説明

放射線像変換パネルの製造方法、放射線像変換パネル、放射線検出装置

【課題】エアロゾル・デポジション成膜法による蛍光体膜の膜厚が安定した放射線像変換パネルの製造方法と、この製造方法により製造した放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルを用いた放射線検出装置の提供。
【解決手段】基板の上にエアロゾル・デポジション成膜装置を用いて形成された放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造法において、前記エアロゾル・デポジション成膜装置2は、前記蛍光体層を構成する蛍光体粒子を噴出するノズル2dを少なくとも1本有し、前記ノズルと前記基板の間に、前記蛍光体粒子の基板へ衝突する時の衝突角度制御手段2eを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断機器に用いられる放射線像変換パネルの製造方法、放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルを用いた放射線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号などに記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線像記録再生方法、所謂コンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)システムが知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体パネルを利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光とも言う)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光とも言う)として放射させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号とし、得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読み取り後の放射線変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0003】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、はるかに少ない被爆線量で情報量豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面から有利である。
【0004】
放射線変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみからなり、輝尽性蛍光体層は、通常、輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合剤からなるものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
【0005】
更に、最近ではX線蛍光体層と2次元光検出器を用いたフラットパネル型のデジタル放射線検出装置(以下、FPDとも言う)が普及しつつある。これは、画像特性が良好であること、画像の読み取り速度が高速であること等の利点があり、盛んに研究開発が行われている。
【0006】
従来のCRシステムに用いられる輝尽性蛍光体パネルやFPDの蛍光体層は、粒径0.1〜20μm程度の微粒子からなる蛍光体微粒子、その蛍光体微粒子を結合させるための樹脂バインダー、これらの隙間に存在する空隙から構成されたシート状の形態からなっている。
【0007】
しかしながら、従来の構成では、X線を照射された蛍光体から放出された光の一部が樹脂バインダーで吸収されることによって蛍光体層の発光量が低下すると言う問題があった。この課題に対し、樹脂バインダーが存在しない蛍光体膜を用いた放射線像変換パネルとして、気相成長法(気相堆積法)によって支持体上に、細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この様な気相成長法の適用が困難な蛍光体材料が多数あり、製造装置は高真空を必要とするため高価であると言う課題があった。
【0008】
一方、樹脂バインダーを用いずに高充填率の蛍光体膜を作製する方法として、ガスデポジション法(エアロゾル・デポジション成膜法と同じ)による成膜法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、特許文献2に記載の製造条件では、ノズルから噴出された蛍光体粒子が基板に着弾する時の着弾角度が基板の場所により異なるため、得られる蛍光体膜の膜厚が安定せず品質は十分なものではなかった。
【0009】
この様な状況から、エアロゾル・デポジション成膜法により蛍光体膜の膜厚が安定した品質を有する放射線像変換パネルの製造方法、この製造方法により製造された放射線像変換パネル及びこの放射線像変換パネルを使用した放射線検出装置を開発することが望まれている。
【特許文献1】特開平2−58000号公報
【特許文献2】特開2003−215256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、エアロゾル・デポジション成膜法による蛍光体膜の膜厚が安定した放射線像変換パネルの製造方法と、この製造方法により製造した放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルを用いた放射線検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0012】
1.基板の上にエアロゾル・デポジション成膜装置を用いて形成された放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造法において、前記エアロゾル・デポジション成膜装置は、前記蛍光体層を構成する蛍光体粒子を噴出するノズルを少なくとも1本有し、前記ノズルと前記基板の間に、前記蛍光体粒子の基板へ衝突する時の衝突角度制御手段を有することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0013】
