogen)にクローニングした。得られたプラスミドをpB.5’Lacと称し、そしてB.5’Lacシャッフリングカセットをコードした(図31を参照のこと)。
【0156】
同一のPCR生成物をまた、BamHIおよびSalIで消化し、そしてpD4.E3(dC).B(2)に連結し、同一の酵素で切断し、3’γ.B.5’LacシャッフリングカセットをコードするpD4.E3(dC)B(2).5’Lacを作製した(図31を参照のこと)。
【0157】
さらに、プラスミドpB.5’LacをSpeIおよびAsp718で消化し、いくつかの不要な制限部位を除去した。オーバーハングをKlenowフラグメントで充填し、そして得られた平滑末端を連結してこのベクターに封入した。これによって作製されたプラスミドを、pB.5’Lac(K)と称する(図31を参照のこと)。
【0158】
pLE12をテンプレートとして使用した第二のPCR反応は、プライマー
【0159】
【化7】
の、3’エキソンの一部(21nt)に結合するPTRBイントロンの一部(ドメイン4〜6)を増幅するための使用を含む。PCR生成物が独特のSacI部位およびBamHI部位をその末端に有するように、プライマーを設計した。Taqポリメラーゼを使用してPCR生成物を作製し、そしてpCR2.1 Topoベクターにクローニングした。得られたプラスミドを3’Lac.Bと称し、そして3’Lac.Bシャッフリングカセットをコードした(図31を参照のこと)。
【0160】
プラスミドp3’Lac.BをSacIおよびBamHIで消化して、そしてそれによって作製された1993bpのバンドを、GenecleanIIキット(BIO101)を用いてアガロースゲルから精製した。次いで、精製フラグメントを、同一の酵素で消化したpE5.D4に連結し、3’Lac.B.5’γシャッフリングカセットをコードするプラスミドp3’Lac.B.E5.D4を生成した(図31を参照のこと)。
【0161】
プラスミドpB.E5.D4、pD4.E3(dC).B(2)、pB.5’Lac、p3’Lac.BおよびpD4.E3(dC)B(2).5’LacをHindIIIで直線化し、T7 RNAポリメラーゼ(Stratagene、カタログ番号600123)を使用して、40℃で1時間、6μgの直線化テンプレートDNAおよび0.5mMの非標識ATP、CTP、GTPおよびUTPを含有する100μLの反応液中において、インビトロで転写した。これらの転写反応において生成されるRNAを、1UのRQ1 RNase−free DNaseを用いて処理し、フェノール−クロロホルムで抽出し、Sephadex G25カラムで脱塩し、そしてEtOHで沈澱した。引き続いて、沈澱を6μLの水中に再懸濁した。
【0162】
次いで、それぞれの再懸濁したRNA転写物の1μLを、100mM MgCl2、および0.5MのNH4Clまたは0.5Mの(NH4)2SO4のいずれかを含有する40mM Tris−HCl(pH7.6)中で、45℃で60分間実施したトランススプライシング反応に使用した。
【0163】
トランススプライシング反応後、逆転写/PCR反応を実施して、連結されたスプライシング生成物を同定した。検出された生成物は:(i)B.E5.D4およびD4.E3(dC).B(2)のトランススプライシングによって生成された連結aIγ5エキソンE5およびE3(図32、レーン1);(ii)3’Lac.Bおよび3’Lac.Bのトランススプライシングによって生成された連結LTRB 5’および3’エキソン(図33、レーン2);ならびに(iii)B.E5.D4、D4.E3(dC).B(2).5’Lacおよび3’Lac.Bのトランススプライシングによって生成された3分子の連結生成物(図33、レーン2および3)。
【0164】
(実施例5)
(キメラ生成物の増幅を有さない3’オーバーハング生成物連結のクローニング生成物)
本発明者らは、DOC連結反応の生成物を、細菌における複製のためのベクターに、キメラ増幅工程なしに直接クローニングし得ることを見出した。実施例2に上述されるように、本発明者らは、DOC実験において使用される場合に、指向的に連結され得るFlop、イントロン1およびFlipのPCR生成物を作製するキメラプライマーを設計した。さらに、PCR生成物のNaOH処理が、Flopエキソンに上流オーバーハング(これは、ApaIオーバーハングと互換性がある)およびFlipエキソンに下流オーバーハング(これは、PstIオーバーハングと互換性がある)を作製するように、プライマーを設計した。3つのフラグメント全てを、リガーゼならびにApaIおよびPstIで消化したpBluescript II SK(−)の存在下で共にインキュベートした。連結混合物のアリコートを、E.coliに直接形質転換し、そして期待したキメラクローンを容易に単離し、配列決定し、そして完全であることを見出した(データは示さず)。
【0165】
(実施例7)
(DNAオーバーハングクローニングによる複数のキメラ生成物の構築)
本明細書中に記載される手順の一般性を示すために、本発明者らは、実施例2の技術を適用し、そして種々の異なる分子に適用し、図35に示される5つの異なるキメラを作製した。5つのキメラ全てを、指向的な3分子の連結によって作製した。これらのキメラを、5’RNAオーバーハングにおいて充填するために、TthよりもM−MLV逆転写酵素を用いて作製したことに注意すべきである。M−MLV RTを用いる場合、いずれの連結点においてもエラーが検出されなかった。
【0166】
(他の実施形態)
当業者には、前述は、本発明の特定の好ましい実施形態の単なる記載であることが明白である;この記載は、添付の特許請求の範囲を参照して規定される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【技術分野】
【0001】
本願は、同時係属中の米国仮出願番号09/225,990および同60/114,909(これらの出願の各々は、1999年1月5日に出願された)に対して、優先権を主張する。これらの出願の各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(合衆国政府の補助金)
本明細書中に記載される研究のいくつかまたはすべては、米国国立衛生研究所からの助成金番号RO1 GM 52409、および全米科学財団からの助成金番号MCB9604458によって援助された;合衆国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
分子生物学の革命は、二本鎖DNAを切断し得、その結果、DNAフラグメント(このDNAフラグメントは、互いに連結されて新規ないわゆる「組換え」DNA分子を生成し得る)が産生される、酵素の発見と共に始まった(例えば、Cohenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 70:1293、1973;Cohenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 70:3274、1973を参照のこと;米国特許第4,740,470号;同第4,468,464号;同第4,237,224号もまた参照のこと)。この革命は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の発見によって拡張された。このPCRは、特定のDNAセグメントの迅速な増幅を可能にし、続いて切断され得、そして他のDNA分子に連結され得る大量の物質を産生する(例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;5,333,675号を参照のこと)。
【0004】
しかし、これらの消化および増幅技術の能力にも関わらず、実質的な改善の余地が残っている。「制限酵素」と呼ばれる消化酵素に対する依存性は、分子生物学的実験を非常に高価にし得る。さらに、これらの酵素の多くは、効率的ではないか、または所望されない要素が夾雑し得る粗調製物においてのみ利用可能である。
【0005】
最初に、PCR増幅は、伝統的な切り貼り(cut−and−paste)クローニング法に付随する多くの困難さをそれ自体避け得るようであった。なぜなら、PCRは、最初に制限酵素で切断されることなしに、他の分子に直接連結され得るDNA分子を生成すると考えられたからである。しかし、経験によって、大部分のPCR生成物は、直接的クローニングに抵抗性であることが示されている。この観察についての1つの可能性のある説明は、多くの好熱菌のDNAポリメラーゼ(最も一般に使用される酵素であるTaqを含む)が、末端の3’−dAMP残基をそれらが増幅する生成物に付加することを示す研究から生じた。Invitrogen(Carlsbad,CA)は、最近、その3’−dAMP残基が連結される分子が単一の不対3’−dTMP残基を含むようにプロセスされる場合に、このような末端dAMPタグ化生成物を直接的にクローニングするためのシステム(TA Cloning Kit(登録商標);米国特許第5,487,993号)を開発した。Invitrogenのシステムは、非常に有用であると判明したが、単一のヌクレオチドオーバーハング(A残基)のみを有する生成物の連結に制限されることによってそれ自体は適用において限定され、そして、連結されるDNA分子の3’末端においてオーバーハングが存在しなくてはならないという点においてさらに制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
核酸クローニングについての改善されたシステムの開発の必要性が存在する。特に所望されるシステムは、制限酵素に最小の依存性を有するDNA連結を可能にし、効率的な連結を提供し、そして広範な種々の化学構造を有するDNAの連結のために一般に有用である。最適なシステムは、方向付けられた連結(すなわち、一緒に連結されるDNA分子が、互いに1つの方向でのみ結びつけられる連結)さえ提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、核酸を互いに連結するための改善されたシステムを提供する。詳細には、本発明は、レシピエント分子に容易かつ直接的に連結され得るDNA生成物分子を産生するための技術を提供する。その生成物分子は、そのような連結を受けるために制限酵素を用いて切断される必要がない。本発明の好ましい実施形態において、そのDNA生成物分子は、反復するDNA合成反応を通して生成され、その結果、生成物分子が増幅された生成物分子である。
【0008】
本発明のシステムは、3’オーバーハングを有するか、5’オーバーハングを有するか、またはオーバーハングを有さない生成物分子を生成するための技術および試薬を提供し、そしてさらに、これらの生成物分子をレシピエント分子と連結するためのツールを提供する。ここでオーバーハングが利用され、オーバーハングの長さおよび配列は、実施者の要求に従って変化され得る。オーバーハングを含有する生成物は、任意の利用可能な手段(例えば、酵素的連結または宿主細胞への形質転換を含む)によって互いに連結され得る。例えば、少なくとも12ヌクレオチドのオーバーハングを含有する分子は、互いにアニーリングされ得、そして最初に連結されることなしにE.coliへの形質転換によって互いに連結され得る(例えば、Rashtchianら、Annalytical Biochemistry 206:91、1992を参照のこと)。
【0009】
本発明のシステムはさらに、生成物分子の方向付けられた連結のための方法(すなわち、分子の収集物中の特定の分子の選択的連結のための方法)を提供し、複数の異なる生成物分子が単一の連結反応中で産生される、エキソンシャッフリングの方法もまた提供する。本発明の好ましい実施形態は、機能的なタンパク質ドメイン、特に、保存された遺伝子ファミリー中で天然に見出されるドメインをコードする生成物分子の連結を包含する。本発明の代替的なまたはさらなる好ましい実施形態は、複数成分の連結反応を包含し、ここでは3つ以上の核酸分子が互いに連結される。いくつかの実施形態において、これらの複数の分子は、単一の配置でのみ連結され;他の場合では、複数の配置が達成され得る。
【0010】
本発明のDNA操作システムは、他の核酸操作システム(例えば、リボザイム媒介システム)を用いて容易に組み込まれ得、そしてまた自動化が可能である。詳細には、1つの局面において、RNAからなる一本鎖オーバーハングを有する二本鎖DNA分子が提供される。さらに、別の局面において、核酸分子のライブラリーが提供され、ここでライブラリーの各メンバーは、1)ライブラリーのすべてのメンバーに共通である少なくとも1つの核酸部分;および2)ライブラリーの異なるメンバーにおいて異なる、少なくとも2つの核酸部分を含む、核酸分子のライブラリーもまた、本発明によって提供される。好ましい実施形態において、ライブラリーの核酸部分の各々はタンパク質コード配列をコードし、そして各ライブラリーメンバーは、連続するポリペプチドをコードする。なお別の特に好ましい実施形態において、変動する核酸部分の各々は、タンパク質の機能的ドメインをコードする。この機能的ドメインは、好ましくは、組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子ファミリー、動物の脂肪酸シンターゼ遺伝子ファミリー、ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリー、ペプチドシンテターゼ遺伝子ファミリー、およびテルペンシンターゼ遺伝子ファミリーからなる群より選択される遺伝子ファミリーにおいて天然に見出されるものである。
【0011】
本発明のなお別の局面において、ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法が提供される。上記の方法は以下の工程を包含する:1)第1の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、RNAからなる少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;2)第2の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、上記第1の二本鎖DNA分子上のRNAオーバーハングに相補的な少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;および3)上記第1の二本鎖DNA分子および上記第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される、工程。特定の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも3つの二本鎖DNA分子を提供する工程および連結する工程を包含する。
【0012】
本発明のさらなる局面は、ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法を包含し、上記方法は以下の工程を包含する:1)第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、伸長反応の間にコピーされない少なくとも1つの塩基を含み、その結果、上記伸長反応は、第1のオーバーハングを含む生成物分子を産生する、工程;2)上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および3)上記第1の二本鎖DNA分子および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程。特定の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも3つの二本鎖DNA分子を提供する工程および連結する工程を包含する。
【0013】
本発明のなおさらなる局面において、ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法が提供され、上記方法は以下の工程を包含する:1)第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、少なくとも1つの潜在的な切断点を含む、工程;2)第1の二本鎖DNA分子を、上記潜在的な切断点で切断可能なプライマーの切断を生じる条件に曝して、その結果、上記第1のオーバーハングが、上記第1のDNA分子上で生成する、工程;3)上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および4)上記第1および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程。特定の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも3つの二本鎖DNA分子を提供する工程および連結する工程を包含する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)RNAからなる一本鎖オーバーハングを有する二本鎖DNA分子。
(項目2)核酸分子のライブラリーであって、該ライブラリーの各メンバーは、
ライブラリーのすべてのメンバーに共通である少なくとも1つの核酸部分;および
ライブラリーの異なるメンバーにおいて異なる、少なくとも2つの核酸部分
を含む、核酸分子のライブラリー。
(項目3)前記ライブラリーの核酸部分の各々が、タンパク質コード配列をコードし、そして各ライブラリーメンバーは、連続するポリペプチドをコードする、項目2に記載のライブラリー。
(項目4)前記変動する核酸部分の各々が、タンパク質の機能的ドメインをコードする、項目3に記載のライブラリー。
