説明

改質された炭素粒子

本発明は、分散性炭素粒子および分散性炭素粒子の調製方法を与える。ある態様において、本発明の方法は、炭素粒子からモノマーを重合することを含み、該炭素粒子は、1つまたは2つ以上の移動可能な原子または基を含む1つまたは2つ以上の結合した基を含む。モノマーの少なくとも一部分は、イオン性官能基に転化可能な少なくとも1つの反応性またはイオン化可能な官能基を含む。イオン性官能基は、水または水溶液中にカーボンブラック粒子の分散度等の所望の媒体中の炭素粒子の分散度を高める。本発明の方法は、反応性またはイオン化可能な官能基の少なくとも一部分をイオン性官能基に転化することも含む。イオン性基は、第四級アンモニウム基、カルボン酸基、ホスホニウム基、スルホニウム基、ヨードニウム基またはそれらの塩であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質された炭素粒子の調製に関する。さらに特に、本発明の改質された炭素粒子の態様は、分散性炭素粒子、ポリマー鎖を含む炭素粒子、および官能性ポリマー鎖を含む炭素粒子を含む。本発明はまたそうした改質された炭素粒子の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
炭素粒子は、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性炭、および活性炭素を含む多くの形態を含む。ある商業的に特筆すべき炭素粒子は、カーボンブラックである。カーボンブラックは、実質的に元素状炭素、典型的には90重量%〜99重量%の元素炭素である。結晶性炭素であるダイアモンドおよびグラファイトと異なり、カーボンブラックは、結合した一次粒子からなる無秩序炭素粒子である。カーボンブラックは粒子、集合体、および凝集体からなる。カーボンブラック一次粒子は、10〜75ナノメートルのサイズ範囲中にある直径を有する球体に近い粒子である。これらの一次粒子は、共に結合して集合体を生成することができる。集合体では、一次粒子は強く密着し、そしてこの理由により、集合体は、カーボンブラックの最小の分散単位(または作用単位)と考えられる。集合体は、50〜400nmのサイズ範囲にある。さらに、カーボンブラック一次粒子の集合体は、カーボンブラック集合体の集合である凝集体を形成することができる。集合体はより弱いファンデルワールス力で密着する。凝集体は、典型的には100〜1000nmのサイズ範囲にある。炭素粒子の語は、本明細書中で使用されるように、カーボンブラック粒子を含むだけでなく、カーボンブラックの集合体および凝集体並びに他の無秩序またはアモルファス炭素粒子を含む。
【0003】
その複雑な構造にもかかわらず、カーボンブラックは、例えば、ゴム産業において補強剤として、プラスチック産業において、帯電防止性、導電性および紫外線防護性から気体検出材料として、そして被膜、可塑性、包装、インク、インクジェットおよびトナー用途で使用される顔料として等の多くの商業上の用途を有する。カーボンブラックモルホロジーの重要な特性は、粒径、表面積、および集合体構造を含む。
【0004】
ある用途は、ポリマー、水溶液、または他の溶媒中に分散したカーボンブラックを必要とする。カーボンブラックの界面特性のコントロールは、非常に重要であり、そして引き続き課題である。分散性は、(微粒子として)媒体中に均等に分散する能力として規定できる。カーボンブラックの分散性は、ある製造方法において、その性能に不可欠である。適切なまたは均一なカーボンブラック分散体は、光沢、発色性(黒色度:jettness)、強度、押し出し成形および成形の特性、並びに多くの他の面の性能を高めることができる。
【0005】
分散体が安定化しない場合、潜在的な表面の不完全性、および色合いのフラッディング(flooding)または流れを生じるカーボンブラックの凝集または沈降が起こる可能性がある。水性媒体中でのカーボンブラックの不完全分散はまた、カーボンブラック分散体の発色性、光沢、および伝導性の減少、並びにインクジェットシステムにおける印刷の困難性を生じる場合がある。
【0006】
3つの方法がポリマー改質されたカーボンブラックを生成するために一般的に使用される:「〜を介したグラフト化」、「〜からのグラフト化」および「〜上へのグラフト化」。「〜上へのグラフト化」は、反応性高分子と粒子の表面上の官能基との反応を含む。しかし、表面と反応する高分子は立体障害を起こし、さらなる高分子が炭素粒子の表面上の反応点に到達することを妨げる。そうした立体障害は、カーボンブラックの表面上のグラフト化ポリマーを制限する。「〜を介したグラフト化」は"上へのグラフト化"の限界のいくつかを打開するために開発され、典型的には、オレフィン重合可能な基、好ましくはアルケニル基がカーボンブラックの表面に結合し、そして1つまたは2つ以上のこれらの結合した基が、官能性カーボンブラックの存在下で制御されていないラジカル重合を行うことによってコポリマーの骨格の中に取り込まれる。"からのグラフト化"は、典型的にはカーボンブラック表面上の開始点から直接モノマー重合することを含む。表面"からのグラフト化"は、典型的には"上へのグラフト化"法のポリマーに比較して小さい分子(すなわち、モノマー)のさらに高い拡散速度によるさらに高いグラフト化密度を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解離等によってラジカルを生成することができるポリマーが、カーボンブラック上にグラフト化されてもよい。例として、コントロールされた分子量および低い多分散性を有するTEMPO終端ポリスチレンは、C−ON結合の熱解離に続く、カーボンブラックによるポリマーラジカルの捕集によって、カーボンブラック上にグラフト化されてもよい。該方法は、表面上にグラフト化された良好に規格化されたポリマーを含むカーボンブラック粒子を生じた。しかし、該方法は非効率的であり、例えば、グラフト化のパーセンテージは、ポリマーラジカルの非効率的なトラッピング、立体障害、および不可避な鎖−鎖カップリングが原因で低かった(<20%)。
【0008】
別法は、ペルオキシ酸エステル、ジアゾ基、およびアルコールのヒドロキシル基等の従来のラジカル開始剤を、炭素粒子表面に結合して、種々の工程でのグラフト化において従来のラジカルまたは酸化還元開始重合法によってポリマーを結合させる。分枝ポリマーはまた、カーボンブラック上の既にグラフト化されたポリマーに結合したペンダントラジカル開始基によって開始された、ビニルモノマーの後重合によって、炭素粒子上にグラフト化される。
【0009】
