説明

放射線撮影装置

【課題】放射線検出器を支持する検出器支持部と回動軸とを強固に連結できるようにする。
【解決手段】軸方向両端部が検出器支持部に回転可能に支持され、周方向一部に切欠部が形成され、当該周方向の他の部分は当該切欠部が形成されていない非形成部とされた回転軸と、前記回動軸に固定されて前記回動軸と一体に回動し、前記検出器支持部が前記所定の回動位置に位置する場合において前記切欠部又は前記非形成部が内部に位置する凹部が形成された受け部と、前記非形成部が前記凹部に嵌合し、前記回転軸及び前記受け部を介して前記検出器支持部が前記回動軸と連結されて一体に回動可能な第1回転位置と、前記切欠部が前記凹部の内部に位置して前記検出器支持部と前記回動軸との連結状態が解除される第2回転位置とに、前記回転軸を回転させる回転駆動部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像を撮影する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放射線源が設置された第1の腕部分と、画像データ受け取り手段が設置された第2の腕部分とが、共通の回動軸によって本体部分に回動可能に支持されたマンモグラフィ撮影装置が開示されている。このマンモグラフィ撮影装置では、第1及び第2アクチュエータによって、第1の腕部分のみを回動させる状態と、第1の腕部分及び第2の腕部分が一体に回動する状態と、に切り替えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−512065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のマンモグラフィ撮影装置のように、放射線検出器を支持する検出器支持部が回動軸と連結されて、放射線照射部を支持する照射部支持部と検出器支持部とが回動軸と一体に回動する状態と、検出器支持部と回動軸との連結状態を解除して照射部支持部のみが回動軸と一体に回動する状態と、に切り替える装置では、検出器支持部と回動軸とを強固に連結できることが求められる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、放射線検出器を支持する検出器支持部と回動軸とを強固に連結できる放射線撮影装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、被験者の乳房が載置面に載せられる撮影台と、前記撮影台の載置面に載せられた乳房に放射線を照射する照射部と、前記撮影台に設けられ、前記照射部から照射されて前記乳房を透過した放射線を検出する放射線検出器と、前記照射部を支持する照射部支持部と、前記照射部支持部が固定されて一体に回動する回動軸を回動可能に支持する基台部と、前記基台部に設けられ、前記回動軸を回動させる回動駆動部と、前記回動軸の軸周りに当該回動軸に対して回動可能に支持され、前記回動軸に対する所定の回動位置において前記照射部が前記載置面に正対し、前記撮影台及び前記放射線検出器を支持する検出器支持部と、軸方向両端部が前記検出器支持部に回転可能に支持され、周方向一部に切欠部が形成され、当該周方向の他の部分は当該切欠部が形成されていない非形成部とされた回転軸と、前記回動軸に固定されて前記回動軸と一体に回動し、前記検出器支持部が前記所定の回動位置に位置する場合において前記切欠部又は前記非形成部が内部に位置する凹部が形成された受け部と、前記非形成部が前記凹部に嵌合し、前記回転軸及び前記受け部を介して前記検出器支持部が前記回動軸と連結されて一体に回動可能な第1回転位置と、前記切欠部が前記凹部の内部に位置して前記検出器支持部と前記回動軸との連結状態が解除される第2回転位置とに、前記回転軸を回転させる回転駆動部と、を備えた放射線撮影装置である。
【0007】
請求項1の構成によれば、被験者の乳房が撮影台の載置面に載せられる。撮影台の載置面に載せられた乳房には、照射部から放射線が照射される。照射部から照射されて乳房を透過した放射線は、放射線検出器によって検出される。
【0008】
ここで、請求項1の構成では、回転駆動部が回転軸を第1回転位置に回転させると、回転軸の非形成部が、受け部の凹部に嵌合し、回転軸及び受け部を介して、撮影台及び放射線検出器を支持する検出器支持部が回動軸と連結されて一体に回動可能な状態となる。
【0009】
このため、基台部に設けられた回動駆動部が、回動軸を回動させると、照射部を支持する照射部支持部と検出器支持部とが回動軸と一体に回動する。これにより、被験者の乳房に対する撮影角度を変えることができる。
【0010】
