放出制御処方
【課題】放出制御組成物を製造する方法を提供する
【解決手段】(1)水と(2)それ自体がフィルム形成ポリマーを溶解することが出来る水混和性の有機溶剤とを含む溶剤系中の、実質的に水不溶性のフィルム形成ポリマー及びアミロースの混合物を含むフィルム形成組成物の溶液を、活性物質と接触させ、そして得られた組成物を乾燥する。フィルム形成組成物中のアミロースのフィルム形成不溶性ポリマーに対する重量比は1:2〜3:2の範囲であり、そして有機溶剤は溶剤系の少なくとも50重量%を構成する。かかる組成物は、治療剤を結腸に送達するのに特に適している。
【解決手段】(1)水と(2)それ自体がフィルム形成ポリマーを溶解することが出来る水混和性の有機溶剤とを含む溶剤系中の、実質的に水不溶性のフィルム形成ポリマー及びアミロースの混合物を含むフィルム形成組成物の溶液を、活性物質と接触させ、そして得られた組成物を乾燥する。フィルム形成組成物中のアミロースのフィルム形成不溶性ポリマーに対する重量比は1:2〜3:2の範囲であり、そして有機溶剤は溶剤系の少なくとも50重量%を構成する。かかる組成物は、治療剤を結腸に送達するのに特に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出特性がポリマーによって制御される、放出制御、一般的には遅延放出の処方に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第3,499,962号(特許文献1)並びに英国特許第1,072,795号(特許文献2)において、高圧及び高温の条件下で調製されたコロイド状アミロース溶液は、例えば食品、医薬、化粧品及び農業での適用に使用される粒子を被覆又はカプセル化するのに使用された。低温及び低圧での活性物質のカプセル化は、アルカリ金属水酸化物の水溶液のような塩の存在が必要であった。熱、光、あるいは一定の生理的環境下で遭遇する条件と実質的に異なる条件に晒された場合に不安定である、敏感な又は反応性の粒子のカプセル化は、これらの条件では行えない。
【0003】
結腸に存在する糞微生物のアミロースを分解する能力は、Cairns et al.,J.Cer.Sci.,12,203−206,(1990)(非特許文献1)により開示されている。アミロースを含有する製剤の調製及び使用は、米国特許第5,294,448号(特許文献3)及び米国特許第5,108,758号(特許文献4)に記載されている。アミロース溶液の調製は、Ring et al.,Macromolecules,1985,18,182(非特許文献2)において検討されており、この文献中では、複合化した形態のアミロースの水性分散物がC1−5アルコールとともに70℃〜90℃まで加熱された。同様の技術を使用して調製されたアミロース溶液は、米国特許第5,294,448号(特許文献5)及び米国特許第5,108,758号(特許文献6)、欧州特許出願公開0502350号(特許文献7)、並びに英国特許出願公開22230350号(特許文献8)に記載された組成物の製剤中で使用された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,499,962号
【特許文献2】英国特許第1,072,795号
【特許文献3】米国特許第5,294,448号
【特許文献4】米国特許第5,108,758号
【特許文献5】米国特許第5,294,448号
【特許文献6】米国特許第5,108,758号
【特許文献7】欧州特許出願公開0502350号
【特許文献8】英国特許出願公開22230350号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cairns et al.,J.Cer.Sci.,12,203−206,(1990)
【非特許文献2】Ring et al.,Macromolecules,1985,18,182
【発明の概要】
【0006】
本発明は、活性成分と、実質的に水不溶性のフィルム形成ポリマー及びアミロースの混合物を含むフィルム形成組成物から成形されたフィルムとを含む放出制御組成物を製造する方法を提供し、前記方法は、該活性成分を、(1)水と(2)それ自体が該フィルム形成ポリマーを溶解することが出来る水混和性有機溶剤とを含む溶剤系中で、該フィルム形成組成物の溶液と接触させ、そして水及び有機溶剤を除去することを含み、アミロースのフィルム形成ポリマーに対する重量比は1:2〜3:2の範囲であり、そして該溶剤系は少なくとも50w/w%の有機溶剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、アミロース/エチルセルロースのエタノール:水溶液から成型したフィルムの、24時間のインキュベーション後のフィルム損失のパーセンテージを、混合物中のアミロースの濃度に基づいて示す。
【図2】図2は、プロパノール:水混合物から成型したフィルムの、アミロース/エチルセルロース混合物中のアミロースの濃度に基づいた、フィルム損失値を示す。
【図3】図3は、乳酸エチルからの同様に成型したフィルムの、フィルム損失のパーセンテージを示す。
【図4】図4は、被覆しない球、及び乳酸エチル:水(約4:1)の混合物からの4:1のエチルセルロース:アミロース混合物で3%TWGの被覆水準で被覆した球の、それぞれリン酸塩緩衝液及び糞スラリー中における放出のグラフを示す。
【図5】図5は、図4と同様な、しかしエチルセルロース:アミロースの2:1の混合物を使用し、6%TWGの全被覆水準での結果を示す。
【図6】図6は、図4と同様な、しかし3:2の比のエチルセルロース:アミロースを使用し、10%のTWGでの結果を示す。
【図7】図7は、図4と同様な、しかし1:1のエチルセルロース:アミロースを使用し、15%のTWGでの結果を示す。
【図8】図8は、図4と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにエタノールを使用した結果を示す。
【図9】図9は、6と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにエタノールを使用した結果を示す。
【図10】図10は、図7と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにエタノールを使用した結果を示す。
【図11】図11は、図5と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにプロパノールを使用した結果を示す。
【図12】図12は、図7と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにプロパノールを使用した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この方法で使用される温度は、一般的に60℃より高い必要はなく、そして大抵の場合常温であっても良い。好ましくは、温度は20〜40℃の範囲である。
本発明の方法により形成された放出制御組成物は、活性物質の結腸への送達において特別な適用を見出す。かかる組成物は、胃及び小腸に存在する条件には実質的に抵抗性があるが、しかし結腸の微生物による攻撃には感受性があることが見出された。
【0009】
本発明は、一般的に溶剤回収を伴なうべきである。したがって、溶剤が蒸発によって除去される工程中で、一般的に水蒸気及び溶剤蒸気の混合物を含む蒸気は、回収、凝縮されるべきであり、そして溶剤は好ましくは当該方法において再循環されるべきである。凝縮された溶剤混合物は、分離して溶剤が実質的に水を含まないようにしても良く、又は、溶剤濃度の知られている水及び溶剤の混合物を当該方法において再使用しても良い。
【0010】
活性成分被覆ステーションからの溶剤除去及び回収に適した凝縮器の装置は、既知であり、そして例えば製造業者グラット(Glatt)から入手可能である。
本発明に使用される有機溶剤は、その水との混和性によって選択される。室内の温度及び圧力で10〜90%の有機溶剤を含有する均一なブレンドを形成できるように、充分に水混和性であることが好ましい。溶剤は更に、フィルム形成ポリマー及びアミロースを溶解する能力で選択されるべきである。したがって、これらの成分は、40℃の温度で、少なくとも5又は6%、好ましくは少なくとも10%の濃度で、有機溶剤に溶解されなければならない(水の存在無しで)。
【0011】
適当な溶剤は、室温で液体であり、そして前記の量の水と混和する、C2−10−アルカノール、エーテル、アルコールエーテル、及び、モノ又はより高級のカルボン酸塩基と一般的にはモノアルカノールとのエステルである。適当なエステルは、例えば乳酸エチルのような乳酸のエステルである。好ましくは、溶剤はC2−4アルカノールであり、そして最も好ましくは、エタノール及びプロパノールから選択される。
【0012】
本発明の溶剤系で使用する必要がある溶剤及び水の相対的な量は、使用する有機溶剤及び水不溶性ポリマーの双方の性質に依存することが見出された。有機溶剤は、少なくとも溶剤系の50重量%(w/w)、好ましくは溶剤系の60〜90%で含まれていても良い。例として、エチルセルロースを不溶性ポリマーとして使用する場合、フィルム形成組成物の調製に使用される有機溶剤系は、プロパノールを使用する場合、少なくとも60重量%の有機溶剤を、そしてエタノールを使用する場合は、少なくとも70重量%の有機溶剤を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の方法において使用される選択されるフィルム形成組成物は、アミロースがガラス状の状態で存在するフィルムを生じさせるものである。ガラス状アミロースを含むフィルムは、胃と、小腸のアミラーゼ酵素との双方による分解に抵抗性があることが見出されたが、しかし、結腸に存在する微生物による攻撃には感受性があることが見出された。
