説明

放射線断層撮影装置

【課題】機能画像を正確に解析することができる放射線断層撮影装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の放射線断層撮影装置は、PET画像P1とCT画像P2との2種類を取得する構成となっている。PET画像P1は、被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングしたもので、一般にS/N値が低く、また形態を写すことを目的とした画像ではない。従って、術者がPET画像P1を用いて形態に沿って関心領域を決定することは困難である。そこで本発明によれば、形態を写したCT画像P2を用いて関心領域を決定するようになっている。この様にすれば、PET画像P1が不鮮明であっても、確実に関心領域を決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体から放出された放射線をイメージングする放射線断層撮影装置に関し、特に、被検体の構造的な形態断層画像も撮影することができる放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置50は、図8に示すように被検体Mを載置する天板52と、消滅γ線対を検出する検出器リング62とを備えている。検出器リング62の開口は天板52ごと被検体Mを挿入できるようになっている。
【0003】
従来の放射線断層撮影装置50を用いて、被検体Mにおける放射性薬剤の分布を知ろうとする場合は、被検体Mが検出器リング62の開口の内部に存する位置に移動される。そして、被検体Mから放出された消滅γ線対の発生位置をイメージングして放射線形態断層画像が取得される。この様な放射線断層撮影装置をPET(positron emission tomography)装置と呼ぶ(特許文献1,特許文献2,特許文献3参照)。
【0004】
PET装置によって消滅γ線対を検出することによって取得されるPET画像は、被検体Mの機能断層画像であり、消滅γ線対の発生の強度がマッピングされたものである。このPET画像を解析することにより、体内から出射される消滅γ線対がどの程度強いものであるかを測定することができる。実際の測定方法は、PET画像において、関心領域を設定することにより、この関心領域内部でどの程度消滅γ線対が発生したかを知るというものである。関心領域内部で消滅γ線対が強く表れている部分は、放射性薬剤が多く蓄積しており、病巣となっている可能性がある。
【0005】
また、この様なPET装置には、CT撮影をするX線撮影装置が付設されたものがある。X線撮影装置は、被検体MにX線を照射し、被検体Mを透過したX線を検出することで、被検体Mの内部構造が写り込んだ形態断層画像を撮影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−325629号公報
【特許文献2】特開2006−187531号公報
【特許文献3】特開平5−282422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の放射線断層撮影装置には次のような問題点がある。すなわち、PET画像は、PET画像上で関心領域を正確に設定することが難しいという問題がある。
【0008】
PET画像は、消滅γ線対の発生位置がマッピングされた断層画像である。この様なPET画像は、一般的にS/N値が低く、関心領域を設定するのが困難である。また、PET画像は、消滅γ線対の発生位置をマッピングしたものであるので、被検体Mの臓器の形状を写す事を目的とした画像ではない。従って、術者は、PET画像において特定の臓器だけ抜き出して関心領域を設定するのに労力を要する。
【0009】
関心領域を3次元的な範囲であるVOI(Volume of Interest)を設定してPET画像の解析を行う場合、関心領域の設定は更に困難となる。すなわち、術者は互いに直交する3つの平面で被検体Mを切断したときのPET画像の各々について2次元的な関心領域を設定しなければならない。従って、VOIを設定する解析において、術者の労力は、1枚のPET画像の解析に比べて単純には3倍かかることになる。
【0010】
また、術者が労力を割いて決定した関心領域は、必ずしも正確であるとは限らない。S/N値が低いPET画像では構造物の判別が困難であり、またPET画像は臓器の形状を写すことを目的とした画像ではないからである。
【0011】
関心領域の設定を自動化すれば、術者の手間は軽減される。しかし、自動的に関心領域を設定したからといって、PET画像が不鮮明な画像であることに変わりはなく、自動的に決定された関心領域は、必ずしも正確であるとは限らない。
