説明

放射性トレーサーおよび造影剤として使用するピリジルアセチレン類

本発明は式Iの新規ピリジルアセチレン誘導体、それらの製造、放射性トレーサー/マーカーとしてのそれらの使用およびそれらを含む組成物に関する。
【化1】








【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は新規ピリジルアセチレン誘導体、それらの製造、放射性トレーサー/マーカーとしてのそれらの使用およびそれらを含む組成物に関する。
【0002】
とりわけ、本発明は遊離塩基または酸付加塩の形態の式I
【化1】

(式中、RはCH3、(CH2)nI、(CH2)nBrまたは(CH2)nF、nは1、2、3または4である)
の化合物を提供する。
【0003】
好ましくは、遊離塩基または酸付加塩の形態の式Iの化合物は、Rが11CH3、(3H)3C、(CH2)n123I、(CH2)n76Brまたは(CH2)n18F、nが1、2、3または4である。
【0004】
立体異性、例えば、二重結合のシス/トランス異性が可能な場合、化合物は純粋な立体異性体またはそれらの混合物として存在し得る。
【0005】
更なる態様において、本発明は、式Iの化合物およびそれらの塩の製造方法を提供し、該製造方法は、
a)式Ia
【化2】

(式中、Raはそれぞれ、11CH3または(3H)3Cである)
の化合物を製造するために、式II
【化3】

の化合物を、塩基の存在下、それぞれ11CH3IまたはC(3H)3Iと反応させるか、または
b)式Ib
【化4】

(式中、Rbはそれぞれ(CH2)n18F、(CH2)n123Iまたは(CH2)n76Brである)
の化合物を製造するために、式III
【化5】

(式中、nは上記で定義された通りであり、XはOTsまたはOMsである)
の化合物を、それぞれ18F-123I-または76Br-と反応させるか、式IIの化合物を式IV
X−Rb IV
(式中、XおよびRbはそれぞれ上記または下記で定義された通りである)
の化合物と反応させて、
得られる遊離塩基または酸付加塩の形態の式Iの化合物を回収する段階を含む。
【0006】
既知の方法に従って、例えば、実施例に記載のようにして、反応を実施することができる。
【0007】
反応混合物の後処理および得られた化合物の精製は既知の方法に従って実施される。
【0008】
酸付加塩は既知の方法で遊離塩基から製造することができ、逆もまた同様である。
【0009】
式II、IIIおよびIVの出発物質は既知のもの、または既知の方法に類似の方法、例えば、実施例に記載されている通りにして得られ得る。
【0010】
遊離塩基または酸付加塩の形態の式Iの化合物(以下、本発明の薬剤と称す)は、病理組織学的な標識化剤、造影剤および/またはバイオマーカー(以下、マーカー)として、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5受容体)の選択的標識の為に有用な特性を示す。
【0011】
とりわけ、本発明の薬剤はインビトロまたはインビボの中枢および末梢のmGlu5受容体の標識化の為のマーカーとして有用である(実施例5-7)。
【0012】
従って、本発明の薬剤は、例えば、mGlu5受容体に作用する薬剤の受容体占拠の程度を試験すること、mGlu5受容体の不均衡または機能障害により惹起される病気を診断する目的、および係る病気の薬剤治療の有効性をモニタリングすることに対し有用である。
【0013】
上述の通り、本発明は神経イメージングの為のマーカーとして有用な本発明の薬剤を提供する。
【0014】
更なる態様では、本発明は、本発明の薬剤を含む、mGlu5受容体を含む脳および末梢神経系組織のインビトロまたはインビボでの標識化の為の組成物を提供する。
【0015】
更に、別の態様では、本発明は、本発明の薬剤を脳組織に接触させることを含む、mGlu5受容体を含む脳および末梢神経系組織のインビトロまたはインビボでの標識化の為の方法を提供する。
【0016】
本発明の方法は、本発明の薬剤が標的組織を標識するか否かを決定することを目的とした、更なる段階を含み得る。該更なる段階は陽電子放出断層撮影(PET)または単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、または放射線の輻射の検出を可能にするいずれの装置を用いて、標的組織を観察することにより実施され得る。
【0017】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0018】
実施例1:3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[11C-メチル]-オキシム
3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[11C-メチル]-オキシムは、乾燥DMF(400μl)中の、3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンオキシム(1mg)と[11C]-MeIを反応させることにより合成する。[11C]-MeIはヘリウムのゆっくりとした流れによって導入され、添加が完了すれば、反応混合物を120℃、10分間加熱する。生成物の精製は、C-18 μ-Bondapakカラム(7.8x300mm)および流速5ml/分、CH3CN/0.1% H3PO4(70/30)からなる移動相を用いた逆相HPLCにより行う。所望の生成物の保持時間は6および7分の間である。3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[11C-メチル]-オキシムをポリソルバタム(polysorbatum)(2%)、エタノール(10%)および食塩水(0.9%)を含む溶液で製剤化する。
LogD = 2.5 (古典的な振盪フラスコ法により決定する)。
【0019】
出発物質を以下のように調製する:
a)3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオン
DMF 12ml中、2-エチニル-6-メチル-ピリジン(702mg、6mmol)、3-ブロモ-シクロヘキサ-2-エンオン(1.26g、7.2mmol)、ビス-(トリフェニルホスフィン)-パラジウム-ジクロライド(168mg、0.24mmol)、ヨウ化銅(I)(93mg、0.48mmol)、トリエチルアミン(4.8ml、34.4mmol)の溶液を55℃、1時間加熱する。その後、溶液を酢酸エチル(500ml)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(1X150ml)で洗浄する。水相を酢酸エチル(1X150ml)で抽出し、合わせた有機相をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濾過し、濃縮する。残渣(1.88g)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液ヘキサン/酢酸エチル3:1 v/v)で精製し、所望の化合物を含むフラクションを集め、減圧下で濃縮し、淡黄色油として表題化合物1.05g(収率=82%)を得る。
