改良型選択プレート培地
高レベルの酵母抽出物、出来る限り高レベルのタンパク質、増加されたレベルの糖および低下されたレベルの塩化ナトリウムの組合せを含む選択的な増殖培地N4寒天培地。構成成分のこの組合せは、プロテウス属およびシトロバクター属の存在によって一般に直面する偽陰性および偽陽性の問題を緩和するがほぼ同一の感受性にてサルモネラ属およびシゲラ属を検出できる能力を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は2006年9月13日の国際出願日を有し、2006年5月2日に提出した米国仮特許出願番号60/746,227の優先権を主張するPCT/US2006/035625のCIP出願である。両出願は、出典明示によりその全てを本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明の背景
1. 本発明の分野
この発明は細菌用の増殖培地の分野に関し、より具体的には、この発明は特定の細菌株または種の検出のための選択プレート培地に関する。特に、本発明はサルモネラ属またはシゲラ属選択プレート培地およびその使用に関係する。
【背景技術】
【0003】
2. 先行技術の説明
市場には、サルモネラ属(Salmonella spp.)に対して選択的なものとして推奨される様々な市販購入し得るプレート培地が存在する。いくつかのより一般的な選択プレート寒天培地は次のものである:MAC(Mac Conkey)、HE(Hektoen Enteric);SS(サルモネラ・シゲラ)およびXLD(キシロース-リシン-デオキシコリン酸塩)。しかしながら、サルモネラ属およびシゲラ属(Shigella spp.)の増殖を支持できるが、これらの寒天培地は検出されるべきサルモネラ属およびシゲラ属試料由来の一般的によく見られるバックグラウンドの細菌増殖(例えば、シトロバクター属およびプロテウス属)を十分に区別出来ないため、これらの既知の寒天培地は必要とされ得る程度に感受性または特異的ではない。
【0004】
本出願人は、サルモネラ属およびシゲラ属の検出のために2つの異なる、より選択的な寒天培地の開発に貢献した。第一のものはXLT4であり、これは従来のキシロース-リシン寒天基本培地中にTERGITOL(登録商標)4-(7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩)およびH2S産生の追加の促進物質を含んでおり、また米国特許第5,208,150に開示されており、出典明示により該明細書全体が本明細書に包含される。この培地はサルモネラ属に対して高い選択性を示す。第二の選択寒天培地はMM(Miller-Mallinson)寒天培地と命名され、これは米国特許第5,871,944に開示されており、出典明示により該明細書全体が本明細書に包含される。MM培地は、他の株、例えばサルモネラ・チフスおよびサルモネラ・コレラエスイス・バル・クンゼンドルフよりもH2Sの顕著に低い量を産生するサルモネラ属株を検出するために作成された。
【0005】
しかし、出願人はXLT4およびMM培地のその後の使用期間に、これらの選択的な増殖寒天培地がプロテウス属の増殖を大きく低下させ、また獣医学的および食品安全性用途においてシトロバクター属のコロニーを良好に識別するために成功裏に使用され得るが、ヒト診断用途においてはサルモネラ属およびシゲラ属を検出するために完全には成功しないことを見出した。XLT4寒天培地は、シゲラ属に対しては抑制しすぎることが判った。さらに、MM寒天培地は、シゲラ・フレクスネリの増殖および識別を支持する点では良好であると判明したが、大腸菌(E. coli)および他の乳糖発酵性細菌のコロニー群とシゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)のコロニーを識別しなかった。
【0006】
一般的に、現在入手可能なサルモネラ属/シゲラ属選択プレート培地は、サルモネラ属の菌種の最も効率的な検出を支持するものではない。MMおよびSS寒天培地は、乳酸発酵細菌のバックグラウンドコロニーとシゲラ・ソネイとを識別する能力を持たず、重要なヒト病原菌の検出において使用するためのこれらの増殖培地の感受性を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、選択的な増殖培地がヒト診断上の用途において、および食料/飼料および水質制御において使用できるように、現行の選択的な増殖プレート用培地以上にサルモネラ属およびシゲラ属のコロニーに対して十分に高い感受性を提供する選択的な増殖プレート培地についての必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要約
本発明により、本出願人により見出された選択的な増殖プレート培地は、XLT4寒天培地中に一般的に含有される成分を含んで構成され得るが、高いレベルでの加水分解タンパク質源、酵母抽出物およびさらにαラクトースおよびスクロース、そして新規添加物、すなわち(D+)-セロビオース、サリシンおよびズルシトールを含むように作成され得るが、寒天濃度および塩化ナトリウムの濃度はXLT4寒天培地中に一般的に存在する濃度よりも低いものである。さらに、本発明の選択的な増殖培地は、高濃度のNIAPROOF(登録商標)4(7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、また7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル 硫酸ナトリウム塩としても知られる)を許容する。これらの化合物は、従来の選択的なプレート培地よりもサルモネラ属およびシゲラ属の増殖および検出のための感受性および特異性を増強し得る十分な濃度で存在する。
【発明の効果】
【0009】
従って、本発明の目的は、サルモネラ属およびシゲラ属のコロニーの両方の検出において現行で入手出来る培地よりも、有意に高い感受性および特異性を有する選択的な増殖プレート培地を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、食料/飼料および水における、および食品加工用物品における、さらにヒト臨床的使用のための物品または装置、臨床診断上または疫学的試験のためにヒトまたは動物対象から回収した物品内または物品上のサルモネラ属およびシゲラ属のいずれかの存在を検出する際に使用できるようにサルモネラ属およびシゲラ属両方の検出において十分な感受性および特異性を有する選択的増殖プレート培地を提供することである。さらに、本発明の選択的増殖培地は、NIAPROOF(登録商標) 4(7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、また7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウムとしても知られる)を高濃度とすることが出来る。
【0011】
他の目的および利点と一緒に、後に明らかとなる本明細書の後記および請求の範囲においてより完全に詳細な説明に記載されており、関連のある数表示が全体の一部として参照される場合、本明細書の一部としてなす添付の写真を参照すべきである。
【0012】
図面の簡単な説明
図1は、本発明のN4寒天培地を有する2枚のプレートの写真である。十分なサイズの黒色(H2S陽性)サルモネラ属のコロニーは、37℃で24時間(左側プレート)および室温でさらに24時間後(右側プレート)にN4寒天培地で増殖した。
【0013】
図2aは、37℃で24時間インキュベーション後にさらに24時間室温で保持した、左側はシゲラ・ソネイの透明なコロニーを有するN4被覆プレートおよび右側にはシゲラ・フレクスネリコロニーを有するN4被覆プレートの写真である。
【0014】
図2bは、3枚の異なるN4被覆プレートの写真である。上方左側のプレートをN4寒天培地配合物を用いて被覆した。上方右側のプレートおよび下方真ん中のプレート両方は、本発明の選択増殖培地N4寒天培地を用いて被覆した。上方の2枚のプレートの左側および右側(各々)にシゲラ・ソネイおよびシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)の十分なサイズの透明なコロニーを観察できる。下方中心のプレートでのN4寒天培地上にある大腸菌の黄色の(酸性)乳酸発酵性コロニーは、シゲラ属の両方の種類とは明らかに区別出来る。
【0015】
図3は、HE寒天培地のプレートで一晩増殖させたシトロバクター・ヨンガエ(Citrobacter youngae)のコロニーの写真である。黒色が中心にあるコロニーは、サルモネラ属の疑いのあるコロニーとして間違われ易い可能性があることに注目されたい。
【0016】
図4は、3枚のプレートの写真である。上方プレートは、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する予備的N4タイプの配合物である。該上方プレートは、下方プレートにおいてXLD寒天培地(ラクトース/スクロースのみ)上でシトロバクター・ヨンガエの黒色(偽性サルモネラ属の疑いのある)コロニーの形成と比較した。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートした。
【0017】
図5は、HE寒天培地上(下方プレート)に播種された場合の、サルモネラ属に類似する同一細菌の黒色コロニーと比較した、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地(上方プレート)の試験配合物上のシトロバクター・ヨンガエの黄色コロニーの写真である。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートし、次いで室温で数日間保持した。
【0018】
図6は、2枚のプレートの写真である。右側のプレートは、本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地で被覆される。左側のプレートはSS寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種し、バックグラウンドにプロテウスの増殖がない右側プレートを一晩増殖させた。SS寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【0019】
図7は、2枚の寒天培地の被覆プレートの写真を示す。右側は、シゲラ属の良好な増殖を可能にしながらバックグラウンド細菌増殖を競合する抑制について、NIAPROOF(登録商標)4の濃度を評価するプロトタイプN4配合剤を用いて被覆したプレートである。左側のプレートはXLD寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種して一晩増殖させた。XLD寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【0020】
図8は、MM寒天培地で被覆されたプレートの写真であって、シゲラ・ソネイコロニー増殖を示す。該シゲラ属のコロニーは、多くの競合乳酸発酵細菌、例えば大腸菌と共に見られる青緑色を示す。
【0021】
図9は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはHE寒天培地で被覆され、上方左側はSS寒天培地で被覆される。各プレートを、ヒト糞便試料を用いて接種した。図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑い(H2S陽性黒色コロニー)を示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【0022】
図10は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはXLD寒天培地で被覆し、上方左側はSS寒天培地で被覆し、下方中心のプレートは本発明の選択増殖培地N4寒天培地で被覆する。各プレートを、ヒト糞便試料を用いて接種した。この図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑いがある(H2S陽性黒色コロニー)ことを示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【0023】
詳細な説明および好ましい実施形態
本発明の実施形態を説明する場合、具体的な専門用語は、明白性の目的のために用いられる。しかしながら、本発明は、特定用語に限定することを意図せずに選択され、具体的な用語は同様の目的を達成するために類似した方法で行う全ての技術的等価物を包含すると解されるべきである。例えば、本出願の目的のために、用語"N4寒天培地"または"N4寒天培地(複数)"は、本発明の培地混合物中にNIAPROOF(登録商標)4の存在を示すものであって、かかる用語は、本明細書で開示された寒天培地の様々な配合物を一般的に表示することを助けるために使用され得る。
【0024】
大部分の選択プレート寒天培地(例えば、HE、SS、XLD)の持つ重大かつ一般的な問題は、シトロバクター属の黒色(H2S陽性)コロニーの存在であり、これはサルモネラ属のコロニーと間違われ易い。図3は、サルモネラ属の疑いのあるコロニーとして間違われ易い黒色中心を有するシトロバクター・ヨンガエのコロニーを有するHE被覆プレートの写真である。
【0025】
