説明

改質装置

【課題】燃焼器において最も熱応力が大きくなる高温部位での燃焼室用閉容器の強度の不均一を避けつつ、燃焼器における良好な着火を実施可能な改質装置を提供する。
【解決手段】伝熱板Dの一側面側に燃焼室用閉容器11を有する燃焼器3と、伝熱板Dの他側面側に改質室用閉容器10を有する改質器4とを備える改質装置Rであって、燃焼器3は、可燃性ガス及び酸素ガスが混合状態で又は未混合状態で伝熱板Dの面に平行な方向に沿って噴出されるガス噴出部Fと、可燃性ガス及び酸素ガスの混合ガスに点火させるための点火装置Pと、燃焼排ガスを燃焼室用閉容器11の外部に排出する排ガス路12とを有し、及び、点火装置Pの近傍とガス噴出部Fの近傍との間に、混合ガスをガス噴出部Fから点火装置Pまで誘導可能であり、且つ、点火装置Pで混合ガスへ点火されると点火装置Pからガス噴出部Fへ火炎を伝播可能な筒状の火炎伝播路19を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱板の一側面側に、その伝熱板の厚さ方向に薄い偏平の直方体状に形成された燃焼室用閉容器を有する燃焼器と、その伝熱板の他側面側に、供給される炭化水素系の原燃料を水蒸気にて改質処理して水素ガスを主成分とする改質ガスに改質する改質室用閉容器を有する改質器とを備える改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に供給する水素ガスを生成するために、原燃料ガスを改質処理する改質器を備える改質装置がある。改質器では、例えば炭化水素を含む原燃料を、水蒸気を用いて改質反応させて、水素を主成分とするガスを生成する。この改質反応は吸熱反応であるため、改質器を加熱する必要がある。そのため、改質装置は、可燃性ガスと酸素ガスとの混合ガスを燃焼して、その燃焼熱を改質器に与える燃焼器を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、改質器とその改質器を加熱するための燃焼器とを備える改質装置が記載されている。特許文献1に記載されている改質装置は、伝熱板の一側面側に、伝熱板の厚さ方向に薄い偏平の直方体状に形成された燃焼室用閉容器を有する燃焼器と、伝熱板の他側面側に、供給される炭化水素系の原燃料を水蒸気にて改質処理して水素ガスを主成分とする改質ガスに改質する改質室用閉容器を有する改質器とを備える。この構成では、燃焼器を成す燃焼室用閉容器の周壁四辺は溶接等により伝熱板に固定接続されている。また、燃焼室用閉容器の内部空間の、燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの一つの周壁とそれと対向する周壁との間においてその一つの周壁の存在側に片寄らせた箇所に、可燃性ガス及び酸素ガスが混合状態で伝熱板の面に平行な方向に沿って噴出されるガス噴出部を有し、及び、燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの上記一つの周壁と隣接する他の周壁に、燃焼室用閉容器を外部から内部へと貫通して装着され、可燃性ガス及び酸素ガスの混合ガスに着火させるための点火装置を有する。
【0004】
点火装置は、燃焼室用閉容器を外部から内部へ貫通して装着される。例えば、点火装置は点火プラグとその点火プラグを保持する金属製の保持部材とを備える。そして、保持部材は、燃焼室用閉容器を外側から内側へ貫通した状態で燃焼室用閉容器と溶接されて固定され、その保持部材に対して点火プラグが装着される。
また、混合ガスへ良好に着火させるためには、ガス噴出部と点火装置とを近接して設けることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−141931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
点火装置を構成する保持部材と点火プラグは、燃焼器を構成する燃焼室用閉容器を貫通して設置されるため、その燃焼室用閉容器の強度は、点火装置が設置されている部位と、他の部位とでは異なる。具体的には、点火装置の点火プラグを保持する保持部材が燃焼室用閉容器に対して溶接されている場合、点火装置自体がその燃焼室用閉容器の一部となるため、その部位の強度が他の部位よりも高まることとなる。