【0012】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機能画像を正確に解析することができる放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングした機能画像を取得する機能画像取得手段と、被検体の形態をイメージングした形態断層画像を取得する断層画像取得手段と、機能画像と形態断層画像とを合わせ込む画像編集手段と、画像編集手段と、画像編集手段の動作の後、形態断層画像を用いて機能画像の画像解析に用いられる関心領域を設定する関心領域設定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]本発明の放射線断層撮影装置は、機能画像と形態断層画像との2種類を取得する構成となっている。機能画像は、被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングしたものであり、一般的にS/N値が低く、また形状を写すことを目的とした画像ではない。従って、術者が機能画像を用いて形態に沿って関心領域を決定することは困難である。そこで本発明によれば、形態断層画像を用いて関心領域を決定するようになっている。この様にすれば、機能画像が不鮮明であっても、確実に関心領域を決定することができる。機能画像と形態断層画像は、独立に取得されたものであるので、各画像に写り込んでいる被検体の位置や体位が一致しない可能性がある。そこで本発明によれば、画像編集手段を備え、被検体の位置や体位を一致させるように画像の編集をするようになっている。これにより、形態断層画像を用いて機能画像の画像解析を確実に行うことができる。
【0015】
なお、画像編集手段が行う合わせ込みとは、例えば、機能画像と形態断層画像とに写り込んでいる被検体の大きさを一致させるような動作をいう。
【0016】
また、上述の放射線断層撮影装置において、機能画像のうち関心領域で指定される領域内部において画像解析を行う画像解析手段を更に備えればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、上述の構成によれば、機能画像の画像解析を行う画像解析手段を備えている。これにより機能画像は確実に画像解析をすることができる。
【0018】
また、上述の放射線断層撮影装置において、機能画像取得手段は、被検体内で発生する消滅放射線対を検出する検出器リングと、検出器リングから出力された検出データを基に機能画像を生成する機能画像生成手段とを備えればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、上述の構成によれば、機能画像は、消滅放射線対の発生強度をマッピングしたPET画像であり、機能画像取得手段は、PET装置となっている。PET画像は、形態断層画像ではないので、本発明をPET装置に適応させることは有効である。
【0020】
また、上述の放射線断層撮影装置において、機能画像取得手段は、被検体内でシングルフォトンとして発生する放射線を検出する放射線検出器と、放射線検出器から出力された検出データを基に機能画像を生成する機能画像生成手段とを備えればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、上述の構成によれば、機能画像は、シングルフォトンの発生強度をマッピングしたSPECT(single photon emission computed tomography)画像であり、機能画像取得手段は、SPECT装置となっている。SPECT画像は、形態断層画像ではないので、本発明をSPECT装置に適応させることは有効である。
【0022】
また、上述の放射線断層撮影装置において、断層画像取得手段は、放射線を照射する放射線源と、放射線源から照射された後、被検体を透過してきた放射線を検出する放射線検出手段と、放射線検出手段から出力された検出データを基に被検体の内部における放射線の透過しやすさがイメージングされた画像を生成する断層画像生成手段とを備えればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、上述の構成によれば、形態断層画像は、外部から放射線を照射することで得られるCT画像であり、断層画像取得手段は、CT装置となっている。CT画像には、被検体の内部構造が鮮明に写り込んでいるので、関心領域の設定に適している。
【0024】
また、上述の放射線断層撮影装置において、断層画像取得手段は、磁場を利用したイメージング装置で構成されればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、上述の構成によれば、形態断層画像は、被検体を磁場に置くことで得られるMR(magnetic resonance)画像であり、断層画像取得手段は、MRI(magnetic resonance imaging)となっている。MR画像には、被検体の内部構造が鮮明に写り込んでいるので、関心領域の設定に適している。
【0026】
また、上述の放射線断層撮影装置において、関心領域設定手段は、関心領域を関心領域設定画像として出力し、関心領域設定画像と画像編集手段による編集後の機能画像とは、共通の裁断面における断面像であればより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、機能画像と関心領域設定画像とは、共通の裁断面における断面像となっている。この様にすることで、関心領域設定画像が規定する関心領域が機能画像上に確実に存在することになる。従って、より確実に画像解析を行うことができる。