MM寒天培地(例えば、10.0g/1αラクトースおよび5.0g/1 D(+)-セロビオース)の組成物により、シトロバクター属と関連のある偽性陽性(黒色)コロニー問題を部分的に低下させることを我々は考えたが、この問題は先行技術にいまだ残っていた。しかしながら、本発明で、我々は選択的な増殖培地N4寒天培地に使用した糖の濃度と種類を用いて実験することによって、当分野において長い間解決しなかった該問題を上手くかつ論理的に解決した。
【0026】
微生物分野の技術者には知られているが、発酵可能な糖の微生物コロニーの供給が枯渇した場合に、かかる微生物コロニーは選択プレート寒天培地上でエネルギー源としてタンパク質に切り替えることを理由にH2Sを生成する。例えば、シトロバクター属は、該菌が利用出来る炭素源を見出すことが出来る場合には、代謝を維持するために培地のタンパク質成分を利用しないことが知られている。シトロバクター属がタンパク質を利用することを回避することによりH2Sの産生が妨害され、その結果サルモネラ属コロニーとして誤診断される可能性のある黒色コロニーの形成が妨害される。
【0027】
シトロバクター属によって利用される50以上の炭素源のうちの5種、特にセロビオース、ならびにラクトース、スクロース、サリシンおよびズルシトールは、ズルシトール以外では、サルモネラ属またはシゲラ属により使用されるのが稀である容易に利用出来る炭素源であると我々は考えた。本明細書に記載した量の複数のこれら5種の炭素源は、広範囲の14種の様々なシトロバクター属(例えば、C. freundii、C. youngae、C. braakiiおよび他のもの)の代謝源として、タンパク質から逸らせる、即ちH2S(黒色コロニー)形成を妨害するために、実用的で有効かつ相補的な組合せ物であると考えられる。
【0028】
黒色コロニー形成の回避および遮断は、本発明のN4寒天培地において有意な高濃度の糖を導入することによって抑制される。糖の追加量は、スクロース、セロビオース、サリシンおよびズルシトールである。本発明と比較すると、MM中には、少量のセロビオースが存在し、スクロース、サリシンまたはズルシトールを含まない。本発明と比較すると、XLT4中には、セロビオース、サリシンまたはズルシトールを含まないが、スクロースおよびラクトースを含む、がしかしこれらの糖は本発明よりも低いレベルで存在する。
【0029】
そのため、本組成物は先行技術よりも高濃度の炭水化物を含有し、構成する炭水化物には、セロビオース、ラクトース、スクロース、サリシンおよびズルシトールの新規組合せ物を包含する。このように、出願人は明細書に開示するものは、本発明の選択的な増殖培地を含むラクトースおよびスクロースに加えてセロビオース、サリシンおよびズルシトールの新規組合物である。セロビオースは、約5.0〜15の量、好ましくは約8.0〜12.0の量で、最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する。サリシンは、約2.0〜12.0の量で、好ましくは約8.0〜10.0の量で、および最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する。ラクトースは、約5.0〜15.0の量で、好ましくは約8.0〜12.0の量で、および最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する;およびスクロースは、約5.0〜15の量、好ましくは約5.0〜12.0の量で、および最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する。
【0030】
キシロースおよびズルシトールはまた、初期のサルモネラ属の増殖およびシゲラ属の分化を増強するためにも存在する。各々は、約1.0〜8.0の量で、好ましくは約2.0〜4.0の量で、および最も好ましくは約2.0g/Lの量で存在し得る。
【0031】
当業者は、7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液のあらゆる源は、本発明にて使用され得る、例えば本発明の選択的N4寒天培地を配合物中の使用にはSigma-Aldrich Ultra タイプ4のNIAPROOF(登録商標)4(製品コード#N-1404、27重量%)であると解されるであろう。
【0032】
好ましい実施態様において、7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液NIAPR00F(登録商標)4の好ましい源は、本発明の選択的N4寒天培地を配合する際に使用するためのXLT4寒天培地補足物(BD Biosciences Product Code 235310、27重量%)である。NIAPROOF(登録商標)4は、低温により分離し得るために、冷蔵されるべきではない。いかなる分離も避けるように30℃まで温めて、使用する前に攪拌した。
【0033】
通常の環境下で、NIAPR00F(登録商標)4は、バックグラウンドのシゲラ属およびサルモネラ属をマスキングする腸細菌の共通の群であるプロテウス属(Proteus spp.)を抑制する場合に非常に強力な試薬である。
【0034】
NIAPROOF(登録商標)4 (以前はTERGITOL(登録商標)4としてUnion Carbideから供給された)についての化学組成は、7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム塩またはC14H2SNaO4S(実験式-ヒル則)としてのSigma(登録商標)カタログにおいて同定されることを明記する。しかし、XLT4寒天培地補足物としてBDにより供給されるNIAPR00F(登録商標)4の化学組成は、7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩またはそのナトリウム塩として同定されている。出願人は、両方の化学組成が本発明の目的として等価であると見なす。
【0035】
出願人は、サルモネラ属コロニーの増殖だけでなく、迅速で着実に容易に検出されるシゲラ属のコロニーの増殖を支持するためには、驚くほど高いレベル(例えば、7.5〜30.0g/L)の酵母抽出物と、3.0〜20.0g/Lレベルのプロテオースペプトンとを組合せることが必要であると考える。シゲラ属は、非発色コロニーとして見えるが、サルモネラ属が存在する場合には黒色または黒色が中心にあるコロニーとして見える。図1におけるプレートと図2aおよび2bのプレートを比較されたい。酵母抽出物は、通常最小限の増殖促進物質として低レベル(通常3.0g/1)で使用されるのみである。本発明までは、当業者は、シゲラ属の増殖を顕著に増加させるために、特にN4の化学組成と同程度の高度に選択的な培地にて、または他の大部分の比較的選択的な化学組成物について、酵母抽出物を高濃度で上手く使用出来るとは予測していなかった。N4寒天培地で使用された非日常的に高レベルの酵母抽出物とプロテオースペプトンとの組合せは、他の腸細菌用培地では知られていない。酵母の種類およびレベル、牛肉抽出物、ペプトンおよび炭素源における多くの変更は、本発明のN4化学組成において置換されてもよい。酵母抽出物は、約3.0〜30.0の量で、好ましくは約10.0〜23.0の量で、および最も好ましくは約15〜20g/Lの量で存在する。1以上の加水分解したタンパク質は、約1.0〜15.0の量で、より好ましくは約6.0〜12.0の量で、および最も好ましくは約3.0〜6.0g/Lの量で存在し得る。
【0036】
リシンは、時にはH2S陰性サルモネラ属の検出のために存在することもある。それは約2.0〜10.0の量、好ましくは約4.0〜6.0の量で、および最も好ましくは約5.0g/Lの量で存在する。
【0037】
チオ硫酸ナトリウムは、本発明のN4寒天培地のH2S検出システムの2部分のうちの一つとして存在する。それは、好ましくは約5.0〜8.0の量で、好ましくは約6.0〜7.0の量で、および最も好ましくは約6.8g/Lの量で存在する。
【0038】
クエン酸第二鉄アンモニウムは、本発明のN4寒天培地のH2S検出システムの第二の共通部分である。それは、約0.6〜1.0の量、好ましくは約0.7〜0.9の量でおよび最も好ましくは約0.8 g/Lの量で存在する。フェノールレッドは、様々なコロニー間の色識別のための非発色性インジケーターである。フェノールレッドにより生じた色の違いは、発色反応よりもむしろpHレベルに基づく。それは、約0.05〜0.2の量で、好ましくは0.08〜0.1の量で、最も好ましくは約0.08g/Lの量で存在する。
【0039】
寒天は、培養接種材料を適切に画線塗抹できるように、培地の堅さのために存在する。寒天は、約8.0〜20.0の量で、好ましくは約12.0〜18.0の量で、および最も好ましくは14.0g/Lの量で存在する。
【0040】
塩化ナトリウムは、存在する場合に、適切な培地湿気のために用い、約0〜5.0の量で、好ましくは約0〜2.0の量で、および最も好ましくは0の量で存在し得る。
【実施例】
【0041】
選択的な増殖の組成
実施例1
一般的な培地N4寒天培地
本発明の選択的なプレート培地の第一実施態様において、一般的な選択的N4寒天培地は、水1リットルと共に、下記の成分:
a) 約3.0〜約30.0gの酵母抽出物、
b) 約0.0〜10.0gのプロテオースペプトン No.3、
c) 約0.0〜15.0gのプロテオースペプトン、
d) 約0.0〜10gのL-リシン、
e) 約0.0〜約8.0gのキシロース、
f) 約0.0〜約15.0gのαラクトース、
g) 約0.0〜約15.0gのスクロース、
h) 約0.0〜約15.0gの(D+)−セロビオース、
i) 約0.0〜約15.0gのサリシン、
j) 約0.0〜約8.0gのズルシトール、
k) 約0.0〜5.0gの塩化ナトリウム、
l) 約5.0〜8.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.6〜1.0gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
n) 約0.05〜0.2gのフェノールレッド、および
o) 約10.0〜20.0gの寒天、
p) 約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液(NIAPROOF(登録商標)4, Sigma-Aldrich, 製品コード4またはBD-Difco製品コード235310)を混合して作成する。
【0042】
室温で蒸留/脱塩水(約1.0 L)を上記化合物に添加し、次いで混合して、それらを水に懸濁した。次いで、約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液(NIAPROOF(登録商標)4, Sigma-Aldrich, 製品コード4またはBD-Difco 製品コード235310)を、該懸濁を混合しながら添加した。滅菌マグネチックスターラーバーとマグネチックスターラーを該成分の懸濁および溶解を促進するために使用できる。過剰な気泡をもたらさないように、該懸濁液を振盪させない。全ての化合物、特に粉末のXLT4寒天培地基本成分中に存在する寒天を確実に溶解させるためにおよそ1分間煮沸させる。熱源からはずして、水浴で45-50℃まで冷却する。次いで、最終培地を約4-5mm厚となるようにプレートに注ぐ。該プレートを一晩室温で保持し、十分に密閉したプラスチックバック内に2〜5℃で貯蔵する。
【0043】
実施例2
N4化学組成273
本発明の選択的なプレート培地の別の好ましい実施態様において、選択的N4寒天培地は、水1リットルと共に、下記の成分:
a) 約7.5〜約15.0gの酵母抽出物、
b) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン No.3
c) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン、
d) 約4.0〜6.0gのL-リシン、
e) 約2.0〜4.0gのキシロース、
f) 約10.0〜15.0gのαラクトース、
g) 約10.0〜15.0gのスクロース、
h) 約10.0〜15.0gの(D+) -セロビオース、
i) 約4.0〜8.0gのサリシン
j) 約2.0〜約4.0gのズルシトール、
k) 約0.6〜0.9gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
l) 約6.0〜7.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.08〜10.0gのフェノールレッド、
n) 約12.0〜14.0gの寒天、および
o) 約4.0〜8.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液(NIAPROOF(登録商標)4, Sigma-Aldrich, 製品コード4 または BD-Difco 製品コード235310)、
を混合して作成する。
【0044】
N4化学組成273培地について化合物を含有するプレートを作成および保管するための方法は、別途前記の章にてN4寒天培地についての一般組成について記載したものと同一である。
【0045】
N4化学組成273について塩化ナトリウムを除外することにより、シゲラ属の増殖の副産物の程度が増強する。
【0046】
選択的および一般的なN4寒天培地化学組成およびN4寒天培地化学組成273は、発色化学組成ではない。発色培地とは、インジケーターを含有するもの、例えばX−galである。インジケーターは、微生物コロニーにより産生された酵素の基質を提供し、形成した錯体が色を識別する水不溶性沈殿物を生成する。発色基質の例示は、U.S.特許6,764,832に見出され、出典明示によりその全体を本明細書に含まれる。
