説明

放射性同位元素標識化合物溶液の液量放射能量測定装置および自動分注装置

【課題】簡便且つ小型化を目指して、放射性同位元素標識化合物溶液が入ったバイアルの放射能量と液量が正確に測れる装置、そのような装置を備えた自動分注装置を提供する。
【解決手段】一定速度で駆動されて放射性同位元素標識化合物溶液をシリンジ17が吸い込む。このシリンジ17に設置されている放射線検出器素子23からの放射線カウントが、前記一定速度の吸込みに伴い、立ち上がりを開始し、やがて立ち上がりを停止する間の時間を計測し、この計測された時間とシリンジ17の単位時間当りの吸込み量から吸込んだ液量を測定する。また、立ち上がり停止時の放射線カウントにより放射能量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院等で使用される陽電子断層撮影検査等に用いられる放射性同位元素標識化合物溶液の液量と放射能量を測定する測定装置および自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[放射性同位元素標識化合物]
病院等で使用される陽電子断層撮影検査(PET検査)等に使用される放射性同位元素標識化合物(RI化合物)は、使用する核種の半減期が短いことから(11Cで20.3分、18Fで109.8分)院内に核種を製造するサイクロトロンを設置して、放射性同位元素(RI)を製造し、標識化合物用自動合成装置(RI合成装置)によって所定の原料試薬と化学反応させて、目的とする化合物を製造することが一般的に行われている。このRI合成装置は作業者の被曝を防止するため、ホットセルと呼ばれる鉛の遮蔽セル内に設置され、遠隔的に自動操作される。院内で製造された標識化合物は化合物毎に院内で承認された品質規格が定められ、品質が規格に合致したことが確認された化合物は一人分毎分注されて検査薬として供される。
【0003】
品質検定に合格したサンプルは1人分あるいは取扱いを考えた適当量のロットに分注するが、この分注機構は一般にサンプル液量とサンプル放射能量からサンプルの濃度を求めて、希望する放射能量を半減期補正して求めたサンプル液量を駆動式シリンジなどに分注して、そのままシリンジで、あるいはシリンジからバイアルに移送した状態で取り出して使用する。
【0004】
合成作業だけでなく、分注作業や品質検査についても作業者の被曝を防止するため、作業はホットセルと呼ばれる鉛の遮蔽セル内で行われ、一部施設ではこれら作業は自動化されている。
【0005】
[放射性同位元素標識化合物の品質検定作業の一例]
RI化合物の品質検定作業の一例として、病院内で最も多く使用される2−デオキシ−2−18F−フルオロ−D―グルコース(以下FDGと称する)の品質検査について説明する。FDGは、検査数やサイクロトロンの能力によって異なるが、通常1合成あたり10GBq〜50GBq程度が製造され、装置や合成方法によって異なるが、概ね、10mL〜25mL程度の生理食塩液として得られる。この溶液の品質基準としては「日本アイソトープ協会医学・薬学部会サイクロトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2001年改定)」に収載されており、下記の試験項目について定められた規格を満足することが求められる(検査方法は自動化装置で採用されている方法の一例として記載)。
【0006】
「毎合成必要となる試験項目と自動化で採用されている検査方法」
試験項目 検査方法
1 バッチ当たりの液量 重量測定あるいは液面高さ測定など
2 放射能量 全量を放射能検出器で計測する、あるいは一部を計測
し全量に補正する。
【0007】
3 放射能半減期 溶液の一部をバイアルに取り、放射能検出器の値を一
定時刻毎に測定して計算によって求める
4 性状 合成装置からの回収液をCCDカメラで目視あるいは
画像判定で、澄明であることを確認する。
【0008】
5 粒子の有無 同上回収液をCCDカメラで目視あるいは画像判定で、
浮遊物・粒子状物質がないことを確認する。
6 エンドトキシン試験 専用の自動測定装置内に検査試薬を加えたバイアルを
設置し、回収液からの一定量(200μL程度)を加えて、
一定時間放置し、光学的に比色あるいは比濁を測定し
て自動判定が行われる。
【0009】
7 無菌試験 同上回収液から一定量(1mL程度)を無菌検査用として、
