説明

放射強度計による放射照度測定方法、及び放射照度測定装置

【課題】紫外線強度計で計測した値を放射照度に変換する方法及びその手段を有する放射照度測定装置を提供する。
【解決手段】特定の分光応答度を有し特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源により校正された放射強度計を用いて測定対象光源の特定波長範囲における放射照度を測定する方法であって、放射強度計によって測定された測定値を、放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトルの波長範囲での積分値と放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を波長範囲で積分して得た値と測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルの波長範囲での積分値と測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を波長範囲で積分して得た値とに基づき補正し、波長範囲における測定対象光源の放射照度を求めることを特徴とする放射照度の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片を曝光させることにより、試験片を構成する材質の光に対する安定性を評価するために人工光源からの光を試験片に照射する装置に係り、試験片への曝光量を計測するための方法及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックや塗料といった材質は、屋外で使用され太陽光に曝されると変質あるいは変色することは周知の事実である。これらは一般に劣化といわれ、初期に設定されていた機能が損なわれることになる。これらの変色や変質は光化学反応により材料が変質したために発生すると考えられている。
【0003】
医薬品は、製造工場から出荷されると、輸送、貯蔵・保管を経た後、患者に投与され使用されることになるが、その間に太陽光あるいは照明等の人工光源からの光に曝される。ある種の医薬品では投与中あるいは使用中にこれらの光に曝されることがある。医薬品では、光反応により主要成分が変質し効能が低下したり、更に危険な場合には、光反応がきっかけとなり人体に有害な物質が生成したりすると、被投与者に甚大な被害を及ぼすことになる。
【0004】
上記の材料である有機化合物は、一般に長時間にわたり光の照射を受けると、わずかずつでも光化学反応が進行し、長時間の使用あるいは曝光により有意な変化が生じることは良く知られた事実である。光化学反応を極力抑制するために、材質の変更、該光化学反応を遅延あるいは抑制するための添加剤の添加、あるいは光反応をある許容範囲内に制限するために、輸送、貯蔵、保管、使用時において光照射に対する制約を設ける等の対応策が必要な場合もある。従って、上記のような製品が市場に出荷されるまでには、光安定性試験と称される試験が必ず実施され、光化学反応による影響が許容範囲内にあることを確認することが必須である。
【0005】
該光安定性試験装置は、地上に到達する太陽光に含まれる光の成分を含有する人工光源を用い、これらの人工光源の光路に設置された試験片に該人工光源からの光を照射するものである。試験片がある一定量の光に曝光された後に試験片を分析し、材料の変質の程度を精査することにより、安定性が評価され、あるいは上記の対応策が決定されることになる。このような光の照射による材料の変質の原因となる光化学反応の進行度合いは、材料に照射された光の量に比例すると考えられており、光安定性試験を実施するに当たっては、材料への曝光量が規定されているのが通常である。従って、光安定性試験装置において曝光量を測定することは非常に重要な試験要素である。
【0006】
曝光量の測定には、通常、照度計や紫外線強度計といった計器が使用される。照度計は波長が380〜780nmの可視光の照度を計測するために使用される。紫外線強度計は一般的に315〜400nmないし320〜400nmの波長範囲の紫外線の強度を測定するために使用される。この波長範囲の紫外線は一般にUV-Aと称される。地上に到達する太陽光には、波長800nm
以上の赤外光も含まれているが、該光化学反応は通常、波長の短い光により引き起こされると考えられており、波長の長い赤外光は計測対象とはなっていない。また、場合によっては波長300nm以下のUV-B(280〜315nmないし290〜320nm)やUV-C(180〜290nmないし100〜280nm)といった更に短波長の紫外線の影響を試験することもあり、各々の波長域に対
応した放射強度計がその暴露量の測定に使用される。
【0007】
光を、構成する波長ごとに分解することを分光というが、太陽光や人工光源の光を分
