説明

放射性医薬品製造装置用のバイアル保持具

【課題】 一般に流通している形状のバイアルを放射性医薬品の製造装置に容易に取り付けることができるように、バイアル用の保持具を提供する。
【解決手段】 バイアル用の保持具(50)は、第1外径の口部のフランジ(38A)よりも細い第2外径のくびれ部(37A)を有するバイアル(35A)を保持するバイアル用の保持具である。くびれ部に入り込むフック部(564)と、口部をフック部に押し当ててバイアルを押圧する押圧部(518)と、口部に配管が入るように押圧部に形成された貫通孔(TH)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性医薬品の製造装置に取り付けるバイアルの保持具に関する。また、この保持具を用いた放射性医薬品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学検査では、PET(陽電子放出断層撮影装置)やSPECT(単一光子放射断層撮影装置)と呼ばれる放射線検出装置により、体内から放出される放射線を検出し診断が行われる。PETやSPECTにおいては、体内から放出される放射線が一定以上の放射能を有していなければ十分な放射線検出がなされず診断が行えない。そのため、放射性医薬品は人体への放射線の影響を考慮しつつ、診断に有効な程度の放射能を有する必要がある。このことから、放射性医薬品の製造は、放射性医薬品に用いられる核種の半減期にもよるが、投与の数時間前から長くても3日前程度と、その比較的直前に行われることがほとんどである。よって、通常の医薬品と比べて、放射性医薬品は頻回に製造されることとなる。これらの事情から、放射性医薬品の製造においては、短時間で、より再現性の高い製造方法が要求されることとなり、製造装置を含めた製造条件の最適化が非常に重要となる。
【0003】
製造条件を最適化するためには、放射能量、試薬濃度、温度、反応時間等種々のパラメーターを変化させながら反応を行いその製造収率を評価しなければならない。そのため、その製造条件を確立する過程においては、数多くの実験を経る必要があり、1日に複数回の製造実験を行えることが必須である。また、製造条件を含めた製造方法確立後の放射性医薬品製造においても、上述した事情により、比較的頻回に製造することが可能である方法を用いる必要がある。例えば、PET検査においては、1日に複数回の放射性医薬品の製造を行えることが望ましいとされており(特許文献1)、現実に、医薬品メーカーにおいては、1日に複数回の製造が行われている。また、放射性医薬品の有効成分の化学量は、通常、ナノモルからピコモル程度と非常に小さい。そのため、1日に複数回の製造を行う場合、反応残存物の影響も無視しえず残留放射能の影響も受けうる。特に、実際に標識反応が行われる反応バイアルにおいては、その影響が大きくなってしまう。
【0004】
一方、放射性医薬品の製造や製造方法確立の過程においては、反応バイアルを洗浄して複数回用いる場合がある。この場合、医薬品の無菌性を担保するため、洗浄した反応バイアルの滅菌処理が更に必要になる。滅菌処理は、オートクレーブ法が最もよく用いられるが、オートクレーブ法は、蒸圧下、120℃で反応バイアルを熱するという比較的過酷な条件での滅菌方法である。そのため、その後、反応バイアルを常温に戻し、かつ、乾燥する必要がある。このように、オートクレーブを含む滅菌作業は、反応バイアルの再利用においては必要不可欠な作業ではあるものの、時間や手間のかかる煩雑な作業であり、反応バイアルの劣化など、コスト増加にもつながる。加えて、反応バイアルを完全に洗浄できるとは限らず、反応残存物の影響を完全に取り除くことができるとは限らない。上記事情を背景とし、放射性医薬品の製造装置において反応バイアルを一回の製造毎に使い捨てで用いることを含む、製造技術が開示されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−319254号公報
【特許文献2】特表2004−515330号公報
【特許文献3】米国特許第5312592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放射性医薬品の製造や製造方法確立の過程においては、前述したように種々の反応パラメーターをコントロールする必要がある。特に、反応バイアルは反応中に加熱され、反応バイアル内の圧力が上昇することが多い。そのため、反応液中からの蒸気の漏れを防ぐなど、反応バイアルの気密性を担保する必要がある。
【0007】
反応バイアルと合成装置との接続部からの圧力の漏れを防いで反応バイアル内の気密性を確保するため、反応バイアルと合成装置との接続部を、いわゆるフランジ状とした反応バイアル及び合成装置が一般に用いられている。かかる場合、反応バイアルのフランジは、圧力の漏れを防ぐため一定の表面粗さを有し保持具と接触する必要がある。そのため、特殊な形状もしくは素材による口部を有する反応バイアルとする必要があり、汎用のバイアルを反応容器として用いることを事実上不可能としている。
また、上述したフランジ状接続部を用いずに汎用のバイアルにゴム栓を用いて圧力の漏れを防ぐ場合、当該バイアルに対応したゴム栓を用いる必要がある。そのため、十分な気密性を確保するためには、巻き締めを行って当該ゴム栓を固定する必要がある等、操作が煩雑となる。さらに、放射性医薬品製造装置に用いられる配管としては、一般に耐薬性に優れるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の柔軟性が高いプラスティック素材のものが用いられている。このような配管素材は、バイアルのゴム栓に貫通させる際に座屈しやすく、配管がゴム栓を再現性高く垂直に貫通することを困難としている。そのため、試薬や不活性ガスの反応バイアルへの注入が不十分になり、最悪の場合、液送さえ不可能となるなどして、放射化学的収率の低下およびばらつきの原因となってしまう。
加えて、放射性医薬品合成装置では、反応バイアル内の圧力上昇による配管への反応液の逆流を防ぐため、反応バイアル自体が保持具とともに上下に移動できる機能を有する場合がある。かかる場合においても、保持具が上下に移動する際、ゴム栓との摩擦により座屈を生ずる可能性が避けられない。
【0008】
これらの事情から、現状で一般に用いられている合成装置では、反応バイアルとしては、特殊な形状および表面粗さを有したものを用いることとなり、反応バイアルの保持具も特殊な形状が要求される。このような装置特有の特別な形状を有する反応バイアルは値段が高いものとなってしまうため、洗浄操作を行いつつ繰り返し使用する必要が生ずる。