(項目5)前記機能的ドメインが、組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子ファミリー、動物の脂肪酸シンターゼ遺伝子ファミリー、ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリー、ペプチドシンテターゼ遺伝子ファミリー、およびテルペンシンターゼ遺伝子ファミリーからなる群より選択される遺伝子ファミリーにおいて天然に見出されるものである、項目4に記載のライブラリー。
(項目6)ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法であって、該方法は以下の工程:
第1の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、RNAからなる少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;
第2の二本鎖DNA分子を提供する工程であって、この二本鎖DNA分子は、上記第1の二本鎖DNA分子上のRNAオーバーハングに相補的な少なくとも1つの一本鎖オーバーハングを含む、工程;および
上記第1の二本鎖DNA分子および上記第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される、工程
を包含する、方法。
(項目7)ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法であって、該方法は以下の工程:
第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、伸長反応の間にコピーされない少なくとも1つの塩基を含み、その結果、上記伸長反応は、第1のオーバーハングを含む生成物分子を産生する、工程;
上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および
上記第1の二本鎖DNA分子および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程
を包含する、方法。
(項目8)ハイブリッド二本鎖DNA分子を生成する方法であって、該方法は以下の工程:
第1および第2のプライマーの伸長によって第1の二本鎖DNA分子を生成する工程であって、上記第1および第2のプライマーの少なくとも1つは、少なくとも1つの潜在的な切断点を含む、工程;
第1の二本鎖DNA分子を、上記潜在的な切断点で切断可能なプライマーの切断を生じる条件に曝して、その結果、上記第1のオーバーハングが、上記第1のDNA分子上で生成する、工程;
上記第1のオーバーハングに相補的な第2のオーバーハングを含む第2の二本鎖DNA分子を提供する工程;および
上記第1および第2の二本鎖DNA分子を互いに連結し、その結果、ハイブリッド二本鎖DNA分子が産生される工程
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、3’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための本発明のプロセスを示す。
【図2】図2は、テンプレート分子を、少なくとも1つのリボヌクレオチドプライマーを含む1つ以上のプライマーとハイブリダイズさせることによって、5’オーバーハングを産生するためのプロセスを示す。
【図3】図3は、1つ以上の5’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための本発明のプロセスを示す。
【図4−1】図4は、1つ(図4A)またはそれより多い(図4B)5’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための代替的な本発明のプロセスを示す。
【図4−2】図4は、1つ(図4A)またはそれより多い(図4B)5’オーバーハングを有するDNA生成物分子を生成するための代替的な本発明のプロセスを示す。
【図5】図5は、平滑末端を有する分子の連結を可能にするプロセスを示す。
【図6】図6は、組織プラスミノーゲンアクチベーター遺伝子ファミリーのメンバーを示す。
【図7】図7は、ヒトおよび動物の障害の処置のための薬物として現在使用されている特定のポリケチド化合物の一覧を示す。
【図8】図8は、エリスロマイシンおよびラパマイシンの産生の原因である細菌のポリケチドシンターゼ遺伝子の異なる機能的ドメインを示す。
【図9】図9は、エリスロマイシンおよびラパマイシンの産生の原因である細菌のポリケチドシンターゼ遺伝子の異なる機能的ドメインを示す。
【図10】図10は、特定のモジュラーポリケチドシンターゼ遺伝子のタンパク質機能的ドメインを示す。
【図11】図11は、薬剤として現在使用されているペプチドシンテターゼによって生成される生成物の一覧を示す。
【図12】図12は、特定のモジュラーペプチドシンテターゼ遺伝子のタンパク質機能的ドメインを示す。
【図13】図13は、srfAペプチドシンテターゼオペロンの構造を示す。
【図14】図14は、イソプレンビルディングブロックの重合を通してのイソプレノイドの合成を示す。
【図15】図15は、イソプレノイド、またはテルペンシンターゼによって触媒される、特定の環化および分子間結合形成を示す。
【図16】図16は、イソプレノイドシンターゼ中の天然のエキソンと機能的ドメインとの間の対応の概略図を表す。
【図17】図17は、方向付けられた連結反応の1つの一般的な例を示す。
【図18】図18は、本発明の特定の方向付けられた連結反応の模式図を示す。
【図19A】図19Aは、Flip(Genbank登録番号X64829)として公知のグルタミン酸レセプターエキソンのヌクレオチド配列を示す。
【図19B】図19Bは、Flop(Genbank登録番号X64830)として公知の利用されるグルタミン酸レセプターエキソンのヌクレオチド配列を示す。
【図20】図20は、本発明の方向付けられた連結反応において産生される増幅されたハイブリッド分子を示す。
【図21】図21は、図20のハイブリッド分子における連結接合部のヌクレオチド配列を示す。
【図22−1】図22は、ヒトβグロビン遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【図22−2】図22は、ヒトβグロビン遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【図22−3】図22は、ヒトβグロビン遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【図23】図23は、本発明の同一性エキソンシャッフリング反応を示す。
【図24】図24は、本発明の位置的エキソンシャッフリング反応を示す。
【図25】図25は、特定の本発明の方向付けられた連結技術のコンビナトリアルポテンシャルを示す。
【図26】図26は、本発明に従う、組み合わせたプライマーに基づく/リボザイム媒介核酸操作スキームの1つのバージョンを示す。
【図27】図27は、特定の本発明の方法の実施において利用され得るロボットシステムを示す。
【図28】図28は、3’オーバーハングを含む本発明の生成物分子を利用する方向付けられた連結反応の模式図を示す。
【図29】図29は、本発明の反応におけるプライマーの複製および/または連結の成功を決定するために使用され得る特定のバイオアッセイ技術の概略を示す。
【図30】図30は、リボザイムに媒介される方向付けられた連結反応を示す。
【図31】図31は、図30の反応において利用される構築物を示す。
【図32】図32は、図30の反応の生成物を示す。
【図33】図33は、図30の反応の生成物を示す。
【図34】図34は、DNAオーバーハングクローニング(「DOC」)を使用して生成される種々のキメラを示す。親の遺伝子を、1行目および2行目に示す。5つのキメラ遺伝子を、親の遺伝子の下に示す。ぎざぎざの端は、イントロン13および15の部分のみが増幅されたことを示す。キメラ遺伝子の長さ(塩基対で)が同定される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(定義)
「クローニング」−−用語「クローニング」は、本明細書中で使用される場合、事前に連結されていない核酸断片が互いに連結することを通じての新規な核酸分子の産生を意味する。このような連結によって産生される分子は、複製される前においてでさえ、本願の目的のための「クローン」と見なされる。
【0016】
「方向付けられた連結」−−用語「方向付けられた連結」とは、本明細書中で生成物分子に適用される場合、制限酵素で最初に切断されることなく、生成物分子が1つ以上のレシピエント分子に連結され得ることを意味する。好ましくは、生成物分子のプロセシングは、連結に先立って、全く必要とされない。
【0017】
「発現」−−核酸配列の「発現」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、1つ以上の(i)DNA配列からのRNAテンプレートの産生;(ii)mRNAを産生するプレmRNAのプロセシング(例えば、スプライシングおよび/または3’末端形成);および(iii)mRNAの翻訳が生じたことを意味する。
【0018】
「遺伝子」−−本発明の目的のために、用語「遺伝子」とは、その当該分野で理解されている意味を有する。しかし、当業者は、用語「遺伝子」が、当該分野で種々の意味を有し、いくつかの遺伝子は、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)および/またはイントロン配列を含み、そして他の遺伝子は、コード配列に限定されないことを理解する。当該分野の「遺伝子」の定義は、タンパク質をコードしないが、むしろ機能的RNA分子(例えば、tRNA)をコードする核酸に対する言及することもさらに理解され得る。明確にする目的のために、本発明者らは、本明細書中で使用されるように、用語「遺伝子」は、一般的に、タンパク質をコードする核酸の一部をいうことに注目する;この用語は、必要に応じて、調節配列を含み得る。この定義は、用語「遺伝子」の非タンパク質コード発現単位への適用を除外することを意図するのではないが、むしろ、大部分の場合において、この文書において使用される場合、この用語は、たまたまタンパク質コード核酸に適用されることを明らかにすることを意図する。
【0019】
「遺伝子フラグメント」−−「遺伝子フラグメント」は、この用語が本明細書中で使用される場合、完全なタンパク質コード分子よりも短いタンパク質コードDNA分子の断片を意味する。好ましくは、このフラグメントは、少なくとも約12塩基長、より好ましくは、少なくとも約15〜20塩基長であり、そして少なくとも数百から数千塩基対長であり得る。このフラグメントは、タンパク質コード配列を含む必要はないが、むしろもともとの遺伝子の非コード配列を表し得ることが理解されるべきである。
【0020】
「ハイブリッド核酸」−−「ハイブリッド核酸」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、少なくとも第1のセグメントおよび第2のセグメントを含む核酸分子を意味し、これらの各々は、天然に存在するが、天然において他と直接的に連結され、この第1および第2のセグメントが、ハイブリッド核酸において互いに直接的に連結される。
【0021】
「オーバーハング配列」−−「オーバーハング配列」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、二本鎖領域から突き出した核酸の一本鎖領域を意味する。
【0022】
「プライマー」−−用語「プライマー」とは、本明細書中で使用される場合、テンプレート核酸分子に対して伸長された能力によって特徴付けられるポリヌクレオチド分子をいい、その結果、その配列がテンプレート分子の少なくとも一部の配列と相補的であるポリヌクレオチド分子が、プライマーと連結される。好ましいプライマーは、少なくとも約15nt長である。特に好ましいプライマーは、約18〜30の範囲内の長さを有し、好ましくは約20ヌクレオチドよりも長い。
【0023】
「生成物分子」−−「生成物分子」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載されるように産生される核酸分子である。好ましくは、この生成物分子は、本発明に従うオリゴヌクレオチドプライマーの伸長によって産生される。生成物分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、二本鎖部分を含む生成物分子はまた、一本鎖の3’オーバーハングまたは5’オーバーハングを含む。他の好ましい実施形態において、生成物分子は平滑末端を有する。生成物分子が、反復するDNA合成反応において産生される場合(例えば、PCR反応)、これは、「増幅生成物」といわれる。
【0024】
「レシピエント分子」−−「レシピエント分子」は、この用語が本明細書中で使用される場合、生成物分子が連結される核酸分子である。レシピエント分子は、ベクターであり得るが、ベクターであることが必須であるわけではない。一般的に、レシピエント分子は、実施者によって選択される任意の分子であり得る。
【0025】
「ベクター」−−「ベクター」は、この用語が本明細書中で使用される場合、分子のインビボまたはインビトロ複製を方向付けるに十分な配列を含む核酸分子である。ベクターがインビボ複製配列を含む場合、これらの配列は、自己複製配列、または細胞内にすでに存在する別の核酸へのベクターの組込みを方向付けるに十分な配列であり得、その結果、ベクター配列は、すでに存在する核酸の複製の間に複製される。このようなすでに存在する核酸は、細胞に対して内因性であり得るか、または実験的操作を通して細胞に導入され得た。好ましいベクターは、外来性核酸分子(好ましくは、本発明の生成物分子)がベクターに導入および連結され得るクローニング部位を含む。特に好ましいベクターは、ベクターに導入された核酸配列のインビボ発現またはインビトロ発現を方向付けるそれらの能力について選択される制御配列をさらに含む。このような制御配列には、例えば、転写制御配列(例えば、1つ以上のプロモーター、調節結合部位、エンハンサー、ターミネーターなど)、スプライシング制御配列(例えば、1つ以上のスプライシングドナー部位、スプライシングアクセプター部位、スプライシングエンハンサーなど)、および翻訳制御配列(例えば、シャイン ダルガルノ配列、開始コドン、終止コドンなど)を含み得る。ベクターはまた、いくつかのコード配列を含み得、その結果、ベクターに導入された配列の転写および翻訳は、融合タンパク質の産生を生じる。
(特定の好ましい実施形態の説明)
(3’オーバーハングを有する生成物分子)
1つの局面において、本発明は、レシピエント分子に直接連結され得る3’オーバーハングを有する生成物分子を生成するための試薬および方法を提供する。3’オーバーハングの長さおよび配列は、使用者によって決定され得る。
【0026】
図1は、本発明のこの局面の1つの実施形態を示す。この図において示されるように、テンプレート核酸分子の標的領域に隣接する第1のプライマーおよび第2のプライマーが提供される。少なくともプライマーの1つは、その5’末端に1つ以上のリボヌクレオチドを含む。詳細には、プライマー1がxヌクレオチド長であり、プライマー2がyヌクレオチド長であるならば、n1=0〜xの全体数(0を含む)であり、そしてn2=0〜yの全体数(0を含む)である。但し、(i)n1およびn2は、両方とも0ではあり得ないこと;および、伸長反応において使用されるDNAポリメラーゼがRNAプライマーを伸長し得る場合、(ii)n1は単にxであり得ること(またはn2は単にyであり得ること)を除外する。DNAポリメラーゼの広範な種々の特徴(例えば、RNAが単独で、またはハイブリッドRNA/DNA分子の一部として示されるか否かに関わらず、RNAプライマーを伸長する能力、RNAをDNAにコピーする能力)は、当該分野で周知である(例えば、製造業者のカタログ、Myersら、Biochem.6:7661、1991を参照のこと)。そしてこのような特徴が特定のDNAポリメラーゼについて公知でない場合、慣用的なアッセイは、これらを決定するために利用可能である(例えば、Bebenekら、Met.Enzymol.262:217、1995を参照のこと;実施例3もまた参照のこと)。
【0027】
本発明の特定の好ましい実施形態において、プライマー1および2の各々は、少なくとも1つの5’末端リボヌクレオチド残基を含む。他の好ましい実施形態において、少なくとも1つのプライマーは、少なくとも2つのリボヌクレオチド残基を含み、これらのうちの1つは、5’末端残基である。このプライマーは、少なくとも3、4、5、6〜10、またはそれよりも多くのリボヌクレオチド残基を含み得、そしてさらに、上記のように、完全にRNAであり得る。好ましくは、このリボヌクレオチド残基は、互いに連続している。
【0028】
プライマー1およびプライマー2の各々のヌクレオチド配列は、実施者により選択され、そして標的核酸の配列と十分に相補的である必要はない。当該分野において公知のように、完全な相補性は、首尾のよいDNA合成には必要とされないが、一般に、プライマーの少なくとも3’末端ヌクレオチドがテンプレートと完全に対合することが所望される。しかし、プライマーの5’端は、対合することが全く必要とされず、そしてさらなる配列をこのプライマー中に含めることによって、標的配列にさらなる配列を付加することが当該分野において一般的である。当然、テンプレートとハイブリダイズしない伸長可能な3’末端の5’の部分を、プライマーに含め、そしてまた、このテンプレートとハイブリダイズするなおさらなる5’部分を含めることもまた受け入れられ得る。本発明の目的のために、プライマー配列における任意のこのようなバリエーション、または任意の他の利用可能なバリエーションは、(i)少なくとも1つのプライマーがこのプライマーの5’端に存在するかまたは、このプライマーから除去されている際には、このプライマーの新しい5’端を作製するか(例えば、アルカリ処理、好ましくは続いて、キナーゼ処理によって)のいずれかであるリボヌクレオチドを含み;および(ii)各プライマーが、生成物分子が生成される反応条件下で十分満足にかつ十分特異的にハイブリダイズする限り、受け入れられ得る。
