説明

放射エネルギー検出時における外乱判別方法およびこの判別方法を用いた温度計測方法

【課題】外乱として、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別し得る放射エネルギー検出時における外乱判別方法を提供する。
【解決手段】燃焼ごみ表面から放出される放射エネルギー量を二次元センサ11aにより所定の検出周期でもって検出する際に、外乱による影響を受けているか否かを判別する方法であって、二次元センサにより検出された時系列の検出データに、少なくとも飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータおよび検出周期に対応するシフトパラメータを用いて連続ウェーブレット変換を施し、このウェーブレット変換による変換値とスケーリングパラメータに対応して設定された飛散物判別用閾値とを比較することにより、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射エネルギー検出時における外乱判別方法および外乱判別装置並びにこの外乱判別方法を用いた温度計測方法に関し、特に、燃焼ごみなどの表面温度を放射エネルギー量を検出する際に、輝炎および塵、灰などの飛散物の影響を受けているか否かを判別する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ごみを燃焼させるストーカ炉等の焼却設備においては、炉内温度や下流側での酸素濃度などの指標に基づき燃焼制御を行っているが、指標が得られるまでの時間遅れを考えると、炉内の燃焼状況を直接把握して即応性のある制御が望まれている。
【0003】
このため、壁面近傍の温度を測定する熱電対に代えて、2次元センサからなる放射エネルギーを検出し得るセンサ(またはセンサからの出力を用いて演算により温度を検出し得る赤外線カメラ、サーモグラフィカメラなど)をごみ表面に向けて設置し、このごみ表面から放出される放射エネルギーを検出することにより、燃焼状況を把握しようとする技術が、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1においては、赤外線カメラによる検出結果に火炎放射、排気ガス中に存在する「ガスの放射」による外乱が含まれることに対するアプローチとして、これらガスによる外乱の最小値となる波長範囲(3.5〜4μm)を通過するフィルタを介して放射エネルギーを撮影している。
【0005】
そして、撮影された範囲において、測定される面範囲が複数の部分面を有する面格子に分割され、測定される面範囲において燃焼床が動かないと仮定することができ且つ燃焼床の放射線または温度がほとんど一定であると仮定することができる時間区分内で、時間的に連続する複数の像が撮影され、一つの時間区分の像を互いに比較することにより、静止している放射媒体の放射線を有する部分面が、動いている放射媒体の放射線を有する部分面と区別され、面範囲の平均放射線または平均温度を演算するために、静止している放射媒体の放射線を有する部分面の放射線または温度だけが検出に用いられている。
【0006】
さらに、煤粒子の固体放射による外乱については、面格子に分割された面範囲の複数の像を短い時間間隔で順々に撮影し、その際大きな変化を受けている面格子の部分面を除外することにより、除去するようにしたものである。
【0007】
また、特許文献2においては、放射エネルギーの検出手段による検出結果に輝炎などの「ゆらぎ」による外乱が含まれることに対するアプローチとして、放射エネルギーの検出手段における同一の検出素子(画素ともいえる)からの出力を時系列に比較するとともに、小さい方の値を選択していき、検出手段による複数の検出周期分である計測周期内で選択された最も小さい値をその検出素子における計測結果とするようにしたものが開示されている(勿論、他の検出素子についても同様にして計測結果が得られる)。
【特許文献1】特開平11−118146号公報(段落番号[0017]および図2参照)
【特許文献2】特開2005−49243号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1においては、フィルタを用いてガスによる外乱の影響を除去しているが、個体粒子(煤)からの放射エネルギーによる外乱については、ピークの40%程度までは残ってしまうことになりしたがってそれに対しては、面範囲の平均放射線または平均温度を演算するために、静止している放射媒体の放射線を有する部分面の放射線または温度だけを検出に用いる工夫をしているが、静止していない放射媒体の放射線を有する部分面の表面温度は不明につき検出には採用されておらず、このため、静止した部分面の占める割合次第では検出結果の精度が低下する惧れが生じることになる。