【0028】
また、上述の放射線断層撮影装置において、裁断面が機能画像の裁断面と同一とるように形態断層画像を再構成する断面再構成手段を備えればより望ましい。
【0029】
[作用・効果]上述の構成によれば、機能画像と形態断層画像の裁断面は一致するようになる。関心領域設定画像は、形態断層画像を基に生成されることからすれば、両画像の裁断面は一致しているとは限らない。そこで、断面再構成手段を設けることにより、関心領域設定画像と機能画像の裁断面を確実に共通のものとすることができる。
【0030】
また、上述の放射線断層撮影装置において、術者の指示を入力させる入力手段を更に備え、関心領域設定手段は、入力手段の指示に従って関心領域を設定すればより望ましい。
【0031】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。関心領域設定手段が入力手段を通じて術者の指示を受け付けるようにすれば、術者は確実に関心領域を設定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の放射線断層撮影装置は、機能画像と形態断層画像との2種類を取得する構成となっている。機能画像は、被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングしたものであり、形態を示す画像ではない。従って、術者が機能画像を用いて形態に沿った関心領域を決定することは困難である。そこで本発明によれば、形態断層画像を用いて関心領域を決定するようになっている。この様にすれば、機能画像に確実に関心領域を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図7】本発明の1変形例に係る放射線断層撮影装置を説明する模式図である。
【図8】従来構成の放射線断層撮影装置の構成を説明する断面図である。
【実施例1】
【0034】
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例を図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線およびX線は、本発明の放射線の一例である。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1における放射線断層撮影装置は、CT装置8とPET装置9とを備えている。CT装置8は、本発明の断層画像取得手段に相当し、PET装置9は、本発明の機能画像取得手段に相当する。
【0035】
<PET装置の構成>
まずPET装置9について説明する。実施例1に係るPET装置9は、被検体Mを載置する天板10と、天板10をその長手方向(z方向)から導入させる開口を有するガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた天板10をz方向に導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口は、z方向(天板10の長手方向、被検体Mの体軸方向)に伸びた円筒形となっている。検出器リング12は、本発明の検出器に相当する。
【0036】
天板10は、ガントリ11(検出器リング12)の開口をz方向から貫通するように設けられているとともに、z方向に沿って進退自在となっている。この様な天板10の摺動は、天板移動機構15によって実現される。天板移動機構15は、天板移動制御部16によって制御される。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御する天板移動制御手段である。天板10は、その全域が検出器リング12の外側に位置している位置から摺動して、検出器リング12の開口にその一方側から導入されるとともに、検出器リング12の内部を貫通して、検出器リング12の開口のもう一方側から突き出ることができる。検出器リング12は、被検体内で発生する消滅γ線対を検出するものである。また、実施例1の構成の移動機構15やガントリ11とガントリ45の位置関係などは、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0037】
ガントリ11の内部には、被検体Mから放射される消滅γ線対を検出する検出器リング12が備えられている。この検出器リング12は、被検体Mの体軸方向に伸びた筒状であり、そのz方向の長さは、15〜30cm程度である。クロック19は、検出器リング12に入力される。検出器リング12から出力される検出データは、クロック19を基にしたγ線をどの時点で取得されたかという時刻情報が付与され、後述の同時計数部20に入力されることになる。
【0038】