【0029】
プライマー設計の他の考慮は、当該分野において周知であり(例えば、Newtonら(編)、PCR:Essential Data Series,John Wiley&Sons,New York,New York,1995;Dieffenbach(編),PCR Primer:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1995;Whiteら(編),PCR Protocols:Current Methods and Applications;Methods in Molecular Biology,The Human Press,Totowa,NJ,1993;Innisら、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,San Diego,CA,1990;Griffinら(編),PCR Technology,Current Innovations,CRC Press,Boca Raton,FL 1994を参照のこと(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される))。例えば、ハイブリダイズしている残基のおよそ50%がGまたはCであることが、しばしば、所望され;そして最適な伸長のために、3’末端残基もまたGまたはCであることが所望され得る。
【0030】
プライマーの5’末端残基として(または除去が新しい5’末端プライマー残基を作製する残基として)少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む、図1に示されるようなプライマーは、当該分野において利用可能な任意の技術によって調製され得る。例えば、このようなプライマーが、化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチド試薬を供給する会社(例えば、Oligos,Etc.,Inc.Bethel,ME)は、代表的に、実施者により好まれるように、ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチド、またはRNAのみのヌクレオチドを調製する。あるいは、RNA配列は、標準的な技術(例えば、Mooreら、Science 256:992,1992;Smith(編),RNA:Protein Interactions,A Practical Approach,Oxford University Press,1998(これらは、特に、RNA連結による部位特異的な改変を含むRNA分子の構築を議論している;これらの参考文献の各々は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)を使用してDNA配列に連結され得る。
【0031】
図1に示されるにように、伸長反応は、DNA合成が第1および第2のプライマーの各々からプライムされるように行われ、そして少なくとも一方の鎖の5’端に少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を有する二本鎖DNA/RNAハイブリッド分子が、作製される。本質的ではないが好ましくは、伸長反応に利用されるDNAポリメラーゼは、外来の3’ヌクレオチドを付加しないものである。また、上記のように、このプライマーの一方または両方が、その3’残基としてリボヌクレオチドを有する場合、伸長工程に利用されるDNAポリメラーゼは、リボヌクレオチドプライマーから伸長し得るものでなければならない。
【0032】
図1は、次いで、ハイブリッド分子がリボヌクレオチド残基を除去する処理に曝されることを示す。図1に示されるように、この処理は、上昇したpH(例えば、水酸化ナトリウム[NaOH]のような塩基での処理)に曝される。あるいは、DNA残基を妨げることなくRNA残基を除去する任意の他の処理(例えば、RNaseに曝すことなど)は、この工程に用いられ得る。
【0033】
リボヌクレオチド残基がハイブリッド分子から除去される場合、得られる分子は、二本鎖部分および少なくとも一方のその端に一本鎖3’オーバーハングを残す。図1は、両端に一本鎖3’オーバーハングを有する生成物分子を示す。このオーバーハングの配列および長さは、このプライマーの5’端に存在するRNAの配列および長さによって決定された。明らかに、オーバーハングの任意の配列および長さは、選択され得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、オーバーハングの配列および長さは、市販の制限酵素による二本鎖DNAの切断によって生成されるものに対応し、その結果、この生成物分子は、その酵素で切断されているレシピエント分子に連結され得る。3’オーバーハングを残す種々の酵素が、当該分野において公知であり、AatII、AlwnI、NsiI、SphIなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
他の好ましい実施形態において、3’オーバーハングの配列および長さは、別の本発明の生成物分子において作製される3’オーバーハングを有する塩基対に対して選択され、その結果、この2つの分子は、共に容易に連結され得る(例えば、実施例1を参照のこと)。
【0035】
さらに、生成物分子の2つの端での3’オーバーハングは、同じ配列または長さを有することを必要としないことが理解される(例えば、実施例1を参照のこと)。1つのみの配向においてレシピエント分子に連結され得るか、または特定の配置において2つの異なるレシピエント核酸分子(例えば、3様式の連結)に連結され得る、核酸分子を作製することが、しばしば所望される。従って、本発明の生成物分子の3’オーバーハングの配列および長さを操作し得ることが非常に価値がある。
【0036】
図1を参照して理解され得るように、リボヌクレオチド除去処理により残される端の性質は、その後の連結反応における生成物分子の挙動に影響し得る。特に、リボヌクレオチドのアルカリ加水分解は、5’−リン酸基ではなく5’−OH基を残す。当該分野において公知であるように、少なくとも1つの末端リン酸基は、代表的には、核酸分子の首尾のよい連結に必要とされる。従って、図1に示される生成物分子が適切な末端リン酸基を欠くレシピエント分子に連結されるべきである場合(例えば、ホスファターゼでの処理に曝されるために)、連結の前に、レシピエント分子に5’リン酸基を付加することが所望される。任意の利用可能な技術が、このようなリン酸基付加を達成するために利用され得;最も一般的には、リン酸基は、ポリヌクレオチドキナーゼでの処理によって付加される。
【0037】
図1に示される生成物分子は、任意の所望のレシピエント分子に連結され得る。好ましくは、レシピエント分子は、生成物分子における少なくとも1つの3’オーバーハングの少なくとも一部に相補的である、少なくとも1つの3’オーバーハングを有する。このレシピエント分子は、3’末端部分が生成物分子の3’オーバーハングの3’末端部分に相補的であるが生成物分子3’オーバーハングに相補的でない3’オーバーハングを有する場合、1以上のギャップがハイブリダイゼーション後に存在し、このギャップが、連結前にDNAポリメラーゼで埋められ得ることが理解される。生成物分子の3’オーバーハングの配列および長さは、実施者により選択されるので、このアプローチは、完全な3’オーバーハングハイブリダイゼーションが生じた場合に存在しない組換え分子に配列を付加するために用いられ得る。本発明の目的のために、生成物分子およびレシピエント分子の相補性3’末端部分は、少なくとも1ヌクレオチドの長さであるべきであり、そして2個、3個、4個、5個、6個〜10個のヌクレオチドの長さ、またはそれを超える長さであり得る。特定の好ましい実施形態において、相補性3’末端部分は、約6個未満のヌクレオチドの長さであり、その結果、連結(通常、4℃または14℃で行われる)の効率が保存され、そしてより長い配列のアニーリングと関連する問題が、回避される。
【0038】
好ましいレシピエント分子としては、線状ベクターが挙げられるがこれに限定されない。このようなベクターは、例えば、生成物分子に存在するオーバーハングに相補的な3’オーバーハングを生成する制限酵素での消化によって線状化され得る。あるいは、このような線状ベクターは、実施者により、他の生成物分子に存在する3’オーバーハングと適合するように選択される1以上の3’オーバーハングを含む、本明細書中に記載されるような生成物分子として調製され得る。
【0039】
当業者は、生成物分子が本発明に従って容易に作製され得、その結果、所定の生成物分子の各端が異なる3’オーバーハングを有することを理解する。このような分子は、指向性クローニング実験において使用され得、ここでそれらは、単一の配向においてのみ、1以上の他の分子に連結され得る。このような指向性連結ストラテジーは、3以上の分子が互いに連結されることが所望される場合に特に有用である。このような多成分連結反応において、個々の分子による自己連結の可能性を最小化し、そしてまた、分子が不適切な配向にある1以上の分子と一緒に連結する機会を低減することは、しばしば有用である。
【0040】
(5’オーバーハングを有する生成物分子)
図2〜4は、5’オーバーハングを有する生成物分子を生成するための本発明のストラテジーを示す。例えば、図2に示されるように、テンプレート分子は、少なくとも1つのリボヌクレオチドを含む1以上のプライマーとハイブリダイズされ得る。本発明のこの実施形態に関して、リボヌクレオチドがこのオリゴヌクレオチドの5’末端に位置されることは必要とされないが、これは受け入れられ得る。プライマーは、2、3、4、5、6〜10またはそれよりも多くのリボヌクレオチドを含み得、そして伸長反応に利用されるDNAポリメラーゼがリボヌクレオチドプライマーを伸長する場合には、全体的にリボヌクレオチドであり得る。すなわち、図2において、n1およびn2の少なくとも1つは、1以上の全ての数であり、そしてn3およびn4は、各々、0以上の全ての数である。図3に示される特定の本発明の実施形態は、2つのプライマーを利用する。当業者は、各プライマーが伸長を可能にするに十分満足にテンプレート分子とハイブリダイズする、プライマーの3’残基で終結する部分を含むことを理解する。しかし、このプライマーの残部の配列は、テンプレート分子の配列と相補的である必要がない。さらに、当業者はまた、用いられているDNAポリメラーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を含む場合、エキソヌクレアーゼ活性が伸長が生じ得るプライマー中の位置に戻って破壊することを可能にする限り、プライマーにおいて最も3’の残基がテンプレートとハイブリダイズすることがさらに必須ではないことを理解する。
【0041】
プライマーとのハイブリダイゼーション後に、伸長反応は、リボヌクレオチドをコピーしないDNAポリメラーゼを用いて行われる。例えば、本発明者らは、VentR(登録商標)およびVentR(登録商標)(エキソ(exo)-)がテンプレートとしてリボヌクレオチド塩基を使用しないことを見出した(実施例1を参照のこと);対照的に、TthおよびTaqポリメラーゼは、もちろん、逆転写酵素と同様に、リボヌクレオチドを複製し得ることが報告されている(Myersら、Biochem.6:7661、1991)。他のDNAポリメラーゼは、標準的技術、または例えば、実施例3に記載されるような技術に従ってリボヌクレオチドをコピーするそれらの能力について試験され得る。
【0042】
図2に示される伸長反応は、所望される場合、増幅反応として繰り返され得る。図2に示される実施形態は、生成物が2つの5’オーバーハングを有する二本鎖分子(これらの各々は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む)であるこのような増幅を示す。当業者は、各5’オーバーハングの配列および長さ(ならびにリボヌクレオチド組成)が、実施者により選択されること、ならびに示される2つの生成物分子のオーバーハングが同じでも異なっていてもよいことを理解する。
【0043】
次いで、この生成物分子は、生成物分子の少なくとも5’末端残基に相補的である5’オーバーハングを含む1以上のレシピエント分子とハイブリダイズされ得る。ギャップがハイブリダイゼーション後に残っている場合、それらは、公知の技術に従ってDNAポリメラーゼにより埋められ得る。ギャップがリボヌクレオチド残基を含む場合、このギャップが埋められることを保障するために、RNAをコピーするDNAポリメラーゼを用いることが好ましくあり得る。上記のように、このようなDNAポリメラーゼとしては、例えば、Tth、Taq、および逆転写酵素が挙げられる。他のDNAポリメラーゼは、公知の技術、または例えば、実施例3に記載される技術に従って、RNAをコピーするそれらの能力について試験され得る。
【0044】
一旦、任意のギャップが埋められると、この生成物分子およびレシピエント分子は、一緒に連結され得る。DNAリガーゼは、(i)隣接するデオキシリボヌクレオチドの間;(ii)デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドとの間;または(iii)隣接するリボヌクレオチドの間のニック(nick)を閉じることが公知である。従って、DNA残基およびRNA残基の両方を含むハイブリッド分子が、生成され得る。この分子は、標準的な技術に従ってインビトロでか、またはこのような分子をコピーし得る宿主細胞中への導入後にインビボでかのいずれかで、DNAへとコピーされ得る(例えば、Escherichia coliは、デオキシリボヌクレオチドと塩基対合するリボヌクレオチドを除去し、そして置換し得ることが報告されている−−Sancar、Science
266:1954、1994を参照のこと)。あるいは、連結の実行ではなく、ハイブリダイズした化合物をDNAに複製することが所望され得る(例えば、DNAプライマーを用いるPCRによってか、またはリボヌクレオチドをコピーし得るDNAポリメラーゼを用いるPCRによって)。また、いくつかの場合、例えば、酵母細胞の同時形質転換について当該分野において公知であるように、連結が、インビトロではなくインビボで達成され得ることが言及されるべきである。
【0045】
図2に示されるように、生成物分子は、単一のレシピエント分子のみで、および1つの端にて連結される。当業者は、生成物分子が代わりに単一のレシピエント分子にか、または2つの異なるレシピエント分子にかのいずれかで、その端の両方に連結され得ることを理解する。
【0046】
図3は、1以上の5’オーバーハングを有する生成物分子を作製する代替アプローチを示す。この実施形態において、リボヌクレオチドプライマー残基およびRNAをコピーし得ないDNAポリメラーゼを用いる代わりに、本発明者らは、プライマーにおける改変塩基を利用する。この改変塩基は、DNAポリメラーゼによってコピーされない。広範な種々の改変塩基が当該分野において公知である(例えば、米国特許第5,660,985号を参照のこと;またはOligos,Etc.[Bethel,ME]により提供されるカタログのような種々のカタログもまた参照のこと);特定のDNAポリメラーゼによりコピーされないものは、例えば、製造業者のカタログを参照することによって、既知の技術に従う慣用的なスクリーニングによって、または例えば、実施例3に記載されるように、同定され得る。
【0047】
改変塩基は、標準的な技術(例えば、Sancar、Science 266:1954,1994)に従って、改変塩基をコピーするDNAポリメラーゼを用いるインビトロまたはインビボでのDNA複製によってか、あるいは塩基の除去、続いてギャップの修復によってかのいずれかで、レシピエント分子へのその連結の前または後に、生成物分子から除去され得る。
【0048】
図4は、少なくとも1つの5’オーバーハングを有する生成物分子を作製するための本発明の実施形態を示す。図4に示される特定の実施形態において、本発明のストラテジーは、1個(図4A)または2個(図4B)の3’オーバーハングを含む出発分子に適用され、その結果、この出発分子は、3’オーバーハング含有化合物から5’オーバーハング含有分子に変換される。しかし、当業者は、同じアプローチが平滑末端であるか、または1個または2個の3’または5’オーバーハングを含むかのいずれかである出発分子に、1個または2個の5’オーバーハングを付加するために十分同様に適用され得ることを理解する。
【0049】
図4に示される出発物質は、任意の利用可能な手段によって得られ得る。この分子は、1個または2個の3’オーバーハングを有し得(R1およびR2の少なくとも1つが、少なくとも1個のヌクレオチドの長さであることを意味する)、そして例えば、前駆体フラグメントの制限エンドヌクレアーゼ切断によってか、ポリメラーゼ連鎖増幅によってか、または任意の他の手段によって、生成され得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、出発分子は、PCRにより生成され、そして上記のように、各端に、1個の3’dATPを含む。図4Aは、1個のみの3’オーバーハングを有する出発分子への本発明の方法の適用を示す;図4Bは、2個の3’オーバーハングを有する出発分子への本発明の方法の適用を示す。