回転駆動部が回転軸を第2回転位置に回転させると、回転軸の切欠部が、受け部の凹部の内部に位置して検出器支持部と回動軸との連結状態が解除される。
【0011】
このため、基台部に設けられた回動駆動部が、回動軸を回動させると、照射部を支持する照射部支持部のみが回動軸と一体に回動する。これにより、撮影台及び放射線検出器に対する放射線の照射角度を変えることができる。
【0012】
請求項1の構成では、回転軸の非形成部が受け部の凹部に嵌合することで、検出器支持部と回動軸とを連結するので、部材同士を圧接して摩擦力により連結する構成などと比べて、検出器支持部と回動軸とを強固に連結できる。
【0013】
また、請求項1の構成では、軸方向両端部が検出器支持部に支持された回転軸を回転させることで、検出器支持部と回動軸との連結及び非連結がなされる。このため、検出器支持部と回動軸との連結及び非連結を行う際に、回転軸が軸方向へ移動しない。従って、例えば、凹部に対して回転軸を抜き差しすることで検出器支持部と回動軸との連結及び非連結を行う構成のように、回転軸が軸方向に移動することを考慮して回転軸を支持する構成に比べて、回転軸を検出器支持部に強固に支持できるので、検出器支持部と回動軸とを強固に連結できる。
【0014】
請求項2の発明は、前記凹部は、前記回動軸の軸方向視において、長さが下底より短い上底を前記回動軸の径方向内側に有する台形状に形成され、前記非形成部は、前記回動軸の軸方向視において、前記台形状の凹部における2つの斜辺と接触する請求項1に記載の放射線撮影装置である。
【0015】
請求項2の構成によれば、回転軸の非形成部は、回動軸の軸方向視において、台形状の凹部における2つの斜辺と接触するので、非形成部が一か所で凹部に接触する構成に比べて、非形成部と凹部とが強固に結合される。これにより、検出器支持部と回動軸とを強固に連結できる。
【0016】
請求項3の発明は、前記回転軸の軸周りに当該回転軸に対して回転可能に支持され、前記回転駆動部によって正転及び逆転される回転部材と、前記回転軸に固定され、前記回転駆動部によって正転された前記回転部材が当接することで前記回転部材と前記回転軸とを一体に回転させて前記回転軸を前記第1回転位置から前記第2回転位置へ正転させる当接部材と、前記回転軸に設けられ、前記回転駆動部によって逆転された前記回転部材の回転力を前記回転軸に伝達することで前記回転部材と前記回転軸とを一体に回転させて前記回転軸を前記第2回転位置から前記第1回転位置へ逆転させ、前記回転軸が外力によって回転しない状態においては、前記回転駆動部によって逆転された前記回転部材の回転力によって弾性変形しながら前記回転部材を前記回転軸に対して回転させる弾性部材と、を備える請求項1又は2に記載の放射線撮影装置である。
【0017】
請求項3の構成によれば、回転駆動部によって回転部材が正転されると、回転軸に固定された当接部材に回転部材が当接することで、回転部材と回転軸とを一体に回転させて回転軸を第1回転位置から第2回転位置へ正転させる。これにより、回転軸の切欠部が、受け部の凹部の内部に位置して検出器支持部と回動軸との連結状態が解除される。
【0018】
回転駆動部によって回転部材が逆転されると、回転軸に設けられた弾性部材が回転部材の回転力を回転軸に伝達することで、回転部材と回転軸とを一体に回転させて回転軸を第2回転位置から第1回転位置へ逆転させる。これにより、回転軸の非形成部が、受け部の凹部に嵌合し、回転軸及び受け部を介して、撮影台及び放射線検出器を支持する検出器支持部が回動軸と連結されて一体に回動可能な状態となる。
【0019】
一方、回転駆動部によって回転部材が逆転された場合に、回転軸が外力によって回転しない状態においては、回転部材の回転力により弾性部材が弾性変形しながら回転部材を回転軸に対して回転させる。このように、回転軸が回転しない状態では、回転駆動部によって回転部材を逆転させる回転力は、弾性部材で吸収されるので、回転軸を無理に回転させることによる回転駆動部及び回転部材の損傷を抑制できる。
【0020】
なお、回転軸が外力によって回転しない状態とは、例えば、回転軸と凹部との位置がずれることで、回転軸の切欠部が形成された部分が、受け部の凹部の縁に当接して回転軸が回転しない場合が考えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記構成としたので、放射線検出器を支持する検出器支持部と回動軸とを強固に連結できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】放射線撮影装置の構成を示す側面図である。
【図2】放射線撮影装置の構成を示す正面図である。