従って、ポリマーをカーボンブラックにさらに効率的に結合させて、安定且つ分散性炭素粒子を生成する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分散性ポリマー改質炭素粒子の調製方法に関する。方法の態様は、炭素粒子からモノマーを重合させることを含んでもよく、該炭素粒子は、1つまたは2つ以上の移動可能な原子または基を含む1つまたは2つ以上の結合した基を含む。モノマーの少なくとも一部分は、反応性またはイオン化可能な官能基を含んでもよい。本発明の方法は、炭素粒子および反応性またはイオン化可能な官能基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成してもよい。反応性またはイオン化可能な官能基は、次にイオン性官能基に転化されて、炭素粒子およびイオン性官能基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含む粒子を生成する。イオン性官能基は、反応性またはイオン化可能な基から、または反応基のイオン化可能な基への転化から直接生成されてもよい。
【0011】
本発明の方法は、例えば反応性またはイオン化可能な官能基がエステル基またはアミノ基であるモノマーを含んでもよい。これらの態様において、反応性またはイオン化可能な官能基の少なくとも一部分を転化させることは、エステル基の少なくとも一部分を加水分解すること、エステル基の少なくとも一部分を脱アルキル化すること、またはアミノ基の少なくとも一部分を四級化またはプロトン化することを含む。
【0012】
分散性炭素粒子の調製方法のさらなる態様は、炭素粒子からモノマーを重合することを含み、モノマーの少なくとも一部分は、第四級アンモニウム塩等の少なくとも1つのイオン性基を含み、炭素粒子およびイオン性基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成する。
【0013】
他に示さなければ、本明細書および請求項中で使用される成分、時間、温度などの量を表す全ての数は、すべての場合で"約"の語によって修飾されていると理解されるべきである。従って、反対に示さない限り、以下の明細書および請求項に記述されている数値パラメーターは、本発明によって得ようとしている所望の特性によって変化できる近似である。最低限でも、そして請求項の範囲への均等の原則の適用を制限しようとする試みとしてではなく、個々の数値パラメーターは、少なくとも報告された有意な桁数の数に照らし、そして通常の四捨五入技術の適用によって、解釈されるべきである。
【0014】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメーターは、近似であるにもかかわらず、具体例に記述されている数値は、できる限り正確に報告される。しかし、すべての数値は、それらのそれぞれの試験測定中に見出される標準偏差から必ずしも生じたとはいえないある程度の誤差を本来的に含むことができる。
【0015】
本発明の態様の以下の詳細な記載を考慮することによって、本発明の先に記載した詳細および利点並びに他の点を理解するであろう。本発明の態様を行い、および/または使用する上で本発明のそうしたさらなる詳細および利点も理解することができるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、分散性炭素粒子の調製ための方法を提供する。ある態様において、本発明の方法は、炭素粒子からモノマーを重合することを含み、該炭素粒子は、1つまたは2つ以上の移動可能な原子または基を含む1つまたは2つ以上の結合した基を含む。モノマーの少なくとも一部分は、イオン性官能基へ転化可能な少なくとも1つの反応性またはイオン化可能な官能基を含む。イオン性官能基は、水または水溶液中のカーボンブラック粒子の分散度などの所望の媒体中での炭素粒子の分散度を高める。本発明の方法は、反応性またはイオン化可能な官能基の少なくとも一部分をイオン性官能基に転化させることをさらに含んでもよい。反応性またはイオン化可能な官能基は、例えばアミノまたはエステル官能性を含む基であってもよい。ある態様において、反応性またはイオン化可能な官能基は、アミノ基を四級化することまたはプロトン化することによってイオン性官能基に転化されてもよく、それによって第四級アンモニウム基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成し、またはエステル基の少なくとも一部分を加水分解または脱アルキル化して、カルボン酸基を生成し、そしてカルボン酸基の少なくとも一部分をカルボン酸塩に転化する。さらなる好適なイオン性基は、ホスホニウム基、スルホニウム基、ヨードニウム基またはそれらの塩を含んでもよい。本発明の態様において、水分散性カーボンブラックは、例えば、プロトン性媒体中で原子移動ラジカル重合(ATRP)を使用してカーボンブラック表面からメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)を重合させること、そしてその後にポリマーのアミノ基を四級化またはプロトン化して水分散性カーボンブラックを達成することによって調製されてもよい。結合したアミノ基の四級化は、例えば、アルキルハロゲン化物との反応によって行われてもよい。
【0017】
本発明の態様は、炭素粒子からモノマーを重合することを含む分散性炭素粒子の調製のための方法も含み、該炭素粒子は、1つまたは2つ以上の移動可能な原子または基を含む1つまたは2つ以上の結合した基を含み、そしてモノマーの少なくとも一部分は、第四級アンモニウム塩を含み、第四級アンモニウム塩を含む炭素粒子および1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成する。本発明の態様はまた、炭素粒子からカルボン酸基を含むモノマーを重合させることおよびカルボン酸基の少なくとも一部分をカルボン酸塩に転化させることを含む。
【0018】
好ましくは、本発明の重合は、ATRP等の制御重合法(CRP)を含む。"ATRP"は、Matyjaszewskiによって、米国特許第5,763,548号明細書および米国特許第5,807,937号明細書およびthe Journal of Americal Chemical Society、117巻、5614頁(1995)中、並びにACS Symposium Series 768、 およびHand book of Radical Polymerization、 Wiley: Hoboken 2002、 Matyjaszewski、 K.、and Davis、T.P.、 editors (Handbook of Radical Polymerization)中に記載されたリビングラジカル重合をいい、参照することにより本明細書中に全体を取り込む。"ATRP開始剤"は、鎖成長を開始可能な移動可能な(擬)ハロゲンを有する化学分子または官能化粒子である。制御重合において、速い開始は、低い多分散性を有する特定のポリマーを得るために重要である。種々の開始剤、典型的にはアルキルハロゲン化物が、ATRPで成功裏に使用されてきた。ハロゲン化した化合物の多種多様のタイプは、潜在的にATRP開始剤である。ATRPは、バルクで、または生成されたコポリマーを溶解するために選択された溶媒を使用して溶液中で行うことができる。
【0019】
