説明

放射線撮影装置

【課題】被検体の被曝量を抑制しつつ、好適な放射線線量で一連の透視画像を撮影し、鮮明で診断に好適な放射線撮影装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の構成によれば、FPD4に入射するX線の線量を測定するフォトタイマ5を備えている。X線管制御部6は、X線の線量の累積値が所定値以上となったところで、X線管3のX線照射を中断させる。この様にすると、初回の透視画像Pは、適切な照射条件で取得されることになる。そして、次回以降の透視画像Pの撮影は、初回の透視画像Pと同一の照射条件で行われる。この様に、本発明によれば、初回の透視画像Pは、断層画像の生成に用いられるとともに、照射条件の決定にも用いられる。したがって、照射条件の決定のみに用いる画像を取得しなければならない従来の構成に比べて、被検体Mに照射されるX線の線量を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線源と、FPDとを備えた放射線撮影装置に関し、特に、放射線源とFPDとが互いに反対方向に同期移動しながら一連の透視画像を取得し、これを基に被検体の断層画像を取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、被検体Mの断層画像を取得する放射線撮影装置51が配備されている。この様な放射線撮影装置51には、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出するFPD54とが同期的に移動しながら一連の透視画像を連写し、一連の透視画像を重ね合わせることで断層画像を取得する構成となっているものがある(図4参照)。この様な放射線撮影装置51においては、一連の透視画像の撮影中、放射線源53とFPD54とが被検体Mの体軸方向に沿って互いに近づくように移動し、放射線源53とFPD54との体軸方向における位置が一致した状態となったあと、放射線源53とFPD54とが体軸方向に沿って互いに遠ざかるように移動する。この様な放射線撮影装置は、例えば引用文献1に記載されている。
【0003】
放射線撮影装置51が上述のような断層画像を撮影する際の動作について説明する。まず、放射線源53は、これを制御する放射線源制御部56の制御を受けて放射線を照射する。一度の照射が終了する毎に放射線源53は被検体Mの体軸方向に沿って移動し、再び放射線の照射を行う。こうして74枚の透視画像が取得され、これらを基に断層画像が取得される。
【0004】
放射線源制御部56は、放射線源53の制御の様式を記憶部60から読み出して、放射線源53を制御する。術者が操作卓61を通じて断層画像を撮影する旨の指示と、撮影対象についての情報を放射線撮影装置51に与えると、放射線源制御部56は、撮影に適した制御様式を記憶部60から読み出して、これを基に放射線源53を制御する構成となっている。放射線源53は、撮影目的に適した線量の放射線を照射し、これを基に断層画像が取得される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−289915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来構成には、次の様な問題がある。
すなわち、従来の放射線撮影装置には、被検体Mの体格に合わせて放射線の照射を調整する構成とはなっていない。すなわち、放射線源制御部56は、画一的に放射線源53を制御するのである。放射線源53が所定の線量で放射線を照射しながら一連の透視画像を撮影するのであるから、被検体Mの体格によっては、放射線の線量が少なすぎて、断層画像を生成することができない場合がある。
【0007】
放射線の線量の過不足を一連の透視画像の撮影前に知るには、一連の透視画像の撮影の前にいったん1枚の透視画像を取得する方法が考えられる。つまり、予備的に撮影された1枚の透視画像を基に、一連の透視画像を撮影する際の好適な放射線の線量を求めるというものである。この様な構成では、断層画像の生成に際して余計に1枚の透視画像を取得せねばならず、被検体Mの被曝量を減少させるという観点から、望ましいものとは言えない。
【0008】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検体の被曝量を抑制しつつ、好適な放射線線量で一連の透視画像を撮影し、鮮明で診断に好適な放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の目的を達成するために、次の様な構成をとる。