バイアルに保管する。翌日(放射能が減衰)以降、恒温
漕内に規定時間保管し、菌体を培養して、専用の検査装
置で計測する。
【0010】
8 pH 同上回収液の1滴をpH試験紙に滴下させ、色の変化を
CCDカメラで測定する。あるいは回収液の一部にpH電
極を挿入して測定する。
9 触媒(K222)の確認試験 同上回収液の1滴を専用の試験紙に滴下させ、色の変化
をCCDカメラで測定する。
10 放射化学的純度 同上回収液の一部(20μL程度)を高圧液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)の指定されたカラムに導入し、専用
解析ソフトを用いて表示される放射能スペクトルのピー
ク面積を計測して目的物の純度が計算され表示される。
【0011】
11 アルミニウムイオン 同上回収液の1滴を専用の試験紙に滴下させ、色の変
化をCCDカメラで測定する。
これら項目の全てあるいは一部を遠隔全自動で行うための品質検定装置が開発され、たとえば、PET放射性薬剤自動品質管理システム(下記特許文献1)あるいは、自動品質管理分注装置((下記特許文献2)あるいは自動品質検定装置(下記特許文献3)などが製品化されている。
【0012】
上記品質検定の項目のなかで、1〜5の項目の試験が被曝量が多く、また自動化・遠隔化を行う場合に機構が大型化される要因となる。つまり、
1)「バッチ当たりの液量」:回収液の重量測定機構あるいは液量測定機構が必要となる。
2)「放射能量」:放射線検出器が必要となる。
3)「放射能半減期」:放射能検出器が必要となる。
4) 5)「性状」「粒子の有無」:溶液を近距離で肉眼で検出できないため、カメラ画像で判定する機構が必要となる。
【0013】
これ以外の項目(6〜11)については、放射能が減衰してから分析を行う項目(7)を除いて、サンプルの一部(数百μL)をバイアル容器などに採取しておけば、サンプルの一定量を専用の分析機器の所定位置に注入する(6,10)ことで自動的に分析を行うか、あるいはサンプルの1滴を試験紙などに滴下して試験紙が変色する色を観察する(8,9,11)という簡単な操作で検定が実行される。これら項目(6〜11)は使用する放射能量も極微量であり、あえて鉛遮蔽セル内で行う必要性も少ない。
【0014】
従って、一般的には項目1)〜5)までの必須項目があるために、自動品質検定機構は大型化され、高額になり、さらに自動化の必要性の比較的薄い6)〜11)までの項目について含めて全自動化されているのが現状である。
RI化合物の分注について、FDGについては先にサンプルは1人分あるいは取扱いを考えた適当量のロットに分注すると述べた。最近の施設では自動投与装置あるいは自動分注投与装置が一般的に使用されており、検査数の少ない施設では1人分毎分注されたバイアルを数本製造し、手動であるいは簡易の自動投与装置を用いて投与が行われる。また、検査数の多い施設では30mL程度のバイアルに数10人分の放射能を含む薬液として分注され、装置内で1人分毎に分注され引き続き投与される。
【0015】
従って、これら多くの施設で必要とされる標準的な分注装置の機能としては、
回収液から
・ 品質検定用の少量(数百μL)のサンプルを分注してバイアルに回収できる機能
・ 作業者の指定する少量(1人分)の放射能を分注してバイアルに回収出来る機能
・ 作業者の指定する適当量(数10人分)の放射能を分注してバイアルに回収出来る 機能
・ 薬液の製造時刻と使用時刻と使用量および半減期を用いて、1人分から数10人分 に必要な分注される放射能量(あるいは液量)を計算できる機能
・ 少量(1人分)の放射能での分注は一度にまとめて検査数に応じた数人分のバイ アルが製造できる機能
・ バイアルを取り出す時に被曝しないようにする回収液の遮蔽機能
を有していることが望まれる。
【0016】
また、必要とする放射能量を分注するにはRI化合物の原液の濃度から分注液量が計算されなければならない。すなわち原液の放射能量と液量が既知である場合に必要な放射能量を指示したときに分注液量が決定される。この値が正確に得られない時には分注精度が悪くなる。しかし、大量の放射能量を含むバイアルの放射能量と液量を正確に得て、被曝防止のためにバイアルはできるだけ移動させない、あるいは何らかの駆動機構を設けてバイアルを移動させるなど、分注を実行するためには大がかりな自動品質管理装置が必要となっていた。
【0017】