【0050】
図4Aを参照すると、出発物質は、出発分子の3’オーバーハング残基に実質的に隣接する出発分子中の第1配列とハイブリダイズする第1部分、出発分子の3’オーバーハングの少なくとも1つの残基と整列しかつハイブリダイズし得ない第2部分、および出発分子と整列しないが、出発分子の3’オーバーハングの最後の残基を通り越して(プライマーにおける5’)伸長する第3部分を含む少なくとも1つのプライマーとハイブリダイズされる。
【0051】
プライマーの第1部分の長さおよび配列は、出発分子の3’オーバーハングに隣接する出発分子の配列によって決定される。プライマーの第1部分によるハイブリダイゼーションは、3’オーバーハングの少なくとも1つの残基がプライマーの第2部分と整列しかつハイブリダイズし得ない限り、3’オーバーハングへと伸長し得る。プライマーの第2部分の長さおよび配列は、第2部分が3’オーバーハングの少なくとも1つの残基と、好ましくは(しかし、本質的ではなく)少なくとも3’末端残基とハイブリダイズし得ないという点で、出発分子の3’オーバーハングの長さおよび配列によって、ある程度まで決定される。このようなハイブリダイゼーションが回避される限り、プライマーのこの第2部分の正確な配列が、実施者により選択され得る。プライマーの第3部分の長さ(すなわち、図4Aにおけるnの値、これは、1以上の全ての数である)および配列(すなわち、図4AにおけるNの同一性)もまた、実施者により決定される。この第3部分は、生成物分子において5’オーバーハングとなる。
【0052】
図4Aに示されるように、本発明のプライマーからの1回または複数回の伸長が、行われる。第2プライマーの非存在(ならびにプライマーと出発分子の3’オーバーハングとの間のミスマッチ、これは出発分子のその鎖の3’端の伸長を妨害する)に起因して、ただの線形的であり、そして指数関数的ではない伸長が達成されることが、当業者によって理解される。もちろん、この伸長反応に用いられるDNAポリメラーゼが、1以上の末端3’残基を付加するDNAポリメラーゼである場合、この生成物分子は、3’オーバーハングおよび5’オーバーハングを有し得る。
【0053】
一旦、5’オーバーハングを有する生成物分子が生成されると、これは5’オーバーハングもまた含む、任意のレシピエント分子(この少なくとも一部が生成物分子の5’オーバーハングの一部に相補的である)とハイブリダイズされ得る。このハイブリダイズした化合物は、各鎖上にニック(または、生成物分子およびレシピエント分子の5’オーバーハングが長さにおいて完全には一致していない場合、ギャップをさらに含み得る)、および生成物分子の5’オーバーハングの直前に少なくとも1つのミスマッチを含む。次いで、このハイブリダイズした化合物は、ミスマッチ塩基(これは、プライマーの第2部分とハイブリダイズしない出発分子の3’オーバーハングの部分に対応する)を除去するために、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性に曝される。次いで、消化した化合物は、エキソヌクレアーゼ消化により作製されたギャップを埋めて、そして続いて任意の残っているニックを修復するように連結するために、DNAポリメラーゼに曝される。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素は、当該分野において周知であり(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Pfu、VentR(登録商標)、Deep VentR(登録商標)などを含む);他の酵素は、標準的な技術に従ってそれらの能力について試験され得る。
【0054】
当業者は、図4Aに示される方法が3’オーバーハングの位置に依存して出発分子のいずれかの鎖に適用され得ることを理解する。図4Bに示されるように、この方法は、同時に両方の鎖にさらに適用され得るが、各鎖について一回の伸張反応のみを実行するかまたは独立した伸長反応を実行することは、このような実施形態にとって重要である。増幅(すなわち、複数回の変性および伸長)は、実行されない。なぜなら、このような増幅は、5’オーバーハングおよびこの5’オーバーハングのすぐ3’にミスマッチを有する分子ではなく、プライマーによって運命付けられる配列を有する平滑末端分子(または、3’ヌクレオチドを付加するDNAポリメラーゼが用いられる場合には、3’オーバーハングを有するもの)の生成を生じるからである。
【0055】
図4Bに示されるように、2つの3’オーバーハングを有する出発分子は、本発明の方法を適用することによって、2つの5’オーバーハングを含む生成物分子へと変換される。この出発分子は、図4Aの考察において上記されるような第1部分、第2部分および第3部分を含む、2個の本発明のプライマーとハイブリダイズされる。次いで、各プライマーは、一回の(または独立した)伸長反応において伸長される。両方の伸長反応が、同時にまたは同じ厳密な出発分子において実行されることが必要とされないことは、当業者によって理解される。各プライマーの伸長は、異なる反応ベジクル(vessicle)においてさらに実行され得る。
【0056】
伸長反応において生成される二本鎖分子の各々は、配列および長さが第3部分のものに対応する、単一の5’オーバーハングを有する。次いで、これらの二本鎖分子の鎖は、互いに分離される。個々の鎖は、所望される場合に別々に精製され得るが、これは、必要とされない。次いで、鎖は、(それらが、一緒ではない場合)一緒に混合され、そしてアニーリングされ、その結果、プライマーの伸長により合成された2個の新しい鎖は、互いにアニーリングする機会を有する。このアニーリング反応の生成物は、2個の5’オーバーハングを有する本発明の生成物分子である。理解されるように、これらのオーバーハングは、長さおよび/または配列が同じでも異なっていてもよい。
【0057】
この生成物分子は、1以上のレシピエント分子とハイブリダイズされ得、このレシピエト分子の各々は、5’末端部分(少なくとも1個のヌクレオチドの長さ)が生成物分子の5’オーバーハングの(同じ長さの)5’末端部分と相補的である5’オーバーハングを有する。ハイブリダイゼーション後に残っている任意のギャップが、DNAポリメラーゼで埋められ得;次いで、生成物分子およびレシピエト分子が、一緒に連結され得る。
【0058】
(平滑末端生成物分子)
図5は、平滑末端分子の連結を可能にする本発明の実施形態を示す。示されるように、一緒に連結されるべき平滑末端出発分子が、提供される。このような分子は、例えば、1以上の制限酵素での前駆体の消化(必要に応じて、続いて、任意のオーバーハング端を埋めることまたは戻って破壊すること)、PCR(例えば、外来3’ヌクレオチドを付加しないDNAポリメラーゼの使用――参照は、特定のDNAポリメラーゼの特徴を決定するために製造業者のカタログに対してなされ得る。例えば、VentR(登録商標)は、95%よりも多く平滑末端を生じることが報告されており;VentR(登録商標)(エキソ(exo)-)は、任意のヌクレオチドのうち、約70%の平滑末端および30%の1個のヌクレオチドの3’オーバーハングを生じることが報告されている;Pfuは、平滑末端分子のみを生じることが報告されている)、化学合成などを含む、任意の利用可能な技術によって調製され得る。出発分子は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。図5に示されるように、この出発分子は、二本鎖である。
【0059】
出発分子は、一緒に連結されるべき2つの異なる出発分子の少なくとも1つの末端残基に各々がハイブリダイズする架橋分子にハイブリダイズされる。明確には、出発分子が2本鎖である場合、これらは架橋分子に曝露される前に、架橋分子との首尾よいハイブリダイズか生じ得るように変性されるべきである。架橋分子は、各出発分子の1つより多くの残基にハイブリダイズし得、そして/または2つの出発分子にハイブリダイズする部分の間に、ハイブリダイズしない部分を含み得る。架橋分子はまた、ハイブリダイズ後にそれらが互いに隣接するに十分な長さを有し得るか、または、ギャップが、個々の架橋分子の間でハイブリダイズした化合物に存在するに十分な短さであり得る。好ましくは、少なくとも1つのプライマーが、ハイブリダイズされた化合物の最も3’で出発する分子の3’末端にハイブリダイズする。このプライマーは、所望する場合、5’オーバーハングが生じるように末端を過ぎて伸長され得る。そのようなオーバーハングは、図5に示されない。
【0060】
次いで、ハイブリダイズした化合物が、利用可能な技術の任意の集合によって2本鎖DNA分子に変換される。例えば、ギャップは、DNAポリメラーゼを用いて充填され得、そして任意の残存するニックが、DNAリガーゼを用いて閉じられる。または、一方の鎖にギャップが存在しない場合、その鎖は、最初に連結され得、そしてインビトロまたはインビボにおいて、他方の鎖におけるギャップを閉じるためか、もしくは置換鎖を合成するために、DNAポリメラーゼが続いて適用される(例えば、出発分子に対して最も3’位置にハイブリダイズした架橋分子からプライムされる)。本発明の1つの好ましい実施形態において、ギャップは充填され、そしてニックが閉じられ、次いで組換え分子の全体が、PCR増幅によって複製される。所望される場合、1つ以上の3’末端残基を添加するDNAポリメラーゼが利用され得、その結果、生じた増幅生成物は、1つ以上の3’オーバーハングを有する可能性が高い。上記のように、そのような生成物は、Invitrogen TA Cloning Kit(登録商標)システムの使用において生じるように、相補的3’オーバーハングで別の分子に容易に連結され得る。
【0061】
(適用)
上記に提供された生成物分子および連結ストラテジーは、種々の任意の状況において有用である。制限のためではなく明確化のみの目的で、本発明者らは、本明細書でより詳細に、これらの状況のいくつかを議論する。
【0062】
上記のように、本発明は、他の分子に直接連結され得る(すなわち、最初に制限酵素を用いて消化されることを伴わない)核酸分子を提供するための技術および試薬を生み出した。本発明はまた、そのような連結を達成するための技術を提供する。本発明は、任意の配列の核酸分子を互いに連結するために使用され得、従って、遺伝子クローニングの分野において最も広く潜在的な適用を有する。
【0063】
本発明の技術および試薬が、DNA分子の特定の配列、それらのタンパク質をコードする能力、または任意の他の特徴に関わらず、任意のDNA分子を他の任意のDNA分子に連結するために利用され得ることを、当業者は理解する。この特徴は、例えば、別のフラグメントにおいて所望されない切断を生成する特定の酵素で1つのフラグメントの切断を避けることか、または使用されるタンパク質酵素の挙動を適応させるために他の調整がなされることが所望され得る場合に、連結されている分子の正確な配列がしばしばクローニングストラテジーの設計に影響を与え得る従来の制限エンドヌクレアーゼ依存のクローニング系から、本発明の系を区別する。
【0064】
(タンパク質をコードする遺伝子の生成)
本発明の特定の好ましい実施形態において、本発明の連結反応に含まれる1つ以上のDNA分子は、オープンリーディングフレーム(すなわち、タンパク質をコードする配列)を含む。特に好ましい実施形態において、一緒に連結される少なくとも2つのDNA分子は、オープンリーディングフレーム配列を含み、そしてそれらの連結は、単一ポリペプチドがコードされるように一緒に連結された両方のオープンリーディングフレームを含む、ハイブリッドDNAを生成する。本発明に従って、2つ以上のDNA分子の連結が、少なくとも1つの連結接合点にわたる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを生成する場合、連結が、ハイブリッドタンパク質をコードする新規の遺伝子を生成したとみなされる。
【0065】
しかし、タンパク質をコードする遺伝子を生成するために使用される本発明の系の1つの実施形態において、互いに連結されるDNA分子は、既知の生物学的活性の1つ以上の個別の機能的ドメインをコードするように選択され、その結果、2つ以上のそのようなDNA分子の連結は、二機能的ポリペプチドまたは多機能的ポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子を生成する。多くのタンパク質が個別の機能的ドメインを有することは、当該分野で周知である(例えば、Traut,Mol.Cell.Biochem.70:3、1986;Goら、Adv.Biophys.19:91、1985を参照のこと)。そのようなドメインが、しばしば互いに分離され、そして各個々の機能的ドメインの活性が保存される様式で他の個別の機能的ドメインと連結され得ることもまた、周知である。
【0066】
機能的タンパク質ドメインをコードする正確なDNA配列の選択において、幾分かの可撓性が許容されることを、当業者は理解する。例えば、DNA配列を、天然に存在するタンパク質の機能的ドメインに含まれる正確なアミノ酸残基をコードするDNA配列のみに制限することは、しばしば望ましくない。さらなるDNA配列が、例えば、特定の選択された機能的ドメインとそれが連結される任意の他の機能的ドメイン間の可撓性を提供し得るリンカー配列をコードするDNA配列が含まれ得る。
【0067】
あるいはまたはさらに、いくつかの状況において、研究者らによって、特定の機能的ドメインを含む全てよりも少ないアミノ酸配列をコードするDNA配列を選択することが有用であることが見出されている(例えば、WO98/01546を参照のこと);そのような場合において、他のアミノ酸が、引き続く連結の結果として添加し戻され得る(すなわち、隣接して連結されたDNA分子によってコードされ得る)か、または完全に除外され得る。当業者は、目的とするタンパク質ドメインを記載する文献を適切なように参照した後に、彼らの特定の実験的問題にこれらの基本原理を適用させることに容易に彼ら自身を精通させ得る。
【0068】
本発明に従って連結される個々のDNA分子またはDNA分子の組み合わせによってコードされ得る機能的タンパク質ドメインの型のほんのわずかの例を与えると、周知のモジュラー(modular)ドメインとしては、例えば、DNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガー、ホメオドメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフなど)、ATPまたはGTP結合ドメイン、膜貫通スパンニングドメイン(transmembrane spanning domain)、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン(例えば、ロイシンジッパー、TPR反復、WD反復、STYXドメイン(例えば、Wishartら、Trends Biochem.Sci.23:301、1998を参照のこと)など)、Gタンパク質ドメイン、チロシンキナーゼドメイン(例えば、Shokat、Chem.Biol.2:509、1995を参照のこと)、SRC相同性ドメイン(例えば、Sudol、Oncogene 17:1469、1998を参照のこと)、SH2ドメイン(例えば、Schaffhausen、Biochim.Biophys.Acta 28:61、1995を参照のこと)、PTBドメイン(例えば、van der Greerら、Trends Biochem Sci 20:277、2995を参照のこと)、PHドメイン(例えば、Musacchioら、Trends Biochem Scie 18:343、1993を参照のこと)、特定の触媒ドメイン、細胞表面レセプタードメイン(例えば、Campbellら、Immunol.Rev.163:11、1998を参照のこと)、炭水化物認識ドメイン(例えば、Kishoreら、Matrix Biol.15:583、1997を参照のこと)、免疫グロブリンドメイン(例えば、Rapley、Mol.Biotechnol.3:139、1995を参照のこと)などが挙げられる(Hegyiら、J.Protein.Chem.16:545、1997;Baronら、Trends Biochem.Sci.16:13、1997もまた参照のこと)。
【0069】
代表的には、そのようなドメインは、公知の生物学的活性のタンパク質内の配列相同性の領域を同定する(少なくとも、相同性を示すタンパク質の部分に関して)、相同性比較によって同定される。任意の特定の機能的ドメインの空間的な干渉は、しばしばX線結晶学、NMRなどのような構造的研究によって確認される。
【0070】
本発明に従って、タンパク質の有用な「機能的ドメイン」は、たとえその部分が、その活性を維持するためにより大きなポリペプチド分子内に包埋され続けなければならないとしても、その部分が残りのタンパク質から分離された場合に保存されている既知の生物学的活性を有するタンパク質の任意の部分である。関連する生物学的活性は、ドメインが天然に見出される特定のタンパク質の完全な生物学的活性を構成する必要はなく、そして代表的にはそうではないが、通常、その活性の一部分のみを示す(例えば、特に他の分子に結合する能力を示すが、結合分子を切断または修飾するさらなる活性は含まない)。上記のように、多くのそのようなドメインは、すでに文献に記載されている;他のものは、相同性検索、好ましくは生物学的活性に関与する配列を明確にするための当該分野で公知のような変異研究と組み合わせて同定され得る。
【0071】
