説明

放射線撮像装置、その制御方法、及びプログラム

【課題】撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させると共に、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制することができる放射線撮像装置を提供することを課題とする。
【解決手段】放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器(102,104)と、前記変換部に対して光の放出が可能な光源(105)と、前記平面検出器及び前記光源を制御する制御部(107)とを有し、前記制御部は、前記平面検出器からの信号に基づいて前記光源の光の放出を制御することを特徴とする放射線撮像装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の診断や工業用の非破壊検査に用いて好適な放射線撮像装置及び放射線撮像システムに関する。なお、本明細書では、X線、γ線などの電磁波やα線、β線も放射線に含めるものとして説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコンやアモルファスセレン等の非単結晶半導体を主材料とし、放射線又は光を電荷に変換する変換素子を具備したデジタル放射線撮像装置が実用化されてきている。また、CCDやCMOSセンサなど単結晶半導体を主材料とし放射線又は光を電荷に変換する変換素子を具備したデジタル放射線撮像装置が実用化されてきている。放射線撮像装置としては、放射線を可視光に変換する蛍光体と当該可視光を電荷に変換するアモルファスシリコン等を主材料とする光電変換素子によって構成された変換素子を具備する間接方式がある。また、アモルファスセレン等を主材料とする変換素子で放射線を直接電荷に変換する直接方式がある。どちらも、大面積で薄い放射線撮像装置を実現できることからフラットパネルディテクタ(FPD)(平面検出器)とも呼ばれ、撮影から画像を観察するまでの時間が非常に短いという特徴を有している。
【0003】
この放射線撮像装置は、装置に電源が投入され変換素子にバイアスが与えられてからの経過時間や、撮影の動作の時間や、装置に照射される放射線量又は光量等の影響を受けて、装置の特性の変動やそれにより取得される画像信号に変動が生じる恐れがある。例えば、変換素子のダングリングボンドや欠陥がトラップ準位として働くことにより暗電流が変動したり、過去の放射線又は光照射の履歴の影響で残像(ラグ)が発生又は変動したりする恐れがある。また、それらの少なくとも1つの要因により、変換素子における放射線又は光の入力と発生する電荷の出力との入出力特性である感度が変動する恐れがある。
【0004】
そこで下記の特許文献1や特許文献2では、放射線撮像装置に被写体情報を担う放射線又は光を照射する前に、別途準備された光源から被写体情報を担わない光を照射することで、装置の特性や取得される画像信号の変動を抑制する変動抑制効果が得られる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−40144号公報
【特許文献2】特表平11−513221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1又は特許文献2のように被写体情報を担わない光を照射した後で撮影までの時間が長くなると、時間の経過と共に上述の変動抑制効果が弱くなってしまう。
【0007】
また、被写体情報を担わない光の放出量が多い、または光の放出回数が多いと、光を放射する光源に流れる電流量の増大に伴い光源の負荷が増大してしまう。また、電流量の増大に伴い光源の消費電力が増大し、更に光源の発熱も増大する。
【0008】
また、光源からの光の照射量又は光の照射回数が多いと、光が照射される変換素子の素子劣化が促進されてしまう。
【0009】
本発明は、撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させると共に、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制することができる放射線撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射線撮像装置は、放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器と、前記変換部に対して光の放出が可能な光源と、前記平面検出器及び前記光源を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記平面検出器からの信号に基づいて前記光源の光の放出を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の放射線撮像装置の制御方法は、放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器からの信号を入力する入力ステップと、前記入力された信号に基づいて前記変換部に光を照射するよう光源を制御する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のプログラムは、放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器からの信号を入力する入力ステップと、前記入力された信号に基づいて前記変換部に光を照射するよう光源を制御する制御ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させると共に、光源の負荷、消費電力、及び発熱量を低減することが可能となり、また変換素子の劣化の促進を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下に図面を用いて本発明の第1の実施形態による放射線撮像装置の構成要素と各機能を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。本実施形態の放射線撮像システムは、特に医療用として使われる。本願発明における平面検出器は、照射されたX線などの放射線を可視光に波長変換する波長変換体104と、当該可視光に応じた電気信号を出力するセンサ基板102とを含むものである。本願発明における平面検出器は、センサ基板102を駆動する駆動回路110と、センサ基板102からの電気信号を読み出してデジタル画像信号を出力する読み出し回路108とを更に含むものである。本実施形態における放射線撮像装置は、装置の特性や取得される画像信号の変動を抑制するために被写体情報を担わない光をセンサ基板102に放射する光源105を有している。本実施形態では、放射線撮像装置は、少なくとも平面検出器と光源105とを筐体(不図示)内に有している。放射線撮像システムは、放射線を放射する放射線源103と、照射された放射線に応じた電気信号に基づくデジタル画像信号を取得するための放射線撮像装置と、を少なくとも含むものである。放射線撮像システムは、取得されたデジタル画像信号に対して適宜画像処理を行う画像処理回路122と、放射線源103や駆動回路110及び読み出し回路108の制御を行う制御部107と、を更に含む。