光すると、よく知られているようにスペクトルが得られる。可視光のスペクトルは人間の目には光の波長ごとに異なる色として認識されるが、これを波長毎の強度の相対値で表わしたものがスペクトルである。このスペクトルの各波長における相対強度を、W/m2等の単位で表わされる絶対強度に値付けしたものが分光放射照度と定義され、太陽光の場合は図1のようになる。ある波長範囲の光の放射照度とは、図1の分光放射照度をその波長範囲で積分したものである。図1で、可視光(波長380〜780nm)の放射照度は、該波長範囲での分光放射照度曲線の積分値である。同様に、紫外域(例えば、UV-Aでは320〜400nm)の放射照度は、該波長域部分での分光放射照度曲線の積分値である。これらの測定量は総称して放射量と呼ばれる。ここで、本発明が対象とする光学の分野で一般的に理解されているように、分光放射照度とスペクトルは以下のように規定し、使い分ける。分光放射照度は各波長における絶対的な光の強度を表わし、スペクトルは相対的な強度分布を表わすものとする。即ち、この両者は互いに比例関係にあり、これを式で表わすと

となる。ここに、E(λ)は分光放射照度、S(λ)はスペクトル、aは比例定数である。
【0008】
この放射量に対し、照度は光の計測量のうちでも測光量と呼ばれているものの一つで、人間の目の感度を基準として光の強度を測定するものである。この量の測定のために使用される照度計は、国際照明学会で規定している比視感度に近似した感度分布(分光応答度と称される)を持つようにフィルター等を利用して調整されている。このような分光応答度を有する照度計で太陽光を計測した場合の様子を図2に示す。1)は国際照明学会で規定されている比視感度を示したものである。この比視感度は380〜780nmの波長範囲で規定されており、それ以外の波長域ではゼロである。図1の太陽光の場合の、上記の定義から分かるように、太陽光の分光放射照度に比視感度を乗じたもの(図2の2)で示される曲線)の積分値に、ある定数を乗じて得られる数値が照度である。このことから分かるように、照度計は国際的に規定された分光応答度を持つ計測器で測定された可視光域の光の強度と考えることが出来る。
【0009】
一方、紫外線強度の測定においては、照度のように国際的に規定された分光応答度がなく、従って、測光量に相当する量はない。従って、紫外域での特定波長範囲における光の強度を表すことができるのは、光源の分光放射照度を該波長範囲で積分した放射照度という放射量が唯一のものになる。この放射照度を、対象とする光をスペクトルに分解することなく単一の装置で計測するには、該波長域において1の感度を有し、その他の波長域では感度がゼロという計測器が必要となる。しかるに、現実にはこのような分光応答度を有する計測器を作成することは不可能で、該波長域の光を透過するフィルター等を組み合わせることにより、図3に示したような分光応答度を有する計測器を作製し、測定せざるを得ないのが現状である。本発明では、このような分光応答度を有する計測器を放射強度計あるいは紫外線強度計と称す。
【0010】
尚、特許文献1には、予め分光特性のわかった紫外線受光素子によって測定された実測値から、特定の作用曲線に対する特定の紫外線情報を手軽に常時測定するために、紫外線受光素子によって測定された実測値、当該実測値を、紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値に基づき補正し、特定の紫外線情報を求める技術が開示されている。また、特許文献2や特許文献3には、光度測定法に関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−317318号公報
【特許文献2】Paper published in Measurements of Optical Radiation Hazards-A Reference Book Based on Presentations Given on Optical Radiation Hazards, September 1-3, 1998 Gaithersburg, Maryland, ICNIRP 6/98, CIEx016-1998, 445-453(1998) ”Photometry-The CIE V(λ) Function and What Can be Learned from Photometry” by Y.Ohno and A.E. Thompson National Institute of Standards and Technology Gaithersburg, MD, USA
