放射線断層撮影装置
【課題】被検体に対する放射線源・検出手段の位置関係を調整することで縮小・拡大撮影が可能な放射線断層撮影装置において、実験者の被曝を抑制する放射線断層撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、被検体に対してX線管3およびFPD4を接近・離反させることによりFPD4に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト手段を備えている。また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、長穴を有するリング状部材9とこのリング状部材9に対して長穴の伸びる方向に配列された2つの各遮蔽体19a,19bとを備えている。本発明の最も特徴的なのは、X線管3およびFPD4のシフト動作とは逆方向に各遮蔽体19a,19bが移動されることにある。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【解決手段】本発明によれば、被検体に対してX線管3およびFPD4を接近・離反させることによりFPD4に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト手段を備えている。また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、長穴を有するリング状部材9とこのリング状部材9に対して長穴の伸びる方向に配列された2つの各遮蔽体19a,19bとを備えている。本発明の最も特徴的なのは、X線管3およびFPD4のシフト動作とは逆方向に各遮蔽体19a,19bが移動されることにある。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断層画像を撮影する放射線断層撮影装置に係り、特に、放射線源と被検体との距離を調整することができる放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研究対象としての被検体をイメージングする装置の一つに放射線断層撮影装置がある。この装置は、被検体の断層画像を生成することができるものであり、術者は、この画像を参照して被検体の内部の構造を知ることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の従来の構成について説明する。従来装置は、図15に示す様に、開口が設けられたガントリ51を有し、このガントリ51の内部には、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出する放射線検出器54とが設けられている。放射線源53と放射線検出器54とは、ガントリ51の開口を挟むように配置されており、互いの相対位置を保った状態で、開口を中心に回転することができる。この開口の内部には、被検体が配置される。
【0004】
従来の放射線断層撮影装置の動作について説明する。従来装置により、被検体の断層画像を取得するには、まず、被検体がガントリ51の開口に挿入される。そして、放射線源53と放射線検出器54とを被検体を中心に回転させながら複数回の撮影を行う。得られた透視画像の各々には、撮影方向が異なる被検体の像が写り込んでいる。これらの透視画像を組み立てると、被検体の断層画像が生成できる。
【0005】
放射線源53から照射した放射線は放射状に広がって放射線検出器54に入射する。したがって、被検体を透過してきた放射線ビームは、放射線検出器54に向かう間に空間的に広がっていくことになる。すると、放射線ビームの中に写り込んでいる被検体像は引き延ばされて放射線検出器54に入射することになる。その被検体像の引き延ばしの程度は、放射線源53・放射線検出器54と被検体との位置関係によって異なる。
【0006】
従来の放射線断層撮影装置においては、被検体に対する放射線源53・放射線検出器54の位置を調整することにより、放射線検出器54に写り込む被検体の像の大きさを変更できるようになっている。従来装置において、被検体の一部分の断層画像が取得したい場合は、被検体を放射線検出器54から遠ざけて拡大撮影をし、被検体の全体の断層画像が取得したい場合は、被検体を放射線検出器54に近づけて縮小撮影をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/141831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来の構成によれば、放射線源53から照射される放射線がガントリ51の外部まで放射し、実験者に無用な被曝をもたらしてしまう可能性があるという問題点がある。
【0009】
放射線源53から放射された放射線のほとんどは放射線検出器54に入射し、そこで検出信号に変換されて消滅する。しかし、放射線が被検体を通過する間に生じた散乱線は、被検体から発生するものであり、被検体を中心として放射状に広がる。このような放射線は、線量としては僅かであり、エネルギーも高いものではないものの、ガントリ51の付近で放射線断層撮影装置を操作している実験者にも入射する。実験者が長時間放射線断層撮影装置を操作しなければならない場合、実験者は無用な被曝をしてしまう危険性に晒される。
【0010】
放射線が装置の外部から放射されないようにするには、放射線を吸収する遮蔽体を設けるのが一般的である。しかし、被検体に対する放射線源53・放射線検出器54の距離が調整できるような構成においては、遮蔽体が放射線源53・放射線検出器54の移動を妨げてはならないので、放射線を確実に遮断する遮蔽体を設置するのは難しい。
【0011】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検体に対する放射線源・検出手段の位置関係を調整することで縮小撮影・拡大撮影が可能な放射線断層撮影装置において、実験者の被曝を抑制する放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、放射線源と検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、放射線源および検出手段を互いの位置関係を保った状態で中心点に対してシフトさせることにより検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト動作を行うシフト手段と、放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向から見て放射線源と検出手段とを一体に覆うように設けられているとともに、放射線源と検出手段とを結ぶ線分の方向に伸びた長穴を有し、放射線源および検出手段のシフト動作に追従して移動するリング状部材と、リング状部材に設けられた放射線を吸収する2つの遮蔽体と、遮蔽体のうち、放射線源側に設けられた第1遮蔽体を中心点に対して接近・離反させることにより第1遮蔽体とリング状部材との相対位置を調節する第1調節手段と、遮蔽体のうち、検出手段側に設けられた第2遮蔽体を中心点に対して接近・離反させることにより第2遮蔽体とリング状部材との位置関係を調節する第2調節手段とを備え、回転手段は、放射線源、検出手段、リング状部材、および遮蔽体の各々の相対位置を保った状態で各部材を一体に回転させ、第1調節手段および第2調節手段が遮蔽体の各々を移動させることにより、シフト手段が中心点に対して放射線源を離反させるようにシフト動作をして、リング状部材の長穴における放射線源側の端部が中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように第1遮蔽体が中心点に接近され、シフト手段が中心点に対して検出手段を離反させるようにシフト動作をして、リング状部材の長穴における検出手段側の端部が中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように第2遮蔽体が中心点に接近されることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]本発明によれば、被検体に対する放射線源・検出手段の位置関係を調整することで縮小撮影・拡大撮影が可能な放射線断層撮影装置において、実験者の被曝を抑制する放射線断層撮影装置を提供できる。すなわち、本発明は、被検体に対して放射線源および検出手段を接近・離反させることにより検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト手段を備えている。これにより、断層画像に写り込む被検体の像を適宜拡大・縮小することができる。また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、長穴を有するリング状部材とこのリング状部材に対して長穴の伸びる方向に配列された2つの遮蔽体とを備え、これによって放射線を吸収して放射線が装置の外部に出射することを防いでいる。本発明の最も特徴的なのは、シフト手段のシフト動作とは逆方向に遮蔽体が移動されることにある。すなわち、シフト動作によって放射線源・検出手段が断層撮影をするときの回転中心から離れると、長穴の一端が回転中心から離れる。そうすると被検体は回転中心に載置されるのであるから、長穴の一端と被検体との間に大きな隙間ができることになる。本発明によればこの隙間は遮蔽体によって塞がれる。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【0014】
また、上述の放射線断層撮影装置において、術者の指示を入力させる入力手段を備え、入力手段に従って第1調節手段および第2調節手段が遮蔽体の各々を中心点に接近するように移動させればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、縮小撮影と拡大撮影との中間の拡大率で撮影を行う場合に適している。この中間の拡大率での撮影においては、長穴の両端が回転中心から離れるので、長穴の両端で被検体との間に隙間ができることになる。上述の構成によればこの隙間は遮蔽体の各々によって塞がれる。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【0016】
また、上述の放射線断層撮影装置において、遮蔽体の各々が仮想円に平行な平面上に設けられていればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。遮蔽体の各々が仮想円に平行な平面上に設けられていれば、遮蔽体の各々で放射線の通過を確実に防ぐことができる。
【0018】
また、上述の放射線断層撮影装置において、第1調節手段および第2調節手段が遮蔽体の各々を移動させることにより、シフト手段が中心点に対して放射線源を離反させるようにシフト動作をしたときは、第2遮蔽体の位置が中心点から離反するように調節され、シフト手段が中心点に対して検出手段を離反させるようにシフト動作をしたときは、第1遮蔽体の位置が中心点から離反するように調節されることにより、遮蔽体が放射線源および検出手段を回転させるときのカウンターバランスとなっていればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。シフト動作を行うと放射線源と検出手段とが回転する重心が回転中心からずれてしまい、回転手段は放射線源と検出手段とを設定どおり回転できなくなってしまう。遮蔽体をカウンターバランスとして利用すれば、回転手段は放射線源と検出手段とは理想どおりに過不足なく回転することになり、鮮明な断層像が取得できる。
【0020】
また、上述の放射線断層撮影装置において、遮蔽体の各々には、被検体に干渉しないようにする切り欠きが設けられていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。遮蔽体の各々に被検体に干渉しないようにする切り欠きが設けられていれば、遮蔽体を中心点に接近させたとしても、遮蔽体が被検体に干渉することがない。