本発明の方法は、ATRP開始剤を有する表面からのポリマーの成長によって例示されてきた。しかし、これは、例えばニトロキシド媒介重合、グループ移動重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、または移動可能な原子または基を含む他の重合方法等の異なるCRP法を開始するために使用可能である他の官能基の使用を除外しない。
【0020】
ニトロキシド媒介重合は、the Handbook of Radical Polymerizationの10章中に詳細に記載される。ニトロキシド媒介重合は、他の制御ラジカル重合の特徴、例えば、PDIの制御およびブロックおよびグラジエントコポリマーを生成する能力を有する。ニトロキシド媒介重合を使用した顔料表面からポリマーをグラフト化すること、例えば米国特許第6,664,312号明細書は、当技術分野で公知である。
【0021】
類似の技術が、可逆的付加開裂連鎖移動、またはRAFTを使用して、類似の末端を達成するために表面から成長するポリマーによって改質された粒子を生成してもよい。RAFTは、Chiefariらによって、Macrmolecules、1998,31,5559に最初に記載された。RAFTとニトロキシド媒介重合との決定的な違いは、活性鎖末端を与えるためにポリマー末端から移動する基が、例えば、チオカルボニルチオ基であることである。他の多くが、McCormick & Loweの、Accounts of Chemical Research、2004,37,312〜325を含む文献に示される。最も良く研究された制御ラジカル重合のいくつかを手短に記載したが、他の制御ラジカル重合は同じパターンに従う。
【0022】
別のリビング、または制御重合は、基が移動しそして転移があり、そしてアニオンが増殖(propagating)種であるグループ移動重合である。最も公知の例では、移動する基は、トリメチルシリルクロライドである。開始基は、メタクリレートのヒドロシリル化(hydrosilation)で作られ、そして顔料表面のペンダントで作られるであろう。例えば、アルコール処理表面は、メタクリロイル(methacryolyl)クロライドで処理されてメタクリル酸エステルを与えることができる。これは、例えば、米国特許第5,332,852号明細書中に教示された方法によって、ヒドロシリル化できる。このペンダントGTP開始点は、上記で記載した制御ラジカル法として同様な一般的な方法で、同じ末端に使用可能である。
【0023】
リビング/制御重合は、休止状態の鎖末端との関係で、鎖末端を増殖する比較的低い定常濃度を典型的に含むが、必ず含むわけではない。鎖が休止状態にある場合、鎖末端は、移動可能な原子または基を含む。休止状態の鎖末端は、移動可能な原子または基を失うことによって転化して鎖末端を増殖することができる。
【0024】
ATRPでは、ラジカル重合可能なモノマーは、遷移金属触媒の存在下で重合される。遷移金属触媒は、炭素粒子の表面上の開始剤の少なくとも一つと炭素粒子に結合した休止状態のポリマー鎖との酸化還元反応に関与する。好適な遷移金属触媒は、遷移金属および遷移金属に配位する配位子を含む。典型的には、遷移金属は、銅、鉄、ロジウム、ニッケル、コバルト、パラジウム、またはルテニウムの1種である。いくつかの態様では、遷移金属触媒は、銅ハロゲン化物を含む、そして好ましくは銅ハロゲン化物は、Cu(I)BrまたはCu(I)Clの1種である。
【0025】
ある態様において、炭素粒子は、最初にCRP開始点で官能化されている必要があって、”からのグラフト化”法が炭素粒子から行われて、改質されたカーボンブラックを生成してもよい。ATRPによる”からのグラフト化”のある用途では、活性ハロゲン原子等の移動可能な原子または基は、改質された炭素粒子の表面に結合していてもよい。したがって、本発明の態様は、炭素粒子上での開始点の生成を含んでもよい。例えば、本発明の方法の態様は、少なくとも1つのカルボン酸基を含む改質された炭素粒子と、官能性開始剤との反応を含んでもよく、該官能開始剤は、カルボン酸基および移動可能な原子または基と反応可能である両方の基を含む。好ましくは、改質されたカーボンブラックは、米国特許第5,554,739号明細書、米国特許第5,707,432号明細書、米国特許第5,851,280号明細書、米国特許第5,885,335号明細書、米国特許第5,895,522号明細書、米国特許第5,900,029号明細書、および米国特許第6,042,643号明細書中に記載された方法を使用して調製可能であり、これらの記載を参照することにより全て本明細書中に取り込む。改質された顔料を調製するための他の方法は、有用な官能基を有する顔料と、ラジカル移動可能な原子または基を含む試薬とを反応させることを含む。そうした官能性顔料は、上記取り込まれた参照文献中に記載された方法、および米国特許第6,831,194号明細書および米国特許第6,660,075号明細書、米国特許出願公開第2003−0101901号明細書および米国特許出願公開第2001−0036994号明細書、カナダ国特許第2,351,162号明細書、欧州特許第1394221号明細書、および国際公開第WO04/63289号パンフレットに記載された方法を使用して調製可能であり、それぞれも、参照することによりそれらの全部を本明細書中に取り込む。
【0026】
本発明の炭素粒子は、例えば、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性炭、または活性炭素であってもよいが、炭層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ等の規則正しい配列の炭素化合物は含まない。ある用途では、好ましい炭素粒子は、カーボンブラックである。結合したポリマーを有するカーボンブラックの分散体は、ある用途でさらに安定な分散体を与える。炭素粒子の代表的な例は、チャネル(channel)黒色、炉(furnace)黒色およびランプ(lamp)黒色等の種々のカーボンブラック顔料(顔料黒色7)を含んでもよく、そして(例えばBlack Pearls(商標)2000、Black Pearls(商標)1400、Black Pearls(商標)1300、Black Pearls(商標)1100、Black Pearls(商標)1000、Black Pearls(商標)900、Black Pearls(商標)880、Black Pearls(商標)800、Black Pearls(商標)700、Black Pearls(商標)L、Elftex(商標)8、Monarch(商標)1400、Monarch(商標)1300、Monarch(商標)1100、Monarch(商標)1000、Monarch(商標)900、Monarch(商標)880、Monarch(商標)800、Monarch(商標)700、Mogul(商標)L、Regal(商標)330、Regal(商標)400、およびVulcan(商標)等の)例えば、Regal(商標)、Black Pearls(商標)、Elftex(商標)、Monarch(商標)、Mogul(商標)、およびVulcan(商標)の商標名でCabot Corporationから販売されているカーボンブラックを含んでもよい。