【0020】
b)3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンオキシム
ピリジン(20ml)中、3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオン(422mg、2mmol)および塩酸ヒドロキシルアミン(278mg、4mmol)の溶液を17時間室温で攪拌する。その後、溶媒を減圧下で蒸発させる。残渣を酢酸エチル(300ml)に溶解し、飽和NaHCO3(1X50ml)で洗浄する。水相を酢酸エチル(1X50ml)で抽出する。合わせた有機相をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濾過し、濃縮する。残渣(0.45g)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液ヘキサン/酢酸エチル2:1 v/v)で精製し、所望の化合物を含むフラクションを集め、減圧下で濃縮し、淡黄色結晶として表題化合物、m.p.166-168℃、0.192g(収率=42%)を得る。
【0021】
実施例2:3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[トリ(3H)-メチル]-オキシム
3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンオキシムと[3H]-MeI(0.5当量)とをDMF中のK2CO3の存在下で、100℃、180分間反応させ、逆相クロマトグラフィーにより精製することにより、表題化合物を調製できる。
【0022】
実施例3:3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-(2-[18F-フルオロ]-エチル)-オキシム
乾燥DMF(400μl)中、3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンオキシムのナトリウム塩(2mg)を[18F]-2-フルオロ-エチルトシレート(エチレンジトシレートおよび[18F]-KF-Kryptofix錯体から得る)と、100℃、10分間反応させる。反応混合物をtC-18 Sep-Pakカートリッジを通して精製し、所望の化合物を含むフラクションを、C18 Bondcloneカラム(300x7.8mm)および流速4ml/分、CH3CN/0.01M H3PO4(70/30)からなる移動相を用いたセミ分取逆相HPLCにより更に精製する。生成物を含むフラクション(保持時間12および13分の間)をtC-18 Sep-Pakカートリッジに通し、1mlのエタノールで溶出する。このエタノール溶液を0.15Mリン酸バッファーで緩衝化し、滅菌濾過後、等張の注射可能な溶液を得る。
【0023】
実施例4:3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[18F-フルオロ]-メチル)-オキシム
乾燥DMF(400μl)中、3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンオキシムのナトリウム塩(2mg)を[18F]CH2OTfと100℃、30分間反応させる。反応混合物をtC-18 Sep-Pakカートリッジを通して最初に精製した後、3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[18F-フルオロ]-メチル-オキシムを、C18 Bondcloneカラム(300x7.8mm)および流速4ml/分、CH3CN/0.01M H3PO4(70/30)からなる移動相を用いたセミ分取逆相HPLCにより最終的に精製した。生成物を3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-(2-[18F-フルオロ]-エチル)-オキシム(実施例3)と同様に製剤化する。
【0024】
実施例5:Ki/IC50の測定(結合アッセイ)
インビトロで、mGlu5受容体に対する親和性を、Gaspariniら、Biorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 407-409に記載の放射性リガンド置換法により決定する。ヒトmGlu5受容体を安定発現するL-tk細胞の膜(Daggettら、Neuropharm. 1995, 34:871-886)からの[3H]-2-メチル-6-((3-メトキシフェニル)エチニル)-ピリジンの置換に対し、3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-メチル-オキシムはIC50値8nM(ヒル係数1.08;95%信頼区間:6.0-10.0nM)を示す。Cheng-Prusoff方程式を用いて、Ki値4nMを算出する(試験に用いた放射性リガンドの濃度:2nM)。
【0025】
実施例6:臓器および脳組織分布
体重250-300gの雄性、成体Sprague-Dawleyラットの2群を生体分布研究に用いる。第1群(n=3)をコントロール群とし、第2群(n=3)をブロッケイド群とする。それぞれの動物に、外側尾静脈から、250-300pmol(0.6-40MBq)の3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[11C-メチル]-オキシムを与える。ブロッケイド群は、2-メチル-6-((3-メトキシフェニル)エチニル)-ピリジン(1mg/kg)を同時注入し、コントロール群(n=3)は対応する用量の0.9%NaClを与える。動物は注入後30分で屠殺する。臓器または海馬、線条体、大脳皮質および小脳等の脳の部位を摘出し、ガンマカウンターで計測する。組織分布は、ウェット組織のグラム当たりの注入量のパーセントとして表す(%ID/g組織)。
【0026】
実施例7:3-(6-メチル-ピリジン-2-イルエチニル)-シクロヘキサ-2-エンオンO-[11C-メチル]-オキシムの脳内分布研究の結果
下記の表は組織グラム当たりの標準化した注入量のパーセントを表す。K1、K2、K3はコントロール動物の個々の値である。B1、B2、B3は2-メチル-6-((3-メトキシフェニル)エチニル)-ピリジンを同時注入した動物の個々の値である。
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基または酸付加塩の形態の、式I
【化1】

