説明

放射線不透過性バイオセラミック粒子を備えたポリマー−バイオセラミック複合材から形成されるステント

バイオセラミック粒子の表面にグラフトされた放射線不透過性官能基を持つバイオセラミック粒子を有するポリマー−バイオセラミック複合材で少なくとも部分的に製作された埋込み型医療機器が開示される。バイオセラミック粒子の表面上にグラフトされたポリマー鎖を持つバイオセラミック粒子を有し、放射線不透過性官能基がグラフトされたポリマー鎖に化学的に結合している放射線不透過性材料で少なくとも部分的に製作された埋込み型医療機器が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込み型医療機器、および、埋込み型医療機器を製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、体内の管腔への埋込みに適した、径方向に拡張可能な内部人工器官に関する。「内部人工器官」は、体内に設置される人工の機器(デバイス)を指す。「管腔」とは、血管などの管状器官の空洞を指す。
【0003】
ステントはそのような内部人工器官の一例である。ステントは、一般的に円柱状の形状をした機器で、血管、または、尿路および胆管などの他の解剖学的管腔の一部分(セグメント)を開いた状態に保持し、時には拡張するよう機能する。ステントは、血管中のアテローム硬化型狭窄の治療によく使用される。「狭窄」は、体内の導管または開口部の直径が、狭小化または収縮することを指す。そのような治療においてステントは、身体の血管を補強し、血管系における血管形成の後の再狭窄を阻止する。「再狭窄」は、(例えば、バルーン血管形成、ステントによる治療または弁形成によって)一見して成功裏に治療を受けた後の、血管内または心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0004】
ステントを用いた患部または病変の治療は、ステントの送達および展開の両方を含む。「送達」は、体内の管腔を通して、治療を要する血管内の病変部のような領域にステントを導入および輸送することを指す。「展開」は、治療領域において管腔内でステントを拡張することを指す。ステントの送達および展開は、カテーテルの一端部の回りにステントを配置すること、皮膚を通して体内の管腔へカテーテルの端部を挿入すること、体内の管腔内のカテーテルを所望の治療位置へ進めること、治療位置でステントを拡張すること、および管腔からカテーテルを除去すること、によって成し遂げられる。ステントが放射線不透過性材料を含む場合、送達および展開の間に、X線透視法を用いてステントを可視化してもよい。
【0005】
バルーン拡張型ステントの場合、ステントは、カテーテル上に配置したバルーンの周囲に設置される。ステントの設置は、典型的にはステントをバルーンに圧着するか、または縮みしわを付けるように押し付けることを含む。次いでバルーンを膨らませることによって、ステントを拡張する。次いでバルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜く。自己拡張型ステントの場合には、ステントは、引込み式シースまたはソックス状のカバーのような拘束部材を介してカテーテルに固定してもよい。ステントが体内の所望の位置にある時点で、シースを引き抜いて、ステントを自己拡張させることができる。
【0006】
ステントは、いくつかの機械的要件を満たすことができなければならない。ステントは、構造上の負荷、すなわちステントが血管の壁を支えることによりステントにかけられる径方向の圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントには適切な径方向の強度がなくてはならない。径方向の強度は、径方向の圧縮力に耐えるステントの性能であり、ステントの周方向の強度および剛性に起因する。それ故、径方向の強度および剛性は、フープ強度および剛性、または、周方向強度および剛性ということもできる。
【0007】
鼓動する心臓が誘発する周期的な負荷を含む、様々な荷重がステントにかかることになるが、ステントは、一度拡張されれば、そのサイズおよび形状を耐用年数の間十分に維持しなくてはならない。例えば、径方向の荷重は、ステントを内向きに後退させてしまうことがある。一般的に、後退は最小限にすることが望ましい。加えて、ステントは、圧着、拡張、および周期的負荷を許容するのに十分な可撓性を持っていなくてはならない。ステントを、蛇行した血管通路を通じて送達し、線状でない、もしくは湾曲しやすい展開部位に適合できるようにするために、長手方向の可撓性が重要となる。また、最終的には、有害な血管反応を誘発しないように、ステントは生体適合性を有さねばならない。
【0008】
ステントの構造は、典型的には、業界でしばしばストラット(支柱)あるいはバーアーム(棒腕)と呼ばれる、相互接続する構造要素の、パターンまたは網目を含む骨格により構成される。骨格は、ワイヤ、チューブ、または円柱形状に巻かれたシートから形成することができる。骨格は、ステントを径方向に圧縮(圧着可能なように)および径方向に拡張(展開可能なように)できるように設計されている。従来のステントは、あるパターンを持つ個別の構造要素の相互間の動作を介して、拡張および収縮できるようになっている。
【0009】
さらに、薬剤入りのステントは、金属骨格またはポリマー骨格のいずれかの表面に、活性薬剤、生理活性薬剤、あるいは薬剤を含むポリマー担体をコーティングすることにより製作するものとしてもよい。ポリマー骨格は、活性薬剤または薬剤の担体として使用することもできる。
【0010】
上述された機械的要件を満たすことに加えて、ステントがX線下で蛍光透視法により可視的であるように、十分に放射線不透過性であることが望ましい。正確なステント留置は、ステント送達のリアルタイムな可視化によって促進される。心臓病専門医または介入放射線医は、患者の血管を通して送達するカテーテルを追跡し、ステントを病変部位に正確に配置できる。このことは、典型的には、蛍光透視法または類似のX線可視化手順によって遂行される。ステントが蛍光透視法により可視的であるためには、周囲の組織よりもX線を吸収しなければならない。ステント中の放射線不透過性材料によって、ステントの直接的な可視化が可能であってもよい。
【0011】
さらに、ステントが生体分解性であることが望ましいといえる。多くの治療への適用においては、例えば、血管の開路維持および/または薬剤の送達等の意図された機能を果たし終えるまでの期間に限って、ステントが体内に存在することが必要とされる。したがって、生体吸収性ポリマーなどの生体分解性材料、生体吸収性材料、および/または生体侵食性材料から作製されたステントは、それらの臨床的必要性が終了した後にのみ、完全に侵食されるように構成すべきである。
【0012】
ステントなどのポリマーの埋込み型医療機器に関する潜在的な問題には、不十分な靭性、遅い分解速度、ならびに物理的劣化および応力緩和に起因する有効期限の限界が含まれる。ポリマーステントに関する別の問題は、ポリマーが放射線透過性になりやすいので、X線透視法により可視化できないことである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の様々な実施の形態は、バイオセラミック/ポリマー複合材から少なくとも部分的に形成されるステントを含み、その複合材は、マトリックスポリマー内に分散させた複数のバイオセラミック粒子を有し、バイオセラミック粒子はバイオセラミック粒子の表面にグラフトされた放射線不透過性官能基を備え、放射線不透過性官能基によって、ステントが蛍光透視法により可視的となる。
【0014】
本発明のさらなる実施の形態は、バイオセラミック粒子の表面にグラフトされたポリマー鎖を有するバイオセラミック粒子を備える放射線不透過性材料から少なくとも部分的に製作されるステントを含み、放射線不透過性官能基は、グラフトされたポリマー鎖に化学的に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ステントの立体図である。
【図2】図2は、ポリマーマトリックスの全体にわたって分散させたバイオセラミック粒子を示す、複合材のミクロ構造の概略図である。
【図3】図3は、マトリックスポリマーに組み込まれた放射線不透過性バイオセラミック粒子の実施の形態の概略図である。
【図4】図4は、マトリックスポリマーに組み込まれた放射線不透過性バイオセラミック粒子の別の実施の形態の概略図である。
【図5】図5A〜Bは、放射線不透過性層および非放射線不透過性層を備えた構造要素の断面図である。
【図6A】図6Aは、2層から成る壁を備えたチューブの斜視図である。
【図6B】図6Bは、図6Aのチューブの半径方向の断面図である。
【図6C】図6Cは、図6Aのチューブの壁の断面図である。
【図7】図7は、図6Aのチューブからカットされたステント骨格の半径方向の断面図である。
【図8】図8は、2つの円形オリフィスを有するダイを示す図である。