2.前記衝突角度制御手段がノズルと対向する位置に開口部を有する遮蔽板であることを特徴とする前記1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0014】
3.前記衝突角度制御手段による蛍光体粒子の基板へ衝突する時の衝突角度が、95〜120°であることを特徴とする前記1又は2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0015】
4.前記蛍光体粒子の基板へ衝突する時の速度が、100〜400m/secであることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0016】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法で製造されたことを特徴とする放射線像変換パネル。
【0017】
6.前記5に記載の放射線像変換パネルを用いたことを特徴とする放射線検出装置。
【発明の効果】
【0018】
エアロゾル・デポジション成膜法による高鮮鋭度の放射線像変換パネルの製造方法と、この製造方法により製造した放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルを用いた放射線検出装置を提供することが出来、医療診断の精度を更に上げることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図1〜図8を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1は放射線像変換パネルの概略断面図である。
【0021】
図中、1は放射線像変換パネルを示す。放射線像変換パネル1は、基板101と、蛍光体膜102と、保護膜103とを有している。尚、保護膜103は必要に応じて設けたり、設けない場合もある。本発明は、本図に示す様な蛍光体膜102をエアロゾル・デポジション成膜法で成膜した放射線像変換パネルの製造方法と、この製造方法により製造した放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルを用いた放射線検出装置に関するものである。
【0022】
基板101としては、特に材料に限定されることはないが、一般的な基板、例えば、樹脂基板、セラミックス、石英ガラス等のほか、チタン、ステンレス、アルミニウム等の金属基板を使用出来る。
【0023】
蛍光体膜102を構成している蛍光体微粒子としては、CaWO4、Gd22S:Tb、BaSO4:Pb、CsI:Tl等の従来知られている蛍光体材料を使用出来る。(Gd,M,Eu)23の一般式で示される蛍光体粒子は、特に発光効率が高いので好ましい。ここで、希土類元素MとしてイットリウムY、ニオブNd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYbの少なくとも1つ以上の元素を含むものとする。これらの元素は放射線吸収率が高いので、粒状性が更に良好な放射線画像を得ることが出来る。又、ガドリニウムGdを40〜95質量%、希土類元素Mを5〜40質量%、ユーロピウムEuを2〜20質量%含有させることで、放射線吸収率及び発光効率を高く出来る。特に、ガドリニウムGdは70〜90質量%が好ましく、ユーロピウムEuは5〜10質量%が好ましい。
【0024】
保護層として光透過性の高い樹脂フィルム、例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム等もしくはガラス等の無機基板等を蛍光体層に接着剤で貼り合わせることも可能である。
【0025】
図2は本発明の放射線像変換パネルの製造方法に使用するエアロゾル・デポジション成膜装置の模式図である。
【0026】
図中、2はエアロゾル・デポジション成膜装置(以下、成膜装置とも言う)を示す。成膜装置2は、基板2aを保持するホルダー2bと、ホルダー2bをXYZθで3次元に作動させるステージ2cと、基板1aに蛍光体原料を噴出させる細い開口を備えたノズル2dと、基板2aとノズル2dとの間に設けられた入射角度制御手段の遮蔽板2eとを有するチャンバー2fと、ノズル2dへ材料を供給する材料供給部2gとを有している。材料供給部2gはエアロゾル化室2g1と、搬送ガスを貯留する高圧ガスボンベ2g2と、エアロゾル化室2g1と高圧ガスボンベ2g2とを繋ぐ配管2g3と、ノズル2とエアロゾル化室2g1とを繋ぐ配管2g4とを有している。遮蔽板2eは、基板2aと平行に設けられている。2f1はチャンバー2fの中を減圧にするための排気管を示し真空ポンプ(不図示)に繋がっている。搬送ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが挙げられる。2b1はホルダー2bに付けられた温度制御手段のペルチェ素子を示す。2g5はエアロゾル化室2g1に充填された蛍光体微粒子原料を示し、高圧ガスボンベ2g2からの搬送ガスにより攪拌・混合される。蛍光体微粒子原料2g5の平均粒径は、結晶性等を考慮し0.1〜2μmが好ましい。尚、平均粒径は、(株)堀場製作所製のPartica LA−950を使用して測定した値を示す。
エアロゾル化室2g1内の蛍光体微粒子原料2g5は、以下のような手順によって基板の上に蛍光体膜として形成される。
【0027】
エアロゾル化室2g1内に充填された蛍光体微粒子原料2g5は、搬送ガスを貯留する高圧ガスボンベ2g2から配管2g3を通ってエアロゾル化室2g1に導入され搬送ガスと共に、振動、撹拌されてエアロゾル化される。エアロゾル化した蛍光体微粒子原料2g5は配管2g4を通り、チャンバー2f内のノズル2dから衝突角度制御手段の遮蔽板2eに設けられた開口部2e1(図3、図4を参照)を介して基板2aに搬送ガスとともに吹き付けられ蛍光体膜が形成され放射線像変換パネルが製造される。
【0028】
蛍光体膜を基板2aの上に成膜する時、チャンバー2fは真空ポンプ(不図示)等で排気管2f1を介して排気される。尚、チャンバー2f内の減圧度は、膜中不純物濃度、平均自由行程等を考慮し、0.1〜1000Paで調整されることが好ましい。減圧度は、アルバック(株)製GP−2Aにより測定した値を示す。尚、蛍光体膜を基板2aの上に形成している間は、ホルダー2bに保持されている基板2aはXYZθステージ2cにより3次元方向に動いていることが好ましい。基板2aをXYZθステージ2cにより3次元に動かすことで、基板2aの所定の部分に必要な厚みの蛍光体膜を均一に形成することが可能となる。ホルダー2bの温度は、ホルダー2bに付けられた温度制御手段のペルチェ素子2b1により、基板2aを、結晶成長エネルギー等を考慮し、−100℃〜200℃に保つことが可能となっている。尚、温度は(株)八光製HTK1906を使用して測定した値を示す。基板2aの上に形成された蛍光体膜の上には必要に応じて蛍光体保護層を設けることも可能である。