従って、求められる機能としては上記機能を有する分注装置にバイアルの放射能量と液量が正確に測れる機能を有していることが求められる。従来の小型簡易装置ではその要求を満足させられるものは提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002-306609
【特許文献2】特開2008-253409
【特許文献3】特開2008-253356
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
自動品質検査や自動分注を行なう装置は、一般に高額であり、専用の設置スペースも必要となり、高額な自動化装置の導入が困難な施設も多い。よって、簡便且つ小型で安価な装置の開発が待たれている。
また、自動品質検査や自動分注を行なう装置に求められる機能としては、分注機能と放射能量と液量が正確に測れる機能である。
この発明は、以上の問題点を解決するために、簡便且つ小型化を目指して、バイアルの放射能量と液量が正確に測れる装置、そのような装置を備えた自動分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以上の課題を解決するために、第一発明は、一定速度で駆動されて放射性同位元素標識化合物溶液を吸い込むシリンジと、このシリンジと接する位置に設置されている放射線検出器素子と、この放射線検出器素子からの放射線カウントが、前記一定速度の吸込みに伴い、立ち上がりを開始し、やがて立ち上がりを停止する間の時間を計測し、この計測された時間と前記シリンジの単位時間当りの吸込み量から吸込んだ液量を測定する液量測定手段と、前記立ち上がり停止時の放射線カウントにより放射能量を測定する放射能量測定手段と、を有することを特徴とする液量放射能量測定装置である。
【0021】
第二発明は、前記放射線検出器素子は、複数がシリンジに沿って直線的に設置されていることを特徴とする液量放射能量測定装置で3ある。
第三発明は、放射性同位元素標識化合物溶液を合成する合成装置から送液される前記放射性同位元素標識化合物溶液を一時的に納める送液バイアルが格納される格納スペースと、この格納された送液バイアルと連通される3連以上の多連式3方活栓と、この多連式3方活栓に連通されるシリンジを有して構成される請求項1に記載の液量放射能量測定装置と、前記多連式3方活栓に連通される分注バイアルと、前記多連式3方活栓の各3方活栓を自在に駆動する駆動装置と、この駆動装置および前記液量放射能量測定装置を制御して、前記分注バイアルに所定の液量で所定の放射能量の放射性同位元素標識化合物溶液を分注する制御手段と、を有することを特徴とする自動分注装置である。
【0022】
第四発明は、前記多連式3方活栓が4連以上で、この4連目以上を構成する各3方活栓が、駆動を行なう駆動装置と対になってモジュールを構成し、これらモジュールは互いに機械的に接続し、さらに前記簡易分注装置の本体に機械的に接続することを特徴とする自動分注装置である。
【0023】
第五発明は、前記格納スペースには前記送液バイアル内を観察するCCDカメラが取付けられ、前記送液バイアル内の溶液の清浄度および浮遊物の有無を確認できる自動分注装置 である。
【発明の効果】
【0024】
第一、第二、第三、第四、又は第五発明によれば、この放射線検出器素子からの放射線カウントが、立ち上がりを開始し、やがて立ち上がりを停止する間の時間を計測し、この計測された時間と前記シリンジの単位時間当りの吸込み量から吸込んだ液量を測定できる。よって、装置の機械的な構成を増加させずに、放射能量のみならず液量を同時に正確に測定できる。従来のように、液量を測定のための重量測定装置あるいは液面高測定装置などを別に設ける必要がない。このため、装置の簡便且つ小型化を図れる。
【0025】
第二、第三、第四、又は第五発明によれば、さらに、複数の放射線検出器素子が、シリンジに沿って直線的に設置されていることから、各放射線検出器素子の検出量を合計することで、仮に1つの放射線検出器素子が1カ所に設けられる場合に比べ、正確な放射能量の測定ができる。
【0026】
第三、第四、又は第五発明によれば、さらに、放射能量と液量が正確に測れる機能のみならず、分注機能を有する。このため、分注装置の簡便且つ小型化を図れる。
第四、又は第五発明によれば、さらに、モジュールを接続することで、後から、同時に分注できる分注バイアルの数を増やせる。