放射性医薬品の繰り返し製造において、反応バイアルの交換にかかる操作の煩雑さを回避しつつ製造コストの上昇を抑えるため、およびバイアル不洗浄による製造収率低下のリスクを回避するためには、安価に入手可能な汎用のバイアルを反応容器として利用可能な合成装置を用いることが望ましい。汎用のバイアルを反応容器として用いるためには、その接続部において、上述したような、克服すべき種々の課題が存在していた。このような課題を克服し得る技術は、これまでに開示されていなかった。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、一般に流通している形状のバイアルを放射性医薬品の製造装置に容易に取り付けることを可能とするとともに、放射性医薬品の自動合成を効率的に、かつ、再現性良く行えることを可能とするバイアル用の保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点のバイアル用の保持具は、第1外径の口部のフランジよりも細い第2外径のくびれ部を有するバイアルを保持するバイアル用の保持具であって、くびれ部に入り込むフック部を有する支持部と、口部をフック部に押し当ててバイアルを押圧する押圧部と、口部に配管が入るように押圧部に形成された貫通孔と、を備える。
この構成により、バイアルの固定を可能とするとともに、バイアル口部からの圧力漏れを最小限とすることができる。加えて、容易にバイアルを交換することができる。さらに、バイアルの口部およびくびれ部が所定の大きさであれば、容量が異なる反応バイアルを用いることが可能となる。
【0011】
第2の観点のバイアル保持具は、押圧部と支持部は異なる部品から構成され、押圧部は支持部に対して移動可能である。
第3の観点のバイアル保持具は、支持部と押圧部が一体の同一部品として形成される。
第4の観点のバイアル用の保持具は、押圧部及び支持部はそれぞれネジ部を有しており、押圧部が支持部に対して回転することで口部をフックに押し当てる。
第5の観点のバイアル用の保持具は、押圧部は弾性部材を有しておりこの弾性部材が口部をフック部に押し当てる。この構成により、弾性部材、例えばスプリングなどの弾性力で押圧部がフック部を押し当てる。
【0012】
第6の観点のバイアル用の保持具は、フック部はくびれ部の第2外径に応じて移動可能である。
第7の観点のバイアル用の保持具は、フック部には弾性部材が設けられておりフックがくびれ部の第2外形に対応して支える。
第8の観点のバイアル用の保持具は、フック部がくびれ部の少なくとも3箇所を支える。
第6から第8の観点のバイアル用の保持具の構成により、バイアルのくびれ部分の複数の大きさに対応することが可能となる。
【0013】
第9の観点のバイアル保持具は、その材料がPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる。これにより、酸などの耐薬品性に優れるとともに、支持部が一定の弾性を有することによりバイアルのはめ込みが剛体を用いた場合よりも容易になる。加えて、バイアルのはめ込みの際にクリック感を操作者に与える。このことにより、操作者の操作ミスを防ぐことが可能となる。
第10の観点のバイアル保持具は、押圧部が放射性医薬品合成装置への取り付け部を有し、その取り付け部が切り欠け面ないし目印を有する。これら切り欠け面ないし目印が、保持具を放射性医薬品製造装置に取り付ける際の目印となり、再現性良く保持具を放射性医薬品製造装置に取り付けることが可能となる。
【0014】
第10の観点のバイアル保持具は、1個の貫通孔に対し一本の配管又は針が入る。
第11の観点のバイアル保持具は、1個の貫通孔に対し複数本の配管又は針が入る。
第12の観点のバイアル保持具は、バイアルが一般に販売され汎用されているバイアルである。
第13の観点の放射性医薬品の製造装置は、第1から第12の観点のバイアル用の保持具は基準部を有し、基準部に基づいて保持部を固定する固定具を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバイアル用の保持具は、一般に市販されているバイアルを容易に放射性医薬品の製造装置に取り付けることができる。この場合にバイアルの開口部に固定部が押し付けられて密閉性が高くなっているため、ナノモルからピコモル程度と非常に小さい放射性医薬品の化学量にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るFDG合成装置の配管系統図である。
【図2】バイアルの種類を示した図である。
【図3】第1押圧部51と第1支持部56とからなる保持具50を示した図である。
【図4】第2押圧部52と第1支持部56とからなる第2保持具50Aを示した図である。
【図5】第3保持具50Bを示した図である。
【図6】第1押圧部51と第4支持部57とからなる保持具50Cを示した図である。
【図7】第5支持部58である保持具50Dを示した図である。
【図8】第3押圧部54と第6支持部59とからなる保持具50Eを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るバイアル保持具における最も好ましい実施形態につき、2−deoxy−2−[18F]fluoro−D−glucose(以下、FDG)の合成装置に用いた場合を例にとり、説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るFDG合成装置の配管系統図である。
図1に示されるように、本実施形態のRI化合物合成装置は、例えば、病院等のPET検査等に使用される放射性薬剤としてのFDGを合成するFDG合成装置10である。
【0019】
このFDG合成装置10は、略矩形状の箱型を成し側面に開閉可能な扉(不図示)を備える、所謂ホットセル20を具備する。このホットセル20は、例えば鉛、鉄、タングステン等の放射線を遮蔽することができる放射線遮蔽物を用いて放射線を遮蔽可能な適切な厚さとされ、放射線の漏出を防止する密閉構造とされている。
【0020】
このFDG合成装置10のホットセル20内部に各種試薬を充填する試薬槽13a〜13fと、これらの各種試薬を導入し合成反応を行う反応バイアル31と、製品を回収する製品回収バイアル33とが備えられている。反応バイアル31は本実施例にかかる保持具50で保持され、該保持具50はFDG合成装置10の固定具70でFDG合成装置10に固定される。かかる固定具70による保持具50の固定は、当業者が用いる通常の固定手段を用いることができ、Oリングを介した固定などにより、反応バイアル内からの圧力漏れを防ぐ手段を更に講じることができる。また、反応バイアル31は、反応段階に伴い上下に移動することが望ましい。このため、保持具50を含めた反応バイアル31を上下させる昇降機60が反応バイアル31の近傍に設けられている。また反応バイアル31の近傍には反応バイアル31を加温する加温器28が設けられている。