【0047】
選択的N4 273 寒天培地は、MM培地と比べて、2〜5倍以上の酵母抽出物および2〜3倍程度のセロビオースを有する。N4寒天培地化学組成273は、MM寒天培地中には存在しないスクロース、サリシン、ズルシトール、キシロースおよびプロテオースペプトンを含有する。さらに、N4寒天培地化学組成物273はまた、αラクトースの同一レベルを含有するが、MM培地としてマンニトール、無水トレハロース、牛肉エキスまたはポリペプトンペプトンまたは塩化ナトリウムを含有しない。
【0048】
N4化学組成物273からのNaClの削除は、MMおよびXLT4寒天培地、ならびにMAC、HEおよびXLD寒天培地に存在する5.0g/Lの塩とは非常に異なっている。
【0049】
別の実施態様において、pHインジケーター、ナチュラルレッドまたはブロモチモールブルーは、本発明のN4寒天培地の好ましい実施態様において存在する全てのpHインジケーターフェノールレッドで各々置換される。ナチュラルレッドまたはブロモチモールブルーの性質は、サルモネラ属およびシゲラ属の非酸性(アルカリ性)コロニーからのバックグラウンドコロニー(シトロバクター属、プロテウス属、大腸菌等)と競合する酸性コロニーの境界決定をおそらく改善すると考えられる。
【0050】
フェノールレッドの使用は、これらのコロニーが特に各々が互いに接近している場合の事例において、酸性および非酸性コロニーの間の色の違いに関するぼやけをもたらすことが知られている。別の実施態様において、約0.01〜0.05 g/L (Sigma- Aldrich Product Code N 7005,染色含量90%)の範囲のナチュラルレッドインジケーター、または約0.02〜0.10g/Lの範囲のブロモチモールブルー(lot 90H 3,660 Sigma Chemical Co. Cat No. B8630)インジケーターのいずれかを、N4寒天培地に存在するフェノールレッドの代わりに、別のpHインジケーターとして各々使用出来る。ナチュラルレッドは、約0.01〜0.05の量で、好ましくは約0.02〜0.04の量で、および最も好ましくは0.03 g/lの量で存在する。ブロモチモールブルーは、フェノールレッドの代わりに、0.02〜0.10の量で、好ましくは約0.04〜0.08の量でおよび最も好ましくは約0.065g/Lの量で存在し得る。
【0051】
性能の違い:N4 対 XLT4、MMおよび他の寒天培地
本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地は、サルモネラ属およびシゲラ属両方のコロニー検出において、先の腸プレート培地技術よりも非常に高い選択性を提供する。
【0052】
XLT4寒天培地を包含するサルモネラ属の選択的プレート培地は、一般的にシゲラ属の最適な光学的検出を支持しない。この問題は、重要な腸病原菌の診断についてのその効率および信頼性を低下させる。これに対して、本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地は、本発明前には知られていなかった能力、サルモネラ属およびシゲラ属の両方のコロニーを十分増殖させる能力を提供する。従って、本発明の選択的N4寒天培地は、両方の病原菌に対する改良された選択性を提供する。
【0053】
重要な臨床診断上の問題は、発色MM寒天培地でのシゲラ属の増殖に関する。シゲラ属が発色MM寒天培地上で十分に増殖できるが、少なくとも1つの臨床的に重要な種であるシゲラ・ソネイ(Sigella Sonnei)は、大腸菌のような乳酸発酵する細菌のコロニーを擬態する青緑色コロニーをMM上に産生し得る。我々は、シゲラ・ソネイが本発明の非発色選択的N4寒天培地で成長した場合には、この問題はもはやおこらないことを発見した。従って、本願のN4寒天培地は、臨床的に関連のある病原の広い範囲を識別する場合に有用である。
【0054】
本発明の選択的増殖培地の使用を通じて緩和され得るその他の偽陽性または誤診断の問題には、プレート上でプロテウス属およびシトロバクター属の存在に共通して直面する問題が包含される。両細菌株は、H2Sを産生するサルモネラ属のコロニーによく似たコロニーを生成し、臨床誤診および長いサンプル処理時間をもたらす。両方の細菌株のこれらのコロニー数は、本発明の選択的な増殖N4寒天培地の使用によって大きく低下した。いくつかの一般的に使用した選択的な増殖プレート寒天培地を超える本発明の増殖培地の特異性における増加は、下記説明および特定の図に示されている。
【0055】
化学組成の違い:N4寒天培地 対 XLT4寒天培地
従来技術のXLT4プレート培地と、本発明のN4寒天培地(組成273)との比較により、N4寒天培地が、XLT4寒天培地よりも2倍以上のプロテオースペプトンNo.3、約2〜5倍以上の酵母抽出物、100%よりも少ない塩化ナトリウムを含有することが示される。さらに、XLT4寒天培地には含まないセロビオース、サリシン、ズルシトールおよびプロテオースペプトンは、N4寒天培地および(組成273)中に存在する。
【0056】
従来のXLT4プレート培地と本発明のN4寒天培地(組成273)とを比較すると、本願の増殖培地が、XLT4寒天培地よりも、高いプロテオースペプトン No.3、2〜5倍以上の酵母抽出物および33.3%〜100%高いαラクトースおよびスクロースとなることがわかる。さらに、XLT4寒天培地には存在しないセロビオース、サリシンおよびズルシトールはN4寒天培地中に存在する。プロテオースペプトン No.3の適度な増加は、驚くほどに酵母抽出物の能力を補完し、シゲラ属の増殖を支持することがわかった。同じように、著しく高いレベルの酵母抽出物は、シゲラ属の条件を満たしたコロニー増殖を支持するN4の能力には重要であったことが判った。
【0057】
化学組成の違い:N4寒天培地 対 MM寒天培地
従来のMMプレート培地と本発明のN4寒天培地(組成273)とを比較する場合、本発明の選択的N4寒天培地が、MM寒天培地と比べて2〜5倍以上の酵母抽出物および2〜3倍量のセロビオースを含有することが判る。さらに、MM寒天培地には存在しないサリシンおよびズルシトールは、N4寒天培地(組成273)に存在する。MM寒天培地では含有するが、組成273は塩化ナトリウムを含有しない。
【0058】
セロビオース、サリシンおよびズルシトールは、特に、高%にて利用される、シトロバクター属の強力な炭素の源として、MM培地で使用される量よりも増加される。
【0059】
本発明のN4寒天培地は、MM寒天培地内に存在しないスクロース、キシロース、サリシンおよびズルシトールおよびペプトンを含有する。N4寒天培地は、MM寒天培地よりもαラクトースが約5.0g多い量を有する。
【0060】
本発明の選択的な増殖培地とMM寒天培地との別の違いは、MM自体、色を発色させるために酵素活性を必要とするという意味で、本発明のN4寒天培地は発色培地ではないという点である。本発明のN4寒天培地は、微生物増殖の存在において、色原体Xゲルまたは培地を中性pHに保つための特定の緩衝液を含有しない。さらに、N4寒天培地は、従来のMM寒天培地には含まれるがマンニトール、トレハロース二水和物、牛肉エキスまたはポリペプトンペプトンを含有しない。N4培地中の全タンパク質濃度は、MM培地において使用された濃度とほぼ同じかまたは約2倍の範囲にわたる。
【0061】
コロニー識別法およびN4寒天培地で使用した成分の様々な型およびレベルについての論理的根拠
前記したとおり、MM寒天培地はシゲラ属の増殖を支持するが、MM寒天培地の発色(酵素的)コロニーの識別方法は、大腸菌と他の乳酸発酵細菌の青緑色コロニーから臨床学的に重要なシゲラ・ソネイのコロニーを識別することが出来ない。これは、MM寒天培地を用いる臨床医は、病原性のシゲラ・ソネイを、通常重要でない乳酸発酵細菌(例えば、大腸菌)コロニーと識別できないために、これは重要な臨床的問題であり得る。この結果はシゲラ属について偽陰性であって、また試験に関連する臨床的誤診である。この例は、図8の写真に示されており、ここでMM寒天培地により被覆されたプレートはプレート上でのシゲラ・ソネイのコロニー増殖を有することを示される。
【0062】
本発明のN4寒天培地を用いて、陰性キシロース発酵を用いるサルモネラ属の特徴であるH2S産生(黒色コロニー)およびシゲラ・ソネイおよび他のシゲラ属の特徴であるズルシトール発酵(無色コロニー)を組合せる非発色性(直接的な化学)技術は、コロニーの識別に使用される。サルモネラ属は、図1に示されるとおりN4寒天培地上で暗黒色コロニーとして出現する。シゲラ・ソネイおよびフレクスネリは、図2aおよび2bに示されるような培地の赤色バックグラウンドの上に無色コロニーとして出現する。注:図2bは、無色のシゲラ・ソネイおよび黄色の非病原性乳酸発酵細菌の大腸菌コロニーとの明確な識別を示す。
【0063】
本発明の前には、MM寒天培地以外に、セロビオースは、大部分のかかる培地(MAC、HE、SS、XLD等)には数十年程使用されてきたが、サルモネラ属/シゲラプレート培地には全く使用されていなかった。驚くべきことに、シトロバクター属の14種の中の一つ、特にシトロバクター・ヨンガエは、ラクトースまたはスクロースのみを用いるよりもむしろ複数の別の炭化水素、例えばセロビオース、サリシンおよびズルシトールを用いることによって、選択的寒天培地のタンパク質成分の利用および偽性サルモネラ属(黒色)コロニーの生成をより効果的に回避することを発見した。これは、発明者らによる考察および他の当業者により発行された文献に基づいて、シトロバクター・ヨンガエが非常に一般的な種のシトロバクター属であるので重要であった。[例えば、J. Clin. Microbiol. 1999;37 (8) :2619-2624を参照されたい(表3、C. youngae (種"12")だけでなく、Citrobacter braakii (試料#8)、C. werkmanii (試料#10)およびCitrobacter koseri (試料#14)に関しても上記説明を支持するものである)。頻出するこれらの種は報告されている。Microbiol. Immunol. 1996;40 (12):915-21を参照されたい。例えば図4および5を参照されたい。
【0064】
本発明までは微生物分野の技術者は、NIAPROOF(登録商標)4が増殖培地に使用でき、さらにシゲラ属およびサルモネラ属の条件を満たした増殖が可能であるということを考えていなかった。本発明のN4寒天培地としての組成物に使用したNIAPROOF(登録商標)4のレベルおよび炭水化物成分の選択および濃度は、大部分の一般的な選択プレート培地(例えば、HE、SS、XLD)により生じる特異性の問題(偽性、H2S陽性黒色コロニー)を大きく低下させた。図4、5、6、7、9および10は、例えばN4の改良された特異性を示す。
【0065】
また、本発明の選択的な増殖培地の別の新規特性は、プロテウス属の過増殖によるサルモネラ属およびシゲラ属のコロニーのマスキングが主に排除されることである。当業者には容易に理解されようが、プロテウス属およびH2S陽性(偽性)のシトロバクター属のコロニーの存在により引き起こされるサルモネラ属偽陽性の問題は、過去半世紀もの間診断者の頭を悩ませてきたという事実に対し、この重大な問題を是正するN4プレート培地に関する本願発明は注目すべき成果である。また、図4、5、6、7、9および10を参照されたい。
【0066】
本発明の有効性についての例は、図2bにおいて見ることが出来る。写真の上方左側のプレートは、N4基本寒天培地配合物で被覆される。写真の上方右側でのプレートおよび下方中心にあるプレートは、類似したN4寒天培地配合物で被覆される。シゲラ・ソネイ およびシゲラ・フレクスネリの十分なサイズの透明なコロニーが、上方の2つのプレートの左側および右側(各々)で見られる。下方中心のプレートでのN4寒天培地上の大腸菌の黄色(酸性)の乳酸発酵性コロニーは、シゲラ属の両方種とは明白に区別され得る。
【0067】
驚くべきことに、XLT4およびMM寒天培地中に存在する濃度よりも、高濃度の細菌増殖ファクター、例えば酵母抽出物、様々なペプトンおよび炭水化物が使用される場合に生じるプロテウス属の増殖を予防するためには、NIAPROOF(登録商標)4の濃度はN4寒天培地組成中にほぼ2倍増加されることが必要であることを発見した。
【0068】
本発明のN4寒天培地の開発中、最も一般的に使用される選択的なプレート寒天培地上ではプロテウス属の増殖によりサルモネラ属およびシゲラ属のコロニー両方の存在が事実上マスキングされるため、出願人の目的はプロテウス属の増殖を防止する培地を作成することであった。さらに、プロテウス属によるH2Sの産生は、通常H2S産生サルモネラ属のコロニーを擬態して、偽陽性サルモネラ属の診断をもたらす。本発明の選択的な増殖培地は、サルモネラ属およびシゲラ属の検出を達成するためにN4寒天培地の感受性を失わずにプロテウス属の増殖を有意に阻害することが見出されたNIAPR00F(登録商標)4の濃度を含んでいる。図6および7を参照されたい。
【0069】
先に記載した実施例は、本発明の単なる基本事項を説明するものとして考えられる。本発明の多数の用途は、当業者には容易に理解されるため、本発明は、開示した特定態様および説明した操作に限定されることは望まない。むしろ、全ての適切な変更および等価物は、発明の発明内にあると考えられる。
【0070】
本発明を説明する場合、請求の範囲に規定されたとおりに本発明の精神から逸脱せずに、本明細書中にある多くの改変は当業者には明らかであろう。従って、当業者は、本発明についての多くの他の用途を考え出し、そして本発明の範囲が前記開示内容によってのみ限定されるのではなく、添付の請求の範囲によっても規定されることを意図する。