なお、画像処理回路122で行われる画像処理の具体的方法は、デジタル画像信号を利用するものであり、上記課題を解決できるものであれば何でも良い。ここで、制御部107は画像処理回路122で画像処理されたデジタル画像信号を入力し、入力されたデジタル画像信号に基づいて光源105の動作を制御する。なお、画像処理回路122と制御部107はそれらの少なくとも1つが読み出し回路108と同じIC又は異なるICに組み込まれて筐体内に保持され、放射線撮像装置に含まれていてもよい。放射線撮像装置は放射線源103との間に被写体101が存在するように設置され、被写体情報を担う被写体101を透過した放射線の線量に応じた電気信号に基づくデジタル画像信号が取得される。なお、本実施形態では波長変換体104を設け、波長変換体104で放射線から波長変換された可視光をセンサ基板102で電気信号に変換する間接方式の形態を用いたが、本発明はそれに限定されるものではない。波長変換体104を用いずにセンサ基板102で放射線を直接電気信号に変換する直接方式の形態を用いても構わない。なお、本発明における光源の動作制御は制御部107によってなされるが、詳細な制御部107の制御動作は後述する。本実施形態では、放射線撮像装置と画像処理回路122と制御部107が、光源105からセンサ基板102へ光の照射の必要性を示す情報を検出する手段として機能している。
【0015】
次に、図2を用いて本実施形態の放射線撮像装置について詳細に説明する。図2は本実施形態における放射線撮像装置の概略構成例を示す回路図である。なお、図2では画素の個数は説明の為便宜上3行3列の9個であるが、本発明はそれに限定されるものではなく画素数は必要に応じて適宜その行列数が決められるものである。
【0016】
本実施形態における放射線撮像装置のセンサ基板102は、ガラス基板等の絶縁性基板上に画素S11〜S33が行列状に複数配置された変換部を有している。各画素S11〜S33は、それぞれ放射線又は光を電荷に変換する変換素子D1〜D9と、変換された電荷に基づく電気信号を出力するためのスイッチ素子T11〜T33とを有している。各変換素子D1〜D9は、検出電荷を蓄積する容量C1を内部に又は別途有している。本実施形態における変換素子D1〜D9は、放射線を光電変換素子が感知可能な光に変換する波長変換体(不図示)と、光を電荷に変換する光電変換素子とで構成されている。波長変換体としてはCsI:TlやGd22S:Tb等が好適に用いられる。光電変換素子としてはアモルファスシリコンを主材料とするMIS型光電変換素子を用いているが、本発明はそれに限定されるものではなく、PIN型フォトダイオードを用いてもよい。また、変換素子D1〜D9として、アモルファスセレンなどを主材料とした放射線を直接電荷に変換可能な素子をもちいてもよい。変換素子D1〜D9は、2つの電極と、その2つの電極の間に設けられた半導体層を少なくとも有するものである。本実施形態におけるスイッチ素子T11〜T33には、アモルファスシリコンを主材料とする薄膜トランジスタ(TFT)が用いられているが、本発明はそれに限定されるものではなく、ポリシリコンを主材料とするTFTを用いても良い。また、本実施形態では三端子の能動素子を用いているが、本発明はそれに限定されるものではなく、スイッチングダイオードなどの2端子の能動素子を用いても良い。また、本実施形態では、変換素子の一方の電極とスイッチ素子の2つの主電極であるソース又はドレインの一方が接続されている。しかしながら、本発明はそれに限定されるものではなく、変換素子とスイッチ素子のゲートが接続されソース・フォロウ・アンプを構成するものであってもよい。その際には変換素子とスイッチ素子のゲートとの接続部の電位を初期化するためのスイッチ素子を別途設けてもよい。駆動配線G1〜G3は、行方向の複数の画素のスイッチ素子の制御端子であるゲートに行単位で共通に接続されており、駆動回路110からの駆動信号をスイッチ素子に伝送するものである。信号配線M1〜M3は、列方向の複数の画素のスイッチ素子のソース又はドレインの他方に列単位で共通に接続されており、スイッチ素子によって出力された電気信号を読み出し回路108に伝送するものである。また、変換素子の他方の電極には複数の画素に共通にバイアス配線(不図示)が接続されており、変換素子が放射線又は光を電荷に変換するためのバイアスが変換素子に供給される。センサ基板102は、絶縁性基板上に設けられた画素S11〜S33、駆動配線G1〜G3、信号配線M1〜M3、バイアス配線を有するものである。
【0017】
駆動回路110は、駆動配線G1〜G3と電気的に接続され、駆動配線G1〜G3を介して駆動配線G1〜G3に接続されている複数の画素のスイッチ素子に行単位で駆動信号を印加し、スイッチ素子の導通状態と非道通状態を制御してセンサ基板102を駆動する。駆動回路110から出力される駆動信号は、スイッチ素子を導通状態とするパルス状の導通電圧を有している。例えば駆動回路110から1行目の駆動配線G1を介して駆動信号が印加されたスイッチ素子T11〜T13は導通状態となり、変換素子D1〜D3の電荷に応じた電気信号を信号配線にM1〜M3に行単位で並列に出力する。同様に2行目のスイッチ素子も3行目のスイッチ素子も順次駆動され、画素から行単位で出力された電気信号は、読み出し回路108で1フレームのデジタル画像信号に変換され出力される。
【0018】
読み出し回路108は、信号配線M1〜M3と電気的に接続され、信号配線M1〜M3を介して出力された電気信号を行単位で並列に読み出し、並列の信号を直列の信号に変換し且つアナログの信号をデジタル信号へ変換してデジタル画像信号を出力する。読み出し回路108は、信号配線に電気的に接続され信号配線からの電気信号を増幅して出力する演算増幅器(A1〜A3)と、演算増幅器からの電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路を有している。サンプルホールド回路は、電気信号をサンプリングするスイッチ(Sr1〜Sr3)とサンプリングされた電気信号を保持する容量(CL1〜CL3)によって構成される。これら演算増幅器(A1〜A3)とサンプルホールド回路は信号配線M1〜M3毎に設けられている。並列に出力された電気信号はサンプルホールド回路まで並列に処理される。読み出し回路108は、信号配線毎に準備されたサンプルホールド回路に保持された電気信号を順次出力し直列の画像信号に変換するマルチプレクサSr4と、マルチプレクサから出力された画像信号をインピーダンス変換する増幅器Bと、を更に有している。読み出し回路108は、増幅器A4から出力されたアナログの画像信号をデジタル画像信号に変換するアナログデジタル変換器(A/D変換器)121を更に有している。なお、本実施形態ではA/D変換器121をマルチプレクサSr4の後段に設けているが、本発明はそれに限定されるものではなく、A/D変換器が信号配線M1〜M3毎にマルチプレクサSr4の前段に設けられていてもよい。また読み出し回路108中の構成は一例であり様々な形態が考えられるが、信号配線M1〜M3からのアナログ信号を入力して、増幅、マルチプレクス、A/D変換を行いデジタル画像信号として出力する機能があれば、前述の例以外でも構わない。
【0019】