顔料は、カーボンブラック顔料の所望の特性により、窒素吸着で測定して、広範なBET表面積を有していてもよい。例えば、カーボンブラックの表面は、約10m/g〜約1000m/gおよび約50m/g〜約500m/gを含む約10m/g〜約2000m/gであってもよい。当業者に公知であるように、より広い表面積はより小さい粒径に対応する。より広い表面積が好ましく、そして直ちに所望の適用に使用可能でない場合には、顔料がボールまたはジェットミル粉砕等の従来のサイズ減少技術または粉砕技術にかけられて、必要に応じてより小さい粒径に顔料を減少させてもよいことも、当業者によって充分認識される。さらに、顔料がカーボンブラック等の一次粒子の集合体を含む微粒子材料である場合には、顔料は、約40cc/100g〜約200cc/100gを含む約10cc/100g〜約1000cc/100gの範囲にわたる構造を有していてもよい。
【0027】
本発明は、ポリマー鎖が一般的に2.0未満の分子量分布指数(polydispersity index:"PDI")を有する炭素結合したポリマー鎖を含む粒子も含む。結合したポリマー鎖のPDIは、1.5未満、そして1.3未満にまでさえ制御されてもよい。より広いPDIが所望の場合には、これは不活性化剤の濃度を減少させるか、または開始速度の低下によって達成可能である。結合したポリマー鎖のPDIは、炭素粒子からポリマー鎖を分離すること、および自由ポリマーを生じるPDIを測定することによって、測定されてもよい。ある態様において、改質された炭素粒子は、結合したポリマー鎖を含み、該ポリマー鎖は、例えば、カルボン酸基、それらの塩、または第四級またはプロトン化されたアミノ基等のイオン性官能基を含む少なくとも1つの基を含む。
【0028】
ポリマー改質された顔料は、例えば、米国特許第6,551,393号明細書、米国特許第6,368,239号明細書、および米国特許第6,103,380号明細書中にも記載されており、参照することにより、それらの全てを本明細書中に取り込む。
【0029】
本発明の方法の態様は、バルクまたは溶媒中で行ってもよい。溶媒が使用される場合、溶媒はプロトン性媒体または非プロトン性媒体であってもよい。プロトン性媒体は、プロトン供与体であることができる少なくとも1種の成分を含む媒体である。好ましくは、本発明の態様のプロトン性媒体は、プロトン性媒体の重量に基づいて、少なくとも5%のプロトン供与体であることができる成分を含む。プロトン性媒体は、水および例えば少なくとも1種のアルコールを含んでもよい。プロトン性媒体のアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘプタノール、またはそれらの混合物であってもよい。ある用途では、アルコールがプロトン性媒体の75重量%超を構成することが望ましくてもよく;他の適用ではアルコールがプロトン性媒体の85重量%超、またはプロトン性媒体の85重量%〜95重量%またはプロトン性媒体の85重量%〜90重量%までさえあることが好ましくてもよい。本発明の態様も、非プロトン性媒体中でラジカル重合可能なモノマーを重合することを含み、該プロトン性媒体は、アニソール、キシレン、ベンゼン、ハロゲン化したベンゼン誘導体、または他の非プロトン性溶媒等の芳香族溶媒を含むが、これらに限られない。
【0030】
本発明の重合ステップで使用される好適なモノマーは、少なくとも1つのジエン基または少なくとも1つのビニル基を含む。例は、アクリレートエステル、(メタ)アクリレートエステル、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレイン酸およびフマル酸ジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、スチレン、およびこれらのモノマーの誘導体を含むがこれらに限られない。ビニルケトンは、アルキル基のα−炭素原子は、両α−炭素がC〜Cアルキル基ビニルケトン、ハロゲン等またはフェニル基が1〜5のC1〜C−アルキル基および/またはハロゲン原子で置換されていてもよいビニルフェニルケトン等の水素原子を有さないものを含む。スチレンは、ビニル基がα−炭素原子等においてC1〜Cアルキル基で置換されたもの、および/またはフェニル基がC〜Cアルキル、(ビニルを含む)アルケニル、(アセチレニルを含む)アルキニル、またはフェニル基、およびC1〜Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、(C〜Cアシル基で保護されたものを含む)ヒドロキシ、およびシアノ基等の官能基を含む1〜5の置換基で置換されたものを含む。具体例は、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、酢酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル;スチレン、およびそれらの誘導体を含む。窒素を含有するイオン化可能な基を含むモノマーは、例えば、DMAEMA、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピリジン、およびこれらのモノマーの誘導体であってもよい。エステル官能基を含むモノマーは、C〜C20アルコールのアクリレートエステル、C1〜C20アルコールの(メタ)アクリレートエステル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびこれらのモノマーの誘導体等のアクリル酸のエステルを含む。本発明の方法はまた、モノマーの少なくとも一部分がイオン性官能性に転化可能であるアミノ基またはエステル基を含む方法を含む。
【0031】
第四級アンモニウム基およびカルボン酸基またはそれらの塩等のイオン性官能基を含むポリマー鎖は、次式であることができる:
【化1】

【0032】
式中、該RはR[ここでRおよびRは、結合、非置換または置換アリーレン基、非置換または置換アルキレン基、非置換または置換アラルキレン、非置換または置換アルカリーレン(alkarylene)、−O−、−S−、−OR−、−NR−、−S(=O)−、−C(=O)−、−COO−、SOO−、−NRC−、−CNR−、および−C−P(O)O−、または−P(OR)OO−(ここで、Rは、H、アルキル、アルキレン、アリールまたはアリーレンの1つである)の1つから独立して選択される]であり、;RおよびRは、H、アルキル基、アリール基、−OR、−NHR、−N(Rまたは−SR(ここで、Rはアルキル基またはアリール基の1つから独立して選択される)から独立して選択され;Xは移動可能な原子または基であり、そしてPは第四級アンモニウム基またはカルボン酸基またはそれらの塩等の少なくとも1つのイオン性官能基を含むポリマー鎖を表し(ただしRはパーオキサイドでない);そしてPはラジカル重合可能なモノマーを含むポリマーであり、そしてホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトポリマー、分枝ポリマー、グラジエントコポリマーまたは交互コポリマーの1つである。