【0029】
エアロゾル化された蛍光体微粒子原料2g5は、搬送ガスによって運ばれ基板2aに衝突することによって互いに衝突の衝撃によって接合し基板2aの上に堆積し蛍光体膜を形成する。基板2aに衝突する時の蛍光体微粒子原料2g5の衝突速度は、膜充填率、膜質等を等を考慮し、100〜400m/secであることが好ましい。速度は図8に示す装置を使用して測定した値を示す。尚、蛍光体微粒子原料2g5の衝突速度は搬送ガスの流速を代用値とした。
【0030】
蛍光体膜の厚さは、放射線の吸収効率、鮮鋭度、発光輝度等を考慮し、50〜500μmが好ましい。厚さは、5×5cmの面積を縦方向を5mm間隔で10箇所を(株)ケット科学研究所製MP0Dを使用して測定し、平均値として算出した値である。又、基板に蛍光体膜を形成した後に、別工程の熱処理装置(不図示)により熱処理を行うことで膜の緻密度を調整することも可能である。
【0031】
尚、本図はノズルが1本の場合を示しているが、基板の大きさによっては複数のノズルを配設することが可能である。複数のノズルを配設する場合は、基板への安定した蛍光体微粒子原料を供給するため、ノズルに応じて材料供給部を設けることが好ましい。
【0032】
図3は蛍光体膜を形成している状態の図2のRで示される部分の拡大概模式図である。
【0033】
図中、2e2は遮蔽板2eの上面(基板2aと対向する面)を示し、2e3は遮蔽板2eの下面(ノズル2dと対向する面)を示す。2d1はノズル2dの噴出口を示す。噴出口2d1の中心と遮蔽板2eに設けられた開口部2e1の中心は同軸上に位置する様にノズル2dをチャンバー2f(図2を参照)内に配設することが好ましい。
Xは、配管2g4を介して搬送ガスで送られて来るエアロゾル化された蛍光体微粒子原料2g5が噴出口から噴出され形成され、遮蔽板2eに衝突する漏斗状の一次噴流体を示す。X1(X2)は一次噴流体中の蛍光体微粒子原料2g5が遮蔽板2eの下面2e3に着弾した最外領域の端点を示す。θ1は端点X1(X2)と噴出口2d1の中心を結ぶ線と遮蔽板2eの下面2e3とのなす角度を示し、角度θ1を最外領域の端点X1に着弾した蛍光体微粒子原料2g5の衝突角度とする。一次噴流体Xは遮蔽板2eに着弾する領域が広いため最外領域の端点X1(X2)の蛍光体微粒子原料2g5の衝突角度θ1は大きくなっている。このため、噴出口の中心と対向する遮蔽板2eの位置とでは衝突速度に差が生じている。
【0034】
従来の成膜装置では遮蔽板2eを設けていないため、一次噴流体Xの状態で基板2aに蛍光体微粒子原料2g5が着弾し蛍光体膜を形成する。このため、基板2aの噴出口の中心と対向する位置から一次噴流体Xの蛍光体微粒子原料が基板2aに着弾する最外領域に向けて蛍光体微粒子原料2g5の着弾量が少なくなり厚さが均一にならない、衝突速度が最外領域に向けて遅くなるために蛍光体微粒子原料同士の衝突の衝撃力に差が生じ、蛍光体微粒子同士の接合により形成される蛍光体膜の特性に差が生じる危険がある。これらの、問題を解決するために設けられたのが衝突角度制御手段の遮蔽板2eである。
【0035】
Yは、一次噴流体Xの内、遮蔽板2eに設けられた開口部2e1より噴出し形成された基板2aに衝突する漏斗状の二次噴流体を示す。二次噴流体Yは、噴出口2d1の中心と開口部2e1の中心が同軸上に位置する様になっているため、一次噴流体Xの内でも一番搬送ガスの流速が安定した部分が開口部2e1より噴出し形成されている。
【0036】
Y1(Y2)は二次噴流体中の蛍光体微粒子原料2g5が基板2aの蛍光体膜形成面2a1に着弾した最外領域の端点を示す。
【0037】
θ2は端点Y1(Y2)と開口部2e1の遮蔽板2eの上面2e2側の端辺と噴出口2d1の中心を結ぶ線と基板2aの蛍光体膜形成面2a1とのなす角度を示し、角度θ2を最外領域の端点Y1に着弾した蛍光体微粒子原料2g5の衝突角度とする。本発明での衝突角度とは、この角度θ2を言う。角度θ2は、遮蔽板2eの開口部2e1の面積とノズル2dの噴出口2d1から蛍光体膜形成面2a1までの距離とから計算で求めた値を示す。角度θ2は、蛍光体微粒子原料2g5の衝突速度均一、蛍光体微粒子原料同士の衝突の衝撃力安定性、蛍光体膜の厚さ、等を考慮し、95〜120°が好ましい。
【0038】
角度θ2に影響を及ぼす因子としては、1)遮蔽板2eとノズル2dの噴出口2d1の端面までの距離S、2)開口部2e1の面積、3)一次噴流体の搬送ガスの流速、4)遮蔽板2eの厚さUが挙げられるため、これら1)〜4)を調整することで角度θ2を95〜120°にすることが可能となる。
【0039】
Tは遮蔽板2eとノズル2dの噴出口2d1の端面までの距離を示す。距離Tは、微粒子の平均自由行程等を考慮し、0.1〜2.0cmが好ましい。
【0040】
図4は図1に示す衝突角度制御手段の遮蔽板の概略図である。
(a)の遮蔽板に付き説明する。2e1は遮蔽板2eに設けられた円形の開口部を示し、1つの開口部を有している。(b)の遮蔽板に付き説明する。2e4(2e5)は遮蔽板2eに設けられた円形の開口部を示し、2つの開口部を有している。(c)の遮蔽板に付き説明する。2e6は遮蔽板2eに設けられた正方形の開口部を示し、1つの開口部を有している。(d)の遮蔽板に付き説明する。2e7(2e8)は遮蔽板2eに設けられた正方形の開口部を示し、2つの開口部を有している。(e)の遮蔽板に付き説明する。2e9は遮蔽板2eに設けられた長方形の開口部を示し、1つの開口部を有している。(f)の遮蔽板に付き説明する。2e10は遮蔽板2eの対角線上に設けられた長方形の開口部を示し、1つの開口部を有している。尚、開口部2e1〜2e10は何れもノズルと対応した位置に設けられている。
【0041】
本図は遮蔽板に設けられた開口部の数と形状の一例(a)〜(f)で示しているが、勿論、基板の形状、大きさに対応して遮蔽板の形状、大きさも変化するし、ノズルの数も変わるため本図に限定されるものではない。
【0042】