第五発明によれば、さらに、CCDカメラにより、簡便に、送液バイアル内の溶液の清浄度および浮遊物の有無を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態を示す自動分注装置の外観図である。
【図2】図1の装置の使用状態を示すもので、(A)は一部を断面にした正面図、(B)は左側面図、(C)は図1の装置に連通される分注バイアルを示す図である。
【図3】図1の装置に設けられる放射線検出器のブロック図である。
【図4】(A)は、図1の装置で液量測定を行なうフロー図、(B)は(A)を説明するために検出器の出力の増減を示す図である。
【図5】図1の装置で液量測定を行なう際の放射線カウント曲線を示すものである。
【図6】この発明の他の実施形態を示す自動分注装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を、図1から図5に示す。
[構成]
本装置の構成を図1と図2に示す。
本装置は、放射能量と液量を正確に測定する機能を備えた自動分注装置1である。
すなわち、放射性同位元素標識化合物溶液を合成する合成装置3から、針を有するチューブ4によって、送液される放射性同位元素標識化合物溶液は、一時的に送液バイアル5に納められる。この送液バイアル5は装置の格納スペース7に格納される。格納スペース7の周囲は、鉛容器9を形成している。
【0029】
格納スペース7には、送液バイアル5内を観察するCCDカメラ8が取付けられ、図示しないランプ設備をも有する。これにより、目視観察によって、送液バイアル5内の溶液の清浄度および浮遊物の有無を確認できる。格納された送液バイアル5は、針を有するチューブ10によって、3連式3方活栓11の図中右端の3方活栓13と連通される。右端の3方活栓13の残りの連通口には、フィルター12が設けられる。
【0030】
3連式3方活栓11は、3つの3方活栓13,14,15が直列に直に接続された構造を有する。
3連式3方活栓11の中央の3方活栓14に連通されるシリンジ17を有して、液量放射能量測定装置19が構成される。すなわち、この液量放射能量測定装置19は、駆動機構21により一定速度で駆動されて放射性同位元素標識化合物溶液を吸い込むシリンジ17を有する。なお、このシリンジ17の向きは図中では下向きであるが、上向きに設置することも可能である。このシリンジ17の背面には、複数の放射線検出器素子23がシリンジの長手方向に沿って直線的に設置されている。
【0031】
液量放射能量測定装置19は、シリンジ17に設置されている放射線検出器素子23と、図3、図4,図5に示すブロック図やフロー図に示す構成と作用を有する。そして、液量測定手段として機能する際には、この放射線検出器素子23の演算部からの放射線カウントが、図5に示すように、前記一定速度の吸込みに伴い、立ち上がりを開始し、やがて立ち上がりを停止する間の時間Δtを計測し、
この時間時間Δt × シリンジの単位時間当りの吸込み量
を演算して、吸込んだ液量を測定する。
【0032】
また、液量放射能量測定装置19は、放射能量測定手段として機能する際には、放射線カウントの立ち上がり停止時の値により放射能量を測定する。
3連式3方活栓11の左端の3方活栓15には、連通口22,または24を介して、針を有するチューブ26によって、分注バイアル25が連通される。分注バイアル25は、持ち運び可能なように、装置本体とは分離した鉛容器27に格納される。分注バイアル25は、針を有するフィルタ29へ連通する。
【0033】
自動分注装置1の制御手段は、3連式3方活栓11の駆動装置および液量放射能量測定装置19を制御する。そして、分注バイアルに、所定の液量で所定の放射能量の放射性同位元素標識化合物溶液を分注する。制御手段は、自動分注装置1に接続された図示しないコンピュータを含んで構成される。制御手段の操作は、コンピュータのCRT画面上から行う。分注の指示や結果について全てCRT画面で操作し、確認する。また、CCDカメラ8の画像についてはコンピュータに接続されたCRT画面で確認する。
【0034】
図3に放射線検出器のブロック図を示す。
放射線検出器30を構成する放射線検出器素子23であるシンチレータ素子(結晶)に放射線が照射されると微弱に発光する。この光をフォトマル31で検知し出力(パルス)を増幅する。コントローラ33内のプレアンプ35でパルスをさらに増幅し、ディスクリミネータ37でノイズを除去して演算部39でデジタルあるいはアナログ値で出力する。ここではデジタル値(単位時間当たりのパルス数)を利用する。