【0022】
また、上述の放射線断層撮影装置において、小動物撮影用となっていればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。本発明を小動物撮影用の装置に適用すれば、撮影の失敗により撮影をやり直す必要が無く、再び麻酔をかけることなく小動物を確実に撮影することができる。
【0024】
また、上述の放射線断層撮影装置において、放射線源、検出手段に対して仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ポジトロン放出断層撮影装置を備えるようにすれば、被検体の機能的な画像と構造的な画像との両方が取得でき、撮影で取得できる情報をより多く得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被検体に対して放射線源および検出手段を接近・離反させることにより検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト手段を備えている。これにより、断層画像に写り込む被検体の像を適宜拡大・縮小することができる。また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、長穴を有するリング状部材とこのリング状部材に対して長穴の伸びる方向に配列された2つの遮蔽体とを備えている。本発明の最も特徴的なのは、シフト手段のシフト動作とは逆方向に遮蔽体が移動されることにある。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線管およびFPDの回転移動を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るホルダを説明する平面図である。
【図4】実施例1に係るリング状部材を説明する平面図である。
【図5】実施例1に係るリング状部材の移動を説明する平面図である。
【図6】実施例1に係るリング状部材の移動を説明する平面図である。
【図7】実施例1に係るリング状部材を説明する断面図である。
【図8】実施例1に係る遮蔽体を説明する平面図である。
【図9】実施例1に係る遮蔽体の移動を説明する平面図である。
【図10】実施例1に係る遮蔽体の移動を説明する平面図である。
【図11】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図13】実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図14】本発明の1変形例に係る遮蔽体の移動を説明する平面図である。
【図15】従来構成のX線断層撮影装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0028】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。また、本発明のX線断層撮影装置は、マウスなどの小動物撮影用となっている。
【0029】
まず、実施例1に係るX線断層撮影装置について説明する。X線断層撮影装置1は、図1に示す様に被検体Mを載置する天板2と、天板2の伸びる方向に貫通した貫通孔を有するガントリ10とを備えている。天板2は、ガントリ10の貫通孔に挿通されており、天板2を支持する支持台2aに対して天板2の伸びる方向(後述における仮想円VCの直交方向:Z方向)に進退自在に移動することができる。この天板2の移動は天板移動機構15が行う。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御するものである。
【0030】
ガントリ10の内部には、X線を照射するX線管3と、X線を検出するFPD4とが設けられている。X線管3から照射されたX線は、ガントリ10の貫通孔を横切るように通過して、FPD4に到達する。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0031】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ透視画像P0が生成される。断層画像生成部12は、画像生成部11で生成された透視画像P0を基に、被検体Mを任意の断層面で裁断したときの断層画像P1を生成する。
【0032】
X線管3およびFPD4の回転について説明する。X線管3およびFPD4は、回転機構7により、天板2の伸びる方向に伸びた中心軸を中心に一体的に回転される。より具体的には、X線管3およびFPD4は、図2に示す様に互いの相対的な位置関係を保った状態で回転移動される。このとき、X線管3は、回転機構7によりX線管3とFPE4とを結ぶ線分上にある中心点を中心とする仮想円VCの軌跡を描きながら回転することになる。この仮想円VCと直交する方向(図2における紙面貫通方向:Z方向)が、天板2の延伸方向と一致する。回転制御部8は、回転機構7を制御する目的で設けられている。
【0033】
天板2には、被検体Mを保持するためのホルダ5が載置されている。このホルダ5の構造について説明する。ホルダ5は、図3に示す様に、5つの円(立体として捕らえればZ方向に伸びた円柱)の形状の開口5aを有している。この開口5aの各々に被検体Mが一体ずつ挿入されることになる。開口5aの内壁を形成する円筒5bは、Z方向に伸びた複数の貫通孔がレンコン状に開けられた発泡スチロール製の円筒支持体5cにおける貫通孔の各々に埋め込まれることで支持されている。また、円筒5bは、X線を透過しやすいアクリル樹脂で構成される。ホルダ5は、天板2に近い側の一段目に3個の開口5aが、天板2に遠い側の二段目に2個の開口5aが形成されているような形状をしている。
【0034】
リング状部材9は、図4に示すように仮想円VCに平行な平面に広がる板状の部材である。このリング状部材9は、中央に長穴9aを有しており、X線管3とFPD4とを結ぶ線分の方向に伸びており、リング状部材9の全体形状も、これにならって同方向に伸びている。このリング状部材9は、X線を吸収しやすい鉛などの部材で形成される。
【0035】
次に、X線管3およびFPD4の被検体Mに対する位置調整について説明する。図5および図6は、被検体Mに対するX線管3およびFPD4の位置を表した模式図である。X線管3から照射されるX線ビームは被検体Mを通過した後FPD4に入射するようになっている。
【0036】
シフト機構17は、X線管3およびFPD4の相対位置を保った状態で仮想円VCの中心点に位置する被検体Mに対する各部材3,4の位置を調節できるようになっている。図5は、シフト機構17が被検体MからX線管3を最も遠ざけたときの互いの位置関係を示した図である。シフト機構17は、被検体MからX線管3を遠ざけるときそれに合わせてFPD4を被検体Mに近づける。図6は、シフト機構17が被検体MにX線管3を最も近づけたときの互いの位置関係を示した図である。シフト機構17は、被検体MにX線管3を近づけるときそれに合わせてFPD4を被検体Mから遠ざける。この様にして、シフト機構17の動作によってもX線管3とFPD4との距離に変化はない。シフト制御部18は、シフト機構17を制御するものである。
【0037】
図5の位置関係でX線管3およびFPD4を被検体Mに対して一回転させてX線透視撮影を行うと、取得される透視画像P0には、被検体Mが小さく写り込む。図5によれば、X線管3と被検体Mとの距離が遠く、被検体MとFPD4との距離が近いので、被検体Mの投影像はあまり拡大されずにFPD4に到達する。
【0038】
また、図6に示すように、FPD4を被検体Mから遠ざけた状態でX線管3およびFPD4を被検体Mに対して一回転させてX線透視撮影を行うと、取得される透視画像P0には、被検体Mが大きく写り込む。図6によれば、X線管3と被検体Mとの距離が近く、被検体MとFPD4との距離が遠いので、被検体Mの投影像は大きく拡大されてFPD4に到達する。
【0039】
このように、シフト機構17が被検体(中心点)に対してX線管3およびFPD4を接近・離反させるシフト動作により、FPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを調整することができるようになっている。すなわち、シフト機構17は、各部材3,4と被検体Mとの位置関係を図9で説明したような位置関係とするべくシフト動作をすることで、FPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを小さくするように調整することができる。逆に、シフト機構17は、各部材3,4と被検体Mとの位置関係を図10で説明したような位置関係とするべくシフト動作をすることで、FPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを大きくするように調整することもできる。
【0040】
なお、図5,図6を参照すれば分かるように、リング状部材9の長穴9aには、ホルダ5が挿通されている。ホルダ5に隣接するガントリ10の外壁、およびホルダ5を載置する天板2もこの長穴9aの内部に位置している。
【0041】
X線管3およびFPD4のシフト動作とリング状部材9との関係について説明する。リング状部材9は、X線管3およびFPD4がシフト動作によりシフトされると、それに追従してシフトする。すなわち、X線管3,FPD4およびリング状部材9は互いに固定されて物理的に一体となっている。従って、回転機構7によりX線管3およびFPD4を回転させると、リング状部材9もこれに追従して回転することになる。
【0042】
図5は、縮小撮影が行われる状態でのリング状部材9の位置を表している。縮小撮影を行う目的でX線管3をホルダ5(仮想円VCの中心点)から離反させるとともに、FPD4をホルダ5に接近させるようシフト動作を行うと、リング状部材9もこの動作に追従する。すなわち、縮小撮影を行うときは、リング状部材9の長穴9aにおけるX線管3側の端部がホルダ5から遠ざかり、長穴9aにおけるFPD4側の端部がホルダ5に近づく。
【0043】
図6は、拡大撮影が行われる状態でのリング状部材9の位置を表している。拡大撮影を行う目的でX線管3をホルダ5に接近させるとともに、FPD4をホルダ5から離反させるようシフト動作を行うと、リング状部材9もこの動作に追従する。すなわち、拡大撮影を行うときは、リング状部材9の長穴9aにおけるX線管3側の端部がホルダ5に近づき、長穴9aにおけるFPD4側の端部がホルダ5から遠ざかる。このように長穴9aの形状はX線管3およびFPD4をシフトさせたとしてもホルダ5(ガントリ10)とリング状部材9とが干渉することがないようにX線管3およびFPD4のシフト方向(以下単にシフト方向と呼ぶ)に伸びた形状となっている。
【0044】
図7は、ホルダ5およびこれに隣接するガントリ10の壁がリング状部材9の長穴9aを貫通している様子を示す断面図である。図7に示すように天板2の摺動によりホルダ5はリング状部材9の長穴9aに導入される。
【0045】
第1遮蔽体19aおよび第2遮蔽体19bは、図8に示す様に仮想円VCに平行な平面に広がる板状の部材であり、リング状部材9のX線管3・FPD4に面した面とは反対側の面側の同一平面上に設けられている。そして、第1遮蔽体19aは、X線管3から見てリング状部材9の裏側に設けられており、第2遮蔽体19bは、FPD4から見てリング状部材9の裏側に設けられている。各遮蔽体19a,19bは、X線管3・FPD4のシフト方向に配列されている。
【0046】
リング状部材9から各遮蔽体19a,19bを見れば、第1遮蔽体19aは、リング状部材9の長穴9aにおけるX線源3側の端部9a1を覆うように設けられており、第2遮蔽体19bは、リング状部材9の長穴9aにおけるFPD4側の端部9a2を覆うように設けられている。この各遮蔽体19a,19bは、X線を吸収しやすい鉛などの部材で形成される。