なお、図2には記載されていないが、本実施形態の放射線撮像装置には、センサ基板102の受光面と反対側の表面(裏面)と筐体との間に光源105が配置されている。ここで、センサ基板102の受光面は、画素が形成された表面であり、波長変換体104と対向しており、撮影時には放射線が照射される側の表面である。光源105は、有機ELパネルやLED、冷陰極管などが好適に用いられ、また、周知の導光体と組み合わせて用いてもよい。光源105の発光波長は、変換素子D1〜D3が吸収可能な帯域である事が望まれる。光源105から放出された光はセンサ基板102の裏面から直接入射して、各変換素子D1〜D3の半導体層に吸収される。
【0020】
次に、図2を用いて放射線撮像装置の画像取得動作を説明する。放射線源から出射され被写体を透過した放射線が放射線撮像装置に照射される。照射された放射線は波長変換体104で変換素子D1〜D9が感知可能な波長帯域の光に波長変換され、波長変換された光が変換素子D1〜D9に照射される。変換素子D1〜D9は照射された光の量に応じて電荷を発生し、発生された電荷は容量C1に蓄積される。ここまでの動作を蓄積動作と称する。
【0021】
次に、駆動回路110から駆動信号が駆動配線G1〜G3に与えられ、スイッチ素子T11〜T33を導通状態にして画素から電荷に基づく電気信号を出力する読み出し動作を行う。本実施形態では駆動回路110からの駆動信号は1行目の駆動配線G1、2行目の駆動配線G2、3行目の駆動配線G3の順に順次印加されている。それにより読み出し動作のためのスイッチ素子の制御は行単位で行われ、行単位で画素から電気信号の出力が並列に行われる。まず1行目の駆動配線G1に駆動回路110から駆動信号が印加され、1行目のスイッチ素子T11〜T13の制御端子に導通電圧が与えられる。これにより、1行目のスイッチ素子T11〜T13がオン状態となり、1行目の画素S11〜S13の各容量C1に蓄積されていた電荷に基づく電気信号が、信号配線M1〜M3に並列に出力される。信号配線M1〜M3に出力された電気信号は読み出し回路108で読み出される。読み出し回路108に読み出された電気信号は、演算増幅器A1〜A3で増幅される。ここで、演算増幅器A1〜A3に接続されたリセット用スイッチSw1〜Sw4は、電気信号の読み出しを行っている時は開放されている。続いて、サンプルホールド回路のスイッチSr1〜Sr3を導通して、演算増幅器A1〜A3で増幅された電気信号をサンプルホールド回路の容量CL1〜CL3に蓄積する。容量CL1〜CL3に電気信号が蓄積された後、スイッチSr1〜Sr3を非導通とし、容量CL1〜CL3と信号配線M1〜M3の電気的接続を遮断する。その後、リセット用スイッチSw1〜Sw4を用いて演算増幅器A1〜A3及び信号配線M1〜M3をリセットし、次の行からの電気信号の出力に備える。ここまでの動作を読み出し動作と称する。
【0022】
容量CL1〜CL3にサンプルホールドされた電気信号は、マルチプレクサSr4で順次出力されて並列直列変換され、増幅器Bに順次読み出される。これにより、容量CL1、CL2及びCL3の順で、蓄積されていた電気信号を順次出力することができる。この際、増幅器Bの容量Cf4には出力する毎に蓄積される電荷量が変化するため、マルチプレクサSr4で容量CL1〜CL3を選択する毎にスイッチSw4を短絡して容量Cf4を初期状態に戻す必要がある。これにより1行目の画素S11〜S13の電荷に基づく電気信号が、マルチプレクサSr4によりアナログ電気信号として増幅器Bに順次出力されることになる。そして、このアナログ電気信号は、増幅器Bでインピーダンス変換され、A/D変換器121でデジタルアナログ変換され、1行分のデジタルの画像信号として出力される。ここまでの動作を出力動作と称する。
【0023】
この読み出し動作と出力動作を2行目、3行目も同様に順次行うことにより、1行分のデジタル画像信号が読み出し回路108から出力される。また、本実施形態では、例えば1行目の出力動作と2行目の読み出し動作とを同じ期間内に時間的に重ねて行っている。これにより、1行目の出力動作の後に2行目の読み出し動作を行う形態に比べて、1画像分の画像信号を取得する撮影動作の時間を短くすることが可能となる。
【0024】
次に、本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの制御方法を説明する。
【0025】
放射線撮像装置及び放射線撮像システムでは、装置に電源が投入され変換素子にバイアスが与えられてからの経過時間や、撮影の動作の時間や、装置に照射される放射線量又は光量等の影響を受けて、装置の特性の変動や取得される画像信号に変動が生じる。これを解決するために、本願発明の放射線撮像装置及び放射線撮像システムでは、画像情報を有する放射線又は光とは別に、光源105から放出された画像情報を担わない光をセンサ基板102に照射する事で、装置の特性の変動や画像信号の変動を抑制している。ただし、撮影動作の度に画像情報を担わない光を照射すると、変換素子の劣化や光照射を行う光源105の劣化を招く。その為、必要な照射量を照射後は、光源105からの光の放出を一旦停止する事が望ましい。
【0026】
しかしながら、本願発明者は誠意な検討の結果、光の照射終了後の時間経過と共に上述の変動を抑制する効果が弱くなってしまうことを見出した。ここで、図14(a)〜(c)を用いて、放射線撮像装置の感度の変化を検証した(一定の強度の光を連続撮影した際の出力の変化)実験例を示す。ここで、感度とは変換素子に一定の強度の放射線又は光を照射して取得された出力に基づいて得られる変換素子の入出力特性である。本実験では、変換素子にバイアスを印加して待機させ、画像情報を担わない光を照射した後、一定の強度の放射線又は光を繰り返し変換素子に照射して撮影動作を行い、その際の出力の変化を感度変化として観察した。図14(a)は、本実験における放射線撮像システムのタイミングチャートを示すものである。図14(a)では、横軸は時間を示している。また、縦軸では、上から順に、画像情報を担わない光の照射、一定の強度の放射線又は光の照射に対する撮影動作(連続撮影)、感度、暗出力値(FPN値)を示している。ここで、本発明における暗出力値は、光または放射線が撮像装置に入力されない暗状態で撮像装置から取得された暗時の出力であり、撮像装置の固定パターンノイズの量が含まれるものである。この暗出力値は、先に説明した撮影動作において放射線が照射されずに蓄積動作を行い、その他は同様の動作シーケンスで取得されるものである。図14(b)は、画像情報を担わない光を照射してから最初の画像信号の撮影動作を開始するまでの時間T1と最初の画像信号の読み出し動作を開始してから安定した感度が得られるまでの時間T2の変化を示したグラフである。図14(b)では、横軸は時間を示しており、縦軸は最初の画像信号の読み出し動作を開始してから安定した感度が得られるまでの時間T2を示している。図14(b)において、画像情報を担わない光を照射してから最初の画像信号の読み出し動作を開始するまでの時間T1が長いほど、安定した感度が得られるまでの時間T2が長くなる。つまり、時間の経過と共に、画像情報を担わない光を照射することによって得られる変動抑制効果が弱くなってしまうことがわかる。これにより、連続して行われる撮影の間に画像情報を担わない光を照射せずに連続した撮影を行う際に、出力変動が起きて使い勝手を悪化させる可能性があることがわかる。