【0021】
保持具50は、押圧部(例えば、図3(A)の51)および支持部(例えば、図3(B)の56)から構成される。押圧部と支持部は、それぞれ異なる部品であることが好ましいが、一体の構造を有することにより一つの部品として構成されていてもかまわない。また、それぞれ、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などプラスティック素材を材料とすることが好ましいが、これらに限定するものではない。反応バイアルを固定するための一定の強度および適度な弾性を有し、かつ、耐薬性を有する素材であればかまわない。特に、スプリングなどの弾性体を保持具の構成に含む場合(例えば、図4(A))には、ステンレスなどの金属材料を有してもよい。
【0022】
押圧部(例えば、図3(A)の51)は、合成装置への取り付け部、胴体部および貫通孔を有し(例えば順に、図3(A)の511、515、TH)、必要な場合はスプリングなどの弾性体を具備(例えば、図4(A)、CS)する。胴体部の下部である当接面(例えば、図3(A)の518)が、ネジ回転などによる垂直方向への圧力を有しながら、バイアル口部に接触することにより、反応バイアルの固定および気密性の担保を可能とする。
バイアルにゴム栓を用いた場合、当接面がゴム栓部分と直接接触する。ゴム栓を用いない場合は、バイアルフランジと当接面との直接の接触でも良いし、Oリングを間に介しての接触(例えば、図8(C))でも良い。押圧手段としては、ネジ回転による押圧手段、スプリング等弾性体による押圧手段が挙げられるが、当接面とバイアル口部とを圧着させることができる限りにおいて、特に限定する必要は無い。
【0023】
取り付け部(例えば、図3(A)の511。”回し部”が取り付け部として機能する。)はFDG合成装置への固定に必要な一定の厚さとすれば、特に限定する必要は無い。また、FDG合成装置への保持具の固定が可能であれば、円形状、正多角形状などどのような形状ないし大きさでもかまわないが、反応バイアルのFDG合成装置への脱着を損なわないよう、例えば操作者による巻き締めが片手で可能な程度の、適度な大きさの形状とすることが好ましい。形状においてより好ましくは、円形状が挙げられるが、かかる場合には、円形の一部に直線に切られた切り欠け面を設けることにより、FDG合成装置への保持具の固定を一定方向に再現性よく行うことができる。また、正八角形などの正多角形状の場合は、その一辺に矢印などの目印をつけることにより、FDG合成装置への保持具の固定を再現性よく行うことができる。これらにより、例えば、保持具を装着した反応バイアルをFDG合成装置へ固定した際、常に貫通孔が装置に対して一定の正しい方向に配置されることとなり、製造を行う際、特に反応バイアルが昇降機により上下する際の配管のねじれを防ぐことが可能となる。
【0024】
胴体部(例えば、図3(A)の515)は、円柱状の形状を有することが好ましく、取り付け部に通じる少なくとも一つの貫通孔を有する必要がある。胴体部は、取り付け部と一体の構造を有することが好ましいが、スプリングなど弾性体を介した構造でも良い。また、いずれの場合においても、取り付け部と胴体部をあわせて、一定以上の厚さを有することが望ましい。なぜならば、この厚さが、貫通孔から配管を導入する際のガイドの役割を果たし、配管の座屈を防ぎうるからである。
貫通孔の径が配管とほぼ同等な大きさの場合、配管をゴム栓に貫通させたとしても、配管の座屈は起こりえず、かかる懸念は生じない。しかし、貫通孔の径が配管に対して大きい場合、配管はより座屈しやすい状態となる。結果として、配管をゴム栓に貫通させる際、配管を垂直に貫通させることが困難となる。このことから、取り付け部と胴体部を合わせた厚さは、配管をゴム栓に貫通させた際、座屈を生じないような厚さとする必要があり、貫通孔の径およびゴム栓使用の有無を考慮して決定すればよい。
【0025】
貫通孔(例えば、図3(A)のTH)は、1本ないし複数本の配管または針を通す役割を有する。貫通孔は、少なくとも一本必要であるが、合成される放射性医薬品の合成方法上必要である場合や、本保持具50が用いられる合成装置の構成上必要であれば、複数個有していても良い。また、貫通孔の径は、配管または配管に通じる針を通すことが可能な径とする必要があるが、配管の座屈および貫通孔からの圧力漏れを生じないよう、より小さいほうが好ましい。配管又は針の径に対し、1.0倍から5.0倍程度までの大きさであることが好ましく、1.0倍から3.0倍とすることがより好ましく、1.0倍から1.3倍とすることが特に好ましい。
バイアルにゴム栓を用いる場合、貫通孔の径は、取り付け部と胴体部を合わせた厚さにもよるが、配管を垂直に貫通させた場合に、配管が座屈しない程度の径とする必要がある。また、バイアルにゴム栓を用いない場合、配管の座屈という問題は生じないため、貫通孔の径を配管の径よりも大きくすることが可能である。かかる場合は、反応バイアル内からの圧力漏れを防ぐため、保持具と製造装置の固定具との固定を、Oリングを介して行うなどして、圧力漏れの手段とすることが必要である。
また、ゴム栓を用いた場合を含めたいずれの場合であっても、貫通孔からの漏れを防ぐための手段をさらに講じることができる。例えば、配管にネジ回転機構を有したオス部品を取り付け、貫通孔側にメス部分に当たるネジ口を設け、それらを、Oリングを介して巻き締めて取り付けるなどである。
【0026】
支持部は、フック部および円環部(例えば順に、図3(B)の564、561)からなる。
フック部は、バイアルを水平方向に固定する役割を有する。そのため、バイアルのくびれ部に入り込む構造を有している必要があり、少なくとも3点、より好ましくはアルファベットのC字型の形状により、バイアルくびれ部との接地点(ないしは面)を有する。フック部は、後述する円環部と一体の構造を有していても良いし、異なる部品で構成されても良い。加えて、フック部は円環部に対して可動可能でも良い。
【0027】
フック部(例えば、図3(B)の564)は、バイアルのくびれ部を入り込ませるための窓部ないしガイド部、およびバイアルを固定するためのカラー部(例えば順に、図3(B)のWD、565、566)を有することが好ましい。
窓部ないしガイド部の幅は、バイアルのくびれ部が入り込むための十分な幅であれば良く、特に限定する必要はないが、より狭いほうが好ましく、カラー部の直径と同じかそれよりも狭くする必要がある。より好ましくは、バイアルのくびれ部とほぼ同等の幅である。
