説明

改質器及びその製造方法

【課題】 自己酸化内部加熱型の改質器に配置される酸化空気管の安定化と構造簡単化を図る。
【解決手段】 本発明の自己酸化内部加熱型の改質器は、外筒2とその内部に配置された内筒3と、内筒3の中心部に配置された酸化空気管14とを備え、外筒2と内筒3の間に予備改質室が形成され、内筒3の内部に主改質室が形成されている。そして内筒3と酸化空気管14はいずれもフランジ3b,14bを有する2枚の溝形金属板3a,14aを対向配置することにより構成され、且つ内筒3と酸化空気管14を構成する各溝形金属板3a,14aのフランジ3b,14bどうしが4重に密着された状態で互いにろう付け固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外筒とその内部に配置された内筒と、内筒の軸方向中心部に沿って配置された酸化空気管とを備え、外筒と内筒の間に予備改質室が形成され、内筒の内部に主改質室が形成される自己酸化内部加熱型の改質器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原料ガスと水蒸気の混合物(以下、原料−水蒸気混合物という)を改質触媒の存在下に水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを生成する改質器が知られている。改質器で得られる水素リッチな改質ガスは、残留するCO(一酸化炭素)をCO低減手段で触媒の存在下に酸素含有ガスと反応させてCOへ変換し、特に低温で作動する固体高分子電解質型燃料電池用には、数ppmレベルまでCOを低減してから燃料として供給される。
原料ガスには、メタン等の炭化水素、メタノール等の脂肪族アルコール類、或いはジメチルエーテル等のエーテル類、都市ガスなどが用いられる。このような改質器において、メタンを原料ガスとして使用した場合の水蒸気改質の反応式は、CH+2HO→CO+4Hで示すことができ、好ましい改質反応温度は、650〜750℃の範囲である。
【0003】
改質器の改質反応に必要な熱を供給する方式として外部加熱型と、内部加熱型がある。外部加熱型の改質器は、外部に加熱部を設け、その熱源で原料ガスと水蒸気を反応させて改質ガスを生成するようになっている。内部加熱型の改質器はその供給側(上流側)に部分酸化反応層を設け、該部分酸化反応層で発生した熱を用いて下流側に配備した水蒸気改質反応層を水蒸気改質反応温度まで加熱し、該加熱された水蒸気改質触媒層で水蒸気改質反応をさせて水素リッチな改質ガスを生成するようになっている。
【0004】
部分酸化反応は、CH+1/2・O→CO+2Hで示すことができ、好ましい部分酸化反応の温度は250℃以上の範囲である。内部加熱型の改質器を改良したものとして自己酸化内部加熱型の改質器が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1の改質器は外側の予備改質室と内側の主改質室を備えた二重筒状に構成され、予備改質室には原料一水蒸気混合物の供給部、改質触媒層および排出部が設けられ、主改質室には前記排出部からの排出物を受け入れる供給部、改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層、シフト触媒層および改質ガスの排出部が設けられ、さらに主改質室には混合触媒層に酸化用の空気を供給する酸化空気管が配置されている。
【0005】
図5は特許文献1に示されている従来の自己酸化内部加熱型の改質器を模式的に示す断面図であり、図6は図5の外筒と内筒部分の一部破断斜視図である。改質器1は二重筒状に配置した外側の1つの予備改質室22と内側の2つの主改質室33を備えており、全体的に薄型に形成されている。予備改質室22と主改質室33はそれぞれ細長く断面が偏平状(図示の例では偏平な方形)に形成されると共に、それらの断面は互いに相似形とされる。
【0006】
予備改質室22は外筒2と2つの内筒3の間における複数の領域に形成され、2つの主改質室33は2つの内筒3の内側にそれぞれ形成される。予備改質室22には改質触媒層4が設けられ、主改質室33には改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層5とシフト触媒層6がそれぞれ設けられ、シフト触媒層6は高温シフト触媒層7と低温シフト触媒層8により構成される。なお、これら触媒層に充填される触媒は一般に粒子状またはハニカム状のものが用いられる。
【0007】