また、時間T1が長くなるほどダーク電流が変動し、その変動に伴い暗出力値も感度が安定するまでの時間T2と同様に変動する。図14(c)は、画像情報を担わない光を照射してから最初の画像信号の撮影動作を開始するまでの時間T1と暗出力値の変動を示すグラフである。図14(c)では、時間T1が長くなると暗出力値が減少していることがわかる。つまり、図14(b)及び図14(c)から、感度の変動と暗出力値の変動とが相関していることがわかる。図14(b)及び図14(c)より、時間T1が短ければ感度が安定するまでの時間T2は短くなり変動抑制効果は高くなるが、暗出力値は大きくなる。そして時間T1が長くなれば感度が安定するまでの時間T2は長くなり変動抑制効果は低下するが、暗出力値は小さくなる。つまり、感度の変動が安定する時間T2と暗出力値の変動は相関しており、暗出力値の変動を観察することにより感度の変動の安定化度合いがわかる。そして暗出力値が所定の値となったときに要求される変動抑制効果が得られなくなったと判断することができる。その所定の値を基準値に設定し、基準値と暗出力値とを比較することにより、要求される変動抑制効果が得られなくなったと判断することが可能となる。画質を評価した際に感度の不安定が問題となる場合は、光を照射直後に暗出力値は大きいが、感度の変動が早く安定し、安定した状態で撮影できる。ただし変換素子の種類や構造によっては、光を照射すると暗出力値が増加する形態もあり、この場合でも暗出力値が増加し且つ感度も早く安定する光照射直後の状態が好ましい。なお、上記実験は一例であり、上述の感度、ダーク電流の変動以外にも残像の発生等が、画像情報を担わない光を照射してからの時間と共に変動する。以上により、本願発明者は上述の実験で、画像情報を担わない光の照射終了後の時間経過と共に変動抑制効果が弱くなってしまうこと、及び感度の変動が安定する時間及びそれにより見受けられる変動抑制効果と、暗出力値の変動との間には相関があることを見出した。
【0027】
本実施形態では、暗出力値に着目して予め取得した暗出力値もしくは1画像分の暗出力値に基づく暗出力画像の情報を基に、制御部107による制御を行う。なお、本発明において暗出力値もしくは1画像分の暗出力値に基づく暗出力画像を暗出力信号とする。センサ基板102の出力は、変換素子D1〜D9にバイアスを印加後に光源105から放出された画像情報を担わない光を変換素子D1〜D9に照射すると、感度の変動抑制効果が得られる。しかし、画像情報を担わない光の照射からの時間の経過と共に感度の変動抑制効果が弱まる。撮影者や撮影画像の観察者は、これら感度の変動抑制効果の低下により取得される画像に違和感を覚える可能性がある。この為、感度の変動抑制効果の低下は、画像観察者が違和感を生じない程度に抑える必要がある。また、感度の変動抑制効果が低下すると残像の発生量も増加する。これらも画像観察者に違和感を与える。
【0028】
感度の変動抑制効果がどの程度低下した場合に画像観察者に違和感を与えるか、もしくは、撮影と撮影の間で具体的に何%の感度の変化があった際に、画像観察者に違和感を与えるかは、主観評価を伴うため明確な定義は難しいが、許容値の線引きをする必要がある。本実施形態では、画像違和感を生じる際の暗出力値もしくは暗出力画像(暗出力信号)を基準値として制御を行う。この基準値は、予め取得された画像を画像観察者もしくは画像処理ソフトが測定及び評価する事により決定する。
【0029】
次に、上記課題を解決するための本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システム及びその動作を説明する。図3は本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの概略構成図であり、図4は放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【0030】
図3において、医療用X線撮影及び透視を行うCアーム118は、平面検出器(撮影部)119及び放射線源(X線源)103を有する。平面検出器119は、図1と同様に波長変換体104と、センサ基板102と、駆動回路110と、読み出し回路108と、光源105とを筐体(不図示)内に収容している。放射線源103は、Cアーム118の平面検出器119と対向した位置に取り付けられている。また、本実施形態において平面検出器119がCアーム118に取り付けられている形態を説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。例えば、臥台のような固定位置に備え付けられてもいいし、カセッテとして自由に持ち運べる形態であっても構わない。
【0031】
このCアーム118に保持される平面検出器119は、ケーブル又は無線通信によってPC(パーソナルコンピュータ)111につながれており、PC111を介して放射線源103と同期が取られている。PC111は、図1の制御部107を含むものである。撮影者(技師、医師)は、撮影画像をこのPC111のディスプレイを通じて確認することが可能である。
【0032】
また、PC111は、図1の画像処理回路122も含んであり、センサ基板102からの出力を読み出し回路108を経てデジタル画像信号として取得し、画像処理を行う。本実施形態においてPC111は、得られた暗出力値及びそれが1画像分となった暗出力画像を用いた演算処理後の情報と、放射線源103の動作状態を基に、光源105の発光動作の制御を行う。光源105を発光させる条件等は後述する。次に、撮影のタイミングを含めた駆動例を説明する。
【0033】
まず、放射線撮像装置の電源をオンして、変換素子D1〜D9にバイアスを印加する。次に、センサ基板102の変換素子D1〜D9に光源105から放出された画像情報を担わない光を照射する。その後、先に説明した撮影動作において放射線が照射されずに蓄積動作を行い、その他は同様の動作シーケンスで暗出力値を定期的に取得する。本実施形態では、1分ごとに暗出力値を取得する。この際、放射線源103から放射された放射線及び光源105から放出された画像情報を担わない光はセンサ基板102に照射されない。得られた暗出力値及びそれに基づく暗出力画像(暗出力信号)は制御部107を含むPC111に出力され処理され平均値が求められる。制御部107は取得された暗出力値もしくは暗出力画像と予め取得され設定された基準値とを比較する。取得された暗出力値もしくは暗出力画像の平均値が予め取得した基準値を下回ったと判定された場合、PC111の制御部107は、光源105を動作させ光源105から画像情報を担わない光を放出させる。放出された光が変換素子D1〜D9に照射され、変換素子中のトラップ準位が埋められて、ダーク電流、残像の発生、感度変化の抑制等、特性が安定した測定が可能となる。トラップ準位中の電荷は、熱による励起などで時間の経過と共に光照射前の状態に戻っていく。そのため、暗出力値もしくは暗出力画像を常に取得し、基準値との比較を行い光源105からの光の放出及びその変換素子への照射の必要性の有無を判定する。ただし、暗出力画像を取得するタイミングと放射線画像を取得するタイミングが重なった場合は、放射線画像の取得が優先する。それにより、放射線画像取得のスループットを落とさないですむ。撮影者が撮影ボタン115を押すと、放射線源103が放射線を曝射し、放射線撮像装置が撮影動作を行い、被写体画像が生成される。