【0014】
ガラス状アミロースは、アモルファスアミロースの主要な二つの形態の一つであり、他はゴム状の形態である。
アミロースは、ガラス転移温度(Tg)より低い温度でそのガラス状状態で存在する。この温度を通って昇温すると、アミロースの熱容量に0.5±0.15Jg-1K-1(グラム当り、度ケルビン当り、のジュール)の急激な増加がある。この熱容量の増加はTgの同定を可能にするもので、熱容量の増加は示差走査熱量計により測定することができる。Tg値を得るための手順の例と、そのような方法についての先行文献の参照は、Orford et al.,Int.J.Biol.Macromol.、1989,11,91に与えられている。
【0015】
アミロースの所定の調製物の特定のTgは、その純度及び他の特性に依存する。したがって、例えば、純粋な乾燥したアミロースの理論的なTgは、210℃と予測できるが、しかし水の存在はこの数字を低下させる:水が10w/w%ではTgは80℃であり、そして水が20w/w%では7℃である。小腸に存在するようなα−デンプン分解酵素は、ガラス状アミロースを容易には分解せず、そしてこの効果は、Tgを20℃超えるまでなお明白であることが見出された。このような物質は、1−9のpH範囲にわたって、37℃で水性媒体中に充分に不溶であり、胃又は小腸での分解に抵抗性があることが見出された。これらは、しかしながら、結腸内に存在する糞の微生物により分解される。
【0016】
必要な遅延放出特性を提供するガラス状アミロースの能力は、ガラス状アミロースがTgを通過しても直ちには失われず、したがって、Tgより低い温度にてガラス状の状態で製造されたアミロースを含有するフィルムを、そのガラス状の特性をまだ保持している間に、Tgより低い温度と同様に、Tgで又はTgより僅かに高い温度で使用しても良い。しかしながら、本発明の方法にしたがって使用されるフィルム形成組成物から形成されたフィルム中に存在するガラス状アミロースは、当該組成物の使用が考えられた温度より、即ち約37℃の体温より、20℃未満低いTg、即ち、17℃に等しいか又はそれ以上のTgを有することが好ましく、そして好ましくは約30℃に等しいかそれ以上、更に好ましくは約40℃に等しいかそれ以上である。Tgは、水の量を制御することによって前もって決定出来る。これは、フィルム形成組成物中のアミロースの濃度を変化させることにより達成できる。
【0017】
任意の所定の条件下で形成されたフィルム中のアミロースの特定の試料の適合性に関する最終試験は、勿論、水性条件下、特定的には1−9のpH及び37℃の温度で、加水分解に対し抵抗し、そして都合よくは、通常胃及び小腸に存在するような消化酵素の存在中で酵素的分解に抵抗するが、しかし通常結腸に存在する細菌叢によって与えられるようなアミロース開裂酵素の存在中で酵素的分解を受ける能力である。
【0018】
ガラス状の状態のアミロースを含むフィルムは、本発明の方法に使用されるフィルム形成組成物から、成型又は噴霧によりゲルを成型し、そしてそのゲルを乾燥することによって適宜に調製しても良い。ゲルは、濃縮した富ポリマー相及び貧ポリマー相を作る相分離によって形成する。たとえゲル全体が50%までの水を含み得るとしても、富ポリマー相は、わずか例えば10w/w%の水を含むかもしれず、そしてそれによって室温でガラス状であり得る。必要ならば又は所望により、全調製物を20〜80℃の間で、そして更に好ましくは20〜40℃の間で、空気又は窒素のような不活性雰囲気で乾燥しても良い。
【0019】
フィルム形成組成物に使用するアミロースは、任意の適する原料から調製することができるが、好ましくはデンプンから、例えば穀物デンプン若しくはジャガイモデンプン、又は豆のデンプン、例えば滑らかな種を有するエンドウマメのデンプンから、アルコール、例えばRing et al.,Macromolecules,1985,18,182によって記載されたような、1−ブタノール、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ペンタノール、2−メチルブタン−2−オール又は2−メチルブタン−1−オールとの複合体として、適宜に水溶液から沈殿させることにより調製する。アルコールは、次いで適宜に複合体の水性分散物から適当な加熱した不活性ガス、例えば窒素を吹き付けることにより除去しても良い。
【0020】
形成されたフィルム中のガラス状アミロースとの混合物として存在する他の物質は、この物質の胃及び小腸間、並びに結腸での分解の選択的性質を減ずるであろうことは認識されるであろう。したがって、フィルム中のガラス状アミロースは、胃又は小腸での消化に敏感ないかなる物質も、実質的に含まない(即ち20重量%以下そして好ましくは10%又は5重量%以下しか含まない)ことが好ましい。特にガラス状アミロースは、好ましくはアミロペクチン、そして都合よくは更にアミロペクチンに見出される形のグルコシド結合を含有するいかなる物質も10%又は5重量%以下、例えば1又は2%以下しか含まない。
【0021】
更にフィルム形成組成物から成型されたフィルム中のガラス状アミロースは、誘導体の形で水酸基を含まないことが好ましく、そして何らかの誘導体化が存在する場合、水酸基の存在は10%以下、特に4又は5%以下、そして特に1又は2%以下の範囲であることが都合がよい。
【0022】
アミロースの純度の都合の良い試験は、Banks et al.,Starke,1971,23,118に記載されているような、標準的分析法におけるそのヨウ素結合能力によって提供される。このように純粋な非誘導体化アミロースは、約19.5w/w%(即ち19.5±0.5w/w%)のレベルまでヨウ素と結合するが、一方他の主要なデンプン質多糖であるアミロペクチンは、2.0w/w%未満しか結合せず、そしてアミロースの誘導体化もまたこの結合能力を減少する。したがって、好都合には、本発明において使用されるアミロースは、ヨウ素と15.0%±0.5w/w%以上の量まで、好ましくは18.0%±0.5w/w%以上の量まで、そして特に19.5±0.5w/w%の量まで結合する。
【0023】
本発明に使用されるアミロースの分子量は、適宜に少なくとも20000g/モル(又はダルトン)であっても良く、そして好ましくはより高く、したがって、特定の状況にもよるが、少なくとも、100000、200000、300000、400000又は500000g/モルの分子量を持つアミロースを使用することに利益がある。
【0024】
本発明の放出制御組成物中の、ガラス状アミロースを含有するフィルムを形成するために使用出来るフィルム形成組成物の使用には選択があるが、ゴム状アミロースを含有するフィルムを生じさせるフィルム形成組成物を使用することも、また可能である。ゴム状アミロースを含有するフィルムの調製は、フィルム形成組成物に適宜に可塑剤を加えることによって達成しても良い。可塑剤が、さもなければ常温より数十度低い温度、即ち10℃、20℃、30℃又はそれ以上低い温度まで、ガラス状である筈のフィルム中のアミロースのTgを低下させることができるので、可塑剤の添加により、都合のよいことに、常温でガラス状ではなくゴム状であるアミロースを含有するフィルムの形成につながる。フィルムがTgより20℃まで高い範囲でガラス状の特性を保持するにもかかわらず(本明細書で先に記した)、フィルム中のアミロースは、生理学的温度で、さもなければ更に常温でその時充分にゴム状であり得る。ゴム状アミロースを含有するフィルムは、しかしまた特に水溶性可塑剤とともに調製された場合、そのような可塑剤は水性雰囲気に浸出する傾向があり、多孔性アミロース物質を製造するので、価値がある。したがって、被覆の手順を援助し、浸透性を制御し、又は他の理由で可塑剤をフィルム形成組成物に加えるのが適当であり得ることは認識されるであろう。
【0025】
本発明の方法に使用されるフィルム形成組成物は、有機溶剤中の水不溶性ポリマーの溶液を、アミロース−ブタノール複合体の水性分散物と混合することにより調製される。混合された二成分系の相対的な量は、最終のフィルムで必要なアミロース及び不溶性ポリマーの固体の比率に依存するであろう。有機溶剤中の、2〜25w/w%の間の不溶性ポリマー、好ましくは2〜8w/w%の間、そして特に3〜5w/w%の間の不溶性ポリマーを含む適当な溶液を、3〜12w/w%の間、好ましくは3〜8w/w%の間、そして特に3〜6w/w%の間のアミロース−ブタノール複合体を含む水性分散物と混合する。アミロース−ブタノール分散物を、混合前に適当な濃度まで濃縮することが必要かもしれない。溶液を混合し、そして完全に混合するまで撹拌する。得られた溶液を次いで塊を除去するために篩を通す。
【0026】
このようにして調製されたフィルム形成組成物は、典型的には2〜8w/w%の間、好ましくは3〜6w/w%の間、そして特に4〜5w/w%の間のフィルム形成固体を溶剤系中に含む。フィルムは、フィルム形成組成物を20〜60℃の間の温度で成型又は噴霧することによって調製できる。好ましくはフィルムは、組成物を活性物質上に噴霧することによって成型され、活性物質は、噴霧工程中20〜40℃の間、好ましくは30〜40℃の間、そして特に35〜40℃の間の温度に保持される。