カラー部の形状は、バイアルの固定が可能であれば、特に限定する必要はない。バイアルのくびれ部と同じ形状、すなわち円形状であることが好ましく、バイアルのくびれ部とほぼ同等の径を有することが好ましい。特に、フック部を含む支持部にプラスティック素材を用いている場合、カラー部は適度な弾性を有することとなる。それにより、ガイド部からカラー部へのバイアルのはめ込みの際に、クリック感を感じることが可能となり、操作者の操作ミスを防ぐことが可能となる。
より好ましくは、ガイド部とカラー部の境に、凸部を設ける構成(例えば、図3(B)の567)が挙げられる。凸部は、支持部の弾性にもよるが、0.01から0.3mmの幅が好ましく、より好ましくは0.15mmである。これにより、操作者がバイアルをはめ込む際に、より適度な力を要することとなり、バイアルが凸部を超える際にもクリック感を感じることができ、操作ミスをより防止することが出来る。
【0028】
円環部(例えば、図3(B)の561)は、支持部と押圧部を組み合わせて固定するための機能を有する。そのため、押圧部の胴体部に対応した構造を有している必要があり、胴体部が、円環部にはまり込む構造を有するか、支持部と一体の構造を有していることが必要である。好ましくは、胴体部が円環部にはまり込む構造をとることである。はまり込むための手段としては、胴体部および円環部にネジ構造を有することによる回転式が好ましいが、これに限定するものではない。
【0029】
FDGの合成においては、その保護基を脱保護する際、酸による加水分解が行われる。その反応温度は130℃であり、約15分とされている(”[18F]フルオロデオキシグルコース合成法”、[online]、東北大学、[平成20年12月16日検索]、インターネット(URL:http://kakuyaku.cyric.tohoku.ac.jp/public/petdrug3/030FDG.pdf))。しかしながら、その製造条件の一般的な見解はあったとしても、装置ごとの加温性能や反応溶液の攪拌具合などにより、こまかな条件は異なり、製造収率最適化のための検討を行うことが必要である。本実施形態においては、反応バイアルを反応バイアル押圧部およびフック部により垂直方向に圧力を有しながらバイアルを固定することにより、130℃の加熱下であっても反応バイアル口からの圧力漏れを最小限にすることが可能となる。また、貫通孔が配管を通し反応バイアルへ導くことにより、反応バイアルへの試薬の注入等を可能とする。そして、支持部が、水平方向にバイアルを固定することにより、合成装置の加温器28からの距離を再現性よく保つことができ、反応溶液の加温を再現性よく行うことができる。さらに、汎用のバイアルを用いることにより、容量の異なる反応バイアルを容易に用いることができ、製造条件の最適化にいっそう貢献することができる。
これらに加え、FDGは現在、1日に複数回の検査が行われ、そのため1日に2回から3回の製造が行われる施設も多い。このような日常診療における製造においても、反応バイアルを使い捨てで容易に取り替えることが可能となるとともに、再現性よく反応バイアルを装置に設置することが可能であるため、FDGの製造収率のばらつきを低下させることに貢献することができる。
【0030】
<反応バイアル31>
図2は、バイアルの種類を示した図である。
図2(A)に示される一般に市販されているバイアル35Aは、反応バイアル31に使用されるものである。バイアル35Aは透明ガラスでできており、その直径DD1が12mmで長さLL1が32mmの大きさで口径は6mmである。このバイアル35Aの容量は1.5mLから2.0mLである。バイアル35Aの口部は細いくびれ部37Aと幅広円形フランジ38Aとが形成されており、後述するキャップ41を取り付けることができるようになっている。このような幅広円形フランジ38Aを有するバイアルは、一般にクリンプトップバイアルと呼ばれている。
【0031】
図2(B)に示されるバイアル35Bは、細いくびれ部37Bと幅広円形フランジ38Aとを有するバイアルであり、直径DD2が18mmで長さLL2が45mmの大きさで口径は8mmである。図示しないが大型のバイアル35には直径Dが22mmから30mm程度のものがあり、長さLが38mmから75mmのものなどがある。
【0032】
図2(C)に示される一般に市販されているバイアル35Cは、反応バイアル31に使用されるものである。図2(A)に示されたバイアル35Aと同様に、直径DD1が12mmで長さLL1が32mmの大きさで口径は6mmである。バイアル35Cの口部は細いくびれ部37Cと二重円形フランジ38Cが形成されており、後述するキャップ41を取り付けることができるようになっている。このような二重円形フランジ38Cを有するバイアルは、一般にスナップトップバイアルと呼ばれている。また、図示しないが、バイアル35Bと同様に直径DDが18mmから30mm程度のものがあり、長さLLが38mmから75mmのものなどがある。
【0033】
図2(D)の左側は、(A)で説明されたバイアル35Aにキャップ41が取り付けられた図である。また、左側は、キャップ41が取り付けられる前の状態を示した図である。
バイアル35Aはキャップ41が取り付けられた状態で搬送されたり取り扱われたりすることが多い。
【0034】
クリンプトップバイアルであるバイアル35Aの口部の密封は、バイアル35Aの口部をゴム栓44で閉鎖し、さらにゴム栓44及び幅広円形フランジ38A上にアルミキャップ42を被せて細いくびれ部37Aで締めることにより行われている。アルミキャップ42の代わりに弾性変形しやすい樹脂が使われることがあるが、樹脂キャップで細いくびれ部37Aで締めつける点は同じである。図示しないがスナップトップバイアルであるバイアル35Cの口部の密封も同様である。
【0035】
本実施例では、図2(A)ないし(C)で示されたような各種サイズのクリンプトップバイアル又はスナップトップバイアルを、FDG合成装置10に使用される反応バイアル31として使用することができる。また、キャップ41付のクリンプトップバイアル又はスナップトップバイアルもFDG合成装置10に使用される反応バイアル31として使用することができる。
【0036】
<保持具50>
<<実施例1>>
図3は第1押圧部51と第1支持部56とからなる保持具50を示した図である。図3(A)は第1押圧部51の上面図及び側面図であり、(B)は第1支持部56の上面図及び側面図である。(C)は保持具50でバイアル35Aを保持している状態を示した上面図及び側面図である。
【0037】
図3(A)に示された保持具50の第1押圧部51は、耐薬品性に優れたPPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第1押圧部51は円柱形の胴体部515を有し、胴体部515の上端には直径の大きな回し部511が形成され、胴体部515の下端には当接面518が形成されている。当接面518にはOリングORが配置されている。また胴体部515の一部にはネジ部517が形成されている。