【0009】
一方、特許文献2においては、最小値を採用しているため輝炎による影響は除去し得るとともに全面について温度検出の対象としているが、その最小値は飛散物が検出センサとの間に存在したことによるものか、それとも、飛散物の影響を受けていないものかの区別をすることができず、やはり、その検出精度が低下する惧れがある。
【0010】
そこで、本発明は、外乱として、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別し得る放射エネルギー検出時における外乱判別方法および外乱判別装置並びにこの外乱判別方法を用いた温度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る放射エネルギー検出時における外乱判別方法は、被燃焼物の燃焼表面から放出される放射エネルギー量を検出センサにより所定の検出周期でもって検出する際に、外乱による影響を受けているか否かを判別する方法であって、
上記検出センサにより検出された時系列の検出データに、少なくとも飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータおよび検出周期に対応するシフトパラメータを用いて連続ウェーブレット変換を施し、
このウェーブレット変換による変換値と上記スケーリングパラメータに対応して設定された飛散物判別用閾値とを比較することにより、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別する方法である。
【0012】
また、請求項2に係る放射エネルギー検出時における外乱判別方法は、請求項1に記載の外乱判別方法における飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータとして、0.1以下の値を用いる方法である。
【0013】
また、請求項3に係る放射エネルギー検出時における外乱判別方法は、請求項1に記載の外乱判別方法における飛散物に加えて輝炎による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータを用いる方法である。
【0014】
また、請求項4に係る放射エネルギー検出時における外乱判別方法は、請求項3に記載の外乱判別方法における輝炎による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータとして、0.1〜1の範囲の値を用いる方法である。
【0015】
また、請求項5に係る放射エネルギー検出時における外乱判別装置は、被燃焼物の燃焼表面から放出される放射エネルギー量を検出センサにより所定の検出周期でもって検出する際に、外乱による影響を受けているか否かを判別する装置であって、
上記検出センサにより検出された時系列の検出データに、少なくとも飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータおよび検出周期に対応するシフトパラメータを用いて連続ウェーブレット変換を施すウェーブレット変換手段と、
このウェーブレット変換手段にて得られた変換値と上記スケーリングパラメータに対応して設定された飛散物判別用閾値とを比較することにより、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別する外乱判別手段とを具備したものである。
【0016】
さらに、本発明の請求項6に係る温度計測方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の外乱判別方法により判別された放射エネルギー量を用いて被燃焼物の表面温度を計測する方法であって、
判別周期内における検出周期ごとに得られる同一判別対象領域についての外乱の影響を受けない複数の検出データの平均値または最小値に基づき、表面温度を求める方法である。
【発明の効果】
【0017】
上記外乱判別方法および外乱判別装置によると、時系列で得られた検出データに対して連続ウェーブレット変換を施すとともに、この変換に際して、少なくとも、飛散物の影響があるか否かを判別し得るスケーリングパラメータを用いるようにしたので、燃焼しているごみ表面上での飛散物の通過により温度が低くなる部分を精度良く検出することができる。
【0018】