【0027】
実質的に水不溶性フィルム形成ポリマーは、酸及びアルカリ性水溶液の雰囲気に不溶性であると同様に、水不溶性でなければならない。したがってフィルム形成ポリマーの水に対する溶解度は、室温で10%未満でなければならない。pH1の酸性水溶液媒体中の溶解度の標準は、約1%未満でなくてはならず、そしてpH7.2のアルカリ性水溶液媒体中では、約1%未満でなくてはならない。他方、適当な被覆/保護フィルムの形成を達成出来るために、ポリマーは、被覆組成物に充分に可溶でなければならない。したがってポリマーは、液体成分として選択された有機溶剤(水の存在無しで)に少なくとも5%の溶解度を有していなければならない。
【0028】
適当なフィルム形成物質は、好ましくは水不溶性のセルロース系又はアクリル系ポリマー物質である。異なるセルロース系又はアクリル系ポリマー物質の混合物を使用しても良い。フィルム形成ポリマーとしてのエチルセルロースの使用は、特に好ましい。
【0029】
セルロース物質は、外部被覆としての使用に好ましいフィルム形成物質であるが、アクリル系ポリマー物質もまた本発明の組成物に単独で又はセルロース物質との混合で使用しても良い。特に、アクリレート及びメタアクリレートポリマーの両者、そして特にこれらポリマーのエステル化基が種々の形、例えばC1−18アルキル基であるこれらの共重合体を使用しても良い。
【0030】
フィルム形成セルロース物質の好ましい分子量の範囲は、42,000〜280,000g/モル(又はダルトン)であり、そしてフィルム形成アクリル系ポリマー物質の場合は150,000〜250,000g/モル(又はダルトン)であるが、しかし分子量がこれらの範囲外の物質、例えばより高い分子量のものも適当な場合に使用出来る。
【0031】
セルロース物質のin vivoでの分解は、一般的にpH依存ではなく、そしてこれはまた、好ましくはアクリル系物質にも当てはまる。これは、主ポリマー鎖上の側鎖の適当な形、特に陽電荷を有するものではなく、低い陰電荷を有するか又は好ましくは電荷を持たない側鎖の選択によって達成されてもよい。アクリル系物質の好ましい形態は、Tunbridge Wellsのデュマス社(Dumas(UK)Limited)によりEudragitの商標で販売されているものであり、特にその分解がpHに依存しない物質Eudragit Lである。好ましいセルロース物質であるエチルセルロースは、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)及び信越化学(Shinetu Chemical Products)によりEthocelの商標で販売されている。
【0032】
本発明の方法により被覆された投与形態の、胃及び小腸での分解に抵抗するが、しかし活性物質を結腸で放出する能力は、成型されたフィルム中のアミロースと不溶性ポリマーの比、フィルムの厚み及び活性物質の溶解度に、部分的に依存することが見出された。したがって、成型されたフィルムの被覆厚みと同様にフィルム形成組成物のアミロースと不溶性ポリマーの比を変化することにより、異なった溶解度の範囲の活性物質の、結腸における効果的な放出を達成することが可能である。
【0033】
前記方法の、アミロースとフィルム形成ポリマーの比は、1:2〜3:2の範囲、好ましくは2:3〜3:2の範囲、例えば約1:1でなければならない。アミロースの濃度が上限より高い場合、フィルムの機械的な特性が不充分であり得ることが見出される。アミロースの量が低すぎる場合、放出を所望する場所(例えば結腸)でのアミロースの分解が不充分であり得る。
【0034】
上記に示したように、アミロース及びフィルム形成ポリマーの混合物に、フィルムの成型、細孔の制御及びフィルムの機械的特性の改良を促進するために可塑剤を組み込むことが望ましいこともあり得る。使用する可塑剤の量は、不溶性ポリマーの性質による。
【0035】
適当な可塑剤の例は、特にセルロース物質の場合は、クエン酸トリエチル、グリセロール三酢酸、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチル、トリアセチン及びセバシン酸ジブチルのようなジカルボン酸及びトリカルボン酸エステルである。実質的に不溶性のポリマー、アミロース及び可塑剤の比率は、必要な遅延及び制御放出、並びに細孔特性を持つ被覆を得るために使用する物質の性質によって変更できる。エチルセルロースは、疎水性及び親水性可塑剤の両者によって可塑化出来る。
【0036】
上記に示したように、フィルムの厚みもまた活性物質が投与態様から放出される速度に影響する。投与態様中の活性物質の溶解度によるが、放出は一般的により厚いフィルムを使用した場合はより遅い。より厚いフィルムは、高い溶解性の活性物質を使用する場合に、活性物質の結腸における放出が、充分に制御出来るような投与態様を調製するためにまた必要である。
【0037】
厚みに関しては、適当な値は普通の実験によって得られるが、しかし指針として、しばしば2〜50μmの範囲、特に20〜50μmの範囲、例えば約40μmの厚みが好まれることは記しても良い。しかしながら、特に可塑剤が被覆に組み込まれた場合、時には引用した厚みより大きい厚みを含む幅広い範囲の厚みの変更が可能であることは、認識されるであろう。被覆厚みはまた全重量増加(TWG)として定義できる;これは、活性物質の被覆後の重量の増加のパーセンテージである。TWGが、3%〜20%、好ましくは5%〜15%、そして特に約9〜11%の範囲であることが好ましい。
【0038】
組成物が結腸に達するまでの、少なくとも実質的な量の活性成分の遅延放出と同様に、フィルム中のアミロースの性質も、放出を遅くする障害及びその微生物(細菌叢)による分解の制御を提供し、それによって組成物が一旦結腸に達した時に、活性物質の放出を制御することにおいて重要である。したがってある種の制御放出は、使用するアミロースの制御によって小腸において影響を受けであろう。
【0039】
したがって制御は、一つ又はそれ以上の放出を制御する変数、例えば被覆厚み、被覆方法及び被覆成分の比を変化させることによって、活性成分の放出について、時間に関して試験できる。活性成分のパルス的放出を可能にするために、異なる放出時間を与えるために設計された被覆を有する、例えば小球の混合物を使用することも可能である。
【0040】
“活性成分”の用語は、低い常温以上の温度例えば20〜40℃で感受性があるか又はあるかもしれないいかなる物質をも含むが、しかしこの範囲外の温度で分解されない物質をもまた含む。活性成分は、制限的ではなく、例えば食品、医薬品、電導性成分であり得る。しかしながら、特にヒト並びに家畜用治療又は診断用薬剤として有用ないかなる化合物若しくは組成物を含む。特に重要な治療剤は、本明細書で先に言及している。治療剤の遅延放出を達成する、特に先に記した結腸への放出における価値に加えて、本発明の組成物は、更に診断関連、例えばX−線及びNMR映像技術に関連した結腸への造影剤のような薬剤の放出においても興味深い。別の診断分野は、アレルギー診断のための、アレルギーの可能性のある食品成分の結腸への放出にある。
【0041】
活性化合物を、特定の使用に適した他の担体物質と混合しても良いことは認識されるであろう。したがって、特に治療上の使用において、活性化合物は、しばしば一つ又はそれ以上の増量剤及び滑剤、例えばそれぞれラクトース及びステアリン酸マグネシウムと混合されるであろう。治療に使用する活性化合物の投与量は、文献、例えばABPI必携データシート(ABPI Data Sheet Compendium)に開示されたようなもの、又は時には、化合物のより効果的な放出のためにそれより少なくとも良いであろう。
【0042】
好ましい“活性化合物”の一つは、結腸の疾患の治療に経口的に使用される薬剤、5−アミノサリチル酸(5−ASA)である。フリーの5−ASAを経口投与した場合、胃及び小腸が薬剤を不活性化するか及び/又は吸収するので、僅かな薬剤しか結腸に届かない。本発明は、結腸において実質的な量の活性成分を遅延放出する、経口投与することが出来る5−ASAを含む組成物を提供する。5−ASAは、好ましくは微結晶状セルロース及び僅かな部分のベントナイトのような無機質結合剤との混合物で適当に球化された小球体の形で提供される。他の適当な活性物質は、エフェドリン及びパラセタモールを含む。
【0043】
本発明は、更に以下の制限的ではない実施例を参照して例示されるであろう。本発明の範囲となるこれらに対する変更は、当業者にとって明白であろう。
【実施例】
【0044】
実施例1
1.1 予備的独立フィルム(free film)の研究
有機系をアミロース−ブタノール複合体の水性分散物及びエチルセルロースの有機溶液の混合物を使用して展開した。エチルセルロース溶液の形成に三種類の溶剤を選択した。それらは乳酸エチル、エタノール及びプロパノールであった。混合物系を溶剤/水溶液の相溶性、ポリマーの混和性並びに、溶剤比、固体比及び温度効果のような、影響の可能性のある因子に対し調査した。研究は、独立フィルムを使用して行った。成型された独立フィルムは引き続いて、酸浸透性試験及びin vitroの発酵試験に掛けた。
【0045】
1.2 材料
エチルセルロース、グレードN−100、Dow Chemicals
アミロース−ブタノール複合体分散物、Institute of Food
Research、Norwich、UKにて調製
無水アルコール、一般用試薬