放射線を照射する放射線源と、これを制御する放射線源制御手段と、放射線を検出する放射線検出手段と、放射線検出手段に入射する放射線の線量を測定する測定手段と、放射線源と放射線検出手段を同期的にかつ互いに反対方向に移動させる移動手段と、放射線検出手段が出力する検出信号を基に画像を生成する画像生成手段と、放射線検出手段および放射線源が移動されながら連写された一連の透視画像を重ね合わせて断層画像を生成する断層画像生成手段と、放射線源制御手段は、初回の透視画像の撮影において、放射線検出手段に入射する放射線の線量の累積値が所定値となった時点で放射線源の照射を中断し、放射線制御手段は、次回以降の透視画像の撮影における放射線源の放射線源の照射条件が初回の透視画像の放射線源の照射条件と同一となるように放射線源を制御することを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]本発明の構成によれば、放射線検出手段に入射する放射線の線量を測定する測定手段を備えている。この測定手段は、放射線検出手段に入射する放射線の線量を逐次測定できるようになっている。測定手段により測定された放射線の線量を累積することで、初回の透視画像の撮影開始から累積的に放射線が放射線検出手段にどの程度の入射しているかを知ることができる。放射線源制御手段は、放射線の線量の累積値が所定値以上となったところで、放射線源の放射線照射を中断させる。この様にすると、初回の透視画像は、適切な放射線源の照射条件で取得されることになる。
【0011】
また、本発明によれば、次回以降の透視画像の撮影は、初回の透視画像と同一の放射線源の照射条件で行われる。一連の透視画像において被検体は、放射線の透過率を変化させながら写りこむ。この透過率の変化は、被検体の構造に起因するものであり、断層画像を生成する際に必要な情報となる。本発明によれば、次回以降の透視画像の撮影は、初回の透視画像と同一の放射線源の照射条件で行われるので、この被検体の透過率の変化を一連の透視画像に忠実に写しこむことができる。なお、被検体の放射線透過率は一連の透視画像を通じて大きな変化がないので、初回の透視画像さえ適正な撮影条件で取得しておけば、次回以降の透視画像も必然的に適切な撮影条件で取得されることになる。
【0012】
しかも、初回の透視画像は、断層画像の生成に用いられるとともに、放射線源の照射条件の決定にも用いられる。したがって、放射線源の照射条件の決定のみに用いる画像を取得しなければならない従来の構成に比べて、被検体に照射される放射線の線量を抑制することができる。
【0013】
また、一連の透視画像を重ね合わせて断層画像を生成する場合、透視画像の各々について独立に輝度調整や、放射線源の出力の調整を行うことは望ましくない。この様な調整を行ってしまうと、一連の透視画像に写りこむはずであった被検体の内部構造に関するデータを部分的に失ってしまうからである。本発明によれば、初回の透視画像の撮影の条件を用いて次回以降の透視画像の撮影が行われ、一連の透視画像は、同一の撮影条件で取得される。このようにすれば、被検体の内部構造に関するデータは失われることなく一連の透視画像に写りこむ。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射線撮影装置において、測定手段は、放射線検出手段の放射線が入射する入射面を覆うように設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、測定手段の具体的な態様の1つを示すものである。すなわち、上述の構成によれば、測定手段は、放射線検出手段の放射線が入射する入射面を覆うように設けられている。この様にすることで、放射線は、測定手段を透過しなければ放射線検出手段に入射することができない。本発明によれば、放射線検出手段に入射する放射線の線量を確実に計測できる構成となっている。
【0016】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、初回の透視画像の撮影が開始した時点から放射線照射が中断されるまでの初回照射時間を記憶する記憶手段を更に備え、放射線制御手段は、次回以降の透視画像の撮影における照射時間が初回照射時間と同一となるように放射線源を制御することを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、放射線制御手段の具体的な態様の1つを示すものである。すなわち、次回以降の透視画像の撮影における照射時間が初回照射時間と同一となるように放射線源を制御する。放射線源の照射条件には、照射時間や放射線源に送出する電力に関する条件が含まれる。上述の構成によれば、照射時間を全ての透視画像にわたって同一とすることで放射線源の照射条件が同じ撮影を行う構成となっている。上述の構成によれば、より単純な放射線源の制御が実現でき、かつ、一連の透視画像における撮影条件を確実に同一なものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、初回の透視画像は、断層画像の生成に用いられるとともに、放射線源の照射条件の決定にも用いられる。したがって、放射線源の照射条件の決定のみに用いる画像を取得しなければならない従来の構成に比べて、被検体に照射される放射線の線量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るフォトタイマの構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係る断層画像の取得の原理を説明する模式図である。