また、検出データに連続ウェーブレット変換を施す際に、輝炎による影響があるか否かを判別し得るスケーリングパラメータを用いるようにしたので、燃焼しているごみ表面上での輝炎により温度が高くなる部分を精度良く検出することができる。
【0019】
さらに、上記温度計測方法によると、外乱のうち、少なくとも、飛散物の影響があるか否かを判別し得る外乱判別方法により判別された検出データに基づき、温度を求めるようにしているので、被燃焼物の表面温度を精度良く計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る放射エネルギー検出時における外乱判別方法および外乱判別装置、並びに外乱判別方法を用いることにより外乱の影響が除去された放射エネルギーに基づき温度を計測する温度計測方法および温度計測装置を、図1〜図7に基づき説明する。
【0021】
なお、本実施の形態においては、被燃焼物が、ごみ焼却炉内で燃焼されるごみの場合について、言い換えれば、燃焼ごみから放出される放射エネルギー量に基づき燃焼ごみの表面温度(燃焼温度)を計測する場合について説明する。
【0022】
まず、ごみ焼却炉の概略構成を図1に基づき説明する。
このごみ焼却炉1は例えばストーカ炉であり、その炉本体2内には、燃焼火格子3が乾燥段、燃焼段および後燃焼段に亘って配置されてなる燃焼床4が設けられた燃焼室5が具備されるとともに、炉本体2の一端側には、ごみ投入ホッパ6が接続されたごみ投入口2aが形成され、またその他端側には焼却残渣の排出口2bが形成されたものである。
【0023】
そして、このごみ焼却炉1には、燃焼室5内でのごみの燃焼状態すなわち燃焼ごみの表面温度を、その放射エネルギー量を検出することにより、計測する温度計測装置7が具備されている。
【0024】
ところで、この温度計測装置7においては、放射エネルギー量を検出する際に、輝炎(火炎のゆらぎ)および飛散物(塵、灰、ごみ粒子などの固形物)などの外乱による影響を受けているか否かを判別し得る外乱判別手段(外乱判別装置でもある)が具備されている。なお、輝炎の影響を受けた場合には、放射エネルギー量が高くなり(温度が高くなる)、飛散物の影響を受けた場合には、熱が遮られることになるため、放射エネルギー量が低くなる(温度が低くなる)。
【0025】
なお、以下の説明においては、外乱判別装置としての外乱判別手段を、温度計測装置7の中で説明するものとする。
この温度計測装置7は、図1および図2に示すように、炉本体2の燃焼段から後燃焼段にかけての傾斜上壁部2cに設けられるとともに、燃焼ごみの表面から放出される放射エネルギー量を入力して電気エネルギーに変換する有指向性のセンサ(例えば、赤外線センサが用いられる)が縦横に複数個ずつ配置されてなる二次元センサ[この二次元センサにより得られた計測対象領域についての全データを1つ(1枚)の撮影画像として考えた場合には、個々の検出センサを画素と呼ぶこともできる]11aを有する撮影カメラ(例えば、赤外線カメラが用いられる)11と、この撮影カメラ11の二次元センサ11aにて連続的に検出されたアナログ量である放射エネルギー量(具体的には、輝度値の電気信号である)を所定の検出周期ごとにA/D変換して取り込む入力手段12と、この入力手段12にて取り込まれたディジタルデータである検出データを一時的に記憶(蓄積)するデータ記憶手段(所謂、メモリ部である)13と、このデータ記憶手段13から所定の纏まりのある複数のデータを入力するとともにそのデータ量を調整する(減らす)ために、例えばその平均値を検出データ(代表値としてのデータである)とするためのデータ調整手段(つまり、複数のデータの平均値を求める演算部である)14と、このデータ調整手段14にて得られた検出データを入力してそれぞれ連続ウェーブレット変換を施すウェーブレット変換手段(ウェーブレット変換を行う演算部である)15と、このウェーブレット変換手段15で求められたウェーブレット変換値である変換データを入力して予め設定された所定の閾値と比較して外乱の影響を受けているか否かを判別する外乱判別手段16と、この外乱判別手段16にて判別されたデータを入力して外乱の影響を受けていないデータに基づき判別対象領域(判別用メッシュであり、後述する)での代表データを算出する代表データ算出手段17と、この代表データ算出手段17で算出された代表データを入力して温度データに変換する温度変換手段18とから構成されている。なお、図1において、二次元センサ11aを有する撮影カメラ11については、温度計測装置7から分離した状態で図示したが、上述したように、温度計測装置7に含まれるものである。
【0026】