【0035】
図4にフロー図を示す。
測定開始する(S0)と、シリンジ17で送液バイアル5から標識化合物溶液の吸引を開始し(S1)、検出器の単位時間あたりのパルス数を計測し(S2)、単位時間当たりのパルス数の増減を演算する(S3)。そして、所定量吸い込んでシリンジの吸引を中止する(S4)。測定開始後は増減量の3/4位置を初めて計測した時点をt=t0とする(S5)。測定終了時はデータの最後から増減量の3/4位置を計測した時点をt=t1とする(S6)。T=to〜te間で増減量が1/2以下となった時間Δt2を除外する(S7)。この時間はたとえば、空気が混入する等の理由で液が吸引されていない時間とみなして計測時間から除外する。吸引時間T=t1-t0-Δt2を求める(S8)。そして、シリンジモータのパルス数(pulse/秒)から移動パルス数(pulse)を演算する(S9)。総移動パルス数から吸引容量を求める(S10)。
【0036】
「実施形態にかかる装置の操作・作用」
(概略)
本装置は次のように操作され、作用する。
先ず、チューブ4を介して、放射能を含む溶液である放射性同位元素標識化合物溶液が、送液バイアル5に送液される。この時、CCDカメラ画像で回収状況を監視し、溶液回収後、溶液の性状と粒子状物質の有無を判定することができる。さらに、送液バイアル5内に送液された液全量を一定の速度でシリンジ17内に吸引し、全量を吸引した後に同様のルートで全量を吐出し、もとの送液バイアル5に戻す動作を行う。この時、シリンジ17の背面に取り付けられた複数の放射線検出器素子23からの合計出力値すなわち放射線カウントが立ち上がり、全量がシリンジ内に吸引された時に、立ち上がりを停止し、出力が平行になる。この平行になった時の検出器の出力値から予め作成されている検量線との比較から放射能を得ることが出来る。
【0037】
また、検出器の出力の上立ち上がり開始時間と立ち上がりが停止する時間を検知してシリンジの吸引時間Δtを求め、一定のシリンジの単位時間当りの吸込み量を掛け合わせて液量を求める。
本動作で放射能を含む溶液の放射能量と液量を求めて、得られた溶液の濃度データを用いて引き続き分注操作が行われる。
分注操作は、送液バイアル5へ戻された液の情報から、必要な放射能量を溶液量に変換して、分注量を求めて、連結された分注バイアル25に吐出し、フィルター12,29から空気を導入してラインパージを行うことでシリンジに分注された分注液の全量をバイアルに移送する。
また、チューブ22の他端に生食液バッグを接続することによって、放射能分注量に生食を加えて指定の液量で分注させることもできる。
【0038】
(放射能量と液量の求め方)
予め既知の放射能量を含むシリンジを所定位置に設置し、検出器出力の相関関係を図5(A)のように求めておく。本装置は検出器素子23をシリンジ17の背面に直列に設置し、全てのカウント値を積算して濃度を表示する。すなわち、20mLシリンジの背面に素子23を等間隔で4ヶ〜5ヶ設置する。このため、放射能値は液面高さの影響を受けずに測定することが出来る。この時、シリンジ17内に放射能量未知の液全量を引き込むことで、液量にかかわらず正確な放射能量が得られる。
【0039】
ここで、標識化合物溶液をシリンジで一定速度(QmL/S)で吸引したときに放射線検出器の出力は例えば図5(B)に示される曲線で示される。この時、トレンドは曲線の始点と終点部を除けば一定速度で上昇する。曲線の開始部については、送液バイアル5からチューブ10を経由して放射能液が次第に近づいてくる状況を検知しており、また終点部はシリンジ駆動が溶液から空気吸引に変わる位置を検知するもので、この傾きから開始と終点の位置を正確に判断できる。また、放射能量はシリンジ内部にのみ存在するため、シリンジ吸引終了時の全カウント量(W)を適用する。
【0040】
従って、検出器の出力がW(CPS)であったとき、較正曲線より放射能量はR(MBq)であることが分かる。また、始点と終点の時間差がΔt(SEC)の時、溶液の液量=Q x Δt (mL) として表示される。ここでΔtは、シリンジの単位時間当りの吸込み量である。
【0041】
(半減期の求め方)
さらに、品質検定項目のなかで、放射線検出器を用いる「核種半減期」を求めることが出来る。