【図9】図9A〜Bは、本体部分を覆う放射線不透過性コーティング層を備えたステントの構造要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態は、ステントに適用でき、より一般的には、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、血管グラフト、または一般的なチューブ状の埋込み型医療機器などであるが、これらに限定されない埋込み型医療機器に適用できる。
【0017】
特定の実施の形態においては、埋込み可能な医療機器は、治療剤の局所的送達のためにデザインすることができる。薬剤入りの埋込み可能な医療機器は、治療剤を含むコーティング材料により機器をコーティングすることによって構成してもよい。機器の基材もまた治療剤を含むものとしてもよい。
【0018】
図1は、ステント100の立体図を示す。いくつかの実施の形態においては、ステントは、構造要素110を相互に接続するパターンまたはネットワークを有するものとすることができる。ステント100はチューブ(不図示)から形成されてもよい。ステント100は、構造要素110のパターンを有し、構造要素110は、様々なパターンを呈することができる。機器の構造的なパターンは、実質的には任意のデザインでありえる。本明細書において開示される実施の形態は、図1で示されるステントまたはステントパターンに限定されない。実施の形態は、他のパターンおよび他の機器に対して容易に適用可能である。パターンの構造的変更は、実質的に無制限である。ステント100などのステントは、レーザーカッティングまたは化学エッチングなどの技術を用いたパターンの形成によって、チューブから製作することができる。
【0019】
埋込み可能な医療機器の幾何学的構造または形状は、その構造の全体にわたって変形することにより、半径方向の拡張および圧縮を可能にすることができる。パターンは、直線状または略直線状の構造要素またはストラットの部分を有することができ、実施例では部分120に示されている。さらに、パターンは、部分130、部分140および部分150などの湾曲または屈曲した部分を有する構造要素またはストラットを有することができる。
【0020】
埋込み型医療機器は、生体分解性ポリマー、生体吸収性ポリマー、または生体安定性ポリマーからも、部分的にまたは完全に作製できる。埋込み型医療機器の製作で使用されるポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生体分解性または生体侵食性であり得る。生体安定性は、生体分解性でないポリマーを指す。生体分解性、生体吸収性、および生体侵食性などの用語は、同義で用いられ、血液などの体液に暴露される際に、完全に分解および/または侵食可能であり、徐々に身体によって再吸収、吸収、および/または排泄され得るポリマーを指す。ポリマーの分解プロセスおよび吸収プロセスは、例えば、加水分解プロセスおよび代謝プロセスによって起こり得る。
【0021】
ステントなどの埋込み型医療機器にとって重要な複数の特徴は、高い半径方向の強度、優れた破壊靭性、迅速な分解、および放射線不透過性である。埋込み型医療機器での使用に適した一部のポリマーは、1つまたは複数のこれら特徴(特に、破壊靭性)に関して潜在的な欠点を有している。ガラス質であるか、または体温より高いTgを有する結晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーの一部は、それらの強度および剛性によりステント材料として特に魅力的である。かかるポリマーの靭性は、特に、ステントへの適用における使用のためには、所望されるよりも低くなり得る。例えば、PLLAなどのポリマーは剛性および強度があるが、生理学的条件下で脆性の傾向がある。生理学的条件とは、インプラントが人体内で暴露される条件を指す。生理学的条件は、人体温度(およそ37℃)を含むが、これに限定されない。
【0022】
これらのポリマーは、破損の前に塑性変形がほとんどないかまたはまったくないこれらの条件で、脆性破壊機構を呈し得る。この結果として、かかるポリマーから製作されたステントは、ステントの使用範囲に関して十分な靭性を有さない。特に、ステントなどの埋込み型医療機器の特定の領域は、機器が使用中の応力下にある場合に、高度の応力および歪みを受ける。例えば、ステントがクリンプされ展開される場合、部分130、140、および150などの湾曲または屈曲領域は、破壊を招き得る極度の歪みを有し得る。
【0023】
さらに、一部の生体分解性ポリマーは、特定のステント治療に所望されるよりも遅い分解速度を有する。この結果として、かかるポリマーから作製されるステントの分解時間は、所望されるよりも長くなり得る。例えば、PLLAなどの半結晶性ポリマーから作製されたステントは、約2〜3年の分解時間を有し得る。ある治療状況においては、より短い分解時間、例えば、6か月未満または1年未満が望ましい。
【0024】
さらにポリマーは、一般的には、蛍光透視法によって容易に画像化されるのに十分な放射線造影密度を保持しない。ステントなどの機器は特定の機械的要件も有するので、画像化するために十分な放射線不透過性をポリマーステントに与えることが、その機械的挙動に顕著な影響を与えないことが重要である。
【0025】
本発明の実施の形態は、靭性、分解速度、および放射線不透過性に関して、埋込み型医療機器に使用されるポリマーの欠点に対処する。本発明の様々な実施の形態は、バイオセラミック/ポリマー複合材から部分的または完全に形成されたステントを含む。複合材は、ポリマー内に分散させた複数の放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む。バイオセラミック粒子は、バイオセラミック粒子のセラミック表面にグラフトされた放射線不透過性官能基(複数可)を有する分子により放射線不透過性である。放射線不透過性官能基は、トリヨードベンゾイルクロリド、トリヨード安息香酸、またはその組み合わせを含むヨウ素置換化合物から形成できるが、これらに限定されない。かかる実施の形態において、放射線不透過性官能基によって、ステントを蛍光透視法により可視的にできる。
【0026】
本発明の特定の実施の形態において、バイオセラミック粒子は、機器の複合材の破壊靭性およびモジュラスを増加させる。一般には、破壊靭性が高いほど、材料は亀裂の伝播に対してより耐性がある。いくつかの実施の形態において、バイオセラミック粒子を、生理学的条件では脆性であるマトリックスポリマー内に分散できる。特に、かかるポリマーは体温を上回るTgを有することができる。
【0027】
バイオセラミック粒子は、材料のより大きな体積にわたって歪みを分散させて歪みの集中を低下させることによって、破壊靭性を増加できると考えられている。粒子は負荷応力に起因するエネルギーを吸収し、バイオセラミック/ポリマー複合材のより大きな体積についてエネルギーを分散させることができる。したがって、バイオセラミック複合材から製作される機器の応力および歪みは、非常に集中されることよりもむしろ、多数の個別粒子が関与する多くの小さな相互作用へと分割される。材料に亀裂が生じ、複合材に伝わり始める際、亀裂は、粒子の相互作用によってさらに微細な亀裂に分離する。このように、粒子は、負荷応力によって機器に与えられるエネルギーを放散する傾向がある。
【0028】
ポリマーの靭性を増加させるためには、ナノ粒子の使用が有利である。複合材の不連続相または補強相としてナノ粒子を使用することによって、ポリマー材料の破壊靭性を改善できることが示されている。J. of Applied Polymer Science, 94 (2004) 796−802。
【0029】
以下に詳細に記述するように、複合材はステントなどの機器の製作において様々な方法で使用できる。いくつかの実施の形態において、ステント体は、図1で示すような複合材から形成できる。他の実施の形態において、複合材はステント体の構造要素の層になり得る。さらに他の実施の形態において、複合材はステント体を覆うコートになり得る。図2は、ポリマーマトリックス165の全体にわたって分散させたバイオセラミック粒子160を示す、複合材のミクロ構造の概略図を示す。
【0030】
いくつかの実施の形態において、ステントは、バイオセラミック粒子のセラミック表面にグラフトされた放射線不透過性官能基を備えたバイオセラミック粒子を含むバイオセラミック/ポリマー複合材から、少なくとも部分的に形成可能である。かかる実施の形態において、イオン置換化合物などの放射線不透過性化合物は、粒子のセラミック表面と反応して、セラミック表面へ放射線不透過性化合物をグラフトしてもよい。かかる実施の形態において、放射線不透過性化合物は、セラミック表面上のヒドロキシル基と反応できる。かかる化合物は、セラミック表面でヒドロキシル基のエステル化反応によって反応してもよい。
【0031】
図3は、マトリックスポリマー205に組み込まれたバイオセラミック粒子200の実施の形態の概略図を示す。マトリックスポリマーのポリマー鎖は、明瞭にするために示されてはいない。粒子200は、部位215で粒子200の表面にグラフトまたは結合された放射線不透過性官能基210を有する。粒子200は、グラフトされた放射線不透過性基を有さない反応部位220をさらに含む。
【0032】