【0071】
米国特許、特許出願、上記引例は、全て出典明示により全て本明細書の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明のN4寒天培地を有する2枚のプレートの写真である。十分なサイズの黒色(H2S陽性)サルモネラ属のコロニーは、37℃で24時間(左側プレート)および室温でさらに24時間後(右側プレート)にN4寒天培地で増殖した。
【図2】図2aは、37℃で24時間インキュベーション後にさらに24時間室温で保持した、左側はシゲラ・ソネイの透明なコロニーを有するN4被覆プレートおよび右側にはシゲラ・フレクスネリコロニーを有するN4被覆プレートの写真である。図2bは、3枚の異なるN4被覆プレートの写真である。上方左側のプレートをN4寒天培地配合物を用いて被覆した。上方右側のプレートおよび下方真ん中のプレート両方は、本発明の選択増殖培地N4寒天培地を用いて被覆した。上方の2枚のプレートの左側および右側(各々)にシゲラ・ソネイおよびシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)の十分なサイズの透明なコロニーを観察できる。下方中心のプレートでのN4寒天培地上にある大腸菌の黄色の(酸性)乳酸発酵性コロニーは、シゲラ属の両方の種類とは明らかに区別され出来る。
【図3】図3は、HE寒天培地のプレートで一晩増殖させたシトロバクター・ヨンガエ(Citrobacter youngae)のコロニーの写真である。黒色が中心にあるコロニーは、サルモネラ属の疑いのあるコロニーとして間違われ易い可能性があることに注目されたい。
【図4】図4は、3枚のプレートの写真である。上方プレートは、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する予備的N4タイプの配合物である。該上方プレートは、下方プレートにおいてXLD寒天培地(ラクトース/スクロースのみ)上でシトロバクター・ヨンガエの黒色(偽性サルモネラ属疑いのある)コロニーの形成と比較した。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートした。
【図5】図5は、HE寒天培地上(下方プレート)に播種された場合の、サルモネラ属に類似する同一細菌の黒色コロニーと比較した、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地(上方プレート)の試験配合物上のシトロバクター・ヨンガエの黄色コロニーの写真である。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートし、次いで室温で数日間保持した。
【図6】図6は、2枚のプレートの写真である。右側のプレートは、本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地で被覆される。左側のプレートはSS寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種し、バックグラウンドにプロテウスの増殖がない右側プレートを一晩増殖させた。SS寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【図7】図7は、2枚の寒天培地の被覆プレートの写真を示す。右側では、シゲラの良好な増殖を可能にしながらバックグラウンド細菌増殖を競合する抑制についてNIAPROOF(登録商標)4の濃度を評価する、プロトタイプN4配合剤を用いて被覆したプレートである。左側のプレートはXLD寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種して一晩増殖させた。XLD寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【図8】図8は、MM寒天培地で被覆されたプレートの写真であって、シゲラ・ソネイコロニー増殖を示す。該シゲラのコロニーは、多くの競合乳酸発酵細菌、例えば大腸菌と共に見られる青緑色を示す。
【図9】図9は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはHE寒天培地で被覆され、上方左側はSS寒天培地で被覆される。各プレートを、ヒト糞便試料を用いて接種した。図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑い(H2S陽性黒色コロニー)を示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【図10】図10は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはXLD寒天培地で被覆し、上方左側はSS寒天培地で被覆し、下方中心のプレートは本発明の選択増殖培地N4寒天培地で被覆する。各プレートをヒト糞便試料を用いて接種した。この図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑いがある(H2S陽性黒色コロニー)ことを示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は2006年9月13日の国際出願日を有し、2006年5月2日に提出した米国仮特許出願番号60/746,227の優先権を主張するPCT/US2006/035625のCIP出願である。両出願は、出典明示によりその全てを本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明の背景
1. 本発明の分野
この発明は細菌用の増殖培地の分野に関し、より具体的には、この発明は特定の細菌株または種の検出のための選択プレート培地に関する。特に、本発明はサルモネラ属またはシゲラ属選択プレート培地およびその使用に関係する。
【背景技術】
【0003】
2. 先行技術の説明
市場には、サルモネラ属(Salmonella spp.)に対して選択的なものとして推奨される様々な市販購入し得るプレート培地が存在する。いくつかのより一般的な選択プレート寒天培地は次のものである:MAC(Mac Conkey)、HE(Hektoen Enteric);SS(サルモネラ・シゲラ)およびXLD(キシロース-リシン-デオキシコリン酸塩)。しかしながら、サルモネラ属およびシゲラ属(Shigella spp.)の増殖を支持できるが、これらの寒天培地は検出されるべきサルモネラ属およびシゲラ属試料由来の一般的によく見られるバックグラウンドの細菌増殖(例えば、シトロバクター属およびプロテウス属)を十分に区別出来ないため、これらの既知の寒天培地は必要とされ得る程度に感受性または特異的ではない。
【0004】
本出願人は、サルモネラ属およびシゲラ属の検出のために2つの異なる、より選択的な寒天培地の開発に貢献した。第一のものはXLT4であり、これは従来のキシロース-リシン寒天基本培地中にTERGITOL(登録商標)4-(7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩)およびH2S産生の追加の促進物質を含んでおり、また米国特許第5,208,150に開示されており、出典明示により該明細書全体が本明細書に包含される。この培地はサルモネラ属に対して高い選択性を示す。第二の選択寒天培地はMM(Miller-Mallinson)寒天培地と命名され、これは米国特許第5,871,944に開示されており、出典明示により該明細書全体が本明細書に包含される。MM培地は、他の株、例えばサルモネラ・チフスおよびサルモネラ・コレラエスイス・バル・クンゼンドルフよりもH2Sの顕著に低い量を産生するサルモネラ属株を検出するために作成された。
【0005】
しかし、出願人はXLT4およびMM培地のその後の使用期間に、これらの選択的な増殖寒天培地がプロテウス属の増殖を大きく低下させ、また獣医学的および食品安全性用途においてシトロバクター属のコロニーを良好に識別するために成功裏に使用され得るが、ヒト診断用途においてはサルモネラ属およびシゲラ属を検出するために完全には成功しないことを見出した。XLT4寒天培地は、シゲラ属に対しては抑制しすぎることが判った。さらに、MM寒天培地は、シゲラ・フレクスネリの増殖および識別を支持する点では良好であると判明したが、大腸菌(E. coli)および他の乳糖発酵性細菌のコロニー群とシゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)のコロニーを識別しなかった。
【0006】
一般的に、現在入手可能なサルモネラ属/シゲラ属選択プレート培地は、サルモネラ属の菌種の最も効率的な検出を支持するものではない。MMおよびSS寒天培地は、乳酸発酵細菌のバックグラウンドコロニーとシゲラ・ソネイとを識別する能力を持たず、重要なヒト病原菌の検出において使用するためのこれらの増殖培地の感受性を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、選択的な増殖培地がヒト診断上の用途において、および食料/飼料および水質制御において使用できるように、現行の選択的な増殖プレート用培地以上にサルモネラ属およびシゲラ属のコロニーに対して十分に高い感受性を提供する選択的な増殖プレート培地についての必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要約
本発明により、本出願人により見出された選択的な増殖プレート培地は、XLT4寒天培地中に一般的に含有される成分を含んで構成され得るが、高いレベルでの加水分解タンパク質源、酵母抽出物およびさらにαラクトースおよびスクロース、そして新規添加物、すなわち(D+)-セロビオース、サリシンおよびズルシトールを含むように作成され得るが、寒天濃度および塩化ナトリウムの濃度はXLT4寒天培地中に一般的に存在する濃度よりも低いものである。さらに、本発明の選択的な増殖培地は、高濃度のNIAPROOF(登録商標)4(7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、また7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル 硫酸ナトリウム塩としても知られる)を許容する。これらの化合物は、従来の選択的なプレート培地よりもサルモネラ属およびシゲラ属の増殖および検出のための感受性および特異性を増強し得る十分な濃度で存在する。
【発明の効果】
【0009】
従って、本発明の目的は、サルモネラ属およびシゲラ属のコロニーの両方の検出において現行で入手出来る培地よりも、有意に高い感受性および特異性を有する選択的な増殖プレート培地を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、食料/飼料および水における、および食品加工用物品における、さらにヒト臨床的使用のための物品または装置、臨床診断上または疫学的試験のためにヒトまたは動物対象から回収した物品内または物品上のサルモネラ属およびシゲラ属のいずれかの存在を検出する際に使用できるようにサルモネラ属およびシゲラ属両方の検出において十分な感受性および特異性を有する選択的増殖プレート培地を提供することである。さらに、本発明の選択的増殖培地は、NIAPROOF(登録商標) 4(7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、また7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウムとしても知られる)を高濃度とすることが出来る。
【0011】
他の目的および利点と一緒に、後に明らかとなる本明細書の後記および請求の範囲においてより完全に詳細な説明に記載されており、関連のある数表示が全体の一部として参照される場合、本明細書の一部としてなす添付の写真を参照すべきである。
【0012】
図面の簡単な説明
図1は、本発明のN4寒天培地を有する2枚のプレートの写真である。十分なサイズの黒色(H2S陽性)サルモネラ属のコロニーは、37℃で24時間(左側プレート)および室温でさらに24時間後(右側プレート)にN4寒天培地で増殖した。
【0013】
図2aは、37℃で24時間インキュベーション後にさらに24時間室温で保持した、左側はシゲラ・ソネイの透明なコロニーを有するN4被覆プレートおよび右側にはシゲラ・フレクスネリコロニーを有するN4被覆プレートの写真である。
【0014】
図2bは、3枚の異なるN4被覆プレートの写真である。上方左側のプレートをN4寒天培地配合物を用いて被覆した。上方右側のプレートおよび下方真ん中のプレート両方は、本発明の選択増殖培地N4寒天培地を用いて被覆した。上方の2枚のプレートの左側および右側(各々)にシゲラ・ソネイおよびシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)の十分なサイズの透明なコロニーを観察できる。下方中心のプレートでのN4寒天培地上にある大腸菌の黄色の(酸性)乳酸発酵性コロニーは、シゲラ属の両方の種類とは明らかに区別出来る。
【0015】
図3は、HE寒天培地のプレートで一晩増殖させたシトロバクター・ヨンガエ(Citrobacter youngae)のコロニーの写真である。黒色が中心にあるコロニーは、サルモネラ属の疑いのあるコロニーとして間違われ易い可能性があることに注目されたい。
【0016】