本発明は、今や実質的に普遍的に認知された、進化の間の新規遺伝子の生成が、しばしば、2つ以上のすでに存在する機能的タンパク質ドメインをコードするDNA配列の新規な組合せに関与していたという認識を含む(例えば、Gilbertら、Proc Natl Acad Sci USA、94:7698、1997;Streletsら、Biosystems、36:37、1995を参照のこと)。実際に、タンパク質「ファミリー」は、しばしば、たとえ異なるファミリーのメンバーによって果たされる生物学的役割の全体が、全く関連し得ないとしても、特定の機能的ドメインをそれらが共通して使用することによって規定される(そのようなファミリーのさらなる議論は、以下のエキソンシャッフリングを議論する節を参照のこと)。従って、本発明は、実験室において進化的なプロセスを模倣するために使用され得る技術および試薬を提供する。本発明の系の普遍性および実験室的な単純さは、所望の順序で互いに連結する特定のDNAモジュールを選択し得る研究者らに、目的の新規な結果を生成するために確率的なプロセスを待機しなければならない母なる自然を超える有意な利点を提供する。
【0072】
従って、本発明に従って利用される好ましいタンパク質の機能的ドメインとしては、遺伝子ファミリー(すなわち、タンパク質ファミリーの異なるメンバーをコードする遺伝子の集合体)を生成するための進化を通じて再利用された機能的ドメインが挙げられる。特定のタンパク質ドメインの再利用によって作製される例示的な遺伝子ファミリーとしては、以下が挙げられる:例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子ファミリー(例えば、図6を参照のこと);電位作動型(voltage−gated)ナトリウムチャネルのファミリー(例えば、Marbanら、J.Physiol.508:647、1998を参照のこと);接着分子の特定のファミリー(例えば、Taylorら、Curr.Top.Microbiol.Imunol 228:135、1998を参照のこと);種々の細胞外ドメインタンパク質ファミリー(例えば、Engel、Matrix Biol.15:295、1996;Bork、FEBS Lett.307:49、1992;Engel、Curr.Opin.Cell.Biol.3:779、1991を参照のこと);プロテインキナーゼCファミリー(例えば、Dekkerら、Curr.Op.Struct.Biol.5:396、1995を参照のこと);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー(例えば、Naismithら、J.Inflamm 47:1,1995を参照のこと);溶解素ファミリー(例えば、Lopezら、Microb.Drug Resist.3:199、1997を参照のこと);核ホルモンレセプター遺伝子スーパーファミリー(例えば、Ribeiroら、Annu.Rev.Med.46:443,1995;Carson−Juricaら、Endocr.Rev.11:201,1990);ニューレキシンファミリー(例えば、Misslerら、J.Neurochem.71:1339、1998を参照のこと);チオレドキシン遺伝子ファミリー(例えば、Sahrawyら、J.Mol.Evol.、42:422、1996を参照のこと);ホスホリル転移タンパク質ファミリー(例えば、Reizerら、Curr.Op.Struct.Biol.7:407、1997を参照のこと);細胞壁ヒドロラーゼファミリー(例えば、Hazlewoodら、Prog.Nuc.Acid Res.Mol.Biol.61:211、1998を参照のこと)、および合成タンパク質の特定のファミリー(例えば、脂肪酸シンターゼ、ポリケチドシンターゼ(例えば、WO98/01546;米国特許第5,252,474号;米国特許第5,098,837号;EP特許出願第791,655号;EP特許出願第791,656号を参照のこと)、ペプチドシンテターゼ(例えば、Mootzら、Curr.Op.Chem.Biol.1:543、1997;Stachelhausら、FEMS Microbiol.Lett 125:3、1995を参照のこと)およびテルペンシンターゼ)。
【0073】
本発明は、これらのファミリー中に存在する異なる機能的ドメインをコードするDNA分子が、インフレーム融合体を生成するために互いに連結されることを可能にし、その結果、選択された機能的ドメインの異なる配置を含むポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子が生成される。(i)天然の特定の遺伝子ファミリーにおいて利用されるドメインのみが、(新規の配置で)互いに連結されるか、または(ii)異なる遺伝子ファミリーにおいて天然に利用されるドメインが互いに連結されるかにおいて、実験が、実施され得ることが理解される。
【0074】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、ともに連結されるように選択されたDNAモジュールは、合成酵素ファミリーのメンバーの少なくとも1つの機能的ドメインまたは機能的ドメインの部分をコードするモジュールを含む。上記のように、種々の酵素ファミリーが公知であり、それらのメンバーは、関連する生物学的に活性な化合物の合成を担う。特定の目的のファミリーとしては、脂肪酸シンターゼファミリー、ポリケチドシンターゼファミリー、ペプチドシンテターゼファミリー、およびテルペンシンターゼファミリー(時折、テルペノイドシンターゼファミリー、またはイソプレノイドシンターゼファミリーと呼ばれる)が挙げられる。これらの酵素ファミリーの個々のメンバーは、マルチドメインタンパク質であり、これは、特定の生物学的に活性な化合物の合成を触媒する。任意の特定のファミリーメンバーについて、異なるタンパク質ドメインが、全体の合成反応において異なる工程を触媒する。各ファミリーメンバーは、異なる化合物の合成を触媒する。なぜなら、各々が、タンパク質の機能的ドメインの異なる集合体または配置を含むからである。本願の文脈において理解されるように、本発明は、これらの遺伝子ファミリーにおいて利用される種々のタンパク質ドメインを新たな方法で互いに連結して、機能的ドメインが選択された遺伝子ファミリーの天然に存在するメンバーによって生成される活性に関連する生物学的活性を有すると予測される新たな化学実体の生成を触媒する新規な合成酵素を生成し得るシステムを提供する。
【0075】
本発明のこの局面をより明らかに例示するために、本発明者らは、上記の特に好ましい合成酵素タンパク質ファミリーの各々の特定の特徴および性状を以下で議論する。
【0076】
(動物脂肪酸シンターゼファミリー)
動物脂肪酸シンターゼは、2つの多機能性ポリペプチド鎖を含み、その各々は、7つの別々の機能的ドメインを含む。脂肪酸分子は、アセチル部分と連続的なマロニル部分との反復縮合を含む反応において、2つのポリペプチド鎖の間の境界で合成される(例えば、Smith,FASEB J.8:1248,1994;Wakil,Biochemistry 28:4523,1989(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。最も一般的には、この縮合反応において生成されるβ−ケト中間体は、完全に還元されて、パルミチン酸を生成する;しかし、特定の場合において、代替基質または代替の鎖終結機構が使用され、その結果、一連の生成物は、分岐鎖、奇数に番号付けられた炭素(odd carbon−numbered)、およびより短い鎖長の脂肪酸分子を含む。これらの分子は、生物学的系において一連の役割を有し、この役割としては、以下が挙げられる:(i)ステロイドのような種々のシグナル伝達分子の生成における前駆体として作用する、ならびに(ii)コレステロール代謝の調節に関与する。
【0077】
当業者は、本発明の開示を考慮して、本明細書中に記載される技術および試薬が、脂肪酸シンターゼ分子の1つ以上の機能的ドメインをコードするDNA分子に望ましく適用され得、その結果、この分子が、他のDNA分子に連結されて、目的の新たなハイブリッドDNA、好ましくは、新規な合成能力を有し得るハイブリッド動物脂肪酸シンターゼ遺伝子をコードするものを作製し得ることを容易に認識する。
【0078】
(ポリケチドシンターゼファミリー)
ポリケチドは、大きくかつ構造的に多様なクラスの天然生成物を示し、この天然の生成物としては、多くの重要な抗生物質、抗真菌剤、抗癌剤、駆虫薬、および免疫抑制化合物(例えば、エリスロマイシン、テトラサイクリン、アンホテリシン、ダウノルビシン、アベルメクチン、およびラパマイシン)が挙げられる。例えば、図7は、特定のポリケチド化合物のリストを示し、これは、ヒトおよび動物の障害の処置において薬学的薬物として現在使用されている。
【0079】
ポリケチドは、タンパク質酵素(適切に命名されたポリケチドシンターゼ)によって合成され、この酵素は、脂肪酸シンターゼによって使用される様式といくらか類似した様式でアシルチオエステルの反復性の階的な縮合を触媒する。ポリケチドの間の構造多様性は、縮合反応において使用される特定の「スターター」または「エクステンダー」単位(通常は、アセテートまたはプロピオネート単位)の選択および縮合後に観察されるβ−ケト基の異なる程度のプロセシングの両方を介して生成される。例えば、いくつかのβ−ケト基は、β−ヒドロキシアシル基に還元される;他のものは、両方ともこの点まで還元され、続いて、2−エノイル基に脱水される;さらに他のものは、飽和アシルチオエステルに全て還元される。
【0080】
ポリケチドシンターゼ(PKS)は、モジュラータンパク質であり、ここでは異なる機能的ドメインが、合成反応の異なる工程を触媒する(例えば、Cortesら、Nature 348:176,1990;MacNeilら、Gene 115:119,1992;Schweckeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7839,1995を参照のこと)。例えば、図8および9(WO98/01546から)は、それぞれ、エリスロマイシンおよびラパマイシンの生成を担う細菌ポリケチドシンターゼ遺伝子の異なる機能的ドメインを示す(図10もまた、参照のこと)。これらの遺伝子の各々は、いわゆる「クラスI」細菌PKS遺伝子の例である。示されるように、ポリケチド鎖伸長の各サイクルは、1つ以上の他の機能的ドメイン(アシルトランスフェラーゼ[AT]ドメイン、β−ケトアシルレダクターゼ[KR]ドメイン、エノイルレダクターゼ[ER]ドメイン、デヒドラターゼ[DH]ドメイン、およびチオエステラーゼ[TE]ドメインからなる群より選択される)とともに、一方の末端ではβ−ケトアシルACPシンターゼドメイン(KS)、および他方の末端ではアシルキャリアタンパク質(ACP)ドメインを含む、機能的ドメインの集合体を含む触媒単位によって達成される。
【0081】
クラスII細菌性PKS遺伝子はまた、モジュラーであるが、鎖伸長の触媒を担う機能的ドメインの1つのセットのみをコードし、芳香族ポリケチドを生成する;これらのドメインは、連続伸長サイクルにおいて適切なように、再利用される(例えば、Bibbら、EMBO J.8:2727,1989;Shermanら、EMBO J.8:2717,1989;Fernandez−Morenoら、J.Biol.Chem.267:19278,1992;Hutchinsonら、Annu.Rev.Microbiol.49:201,1995を参照のこと)。多様性は、特定の伸長単位(通常、アセテート単位)の選択、および芳香族生成への完全な鎖の環化を触媒する特定のシクラーゼ(異なる遺伝子によってコードされる)の存在によって主に生じる。
【0082】
クラスI PKS機能的ドメインにおける種々の改変およびクラスI PKS機能的ドメインの置換は、合成酵素によって生成されるポリケチド生成物の化学組成を変化させ得ることが公知である(例えば、Cortesら、Science 268:1487,1995;Kaoら、J.Am.Chem.Soc.117:9105,1995;Donadioら、Science 252:675,1991;WO 93/1363を参照のこと)。クラスII PKSに関して、異なるクラスII PKS遺伝子クラスター(例えば、異なるシクラーゼ)の状況下で、1つの微生物系統から異なる微生物系統へのPKS遺伝子の導入が、新規のポリケチド化合物の生成を生じ得ることが公知である(例えば、Bartelら、J.Bacteriol.172:4816,1990;WO 95/08548を参照のこと)。
【0083】
本発明は、改変されたPKS遺伝子を生成するための新規の系を提供し、ここで、改変された遺伝子によってコードされる機能的ドメインの配列および/または数は、任意の天然に存在するPKS遺伝子において見出されるものと異なる。任意のPKS遺伝子フラグメントが、本発明に従って使用され得る。好ましくは、このフラグメントは、少なくとも1つの他のPKS機能的ドメインに連結されて、新規のPKS酵素を生成し得るPKS機能的ドメインをコードする。種々の異なるポリケチドシンターゼ遺伝子が、ポリケチドの驚異的なプロデューサーである細菌生物または真菌生物から主にクローニングされている(例えば、Schweckeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7839,1995;米国特許第5,252,474号;米国特許第5,098,837号;EP特許出願791,655;EP特許出願791,656(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと;また、WO 98/51695、WO 98/49315およびそれらの中で引用される参考文献(これらもまた、参考として援用される)を参照のこと)。任意のこのような遺伝子のフラグメントが、本発明の実施において使用され得る。
【0084】
(ペプチドシンテターゼファミリー)
ペプチドシンテターゼは、種々のペプチドの非リボソーム生成を触媒するポリペプチド酵素の複合体である(例えば、Kleinkaufら、Annu.Rev.Microbiol.41:259,1987を参照のこと;米国特許第5,652,116号;米国特許第5,795,738号もまた参照のこと)。これらの複合体は、特定のアミノ酸を認識し、そしてポリペプチド鎖へのアミノ酸の付加の触媒を担う、1つ以上の活性ドメイン(DDA)を含む。D−アミノ酸の付加を触媒するDDAはまた、L−アミノ酸のD−アミノ酸へのラセミ化(recemization)を触媒する能力を有する。この複合体はまた、伸長するアミノ酸鎖を終結し、そして生成物を放出する、保存されたチオエステラーゼドメインを含む。図11は、現在、薬理学的薬剤として使用されているペプチドシンテターゼによって生成される生成物の例示的な表を示す。
【0085】
ペプチドシンテターゼをコードする遺伝子は、酵素の機能的ドメイン構造に平行するモジュラー構造を有する(例えば、Cosminaら、Mol.Microbiol.8:821,1993;Kratzxchmarら、J.Bacteriol.171:5422,1989;Weckermannら、Nuc.Acids res.16:11841,1988;Smithら、EMBO J.9:741,1990;Smithら、EMBO J.9:2743,1990;MacCabeら、J.Biol.Chem.266:12646,1991;Coqueら、Mol.Microbiol.5:1125,1991;Diezら、J.Biol.Chem.265:16358,1990を参照のこと;図12もまた参照のこと)。例えば、図13(米国特許第5,652,116号からの)は、1つの例示的なペプチドシンテターゼ遺伝子オペロンである、srfAオペロンの構造を示す。
【0086】
特定のペプチドシンテターゼによって生成されるペプチドの配列は、シンテターゼに存在する機能的ドメインの集合体によって決定される。従って、本発明は、互いへの特定のペプチドシンテターゼ機能的ドメインの迅速な連結を可能にする系を提供することによって、新規のペプチドシンターゼ遺伝子(機能的ドメインの配列および/または数は、天然に存在するペプチドシンターゼ遺伝子と比較すると、異なる)が生成され得るメカニズムを提供する。このような新規の遺伝子によってコードされるペプチドシンターゼ酵素が、新規のペプチド生成物を生成することが予期される。従って、本発明は、ハイブリッドペプチドシンターゼ遺伝子の作用を通じた新規のペプチドの生成のための系を提供する。
【0087】
(テルペンシンターゼファミリー)
イソプレノイドは、構造がイソプレン基礎単位の改変を示す化合物である。このイソプレノイドファミリーとしては、一次代謝生成物(例えば、ステロール、カロテノイド、増殖レギュレーターならびにドリコール、キノンおよびタンパク質のポリプレノール(polyprebol)置換基)および二次代謝生成物(例えば、モノテルペン、セスキテルペンおよびジテルペン)のクラスに分けられ得る広範な構造的に多様な化合物が挙げられる。この一次代謝生成物は、生物学的現象(例えば、膜の完全性の保存、光防護、発生プログラムの編成および特定の膜系に対する必須の生化学的活性の係留)に重要である;この二次代謝生成物は、細胞間伝達に関与するプロセスに関与し、そして植物とその環境との間の相互作用を媒介するようである(例えば、Stevens,Isopentoids in Plants[Nesら、編],Macel Dekkerら、New York,65−80頁、1984;Gibsonら、Nature 302:608,1983;およびStoesslら、Phytochemistry 15:855,1976を参照のこと)。
【0088】
