説明

放射線検出装置

【課題】
本発明はセンチネルリンパ節のRI検出法において、高価な検出装置を用いることなくその実施を可能とするもので、放射性医薬品を使用している医療施設のほとんどに常備されている安価で普及性の高い放射線検出器に放射線遮蔽体を具備した放射線検出装置を提供する。
【解決手段】
センチネルリンパ節診断の際に、投与部位からの放射線の影響を防止し、且つセンチネルリンパ節からの放射線検出感度を保ちながら特異性も兼ね備えた筒形放射線遮蔽部と、さらにはセンチネルリンパ節の正確な位置を特定することのできる、より特異性を高めた略筒形連結部とを備えたセンチネルリンパ節用放射線検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特異性の高い放射線遮蔽体を具備した放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医学では、悪性腫瘍の転移診断に腫瘍特異的に集積する放射性物質を体内に投与し、その集積を測定することが行われている。
【0003】
例えば乳癌、食道癌および大腸癌等に於いて、腫瘍細胞の転移を最初に受けるリンパ節に腫瘍細胞が確認できなければそれより下流域のリンパ節廓清を行わないという治療法が進められている。その治療法により患者の精神的および身体的負担を軽減し、予後の回復を向上させることができる。こうした背景から放射性医薬品を用いたいわゆるセンチネルリンパ節診断が重視されつつある。
【0004】
このセンチネルリンパ節の検出法(RI検出法)は、腫瘍部位近傍および/または乳輪周辺に放射性医薬品を投与してその流れを追跡し、リンパ系に移行した放射性医薬品が最初に集積するリンパ節(センチネルリンパ節)を検出するものである。
【0005】
ところが、センチネルリンパ節に集積する放射能量は、投与部位に集積する放射能量の約1/100程度と小さいため、投与部位とセンチネルリンパ節との位置が比較的隣接した場合、投与部位に残存する不要な放射線に影響されるので、センチネルリンパ節の検出が困難になることがある。
【0006】
そのため小型で特異性および感度の高いプローブと呼ばれている専用の検出器を用いた検出装置(例えば特許文献1参照)が用いられているが、専用の放射線検出装置は非常に高価なため、この有用な検出法が医療現場に広く普及し難い状況にあった。そこでセンチネルリンパ節のRI検出には、安価で普及性のある検出装置が医療関係者より望まれていた。
【特許文献1】特表2002−528729
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はセンチネルリンパ節のRI検出法において、高価な検出装置を用いることなくその実施を可能とするもので、放射性医薬品を使用している医療施設のほとんどに常備されている安価で普及性の高い放射線検出器に放射線遮蔽体を具備した放射線検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放射線を検出するための検出部を有する放射線検出器と、前記放射線検出器とケーブルで連結され、放射線量を計数率として表示するための測定部とで構成された放射線測定器、および前記放射線検出器の側面に入射する放射線を遮断するための、一端に略円錐中空形部を有する筒形放射線遮蔽部と、前記略円錐中空形部に連結し、放射線の検出特異性を調節するための略筒形連結部とで構成された放射線遮蔽体、とを備えることを特徴とする放射線検出装置を用いて前記課題を解決したものである。
【0009】
より詳細には、センチネルリンパ節診断の際に、投与部位からの放射線の影響を防止し、且つセンチネルリンパ節からの放射線検出感度を保ちながら特異性も兼ね備えた筒形放射線遮蔽部と、さらにはセンチネルリンパ節の正確な位置を特定することのできる、より特異性を高めた略筒形連結部とを備えたセンチネルリンパ節用放射線検出装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の放射線検出装置を用いることにより、一部の医療施設にしか置かれていない高価な放射線検出装置を使用しなくてもセンチネルリンパ節診断を広く普及させることができる。それにより、多くの症例において生体組織を過度に切除しない治療法が選択可能となり、患者の身体的および精神的負担を軽減することができる。