【図3】放射線撮影装置の構成を示す正面図である。
【図4】回動軸と撮影台支持部とを連結するための構成を示す斜視図である。
【図5】回動軸と撮影台支持部とを連結するための構成を示す側面図である。
【図6】回動軸と撮影台支持部とを連結するための構成を示す正面図である。
【図7】回動軸と撮影台支持部とを連結するための構成を示す斜視図である。
【図8】回転軸の切欠部が形成された部分が受け部の凹部の縁に当接した状態を示す背面図である。
【図9】撮影台支持部と回動軸との連結及び非連結を行う際に回転軸が軸方向へ移動する比較例の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(放射線撮影装置の構成)
まず、本実施形態に係る放射線撮影装置の構成を説明する。図1〜図3は、本実施形態に係る放射線撮影装置の構成を示す図である。図中の「○」の中に「×」が記載されたものは、紙面の手前から奥へ向かう矢印を意味し、図中の「○」の中に「・」が記載されたものは、紙面の奥から手前へ向かう矢印を意味する。また、図中において、Y方向・−Y方向は上下方向を示し、Z方向・−Z方向は、被験者Lの前後方向を示し、X方向・−X方向は、被験者Lの左右方向を示す。なお、ここでいう被験者Lとは、CC撮影時において放射線撮影装置10(具体的には後述の撮影台22の胸壁当接部30)に正対した状態(図1に示す状態)の被験者Lである。以下同様に、「被験者L」は、放射線撮影装置10に正対した状態の被験者Lを意味するものとして説明する。また、放射線撮影装置10における矢印−Z方向側が、被験者Lに近い手前側(装置正面側)であり、放射線撮影装置10における矢印Z方向側が、被験者Lから離れた奥側(装置背面側)である。
【0024】
放射線撮影装置10は、図1に示すように、被験者Lの乳房Nを放射線で撮影する装置(所謂、マンモグラフィ)であり、CC(頭尾方向。(Cranio&Caudal))撮影とMLO(内外斜位方向。Medial−Lateral−Oblique)撮影との両者を行うことができる装置とされている。
【0025】
放射線としては、例えば、X線、γ線などが適用される。また、放射線撮影装置10は、被験者Lが立った立位状態及び被験者Lが車いす等に座った座位状態(図1参照)の両者において、被験者Lの乳房Nを撮影可能な装置とされている。なお、放射線撮影装置10としては、少なくとも被験者Lの上半身が立位した状態でその被験者Lの乳房Nが撮影される装置であればよい。
【0026】
放射線撮影装置10は、図1に示すように、被験者Lが正対した状態で被験者Lの乳房Nが載せられる撮影台22と、乳房Nを撮影台22へ圧迫する圧迫部材(圧迫板)34と、撮影台22と圧迫部材34とを支持する撮影台支持部28(検出器支持部の一例)と、を備えている。圧迫部材(圧迫板)34は、駆動部34Aからの駆動力によって上下方向に移動可能に構成されている。
【0027】
撮影台支持部28は、装置正面側(−Z方向側)に配置された正面側プレート28Aと、装置背面側(Z方向側)に配置された背面側プレート28Bと、正面側プレート28Aの下部と背面側プレート28Bの下部とをつなぐ底板28Cと、を備えて構成されている。
【0028】
撮影台22の上面には、被験者Lの乳房Nが載せられる平面状の載置面20が形成されている。撮影台22の側面(装置正面側の面)には、CC撮影時において被験者Lの乳房Nよりも下方の胸部分(胸壁)を当接させる胸壁当接部30が設けられている。
【0029】
また、撮影台22には、後述の放射線照射装置24から照射されて乳房Nを透過した放射線を検出する放射線検出器32が設けられている。放射線撮影装置10では、放射線検出器32が検出した放射線が可視化されて放射線画像が生成されるようになっている。
【0030】
撮影台22の上方には、撮影台22に載せられた乳房Nに放射線を照射する照射部の一例としての放射線照射装置24が設けられている。具体的には、圧迫部材34によって撮影台22に圧迫された状態の乳房Nに放射線を照射するようになっている。また、放射線照射装置24は、放射線源としての管球(図示省略)を備えており、この管球(図示省略)から放射線を照射する構成とされている。
【0031】
撮影台支持部28の正面側プレート28Aと背面側プレート28Bとの間における撮影台支持部28の上方側には、放射線照射装置24を支持する照射部支持部の一例としての照射装置支持部29が設けられている。照射装置支持部29は、側面視(X方向視)にてL字状に形成されており、撮影台22(具体的には、載置面20)と放射線照射装置24とが所定間隔離れるように放射線照射装置24を支持するように構成されている。