図4は、3枚のプレートの写真である。上方プレートは、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する予備的N4タイプの配合物である。該上方プレートは、下方プレートにおいてXLD寒天培地(ラクトース/スクロースのみ)上でシトロバクター・ヨンガエの黒色(偽性サルモネラ属の疑いのある)コロニーの形成と比較した。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートした。
【0017】
図5は、HE寒天培地上(下方プレート)に播種された場合の、サルモネラ属に類似する同一細菌の黒色コロニーと比較した、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地(上方プレート)の試験配合物上のシトロバクター・ヨンガエの黄色コロニーの写真である。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートし、次いで室温で数日間保持した。
【0018】
図6は、2枚のプレートの写真である。右側のプレートは、本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地で被覆される。左側のプレートはSS寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種し、バックグラウンドにプロテウスの増殖がない右側プレートを一晩増殖させた。SS寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【0019】
図7は、2枚の寒天培地の被覆プレートの写真を示す。右側は、シゲラ属の良好な増殖を可能にしながらバックグラウンド細菌増殖を競合する抑制について、NIAPROOF(登録商標)4の濃度を評価するプロトタイプN4配合剤を用いて被覆したプレートである。左側のプレートはXLD寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種して一晩増殖させた。XLD寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【0020】
図8は、MM寒天培地で被覆されたプレートの写真であって、シゲラ・ソネイコロニー増殖を示す。該シゲラ属のコロニーは、多くの競合乳酸発酵細菌、例えば大腸菌と共に見られる青緑色を示す。
【0021】
図9は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはHE寒天培地で被覆され、上方左側はSS寒天培地で被覆される。各プレートを、ヒト糞便試料を用いて接種した。図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑い(H2S陽性黒色コロニー)を示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【0022】
図10は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはXLD寒天培地で被覆し、上方左側はSS寒天培地で被覆し、下方中心のプレートは本発明の選択増殖培地N4寒天培地で被覆する。各プレートを、ヒト糞便試料を用いて接種した。この図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑いがある(H2S陽性黒色コロニー)ことを示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【0023】
詳細な説明および好ましい実施形態
本発明の実施形態を説明する場合、具体的な専門用語は、明白性の目的のために用いられる。しかしながら、本発明は、特定用語に限定することを意図せずに選択され、具体的な用語は同様の目的を達成するために類似した方法で行う全ての技術的等価物を包含すると解されるべきである。例えば、本出願の目的のために、用語"N4寒天培地"または"N4寒天培地(複数)"は、本発明の培地混合物中にNIAPROOF(登録商標)4の存在を示すものであって、かかる用語は、本明細書で開示された寒天培地の様々な配合物を一般的に表示することを助けるために使用され得る。
【0024】
大部分の選択プレート寒天培地(例えば、HE、SS、XLD)の持つ重大かつ一般的な問題は、シトロバクター属の黒色(H2S陽性)コロニーの存在であり、これはサルモネラ属のコロニーと間違われ易い。図3は、サルモネラ属の疑いのあるコロニーとして間違われ易い黒色中心を有するシトロバクター・ヨンガエのコロニーを有するHE被覆プレートの写真である。
【0025】
MM寒天培地(例えば、10.0g/1αラクトースおよび5.0g/1 D(+)-セロビオース)の組成物により、シトロバクター属と関連のある偽性陽性(黒色)コロニー問題を部分的に低下させることを我々は考えたが、この問題は先行技術にいまだ残っていた。しかしながら、本発明で、我々は選択的な増殖培地N4寒天培地に使用した糖の濃度と種類を用いて実験することによって、当分野において長い間解決しなかった該問題を上手くかつ論理的に解決した。
【0026】
微生物分野の技術者には知られているが、発酵可能な糖の微生物コロニーの供給が枯渇した場合に、かかる微生物コロニーは選択プレート寒天培地上でエネルギー源としてタンパク質に切り替えることを理由にH2Sを生成する。例えば、シトロバクター属は、該菌が利用出来る炭素源を見出すことが出来る場合には、代謝を維持するために培地のタンパク質成分を利用しないことが知られている。シトロバクター属がタンパク質を利用することを回避することによりH2Sの産生が妨害され、その結果サルモネラ属コロニーとして誤診断される可能性のある黒色コロニーの形成が妨害される。
【0027】
シトロバクター属によって利用される50以上の炭素源のうちの5種、特にセロビオース、ならびにラクトース、スクロース、サリシンおよびズルシトールは、ズルシトール以外では、サルモネラ属またはシゲラ属により使用されるのが稀である容易に利用出来る炭素源であると我々は考えた。本明細書に記載した量の複数のこれら5種の炭素源は、広範囲の14種の様々なシトロバクター属(例えば、C. freundii、C. youngae、C. braakiiおよび他のもの)の代謝源として、タンパク質から逸らせる、即ちH2S(黒色コロニー)形成を妨害するために、実用的で有効かつ相補的な組合せ物であると考えられる。
【0028】
黒色コロニー形成の回避および遮断は、本発明のN4寒天培地において有意な高濃度の糖を導入することによって抑制される。糖の追加量は、スクロース、セロビオース、サリシンおよびズルシトールである。本発明と比較すると、MM中には、少量のセロビオースが存在し、スクロース、サリシンまたはズルシトールを含まない。本発明と比較すると、XLT4中には、セロビオース、サリシンまたはズルシトールを含まないが、スクロースおよびラクトースを含む、がしかしこれらの糖は本発明よりも低いレベルで存在する。
【0029】
そのため、本組成物は先行技術よりも高濃度の炭水化物を含有し、構成する炭水化物には、セロビオース、ラクトース、スクロース、サリシンおよびズルシトールの新規組合せ物を包含する。このように、出願人は明細書に開示するものは、本発明の選択的な増殖培地を含むラクトースおよびスクロースに加えてセロビオース、サリシンおよびズルシトールの新規組合物である。セロビオースは、約5.0〜15の量、好ましくは約8.0〜12.0の量で、最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する。サリシンは、約2.0〜12.0の量で、好ましくは約8.0〜10.0の量で、および最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する。ラクトースは、約5.0〜15.0の量で、好ましくは約8.0〜12.0の量で、および最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する;およびスクロースは、約5.0〜15の量、好ましくは約5.0〜12.0の量で、および最も好ましくは約8.0g/Lの量で存在する。
【0030】
キシロースおよびズルシトールはまた、初期のサルモネラ属の増殖およびシゲラ属の分化を増強するためにも存在する。各々は、約1.0〜8.0の量で、好ましくは約2.0〜4.0の量で、および最も好ましくは約2.0g/Lの量で存在し得る。
【0031】
当業者は、7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液のあらゆる源は、本発明にて使用され得る、例えば本発明の選択的N4寒天培地を配合物中の使用にはSigma-Aldrich Ultra タイプ4のNIAPROOF(登録商標)4(製品コード#N-1404、27重量%)であると解されるであろう。
【0032】
好ましい実施態様において、7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液NIAPR00F(登録商標)4の好ましい源は、本発明の選択的N4寒天培地を配合する際に使用するためのXLT4寒天培地補足物(BD Biosciences Product Code 235310、27重量%)である。NIAPROOF(登録商標)4は、低温により分離し得るために、冷蔵されるべきではない。いかなる分離も避けるように30℃まで温めて、使用する前に攪拌した。
【0033】
通常の環境下で、NIAPR00F(登録商標)4は、バックグラウンドのシゲラ属およびサルモネラ属をマスキングする腸細菌の共通の群であるプロテウス属(Proteus spp.)を抑制する場合に非常に強力な試薬である。
【0034】
NIAPROOF(登録商標)4 (以前はTERGITOL(登録商標)4としてUnion Carbideから供給された)についての化学組成は、7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム塩またはC14H2SNaO4S(実験式-ヒル則)としてのSigma(登録商標)カタログにおいて同定されることを明記する。しかし、XLT4寒天培地補足物としてBDにより供給されるNIAPR00F(登録商標)4の化学組成は、7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩またはそのナトリウム塩として同定されている。出願人は、両方の化学組成が本発明の目的として等価であると見なす。
【0035】
出願人は、サルモネラ属コロニーの増殖だけでなく、迅速で着実に容易に検出されるシゲラ属のコロニーの増殖を支持するためには、驚くほど高いレベル(例えば、7.5〜30.0g/L)の酵母抽出物と、3.0〜20.0g/Lレベルのプロテオースペプトンとを組合せることが必要であると考える。シゲラ属は、非発色コロニーとして見えるが、サルモネラ属が存在する場合には黒色または黒色が中心にあるコロニーとして見える。図1におけるプレートと図2aおよび2bのプレートを比較されたい。酵母抽出物は、通常最小限の増殖促進物質として低レベル(通常3.0g/1)で使用されるのみである。本発明までは、当業者は、シゲラ属の増殖を顕著に増加させるために、特にN4の化学組成と同程度の高度に選択的な培地にて、または他の大部分の比較的選択的な化学組成物について、酵母抽出物を高濃度で上手く使用出来るとは予測していなかった。N4寒天培地で使用された非日常的に高レベルの酵母抽出物とプロテオースペプトンとの組合せは、他の腸細菌用培地では知られていない。酵母の種類およびレベル、牛肉抽出物、ペプトンおよび炭素源における多くの変更は、本発明のN4化学組成において置換されてもよい。酵母抽出物は、約3.0〜30.0の量で、好ましくは約10.0〜23.0の量で、および最も好ましくは約15〜20g/Lの量で存在する。1以上の加水分解したタンパク質は、約1.0〜15.0の量で、より好ましくは約6.0〜12.0の量で、および最も好ましくは約3.0〜6.0g/Lの量で存在し得る。
【0036】
リシンは、時にはH2S陰性サルモネラ属の検出のために存在することもある。それは約2.0〜10.0の量、好ましくは約4.0〜6.0の量で、および最も好ましくは約5.0g/Lの量で存在する。
【0037】
チオ硫酸ナトリウムは、本発明のN4寒天培地のH2S検出システムの2部分のうちの一つとして存在する。それは、好ましくは約5.0〜8.0の量で、好ましくは約6.0〜7.0の量で、および最も好ましくは約6.8g/Lの量で存在する。
【0038】
クエン酸第二鉄アンモニウムは、本発明のN4寒天培地のH2S検出システムの第二の共通部分である。それは、約0.6〜1.0の量、好ましくは約0.7〜0.9の量でおよび最も好ましくは約0.8 g/Lの量で存在する。フェノールレッドは、様々なコロニー間の色識別のための非発色性インジケーターである。フェノールレッドにより生じた色の違いは、発色反応よりもむしろpHレベルに基づく。それは、約0.05〜0.2の量で、好ましくは0.08〜0.1の量で、最も好ましくは約0.08g/Lの量で存在する。
【0039】
寒天は、培養接種材料を適切に画線塗抹できるように、培地の堅さのために存在する。寒天は、約8.0〜20.0の量で、好ましくは約12.0〜18.0の量で、および最も好ましくは14.0g/Lの量で存在する。
【0040】
塩化ナトリウムは、存在する場合に、適切な培地湿気のために用い、約0〜5.0の量で、好ましくは約0〜2.0の量で、および最も好ましくは0の量で存在し得る。
【実施例】
【0041】
選択的な増殖の組成