【0007】
また、通常、ガス噴出部と点火装置とは近接して設けられているため、点火装置が設置されている位置は、ガス噴出部で形成される火炎に近接し、非常に高温となる位置である。つまり、混合ガスへの着火性能を良好にしようとすると、高温となる位置に点火装置を設置しなければならない。
【0008】
以上のように、従来の改質装置の燃焼器は、高温となる部位で、燃焼室用閉容器の強度が不均一となっていた。つまり、最も熱応力が大きくなる高温部位において強度の偏りが生じているため、熱応力が特定の部位(即ち、強度が相対的に弱い部位)に集中してしまう可能性がある。具体的には、燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの、点火装置が設けられている周壁と、それに対向する周壁とでは熱により発生する伸びが異なるため、昇温前後で方形をなす燃焼室用閉容器に歪が生じる。
【0009】
尚、燃焼器の燃焼室用閉容器において、最も熱応力が大きくなる高温部位での強度の偏りが生じないようにするためには、上述した点火装置を、燃焼器の内部の高温領域から離す対策が考えられる。しかし、燃焼器の内部の高温領域に点火装置を設けているのは、点火装置による混合ガスへの着火性能を良好にするために必要であり、単純に点火装置を燃焼器の内部の高温領域から離せば良いという問題ではない。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃焼器において最も熱応力が大きくなる高温部位での燃焼室用閉容器の強度の不均一を避けつつ、燃焼器における良好な着火を実施可能な改質装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る改質装置の特徴構成は、伝熱板の一側面側に、前記伝熱板の厚さ方向に薄い偏平の直方体状に形成された燃焼室用閉容器を有する燃焼器と、前記伝熱板の他側面側に、供給される炭化水素系の原燃料を水蒸気にて改質処理して水素ガスを主成分とする改質ガスに改質する改質室用閉容器を有する改質器とを備える改質装置であって、
前記燃焼器は、
前記燃焼室用閉容器の内部空間の、前記燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの一つの周壁とそれと対向する周壁との間において前記一つの周壁の存在側に片寄らせた箇所に、可燃性ガス及び酸素ガスが混合状態で又は未混合状態で前記伝熱板の面に平行な方向に沿って噴出されるガス噴出部を有し、及び、
前記燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの前記一つの周壁とは異なる他の周壁に、前記燃焼室用閉容器を外部から内部へと貫通して装着され、前記可燃性ガス及び前記酸素ガスの混合ガスに点火させるための点火装置を有し、及び、
前記混合ガスの燃焼により発生する燃焼排ガスを前記燃焼室用閉容器の外部に排出する排ガス路を有し、及び、
前記点火装置の近傍と前記ガス噴出部の近傍との間に、前記混合ガスを前記ガス噴出部から前記点火装置まで誘導可能であり、且つ、前記点火装置で前記混合ガスへ点火されると前記点火装置から前記ガス噴出部へ火炎を伝播可能な筒状の火炎伝播路を備える点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、燃焼器において、混合ガスが火炎伝播路を通ってガス噴出部から点火装置まで誘導され、且つ、点火装置で混合ガスへ点火されると点火装置からガス噴出部へ火炎が火炎伝播路を通って伝播されるので、ガス噴出部と点火装置との間の距離を大きくできる。つまり、火炎伝播路を設けたことで、点火装置を、火炎が形成されるガス噴出部から離して設置できる。その結果、火炎によって非常に高温となる位置に点火装置を設けなくてもよくなるため、最も熱応力が大きくなる高温部位において燃焼室用閉容器の強度の偏りが発生することを回避できる。更に、点火装置を構成する材料に要求される耐熱温度を低くできる。
従って、燃焼器において最も熱応力が大きくなる高温部位での燃焼室用閉容器の強度の不均一を避けつつ、燃焼器における良好な着火を実施可能な改質装置を提供できる。