【特許文献3】”Gigahertz-Optik Application & Product Guide 2004” Page 146-Calibration Service a(z)Calibration Correction Factor for known Light Sources
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
紫外線強度計の受光素子は通常光電変換素子が使用され、この素子は光を受けるとその強度に比例した電流を発生する。このことを利用して、ある電流値が計測されたときには、ある特定の放射照度として出力するように校正されている。校正は対象波長範囲(ここでは300〜400nm)において分光放射照度が既知の光源の光を測定し、
〔該光源の対象波長範囲での分光放射照度の積分値、即ち放射照度〕=〔校正係数〕×〔そのとき計測された電流値〕 (2)
となるように校正係数を決めることで行われる。
【0012】
校正を行う場合、分光放射照度既知の光源として、当該波長域に強い発光を有するものが用いられる。その一つがブラックライトである。図4にブラックライトの分光放射照度1)と紫外線強度計の分光応答度2)、及びこの両者を乗じたもの3)を示す。ブラックライトの光を受けると、紫外線強度計は3)の曲線の波長積分値に比例した電流を発生し、(2)式の関係が成立するように校正係数を決める。このようにして校正された紫外線強度計を使用してブラックライトを測定する場合、そのスペクトルは校正に使用したブラックライトと相似の関係があり、紫外線強度計から読み取られる数値は測定に供したブラックライトの放射照度を表わしている。
【0013】
ここで、光安定性試験装置に使用される光源はブラックライトばかりではなく、キセノンランプ、白色昼光蛍光ランプ、メタルハライドランプ等が使用され、これらのランプはブラックライトとは大きく異なるスペクトルを有する。ブラックライトで校正された紫外線強度計を使用して、ブラックライトとは異なるスペクトルを有する光源の光を測定した場合、紫外線強度計から放射照度として出力される数値は、測定対象光源の実際の放射照度を反映しておらず、物理的に意味のない数値となる。
【0014】
模式的な図を使って、更に具体的に現象を説明する。図5はブラックライトを使用して紫外線強度計を校正する手順を模式的に示したものである。縦軸は紫外線強度計の分光応答度あるいはブラックライトの分光放射照度を表わし、横軸は光の波長を表わす。1)は紫外線強度計の分光応答度を模擬したもの、2)はブラックライトの分光放射照度を模擬したものである。ブラックライトの放射照度は2)の線の下の部分の面積で表わされ、実際に積分計算をすることで1/2と求まる。一方、紫外線強度計はブラックライトの光を3)のように検知している。3)は1)と2)を掛け合わせたものである。第5図に示した状況で紫外線
強度計がブラックライトの照射を受けているときには、紫外線強度計は3)の下の面積(1
/3)に比例する電流を出力する。比例定数を1と仮定して、この出力を1/3アンペアと
する。このとき、この出力電流に3/2を乗じて得られる1/2が実際の放射照度であるので、紫外線強度計の出力電流に3/2を乗じて、放射照度の単位(例えばW/m2)で表示するようにすることが校正である。このように校正された紫外線強度計は図52)に相似のスペクトルの光源を計測する場合には常に正しい放射照度の値を出力する。
【0015】
次に、この紫外線強度計を用いて異なるスペクトルを持つ光源を測定した場合を模式的に考える。図6は、この状況を模式的に示したものである。1)は紫外線強度計の分光応答度を模擬したもの、2)は本光源の分光放射照度を模擬したものである。本光源の放射照度は2)の線の下の部分の面積であり、実際に積分計算をすることで1と求まる。一方、紫
外線強度計は本光源の光を3)のように検知している。3)は1)と2)を掛け合わせたものである。図6に示した状況で紫外線強度計が本光源の照射を受けているときには、紫外線強度計は3)の下の面積(1/2)に比例する電流を出力する。先ほど、比例定数を1としたので、この出力は1/2アンペアとなる。このとき、この出力電流に、先ほど得た校正係数3/2を乗じて得られる3/4が、このときの本光源の放射照度として紫外線強度計が表示す
る値となる。上述したように、本光源の放射照度は1であり、紫外線強度計の出力である3/4は実態を反映しないものになっている。このように、あるスペクトルの光源で校正した紫外線強度計を、異なるスペクトルを有する別の光源の測定に使用すると、測定対象光源の実際の放射照度とは異なる数値を出力する。
【0016】
上記のことは、光源の異なる個別の光安定性試験装置で試験をした場合、それらの結果を相互に比較することが出来ないということを意味しており、光安定性試験の信頼性を著しく損なうことになっている。これは、紫外線強度計の校正方法が本質的に抱える問題であり、上述のように物理的に意味のない計測値として測定していることに問題の原因がある。紫外領域での光の曝光量を規定する場合には、分光放射照度の当該波長範囲での積分値である放射照度を用いて規定することで、物理的に意味のある数値を規定することが可能となる。