イソプレノイドは、イソプレンビルディングブロック(building block)の重合を介して合成され、中間分子または最終生成物分子内で環化(または他の分子内結合形成)により結合される。この重合反応は、イソプレン単位上の二重結合において、電子が豊富な炭素原子上での電子欠乏炭素の攻撃を指向するプレニルトランスフェラーゼにより触媒される(米国特許第5,824,774号からの図14を参照のこと)。環化および他の分子内結合形成反応は、イソプレノイド(またはテルペン)シンターゼにより触媒される(米国特許第5,824,774号からの図15を参照のこと)。
【0089】
テルペンシンターゼタンパク質は、機能的ドメインが、天然のエキソンと対応する傾向があるモジュラータンパク質である(例えば、本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,824,774号を参照のこと)。米国特許第5,824,774号からの図16は、イソプレノイドシンターゼ内での天然のエキソンおよび機能的ドメインとの間の対応の模式図を示す。上の図は、TEAS遺伝子内のエキソンの構成を示し、これはHVS遺伝子およびカスベン(casbene)シンターゼ遺伝子のエキソンの構成とほとんど同一であり;下の図は、TEAS遺伝子およびHVS遺伝子のエキソンの構成に対する機能的ドメインのアライメントを示す。
【0090】
本出願の観点から理解されるように、本発明は、イソプレノイドシンターゼ機能的ドメインをコードするDNA分子が、天然に生じるイソプレノイドシンターゼ遺伝子において観察される機能的ドメインと比較して機能的ドメインの配置および/または数が変化する、新規のハイブリッドイソプレノイドシンターゼ遺伝子を生成するために互いに連結され得る、系を提供する。これらの新規のハイブリッド遺伝子は、新しいイソプレノイド化合物の合成を触媒することが期待される、新規のハイブリッドタンパク質をコードする。
【0091】
上述するように、本発明のいくつかの実施形態において、1つのタンパク質ファミリー由来の機能的ドメインをコードするDNA分子が、異なるタンパク質ファミリー由来の機能的ドメインをコードするDNA分子に連結される。本発明に従って特に興味深いのは、ポリケチドシンターゼ機能的ドメインをコードするDNAが、ペプチドシンテターゼ機能的ドメインをコードするDNAに連結される反応である。代わりの好ましい実施形態は、ポリケチドシンターゼ機能的ドメインおよびペプチドシンテターゼ機能的ドメインのいずれかまたは両方との、脂肪酸シンターゼ機能的ドメインの結合を含む。次いで、このようなファミリー間結合反応により作製されたハイブリッド遺伝子は、ポリケチド、脂肪酸、および/またはペプチドに関する新規な化合物の合成を触媒するタンパク質をコードするそれらの遺伝子の能力を決定するための公知の技術に従って、試験され得る。
【0092】
また上述されるように、特定の実験において互いに連結されるように選択されるDNA分子は、機能的ドメインをコードする分子またはその部分に限定されず;「リンカー」アミノ酸をコードする分子がさらに、または代わりに使用され得、同様に、非コード分子が所望の最終生成物に依存して使用され得る。
【0093】
たった1例を与えるために、連結された分子が宿主細胞またはインビトロの発現系に導入される場合、その制御配列が連結される他のDNA配列の発現を調節する特定の制御配列を、最後の連結された分子中に含むことが、時々所望され得る。例えば、転写制御配列、RNAスプライシング制御配列、他のRNA改変制御配列、および/または翻訳制御配列が、共に連結される1つ以上のDNA分子に含まれ得る。広範な種々のこのような発現制御配列は、当該分野で周知であり(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、New York、1989、(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと);当業者は、それらの特定の適用における使用のために所望の制御配列を選択することに関する考察に精通している。一般に、このような制御配列が、これらが連結される他のDNAの発現をそれらのDNA配列が細胞またはインビトロの発現系に導入される場合に指向する限り、このような制御配列は本発明に従う使用のために適切である。
【0094】
本発明に従って、所望して使用され得る他のDNAモジュールとしては、例えば、検出可能なタンパク質部分(例えば、色の変化または蛍光もしくは発光の誘導のような検出可能な反応を触媒する酵素部分、あるいは公知のモノクローナル抗体と相互作用する部分など)をコードするモジュール、連結される生成物DNA分子(例えば、GSTドメイン、銅キレートドメインなど)によりコードされる任意のポリペプチドの簡単な精製を可能にする部分をコードするモジュールまたは研究者によって所望される任意の他のモジュールが挙げられる。
【0095】
(指向性連結)
本明細書中に記載されるように、本発明技術の1つの特定の価値の高い適用は、複数の異なる核酸分子の、互いの連結についてである。3’または5’のオーバーハングを有する生成物分子を提供する本発明の実施形態は、それらのオーバーハングの配列および長さが実施者の自由に選択されるのを可能にすることから、分子は、特定の指定されたパートナーとのみの特定の指定された順序での連結のために容易に調製され得、その結果多数のメンバーでの連結反応が、偽の連結生成物または所望されない連結生成物のほんの最小の生成しか伴わずに実施され得る。
【0096】
図17は、本発明に従う、このような指向性(directional)連結反応の1つの一般的な例の模式図を示す(図18〜22および実施例1は、特定の例を記載する)。示されるように、第1の核酸分子(「A」として指定される)は、1方の末端で第1のオーバーハング(「オーバーハング1」として指定される)を含む。第2の核酸分子である「B」は、オーバーハング1に相補的ある第2のオーバーハング(「オーバーハング1’」)および好ましくはオーバーハング1に関連しないでそして確かに同一でない第3のオーバーハング(「オーバーハング2」)に隣接される。第3の核酸分子である「C」は、オーバーハング2と相補的な第4のオーバーハング「オーバーハング2’」を含む。当業者によって理解されるように、これらの核酸分子の3つ全てを含む連結反応は、たった1つの反応生成物「ABC」を生成し、そして「AC」生成物または環状の「B」生成物を、このような生成物を生成するために共に連結されなければならない末端の不一致のために生成しない。
【0097】
(変異誘発)
別の特に有用な適用において、本発明の技術および試薬は、共に連結される核酸分子のヌクレオチド配列を変更するために利用され得る。別個の変異誘発反応は、必要とされない。むしろ、配列および長さが実施者により選択され得るプライマーおよび/またはオーバーハングは、連結される分子間の一本鎖の領域を作製するために利用され、この一本鎖領域は、所望されるような新しい配列または変更された配列を含む。これらの一本鎖領域は、後に、新しい配列に相補的な鎖を合成するポリメラーゼにより満たされ得る。あるいはまたはさらに、伸長反応または増幅反応においてコピーされる特定の生成物分子鎖に配列を加えるプライマーが用いられ得る。
【0098】
(エキソンシャッフリング)
本明細書中に記載される技術および試薬の1つの特定の適用は、DNA分子の特定のコレクションまたはエキソンが互いに連結された、ハイブリッド核酸分子のライブラリーの生成における。つまり、「エキソンシャッフリング」反応は、単一反応混合物(以下でさらに記載される、例えば、連結混合物またはスプライシング反応)が少なくとも2つ、および好ましくは少なくとも10、100、1000、10,000、100,000、または1,000,000の異なる生成物分子を生成する反応である。
【0099】
本明細書中に使用される場合、用語「エキソン」とは、別のDNA分子に連結されるべき任意のDNAをいう。エキソンは、タンパク質コード配列を含んでもよいか、独占的にタンパク質をコードし得てもよいか、または全くタンパク質コード配列を含まなくてもよい。用語「エキソンシャッフリング」は、本発明の技術および試薬を用いて、1つより多い可能な配置で互いに連結され得るエキソンのコレクションが生成され得ることを示すことが意図される。例えば、図23において描かれるように、本発明の技術および試薬は、単一の上流エキソンであるAが、異なる内部エキソン(図23におけるB1〜B4)のコレクションのいずれか1つに連結され得る連結反応において用いられ得、この内部エキソンは順番に、さらに下流のエキソンであるCに連結される。
【0100】
当業者は、図23が、本発明に従って「同一性エキソンシャッフリング」反応(すなわち、特定のエキソンの同一性が、シャッフリング反応の異なる生成物において異なる反応)のまさに1つの特定の実施形態を示すことを容易に認める。関連する反応の広範なアレイが、本発明の「エキソンシャッフリング」の概念内に、および特定の「同一性エキソンシャッフリング」の概念内に含まれる。例えば、1つより多いエキソンは、特定のシャッフリング反応において変更され得る。実際に、図23において描かれるように、シャッフリング生成物の中で均一である上流末端エキソンおよび下流末端エキソンを有することは必要とされない。しかし、このような一貫性は、特定の利点(1セットの増幅プライマーを用いて全てのシャッフリング生成物を増幅する能力(以下でより詳細に考察される)を含む)を提供し得る。しかし、不変の隣接エキソンが保存される場合でさえ、1つより多い内部エキソンが変更され得る;付加的な不変の内部エキソンもまた提供される場合でさえ、そうである。
【0101】
図24は、本発明に従って実施され得るエキソンシャッフリング反応の異なる種類の実施形態を示す。図24において示される特定の実施形態において、上流(A)のエキソンおよび下流(H)のエキソンは、広範な種々の可能な内部エキソン(B〜G)と組み合わせて提供される。全てのエキソンは、適合性のあるオーバーハングを有する。このような反応において、生成物分子において見出される内部エキソンの配置についての可能性は、無限である。また、エキソン(選択的な隣接エキソン以外のエキソン)は、エキソン鎖の特定の位置に制限されないことから、シャッフリングのこの型は、「位置的(positional)シャッフリング」といわれる。
【0102】
もちろん、当業者は、図24が本発明の位置的シャッフリング系のほんの1つの例示的な実施形態であることを認識する。例えば、少なくとも2つのセットの適合性のあるオーバーハングを用いること、および潜在的内部エキソンが適合性のある末端により隣接されないことを保証することがたぶん所望され;さもなければ、分子内環化は、本発明の連結における競合反応として重大な複雑化を表し得る。また、固定された他の位置全てを保持し(例えば、図17)つつ、1つの位置での同一性シャッフリングを可能にすることという極値と全ての位置で完全なシャッフリングを可能にすることという極値との間の中間物を示すエキソンシャッフリング反応を実施することが可能である。ただオーバーハングの適合性を選択することだけより、実施者は、異なる部位でのより高い変動性を可能にするが、特定の鎖の部位で組み込まれ得るエキソンの数を制限し得る。
【0103】
本発明の利点の1つは、必要に応じて位置的バリエーションと組み合わせて、同時に多数の部位のバリエーションを可能にすること(すなわち、特定のエキソン配列が異なる生成物分子において異なる位置で終わり得る可能性)である。この現象の重要性のほんの1つの例を与えるために、図25は、他の技術が、エキソンの鎖の1つの位置を一度に変更し得るライブラリーの生成を可能にし得ることを示す。10の異なるエキソンが、各々の位置で用いられ得るエキソンの3つの鎖について、30個の異なる変異体が生成され得る(A1BC、A2BC、A3BC、...A10BC、AB1C、AB2C、...AB10C、ABC1、ABC2、...ABC10)。対照的に、3つ全ての位置が、同時に変更され得る場合、本発明に従って可能なように、1000個の異なる変異体が生成され得る。
【0104】
上述されるように、進化的プロセスが、既存のエキソンを再分類することにより、しばしば新しい遺伝子を生成することは、現在受け入れられている。大きな遺伝子ファミリーは、明らかにエキソンシャッフリングにより生成されている。本発明に従って、特定の選択された機能的ドメインを互い(上記を参照のこと)に連結することおよびそれらの遺伝子ファミリーにおいて見出されるエキソンをシャッフルすることの両方のために本発明の技術を用いることが所望され、その結果(少なくとも2つの)生成物遺伝子のライブラリーが生成される。
【0105】
本発明のエキソンシャッフリング技術は、エキソンの任意の所望されるコレクションに適用され得る。好ましくは、それらの技術は、タンパク質コード配列を含むエキソンに適用される。さらに好ましくは、それらの技術は、異なるメンバーの遺伝子ファミリー(上記の考察を参照のこと)における進化において再使用されているタンパク質コードエキソンに適用される。本発明のエキソンシャッフリング系の1つの特定の好ましい実施形態において、シャッフルされるエキソンは、合成酵素の機能的ドメインを示す。連結に関して、上記で考察されるように、ファミリー内でまたはファミリー間(between)またはファミリーの間で(among)から、エキソンを再分類する。
【0106】
本発明のエキソンシャッフリング技術が適用され得る特定の好ましい遺伝子ファミリーとしては、組織プラスミノーゲン活性化遺伝子ファミリー、動物脂肪酸シンターゼ遺伝子ファミリー、ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリー、ペプチドシンテターゼ遺伝子ファミリー、およびテルペンシンターゼ遺伝子ファミリーが挙げられるがこれらに限定されない。このクラスI細菌ポリケチドシンターゼ遺伝子ファミリーは、機能的ドメインの共直線および触媒能力がこのファミリーについて非常に良く確立されるという点で、本発明のエキソンシャッフリング技術の適用のために、特定の魅力のある標的を示す。
【0107】
また、クラスIポリケチドシンターゼと動物脂肪酸シンターゼ、クラスIIポリケチドシンターゼ、および/または中間体クラスポリケチドシンターゼ(例えば、真菌性ポリケチドシンターゼで、この機能的構成および触媒的特性が、明らかに細菌クラスIポリケチドシンターゼとクラスIIポリケチドシンターゼとの間の機能的構成および触媒的特性の中間体である)との間の密接な機構的関係は、これらの異なるファミリーのうちの2つ以上の機能的なドメインをコードするDNAを混合するシャッフリング反応を特に興味をそそるものにする。このような反応は、新しい合成酵素のライブラリーを生成し、次いでこのライブラリーは、それらが興味深いかまたは所望される生物学的活性を有するか否かを決定するための任意の利用可能な技術に従ってアッセイされ得る新しい化合物のライブラリーを生成する。
【0108】
(既存の技術との統合)
本発明は、選択された核酸分子を互いに連結するために利用可能な方法のみを記載するわけではないことが認識される。例えば、確立された制限酵素に基づく技術は、本発明の系の都合の良さおよび他の利点を有さないが、明らかに、核酸分子の切断および連結を可能にする。また、リボザイムがRNAレベルまたはDNAレベルの核酸の切断および連結を媒介するのに用いられ得る技術が、開発されている(例えば、米国特許第5,498,531号;米国特許第5,780,272号;WO 9507351;WO 9840519、および1998年9月21日出願の米国特許出願番号 60/101,328を参照のこと(これらの各々が本明細書中で参考として援用される;実施例4もまた参照のこと))。
【0109】
核酸の操作のためのこれらの異なる系の各々が、特定の利点および不都合を提供する。例えば、リボザイム媒介系は、所望される場合にシャッフリング反応がインビボで実施され得る独特な利点を提供する(例えば、1998年9月21日出願の米国特許出願番号 60/101,328を参照のこと)。さらに、一旦目的のエキソンが第1のトランススプライシングリボザイム成分と連結されているシャッフリングカセットが生成されると、そのエキソンは、単純なトランススプライシング反応における第1のトランススプライシング成分と適合性のある第2のトランススプライシング成分に連結される任意の他のエキソンに連結され得る。従って、リボザイム媒介系が利用されればされるほど、そしてその使用により生成されるシャッフリングカセットの数が多くなればなるほど、その系はより強力になる。
【0110】
本明細書中に記載される技術のように、リボザイム媒介核酸操作は、エキソンシャッフリングのために使用され得、そして任意の選択された核酸分子のシームレスな連結を指向するために操作され得る。さらに、本発明の系のように、リボザイム媒介系は、連結を媒介する因子(リボザイム媒介系におけるリボザイム成分;本発明の系におけるオーバーハング)が、特定の選択された他の連結媒介因子とのみ適合性があるように操作され得る。この能力は、図17において描かれる指向性連結反応(ここで、エキソンのコレクションはともにインキュベートされるが特定の選択されたエキソンのみが互いに連結する状態になり得る)に類似の反応を実施することを能力を可能にする(例えば、実施例4および図29を参照のこと)。
【0111】
本発明の1つの特に好ましい実施形態は、上で参照される特許および特許出願において記載されるリボザイム媒介技術と本明細書中に記載されるプライマーに基づく操作技術の統合を示す。詳細には、本明細書中に記載されるプライマーに基づく核酸操作技術は、リボザイム関連シャッフリングカセットを構築するのに利用され、次いでこれは、ハイブリッド核酸分子を生成するためのスプライシング反応に用いられ、続いて、この分子は、発明のプライマーに基づくストラテジーを用いてクローン化され得そして操作され得る。
【0112】