【0038】
回し部511は操作者の手で第1押圧部51を回転させやすいような直径であるとともに、FDG合成装置10の固定具70(図1参照)に取り付ける、取り付け部としての役目も有している。また、第1押圧部51は回し部511の表面から当接面518へ貫通する貫通孔THが設けられている。図3では第1押圧部51は4つの貫通孔THを有しているが1つ以上の貫通孔THが有していれば数は特に限定されない。
【0039】
この貫通孔THには、図1で示された共通配管L4、共通配管L5又は製品回収配管L2などの針ないし配管(不図示)が、1本ないし複数本、配置される。通常、針は配管の先を鋭角に切断することにより形成される。貫通孔THの直径は、1本の配管が配置される場合はこれら配管又は針の直径とほぼ同じ大きさで形成される。反応バイアル31(35A)から圧力が漏れないようにするためである。複数本の配管が配置される場合は、その本数に応じた貫通孔THの数とする必要がある。なお、配管および針には、第1押圧部51と同様に、PPS、PEEK又はPTFEが用いられている。これらのプラスティック樹脂は耐薬品性に優れ、また金属のように錆が発生しないため不純物の混入が無くなるからである。
【0040】
胴体部515の下端の当接面518は、幅広円形フランジ38Aの上面に当接する。バイアルにゴム栓を用いる場合、当該当接面518の表面粗さは特に限定する必要はなく、当業者が用いる通常の表面粗さとすればよい。バイアルにゴム栓を用いない場合は、反応バイアル31から圧力が漏れないように、幅広円形フランジ38Aの上面の表面粗さと同様な表面粗さであることが望ましい。かかる場合、OリングORを介して当接面518と幅広円形フランジ38Aが接することがより望ましい。
【0041】
図3(B)に示された保持具50の第1支持部56は、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第1支持部56は円環部561を有し、円環部561の下側にはフック部564が形成されている。また円環部561の内側にはネジ部562が形成されている。この円環部561のネジ部562は、第1押圧部51のネジ部517に対応している。
【0042】
円環部561の一部にはバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aが入り込むように、窓部WDが形成されている。またバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込むように、フック部564にもガイド部565が形成されている。ガイド部565の終点には円形状のカラー部566が形成されている。円形状のカラー部566の中心軸はほぼ第1支持部56の中心軸と一致している。カラー部566にはバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込み、カラー部566がバイアル35Aを保持する。
【0043】
ガイド部565の幅WW1はバイアル35Aのくびれ部37Aの外径よりも狭く、円形状のカラー部566の直径φD1がくびれ部37Aの外径とほぼ同じに形成されている。このため、操作者がバイアル35Aを窓部WDから入れ、バイアル35Aが第1支持部56の中心軸に来るとクリック感を感じさせることができる。このため、操作者がバイアル35Aをガイド部565の途中までしか入れないような操作ミスを防ぐことができる。
また、ガイド部565の幅WW1はバイアル35Aのくびれ部37Aの外径とほぼ同じか、それより広くても良い。その場合は、ガイド部565とカラー部566の境目に、0.01から0.3mm、好ましくは0.15mmの凸部567を設ける。これにより、くびれ部37Aの外形よりも狭い構造が形成され、その凸部567にバイアルを押し込むことにより、操作者がクリック感を感じることが可能となり、操作ミスを防ぐことが可能となる。
【0044】
図3(C)に示されるように、まず、操作者は第1支持部56の窓部WDにバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aを入れる。バイアル35Aが押し込まれることによってカラー部566にバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込む。次に操作者は第1支持部56に第1押圧部51を取り付け、回し部511を回す。すると、第1押圧部51のネジ部517が円環部561のネジ部562に沿って回転し、胴体部515の当接面518がバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aの上面(口部)に当接する。さらに操作者が回し部511を回すと、当接面518はバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aをフック部564に押し当てる。これにより適度な押圧でバイアル35Aの口部が当接面518に押えられ、バイアル35A内で圧力が上昇しても幅広円形フランジ38Aの上面と当接面518との隙間の圧力漏れを最小限とすることができる。
【0045】
<<実施例2>>
図4は第2押圧部52と第1支持部56とからなる第2保持具50Aを示した図である。図4(A)は第2押圧部52の上面図及び側面図であり、(B)は第1支持部56の上面図及び側面図である。(C)は第2保持具50Aでバイアル35Aを保持している状態を示した上面図及び側面図である。
【0046】
図4(A)に示された第2保持具50Aの第2押圧部52は、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第2押圧部52は円柱形の胴体部525を有し、胴体部525の上端には直径の大きな回し部521が形成されている。胴体部525の一部にはネジ部527が形成されている。
【0047】
また、第2押圧部52は回し部521の表面から胴体部525の下面へ貫通する貫通孔THが設けられている。貫通孔THの数は特に限定されない。この貫通孔THも、実施例1で説明した貫通孔THと同じ構造及び機能を有している。胴体部525には円環空洞526が形成されており、その円環空洞526にはコイルスプリングCSが配置されている。コイルスプリングCSの下側には押圧ブロック528が設けられている。このため、コイルスプリングCSは押圧ブロック528を上下に移動させることができる。押圧ブロック528にも貫通する貫通孔THが設けられている。胴体部525の貫通孔THと押圧ブロック528の貫通孔THとは同じ位置に形成されている。押圧ブロック528は幅広円形フランジ38Aの上面に当接する。反応バイアル31から圧力が漏れ出ないように、OリングORが押圧ブロック528の下面に設けられている。