【0033】
第四級アンモニウム基を含むモノマーは、例えば、以下の式の1つを有してもよい:
【化2】

【0034】
式中、Rは、H、CH,ClまたはCNであり、Rは、分枝または非分枝C〜Cアルキレンであり、R10およびR11は、独立して、分枝または非分枝C〜Cアルキルまたはイソプロピルであり、そしてR12およびR13は、H、分枝または非分枝C〜C16アルキルまたはベンジルから独立して選択され、そしてYは、対イオンである。
【0035】
以下の例は、方法の態様および本発明の組成物を示す。
【実施例】
【0036】
材料の例
【0037】
モノマー、アクリル酸n−ブチル(n−BA)、アクリル酸t−ブチル(t−BA)、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、および トリメチル塩化アンモニウム(DMAEMA−Cl、水中75重量%溶液)をAldrichから購入し、そして重合の前に塩基性アルミナカラムを通した。遷移金属塩CuBr(97%)をAldrichから入手し、そして氷酢酸(Fisher Scientific)上で攪拌し、続いてろ過しそして固体をエタノールで3回およびジエチルエーテルで2回洗浄して精製し、そして一晩真空乾燥した。CuBr2,2,2'−ビピリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(4−DMAP)および1、3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、メチル2−ブロモプロピオン酸(MBP)およびN、N、N'、N'、N"−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)をAldrichから入手し、そしてそのまま使用した。2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルα−ブロモイソ酪酸を、Newman、M.S.、Kilboum E.J.、Org.Chem.1970,35,3168〜3188に従って合成した。アニソールをAldrichから入手し、そしてÅモレキュラーシーブで乾燥した。カーボンブラック(Monarch700)をCabot Corporationから入手した。
【0038】
水不溶性のポリマーでは、分子量およびPDIを、Waters712WISPオートサンプラー、およびPSS guard、そして流速THF1mL/分で、10Å、1000Åおよび100Åカラムを使用して測定した。試料注入前に、ポリマー試料を内部基準としてのトルエンと、THF中に溶解し、そして中性のアルミナおよび0.2μmPFTEフィルターを有する短いカラムを通して、銅および埃を除去した。試料がカーボンブラックの場合は、0.45μmフィルターに続いて0.2μmフィルターを通した複数のろ過を行った。
【0039】
水溶性ポリマーでは、試料の分子量および多分散性を、Waters410示差屈折計と連動させて、ポリ(スチレン)標準から生成されたキャリブレーション曲線に基づいて決定した。さらに、動的な試料の分子量を、ポリマー試料を内部標準としての一滴のトルエンとDMFに溶解し、そして1mL/分の流速の溶離液としてDMFを使用することで、GPC(Waters717)で測定した。ポリ(DMAEMA)の場合には、試料の分子量および多分散性を、屈折率検出器と連動させて、ポリ(メタクリル酸メチル)標準から生成されたキャリブレーション曲線に基づいて決定した。
【0040】
試料の遠心分離を、4℃に冷した16,500回転/分(39,000重力グラムに相当する)のSorvall(商標)RC 5C plus遠心分離機で行った。
【0041】
カーボンブラック上のグラフト化ポリマーの量の決定を、AutoTGA2950(TA Instruments)上で行った。
【0042】
約10mgの乾燥試料を窒素下のPtパンに置いた。試料を10℃/分で650℃まで加熱する前の110℃で10分間保った。最終的に、試料を650℃で15分間維持した。
【0043】
ポリマーグラフト化カーボンブラックのサイズを、MlCROTRAC Particle Size Analyzer(UPA)、L&N179521で測定した。測定技術は動的光散乱である。カーボンブラック粒子の分散体を、最終の濃度が百万分の2〜3(ppm)に低くなるまで、好適な溶媒中に溶解した。試料セルは、体積で3〜8mlの試料のための最大容積を有する316ステンレススチールセルであり、そして試料測定の取得時間は360秒である。
【0044】
例1:カーボンブラックのカルボキシル化
920g蒸留水中で、カーボンブラックBP700粉末(500g、Cabot Corporation)と、p−アミノ安息香酸(137.14g、Aldrich)とを、ProcessAll Mixerで混合した。この混合物を50〜55℃に加熱した。そして300回転/分で10分間混合した。ナトリウム亜硝酸、(69g、Aldrich)を207mLの水に溶かし、そしてこの溶液を10〜15分かけて反応器にポンプで送った。生じた混合物を2時間、60℃に加熱した。内容物を水で薄めて除去して(重量で)約15%固形分の最終濃度にし、そして遠心分離および7.5体積の水による膜分離法によって精製した。
【0045】
例2a:CB開始剤の合成(CB−Br)
例1で生成した15gの水性分散体をpH2に酸性化して、カーボンブラックを沈殿させた。カーボンブラックをDI水で洗浄し、そして遠心分離によって何回か分離した後で、エステル化の前に真空下60℃で12時間乾燥した。カーボンブラックを250mLの乾燥THF中で均質化した。この分散体に、16gのDCC、2.5gのDMAPおよび19.4gの2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルα−ブロモイソ酪酸を加えた。反応を5時間で均質化し、そしてマグネティック攪拌子で攪拌しながら一晩進行させた。官能性カーボンブラックを次にTHFまたはメタノール中で、複数回の遠心分離によって精製した。
【0046】
例2b:CB開始剤の合成(CB−Br)
例1で生成した5gの水性分散体をpH2まで酸性化してカーボンブラックを沈殿させた。カーボンブラックをDI水で洗浄し、そして遠心分離によって何回か分離した後で、エステル化の前に真空下60℃で12時間乾燥した。表面カルボン酸基を均質化させた状態下で、20mL乾燥THF中20mLSOClと反応させた。過剰のSOClおよび溶媒を真空下で除去した後で、40mLTHF中3.3g2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルα−ブロモイソ酪酸および4.60gブトキシエタノールを系に加えた。ホモジナイザーをマグネティック攪拌子に切り替える前に、反応を5時間で均質化し、そして反応を一晩継続させた。官能性カーボンブラックを次にTHFまたはメタノール中での複数の遠心分離によって精製した。