同時計数部20では、検出器リング12から出力された検出データの同時イベント判定を行なう。なお、同時計数部20による検出データの同時イベント判定は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報が用いられる。検出器リング12に同時に入射したと判定された2つのγ線が被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対であるとして、その2つのγ線の検出データをPET画像生成部21に送出する。
【0039】
PET画像生成部21は、同時計数部20を通じて同時計数部検出器リング12から出力された検出データを基にPET画像P1を生成する。このPET画像P1は、ある裁断面における被検体Mの断層像であり、消滅γ線対の発生強度がイメージングされている。画像編集部22は、PET画像P1とCT画像P2との画像に写り込んでいる被検体Mの位置や体位を一致させて合わせ込む目的で設けられており、関心領域設定部23は、CT画像P2を用いてPET画像P1の画像解析に用いられる関心領域ROIを設定する目的で設けられている。そして、画像解析部24は、PET画像P1のうち関心領域ROIで指定される領域内部において画像解析を行う目的で設けられている。PET画像P1は、本発明の機能画像に相当し、CT画像P2は、本発明の形態断層画像に相当する。また、PET画像生成部21は、本発明の機能画像生成手段に相当し、画像編集部22は、本発明の画像編集手段に相当する。また、関心領域設定部23は、本発明の関心領域設定手段に相当し、画像解析部24は、本発明の画像解析手段に相当する。PET画像P1は、被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングしたものとなっており、CT画像P2は、被検体Mの内部における放射線の透過しやすさがイメージングされたものとなっている。
【0040】
検出器リング12の構成について説明する。実施例1によれば、100個前後の放射線検出器1がz方向に垂直な平面上の仮想円に配列することで1つの単位リングが形成される。この単位リングがz方向に配列されて検出器リング12が構成される。
【0041】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図2は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図2に示すようにγ線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0042】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0043】
なお、PET装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41と、形態断層画像等を表示する表示部36とを備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部16,20,21,22,23,24を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0044】
設定記憶部37は、検査に関する各種パラメータを記憶するものであり、操作卓35は、術者の各種操作を入力させるものである。操作卓35は、本発明の入力手段に相当する。
【0045】
<CT装置の構成>
次に、実施例1に係るCT装置8の構成について説明する。図1に示すように、CT装置8は、ガントリ45を有している。ガントリ45には、z方向に伸びた開口が設けられており、この開口に天板10が挿入されている。なお、CT装置8は、PET装置9にz方向から隣接する。両ガントリ11,45の開口はz方向に連続している。
【0046】
ガントリ45の内部には、X線を被検体Mに向けて照射するX線管43と、被検体Mを透過してきたX線を検出するX線検出器44と、X線管43とX線検出器44とを支持する支持体47とが備えられている。支持体47は、リング形状となっており、z軸周りに回転自在となっている。この支持体47の回転は、例えばモータのような動力発生手段と、例えば歯車のような動力伝達手段とから構成される回転機構39が実行する。また、回転制御部40は、この回転機構39を制御するものである。支持体47(X線管43とX線検出器44)の回転における中心軸は、検出器リング12の中心軸と一致している。すなわち、CT装置8は、その中心軸を検出器リング12の中心軸を共有してz方向からPET装置に隣接して設けられている。X線管43は、本発明の放射線源に相当し、X線検出器44は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0047】
CT画像生成部48は、X線検出器44から出力されたX線検出データを基に、被検体MのX線形態断層画像(CT画像P2)を生成するものである。このCT画像P2は、ある裁断面における被検体Mの断層像であり、被検体Mの内部におけるX線の透過しやすさがイメージングされている。CT画像生成部48は、本発明の断層画像生成手段に相当する。
【0048】