【図4】従来の放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【実施例1】
【0020】
次に、実施例1に係る放射線撮影装置の各実施例を図面を参照しながら説明する。なお、各実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。
【0021】
<装置構成>
図1は、実施例1に係る放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線撮影装置1は、X線断層撮影の対象である被検体Mを載置する天板2と、天板2の上部に設けられた被検体Mに対してコーン状のX線ビームを照射するX線管3と、天板2の下部に設けられ、被検体Mの透過X線像を検出するシート状のフラットパネル型X線検出器(以下、FPDと略記)4と、コーン状のX線ビームの中心とFPD4の中心が常に一致する状態でX線管3とFPD4との各々を被検体Mの関心部位を挟んで互いに反対方向に同期移動させる同期移動機構7と、これを制御する同期移動制御部8と、FPD4のX線を検出するX線検出面を覆うように設けられたフォトタイマ5とを備えている。X線撮影装置1は、本発明の放射線撮影装置に相当し、X線管3は、本発明の放射線源に相当する。また、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当し、フォトタイマ5は、本発明の測定手段に相当する。また、同期移動機構7は、本発明の移動手段に相当する。
【0022】
X線管3は、X線管制御部6の制御にしたがってコーン状でパルス状のX線ビームを被検体Mに対して繰り返し照射する構成となっている。このX線管3には、X線ビームを角錐となっているコーン状にコリメートするコリメータが付属している。そして、このX線管3と、FPD4は透視画像Pを撮像する撮像系3,4を生成している。X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当する。
【0023】
そして、さらに実施例1に係るX線撮影装置1は、各制御部6,8を統括的に制御する主制御部25と、断層画像Dを表示する表示部22とを備えている。この主制御部25は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,および後述の画像生成部11,断層画像生成部12,累積線量取得部14を実現している。
【0024】
同期移動機構7は、X線管3とFPD4とを同期させて移動させる構成となっている。この同期移動機構7は、同期移動制御部8の制御にしたがって被検体Mの体軸方向Aに平行な直線軌道に沿ってX線管3を直進移動させる。しかも、検査中、X線管3の照射するコーン状のX線ビームは、常に被検体Mの関心部位に向かって照射されるようになっており、このX線照射角度は、コリメータの角度を変更することによって、たとえば初期角度−20°から最終角度20°まで変更される。断層画像生成部12は、本発明の断層画像生成手段に相当し、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0025】
また、同期移動機構7は、上述のX線管3の直進移動に同期して、天板2の下部に設けられたFPD4を被検体Mの体軸方向Aに沿って直進移動させる。そして、その移動方向は、X線管3の移動方向と反対方向となっている。つまり、X線管3が移動することによってーン状のX線ビームはその照射源位置と照射方向が変化させる。この様な変化にかかわらず、X線ビームは常にFPD4のX線検出面の全面で受光される構成となっている。このように、一度の検査において、FPD4は、X線管3と互いに反対方向に同期して移動しながら、たとえば74枚の透視画像Pを取得するようになっている。具体的には、撮像系3,4は、図1の実線の位置を初期位置として、破線で示した位置を介して、図1に示した一点鎖線で示す位置まで対向移動する。すなわち、X線管3とFPD4の位置を変化させながら複数の透視画像Pが撮影されることになる。ところで、コーン状のX線ビームは常にFPD4のX線検出面の全面で受光されるので、撮影中コーン状のX線ビームの中心は、常にFPD4の中心と一致している。また、撮影中FPD4の中心は、直進移動するが、この移動はX線管3の移動の反対方向となっている。つまり、体軸方向Aに沿って、X線管3とFPD4とを同期的、かつ互いに反対方向に移動させる構成となっている。
【0026】