プロパン−1−オール、AnalaRグレード、BDH Merck、UK
乳酸エチル、Aldrich、UK
セバシン酸ジブチル、Aldrich Chemicals Co.Ltd.、UK
1.3 方法
エチルセルロース溶液を調製するために、乳酸エチル、エタノール及びプロパノールを使用し、4.5gの3.33%又は4.67w/w%のエチルセルロース溶液を、0.5gの6w/w%の水性アミロース−ブタノール複合体分散物に加え、撹拌しそして9cm直径のPTFEプレートに注いだ。次いでフィルムを室温(約15℃)及び送風機補助のオーブン(40℃)で乾燥した。選択されたフィルムを、更に消化性について下記のin vitro発酵研究を使用して試験した。
【0046】
1.4 結果−アミロース
高アミロース比を使用した場合、混合したフィルム中の水と溶剤の比もまた増加した。この水含有量の増加は、製造されたフィルムの品質に大きな影響を持つことを示した。一般的に、成型されたフィルムは、比較上低いアミロース比を使用して得られたものより更に脆くそして多孔性であった。
【0047】
ポリマーがゲル相として析出し(半透明のジェリー状の塊として観察される)、そしてそれ以下ではポリマーが不溶性となり始める、またCg(ゲル化の臨界濃度)としても知られる、厳密な溶剤/水の組成を決定することは必須である。Cgの値は、既知の量の有機エチルセルロース溶液に、エチルセルロース溶液が突然変化して曇り、そして、ジェリー状塊が現れるまで、水を滴下によって加える滴定法により正確に決定した。Cg値を有機溶剤の量及び加えた水の量から計算した。エチルセルロース−有機溶剤−水の三成分系に対する三角形状態図を、使用した三種の溶剤に対して作成した。
【0048】
この実験で得られたCg値は、エタノール濃度約62%、プロパノール濃度約54%そして乳酸エチルに対しては約74%であることが見出された。これらの値は、エチルセルロースを溶解し、そして引き続くフィルム成型のために必要な最小の溶剤濃度を示す。
【0049】
1.5 結果−エチルセルロース
同じ実験を、エチルセルロース溶液の代わりに、アミロース−ブタノール複合体を使用して繰り返した。アミロース分散物それ自体が白色のミルク状分散物であり、ゲル化が始まる滴定の終点(Cg値)を決定することが困難であったために、アミロース−水−有機溶剤系の3相図の構築は不可能であった。しかしながら、有機溶剤をアミロース分散物に加えた時に、沈殿が形成されなかったので、アミロース分散物は、これらの選択された3種の有機溶剤の試験した全ての比率において分散可能と思われる。
【0050】
個々のポリマーを溶剤/水混合物中で試験したこれらの結果から、ポリマーの両者を含む単一の被覆液からの混合フィルムの調製は、エタノールが少なくとも70重量%存在するエタノール/水、又は溶剤が少なくとも60重量%存在するプロパノール/水混合物を使用して、達成できることが確立された。
【0051】
実施例2
混合フィルムの消化性の調査
アミロース及びエチルセルロースを種々の比で含む混合溶液を、実施例1から、混合フィルムの生産に適していると決定されたアルコール/水の混合物を使用して調製した。フィルムは、合計5%のアミロース及びエチルセルロースを含む混合溶液から、実施例1.3に記載した一般的な成型技術を使用して成型した。乾燥後、フィルムの試料を切り取りそして所定の量の糞スラリーと共にインキュベートした(各実験に同量の同じ糞スラリーを使用)。37℃で24時間のインキュベーション後、フィルムを水で洗浄し、そしてインキュベーター中で、20℃及び44%RHで7日間乾燥し、そして再秤量する。
【0052】
フィルム損失のパーセンテージで示した消化性の結果は、図1〜3に示す。
これらの結果から、失われたフィルムの量(糞スラリーによる消化)は、フィルム中のアミロースの量が増加すると、増加することがわかる。したがって、活性物質が結腸で放出される速度は、フィルム中のアミロースの量に依存するであろうことは認識されるであろう。
【0053】
実施例3
被覆したペレットからの薬剤の放出
更なる実験を、結腸疾患の治療に使用される化合物の代表として、5−アミノサリチル酸(本明細書中で以後5−ASSAとして引用する)を使用して行った。
【0054】
5−ASAを含む球の調製の一般的方法
微結晶セルロース(AvicelPH101)、ラクトース、ベントナイト粉末及び活性成分を、5分間混合し、そして精製水を加え引き続き10分間更に混合した。最終混合物は、約10重量%の5ASA、55重量%のMCC、30%のラクトース、5%のベントナイト及び水を含んでいた。得られた可塑性の塊を押し出し成型し、そして押し出し成型物を球形化器で加工した。得られた球を60℃で30分間流動床で乾燥し、そして1.00ないし1.40mmの範囲の直径及び全ASA濃度約10%の球を得るために篩にかけた。
【0055】
被覆した球の調製
上記で得られた球を、5%の全ポリマー濃度に調製された、アミロース/エチルセルロース被覆組成物を含む混合した水/溶剤を使用して、被覆厚み(全重量増、TWGで表される)を変化させた産物を調製するために、35−40℃の床温度の流動床被覆器内の球に噴霧することにより被覆した。
【0056】
被覆の溶解
球からの5ASAの放出を、37℃の温度でそして撹拌された100mlの溶解流体中の、既知の濃度の5ASAを含む球の量を使用して測定した。使用した溶解流体は、pH7.2のリン酸塩緩衝液及び糞スラリー(10−15%)であった。試料を2時間間隔で8時間まで、そしてその後12時間後及び24時間後に採取し、そしてHPLCにより分析した。参照目的で、被覆しないペレットを同じ放出試験に掛けた。
【0057】
結果
結果を添付の図に示す。
結論
結果はエチルセルロース:アミロース比が高い(2:1以上)場合、殆ど有意でない薬剤放出しか観察されないことを示す。これは、被覆表面からペレットの中心への継続したアミロースの経路が、存在するアミロースの量が低い結果として、存在しないことによるか、又はアミロースの細孔の曲がりが多く、薬剤の拡散を阻止することによる可能性がある。
【0058】
先に記した研究は、フィルム被覆中のアミロースの比が、エチルセルロースの濃度と等量以上に上昇した場合、フィルムの構造の一体性が損なわれることを示した。この理由により、高いアミロース濃度を使用した実験ではより高いTWGを使用した。アミロース:エチルセルロースが2:3以上の濃度の場合の結果は、リン酸塩緩衝液と比較した糞スラリー中での相対的放出は、消化器系の結腸以前の部分での放出が起こらないであろうことを示し、所望通り増加することを示す。糞スラリーに存在する酵素によるアミロースの分解により、活性成分の充分な放出が許される。同様な結果は、パラセタモール及びエフェドリンに対しても得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出特性がポリマーによって制御される、放出制御、一般的には遅延放出の処方に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第3,499,962号(特許文献1)並びに英国特許第1,072,795号(特許文献2)において、高圧及び高温の条件下で調製されたコロイド状アミロース溶液は、例えば食品、医薬、化粧品及び農業での適用に使用される粒子を被覆又はカプセル化するのに使用された。低温及び低圧での活性物質のカプセル化は、アルカリ金属水酸化物の水溶液のような塩の存在が必要であった。熱、光、あるいは一定の生理的環境下で遭遇する条件と実質的に異なる条件に晒された場合に不安定である、敏感な又は反応性の粒子のカプセル化は、これらの条件では行えない。
【0003】
結腸に存在する糞微生物のアミロースを分解する能力は、Cairns et al.,J.Cer.Sci.,12,203−206,(1990)(非特許文献1)により開示されている。アミロースを含有する製剤の調製及び使用は、米国特許第5,294,448号(特許文献3)及び米国特許第5,108,758号(特許文献4)に記載されている。アミロース溶液の調製は、Ring et al.,Macromolecules,1985,18,182(非特許文献2)において検討されており、この文献中では、複合化した形態のアミロースの水性分散物がC1−5アルコールとともに70℃〜90℃まで加熱された。同様の技術を使用して調製されたアミロース溶液は、米国特許第5,294,448号(特許文献5)及び米国特許第5,108,758号(特許文献6)、欧州特許出願公開0502350号(特許文献7)、並びに英国特許出願公開22230350号(特許文献8)に記載された組成物の製剤中で使用された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,499,962号
【特許文献2】英国特許第1,072,795号
【特許文献3】米国特許第5,294,448号
【特許文献4】米国特許第5,108,758号
【特許文献5】米国特許第5,294,448号
【特許文献6】米国特許第5,108,758号
【特許文献7】欧州特許出願公開0502350号
【特許文献8】英国特許出願公開22230350号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cairns et al.,J.Cer.Sci.,12,203−206,(1990)
【非特許文献2】Ring et al.,Macromolecules,1985,18,182
【発明の概要】
【0006】