グラフトされた放射線不透過性官能基を備えるバイオセラミック粒子は、放射線不透過性化合物を含む溶媒中にバイオセラミック粒子を配置することによって作製できる。例示的な実施の形態において、ヒドロキシルアパタイト粒子は、放射線不透過性化合物としてトリエチルアミン(TEA)およびトリヨードベンゾイルクロリドを含有するクロロホルム(溶媒)中に配置される。トリヨードベンゾイルクロリドとヒドロキシルアパタイトのヒドロキシル基との間にエステル化反応が生じる結果、トリヨードベンゾイルモイエティ(部分)がセラミック表面にグラフトされる。TEAを使用して、溶液のpH値を中和させる。トリヨードベンゾイルクロリドは、ナノバイオセラミックのヒドロキシル基と反応する際に、HCLを遊離する。
【0033】
他のセットの実施の形態において、ステントは、バイオセラミック粒子のセラミック表面上にグラフトされたポリマー鎖を有するバイオセラミック粒子を備えるバイオセラミック/ポリマー複合材から少なくとも部分的に形成可能である。かかる実施の形態において、放射線不透過性官能基は、グラフトされたポリマー鎖に化学的に結合される。これらの実施の形態において、放射線不透過性ポリマー鎖は、バイオセラミック粒子のセラミック表面上で、ヒドロキシル基などの反応基にグラフトまたは結合されてもよい。
【0034】
いくつかの実施の形態において、グラフトされたポリマーを備えたバイオセラミック粒子を含む複合材を、マトリックスポリマー内に分散できる。かかる実施の形態において、グラフトされたポリマーは、マトリックスポリマーと混和性であってもよい。実施の形態において、グラフトされたポリマーの化学組成は、マトリックスポリマーと同一、または実質的に同一であってよい。かかるグラフトされたポリマーは、ポリマーの表面からポリマーマトリックス内に延在し、マトリックス中の粒子を安定化させると考えられる。他の実施の形態において、複合材は、グラフトされたポリマー内に分散させたバイオセラミック粒で主としてまたは完全に構成される。
【0035】
例示的なグラフト化ポリマーは、PLLA、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジオキサノン(PDO)、および他の結晶性または半結晶性の加水分解により分解可能なポリマーなどのホモポリマーを含む。グラフト化ポリマーは、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、PLLA−co−PCL、およびPLLA−b−PCLなどのランダムコポリマー、交互コポリマーおよびブロックコポリマーも含むことができる。例示的な実施の形態において、グラフト化ポリマーはPLLA、PLGAであり、マトリックスポリマーはPLLAまたはPLGAであり得る。
【0036】
いくつかの実施の形態において、放射線不透過性官能基を、グラフトされたポリマーの末端に結合できる。かかる実施の形態において、以下でさらに詳細に記述するように、放射線不透過性官能基を、エステル化反応を介して脂肪族ポリエステルの末端に結合できる。かかる反応において、ヒドロキシル末端基のプロトンを放射線不透過性基に置換する。
【0037】
さらなる実施の形態において、放射線不透過性基は、いくつかの脂肪族ポリエステルの幹に共有結合できる。Biomaterials, 27 (2006) 4948−4954。エステルカルボニルのα位におけるメチレン基のプロトンの除去によって、PCLの幹にヨウ素を追加できることが示されている。一般的には、かかるメチレン基を有する脂肪族ポリエステルに、かかるスキームを適用できると考えられている。それらはPTMC、PHBおよびPDOを含むが、それらに限定されない。例示的な合成スキームは本明細書において提供される。
【0038】
図4は、マトリックスポリマー235に組み込まれたバイオセラミック粒子230の別の実施の形態の概略図を示す。マトリックスポリマーのポリマー鎖は、明瞭にするために示されてはいない。ポリマー幹242を備える放射線不透過性ポリマー鎖240は、部位245で粒子230の表面にグラフトまたは結合される。粒子230は、グラフトされたポリマー鎖を備えない反応部位250をさらに含む。ポリマー240は、幹242に沿う放射線不透過性基255と、幹242をエンドキャップする放射線不透過性基260を有する。
【0039】
一般に、複合材料中における、連続相またはマトリックスと、不連続相または補強相との間の優れた結合は、複合材の機械的性能の改善を促進する。このように、特定の実施の形態において、グラフトされたポリマーは、複合材のマトリックスポリマーへのバイオセラミック粒子の接着を促進することができる。
【0040】
一般には、バイオセラミック粒子を、生体分解性ポリマー全体にわたって均一に分散させることが望ましい。例えば、均一な分散により、靭性およびモジュラスの均一な増加、ならびに分解速度の改善が得られる。しかしながら、バイオセラミック粒子は、凝集するか、または複合材内での粒子の分散を困難にするクラスターを形成する傾向がある。複合材中により大きなクラスターが存在することにより、材料性能が低下する。かかるより大きなクラスターは、亀裂の発生および破損の優先部位である、複合機器内の空隙の形成をもたらす可能性がある。バイオセラミック粒子の凝集は、粒子間の表面エネルギーを低下させて複合材中の粒子の分散を改善することによって減少できる。いくつかの実施の形態において、グラフトされたポリマーは、凝集を低下できる粒子間の表面エネルギーを低下させることができる。
【0041】
他の実施の形態において、非反応性表面修飾因子で粒子を処理することによって、凝集を減少できる。バイオセラミック粒子を処理するための非反応性表面修飾因子の代表的な例には、ステアリン酸、ポリエチレンオキシド−b−ポリプロピレンオキシド−b−ポリエチレンオキシド(PEO−b−PPO−b−PEO)、およびポリエチレンオキシド−b−ポリラクチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
さらなる実施の形態において、マトリックスポリマーおよび放射線不透過性バイオセラミック粒子の溶融混合を介して、複合材を形成できる。1つの実施の形態において、マトリックスポリマーおよび放射線不透過性バイオセラミック粒子を、バッチ(一括)で溶融混合できる。他の実施の形態において、マトリックスポリマーおよび放射線不透過性粒子を押出機で混合できる。押出機の代表的な例には、単軸スクリュー押出機、噛み合いの同方向回転二軸スクリュー押出機および異方向回転二軸スクリュー押出機、ならびに他の多軸スクリュー咬合押出機が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
上述したように、グラフトされたポリマーは、溶融混合プロセスの間に粒子の凝集を低減または阻害できる。1つの実施の形態において、凝集がさらに低減されるように、バイオセラミック粒子のクラスターの破壊強度以上の剪断応力に複合材をさらすことができる。例えば、マトリックスポリマーと粒子の混合物は、処理されたバイオセラミック粒子の凝集が低減するような方法で、二軸スクリュー押出機または捏和機により処理され得る。
【0044】
特定の実施の形態において、放射線不透過性基によりグラフトされたポリマーを備えたバイオセラミック粒子を、懸濁液状での溶液重合を介して調製できる。「懸濁液」は、粒子が液体中に懸濁または分散された混合物である。かかる実施の形態において、グラフト化ポリマーの溶媒でもあり得る液体中に溶解されたグラフト化ポリマーのモノマーを含有する液体を含む溶液中に、バイオセラミック粒子を分散させることができる。溶液はさらに触媒を含むことができ、重合反応を促進できる。モノマーは重合することができ、形成されたポリマーの少なくとも一部が反応基の部位でバイオセラミック粒子の表面に結合またはグラフトされ得る。
【0045】
次に、放射線不透過性化合物および開始剤を懸濁液に追加して、放射線不透過性化合物をグラフトされたポリマーの末端に共有結合できる。例示的な実施の形態において、脂肪族ポリエステルはグラフト化ポリマーであり得る。かかる実施の形態において、開始剤としてトリエチルアミンを、および放射線不透過性化合物としてトリヨードベンゾイルクロリドを、懸濁液に追加する。トリヨードベンゾイルクロリドとグラフトされたポリマーの端部のヒドロキシル基の間でエステル化反応が生じ、トリヨードベンゾイルのモイエティが、その結果としてグラフトされたポリマーの末端へグラフトされる。さらに、放射線不透過性化合物は、上述のように、表面のヒドロキシル基とも反応して、表面と直接結合できる。
【0046】
いくつかの実施の形態において、次に液体または溶媒を分離または除去して、放射線不透過性バイオセラミック粒子/グラフトされたポリマーの混合物を形成する。1つの実施の形態において、混合物は、グラフトされたポリマーの非溶媒中で、粒子の沈殿を介して形成できる。この実施の形態において、グラフトされたポリマーを備えたバイオセラミック粒子を含有する溶液を、グラフトされたポリマーと共に沈殿するように粒子を誘導する、グラフトされたポリマーにとっての非溶剤に加えることができる。別の実施の形態において、グラフトされたポリマーを備えるバイオセラミック粒子は、懸濁液から液体または溶媒を蒸発させることによって溶液から除去できる。例えば、液体または溶媒は、高真空オーブン中で除去できる。