フォトタイマ5の構成について説明する。フォトタイマ5は、図2に示すように、2枚の透明板5a,5bが角筒状の枠5cを挟むように固定された構成となっている。透明板5a,5bの各々の中央部には、円形の電極6a,6bが設けられている。そして、透明板5a,5b,および枠5cによって閉ざされた空間内には、キセノンガスが充満しており、キセノン原子は、X線に当たってイオン化する。これが透明板5a,5bの両電極6a,6bによって検出される。つまり、フォトタイマ5は、両電極6a,6bに挟まれた領域RにおけるX線の線量をモニタすることで、透視画像Pを取得する際の照射時間を決定する。
【0027】
フォトタイマ5は、入射するX線の線量をFPD4とは独立に測定するものである。フォトタイマ5に入射したX線のほとんどはFPD4へと向かう。しかし、中には、フォトタイマ5で検出されるものもある。フォトタイマ5で検出されたX線の量の増減は、FPD4に入射するX線の量の増減を表している。フォトタイマ5は、X線を検出するとそれを逐次出力する構成となっている。したがって、一度のX線照射の間にFPD4に入射したX線の線量をフォトタイマ5の出力信号を通じて知ることができる。
【0028】
なお、フォトタイマ5を設けなくともFPD4が出力する透視画像Pの画素値を参照することで透視画像PにおけるX線線量の過不足を判断することはできる。しかし、この様な判断法は、FPD4の検出信号から透視画像Pが生成された後でなければ実行することができない。FPD4は、一枚の透視画像Pの撮影につき検出信号は1度しか出力しない構成となっているからである。このように、FPD4は、一枚の透視画像Pの撮影中に入射するX線の線量をモニタすることはできないのである。
【0029】
FPD4の後段には、そこから出力される検出信号を基に透視画像Pを生成する画像生成部11が備えられており、この画像生成部11の更に後段には、複数の画像を重ね合わせる断層画像生成部12が備えられている。一方、フォトタイマ5の後段にはFPD4に入射したX線の累積線量tを取得する累積線量取得部14が設けられている。累積線量取得部14は、一枚の透視画像Pの撮影中にフォトタイマ5の出力信号を時間で積分することにより、FPD4が一枚の透視画像Pの撮影中に入射したX線の累積線量tを求めるものである。
【0030】
また、画像生成部11,断層画像生成部12が生成する各画像は、記憶部23に記憶される。なお、記憶部23は、各部が動作するのに参照される設定値を記憶する。記憶部23は、本発明の記憶手段に相当する。
【0031】
続いて、実施例1に係るX線撮影装置1の断層画像Dの取得原理について説明する。図3は、実施例1に係るX線撮影装置の断層画像Dの取得方法を説明する図である。例えば、天板2に平行な基準裁断面MAについて説明すると、図3に示すように、基準裁断面MAに位置する点P,Qが、常にFPD4のX線検出面の不動点p,qのそれぞれに投影されるように、X線管3によるコーン状のX線ビーム19の照射方向に合わせてFPD4をX線管3の反対方向に同期移動させながら一連の透視画像が画像生成部11にて生成される。一連の透視画像Pには、被検体Mの投影像が位置を変えながら写り込んでいる。そして、この一連の透視画像Pを断層画像生成部12にて重ね合わせれば、基準裁断面MAに位置する像(たとえば、不動点p,q)が集積され、断層画像Dとしてイメージングされることになる。一方、基準裁断面MAに位置しない点Iは、FPD4における投影位置を変化させながら一連の透視画像に点iとして写り込んでいる。この様な点iは、不動点p,qとは異なり、断層画像生成部12で透視画像Pを重ね合わせる段階で像を結ばずにボケる。このように、一連の透視画像Pの重ね合わせを行うことにより、被検体Mの基準裁断面MAに位置する像のみが写り込んだ断層画像Dが得られる。このように、透視画像Pを単純に重ね合わせると、基準裁断面MAにおける断層画像Dが得られる。
【0032】
さらに、断層画像生成部12の設定を変更することにより、基準裁断面MAに平行な任意の裁断位置においても、同様な断層画像Dを得ることができる。撮影中、FPD4において上記点iの投影位置は移動するが、投影前の点Iと基準裁断面MAとの離間距離が大きくなるにしたがって、この移動速度は増加する。これを利用して、取得された一連の透視画像Pを所定のピッチで体軸方向Aにずらしながら、重ね合わせれば、基準裁断面MAに平行な裁断位置における断層画像Dが得られる。このような一連の透視画像Pの重ね合わせは、断層画像生成部12が行う。
【0033】
<動作説明>
次に、X線撮影装置1の動作について説明する。まず、天板2に被検体Mが載置される。術者が操作卓21を通じて、断層画像Dの取得の指示を行うと、同期移動制御部8は、X線管3,およびFPD4を所定の初期位置までに移動させる。このときの撮像系3,4は、図1の実線に示すような配置となっている。すなわち、初期位置におけるX線管3は、体軸方向A(天板2の長手方向)の前段に位置し、FPD4は、体軸方向Aの後段に位置している。このときX線管3は、初期角度−20度まで傾斜されている。