【0047】
第1遮蔽体19aおよび第2遮蔽体19bには、ガントリ10の壁に干渉しないように切り欠きが設けられている。各遮蔽体19a,19bに挟まれる位置に存するガントリ10の壁の形状は円筒形となっているので、各遮蔽体19a,19bの各々に設けられた切り欠きの形状は、これにならって半円状となっている。
【0048】
線源側調節機構13aは、第1遮蔽体19aをリング状部材9に対するシフト方向の位置を調節する目的で設けられている。同様に検出器側調節機構13bは、第2遮蔽体19bをリング状部材9に対するシフト方向の位置を調節する目的で設けられている。各遮蔽体19a,19bをシフト方向に移動させると、リング状部材9の中央の開口が広がったり狭まったりする。線源側調節制御部14aおよび検出器側調節制御部14bは、線源側調節機構13aおよび検出器側調節機構13bの各々を制御する目的で設けられている。線源側調節機構13aは、本発明の第1調節手段に相当し、検出器側調節機構13bは、本発明の第2調節手段に相当する。
【0049】
また、回転機構7によりX線管3およびFPD4を回転させると、各遮蔽体19a,19bもこれに追従して回転する。X線管3およびFPD4の回転中はリング状部材9に対する各遮蔽体19a,19bの位置関係に変化はない。この一体に回転する各部材を合わせて回転体と呼ぶことにする。
【0050】
図9は、縮小撮影が行われるときの各遮蔽体19a,19bの位置を表している。図9に示すように、縮小撮影を行う目的でX線管3をホルダ5(仮想円VCの中心点)から離反させるとともに、FPD4をホルダ5に接近させるようシフト動作を行うと、線源側調節機構13aは第1遮蔽体19aがホルダ5に接近するように位置調節をする。これにより、リング状部材9の長穴9aにおけるX線源3側の端部9a1は、第1遮蔽体19aで覆われる。
【0051】
また、これに合わせて、検出器側調節機構13bは、第2遮蔽体19bがホルダ5から離反するように位置調節をする。
【0052】
図10は、拡大撮影が行われるときの各遮蔽体19a,19bの位置を表している。図10に示すように、拡大撮影を行う目的でX線管3をホルダ5(仮想円VCの中心点)に接近させるとともに、FPD4をホルダ5から離反させるシフト動作を行うと、検出器側調節機構13bは第2遮蔽体19bがホルダ5に接近するように位置調節をする。これにより、リング状部材9の長穴9aにおけるFPD4側の端部9a2は、第2遮蔽体19bで覆われる。
【0053】
また、これに合わせて、線源側調節機構13aは、第1遮蔽体19aがホルダ5から離反するように位置調節をする。
【0054】
つまり、図9,図10に示すように、拡大撮影・縮小撮影のいずれの撮影においても、リング状部材9および各遮蔽体19a,19bに囲まれた開口は、ホルダ5が通過できるだけの円形の形状となっている。このようにすることで、ホルダ5をZ方向(紙面貫通方向)に移動できるだけの通路を確保しつつも、開口の大きさは最小となっている。これにより、リング状部材9の裏側で発生したX線は、小さな開口を通過しなければリング状部材9の表側に向かうことができない。言い換えれば、術者の被曝の原因となるはずであったX線は、リング状部材9および各遮蔽体19a,19bにより吸収されることになる。
【0055】
X線管3,FPD4,リング状部材9,および各遮蔽体19a,19bで構成される回転体の重心について説明する。図9のように縮小撮影をしようとすると、X線管3がホルダ5から離反し、FPD4がホルダ5に接近するので、回転体の重心はX線管側に移動する。この状態でホルダ5(中心点)を中心にX線管3とFPD4とを回転させようとすると、回転の中心と回転体の重心とが一致しないので、回転機構7に応力がかけられた状態で回転体が回転されることになる。すると、回転機構7が理想どおりに回転体を回転させることができない。すなわち、回転機構7は、回転体を設定よりも例えば大きい角度だけ回転させてしまう。これが断層画像P1の乱れの原因となる。
【0056】
しかしながら、縮小撮影をしようとするとき、図9に示すように、第1遮蔽体19aがホルダ5に接近し、第2遮蔽体19bがホルダ5から離反するので、X線管側に移動した回転体の重心は、FPD4側に戻される。これにより、回転の中心と回転体の重心とが一致することになり、回転機構7に応力がかからず回転機構7は理想どおりに過不足なく回転体を回転させることができる。
【0057】
同様に、図10のように拡大撮影をしようとすると、X線管3がホルダ5に接近し、FPD4がホルダ5から離反するので、回転体の重心はFPD4側に移動する。しかしながら、第1遮蔽体19aがホルダ5から離反し、第2遮蔽体19bがホルダ5に接近するので、FPD4側に移動した回転体の重心は、X線管3側に戻される。これにより、回転の中心と回転体の重心とが一致することになり、図9のときと同様に回転機構7は理想どおりに回転体を回転させることができる。このように、各遮蔽体19a,19bは、X線管3およびFPD4が回転するときのカウンターバランスとなっている。
【0058】
なお、図9における第2遮蔽体19bと、図10における第1遮蔽体19aとは、ホルダ5から離反しており、X線を吸収する遮蔽体としては機能していない。従って、回転体の重心をよりホルダ5(中心点)により近づける目的で、図9においては第2遮蔽体19bの位置を、図10においては第1遮蔽体19aの位置をリング状部材9に対して自由に変更することができる。
【0059】
表示部25は、X線撮影により取得された断層画像P1を表示する目的で設けられている。操作卓26は、実験者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,14a,14b,16および各部11,12を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、撮影に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線断層撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。操作卓26は、本発明の入力手段に相当する。
【0060】
<X線断層撮影装置の動作>
次に、X線断層撮影装置1の動作について説明する。実施例1に係るX線断層撮影装置1を用いて小動物の断層画像P1を取得するには、図11に示すように、まず、被検体Mがホルダ5に収納され(被検体収納ステップS1),被検体Mに対してX線管3およびFPD4がシフトされる(シフトステップS2)。そして、各遮蔽体19a,19bの位置がリング状部材9に対して調節され(遮蔽体位置調節ステップS3)。透視画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS4)。そして、断層画像P1が生成される(断層画像生成ステップS5)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0061】
<被検体収納ステップS1>
撮影に先立って、被検体Mが撮影中に移動しない様に被検体Mを麻酔しておく。麻酔された被検体Mの各々は、ホルダ5の開口5aに収納される。このとき、ホルダ5の開口5a1つ当たり一体の被検体Mが収納される。ホルダ5には、5つの開口5aが設けられているので、ホルダ5には5体の被検体Mを収納することができる。複数の被検体Mを収納したホルダ5は天板2に載置される。
【0062】
<シフトステップS2:縮小撮影の場合>
実験者が操作卓26を通じてX線断層撮影装置1に断層撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10の貫通孔の内部に導入される(図1参照)。被検体Mを縮小して断層画像P1を撮影する必要がある場合、実験者は操作卓26を通じてシフト制御部18に指示を与え、X線管3およびFPD4をホルダ5に対して移動させる。そして、図9に示す様に、X線管3が被検体Mから遠ざかり、FPD4が被検体Mに近づいた状態となる。
【0063】
<シフトステップS2:拡大撮影の場合>
被検体Mを拡大して断層画像P1を撮影する必要がある場合、実験者は操作卓26を通じてシフト制御部18に指示を与え、X線管3およびFPD4をホルダ5に対して移動させる。そして、図10に示す様に、X線管3が被検体Mに近づき、FPD4が被検体Mから遠ざかった状態となる。
【0064】
<遮蔽体位置調節ステップS3>
X線管3およびFPD4がホルダ5に対しシフトされると、今度は、リング状部材9に対する各遮蔽体19a,19bの各々の位置が調節される。縮小撮影を行う場合は図9に示す様に、第1遮蔽体19aがホルダ5に接近され、第2遮蔽体19bがホルダ5から離反される。拡大撮影を行う場合は図10に示す様に第1遮蔽体19aがホルダ5から離反され、第2遮蔽体19bがホルダ5に接近される。この様にすることで、リング状部材9における長穴9aが各遮蔽体19a,19bの各々によって塞がれ、ガントリ10外部に放射されるX線の線量が抑制される。
【0065】
<撮影開始ステップS4>
X線管3,FPD4のシフト動作、および各遮蔽体19a,19bの位置調節が終了すると、X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、X線を間欠的に照射する。その間に回転機構7は、X線管3およびFPD4を回転させる。FPD4は、X線管3が照射したX線のうち被検体Mを通過してきたX線を検出し、このときの検出データを画像生成部11に送出する。
【0066】
画像生成部11は、FPD4から送出された検出データを画像化して、X線の強さがマッピングされた透視画像P0を生成する。FPD4は、X線管3がX線を照射する度に検出データを画像生成部11に送出するので、画像生成部11は、複数枚の透視画像P0を生成することになる。X線管3およびFPD4が回転移動されながら複数枚の透視画像P0が取得されるのであるから、透視画像P0の各々には、被検体Mの透視像が透視する方向を変えながら写り込んでいることになる。X線管3およびFPD4が撮影開始から一回転したところで、X線管3はX線の照射を終了する。
【0067】
撮影開始後の天板2の移動について説明する。X線断層撮影装置1は、一度の撮影で被検体Mの一部分しか撮影できない。X線断層撮影装置1の撮影視野におけるZ方向の幅が被検体MのZ方向の幅よりも小さいからである。そこで、実施例1の構成によれば、上述のX線管3・FPD4が一回転して終了する撮影を複数回行うことで、被検体Mの全体像について断層画像を取得するようにしている。すなわち、図12の左側が示すように、まず被検体Mの尾部の撮影を行った後、天板2が摺動されることにより被検体Mとガントリ10の相対位置を変更し、今度は図12の中央が示すように、被検体Mの腹部の撮影を行う。その後、再び天板2を摺動して今度は図12の右側が示すように被検体Mの頭部の撮影を行う。こうして、被検体全身について透視画像P0が取得される。
【0068】
<断層画像生成ステップS5>
透視画像P0は、断層画像生成部12に送出される。断層画像生成部12では、方向を変えながら撮影されることにより被検体Mの立体的な構造に関する情報を有している一連の透視画像P0を再構成してZ方向を体軸とする被検体Mを輪切りにするような断層画像P1を生成する。この断層画像P1は、輪切りにする位置をZ方向について変更しながら複数枚生成される。この様にして生成された断層画像P1が表示部25に表示されて撮影は終了となる。つまり断層画像P1は、被検体Mを仮想円VCの存する平面およびこれに平行な平面で裁断したときの断面像となっている。そして、断層画像P1に写り込んだ被検体Mの像は、X線管3・FPD4を移動させることによって調整した拡大率で写り込んでいる。この断層画像P1が表示部25に表示されて断層画像の取得動作は終了となる。