【0017】
上記では、光により電流を発生する光電変換素子を例に本発明になる方法を説明したが、本発明になる方法は、他の方式の受光素子を用いた場合にも適用でき、上記の説明は本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
本発明は紫外線強度計で計測した値を放射照度に変換する方法及びその手段を有する放射照度測定装置を提供し、光安定性試験装置に適用することで、その結果の信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の記述から分かるとおり、校正に使用した光源と異なる種類の光源の光を紫外線強度計で計測する場合、スペクトルの形が異なるためにその光源の放射照度を正しく表示しないことがこの問題の原因である。この課題を解決するための手段として下記の方法が考えられる。
【0020】
・ 測定対象とする光源と同一のスペクトルを有する光源で紫外線強度計を校正し、複数のスペクトルの異なる光源を測定対象とするときには、測定対象と同一スペクトルの光源で校正した紫外線強度計を複数個(光源のスペクトルの種類と同一数)用意して、測定対象に合わせて使い分ける。
【0021】
・ 紫外線強度計の出力値を測定対象光源のスペクトルに合わせて補正する。
【0022】
1)は、上記で述べたとおりの方法で、測定対象と同一の光源を使用して紫外線強度計を校正すれば目的を達成できる。しかし、この方法では、校正のために必要な光学系が煩雑になり、また、測定対象の光源ごとに、それと同じスペクトルを有する標準光源で校正した紫外線強度計が必要となるため、コストが上昇すると共に、機器の汎用性という見地からも望ましいものとはいえない。
【0023】
・ が本発明になる放射照度の測定法であり、上記の課題は以下の方法により解決される。即ち、本発明になる放射照度の測定法は、特定の分光応答度を有し、特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源により校正された放射強度計を用いて測定対象光源の特定波長範囲における放射照度を測定する方法であって、前記放射強度計によって測定された測定値を、該放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクト
ルの当該波長範囲での積分値と、放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分して得た値と、測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルの当該波長範囲での積分値と、測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分して得た値とに基づき補正し、当該波長範囲における測定対象光源の放射照度を求めることを特徴とする。
【0024】
これは、図6で説明した状況の元に得られた紫外線強度計の表示値3/4を、紫外線強度計の分光応答度、紫外線強度計校正時に使用した光源のスペクトル(ここではブラックライトのスペクトル)、及び測定対象とする光源のスペクトルを用いて測定対象光源の実際の放射照度の値を算出する方法である。その手順は以下の通りである。紫外線強度計が計測値として表示値3/4を表示する工程は、先述の通り紫外線強度計の出力電流1/
2アンペアに校正係数として組み込まれた3/2を乗じるものであるので、まず、紫外線強度計の表示値3/4を校正係数3/2で除することにより、紫外線強度計の本光源計測時の出力電流である1/2アンペアを算出する。このとき、実際の本光源の放射照度は1であ
るので、本光源に対する校正値は2と設定できる。このようにすることで、出力電流1/
2アンペアに本光源のスペクトルに対応した校正係数2を乗じると、実際の本光源の放射照度である1を求めることが可能となる。
【0025】
以上のことから、a)紫外線強度計の分光応答度、b)紫外線強度計の校正時に使用した光源のスペクトル、及びc)測定対象とする光源のスペクトルが分かれば、図62)に例
示したスペクトルを持つ光源を測定した場合でも、対象光源の放射照度を計測することが可能となる。上述したように、分光放射照度とスペクトルは比例関係にあるので、上記b
)及びc)においてスペクトルを分光放射照度と読み替えてもなんら問題はない。なお、いうまでもないことであるが、a)b)c)のデータは別個に測定可能なもので、紫外線
強度計の校正及び該紫外線強度計を用いた本光源の計測とは独立に計測し、入手可能なデータである。