【0013】
本発明に係る改質装置の別の特徴構成は、前記ガス噴出部は、前記一つの周壁の長手方向に延びて設置される長手状ガス噴出部の側面に、複数のガス噴出孔を前記長手状ガス噴出部の長手方向に沿って形成して構成され、
前記点火装置は、前記ガス噴出孔に形成される火炎の延出方向に向かって前記ガス噴出部から離れた位置に設置される点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、点火装置が火炎の延出方向に向かってガス噴出部から離れた位置に設置されるので、点火装置が設けられる位置の温度がガス噴出部の近くよりも相対的に低くなる。つまり、点火装置を燃焼室用閉容器の外部から内部へ貫通して装着することでその燃焼室用閉容器において強度の偏りを生じさせざるを得ないとしても、比較的温度の低い部位でその強度の偏りが生じるようにできる。
【0015】
本発明に係る改質装置の更に別の特徴構成は、前記火炎伝播路は、前記点火装置の近傍と前記ガス噴出部の近傍との間の前記内部空間の一部分を、板状部材を用いて区画して構成される点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、燃焼器の燃焼室用閉容器の内部空間に対して板状部材を設けることで火炎伝播路を作製できる。例えば、容易に加工できる板状の耐火材などを用いることで、燃焼室用閉容器の内部空間がどのような構造であっても、板状部材を適当な形状に加工して内部空間の一部分を区画することで火炎伝播路を作製できる。
【0017】
本発明に係る改質装置の更に別の特徴構成は、前記火炎伝播路は、筒状部材を前記点火装置の近傍と前記ガス噴出部の近傍との間に設置して構成される点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、火炎伝播路の形状を筒状部材の内部空間で確定できる。つまり、ガス噴出部から点火装置への混合ガスの誘導と、点火装置からガス噴出部への火炎の伝播とを、その筒状部材の内部空間を用いて確実に行える。
【0019】
本発明に係る改質装置の更に別の特徴構成は、2つの皿形状の容器形成用部材を、それらの間に板状の仕切り部材としての前記伝熱板を位置させた状態で当該伝熱板に対して全周溶接接続して構成される、前記容器形成用部材と前記伝熱板との間の2つの空間を、前記燃焼器及び前記改質器として用いる点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、伝熱板の両面に2つの容器形成用部材を全周溶接接続することで、容器形成用部材と伝熱板との間の2つの空間が形成され、その空間の一方を燃焼器として用い、他方を改質器として用いることができる。つまり、燃焼器で発生した熱を伝熱板を介して改質器に効率良く伝達することができる。加えて、着火の安定性を損なわず、高温部における強度の偏りを抑制することで、改質器の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の燃焼器及び改質器の外観を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の燃焼器及び改質器の断面図である。
【図4】第1実施形態の改質装置が有する燃焼器の内部構造を示す分解斜視図である。
【図5】第2実施形態の改質装置が有する燃焼器の内部構造を示す分解斜視図である。
【図6】第3実施形態の改質装置が有する燃焼器の内部構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の改質装置Rについて説明する。
図1は、燃料電池システムSの構成を示す図である。図示するように、燃料電池システムSは、水素含有ガス生成装置HPで生成された水素を主成分とする改質ガスと酸素とを燃料電池FCのアノード及びカソード(何れも図示せず)とに各別に供給して発電させるシステムである。水素含有ガス生成装置HPは、燃料電池FCのアノードに供給する水素(改質ガス)を生成するための複数の反応器(脱硫器1、水蒸気生成器2、改質装置R(燃焼器3及び改質器4)、一酸化炭素変成器5、一酸化炭素除去器6)を有する。
【0023】