【0034】
なお本実施形態においては、暗出力値もしくは暗出力画像の基準値を取得する際や、撮影動作において変換素子にバイアスがかけられると1分おきに暗出力値もしくは暗出力画像を取得するとしている。ただし、暗出力値もしくは暗出力画像の基準値を取得する際に、何枚目に取得した暗出力値もしくは暗出力画像から違和感を生じるようになったか判定できれば、これより長くても短くてもよい。暗出力値もしくは暗出力画像を取得する間隔が長すぎて、1枚目の暗出力値もしくは暗出力画像を取得した際に、既に画像に違和感がある場合が考えられる。逆に取得する間隔が短すぎて、違和感を生じる暗出力値もしくは暗出力画像を見つける為に膨大な数の暗出力値もしくは暗出力画像を判別しなければならない場合がある。前者は課題を満たせない可能性があり、後者は作業効率が悪い為、好ましくない。
【0035】
また本実施形態では、暗出力値もしくは暗出力画像が基準値を下回った場合に光照射を行うが、センサの種類によっては、光源105を照射して得られる効果が弱まると暗出力値もしくは暗出力画像が高くなり、何らかの画像違和感を生じる場合もある。このような場合は、暗出力値もしくは暗出力画像が基準値を上回った場合、光照射を行うとよい。また、本実施形態では暗出力値もしくは暗出力画像の平均としているが、センサ基板102中の一部の暗出力値もしくは暗出力画像でもよいし、暗出力値もしくは暗出力画像の最大値、最小値等を用いてもよい。
【0036】
本実施形態では、暗出力値もしくは暗出力画像の平均のみを用いているが、暗出力値もしくは暗出力画像は温度にも依存する。そのため、構成要素として制御部107に温度センサを持ち、温度センサが検出する温度によって光を照射する基準値となる暗出力値もしくは暗出力画像を変更してもよい。また、光源105が存在せず、光源105から画像情報を担わない光を放出する代わりに、放射線源103から画像情報を担わない放射線の放射を行ってもよい。
【0037】
以上により、特性が改善された撮影画像を撮影者の撮影意思と略同時に得る事ができる。具体的には、撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させることができる。また、変換素子への光照射の時間を抑え、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制する効果が期待できる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、図5を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。本実施形態と第1の実施形態との相違点は、タイマ106を追加した点である。本実施形態では、画像処理回路122からの暗出力値もしくは暗出力画像を直接制御に用いるのではない。第1の実施形態と同様に放射線撮像装置からの暗出力値もしくは暗出力画像で画像違和感の判定を行い、画像情報を担わない光が照射されてから判定されるまでの時間を基準値としてタイマ106が記憶する。そしてタイマ106は、放射線画像の撮影動作において時間情報を制御部107に出力し、制御部107は時間情報に基づいて光源105からの光の放出及びその変換素子への照射の必要性の有無を判定し、光源105からの画像情報を担わない光の放出を制御する。具体的には、放射線画像の撮影動作において、光源105から画像情報を担わない光が照射されてからの時間をタイマ106が計測する。タイマ106は計測された時間が予め記憶された画像違和感が判定された時間である基準値に達したときに制御部107に時間情報として信号を与える。制御部107はその信号に基づいて光源105から画像情報を担わない光を放出させ、変換素子に光を照射する。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0039】
次に、図6を用いて本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムを説明する。図6は、本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの概略構成図である。放射線撮像システムは、この構成例以外でもかまわない。図3に示す第1の実施形態との相違点は、Cアーム118の替わりに臥台113が平面検出器119を支持しており、放射線源103は天井に固定されている点である。また、撮影者(技師、医師)は、PC111を介してプリンタ112で取得された放射線画像の印刷を行う事も可能である。それ以外の構成は、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0040】
本実施形態におけるタイマ106は平面検出器119内に設けられているが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えばPC111内に設けられていてもよい。
【0041】
本実施形態では、補正した画像を観察して、違和感が生じた際の前記経過時間を記録しても良い。例えば、取得した画像と1枚前に取得した画像との差分を観察して違和感の有無を判断しても良い。
【0042】
次に図7を用いて本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの動作を説明する。図7は放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【0043】
まず、放射線撮像装置の電源をオンして、変換素子D1〜D9にバイアスを印加する。次に、タイマ106は照射命令1を一度PC111内の制御部107に出力し、制御部107は光源105から画像情報を担わない光を放出させ、センサ基板102の変換素子D1〜D9に光源105から放出された画像情報を担わない光を照射する。その際にタイマ106は光源105から画像情報を担わない光が照射されてからの時間の計測を開始する。そして計測された時間が予め記憶された画像違和感が判定された時間である基準値に達したときに、タイマ106は時間情報として照射命令1をPC111内の制御部107に出力する。そしてPC111内の制御部107は、照射命令1に基づいて光源105から画像情報を担わない光を放出させ、変換素子に光を照射する。なお、計測された時間が基準値に達する前に放射線源103から放射線が照射された場合には、タイマ106は放射線が照射されてからの時間の計測を開始する。そしてタイマ106は放射線が照射されてからの時間を基準値と比較し、その時間が基準値を超えた場合に照射命令1を出力する。
【0044】