半減期とは放射能量が丁度1/2になる時間のことで、放射性核種によって決まっている常数であり、この値が一定範囲内であれば核種純度が高いことを示す。この半減期の測定は検出器の出力値(カウント値)を一定時間毎に計測して求めるものである。
従って、本装置では、分注作業を行っている合間などで、一定量をシリンジ内に吸引することで、測定を開始することで、例えば5分後など一定時間後の計測値を求めて計算によって半減期を求めることが出来る。
すなわち、シリンジが駆動していない任意の機会にシリンジに取り付けられている検出器を用いて標識化合物溶液の半減期を測定できる。
【0042】
「実施形態の効果」
1)本装置によれば、放射線検出器素子からの放射線カウントが、立ち上がりを開始し、やがて立ち上がりを停止する間の時間を計測し、この計測された時間と前記シリンジの単位時間当りの吸込み量から吸込んだ液量を測定できる。よって、装置の機械的な構成を増加させずに、放射能量のみならず液量を同時に正確に測定できる。従来のように、液量を測定のための重量測定装置あるいは液面高測定装置などを別に設ける必要がない。このため、装置の簡便且つ小型化を図れる。
【0043】
2)さらに、複数の放射線検出器素子が、シリンジに沿って直線的に設置されていることから、各放射線検出器素子の検出量を合計することで、仮に1つの放射線検出器素子が1カ所に設けられる場合に比べ、正確な放射能量の測定ができる。
3)さらに、放射能量と液量が正確に測れる機能のみならず、分注機能を有する。このため、分注装置の簡便且つ小型化を図れる。
4)さらに、モジュールを接続することで、後から、同時に分注できる分注バイアルの数を増やせる。
【0044】
5)さらに、CCDカメラにより、簡便に、送液バイアル内の溶液の清浄度および浮遊物の有無を確認できる。
6)本装置は分注機能の小型化・低価格化を図るものであるだけでなく、品質検定に必要な機構、すなわち前述の「毎合成必要となる試験項目と自動化で採用されている検査方法」の試験項目1)〜5)を満たす機構を分注装置に組み込むことを考えた分注装置であり、本装置を使用することによって、分注装置としてだけでなく、品質検定機能を行わせることができ、スペースのない施設や患者数の少ない小規模施設において、自動品質管理装置を導入することなく、効率的にPET検診を行うことができるものである。
【0045】
7)本発明装置は使い捨て3方活栓が多連に連結されたバルブ駆動機構と3方活栓と接続される駆動機構付きのシリンジで構成された簡易の小型分注装置であって、装置内に一部の品質検定機能を持たせることで、分注だけでなく、品質検定作業についても大幅に作業を簡便化する分注装置として提供される。
【0046】
8)本装置は、新たな設置スペースがなく自動化できない施設や、患者数が少なく自動化に踏み切れない施設において、簡便に設置することができ、前述の「毎合成必要となる試験項目と自動化で採用されている検査方法」の試験項目にある全項目の測定はできないが、被曝の観点から自動化が望まれる品質検定項目の自動検定と実用的な充分な精度を有する自動分注が実行されるため、分注器として使用する以外の目的で、新たな品質管理用自動化装置の導入を不要にする装置、あるいは現在保有する品質管理装置の故障時の代替機としても提供される。
【0047】
「他の実施形態」
以上の実施形態では、多連式3方活栓は3連であったが、他の実施形態では、4連以上とすることもできる。これを図6に示す。
この場合に、この4連目以上を構成する各3方活栓41,42,43,44が、駆動を行なう駆動装置(図示しない)と対になってモジュールU1,U2,U3,U4を構成し、これらモジュールは互いに機械的に接続し、さらに前記自動分注装置の本体に機械的に接続するものとすることができる。各モジュールU1,U2,U3,U4には、それぞれチューブT1、T2、T3、T4を介して、前記実施形態と同様の分注バイアル25がそれぞれ連通する。
【0048】
この装置にて、前記実施形態に示した分注バイアル25にさらに生理食塩液を加えて希望放射能量を希望総液量で得ることができることを説明する。本例ではモジュールを4セット増設した。この時、3方活栓15の連通口22に生理食塩液バッグ45を接続する。
1 制御手段によって吸引量を設定する。ここでは2mLと設定する。また、[半減期測定]と[生食ライン充填]を指定する。