【0069】
以上のように、実施例1の構成によれば、被検体Mに対するX線管3・FPD4の位置関係を調整することで縮小撮影・拡大撮影が可能なX線断層撮影装置1において、実験者の被曝を抑制するX線断層撮影装置1を提供できる。すなわち、実施例1の構成は、被検体Mに対してX線管3およびFPD4を接近・離反させることによりFPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを調整するシフト機構17を備えている。これにより、断層画像P1に写り込む被検体Mの像を適宜拡大・縮小することができる。また、実施例1の構成に係るX線断層撮影装置1は、長穴9aを有するリング状部材9とこのリング状部材9に対して長穴9aの伸びる方向に配列された2つの各遮蔽体19a,19bとを備え、これによってX線を吸収してX線が装置の外部に出射することを防いでいる。実施例1の構成の最も特徴的なのは、シフト機構17のシフト動作とは逆方向に各遮蔽体19a,19bが移動されることにある。すなわち、シフト動作によってX線管3・FPD4が断層撮影をするときの回転中心から離れると、長穴9aの一端が回転中心から離れる。そうすると被検体Mは回転中心に載置されるのであるから、長穴9aの一端と被検体Mとの間に大きな隙間ができることになる。実施例1の構成によればこの隙間は各遮蔽体19a,19bによって塞がれる。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【0070】
また、シフト動作を行うとX線管3とFPD4とが回転する重心が回転中心からずれてしまい、回転機構7はX線管3とFPD4とを設定どおり回転できなくなってしまう。各遮蔽体19a,19bをカウンターバランスとして利用すれば、回転機構7はX線管3とFPD4とは理想どおりに過不足なく回転することになり、鮮明な断層像が取得できる。
【0071】
また、各遮蔽体19a,19bの各々に被検体Mに干渉しないようにする切り欠きが設けられていれば、各遮蔽体19a,19bを中心点に接近させたとしても、各遮蔽体19a,19bが被検体Mに干渉することがない。
【実施例2】
【0072】
続いて、実施例2に係る断層撮影装置20について説明する。実施例2に係る断層撮影装置20は、図13に示すように実施例1に係る装置構成にポジトロン放出断層撮影装置(PET装置)を併設したものとなっている。そこで、実施例2に係る断層撮影装置20において、実施例1に係る装置構成と同様の部分については説明を省略する。
【0073】
断層撮影装置20には、ガントリ10の他、PET装置1aに係るガントリ10aを有している。このガントリ10aも、Z方向に伸びた貫通孔を有しており、天板2が挿通されている。したがって、PET装置1aは、X線管3・FPD4に対してZ方向から隣接するように設けられている。
【0074】
ガントリ10aの内部にはガントリ10aの形状にならってリング状の検出器リング32が設けられている。この検出器リング32は、γ線を検出可能な検出器がリング状に配列されて構成されている。
【0075】
同時計数部33は、検出器リング32から出力された検出データに同時計数処理を施す目的で設けられている。この同時計数部33により、検出器リング32の異なる部分に同時に入射した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とが特定される。同時計数部33は、同時計数の結果をPET画像生成部34に出力する。PET画像生成部34は、同時計数部33が特定した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とを基に、消滅γ線対の発生位置を算出し、消滅γ線対の発生強度がマッピングされたPET画像P2を生成する。PET画像P2は、消滅γ線対の発生の分布を示す断層画像となっている。
【0076】
断層撮影装置20は、X線による断層画像P1と消滅γ線対によるPET画像P2との両画像を一度の検査で取得できるようになっている。断層撮影装置20を用いて両画像P1,P2を生成するには、まず、被検体Mに陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。放射性薬剤は、被検体Mの病巣などの特定の部分に集中する性質を有している。放射性薬剤は陽電子を放出し、この陽電子は180度反対方向に飛び去る消滅γ線対を発生させる。したがって、被検体Mからは、消滅γ線対が放射されることになる。放射性薬剤の分布は被検体内で異なっているのであるから、消滅γ線対の発生の頻度は被検体Mの部分によって異なっていることになる。
【0077】
放射性薬剤の注射から十分に時間が経過した後、被検体Mは麻酔され、ホルダ5に収納される。すなわち、ホルダ5の開口5aの各々に麻酔された被検体Mの一体が収納される。そして、複数の被検体Mを収納した状態となったホルダ5は、天板2に載置される。実験者が操作卓26を通じて断層撮影装置20にPET画像撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10aの貫通孔の内部に導入される(図13参照)。この時点から検出器リング32は、消滅γ線対の検出を開始し、PET画像生成部34がPET画像P2を生成する。PET画像P2には、被検体Mの部分によって異なる消滅γ線対の発生の頻度がマッピングされている。消滅γ線対の発生頻度の分布はそのまま放射線薬剤の分布なのであるから、実験者はPET画像P2を診断することで被検体中の放射性薬剤の分布を知ることができる。なお、撮影の際に、PET装置1aのZ方向における視野範囲が被検体Mの全身をカバーしきれないときは、天板2をZ方向に摺動させながらPET画像P2の撮影をするようにしてもよい。
【0078】
後の動作は、上述のステップS2以降と同様である。断層画像P1,PET画像P2およびこれらが重ねられた合成画像が表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0079】
以上のように、上述の構成は、実施例1の構成のより具体的な態様を示すものとなっている。ポジトロン放出断層撮影装置を備えるようにすれば、被検体Mの機能的な画像と構造的な画像との両方が取得でき、撮影で取得できる情報をより多く得ることができる。
【0080】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0081】
(1)実施例1の動作に加えて、縮小撮影と拡大撮影との中間の拡大率で行う撮影についてもX線の線量を抑制する構成を採用することもできる。この中間の拡大率での撮影においては、リング状部材9の長穴9aの両側に隙間が生じることになる。そこで、術者が操作卓26を通じて指示を行うと、線源側調節機構13aおよび検出器側調節機構13bは、各遮蔽体19a,19bの各々を図14に示す様に移動させる。すなわち、各遮蔽体19a,19bの各々がホルダ5に接近するように移動される。これにより、リング状部材9の長穴9aにおけるX線源3側の端部9a1およびFPD4側の端部9a2が各遮蔽体19a,19bの各々で覆われ、長穴9aの両側の隙間が塞がれる。このようにすることで、ホルダ5をZ方向(紙面貫通方向)に移動できるだけの通路を確保しつつも、開口の大きさは最小となる。術者の被曝の原因となるはずであったX線は、リング状部材9および各遮蔽体19a,19bにより吸収されることになる。
【0082】
(2)実施例1の構成によれば、各遮蔽体19a,19bの各々は独立に移動する構成となっていたが、これに代えて各遮蔽体19a,19bを一体に構成して、各遮蔽体19a,19bの位置調整を簡略化する構成を採用することもできる。
【0083】
(3)実施例1の構成によれば、被検体Mはマウスであったが、他の小動物を被検体Mとすることもできる。
【0084】
(4)実施例1の構成によれば、ホルダ5は5つの開口5aを有していたが、開口5aの個数を撮影対象の小動物のサイズに合わせて変更させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
7 回転機構(回転手段)
9 リング状部材
13a 線源側調節機構(第1調節手段)
13b 検出器側調節機構(第2調節手段)
17 シフト機構(シフト手段)
19a 第1遮蔽体
19b 第2遮蔽体
26 操作卓(入力手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、断層画像を撮影する放射線断層撮影装置に係り、特に、放射線源と被検体との距離を調整することができる放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研究対象としての被検体をイメージングする装置の一つに放射線断層撮影装置がある。この装置は、被検体の断層画像を生成することができるものであり、術者は、この画像を参照して被検体の内部の構造を知ることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の従来の構成について説明する。従来装置は、図15に示す様に、開口が設けられたガントリ51を有し、このガントリ51の内部には、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出する放射線検出器54とが設けられている。放射線源53と放射線検出器54とは、ガントリ51の開口を挟むように配置されており、互いの相対位置を保った状態で、開口を中心に回転することができる。この開口の内部には、被検体が配置される。
【0004】
従来の放射線断層撮影装置の動作について説明する。従来装置により、被検体の断層画像を取得するには、まず、被検体がガントリ51の開口に挿入される。そして、放射線源53と放射線検出器54とを被検体を中心に回転させながら複数回の撮影を行う。得られた透視画像の各々には、撮影方向が異なる被検体の像が写り込んでいる。これらの透視画像を組み立てると、被検体の断層画像が生成できる。
【0005】
放射線源53から照射した放射線は放射状に広がって放射線検出器54に入射する。したがって、被検体を透過してきた放射線ビームは、放射線検出器54に向かう間に空間的に広がっていくことになる。すると、放射線ビームの中に写り込んでいる被検体像は引き延ばされて放射線検出器54に入射することになる。その被検体像の引き延ばしの程度は、放射線源53・放射線検出器54と被検体との位置関係によって異なる。
【0006】
従来の放射線断層撮影装置においては、被検体に対する放射線源53・放射線検出器54の位置を調整することにより、放射線検出器54に写り込む被検体の像の大きさを変更できるようになっている。従来装置において、被検体の一部分の断層画像が取得したい場合は、被検体を放射線検出器54から遠ざけて拡大撮影をし、被検体の全体の断層画像が取得したい場合は、被検体を放射線検出器54に近づけて縮小撮影をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/141831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来の構成によれば、放射線源53から照射される放射線がガントリ51の外部まで放射し、実験者に無用な被曝をもたらしてしまう可能性があるという問題点がある。
【0009】
放射線源53から放射された放射線のほとんどは放射線検出器54に入射し、そこで検出信号に変換されて消滅する。しかし、放射線が被検体を通過する間に生じた散乱線は、被検体から発生するものであり、被検体を中心として放射状に広がる。このような放射線は、線量としては僅かであり、エネルギーも高いものではないものの、ガントリ51の付近で放射線断層撮影装置を操作している実験者にも入射する。実験者が長時間放射線断層撮影装置を操作しなければならない場合、実験者は無用な被曝をしてしまう危険性に晒される。