【0032】
照射装置支持部29の装置背面側(Z方向側)には、照射装置支持部29を回動可能に支持する基台部14が設けられている。基台部14は、照射装置支持部29が固定されて照射装置支持部29が一体に回転する回動軸16を回動可能に支持することで、照射装置支持部29を回動可能に支持している。照射装置支持部29は、具体的には、回動軸16の軸方向に複数(具体的には2つ)配置された固定部材17によって、回動軸16に固定されている。なお、図2及び図3において二点鎖線で示す放射線照射装置24が、実線で示す初期位置から基台部14に対して回動された状態を示す。
【0033】
基台部14には、回動軸16を回動させる回動駆動部の一例としての駆動モータ36(例えば、ACサーボモータ)が設けられている。駆動モータ36は、回動軸16を回動駆動して、回動軸16を正転及び逆転させることできるようになっている。
【0034】
基台部14には、回動軸16を上下方向へ昇降させる昇降機構38が設けられている。昇降機構38は、回動軸16を回動可能に支持する支持部としての昇降台車38Aと、昇降台車38Aを昇降させる駆動部としての駆動モータ38Bと、を備えて構成されている。昇降機構38により回動軸16を昇降させることで、撮影台22及び放射線照射装置24の高さが変更できるようになっている。
【0035】
なお、回動軸16を回動駆動する駆動モータ36は、昇降台車38Aに設けられており、昇降台車38Aと一体に昇降するようになっている。
【0036】
撮影台支持部28は、回動軸16の軸周りに回動軸16に対して回動可能に支持されており、回動軸16に対する所定の回動位置において、放射線照射装置24が載置面20に対して正対するようになっている。なお、図3において実線で示す放射線照射装置24と載置面20との位置関係が、放射線照射装置24が載置面20に対して正対する正対状態を示す位置関係であり、図3において二点鎖線で示す位置に放射線照射装置24が位置する場合において、放射線照射装置24の載置面20に対する正対状態から撮影台支持部28が回動軸16に対して相対的に回動した状態を示す。
【0037】
撮影台支持部28には、図1に示すように、軸方向両端部が正面側プレート28A及び背面側プレート28Bに回転可能に支持された回転軸42が設けられている。回転軸42には、図4及び図5に示すように、その周方向一部に切欠部42Aが形成されており、当該周方向の他の部分は、切欠部42Aが形成されていない非形成部42Bとされている。具体的には、回転軸42の軸方向一端部(Z方向側端部)において、Dカットされることで、切欠部42A及び非形成部42Bが形成されている。
【0038】
回動軸16には、図1に示すように、回動軸16に固定されて回動軸16と一体に回動する受け部60が設けられている。受け部60は、図4及び図6に示すように、回動軸16の周方向一部に形成された円弧とされた帯状に構成されている。受け部60には、回動軸16に対する撮影台支持部28の回動位置が、放射線照射装置24が載置面20に対して正対する位置(図3において実線で示す位置)である場合において、切欠部42A及び非形成部42Bが内部に位置する凹部60Aが形成されている。
【0039】
回転軸42の非形成部42Bは、図6に示すように、回転軸42が後述の連結位置に位置する場合において、回動軸16の軸方向視において、台形状の凹部60Aにおける2つの斜辺と接触するようになっている。
【0040】
凹部60Aは、図6に示すように、回動軸16の軸方向視において、長さが下底より短い上底を回動軸16の径方向内側に有する台形状に形成されている。
【0041】
撮影台支持部28には、図1に示すように、回転軸42を回転させる回転駆動部の一例としての駆動モータ44(例えば、DCモータ)が設けられている。
【0042】
回転軸42には、図4〜図6に示すように、回転部材の一例としての回転ギヤ46が、回転軸42の軸周りに回転軸42に対して回転可能に支持されている。回転ギヤ46は、ギヤ列45を介して駆動モータ44によって正転及び逆転されるようになっている。
【0043】
また、回転軸42には、図7に示すように、駆動モータ44によって正転された回転ギヤ46が当接することで回転ギヤ46と回転軸42とを一体に回転させる当接部材の一例としてのピン48が固定されている。ピン48には、回転ギヤ46の内壁に形成された当接部46Bが当接するようになっている。
【0044】