本発明は、活性成分と、実質的に水不溶性のフィルム形成ポリマー及びアミロースの混合物を含むフィルム形成組成物から成形されたフィルムとを含む放出制御組成物を製造する方法を提供し、前記方法は、該活性成分を、(1)水と(2)それ自体が該フィルム形成ポリマーを溶解することが出来る水混和性有機溶剤とを含む溶剤系中で、該フィルム形成組成物の溶液と接触させ、そして水及び有機溶剤を除去することを含み、アミロースのフィルム形成ポリマーに対する重量比は1:2〜3:2の範囲であり、そして該溶剤系は少なくとも50w/w%の有機溶剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、アミロース/エチルセルロースのエタノール:水溶液から成型したフィルムの、24時間のインキュベーション後のフィルム損失のパーセンテージを、混合物中のアミロースの濃度に基づいて示す。
【図2】図2は、プロパノール:水混合物から成型したフィルムの、アミロース/エチルセルロース混合物中のアミロースの濃度に基づいた、フィルム損失値を示す。
【図3】図3は、乳酸エチルからの同様に成型したフィルムの、フィルム損失のパーセンテージを示す。
【図4】図4は、被覆しない球、及び乳酸エチル:水(約4:1)の混合物からの4:1のエチルセルロース:アミロース混合物で3%TWGの被覆水準で被覆した球の、それぞれリン酸塩緩衝液及び糞スラリー中における放出のグラフを示す。
【図5】図5は、図4と同様な、しかしエチルセルロース:アミロースの2:1の混合物を使用し、6%TWGの全被覆水準での結果を示す。
【図6】図6は、図4と同様な、しかし3:2の比のエチルセルロース:アミロースを使用し、10%のTWGでの結果を示す。
【図7】図7は、図4と同様な、しかし1:1のエチルセルロース:アミロースを使用し、15%のTWGでの結果を示す。
【図8】図8は、図4と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにエタノールを使用した結果を示す。
【図9】図9は、6と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにエタノールを使用した結果を示す。
【図10】図10は、図7と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにエタノールを使用した結果を示す。
【図11】図11は、図5と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにプロパノールを使用した結果を示す。
【図12】図12は、図7と同様な、しかし乳酸エチルの代わりにプロパノールを使用した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この方法で使用される温度は、一般的に60℃より高い必要はなく、そして大抵の場合常温であっても良い。好ましくは、温度は20〜40℃の範囲である。
本発明の方法により形成された放出制御組成物は、活性物質の結腸への送達において特別な適用を見出す。かかる組成物は、胃及び小腸に存在する条件には実質的に抵抗性があるが、しかし結腸の微生物による攻撃には感受性があることが見出された。
【0009】
本発明は、一般的に溶剤回収を伴なうべきである。したがって、溶剤が蒸発によって除去される工程中で、一般的に水蒸気及び溶剤蒸気の混合物を含む蒸気は、回収、凝縮されるべきであり、そして溶剤は好ましくは当該方法において再循環されるべきである。凝縮された溶剤混合物は、分離して溶剤が実質的に水を含まないようにしても良く、又は、溶剤濃度の知られている水及び溶剤の混合物を当該方法において再使用しても良い。
【0010】
活性成分被覆ステーションからの溶剤除去及び回収に適した凝縮器の装置は、既知であり、そして例えば製造業者グラット(Glatt)から入手可能である。
本発明に使用される有機溶剤は、その水との混和性によって選択される。室内の温度及び圧力で10〜90%の有機溶剤を含有する均一なブレンドを形成できるように、充分に水混和性であることが好ましい。溶剤は更に、フィルム形成ポリマー及びアミロースを溶解する能力で選択されるべきである。したがって、これらの成分は、40℃の温度で、少なくとも5又は6%、好ましくは少なくとも10%の濃度で、有機溶剤に溶解されなければならない(水の存在無しで)。
【0011】
適当な溶剤は、室温で液体であり、そして前記の量の水と混和する、C2−10−アルカノール、エーテル、アルコールエーテル、及び、モノ又はより高級のカルボン酸塩基と一般的にはモノアルカノールとのエステルである。適当なエステルは、例えば乳酸エチルのような乳酸のエステルである。好ましくは、溶剤はC2−4アルカノールであり、そして最も好ましくは、エタノール及びプロパノールから選択される。
【0012】
本発明の溶剤系で使用する必要がある溶剤及び水の相対的な量は、使用する有機溶剤及び水不溶性ポリマーの双方の性質に依存することが見出された。有機溶剤は、少なくとも溶剤系の50重量%(w/w)、好ましくは溶剤系の60〜90%で含まれていても良い。例として、エチルセルロースを不溶性ポリマーとして使用する場合、フィルム形成組成物の調製に使用される有機溶剤系は、プロパノールを使用する場合、少なくとも60重量%の有機溶剤を、そしてエタノールを使用する場合は、少なくとも70重量%の有機溶剤を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の方法において使用される選択されるフィルム形成組成物は、アミロースがガラス状の状態で存在するフィルムを生じさせるものである。ガラス状アミロースを含むフィルムは、胃と、小腸のアミラーゼ酵素との双方による分解に抵抗性があることが見出されたが、しかし、結腸に存在する微生物による攻撃には感受性があることが見出された。
【0014】
ガラス状アミロースは、アモルファスアミロースの主要な二つの形態の一つであり、他はゴム状の形態である。
アミロースは、ガラス転移温度(Tg)より低い温度でそのガラス状状態で存在する。この温度を通って昇温すると、アミロースの熱容量に0.5±0.15Jg-1K-1(グラム当り、度ケルビン当り、のジュール)の急激な増加がある。この熱容量の増加はTgの同定を可能にするもので、熱容量の増加は示差走査熱量計により測定することができる。Tg値を得るための手順の例と、そのような方法についての先行文献の参照は、Orford et al.,Int.J.Biol.Macromol.、1989,11,91に与えられている。
【0015】
アミロースの所定の調製物の特定のTgは、その純度及び他の特性に依存する。したがって、例えば、純粋な乾燥したアミロースの理論的なTgは、210℃と予測できるが、しかし水の存在はこの数字を低下させる:水が10w/w%ではTgは80℃であり、そして水が20w/w%では7℃である。小腸に存在するようなα−デンプン分解酵素は、ガラス状アミロースを容易には分解せず、そしてこの効果は、Tgを20℃超えるまでなお明白であることが見出された。このような物質は、1−9のpH範囲にわたって、37℃で水性媒体中に充分に不溶であり、胃又は小腸での分解に抵抗性があることが見出された。これらは、しかしながら、結腸内に存在する糞の微生物により分解される。
【0016】
必要な遅延放出特性を提供するガラス状アミロースの能力は、ガラス状アミロースがTgを通過しても直ちには失われず、したがって、Tgより低い温度にてガラス状の状態で製造されたアミロースを含有するフィルムを、そのガラス状の特性をまだ保持している間に、Tgより低い温度と同様に、Tgで又はTgより僅かに高い温度で使用しても良い。しかしながら、本発明の方法にしたがって使用されるフィルム形成組成物から形成されたフィルム中に存在するガラス状アミロースは、当該組成物の使用が考えられた温度より、即ち約37℃の体温より、20℃未満低いTg、即ち、17℃に等しいか又はそれ以上のTgを有することが好ましく、そして好ましくは約30℃に等しいかそれ以上、更に好ましくは約40℃に等しいかそれ以上である。Tgは、水の量を制御することによって前もって決定出来る。これは、フィルム形成組成物中のアミロースの濃度を変化させることにより達成できる。
【0017】
任意の所定の条件下で形成されたフィルム中のアミロースの特定の試料の適合性に関する最終試験は、勿論、水性条件下、特定的には1−9のpH及び37℃の温度で、加水分解に対し抵抗し、そして都合よくは、通常胃及び小腸に存在するような消化酵素の存在中で酵素的分解に抵抗するが、しかし通常結腸に存在する細菌叢によって与えられるようなアミロース開裂酵素の存在中で酵素的分解を受ける能力である。
【0018】
ガラス状の状態のアミロースを含むフィルムは、本発明の方法に使用されるフィルム形成組成物から、成型又は噴霧によりゲルを成型し、そしてそのゲルを乾燥することによって適宜に調製しても良い。ゲルは、濃縮した富ポリマー相及び貧ポリマー相を作る相分離によって形成する。たとえゲル全体が50%までの水を含み得るとしても、富ポリマー相は、わずか例えば10w/w%の水を含むかもしれず、そしてそれによって室温でガラス状であり得る。必要ならば又は所望により、全調製物を20〜80℃の間で、そして更に好ましくは20〜40℃の間で、空気又は窒素のような不活性雰囲気で乾燥しても良い。
【0019】