照射命令1と放射線画像を取得するタイミングが重なった場合は、放射線画像の取得が優先する。それにより、放射線画像取得のスループットを落とさないですむ。以上により、第1の実施形態と同様に、撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させることができる。また、変換素子への光照射の時間を抑え、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制する効果が期待できる。それに加えて、第1の実施形態に比べて周期的に暗出力値もしくは暗出力画像を取得することなく制御することが可能となり、システムの負荷が低減する効果が得られる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に図8(a)及び(b)を用いて本発明の第3の実施形態について説明する。図8(a)及び図8(b)は、本発明の第3の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図であり、第2の実施形態の構成に加えて、被写体検出センサ(接触センサ)116が設けられている。被写体検出センサ116は、光照射の必要性を示す情報を検出する手段として働き、制御部107によって制御され、人の接触、接近の有無を制御部107に伝える。具体的には、圧力を感知可能な圧力センサ、人体との接触における電流変化を感知するセンサ、或いは、人の体温を検知可能な温度センサなどが適用可能である。被写体検出センサ116は、被写体が撮影時に触れる臥台113で顎を置く部位にとりつけられている。被写体検出センサ116は、撮影前に被写体(患者)114が顎を載せると、その圧力を検出し、被写体検出信号をPC111内の制御部107に出力する。本実施形態では、PC111内の制御部107は、タイマ106からの信号と、被写体検出センサ116の被写体検出信号と、放射線源103の状態を基に、光源105から画像情報を担わない光を放出させるか否かの制御を行う。その他の構成は、第2の実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0046】
次に、図9を用いて本実施形態の放射線撮像システムの制御方法を説明する。図9は、放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【0047】
まず、放射線撮像装置の電源をオンして、変換素子D1〜D9にバイアスを印加する。次に、タイマ106は照射命令1を一度PC111内の制御部107に出力し、制御部107は光源105から画像情報を担わない光を放出させ、センサ基板102の変換素子D1〜D9に光源105から放出された画像情報を担わない光を照射する。その際に、第2の実施形態と同様にタイマ106は光源105から画像情報を担わない光が照射されてからの時間の計測を開始する。そして計測された時間が予め記憶された画像違和感が判定された時間である基準値に達したときに、タイマ106は時間情報として照射命令1をPC111内の制御部107に出力する。また、被写体検出センサ116は、被写体(患者)114の顎が、臥台113の被写体検出センサ116に触れたことを検出すると、被写体検出信号としての照射命令2をPC111内の制御部107に出力する。そしてPC111内の制御部107は、照射命令1が入力された後に照射命令2が入力されると、光源105から画像情報を担わない光を放出させ、変換素子に光を照射する。なお、計測された時間が基準値に達する前に放射線源103から放射線が照射された場合には、タイマ106は放射線が照射されてからの時間の計測を開始する。そしてタイマ106は放射線が照射されてからの時間を基準値と比較し、その時間が基準値を超えた場合に照射命令1を出力する。以後、次に照射命令1が出力されるまで、照射命令2の入力に関わらず、光源105は光の放出を行わない。撮影動作においては、撮影者が撮影ボタン115を押すと、ただちに、撮影動作に入り、放射線源103は放射線を曝射する。被写体検出センサ116からの照射命令2と放射線画像を取得するタイミングが重なった場合は、放射線画像の取得が優先する。それにより、放射線画像取得のスループットを落とさないですむ。タイマ106からの照射命令1が出力されていた場合は、光照射は撮影期間が終了後、もう一度、照射命令2が出力されると行われる。
【0048】
図10は、上記の本実施形態による制御方法を示すフローチャートである。ステップS1201では、電源オン又は光源105の光照射から基準値としての所定時間が経過すると、ステップS1202に進む。次に、ステップS1202では、タイマ106がPC111内の制御部107に照射命令1を出力する。次に、ステップS1203では、PC111内の制御部107は、被写体検出センサ116から照射命令2の入力があるか否かを判断する。照射命令2の入力があるときにはステップS1205に進み、照射命令2の入力がないときにはステップS1204に進む。なお、照射命令3については、後に第4の実施形態で説明する。ステップS1204では、PC111内の制御部107は、照射命令2の入力があるまで平面検出器を待機させる。制御部107で照射命令2の入力が感知されればステップS1205に進む。ステップS1205では、PC111内の制御部107は撮影動作の期間中か否かを判断する。撮影動作の期間中であればステップS1207に進み、撮影動作の期間中でなければステップS1206に進む。ステップS1207では、PC111内の制御部107は撮影期間終了まで待ち、ステップS1203に戻る。ステップS1206では、PC111内の制御部107は、光源105に光を照射させる。
【0049】
以上により、本実施形態では第1の実施形態と同様に、撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させることができる。また、変換素子への光照射の時間を抑え、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制する効果が期待できる。それに加えて、第1の実施形態に比べて周期的に暗出力値もしくは暗出力画像を取得することなく制御することが可能となり、システムの負荷が低減する効果が得られる。また、被写体検出センサ116を用いることで、第2の実施形態と比べて、被写体が撮影可能な位置に存在しない際の光源105による光照射回数を削減する事が可能である。
【0050】
(第4の実施形態)
図11を用いて本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムを説明する。図11は、本発明の第4の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。本発明の第4の実施形態と第3の実施形態との相違点は、被写体検出センサ116の替わりに位置検出センサ(位置センサ)117が追加されている点である。位置検出センサ117は、光照射の必要性を示す情報を検出する手段として働き、制御部107によって制御され、センサの位置に関する情報を制御部107に伝える。具体的には、赤外線センサ、ジャイロセンサなどがこの位置検出センサ117として適用可能であるが、センサ基板102の傾きや方向などを含めた位置情報が検出可能なセンサであればよい。また、制御部107に送信される位置情報は、撮影可能位置か撮影不可能位置かの2進値でもよいし、角度、位置などの情報を表すデジタル値、もしくはアナログ値でも良い。制御部107は、後者の情報の場合は、出荷時、或いは、操作者によって、予め設定された条件によって撮影可能位置か撮影不可能位置かを判断する。その他の構成は、第3の実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0051】