回転軸42には、駆動モータ44によって逆転された回転ギヤ46の回転力を回転軸42に伝達することで回転ギヤ46と回転軸42とを一体に回転させ、回転軸42が外力によって回転しない状態においては、駆動モータ44によって逆転された回転ギヤ46の回転力により弾性変形しながら回転ギヤ46を回転軸42に対して回転させる弾性部材の一例としてのねじりコイルバネ50が設けられている。ねじりコイルバネ50は、一端部が、回転ギヤ46に設けられた取付部46Aに取り付けられ、他端部が、板状部材66Aに設けられた取付部67に取り付けられている。
【0045】
なお、回転軸42が外力によって回転しない状態とは、具体的には、例えば、図8に示すように、回転軸42と凹部60Aとの位置がずれることで、回転軸42の切欠部42Aが形成された部分(Dカットされた面)が、受け部60の凹部60Aの縁に当接して回転軸42が回転しない場合が考えられる。
【0046】
駆動モータ44は、図4(B)・図5(B)・図6(B)に示すように、回転軸42の非形成部42Bが受け部60の凹部60Aに嵌合し、回転軸42及び受け部60を介して撮影台支持部28が回動軸16と連結されて一体に回動可能な第1回転位置(以下、連結位置という)と、図4(A)・図5(A)・図6(A)に示すように、回転軸42の切欠部42Aが受け部60の凹部60Aの内部に位置して撮影台支持部28と回動軸16との連結状態が解除される第2回転位置(以下、非連結位置という)とに、回転軸42を回転するようになっている。
【0047】
具体的には、駆動モータ44が回転ギヤ46を正転させることで、回転ギヤ46がピン48と当接して所定の回転位置に回転することで、回転軸42が連結位置から非連結位置へ正転するようになっている。当該所定の回転位置は、回転ギヤ46が回転軸42を非連結位置へ位置させるための回転位置(以下、ギヤ非連結位置という)である。
【0048】
また、駆動モータ44が回転ギヤ46を逆転させることで、回転ギヤ46が所定の回転位置に回転することでねじりコイルバネ50を介して、回転軸42が非連結位置から連結位置へ逆転するようになっている。当該所定の回転位置は、回転ギヤ46が回転軸42を連結位置へ位置させるための回転位置(以下、ギヤ連結位置という)である。
【0049】
撮影台支持部28が回動軸16と連結された状態において、駆動モータ36により回動軸16を回動駆動することで、撮影台支持部28及び照射装置支持部29が、回動軸16と一体に回動するようになっている(図2参照)。
【0050】
一方、撮影台支持部28と回動軸16との連結状態が解除された状態において、駆動モータ36により回動軸16を回動駆動することで、受け部60が回転軸42の切欠部42Aを抜けて照射装置支持部29のみが、回動軸16と一体に回動するようになっている(図3参照)。
【0051】
さらに、回転軸42には、図4に示すように、回転軸42の回転位置(回転量)を検出するための検出部66が設けられている。具体的には、検出部66は、回転軸42と一体に回転し、回転軸42の外周から径方向外側に張り出し環状に形成された板状部材66Aと、発光部及び受光部を有する透過型の第1光センサ66Bと、を備えて構成されている。板状部材66Aには、その周方向一部に切欠部66Cが形成されており、当該周方向の他の部分は、切欠部66Cが形成されていない非形成部66Dとされている。
【0052】
回転軸42が連結位置に位置する場合に、図4(B)・図5(B)・図6(B)に示すように、切欠部66Cが第1光センサ66Bの発光部と受光部との間に位置し、回転軸42が非連結位置に位置する場合に、図4(A)・図5(A)・図6(A)に示すように、非形成部66Dが第1光センサ66Bの発光部と受光部との間に位置するようになっている。すなわち、第1光センサ66Bにおいて発光部からの光を受光部が受光することで、回転軸42が連結位置に位置することが検出され、第1光センサ66Bにおいて発光部からの光を受光部が受光しないことで、回転軸42が非連結位置に位置することが検出される。
【0053】
回転ギヤ46には、回転ギヤ46の回転位置(回転量)を検出するための検出部68が設けられている。具体的には、検出部68は、回転ギヤ46の外周から径方向外側に張り出す板状部材68Aと、発光部及び受光部を有する透過型の第2光センサ68B、第3光センサ68Cと、を備えて構成されている。板状部材68Aは、回転ギヤ46の周方向180°において半円の帯状に形成されており、回転ギヤ46には、当該周方向の他の部分は、板状部材68Aが形成されていない切欠部68Dとされている。
【0054】
回転ギヤ46が、回転軸42を連結位置へ位置させるためのギヤ連結位置に位置する場合に、図4(B)・図5(B)・図6(B)に示すように、板状部材68Aが第2光センサ68Bの発光部と受光部との間に位置すると共に、切欠部68Dが第3光センサ68Cの発光部と受光部との間に位置するようになっている。すなわち、第2光センサ68Bにおいて発光部からの光を受光部が受光せず、第3光センサ68Cにおいて発光部からの光を受光部が受光することで、回転ギヤ46が、ギヤ連結位置に位置することが検出される。