フィルム形成組成物に使用するアミロースは、任意の適する原料から調製することができるが、好ましくはデンプンから、例えば穀物デンプン若しくはジャガイモデンプン、又は豆のデンプン、例えば滑らかな種を有するエンドウマメのデンプンから、アルコール、例えばRing et al.,Macromolecules,1985,18,182によって記載されたような、1−ブタノール、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ペンタノール、2−メチルブタン−2−オール又は2−メチルブタン−1−オールとの複合体として、適宜に水溶液から沈殿させることにより調製する。アルコールは、次いで適宜に複合体の水性分散物から適当な加熱した不活性ガス、例えば窒素を吹き付けることにより除去しても良い。
【0020】
形成されたフィルム中のガラス状アミロースとの混合物として存在する他の物質は、この物質の胃及び小腸間、並びに結腸での分解の選択的性質を減ずるであろうことは認識されるであろう。したがって、フィルム中のガラス状アミロースは、胃又は小腸での消化に敏感ないかなる物質も、実質的に含まない(即ち20重量%以下そして好ましくは10%又は5重量%以下しか含まない)ことが好ましい。特にガラス状アミロースは、好ましくはアミロペクチン、そして都合よくは更にアミロペクチンに見出される形のグルコシド結合を含有するいかなる物質も10%又は5重量%以下、例えば1又は2%以下しか含まない。
【0021】
更にフィルム形成組成物から成型されたフィルム中のガラス状アミロースは、誘導体の形で水酸基を含まないことが好ましく、そして何らかの誘導体化が存在する場合、水酸基の存在は10%以下、特に4又は5%以下、そして特に1又は2%以下の範囲であることが都合がよい。
【0022】
アミロースの純度の都合の良い試験は、Banks et al.,Starke,1971,23,118に記載されているような、標準的分析法におけるそのヨウ素結合能力によって提供される。このように純粋な非誘導体化アミロースは、約19.5w/w%(即ち19.5±0.5w/w%)のレベルまでヨウ素と結合するが、一方他の主要なデンプン質多糖であるアミロペクチンは、2.0w/w%未満しか結合せず、そしてアミロースの誘導体化もまたこの結合能力を減少する。したがって、好都合には、本発明において使用されるアミロースは、ヨウ素と15.0%±0.5w/w%以上の量まで、好ましくは18.0%±0.5w/w%以上の量まで、そして特に19.5±0.5w/w%の量まで結合する。
【0023】
本発明に使用されるアミロースの分子量は、適宜に少なくとも20000g/モル(又はダルトン)であっても良く、そして好ましくはより高く、したがって、特定の状況にもよるが、少なくとも、100000、200000、300000、400000又は500000g/モルの分子量を持つアミロースを使用することに利益がある。
【0024】
本発明の放出制御組成物中の、ガラス状アミロースを含有するフィルムを形成するために使用出来るフィルム形成組成物の使用には選択があるが、ゴム状アミロースを含有するフィルムを生じさせるフィルム形成組成物を使用することも、また可能である。ゴム状アミロースを含有するフィルムの調製は、フィルム形成組成物に適宜に可塑剤を加えることによって達成しても良い。可塑剤が、さもなければ常温より数十度低い温度、即ち10℃、20℃、30℃又はそれ以上低い温度まで、ガラス状である筈のフィルム中のアミロースのTgを低下させることができるので、可塑剤の添加により、都合のよいことに、常温でガラス状ではなくゴム状であるアミロースを含有するフィルムの形成につながる。フィルムがTgより20℃まで高い範囲でガラス状の特性を保持するにもかかわらず(本明細書で先に記した)、フィルム中のアミロースは、生理学的温度で、さもなければ更に常温でその時充分にゴム状であり得る。ゴム状アミロースを含有するフィルムは、しかしまた特に水溶性可塑剤とともに調製された場合、そのような可塑剤は水性雰囲気に浸出する傾向があり、多孔性アミロース物質を製造するので、価値がある。したがって、被覆の手順を援助し、浸透性を制御し、又は他の理由で可塑剤をフィルム形成組成物に加えるのが適当であり得ることは認識されるであろう。
【0025】
本発明の方法に使用されるフィルム形成組成物は、有機溶剤中の水不溶性ポリマーの溶液を、アミロース−ブタノール複合体の水性分散物と混合することにより調製される。混合された二成分系の相対的な量は、最終のフィルムで必要なアミロース及び不溶性ポリマーの固体の比率に依存するであろう。有機溶剤中の、2〜25w/w%の間の不溶性ポリマー、好ましくは2〜8w/w%の間、そして特に3〜5w/w%の間の不溶性ポリマーを含む適当な溶液を、3〜12w/w%の間、好ましくは3〜8w/w%の間、そして特に3〜6w/w%の間のアミロース−ブタノール複合体を含む水性分散物と混合する。アミロース−ブタノール分散物を、混合前に適当な濃度まで濃縮することが必要かもしれない。溶液を混合し、そして完全に混合するまで撹拌する。得られた溶液を次いで塊を除去するために篩を通す。
【0026】
このようにして調製されたフィルム形成組成物は、典型的には2〜8w/w%の間、好ましくは3〜6w/w%の間、そして特に4〜5w/w%の間のフィルム形成固体を溶剤系中に含む。フィルムは、フィルム形成組成物を20〜60℃の間の温度で成型又は噴霧することによって調製できる。好ましくはフィルムは、組成物を活性物質上に噴霧することによって成型され、活性物質は、噴霧工程中20〜40℃の間、好ましくは30〜40℃の間、そして特に35〜40℃の間の温度に保持される。
【0027】
実質的に水不溶性フィルム形成ポリマーは、酸及びアルカリ性水溶液の雰囲気に不溶性であると同様に、水不溶性でなければならない。したがってフィルム形成ポリマーの水に対する溶解度は、室温で10%未満でなければならない。pH1の酸性水溶液媒体中の溶解度の標準は、約1%未満でなくてはならず、そしてpH7.2のアルカリ性水溶液媒体中では、約1%未満でなくてはならない。他方、適当な被覆/保護フィルムの形成を達成出来るために、ポリマーは、被覆組成物に充分に可溶でなければならない。したがってポリマーは、液体成分として選択された有機溶剤(水の存在無しで)に少なくとも5%の溶解度を有していなければならない。
【0028】
適当なフィルム形成物質は、好ましくは水不溶性のセルロース系又はアクリル系ポリマー物質である。異なるセルロース系又はアクリル系ポリマー物質の混合物を使用しても良い。フィルム形成ポリマーとしてのエチルセルロースの使用は、特に好ましい。
【0029】
セルロース物質は、外部被覆としての使用に好ましいフィルム形成物質であるが、アクリル系ポリマー物質もまた本発明の組成物に単独で又はセルロース物質との混合で使用しても良い。特に、アクリレート及びメタアクリレートポリマーの両者、そして特にこれらポリマーのエステル化基が種々の形、例えばC1−18アルキル基であるこれらの共重合体を使用しても良い。
【0030】
フィルム形成セルロース物質の好ましい分子量の範囲は、42,000〜280,000g/モル(又はダルトン)であり、そしてフィルム形成アクリル系ポリマー物質の場合は150,000〜250,000g/モル(又はダルトン)であるが、しかし分子量がこれらの範囲外の物質、例えばより高い分子量のものも適当な場合に使用出来る。
【0031】
セルロース物質のin vivoでの分解は、一般的にpH依存ではなく、そしてこれはまた、好ましくはアクリル系物質にも当てはまる。これは、主ポリマー鎖上の側鎖の適当な形、特に陽電荷を有するものではなく、低い陰電荷を有するか又は好ましくは電荷を持たない側鎖の選択によって達成されてもよい。アクリル系物質の好ましい形態は、Tunbridge Wellsのデュマス社(Dumas(UK)Limited)によりEudragitの商標で販売されているものであり、特にその分解がpHに依存しない物質Eudragit Lである。好ましいセルロース物質であるエチルセルロースは、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)及び信越化学(Shinetu Chemical Products)によりEthocelの商標で販売されている。
【0032】
本発明の方法により被覆された投与形態の、胃及び小腸での分解に抵抗するが、しかし活性物質を結腸で放出する能力は、成型されたフィルム中のアミロースと不溶性ポリマーの比、フィルムの厚み及び活性物質の溶解度に、部分的に依存することが見出された。したがって、成型されたフィルムの被覆厚みと同様にフィルム形成組成物のアミロースと不溶性ポリマーの比を変化することにより、異なった溶解度の範囲の活性物質の、結腸における効果的な放出を達成することが可能である。
【0033】
前記方法の、アミロースとフィルム形成ポリマーの比は、1:2〜3:2の範囲、好ましくは2:3〜3:2の範囲、例えば約1:1でなければならない。アミロースの濃度が上限より高い場合、フィルムの機械的な特性が不充分であり得ることが見出される。アミロースの量が低すぎる場合、放出を所望する場所(例えば結腸)でのアミロースの分解が不充分であり得る。
【0034】
上記に示したように、アミロース及びフィルム形成ポリマーの混合物に、フィルムの成型、細孔の制御及びフィルムの機械的特性の改良を促進するために可塑剤を組み込むことが望ましいこともあり得る。使用する可塑剤の量は、不溶性ポリマーの性質による。
【0035】