〔水素含有ガス生成装置の構成〕
図1に示すように、メタン等の炭化水素系の原燃料ガス(例えば都市ガスであり、図中では「CH4」と記載する)は、原燃料ガス供給路7を介して水素含有ガス生成装置HPに導入される。水素含有ガス生成装置HPに導入された原燃料ガスは、図1において二重線矢印で示すように、脱硫器1を通過した後で改質器4へ導入されて水素を主成分とするガスに改質される。また、改質器4で生成された改質ガスは、図1において同じく二重線矢印で示すように、一酸化炭素変成器5及び一酸化炭素除去器6を通過した後で燃料電池FCに供給される。
【0024】
以下、水素含有ガス生成装置HPの構成の概要について説明する。
脱硫器1は、供給される原燃料ガス(例えば都市ガス)などに付臭剤として含まれる硫黄化合物を脱硫処理する。水蒸気生成器2は、燃焼器3から排出された燃焼排ガスの熱を利用して、供給される原料水を蒸発させる。水蒸気生成器2で生成された水蒸気は、脱硫処理後の原燃料ガスに添加される。燃焼器3は、可燃性ガス供給路8を介して供給される可燃性ガスと酸素ガス供給路9を介して供給される酸素ガスとの混合ガスを燃焼して燃焼熱を発生させる。可燃性ガスとしては、燃料電池FCから排出された排燃料ガス(発電反応に用いられなかった水素を含むガス)を用いることができ、及び、原燃料ガス(図中では「CH4」と記載する)などのガスを用いることができる。
改質器4は、燃焼器3で発生された燃焼熱を利用して原燃料ガスを水蒸気改質して水素を主成分とし、副生成物としての一酸化炭素と二酸化炭素とを含む改質ガスを生成する。
【0025】
一酸化炭素変成器5は、改質器4にて生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素を低減するように処理する。具体的には、一酸化炭素変成器5において、改質器4で生成された改質ガス中に含まれている一酸化炭素と水蒸気とが反応して、一酸化炭素が二酸化炭素に変成処理される。一酸化炭素除去器6は、一酸化炭素変成器5から排出される変成処理後の改質ガス中に残留している一酸化炭素を除去する。具体的には、一酸化炭素除去器6において、変成処理後の改質ガス中に残っている一酸化炭素が、新たに添加された空気中の酸素によって酸化除去される。その結果、一酸化炭素濃度の非常に低い、水素リッチな燃料ガスが生成される。
一酸化炭素除去器6によって処理された後の改質ガスは、燃料電池FCに供給されて発電反応に用いられる。
【0026】
図1に示すように、水素含有ガス生成装置HPが備える上述した複数の反応器は、改質ガスの生成処理工程で用いられる処理空間を内部に備えた複数の容器Bを用いて各別に形成される。それら複数の容器Bは、並列に密着して並べられた状態で構成される。複数の容器Bを並べるに当たっては、容器間で伝熱させる必要のある容器B同士は互いに密着させた状態で並べ、且つ、伝熱量を調節する必要のある容器B同士の間には容器B間の伝熱量を調節するための伝熱調節部材(断熱材)を介在させた状態で並べてある。後述する図2に示すように、容器Bは、2つの皿形状の容器形成用部材(以下、「皿状部材E」と記載する)を、それらの間に板状の仕切り部材としての伝熱板Dを位置させた状態で伝熱板Dに対して全周溶接接続して、皿状部材Eと伝熱板Dとの間に上記反応器として用いられる処理空間を備えるように構成されている。また、各容器Bの間には必要に応じて電熱ヒーターHが設けられ、各容器Bの温度を調節するために用いられる。
【0027】
〔改質装置(燃焼器及び改質器)の構成〕
次に、燃焼器3と改質器4とで構成される改質装置Rの構成について説明する。図2は、第1実施形態の燃焼器3及び改質器4の外観を示す斜視図である。図3は、第1実施形態の燃焼器3及び改質器4の断面図である。図2及び図3に示すように、改質装置Rは、伝熱板Dの一側面側に、その伝熱板Dの厚さ方向に薄い偏平の直方体状に形成された燃焼室用閉容器11を有する燃焼器3と、伝熱板Dの他側面側に、供給される炭化水素系の原燃料を水蒸気にて改質処理して水素ガスを主成分とする改質ガスに改質する改質室用閉容器10を有する改質器4とを備える。
【0028】