上記二次元センサ11aには、その前面側に、3〜4μmの範囲の波長だけを通過させるフィルタが具備されている。
上記データ記憶手段13においては、二次元センサ11aからの検出データすなわち各画素についての検出データが検出周期ごとに連続して蓄積されるが、ここでは、検出周期が複数連続されてなる判別周期ごとにデータが蓄積される。例えば、1秒間に30枚の検出画像が得られるとともに判別周期が1秒である場合には、連続する30回分の検出データ(検出画像)が1回の判別周期分として蓄積される。この場合、検出周期は1/30秒となる。勿論、検出周期は1/30秒に限定されるものではなく、外乱の影響を検出し得る最適な周期が採用される。
【0027】
次に、データ調整手段14には、データ記憶手段13から、1つの判別周期分に対応する複数の検出周期に応じた且つ複数の画素に応じた纏まりのある検出データ(データ群)が入力されるとともに、ここでは、1つの検出画像について、上記複数の画素を一つの纏まりと見なして、その代表値が求められる。例えば、8個×8個分(64個)の画素からなる矩形状(正方形を含む)の画素群が判別対象領域とされ、以下、この領域に対応する画素群を判別用メッシュと称する。このように、複数の画素からなる判別用メッシュについて判別を行うことにより、判別対象となるデータ量を減らすとともに、処理時間すなわち演算負荷を大幅に減らす(この場合、1/64に減る)ことにより、装置の小型化および低価格化を図り得るとともに、リアルタイム性の向上を図ることができる。したがって、このデータ調整手段14からは、各判別用メッシュ(8×8=64画素)について、それぞれ30個の検出データが時系列でもって出力されることになる。勿論、1つの検出画像に対して、判別用メッシュは多数存在しており、具体的には、検出画像中の総画素数を64で割った個数分の判別用メッシュが存在することになる。
【0028】
上記ウェーブレット変換手段15は、データ調整部14から出力された判別用メッシュについての代表値である検出データに対して、連続ウェーブレット変換を施すものである。
【0029】
ここで、連続ウェーブレット変換について簡単に説明しておく。
この連続ウェーブレット変換とは、下記(1)式に示すように、時間tの関数Ψ(t)(ウェーブレット関数という)と解析の対象とする信号f(t)すなわち検出データとの積の積分で表わされる。なお、上記ウェーブレット関数における基本ウェーブレットとして、例えば図4に示すような、メキシカンハット関数が用いられる。
【0030】
【数1】

この連続ウェーブレット変換により得られた変換データは、シフトパラメータbで示される時間軸上(時間領域)での位置におけるスケーリングパラメータaにより決定される切出し用波形(所定の周波数でもある)との類似度を表わしている。
【0031】
そして、周波数を表わすスケーリングパラメータaについては、外乱を検出し得るような値、例えば輝炎に対しては、0.1を超えて1.0以下の値、例えば{1.0;0.9;0.8;0.7;0.6;0.5;0.4;0.3;0.2}の9個が用いられ、また飛散物に対しては、0.1以下の正の値、例えば{0.01;0.05}の2個が用いられる。勿論、輝炎の判別に対して9個を全て用いてもよいが、輝炎の影響をよく判別し得るような値(1個または2個以上の適当な値)を用いることができる。
【0032】
さらに、時間を表わすシフトパラメータbは時間軸上をずらせる値であり、例えば検出周期ごとに一致する値とされ、すなわち1/30秒ごとに時間軸上を移動する値となり、ここでは、時系列のデータ1つずつ移動することになる。
【0033】
上記外乱判別手段16は、図3に示すように、上記ウェーブレット変換手段15で得られた輝炎用スケーリングパラメータaに係る変換データを入力するとともに、所定の判別用メッシュに対する各検出周期ごとの変換データと予め設定された輝炎判別用閾値とを比較して、輝炎による外乱の影響を受けているか否かを判別する第1外乱判別部21と、この第1外乱判別部21で輝炎判別閾値より小さくて輝炎の影響を受けていないと判別された場合に、当該判別用メッシュに影響フラグ「1」を設定するとともに、輝炎の影響を受けていると判別された場合に当該判別用メッシュに影響フラグ「0」を設定する第1フラグ設定部22と、同じく上記ウェーブレット変換手段15で得られた飛散物用スケーリングパラメータaに係る変換データを入力するとともに、所定の判別用メッシュに対する各検出周期ごとの変換データと予め設定された飛散物判別用閾値とを比較して、飛散物による外乱の影響を受けているか否かを判別する第2外乱判別部23と、この第2外乱判別部23で飛散物判別用閾値より小さくて飛散物の影響を受けていないと判別された場合に、当該判別用メッシュの影響フラグを「1」にするとともに、飛散物の影響を受けていると判別された場合に、当該判別用メッシュの影響フラグを「−1」に設定する第2フラグ設定部24とから構成されている。なお、判別用メッシュごとに得られる検出データには、データ値を格納するフィールドに加えて、影響フラグを格納し得るフィールドが設けられている。