【0055】
回転ギヤ46が、回転軸42を非連結位置へ位置させるためのギヤ非連結位置に位置する場合に、図4(A)・図5(A)・図6(A)に示すように、切欠部68Dが第2光センサ68Bの発光部と受光部との間に位置すると共に、板状部材68Aが第3光センサ68Cの発光部と受光部との間に位置するようになっている。すなわち、第2光センサ68Bにおいて発光部からの光を受光部が受光し、第3光センサ68Cにおいて発光部からの光を受光部が受光しないことで、回転ギヤ46が、ギヤ非連結位置に位置することが検出される。
【0056】
回転ギヤ46を回転駆動する駆動モータ44は、第1光センサ66Bの検出結果に基づかず、第2光センサ68B及び第3光センサ68Cの検出結果に基づき制御されるようになっている。すなわち、回転ギヤ46の回転駆動は、回転軸42の回転位置ではなく、回転ギヤ46の回転位置に基づき制御される。
【0057】
なお、上記のように、回転軸42の回転位置と回転ギヤ46の回転位置とを別個に検出するのは、前述のように、例えば、回転軸42の切欠部42Aが形成された部分が受け部60の凹部60Aの縁に当接して回転軸42が回転しない状態(図8に示す状態)では、回転ギヤ46が回転軸42を連結位置へ位置させるためのギヤ連結位置に位置するのにもかかわらず、回転軸42が連結位置に位置しない場合(回転軸42が非連結位置に位置する場合)があり、この状態を検出するためである。
【0058】
基台部14には、図1に示すように、照射装置支持部29のみが回動軸16と一体に回動する状態において、撮影台支持部28を固定(位置決め)するための固定部としてのディスクブレーキ62が設けられている。
【0059】
撮影台支持部28及び照射装置支持部29が回動軸16と一体に回動する状態においては、駆動モータ36が回動軸16を回動する回動量により、乳房Nに対する撮影角度が決定される。回動軸16は、駆動モータ36によって、予め定められた撮影角度(例えば、CC撮影・MLO撮影など)に応じた回動量が駆動されるようになっている。
【0060】
また、照射装置支持部29のみが回動軸16と一体に回動する状態において、駆動モータ36が回動軸16を回動する回動量により、放射線検出器32(撮影台22の載置面20)に対する放射線の照射角度が決定される。回動軸16は、駆動モータ36によって、予め定められた照射角度(例えば、ステレオ撮影におけるステレオ動作角度など)に応じた回動量が駆動されるようになっている。
【0061】
放射線撮影装置10は、図1に示すように、上記撮影角度、上記放射線の照射角度を検出するための検出部としてのポテンシオ63を備えている。
【0062】
(放射線撮影装置10の作用)
次に、放射線撮影装置10の作用を説明する。
【0063】
放射線撮影装置10によれば、被験者Lが撮影台22の胸壁当接部30に正対した状態で、被験者Lの乳房Nが撮影台22の載置面20に載せられる。撮影台22の載置面20に載せられた乳房Nには、放射線照射装置24から放射線が照射される。放射線照射装置24から照射されて乳房Nを透過した放射線は、放射線検出器32によって検出される。そして、放射線検出器32が検出した放射線が可視化されて放射線画像が生成される。
【0064】
ここで、本実施形態の構成では、駆動モータ44によって回転ギヤ46が正転されると、回転軸42に固定されたピン48に回転ギヤ46が当接することで、図4(A)・図5(A)・図6(A)に示すように、回転ギヤ46と回転軸42とを一体に回転させて回転軸42を連結位置から非連結位置へ正転させる。これにより、回転軸42の切欠部42Aが、受け部60の凹部60Aの内部に位置して撮影台支持部28と回動軸16との連結状態が解除される。このとき、撮影台支持部28は、ディスクブレーキ62によって、基台部14に対して固定(位置決め)される。
【0065】
このため、基台部14に設けられた駆動モータ36が、回動軸16を回動させると、放射線照射装置24を支持する照射装置支持部29のみが回動軸16と一体に回動する。これにより、放射線検出器32(撮影台22の載置面20)に対する放射線の照射角度を、予め定められた所定の照射角度へ変えることができる。これにより、複数の照射角度から撮影された放射線画像から立体画像を得ることができる。すなわち、所謂、ステレオ撮影、トモシンセンス撮影が行える。このときの放射線の照射角度は、ポテンシオ63によって検出され、当該照射角度が予め定められた所定の照射角度となっているか否かを検出し、所定の照射角度となっていない場合には、回動動作がリトライされる。