【0010】
放射線が装置の外部から放射されないようにするには、放射線を吸収する遮蔽体を設けるのが一般的である。しかし、被検体に対する放射線源53・放射線検出器54の距離が調整できるような構成においては、遮蔽体が放射線源53・放射線検出器54の移動を妨げてはならないので、放射線を確実に遮断する遮蔽体を設置するのは難しい。
【0011】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検体に対する放射線源・検出手段の位置関係を調整することで縮小撮影・拡大撮影が可能な放射線断層撮影装置において、実験者の被曝を抑制する放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、放射線源と検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、放射線源および検出手段を互いの位置関係を保った状態で中心点に対してシフトさせることにより検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト動作を行うシフト手段と、放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向から見て放射線源と検出手段とを一体に覆うように設けられているとともに、放射線源と検出手段とを結ぶ線分の方向に伸びた長穴を有し、放射線源および検出手段のシフト動作に追従して移動するリング状部材と、リング状部材に設けられた放射線を吸収する2つの遮蔽体と、遮蔽体のうち、放射線源側に設けられた第1遮蔽体を中心点に対して接近・離反させることにより第1遮蔽体とリング状部材との相対位置を調節する第1調節手段と、遮蔽体のうち、検出手段側に設けられた第2遮蔽体を中心点に対して接近・離反させることにより第2遮蔽体とリング状部材との位置関係を調節する第2調節手段とを備え、回転手段は、放射線源、検出手段、リング状部材、および遮蔽体の各々の相対位置を保った状態で各部材を一体に回転させ、第1調節手段および第2調節手段が遮蔽体の各々を移動させることにより、シフト手段が中心点に対して放射線源を離反させるようにシフト動作をして、リング状部材の長穴における放射線源側の端部が中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように第1遮蔽体が中心点に接近され、シフト手段が中心点に対して検出手段を離反させるようにシフト動作をして、リング状部材の長穴における検出手段側の端部が中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように第2遮蔽体が中心点に接近されることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]本発明によれば、被検体に対する放射線源・検出手段の位置関係を調整することで縮小撮影・拡大撮影が可能な放射線断層撮影装置において、実験者の被曝を抑制する放射線断層撮影装置を提供できる。すなわち、本発明は、被検体に対して放射線源および検出手段を接近・離反させることにより検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト手段を備えている。これにより、断層画像に写り込む被検体の像を適宜拡大・縮小することができる。また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、長穴を有するリング状部材とこのリング状部材に対して長穴の伸びる方向に配列された2つの遮蔽体とを備え、これによって放射線を吸収して放射線が装置の外部に出射することを防いでいる。本発明の最も特徴的なのは、シフト手段のシフト動作とは逆方向に遮蔽体が移動されることにある。すなわち、シフト動作によって放射線源・検出手段が断層撮影をするときの回転中心から離れると、長穴の一端が回転中心から離れる。そうすると被検体は回転中心に載置されるのであるから、長穴の一端と被検体との間に大きな隙間ができることになる。本発明によればこの隙間は遮蔽体によって塞がれる。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【0014】
また、上述の放射線断層撮影装置において、術者の指示を入力させる入力手段を備え、入力手段に従って第1調節手段および第2調節手段が遮蔽体の各々を中心点に接近するように移動させればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、縮小撮影と拡大撮影との中間の拡大率で撮影を行う場合に適している。この中間の拡大率での撮影においては、長穴の両端が回転中心から離れるので、長穴の両端で被検体との間に隙間ができることになる。上述の構成によればこの隙間は遮蔽体の各々によって塞がれる。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【0016】
また、上述の放射線断層撮影装置において、遮蔽体の各々が仮想円に平行な平面上に設けられていればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。遮蔽体の各々が仮想円に平行な平面上に設けられていれば、遮蔽体の各々で放射線の通過を確実に防ぐことができる。
【0018】
また、上述の放射線断層撮影装置において、第1調節手段および第2調節手段が遮蔽体の各々を移動させることにより、シフト手段が中心点に対して放射線源を離反させるようにシフト動作をしたときは、第2遮蔽体の位置が中心点から離反するように調節され、シフト手段が中心点に対して検出手段を離反させるようにシフト動作をしたときは、第1遮蔽体の位置が中心点から離反するように調節されることにより、遮蔽体が放射線源および検出手段を回転させるときのカウンターバランスとなっていればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。シフト動作を行うと放射線源と検出手段とが回転する重心が回転中心からずれてしまい、回転手段は放射線源と検出手段とを設定どおり回転できなくなってしまう。遮蔽体をカウンターバランスとして利用すれば、回転手段は放射線源と検出手段とは理想どおりに過不足なく回転することになり、鮮明な断層像が取得できる。
【0020】
また、上述の放射線断層撮影装置において、遮蔽体の各々には、被検体に干渉しないようにする切り欠きが設けられていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。遮蔽体の各々に被検体に干渉しないようにする切り欠きが設けられていれば、遮蔽体を中心点に接近させたとしても、遮蔽体が被検体に干渉することがない。
【0022】
また、上述の放射線断層撮影装置において、小動物撮影用となっていればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。本発明を小動物撮影用の装置に適用すれば、撮影の失敗により撮影をやり直す必要が無く、再び麻酔をかけることなく小動物を確実に撮影することができる。
【0024】
また、上述の放射線断層撮影装置において、放射線源、検出手段に対して仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ポジトロン放出断層撮影装置を備えるようにすれば、被検体の機能的な画像と構造的な画像との両方が取得でき、撮影で取得できる情報をより多く得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被検体に対して放射線源および検出手段を接近・離反させることにより検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト手段を備えている。これにより、断層画像に写り込む被検体の像を適宜拡大・縮小することができる。また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、長穴を有するリング状部材とこのリング状部材に対して長穴の伸びる方向に配列された2つの遮蔽体とを備えている。本発明の最も特徴的なのは、シフト手段のシフト動作とは逆方向に遮蔽体が移動されることにある。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線管およびFPDの回転移動を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るホルダを説明する平面図である。
【図4】実施例1に係るリング状部材を説明する平面図である。
【図5】実施例1に係るリング状部材の移動を説明する平面図である。
【図6】実施例1に係るリング状部材の移動を説明する平面図である。
【図7】実施例1に係るリング状部材を説明する断面図である。
【図8】実施例1に係る遮蔽体を説明する平面図である。
【図9】実施例1に係る遮蔽体の移動を説明する平面図である。
【図10】実施例1に係る遮蔽体の移動を説明する平面図である。
【図11】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図13】実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図14】本発明の1変形例に係る遮蔽体の移動を説明する平面図である。
【図15】従来構成のX線断層撮影装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0028】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。また、本発明のX線断層撮影装置は、マウスなどの小動物撮影用となっている。
【0029】
まず、実施例1に係るX線断層撮影装置について説明する。X線断層撮影装置1は、図1に示す様に被検体Mを載置する天板2と、天板2の伸びる方向に貫通した貫通孔を有するガントリ10とを備えている。天板2は、ガントリ10の貫通孔に挿通されており、天板2を支持する支持台2aに対して天板2の伸びる方向(後述における仮想円VCの直交方向:Z方向)に進退自在に移動することができる。この天板2の移動は天板移動機構15が行う。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御するものである。
【0030】
ガントリ10の内部には、X線を照射するX線管3と、X線を検出するFPD4とが設けられている。X線管3から照射されたX線は、ガントリ10の貫通孔を横切るように通過して、FPD4に到達する。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0031】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ透視画像P0が生成される。断層画像生成部12は、画像生成部11で生成された透視画像P0を基に、被検体Mを任意の断層面で裁断したときの断層画像P1を生成する。
【0032】
X線管3およびFPD4の回転について説明する。X線管3およびFPD4は、回転機構7により、天板2の伸びる方向に伸びた中心軸を中心に一体的に回転される。より具体的には、X線管3およびFPD4は、図2に示す様に互いの相対的な位置関係を保った状態で回転移動される。このとき、X線管3は、回転機構7によりX線管3とFPE4とを結ぶ線分上にある中心点を中心とする仮想円VCの軌跡を描きながら回転することになる。この仮想円VCと直交する方向(図2における紙面貫通方向:Z方向)が、天板2の延伸方向と一致する。回転制御部8は、回転機構7を制御する目的で設けられている。
【0033】