【0047】
例3a:カーボンブラックからのn−BAのATRP重合
従来のラジカル重合に対する制御ラジカル重合の利点の1つは、第2のブロックとの鎖延長によって、ブロックコポリマーを容易に合成できることである。第1のブロックの鎖末端が鎖延長に使用可能であるかどうかをテストするために、ブロック共重合を行った。
【0048】
例2a(CB−Br1.20g、0.238mmol、0.198mmol Br/gカーボンブラック)の材料、CuBr(0.5mL原液、0.0143mmol)、PMDETA(100μmL、0.476mmol)、n−BA(11.3g、0.088mol)およびアニソール(8mL)をシュレンクフラスコに加えそして脱気した。内容物を凍結して窒素で保護しながら、CuBr(0.068g、0.476mmol)を次に加えた。反応を12.5時間70℃で進行させ、そして7重量%n−BAの転化がGCによって得られた。CB−ポリ(n−BA)を単離し、そしてt−BAのブロック共重合のマクロ開始剤として使用する前に、遠心分離によって精製した。これらの粒子は、182nmの粒径を有するTHF中の分散体を生成し、そしてTGAで25%の揮発性成分を有した。
【0049】
例3b:CB−ポリ(n−BA−b−t−BA)の調製
例3(a)のポリ(n−BA)−グラフト化カーボンブラックを次に重合を開始するために使用した。アニソール(4ml)を加える前に、ポリ(n−BA)(0.76g)を真空下で乾燥した。t−BA(5.65g、0.044mmol)およびCuBr溶液(0.25mL原液、0.00714mmol)を加える前に、混合物に氷/水超音波浴で30分間超音波を掛け、そしてさらに5分間窒素下で超音波を掛けた。PMDETA(50μml、0.238mmol)を加えた後で、CuBr(0.034g、0.238mmol)を窒素下で加える前に、分散体を通常のFreeze−Pump―thawサイクルにかけた。反応をさらに60時間進行させ、そして材料を例3aにおけるように精製した。これらの粒子もTHF中に分散し、そして302の粒径および76%の揮発性成分を有する。
【0050】
例4:表面からポリマーを分離して分析
精製後、例3aおよび3bのカーボンブラック表面で成長したポリマーを分離し、そしてTHF中でGPCによって測定した。3aから分離したポリマーの分子量は、1950であり;3bから分離したポリマーは、33,900の分子量を有する。カーボンブラックから分離した第1のポリ(n−BA)ブロックに比較して、分子量の明らかなシフトがあり、例3aのポリマー鎖が例3b中のポリマー成長ための開始剤として働いたことを示す。
【0051】
例5:加水分解可能なエステル基の加水分解による分散性カーボンブラックの生成
例3b(0.5g)で調製したブロックコポリマーグラフト化カーボンブラックを、20mL THFに溶解した1.14gトリフルオロ酢酸の溶液中に一晩置くことによって加水分解した。生成したポリマーグラフト化カーボンブラックを、塩基性下、水中で分散性であった。水性分散体は325nmの粒径を有し、そして乾燥した材料は、65重量%揮発分であった。
【0052】
例6:官能性カーボンブラック表面(CB−PDMAEMA)からDMAEMAの重合
例2b(官能性カーボンブラックCB−Br、0.58g、0.15mmol)の材料をシュレンクフラスコに加え、そして真空下室温で1時間乾燥した。DMAEMA(11.8g、75mmol)、MeOH(11g)、水(1.4g)、DMF(1.0mL)、ビピリジン(0.15g、0.96mmol)およびCuBr(0.040g、0.18mmol)を次にシュレンクフラスコに加えた。フラスコを4回のFreeze−pump―thawサイクルによって脱気した。内容物を液体窒素中で凍結しながら、フラスコを窒素で満たし、そしてCuBr(0.043g、0.3mmol)を加えた。フラスコを次に脱気し、そして窒素で2回満たし、次に室温までさまし、そして初期試料(t=0)をシリンジで集めた。フラスコを次に30℃の恒温油浴に入れた。試料をフラスコから周期的に取り出した。モノマーの転化をNMRおよびGCの両者によってモニターし、そして重合を18時間で止めた。カーボンブラック粒子を遠心分離によって単離し、そしてメタノール中で超音波を掛けた。試料を次に39,000gで2時間遠心分離した。検出可能な自由なポリマーが上澄み中にGPCによってなくなるまで、この方法を繰り返した。材料は、58重量%揮発分であり、そしてMeOH中で342nmの粒径を示した。メタノール/HO中DMAEMAのエステル交換による重合でのMMAの取り込みにもかかわらず、ポリマーグラフト化カーボンブラックは、酸性状態下または臭化アルキルを使用した四級化で、安定な水分散体を生成した。
【0053】
例7:酸性水120nm、57%中に例6の分散体
例6の少量の材料を、音波処理によってpH2の水中に分散した。粒径は462であった。
【0054】
例8:臭化エチルによるCB−PDMAEMAの四級化
音波処理によって20mL THF中に分散した例7(CB−PDMAEMA、0.5g)の材料を、10mLの臭化エチルで処理し、そして混合物を一晩攪拌した。粒子は一晩沈殿した。沈殿した粒子を、溶媒および過剰アルキルハロゲン化物を蒸発させて単離した。材料は74重量%揮発分であり、そして683nmの粒径を有し水中で分散性であった。
【0055】
四級化の度合いを、第四級および非第四級アミノメチル基のNMR積分から計算すると67%であった。試料はTGAで74%揮発性であり、462nmの粒径を有した。
【化3】

図1.臭化エチルによるポリ(DMAEMA)−グラフト化カーボンブラックの四級化
【0056】
例9:官能性カーボンブラック表面からのDMAEMAおよびHEMAの重合
例2a(CB−Br、0.87g、0.15mmol)の材料を、シュレンクフラスコに加え、そして真空下、室温で1時間乾燥した。シュレンクフラスコに、DMAEMA(9.83g、62.5mmol)、HEMA(1.63g、12.5mmol)、MeOH(11g)、水(1.4g)、ビピリジン(0.15g、0.96mmol)およびCuBr(0.040g、0.17mmol)を加えた。フラスコを次に4回Freeze−pump―thawサイクルによって脱気した。内容物を液体窒素中で凍結しながら、フラスコを窒素で満たし、そしてCuBr(0.043g、0.3mmol)を加えた。フラスコを次に脱気し、そして窒素で2回満たし、次に室温までさまし、そして初期試料(t=0)をシリンジで集めた。フラスコを次に30〜32℃の恒温油浴に入れた。一定分量をフラスコから周期的に取り出した。モノマーの転化をNMRおよびGCの両者によってモニターした。反応を18時間で停止した。
【0057】
例10:CB−PDMAEMAからのHEMAの重合