適当な可塑剤の例は、特にセルロース物質の場合は、クエン酸トリエチル、グリセロール三酢酸、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチル、トリアセチン及びセバシン酸ジブチルのようなジカルボン酸及びトリカルボン酸エステルである。実質的に不溶性のポリマー、アミロース及び可塑剤の比率は、必要な遅延及び制御放出、並びに細孔特性を持つ被覆を得るために使用する物質の性質によって変更できる。エチルセルロースは、疎水性及び親水性可塑剤の両者によって可塑化出来る。
【0036】
上記に示したように、フィルムの厚みもまた活性物質が投与態様から放出される速度に影響する。投与態様中の活性物質の溶解度によるが、放出は一般的により厚いフィルムを使用した場合はより遅い。より厚いフィルムは、高い溶解性の活性物質を使用する場合に、活性物質の結腸における放出が、充分に制御出来るような投与態様を調製するためにまた必要である。
【0037】
厚みに関しては、適当な値は普通の実験によって得られるが、しかし指針として、しばしば2〜50μmの範囲、特に20〜50μmの範囲、例えば約40μmの厚みが好まれることは記しても良い。しかしながら、特に可塑剤が被覆に組み込まれた場合、時には引用した厚みより大きい厚みを含む幅広い範囲の厚みの変更が可能であることは、認識されるであろう。被覆厚みはまた全重量増加(TWG)として定義できる;これは、活性物質の被覆後の重量の増加のパーセンテージである。TWGが、3%〜20%、好ましくは5%〜15%、そして特に約9〜11%の範囲であることが好ましい。
【0038】
組成物が結腸に達するまでの、少なくとも実質的な量の活性成分の遅延放出と同様に、フィルム中のアミロースの性質も、放出を遅くする障害及びその微生物(細菌叢)による分解の制御を提供し、それによって組成物が一旦結腸に達した時に、活性物質の放出を制御することにおいて重要である。したがってある種の制御放出は、使用するアミロースの制御によって小腸において影響を受けであろう。
【0039】
したがって制御は、一つ又はそれ以上の放出を制御する変数、例えば被覆厚み、被覆方法及び被覆成分の比を変化させることによって、活性成分の放出について、時間に関して試験できる。活性成分のパルス的放出を可能にするために、異なる放出時間を与えるために設計された被覆を有する、例えば小球の混合物を使用することも可能である。
【0040】
“活性成分”の用語は、低い常温以上の温度例えば20〜40℃で感受性があるか又はあるかもしれないいかなる物質をも含むが、しかしこの範囲外の温度で分解されない物質をもまた含む。活性成分は、制限的ではなく、例えば食品、医薬品、電導性成分であり得る。しかしながら、特にヒト並びに家畜用治療又は診断用薬剤として有用ないかなる化合物若しくは組成物を含む。特に重要な治療剤は、本明細書で先に言及している。治療剤の遅延放出を達成する、特に先に記した結腸への放出における価値に加えて、本発明の組成物は、更に診断関連、例えばX−線及びNMR映像技術に関連した結腸への造影剤のような薬剤の放出においても興味深い。別の診断分野は、アレルギー診断のための、アレルギーの可能性のある食品成分の結腸への放出にある。
【0041】
活性化合物を、特定の使用に適した他の担体物質と混合しても良いことは認識されるであろう。したがって、特に治療上の使用において、活性化合物は、しばしば一つ又はそれ以上の増量剤及び滑剤、例えばそれぞれラクトース及びステアリン酸マグネシウムと混合されるであろう。治療に使用する活性化合物の投与量は、文献、例えばABPI必携データシート(ABPI Data Sheet Compendium)に開示されたようなもの、又は時には、化合物のより効果的な放出のためにそれより少なくとも良いであろう。
【0042】
好ましい“活性化合物”の一つは、結腸の疾患の治療に経口的に使用される薬剤、5−アミノサリチル酸(5−ASA)である。フリーの5−ASAを経口投与した場合、胃及び小腸が薬剤を不活性化するか及び/又は吸収するので、僅かな薬剤しか結腸に届かない。本発明は、結腸において実質的な量の活性成分を遅延放出する、経口投与することが出来る5−ASAを含む組成物を提供する。5−ASAは、好ましくは微結晶状セルロース及び僅かな部分のベントナイトのような無機質結合剤との混合物で適当に球化された小球体の形で提供される。他の適当な活性物質は、エフェドリン及びパラセタモールを含む。
【0043】
本発明は、更に以下の制限的ではない実施例を参照して例示されるであろう。本発明の範囲となるこれらに対する変更は、当業者にとって明白であろう。
【実施例】
【0044】
実施例1
1.1 予備的独立フィルム(free film)の研究
有機系をアミロース−ブタノール複合体の水性分散物及びエチルセルロースの有機溶液の混合物を使用して展開した。エチルセルロース溶液の形成に三種類の溶剤を選択した。それらは乳酸エチル、エタノール及びプロパノールであった。混合物系を溶剤/水溶液の相溶性、ポリマーの混和性並びに、溶剤比、固体比及び温度効果のような、影響の可能性のある因子に対し調査した。研究は、独立フィルムを使用して行った。成型された独立フィルムは引き続いて、酸浸透性試験及びin vitroの発酵試験に掛けた。
【0045】
1.2 材料
エチルセルロース、グレードN−100、Dow Chemicals
アミロース−ブタノール複合体分散物、Institute of Food
Research、Norwich、UKにて調製
無水アルコール、一般用試薬
プロパン−1−オール、AnalaRグレード、BDH Merck、UK
乳酸エチル、Aldrich、UK
セバシン酸ジブチル、Aldrich Chemicals Co.Ltd.、UK
1.3 方法
エチルセルロース溶液を調製するために、乳酸エチル、エタノール及びプロパノールを使用し、4.5gの3.33%又は4.67w/w%のエチルセルロース溶液を、0.5gの6w/w%の水性アミロース−ブタノール複合体分散物に加え、撹拌しそして9cm直径のPTFEプレートに注いだ。次いでフィルムを室温(約15℃)及び送風機補助のオーブン(40℃)で乾燥した。選択されたフィルムを、更に消化性について下記のin vitro発酵研究を使用して試験した。
【0046】
1.4 結果−アミロース
高アミロース比を使用した場合、混合したフィルム中の水と溶剤の比もまた増加した。この水含有量の増加は、製造されたフィルムの品質に大きな影響を持つことを示した。一般的に、成型されたフィルムは、比較上低いアミロース比を使用して得られたものより更に脆くそして多孔性であった。
【0047】
ポリマーがゲル相として析出し(半透明のジェリー状の塊として観察される)、そしてそれ以下ではポリマーが不溶性となり始める、またCg(ゲル化の臨界濃度)としても知られる、厳密な溶剤/水の組成を決定することは必須である。Cgの値は、既知の量の有機エチルセルロース溶液に、エチルセルロース溶液が突然変化して曇り、そして、ジェリー状塊が現れるまで、水を滴下によって加える滴定法により正確に決定した。Cg値を有機溶剤の量及び加えた水の量から計算した。エチルセルロース−有機溶剤−水の三成分系に対する三角形状態図を、使用した三種の溶剤に対して作成した。
【0048】
この実験で得られたCg値は、エタノール濃度約62%、プロパノール濃度約54%そして乳酸エチルに対しては約74%であることが見出された。これらの値は、エチルセルロースを溶解し、そして引き続くフィルム成型のために必要な最小の溶剤濃度を示す。
【0049】
1.5 結果−エチルセルロース
同じ実験を、エチルセルロース溶液の代わりに、アミロース−ブタノール複合体を使用して繰り返した。アミロース分散物それ自体が白色のミルク状分散物であり、ゲル化が始まる滴定の終点(Cg値)を決定することが困難であったために、アミロース−水−有機溶剤系の3相図の構築は不可能であった。しかしながら、有機溶剤をアミロース分散物に加えた時に、沈殿が形成されなかったので、アミロース分散物は、これらの選択された3種の有機溶剤の試験した全ての比率において分散可能と思われる。
【0050】
個々のポリマーを溶剤/水混合物中で試験したこれらの結果から、ポリマーの両者を含む単一の被覆液からの混合フィルムの調製は、エタノールが少なくとも70重量%存在するエタノール/水、又は溶剤が少なくとも60重量%存在するプロパノール/水混合物を使用して、達成できることが確立された。
【0051】
実施例2
混合フィルムの消化性の調査
アミロース及びエチルセルロースを種々の比で含む混合溶液を、実施例1から、混合フィルムの生産に適していると決定されたアルコール/水の混合物を使用して調製した。フィルムは、合計5%のアミロース及びエチルセルロースを含む混合溶液から、実施例1.3に記載した一般的な成型技術を使用して成型した。乾燥後、フィルムの試料を切り取りそして所定の量の糞スラリーと共にインキュベートした(各実験に同量の同じ糞スラリーを使用)。37℃で24時間のインキュベーション後、フィルムを水で洗浄し、そしてインキュベーター中で、20℃及び44%RHで7日間乾燥し、そして再秤量する。
【0052】
フィルム損失のパーセンテージで示した消化性の結果は、図1〜3に示す。
これらの結果から、失われたフィルムの量(糞スラリーによる消化)は、フィルム中のアミロースの量が増加すると、増加することがわかる。したがって、活性物質が結腸で放出される速度は、フィルム中のアミロースの量に依存するであろうことは認識されるであろう。
【0053】
実施例3
被覆したペレットからの薬剤の放出