【0047】
さらに、または代替的に、放射線不透過性側基を、次に、グラフトされたポリマーの幹に追加できる。例示的な実施の形態において、PCLセグメントを有する放射線不透過性バイオセラミック/グラフトされたポリマーの混合物を、テトラヒドロフラン(THF)中のリチウムジイソプロピルアミド溶液と混合する。次にヨウ素を溶液に追加することにより、PCL幹に沿ったヨウ素側基が形成される。溶液をグラフトされたポリマーにとっての非溶剤に加えて、放射線不透過性バイオセラミック/グラフトされたポリマーの混合物を沈殿させる。
【0048】
以下にさらに詳細に記述するように、放射線不透過性バイオセラミック/グラフトされたポリマーの混合物を、ステントなどの機器の製作において、様々な方法で使用してもよい。ステント体は、混合物をマトリックスポリマーに溶融混合することによって形成できる。混合物とマトリックスポリマーの混合物、またはブレンドを、ステント体の構造要素の層またはステント体を覆うコートの層として使用できる。いくつかの実施の形態において、グラフトされたポリマーの分子量は、2kD乃至50kDであり得る。他の実施の形態において、分子量は2kD未満または50kD以上であり得る。
【0049】
上述したように、本明細書で記述する放射線不透過性粒子を、ステントなどの機器の製作において、様々な方法で使用できる。実施の形態の第1のセットにおいて、放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む複合材からステント体を形成できる。実施の形態の第2のセットにおいて、ステント骨格またはステント骨格の構造要素は、放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む放射線不透過性層を有することができる。実施の形態の第3のセットにおいて、ステント体またはステント骨格は、放射線不透過性バイオセラミック粒子を含むコートを有することができる。
【0050】
実施の形態の第1のセットにおいて、図1に図示したようなステント体またはステント骨格を、マトリックスポリマーにブレンドまたは混合された放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む複合材から形成できる。かかる実施の形態において、放射線不透過性バイオセラミック粒子を、例えば、上述の押出機により、マトリックスポリマーに混合またはブレンドできる。複合材から作製されたチューブは、押出プロセスによって形成可能である。
【0051】
一般的に、押出は、押出機を通してポリマーを送り、押出機から吐出されるポリマーを選択した形状に仕上げるダイにポリマー溶融物を強制的に通すプロセスを指す。チューブ押出の事例において、ダイを強制的に通したポリマー溶融物(押出物)は、チューブ形状の円筒フィルムを形成する。フィルムを冷却し、軸方向に延伸して、最終チューブ製品を形成する。次に、レーザー加工などのプロセスによりステントパターンを複合材チューブにカットし、複合材のステント体またはステント骨格を形成してもよい。いくつかの実施の形態において、カット前にチューブを半径方向に拡張して、チューブの半径方向の強度を改善してもよい。ブロー成形などの方法によって、チューブを半径方向に拡張してもよい。ステントパターンは、拡張した状態でチューブにカットすることができる。
【0052】
かかる実施の形態において、マトリックスポリマーは、生理的温度を上回るTgを有する半結晶性ポリマーであり得る。放射線不透過性バイオセラミック粒子のグラフトされたポリマーは、かかるマトリックスポリマーと混和性であってもよく、同一もしくは類似の化学組成を有してもよく、またはその両方であってもよい。例示的な実施の形態において、マトリックスポリマーはPLLAであり、グラフトされたポリマー鎖はPLLAである。別の例示的な実施の形態において、マトリックスポリマーはPLGAであり、グラフトされたポリマー鎖はPLGAである。
【0053】
複合材は、十分な量の放射線不透過性粒子を有して、ステントを蛍光透視法により可視的にできる。放射線不透過性材料の量を調節して、所望される程度の放射線不透過性が得られる。例示的な実施の形態において、バイオセラミック粒子は、複合材の体積の5%未満、5〜10%、10〜20%、または20%以上であり得る。バイオセラミック粒子は、低濃度では靭性を改善するが、極めて高い濃度ではポリマーの機械的特性に悪影響を及ぼし得る。したがって、ステント体の機械的特性に悪影響を及ぼさないように、バイオセラミック粒子の濃度を制限することができる。
【0054】
実施の形態の第2のセットにおいて、ステントは、放射線不透過性層および非放射線不透過性ポリマー層を有するステント体またはステント骨格を含むことができる。かかる実施の形態において、放射線不透過性層は、放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む。非放射線不透過性層は、放射線不透過性粒子を含まない、または実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、1体積%未満の放射線不透過性バイオセラミック粒子の濃度、またはステントを蛍光透視法により可視的にするのに不十分な濃度を指すことができる。これらの実施の形態において、放射線不透過性層は、管腔反対側の層、管腔側の層、または管腔側の層と管腔反対側の層の間の層であり得る。
【0055】
いくつかの実施の形態において、放射線不透過性層は、マトリックスポリマー中に混合または分散させた放射線不透過性バイオセラミック粒子を含むことができる。マトリックスポリマーは、非放射線不透過性層のポリマーと同一であっても、それとは異なってもよい。他の実施の形態において、放射線不透過性層は、ブレンドされたマトリックスポリマーを備えず、グラフトされたポリマーを備える放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む組成物を含むことができる。
【0056】
例示的な実施の形態は、PLLAまたはPLGAなどの、体温を上回るTgを備える半結晶性ポリマーから形成された非放射線不透過性層を含むことができる。例示的な実施の形態において、放射線不透過性層のマトリックスポリマーは、PLLAまたはPLGAなどの半結晶性ポリマーでもあり得る。あるいは、放射線不透過性層のマトリックスポリマーは、エラストマーポリマーであり得るか、またはエラストマーセグメント、例えばPCL、PDO、PLLA−co−PCL、PLLA−b−PCLを含むことができる。かかるエラストマーポリマーまたはエラストマーセグメントは、体温以下のTgを有し得る。かかるグラフトされたポリマーを備えるバイオセラミック粒子のグラフトされたポリマーは、実施の形態のこれら2つの例示的なセットでもあり得る。
【0057】
特定の実施の形態において、非放射線不透過性層は、機械的支持の提供および血管の開通の維持に、主としてまたは完全に関与し得る。かかる実施の形態において、放射線不透過性層における放射線不透過性バイオセラミック粒子の濃度は、体積で5%未満、5〜10%、10〜20%、20〜30%、または30%以上であり得る。放射線不透過性層を不要とする、または支持するためにのみ部分的に必要とする実施の形態において、放射線不透過性バイオセラミック粒子の濃度は、粒子が機械的特性に悪影響を及ぼすレベルであってもよい。
【0058】
他の実施の形態において、放射線不透過性層は、支持層による開通維持を補助できる。かかる実施の形態において、バイオセラミック粒子の濃度を制限でき、したがってステント体の機械的特性には悪影響が及ばない。
【0059】
放射線不透過性層を備えるステント体の様々な構造的な実施の形態が検討され、本明細書において記述および例証される。図5A〜Bは、放射線不透過性層を備えたステント骨格のストラット(支柱)または構造要素300の例示的な実施の形態を示す。図5Aは、管腔反対側の表面310A、管腔側の表面310B、および側壁表面310Cを備えた構造要素300の縦軸305に対して直角の断面図を示す。図5Bは、構造要素300の軸方向の断面図を示す。構造要素300は、非放射線不透過性層320を覆い、かつこれに接触して配置された放射線不透過性層315を有する。他の実施の形態において、1つまたは複数の層を、放射線不透過性層315と非放射線不透過性層320との間に配置できる。図示するように、放射線不透過性層315は管腔反対側の層であるが、代替の実施の形態において、放射線不透過性層315は管腔側の層であり得る。
【0060】
図5A〜Bに示すように、放射線不透過性層315は半径方向の厚みTrを有し、非放射線不透過性層320は半径方向の厚み(Tnr)を有している。いくつかの実施の形態において、放射線不透過性層の半径方向の厚みを調節して、所望される程度の蛍光透視による可視性を提供できる。さらに、ステントの展開した直径の50%未満、50〜60%、60〜80%、または80%以上など、ステントが、所望される程度の管腔の開通を維持するように、非放射線不透過性層の厚みを調節できる。例示的な実施の形態において、放射線不透過性層の厚みは、10μm未満、10〜30μm、または30μm以上であり得る。さらに、例示的な実施の形態において、非放射線不透過性層は放射線不透過性層よりも2倍未満、2〜5倍、または5倍以上厚い。