例6の材料CB−PDMAEMA(0.35g)をシュレンクフラスコに加え、そして真空下室温で1時間乾燥した。シュレンクフラスコに、HEMA(6.52g、50mmol)、MeOH(8g)、水(1.0g)、ビピリジン(0.075g、0.48mmol)、CuBr(0.0215g、0.15mmol)およびCuBr(0.020g、0.085mmol)を加えた。フラスコを次に前に記載したように脱気した。例9と同じ重合状態を使用し、そして反応の18時間後に、約5.7%のモノマー転化をGCによって検出した。反応が進行するにつれて、ポリマーグラフト化カーボンブラックが溶液から沈殿するのが見いだされた。溶媒を除去後、粒子は、超音波を掛けると水中に直ちに分散した。分散体は、pH範囲にわたって、そして沸騰水においてさえ安定であった。ブロックコポリマーの生成を、溶解度テストによって確認した:例6の材料CB−PDMAEMAは、アセトン中で分散したが、例10の材料はアセトン中で分散せず、メタノール中で分散した。これはDMAEMAおよびHEMAのホモポリマーの公知の溶解性と一致する。PHEMAの存在もIRによって確認し、そしてTGAは51%〜68%の増加した揮発性成分を示し、そして光分散は198nm〜283nmの増加した粒径を示した。
【0058】
例11:CB−BrからDMAEMA−Clの重合
例2aの材料CB−Br(0.58g)を、5.54gDMAEMA−Cl水溶液、0.019gのCuBr2,0.77gピリジン、0.15gビピリジン、2gの水、0.5mLのDMFおよび2gのメタノールとシュレンクフラスコ中で混合した。フラスコを次に4回のFreeze−pump―thawサイクルによって脱気した。内容物を液体窒素中で凍結しながら、フラスコを窒素で満たし、そしてCuBr(0.057g)を加えた。フラスコを次に脱気し、そして窒素で2回満たし、次に室温までさました。重合を30〜32℃で16時間行った。精製後、ポリマーが結合したカーボンブラックは、水中に分散し、そしてDI水中で測定して570nmの粒径を示した。揮発性成分は74%と見いだされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子からモノマーを重合することと、
該炭素粒子およびイオン性官能基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成するために、該反応性またはイオン化可能な官能基の少なくとも一部分をイオン性官能基に転化することと、
を含む分散性炭素粒子の調製方法
該炭素粒子が、1つまたは2つ以上の移動可能な原子または基を含む1つまたは2つ以上の結合した基を含み、そして該モノマーの少なくとも一部分が、反応性またはイオン化可能な官能基を含み、該炭素粒子および該反応性またはイオン化可能な官能基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成する。
【請求項2】
該反応性またはイオン化可能な官能基が、アミノ基であり、そして該反応性またはイオン化可能な官能基の少なくとも一部分を転化することが、該アミノ基の少なくとも一部分を四級化して、該炭素粒子および第四級アンモニウム基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
該重合がプロトン性媒体中で行われる請求項2の方法。
【請求項4】
該プロトン性媒体が、水および少なくとも1種のアルコールを含む請求項3の方法。
【請求項5】
該アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、またはヘプタノールである請求項4の方法。
【請求項6】
該アルコールが、該プロトン性媒体の75重量%超を構成する請求項5の方法。
【請求項7】
該アルコールが、該プロトン性媒体の85重量%超を構成する請求項6の方法。
【請求項8】
該アルコールが、該プロトン性媒体の85重量%〜95重量%を構成する請求項7の方法。
【請求項9】
該アルコールが、該プロトン性媒体の85重量%〜90重量%を構成する請求項8の方法。
【請求項10】
該モノマーが、少なくとも1つのジエン基または少なくとも1つのビニル基を含む請求項1の方法。
【請求項11】
反応性またはイオン化可能な官能基を含む該モノマーが、少なくとも1つのジエン基または少なくとも1つのビニル基、アクリレートエステル、(メタ)アクリレートエステル、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレイン酸およびフマル酸ジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、スチレン、DMAEMA、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピリジン、C〜C20アルコールのアクリレートエステル、C1〜C20アルコールの(メタ)アクリレートエステル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびこれらのモノマーの誘導体を含むモノマーから選択される請求項2の方法。
【請求項12】
第四級アンモニウム基を含む該ポリマー鎖が、次式を有する請求項2の方法:
【化1】

{式中、該RはR[ここでRおよびRは、結合、非置換または置換アリーレン基、非置換または置換アルキレン基、非置換または置換アラルキレン、非置換または置換アルカリーレン、−O−、−S−、−OR−、−NR−、−S(=O)−、−C(=O)−、−COO−、SOO−、−NRC−、−CNR−、および−C−P(O)O−、または−P(OR)OO−(ここで、RはH、アルキル、アルキレン、アリールまたはアリーレンの1つである)の1つから独立して選択される]であり;RおよびRは、H、アルキル基、アリール基、−OR、−NHR、−N(Rまたは−SR(ここでRはアルキル基またはアリール基の1つから独立して選択される)から独立して選択され;Xは移動可能な原子または基であり、そしてPは少なくとも1つのイオン性官能基を含むポリマー鎖を表し(ただしRはパーオキサイドでない);そしてPはラジカル重合可能なモノマーを含むポリマーである。}
【請求項13】
該イオン性官能基が、第四級アンモニウム基またはカルボン酸基の少なくとも一つである請求項2の方法。
【請求項14】
該ポリマー鎖の少なくとも1つのモノマーが第四級アンモニウム基を含み、そして該ポリマー鎖の少なくとも1つのモノマーが以下の式の1つを有する請求項13の方法:
【化2】

(式中、RはH、CH、ClまたはCNであり、Rは分枝または非分枝C1〜Cアルキレンであり、R10およびR11は、独立して分枝または非分枝C〜Cアルキルまたはイソプロピルであり、R12およびR13は、独立してH、分枝または非分枝C1〜C16アルキルまたはベンジルの1つであり、そしてYは対イオンである。)
【請求項15】
該Pが、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、分枝コポリマー、グラジエントコポリマーまたは交互コポリマーの1つである請求項12の方法。