【0066】
なお、駆動モータ44によって回転ギヤ46が正転された後に、回転ギヤ46がギヤ非連結位置に位置するか否かを第2光センサ68B及び第3光センサ68Cによって検出し、回転軸42が非連結位置に位置するか否かを第1光センサ66Bによって検出する。回転ギヤ46がギヤ非連結位置に位置しないこと、及び回転軸42が非連結位置に位置しないことの少なくとも一方が検出された場合には、例えば、装置のエラー状態として、技師に報知するなどの処理を行う。
【0067】
また、駆動モータ44によって回転ギヤ46が逆転されると、回転軸42に設けられたねじりコイルバネ50を介して、図4(B)・図5(B)・図6(B)に示すように、回転ギヤ46と回転軸42とを一体に回転させて回転軸42を非連結位置から連結位置へ逆転させる。これにより、回転軸42の非形成部42Bが、受け部60の凹部60Aに嵌合し、回転軸42及び受け部60を介して、撮影台支持部28が回動軸16と連結されて一体に回動可能な状態となる。
【0068】
このため、基台部14に設けられた駆動モータ36が、回動軸16を回動させると、放射線照射装置24を支持する照射装置支持部29と撮影台支持部28とが回動軸16と一体に回動する。これにより、被験者Lの乳房Nに対する撮影角度を、予め定められた所定の照射角度へ変えることで、例えば、CC撮影・MLO撮影を行うことができる。このときの撮影角度は、ポテンシオ63によって検出され、当該撮影角度が予め定められた所定の撮影角度となっているか否かを検出し、所定の撮影角度となっていない場合には、回動動作がリトライされる。
【0069】
一方、駆動モータ44によって回転ギヤ46を逆転させて回転軸42を非連結位置から連結位置へ逆転させる場合に、回転軸42が外力によって回転しない状態においては、ねじりコイルバネ50が弾性変形しながら(捻られながら)回転ギヤ46を回転軸42に対して回転させる。このように、回転軸42が回転しない状態では、駆動モータ44によって回転ギヤ46を逆転させる回転力は、ねじりコイルバネ50で吸収されるので、回転軸42を無理に回転させることによる駆動モータ44の焼失や回転ギヤ46の損傷を抑制できる。
【0070】
なお、駆動モータ44によって回転ギヤ46が逆転された後に、回転ギヤ46がギヤ連結位置に位置するか否かを第2光センサ68B及び第3光センサ68Cによって検出し、回転軸42が連結位置に位置するか否かを第1光センサ66Bによって検出する。回転ギヤ46がギヤ連結位置に位置しないことが検出された場合には、例えば、装置のエラー状態として、技師に報知するなどの処理を行う。
【0071】
回転ギヤ46がギヤ連結位置に位置すること、及び回転軸42が非連結位置に位置しないことが検出された場合には、駆動モータ36により回動軸16の一方及び他方への回動動作(照射装置支持部29の左右への首振り動作)を行う。これにより、回転軸42の切欠部42Aが形成された部分が受け部60の凹部60Aの縁に当接した状態からその当接が解除されると、弾性変形したねじりコイルバネ50が復帰して、回転軸42が回転し回転軸42を本来あるべき連結位置に位置させることができる。
【0072】
本実施形態の構成では、回転軸42の非形成部42Bが受け部60の凹部60Aに嵌合することで、撮影台支持部28と回動軸16とを連結するので、部材同士を圧接して摩擦力により連結する構成などと比べて、撮影台支持部28と回動軸16とを強固に連結できる。
【0073】
また、本実施形態の構成では、軸方向両端部が撮影台支持部28に支持された回転軸42を回転させることで、撮影台支持部28と回動軸16との連結及び非連結がなされる。このため、撮影台支持部28と回動軸16との連結及び非連結を行う際に、回転軸42が軸方向へ移動しない。従って、例えば、受け部60の凹部60Aに対して回転軸42を抜き差しすることで撮影台支持部28と回動軸16との連結及び非連結を行う構成のように、回転軸42が軸方向に移動することを考慮して回転軸42を支持する構成に比べて、回転軸42を撮影台支持部28に強固に支持できるので、撮影台支持部28と回動軸16とを強固に連結できる。
【0074】
また、図9に示すように、撮影台支持部28と回動軸16との連結及び非連結を行う際に、回転軸42が軸方向へ移動する比較例の構成では、回転軸42の軸方向に回転軸42を移動させるための移動スペースSが必要となり、被験者Lが車椅子患者である場合など、その足元に移動スペースSが位置すると窮屈となり、撮影の際に不快となる。これに対して、本実施形態の構成では、撮影台支持部28と回動軸16との連結及び非連結を行う際に、回転軸42が軸方向へ移動しないので、回転軸42の軸方向に回転軸42を移動させるための移動スペースSが不要となる。