改質触媒層4を構成する改質触媒は、原料ガスを水蒸気改質するものであり、例えばNiO−A1OあるいはNiO−SiO・A1などのNi系改質反応触媒やWO−SiO・A1やNiO−WO・SiO・A1などが使用される。混合触媒層5を構成する改質触媒は上記と同様なものが使用され、それに均一に分散される酸化触媒は原料−水蒸気混合物中の原料ガスを酸化発熱させて水蒸気改質反応に必要な温度を得るもので、例えば白金(Pt)やロジウム(Rh)あるいはルテニウム(Ru)あるいはバラジウム(Pd)が使用される。
なお改質触媒に対する酸化触媒の混合割合は、水蒸気改質すべき原料ガスの種類に応じて1〜15%程度の範囲で選択され、例えば原料ガスとしてメタンを使用する場合は5%±2%程度、メタノールの場合は2%±1%程度の混合割合とされる。
【0008】
予備改質室22の下部に原料−水蒸気混合物の供給部9が設けられ、予備改質室22の上部に予備改質後の流出物が排出する排出部10が設けられる。主改質室33の上部には前記予備改質室22の排出部10に連通する供給部11が設けられ、2つの主改質室33の中央部にそれぞれ酸化空気を供給する酸化空気管14が延長され、その酸化空気管14が混合触媒層5に延長する部分に複数のノズルからなる空気噴出部15が形成されている。2本の酸化空気管14の下部はケーシング16で互いに連通し、そのケーシング16に空気供給用の配管17が接続される。さらに主改質室33の下部には改質ガスの排出部12が設けられる。なお酸化空気管14の断面は偏平状に形成されると共に、前記予備改質室22と主改質室33の断面と相似形になっている。
【0009】
主改質室33には上部から下部に順に混合触媒層5、高温シフト触媒層7および低温触媒層8が設けられるが、各触媒層の境界部および排出部12を含む低温シフト触媒層8の下側には触媒粒子を支持する支持板18が配置される。(なお予備改質室22にも同様な支持板18が配置される。)これら支持板18は気体流通性を有するが触媒粒子は通過させない孔径を有しており、通常、板状のパンチメタルやメッシュ等の多孔性の部材が使用される。
【0010】
【特許文献1】特開2007−126331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図5、図6に示す従来の改質器は、内筒3の軸方向中心部に酸化空気管14が延長され、その下端のみがケーシング16に固定されている。そのため酸化空気管14を傾斜させずに正確に内筒3の軸方向中心に同軸的に配置するには熟練と手間がかかる。また例え正確に同軸的に配置できたとしても、内筒3の内部に混合触媒やシフト触媒を充填する際に、押し込まれた触媒からの不均一な押圧力により酸化空気管14の側面に偏った力が加わると、酸化空気管14の先端に近い部分が内筒3の軸方向中心から傾いた状態で触媒中に固定されてしまうという問題がある。
【0012】
そのように酸化空気管14の先端に近い部分が内筒3の軸方向中心から傾いた状態になっていると、その空気噴出部15から周囲の混合触媒層5に浸透する酸化空気量分布も不均一になる。また、従来の改質器では内筒3と酸化空気管14をそれぞれ別個に製作した上で、耐圧検査などの検圧工程を個別に行う必要がある。
【0013】
上記問題を解決するため、内筒3の内側と酸化空気管14の外側の間を何らかの連結手段で連結し、その連結状態で触媒充填を行うことも考えられる。しかしその場合は新たな追加部品が必要になる上に全体構造も複雑になる。さらに内筒3と酸化空気管14に対する個別の検圧工程が必要になるという問題は解決されない。
そこで本発明は、このような従来の改質器における問題を解決することを課題とし、そのための新規な内筒と酸化空気管の構造を備えた改質器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決する本発明の改質器は、外筒とその内部に配置された内筒と、内筒の中心部に配置された酸化空気管とを備え、外筒と内筒の間に予備改質室が形成され、内筒の内部に主改質室が形成される自己酸化内部加熱型の改質器である。そして内筒と酸化空気管は、フランジを有するいずれも2枚の溝形金属板を対向配置することにより構成され、且つ内筒の一対のフランジが酸化空気管の一対のフランジを挟持して、それらフランジが4重に密着された状態で互いにろう付け固定されていることを特徴とする(請求項1)。
【0015】
上記内筒と酸化空気管がいずれもその軸方向の断面を偏平とした改質器において、酸化空気管を構成する2枚の溝形金属板の内面が外圧により互いに密着することを防止するため、それら溝形金属板の少なくとも一方の内面に複数のディンプルを突出させることができる(請求項2)。
【0016】
前記課題を解決する本発明の改質器の製造方法は、外筒とその内部に配置された内筒と、内筒の軸方向中心部に沿って配置された酸化空気管とを備え、外筒と内筒の間に予備改質室が形成され、内筒の内部に主改質室が形成される自己酸化内部加熱型の改質器の製造方法である。