主制御部41は、各種のプログラムを実行することにより、PET装置9に係る各部の他、回転制御部40,CT画像生成部48,およびX線管制御部46とを実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。X線管制御部46は、X線管43の管電流、管電圧、パルス幅等を制御する目的で設けられたものである。
【0049】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。放射線断層撮影装置を用いて、被検体Mの検診を行うには、図3に示すように、被検体Mが天板10に載置され(載置ステップS1),被検体MにX線を照射してCT画像P2を取得する(CT画像取得ステップS2)。そして、被検体内から発生する消滅γ線対を検出してPET画像P1を取得し(PET画像取得ステップS3),PET画像P1を基にCT画像P2の編集を行う(画像編集ステップS4)。続いて、編集された編集CT画像P2aを用いて関心領域ROIが設定され(関心領域設定ステップS5),PET画像P1に対する画像解析が行われる(画像解析ステップS6)。以降、これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0050】
<載置ステップS1,CT画像取得ステップS2>
まず、被検体Mが天板10に載置される。術者が操作卓35を通じてCT画像P2の取得開始の指示を行うと、天板10が移動し、被検体Mがガントリ45の内部に導入される。そして、X線管43とX線検出器44とは、互いの相対位置を保った状態でz軸周りに回転する。
【0051】
術者が操作卓35を通じてX線の照射開始を指示すると、X線管43は間歇的にX線を被検体Mに向けて照射し、その度ごとに、CT画像生成部48は、X線透視画像を生成する。この複数枚のX線透視画像は、CT画像生成部48において例えば、既存のバック・プロジェクション法を用いて単一のCT画像P2に組み立てられる。
【0052】
<PET画像取得ステップS3>
CT画像P2の取得後、術者が操作卓35を通じてPET画像P1の取得の指示を与えると、天板10が移動し、被検体Mがガントリ11の内部に導入される。被検体Mには、予め放射性薬剤が注射投与されており、放射性薬剤が消滅γ線対を発生させる。こうして、被検体の体内で発生した消滅γ線対は、検出器リング12で検出される。検出器リング12は、同時計数部20に検出データを送出し、同時計数部20は、検出データの同時イベント判定を行う。なお、検出データは、入射時間と、エネルギーと、入射時間とが関連したデータセットとなっている。
【0053】
同時計数部20で同時イベントと判定された検出データは、PET画像生成部21に送出される。PET画像生成部21は、所定の幅で配列された平面の各々で被検体Mを裁断したときの断層像であるとともに、消滅γ線対の発生状況がイメージ化されたPET画像P1を生成する。PET画像P1およびCT画像P2は、いずれも形態断層画像である。
【0054】
<画像編集ステップS4>
PET画像P1,およびCT画像P2は、画像編集部22に送出される。画像編集部22では、互いに解像度やPixelサイズの異なるPET画像P1,およびCT画像P2の解像度とPixelサイズを一致させて両画像を合わせ込む。具体的には、画像編集部22は、高解像度のCT画像P2を縮小して、解像度を低解像度のCT画像P2に一致させる。またPET画像P1とCT画像P2は、独立に取得されたものであるので、各画像に写り込んでいる被検体の位置や体位も一致させる。編集後のCT画像P2を編集CT画像P2aと呼ぶことにする。
【0055】
編集動作後におけるPET画像P1と、編集CT画像P2aは、共通の裁断面における断面像となっている。なお、PET画像生成部21は、裁断位置の異なる複数のPET画像P1を生成できる。
【0056】
PET画像P1とCT画像P2との裁断面が一致しない場合、CT画像生成部48は、CT画像P2をリスライス部49に送出する。リスライス部49は、あるピッチで被検体Mを裁断したときに得られる複数のCT画像P2から、補間により、CT画像P2の裁断面とは異なる別の裁断面における形態断層画像を生成する。具体的には、リスライス部49は、裁断面がPET画像P1と一致している新たなCT画像をCT画像生成部48が出力したCT画像P2から生成する。このときの新たなCT画像は、CT画像P2の代わりに画像編集部22に送出される。以降、PET画像P1とCT画像P2との裁断面は、始めから一致しており、リスライス部49の動作が省略されたものとして、動作説明を続行する。リスライス部49は、本発明の断面再構成手段に相当する。リスライス部49は、裁断面がPET画像P1の裁断面と同一とるようにCT画像P2を再構成するものである。
【0057】
<関心領域設定ステップS5>
編集CT画像P2aは、関心領域設定部23に送出される。関心領域設定部23は、表示部36に編集CT画像P2aを表示して術者の指示入力があるまで待機する。術者は、表示部36に写り込んでいる編集CT画像P2aの一部を画像上のポインタなどを用いて決定すると、関心領域設定部23は、編集CT画像P2aにおける術者が囲んだ部分を関心領域ROIに設定する(図4参照)。図4においては、術者は、被検体Mの骨部を選択している。編集CT画像P2aには、この骨部が鮮明に写り込んでおり、術者は容易に選択を完了することができる。