【0061】
上で示されるように、ステント体またはステント骨格は、ステントパターンをチューブにカットすることによって形成できる。特定の実施の形態において、放射線不透過性層および非放射線不透過性層を備えるステントは、かかる層を有するチューブから製作できる。以下で詳細に記述するように、かかるチューブを共押出で形成できる。かかる実施の形態において、ステントパターンを多層チューブにカットして、ステント骨格を形成する。ステント骨格は、チューブの非放射線不透過性層から形成された非放射線不透過性層、およびチューブの放射線不透過性層から形成された放射線不透過性層を含むことができる。
【0062】
図6Aは、外側表面352および円筒軸354を備えるチューブ350の斜視図を示す。チューブ350の壁は、2つの同心または実質的に同心の層である、外側層356および内側層358を有する。外側層356(外側半径Rrを有する)は放射線不透過性層であり、内側層358は厚みRnrを備える非放射線不透過性層である。図6Bはチューブ350の半径方向の断面図を示し、図6Cはチューブ350の軸354に平行なチューブ350の壁の断面図を示す。
【0063】
図7は、チューブ350からカットされたステント骨格360の半径方向の断面図を示す。ステント骨格360は、管腔反対側の放射線不透過性層364および管腔側の非放射線不透過性層366を有する構造要素362を有する。放射線不透過性層364はチューブ350の外側層356から形成され、非放射線不透過性層366はチューブ350の内側層358から形成される。さらなる実施の形態において、2つ以上の層を有するステント骨格は、2つ以上の半径方向の層を有するチューブから形成できる。
【0064】
特定の実施の形態において、放射線不透過性層および非放射線不透過性層を備えるチューブを、共押出によって形成できる。かかる実施の形態において、チューブは、放射線不透過性層および非放射線不透過性層を有するように共押出できる。
【0065】
押出機は、一般的にはポリマー溶融物が入口から吐出ポートへ送られるバレルを含む。ポリマーは、溶融物として、またはその融解温度未満の固体形態で押出機バレルに送り込むことができる。固体のポリマーは、バレルを通して送られる際に溶融される。押出機バレル内のポリマーは、ポリマーの融解温度(Tm)を上回る温度に加熱され、周囲圧力を超える圧力に暴露される。バレル内のポリマーは、例えば、回転スクリューの使用によって混合される。
【0066】
特定の実施の形態において、放射線不透過性層を形成するための押出物には、放射線不透過性バイオセラミック粒子と混合したポリマー溶融物を含むことができる。いくつかの実施の形態において、まず混合物を形成し、次に多層チューブを形成する押出機に送り込むことができる。他の実施の形態において、ポリマーおよび放射線不透過性ポリマーは、押出機に個別に送り込まれ、押出機内で混合または調合可能である。1つの実施の形態において、放射線不透過性層を形成するための押出物には、マトリックスポリマーを備えず、グラフトされたポリマーを備えるバイオセラミック粒子を含むことができる。
【0067】
ポリマー溶融物は、押出機バレルの端部に配置されたダイに向けて押出機から吐出される。ダイは、一般的には、特定の形状または設計形状を有するオリフィスを有し、押出機から吐出されたポリマー溶融物に形状を与える装置を指す。チューブ押出の事例において、ダイは、ダイから吐出されるポリマー溶融物に円筒形状を与える円形状のオリフィスを有する。ダイの機能は、オリフィスにポリマー溶融物を送ることによってポリマー溶融物の形状を制御することである。ポリマー溶融物を、一定の速度、温度、および圧力で送ることができる。
【0068】
共押出は、個別のオリフィスからの押出物が、冷却または冷蔵前に薄層状の構造へと融合し共に溶接されるように調整された2つまたはそれ以上のオリフィスを備えた単一のダイを通して、2つまたはそれ以上の材料を押出すプロセスを指す。各々の材料は、個別の押出機からダイに送り込むことができるが、各々の押出機が同一素材の2つまたはそれ以上の層を提供するようにオリフィスを調整してもよい。チューブの共押出の事例において、ダイは異素材が吐出される同心の円形のスリットを含んで、2つまたはそれ以上の層を備えるチューブを形成できる。
【0069】
本発明のいくつかの実施の形態において、放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む押出物が、1台の押出機で形成され、多層チューブを形成するために2つまたはそれ以上の円形オリフィスを備えるダイに送り込まれる。例示的な実施の形態において、図8は、2つの円形オリフィス(外側オリフィス402および内側オリフィス404)を有するダイ400を示す。バイオセラミック粒子およびポリマー材料を含む押出物は、矢印406で示すように、外側オリフィス402を介して吐出され得るが、非放射線不透過性層に対応する押出物は、矢印408で示すように、内側オリフィス404を介して吐出され得る。押出物は、矢印410の方向に、ダイ400を通して送られる。吐出押出物は融合し共に溶接され、冷却されてチューブを形成する円筒状の多層フィルムを形成する。
【0070】
他の実施の形態において、チューブの表面を覆うコーティング層を形成することによって、放射線不透過性層を含む多層チューブを製作できる。コーティングは、内側表面、外側表面、または両方を覆って形成できる。コーティングには、放射線不透過性バイオセラミック粒子およびポリマーを含むことができる。チューブは、内部に放射線不透過性材料を埋め込まないポリマーから形成できる。次に、ステントパターンをコーティングしたチューブにカットして、放射線不透過性層および非放射線不透過性層を備えるステント骨格を形成できる。
【0071】
かかる実施の形態において、コーティング材料は、噴霧または浸漬などの当技術分野において公知の方法によってチューブに塗布できる。コーティング材料は、溶媒中に溶解されたポリマーを含む溶液であり得る。コーティング材料は、溶媒中に懸濁された放射線不透過性バイオセラミック粒子をさらに含むことができる。いくつかの実施の形態において、コーティング材料は、溶媒中に溶解されているグラフトされたポリマーを備えるバイオセラミック粒子を含む。いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液は、溶液中に分散させた薬物も含み、放射線不透過性層が治療用層として機能できる。ステントをコーティング材料中に浸漬することによって、ステント上に材料を噴霧してコーティングを滴下することによって、または当技術分野において公知の他の方法によって、コーティング材料をステントに塗布できる。次に溶液中の溶媒を、例えば、蒸発によって除去し、ステント表面上にバイオセラミック粒子およびポリマー、ならびにいくつかの実施の形態においては薬物を備えた、ポリマーコーティングを残す。
【0072】
本発明のさらなる実施の形態は、2つまたはそれ以上の放射線不透過性層を備えたステントを含むことができる。ステントの追加の実施の形態は、さらに2つまたはそれ以上の非放射線不透過性層を含むことができる。かかるステントの実施の形態は、上述した方法によって製作できる。特に、選択された数の層を有するチューブは、共押出によって形成でき、ステントはそれから製作される。
【0073】
実施の形態の第3のセットにおいて、ステントは、ステント体もしくはステント骨格の表面またはステント体もしくはステント骨格の構造要素、の一部分もしくはすべてを覆う放射線不透過性コーティングを有することができる。かかる実施の形態において、ステント体またはステント骨格を、バイオセラミック粒子がないか、または実質的にないポリマーから形成できる。他の実施の形態において、ステント体またはステント骨格は、ポリマーと混合されたバイオセラミック粒子から形成できる。骨格中の粒子の濃度(例えば、5vol%未満、または5〜10vol%)は、コーティング中の粒子の濃度(例えば、10〜20vol%、または20%以上)未満であってもよい。骨格は、体温を上回るTgを備える半結晶性ポリマーであり得る。
【0074】
いくつかの実施の形態において、放射線不透過性コーティングは、マトリックスポリマー中に混合または分散させた放射線不透過性バイオセラミック粒子を含むことができる。マトリックスポリマーは、ステント体またはステント骨格のポリマーと同一、または異なる物であり得る。他の実施の形態において、放射線不透過性コーティングは、ブレンドされたマトリックスポリマーを備えず、グラフトされたポリマーを備える放射線不透過性バイオセラミック粒子を含む組成物を含むことができる。
【0075】