(式中、RはCH3、(CH2)nI、(CH2)nBrまたは(CH2)nF、nは1、2、3または4である)
の化合物。
【請求項2】
Rが、11CH3、(3H)3C、(CH2)n123I、(CH2)n76Brまたは(CH2)n18F、nは1、2、3または4である、遊離塩基または酸付加塩の形態の、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に定義された式Iの化合物、またはその塩の製造方法であって、
該製造方法が、
a)式Ia
【化2】

(式中、Raはそれぞれ11CH3または(3H)3Cである)
の化合物を製造するために、式II
【化3】

の化合物をそれぞれ11CH3IまたはC(3H)3Iと、塩基の存在下で反応させるか、または、
b)式Ib
【化4】

(式中、Rbはそれぞれ(CH2)n18F、(CH2)n123Iまたは(CH2)n76Brである)
の化合物を製造するために、式III
【化5】

(式中、nは請求項1で定義された通りであり、XはOTsまたはOMsである)
の化合物を、それぞれ18F-123I-または76Br-と反応させるか、
式IIの化合物を式IV
X−Rb IV
(式中、XおよびRbはそれぞれ上記で定義された通りである)
の化合物と反応させて、
得られた式Iの化合物を、遊離塩基形態または酸付加塩の形態で回収する段階を含む製造方法。
【請求項4】
神経イメージングのマーカーとして使用する、遊離塩基または酸付加塩の形態の、請求項1で定義された式Iの化合物。
【請求項5】
インビトロおよびインビボでmGlu5受容体を含む脳および末梢神経系組織を標識化する為の組成物であって、遊離塩基または酸付加塩の形態の、請求項1で定義された式Iの化合物を含む組成物。
【請求項6】
インビトロおよびインビボでmGlu5受容体を含む脳および末梢神経系組織を標識化する方法であって、脳組織に遊離塩基または酸付加塩の形態の請求項1で定義された式Iの化合物を接触させることを含む方法。


【公表番号】特表2007−506698(P2007−506698A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527359(P2006−527359)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010743
【国際公開番号】WO2005/030723
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】