天板2には、被検体Mを保持するためのホルダ5が載置されている。このホルダ5の構造について説明する。ホルダ5は、図3に示す様に、5つの円(立体として捕らえればZ方向に伸びた円柱)の形状の開口5aを有している。この開口5aの各々に被検体Mが一体ずつ挿入されることになる。開口5aの内壁を形成する円筒5bは、Z方向に伸びた複数の貫通孔がレンコン状に開けられた発泡スチロール製の円筒支持体5cにおける貫通孔の各々に埋め込まれることで支持されている。また、円筒5bは、X線を透過しやすいアクリル樹脂で構成される。ホルダ5は、天板2に近い側の一段目に3個の開口5aが、天板2に遠い側の二段目に2個の開口5aが形成されているような形状をしている。
【0034】
リング状部材9は、図4に示すように仮想円VCに平行な平面に広がる板状の部材である。このリング状部材9は、中央に長穴9aを有しており、X線管3とFPD4とを結ぶ線分の方向に伸びており、リング状部材9の全体形状も、これにならって同方向に伸びている。このリング状部材9は、X線を吸収しやすい鉛などの部材で形成される。
【0035】
次に、X線管3およびFPD4の被検体Mに対する位置調整について説明する。図5および図6は、被検体Mに対するX線管3およびFPD4の位置を表した模式図である。X線管3から照射されるX線ビームは被検体Mを通過した後FPD4に入射するようになっている。
【0036】
シフト機構17は、X線管3およびFPD4の相対位置を保った状態で仮想円VCの中心点に位置する被検体Mに対する各部材3,4の位置を調節できるようになっている。図5は、シフト機構17が被検体MからX線管3を最も遠ざけたときの互いの位置関係を示した図である。シフト機構17は、被検体MからX線管3を遠ざけるときそれに合わせてFPD4を被検体Mに近づける。図6は、シフト機構17が被検体MにX線管3を最も近づけたときの互いの位置関係を示した図である。シフト機構17は、被検体MにX線管3を近づけるときそれに合わせてFPD4を被検体Mから遠ざける。この様にして、シフト機構17の動作によってもX線管3とFPD4との距離に変化はない。シフト制御部18は、シフト機構17を制御するものである。
【0037】
図5の位置関係でX線管3およびFPD4を被検体Mに対して一回転させてX線透視撮影を行うと、取得される透視画像P0には、被検体Mが小さく写り込む。図5によれば、X線管3と被検体Mとの距離が遠く、被検体MとFPD4との距離が近いので、被検体Mの投影像はあまり拡大されずにFPD4に到達する。
【0038】
また、図6に示すように、FPD4を被検体Mから遠ざけた状態でX線管3およびFPD4を被検体Mに対して一回転させてX線透視撮影を行うと、取得される透視画像P0には、被検体Mが大きく写り込む。図6によれば、X線管3と被検体Mとの距離が近く、被検体MとFPD4との距離が遠いので、被検体Mの投影像は大きく拡大されてFPD4に到達する。
【0039】
このように、シフト機構17が被検体(中心点)に対してX線管3およびFPD4を接近・離反させるシフト動作により、FPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを調整することができるようになっている。すなわち、シフト機構17は、各部材3,4と被検体Mとの位置関係を図9で説明したような位置関係とするべくシフト動作をすることで、FPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを小さくするように調整することができる。逆に、シフト機構17は、各部材3,4と被検体Mとの位置関係を図10で説明したような位置関係とするべくシフト動作をすることで、FPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを大きくするように調整することもできる。
【0040】
なお、図5,図6を参照すれば分かるように、リング状部材9の長穴9aには、ホルダ5が挿通されている。ホルダ5に隣接するガントリ10の外壁、およびホルダ5を載置する天板2もこの長穴9aの内部に位置している。
【0041】
X線管3およびFPD4のシフト動作とリング状部材9との関係について説明する。リング状部材9は、X線管3およびFPD4がシフト動作によりシフトされると、それに追従してシフトする。すなわち、X線管3,FPD4およびリング状部材9は互いに固定されて物理的に一体となっている。従って、回転機構7によりX線管3およびFPD4を回転させると、リング状部材9もこれに追従して回転することになる。
【0042】
図5は、縮小撮影が行われる状態でのリング状部材9の位置を表している。縮小撮影を行う目的でX線管3をホルダ5(仮想円VCの中心点)から離反させるとともに、FPD4をホルダ5に接近させるようシフト動作を行うと、リング状部材9もこの動作に追従する。すなわち、縮小撮影を行うときは、リング状部材9の長穴9aにおけるX線管3側の端部がホルダ5から遠ざかり、長穴9aにおけるFPD4側の端部がホルダ5に近づく。
【0043】
図6は、拡大撮影が行われる状態でのリング状部材9の位置を表している。拡大撮影を行う目的でX線管3をホルダ5に接近させるとともに、FPD4をホルダ5から離反させるようシフト動作を行うと、リング状部材9もこの動作に追従する。すなわち、拡大撮影を行うときは、リング状部材9の長穴9aにおけるX線管3側の端部がホルダ5に近づき、長穴9aにおけるFPD4側の端部がホルダ5から遠ざかる。このように長穴9aの形状はX線管3およびFPD4をシフトさせたとしてもホルダ5(ガントリ10)とリング状部材9とが干渉することがないようにX線管3およびFPD4のシフト方向(以下単にシフト方向と呼ぶ)に伸びた形状となっている。
【0044】
図7は、ホルダ5およびこれに隣接するガントリ10の壁がリング状部材9の長穴9aを貫通している様子を示す断面図である。図7に示すように天板2の摺動によりホルダ5はリング状部材9の長穴9aに導入される。
【0045】
第1遮蔽体19aおよび第2遮蔽体19bは、図8に示す様に仮想円VCに平行な平面に広がる板状の部材であり、リング状部材9のX線管3・FPD4に面した面とは反対側の面側の同一平面上に設けられている。そして、第1遮蔽体19aは、X線管3から見てリング状部材9の裏側に設けられており、第2遮蔽体19bは、FPD4から見てリング状部材9の裏側に設けられている。各遮蔽体19a,19bは、X線管3・FPD4のシフト方向に配列されている。
【0046】
リング状部材9から各遮蔽体19a,19bを見れば、第1遮蔽体19aは、リング状部材9の長穴9aにおけるX線源3側の端部9a1を覆うように設けられており、第2遮蔽体19bは、リング状部材9の長穴9aにおけるFPD4側の端部9a2を覆うように設けられている。この各遮蔽体19a,19bは、X線を吸収しやすい鉛などの部材で形成される。
【0047】
第1遮蔽体19aおよび第2遮蔽体19bには、ガントリ10の壁に干渉しないように切り欠きが設けられている。各遮蔽体19a,19bに挟まれる位置に存するガントリ10の壁の形状は円筒形となっているので、各遮蔽体19a,19bの各々に設けられた切り欠きの形状は、これにならって半円状となっている。
【0048】
線源側調節機構13aは、第1遮蔽体19aをリング状部材9に対するシフト方向の位置を調節する目的で設けられている。同様に検出器側調節機構13bは、第2遮蔽体19bをリング状部材9に対するシフト方向の位置を調節する目的で設けられている。各遮蔽体19a,19bをシフト方向に移動させると、リング状部材9の中央の開口が広がったり狭まったりする。線源側調節制御部14aおよび検出器側調節制御部14bは、線源側調節機構13aおよび検出器側調節機構13bの各々を制御する目的で設けられている。線源側調節機構13aは、本発明の第1調節手段に相当し、検出器側調節機構13bは、本発明の第2調節手段に相当する。
【0049】
また、回転機構7によりX線管3およびFPD4を回転させると、各遮蔽体19a,19bもこれに追従して回転する。X線管3およびFPD4の回転中はリング状部材9に対する各遮蔽体19a,19bの位置関係に変化はない。この一体に回転する各部材を合わせて回転体と呼ぶことにする。
【0050】
図9は、縮小撮影が行われるときの各遮蔽体19a,19bの位置を表している。図9に示すように、縮小撮影を行う目的でX線管3をホルダ5(仮想円VCの中心点)から離反させるとともに、FPD4をホルダ5に接近させるようシフト動作を行うと、線源側調節機構13aは第1遮蔽体19aがホルダ5に接近するように位置調節をする。これにより、リング状部材9の長穴9aにおけるX線源3側の端部9a1は、第1遮蔽体19aで覆われる。
【0051】
また、これに合わせて、検出器側調節機構13bは、第2遮蔽体19bがホルダ5から離反するように位置調節をする。
【0052】
図10は、拡大撮影が行われるときの各遮蔽体19a,19bの位置を表している。図10に示すように、拡大撮影を行う目的でX線管3をホルダ5(仮想円VCの中心点)に接近させるとともに、FPD4をホルダ5から離反させるシフト動作を行うと、検出器側調節機構13bは第2遮蔽体19bがホルダ5に接近するように位置調節をする。これにより、リング状部材9の長穴9aにおけるFPD4側の端部9a2は、第2遮蔽体19bで覆われる。
【0053】
また、これに合わせて、線源側調節機構13aは、第1遮蔽体19aがホルダ5から離反するように位置調節をする。
【0054】
つまり、図9,図10に示すように、拡大撮影・縮小撮影のいずれの撮影においても、リング状部材9および各遮蔽体19a,19bに囲まれた開口は、ホルダ5が通過できるだけの円形の形状となっている。このようにすることで、ホルダ5をZ方向(紙面貫通方向)に移動できるだけの通路を確保しつつも、開口の大きさは最小となっている。これにより、リング状部材9の裏側で発生したX線は、小さな開口を通過しなければリング状部材9の表側に向かうことができない。言い換えれば、術者の被曝の原因となるはずであったX線は、リング状部材9および各遮蔽体19a,19bにより吸収されることになる。
【0055】
X線管3,FPD4,リング状部材9,および各遮蔽体19a,19bで構成される回転体の重心について説明する。図9のように縮小撮影をしようとすると、X線管3がホルダ5から離反し、FPD4がホルダ5に接近するので、回転体の重心はX線管側に移動する。この状態でホルダ5(中心点)を中心にX線管3とFPD4とを回転させようとすると、回転の中心と回転体の重心とが一致しないので、回転機構7に応力がかけられた状態で回転体が回転されることになる。すると、回転機構7が理想どおりに回転体を回転させることができない。すなわち、回転機構7は、回転体を設定よりも例えば大きい角度だけ回転させてしまう。これが断層画像P1の乱れの原因となる。
【0056】
しかしながら、縮小撮影をしようとするとき、図9に示すように、第1遮蔽体19aがホルダ5に接近し、第2遮蔽体19bがホルダ5から離反するので、X線管側に移動した回転体の重心は、FPD4側に戻される。これにより、回転の中心と回転体の重心とが一致することになり、回転機構7に応力がかからず回転機構7は理想どおりに過不足なく回転体を回転させることができる。
【0057】
同様に、図10のように拡大撮影をしようとすると、X線管3がホルダ5に接近し、FPD4がホルダ5から離反するので、回転体の重心はFPD4側に移動する。しかしながら、第1遮蔽体19aがホルダ5から離反し、第2遮蔽体19bがホルダ5に接近するので、FPD4側に移動した回転体の重心は、X線管3側に戻される。これにより、回転の中心と回転体の重心とが一致することになり、図9のときと同様に回転機構7は理想どおりに回転体を回転させることができる。このように、各遮蔽体19a,19bは、X線管3およびFPD4が回転するときのカウンターバランスとなっている。
【0058】