そして内筒と酸化空気管をいずれも、フランジを有する2枚の溝形金属板を対向配置することにより形成し、その際、内筒の一対のフランジで酸化空気管の一対のフランジを挟持することにより、各フランジを4重に密着した状態で互いにろう付け固定することを特徴とする(請求項3)。
【0017】
上記改質器の製造方法において、前記各溝形金属板のフランジ間に階段状となる段差部を所定間隔で複数形成し、各段差部をろう付けにより固定することができる(請求項4)。
【発明の効果】
【0018】
本発明の改質器は請求項1に記載のように、内筒と酸化空気管はいずれも2枚の溝形金属板を対向配置することにより構成され、且つ内筒と酸化空気管を構成する各溝形金属板のフランジどうしが4重に密着された状態で互いにろう付け固定されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成すると、改質器の製造過程で、内筒の軸方向中心部に沿って酸化空気管が同軸的に且つ正確に配置される。そして内筒と酸化空気管の間に触媒を充填する際に、触媒の不均一な押圧力により酸化空気管14の側面に偏った力が加わったとしても、酸化空気管のフランジが内筒のフランジに固定されているので、内筒と酸化空気管の同軸関係が崩れる恐れはない。さらに、改質器の製造過程で内筒と酸化空気管は一体化されて同時に完成されるので、その後の耐圧試験等の検圧工程も1回で済む。
【0020】
上記内筒と酸化空気管がいずれもその軸方向の断面を偏平とした改質器において、請求項2記載のように、酸化空気管を構成する2枚の溝形金属板の内面が外圧により互いに密着することを防止するため、それら溝形金属板の少なくとも一方の内面に複数のディンプルを突出させることができる。このように構成すると触媒充填時などに断面が偏平な酸化空気管の側面に過大な押圧力が加わったとしても、酸化空気管の変形を防止できる。
【0021】
前記課題を解決する本発明の改質器の製造方法は、請求項3に記載のように、内筒と酸化空気管をいずれも、フランジを有する2枚の溝形金属板を対向配置することにより形成し、その際、内筒の一対のフランジで酸化空気管の一対のフランジを挟持して、各フランジを4重に密着した状態で互いにろう付け固定することを特徴とする。
【0022】
本発明の製造方法によれば、内筒の軸方向中心部に沿って酸化空気管を同軸的に且つ正確に配置することができる。また、内筒と酸化空気管を特別な部品を用いることなく容易に一体化できる。また耐圧試験等の検圧工程も1回で済む。
【0023】
上記改質器の製造方法において、請求項4に記載のように、前記各溝形金属板における各フランジ間に階段状となる段差部を所定間隔で複数形成し、各段差部をろう付けにより固定することができる。
【0024】
一般に、改質器は複数のステンレス鋼板などを重ねた細長い接合部分を互いに固定する場合には、ニッケルろうによるろう付け法が採用されるが、その際、ジェル状の糊に粉末状のニッケルろうを混ぜたペースト状のろう材が用いられる。そして接合部分に沿って所定間隔で複数個所にろう材を上から置き(塗布)、加熱炉内でろう付けされる。
【0025】
しかし接合部分の上面にろう材を置いたとき、その流動性により一部は接合部の隙間に浸透するが、残りの一部は重力方向に流れ落ちて拡散し、接合部分におけるろう材の付着が不均一になるという問題がある。また、ペースト状のろう材が炉内で乾燥すると、ろう材と接合部分との接着性が低下し、加熱炉などへの搬送途中に振動や傾きなどが生じ、ろう材の部分的な剥離現象を生じることがある。
【0026】
しかし上記製造方法のように、ろう付けするフランジ間に階段状の段差部を形成すると、ペースト状のろう材をその段差部に置いたとき、従来のように重力方向への流れ落ち現象がなくなる。これはペースト状のろう材が段差の隅角の部分に発生する表面張力の作用で、そこに留まろうとする現象が発生しているからと推定される。
【0027】
また上記製造方法のように、ろう付けする部分に階段状の段差部を形成すると、ペースト状のろう材が加熱乾燥した際に、段差の隅角の部分にろう材が留まる作用(隅角への入り込み作用)により、加熱炉などへの搬送時に振動や衝撃が加わったとしても、ろう材が接合部分から剥離することはない。そして加熱炉内でろう付けを行う際には、ろう材は融点を超えて液体に変化し、階段状に加工された部品同士の隙間に毛細管現象によりろう材が浸透していく。これにより、接合部分全体にろう材を塗布しなくても所定強度のろう付けが達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の改質器の主要部である内筒と酸化空気管の部分を示す斜視図。