開口部2e1、2e4〜2e10の面積は、図2に示すような衝突角度θ2を得る様に1)遮蔽板2eとノズル2dの噴出口2d1の端面までの距離S、2)一次噴流体の搬送ガスの流速、3)遮蔽板2eの厚さUとを考慮し適宜設定することが可能である。
【0043】
遮蔽板に使用する材質としては、ステンレス、アルミニウム、銅等が挙げられ、特にステンレスが好ましい。
【0044】
図2〜図4に示す成膜装置を使用して、基板の上に蛍光体膜を形成し放射線像変換パネルを製造する放射線像変換パネルの製造方法により次の効果が挙げられる。
1)基板に衝突する蛍光体微粒子原料の角度が一定になるため、安定した蛍光体膜の形成が可能となる。
2)基板に衝突する蛍光体微粒子原料の衝突速度が、衝突する範囲で差がくなるため、蛍光体微粒子原料同士の衝突が安定し、安定した蛍光体微粒子原料の接合がなされることで、安定した蛍光体膜の形成が可能となる。
3)安定した蛍光体膜の形成に伴い、発光ムラがなくなり品質向上が可能となる。
【0045】
図5は、図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルのを使用したFPDの一例を示す模式図である。
図中、3はFPDを示す。FPD3は、ガラス基板等からなる絶縁性基板301と、絶縁性基板301の上に複数2次元に形成された、非晶質シリコンよりなる半導体薄膜を用いたフォトダイオードとTFT(薄膜トランジスタ)よりなる光電変換素子301と、光電変換素子301の表面に形成された半導体保護層303とを有する光検出器304と、光検出器304の上に図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネル305とを有している。
【0046】
放射線像変換パネルを光検出器304に設ける方法としては、放射線像変換パネルを光検出器に貼り合わせればよく、必要に応じて接着剤を使用することが出来る。支持基板が不透明な場合は、蛍光体層と光検出器と接するように形成し、支持基板が光学的に透明な場合は、支持基板を光検出器と接するように形成することが出来る。又、光検出器が支持基板を兼ねてもよく、光検出器の半導体保護層に、直接、蛍光体層を形成してもよい。又、放射線像変換パネルの蛍光体膜の輝度を向上させるために、蛍光体膜の上に光反射層を設けることも可能である。反射層として使用する材料としては、スパッタ、蒸着等の従来知られている成膜方法により作製される金属膜、例えば、チタン、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム等の単一金属又はそれらの合金が挙げられる。又、例えば、カーボン粉体をプレス成形し板状としたもの等により光吸収層を形成することで蛍光体層の鮮鋭度を向上出来る。反射層、吸収層の形成はX線撮影の目的により適宜選択すればよい。接着層、蛍光体保護層、半導体保護層は、これらの層の機能が発揮出来る厚さであれば出来るだけ薄い方が、輝度、鮮鋭度を高めることが出来るため、厚さは5〜20μmが好ましい。
【0047】
FPDのより詳細な構成としては、例えば、特開2003−57353号公報、同2005−114456号公報に記載されている構成が挙げられる。
【0048】
本図に示す様に、図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルを使用したFDPにより、速度ベクトルの揃った微粒子が結晶性の高い膜を形成することにより結晶中の発光光の拡散が抑制されることで鮮鋭度の向上が可能となる。
【0049】
図6は、図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルの概略図である。図6(a)は、図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルの概略斜視図である。図6(b)は、図6(a)のB−B′に沿った概略拡大断面図である。図6(c)は、図6(a)のC−C′に沿った概略拡大断面図である。
【0050】
図中、4は放射線像変換パネルを示す。放射線像変換パネル4は、輝尽性蛍光体シート401と、輝尽性蛍光体シート401を封止する封止フィルム402とを有している。本図で示される放射線像変換パネル4は、2枚の封止フィルム402の間に輝尽性蛍光体シート401を挟持し四方をヒートシーラで溶融接着した状態となっている。2枚の封止フィルム402は同じ材質であっても、異なっていてもよく、必要に応じて適宜使い分けることが可能となっている。又、輝尽性蛍光体シート401を封止する方法も特に限定はなく、例えば1枚の封止フィルムを折り曲げ、輝尽性蛍光体シート401を挟持し三方をシールする方法であっても構わない。封止する時は、減圧環境下で加熱融着することが、プレートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0051】
輝尽性蛍光体シート401は基材401aと、基材401aの上に形成した輝尽性蛍光体層401bとを有している。402a〜402dはシール部を示す。本図において輝尽性蛍光体シート401が図2〜図4に示される成膜装置により基材401aの上に輝尽性蛍光体層401bを形成することで製造されている。
【0052】
輝尽性蛍光体層401bを構成する輝尽性蛍光体としては、通常400〜900nmの範囲にある励起光によって波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号等に記載の希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号等に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号に記載の希土類元素賦活オキシハライド蛍光体;特開昭58−69281号に記載のセリウム賦活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;特開昭60−217354号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号に記載のセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号に記載のセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体、等が挙げられ、中でも、沃素を含有する2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、沃素を含有する希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。特に好ましい輝尽性蛍光体の組成としては、一般式1)、一般式2)で示されるものが挙げられる。