実施例1
一般的な培地N4寒天培地
本発明の選択的なプレート培地の第一実施態様において、一般的な選択的N4寒天培地は、水1リットルと共に、下記の成分:
a) 約3.0〜約30.0gの酵母抽出物、
b) 約0.0〜10.0gのプロテオースペプトン No.3、
c) 約0.0〜15.0gのプロテオースペプトン、
d) 約0.0〜10gのL-リシン、
e) 約0.0〜約8.0gのキシロース、
f) 約0.0〜約15.0gのαラクトース、
g) 約0.0〜約15.0gのスクロース、
h) 約0.0〜約15.0gの(D+)−セロビオース、
i) 約0.0〜約15.0gのサリシン、
j) 約0.0〜約8.0gのズルシトール、
k) 約0.0〜5.0gの塩化ナトリウム、
l) 約5.0〜8.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.6〜1.0gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
n) 約0.05〜0.2gのフェノールレッド、および
o) 約10.0〜20.0gの寒天、
p) 約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液(NIAPROOF(登録商標)4, Sigma-Aldrich, 製品コード4またはBD-Difco製品コード235310)を混合して作成する。
【0042】
室温で蒸留/脱塩水(約1.0 L)を上記化合物に添加し、次いで混合して、それらを水に懸濁した。次いで、約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液(NIAPROOF(登録商標)4, Sigma-Aldrich, 製品コード4またはBD-Difco 製品コード235310)を、該懸濁を混合しながら添加した。滅菌マグネチックスターラーバーとマグネチックスターラーを該成分の懸濁および溶解を促進するために使用できる。過剰な気泡をもたらさないように、該懸濁液を振盪させない。全ての化合物、特に粉末のXLT4寒天培地基本成分中に存在する寒天を確実に溶解させるためにおよそ1分間煮沸させる。熱源からはずして、水浴で45-50℃まで冷却する。次いで、最終培地を約4-5mm厚となるようにプレートに注ぐ。該プレートを一晩室温で保持し、十分に密閉したプラスチックバック内に2〜5℃で貯蔵する。
【0043】
実施例2
N4化学組成273
本発明の選択的なプレート培地の別の好ましい実施態様において、選択的N4寒天培地は、水1リットルと共に、下記の成分:
a) 約7.5〜約15.0gの酵母抽出物、
b) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン No.3
c) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン、
d) 約4.0〜6.0gのL-リシン、
e) 約2.0〜4.0gのキシロース、
f) 約10.0〜15.0gのαラクトース、
g) 約10.0〜15.0gのスクロース、
h) 約10.0〜15.0gの(D+) -セロビオース、
i) 約4.0〜8.0gのサリシン
j) 約2.0〜約4.0gのズルシトール、
k) 約0.6〜0.9gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
l) 約6.0〜7.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.08〜10.0gのフェノールレッド、
n) 約12.0〜14.0gの寒天、および
o) 約4.0〜8.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液(NIAPROOF(登録商標)4, Sigma-Aldrich, 製品コード4 または BD-Difco 製品コード235310)、
を混合して作成する。
【0044】
N4化学組成273培地について化合物を含有するプレートを作成および保管するための方法は、別途前記の章にてN4寒天培地についての一般組成について記載したものと同一である。
【0045】
N4化学組成273について塩化ナトリウムを除外することにより、シゲラ属の増殖の副産物の程度が増強する。
【0046】
選択的および一般的なN4寒天培地化学組成およびN4寒天培地化学組成273は、発色化学組成ではない。発色培地とは、インジケーターを含有するもの、例えばX−galである。インジケーターは、微生物コロニーにより産生された酵素の基質を提供し、形成した錯体が色を識別する水不溶性沈殿物を生成する。発色基質の例示は、U.S.特許6,764,832に見出され、出典明示によりその全体を本明細書に含まれる。
【0047】
選択的N4 273 寒天培地は、MM培地と比べて、2〜5倍以上の酵母抽出物および2〜3倍程度のセロビオースを有する。N4寒天培地化学組成273は、MM寒天培地中には存在しないスクロース、サリシン、ズルシトール、キシロースおよびプロテオースペプトンを含有する。さらに、N4寒天培地化学組成物273はまた、αラクトースの同一レベルを含有するが、MM培地としてマンニトール、無水トレハロース、牛肉エキスまたはポリペプトンペプトンまたは塩化ナトリウムを含有しない。
【0048】
N4化学組成物273からのNaClの削除は、MMおよびXLT4寒天培地、ならびにMAC、HEおよびXLD寒天培地に存在する5.0g/Lの塩とは非常に異なっている。
【0049】
別の実施態様において、pHインジケーター、ナチュラルレッドまたはブロモチモールブルーは、本発明のN4寒天培地の好ましい実施態様において存在する全てのpHインジケーターフェノールレッドで各々置換される。ナチュラルレッドまたはブロモチモールブルーの性質は、サルモネラ属およびシゲラ属の非酸性(アルカリ性)コロニーからのバックグラウンドコロニー(シトロバクター属、プロテウス属、大腸菌等)と競合する酸性コロニーの境界決定をおそらく改善すると考えられる。
【0050】
フェノールレッドの使用は、これらのコロニーが特に各々が互いに接近している場合の事例において、酸性および非酸性コロニーの間の色の違いに関するぼやけをもたらすことが知られている。別の実施態様において、約0.01〜0.05 g/L (Sigma- Aldrich Product Code N 7005,染色含量90%)の範囲のナチュラルレッドインジケーター、または約0.02〜0.10g/Lの範囲のブロモチモールブルー(lot 90H 3,660 Sigma Chemical Co. Cat No. B8630)インジケーターのいずれかを、N4寒天培地に存在するフェノールレッドの代わりに、別のpHインジケーターとして各々使用出来る。ナチュラルレッドは、約0.01〜0.05の量で、好ましくは約0.02〜0.04の量で、および最も好ましくは0.03 g/lの量で存在する。ブロモチモールブルーは、フェノールレッドの代わりに、0.02〜0.10の量で、好ましくは約0.04〜0.08の量でおよび最も好ましくは約0.065g/Lの量で存在し得る。
【0051】
性能の違い:N4 対 XLT4、MMおよび他の寒天培地
本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地は、サルモネラ属およびシゲラ属両方のコロニー検出において、先の腸プレート培地技術よりも非常に高い選択性を提供する。
【0052】
XLT4寒天培地を包含するサルモネラ属の選択的プレート培地は、一般的にシゲラ属の最適な光学的検出を支持しない。この問題は、重要な腸病原菌の診断についてのその効率および信頼性を低下させる。これに対して、本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地は、本発明前には知られていなかった能力、サルモネラ属およびシゲラ属の両方のコロニーを十分増殖させる能力を提供する。従って、本発明の選択的N4寒天培地は、両方の病原菌に対する改良された選択性を提供する。
【0053】
重要な臨床診断上の問題は、発色MM寒天培地でのシゲラ属の増殖に関する。シゲラ属が発色MM寒天培地上で十分に増殖できるが、少なくとも1つの臨床的に重要な種であるシゲラ・ソネイ(Sigella Sonnei)は、大腸菌のような乳酸発酵する細菌のコロニーを擬態する青緑色コロニーをMM上に産生し得る。我々は、シゲラ・ソネイが本発明の非発色選択的N4寒天培地で成長した場合には、この問題はもはやおこらないことを発見した。従って、本願のN4寒天培地は、臨床的に関連のある病原の広い範囲を識別する場合に有用である。
【0054】
本発明の選択的増殖培地の使用を通じて緩和され得るその他の偽陽性または誤診断の問題には、プレート上でプロテウス属およびシトロバクター属の存在に共通して直面する問題が包含される。両細菌株は、H2Sを産生するサルモネラ属のコロニーによく似たコロニーを生成し、臨床誤診および長いサンプル処理時間をもたらす。両方の細菌株のこれらのコロニー数は、本発明の選択的な増殖N4寒天培地の使用によって大きく低下した。いくつかの一般的に使用した選択的な増殖プレート寒天培地を超える本発明の増殖培地の特異性における増加は、下記説明および特定の図に示されている。
【0055】
化学組成の違い:N4寒天培地 対 XLT4寒天培地
従来技術のXLT4プレート培地と、本発明のN4寒天培地(組成273)との比較により、N4寒天培地が、XLT4寒天培地よりも2倍以上のプロテオースペプトンNo.3、約2〜5倍以上の酵母抽出物、100%よりも少ない塩化ナトリウムを含有することが示される。さらに、XLT4寒天培地には含まないセロビオース、サリシン、ズルシトールおよびプロテオースペプトンは、N4寒天培地および(組成273)中に存在する。
【0056】
従来のXLT4プレート培地と本発明のN4寒天培地(組成273)とを比較すると、本願の増殖培地が、XLT4寒天培地よりも、高いプロテオースペプトン No.3、2〜5倍以上の酵母抽出物および33.3%〜100%高いαラクトースおよびスクロースとなることがわかる。さらに、XLT4寒天培地には存在しないセロビオース、サリシンおよびズルシトールはN4寒天培地中に存在する。プロテオースペプトン No.3の適度な増加は、驚くほどに酵母抽出物の能力を補完し、シゲラ属の増殖を支持することがわかった。同じように、著しく高いレベルの酵母抽出物は、シゲラ属の条件を満たしたコロニー増殖を支持するN4の能力には重要であったことが判った。
【0057】
化学組成の違い:N4寒天培地 対 MM寒天培地
従来のMMプレート培地と本発明のN4寒天培地(組成273)とを比較する場合、本発明の選択的N4寒天培地が、MM寒天培地と比べて2〜5倍以上の酵母抽出物および2〜3倍量のセロビオースを含有することが判る。さらに、MM寒天培地には存在しないサリシンおよびズルシトールは、N4寒天培地(組成273)に存在する。MM寒天培地では含有するが、組成273は塩化ナトリウムを含有しない。
【0058】
セロビオース、サリシンおよびズルシトールは、特に、高%にて利用される、シトロバクター属の強力な炭素の源として、MM培地で使用される量よりも増加される。
【0059】
本発明のN4寒天培地は、MM寒天培地内に存在しないスクロース、キシロース、サリシンおよびズルシトールおよびペプトンを含有する。N4寒天培地は、MM寒天培地よりもαラクトースが約5.0g多い量を有する。
【0060】
本発明の選択的な増殖培地とMM寒天培地との別の違いは、MM自体、色を発色させるために酵素活性を必要とするという意味で、本発明のN4寒天培地は発色培地ではないという点である。本発明のN4寒天培地は、微生物増殖の存在において、色原体Xゲルまたは培地を中性pHに保つための特定の緩衝液を含有しない。さらに、N4寒天培地は、従来のMM寒天培地には含まれるがマンニトール、トレハロース二水和物、牛肉エキスまたはポリペプトンペプトンを含有しない。N4培地中の全タンパク質濃度は、MM培地において使用された濃度とほぼ同じかまたは約2倍の範囲にわたる。
【0061】
コロニー識別法およびN4寒天培地で使用した成分の様々な型およびレベルについての論理的根拠
前記したとおり、MM寒天培地はシゲラ属の増殖を支持するが、MM寒天培地の発色(酵素的)コロニーの識別方法は、大腸菌と他の乳酸発酵細菌の青緑色コロニーから臨床学的に重要なシゲラ・ソネイのコロニーを識別することが出来ない。これは、MM寒天培地を用いる臨床医は、病原性のシゲラ・ソネイを、通常重要でない乳酸発酵細菌(例えば、大腸菌)コロニーと識別できないために、これは重要な臨床的問題であり得る。この結果はシゲラ属について偽陰性であって、また試験に関連する臨床的誤診である。この例は、図8の写真に示されており、ここでMM寒天培地により被覆されたプレートはプレート上でのシゲラ・ソネイのコロニー増殖を有することを示される。
【0062】
本発明のN4寒天培地を用いて、陰性キシロース発酵を用いるサルモネラ属の特徴であるH2S産生(黒色コロニー)およびシゲラ・ソネイおよび他のシゲラ属の特徴であるズルシトール発酵(無色コロニー)を組合せる非発色性(直接的な化学)技術は、コロニーの識別に使用される。サルモネラ属は、図1に示されるとおりN4寒天培地上で暗黒色コロニーとして出現する。シゲラ・ソネイおよびフレクスネリは、図2aおよび2bに示されるような培地の赤色バックグラウンドの上に無色コロニーとして出現する。注:図2bは、無色のシゲラ・ソネイおよび黄色の非病原性乳酸発酵細菌の大腸菌コロニーとの明確な識別を示す。
【0063】