【図2】図1のA−A矢視及びB−B矢視から見た部分に外筒部分を組み合わせた断面図。
【図3】酸化空気管の溝形金属板14aの平面図。
【図4】図1の改質器の接合部に段差部20を形成した部分を拡大して示す部分斜視図。
【図5】従来の自己酸化内部加熱型の改質器を模式的に示す断面図。
【図6】図5の外筒と内筒部分の一部破断斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、図面に基づいて本発明の最良の実施形態を説明する。なお本実施形態の改質器1が前述した図5、図6の改質器1と異なる部分は、内筒3と酸化空気管14の構造とそれらの接合部分のみで、そのほかは同様に構成される。そこで図5、図6の改質器と同じ部分は同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
内筒3は、両側にフランジ3bを有する断面が略溝形状(コ字状)の細長い同寸法の2枚のステンレス鋼板等の溝形金属板3aを対向配置することにより構成され、それら溝形金属板3aの各フランジ3bを密着して重ね合わせることにより、それらの内側に断面偏平な空間が形成され、その空間に酸化空気管14は配置されると共に触媒が充填される。なお内筒3は図5にも示されているように、その上部の僅かな領域の断面は大きく、それ以外の下部の断面は小さくなっており、その断面の大きい部分から小さい部分に移行する肩部分3cが図2(a)に示されている。
【0031】
酸化空気管14も、フランジ14bを有する断面が略溝形(コ字状)の細長い同寸法の2枚のアルミニウムやステンレス等の溝形金属板14aを対向配置することにより構成され、それら溝形金属板14aのフランジ14bを密着して重ね合わせることにより、それらの内側に断面偏平な空間が形成され、その空間に酸化用の空気が流通する流通路が形成される。
【0032】
内筒3における断面の大きい部分(僅かな領域の部分)を形成する2枚の溝形金属板3aのフランジ3bは、互いに密着して重ね合わせた2重重ね合わせ部分を構成し、その二重重ね合わせ部分がろう付けにより互いに固定されている。一方、内筒3の断面の小さい部分(残る大部分の領域)を形成する2枚の溝形金属板3aのフランジ3bと、酸化空気管14を形成する2枚の溝形金属板14aのフランジ14bは、互いに密着して重ね合わせた4重の重ね合わせ部分を構成し、その4重の重ね合わせ部分がろう付けにより互いに固定されている。この固定により内筒3の中心部に沿って酸化空気管14が正確に同軸的に配置された状態となり、且つ内筒3と酸化空気管14が互いに一体化される。なお、内筒3と酸化空気管14の軸方向の断面を一定とすることもでき、その場合は両者のフランジ全体を互いに密着して重ね合わせた4重の重ね合わせ部分に構成し、その4重の重ね合わせ部分をろう付けにより互いに固定することもできる。
【0033】
図3は図1、図2に示す酸化空気管14を形成するための溝形金属板14aの正面図である。溝形金属板14aは平坦部14fとその周縁に形成されたテーパ部14cを有している。すなわち平坦部14fとテーパ部14cにより全体が略皿状に形成されている。一方、平坦部14fの上部には複数のノズル(小孔)からなる空気噴出部15が形成されている。さらに平坦部14fには複数のディンプル14dが分散して内面側に突設形成されている。
【0034】
これらディンプル14dは2枚の溝形金属板14aを対向配置したその先端どうしが接触する。一方、溝形金属板14aのテーパ部14cの外側、すなわち溝形金属板14aの周縁部に所定間隔で複数の切り欠き部14eが形成されている。これら切り欠き部14eは後述する接合部の段階部を形成するものである。
【0035】
次に、図1に示す内筒3と酸化空気管14の固定方法について説明する。固定はこの分野で代表的に行われているろう付け法を採用する。本実施形態では、先ず酸化空気管14を形成する2枚の溝形金属板14aのフランジ14bを互いに重ね合わせて対向配置して断面偏平な酸化空気管14に組み立てる。次に組み立てた酸化空気管14のフランジ14bの外側に内筒3を形成する2枚の溝形金属板3aのフランジ3bをそれぞれ重ね合わせ、接合部となる4重重ね合わせ部を形成する。この状態で内筒3の中心部に沿って酸化空気管14が正確に同軸的に配置される。
【0036】
次に水平状態にした接合部を水平にして、その上側にペースト状のニッケルろう材を置き(塗布し)、加熱炉でろう付けを行う。本実施形態では接合部の長手方向に沿って所定間隔で予め段階部をフランジ3b,14b間に形成し、その段階部ごとにペースト状のろう材を置く方法を採用する。