【0053】
一般式1) Ba1x(M2xFBry1y:aM1,bLn,cO
〔式中、M1:Li、Na、K、Rb、Csからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2:Be、Mg、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、Ln:Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素、x、y、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0<y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2,0<c≦0.1の範囲の数値を表す。〕
一般式2) M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″は各々F、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンで原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、又、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
である。
【0054】
基材401aとしては、各種高分子材料、ガラス、金属等が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工出来るものが好適であり、この点から言えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シートあるいは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。又、これら支持体の膜厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、更に好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。更に、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0055】
封止フィルム402の厚さは、強度、防湿性、撮影画像品質等を考慮し1〜60μmが好ましい。封止フィルム402としては、輝尽性蛍光体シートの輝尽性蛍光体層を湿度から保護するため、及び輝尽性蛍光体層から被写体の画像を取り出すために、特開平6−95302号に記載されている如き、無機物蒸着層を少なくとも一層含んだ透明な積層材料が防湿性の面からより好ましく用いられる。
【0056】
これら無機物蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜が挙げられる。例えば、Cr23、Sixy(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、単結晶Si、アモルファスSi、W、AI23等が用いられる。
【0057】
無機物蒸着層を設ける基材として使用する熱可塑性樹脂フィルムとしてはエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(0PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されているフィルム材料を使用することが出来る。
【0058】
無機物蒸着フィルムシートを介して積層する熱可塑性樹脂フィルムとしては一般の包装材料として使用されている高分子フィルム(例えば機能性包装材料の新展開株式会社東レリサーチセンター記載の高分子フィルム)である低密度ポリエチレン(LDPE)、HDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン(CPP)、OPP、ONy、PET、セロハン、ポリビニルアルコール(PVA)、延伸ビニロン(OV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)等が使用出来る。
【0059】
又、これら熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押し出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて貼り合わせて作った多層フィルム等も当然使用出来る。更に必要とする物性を得るために使用するフィルムの密度、分子量分布を組み合わせて作ることも当然可能である。
【0060】
最内層の熱可塑性樹脂フィルムとしては、LDPE、LLDPE及びメタロセン触媒を使用して製造したLDPE、LLDPE、又、これらフィルムとHDPEフィルムの混合使用したフィルムを使用することが好ましい。
【0061】
封止フィルムの水蒸気透過率としては、2.0g/m2・day以下であることが好ましく、吸湿等による輝尽性蛍光体シートの性能劣化を防止する点で0.5g/m2・day以下であることが特に好ましい。水蒸気透過率は、(株)日立ハイテック製PERMATRAN W3/61を使用して測定した値である。
【0062】
又、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持出来好ましい。又、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層するための接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としてもよい。
【0063】
又、輝尽性蛍光体シートの基材側に使用する封止フィルムにアルミ箔をラミネートした積層フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減出来、又この封止方法は作業的にも容易であり好ましい。
【0064】
図7は図6に示される放射線像変換パネルを使用した放射線検出装置の模式図である。