図26は、このような組合せられたプライマーに基づく核酸操作スキーム/リボザイム媒介核酸操作スキームの1つのバージョンを示す。描かれるように、9つの異なる生成物分子が、発明のプライマーに基づく核酸操作ストラテジーを使用して生成される。これらの分子は、3つの異なるシャッフリングカセットを生成するために共に連結されるように設計される。この第1のシャッフリングカセットは、(i)カセットの転写を指向するプロモーター;(ii)第1のタグ配列;(iii)上流末端エキソン;および(iv)第1のリボザイム成分を含む。第2のシャッフリングカセットは、(i)カセットの転写を指向するプロモーター;(ii)第1のリボザイム成分と適合性のある第2のリボザイム成分(iii)内部エキソン;および(iv)第3のリボザイム成分(必要に応じて、第2のリボザイム成分との適合性はない)を含む。第3のシャッフリングカセットは、(i)カセットの転写を指向するプロモーター;(ii)第3のリボザイム成分と適合性のある第4のリボザイム成分(そして必要に応じて、第1のリボザイム成分と適合性がない);(iii)下流末端エキソン;および(iv)第2のタグ配列を含む。
【0113】
シャッフリングカセットが、本発明のプライマーに基づく技術を用いて生成され得る容易さを考慮すると、シャッフリングカセットがベクターに導入される必要はなく、シャッフリングカセットは直接転写され得る。もちろんそれらは、そう所望される場合には、好ましくは本発明のプライマーに基づく核酸操作技術により、ベクターに導入され得る。各々のカセットは転写され、そして転写生成物は、スプライシング条件下で、インビトロまたはインビボのいずれかで互いにインキュベートされ、3つのエキソンの各々を含むハイブリッド分子を生成する。次いで、このハイブリッド分子は、再び好ましくは本発明のプライマーに基づく操作技術を用いて、ベクターに導入され得まるかまたはさらに操作され得る。
【0114】
当業者は、1つより多くの内部カセットが、エキソンシャッフリング(位置的シャッフリングおよび/または同一性シャッフリングを含む)反応かまたは各エキソンのほんの1つのコピーが、予め決定された順番で、ハイブリッド分子に導入される指向性連結反応のいずれかにおいて、図26の系において用いられ得ることを認識する。あるいはまたはさらに、複数の代わりの上流もしくは下流のエキソンが用いられ得、またはこのような末端エキソンは除かれ得る。同一性エキソンシャッフリング反応の特に好ましい実施形態では、複数の代わりのエキソンが提供され、そしてハイブリッド分子において少なくとも2つの位置(例えば、1つの内部位置および1つの末端位置、2つの内部位置、または2つの末端位置)について、同時にシャッフルされる。
【0115】
図26において示される組み合わされたプライマーに基づく系/リボザイム媒介系の1つの利点は、本発明の方法に従って、示された分子を生成すること、および/またはそれらをベクターもしくは他の所望された場所にクローン化するのに必要とされるプライマーの数の考慮を通して認識され得る。例えば、67個のプライマーが、10個の異なる可能なエキソン生成物分子が「A」エキソン、「B」エキソン、および「C」エキソンの各々について生成される場合、最初の生成物分子を生成するのに必要とされる。これは、比較的多数のプライマーであるが、シャッフリングカセットの生成のために利用可能な代わりの方法(例えば、標準的な制限酵素に基づくクローニング技術)と比較して、本発明の系を用いて生成物分子が生成されてそして共に連結される容易によって正当化される。ほんの4つのプライマーしか、得られたシャッフリングカセットの増幅のために、またはそれらを他のDNA分子(例えば、ベクター)に連結するのに必要とされない。最も重要なことには、ほんの2つのプライマーしか、アセンブルされた遺伝子を増幅する(または連結する)ために必要とされない。特にエキソンシャッフリング反応が実施され、そしてアセンブルされた遺伝子のライブラリーが生成される場合、同じ2つのプライマーを用いてそのライブラリーのすべてのメンバーを増幅し得ることに価値がある。
【0116】
(自動化)
本発明の技術および試薬の1つの特に魅力的な特徴は、自動化に対するそれらの可能性である。特に、新規のハイブリッド核酸の大きなライブラリーが、本発明のエキソンシャッフリング反応において生成されている場合、多数の異なるサンプルの同時操作を達成するために、自動化されたシステム(例えば、Beckman 2000 Laboratory Automation Work Station)を用いることが所望され得る。
【0117】
本発明の方法の好ましい自動化された適用のほんの1つの例を与えるために、図27は、例えば、図27において描かれるようなエキソンシャッフリングを達成するために、そしてさらに所望される活性についてのシャッフリング反応の生成物をスクリーニングするために利用され得る自動化システムを示す。例えば、図26の最初の縦の欄に示される生成物分子は、必要な場合にある位置から別の位置にプレートを移動するのにORCAロボットアームに頼り、Biomek 2000システムをmultimek 96自動化96−チャンネルピペッターおよびPTC−225 DNAエンジン(MJ Research)と組合せて用いて、96ウェルプレートにおけるPCRによって生成され得る。
【0118】
好ましくは、各々のエキソンの生成物分子(例えば、n個の「A」エキソンであるA1−Anが調製される;同様にx個の「B」エキソンであるB1−Bx;そしてy個の「C」エキソンである、C1−Cyが調製される)の複数の代替物が、同時に、T7/X、1−4’、T7/5,6、およびY生成物と一緒に調製される。上述されるように、67個の異なるプライマーが、本明細書中に記載される本発明の方法論に従って、これらの生成物分子を生成するために必要とされる。
【0119】
次いで、自動化されたシステムは、所望される連結試薬と共に、一緒に適切な生成物分子をピペッティングするようにプログラムされ、図26の第2の縦の欄に示される型の30個のシャッフリングカセットを生成する。次いで、このシステムは、T7 RNAポリメラーゼを用いて、これらのシャッフリングカセットからRNAを生成するようにプログラムされる。次いで、「A」型、「B」型、および「C」型の転写生成物が、全ての可能な組合せで共に混合され、そしてトランス−スプライシング条件下で(なお、自動化システムにおいて)インキュベートされる。全体として、1000個の異なるスプライシング反応が実施される。
【0120】
次いで、各々のスプライシング反応の小さなアリコートが出され、そして増幅生成物がベクターのようなレシピエント分子と容易に連結され得るように本発明のプライマーを用いて増幅される。次いで、得られたプラスミドは、さらなる増幅のために宿主細胞(例えば、細菌細胞)に導入され得るか、またはあるいはインビボもしくはインビトロの発現系に導入され得、その結果アセンブルされてシャッフルされた遺伝子によってコードされる任意のタンパク質生成物が、アッセイされ得る。所望の発現系は、シャッフルされた核酸配列の性質に依存する。ほんの1つの例を与えるために、真菌性ポリケチドシンターゼ遺伝子フラグメント(例えば、真菌性ポリケチドシンターゼタンパク質の機能的ドメインをコードする)がこのアプローチに従ってシャッフルされた場合、それらの合成能を評価するために、1つ以上の真菌性細胞型または哺乳動物細胞型においてそれらにより生成されるハイブリッドタンパク質を発現することが所望され得る。
【0121】
(キット)
本発明の実施に有用な試薬は、キット中にともに提供され、アセンブルされることが所望され得る。特定の好ましいキットは、プライマー媒介の核酸操作反応およびリボザイム媒介の核酸操作反応の両方に有用である試薬を含む。
【0122】
(実施例)
(実施例1)
(5’オーバーハング配列を有する生成物分子の調製および連結)
本実施例は、3’末端のデオキシリボヌクレオチドおよびこれらの5’末端のリボヌクレオチドを含むハイブリッドプライマーを使用する、5’オーバーハングを有する生成物分子の調製および連結を記載する。
【0123】
図18は、実施された特定の実験の概略図を示す。示されるように、3つの異なる生成物分子が作製され、2つは、ヒトグルタミン酸レセプターのBサブユニットに対する遺伝子のエキソンに対応し、そして1つは、関連しないヒトβグロブリン遺伝子由来のイントロンに対応する。本発明者らの使用した特定のグルタミン酸レセプターエキソンは、FlipおよびFlopとして公知であり、そして図19Aおよび図19Bに示され、これらのエキソンのそれぞれのヌクレオチド配列を示す(それぞれ、GenBank登録番号X64829およびX64830)。
【0124】
本発明者らは、Vent(登録商標) DNAポリメラーゼおよびヒトGluR−B#7(ヒトグルタミン酸レセプターBサブユニットのエキソン13〜16を含むクローニングされたゲノムフラグメント)プラスミドまたはHβT7(ヒトβグロブリン遺伝子のエキソン1〜2を含むクローニングされたゲノムフラグメント)プラスミドを使用するPCRによって、本発明者らの3つの生成物分子のそれぞれを調製した。
【0125】
Flopエキソンを、全体のDNAでありFlopエキソンの最初の20塩基に対応する5’プライマー(図18のプライマー1;5’−AAATGCGGTTAACCTCGCAG、配列番号 )と、最も5’側の4残基が、図18に小文字で示されるようなRNAである3’プライマー(図18のプライマー2;5’−accuTGGAATCACCTCCCCC、配列番号 )とを組み合わせて、増幅した。このプライマーは、Flopエキソンの最後の18塩基およびイントロンの2塩基に対応する。さらに、これらのプライマーは、ヒトグルタミン酸レセプターFlopエキソン(115塩基対)およびイントロンの5’末端における最初の2残基の全てに対応するフラグメントを増幅する。
【0126】
イントロン1を、ヒトβグロブリンイントロン1の最初の18塩基に対応する配列であり、そして最も5’側の4塩基がRNAであり、そしてプライマー2の5’末端における4つのRNA残基に相補的である5’プライマー(図18のプライマー3;5’−agguTGGTATCAAGGTTACA、配列番号 );ヒトβグロブリンイントロン1の最後の20塩基に対応し、その最も5’側の2塩基がRNAである3’プライマー(図18のプライマー4、5’−cuAAGGGTGGGAAAATAGAC、配列番号 )を組み合わせて増幅した。これらのプライマーは、全体のイントロン(129bp)およびFlopエキソンの3’末端における最後の2残基に対応する2つのさらなる残基に対応するフラグメントを、共に増幅する。
【0127】
Flipエキソンを、ヒトグルタミン酸レセプターFlipエキソンの最初の18塩基に対応し、その最も5’側の2残基がRNAであり、そしてプライマー4の5’末端における2つのRNA残基に相補的である5’プライマー(図18のプライマー5、5’−agAACCCCAGTAAATCTTGC、配列番号
)と;全体のDNAである最後の20エキソン塩基に対応する3’プライマー(図18のプライマー6、5’−CTTACTTCCCGAGTCCTTGG、配列番号 )とを組み合わせて増幅した。これらのプライマーは共に、全体のFlipエキソン(115bp)およびイントロンの3’末端における最後の2つのヌクレオチドに対応するフラグメントを増幅する。
【0128】
それぞれの増幅反応は、以下を含んだ:400μモルの各々のプライマー、これらのプライマーは、(100μlの1×NEB T4リガーゼ緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.8)、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP、25μg/ml BSA)中のT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて)37℃で30分間リン酸化され、続いて200μlのヌクレアーゼを含まないdH2Oで10pモル/μlに希釈される;2単位のVentR(登録商標)(エクソ)ポリメラーゼ(NEB、Beverly、MA)、100μlの1×Vent緩衝液(10mM KCl、10mM (NH4)2SO4、20mM Tris、2mM MgSO4、0.1% Triton X−100);200μM dNTP;および5ngのテンプレートプラスミド。Robocycler(登録商標)gradient 40(Stratagene、La Jolla、CA)サーマルサイクラーにおいて、(i)95℃3分間;(ii)60℃3分間;(iii)72度3分間を1サイクル行った後、(i)95℃15秒間;(ii)60℃15秒間;(iii)72℃30秒間を35サイクル行った。
【0129】
本発明者らは、VentR(登録商標)およびVentR(登録商標)(エクソ)は、本発明者らのプライマーにおいてリボヌクレオチドをコピーしないことがわかったので、増幅後、各々の生成物分子は、一末端または両末端に5’リボヌクレオチドオーバーハングを含んだ(Flop生成物の3’末端における4ヌクレオチド;βグロブリンイントロン生成物の5’末端における4ヌクレオチド;βグロブリンイントロン生成物の3’末端における2ヌクレオチド;およびFlop生成物の5’末端における2ヌクレオチド)。
【0130】
各々の増幅された生成物を、エタノール(EtOH)で沈澱し、そして10μLに再懸濁し、3つの増幅生成物の全ての存在を確認するために、これらの2つを6%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。次いで、およそ等モル量のそれぞれのフラグメントを含むアリコート(それぞれ2〜4μL)を、1×New England Biolabs(NEB) T4リガーゼ緩衝液(50mM Tris(pH7.8)、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP、25μg/ml BSA)および0.5UのT4 DNAリガーゼ(NEB、Beverly、MA)を含有する連結反応において結合した。20μLの反応物を、4℃で一晩インキュベートし、連結が生じ得る。次いで、連結の生成物を、プライマー1および3およびTaqポリメラーゼを用いて増幅し、これはRNAをコピーする(Myersら、Biochem.6:7661、1991)。この増幅反応物は、1×Taq緩衝液(20mM Tris(pH9.0)、50mM KCl、0.1% Triton X−100)、200μM dNTP、5単位のTaqポリメラーゼ(Promega、Madison、WI)、2μLの連結混合物、および400μモルの各々のプライマーを含んだ。
【0131】
Taq増幅の生成物を図20に示し、そして製造業者の手引きに従って、TA
Cloning Kitを用いてPCR2.1ベクター(Invitrogen、Carsbad、CA)に連結した。複数(9つ)のクローンの配列分析(標準ジデオキシ配列決定法、およびUnited States Biochemical、Cleveland、OhioからのUniversalプライマーおよびReverseプライマーを用いて)によって、全ての連結が正しいことを確認した(図21および22を参照のこと)。このストラテジーは、リボヌクレオチド(rubonucleotide)オーバーハングを有する生成物分子を連結したので、これは時々リボヌクレオチドオーバーハングクローニング(ROC)と称される。
【0132】
(実施例2)
(3’オーバーハング配列を有する生成物分子の調製および連結)
本実施例は、3’末端にデオキシリボヌクレオチド、そして5’末端にリボヌクレオチドを含むハイブリッドプライマーを使用して、3’オーバーハングを有する生成物分子の調製および連結を記載する。
【0133】
図28は、実施された特定の実験の概略図を示す。示されるように、3つの異なる生成物分子が作製され、2つは、ヒトグルタミン酸レセプターのBサブユニットに対する遺伝子のFlipエキソンおよびFlopエキソンに対応し、そして1つは、関連しないヒトβグロブリン遺伝子由来のイントロンに対応する(実施例1を参照のこと)。
【0134】
3つの生成物分子のそれぞれを、RNAヌクレオチド、およびヒトゲノムDNAまたはHBT7のいずれかをコピーするPfuポリメラーゼを使用するPCRによって調製した(実施例1を参照のこと)。Flopエキソンを、実施例1のプライマー1および2で増幅した;イントロン1を、実施例1のプライマー3および4またはプライマー3および選択的プライマー4(5’−uucuAAGGGTGGGAAAATAG−3’;配列番号 )のいずれかで増幅した;Flipエキソンをプライマー5および6または選択的プライマー5(5’−agaaCCCAGTAAATCTTGC;配列番号 )およびプライマー6のいずれかで増幅した。
【0135】
それぞれ100μLの反応物は、2.5UのPfu Turbo(登録商標)ポリメラーゼ(Stratagene)、1×Cloned Pfu緩衝液(10mM (NH4)2SO4、20mM Tris(pH=8.8)、2mM MgSO4、10mM KCl、0.1% Triton X−100および0.1mg/ml BSA)、それぞれ200μMのdNTP、1mM MgSO4、ならびにそれぞれ最終濃度0.5μMのプライマーを含んだ。FlopおよびFlipの反応物は、375ngのヒトゲノムDNAを含むが、βグロブリン反応物は、5ngのHBT7 DNAを含んだ。PCR工程プログラムを、Robocycler gradient 40において、FlipフラグメントおよびFlopフラグメントについて、95℃5分間;50℃3分間;72℃3分間で一度行い、続いて95℃30秒間;50℃30秒間;72℃45秒間を40サイクルを行い、続いて72℃5分間を一回行った。アニーリング温度が46℃であることを除いて、同一のプログラムを使用して、βグロブリンイントロン1を増幅した。PfuポリメラーゼはRNAをコピーしない(stratagene