【0026】
紫外線強度計の校正用光源と測定対象光源のスペクトルが一致していないことに起因する不具合は、上記のように紫外線強度計の指示値が物理的に意味を持たないということだけではない。紫外線強度計は通常シリコンフォトダイオードをセンサーとして校正されているが、規定の分光応答度を持たせるために、センサーの手前にフィルターや拡散板を設置している。これらの材料は製造ロットにより性状にバラツキがあり、また同一ロットでも全く均一というわけではなく、使用する場所により光の透過特性が多少変化していることは製造工程上やむをえないことである。従って、これらの材料を使用して製造された紫外線強度計は、上記の材料特性のバラツキの結果として、その分光応答度に個体差を持つことになる。
【0027】
本発明になる方法を用いることにより、測定対象光源の放射照度を測定することが可能となると共に、紫外線強度計の分光応答度の個体差による測定値のバラツキをも同時に補正することが可能となり、曝光量の測定精度、即ち、光安定性試験の信頼性を大幅に向上することが可能となる。
【0028】
また、本発明になる放射照度測定装置は、特定の分光応答度を有し、特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源により校正された放射強度計と、該放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトル、放射強度計の分光応答度、測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルのデータを入力する手段と、上記分光放射照度あるいはスペクトル、及び分光応答度のデータを保存する手段と、上記分光放射照度あるいはスペクトルのデータ、及び上記分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分する演算部と、これらの積分値を用いることにより
、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値に対する補正係数を算出し、保存する手段と、上記補正係数に基づき、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値を補正することにより、測定対象光源の当該波長範囲における放射照度を求める手段を有することを特徴とする。
【0029】
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。
【0030】
なお、本発明になる方法は以下の実施例で説明する波長範囲に限定されるものではなく、発明の原理から容易に推察できるように、波長積分型の光計測装置であればその計測波長範囲にかかわりなく適用できるものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る放射照度測定方法及び放射照度測定装置を適用することにより、さまざまなスペクトルを有する多様な光源の対象波長域における放射照度を測定することが可能となる。
【0032】
本発明に係る放射照度測定方法及び放射照度測定装置を適用することにより、光安定性試験装置において紫外線照射による曝光量の正確な測定が可能となり、信頼性の高い光安定性試験を実施することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の実施の形態を実施例に基づき、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0034】
ブラックライトで校正した紫外線強度計を用いて、ブラックライトとは異なるスペクトルを持つキセノン光源(Xeランプと称す)の紫外線強度を測定し場合の例を示す。図41)で示した分光放射照度を有するブラックライトを用いて校正した第4図2)で示した分光
応答度を有する紫外線強度計を用いて、図71)に示すスペクトルを有するXeランプの紫外線強度を測定した。ちなみに、図71)に示したXeランプのスペクトルは、光源から分光放射照度測定面までの間にフィルター、反射鏡等を設置して、スペクトルの調整がなされた後に測定面まで到達した光のスペクトルである。
【0035】
前項で説明した補正係数の考え方を、数式を用いてさらに具体的に説明する。以下、紫外線強度等で対象波長領域における積分を用いるが、本実施例の対象とする紫外領域は300〜400nmの波長範囲とし、本実施例の説明で使用する積分式の積分範囲は、特に断りがない限りこの領域とする。ブラックライトの分光放射照度をE(λ)、紫外線強度計の分光
応答度をR(λ)とすると、図41)の対象領域での積分値で表される放射照度は

、同じく3)で表わされる紫外線強度計の分光応答度と分光放射照度の積の積分値は