【0048】
図4(B)に示された第2保持具50Aの第1支持部56は、実施例1で説明したものと同じであるので説明を割愛する。
【0049】
図4(C)に示されるように、まず第2保持具50Aは、第1支持部56に第2押圧部52が取り付けられている。つまり、第2押圧部52のネジ部527が円環部561のネジ部562に沿って回転して入り込んだ状態である。この状態では押圧ブロック528がコイルスプリングCSによってフック部564の近傍の位置にある。操作者は第1支持部56の窓部WDにバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aを入れる。このときに押圧ブロック528を上に押し上げながらバイアル35Aを押し込む。バイアル35Aは押し込まれることによってカラー部566にバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込む。押圧ブロック528を介してコイルスプリングCSは、バイアル35Aの幅広円形フランジ38Aをフック部564に押し当てる。これにより適度な押圧でバイアル35Aの口部が押圧ブロック528に押えられ、バイアル35A内で圧力が上昇しても幅広円形フランジ38Aの上面と押圧ブロック528との隙間からの圧力漏れを最小限とすることができる。
【0050】
<<実施例3>>
図5は第3保持具50Bを示した図である。図5は第3保持具50Bの上面図、側面図及び下面図である。第3保持具50Bは第2保持具50Aをコンパクトにした実施例である。
【0051】
図5に示された第3保持具50Bは、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第3保持具50Bは円環形で中空構造の円環部532を有し、円環部532の上端には直径の大きな取り付け部531が形成されている。取り付け部531と円環部532とは、取り付け部531に形成されたネジ部531Sと円環部532に形成されたネジ部532Sとが噛み合ってコンパクトに一体に固定され、固定具としては一体の構成となっている。取り付け部531はFDG合成装置10の固定具70(図1参照)に取り付けられる。
【0052】
円環部532の一部にはバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aが入り込むように、窓部WDが形成されている。またバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込むように、フック部535にもガイド部534が形成されている。ガイド部534の終点には円形状のカラー部536が形成されている。ガイド部534とカラー部536との境目に、好ましくは0.15mmの凸部537を設ける。円形状のカラー部536の中心軸はほぼ第3保持具50Bの中心軸と一致している。カラー部536にはバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込み、カラー部566がバイアル35Aを保持する。
【0053】
また、第3保持具50Bは取り付け部531の表面から下面へ貫通する貫通孔THが設けられている。この貫通孔THも、実施例1で説明した貫通孔THと同じ構造及び機能を有している。円環部532には円環空洞539が形成されており、その円環空洞539にはコイルスプリングCSが配置されている。コイルスプリングCSの下側には胴体部538が設けられている。このため、コイルスプリングCSは胴体部538を上下に移動させることができる。胴体部538は幅広円形フランジ38Aの上面に当接する。反応バイアル31から圧力が漏れ出ないようにOリングORを胴体部538の下面及び側面に設けている。さらに胴体部538にも貫通する貫通孔THが設けられている。また貫通孔THにも針(不図示)と貫通孔THとの隙間から圧力が漏れ出ないようにOリングORを胴体部538の貫通孔THの周辺に設けている。取り付け部531の貫通孔THと胴体部538の貫通孔THとは同じ位置に形成されている。
【0054】
操作者は第1支持部56の窓部WDにバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aを入れる。このときに胴体部538を上に押し上げながらバイアル35Aを押し込む。バイアル35Aは押し込まれることによってカラー部536にバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込む。胴体部538を介してコイルスプリングCSは、バイアル35Aの幅広円形フランジ38Aをフック部564に押し当てる。これにより適度な押圧でバイアル35Aの口部が胴体部538に押えられる。バイアル35Aで圧力が上昇しても幅広円形フランジ38Aの上面と胴体部538のOリングORとの隙間からの圧力漏れを最小限とすることができる。
【0055】
<<実施例4>>
図6は第1押圧部51と第4支持部57とからなる保持具50Cを示した図である。図6(A)は第1押圧部51の上面図及び側面図であり、(B)は第4支持部57の上面図及び側面図である。(C)は保持具50Cでバイアル35A又は大型のバイアル35Bを保持している状態を示した上面図及び側面図である。
【0056】
図6(A)に示された保持具50Cの第1押圧部51は、実施例1で説明したものと同じであるので説明を割愛する。
【0057】
図6(B)に示された保持具50Cの第4支持部57は、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第4支持部57は円環部571を有し、円環部571の下側にはフック部574が形成されている。また円環部571の内側にはネジ部572が形成されている。この円環部571のネジ部572は、第1押圧部51のネジ部517に対応している。
【0058】
円環部571の一部にはバイアル35Aの幅広円形フランジ38A又は大型のバイアル35Bの幅広円形フランジ38Bが入り込むように、窓部WDが形成されている。フック部574にもガイド部575が形成されている。ガイド部575の終点には円形状のカラー部576が形成されている。円形状のカラー部576の中心軸はほぼ第4支持部57の中心軸と一致している。ガイド部575の幅WW2はバイアル35Aのくびれ部37A又は大型のバイアル35Bのくびれ部37Bの外径よりも広い。円形状のカラー部576の直径φD2もくびれ部37A又はくびれ部37Bの外径より大きい。
【0059】
円環部571の内側のフック部574の上側に幅の薄いリーフスプリングLSが3つ配置されている。3つのリーフスプリングLSは円形状のカラー部576の中心軸にくびれ部37A又はくびれ部37Bを移動させる。