例示的な実施の形態は、PLLAまたはPLGAなどの体温を上回るTgを備える半結晶性ポリマーから形成されたステント体を含むことができる。例示的な実施の形態において、コーティング層のマトリックスポリマーは、PLLAまたはPLGAなどの半結晶性ポリマーでもあり得る。あるいは、コーティング層のマトリックスポリマーは、エラストマーポリマーであり得るか、またはエラストマーセグメント(例えばPCL、PDO、PLLA−co−PCL、PLLA−b−PCL)を含むことができる。かかるエラストマーポリマーまたはエラストマーセグメントは、体温未満のTgを有し得る。かかるグラフトされたポリマーを備えるバイオセラミック粒子のグラフトされたポリマーは、実施の形態のこれら2つの例示的なセットでもあり得る。
【0076】
いくつかの実施の形態において、放射線不透過性層の放射線不透過性バイオセラミック粒子の濃度は、体積で5%未満、5〜10%、10〜20%、20〜30%、または30%以上である。放射線不透過性コーティングは支持を提供するためには必要とされないので、いくつかの実施の形態において、層の機械的特性に対するバイオセラミック粒子の高濃度の悪影響を考慮せずに、放射線不透過性材料の濃度を増加させることができる。
【0077】
図9Aは、管腔反対側の表面460A、管腔側の表面460B、および側壁表面460Cを備えた構造要素450の縦軸455に対して直角の断面図を示す。図9Bは、構造要素450の軸方向の断面図を示す。構造要素450は、本体部分470を覆い、かつ接触して配置された放射線不透過性コーティング層465を備える本体部分470を含む。図示のように、放射線不透過性コーティング層465は本体部分470の全周囲を覆って配置される。
【0078】
他の実施の形態において、放射線不透過性コーティング層を、選択的に管腔反対側の層、管腔側の層、またはその両方を覆って配置できる。いくつかの実施の形態において、薬物を放射線不透過性コーティング層中に含むことができる。あるいは、またはさらに、薬物含有層は放射線不透過性層の上に、または放射線不透過性層と本体部分との間に配置できる。
【0079】
さらに、放射線不透過性コーティング層は、本体または骨格にコーティング材料を塗布することによって形成できる。上述するように、コーティング材料は、噴霧または浸漬など当技術分野において公知の方法によってステントに塗布することができる。コーティング材料は、溶媒中で溶解されたポリマーを含む溶液であり得る。コーティング材料は、溶媒中に懸濁された放射線不透過性バイオセラミック粒子をさらに含むことができる。いくつかの実施の形態において、コーティング材料は、グラフトされたポリマーを備えるバイオセラミック粒子を含み、グラフトされたポリマーは溶媒中に溶解されている。いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液には、溶液中に分散させた薬物も含むことができる。コーティング材料は、コーティング材料にステントを浸漬することによって、ステント上に材料を噴霧してコーティングを滴下することによって、または当技術分野において公知の他の方法によって、ステントに塗布されてもよい。次に溶液中の溶媒を、例えば蒸発によって除去し、ステント表面上に放射線不透過性コーティング層を残す。
【0080】
バイオセラミックは、反応性のヒドロキシル基またはアミン基を備えた人体と適合性のある任意のセラミック材料を含むことができる。より一般的には、バイオセラミック材料は、反応性のヒドロキシル基またはアミン基を備えた、任意のタイプの適合性のある無機材料または無機/有機ハイブリッド材料を含むことができる。バイオセラミック材料は、アルミナ、ジルコニア、アパタイト、リン酸カルシウム、石英系ガラス、またはガラスセラミック、および熱分解炭素を含むことができるが、これらに限定されない。バイオセラミック材料は、生体吸収性および/または活性があり得る。生理学的プロセスに積極的に関与するならば、バイオセラミックは活性がある。バイオセラミック材料は「不活性」でもありえ、材料が人体の生理学的条件下で吸収または分解されず、積極的に生理学的プロセスに関与しないことを意味する。
【0081】
アパタイトおよび他のリン酸カルシウムの例示的な例は、ヒドロキシルアパタイト(Ca10(PO(OH))、フロロアパタイト(Ca10(PO)、炭酸アパタイト(Ca10(POCO)、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、リン酸オクタカルシウム(Ca(PO)6−5HO)、ピロリン酸カルシウム(Ca−2HO)、リン酸四石灰(Ca)、およびリン酸カルシウム無水物(CaHPO−2HO)を含むが、これらに限定されない。
【0082】
用語バイオセラミックには、SiO、NaO、CaOおよびPなどの化合物からなる生体活性ガラスセラミックスである生体活性ガラスを含むこともできる。例えば、市販の生体活性ガラス(Bioglass(米国登録商標))は、SiO−NaO−KO−CaO−MgO−Pシステムの特定の組成物から派生する。市販の生体活性ガラスの一部は、以下のものを含むが、これらに限定されない。
45S5:46.1mol%SiO、26.9mol%CaO、24.4mol%NaO、および2.5mol%P
58S:60mol%SiO、36mol%CaO、および4mol%P;ならびに
S70C30:70mol%SiO、30mol%CaO。
他の市販のガラスセラミックはA/Wである。
【0083】
様々なサイズのバイオセラミック粒子を複合材に使用できる。例えば、バイオセラミック粒子は、ナノ粒子および/またはミクロ粒子を含むことができるが、これらに限定されない。ナノ粒子は、約1nm乃至約1,000nmの範囲の特徴的な長さ(例えば直径)を備えた粒子を指す。ミクロ粒子は、1,000nmを超え約10ミクロメーター未満の範囲の特徴的な長さを備えた粒子を指す。さらに、バイオセラミック粒子は、球体および繊維を含むが、これらに限定されない、様々な形状であり得る。
【0084】
いくつかの実施の形態において、バイオセラミック粒子は、粒子とポリマーマトリックスとの間の接着を改善する接着促進剤を含んでもよい。1つの実施の形態において、接着促進剤はカップリング剤を含むことができる。カップリング剤は、複合材材料のバイオセラミック粒子およびポリマーマトリックスの両方と反応可能な化学物質を指す。カップリング剤は、ポリマーとバイオセラミック粒子との間の界面として作用して、接着を促進するように二者の間の化学的架橋を形成する。
【0085】
接着促進剤は、シランカップリング剤および非シランカップリング剤を含むが、これらに限定されない。例えば、接着促進剤は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、有機トリアルコキシシラン、チタナート、ジルコナート、および有機酸−塩化クロム配位錯体を含むことができる。特に、3−アミノプロピルトリメトキシシランは、ポリ(L−ラクチド)とバイオガラスとの間の接着を促進することが示されている。Biomaterials 25 (2004) 2489−2500。
【0086】
埋込み型医療機器を製作するために使用され得るポリマーの代表例には、ポリ(N‐アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド);ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエチレンアミド、ポリエチレンアクリレート、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびハロゲン化ビニルコポリマー(ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリハロゲン化ビニリデン(ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニルなど)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66およびポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、ならびにカルボキシメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
本明細書で開示する方法に従う埋込み型医療機器の製作での使用に特によく適しているポリマーのさらなる代表的な例には、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般的には一般名EVOHまたは商標名EVALで公知である)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、SOLEF 21508、Solvay Solexis PVDF社から入手可能、ソロフェア、ニュージャージー州)、ポリフッ化ビニリデン(もしくはKYNARとして公知であり、ATOFINA Chemicals社から入手可能、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ならびにポリエチレングリコールが含まれる。
【0088】
本発明について、以下の用語および定義を適用する。
【0089】