で表わされる。ここで、
λは300、λは400nmである。Xeランプのスペクトルの相対強度をS(λ)とすると、図
71)のXeランプのスペクトルの積分値は

、図72)で示されるスペクトルと紫外線強度計の分光応答度の積の積分は

で表わされる。
【0036】
前項の説明から分かるとおり、該紫外線強度計でXeランプを測定した場合の補正係数は

で表わされる。上記(3)式の各積分値をデータの数値積分で求めると、本実施例における(3)式で表わされる補正係数は1.43と求まる。即ち、該紫外線強度計でXeランプを計測した場合の表示値に1.43を乗じることで、Xeランプの放射照度の値が求まる。逆に言うと、この紫外線強度計でこのXe ランプの光を測定し得られた指示値は、このXeランプの
実際の当該紫外域での放射照度の1/1.43でしかないということである。
【0037】
なお、(3)式で分光応答度の代わりに相対分光応答度を用いても、これら2者の間
には比例関係が成立するので、結果は同じである。
【0038】
次に、Xeランプの電源を調整することでランプの発光強度を調節しながら分光放射照度計で測定し、同一条件において紫外線強度計で該ランプの光を測定した。得られた分光放射照度計のデータを数値積分することで、300〜400nmでの積分値を算出し、この波長範囲における実際の放射照度を求めた。これらの結果をプロットしたものを図8に示す。当然のことながら、直線関係が成り立ち、最小二乗法を用いて近似直線を求めるとその傾きが1.433と求まる。この傾きが、上述した補正係数に相当するもので、前述の数値とはよ
く一致していることが分かる。
【0039】
本実施例から、本発明で開示した方法を用いることにより、紫外線強度計の校正に用いた光源のものと異なるスペクトルを持つ光源の光を該紫外線強度計で計測しても、その計測値から放射照度の値を求めることが可能となった。
【実施例2】
【0040】
分光応答度の異なる紫外線強度計を3種類用意した。図9にその分光応答度を示す。
図10は校正に使用したブラックライトのスペクトル(4))と、各々の紫外線強度計の分光応答度とブラックライトのスペクトル相対強度の積を示す。図中の1)〜3)の番号は、図9の各々の紫外線強度計の番号と対応している。これらの紫外線強度計を用いてXeランプのスペクトルを測定した場合の紫外線強度計の分光応答度とXeランプのスペクトル相対強度の積を図11に示す。図11中の4)は測定に使用したXeランプのスペクトルを示し、1)〜3)の番号は図10と同様に各々の紫外線強度計の番号と対応している。図10と図11を基に(3)式の各々の項を算出することにより、各々の紫外線強度計の補正係数を求めることが出来、その値を第1表に示す。補正係数が最大となった紫外線強度計1)は最小の2)に比べ約26%大きい。即ち、同一の条件で同一のXeランプの光を測定しても、紫外線
強度計1)の指示値は2)に比べて26%小さい。
【0041】
実施例1と同様に、別途校正された分光放射照度計により測定したXeランプの分光放
射照度を用いて、300〜400nmの積分をすることにより該Xeランプの該波長範囲における放射照度の真値を求めた。本実施例で使用した3種類の紫外線強度計を用い、同一の光学的
条件で測定を行い、その結果に第1表の補正係数を乗じて求めた数値は、当然のことであ
るが、上記の分光放射照度の積分値と非常に良い一致を示した。
【0042】
本実施例より、本発明による方法を使用して紫外線強度計での計測値を補正することにより、紫外線強度計のバラツキによる個体差をも補正できることが明らかである。
【実施例3】
【0043】
図12は、本発明の実施形態に係る放射照度測定装置の構成を示す概略構成図である。本実施形態の説明では、上記の実施例と同様に紫外線強度計を具体例として用いるが、前記したように、これにより本発明の範囲が紫外線強度計に限定されるものではない。
【0044】
通常の紫外線強度計は紫外線受光素子22、増幅器23、A/D変換器24及び表示部
26で構成される。本発明の実施形態の放射照度測定装置は、特定の分光応答度を有する紫外線強度計の校正に使用した光源のスペクトル、該紫外線強度計の分光応答度、及び測定対象光源のスペクトルを入力する入力部10〜12、これらのデータを保存する保存部13〜15、これらのデータ及び分光応答度とスペクトルの積の波長積分及び積分値の乗除計算を行い測定対象光源に対する補正係数を算出する演算部16〜20、この補正係数を保存する保存部21、保存部13に保存されているスペクトルを有する校正用光源で校正された紫外線強度計22〜24、該紫外線強度計の出力値と補正係数の積を計算して結果を出力する演算部25、およびこの結果を表示する表示部26より構成される。
【0045】