【0058】
関心領域設定部23は、操作卓35の指示に従って関心領域ROIの位置と大きさと範囲とを示す関心領域設定画像P3を生成する。関心領域設定画像P3は、図5に示すように編集CT画像P2aにおける関心領域ROIの位置等が色分けされて示された二値画像となっている。関心領域設定画像P3は、PET画像P1,および編集CT画像P2aにおける被検体Mの裁断面と同じ裁断面を表している。しかも、何れの画像P1,P2a,P3における画像の解像度とPixelサイズは同一である。
【0059】
<画像解析ステップS6>
関心領域設定画像P3およびPET画像P1は、画像解析部24に送出される。画像解析部24は、関心領域設定画像P3で指定される関心領域ROI内部において、例えば、どの程度消滅γ線対が発生しているかを示すSUV値を算出する(図6参照)。このSUV値が表示部36に出力されて検査は終了となる。
【0060】
以上のように、実施例1の放射線断層撮影装置は、PET画像P1とCT画像P2との2種類を取得する構成となっている。PET画像P1は、被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングしたものであるので、形態を写す画像ではない。従って、術者が形態に沿ってPET画像P1を用いて関心領域ROIを決定することは困難である。そこで実施例1によれば、PET画像P1とは別のCT画像P2を用いて関心領域ROIを決定するようになっている。この様にすれば、PET画像P1が不鮮明であっても、確実に関心領域ROIを決定することができる。PET画像P1とCT画像P2は、独立に取得されたものであるので、各画像P1,P2に写り込んでいる被検体Mの位置や体位が一致しない可能性がある。そこで実施例1によれば、画像編集部22を備え、被検体Mの位置や体位を一致させるようにCT画像P2の編集をするようになっている。これにより、CT画像P2を用いてPET画像P1の画像解析を確実に行うことができる。
【0061】
また、上述の構成によれば、機能画像は、消滅γ線対の発生強度をマッピングしたPET画像であり、機能画像取得手段は、PET装置となっている。PET画像は、不鮮明であるので、実施例1をPET装置に適応させることは有効である。
【0062】
同じく、上述の構成によれば、形態断層画像は、外部から放射線を照射することで得られるCT画像であり、断層画像取得手段は、CT装置となっている。CT画像には、被検体Mの内部構造が鮮明に写り込んでいるので、関心領域ROIの設定に適している。
【0063】
また、PET画像P1と関心領域設定画像P3とは、共通の裁断面における断面像となっている。この様にすることで、関心領域設定画像P3が規定する関心領域ROIが機能画像上に確実に存在することになる。従って、より確実に画像解析を行うことができる。
【0064】
上述の構成によれば、リスライス部49によりPET画像P1とCT画像P2の裁断面は一致するようになる。関心領域設定画像P3は、CT画像P2を基に生成されることからすれば、両画像の裁断面は一致しているとは限らない。そこで、リスライス部49を設けることにより、関心領域設定画像P3とPET画像P1の裁断面を確実に共通のものとすることができる。
【0065】
上述のように、関心領域設定部23が操作卓35を通じて術者の指示を受け付けるようにすれば、術者は確実に関心領域ROIを設定することができる。
【0066】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0067】
(1)上述した実施例では、単一のCT画像P2について関心領域ROIを設定する構成であったが、本発明はこれに限られない。複数のPET画像P1に対応する編集CT画像P2aの各々について関心領域ROIを設定して、複数の関心領域設定画像P3を生成するようにしてもよい。このとき、図7に示すように、各PET画像P1の裁断面をp1とし、編集CT画像P2aの裁断面をp2aとし、関心領域設定画像P3の裁断面をp3とすると、ある裁断面p1と同一平面の裁断面p2,p3が存在している。このように、複数の関心領域設定画像P3を設定することで、関心領域を立体的に設定することができる。上述のようにすれば、立体的な関心領域であるVOIをより簡明かつ確実に設定することができる。PET画像P1の解析は、同一裁断面における関心領域設定画像P3を用いることで行われる。従って、PET画像P1の各々で解析に用いられる関心領域設定画像P3は変化することになる。
【0068】
(2)上述の構成によれば、画像編集部22は、CT画像P2を編集するようにしていたが、本発明はこの様な構成に限られない。PET画像P1をCT画像P2に合わせて拡大することにより、画像編集動作をするようにしてもよい。
【0069】