本発明の前には、MM寒天培地以外に、セロビオースは、大部分のかかる培地(MAC、HE、SS、XLD等)には数十年程使用されてきたが、サルモネラ属/シゲラプレート培地には全く使用されていなかった。驚くべきことに、シトロバクター属の14種の中の一つ、特にシトロバクター・ヨンガエは、ラクトースまたはスクロースのみを用いるよりもむしろ複数の別の炭化水素、例えばセロビオース、サリシンおよびズルシトールを用いることによって、選択的寒天培地のタンパク質成分の利用および偽性サルモネラ属(黒色)コロニーの生成をより効果的に回避することを発見した。これは、発明者らによる考察および他の当業者により発行された文献に基づいて、シトロバクター・ヨンガエが非常に一般的な種のシトロバクター属であるので重要であった。[例えば、J. Clin. Microbiol. 1999;37 (8) :2619-2624を参照されたい(表3、C. youngae (種"12")だけでなく、Citrobacter braakii (試料#8)、C. werkmanii (試料#10)およびCitrobacter koseri (試料#14)に関しても上記説明を支持するものである)。頻出するこれらの種は報告されている。Microbiol. Immunol. 1996;40 (12):915-21を参照されたい。例えば図4および5を参照されたい。
【0064】
本発明までは微生物分野の技術者は、NIAPROOF(登録商標)4が増殖培地に使用でき、さらにシゲラ属およびサルモネラ属の条件を満たした増殖が可能であるということを考えていなかった。本発明のN4寒天培地としての組成物に使用したNIAPROOF(登録商標)4のレベルおよび炭水化物成分の選択および濃度は、大部分の一般的な選択プレート培地(例えば、HE、SS、XLD)により生じる特異性の問題(偽性、H2S陽性黒色コロニー)を大きく低下させた。図4、5、6、7、9および10は、例えばN4の改良された特異性を示す。
【0065】
また、本発明の選択的な増殖培地の別の新規特性は、プロテウス属の過増殖によるサルモネラ属およびシゲラ属のコロニーのマスキングが主に排除されることである。当業者には容易に理解されようが、プロテウス属およびH2S陽性(偽性)のシトロバクター属のコロニーの存在により引き起こされるサルモネラ属偽陽性の問題は、過去半世紀もの間診断者の頭を悩ませてきたという事実に対し、この重大な問題を是正するN4プレート培地に関する本願発明は注目すべき成果である。また、図4、5、6、7、9および10を参照されたい。
【0066】
本発明の有効性についての例は、図2bにおいて見ることが出来る。写真の上方左側のプレートは、N4基本寒天培地配合物で被覆される。写真の上方右側でのプレートおよび下方中心にあるプレートは、類似したN4寒天培地配合物で被覆される。シゲラ・ソネイ およびシゲラ・フレクスネリの十分なサイズの透明なコロニーが、上方の2つのプレートの左側および右側(各々)で見られる。下方中心のプレートでのN4寒天培地上の大腸菌の黄色(酸性)の乳酸発酵性コロニーは、シゲラ属の両方種とは明白に区別され得る。
【0067】
驚くべきことに、XLT4およびMM寒天培地中に存在する濃度よりも、高濃度の細菌増殖ファクター、例えば酵母抽出物、様々なペプトンおよび炭水化物が使用される場合に生じるプロテウス属の増殖を予防するためには、NIAPROOF(登録商標)4の濃度はN4寒天培地組成中にほぼ2倍増加されることが必要であることを発見した。
【0068】
本発明のN4寒天培地の開発中、最も一般的に使用される選択的なプレート寒天培地上ではプロテウス属の増殖によりサルモネラ属およびシゲラ属のコロニー両方の存在が事実上マスキングされるため、出願人の目的はプロテウス属の増殖を防止する培地を作成することであった。さらに、プロテウス属によるH2Sの産生は、通常H2S産生サルモネラ属のコロニーを擬態して、偽陽性サルモネラ属の診断をもたらす。本発明の選択的な増殖培地は、サルモネラ属およびシゲラ属の検出を達成するためにN4寒天培地の感受性を失わずにプロテウス属の増殖を有意に阻害することが見出されたNIAPR00F(登録商標)4の濃度を含んでいる。図6および7を参照されたい。
【0069】
先に記載した実施例は、本発明の単なる基本事項を説明するものとして考えられる。本発明の多数の用途は、当業者には容易に理解されるため、本発明は、開示した特定態様および説明した操作に限定されることは望まない。むしろ、全ての適切な変更および等価物は、発明の発明内にあると考えられる。
【0070】
本発明を説明する場合、請求の範囲に規定されたとおりに本発明の精神から逸脱せずに、本明細書中にある多くの改変は当業者には明らかであろう。従って、当業者は、本発明についての多くの他の用途を考え出し、そして本発明の範囲が前記開示内容によってのみ限定されるのではなく、添付の請求の範囲によっても規定されることを意図する。
【0071】
米国特許、特許出願、上記引例は、全て出典明示により全て本明細書の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明のN4寒天培地を有する2枚のプレートの写真である。十分なサイズの黒色(H2S陽性)サルモネラ属のコロニーは、37℃で24時間(左側プレート)および室温でさらに24時間後(右側プレート)にN4寒天培地で増殖した。
【図2】図2aは、37℃で24時間インキュベーション後にさらに24時間室温で保持した、左側はシゲラ・ソネイの透明なコロニーを有するN4被覆プレートおよび右側にはシゲラ・フレクスネリコロニーを有するN4被覆プレートの写真である。図2bは、3枚の異なるN4被覆プレートの写真である。上方左側のプレートをN4寒天培地配合物を用いて被覆した。上方右側のプレートおよび下方真ん中のプレート両方は、本発明の選択増殖培地N4寒天培地を用いて被覆した。上方の2枚のプレートの左側および右側(各々)にシゲラ・ソネイおよびシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)の十分なサイズの透明なコロニーを観察できる。下方中心のプレートでのN4寒天培地上にある大腸菌の黄色の(酸性)乳酸発酵性コロニーは、シゲラ属の両方の種類とは明らかに区別され出来る。
【図3】図3は、HE寒天培地のプレートで一晩増殖させたシトロバクター・ヨンガエ(Citrobacter youngae)のコロニーの写真である。黒色が中心にあるコロニーは、サルモネラ属の疑いのあるコロニーとして間違われ易い可能性があることに注目されたい。
【図4】図4は、3枚のプレートの写真である。上方プレートは、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する予備的N4タイプの配合物である。該上方プレートは、下方プレートにおいてXLD寒天培地(ラクトース/スクロースのみ)上でシトロバクター・ヨンガエの黒色(偽性サルモネラ属疑いのある)コロニーの形成と比較した。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートした。
【図5】図5は、HE寒天培地上(下方プレート)に播種された場合の、サルモネラ属に類似する同一細菌の黒色コロニーと比較した、(D+)-セロビオースに加えてラクトースおよびスクロースを含有する本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地(上方プレート)の試験配合物上のシトロバクター・ヨンガエの黄色コロニーの写真である。全てのプレートを24時間37℃でインキュベートし、次いで室温で数日間保持した。
【図6】図6は、2枚のプレートの写真である。右側のプレートは、本発明の選択的な増殖培地N4寒天培地で被覆される。左側のプレートはSS寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種し、バックグラウンドにプロテウスの増殖がない右側プレートを一晩増殖させた。SS寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【図7】図7は、2枚の寒天培地の被覆プレートの写真を示す。右側では、シゲラの良好な増殖を可能にしながらバックグラウンド細菌増殖を競合する抑制についてNIAPROOF(登録商標)4の濃度を評価する、プロトタイプN4配合剤を用いて被覆したプレートである。左側のプレートはXLD寒天培地で被覆される。両方のプレートを、プロテウスおよびシゲラ菌体の混合培養物を用いて接種して一晩増殖させた。XLD寒天培地上のプロテウス属の黒色コロニーは偽性サルモネラ属の疑いがある。
【図8】図8は、MM寒天培地で被覆されたプレートの写真であって、シゲラ・ソネイコロニー増殖を示す。該シゲラのコロニーは、多くの競合乳酸発酵細菌、例えば大腸菌と共に見られる青緑色を示す。
【図9】図9は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはHE寒天培地で被覆され、上方左側はSS寒天培地で被覆される。各プレートを、ヒト糞便試料を用いて接種した。図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑い(H2S陽性黒色コロニー)を示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【図10】図10は、3つの被覆プレートの写真である。上方右側プレートはXLD寒天培地で被覆し、上方左側はSS寒天培地で被覆し、下方中心のプレートは本発明の選択増殖培地N4寒天培地で被覆する。各プレートをヒト糞便試料を用いて接種した。この図は、上方プレートにおいて偽性サルモネラ属の疑いがある(H2S陽性黒色コロニー)ことを示し、下方中心ではN4寒天培地上には存在しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質源、
シトロバクター属が該タンパク質源を利用することを回避するために有効量の1以上の炭水化物源、および
7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、
を含む、
サルモネラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項2】
酵母抽出物、
タンパク質源、
シトロバクター属が該タンパク質源を利用することを回避するために有効量の1以上の炭水化物源、および
7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、
を含む、
サルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項3】
炭水化物源が、ラクトース、セロビオース、サリシン、ズルシトールおよびスクロースを含む、請求項1および2の非発色性増殖培地。
【請求項4】
炭水化物源が、全体で約18-65g/Lの量で存在する、請求項1および2の非発色性増殖培地。
【請求項5】
サルモネラ属またはシゲラ属により、利用される少なくとも1つのさらなる炭水化物をさらに含む、請求項3記載の非発色性増殖培地。
【請求項6】
サルモネラ属またはシゲラ属により、利用される少なくとも1つのさらなる炭水化物がキシロースである、請求項5記載の非発色性増殖培地。
【請求項7】
キシロースが約2.0〜4.0g/Lの量で存在し、ズルシトールが約2.0〜4.0g/Lの量で存在する、請求項6記載の非発色性増殖培地。
【請求項8】
酵母、
タンパク質源、
シトロバクター属が該タンパク質源を利用することを回避するために有効量の1以上の炭水化物源、および
7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、
を含む、
塩化ナトリウムを含まない、サルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項9】
炭水化物源が、ラクトース、セロビオース、サリシン、ズルシトールおよびスクロースを含む、請求項8記載の非発色性増殖培地。
【請求項10】
全ての炭水化物源からの全炭水化物が約30-80g/Lの量で存在する、請求項8記載の非発色性増殖培地。
【請求項11】
サルモネラ属またはシゲラ属により、利用される少なくとも1つのさらなる炭水化物をさらに含む、請求項9記載の非発色性増殖培地。
【請求項12】
水1リットルあたり、
a) 約3.0〜約30.0gの酵母抽出物、
b) 約0.0〜10.0gのプロテオースペプトン No. 3、
c) 約0.0〜15.0gのプロテオースペプトン、
d) 約0.0〜10gのL-リシン、
e) 約0.0〜約8.0gのキシロース、
f) 約0.0〜約15.0gのαラクトース、
g) 約0.0〜約15.0gのスクロース、
h) 約0.0〜約15.0gの(D+)−セロビオース、
i) 約0.0〜約15.0gのサリシン、
j) 約0.0〜約8.0gのズルシトール、
k) 約0.0〜5.0gの塩化ナトリウム、
l) 約5.0〜8.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.6〜1.0gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
n) 約0.05〜0.2gのフェノールレッド、および
o) 約10.0〜20.0gの寒天、
p) 約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液、
を含む、
サルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項13】