【0034】
上記代表データ算出手段17においては、シフトパラメータb(つまり、時系列の同一判別用メッシュ)ごとに影響フラグが設定されて、当該影響フラグが「1」である判別周期内の各検出周期ごとの複数の検出データの平均値が判別周期における代表データとして算出される。
【0035】
なお、上記温度変換手段18には、放射エネルギー値とこの放射エネルギー値に対応する温度値とを示すデータテーブルが具備されており、上記代表データ算出手段17で算出された代表データが、当該温度変換手段18に入力されると、これに応じた温度データが出力されるものである。
【0036】
上記構成に基づき、ごみ焼却炉内でごみが燃焼する際の放射エネルギーの検出時における外乱判別方法を含めて、ごみ表面の温度計測方法を説明する。
計測が開始されると、まず、二次元センサ11aにより検出された検出値(放射エネルギー量)が入力手段12に入力されて、ここでアナログデータからディジタルデータに変換された後、データ記憶手段13に少なくとも判別周期分の検出データが記憶される。
【0037】
このデータ記憶手段13に記憶された検出データがデータ調整手段14に入力されて、判別用メッシュごとに平均値が求められる。以後、判別用メッシュでの平均値が検出データとして扱われる。
【0038】
次に、この平均値である検出データがウェーブレット変換手段15に入力されて、連続ウェーブレット変換が施される。
このウェーブレット変換時においては、ウェーブレット関数にスケーリングパラメータaおよびシフトパラメータbに所定の値が代入されて変換が行われるが、スケーリングパラメータaについては、例えば複数個、本実施の形態では11個{1.0;0.9;0.8;0.7;0.6;0.5;0.4;0.3;0.2;0.1;0.05}用意されており、またシフトパラメータbについては、判別周期内における各検出周期に一致する値が用いられる(言い換えれば、検出周期ごとにずらされる値が用いられる)。なお、上述したように、輝炎の判別用としては、9個{1.0;0.9;0.8;0.7;0.6;0.5;0.4;0.3;0.2}のスケーリングパラメータaが用いられ、飛散物の判別用としては、2個{0.1:05}のスケーリングパラメータaが用いられる。
【0039】
したがって、上述したように、判別周期が1秒で検出周期が1/30秒である場合には、1つの判別用メッシュに対して、11×30個の変換データが得られる。例えば、その手順としては、所定の時間つまり所定のシフトパラメータbに対して、スケーリングパラメータaが、1.0〜0.05の範囲で11回変更されて変換データが求められる。
【0040】
次に、この変換データが、外乱判別手段16に入力されて、輝炎および飛散物の影響を受けているか否かが判別される。
すなわち、輝炎用スケーリングパラメータaにより得られた変換データは第1外乱判別部21に入力されて、ここで、輝炎の影響を判別し得る予め設定された輝炎判別用閾値と比較され、変換データが輝炎判別用閾値より小さい場合には、輝炎の影響を受けていないと判断され、輝炎判別用閾値以上である場合には、輝炎の影響を受けていると判断される。
【0041】
そして、この比較された変換データが第1フラグ設定部22に入力されて、輝炎の影響を受けていないデータについては、影響フラグが「1」に設定され、また輝炎の影響を受けているデータについては、影響フラグが「0」に設定される。
【0042】
また、輝炎についての変換データと同時に(同時でなくてもよいが)、飛散物用スケーリングパラメータaにより得られた変換データが第2外乱判別部23に入力されて、ここで、飛散物の影響を判別し得る予め設定された飛散物判別用閾値と比較され、変換データが飛散物判別用閾値より小さい場合には、飛散物の影響を受けていないと判断され、飛散物判別用閾値以上である場合には、飛散物の影響を受けていると判断される。
【0043】
そして、この比較された変換データが第2フラグ設定部24に入力されて、飛散物の影響を受けていないデータについては、影響フラグが「1」に設定され、また飛散物の影響を受けているデータについては、影響フラグが「−1」に設定される。つまり、外乱の影響を受けていない検出データについては、その影響フラグが全て「1」に設定されたことになる。