伝熱板Dは、ステンレス等の耐熱性金属を用いて形成される。伝熱板Dの両側面に全周溶接接続される皿状部材Eは、周縁部を接続代として中央部が膨出する皿状に、ステンレス等の耐熱性金属製の板材を曲げ加工若しくはプレス成形して形成してある。そして、伝熱板Dと皿状部材E(E1、E2)とで囲まれる空間が燃焼器3及び改質器4として利用される。
【0029】
燃焼器3は、燃焼室用閉容器11の内部空間に、可燃性ガス及び酸素ガスが噴出されるガス噴出部Fと、燃焼室用閉容器11を外部から内部へと貫通して装着され、可燃性ガス及び酸素ガスの混合ガスに点火させるための点火装置Pと、混合ガスの燃焼により発生する燃焼排ガスを燃焼室用閉容器11の外部に排出する排ガス路12とを備える。
【0030】
ガス噴出部Fは、燃焼室用閉容器11の内部空間の、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの一つの周壁とそれと対向する周壁との間においてその一つの周壁の存在側に片寄らせた箇所に、可燃性ガス及び酸素ガスが未混合状態で伝熱板Dの面に平行な方向に沿って噴出されるように設置されている。点火装置Pは、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの上記一つの周壁とは異なる他の周壁に、燃焼室用閉容器11を外部から内部へと貫通して装着される。具体的には、点火装置Pは、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの上記一つの周壁に隣接する周壁に設けられる。
【0031】
ガス噴出部Fは、可燃性ガスが可燃性ガス噴出孔f1を介して噴出される長手状の可燃性ガス噴出部(即ち、本発明の「長手状ガス噴出部」)F1と、酸素ガスが酸素ガス噴出孔f2を介して噴出される長手状の酸素ガス噴出部(即ち、本発明の「長手状ガス噴出部」)F2とを各別に有し、可燃性ガス噴出部F1と酸素ガス噴出部F2とは内部空間において並設されている。可燃性ガス噴出部F1には可燃性ガス燃料供給用の可燃性ガス供給路8を、酸素ガス噴出部F2には酸素ガス供給用の酸素ガス供給路9をそれぞれ、燃焼室用閉容器11を外部から内部へ貫通させて接続してある。更に、燃焼室用閉容器11の上部には、混合ガスの燃焼により発生する燃焼排ガスを燃焼室用閉容器11の外部に排出する排ガス路12を接続してある。
【0032】
燃焼室用閉容器11の内部には、耐火材本体16を、燃焼器3における伝熱板Dの側に燃焼用空間Aを形成するように、燃焼器3を形成する皿状部材E2における伝熱板Dに対向する部分に当て付けた状態で設けてある。更に、耐火材本体16の厚さは、ガス噴出部Fに近い部位とガス噴出部Fから遠い部位とで異なっている。具体的には、図3に示すように、ガス噴出部Fに近い部位の燃焼用空間Aが幅広部A1として幅広に形成されるようにその部位の耐火材本体16は相対的に薄く形成され、及び、ガス噴出部Fから遠い部位の燃焼用空間Aが幅狭部A2として幅狭に形成されるようにその部位の耐火材本体16は相対的に厚く形成されている。ガス噴出部Fに近い幅広部A1(燃焼用空間A)は、可燃性ガス噴出孔f1及び酸素ガス噴出孔f2から噴出されて形成される混合ガスが有炎燃焼される有炎燃焼部として機能する。これに対して、ガス噴出部Fから遠い幅狭部A2(燃焼用空間A)には、白金、パラジウム等から成る燃焼触媒18を設けてあり、そこでは触媒燃焼が行われる。
【0033】
点火装置Pは、点火プラグP2とその点火プラグP2を保持する金属製の保持部材P1とを備える。保持部材P1は、燃焼室用閉容器11を外側から内側へ貫通した状態で燃焼室用閉容器11と溶接されて固定され、その保持部材P1に対して点火プラグP2が装着される。点火プラグP2を点火作動させることで、ガス噴出部Fから噴出される混合ガスに着火させることができる。
【0034】
改質室用閉容器10の内部には粒状の改質触媒15を装入してある。例えば、改質室用閉容器10の内部には、ルテニウム、ニッケル、白金などの改質触媒15を保持したセラミック製の多孔質粒状体の多数が通気可能な状態で充填される。改質室用閉容器10を形成する皿状部材E1の上部には、改質処理用の水蒸気を混合させた改質処理対象の原燃料ガスを供給するノズル13を室内に連通する状態で接続する。改質室用閉容器10を形成する皿状部材E1の下部には、改質処理後の改質ガスを排出するノズル14を室内に連通する状態で接続する。つまり、改質処理用の水蒸気を混合させた原燃料ガスは、改質触媒15を上下方向に通流して、そこで水素ガスを主成分とする改質ガスに改質処理される。