【0011】
また、投与部位側に補助遮蔽を用いなくてもセンチネルリンパ節の検出が可能と成り、術前術中に煩雑な操作を行わずに診断ができる。
【0012】
尚、筒形放射線遮蔽部を用いただけでセンチネルリンパ節の検出が可能だが、投与部位近傍にセンチネルリンパ節が有る場合、略円錐中空形部に略筒形連結部を更に接続することにより、投与部位からの放射線の影響を低減しつつ特異性を高め、センチネルリンパ節の検出を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下実施の形態を示す図面と共に本発明を説明する。
図1は本発明放射線検出装置の一部である放射線検出器3と放射線遮蔽体13の縦断面説明図である。
【0014】
放射線検出器3は、放射線を検出する検出部1とその発光をカウントして電気信号に変換する出力部2とから成っている。また、放射線遮蔽体13は、筒形放射線遮蔽部11と略筒形連結部12とから構成され、更に筒形放射線遮蔽部11は、略円錐中空形部10を有している。
【0015】
検出部1は、放射線の入射により発光するシンチレータであり、検出された発光は出力部2により電気信号に変換される。検出部1および出力部2の形状は特に問わない。
【0016】
筒形放射線遮蔽部11は、検出部に入射する放射線を遮断するもので、放射線検出器3を挿入する為の開口端を有する略筒形形状であり、その反対側には略円錐中空形部10を有している。尚、特異性の違う略円錐中空形部10を予め用意し、センチネルリンパ節の放射能量に応じて略円錐中空形部10が適宜交換できる構造に成っていればなお良い。
筒形放射線遮蔽部11の長手方向の長さは特に問わないが、投与部位からの強い放射線を避けるために放射線検出器3を傾けてセンチネルリンパ節を検出する際、投与部位から検出部に入射する放射線を遮断できる長さであれば良い。また、横または後ろ方向から検出部に入射する放射線量は少ないので、筒形放射線遮蔽部11の遮蔽厚は開口端側に向かって段階的に薄くすることもできる。
【0017】
筒形放射線遮蔽部11に連結する略円錐中空形部10は、投与部位に残存した多量の放射線を遮断するもので、円錐中空形状を有している。また、その先端はセンチネルリンパ節を特異的に且つ感度良く測定するために、細径孔を有している。その細径孔の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形等その如何を問わないが、放射線が均一に入射する円形が望ましい。また、センチネルリンパ節の平均的な直径が5〜10mmなので、前記細径孔の直径は、5mm以上が望ましい。
【0018】
前記略円錐中空形部10の先端には、さらに特異性を高めるための着脱自在な略筒形連結部12を取り付けることができ、その形状は、筒形形状を有している。
【0019】
尚、筒形放射線遮蔽部11および略筒形連結部12は図2a、bおよびcの本発明略円錐中空形部の他の形態を示す説明図にあるように一体に成っていても良く、略筒形連結部12の形状は、図2aに示すような先端よりも基端の直径が大きい先細りとなっている略筒形状、図2bに示すような直径が均一な筒形状および図2cに示すような逆ラッパ形状でも良い。また、前記筒形放射線遮蔽部11および略筒形連結部12の遮蔽厚は、特に限定しないが、特異性、感度および操作性を勘案すると5mm以下が適当である。また、筒形放射線遮蔽部11および略筒形連結部12の材質は、一般にγ線の遮蔽に利用されている遮蔽金属ならばその如何を問わないが、遮蔽効果、加工性および費用等を考慮すると鉛が適している。また、筒形放射線遮蔽部11の外面には衛生面を保つため、ステンレス製のカバーで覆うことが好ましいが、更に衛生面を担保するには、放射線遮蔽体13と放射線検出器3の全体をビニール等で覆うことが望ましい。
【0020】
図3は本発明放射線検出装置を示す説明図であり、図1で示した放射線検出器3と放射線遮蔽体13に加え、放射線検出器3からの電気信号を伝達するケーブル5とその電気信号を放射線量の計数率として表示する測定部4とを備えている。