【0034】
X線管制御部6は、X線管3を制御し、X線管3は所定の管電圧、管電流でX線ビームをFPD4に向けて照射する。X線ビームは、天板2を透過した後、フォトタイマ5を透過してFPD4に入射する。
【0035】
フォトタイマ5の出力信号は、逐次累積線量取得部14に送出される。累積線量取得部14は、X線管3の照射開始から現在までのフォトタイマ5の出力信号を時間で積分して、累積線量tを後段の比較部15に逐次出力する。累積線量tは、X線ビームの照射が続けられるにつれ、次第に大きな値となる。比較部15は、記憶部23に記憶されている所定値を読み出して、これと累積線量tとを比較する。累積線量tは、時間がたつにつれ次第に大きな値となるので、ある時点で所定値に達する。比較部15は、累積線量tが所定値となった時点で、その旨を示すトリガー信号をX線管制御部6に伝達する。所定値は、診断に好適な断層画像Dが取得するのに適した透視画像Pの露出の程度を示している。
【0036】
X線管制御部6は、比較部15から送出されたトリガー信号を受け取ると直ちにX線管3によるX線の照射を中断する。こうして初回の透視画像の撮影におけるX線の照射が終了する。なお、比較部15が比較に用いている所定値は、被検体Mの透視画像Pの撮影に好適である累積線量tとなっている。X線管制御部6は、X線管3がX線を照射した時点から、X線の照射が中断される時点までの期間を示すデータを記憶部23に記憶させる。この期間が初回の透視画像Pの取得における照射時間であり、初回照射時間Tiと呼ぶことにする。
【0037】
FPD4は、画像生成部11に検出信号を送出し、検出信号は、被検体Mの透視像が写りこんだ透視画像Pに組み立てられる。
【0038】
以降、同期移動制御部8は、X線管3,およびFPD4を同期的かつ互いに反対方向に移動させる。X線管制御部6は、移動の最中にX線ビームを間歇的に照射し、画像生成部11は、その度ごとに透視画像Pを生成する。こうして、一連の透視画像Pが生成される。一連の透視画像Pの撮影に伴って、同期移動制御部8は、X線管3を体軸方向Aの後段側に移動させ、FPD4を体軸方向Aの前段側に移動させる。
【0039】
そして、同期移動制御部8は、X線管3,およびFPD4を所定の最終位置までに移動させる。このときの撮像系3,4は、図1の一点鎖線に示すような配置となっている。すなわち、最終位置におけるX線管3は、体軸方向A(天板2の長手方向)の後段に位置し、FPD4は、体軸方向Aの前段に位置している。このときX線管3は、最終角度20度まで傾斜されている。この状態で最後の透視画像Pが取得され、一連の透視画像Pの取得は終了となる。透視画像Pは、例えば74枚取得される。
【0040】
一連の透視画像Pが撮影されるときのX線管3がX線を照射する期間は、全て初回照射時間Tiとなっている。すなわち、X線管制御部6は、初回透視画像PにおけるX線管3の照射条件を維持した状態で一連の透視画像Pを取得するのである。X線管3の照射条件とは、具体的には照射時間、管電圧、管電流等である。管電圧、管電流等についても初回の撮影から変更されずに一連の透視画像Pを取得する。なお、管電圧、管電流は記憶部23に記憶されている。管電圧、管電流は、術者が操作卓21を通じて変更されることもできる。
【0041】
透視画像Pは、X線管3の照射条件が同一とされた状態で連写される。撮像系3,4が移動するにつれ、X線ビームが透過する被検体Mの厚さが変わってくる。したがって、一連の透視画像Pは、初回が比較的暗く、それから次第に明るくなり、最終回に向かうにしたがって再び暗くなるという挙動を見せる。この様な明暗の変化は、一見診断に邪魔であるかのように思われる。しかし、この透視画像Pの輝度変化は、後述の断層画像Dを生成する段階で必要な情報なのである。実施例1の構成によれば、X線管3の照射条件を同一として一連の透視画像Pを撮影しているので、一連の透視画像Pには、被検体Mの厚さに依存する一連の透視画像Pの輝度変化を忠実に表している。
【0042】
一連の透視画像Pは、断層画像生成部12に送出される。断層画像生成部12は、一連の透視画像Pを重ね合わせて、被検体Mの断層像が写りこんだ断層画像Dを生成する。断層画像Dは表示部22に表示されてX線撮影装置1における断層画像Dの取得は終了となる。
【0043】
以上のように、実施例1の構成によれば、FPD4に入射するX線の線量を測定するフォトタイマ5を備えている。このフォトタイマ5は、FPD4に入射するX線の線量を逐次測定できるようになっている。フォトタイマ5により測定されたX線の線量を累積することで、初回の透視画像Pの撮影開始から累積的にX線がFPD4にどの程度の入射しているかを知ることができる。X線管制御部6は、X線の線量の累積値が所定値以上となったところで、X線管3のX線照射を中断させる。この様にすると、初回の透視画像Pは、適切な照射条件で取得されることになる。