異なるスペクトルを有する複数の光源の測定に対応するために、入力部〜補正係数保存部10〜21を複数個備え、測定対象とする光源に合わせて切り替えるようにすることも出来る。
【0046】
入力部10〜12は外部メモリースロットとし、あらかじめデータを入力した差し込み式メモリーを差し込むことで、保存部13〜15を兼ねることができる。あるいは、スペクトル及び分光応答度のデータを規定値として入力しておくことで、入力部10〜12を省くことも可能である。更に、16〜19で実行される積分の結果を保存したメモリーを10〜19に置き換えることも可能である。
【0047】
入力部12、保存部15、演算部19を複数個備え、複数の光源に対応するデータを各々に用い、補正係数の演算に使用するデータを測定対象とする光源にあわせて選定することにより、複数の光源に対応することも可能である。
【0048】
放射強度計の感度は、使用状況に応じて経時的に変化することが知られている。このため、ある一定期間毎に校正を行い、その精度を保持することが一般的に行われる。校正の度毎に、校正用光源のスペクトル及び放射強度計の分光応答度を入力しなおすことで、本発明になる放射照度測定装置の精度を保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】太陽光の分光放射照度の表を示す図である。
【図2】照度計により太陽光を測定した場合に照度計が感知する光に関する分光放射照度と相対分光応答度との比を示す図である。
【図3】紫外線強度計の相対分光応答度の一例を示す図である。
【図4】紫外線強度計によりブラックライトを測定した場合に紫外線強度計が感知する光に関する分光放射照度と相対分光応答度との比を示す図である。
【図5】紫外線強度計の校正を説明するための図で、相対分光強度・応答度と波長との関係を示す図である。
【図6】紫外線強度計で異なるスペクトルを有する光源を測定した場合を説明するための図で、相対分光強度・応答度と波長との関係を示す図である。
【図7】紫外線強度計でXeランプを測定した場合の状態を説明するための図で、相対分光強度と波長との関係を示す図である。
【図8】Xeランプ光源の分光放射照度積分値(放射照度)と紫外線強度計での表示値関係を示す図である。
【図9】紫外線強度計の相対分光応答度を示す図である。
【図10】実施例において、紫外線強度計によりブラックライトを測定した場合に紫外線強度計が感知する光に関し相対分光強度と波長との関係を示す図である。
【図11】実施例において、紫外線強度計でXeランプを測定した場合の状態を説明するための図で、相対分光強度・応答度と波長との関係を示す図である。
【図12】本発明になる紫外線強度計放射照度測定装置の構成を示す概略構成図である。
【図13】各紫外線強度計のXeランプに対する補正係数を示す表である。
【符号の説明】
【0050】
10 校正用光源スペクトル入力部
11 紫外線強度計分光応答度入力部
12 測定対象光源スペクトル入力部
13 校正用光源スペクトル保存部
14 紫外線強度計分光応答度保存部
15 測定対象光源スペクトル保存部
16 積分演算部
17 積の積分演算部
18 積の積分演算部
19 積分演算部
20 乗除演算部
21 乗除演算結果保存部
22 紫外線受光素子
23 増幅器
24 A/D変換器
25 積の演算部
26 表示部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の分光応答度を有し、特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源により校正された放射強度計を用いて測定対象光源の特定波長範囲における放射照度を測定する方法であって、
前記放射強度計によって測定された測定値を、該放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトルの当該波長範囲での積分値と、
放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分して得た値と、
測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルの当該波長範囲での積分値と、
測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分して得た値とに基づき補正し、
当該波長範囲における測定対象光源の放射照度を求めることを特徴とする放射照度の測定方法。
【請求項2】
特定の分光応答度を有し、特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源により校正された放射強度計と、