(3)上述の構成によれば、PET装置を採用していたが、これに代えてSPECT装置を採用することもできる。すなわち、本変形例の構成によれば、機能画像は、被検体内部で発生したシングルフォトンの発生強度をマッピングしたSPECT(single photon emission computed tomography)画像であり、機能画像取得手段は、SPECT装置となっている。SPECT画像は、形態断層画像ではないので、本発明をSPECT装置に適応させることは有効である。
【0070】
(4)上述の構成によれば、CT装置を採用していたが、これに代えてMRIを採用することもできる。すなわち、本変形例の構成によれば、形態断層画像は、被検体Mを磁場に置くことで得られるMR画像であり、断層画像取得手段は、MRIとなっている。MR画像には、被検体Mの内部構造が鮮明に写り込んでいるので、関心領域ROIの設定に適している。
【0071】
(5)上述の構成によれば、関心領域設定部23は、術者の指示に従い関心領域ROIを決定していたが、関心領域ROIの設定を自動で行ってもよい。
【0072】
(6)上述の構成によれば、関心領域設定画像P3は、PET画像P1の解析に用いられていたが、編集CT画像P2aの解析にも用いることができる。いったん関心領域設定画像P3を生成しておけば、関心領域設定画像P3を編集CT画像P2aの画像解析時の関心領域ROIの決定に流用することができる。PET画像P1,編集CT画像P2a,および関心領域設定画像P3は、いずれも同一の裁断面を表しているので、この様な解析方法が可能である。
【符号の説明】
【0073】
P1 PET画像(機能画像)
P2 CT画像(形態断層画像)
P3 関心領域設定画像
ROI 関心領域
8 CT装置(断層画像取得手段)
9 PET装置(機能画像取得手段)
12 検出器リング(検出器)
21 PET画像生成部(機能画像生成手段)
22 画像編集部(画像編集手段)
23 関心領域設定部(関心領域設定手段)
24 画像解析部(画像解析手段)
35 操作卓(入力手段)
43 X線管(放射線源)
44 X線検出器(放射線検出手段)
48 CT画像生成部(断層画像生成手段)
49 リスライス部(断面再構成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内部発生の放射線の発生位置をイメージングした機能画像を取得する機能画像取得手段と、
前記被検体の形態をイメージングした形態断層画像を取得する断層画像取得手段と、
前記機能画像と前記形態断層画像とを合わせ込む画像編集手段と、
前記画像編集手段の動作の後、前記形態断層画像を用いて前記機能画像の画像解析に用いられる関心領域を設定する関心領域設定手段とを備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
前記機能画像のうち前記関心領域で指定される領域内部において画像解析を行う画像解析手段を更に備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
前記機能画像取得手段は、
被検体内で発生した放射線を検出する検出器と、
前記検出器から出力された検出データを基に前記機能画像を生成する機能画像生成手段とを備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記断層画像取得手段は、
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射された後、被検体を透過してきた放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段から出力された検出データを基に被検体の内部における放射線の透過しやすさがイメージングされた画像を生成する断層画像生成手段とを備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記断層画像取得手段は、磁場を利用したイメージング装置で構成されることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記関心領域設定手段は、前記関心領域を関心領域設定画像として出力し、
関心領域設定画像と前記画像編集手段による編集後の前記機能画像とは、共通の裁断面における断面像であることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
裁断面が前記機能画像の裁断面と同一とるように形態断層画像を再構成する断面再構成手段を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
術者の指示を入力させる入力手段を更に備え、
前記関心領域設定手段は、前記入力手段の指示に従って関心領域を設定することを特徴とする放射線断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−58061(P2012−58061A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200839(P2010−200839)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】