2 シリンジ17で設定量が吸引され、さらに3方活栓13のフィルター12から送液用の空気5mLが吸引される。さらにシリンジ17で生食ライン46から、ライン46の充填に必要な生食2mLが吸引される。ここで定められた時間動作を停止して半減期を測定する。
【0049】
3 シリンジ17から指定取出先のチューブ(T1、T2、T3、T4のうち指定されたもの)に全量が吐出される。指定取出先のチューブに接続されているバイアルに品質検定用サンプル液が得られる。
4 [分注]を指定し、放射能量(あるいは液量)と指定取出先のチューブ(T1、T2、T3、T4のうち指定されたもの)を選択して分注条件を入力する。分注動作を行う。放射能量を設定するとその時間で補正された濃度情報から吸引する溶液量を算出して吸引する。
【0050】
5 分注結果(放射能量+液量+計測時刻+濁度・浮遊物(画像データ)+半減期)はコンピュータから印字される。
【符号の説明】
【0051】
1・・自動分注装置、3・・合成装置、5・・送液バイアル、7・・格納スペース、
8・・CCDカメラ、9・・鉛容器、10・・チューブ、11・・3連式3方活栓、
13,14,15・・3方活栓、17・・シリンジ、19・・液量放射能量測定装置、
21・・駆動機構、23・・放射線検出器素子、22,24・・連通口、
25・・分注バイアル、27・・鉛容器、29・・フィルタ、30・・放射線検出器、
31・・フォトマル、33・・コントローラ、35・・プレアンプ、
37・・ディスクリミネータ、39・・演算部、
41,42,43,44・・3方活栓、U1,U2,U3,U4・・モジュール、
T1、T2、T3、T4・・チューブ、45・・生理食塩液バッグ、
46・・生食ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定速度で駆動されて放射性同位元素標識化合物溶液を吸い込むシリンジと、このシリンジと接する位置に設置されている放射線検出器素子と、この放射線検出器素子からの放射線カウントが、前記一定速度の吸込みに伴い、立ち上がりを開始し、やがて立ち上がりを停止する間の時間を計測し、この計測された時間と前記シリンジの単位時間当りの吸込み量から吸込んだ液量を測定する液量測定手段と、前記立ち上がり停止時の放射線カウントにより放射能量を測定する放射能量測定手段と、を有することを特徴とする液量放射能量測定装置。
【請求項2】
前記放射線検出器素子は、複数がシリンジに沿って直線的に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液量放射能量測定装置。
【請求項3】
放射性同位元素標識化合物溶液を合成する合成装置から送液される前記放射性同位元素標識化合物溶液を一時的に納める送液バイアルが格納される格納スペースと、この格納された送液バイアルと連通される3連以上の多連式3方活栓と、この多連式3方活栓に連通されるシリンジを有して構成される請求項1に記載の液量放射能量測定装置と、前記多連式3方活栓に連通される分注バイアルと、前記多連式3方活栓の各3方活栓を自在に駆動する駆動装置と、この駆動装置および前記液量放射能量測定装置を制御して、前記分注バイアルに所定の液量で所定の放射能量の放射性同位元素標識化合物溶液を分注する制御手段と、を有することを特徴とする自動分注装置。
【請求項4】
前記多連式3方活栓が4連以上で、この4連目以上を構成する各3方活栓が、駆動を行なう駆動装置と対になってモジュールを構成し、これらモジュールは互いに機械的に接続し、さらに前記簡易分注装置の本体に機械的に接続することを特徴とする請求項3に記載の自動分注装置。
【請求項5】
前記格納スペースには前記送液バイアル内を観察するCCDカメラが取付けられ、前記送液バイアル内の溶液の清浄度および浮遊物の有無を確認できる請求項3、または4に記載の自動分注装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−5103(P2011−5103A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153233(P2009−153233)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(594118958)株式会社ユニバーサル技研 (11)
【Fターム(参考)】