図中、5は放射線検出装置を示す。放射線検装置5は、放射線発生装置5A、図6に示される放射線像変換パネル5C、レーザ等の輝尽励起光源5D、放射線像変換パネル5Cにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置5E、光電変換装置5Eで検出された信号を画像として再生する画像再生装置5F、再生された画像を表示する表示装置5G、輝尽励起光と輝尽蛍光とを分離し、輝尽蛍光のみを透過させるフィルタ5Hとを有している。尚、5E〜5Gは放射線像変換パネル5Cからの光情報を何らかの形で画像として再生出来るものであればよく、上記に限定されるものではない。5Bは被写体を示す。
【0065】
本図に示されるように、放射線発生装置5Aからの放射線Rは、被写体5Bを通して輝尽蛍光体パネル5Cに入射光RIとして照射される。この入射した放射線は輝尽蛍光体パネル5Cの輝尽蛍光体層に吸収され、そのエネルギーが蓄積され、放射線透画像の蓄積像として形成される。次いで、この蓄積像を輝尽励起光源5Dからの輝尽励起光で励起し、輝尽発光として放出せしめる。
【0066】
放射される輝尽発光の強弱は、蓄積された放射線エネルギー量に比例するので、この光信号を、例えば、光電子倍増管等の光電変換装置5Eで光電変換し、画像再生装置5Fによって画像として再生し、画像表示装置5Gによって表示することで被写体の放射線透過像を観察することが出来る。
【0067】
輝尽励起光源5Dとしては、放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、又、輝尽励起光強度を大きくすることが出来るために輝尽発光効率を上げることが出来、より好ましい結果が得られる。レーザとしては、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることも出来る。又、フィルタ5Hを用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法による時は、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0068】
以上、本発明の放射線像変換パネルの製造方法で製造された放射線像変換パネルの利用例として、図5に示すFPD、図6に示す放射線像変換パネル、図7に示す放射線検出装置に付いて示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。他の利用例としては、従来の蛍光増感紙と放射線写真フィルムを組み合わせた所謂スクリーンフィルムシステムに用いる蛍光増感紙等が挙げられる。
【0069】
図6、図7に示す様に、図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルを使用した放射線検出装置により、速度ベクトルの揃った微粒子が結晶性の高い膜を形成することにより結晶中の励起光及び発光光の拡散が抑制されることで鮮鋭度の向上が可能となる。
【0070】
図8は図2に示すエアロゾル・デポジション成膜装置を使用して、基板に衝突する時の蛍光体微粒子原料の衝突速度測定装置の模式図である。
図中、6は衝突速度測定装置を示す。衝突速度測定装置6は、基板602を取り付ける回転羽根601と、モーター604によって回転運動する回転羽根601に取り付けられた幅0.5mmの切り欠きをもつスリット部材603とを有している。スリット部材603は回転羽根601に取り付けられ基板602の表面から19mm下に離れて回転羽根601の先端に固定されている。測定に際しては、ノズル2dが噴出口2d1を上向きにして本図に示す位置に配設される。噴出口2d1から、基板602の表面までの距離は24mmである。
本図に示される衝突速度測定装置による微粒子速度測定方法を記す。エアロゾルの噴射は、実際の構造物作製方法に準じて行う。速度測定装置6を実際に蛍光体膜を形成するチャンバー(不図示)内に設置して行う。図示しないチャンバーを減圧下におき、数Pa以下の圧力としたのちにノズル2dから微粒子を含むエアロゾルが噴射させ、この状態で微粒子速度測定装置6を一定回転速度で運転させる。ノズル2dの噴出口2d1から飛び出した微粒子は、基板602がノズル2dの上部に来た際にその一部がスリット部材603の切りかきの隙間を通過して基板602の表面に衝突し、基板602の上に構造物(衝突痕)を形成する。微粒子がスリット部材603から19mm離れた基板表面に到達する間に基板602は回転羽根601の回転によって位置を変化させているため、基板602の上におけるスリット部材603の切り欠きからの垂線交差位置よりその変位量分ずれた位置に衝突する。この垂線交差位置から衝突して形成された構造物までの距離を表面凹凸測定により計測し、この距離及びスリット部材603と基板表面からの距離、回転羽根601の回転速度の値を用いて、ノズル2dから噴射された微粒子の速度としては、ノズル2dの噴出口2d1から5mm離れた場所から24mm離れた場所までの平均速度を算出し、これを本件における微粒子の速度とした。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
実施例1
〈放射線像変換パネルの作製〉
(基板の準備)
厚さ1mm、大きさ5.0×5.0cmのステンレス板を準備した。
【0073】
(蛍光体膜の形成)
図2に示すエアロゾル・デポジション成膜装置を使用し、表1に示す様に図4の(a)に示す遮蔽板を使用し衝突角度を変えて粒度分布0.1〜1μm、平均粒径0.5μmの(Y,Gd,Eu)23の蛍光体微粒子を準備したステンレス板の上に衝突させ厚さ200μmの蛍光体膜を形成し、放射線像変換パネルNo.1−1〜1−8とした。比較試料として、遮蔽板を使用しない他は全て同じ条件で蛍光体膜を形成し放射線像変換パネルを作製しNo.1−9とした。衝突角度の変更は、遮蔽板に設けた開口部の面積を調整することで行った。衝突角度は、図3に示す角度θ2と同じであり、遮蔽板の開口部の面積とノズルの噴出口から蛍光体膜形成面までの距離とから計算で求めた値を示す。遮蔽板の厚さは0.5mmのステンレスを使用した。粒度分布は、(株)堀場製作所製のPartica LA−950を用いて測定した値を示す。平均粒径は、(株)堀場製作所製のPartica LA−950を用いて測定した値を示す。蛍光体膜の厚さは、5×5cmの面積を縦方向に5mm間隔で10箇所、横方向に5mm間隔で10箇所を(株)ケット科学研究所製MP0Dを使用して測定、平均値として算出し計算で求めた平均厚さを示す。尚、搬送ガスとしてN2ガスを用い、衝突速度は200m/secとした。衝突速度は、図8に示す衝突速度測定装置を用いて測定した値を示す。