「ガラス転移温度」(Tg)は、大気圧で脆性のガラス状態から剛性の変形可能または延性状態に、ポリマーの非晶性ドメインが変化する温度である。言いかえれば、Tgは、ポリマーの鎖中のセグメント運動開始が生じる温度に相当する。非晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーを温度上昇に暴露する場合、温度が上昇するにつれて、膨張係数およびポリマーの熱容量は共に増加し、このことは分子運動の増加を示す。温度が上昇してもサンプル中の実際の分子容は一定のままであり、そのためより高い膨張係数は、システムに関連する自由容積の増加、およびそれ故の分子が移動できる増加した自由度を指し示す。熱容量の増加は、運動を介する熱放散の増加に対応する。与えられたポリマーのTgは、加熱速度に依存し、およびポリマーの熱履歴に影響を受け得る。さらに、ポリマーの化学構造は、流動性に影響を与えることによって、ガラス転移に大きな影響を及ぼす。
【0090】
「応力」は、平面内の小さい領域を通して作用する力におけるような、単位面積当たりの力を指す。応力は、それぞれ垂直応力および剪断応力と呼ばれる、平面に対し垂直および平行な成分に分割することができる。真応力とは、力と面積が同時に測定される応力のことをいう。引張りおよび圧縮試験に適用される公称応力は力を当初のゲージ長さで除したものである。
【0091】
「強さ(強度)」とは、物質が破壊の前に耐えるであろう、軸に沿った最大応力を指す。極限強度は、試験中に加えられる最大負荷を当初の断面積で割って算出する。
【0092】
「弾性率」は、物質に加えられた単位面積当たりの力すなわち応力の成分を、加えられた力により生じる、加えられた力の軸に沿ったひずみで割った比率と定義される。例えば、物質は引張弾性率と圧縮弾性率の両方を有している。比較的高い弾性率を持つ物質は堅いか、または剛性である傾向がある。逆に、比較的低い弾性率を持つ物質は柔軟である傾向がある。物質の弾性率は、分子の組成および構造、物質の温度、変形量、ならびにひずみ速度または変形速度に依存する。例えば、ポリマーは、そのTg未満では高弾性率で脆性の傾向がある。ポリマーの温度が、そのTg未満からそのTgを超えて増加するにつれて、その弾性率は減少する。
【0093】
「ひずみ」とは、所与の応力または負荷において物質に発生する伸び(伸長)または圧縮の量を指す。
【0094】
「伸び」は、応力を受けたときに生じる物質の長さの増加と定義される。伸びは典型的には当初の長さに対するパーセンテージとして表される。
【0095】
「靭性」は、破壊の前に吸収されるエネルギーの量であり、すなわちある材料(物質)を破壊するために必要な仕事量と同等である。靭性の一つの基準は、応力−ひずみ曲線の下の、ひずみゼロから破壊ひずみまでの領域に示される面積である。したがって、脆性材料は、比較的低い靭性を有する傾向がある。
【0096】
「溶媒」は、1つ以上の他の物質を溶解または分散させるか、あるいは、少なくとも物質の一部を溶解または分散させ、分子またはイオンの大きさのレベルで均一に分散した溶液を形成することが可能な物質と定義される。溶媒は、1mlの溶媒あたり少なくとも0.1mgのポリマーを溶解可能であるべきで、より狭い範囲としては、大気温度および大気圧において1mlあたり0.5mgを溶解可能であるべきである。
【0097】
以下に説明される実施例、および実験的データセットは、説明の目的のみのためのものであり、本発明を限定する意味を一切有しない。以下の実施例は、本発明の理解を支援するために示されるが、本発明が実施例の特定の材料または手順に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0098】
[実施例1.放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトのナノ粒子の調製]
工程1:10gのヒドロキシルアパタイト、100mlのクロロホルム、40gのトリヨードベンゾイルクロリドおよび20mlのトリエチルアミンを、500mlの三つ口ガラスびんに加えて、反応溶液を形成する。反応溶液を、エステル化反応が終了するまで4時間撹拌した。
工程2:形成された放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子を反応溶液から5000rpmで20分間遠心分離する。
工程3:得られた放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子に100mlのクロロホルムを加えて、10分間撹拌し、次に再び遠心分離して、精製された最終生成物を得る。
工程4:真空オーブン中の70℃で最終生成物を一定の重量まで乾燥させる。
【0099】
[実施例2.PLLA/実施例1の放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子のブレンドからのステント調製]
工程1:PLLA/放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子のブレンド(体積で80:20)の押出を介して、チューブを形成する。押出チューブの内径(ID)および外径(OD)を、0.02インチおよび0.08インチに設定する。
工程2:押出チューブを半径方向に拡張し、レーザーでチューブにステントパターンをカットする。
【0100】
[実施例3.共押出を介する、PLLA/実施例1の放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子のブレンドからのステント調製]
工程1:2層チューブを、内側層としてのPLLAと、外側層としてのPLLA−co−PCL/放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子(体積で70:30)のブレンドとの共押出を介して形成する。内側層および放射線不透過性外側層の厚みを、0.05インチおよび0.02インチにそれぞれ設定する。押出チューブのIDおよびODを0.02インチおよび0.09インチに設定する。
工程2:押出チューブを半径方向に拡張して、レーザーでチューブにステントパターンをカットする。
【0101】
[実施例4.放射線不透過性末端基を含むグラフトされたPLLA鎖を備えた放射線不透過性ヒドロキシルアパタイト粒子の調製]
工程1:10gのナノヒドロキシルアパタイト、0.01gのオクチル酸第一錫触媒、5gのL−ラクチド(LLA)を、50mlのキシレンと共に反応装置(リアクター)に加える。反応を120℃で48時間進行させる。次に室温まで冷却する。
工程2:20gのトリヨードベンゾイルクロリドおよび10mlのトリエチルアミンを加え、エステル化反応が終了するまで4時間溶液を撹拌する。
工程3:400mlのメタノール中に最終生成物を沈殿させ、真空オーブンで最終生成物を一定の重量まで乾燥させる。
【0102】
[実施例5.放射線不透過性末端基および側基を含むPCL−co−PLLA鎖によりグラフトされた放射線不透過性ヒドロキシルアパタイト粒子の調製]
工程1:10gのナノヒドロキシルアパタイト粒子、0.01gのオクチル酸第一錫触媒、2.5gのカプロラクトン(CL)および50mlのキシレンを、湿気および酸素のない反応装置(リアクター)に加える。反応を120℃で24時間進行させる。
工程2:2.5gのLLAを加え、反応をさらに24時間進行させる。
工程3:10mlのトリエチルアミンおよび20gのトリヨードベンゾイルクロリドを加え、エステル化反応が終了するまで4時間撹拌する。
工程4:400mlのメタノール中に最終生成物を沈殿させ、真空オーブンで最終生成物を一定の重量まで乾燥させる。
工程5:50mlのTHF(2M/L)中のリチウムジイソプロピルアミド溶液と、工程4において作製された放射線不透過性末端基を有する10gの生成物を混合する。混合物を1時間撹拌する。
工程6:15gのヨウ素(20mlのTHF中)を反応装置(リアクター)に加え、混合物を2時間撹拌する。
工程7:PCLブロック幹に沿って形成されたヨウ素側基を備えた最終生成物を、300mlのメタノール中に沈殿させ、濾過により除去し、80℃の真空下で一定の重量まで乾燥させる。
【0103】
[実施例6.PLLA/実施例4または5の放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子のブレンドからのステント調製]
工程1:PLLA/放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子のブレンド(体積で80:20)の押出を介して、チューブを形成する。押出チューブの内径(ID)および外径(OD)を、約0.02インチおよび0.08インチにそれぞれ設定する。
工程2:押出チューブを半径方向に拡張し、レーザーでチューブにステントパターンをカットする。
【0104】
[実施例7.共押出を介する、PLLA/実施例4または5の放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子のブレンドからのステント調製]