【0037】
図4は接合部に段階状の段差部20を形成した部分を拡大して示す部分斜視図であり、図中の左側の段差部20はペースト状のろう材21を置く前の状態で、右側の段差部20はペースト状のろう材21を置いた状態を例示的に示している。
【0038】
段差部20を形成するため、内筒3を形成する溝形金属板3aに切り欠き部3dが設けられると共に、酸化空気管14を形成する溝形金属板14aに図3に示したような切り欠き部14eが設けられる。これら切り欠き部3d、14eにおける接合部の長手方向の長さは、4重に重ね合わされた溝形金属板3a、14aの各接触部に複数の段差もしくは隅角を形成するために、図示のように互いに異なった寸法とされる。
【0039】
接合部における上記段差部20に図示のようにペースト状のろう材21を置くと、前述のように、ペースト状のろう材21が重力方向へ流れ落ちる現象を防止できる。また、ペースト状のろう材21が段差の隅角部分に留まる作用(隅角への入り込み作用)により、加熱炉などへの搬送時に振動や衝撃が加わったとしても、ろう材21が接合部分から剥離する恐れはない。そして加熱炉内でろう付けを行う際には、ろう材21は融点を超えて液体に変化し、階段状に加工された部品同士の隙間に毛細管現象によりろう材が浸透していく。これにより、接合部分全体に(長手方向全長に亘って)ろう材を塗布しなくても良好なろう付けが達成できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の改質器およびその製造方法は、燃料電池に水素リッチな改質ガスを燃料として供給する改質器に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 改質器
22 予備改質室
2 外筒
33 主改質室
3 内筒
3a 溝形金属板
3b フランジ
3c 肩部分
3d 切り欠き部
【0042】
4 改質触媒層
5 混合触媒層
6 シフト触媒層
7 高温シフト触媒層
8 低温シフト触媒層
9 供給部
10 排出部
11 供給部
【0043】
12 排出部
14 酸化空気管
14a 溝形金属板
14b フランジ
14c テーパ部
14d ディンプル
14e 切り欠き部
14f 平坦部
【0044】
15 空気噴出部
16 ケーシング
17 配管
18 支持板
20 段差部
21 ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒2とその内部に配置された内筒3と、内筒3の中心部に配置された酸化空気管14とを備え、外筒2と内筒3の間に予備改質室が形成され、内筒3の内部に主改質室が形成される自己酸化内部加熱型の改質器において、
内筒3と酸化空気管14はいずれも両側にフランジ(3b,14b)を有する2枚の溝形金属板(3a,14a)を対向配置することにより構成され、且つ内筒3の各フランジ3bで、酸化空気管14を構成する各溝形金属板14aの各フランジ14bを挟持して、それらが4重に密着された状態で互いにろう付け固定されていることを特徴とする改質器。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸化空気管14を構成する2枚の溝形金属板14aの内面が外圧により互いに密着することを防止するため、それら溝形金属板14aの少なくとも一方の内面に複数のディンプル14dが突出されていることを特徴とする改質器。
【請求項3】
外筒2とその内部に配置された内筒3と、内筒3の中心部に沿って配置された酸化空気管14とを備え、外筒2と内筒3の間に予備改質室が形成され、内筒3の内部に主改質室が形成される自己酸化内部加熱型の改質器の製造方法において、
内筒3と酸化空気管14をいずれも2枚の溝形金属板(3a,14a)を対向配置すると共に、酸化空気室14の一対のフランジ部14bを内筒3の一対のフランジ3bで挟持し、その際、内筒3と酸化空気管14を形成する各溝形金属板(3a,14a)における各フランジ(3b,14b)を4重に密着した状態で互いにろう付け固定することを特徴とする改質器の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記各溝形金属板(3a,14a)における各フランジ(3b,14b)間に、それぞれ階段状となる段差部20を所定間隔で複数形成し、各段差部20をろう付けにより固定することを特徴とする改質器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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