チャンバーの真空度は100Pa、基板温度を20℃とした。チャンバーの真空度は、アルバック(株)製GP−2Aを用いて測定した値を示す。基板温度は、(株)八光製HTK1906を用いて測定した値を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
《放射線検出装置の作製》
(放射線検出装置の作製)
厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板上の非晶質シリコンからなる半導体薄膜上に、フォトダイオードとTFTからなる光電変換素子を形成し、その上にSiNxよりなる保護膜を形成して光検出器を作製し、準備した各放射線像変換パネルNo.1−1〜1−9を準備した、光検出器の上に、アクリル系接着剤(協立化学社製;商品名ワールドロックNO.XSG−5)により接合することで放射線検出装置を作製し試料No.101〜109とした。
【0076】
評価
作製した各試料No.101〜109に付き、以下に示す方法で鮮鋭性を測定し、比較の試料No.109の鮮鋭性を1とした時の相対値として評価した結果を表2に示す。
鮮鋭性の評価方法
鮮鋭性については、変調伝達関数(MTF)を求め評価した。各放射線像変換パネルにCTFチャートを貼り付けた後、80kVpのX線を10mR(被写体までの距離;1.5m)照射した後、蛍光体層を有する面側から半導体レーザ光(690nm、パネル上でのパワー40mW)を照射して、直径100μmの半導体レーザ光でCTFチャートを走査し、2.0本/mmの値を読み取って求めた。
鮮鋭性(MTF[2.0本/mm])の評価ランク
◎:MTFの値が、1.20以上
○:MTFの値が、1.10以上、1.20未満
△:MTFの値が、1.00以上、1.10未満
×:MTFの値が、0.90以上、1.00未満
××:MTFの値が、0.90未満
【0077】
【表2】

【0078】
本発明の有効性が確認された。
【0079】
実施例2
〈放射線像変換パネルの作製〉
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ5.0×5.0cmのステンレス板を準備した。
【0080】
(蛍光体膜の形成)
図2に示すエアロゾル・デポジション成膜装置を使用し、表3に示すようにキャリアガスの流速を変化させて衝突する時の速度を変えて粒度分布0.1〜1μm、平均粒径0.5μmの(Y,Gd,Eu)23の蛍光体微粒子を準備したステンレス板の上に衝突させ厚さ200μmの蛍光体膜を形成し、放射線像変換パネルNo.2−1〜2−6とした。ここで衝突角度は110°とし、基板と遮蔽板との距離を10cm、遮蔽板の開口部の面積を51.8cm2とすることで実現した。遮蔽板を使用しない他は全て同じ条件で蛍光体膜を形成し放射線像変換パネルを作製し比較試料No.2−7〜2−12とした。ここでは遮蔽板を使用しないためノズルから噴出する蛍光体微粒子原料の方向が一定で無くなるため衝突角の測定は不可能であった。尚、搬送ガスとしてN2ガスを用いた。蛍光体粒子が基板へ衝突する時の衝突速度は、図8に示す衝突速度測定装置を用いて測定した値を示す。チャンバーの真空度は100Pa、基板温度を20℃とした。
尚、遮蔽板は図4の(a)に示される遮蔽板を使用し、厚さ0.5mmのステンレスを使用した。
【0081】
【表3】

【0082】
粒度分布、平均粒径、蛍光体膜の厚さ、チャンバーの真空度、基板温度及び入射角度は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
《放射線検出装置の作製》
実施例1と同じ光検出器を作製し、準備した各放射線像変換パネルNo.2−1〜2−12を準備した、光検出器の上に、アクリル系接着剤(協立化学社製;商品名ワールドロックNO.XSG−5)により接合することで放射線検出装置を作製し試料201〜212とした。
【0083】
評価
作製した各試料No.201〜212に付き、鮮鋭性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
本発明の有効性が確認された。
【0086】
実施例3
〈放射線像変換パネルの作製〉
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ5.0×5.0cmのステンレス板を準備した。
【0087】
(蛍光体膜の形成)
図2に示すエアロゾル・デポジション成膜装置を使用し、表5に示すように図4に示す開口部の形状を変えた遮蔽板を使用し、粒度分布0.1〜1μm、平均粒径0.5μmの(Y,Gd,Eu)23の蛍光体微粒子を準備したステンレス板の上に入射角度110°、衝突速度300m/secで衝突させ厚さ200μmの蛍光体膜を形成し、放射線像変換パネルNo.3−1〜3−4とした。チャンバーの真空度は100Pa、基板温度を20℃とした。尚、粒度分布、平均粒径、蛍光体膜の厚さ、チャンバーの真空度、基板温度及び入射角度は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。尚、搬送ガスとしてN2ガスを用いた。蛍光体粒子が基板へ衝突する時の衝突速度は図8に示す衝突速度測定装置を用いて測定した値を示す。
遮蔽板としては、厚さ0.5mm、開口部の面積51.8cm2、材質をステンレスとした。
《放射線検出装置の作製》
実施例1と同じ光検出器を作製し、準備した各放射線像変換パネルNo.3−1〜3−4を準備した、光検出器の上に、アクリル系接着剤(協立化学社製;商品名ワールドロックNO.XSG−5)により接合することで放射線検出装置を作製し試料301〜304とした。
【0088】
評価
作製した各試料No.301〜304に付き、鮮鋭性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表5に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
本発明の有効性が確認された。
【0091】
実施例4
〈放射線像変換パネルの作製〉
(基材の準備)
厚さ2mm厚、500mm角サイズの炭素繊維強化樹脂板(東邦テナックス製CFRP#167A,含侵樹脂硬化エポキシ樹脂)に厚さ0.7mm、500mm角サイズのアルミ板(住友軽金属A1100 XLタイプ)を耐熱両面テープで貼り付け、基板を作製した。