【請求項16】
該重合が、原子移動ラジカル重合、ニトロキシド媒介重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、またはグループ移動重合である請求項1の方法。
【請求項17】
該重合が遷移金属触媒の存在下であり、そして該遷移金属触媒が該粒子の少なくとも一つとの酸化還元反応に関与する請求項16の方法。
【請求項18】
該遷移金属触媒が、遷移金属および該遷移金属に配位する配位子を含む請求項17の方法。
【請求項19】
該遷移金属が、銅、鉄、ロジウム、ニッケル、コバルト、パラジウム、またはルテニウムの1種である請求項18の方法。
【請求項20】
該遷移金属触媒が、銅ハロゲン化物を含む請求項18の方法。
【請求項21】
該銅ハロゲン化物が、Cu(I)BrまたはCu(I)Clの1種である請求項20の方法。
【請求項22】
該モノマーが、ラジカル重合可能なモノマーであり、そして該移動可能な原子または基が、ラジカル移動可能な原子または基である請求項16の方法。
【請求項23】
該モノマーが、アニオン性またはカチオン性重合可能モノマーである請求項16の方法。
【請求項24】
該炭素粒子が、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性炭、および活性炭素である請求項1の方法。
【請求項25】
該炭素粒子が、カーボンブラックである請求項1の方法。
【請求項26】
該炭素粒子が、90重量%超の元素炭素を含む請求項25の方法。
【請求項27】
該炭素粒子が、95重量%超の元素炭素を含む請求項26の方法。
【請求項28】
該モノマーの少なくとも一部分がアミノ基を含まない請求項2の方法。
【請求項29】
該反応性またはイオン化可能な官能基が、エステル基であり、そして該反応性またはイオン化可能な官能基の少なくとも一部分を転化することが、該エステル基の少なくとも一部分を加水分解または脱アルキル化して、該炭素粒子およびカルボン酸基を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成すること、および該カルボン酸基の少なくとも一部分をカルボン酸塩に転化することの1つを含む請求項1の方法。
【請求項30】
該重合が、非プロトン性媒体中にある請求項29の方法。
【請求項31】
該非プロトン性媒体が、芳香族溶媒を含む請求項30の方法。
【請求項32】
該芳香族溶媒が、アニソール、キシレン、ベンゼン、またはハロゲン化したベンゼン誘導体である請求項31の方法。
【請求項33】
該重合がバルクで行われる請求項1の方法。
【請求項34】
該エステル基が、t−ブチル基を含む請求項29の方法。
【請求項35】
エステル基を含む該モノマーが、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、およびこれらのモノマーの誘導体から選択される請求項29の方法。
【請求項36】
該ポリマー鎖が、ホモポリマー、コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、分枝コポリマー、または交互コポリマーである請求項29の方法。
【請求項37】
該炭素粒子が、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性炭、または活性炭素である請求項29の方法。
【請求項38】
該炭素粒子が、カーボンブラックである請求項29の方法。
【請求項39】
該ラジカル重合可能なモノマーの少なくとも一部分が、エステル基を含まない請求項29の方法。
【請求項40】
少なくとも1つのカルボン酸基を含む改質された炭素粒子と、ラジカル移動可能な原子または基を含む官能性開始剤とを反応させて、1つまたは2つ以上のラジカル移動可能な原子または基を含む結合した1つまたは2つ以上の基を有する該炭素粒子を生成することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項41】
炭素粒子および該第四級アンモニウム塩を含む1つまたは2つ以上のポリマー鎖を含むポリマー改質炭素粒子を生成するために、炭素粒子からモノマーを重合させることを含む分散性炭素粒子の調製方法、
該炭素粒子は、1つまたは2つ以上の移動可能な原子または基を含む1つまたは2つ以上の結合した基を含み、そして該モノマーの少なくとも一部分は、第四級アンモニウム塩またはカルボン酸基、またはそれらの塩の少なくとも一つを含む。
【請求項42】
該重合がプロトン性媒体中で行われる請求項41の方法。
【請求項43】
該プロトン性媒体が、水および少なくとも1種のアルコールを含む請求項42の方法。
【請求項44】
該アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、またはヘプタノールである請求項43の方法。
【請求項45】
該アルコールが該プロトン性媒体の75重量%超を構成する請求項44の方法。
【請求項46】
該アルコールが該プロトン性媒体の85重量%超を構成する請求項45の方法。
【請求項47】
該アルコールが該プロトン性媒体の85重量%〜95重量%を構成する請求項46の方法。
【請求項48】
該アルコールが該プロトン性媒体の85重量%〜90重量%を構成する請求項47の方法。
【請求項49】
該モノマーが、少なくとも1つのジエン基または少なくとも1つのビニル基を含む請求項41の方法。
【請求項50】
該重合が、原子移動ラジカル重合、ニトロキシド媒介重合、可逆的付加開裂連鎖移動、またはグループ移動重合である請求項41の方法。
【請求項51】
炭素粒子と
該炭素粒子に結合した複数のポリマー鎖(ここで、該ポリマー鎖の少なくとも一部分は、イオン官能性で且つ2.0未満のPDIを含む)と
を含む分散性炭素粒子。
【請求項52】
該ポリマー鎖が、ラジカル重合可能なモノマーまたはイオン重合可能なモノマーの少なくとも一つを含む請求項51の該分散性炭素粒子。
【請求項53】
該PDIが、1.5未満である請求項51の該分散性炭素粒子。
【請求項54】
該PDIが、1.3未満である請求項53の該分散性炭素粒子。
【請求項55】
該イオン官能性が、カルボン酸基、それらの塩、または第四級またはプロトン化されたアミノ基の少なくとも一つを含む請求項54の分散性炭素粒子。
【請求項56】
該ポリマー改質炭素粒子の水性分散体を生成することをさらに含む請求項1の方法。

【公表番号】特表2008−530306(P2008−530306A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555227(P2007−555227)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004663
【国際公開番号】WO2006/086599
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】