【0044】
しかも、初回の透視画像Pは、断層画像Dの生成に用いられるとともに、X線管3の照射条件の決定にも用いられる。したがって、X線管3の照射条件の決定のみに用いる画像を取得しなければならない従来の構成に比べて、被検体Mに照射される放射線の線量を抑制することができる。
【0045】
また、実施例1によれば、次回以降の透視画像Pの撮影は、初回の透視画像Pと同一のX線管3の照射条件で行われる。一連の透視画像Pにおいて被検体Mは、X線の透過率を変化させながら写りこむ。この透過率の変化は、被検体Mの構造に起因するものであり、断層画像Dを生成する際に必要な情報となる。実施例1によれば、次回以降の透視画像Pの撮影は、初回の透視画像Pと同一のX線管3の照射条件で行われるので、この被検体Mの透過率の変化を一連の透視画像Pに忠実に写しこむことができる。なお、被検体MのX線透過率は一連の透視画像Pを通じて大きな変化がないので、初回の透視画像Pさえ適正な撮影条件で取得しておけば、次回以降の透視画像Pも必然的に適切な撮影条件で取得されることになる。
【0046】
また、実施例1の構成によれば、フォトタイマ5は、FPD4のX線が入射する入射面を覆うように設けられている。この様にすることで、X線は、フォトタイマ5を透過しなければFPD4に入射することができない。実施例1によれば、FPD4に入射するX線の線量を確実に計測できる構成となっている。
【0047】
そして、実施例1の構成は、次回以降の透視画像Pの撮影における照射時間が初回照射時間Tiと同一となるようにX線管3を制御する。X線管3の照射条件には、照射時間やX線管3に送出する電力に関する条件(管電圧、管電流)が含まれる。実施例1の構成によれば、照射時間を全ての透視画像Pにわたって同一とすることでX線管3の照射条件が同じ撮影を行う構成となっている。実施例1の構成によれば、より単純なX線管3の制御が実現でき、かつ、一連の透視画像Pにおける撮影条件を確実に同一なものとすることができる。
【0048】
本発明は、上述の実施例の構成に限られず、次の様な変形実施が可能である。
【0049】
(1)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0050】
(2)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【符号の説明】
【0051】
1 X線撮影装置(放射線撮影装置)
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
5 フォトタイマ(測定手段)
6 X線管制御部(放射線源制御手段)
7 同期移動機構(移動手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
12 断層画像生成部(断層画像生成手段)
23 記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
これを制御する放射線源制御手段と、
放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段に入射する放射線の線量を測定する測定手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段を同期的にかつ互いに反対方向に移動させる移動手段と、
前記放射線検出手段が出力する検出信号を基に画像を生成する画像生成手段と、
前記放射線検出手段および前記放射線源が移動されながら連写された一連の透視画像を重ね合わせて断層画像を生成する断層画像生成手段と、
前記放射線源制御手段は、初回の透視画像の撮影において、前記放射線検出手段に入射する放射線の線量の累積値が所定値となった時点で前記放射線源の照射を中断し、
前記放射線源制御手段は、次回以降の透視画像の撮影における前記放射線源の照射条件が初回の透視画像の照射条件と同一となるように前記放射線源を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記測定手段は、前記放射線検出手段の放射線が入射する入射面を覆うように設けられていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
初回の透視画像の撮影が開始した時点から放射線照射が中断されるまでの初回照射時間を記憶する記憶手段を更に備え、
前記放射線制御手段は、次回以降の透視画像の撮影における照射時間が前記初回照射時間と同一となるように前記放射線源を制御することを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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