【実施例】
【0021】
次に、実施例を用いてさらに説明するが、本発明は実施例により何ら制約されるものではない。
【0022】
[筒形放射線遮蔽部の作製]
外径54mm、内径44mmおよび長さ110mmである筒形形状の一端に、底面外径54mm、底面内径44mm、先端に内径10mmの孔を有した高さ28mmの略円錐形状の底周面を連結した筒形放射線遮蔽部を鉛鋳造により作製した。また、外装カバーとして厚さ1mmのステンレスを加工形成し、筒形放射線遮蔽部に装着した。
【0023】
[略筒形連結部の作製]
外径10mm、内径7mm、長さ12mmの筒形形状で、一端に外径12mm、幅2mmの鍔を有した略筒形連結部を鉛切削加工により作製した。
【0024】
[放射線検出装置の性能試験]
センチネルリンパ節診断で、投与部位とセンチネルリンパ節とに集積する実際の放射能量の線源を放射性物質である99mTcで作製した。投与部位の放射能量は37MBq(投与部位線源)、センチネルリンパ節の放射能量は投与部位放射能量の約1/100、即ち370KBq(センチネルリンパ節線源)に調整し、各線源をアクリル製バイアルに封入した。
次に投与部位線源とセンチネルリンパ節線源との距離を5cmに固定した測定用ユニットを作製し、以下の試験に使用した。
尚、試験には前記で作製した筒形放射線遮蔽部および略筒形連結部と放射線測定器(アロカ製/TCS−161)で構成された本発明放射線検出装置を使用した。
【0025】
初めに本発明放射線検出装置を机上に固定して設置した。次に、略筒形連結部正面より前方に何も置かない状態でバックグラウンドの放射能量を測定した。
次に図4の本発明放射線検出装置の性能試験説明図に示すように、略筒形連結部12の正面より前方2cm離れた位置に測定用ユニット22を配置した。
次にセンチネルリンパ節線源21の外側1cmに当るA位置より放射能量の測定を行い、矢印方向に測定用ユニットを1cmづつ順次移動させ、BからHの位置で放射能量の測定を行った。測定結果を図5に示す。
【0026】
図5より、センチネルリンパ節線源(測定位置B)の測定値がバックグラウンドに対して2倍以上あり、十分な感度が認められた。更にセンチネルリンパ節線源と投与部位線源(測定位置G)との間に明確な測定値の低下(測定位置D:センチネルリンパ節線源の測定値と比較して約67%減)が確認でき、特異性が認められた。これらの結果より、センチネルリンパ節線源の検出が可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明放射線検出装置の一部の放射線検出器と放射線遮蔽体の縦断面説明図
【図2】本発明略円錐中空形部の他の形態を示す説明図
【図3】本発明放射線検出装置を示す説明図
【図4】本発明放射線検出装置の性能試験説明図
【図5】本発明放射線検出装置の測定結果を示す説明図
【符号の説明】
【0028】
1:検出部
2:出力部
3:放射線検出器(1+2)
4:測定部
5:ケーブル
10:略円錐中空形部
11:筒形放射線遮蔽部
12:略筒形連結部
13:放射線遮蔽体(11+12)
20:投与部位線源
21:センチネルリンパ節線源
22:測定用ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出するための検出部を有する放射線検出器と、前記放射線検出器とケーブルで連結され、放射線量を計数率として表示するための測定部とで構成された放射線測定器、
および前記放射線検出器の側面に入射する放射線を遮断するための、一端に略円錐中空形部を有する筒形放射線遮蔽部と、前記略円錐中空形部に連結し放射線の検出特異性を調節するための略筒形連結部とで構成された放射線遮蔽体、
とを備えることを特徴とする放射線検出装置
【請求項2】
センチネルリンパ節診断に用いることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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