生成物文献)(PCR生成物文献)ので、PCR生成物は5’オーバーハングを含んだ。これらのオーバーハングは、5’RNAオーバーハングを充填するための5UのTthポリメラーゼ(Epicentre Technologies、Madison、WI)で、72℃30分間のインキュベーションの間に充填された。(より最近の実験において、TthよりもM−MLV RTを用いて、オーバーハングを充填することに注意すること。M−MLV RTを用いる場合、フラグメントをアガロースゲルで分離した後、1×第一鎖緩衝液(50mM
Tris(pH=8.3)、75mM KCl、3mM MgCl2)、10mM DTTおよび0.5mM dNTPの20μL中に、200UのM−MLV RTで処理した)。このストラテジーにおいて、Pfuポリメラーゼを使用し得る。これは、増幅反応の間、使用可能な熱安定性のDNAポリメラーゼの最も高い忠実度を有するが、平滑末端反応生成物をまだ作製する。
【0136】
増幅された親のPCR生成物を、アガロースゲルから切り出し、そして精製した。5μlのそれぞれ精製したサンプルを、質量についてアガロースゲル上で分画した。次いで、平滑末端化生成物を、温和な塩基への曝露を通じたリボヌクレオチドの除去によって3’オーバーハングを含む生成物に転換した。NaOH(1N)をそれぞれ8μlのゲル単離フラグメントに添加して、最終濃度0.2Nにし、そしてサンプルを45℃で30分間インキュベートした。塩基を2μlの1N HClの添加によって中和した。NaOH加水分解は、3’リン酸および5’−OHを作製するので、生成物を連結し得るようにリン酸化する必要がある。DNAフラグメントを、総量20μlの1×T4 リガーゼ緩衝液(USB)中において、37℃で30分間、10UのPNK(USB)を使用してリン酸化した。約25ng(3〜6μl)のそれぞれリン酸化した生成物を、20μlの最終容量中に結合し、そして5 Weiss UのT4 DNAリガーゼ(USB)を有する1×T4リガーゼ緩衝液中において、14μCで16時間連結した。
【0137】
キメラFlop−β−Flip生成物を生成するために、二次PCR増幅を、一次PCRに関する上記のように、テンプレートとしての1μlの連結反応物、プライマー1および6、ならびに58℃のアニーリング温度を用いて実施した。期待のサイズ(360bp)のキメラ生成物を観察した。この生成物をクローニングし、そして配列決定した;両方の連結接点を配列決定された8クローンの6つ中に回収した。それぞれ2つのクローンは、連結部位の1つにエラーを有した。1つのクローンにおいて、βグロブリンイントロンとFlipとの間の境界において3塩基対を喪失した。他方のクローンにおいて、AがTに変化した(データは示さず)。本発明者らは、この手順の充填工程の間に、Tthポリメラーゼがこれらのエラーを導入したと推測する。本明細書中に記載されるストラテジーは、DNAオーバーハングを含む分子の連結を含有するので、これは時々DNAオーバーハングクローニング(DOC)と称される。
【0138】
(実施例3)
(プライマーコピーおよび/または連結の成功を決定するためのバイオアッセイ)
本実施例は、特定のDNAポリメラーゼの特定の改変オリゴヌクレオチドプライマーをコピーする(すなわち、テンプレートとして使用する)能力を評価するために使用し得る技術を記載する。例えば、本明細書中に記載される技術は、特定の改変ヌクレオチドまたはリボヌクレオチド(あるいはそのコレクション)が1つ以上のDNAポリメラーゼによって複製され得るか否かを決定するために有用であり得る。
【0139】
図29は、本発明のバイオアッセイ技術の1つの実施形態を示す。示されるように、テンプレート分子とハイブリダイズする2つのプライマーを提供する。第一のプライマーは、特定のDNAポリメラーゼによって伸長可能であることが公知である;第二のプライマーは、DNAポリメラーゼによる複製をブロックする能力が公知ではない1つ以上の改変ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む。任意のヌクレオチド改変は、この系において研究され得る。
【0140】
図29に示されるように、両方のプライマーが伸長され、その結果、複製がブロックされる場合、5’オーバーハングを有する生成物分子が生成される;複製がブロックされない場合、平滑末端化生成物分子(または、使用されるDNAポリメラーゼに依存する単一ヌクレオチド3’−オーバーハングを含む分子)が生成される。
【0141】
次いで、生成物分子を、相補的5’オーバーハングを含み、そして選択マーカー(またはスクリーニングによって同定可能なマーカー)を有するベクターと共にインキュベートする。複製がブロックされた場合のみ、ハイブリダイゼーションが生じる。次いで、連結を試み、そして特定の改変が相補鎖におけるニックの連結を妨害しない限り、または改変がオーバーハングの5’末端に存在し、隣接する3’末端への連結を妨害する特性である限り、連結はうまくいく。実験を単純化し、任意の特定の反応における可変の数を最小化するために、複製をブロックする能力がすでに公知である場合、改変が、プライマーのまさに5’末端においてのみ組み込まれることが期待され、連結を妨害する能力のみを評価することが所望される。
【0142】
次いで、連結生成物を、宿主細胞(好ましくは、細菌)に導入する。問題の改変が複製をブロックし、そして(i)相補鎖における連結をブロックしないか;または、(ii)相補鎖における連結をブロックするが、インビボにおいてニック対をブロックしないか、のいずれかである場合にのみ、選択可能(またはさもなければ、同定可能)な細胞が増殖し、そして生存する。改変がプライマーの5’末端である場合、改変が複製をブロックしかつ両鎖の連結をブロックしない場合、細胞は増殖するのみである。
【0143】
もちろん、改変が1つ以上のリボヌクレオチドまたは他の除去可能なヌクレオチドを構成する場合、複製をブロックする能力がないことに起因するコロニーの非存在は、任意の5’ヌクレオチドと共に改変ヌクレオチドを除去する薬剤で、本来の生成物分子を処理し、次いで、得られた二次生成物分子(共通の3’オーバーハングを含有するベクターとともに、改変ヌクレオチドおよび任意の5’ヌクレオチドに相補な3’オーバーハングを含む)をインキュベートすることによって生じるコロニーの他の非存在から区別され得る。
【0144】
(実施例4)
(触媒的なリボザイムエレメントの操作された選択的互換性による、複数の核酸分子の指向性連結)
図30は、指向性連結反応を示す。これは、互換性のあるリボザイム成分の使用を通じた、特定のエキソンの選択的な連結を可能にする。示されるように、転写物は以下において生成される:(i)第一エキソン(A)は、αI5γのII群イントロン由来の第一のリボザイム成分に連結された;(ii)第二エキソン(B)は、(a)またαI5γのII群イントロン由来の第二のリボザイム成分(これは、第一のリボザイム成分と互換性がある)、および(b)Lactococus lactiのLTRBイントロン由来の第三のリボザイム成分(これは、第二のイントロン成分と互換性がない)によって隣接される;ならびに(iv)第三エキソンは、LTRBイントロン由来の第四のリボザイム成分に連結される(これは、第三のイントロン成分と互換性があるが、第一イントロン成分とはない)。これら3つの転写物は、スプライシング条件下で共にインキュベートされ、そして示されるように、ABC生成物のみ(およびACまたは環状B生成物は含まない)が生成された。
【0145】
全部で9つのプラスミドが本研究において使用された:pJD20、pB.E5.D4、pD4.E3(dC).B(2)、pLE12、pB.5’Lac、p3’Lac.B、pD4.E3(dC)B(2).5’Lac、およびp3’Lac.B.E5.D4。2回のPCR増幅を、全長aI5γイントロンを含むプラスミドpJD20(Jarrellら、Mol.Cell.Biol.8:2361、1988)をテンプレートとして使用して実施した。第一の反応は、5’エキソンの一部(27nt)とともにイントロンの一部(ドメイン1〜3およびドメイン4の73nt)を増幅した。以下の使用したプライマー;
【0146】
【化1】
を設計し、その結果、PCR生成物は、その末端にBamHI部位およびSalI部位を有した。PCR生成物をBamHIおよびSalIで消化し、そしてPBS−ベクター(Stratagene)に連結し、同一の酵素で消化し、その結果、T7プロモーターの下流に位置した。生じたプラスミドをpB.E5.D4と称し、そしてB.5’γシャッフリングカセットをコードする(図31を参照のこと)。
【0147】
pJD20をテンプレートとして用いる第二のPCR反応は、イントロンの異なる部分(ドメイン4の残存する65ntならびにドメイン5〜6)を、3’エキソンの一部(29nt)と共に増幅した。使用したプライマーである
【0148】
【化2】
を設計し、その結果、PCR生成物は、独特のKpnI部位およびBamHI部位をその末端に有した。PCR生成物をKpnIおよびBamHIで消化し、そして同一の酵素で消化したPBS−ベクターに連結した。その結果、PCR生成物は、T7プロモーターの下流に位置した。得られたプラスミドを、pD4.E3(dC).Bと称した(図31を参照のこと)。
【0149】
pD4.E3(dC).Bプラスミドの配列分析は、3’エキソン配列中に期待しない点変異を示した。期待した配列は、
【0150】
【化3】
であり;観察した配列は、
【0151】
【化4】
であった。
【0152】
次いで、部位指向性変異誘発反応を、QuickChange(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene、カタログ番号200518)を用いて実施して、3’エキソン配列にさらなるBamHI部位を挿入した。用いたプライマーは、
【0153】
【化5】
と称した。部位指向性変異誘発反応の結果として作製されたプラスミドを、pD4.E3.(dC).B(2)と称し、そして3’エキソンの長さが13ntに短くなっている3’γ.Bシャッフリングカセットをコードした(図31を参照のこと)。
【0154】
2つのさらなるPCR反応を、天然の5’エキソンおよび3’エキソンに隣接する全長LTRBイントロンをコードするプラスミドpLE12(Millsら、J Bacteriol.178:3531、1996)をテンプレートとして使用して、実施した。第一の反応において、プライマー
【0155】
【化6】
を使用して、LTRBイントロンの一部(ドメイン1〜3)および5’エキソンの一部(15nt)を増幅した。PCR生成物をTaqポリメラーゼで作成し、そしてTopo(登録商標)TA Cloning(登録商標)キット(Invitrogen)を使用して、PCR2.1 Topoベクター(Invitrogen)にクローニングした。得られたプラスミドをpB.5’Lacと称し、そしてB.5’Lacシャッフリングカセットをコードした(図31を参照のこと)。
【0156】
同一のPCR生成物をまた、BamHIおよびSalIで消化し、そしてpD4.E3(dC).B(2)に連結し、同一の酵素で切断し、3’γ.B.5’LacシャッフリングカセットをコードするpD4.E3(dC)B(2).5’Lacを作製した(図31を参照のこと)。
【0157】
さらに、プラスミドpB.5’LacをSpeIおよびAsp718で消化し、いくつかの不要な制限部位を除去した。オーバーハングをKlenowフラグメントで充填し、そして得られた平滑末端を連結してこのベクターに封入した。これによって作製されたプラスミドを、pB.5’Lac(K)と称する(図31を参照のこと)。
【0158】
pLE12をテンプレートとして使用した第二のPCR反応は、プライマー
【0159】
【化7】
の、3’エキソンの一部(21nt)に結合するPTRBイントロンの一部(ドメイン4〜6)を増幅するための使用を含む。PCR生成物が独特のSacI部位およびBamHI部位をその末端に有するように、プライマーを設計した。Taqポリメラーゼを使用してPCR生成物を作製し、そしてpCR2.1 Topoベクターにクローニングした。得られたプラスミドを3’Lac.Bと称し、そして3’Lac.Bシャッフリングカセットをコードした(図31を参照のこと)。
【0160】
プラスミドp3’Lac.BをSacIおよびBamHIで消化して、そしてそれによって作製された1993bpのバンドを、GenecleanIIキット(BIO101)を用いてアガロースゲルから精製した。次いで、精製フラグメントを、同一の酵素で消化したpE5.D4に連結し、3’Lac.B.5’γシャッフリングカセットをコードするプラスミドp3’Lac.B.E5.D4を生成した(図31を参照のこと)。
【0161】
プラスミドpB.E5.D4、pD4.E3(dC).B(2)、pB.5’Lac、p3’Lac.BおよびpD4.E3(dC)B(2).5’LacをHindIIIで直線化し、T7 RNAポリメラーゼ(Stratagene、カタログ番号600123)を使用して、40℃で1時間、6μgの直線化テンプレートDNAおよび0.5mMの非標識ATP、CTP、GTPおよびUTPを含有する100μLの反応液中において、インビトロで転写した。これらの転写反応において生成されるRNAを、1UのRQ1 RNase−free DNaseを用いて処理し、フェノール−クロロホルムで抽出し、Sephadex G25カラムで脱塩し、そしてEtOHで沈澱した。引き続いて、沈澱を6μLの水中に再懸濁した。
【0162】
次いで、それぞれの再懸濁したRNA転写物の1μLを、100mM MgCl2、および0.5MのNH4Clまたは0.5Mの(NH4)2SO4のいずれかを含有する40mM Tris−HCl(pH7.6)中で、45℃で60分間実施したトランススプライシング反応に使用した。
【0163】
トランススプライシング反応後、逆転写/PCR反応を実施して、連結されたスプライシング生成物を同定した。検出された生成物は:(i)B.E5.D4およびD4.E3(dC).B(2)のトランススプライシングによって生成された連結aIγ5エキソンE5およびE3(図32、レーン1);(ii)3’Lac.Bおよび3’Lac.Bのトランススプライシングによって生成された連結LTRB 5’および3’エキソン(図33、レーン2);ならびに(iii)B.E5.D4、D4.E3(dC).B(2).5’Lacおよび3’Lac.Bのトランススプライシングによって生成された3分子の連結生成物(図33、レーン2および3)。
【0164】
(実施例5)
(キメラ生成物の増幅を有さない3’オーバーハング生成物連結のクローニング生成物)
本発明者らは、DOC連結反応の生成物を、細菌における複製のためのベクターに、キメラ増幅工程なしに直接クローニングし得ることを見出した。実施例2に上述されるように、本発明者らは、DOC実験において使用される場合に、指向的に連結され得るFlop、イントロン1およびFlipのPCR生成物を作製するキメラプライマーを設計した。さらに、PCR生成物のNaOH処理が、Flopエキソンに上流オーバーハング(これは、ApaIオーバーハングと互換性がある)およびFlipエキソンに下流オーバーハング(これは、PstIオーバーハングと互換性がある)を作製するように、プライマーを設計した。3つのフラグメント全てを、リガーゼならびにApaIおよびPstIで消化したpBluescript II SK(−)の存在下で共にインキュベートした。連結混合物のアリコートを、E.coliに直接形質転換し、そして期待したキメラクローンを容易に単離し、配列決定し、そして完全であることを見出した(データは示さず)。
【0165】
(実施例7)
(DNAオーバーハングクローニングによる複数のキメラ生成物の構築)
本明細書中に記載される手順の一般性を示すために、本発明者らは、実施例2の技術を適用し、そして種々の異なる分子に適用し、図35に示される5つの異なるキメラを作製した。5つのキメラ全てを、指向的な3分子の連結によって作製した。これらのキメラを、5’RNAオーバーハングにおいて充填するために、TthよりもM−MLV逆転写酵素を用いて作製したことに注意すべきである。M−MLV RTを用いる場合、いずれの連結点においてもエラーが検出されなかった。
【0166】
(他の実施形態)
当業者には、前述は、本発明の特定の好ましい実施形態の単なる記載であることが明白である;この記載は、添付の特許請求の範囲を参照して規定される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2011−200257(P2011−200257A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−153323(P2011−153323)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2000−592412(P2000−592412)の分割
【原出願日】平成12年1月5日(2000.1.5)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153323(P2011−153323)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2000−592412(P2000−592412)の分割
【原出願日】平成12年1月5日(2000.1.5)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】
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