【0044】
上記の手順が、判別周期内における各検出周期(シフトパラメータb)ごとに行われる。したがって、この時点で、1つの判別用メッシュについて、判別周期内における検出周期の個数分の検出データに対してそれぞれ影響フラグが設定され、外乱の影響があるか否かの判別がなされたことになる。
【0045】
次に、上記外乱判別手段16にて影響フラグが求められた各検出データが代表データ算出部17に入力され、ここで、影響フラグが「1」である検出データについて、判別周期内における代表データとしての平均値が求められる。
【0046】
そして、上述した外乱の影響を受けていない代表データを算出する手順が、全ての判別用メッシュについて行われる。すなわち、この時点で、計測対象領域について且つ判別周期内で、全ての判別用メッシュにおける外乱の影響を受けていない代表データが得られたことになる。
【0047】
次に、この代表データが温度変換手段18に入力されて、放射エネルギー量に対応する温度値に変換された後、この温度値が例えば温度表示器に出力される。
なお、代表データ算出部17と温度変換手段18との間に、データ保持部を配置しておき、温度の表示形式に応じて、所定量および/または所定時間分のデータを保持させるようにしてもよい。例えば、温度表示器にて、判別周期よりも長い周期での温度分布を表示させる場合に必要となる。
【0048】
ここで、図5に、燃焼ごみの表面温度を二次元センサ(赤外線センサ)により計測したデータの1画素分の時系列データを示す。なお、データ中、輝度値が大きく負の値になっている部分(A部)が飛散物(飛散ごみ)による影響を表わしている。図6に、この検出データに対して、ウェーブレット変換を施した変換データをグラフにて示す。図6に示すグラフの横軸は時間を表わし、縦軸は周波数を表わし、両座標軸の交点に変換データ(輝度値)を示す。図6中、B部が図5のA部に対応する部分(飛散物による影響部分)を示す、図5のA部近傍を、横軸にスケーリングパラメータaをとるとともに縦軸に変換データをとった場合のグラフを図7に示す。このグラフから、スケーリングパラメータaが0.01以下、特に0.05の付近で極端に低下しているのが良く分かる。これは、飛散物(飛散ごみ)による影響を表わしており、この場合、非常に周波数が高く、温度が低くなっているのが分かる。
【0049】
なお、図5で同じく温度が急激に下がっている時間190付近については、図6には、Bのような変化がないことが明らかで、特に、図5のような時系列データの急激な変化を見るだけでは、飛散物の影響の判断に誤りが生じることを物語っている。
【0050】
上記温度計測方法および温度計測装置の構成によると、同一の判別用メッシュについての時系列の検出データに連続ウェーブレット変換を施す際に、判別の対象となる外乱に応じて、すなわち輝炎および飛散物ごとに用意したスケーリングパラメータを用いるようにしたので、判別対象の外乱による影響の有無を確実に且つ精度良く判別することでき、しかも、判別周期内では、外乱の影響を受けていない判別用メッシュに係る検出データを選択するとともに、この検出データに基づき温度を求めるようにしているので、精度の良い温度計測を行うことができる。
【0051】
また、外乱の影響を良く表わす周波数に応じたスケーリングパラメータを用いることにより、対象とする(目的の)外乱を明確に(適切に)判別することができ、さらにスケーリングパラメータについては、異なる値を複数用いることで、判別の誤りを低減することができる。
【0052】
ところで、上記実施の形態においては、判別対象領域(判別用メッシュ)として、8×8画素からなる矩形状のものについて説明したが、矩形状以外で、例えば正六角形、円形、およびこれらに類似した形状であってもよい。
【0053】
また、上記実施の形態においては、複数の画素からなる判別用メッシュごとの検出データに対して連続ウェーブレット変換を施し、外乱の影響がある否かを判別するように説明したが、各画素ごとに検出される検出データに対して連続ウェーブレット変換を施し、外乱の影響がある否かを判別するようにしても同一の効果が得られる。
【0054】
なお、判別用メッシュ、画素ごとに検出される検出データに対して連続ウェーブレット変換を施し、外乱の影響がない検出データの平均値を代表データとするように説明したが、これに限らず、最小値を選択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度計測方法および温度計測装置が適用されるごみ焼却炉の概略構成を示す断面図である。