塩化ナトリウムを含まない、請求項12記載の非発色性増殖培地。
【請求項14】
酵母抽出物が約7〜23gの量で存在する、請求項13記載の非発色性増殖培地。
【請求項15】
水1リットルに対して、
a) 約7.5〜約15.0gの酵母抽出物、
b) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン No.3
c) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン、
d) 約4.0〜6.0gのL-リシン、
e) 約2.0〜4.0gのキシロース、
f) 約10.0〜15.0gのαラクトース、
g) 約10.0〜15.0gのスクロース、
h) 約10.0〜15.0gの(D+)-セロビオース、
i) 約4.0〜8.0gのサリシン
j) 約2.0〜約4.0gのズルシトール、
k) 約0.6〜0.9gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
l) 約6.0〜7.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.08〜10.0gのフェノールレッド、
n) 約12.0〜14.0gの寒天、および
o) 約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液、
を含む、
塩を含まないサルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項16】
サンプルの代表的部分を用いて請求項1および15のいずれかに記載の培地に直接画線塗抹すること、
該画線塗抹培地をサルモネラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
該培地を、該インキュベーション後にサルモネラ属コロニーについて検査すること、
を含む、
サンプル中に存在している疑いのあるサルモネラ属を選択的に増殖させる方法。
【請求項17】
サンプルの代表的部分を用いて請求項2および14のいずれかに記載の培地に直接画線塗抹すること、
該画線塗抹培地をシゲラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
該培地を、該インキュベーション後にシゲラ属のコロニーについて検査すること、
を含む、
サンプル中に存在している疑いのあるシゲラ属を選択的に増殖させる方法。
【請求項18】
下記の工程;
1) ヒト臨床的使用のための物品または装置からサンプルを得ること、
2) 該サンプルの代表的部分を用いて請求項1および10のいずれかに記載の培地に画線塗抹すること、
3) 該画線塗抹培地をサルモネラ属およびシゲラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
4) 該培地を、該インキュベーション後にサルモネラ属およびシゲラ属のコロニーについて検査すること、
を含む、
ヒト臨床的使用のための物品または装置上のサルモネラ属およびシゲラ属の存在を評価するための方法。
【請求項19】
下記の工程;
1) 臨床診断、品質コントロールまたは疫学的試験のために、ヒトまたは動物対象、食料/飼料または水からのサンプルを得ること、
2) 該サンプルの代表的部分を用いて、請求項1-5のいずれかに記載の培地に画線塗抹すること、
3) 該画線塗抹培地を、サルモネラ属およびシゲラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
4) 該培地を、サルモネラ属およびシゲラ属のコロニーについて該インキュベーション後に検査すること、
を含む、
ヒトまたは動物対象、食料/飼料または水から回収された物品内または物品上のサルモネラ属およびシゲラ属の存在を評価するための方法。
【請求項20】
工程1)においてサンプルを得た後に、
該サンプルを、前増菌培地および/または選択増菌培地に入れ、該サンプルを十分な量のサルモネラ属またはシゲラ属が増殖するまでの時間インキュベートすること、
その後に、工程2)に進めること、
をさらに含む、
請求項17-18いずれかに記載の方法。
【請求項1】
タンパク質源、
シトロバクター属が該タンパク質源を利用することを回避するために有効量の1以上の炭水化物源、および
7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、
を含む、
サルモネラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項2】
酵母抽出物、
タンパク質源、
シトロバクター属が該タンパク質源を利用することを回避するために有効量の1以上の炭水化物源、および
7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、
を含む、
サルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項3】
炭水化物源が、ラクトース、セロビオース、サリシン、ズルシトールおよびスクロースを含む、請求項1および2の非発色性増殖培地。
【請求項4】
炭水化物源が、全体で約18-65g/Lの量で存在する、請求項1および2の非発色性増殖培地。
【請求項5】
サルモネラ属またはシゲラ属により、利用される少なくとも1つのさらなる炭水化物をさらに含む、請求項3記載の非発色性増殖培地。
【請求項6】
サルモネラ属またはシゲラ属により、利用される少なくとも1つのさらなる炭水化物がキシロースである、請求項5記載の非発色性増殖培地。
【請求項7】
キシロースが約2.0〜4.0g/Lの量で存在し、ズルシトールが約2.0〜4.0g/Lの量で存在する、請求項6記載の非発色性増殖培地。
【請求項8】
酵母、
タンパク質源、
シトロバクター属が該タンパク質源を利用することを回避するために有効量の1以上の炭水化物源、および
7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩、
を含む、
塩化ナトリウムを含まない、サルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項9】
炭水化物源が、ラクトース、セロビオース、サリシン、ズルシトールおよびスクロースを含む、請求項8記載の非発色性増殖培地。
【請求項10】
全ての炭水化物源からの全炭水化物が約30-80g/Lの量で存在する、請求項8記載の非発色性増殖培地。
【請求項11】
サルモネラ属またはシゲラ属により、利用される少なくとも1つのさらなる炭水化物をさらに含む、請求項9記載の非発色性増殖培地。
【請求項12】
水1リットルあたり、
a) 約3.0〜約30.0gの酵母抽出物、
b) 約0.0〜10.0gのプロテオースペプトン No. 3、
c) 約0.0〜15.0gのプロテオースペプトン、
d) 約0.0〜10gのL-リシン、
e) 約0.0〜約8.0gのキシロース、
f) 約0.0〜約15.0gのαラクトース、
g) 約0.0〜約15.0gのスクロース、
h) 約0.0〜約15.0gの(D+)−セロビオース、
i) 約0.0〜約15.0gのサリシン、
j) 約0.0〜約8.0gのズルシトール、
k) 約0.0〜5.0gの塩化ナトリウム、
l) 約5.0〜8.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.6〜1.0gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
n) 約0.05〜0.2gのフェノールレッド、および
o) 約10.0〜20.0gの寒天、
p) 約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液、
を含む、
サルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項13】
塩化ナトリウムを含まない、請求項12記載の非発色性増殖培地。
【請求項14】
酵母抽出物が約7〜23gの量で存在する、請求項13記載の非発色性増殖培地。
【請求項15】
水1リットルに対して、
a) 約7.5〜約15.0gの酵母抽出物、
b) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン No.3
c) 約3.0〜6.0gのプロテオースペプトン、
d) 約4.0〜6.0gのL-リシン、
e) 約2.0〜4.0gのキシロース、
f) 約10.0〜15.0gのαラクトース、
g) 約10.0〜15.0gのスクロース、
h) 約10.0〜15.0gの(D+)-セロビオース、
i) 約4.0〜8.0gのサリシン
j) 約2.0〜約4.0gのズルシトール、
k) 約0.6〜0.9gのクエン酸第二鉄アンモニウム、
l) 約6.0〜7.0gのチオ硫酸ナトリウム、
m) 約0.08〜10.0gのフェノールレッド、
n) 約12.0〜14.0gの寒天、および
o) 約4.0〜12.0mlの7-エチル-2-メチル-4-ウンデカノール硫酸水素塩溶液、
を含む、
塩を含まないサルモネラ属またはシゲラ属に対して選択的な非発色性増殖培地。
【請求項16】
サンプルの代表的部分を用いて請求項1および15のいずれかに記載の培地に直接画線塗抹すること、
該画線塗抹培地をサルモネラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
該培地を、該インキュベーション後にサルモネラ属コロニーについて検査すること、
を含む、
サンプル中に存在している疑いのあるサルモネラ属を選択的に増殖させる方法。
【請求項17】
サンプルの代表的部分を用いて請求項2および14のいずれかに記載の培地に直接画線塗抹すること、
該画線塗抹培地をシゲラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
該培地を、該インキュベーション後にシゲラ属のコロニーについて検査すること、
を含む、
サンプル中に存在している疑いのあるシゲラ属を選択的に増殖させる方法。
【請求項18】
下記の工程;
1) ヒト臨床的使用のための物品または装置からサンプルを得ること、
2) 該サンプルの代表的部分を用いて請求項1および10のいずれかに記載の培地に画線塗抹すること、
3) 該画線塗抹培地をサルモネラ属およびシゲラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
4) 該培地を、該インキュベーション後にサルモネラ属およびシゲラ属のコロニーについて検査すること、
を含む、
ヒト臨床的使用のための物品または装置上のサルモネラ属およびシゲラ属の存在を評価するための方法。
【請求項19】
下記の工程;
1) 臨床診断、品質コントロールまたは疫学的試験のために、ヒトまたは動物対象、食料/飼料または水からのサンプルを得ること、
2) 該サンプルの代表的部分を用いて、請求項1-5のいずれかに記載の培地に画線塗抹すること、
3) 該画線塗抹培地を、サルモネラ属およびシゲラ属の増殖を促す条件下でインキュベートすること、および
4) 該培地を、サルモネラ属およびシゲラ属のコロニーについて該インキュベーション後に検査すること、
を含む、
ヒトまたは動物対象、食料/飼料または水から回収された物品内または物品上のサルモネラ属およびシゲラ属の存在を評価するための方法。
【請求項20】
工程1)においてサンプルを得た後に、
該サンプルを、前増菌培地および/または選択増菌培地に入れ、該サンプルを十分な量のサルモネラ属またはシゲラ属が増殖するまでの時間インキュベートすること、
その後に、工程2)に進めること、
をさらに含む、
請求項17-18いずれかに記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−544277(P2009−544277A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509689(P2009−509689)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010645
【国際公開番号】WO2007/130461
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508329324)ユニバーシティ・オブ・メリーランド (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MARYLAND
【出願人】(508328671)
【氏名又は名称原語表記】Russell G. MILLER
【出願人】(508328682)
【氏名又は名称原語表記】Edward T. MALLINSON
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010645
【国際公開番号】WO2007/130461
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508329324)ユニバーシティ・オブ・メリーランド (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MARYLAND
【出願人】(508328671)
【氏名又は名称原語表記】Russell G. MILLER
【出願人】(508328682)
【氏名又は名称原語表記】Edward T. MALLINSON
【Fターム(参考)】
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