該放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトル、放射強度計の分光応答度、測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルのデータを入力する手段と、上記分光放射照度あるいはスペクトル、及び分光応答度のデータを保存する手段と、
上記分光放射照度あるいはスペクトルのデータ、及び上記分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分する演算部と、
これらの積分値を用いることにより、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値に対する補正係数を算出し、保存する手段と、
上記補正係数に基づき、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値を補正することにより、測定対象光源の当該波長範囲における放射照度を求める手段を有することを特徴とする放射照度測定装置。
【請求項3】
特定の分光応答度を有し、特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源により校正された放射強度計と、
該放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトル、放射強度計の分光応答度、測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルのデータを入力する手段と、上記分光放射照度あるいはスペクトル、及び分光応答度のデータを保存する手段と、
上記分光放射照度あるいはスペクトルのデータ、及び上記分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分する演算部と、
これらの積分値を用いることにより、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値に対する補正係数を算出し、保存する手段と、
上記補正係数に基づき、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値を補正することにより、測定対象光源の当該波長範囲における放射照度を求める手段を有することを特徴とする放射照度測定装置であって、
異なるスペクトルを有する複数の測定対象光源A、B、C 他に対する分光放射照度あるい
はスペクトルのデータを保存する複数の手段A’、B’、C’ 他を有し、A’にはAの、B’にはBの、C’にはCのデータを保存するようにし、
該放射照度測定装置に設けた切り替えスイッチにより測定対象光源の種類を指定し、指定された測定対象光源に対応する分光放射照度あるいはスペクトルのデータを上記演算部にて使用することにより指定された測定対象光源に対応する放射照度を求め、
このようにして求めた放射照度、及び指定された測定対象光源の種類を表示する手段を有することを特徴とする放射照度測定装置。
【請求項4】
特定の分光応答度を有し、特定のスペクトルを持ち分光放射照度が値付けされた光源に
より校正された放射強度計と、
該放射強度計の校正に使用した光源の分光放射照度あるいはスペクトル、放射強度計の分光応答度、測定対象光源の分光放射照度あるいはスペクトルのデータを入力する手段と、上記分光放射照度あるいはスペクトル、及び分光応答度のデータを保存する手段と、
上記分光放射照度あるいはスペクトルのデータ、及び上記分光放射照度あるいはスペクトルと放射強度計の分光応答度の積を当該波長範囲で積分する演算部と、
これらの積分値を用いることにより、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値に対する補正係数を算出し、保存する手段と、
上記補正係数に基づき、該放射強度計で測定対象光源の光を測定して得られる出力値を補正することにより、測定対象光源の当該波長範囲における放射照度を求める手段を有することを特徴とする放射照度測定装置であって、
該放射照度測定装置に設けた切り替えスイッチにより上記補正の有無を指定し、補正有りの場合は放射照度を、補正なしの場合は該放射強度計の出力値を表示する手段と、補正の有無を表示する手段を有することを特徴とする放射照度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−132705(P2007−132705A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323707(P2005−323707)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000134730)ナガノサイエンス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】