なお、図9における第2遮蔽体19bと、図10における第1遮蔽体19aとは、ホルダ5から離反しており、X線を吸収する遮蔽体としては機能していない。従って、回転体の重心をよりホルダ5(中心点)により近づける目的で、図9においては第2遮蔽体19bの位置を、図10においては第1遮蔽体19aの位置をリング状部材9に対して自由に変更することができる。
【0059】
表示部25は、X線撮影により取得された断層画像P1を表示する目的で設けられている。操作卓26は、実験者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,14a,14b,16および各部11,12を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、撮影に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線断層撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。操作卓26は、本発明の入力手段に相当する。
【0060】
<X線断層撮影装置の動作>
次に、X線断層撮影装置1の動作について説明する。実施例1に係るX線断層撮影装置1を用いて小動物の断層画像P1を取得するには、図11に示すように、まず、被検体Mがホルダ5に収納され(被検体収納ステップS1),被検体Mに対してX線管3およびFPD4がシフトされる(シフトステップS2)。そして、各遮蔽体19a,19bの位置がリング状部材9に対して調節され(遮蔽体位置調節ステップS3)。透視画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS4)。そして、断層画像P1が生成される(断層画像生成ステップS5)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0061】
<被検体収納ステップS1>
撮影に先立って、被検体Mが撮影中に移動しない様に被検体Mを麻酔しておく。麻酔された被検体Mの各々は、ホルダ5の開口5aに収納される。このとき、ホルダ5の開口5a1つ当たり一体の被検体Mが収納される。ホルダ5には、5つの開口5aが設けられているので、ホルダ5には5体の被検体Mを収納することができる。複数の被検体Mを収納したホルダ5は天板2に載置される。
【0062】
<シフトステップS2:縮小撮影の場合>
実験者が操作卓26を通じてX線断層撮影装置1に断層撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10の貫通孔の内部に導入される(図1参照)。被検体Mを縮小して断層画像P1を撮影する必要がある場合、実験者は操作卓26を通じてシフト制御部18に指示を与え、X線管3およびFPD4をホルダ5に対して移動させる。そして、図9に示す様に、X線管3が被検体Mから遠ざかり、FPD4が被検体Mに近づいた状態となる。
【0063】
<シフトステップS2:拡大撮影の場合>
被検体Mを拡大して断層画像P1を撮影する必要がある場合、実験者は操作卓26を通じてシフト制御部18に指示を与え、X線管3およびFPD4をホルダ5に対して移動させる。そして、図10に示す様に、X線管3が被検体Mに近づき、FPD4が被検体Mから遠ざかった状態となる。
【0064】
<遮蔽体位置調節ステップS3>
X線管3およびFPD4がホルダ5に対しシフトされると、今度は、リング状部材9に対する各遮蔽体19a,19bの各々の位置が調節される。縮小撮影を行う場合は図9に示す様に、第1遮蔽体19aがホルダ5に接近され、第2遮蔽体19bがホルダ5から離反される。拡大撮影を行う場合は図10に示す様に第1遮蔽体19aがホルダ5から離反され、第2遮蔽体19bがホルダ5に接近される。この様にすることで、リング状部材9における長穴9aが各遮蔽体19a,19bの各々によって塞がれ、ガントリ10外部に放射されるX線の線量が抑制される。
【0065】
<撮影開始ステップS4>
X線管3,FPD4のシフト動作、および各遮蔽体19a,19bの位置調節が終了すると、X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、X線を間欠的に照射する。その間に回転機構7は、X線管3およびFPD4を回転させる。FPD4は、X線管3が照射したX線のうち被検体Mを通過してきたX線を検出し、このときの検出データを画像生成部11に送出する。
【0066】
画像生成部11は、FPD4から送出された検出データを画像化して、X線の強さがマッピングされた透視画像P0を生成する。FPD4は、X線管3がX線を照射する度に検出データを画像生成部11に送出するので、画像生成部11は、複数枚の透視画像P0を生成することになる。X線管3およびFPD4が回転移動されながら複数枚の透視画像P0が取得されるのであるから、透視画像P0の各々には、被検体Mの透視像が透視する方向を変えながら写り込んでいることになる。X線管3およびFPD4が撮影開始から一回転したところで、X線管3はX線の照射を終了する。
【0067】
撮影開始後の天板2の移動について説明する。X線断層撮影装置1は、一度の撮影で被検体Mの一部分しか撮影できない。X線断層撮影装置1の撮影視野におけるZ方向の幅が被検体MのZ方向の幅よりも小さいからである。そこで、実施例1の構成によれば、上述のX線管3・FPD4が一回転して終了する撮影を複数回行うことで、被検体Mの全体像について断層画像を取得するようにしている。すなわち、図12の左側が示すように、まず被検体Mの尾部の撮影を行った後、天板2が摺動されることにより被検体Mとガントリ10の相対位置を変更し、今度は図12の中央が示すように、被検体Mの腹部の撮影を行う。その後、再び天板2を摺動して今度は図12の右側が示すように被検体Mの頭部の撮影を行う。こうして、被検体全身について透視画像P0が取得される。
【0068】
<断層画像生成ステップS5>
透視画像P0は、断層画像生成部12に送出される。断層画像生成部12では、方向を変えながら撮影されることにより被検体Mの立体的な構造に関する情報を有している一連の透視画像P0を再構成してZ方向を体軸とする被検体Mを輪切りにするような断層画像P1を生成する。この断層画像P1は、輪切りにする位置をZ方向について変更しながら複数枚生成される。この様にして生成された断層画像P1が表示部25に表示されて撮影は終了となる。つまり断層画像P1は、被検体Mを仮想円VCの存する平面およびこれに平行な平面で裁断したときの断面像となっている。そして、断層画像P1に写り込んだ被検体Mの像は、X線管3・FPD4を移動させることによって調整した拡大率で写り込んでいる。この断層画像P1が表示部25に表示されて断層画像の取得動作は終了となる。
【0069】
以上のように、実施例1の構成によれば、被検体Mに対するX線管3・FPD4の位置関係を調整することで縮小撮影・拡大撮影が可能なX線断層撮影装置1において、実験者の被曝を抑制するX線断層撮影装置1を提供できる。すなわち、実施例1の構成は、被検体Mに対してX線管3およびFPD4を接近・離反させることによりFPD4に写り込む被検体Mの像の大きさを調整するシフト機構17を備えている。これにより、断層画像P1に写り込む被検体Mの像を適宜拡大・縮小することができる。また、実施例1の構成に係るX線断層撮影装置1は、長穴9aを有するリング状部材9とこのリング状部材9に対して長穴9aの伸びる方向に配列された2つの各遮蔽体19a,19bとを備え、これによってX線を吸収してX線が装置の外部に出射することを防いでいる。実施例1の構成の最も特徴的なのは、シフト機構17のシフト動作とは逆方向に各遮蔽体19a,19bが移動されることにある。すなわち、シフト動作によってX線管3・FPD4が断層撮影をするときの回転中心から離れると、長穴9aの一端が回転中心から離れる。そうすると被検体Mは回転中心に載置されるのであるから、長穴9aの一端と被検体Mとの間に大きな隙間ができることになる。実施例1の構成によればこの隙間は各遮蔽体19a,19bによって塞がれる。これにより縮小撮影・拡大撮影のいずれを行っても実験者の被曝は抑制される。
【0070】
また、シフト動作を行うとX線管3とFPD4とが回転する重心が回転中心からずれてしまい、回転機構7はX線管3とFPD4とを設定どおり回転できなくなってしまう。各遮蔽体19a,19bをカウンターバランスとして利用すれば、回転機構7はX線管3とFPD4とは理想どおりに過不足なく回転することになり、鮮明な断層像が取得できる。
【0071】
また、各遮蔽体19a,19bの各々に被検体Mに干渉しないようにする切り欠きが設けられていれば、各遮蔽体19a,19bを中心点に接近させたとしても、各遮蔽体19a,19bが被検体Mに干渉することがない。
【実施例2】
【0072】
続いて、実施例2に係る断層撮影装置20について説明する。実施例2に係る断層撮影装置20は、図13に示すように実施例1に係る装置構成にポジトロン放出断層撮影装置(PET装置)を併設したものとなっている。そこで、実施例2に係る断層撮影装置20において、実施例1に係る装置構成と同様の部分については説明を省略する。
【0073】
断層撮影装置20には、ガントリ10の他、PET装置1aに係るガントリ10aを有している。このガントリ10aも、Z方向に伸びた貫通孔を有しており、天板2が挿通されている。したがって、PET装置1aは、X線管3・FPD4に対してZ方向から隣接するように設けられている。
【0074】
ガントリ10aの内部にはガントリ10aの形状にならってリング状の検出器リング32が設けられている。この検出器リング32は、γ線を検出可能な検出器がリング状に配列されて構成されている。
【0075】
同時計数部33は、検出器リング32から出力された検出データに同時計数処理を施す目的で設けられている。この同時計数部33により、検出器リング32の異なる部分に同時に入射した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とが特定される。同時計数部33は、同時計数の結果をPET画像生成部34に出力する。PET画像生成部34は、同時計数部33が特定した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とを基に、消滅γ線対の発生位置を算出し、消滅γ線対の発生強度がマッピングされたPET画像P2を生成する。PET画像P2は、消滅γ線対の発生の分布を示す断層画像となっている。
【0076】
断層撮影装置20は、X線による断層画像P1と消滅γ線対によるPET画像P2との両画像を一度の検査で取得できるようになっている。断層撮影装置20を用いて両画像P1,P2を生成するには、まず、被検体Mに陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。放射性薬剤は、被検体Mの病巣などの特定の部分に集中する性質を有している。放射性薬剤は陽電子を放出し、この陽電子は180度反対方向に飛び去る消滅γ線対を発生させる。したがって、被検体Mからは、消滅γ線対が放射されることになる。放射性薬剤の分布は被検体内で異なっているのであるから、消滅γ線対の発生の頻度は被検体Mの部分によって異なっていることになる。
【0077】
放射性薬剤の注射から十分に時間が経過した後、被検体Mは麻酔され、ホルダ5に収納される。すなわち、ホルダ5の開口5aの各々に麻酔された被検体Mの一体が収納される。そして、複数の被検体Mを収納した状態となったホルダ5は、天板2に載置される。実験者が操作卓26を通じて断層撮影装置20にPET画像撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10aの貫通孔の内部に導入される(図13参照)。この時点から検出器リング32は、消滅γ線対の検出を開始し、PET画像生成部34がPET画像P2を生成する。PET画像P2には、被検体Mの部分によって異なる消滅γ線対の発生の頻度がマッピングされている。消滅γ線対の発生頻度の分布はそのまま放射線薬剤の分布なのであるから、実験者はPET画像P2を診断することで被検体中の放射性薬剤の分布を知ることができる。なお、撮影の際に、PET装置1aのZ方向における視野範囲が被検体Mの全身をカバーしきれないときは、天板2をZ方向に摺動させながらPET画像P2の撮影をするようにしてもよい。