【0060】
図6(C)に示されるように、まず、操作者は第4支持部57の窓部WDにバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aを入れる。リーフスプリングLSを押すようにバイアル35Aが押し込まれることによって3つのリーフスプリングLSにバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込む。次に操作者は第4支持部57に第4押圧部51を取り付け、回し部511を回す。すると、第4押圧部51のネジ部517が円環部571のネジ部572に沿って回転し、胴体部515の当接面518がバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aの上面(口部)に当接する。さらに操作者が回し部511を回すと、当接面518はリーフスプリングLSを介してバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aをフック部574に押し当てる。これにより適度な押圧でバイアル35Aの口部が当接面518及びOリングORに押えられる。なお、大型のバイアル35Bであっても同様な操作によってバイアル35Bの幅広円形フランジ38Bをフック部574に押し当てることができる。また、図示しないがキャップ41(図2参照)を取り付けたバイアル35Aであってもキャップ41を介してバイアル35Aの幅広円形フランジ38Bをフック部574に押し当てることができる。
【0061】
<<実施例5>>
図7は第5支持部58である保持具50Dを示した図である。図7(A)は第5支持部58の側面図である。(B)は(A)のB−B断面図である。図7に示された保持具50Dも、実施例4の保持具50Cと同様に、バイアル35A又は大型のバイアル35Bに対応できる。保持具50Dには、実施例1で説明した第1押圧部51が使用される。第1押圧部51は同じであるので図及び説明を割愛する。
【0062】
図7(A)に示された第5支持部58は、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第5支持部58は円環部581を有し、円環部581の下側にはフック部584が形成されている。また円環部581の内側にはネジ部582が形成されている。
【0063】
円環部581の内側のフック部584の上側にスライダフック部586が3つ配置されている。スライダフック部586の一端と円環部581の内側との間にコイルスプリングCSが配置される。フック部584に突起584Aが形成され、スライダフック部586に溝部586Aが形成される。スライダフック部586に移動範囲を制限するため、突起584Aと溝部586Aとが組み合わさっている。
【0064】
また、図7(B)に示されるように、フック部584に鋭角溝584Bが形成され、スライダフック部586に鋭角突起586Bが形成され、それらが噛み合って移動できるようになっている。このため、スライダフック部586は第5支持部58の中心軸方向に移動することができる。操作者が第5支持部58にバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aをスライダフック部586を押すように入れると、3つのスライダフック部586にバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込む。このようにしてスライダフック部586にバイアル35Aが保持される。なお、大型のバイアル35Bであっても同様な操作によってバイアル35Bの幅広円形フランジ38Bをスライダフック部586に押し当てることができる。
【0065】
<<実施例6>>
これまで説明した実施例1〜実施例5では貫通孔THの直径は配管又は針の直径とほぼ同じ大きさで形成され、複数本の配管又は針が配置される場合は、その本数に応じた貫通孔THの数であった。実施例6では、大きな径の貫通孔THに複数本の配管又は針が入る例である。
【0066】
図8は第3押圧部54と第6支持部59とからなる保持具50Eを示した図である。図8(A)は第3押圧部54の上面図及び側面図であり、(B)は第6支持部59の上面図及び側面図である。(C)は保持具50Eでバイアル35Aを保持している状態を示した上面図及び側面図である。
【0067】
図8(A)に示された保持具50Eの第3押圧部54も、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第3押圧部54は円柱形の胴体部545を有し、胴体部545の上端には直径の大きな回し部541が形成され、胴体部545の下端には当接面548が形成されている。また胴体部545の一部にはネジ部547が形成されている。
【0068】
回し部541は操作者の手で第3押圧部54を回転させやすいような直径であるとともに、FDG合成装置10の固定具70(図1参照)に取り付ける役目も有している。また、第3押圧部54は回し部541の表面から当接面548へ貫通する径の大きな貫通孔THが1つ設けられている。この径の大きな1つの貫通孔THには複数の針(不図示)が挿入できるようになっている。かかる場合、配管は比較的自由度の高い状態となっているため、ゴム栓付バイアルを用いると配管の座屈やねじれなどの問題が生じてしまう。このことから、ゴム栓を用いないバイアルを使用する必要がある。なお、不図示の固定具70(図1参照)には径の大きな貫通孔THからの圧力が漏れないようにOリングORが設けられている。
【0069】
胴体部545の下端の当接面548は、バイアル35Aの幅広円形フランジ38Aの上面及び側面に当接する。上述のようにゴム栓を用いないバイアルを使用する必要があるため、反応バイアル31から圧力が漏れないように、OリングORを介して当接面548が幅広円形フランジ38Aの上面及び側面に接する。
【0070】
図8(B)に示された保持具50Eの第6支持部59は、PPS、PEEK又はPTFEの材料からなる。第6支持部59は円環部591を有し、円環部591の下側にはフック部594が形成されている。また円環部591の内側には長いネジ部592が形成されている。この長いネジ部592は、第3押圧部54のネジ部547に対応している。
【0071】
円環部591の一部にはバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aが入り込むように、窓部WDが形成されている。またバイアル35Aのくびれ部37Aが入り込むように、フック部594にもガイド部595が形成されている。ガイド部595の終点には円形状のカラー部596が形成されている。ガイド部595とカラー部596との境目に、好ましくは0.15mmの凸部597を設ける。円形状のカラー部596の中心軸はほぼ第6支持部59の中心軸と一致している。