更なる実験を、結腸疾患の治療に使用される化合物の代表として、5−アミノサリチル酸(本明細書中で以後5−ASSAとして引用する)を使用して行った。
【0054】
5−ASAを含む球の調製の一般的方法
微結晶セルロース(AvicelPH101)、ラクトース、ベントナイト粉末及び活性成分を、5分間混合し、そして精製水を加え引き続き10分間更に混合した。最終混合物は、約10重量%の5ASA、55重量%のMCC、30%のラクトース、5%のベントナイト及び水を含んでいた。得られた可塑性の塊を押し出し成型し、そして押し出し成型物を球形化器で加工した。得られた球を60℃で30分間流動床で乾燥し、そして1.00ないし1.40mmの範囲の直径及び全ASA濃度約10%の球を得るために篩にかけた。
【0055】
被覆した球の調製
上記で得られた球を、5%の全ポリマー濃度に調製された、アミロース/エチルセルロース被覆組成物を含む混合した水/溶剤を使用して、被覆厚み(全重量増、TWGで表される)を変化させた産物を調製するために、35−40℃の床温度の流動床被覆器内の球に噴霧することにより被覆した。
【0056】
被覆の溶解
球からの5ASAの放出を、37℃の温度でそして撹拌された100mlの溶解流体中の、既知の濃度の5ASAを含む球の量を使用して測定した。使用した溶解流体は、pH7.2のリン酸塩緩衝液及び糞スラリー(10−15%)であった。試料を2時間間隔で8時間まで、そしてその後12時間後及び24時間後に採取し、そしてHPLCにより分析した。参照目的で、被覆しないペレットを同じ放出試験に掛けた。
【0057】
結果
結果を添付の図に示す。
結論
結果はエチルセルロース:アミロース比が高い(2:1以上)場合、殆ど有意でない薬剤放出しか観察されないことを示す。これは、被覆表面からペレットの中心への継続したアミロースの経路が、存在するアミロースの量が低い結果として、存在しないことによるか、又はアミロースの細孔の曲がりが多く、薬剤の拡散を阻止することによる可能性がある。
【0058】
先に記した研究は、フィルム被覆中のアミロースの比が、エチルセルロースの濃度と等量以上に上昇した場合、フィルムの構造の一体性が損なわれることを示した。この理由により、高いアミロース濃度を使用した実験ではより高いTWGを使用した。アミロース:エチルセルロースが2:3以上の濃度の場合の結果は、リン酸塩緩衝液と比較した糞スラリー中での相対的放出は、消化器系の結腸以前の部分での放出が起こらないであろうことを示し、所望通り増加することを示す。糞スラリーに存在する酵素によるアミロースの分解により、活性成分の充分な放出が許される。同様な結果は、パラセタモール及びエフェドリンに対しても得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出制御組成物を製造する方法であって、前記組成物が、活性成分と、実質的に水不溶性のフィルム形成ポリマー及びアミロースの混合物を含むフィルム形成組成物から形成されたフィルムとを含み、前記方法が、該活性成分を、(1)水と(2)それ自体がフィルム形成ポリマーを溶解することが出来る水混和性の有機溶剤とを含む溶剤系中の該フィルム形成組成物の溶液と接触させ、そして該溶剤を除去することを含み、アミロースのフィルム形成ポリマーに対する重量比が1:2〜3:2の範囲であり、そして該溶剤系が少なくとも50%の有機溶剤を含む、前記製造方法。
【請求項2】
アミロースのフィルム形成ポリマーに対する重量比が、2:3〜3:2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
フィルム形成組成物中のアミロースの濃度が、フィルムの形成時において該アミロースがガラス状の状態を呈するような濃度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
フィルム形成組成物中のアミロース及びフィルム形成ポリマーの濃度が、2〜25w/w%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
不溶性ポリマーが、セルロース系ポリマー及びアクリル系ポリマーからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
セルロースエーテルが、エチルセルロースである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
溶剤系が、60〜90w/w%の有機溶剤を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
有機溶剤が、プロパノール、エタノール及び乳酸エチルから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
活性成分を、フィルム形成組成物の溶液と20〜40℃の間の温度で接触させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
活性物質とフィルム形成組成物との接触が、噴霧により行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
フィルム形成組成物が更に可塑剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
フィルム形成組成物と活性物質との接触により形成されるフィルムの厚みが、3〜20%の理論重量増加(TWG)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
放出制御組成物を製造する方法であって、前記組成物が、活性成分と、実質的に水不溶性のフィルム形成ポリマー及びアミロースの混合物を含むフィルム形成組成物から形成されたフィルムとを含み、前記方法が、該活性成分を、(1)水と(2)それ自体がフィルム形成ポリマーを溶解することが出来る水混和性の有機溶剤とを含む溶剤系中の該フィルム形成組成物の溶液と接触させ、そして該溶剤を除去することを含み、アミロースのフィルム形成ポリマーに対する重量比が1:2〜3:2の範囲であり、そして該溶剤系が少なくとも50%の有機溶剤を含む、前記製造方法。
【請求項2】
アミロースのフィルム形成ポリマーに対する重量比が、2:3〜3:2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
フィルム形成組成物中のアミロースの濃度が、フィルムの形成時において該アミロースがガラス状の状態を呈するような濃度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
フィルム形成組成物中のアミロース及びフィルム形成ポリマーの濃度が、2〜25w/w%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
不溶性ポリマーが、セルロース系ポリマー及びアクリル系ポリマーからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
セルロースエーテルが、エチルセルロースである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
溶剤系が、60〜90w/w%の有機溶剤を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
有機溶剤が、プロパノール、エタノール及び乳酸エチルから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
活性成分を、フィルム形成組成物の溶液と20〜40℃の間の温度で接触させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
活性物質とフィルム形成組成物との接触が、噴霧により行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
フィルム形成組成物が更に可塑剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
フィルム形成組成物と活性物質との接触により形成されるフィルムの厚みが、3〜20%の理論重量増加(TWG)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−270335(P2010−270335A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−151886(P2010−151886)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2000−517696(P2000−517696)の分割
【原出願日】平成10年10月23日(1998.10.23)
【出願人】(505406039)アリザイム・セラピューティクス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151886(P2010−151886)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2000−517696(P2000−517696)の分割
【原出願日】平成10年10月23日(1998.10.23)
【出願人】(505406039)アリザイム・セラピューティクス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]