【0078】
後の動作は、上述のステップS2以降と同様である。断層画像P1,PET画像P2およびこれらが重ねられた合成画像が表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0079】
以上のように、上述の構成は、実施例1の構成のより具体的な態様を示すものとなっている。ポジトロン放出断層撮影装置を備えるようにすれば、被検体Mの機能的な画像と構造的な画像との両方が取得でき、撮影で取得できる情報をより多く得ることができる。
【0080】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0081】
(1)実施例1の動作に加えて、縮小撮影と拡大撮影との中間の拡大率で行う撮影についてもX線の線量を抑制する構成を採用することもできる。この中間の拡大率での撮影においては、リング状部材9の長穴9aの両側に隙間が生じることになる。そこで、術者が操作卓26を通じて指示を行うと、線源側調節機構13aおよび検出器側調節機構13bは、各遮蔽体19a,19bの各々を図14に示す様に移動させる。すなわち、各遮蔽体19a,19bの各々がホルダ5に接近するように移動される。これにより、リング状部材9の長穴9aにおけるX線源3側の端部9a1およびFPD4側の端部9a2が各遮蔽体19a,19bの各々で覆われ、長穴9aの両側の隙間が塞がれる。このようにすることで、ホルダ5をZ方向(紙面貫通方向)に移動できるだけの通路を確保しつつも、開口の大きさは最小となる。術者の被曝の原因となるはずであったX線は、リング状部材9および各遮蔽体19a,19bにより吸収されることになる。
【0082】
(2)実施例1の構成によれば、各遮蔽体19a,19bの各々は独立に移動する構成となっていたが、これに代えて各遮蔽体19a,19bを一体に構成して、各遮蔽体19a,19bの位置調整を簡略化する構成を採用することもできる。
【0083】
(3)実施例1の構成によれば、被検体Mはマウスであったが、他の小動物を被検体Mとすることもできる。
【0084】
(4)実施例1の構成によれば、ホルダ5は5つの開口5aを有していたが、開口5aの個数を撮影対象の小動物のサイズに合わせて変更させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
7 回転機構(回転手段)
9 リング状部材
13a 線源側調節機構(第1調節手段)
13b 検出器側調節機構(第2調節手段)
17 シフト機構(シフト手段)
19a 第1遮蔽体
19b 第2遮蔽体
26 操作卓(入力手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段と、
前記放射線源と前記検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、
前記放射線源および前記検出手段を互いの位置関係を保った状態で前記中心点に対してシフトさせることにより前記検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト動作を行うシフト手段と、
前記放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向から見て前記放射線源と前記検出手段とを一体に覆うように設けられているとともに、前記放射線源と前記検出手段とを結ぶ線分の方向に伸びた長穴を有し、前記放射線源および前記検出手段のシフト動作に追従して移動するリング状部材と、
前記リング状部材に設けられた放射線を吸収する2つの遮蔽体と、
前記遮蔽体のうち、前記放射線源側に設けられた第1遮蔽体を前記中心点に対して接近・離反させることにより前記第1遮蔽体と前記リング状部材との相対位置を調節する第1調節手段と、
前記遮蔽体のうち、前記検出手段側に設けられた第2遮蔽体を前記中心点に対して接近・離反させることにより前記第2遮蔽体と前記リング状部材との位置関係を調節する第2調節手段とを備え、
前記回転手段は、前記放射線源、前記検出手段、前記リング状部材、および前記遮蔽体の各々の相対位置を保った状態で各部材を一体に回転させ、
前記第1調節手段および前記第2調節手段が前記遮蔽体の各々を移動させることにより、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記放射線源を離反させるようにシフト動作をして、前記リング状部材の長穴における前記放射線源側の端部が前記中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように前記第1遮蔽体が前記中心点に接近され、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記検出手段を離反させるようにシフト動作をして、前記リング状部材の長穴における前記検出手段側の端部が前記中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように前記第2遮蔽体が前記中心点に接近されることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
術者の指示を入力させる入力手段を備え、
前記入力手段に従って前記第1調節手段および前記第2調節手段が前記遮蔽体の各々を前記中心点に接近するように移動させることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
前記遮蔽体の各々が仮想円に平行な平面上に設けられていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記第1調節手段および前記第2調節手段が前記遮蔽体の各々を移動させることにより、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記放射線源を離反させるようにシフト動作をしたときは、前記第2遮蔽体の位置が前記中心点から離反するように調節され、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記検出手段を離反させるようにシフト動作をしたときは、前記第1遮蔽体の位置が前記中心点から離反するように調節されることにより、
前記遮蔽体が前記放射線源および前記検出手段を回転させるときのカウンターバランスとなっていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記遮蔽体の各々には、被検体に干渉しないようにする切り欠きが設けられていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
小動物撮影用となっていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記放射線源、前記検出手段に対して仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段と、
前記放射線源と前記検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、
前記放射線源および前記検出手段を互いの位置関係を保った状態で前記中心点に対してシフトさせることにより前記検出手段に写り込む被検体の像の大きさを調整するシフト動作を行うシフト手段と、
前記放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向から見て前記放射線源と前記検出手段とを一体に覆うように設けられているとともに、前記放射線源と前記検出手段とを結ぶ線分の方向に伸びた長穴を有し、前記放射線源および前記検出手段のシフト動作に追従して移動するリング状部材と、
前記リング状部材に設けられた放射線を吸収する2つの遮蔽体と、
前記遮蔽体のうち、前記放射線源側に設けられた第1遮蔽体を前記中心点に対して接近・離反させることにより前記第1遮蔽体と前記リング状部材との相対位置を調節する第1調節手段と、
前記遮蔽体のうち、前記検出手段側に設けられた第2遮蔽体を前記中心点に対して接近・離反させることにより前記第2遮蔽体と前記リング状部材との位置関係を調節する第2調節手段とを備え、
前記回転手段は、前記放射線源、前記検出手段、前記リング状部材、および前記遮蔽体の各々の相対位置を保った状態で各部材を一体に回転させ、
前記第1調節手段および前記第2調節手段が前記遮蔽体の各々を移動させることにより、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記放射線源を離反させるようにシフト動作をして、前記リング状部材の長穴における前記放射線源側の端部が前記中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように前記第1遮蔽体が前記中心点に接近され、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記検出手段を離反させるようにシフト動作をして、前記リング状部材の長穴における前記検出手段側の端部が前記中心点から遠ざかったときは、この端部を覆うように前記第2遮蔽体が前記中心点に接近されることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
術者の指示を入力させる入力手段を備え、
前記入力手段に従って前記第1調節手段および前記第2調節手段が前記遮蔽体の各々を前記中心点に接近するように移動させることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
前記遮蔽体の各々が仮想円に平行な平面上に設けられていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記第1調節手段および前記第2調節手段が前記遮蔽体の各々を移動させることにより、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記放射線源を離反させるようにシフト動作をしたときは、前記第2遮蔽体の位置が前記中心点から離反するように調節され、
前記シフト手段が前記中心点に対して前記検出手段を離反させるようにシフト動作をしたときは、前記第1遮蔽体の位置が前記中心点から離反するように調節されることにより、
前記遮蔽体が前記放射線源および前記検出手段を回転させるときのカウンターバランスとなっていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記遮蔽体の各々には、被検体に干渉しないようにする切り欠きが設けられていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
小動物撮影用となっていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記放射線源、前記検出手段に対して仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−120742(P2012−120742A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274578(P2010−274578)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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