図12は、本実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの概略構成図である。図12は、本実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す外観図である。本実施形態の放射線撮像システムは、図3に示す本発明の第1の実施形態で説明した放射線撮像システムの平面検出器に位置検出センサ117を追加したものであり、その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。本実施形態の位置検出センサ117は、赤外線センサからなり、ベッド120が近傍にあるか検出可能である。Cアーム118中の位置検出センサ117がベッド120に近づき撮影可能な状態になると、PC111に信号を出力する。本実施形態では、赤外線センサを位置検出センサ117として用いているが、位置に関する情報をPC111内の制御部107に伝える事ができるならば、他のセンサでもよい。PC111内の制御部107は、タイマ106からの信号と、位置検出センサ117の位置検出信号と、放射線源103の状態を基に、光源105から画像情報を担わない光を放出させるか否かの制御を行う。
【0052】
次に、図13を用いて本実施形態の放射線撮像システムの制御方法を説明する。図13は、放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。本実施形態は、第3の実施形態における被写体検出センサ116からの照射命令2が位置検出センサ117からの位置検出信号である照射命令3に替わったものである。それ以外は第3の実施形態の制御方法と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0053】
以上により、本実施形態では第1の実施形態と同様に、撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させることができる。また、変換素子への光照射の時間を抑え、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制する効果が期待できる。それに加えて、第1の実施形態に比べて周期的に暗出力値もしくは暗出力画像を取得することなく制御することが可能となり、システムの負荷が低減する効果が得られる。また第3の実施形態と同様に、位置検出センサ117を用いることで、第2の実施形態と比べて、被写体が撮影可能な位置に存在しない際の光源105による光照射回数を削減する事が可能である。
【0054】
図15は、第1〜第4の実施形態のPC(パーソナルコンピュータ)111のハードウエア構成例を示すブロック図である。バス1801には、中央処理装置(CPU)1802、ROM1803、RAM1804、ネットワークインタフェース1805、入力装置1806、出力装置1807及び外部記憶装置1808が接続されている。CPU1802は、データの処理又は演算を行うと共に、バス1801を介して接続された各種構成要素を制御するものである。CPU1802は制御部107に相当するものである。ROM1803には、予めCPU1802の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶させておき、このコンピュータプログラムをCPU1802が実行することにより、起動する。外部記憶装置1808にコンピュータプログラムが記憶されており、そのコンピュータプログラムがRAM1804にコピーされて実行される。RAM1804は、データの入出力、送受信のためのワークメモリ、各構成要素の制御のための一時記憶として用いられる。外部記憶装置1808は、例えばハードディスク記憶装置やCD−ROM等であり、電源を切っても記憶内容が消えない。CPU1802は、RAM1804内のコンピュータプログラムを実行することにより、第1〜第4の実施形態の処理を行う。ネットワークインタフェース1805は、ネットワークに接続するためのインタフェースであり、放射線源103、平面検出器119及び撮影ボタン115に対して信号及びデータを入出力する。入力装置1806は、例えばキーボード及びマウス等であり、各種指定又は入力等を行うことができる。出力装置1807は、ディスプレイ及びプリンタ等であり、被写体画像を表示及び印刷することができる。
【0055】
上記のように、第1〜第4の実施形態は、コンピュータ111がプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0056】
以上のように、第1〜第4の実施形態によれば、被写体の撮影前に、予め被写体情報を担わない光を光電変換素子に照射した後、放射線撮像システムに設けた検出手段からの情報によって、再度、変換素子に光を照射する適切なタイミングを決定し照射を行う。
【0057】
撮像装置のダーク電流、残像、及び感度を安定化させることができる。また、変換素子への光照射の時間を抑え、光源の消費電力及び発熱量を低減し、また変換素子の劣化の促進を抑制する効果が期待できる。
【0058】
本発明の平面検出器119は、放射線を電荷に変換可能な変換素子D1〜D3を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む。前記変換素子は、放射線を光に変換する波長変換体104と、前記変換された光を電荷に変換する光電変換素子とを有する。光電変換素子は、絶縁基板上のアモルファス半導体を有する。光源105は、前記変換部に前記変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射可能である。制御部107は、平面検出器119及び光源105を制御する。具体的には、制御部107は、入力ステップで平面検出器119からの信号を入力し、制御ステップで前記入力した信号に基づいて光源105の照射を制御する。
【0059】
本発明の平面検出器119は、駆動回路110と、読み出し回路108と、画像処理回路122とを有する。駆動回路110は、前記変換素子により変換された電荷に基づく電気信号を信号配線M1〜M3に出力ために画素のスイッチ素子T11〜T33の導通状態と非導通状態とを行単位で制御してセンサ基板102を駆動する。読み出し回路108は、信号配線M1〜M3に出力された電気信号を読み出してアナログ信号からデジタル画像信号に変換する。信号処理回路122は、前記変換されたデジタル画像信号を信号処理する。
【0060】
第1の実施形態では、制御部107は、平面検出器119から所定の周期で取得された暗出力信号を基準値と比較し、(暗出力信号)が基準値を下回った場合に光源105が光を照射するよう光源105を制御する。
【0061】
第2の実施形態では、制御部107は、光源105によって平面検出器119が照射されてから平面検出器119の(暗出力信号)が基準値を下回るまで時間があらかじめ記憶され設定されたタイマ106を有する。制御部107は、タイマ106で設定された時間が経過した場合に光源105が光を照射するよう光源105を制御する。
【0062】
第3の実施形態では、被写体検出センサ116は、被写体の存在を検出し被写体検出信号を出力する。制御部107は、少なくとも平面検出器119からの信号及び被写体検出センサ116からの被写体検出信号に基づいて光源105の照射を制御する。
【0063】