【0075】
また、本実施形態の構成によれば、回転軸42の非形成部42Bは、回動軸16の軸方向視において、台形状の凹部60Aにおける2つの斜辺と接触するので、非形成部42Bが一か所で凹部60Aに接触する構成に比べて、非形成部42Bと凹部60Aとが強固に結合される。これにより、撮影台支持部28と回動軸16とを強固に連結できる。
【0076】
なお、受け部60の凹部60Aの形状は、台形状でなくともよく、回転軸42が嵌合する形状であればよい。
また、放射線撮影装置10としては、ねじりコイルバネ50及びピン48を有せず、回転ギヤ46が回転軸42に固定され、駆動モータ44の正転力及び逆転力が、回転ギヤ46を介して回転軸42に直接的に伝達される構成であってもよい。

本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0077】
14 基台部
16 回動軸
20 載置面
22 撮影台
24 放射線照射装置(照射部の一例)
28 撮影台支持部(検出器支持部の一例)
29 照射装置支持部(照射部支持部の一例)
32 放射線検出器
36 駆動モータ(回動駆動部の一例)
42 回転軸
42A 切欠部
42B 非形成部
44 駆動モータ(回転駆動部の一例)
46 回転ギヤ(回転部材の一例)
48 ピン(当接部材の一例)
50 コイルバネ(弾性部材の一例)
60A 凹部
60 受け部
L 被験者
N 乳房

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の乳房が載置面に載せられる撮影台と、
前記撮影台の載置面に載せられた乳房に放射線を照射する照射部と、
前記撮影台に設けられ、前記照射部から照射されて前記乳房を透過した放射線を検出する放射線検出器と、
前記照射部を支持する照射部支持部と、
前記照射部支持部が固定されて一体に回動する回動軸を回動可能に支持する基台部と、
前記基台部に設けられ、前記回動軸を回動させる回動駆動部と、
前記回動軸の軸周りに当該回動軸に対して回動可能に支持され、前記回動軸に対する所定の回動位置において前記照射部が前記載置面に正対し、前記撮影台及び前記放射線検出器を支持する検出器支持部と、
軸方向両端部が前記検出器支持部に回転可能に支持され、周方向一部に切欠部が形成され、当該周方向の他の部分は当該切欠部が形成されていない非形成部とされた回転軸と、
前記回動軸に固定されて前記回動軸と一体に回動し、前記検出器支持部が前記所定の回動位置に位置する場合において前記切欠部又は前記非形成部が内部に位置する凹部が形成された受け部と、
前記非形成部が前記凹部に嵌合し、前記回転軸及び前記受け部を介して前記検出器支持部が前記回動軸と連結されて一体に回動可能な第1回転位置と、前記切欠部が前記凹部の内部に位置して前記検出器支持部と前記回動軸との連結状態が解除される第2回転位置とに、前記回転軸を回転させる回転駆動部と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記回動軸の軸方向視において、長さが下底より短い上底を前記回動軸の径方向内側に有する台形状に形成され、
前記非形成部は、前記回動軸の軸方向視において、前記台形状の凹部における2つの斜辺と接触する請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記回転軸の軸周りに当該回転軸に対して回転可能に支持され、前記回転駆動部によって正転及び逆転される回転部材と、
前記回転軸に固定され、前記回転駆動部によって正転された前記回転部材が当接することで前記回転部材と前記回転軸とを一体に回転させて前記回転軸を前記第1回転位置から前記第2回転位置へ正転させる当接部材と、
前記回転軸に設けられ、前記回転駆動部によって逆転された前記回転部材の回転力を前記回転軸に伝達することで前記回転部材と前記回転軸とを一体に回転させて前記回転軸を前記第2回転位置から前記第1回転位置へ逆転させ、前記回転軸が外力によって回転しない状態においては、前記回転駆動部によって逆転された前記回転部材の回転力によって弾性変形しながら前記回転部材を前記回転軸に対して回転させる弾性部材と、
を備える請求項1又は2に記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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