【0072】
ガイド部595の幅WW1はバイアル35Aのくびれ部37Aの外径よりも狭く、円形状のカラー部596の直径φD1がくびれ部37Aの外径とほぼ同じに形成されている。
【0073】
図8(C)に示されるように、第6支持部59に第3押圧部54を取り付け、回し部541を回すと、第3押圧部54のネジ部547が円環部591のネジ部592に沿って回転し、胴体部545の当接面548がバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aの上面(口部)及び側面に当接する。さらに操作者が回し部541を回すと、当接面548はバイアル35Aの幅広円形フランジ38Aをフック部594に押し当てる。これにより適度な押圧でバイアル35Aの口部が当接面548に押えられ、バイアル35A内で圧力が上昇しても幅広円形フランジ38Aの上面と当接面548との隙間から圧力が漏れ出ることが無い。
【符号の説明】
【0074】
10 … FDG合成装置
13a〜13f … 試薬槽
17 … 充填口
20 … ホットセル
27 … 精製カラム
28 … 加温器
31 … 反応バイアル
33 … 製品回収バイアル
35A,35B,35C … バイアル
37A,37B,37C … くびれ部
38A,38B,38C … フランジ
41 … キャップ
42 … アルミキャップ
44 … ゴム栓
50,50A〜50E … 保持具
51 … 第1押圧部(511 … 回し部、515 … 胴体部、517 … ネジ部、518 … 当接面)
52 … 第2押圧部(521 … 回し部、525 … 胴体部、526 … 円環空洞、527 … ネジ部、528 … 押圧ブロック)
531 … 取り付け部
532 … 円環部
534 … ガイド部
535 … フック部
536 … カラー部
537 … 凸部
538 … 胴体部
54 … 第1押圧部(541 … 回し部、545 … 胴体部、547 … ネジ部、548 … 当接面)
56 … 第1支持部(561 … 円環部、562 … ネジ部、564 … フック部、565 … ガイド部、566 … カラー部、567 … 凸部)
57 … 第4支持部(571 … 円環部、572 … ネジ部、574 … フック部、575 … ガイド部、576… カラー部)
58 … 第5支持部(581 … 円環部、582 … ネジ部、584 … フック部(584A 突起、584B 鋭角溝)、586 … スライダフック部(586A 溝部、586B 鋭角突起)
59 … 第6支持部(591 … 円環部、592 … ネジ部、594 … フック部、595 … ガイド部、596 … カラー部、597 … 凸部)
60 … 昇降機
70 … 固定具
CS … コイルスプリング
DD1,DD2 … バイアルの直径
φD1,φD2 … カラー部の直径
L1 … 供給配管
L2 … 製品回収配管
L3 … 排気配管
L4 … 共通配管
L5 … 共通配管
L6〜L11 … 試薬供給配管(経路)
LL1,LL2 … バイアルの長さ
LS … リーフスプリング
OR … Oリング
TH … 貫通孔
V1 … 三方弁、V2 … 電磁弁、V3 … 電磁弁
V4 … ロータリバルブ、V5 … ロータリバルブ
WD … 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外径の口部のフランジよりも細い第2外径のくびれ部を有するバイアルを保持する放射性医薬品製造装置用のバイアル保持具であって、
前記くびれ部に入り込むフック部を有する支持部と、
前記口部を前記フック部に押し当てて前記バイアルを押圧する押圧部と、
前記口部に配管が入るように前記押圧部に形成された貫通孔と、
を備えることを特徴とする放射性医薬品製造装置用のバイアル保持具。
【請求項2】
前記支持部と前記押圧部が、異なる部品から構成される請求項1に記載のバイアル保持具。
【請求項3】
前記支持部と前記押圧部が、一体の同一部品として形成される請求項1に記載のバイアル保持具。
【請求項4】
前記支持部及び前記押圧部はそれぞれネジ部を有しており、前記押圧部が前記支持部に対して回転することで前記口部を前記フックに押し当てることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイアル保持具。
【請求項5】
前記押圧部は弾性部材を有しており、この弾性部材の弾性力により、前記口部を前記フック部に押し当てることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバイアル保持具。
【請求項6】
前記フック部は前記くびれ部の前記第2外径に応じて移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のバイアル保持具。
【請求項7】
前記フック部に弾性部材を用いており、前記フックが前記くびれ部の第2外形に対応して支えることを特徴とする請求項6に記載のバイアル保持具。
【請求項8】
前記フック部が前記くびれ部の少なくとも3箇所を支えることを特徴とする請求項7に記載のバイアル保持具。
【請求項9】
前記保持具の材質が、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のいずれか又は複数から選択される請求項1から8に記載のバイアル保持具。
【請求項10】
前記押圧部における放射性医薬品合成装置への取り付け部が、切り欠け面ないし目印を有する請求項1から9のバイアル保持具。
【請求項11】
1個の前記貫通孔に対し、一本の配管又は針が入ることを特徴とする請求項1から10のバイアル保持具。
【請求項12】
1個の前記貫通孔に対し、複数本の配管又は針が入ることを特徴とする請求項1から10のバイアル保持具。
【請求項13】
前記バイアルが、一般に販売され汎用されているバイアルである請求項1から13のバイアル保持具。
【請求項14】
放射性医薬品の製造装置であって、
請求項1から請求項13のいずれか1項のバイアル用の保持具は基準部を有し、
前記基準部に基づいて前記保持部を固定する固定具を備えることを特徴とする放射性医薬品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−246713(P2010−246713A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98880(P2009−98880)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】