第4の実施形態では、位置検出センサ117は、平面検出器119が撮影可能な位置に配置されているかを検出して位置検出信号を出力する。制御部107は、少なくとも平面検出器119からの信号及び位置検出センサ117からの位置検出信号に基づいて光源105の照射を制御する。
【0064】
以上、第1〜第4の実施形態を説明したが、その他実施形態として、本発明の課題解決を目的とし、前記第1〜第4の実施形態の組み合わせを行った場合や、安易に想像がつく応用を行った場合も本発明の範囲内とする。上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。
【図2】本発明の放射線撮像装置の概略構成例を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの概略構成図である。
【図7】第2の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【図10】第3の実施形態による制御方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示す模式図である。
【図12】本発明の第4の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの概略構成図である。
【図13】本発明の第4の実施形態における放射線撮像装置及び放射線撮像システムの被写体撮影時のタイミングチャートである。
【図14】図14(a)は実験における放射線撮像システムのタイミングチャートであり、図14(b)は画像情報を担わない光を照射してから最初の画像信号の撮影動作を開始するまでの時間T1と最初の画像信号の読み出し動作を開始してから安定した感度が得られるまでの時間T2の変化を示したグラフであり、図14(c)は画像情報を担わない光を照射してから最初の画像信号の撮影動作を開始するまでの時間T1と暗出力値の変動を示すグラフである。
【図15】第1〜第4の実施形態のパーソナルコンピュータのハードウエア構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
101 被写体
102 センサ基板
103 放射線源
104 波長変換体
105 光源
106 タイマ
107 制御部
108 読み出し回路
110 駆動回路
115 撮影ボタン
116 被写体検出センサ
117 位置検出センサ
119 平面検出器
121 A/D変換器
122 画像処理回路
S11〜S33 画素
T11〜T33 スイッチ素子
D1〜D9 変換素子
G1〜G3 駆動配線
M1〜M3 信号配線
A1〜A3 演算増幅器
B 増幅器
Sw1〜Sw4 リセット用スイッチ
CL1〜CL3 サンプルホールド用容量
Sr1〜Sr3 サンプルホールド用スイッチ
Sr4 マルチプレクサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器と、
前記変換部に対して光の放出が可能な光源と、
前記平面検出器及び前記光源を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記平面検出器からの信号に基づいて前記光源の光の放出を制御することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、予め設定された基準値と平面検出器から所定の周期で取得された前記信号とを比較し、比較した結果に基づいて前記光源の光の放出を制御することを特徴とする請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基準値と前記平面検出器から所定の周期で取得された前記信号とを比較し、前記信号が基準値に達した場合に前記光源が光を放出するよう前記光源を制御することを特徴とする請求項2記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記光源によって前記平面検出器へ前記光が放出されてから前記平面検出器の信号が基準値に達するまでの時間があらかじめ設定されたタイマを有し、前記タイマで設定された時間に達した場合に前記光源が光を放出するよう前記光源を制御することを特徴とする請求項2記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
さらに、被写体の存在を検出し被写体検出信号を出力する被写体検出センサを有し、
前記制御部は、少なくとも前記平面検出器からの信号及び前記被写体検出センサからの被写体検出信号に基づいて前記光源の光の放出を制御することを特徴とする請求項2記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
さらに、前記平面検出器が撮影可能な位置に配置されているかを検出して位置検出信号を出力する位置検出センサを有し、
前記制御部は、少なくとも前記平面検出器からの信号及び前記位置検出センサからの位置検出信号に基づいて前記光源の光の放出を制御することを特徴とする請求項2記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記平面検出器は、
前記変換素子により変換された電荷に基づく電気信号を信号配線に出力するための駆動回路と、
前記信号配線に出力された前記電気信号を読み出してアナログ信号からデジタル信号に変換する読み出し回路と、
前記変換されたデジタル信号を処理する処理回路とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記変換素子は、
放射線を光に変換する波長変換体と、
前記変換された光を電荷に変換する光電変換素子とを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記光電変換素子は、絶縁基板上のアモルファス半導体を有することを特徴とする請求項8記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
請求項1記載の放射線撮像装置と、
放射線を照射するための放射線源と
を有することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項11】
放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器からの信号を入力する入力ステップと、
前記入力された信号に基づいて前記変換部に光を照射するよう光源を制御する制御ステップと
を有することを特徴とする放射線撮像装置の制御方法。
【請求項12】
放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器からの信号を入力する入力ステップと、
前記入力された信号に基づいて前記変換部に光を照射するよう光源を制御する制御ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−256675(P2008−256675A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32200(P2008−32200)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】