【0035】
〔火炎伝播路〕
図4は、第1実施形態の改質装置Rが有する燃焼器3の内部構造を示す分解斜視図である。図示するように、燃焼器3は、上記ガス噴出部F(可燃性ガス噴出部F1及び酸素ガス噴出部F2)と上記点火装置Pと上記排ガス路12と火炎伝播路19とを備える。
【0036】
火炎伝播路19は、点火装置Pの近傍とガス噴出部Fの近傍との間に、混合ガスをガス噴出部Fから点火装置Pまで誘導可能であり、且つ、点火装置Pで混合ガスへ点火されると点火装置Pからガス噴出部Fへ火炎を伝播可能な筒状の空間で構成される。本実施形態において、火炎伝播路19は、点火装置Pの近傍とガス噴出部Fの近傍との間の、燃焼室用閉容器11の内部空間の一部分を、板状部材17を用いて区画して構成される。例えば、板状部材17は、耐火材(例えば、セラミックファイバー板等)を板状に加工して上記耐火材本体16に接合される。或いは、上記耐火材本体16を加工形成する際に、板状部材17の部分も同時に形成、即ち、耐火材本体16と板状部材17とを一体で加工形成する。
【0037】
制御部Cは、燃焼器3のガス噴出部Fに着火させるとき、先ず、可燃性ガス噴出部F1から可燃性ガスを噴出させ、且つ、酸素ガス噴出部F2から酸素ガスを噴出させる。その結果、燃焼器3の内部の燃焼用空間Aでは、図4において破線で示すように、下方に設けられているガス噴出部Fから上方に向かって(即ち、図4に示すY軸の正方向に向かって)混合ガスが噴出する。図4に示すように、燃焼用空間Aの一部には火炎伝播路19が形成されている。ガス噴出部Fからは可燃性ガス及び酸素ガスが均等に噴出されるので、火炎伝播路19の部分の燃焼用空間Aと、火炎伝播路19以外の部分の燃焼用空間Aとで可燃性ガス及び酸素ガスの濃度は同等であると見なしてよい。
【0038】
その後、制御部Cは、適当なタイミングで点火装置Pを点火作動させる。点火装置Pの近傍には、火炎伝播路19によって混合ガスが誘導されているため、点火装置Pを点火作動させることで混合ガスに点火して火炎が形成される。特に、図4に示したように、火炎伝播路19の内部に点火装置Pが設けられている場合、形成される火炎は火炎伝播路19の内部のみに形成され、その火炎は火炎伝播路19の内部に存在する混合ガスに伝播して行く。つまり、点火装置Pによって形成された火炎は、図4に一点鎖線で示すように、火炎伝播路19の内部を点火装置Pからガス噴出部Fへ(即ち、図4に示すY軸の負方向へ)と伝播されて着火される。
【0039】
更に、ガス噴出部Fと板状部材17との間には隙間Gが設けられているため、火炎は、図4に示すX軸の負方向へと伝播して、最終的に長手状のガス噴出部F1、F2の側面に形成されたガス噴出孔f1、f2の全体に伝播する。
以上のように、本実施形態では、燃焼器3において、混合ガスが火炎伝播路19を通ってガス噴出部Fから点火装置Pまで誘導され、且つ、点火装置Pで混合ガスへ点火されると点火装置Pからガス噴出部Fへ火炎が火炎伝播路19を通って伝播されるので、ガス噴出部Fと点火装置Pとの間の距離を大きくできる。つまり、火炎伝播路19を設けたことで、点火装置Pを、ガス噴出部Fで形成される火炎から離して設置できる。その結果、火炎によって非常に高温となる位置に点火装置Pを設けなくてもよくなるため、最も熱応力が大きくなる高温部位において燃焼室用閉容器11の強度の偏りが発生することを回避できる。点火装置Pを構成する材料に要求される耐熱温度を低くできる。
【0040】
<第2実施形態>
燃焼器3において点火装置Pを設ける位置は適宜変更可能である。例えば、第2実施形態の改質装置Rは、点火装置Pの設けられる位置が第1実施形態の改質装置Rと異なっている。以下に第2実施形態の改質装置Rについて説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0041】