【0092】
(輝尽性蛍光体層の形成)
図2に示すエアロゾル・デポジション成膜装置を使用し、表6に示す様に図4の(a)に示す遮蔽板を使用し衝突角度を変えて粒度分布0.1〜1μm、平均粒径0.5μmのBaFI:Euの輝尽性蛍光体微粒子を準備した基板の上に衝突させ厚さ200μmの輝尽性蛍光体層を形成し、輝尽性蛍光体板を作製しNo.4−1〜4−8とした。比較試料として、遮蔽板を使用しない他は全て同じ条件で蛍光体膜を形成し輝尽性蛍光体板を作製しNo.4−9とした。
衝突角度の変更は、遮蔽板に設けた開口部の面積、遮蔽板と基板との距離、搬送ガスの流速を調整することで行った。衝突角度は、図3に示す角度θ2と同じであり、遮蔽板の開口部の面積とノズルの噴出口から蛍光体膜形成面までの距離とから計算で求めた値を示す。遮蔽板の厚さは、0.5mmのステンレスを使用した。粒度分布、平均粒径、蛍光体膜の厚さは実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
尚、搬送ガスとしてN2ガスを用た。蛍光体粒子が基板へ衝突する時の衝突速度は200m/secとした。衝突速度は、図8に示す衝突速度測定装置を用いて測定した値を示す。チャンバーの真空度は100Pa、基板温度を20℃とした。チャンバーの真空度及び基板温度は、実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
【0093】
【表6】

【0094】
(防湿性封止フィルムの作製)
下記構成で表されるアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂層を含む積層保護フィルムAを作製した。
積層保護フィルムA:VMPET12///VMPET12///PET
積層保護フィルムAにおいて、VMPETは、アルミナ蒸着したポリエチレンテレフタレート(市販品:東洋メタライジング社製)を表し、PETはポリエチレンテレフタレートを表す。又、上記「///」は、ドライラミネーション接着層における2液反応型のウレタン系接着剤層の厚みが3.0μmであることを表し、各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表す。
【0095】
(放射線像変換パネルの作製)
準備した保護フィルムを2枚使って袋状にして、準備した輝尽性蛍光体板No.4−1〜4−9を減圧しながら包み、蛍光体面側の蛍光体周縁より外側にある領域で、基板と保護フィルムを融着機を使って融着し、裏面の保護フィルムは除去して放射線像変換パネルを作製し試料No.401〜409とした。
【0096】
評価
作製した各試料No.401〜409に付き、図7に示す放射線検出装置を使用し、鮮鋭度を実施例1と同じ方法で評価し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
【0097】
【表7】

【0098】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】放射線像変換パネルの概略断面図である。
【図2】本発明の放射線像変換パネルの製造方法に使用するエアロゾル・デポジション成膜装置の模式図である。
【図3】蛍光体膜を形成している状態の図2のRで示される部分の拡大概模式図である。
【図4】図1に示す衝突角度制御手段の遮蔽板の概略図である。
【図5】図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルのを使用したFPDの一例を示す模式図である。
【図6】図2〜図4に示される成膜装置により製造された放射線像変換パネルの概略図である。
【図7】図6に示される放射線像変換パネルを使用した放射線検出装置の模式図である。
【図8】図8は図2に示すエアロゾル・デポジション成膜装置を使用して、基板に衝突する時の蛍光体微粒子原料の衝突速度測定装置の模式図である。
【符号の説明】
【0100】
1、4 放射線像変換パネル
101 基板
102 蛍光体膜
103 保護膜
2 エアロゾル・デポジション成膜装置
2d ノズル
2d1 噴出口
2e 遮蔽板
2e1、2e4〜2e10 開口部
2f チャンバー
2g1 エアロゾル化室
2g2 高圧ガスボンベ
2g5 蛍光体微粒子原料
3 FPD
5 放射線検出装置
6 衝突速度測定装置
θ1、θ2 角度
X1(X2)、Y1(Y2) 端点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にエアロゾル・デポジション成膜装置を用いて形成された放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造法において、
前記エアロゾル・デポジション成膜装置は、前記蛍光体層を構成する蛍光体粒子を噴出するノズルを少なくとも1本有し、
前記ノズルと前記基板の間に、前記蛍光体粒子の基板へ衝突する時の衝突角度制御手段を有することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記衝突角度制御手段がノズルと対向する位置に開口部を有する遮蔽板であることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記衝突角度制御手段による蛍光体粒子の基板へ衝突する時の衝突角度が、95〜120°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体粒子の基板へ衝突する時の速度が、100〜400m/secであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法で製造されたことを特徴とする放射線像変換パネル。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線像変換パネルを用いたことを特徴とする放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−292634(P2007−292634A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121808(P2006−121808)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】