【図2】同温度計測装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】同温度計測装置における外乱判別手段の概略構成を示すブロック図である。
【図4】同温度計測装置のウェーブレット変換手段で用いられるウェーブレット関数を示す波形図である。
【図5】同温度計測装置による検出データの一例を示すグラフである。
【図6】同温度計測装置による検出データに対するウェーブレット変換による変換データを示すグラフである。
【図7】同温度計測装置による検出データにおけるスケーリングパラメータに対する変換データの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1 ごみ焼却炉
2 炉本体
2c 傾斜上壁部
3 燃焼火格子
4 燃焼床
5 燃焼室
7 温度計測装置
11a 二次元センサ
12 入力手段
13 データ記憶手段
14 データ調整手段
15 ウェーブレット変換手段
16 外乱判別手段
17 代表データ算出手段
18 温度変換手段
21 第1外乱判別部
22 第1フラグ設定部
23 第2外乱判別部
24 第2フラグ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被燃焼物の燃焼表面から放出される放射エネルギー量を検出センサにより所定の検出周期でもって検出する際に、外乱による影響を受けているか否かを判別する方法であって、
上記検出センサにより検出された時系列の検出データに、少なくとも飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータおよび検出周期に対応するシフトパラメータを用いて連続ウェーブレット変換を施し、
このウェーブレット変換による変換値と上記スケーリングパラメータに対応して設定された飛散物判別用閾値とを比較することにより、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別する
ことを特徴とする放射エネルギー検出時における外乱判別方法。
【請求項2】
飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータとして、0.1以下の値を用いることを特徴とする請求項1に記載の放射エネルギー検出時における外乱判別方法。
【請求項3】
飛散物に加えて輝炎による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータを用いることを特徴とする請求項1に記載の放射エネルギー検出時における外乱判別方法。
【請求項4】
輝炎による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータとして、0.1〜1の範囲の値を用いることを特徴とする請求項3に記載の放射エネルギー検出時における外乱判別方法。
【請求項5】
被燃焼物の燃焼表面から放出される放射エネルギー量を検出センサにより所定の検出周期でもって検出する際に、外乱による影響を受けているか否かを判別する装置であって、
上記検出センサにより検出された時系列の検出データに、少なくとも飛散物による外乱の影響を検出し得るスケーリングパラメータおよび検出周期に対応するシフトパラメータを用いて連続ウェーブレット変換を施すウェーブレット変換手段と、
このウェーブレット変換手段にて得られた変換値と上記スケーリングパラメータに対応して設定された飛散物判別用閾値とを比較することにより、少なくとも飛散物の影響を受けているか否かを判別する外乱判別手段と
を具備したことを特徴とする放射エネルギー検出時における外乱判別装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の外乱判別方法により判別された放射エネルギー量を用いて被燃焼物の表面温度を計測する方法であって、
判別周期内における検出周期ごとに得られる同一判別対象領域についての外乱の影響を受けない複数の検出データの平均値または最小値に基づき、表面温度を求める
ことを特徴とする被燃焼物の温度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−292519(P2007−292519A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118613(P2006−118613)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】