工程1:2層チューブを、内側層としてのPLLAと、外側層としてのPLLA−co−PCL/放射線不透過性ヒドロキシルアパタイトナノ粒子(体積で60:40)のブレンドとの共押出を介して形成する。内側層および放射線不透過性外側層の厚みを、0.05インチおよび0.02インチにそれぞれ設定する。押出チューブのIDを約0.02インチに、およびODを約0.09インチに設定する。
工程2:押出チューブを半径方向に拡張して、レーザーでチューブにステントパターンをカットする。
【0105】
本発明の特定の実施の形態を示し、記述してきたが、本発明のより広い態様を逸脱しない限り、変更および変形を施すことも可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、添付の請求項はその範囲において本発明の真の精神および範囲に含まれる全ての変更および変形を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセラミック/ポリマーの複合材から少なくとも部分的に形成されるステントであって、
前記複合材は、マトリックスポリマー内に分散させた複数のバイオセラミック粒子を有し、
前記バイオセラミック粒子は、前記バイオセラミック粒子の表面にグラフトされた放射線不透過性官能基を備え、
前記放射線不透過性官能基は、ステントが蛍光透視法により可視的であることを可能にする、
ステント。
【請求項2】
前記放射線不透過性官能基は、ヨウ素、トリヨードベンゾイルクロリド、およびトリヨード安息香酸からなる群から選択される、
請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記マトリックスポリマーは、生体分解性である、
請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記マトリックスポリマーは、PLLA、PLGA、PDLA、PCL、PGA、PLLA−co−PCL、生体分解性ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ酸無水物、およびポリカーボネートからなる群から選択される、
請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記放射線不透過性官能基は、前記放射線不透過性官能基を持つ前記バイオセラミック粒子のヒドロキシル基のエステル化反応によって、前記バイオセラミック粒子の表面にグラフトされる、
請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記バイオセラミック粒子は、ヒドロキシルアパタイトおよび硫酸カルシウムからなる群から選択される、
請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記ステントは、前記複合材からなる放射線不透過性層、および非放射線不透過性層を含むステント体を備え、
前記放射線不透過性層は、管腔反対側の層または管腔側の層である、
請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記ステントは、骨格表面の上に配置されたコーティングを持つ骨格を備え、
前記コーティングは、前記複合材を備える、
請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記ステントは、前記複合材から形成された骨格を備える、
請求項1に記載のステント。
【請求項10】
バイオセラミック粒子の表面上にグラフトされたポリマー鎖を有するバイオセラミック粒子を備える放射線不透過性材料から少なくとも部分的に製作されるステントであって、
放射線不透過性官能基が前記グラフトされたポリマー鎖に化学的に結合されている、
ステント。
【請求項11】
前記放射線不透過性官能基は、ヨウ素、トリヨードベンゾイルクロリド、トリヨード安息香酸からなる群から選択される、
請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記放射線不透過性官能基は、前記グラフトされたポリマー鎖の幹に化学結合されるか、もしくは前記グラフトされたポリマー鎖の末端基に化学結合されるか、またはその両方である、
請求項10に記載のステント。
【請求項13】
前記バイオセラミック粒子は、前記バイオセラミック粒子の表面にグラフトされた放射線不透過性官能基をさらに含む、
請求項10に記載のステント。
【請求項14】
前記放射線不透過性材料は、マトリックスポリマーとブレンドされ、
前記バイオセラミック粒子は、前記マトリックスポリマー内に分散される、
請求項10に記載のステント。
【請求項15】
前記グラフトされたポリマー鎖は、前記マトリックスポリマーへの前記バイオセラミック粒子の接着を促進する、
請求項14に記載のステント。
【請求項16】
前記マトリックスポリマーは、生体分解性である、
請求項14に記載のステント。
【請求項17】
前記グラフトされたポリマー鎖は、前記マトリックスポリマーと混和性である、
請求項14に記載のステント。
【請求項18】
前記グラフトされたポリマー鎖の化学組成は、前記マトリックスポリマーと同一または実質的に同一である、
請求項14に記載のステント。
【請求項19】
前記マトリックスポリマーは、PLLA、PLGA、PDLA、PCL、PGA、PLLA−co−PCL、生体分解性ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ酸無水物、およびポリカーボネートからなる群から選択される、
請求項14に記載のステント。
【請求項20】
前記マトリックスポリマーおよび前記グラフトされたポリマー鎖は、PLLAまたはPLGAを備える、
請求項14に記載のステント。
【請求項21】
前記バイオセラミック粒子の表面は、反応性のヒドロキシル基を含む、
請求項10に記載のステント。
【請求項22】
前記バイオセラミック粒子は、ヒドロキシルアパタイトおよび硫酸カルシウムからなる群から選択される、
請求項10に記載のステント。
【請求項23】
前記ステントは、前記放射線不透過性材料からなる放射線不透過性層、および非放射線不透過性層を含むステント体を備え、
前記放射線不透過性層は、管腔反対側の層または管腔側の層である、
請求項10に記載のステント。
【請求項24】
前記ステントは、骨格表面の上に配置されたコーティングを持つ骨格を備え、
前記コーティングは、前記放射線不透過性材料を備える、
請求項10に記載のステント。
【請求項25】
前記ステントは、前記放射線不透過性物から形成された骨格を含む、
請求項10に記載のステント。
【請求項26】
放射線不透過性層および非放射線不透過性層を含むチューブを共押出する工程であって、前記放射線不透過性層は、第1の生体吸収性ポリマー内に混合された放射線不透過性バイオセラミック粒子を備え、前記非放射線不透過性層は、第2の生体吸収性ポリマーから形成される、共押出する工程と;
骨格を備えるステントを形成するために、チューブにステントパターンをカットする工程であって、前記ステント骨格は、非放射線不透過性層および放射線不透過性層を含んでおり、前記非放射線不透過性層骨格は、非放射線不透過性層チューブから形成され、前記放射線不透過性層骨格は、放射線不透過性層チューブから形成される、カットする工程とを備える;
ステントを製作する方法。
【請求項27】
前記放射線不透過性バイオセラミック粒子は、前記バイオセラミック粒子の表面上にグラフトされたポリマー鎖を備え、
放射線不透過性官能基が、前記グラフトされたポリマー鎖に化学結合され、
前記放射線不透過性官能基は、前記ステントが蛍光透視法により可視的であることを可能にする、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線不透過性バイオセラミック粒子は、前記バイオセラミック粒子の表面にグラフトされた放射線不透過性官能基を備え、
前記放射線不透過性官能基は、前記ステントが蛍光透視法により可視的であることを可能にする、
請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記チューブの共押出は、前記第2の生体吸収性ポリマーとの前記第1の生体吸収性ポリマーの共押出を備え、
前記第1の生体吸収性ポリマーは、その中に混合された前記放射線不透過性材料を含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ステントパターンは、レーザー加工によってカットされる、
請求項26に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate


【公表番号】特表2011−508648(P2011−508648A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541473(P2010−541473)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086426
【国際公開番号】WO2009/088640
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】