図5は、第2実施形態の改質装置Rが有する燃焼器3の内部構造を示す分解斜視図である。本実施形態でも、長手状のガス噴出部Fは、燃焼室用閉容器11の内部空間の、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの一つの周壁とそれと対向する周壁との間においてその一つの周壁の存在側に片寄らせた箇所に、可燃性ガス及び酸素ガスが未混合状態で伝熱板Dの面に平行な方向に沿って噴出されるように設置されている。
【0042】
点火装置Pは、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの上記一つの周壁と対向する周壁に、即ち、長手状のガス噴出部Fが設けられている周壁と対向する周壁に、燃焼室用閉容器11を外部から内部へと貫通して装着される。本実施形態でも、火炎伝播路19は、点火装置Pの近傍とガス噴出部Fの近傍との間に、混合ガスをガス噴出部Fから点火装置Pまで誘導可能であり、且つ、点火装置Pで混合ガスへ点火されると点火装置Pからガス噴出部Fへ火炎を伝播可能な筒状の空間で構成される。更に、火炎伝播路19は、点火装置Pの近傍とガス噴出部Fの近傍との間の、燃焼室用閉容器11の内部空間の一部分を、板状部材17を用いて区画して構成される。
【0043】
以上のように、本実施形態では、点火装置Pを、ガス噴出部Fから最大限離して設けている。つまり、ガス噴出部Fで形成される火炎によって非常に高温となる位置から点火装置Pを最大限離すことができる。
【0044】
<第3実施形態>
第3実施形態の改質装置Rは、火炎伝播路19の形状が第1実施形態と異なっている。以下に第3実施形態の火炎伝播路19について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0045】
図6は、第3実施形態の改質装置Rが有する燃焼器3の内部構造を示す分解斜視図である。本実施形態でも、ガス噴出部Fは、燃焼室用閉容器11の内部空間の、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの一つの周壁とそれと対向する周壁との間においてその一つの周壁の存在側に片寄らせた箇所に、可燃性ガス及び酸素ガスが未混合状態で伝熱板Dの面に平行な方向に沿って噴出されるように設置されている。
点火装置Pは、燃焼室用閉容器11における4つの周壁のうちの上記一つの周壁に隣接する周壁に、即ち、長手状のガス噴出部Fが設けられている周壁と隣接する周壁に設けられる。
【0046】
本実施形態において、火炎伝播路19は、筒状部材20を点火装置Pの近傍とガス噴出部Fの近傍との間に設置して構成される。つまり、火炎伝播路19の形成には、予め形成された筒状部材20が用いられる。特に、図6に示したように、筒状部材20の内部、即ち、火炎伝播路19の内部に点火装置Pを設けているため、点火装置Pによって形成される火炎は火炎伝播路19の内部のみに形成され、その火炎は火炎伝播路19の内部に存在する混合ガスに伝播して行く。更に、上記実施形態で説明したのと同様に、ガス噴出部Fと筒状部材20との間には隙間Gが設けられているため、火炎は長手状のガス噴出部Fの全体に伝播することができる。
【0047】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、燃焼器3の内部の燃焼用空間Aの形状は適宜変更可能である。例えば、ガス噴出部Fに近い部位の燃焼用空間Aを幅狭に形成するようにその部位の耐火材本体16を相対的に厚く形成してもよい。そのように形成すると、ガス噴出部Fに形成される火炎の火炎延び方向の長さが短くなり、燃焼熱がガス噴出部Fの近くで集中して発生するようになる。その結果、改質室用閉容器10におけるガス噴出部Fの存在箇所に対応する側となる出口側(例えば、図2のノズル14側)の温度を高温にして、改質器4における改質処理が適確に行われるようになる。このように、燃焼器3の内部の燃焼用空間Aの形状が複雑になったとしても、上記第1実施形態で説明したように耐火材本体16と板状部材17とを一体で加工形成すれば、火炎伝播路19を燃焼用空間Aの一部分に容易に設けることができる。
【0048】
<2>
上記実施形態では、可燃性ガス噴出部F1及び酸素ガス噴出部F2のそれぞれから可燃性ガスと酸素ガスとが未混合状態で噴出される例を説明したが、単一のガス噴出部Fから可燃性ガスと酸素ガスとが混合状態で噴出されるように構成してもよい。例えば、可燃性ガス供給路8と酸素ガス供給路9とをガス噴出部Fに至る前段階で連結して可燃性ガスと酸素ガスとの混合ガスにした上で、単一のガス噴出部Fから混合ガスが燃焼器3の内部空間に噴出されるように構成してもよい。
【0049】
<3>
上記実施形態において、火炎伝播路19の断面形状は適宜変更可能である。例えば、図4〜図6では火炎伝播路19の断面形状を四角形又は円形に描いたが他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、燃焼器の内部の高温領域での燃焼室用閉容器における熱応力の不均一を避けつつ、燃焼器における良好な着火を実施可能な改質装置を供給するために利用できる。
【符号の説明】
【0051】
3 燃焼器
4 改質器
10 改質室用閉容器
11 燃焼室用閉容器
12 排ガス路
17 板状部材
19 火炎伝播路
20 筒状部材
D 伝熱板
F ガス噴出部(長手状ガス噴出部)
F1 可燃性ガス噴出部(長手状ガス噴出部)
F2 酸素ガス噴出部(長手状ガス噴出部)
f1 可燃性ガス噴出孔
f2 酸素ガス噴出孔
P 点火装置
R 改質装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱板の一側面側に、前記伝熱板の厚さ方向に薄い偏平の直方体状に形成された燃焼室用閉容器を有する燃焼器と、前記伝熱板の他側面側に、供給される炭化水素系の原燃料を水蒸気にて改質処理して水素ガスを主成分とする改質ガスに改質する改質室用閉容器を有する改質器とを備える改質装置であって、
前記燃焼器は、
前記燃焼室用閉容器の内部空間の、前記燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの一つの周壁とそれと対向する周壁との間において前記一つの周壁の存在側に片寄らせた箇所に、可燃性ガス及び酸素ガスが混合状態で又は未混合状態で前記伝熱板の面に平行な方向に沿って噴出されるガス噴出部を有し、及び、
前記燃焼室用閉容器における4つの周壁のうちの前記一つの周壁とは異なる他の周壁に、前記燃焼室用閉容器を外部から内部へと貫通して装着され、前記可燃性ガス及び前記酸素ガスの混合ガスに点火させるための点火装置を有し、及び、
前記混合ガスの燃焼により発生する燃焼排ガスを前記燃焼室用閉容器の外部に排出する排ガス路を有し、及び、
前記点火装置の近傍と前記ガス噴出部の近傍との間に、前記混合ガスを前記ガス噴出部から前記点火装置まで誘導可能であり、且つ、前記点火装置で前記混合ガスへ点火されると前記点火装置から前記ガス噴出部へ火炎を伝播可能な筒状の火炎伝播路を有する改質装置。
【請求項2】
前記ガス噴出部は、前記一つの周壁の長手方向に延びて設置される長手状ガス噴出部の側面に、複数のガス噴出孔を前記長手状ガス噴出部の長手方向に沿って形成して構成され、
前記点火装置は、前記ガス噴出孔に形成される火炎の延出方向に向かって前記ガス噴出部から離れた位置に設置される請求項1に記載の改質装置。
【請求項3】
前記火炎伝播路は、前記点火装置の近傍と前記ガス噴出部の近傍との間の前記内部空間の一部分を、板状部材を用いて区画して構成される請求項1又は2に記載の改質装置。
【請求項4】
前記火炎伝播路は、筒状部材を前記点火装置の近傍と前記ガス噴出部の近傍との間に設置して構成される請求項1又は2に記載の改質装置。
【請求項5】
2つの皿形状の容器形成用部材を、それらの間に板状の仕切り部材としての前記伝熱板を位置させた状態で当該伝熱板に対して全周溶接接続して構成される、前記容器形成用部材と前記伝熱板との間の2つの空間を、前記燃焼器及び前記改質器として用いる請求項1〜4の何れか一項に記載の改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201513(P2012−201513A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64754(P2011−64754)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】